説明

放射線撮影装置

【課題】放射線画像を取得できない状態が発生しないようにリセット処理を実行する。
【解決手段】放射線撮影装置(10A)は、放射線(16)の入射方向に沿って積層され、該放射線(16)を放射線画像に変換可能な2つの放射線変換パネル(28a、28b)と、2つの放射線変換パネル(28a、28b)に対して残像の発生を抑制するためのリセット処理を実行可能なリセット処理部(28c、30、32、40)と、2つの放射線変換パネル(28a、28b)に対するリセット処理を互いに異なる時間帯に実行するようにリセット処理部(28c、30、32、40)を制御するリセット制御部(45)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を放射線画像に変換可能な放射線変換パネルを有し、該放射線変換パネルに対して残像の発生を抑制するためのリセット処理を実行可能な放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を放射線画像に変換可能な放射線変換パネルを有する放射線撮影装置において、該放射線変換パネルに対してリセット処理を実行することにより、残像の発生を抑制することが、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
なお、放射線撮影装置で取得される放射線画像に対するアーチファクトとしての残像は、温度、駆動時間、バイアスの大きさ、放射線を出力する放射線源の管電圧の大きさによって、放射線変換パネルでの放射線検出に関する応答特性が変化することに起因して発生する。また、放射線を蛍光に変換した後に電荷に変換する間接変換型の放射線変換パネルでは、蛍光を電荷に変換する光電変換素子において、該光電変換素子を構成する半導体の不純物準位(欠陥)に一部の電荷が一旦捕捉され、次回の撮影で、捕捉された前記一部の電荷が、本来の画像情報に応じた電荷と共に出力されることにより、残像が前記画像情報と共に表示装置に表示されてしまう場合もある。さらに、暗電流に起因した電荷も残像の発生原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−5374号公報
【特許文献2】特開2010−246835号公報
【特許文献3】特開2011−66514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放射線撮影装置に対する放射線の照射が繰り返し行われる放射線撮影(動画撮影)においては、ある程度の撮影回数でリセット処理を実行しないと、前述した残像が放射線画像(動画像)に重畳する可能性がある。
【0006】
しかしながら、動画撮影のフレームレートが高くなって撮影間隔が短くなると、放射線の非照射時にリセット処理を実行することが困難となり、放射線の照射中にリセット処理を実行せざるを得ない。
【0007】
上述した特許文献1〜3のリセット処理は、いずれも、放射線変換パネルに蓄積された電荷を読み出してグランドに放出させるというものであり、このようなリセット処理が任意のフレームにおける放射線の照射中に実行されると、該フレームにおいて、所望の動画像を取得できなくなる。
【0008】
そのため、例えば、作業者が動画像を見ながら所定の作業を行う場合(例えば、医師が動画像を見ながら患者にカテーテルを挿入する手術を行う場合)に、任意のフレームにおける放射線の照射中にリセット処理が実行されると、次の動画像が取得されるまで、当該作業を中断せざるを得ない。
【0009】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、放射線画像を取得できない状態が発生しないようにリセット処理を実行することが可能となる放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線の入射方向に沿って積層され、該放射線を放射線画像に変換可能な2つの放射線変換パネルと、前記2つの放射線変換パネルに対して残像の発生を抑制するためのリセット処理を実行可能なリセット処理部と、前記2つの放射線変換パネルに対する前記リセット処理を互いに異なる時間帯に実行するように前記リセット処理部を制御するリセット制御部とを有することを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、前記2つの放射線変換パネルを用いて放射線撮影を行う場合に、前記2つの放射線変換パネルに対する前記リセット処理のタイミングをずらし、異なる時間帯で前記リセット処理をそれぞれ実行するようにしている。このように、本発明では、前記2つの放射線変換パネルに対して前記リセット処理を実行する時間帯が互いに重ならないように、前記リセット制御部が前記リセット処理部を制御する。これにより、一方の放射線変換パネルに対してリセット処理を実行しつつ、他方の放射線変換パネルで放射線画像を取得することが可能となる。この結果、前記リセット処理によって前記放射線画像が取得できない状態になることを回避することができる。
【0012】
ここで、前記放射線の照射が繰り返し行われることにより前記放射線画像としての動画像が取得される場合に、前記リセット制御部は、前記放射線の照射中、前記2つの放射線変換パネルに対する前記リセット処理の実行を禁止するか、又は、いずれか一方の放射線変換パネルに対する前記リセット処理を実行するように前記リセット処理部を制御すればよい。
【0013】
これにより、動画像のフレームレートが高くなっても、全てのフレームにおいて、少なくとも一方の放射線変換パネルで動画像を確実に取得することができる。つまり、本発明では、前記2つの放射線変換パネルに対する前記リセット処理を上述のように実行することで、画像欠落のフレームを含まない動画像を取得することができる。この結果、前記動画像を外部の表示装置等に表示すれば、該動画像を見ながら所定の作業を行っている作業者(例えば、前記動画像を見ながら患者にカテーテルを挿入する手術を行っている医師)は、前記作業を中断することなく、該作業を完遂することができる。
【0014】
具体的に、前記リセット制御部は、下記の[1]〜[3]のように、前記リセット処理部を制御すればよい。
【0015】
[1] 前記リセット制御部は、一方の放射線変換パネルに対する今回のリセット処理の開始時刻と次回のリセット処理の開始時刻との第1の間隔が、前記放射線を繰り返し照射するための所定の周期と1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射時間との合計時間よりも長くなるように、前記リセット処理部を制御すればよい。
【0016】
これにより、前記一方の放射線変換パネルで取得される動画像が有用な画像データである場合、前記第1の間隔を前記照射時間と前記周期との合計時間よりも長くすることにより、前記一方の放射線変換パネルにおける動画像の取得失敗が、2フレーム連続で発生しないようにすることができる。
【0017】
[2] 上記[1]の場合において、前記リセット制御部は、前記今回のリセット処理の開始時刻から他方の放射線変換パネルに対するリセット処理の開始時刻までの第2の間隔が、前記第1の間隔よりも短く且つ前記照射時間よりも長くなるように、前記リセット処理部を制御すればよい。
【0018】
このように、前記リセット制御部は、前記リセット処理部に対して、1回の放射線の照射中に、前記2つの放射線変換パネルの双方に対するリセット処理を実行させないように制御すると共に、前記一方の放射線変換パネルに対する前後の2つのリセット処理の間に、前記他方の放射線変換パネルに対するリセット処理を実行させるように制御する。これにより、前記2つの放射線変換パネルでの残像の発生を効果的に抑制すると共に、画像欠落のフレームが発生することを阻止することができる。
