説明

放射線撮影装置

【課題】撮影部の複数の側面に把手を配置しても、撮影部の質量増加を低減し、しかも架台への装着性も損なうことがない放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】画像データを取得するX線検出部1とこの放射線検出部1を収納する筐体3を有する放射線撮影装置100であって、フレキシブルで筐体3の隣接する2つ以上の側面8,9,10,11の周囲長よりも長く、かつ2つ以上の側面に沿うように配置される帯状織布14と、帯状織布14が筐体3の周囲長方向へ移動することを許容し、周囲長方向に対して直角な方向へ移動することを規制する開口17と、帯状織布14が筐体3の側面に当接するように張力を付与する引張ばねとを有し、開口17が筐体3のコーナーに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬性を有する放射線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体にX線などの放射線を照射し、被写体を透過した放射線の強度分布を検出して被写体の放射線画像を得る装置が、工業用の非破壊検査や医療診断の場で広く利用されている。このような撮影用途のために、従来の撮影方法であるフイルム/スクリーン方式に替わって、特許文献1,2にあるような半導体センサを使用して放射線デジタル画像を撮影する装置が開発されている。このような撮影装置は、非常に広いダイナミックレンジを確保でき、即時的に撮影した画像を出力して得ることができる。撮影装置は、画像を取得する撮影部と、撮影部の画像取得を制御し撮影された画像をディスプレイ上に表示する制御装置で構成される。このような撮影装置の撮影部は、特許文献3で説明されているように、可搬性の向上が可能な剛性を有する把手を備えながら、立位用の撮影架台への装着性を損なうことのないものがある。 また、特許文献4で説明されているように、撮影部の両側辺部に把手が配置可能なカセッテキャリアを用い、撮影部を複数方向から保持可能にすることで撮影部位への撮影部の位置合わせを容易にした撮影装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3066944号公報
【特許文献2】特開2007−155375号公報
【特許文献3】特開2004−077641号公報
【特許文献4】特開平10−282598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3で説明されているように、架台への装着性を損なうことなく可搬性の向上が可能な把手を撮影部に設けることが望まれている。また、特許文献4で説明されているように、複数の把手を撮影部に設けることで撮影部位への撮影部の位置合わせを容易にすることも望まれている。撮影部が被写体の下に配置されるような撮影形態の場合、撮影部の複数の側面に設けられた把手は撮影部の位置合わせに適した形態となる。一方、従来のような剛性を有する把手を備えることは、撮影部全体の重量が増大し、可搬性が低下してしまうという問題もある。
本発明は上記の点に鑑み、撮影部の複数の側面に把手を配置しても撮影部の重量を増やすことなく、しかも架台への装着性も損なうことがない放射線撮影装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、画像データを取得する放射線検出部と前記放射線検出部を収納する筐体を有する放射線撮影装置であって、フレキシブルで、前記筐体の隣接する2つ以上の側面の周囲長よりも長く、前記2つ以上の側面に沿うように配置される帯状部材または紐状部材と、前記帯状部材または前記紐状部材が前記筐体の周囲長方向へ移動することを許容し、周囲長方向に対して直角な方向へ移動することを規制する位置規制部と、前記帯状部材または前記紐状部材が前記筐体の前記側面に当接するように張力を付与するテンション部材とを有し、前記位置規制部が前記筐体のコーナーに設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撮影部の複数の側面に沿って把手として配置したフレキシブルで厚さの薄い帯状部材または紐状部材が、把手として使用されない状態では、常に撮影部の側面に密着するように構成される。このため、把手が必要な場合のみ所望の位置に把手をただちに形成することができる。したがって、被写体の下に配置された撮影部の撮影部位への位置合わせや撮影後の取出しが容易であり、しかも軽量化された撮影部を実現できる。また、撮影部を架台へ支障なく装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる放射線撮影装置の撮影部の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係わる放射線撮影装置の撮影部の構成を模式的に示す図である。