【0019】
[3] 上記[2]の場合において、前記リセット制御部は、前記第2の間隔が前記周期と等しくならないように、前記リセット処理部を制御すればよい。
【0020】
これにより、各フレームにおける放射線の照射中に、特定の放射線変換パネルのみに対してリセット処理が繰り返し実行され、該特定の放射線変換パネルでの動画像の取得ができなくなる事態を回避することが可能となる。
【0021】
このように、前記2つの放射線変換パネルに対するリセット処理のタイミングを、上記[1]〜[3]のように設定すれば、リセット処理のタイミングと、放射線の照射のタイミングとを同調させなくても、動画像が連続して取得できなくなる事態を回避しつつ、作業者が見やすい、残像が除去された動画像(放射線画像)を取得することができる。
【0022】
また、リセット処理のタイミングを上述のように設定すれば、リセット処理と放射線の照射とを同期させるための複雑な制御や該放射線の検知も不要となる。さらに、前記2つの放射線変換パネルが互いに特性の異なる放射線変換パネルであれば、その特性の違いに応じて、前記第1の間隔及び前記第2の間隔を予め設定しておくこともできる。
【0023】
そして、前記リセット制御部は、前記一方の放射線変換パネルに対するリセット処理のタイミングと、前記他方の放射線変換パネルに対するリセット処理のタイミングとを、下記の[A]又は[B]のようにずらすことが好ましい。
【0024】
[A] 前記リセット制御部は、一方の放射線変換パネルに対する今回のリセット処理の完了と次回のリセット処理の開始との間の時間帯に、他方の放射線変換パネルに対するリセット処理を実行するように、前記リセット処理部を制御することが好ましい。
【0025】
この場合、前記今回のリセット処理の開始時刻、該今回のリセット処理の所要時間、及び、前記次回のリセット処理の開始時刻が予め分かっていれば、前記リセット制御部は、前記他方の放射線変換パネルの挙動を監視することなく、タイマ又はリレー等を利用して、前記今回のリセット処理を開始してから所定時間(前記所要時間よりも長く、且つ、前記次回のリセット処理の開始時刻に到達する前の任意の時間)経過したときに、自動的に、前記他方の放射線変換パネルに対するリセット処理を開始するように前記リセット処理部を制御することも可能となる。
【0026】
[B] 前記リセット制御部は、一方の放射線変換パネルに対するリセット処理の開始及び終了を監視し、該一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が終了したことを確認した際に、他方の放射線変換パネルに対するリセット処理を実行するように、前記リセット処理部を制御することが好ましい。
【0027】
この場合、前記一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が終了すれば、該一方の放射線変換パネルは、動画像の取得が可能な状態に移行するので、該リセット処理の終了を確認した後に、前記他方の放射線変換パネルに対するリセット処理を開始することにより、任意のフレームでの動画像の欠落を回避することができる。
【0028】
また、前記リセット制御部は、下記の[C]のように、リセット処理のタイミングを設定してもよい。
【0029】
[C] すなわち、前記リセット制御部は、1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射前、又は、該放射線の照射が終了して前記2つの放射線変換パネルから動画像に応じた画像信号が出力された後に、前記2つの放射線変換パネルに対するリセット処理を実行するように、前記リセット処理部を制御してもよい。
【0030】
この場合には、前記放射線の照射の前後に、前記2つの放射線変換パネルに対するリセット処理がそれぞれ実行されるので、前記2つの放射線変換パネルは、それぞれ、全てのフレームにおいて、残像が除去された動画像を取得することができる。
【0031】
以上説明した動画撮影に関して、前記放射線撮影装置に備わる画像処理部、又は、外部の画像処理装置により、前記2つの放射線変換パネルで取得した動画像に応じた画像信号を加算すれば、高画質の動画像を形成することができる。この結果、作業者は、前記表示装置に表示された前記動画像を見ながら、所定の作業をスムーズに遂行することができる。
【0032】
また、前記画像処理部又は前記画像処理装置は、1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射中、いずれか一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が実行された場合には、該1フレームでの加算処理を行わない。
【0033】
これにより、前記リセット処理の対象となる残像を含んだ画像データが誤って加算処理に用いられることを回避することができる。従って、当該リセット処理が行われたフレームに関して、前記放射線撮影装置は、他方の放射線変換パネルで取得された動画像を1フレームの動画像として出力することになる。
【0034】
また、前記放射線撮影装置は、前記動画像に応じた画像信号を増幅可能な信号増幅部をさらに有し、前記信号増幅部は、1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射中、いずれか一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が実行された場合に、前記リセット処理が実行されなかった他方の放射線変換パネルから出力された画像信号を増幅すればよい。
【0035】
前記他方の放射線変換パネルから出力された画像信号の信号レベルは、加算処理を行った画像信号の信号レベルよりも小さい場合がある。そこで、該他方の放射線変換パネルから出力された画像信号を増幅すれば、片方の放射線変換パネルの画像信号しか得られないフレームであっても、作業者にとり見やすい動画像を前記表示装置に表示させることが可能となる。
【0036】
上記の各発明において、前記放射線撮影装置では、前記放射線の入射方向に沿って、第1の放射線変換パネルと第2の放射線変換パネルとが順に積層され、少なくとも一方の放射線変換パネルは、前記放射線を蛍光に変換するシンチレータと、前記蛍光を電荷に変換する光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであることが好ましい。
【0037】
この場合、前記第1の放射線変換パネルは、前記放射線を電荷に直接変換する放射線検出部と、該放射線検出部から電荷を取り出す電荷取出部とを有する直接変換型の放射線変換パネルであり、前記第2の放射線変換パネルは、前記第1の放射線変換パネルを透過した放射線を蛍光に変換する前記シンチレータと、前記蛍光を電荷に変換する前記光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであればよい。
【0038】
あるいは、前記第1の放射線変換パネルは、前記放射線を第1の蛍光に変換する第1のシンチレータと、前記第1の蛍光を電荷に変換する第1の光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであり、前記第2の放射線変換パネルは、前記第1の放射線変換パネルを透過した放射線を第2の蛍光に変換する第2のシンチレータと、前記第2の蛍光を電荷に変換する第2の光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであってもよい。
【0039】
そして、前記第1の放射線変換パネル及び前記第2の放射線変換パネルが上述したいずれの構成であっても、前記第2の放射線変換パネルのシンチレータで放射線から変換された蛍光が前記第1の放射線変換パネルに入射した場合に、該第1の放射線変換パネルは、入射した前記蛍光を電荷に変換可能に構成されていることが好ましい。
【0040】
これにより、前記第1の放射線変換パネルは、該第1の放射線変換パネルに照射された放射線を電荷に変換すると共に、前記第2の放射線変換パネルから入射した蛍光も電荷に変換する。この結果、前記第1の放射線変換パネルの感度を高めると共に、該第1の放射線変換パネルにおいて、より高画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0041】
また、前記光検出部は、前記蛍光を検出して電荷に変換する光検出素子を含み構成され、前記リセット処理部は、リセット光源又はバイアス電源であり、前記リセット光源から前記光検出素子にリセット光を照射することにより、又は、前記バイアス電源から前記光検出素子へのバイアスの供給を制御することにより、前記光検出素子に対するリセット処理が実行されることが好ましい。
【0042】
これにより、間接変換型の放射線変換パネルに対して好適なリセット処理を行うことができる。
【0043】
例えば、アモルファスシリコン(a−Si)からなるフォトダイオードが光検出素子である場合、蛍光(可視光)から変換された電荷(電子)の一部がa−Siの不純物準位(欠陥)に一旦捕捉され、その後、動画撮影のような長時間の撮影による前記フォトダイオードの温度上昇等に起因して前記電荷が再放出されると、暗電流等の不要な電流が発生し、放射線画像に対するノイズ(残像)の原因となる場合がある。
【0044】
そこで、前記フォトダイオードに前記リセット光を照射して、前記不純物準位に電荷を予め埋めておき、その後、放射線の照射時に可視光から変換された電荷が前記不純物準位に捕捉されないようにすることで、前記残像の発生を効果的に抑制することができる。
【0045】
また、上述の光検出素子がMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造のフォトダイオードである場合、前記バイアス電源は、前記フォトダイオードに供給するバイアスの極性を反転するか、又は、前記フォトダイオードへのバイアスの供給を停止することにより、前記フォトダイオードに対するリセット処理を実行することが好ましい。
【0046】
この場合には、前記リセット処理の終了後、次のフレームの動画を取得するために、前記バイアスの極性を元に戻すか、又は、前記バイアスの供給を再開する処理が必要となるため、前記フォトダイオードが安定した動作状態に復帰するまで多少の時間はかかるが、残像を確実に消去することができる。
【0047】
さらに、上記の各発明において、前記2つの放射線変換パネルは、前記放射線を電荷に変換して蓄積する行列状に配置された複数の画素を有し、前記リセット処理部は、前記電荷の蓄積が可能な蓄積状態、又は、蓄積された前記電荷を読み出し可能な読出状態に前記各画素を切り換える駆動回路部と、読出状態の画素から電荷を読み出す読出回路部とであり、前記駆動回路部により前記各画素を前記読出状態に切り換え、前記読出回路部により前記各画素に蓄積された電荷を読み出してグランドに放出させることで、前記各画素に対するリセット処理が実行されてもよい。
【0048】
このように、前記各画素に蓄積された電荷を読み出して前記グランドに放出するリセット処理を実行する場合でも、該各画素における残像の発生を効果的に抑制することができる。
【0049】
このように、本発明では、(1)各画素(光検出素子)に対するリセット光の照射、(2)各光検出素子に供給されるバイアスの極性の反転、又は、バイアスの供給停止、(3)各画素に蓄積された電荷のグランドへの放出、の3種類のリセット処理のうち、少なくとも1つの処理を行えば、残像の発生を効率よく抑制することができる。なお、本発明では、前記放射線撮影装置の構成や状態等に応じて、1種類のリセット処理のみ実行したり、又は、複数の種類のリセット処理を使い分けて実行してもよいことは勿論である。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、2つの放射線変換パネルを用いて放射線撮影を行う場合に、前記2つの放射線変換パネルに対するリセット処理のタイミングをずらし、異なる時間帯で前記リセット処理をそれぞれ実行するようにしている。このように、本発明では、前記2つの放射線変換パネルに対して前記リセット処理を実行する時間帯が互いに重ならないように、リセット制御部がリセット処理部を制御する。これにより、一方の放射線変換パネルに対してリセット処理を実行しつつ、他方の放射線変換パネルで放射線画像を取得することが可能となる。この結果、前記リセット処理によって放射線画像が取得できない状態になることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態に係る放射線撮影装置を有する放射線撮影システムの構成図である。
【図2】図1の放射線撮影装置の模式的な回路構成図である。
【図3】図2の放射線検出器における電気的接続を模式的に示す斜視図である。
【図4】第1の放射線変換パネルの1画素分の電気的接続を示す回路図である。
【図5】第2の放射線変換パネル(又は第1の放射線変換パネル)の1画素分の電気的接続を示す回路図である。
【図6】図1の放射線検出器の概略構成を示す説明図である。
【図7】図6の放射線検出器の1画素分(第1の放射線変換パネルの1画素分及び第2の放射線変換パネルの1画素分)の構成を模式的に示した説明図である。
【図8】図7の1画素分の構成に対する放射線の照射を模式的に示した説明図である。
【図9】図7の1画素分の構成に対する放射線の照射を模式的に示した説明図である。
【図10】図7の1画素分の構成に対する放射線の照射を模式的に示した説明図である。
【図11】放射線の照射、放射線変換パネルでの放射線画像の取得、及び、放射線変換パネルに対するリセット処理の実行を示すタイムチャートである。
【図12】図12Aは、暗電流と温度との関係を示すグラフであり、図12Bは、図11のリセット処理の間隔と温度との間隔を示すグラフである。
【図13】放射線の照射、放射線変換パネルでの放射線画像の取得、及び、放射線変換パネルに対するリセット処理の実行を示すタイムチャートである。
【図14】放射線の照射、放射線変換パネルでの放射線画像の取得、及び、放射線変換パネルに対するリセット処理の実行を示すタイムチャートである。
【図15】第2実施形態に係る放射線撮影装置を有する放射線撮影システムの構成図である。
【図16】図15の放射線検出器の概略構成を示す説明図である。
【図17】図16の放射線検出器の1画素分の構成を模式的に示した説明図である。
【図18】図17の1画素分の構成に対する放射線の照射を模式的に示した説明図である。
【図19】図17の1画素分の構成に対する放射線の照射を模式的に示した説明図である。
【図20】図17の1画素分の構成に対する放射線の照射を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明に係る放射線撮影装置について、好適な実施形態(第1及び第2実施形態)を、図1〜図20を参照しながら以下詳細に説明する。
【0053】
[第1実施形態の構成]