【図3】図3は、撮影部の帯部材が把手として機能した形態の一例を示す模式的に示す図である。
【図4】図4は、放射線撮影装置の撮影部の構成を模式的に示す図であって、帯状部材の一部が帯状織布により形成され、他の部分がゴム紐により形成される構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係わる放射線撮影装置の撮影部の構成を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係わる外部装置の一例を模式的に示す図である。
【図7】図7は、X線の照射可否を制御する一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。尚、以下に示す各実施形態においては、放射線としてX線が適用される構成を例に挙げて説明するが、放射線は、X線に限られず、電磁波や、α線、β線、γ線などであってもよい。
【実施例1】
【0009】
図1と図2は、本発明の第1の実施の形態に係わる放射線撮影装置100の撮影部1の構成を示す図である。それぞれ、図1は撮影部1の外観を示す図であり、図2は撮影部1の内部構造を示す図である。撮影部1は、放射線検出部としてのX線検出部2と、X線検出部2を収納する筐体3を含む。そして、X線検出部2は、X線発生装置55(図6参照)から照射され被写体を透過したX線を検出する。X線検出部2は、長方形のセンサ領域を有するものであり、たとえば、アモルファスシリコンからなる2次元光電変換素子上に蛍光体が積層される構成のセンサなどが適用される。X線検出部2に到達したX線は、蛍光体を励起して発光させる。そして、2次元光電変換素子を構成する各画素へ到達した光は、その光量に応じた電気信号に変換される。筐体3には、X線検出部2に加え、読み出し回路4と、駆動回路5と、制御回路6とが収納される。読み出し回路4は、センサの各光電変換素子から画像データを取得する。駆動回路5は、センサの各光電変換素子を駆動し画像データの出力を制御する。制御回路6は、撮影動作を含む撮影部1の動作を制御する。制御回路6と外部装置との画像データおよび制御信号の通信と、外部装置51(図6参照。詳細は後述する)からの電力供給は、ケーブル7を介して行われる。ケーブル7は、筐体3の側面9に設けられた開口16を貫通し、ブロック12に保持され、制御回路6に接続される。
【0010】
筐体3は平面視において略四辺形であり、4つの側面8,9,10,11を有する。筐体3の4つのコーナーのうちの隣接する(=対角ではない)2つのコーナー(図1中の右上部のコーナーと右下部のコーナー)の内側には、それぞれ金属製のブロック12,13が固定される。そして、フレキシブルな帯状部材または紐状部材としての帯状織布14の一端が、2つのコーナーのうちの一方(図1中の右上部のコーナー)のブロック12に固定される。帯状部材または紐状部材としての帯状織布14は、撮影部1を複数の方向から保持できる把手の機能を有する。この帯状織布14の幅は筐体3の厚さよりも小さい。また、この帯状織布14の厚さは、たとえば0.5mm程度である。なお、図1においては、帯状織布14は点線で示され、筐体3との識別を容易にしている。そして、この帯状織布14は、筐体3の側面に形成される位置規制部としてのスリット状の開口15を貫通している。スリット状の開口15は、筺体3のコーナーにおいて、外部と内部を連通する貫通孔状の構成を有する。筐体3の4つのコーナーのうち、ブロック12,13が固定されない2つのコーナー(図1中の左上部と左下部のコーナー)には、それぞれ、位置規制部としてのスリット状の開口17が形成される。位置規制部としての一方の開口17は、互いに隣接する2つの側面8,10の表面どうしを連通する貫通孔状の構成を有する。位置規制部としての他方の開口17は、互いに隣接する2つの側面10,11の表面どうしを連通する貫通孔状の構成を有する。そして、帯状織布14は、これらの開口17を貫通している。