第1実施形態に係る放射線撮影装置10Aを具備する放射線撮影システム12Aは、図1に示すように、被写体14に対して放射線16を照射する放射線出力装置18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する放射線撮影装置10Aと、放射線撮影装置10A及び放射線出力装置18を制御するコンソール20と、放射線画像を表示する表示装置22とを備える。
【0054】
コンソール20と放射線撮影装置10A、放射線出力装置18及び表示装置22との間では、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.60.a/b/g/n等の無線LAN(Local Area Network)、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよいことは勿論である。
【0055】
コンソール20には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)24が接続されている。RIS24には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)26が接続されている。
【0056】
第1実施形態に係る放射線撮影装置10Aは、例えば、図示しない撮影台と被写体14との間に配置され、被写体14を透過した放射線16を放射線画像に変換する放射線検出器28を該放射線16を透過可能な筐体内に収容した可搬型の電子カセッテである。
【0057】
放射線撮影装置10Aは、前述した放射線検出器28と、駆動回路部30を介して放射線検出器28を制御すると共に、放射線検出器28から読出回路部32を介して放射線画像に応じた画像信号(電荷信号、電気信号)を読み出すカセッテ制御部34と、コンソール20との間で信号の送受信を行う通信部36と、放射線撮影装置10A内の各部に電力を供給するバッテリ38とを筐体内に収容している。
【0058】
放射線検出器28は、放射線16の入射方向に沿って、第1の放射線変換パネル(一方の放射線変換パネル)28a、第2の放射線変換パネル(他方の放射線変換パネル)28b、及び、リセット光源28cを順に積層して構成される。なお、第1実施形態において、リセット光源28cは、必須ではなく、従って、放射線検出器28は、第1の放射線変換パネル28a及び第2の放射線変換パネル28bとの積層構造を採用することも可能ではあるが、以下の説明では、主として、リセット光源28cを含めた積層構造について説明する。
【0059】
第1の放射線変換パネル28aは、主として放射線16の低エネルギー成分を吸収し、吸収したエネルギー成分を電荷に直接変換することにより、該電荷に応じた第1の放射線画像(動画又は静止画)を形成する直接変換型の放射線変換パネルである。第2の放射線変換パネル28bは、主として放射線16の高エネルギー成分を吸収し、吸収したエネルギー成分を蛍光に一旦変換して、変換した蛍光を電荷に変換することにより、該電荷に応じた第2の放射線画像(動画)を形成する間接変換型の放射線変換パネルである。リセット光源28cは、カセッテ制御部34の制御に従って、第2の放射線変換パネル28bにリセット光を照射することにより、残像の発生を抑制するためのリセット処理を実行する。
【0060】
なお、放射線16の低エネルギー成分とは、放射線出力装置18を構成する放射線源の管電圧が比較的低電圧である場合での該低電圧に応じた放射線16のエネルギー成分であり、被写体14のマンモ、軟部組織又は腫瘍等に吸収されやすい。また、放射線16の高エネルギー成分とは、放射線源の管電圧が比較的高電圧である場合での該高電圧に応じた放射線16のエネルギー成分であり、被写体14の骨部等に吸収されやすい。
【0061】
また、放射線撮影装置10Aには、第1の放射線変換パネル28aにおいて変換された電荷を取り出すために必要な直流電圧を第1の放射線変換パネル28aに供給する電圧供給部42や、第2の放射線変換パネル28bにおいて蛍光を電荷に変換するために必要なバイアス電圧(直流電圧)を第2の放射線変換パネル28bに供給するバイアス電源40も設けられている。
【0062】
カセッテ制御部34は、放射線検出器28に対する放射線画像の読み出しを指示するためのアドレス信号を駆動回路部30に供給するアドレス信号発生部44と、駆動回路部30の制御によって放射線検出器28から読出回路部32を介して読み出された放射線画像を記憶する画像メモリ46と、放射線撮影装置10Aを特定するためのカセッテID情報を記憶するカセッテIDメモリ48とを有する。
【0063】
また、カセッテ制御部34は、リセット制御部45及び画像処理部47をさらに有する。リセット制御部45は、リセット光源28cを制御するか、バイアス電源40を制御するか、又は、アドレス信号発生部44を介して駆動回路部30及び読出回路部32を制御することにより、第1の放射線変換パネル28a又は第2の放射線変換パネル28bに対する所定のリセット処理を実行させる。従って、リセット光源28c、駆動回路部30、読出回路部32及びバイアス電源40が、第1の放射線変換パネル28a又は第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を実行可能なリセット処理部として機能する。リセット処理の詳細については後述する。一方、画像処理部47は、放射線検出器28から読出回路部32を介して読み出された、第1の放射線変換パネル28aの放射線画像と第2の放射線変換パネル28bの放射線画像とに対して、加算処理等の所定の画像処理を施す。
【0064】
コンソール(画像処理装置)20は、通信部50、制御処理部52、オーダ情報記憶部54、撮影条件記憶部56、画像処理部58及び画像メモリ60を有する。
【0065】
通信部50は、通信部36や、放射線出力装置18、表示装置22及びRIS24との間で信号の送受信を行う。制御処理部52は、コンソール20内の各部を制御するための所定の制御処理を実行する。オーダ情報記憶部54は、被写体14に対する放射線画像の撮影(放射線撮影)を要求するためのオーダ情報を記憶する。撮影条件記憶部56は、被写体14に放射線16を照射させるための撮影条件等を記憶する。画像処理部58は、通信部50が通信部36から受信した放射線画像に対して所定の画像処理(例えば、画像処理部47での加算処理と同様の加算処理)を施す。画像メモリ60は、画像処理部58において画像処理が施された放射線画像等を記憶する。
【0066】
なお、オーダ情報とは、RIS24又はHIS26において、医師により作成されるものであり、被写体14の氏名、年齢、性別等、被写体14を特定するための被写体情報に加えて、放射線画像の撮影に使用する放射線出力装置18及び放射線撮影装置10Aの情報や、被写体14の撮影部位及び撮影方法等が含まれる。また、撮影条件とは、例えば、放射線源の管電圧や管電流、放射線16の曝射時間等、被写体14の撮影部位に対して放射線16を照射させるために必要な各種の条件である。
【0067】
図2は、放射線撮影装置10Aを構成する放射線検出器28等の模式的な回路構成図である。
【0068】
放射線検出器28は、前述のように、放射線16(図1参照)の入射方向に沿って第1の放射線変換パネル28a、第2の放射線変換パネル28b及びリセット光源28cが順に積層された積層構造である。また、放射線検出器28は、図2の平面視では、複数の画素62(62a、62b)がマトリックス状に配列された構造となっている。
【0069】
この場合、各画素62は、それぞれ、放射線16の入射方向に沿って、第1の放射線変換パネル28aの一部分(画素62a)と、第2の放射線変換パネル28bの一部分(画素62b)と、リセット光源28cの一部分とを含み構成されている(図1参照)。すなわち、第1の放射線変換パネル28aは、マトリックス状に配列された複数の画素62aを有し、第2の放射線変換パネル28bは、マトリックス状に配列された複数の画素62bを有する。従って、画素62aは、放射線16の低エネルギー成分を電荷に直接変換し、画素62bは、放射線16の高エネルギー成分を蛍光に一旦変換した後に電荷に変換する。リセット光源28cは、各画素62bにリセット光を照射することにより、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を実行する。
【0070】
また、放射線検出器28(の各放射線変換パネル28a、28b)では、行方向と平行に複数のゲート線64a、64bが延びると共に、列方向と平行に複数の信号線66a、66bが延びている。各ゲート線64a、64bは駆動回路部30に接続され、各信号線66a、66bは読出回路部32に接続されている。
【0071】
図2では、説明の容易化のために、ゲート線64aとゲート線64bとが重ならないように図示すると共に、信号線66aと信号線66bとが重ならないように図示しているが、実際には、図3に示すように、画素62aと画素62b、ゲート線64aとゲート線64b、信号線66aと信号線66bは、互いに重なり合った状態で配置されている。
【0072】
具体的に、第1の放射線変換パネル28aでは、行方向に配置された各画素62aに対して、該各画素62aの薄膜トランジスタ(TFT)82a(図4参照)に接続される1本のゲート線64aが配設されると共に、列方向に配置された各画素62aに対して、該各画素62aのTFT82aに接続される1本の信号線66aが配設されている。従って、行列状に複数の画素62aが配置された第1の放射線変換パネル28aには、行数分のゲート線64aと列数分の信号線66aとが配設されている。
【0073】
第2の放射線変換パネル28bについても、第1の放射線変換パネル28aと同様に、行方向に配置された各画素62bに対して、該各画素62bのTFT82b(図5参照)に接続される1本のゲート線64bが配設されると共に、列方向に配置された各画素62bに対して、該各画素62bのTFT82bに接続される1本の信号線66bが配設されている。そのため、第2の放射線変換パネル28bにおいても、行数分のゲート線64bと列数分の信号線66bとが配設されている。
【0074】
図4及び図5は、1つの画素62a、62bに対する電気的接続をそれぞれ図示したものである。図4及び図5は、画素62a、62bの内部構成が異なる点以外は、概ね同じ構成である。
【0075】
図4において、画素62aは、第1の放射線検出部72aとTFT82aとを有する。第1の放射線検出部72aは、アモルファスセレン(a−Se)からなる半導体を含み構成され、電圧供給部42とTFT82aとにそれぞれ接続されている。画素62aに放射線16が入射された場合、第1の放射線検出部72aを構成するa−Seの半導体は、入射した放射線16を電荷に直接変換して蓄積する。蓄積された電荷は、電圧供給部42から第1の放射線検出部72aへの直流電圧の供給に起因してTFT82a側に取り出すことができる。
【0076】
カセッテ制御部34(図1及び図2参照)のアドレス信号発生部44から駆動回路部30にアドレス信号が供給されると、駆動回路部30からゲート線64aに対して、行方向に配列されたTFT82aをオンオフ制御する制御信号が供給される。TFT82aのオンにより、TFT82aに接続された第1の放射線検出部72aに保持されている電荷がTFT82a及び信号線66aを介して電荷信号として読出回路部32に流出する。
【0077】
読出回路部32は、チャージアンプ110aと、A/D変換器112aとを有する。チャージアンプ110aは、オペアンプ116aと、コンデンサ118aと、スイッチ120aとで構成されている。チャージアンプ110aは、スイッチ120aがオフの場合に、オペアンプ116aに入力された電荷信号を電圧信号に変換し、予め設定されたゲイン、又は、リセット制御部45によって設定されたゲインで電圧信号を増幅し出力する。出力された電圧信号は、A/D変換器112aでA/D変換されてカセッテ制御部34に供給される。
【0078】
ところで、リセット制御部45は、アドレス信号発生部44を介して駆動回路部30及び読出回路部32を制御することにより、第1の放射線変換パネル28aに対するリセット処理を実行させることができる。以下の説明では、リセット制御部45による駆動回路部30及び読出回路部32の制御に起因して実行されるリセット処理を、便宜的に、電気リセット処理ともいう。
【0079】
具体的に、第1の放射線変換パネル28aに対する電気リセット処理を実行させる場合、リセット制御部45は、アドレス信号発生部44を制御して駆動回路部30にリセット処理の開始を指示するアドレス信号を供給させることにより、駆動回路部30からゲート線64aに制御信号を供給させてTFT82aをオンさせる。また、リセット制御部45は、アドレス信号発生部44を介して読出回路部32を構成するチャージアンプ110aのスイッチ120aもオンさせる。
【0080】
これにより、コンデンサ118aに蓄積された電荷は、コンデンサ118aとスイッチ120aとの閉回路により放電されると共に、画素62a(を構成する第1の放射線検出部72aの半導体)に蓄積された電荷は、TFT82a、スイッチ120a及びオペアンプ116aを介してグランドに放出される。
【0081】
すなわち、温度、駆動時間、直流電圧の大きさ、放射線16を出力する放射線源の管電圧の大きさによって、第1の放射線変換パネル28aでの放射線検出に関する応答特性が変化することに起因して、第1の放射線画像に対するアーチファクトとして残像が発生する場合がある。放射線16が画素62aに照射されていない状態にあっても、画素62aには、暗電流に起因する電荷が蓄積され、残像の発生の原因ともなる。
【0082】
そこで、リセット制御部45の制御によってTFT82a及びスイッチ120aをそれぞれオンにし、残像の発生の原因となる電荷をグランドに放出させることにより、該画素62aに対して残像の発生を抑制するための電気リセット処理を行うことができる。なお、電気リセット処理では、画素62aに蓄積された電荷に応じた電圧信号は、A/D変換器112aに出力されずに捨てられることになる。つまり、電気リセット処理により読出回路部32に読み出された電荷信号は、放射線画像を示す画像信号としてカセッテ制御部34に出力されることはない。
【0083】
一方、図5において、画素62bは、第2の放射線検出部72b(図6及び図7参照)であるシンチレータと、フォトダイオード(光検出素子)86bと、TFT82bとを有する。フォトダイオード86bは、アモルファスシリコン(a−Si)等の半導体を含み構成され、バイアス電源40とTFT82bとにそれぞれ接続されている。画素62bに放射線16が入射された場合、画素62bのシンチレータは、放射線16を蛍光に変換し、フォトダイオード86bは、蛍光を電荷に変換して蓄積する。蓄積された電荷は、バイアス電源40からフォトダイオード86bへのバイアス電圧の供給に起因して、TFT82b側に取り出すことができる。
【0084】
アドレス信号発生部44(図1参照)から駆動回路部30へのアドレス信号の供給に起因して、駆動回路部30からゲート線64bに対し、行方向に配列されたTFT82bをオンオフ制御する制御信号が供給されると、TFT82bがオンし、TFT82bに接続されたフォトダイオード86bの電荷が、TFT82b及び信号線66bを介して読出回路部32に流出する。
【0085】