また、帯状織布14の一端が固定されないブロック13にも、位置規制部としてのスリット状の開口18が形成される。位置規制部としての開口18は、筐体3の外部と内部を連通する貫通孔状の構成を有する。そして、帯状織布14は、筐体3の側面11に形成されるスリット状の開口15と、ブロック13に形成される開口18とを貫通して配置される。このように、帯状部材または紐状部材としての帯状織布14は、筐体3の3つの側面8,10,11の周囲長よりも長くなっている。すなわち、帯状部材14は、少なくとも、互いに隣接する2つ以上の側面の周囲長よりも長い。そして、この帯状織布14は、全体として、筐体3の前記3つの側面8,10,11に添うように配置される。このため、筺体3の3つの側面8,10,11に、保持のための把手が設けられる。筐体3の開口15とブロック13の開口18とを貫通した帯状織布14の他の一端には、金属製のブロック19が固定される。そして、テンション部材としての引張ばね20が、ブロック19とブロック21との間に架設される。具体的には、テンション部材としての引張ばね20の一端がブロック19に固定され、他端が筐体3に設けられたブロック21に固定される。このため、引張ばね20は、ブロック21を介して帯状織布12に張力を付与する。このような形態では、筐体3のコーナー付近に形成される位置規制部としての開口15,17,18が、帯状部材または紐状部材としての帯状織布14を筐体3の各側面8,10,11に沿わせるように位置を規制する。そして、帯状織布14は、これらの開口15,17,18を貫通するから、筐体3の各側面8,10,11の周囲長方向への移動が許容される。すなわち、これらの開口15,17,18は、帯状織布14が、筐体3の周囲長方向に移動することを許容する。また、これらの開口15,17,18は、帯状織布14が、筐体3の周囲長方向に対して直角な方向(=X線検出部2のセンサ領域の面方向に直角な方向。ここでは、図1〜図3の面方向に直角な方向)に移動することを規制する。さらに、テンション部材としての引張ばね20は、帯状織布14が筐体3の側面8,10,11の表面に当接するように、帯状織布14に張力を付与する。ブロック13とブロック19は、距離L0離れており、ブロック19はブロック13に接触するまで移動可能となっている。したがって、帯状織布14は、側面8,10,11の周囲長よりもおおよそL0だけ長くなっている。そして、例えば、撮影部1を運搬する為に帯状織布14を把手として機能させるには、筐体3の各側面8,10,11に当接している帯状織布14のどの部分を掴んでもよい。図3は、帯部材である帯状織布14が把手として機能している形態の一例を示す図である。具体的には、筐体3の側面8に当接している帯状織布14のほぼ中央部を掴み、運搬している形態を示す図である。例えば、ブロック19がブロック13に接触した際において、引張ばね20により付与される引張力が撮影部1の重量のおおよそ半分に設定される構成であると、ブロック19がブロック13にほぼ接触する位置まで移動する。すなわち、帯状織布14が筐体3の内部からL0の長さだけ引出された状態となる。この状態では、筐体3の側面8と帯状織布14との間にのみ隙間が形成され、帯状織布14を完全に掴むことができるようになる。このように、帯状織布14が筐体3の各側面8,10,11の周囲長方向に移動することにより、帯状織布14と筐体3の側面8,10,11の任意の一つの間に、隙間が形成される。したがって、この隙間に手などを差し込むことができるようになるから、帯状織布14を把手として用いることができるようになる。
以上説明した第1の形態では、筐体3の3つの側面8,10,11の任意の1つまたは複数に、帯状織布14からなる把手を必要なときにただちに形成することができる。また、筐体3の平面視における外形寸法は、帯状織布14が存在しない状態に比較して、縦および横の寸法がおおよそ1mm大きくなるだけである。このため、把手を設けたことによる架台への装着性の低下はないに等しい。さらに、従来の剛性を有する把手と比較しても、重量の大幅な低減が可能である。
また、この実施形態においては、フレキシブルな帯状部材または紐状部材として帯状織布14が適用される構成を示したが、帯状部材または紐状部材は、帯状織布14に限定されない。要は、隣接する2つの側面の周囲長方向よりも長く、フレキシブルで筐体の側面に沿うように配置できる構成であればよい。このため、各種帯や紐が適用できる。
【0011】