読出回路部32は、チャージアンプ110bと、A/D変換器112bとをさらに有する。チャージアンプ110bは、チャージアンプ110aと同様に、オペアンプ116bと、コンデンサ118bと、スイッチ120bとで構成されている。従って、チャージアンプ110bは、スイッチ120bがオフの場合に、オペアンプ116bに入力された電荷信号を電圧信号に変換し、予め設定されたゲイン、又は、リセット制御部45によって設定されたゲインで電圧信号を増幅し出力する。出力された電圧信号は、A/D変換器112bでA/D変換されてカセッテ制御部34に供給される。
【0086】
また、第1の放射線変換パネル28aの場合と同様に、第2の放射線変換パネル28bに対しても、電気リセット処理を実行することができる。
【0087】
この場合、リセット制御部45は、アドレス信号発生部44を制御して駆動回路部30にリセット処理の開始を指示するアドレス信号を供給させることにより、駆動回路部30からゲート線64bに制御信号を供給させてTFT82bをオンさせると共に、アドレス信号発生部44を介してチャージアンプ110bのスイッチ120bもオンさせる。
【0088】
この結果、コンデンサ118bに蓄積された電荷は、コンデンサ118bとスイッチ120bとの閉回路により放電されると共に、画素62bを構成するフォトダイオード86bに蓄積された電荷は、TFT82b、スイッチ120b及びオペアンプ116bを介してグランドに放出される。
【0089】
すなわち、第2の放射線変換パネル28bにおいても、温度、駆動時間、バイアス電圧の大きさ、放射線16を出力する放射線源の管電圧の大きさによって、第2の放射線変換パネル28bでの放射線検出に関する応答特性が変化することに起因して、第2の放射線画像に対するアーチファクトとして残像が発生する場合がある。また、フォトダイオード86bを構成する半導体(例えば、a−Si)の不純物準位(欠陥)に一部の電荷が一旦捕捉され、次回の撮影で、捕捉された一部の電荷が、本来の画像情報に応じた電荷と共に出力されることにより、残像として画像情報と共に表示装置22に表示されてしまう場合もある。さらに、放射線16が画素62bに照射されていない状態では、画素62bには、暗電流に起因した電荷が蓄積され、残像の発生の原因ともなる。
【0090】
そこで、リセット制御部45の制御によってTFT82b及びスイッチ120bをそれぞれオンにし、残像の発生の原因となる電荷をグランドに放出させることにより、該画素62bに対しても、残像の発生を抑制するための電気リセット処理を行うことができる。なお、第2の放射線変換パネル28bに対する電気リセット処理においても、画素62bに蓄積された電荷に応じた電圧信号は、A/D変換器112bに出力されずに捨てられることになり、放射線画像を示す画像信号としてカセッテ制御部34に出力されることはない。
【0091】
ところで、フォトダイオード86bが、MIS構造のフォトダイオードである場合、リセット制御部45は、バイアス電源40を制御してフォトダイオード86bに対するリセット処理を実行させることもできる。以下の説明では、リセット制御部45によるバイアス電源40の制御に起因して実行されるリセット処理を、便宜的に、バイアスリセット処理ともいう。
【0092】
バイアスリセット処理において、リセット制御部45は、バイアス電源40からMIS構造のフォトダイオード86bに供給されるバイアス電圧の極性を反転させるか、又は、該フォトダイオード86bへのバイアス電圧の供給を停止させることにより、該フォトダイオード86bに蓄積された電荷を消滅させるか、又は、放出させる。従って、バイアスリセット処理の終了後、リセット制御部45は、バイアス電源40からフォトダイオード86bに供給されるバイアス電圧の極性を元に戻すか、又は、バイアス電圧の供給を再開させる必要がある。なお、このバイアスリセット処理においても、リセット制御部45は、読出回路部32を介してカセッテ制御部34に電圧信号が出力されないように制御する。
【0093】
図4及び図5では、1つの画素62a、62bでの電荷の蓄積及び読み出しと、1つの画素62a、62bに対する電気リセット処理と、1つの画素62bに対するバイアスリセット処理とについて説明した。
【0094】
放射線変換パネル28a、28bは、実際には、図2及び図3に示すように、複数の画素62a、62bが行列状に配置されているため、上述した電荷の蓄積及び読み出しと、電気リセット処理とを、1回のリセット処理において、(1)第1の放射線変換パネル28aの全ての画素62aを対象として行うか、(2)第1の放射線変換パネル28aの一部の(特定の)画素62aを対象として行うか、(3)第2の放射線変換パネル28bの全ての画素62bを対象として行うか、及び/又は、(4)第2の放射線変換パネル28bの一部の(特定の)画素62bを対象として行う。
【0095】
電気リセット処理の場合には、例えば、下記のようにしてリセット処理を行うことが可能である。すなわち、駆動回路部30及び読出回路部32によるTFT82a、82bのオンオフ制御(各行に対するライン制御)により、各画素62a、62bは、蓄積状態と読出状態とに切り換わることが可能である。そこで、リセット制御部45は、1回の電気リセット処理において、下記(1)〜(5)のようにリセット処理を行えばよい。
【0096】
(1)リセット制御部45は、全てのTFT82a、82bをオンにすることにより、全ての画素62a、62bに対して電気リセット処理を一斉に行えばよい。
【0097】
(2)リセット制御部45は、行毎にTFT82a、82bを順次オンにして、画素62a、62bに対する電気リセット処理を行毎に順次行えばよい。
【0098】
(3)リセット制御部45は、インターレース方式により、奇数行毎又は偶数行毎にTFT82a、82bを順次オンにして、画素62a、62bに対する電気リセット処理を奇数行毎又は偶数行毎に順次行えばよい。
【0099】
(4)1以上のラインの画素62a、62b(図2及び図3の場合は1以上の行の画素62a、62b)をまとめて1つの領域を形成し、このような領域を前記ラインと直交する方向に複数配置する。そして、リセット制御部45は、それぞれの領域(の画素62a、62b)に対する電気リセット処理を領域毎に順次行えばよい。
【0100】
(5)上記(4)で説明した複数の領域について、リセット制御部45は、インターレース方式により、奇数番の領域毎又は偶数番の領域毎に、それぞれの領域(の画素62a、62b)に対する電気リセット処理を順次行えばよい。
【0101】
なお、以下の説明では、特に断りがない限り、電気リセット処理については、上記(1)又は(2)の方式により行うものとして説明する。
【0102】
一方で、バイアスリセット処理と、後述する光リセット処理とについては、全ての画素62a、又は、全ての画素62bを対象として、一斉にリセット処理を行うものとして説明する。
【0103】
図6は、放射線検出器28の積層構造を模式的に図示したものである。すなわち、図6は、放射線16の入射方向に沿って、表面読取方式としてのISS(Irradiation Side Sampling)方式の直接変換型の第1の放射線変換パネル28a、裏面読取方式としてのPSS(Penetration Side Sampling)方式の間接変換型の第2の放射線変換パネル28b、及び、リセット光源28cを順に積層した構成を図示したものである。
【0104】
第1の放射線変換パネル28aは、放射線16の入射方向に沿って、絶縁性基板68aと、第1の電荷検出部(電荷取出部)70aと、第1の放射線検出部72aとを順に積層して構成されている。また、第2の放射線変換パネル28bは、第1の放射線変換パネル28aに向かって(図6の下方向から上方向に向かって)絶縁性基板68bと、第2の電荷検出部(第2の光検出部)70bと、第2の放射線検出部72bとを順に積層して構成されている。
【0105】
絶縁性基板68aは、第1の放射線検出部72a及び第2の放射線検出部72bにおいて放射線16を吸収させるため、放射線16の吸収性が低く、且つ、可撓性を有する電気絶縁性の薄厚の基板(数十μm程度の厚みを有する基板)、具体的には、合成樹脂、アラミド、バイオナノファイバ、あるいは、ロール状に巻き取ることが可能なフイルム状ガラス(超薄板ガラス)等であることが好ましい。
【0106】
第1の放射線検出部72aは、a−Seからなる半導体層74aと、該半導体層74aの第1の電荷検出部70a側の一面に複数形成された画素電極76aと、半導体層74aの他面を全体的に覆うように形成された共通電極78aとから構成される。
【0107】
画素電極76aは、各画素62(62a)毎に形成されており、放射線16に対する吸収性が低く、且つ、a−Seとの間でエレクトロマイグレーションが発生しないような導電性材料(例えば、Au)からなることが好ましい。a−Seの半導体層74aは、放射線16が入射すると、該放射線16の低エネルギー成分を吸収して電荷に変換する。共通電極78aは、第2の放射線検出部72bにおいて放射線16の高エネルギー成分を検出させる一方で、後述するように、第2の放射線変換パネル28bで放射線16から変換された蛍光のうち、少なくともa−Seの感度波長領域の光(例えば、青色波長領域の光)を透過させるために、放射線16の吸収性が低く、a−Seとの間でエレクトロマイグレーションが発生せず、且つ、該感度波長領域の光を透過可能な導電性材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)からなることが好ましい。
【0108】
なお、画素電極76a及び共通電極78aを形成する場合、形成温度によっては、a−Seが結晶化するおそれがある。従って、a−Seの結晶化を抑制するためには、できる限り低温で画素電極76a及び共通電極78aを形成する必要がある。そこで、画素電極76a及び共通電極78aは、塗布、ロールツーロール、インクジェット等により、金属フィラーを含む有機膜や有機導電体として形成されることが望ましい。
【0109】
第1の電荷検出部70aは、前述したTFT82a(図4及び図7参照)を含み構成され、半導体層74aで発生した電荷を各画素電極76aを介して各画素62a毎に取り出し、取り出した電荷を電気信号(アナログ信号)として信号線66a(図2〜図4参照)を介し読出回路部32に出力する。また、第1の電荷検出部70aは、第1の放射線検出部72a等において放射線16を検出させるため、放射線16の吸収性が低い材料からなることが好ましい。さらに、TFT82aには、ゲート線64a及び信号線66aが接続されるため、これらのゲート線64a及び信号線66aについても、放射線16の吸収性が低く、且つ、低抵抗の導電性材料(例えば、Al)からなることが好ましい。
【0110】
第2の放射線検出部72bは、入射した放射線16の高エネルギー成分を蛍光に変換するシンチレータからなる。シンチレータとしては、a−Seの感度波長領域の光や、第2の電荷検出部70bで吸収可能な波長領域の光(a−Seの感度波長領域の光よりも長波長の光)を発生できるような、比較的広範囲の波長領域を有した蛍光を発生するシンチレータが望ましい。このようなシンチレータとしては、CsI:Na、CaWO、YTaO:Nb、BaFX:Eu(XはBr又はCl)、又は、LaOBr:Tm等があり、特に、CsI:Naがより好ましい。
【0111】
第2の電荷検出部70bは、TFT82b(図5及び図7参照)やフォトダイオード86bを含み構成され、該シンチレータで変換された蛍光を電荷に変換し、変換した電荷を電気信号として信号線66bを介し読出回路部32に出力する。なお、放射線16の低エネルギー成分がa−Seの半導体層74aで吸収されて電荷に変換されると共に、放射線16の高エネルギー成分が第2の放射線検出部72bのシンチレータで吸収されて蛍光に変換されるため、第2の電荷検出部70bのTFT82b及びフォトダイオード86bについては、放射線16の吸収性が低い材料を用いなくてもよい。また、TFT82bに接続されるゲート線64b及び信号線66bについても、放射線16の吸収性が低い導電性材料を用いなくてもよい。
【0112】
さらに、放射線16が到達する可能性の低い第2の電荷検出部70bについては、前述したTFT82bとフォトダイオード86bとの組み合わせに代えて、放射線16に対する耐性が低い、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の他の撮影素子とTFT82bとを組み合わせてもよい。また、TFT82bで言うところのゲート信号に相当するシフトパルスにより電荷をシフトしながら転送するCCD(Charge−Coupled Device)イメージセンサに置き換えることも可能である。
【0113】
絶縁性基板68bは、可撓性を有する電気絶縁性の薄厚の基板であって、且つ、後述するリセット光源28cからのリセット光122cを透過可能であるか、又は、該リセット光122cに対する吸収性や遮光性が低い材料からなることが好ましい。例えば、前述した絶縁性基板68aと同じ材質で絶縁性基板68bを構成してもよい。なお、放射線16が絶縁性基板68bにまで到達する可能性は低いため、該絶縁性基板68bは、放射線16に対する吸収性が低い材料を用いなくてもよい。
【0114】
リセット光源28cは、エッジライト方式のバックライト光源であり、絶縁性基板68bの底面に導光板124cを配置し、放射線16の非照射領域である導光板124cの側部に冷陰極管126cを配置している。導光板124cと絶縁性基板68bとの間には、第2の電荷検出部70bと対向するように拡散シート128cが介挿されている。リセット光源28cにおける拡散シート128cの箇所以外の外表面には、導光板124c及び冷陰極管126cを囲繞するように反射シート130cも配置されている。
【0115】
ここで、リセット制御部45の制御により冷陰極管126cが駆動して、該冷陰極管126cから導光板124cに光が入射すると、導光板124cに入射した前記光は、該導光板124c内部で拡散シート128c及び反射シート130cとの間で表面反射を繰り返した後、該拡散シート128cから絶縁性基板68bにリセット光122cとして出射される。
【0116】
図6では、1本のリセット光122cのみ図示されているが、実際に冷陰極管126cから導光板124cに入射した光は、表面反射を繰り返して導光板124c全体に広がり、拡散シート128cから面発光のリセット光122cとして出射される。従って、バックライト方式のリセット光源28cは、面発光光源として機能し、絶縁性基板68bを介して第2の電荷検出部70bに均一にリセット光122cを照射することになる。これにより、第2の電荷検出部70bを構成する各画素62bのフォトダイオード86bに対して、残像の発生を抑制するためのリセット処理を行うことができる。なお、以下の説明では、リセット制御部45によるリセット光源28cの制御に起因して実行されるリセット処理を、便宜的に、光リセット処理ともいう。
【0117】
前述のように、例えば、a−Si等からなるフォトダイオード86bの場合、蛍光から変換された電荷(電子)の一部がa−Siの不純物準位(欠陥)に一旦捕捉され、その後、動画撮影のように、長時間の撮影によるフォトダイオード86bの温度上昇等に起因して電荷が再放出されると、暗電流等の不要な電流が発生し、放射線画像に対する残像の原因となる場合がある。
【0118】