また、帯状部材または紐状部材は、一部または全部が弾性変形可能な構成であってもよい。たとえば、帯状部材または紐状部材の一部が帯状織布により形成され、残りの部分がゴムなどのフレキシブルで弾性変形可能な材料により形成される構成であってもよい。ここで、帯状部材または紐状部材の一部が帯状織布により形成され、残りの部分がゴムなどのフレキシブルで弾性変形可能な材料により形成される構成について、図4を参照して説明する。なお、帯状部材または紐状部材以外の構成は、前記実施形態と同じ構成が適用できるため、説明を省略する。図4は、放射線撮影装置100の撮影部1の構成を模式的に示す図であって、帯状部材14aの一部が帯状織布により形成され、他の部分がゴム紐により形成される構成を模式的に示す図である。図4に示すように、放射線撮影装置100の撮影部1は、フレキシブルな帯状部材(または紐状部材)14aを有する。この帯状部材14aは、帯状織布(または紐)により形成される部分141と、ゴムベルト(またはゴム紐)により形成される部分142とを有する。ゴムベルトにより形成される部分142は、弾性変形可能である。そして、図4に示すように、ゴムベルトにより形成される部分142が、開口17を貫通するように配置される。このほか、ゴムベルトにより形成される部分142が、筐体3の側面10に沿うように配置される構成であってもよい。要は、ゴムベルトにより形成される部分142が弾性変形して伸びることにより、帯状部材14aと筐体3の側面8,10,11との間に隙間が形成される構成であればよい。このため、帯状部材または紐状部材の全部が、ゴムベルトやゴム紐などの弾性変形可能な部材により形成される構成であってもよい。このように、弾性変形可能な部分が形成される位置や範囲は限定されない。このような構成によれば、帯状部材14aは、弾性変形可能な部分において生じる張力によって、筐体3の側面8,10,11に沿う状態(=当接する状態)に保持できる。そして、帯状部材14aのゴムベルトにより形成される部分142が弾性変形して伸びることによって、帯状部材14aと筐体3の側面8,10,11との間に隙間ができるから、この帯状部材14aを把手として用いることができる。なお、帯状部材14a自身の少なくとも一部が弾性変形可能なため、帯状部材14aに張力をかける引張ばね20などの部材が撮像部1に設けられない構成であってもよい。
【実施例2】
【0012】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係わる放射線撮影装置の撮影部1の内部構造を示す図である。尚、本実施形態において、第1の実施形態と同一の部材には同一の記号を付すとともに、詳細な説明を省略する。
撮影部31は、長方形のセンサ領域を有する放射線検出部としてのX線検出部2と、読出し回路4と、駆動回路5と、制御回路6と、ケーブル7と、4つの側面8〜11と、筐体32と、2つの帯状織布33,34を備える。2つの帯状織布33,34は、いずれも帯状部材または紐状部材であり、把手の機能を有する。筐体32の内部には、撮像部31のX線検出部2と、読み出し回路4と、駆動回路5と、制御回路6とが収納される。筐体32の対角に位置する2つのコーナー(図5中の左下部のコーナーと右上部のコーナー)の内側には、それぞれ金属製のブロック35,36が固定される。そして、一方の帯状織布33の一端は、筐体32の側面10に形成される位置規制部としてのスリット状の開口37を貫通し、一方のブロック35に固定される。他方の帯状織布34の一端も、筐体32の側面11に形成される位置規制部としてのスリット状の開口37を貫通し、一方のブロック35に固定される。2つのスリット状の開口37は、筺体32の左下部のコーナーにおいて、外部と内部を連通する貫通孔状の構成を有する。ケーブル7は、筐体32の側面9に設けられた開口38を貫通し、他方のブロック36に保持され、制御回路6に接続される。筐体32のブロック35,36が固定されない2つのコーナー(図5中の左上部および右下部のコーナー)には、それぞれ、位置規制部としてのスリット状の開口39が設けられる。一方の開口39は、隣接する2つの側面8,10の表面どうしを連通する貫通孔状の構成を有する。他方の開口39は、隣接する2つの側面9,11の表面どうしを連通する貫通孔状の構成を有する。そして、2つの帯状織布33それぞれが、開口39を貫通している。さらに、2つの帯状織布33,34のそれぞれは、筐体32の側面8および側面9に形成される位置規制部としてのスリット状の開口40と、ブロック36に形成される位置規制部としての2つの開口41のそれぞれを貫通し、おおよそ180°反転して配置される。筐体32に形成される2つの開口40と、ブロック36に形成される2つの開口41とは、全体として、筐体32の外部と内部を連通する貫通孔状の構成を有する。このように、帯状部材または紐状部材としての2つの帯状織布33,34のそれぞれは、筐体3の互いに隣接する2つの側面(側面8,10と側面9,11)の周囲長よりも長い。そして、一方の帯状織布33は、筐体3の4つの側面のうちの互いに隣接する2つの側面8,10に沿うように配置される。また、他方の帯状織布34も、筐体3の4つの側面のうちの2つの側面であって、前記一方の帯状織布33が配置されない側面9,11に沿うように配置される。2つの帯状織布33,34のそれぞれの他端は、2つの金属製のブロック42,43のそれぞれに固定される。また、テンション部材としての2つの引張ばね44,45のそれぞれが、2つの帯状織布33,34のそれぞれの他端と、筐体32に設けられる2つの金属製のブロック46,47のそれぞれに固定される。これにより、2つの引張ばね44,45のそれぞれは、2つの帯状織布33,34のそれぞれに張力を付与する。ブロック36と、2つのブロック42,43とはそれぞれ距離L1離れており、2つのブロック42,43は、それぞれ、ブロック36に接触するまで移動可能となっている。したがって、一方の帯状織布33は、隣接する2つの側面8,10の周囲長よりもおおよそL1だけ長くなっている。同様に、他方の帯状織布34も、隣接する2つの側面9,11の周囲長よりもおおよそL1だけ長くなっている。さらに、筐体32の内部には、2つの検出部48,49が設けられる。そして、2つの帯状織布33,34は、スリット状の開口39,40を貫通しているから、筐体32の側面の周囲長方向への移動が許容され、この周囲長方向に対して直角な方向への移動が規制される。これらの2つの検出部48,49は、2つのブロック42,43のそれぞれが、図5に示す所定の位置にあるかどうかを検出する。ここで、「所定の位置」とは、2つの帯状織布33,34のそれぞれが、筐体32の側面8,9,10,11に実質的に当接している状態であって、把手として機能しない状態におけるブロック42,43の位置をいうものとする。換言すると、2つの帯状織布33,34が、筐体32の内部に引き込まれている部分の長さが最大または最大に近い状態におけるブロック42,43のそれぞれの位置をいうものとする。2つの検出部48,49は、制御回路6に接続される。そして、2つの検出部48,49によるブロック42,43の位置の検出結果は、制御回路6に送信される。以上説明した形態では、筐体32の4つの側面8,9,10,11の全てに把手を構成することができる。
なお、前記第1の実施形態および図2においては、検出部が設けられない構成を示したが、第1の実施形態においても、第2の実施形態と同様の検出部が設けられる構成が適用できる。
また、前記第1の実施形態と同様に、2つの帯状部材または紐状部材は帯状織布に限定されず、各種帯状の部材や紐状の部材が適用できる。そして、2つの帯状部材または紐状部材のそれぞれの全部または一部が、ゴムなどの弾性変形可能材料により形成される構成であってもよい。
【実施例3】
【0013】
図6は、撮影部31を含む放射線撮影装置100の構成を模式的に示す図である。図7は、放射線撮影装置100におけるX線の照射可否を制御する一例を示すフローチャートである。図6に示すように、放射線撮影装置100は、撮影部31と、X線発生装置55と、外部装置51とを含んで構成される。そして、撮影部31と外部装置51とはケーブル7によって電気的に接続される。尚、本実施形態において、第2の実施形態と同一の部材には同一の記号を付すとともに、詳細な説明を省略する。
外部装置51は、電源52と、制御部53と、ディスプレイなどの画像表示器54とを含む。そして、被写体を挟んでX線発生装置55と撮影部31のX線検出部2とを対向させるように配置し、X線発生装置55が発生させたX線をX線検出部2に向けて照射する。撮影部31のX線検出部2で取得された画像データは、外部装置51の制御部53に送信され、画像表示器54に表示されて可視化される。これにより、画像を診断に使用できる。制御部53はX線発生装置55にも接続される。そして、制御部53は、撮影部31の撮影準備状態に応じて、X線発生装置55に対してX線照射の許可信号または不許可信号を送信することにより、X線発生装置55のX線照射を制御する。具体的な制御方法は、次のとおりである。
ステップS101において、2つの検出部48,49は、2つの帯状織布33,34に固定されたブロック42,43が所定の位置(図5に示される位置)にあるかどうかを検出する。すなわち、2つの検出部48,49のそれぞれは、2つの帯状織布33,34のそれぞれが、筐体32の各側面に実質的に当接した状態にあるかどうかを検出する。検出結果は制御回路6、ケーブル7を経由して制御部53に送信される。当接した状態であると検出された場合には、ステップS102において、制御部53は、X線発生装置55にX線照射の許可信号を送信する。そして、ステップS103において、X線発生装置55はX線を照射可能な状態に遷移する。一方、当接していない状態であると検出した場合には、ステップS104において、制御部53は、X線発生装置55にX線照射の不許可信号を送信する。そして、ステップS105において、X線発生装置55は、X線を照射不可能な状態に遷移する。以上説明した形態では、帯状部材または紐状部材としての2つの帯状織布33,34が誤って撮影領域に入り込み、2つの帯状織布33,34が意図せずに撮影されることを完全に防止できる。
【0014】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎない。本発明は、これらの実施形態によって技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明は、その技術思想またはその主要な特徴から逸脱することなく、さまざまな形で実施することができる。
【0015】
例えば、上述した各実施形態では、帯状部材または紐状部材として、帯状織布が適用される構成を示したが、各種紐や紐状の部材が適用される構成であってもよい。要は、帯状部材または紐状部材は、筐体の周囲に沿うように配置できる細長くフレキシブルな部材であればよい。さらに、帯状部材または紐状部材に張力を付与するテンション部材として、引張ばねが適用される構成を示したが、帯部材自体の一部または全てが弾性部材により形成される構成であってもよい。たとえば、弾性部材としては、ゴムなどが適用できる。また、帯状部材または紐状部材が当接する筐体の側面の一部分に、凹または凸形状が形成される構成であってもよい。このような構成であると、筐体の側面と帯状部材または紐状部材との間に隙間が形成されるため、帯状部材または紐状部材を掴みやすくなる。
【符号の説明】
【0016】
1,31:撮影部、2:X線検出部、3,32:筐体、14,33,34:帯状織布、12,13,35,36:ブロック、20,44,45:引張ばね、5:放射線撮影装置、100:放射線撮影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する放射線検出部と、前記放射線検出部を収納する筐体を有する放射線撮影装置であって、
フレキシブルで、前記筐体の隣接する2つ以上の側面の周囲長よりも長く、前記2つ以上の側面に沿うように配置される帯状部材または紐状部材と、
前記帯状部材または前記紐状部材が前記筐体の周囲長方向へ移動することを許容し、周囲長方向に対して直角な方向へ移動することを規制する位置規制部と、
前記帯状部材または前記紐状部材が前記筐体の前記側面に当接するように張力を付与するテンション部材と、
を有し、
前記位置規制部が前記筐体のコーナーに設けられることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記帯状部材または前記紐状部材の一部または全部が弾性変形可能であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
X線を照射するX線発生装置と、
前記帯状部材または紐状部材が前記筐体の前記側面に当接しているか否かを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記X線発生装置がX線を照射するか否かを制御する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105042(P2013−105042A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249010(P2011−249010)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】