そこで、光リセット処理を行って、フォトダイオード86bにリセット光122cを照射することにより、不純物準位に電荷を予め埋めておいて、その後、放射線16の照射時に蛍光から変換された電荷が不純物準位に捕捉されないようにすれば、残像の発生を効果的に抑制することができる。
【0119】
なお、図6では、一例として、エッジライト方式のバックライト光源で構成されるリセット光源28cを図示した。リセット光源28cは、これに限定されるものではなく、行列状に配置された画素62bのフォトダイオード86bに対して、確実にリセット光122cを照射して、光リセット処理を実行できるものであればよい。従って、絶縁性基板68bの底面に、第2の電荷検出部70bと対向するように、発光素子のアレイ又はエレクトロルミネッセンス光源を配置することで、リセット光源28cを構成してもよい。
【0120】
図7は、図6の放射線検出器28について、1つの画素62(画素62a、62b)に拡大して模式的に図示したものである。
【0121】
上述のように、1つの画素62は、第1の放射線変換パネル28aの一部分を含む画素62aと、第2の放射線変換パネル28bの一部分を含む画素62bと、リセット光源28cの一部分とから構成されている。
【0122】
具体的に、1つの画素62aには、第1の放射線検出部72aを構成する1つの画素電極76aが割り当てられている。
【0123】
また、第1の電荷検出部70aは、絶縁性基板68aの第1の放射線検出部72a側の表面に配設されたTFT82aのアレイを有し、1つの画素62に対して1つのTFT82aが割り当てられている。この場合、絶縁性基板68aにTFT82aのアレイを形成すると、該絶縁性基板68aの第1の放射線検出部72a側は凹凸状となるので、例えば、四フッ化エチレン樹脂膜による平坦化処理を施して平坦化膜84aを形成しておくことが望ましい。
【0124】
ゲート線64a及び信号線66a(図2〜図4参照)に接続されるTFT82aは、TFTアレイでの放射線16の吸収を抑制するために、a−Si、アモルファス酸化物(例えば、a−IGZO(InGaZnO))、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等からなる活性層を含み構成されることが好ましい。
【0125】
この場合、a−Siは、300℃程度の基板温度で成膜する必要があるため、ガラス基板を絶縁性基板68aとして用いることになる。これに対して、a−IGZOや有機半導体は、200℃程度の基板温度の低温プロセスにより成膜することが可能であるため、ポリイミド、アラミド等の樹脂基板を絶縁性基板68aとして用いることができ、この結果、可撓性を有するTFTアレイを実現することができる。
【0126】
画素電極76a及び共通電極78aは、電圧供給部42と電気的に接続されている。
【0127】
一方、第2の電荷検出部70bは、絶縁性基板68bの第2の放射線検出部72b側の表面に配設されたTFT82b及びフォトダイオード86bのアレイを有し、1つの画素62bに対して1つのTFT82bと1つのフォトダイオード86bとが割り当てられている。この場合も、絶縁性基板68bにTFT82b及びフォトダイオード86bのアレイを形成すると、該絶縁性基板68bの第2の放射線検出部72b側は凹凸状となるので、平坦化膜84aと同様の平坦化膜84bを形成しておくことが望ましい。
【0128】
ゲート線64b及び信号線66bに接続されるTFT82bは、TFT82aと同様の活性層を含み構成されることが好ましい。
【0129】
さらに、図7では、第2の放射線検出部72bとして、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)のシンチレータを図示している。CsI:Naのシンチレータは、CsI:Naを真空蒸着法で短冊状の柱状結晶構造88bとして形成したものであり、シンチレータの平坦化膜84b側の基端部分は、非柱状結晶部分90bとされ、平坦化膜84bと密着している。非柱状結晶部分90bを設けることにより、第2の放射線検出部72bのシンチレータと、第2の電荷検出部70b及び絶縁性基板68bとの密着性を高めることができる。また、非柱状結晶部分90bの空隙率を0%に近づけたり、(例えば、10μm程度にまで)その厚みを薄くすることにより、後述する蛍光98(図8〜図10参照)の反射を抑えることができる。
【0130】
柱状結晶構造88bを構成する各柱は、放射線16の入射方向に沿ってそれぞれ形成され、隣接する各柱の間には、ある程度の隙間が確保されている。また、CsI:Naのシンチレータは、柱状結晶構造88bが湿度に弱く、非柱状結晶部分90bが湿度に特に弱いという特性を有するので、ポリパラキシリレン樹脂からなる光透過性の防湿保護材92bで封止されている。そして、シンチレータが防湿保護材92bで封止された状態で、柱状結晶構造88bの先端部分と共通電極78aとが密着されている。
【0131】
このように、a−Seの半導体層74aを含む第1の放射線変換パネル28aと、CsI:Naの柱状結晶構造88bのシンチレータを含む第2の放射線変換パネル28bと、リセット光源28cとの積層構造からなる、放射線検出器28において、図8に示すように、放射線16が入射すると、先ず、a−Seの半導体層74aは、放射線16の低エネルギー成分を吸収して、正電荷94a及び負電荷96aの電荷対に変換する。
【0132】
また、a−Seの半導体層74aで吸収されなかった放射線16(の高エネルギー成分)は、共通電極78aを透過して第2の放射線検出部72bに到達する。
【0133】
第2の放射線検出部72bでは、柱状結晶構造88b(の発光箇所100)で放射線16の高エネルギー成分を吸収して蛍光98に変換する。発光箇所100で発生した蛍光98の一部(フォトダイオード86bの感度波長領域の光であって、例えば、500nm以上の長波長領域の光)は、放射線16の入射方向に略平行に形成された柱状結晶を直線的に伝播して(直進して)フォトダイオード86bに至り、該フォトダイオード86bは、蛍光98の一部を電荷に変換して蓄積する。
【0134】
また、発光箇所100で発生した蛍光98の他の一部は、共通電極78aの方向に向かって柱状結晶を直進し、透過光102として、ITO等の透明電極からなる共通電極78aを透過し、a−Seの半導体層74aに至る。透過光102がa−Seの感度波長領域の光(例えば、500nm以下の短波長領域の光)であれば、半導体層74aは、透過光102を吸収して正電荷94b及び負電荷96bの電荷対に変換する。
【0135】
各画素電極76a及び共通電極78aには、電圧供給部42の直流電源106及びスイッチ108が電気的に接続されている。ここで、スイッチ108をオンにして、各画素電極76aが正極性、共通電極78aが負極性となるような直流電圧を直流電源106から印加すると、半導体層74aに直流電界が発生する。この直流電界に従って、正電荷94a、94bは、負極性の共通電極78a側に移動すると共に、負電荷96a、96bは、正極性の各画素電極76a側に移動する。この結果、第1の電荷検出部70aは、各画素電極76aを介して負電荷96a、96bを取り出すことが可能となり、駆動回路部30からの制御信号によってTFT82aがオンすると、信号線66aを介して負電荷96a、96bに応じた電気信号を読出回路部32に出力することが可能となる。
【0136】
また、半導体層74a内でアバランシェ効果が発生する程度の直流電圧が各画素電極76aと共通電極78aとの間に印加されると、該アバランシェ効果によって、半導体層74a内の正電荷94a、94b及び負電荷96a、96bが増幅される。この結果、各画素電極76aを介して第1の電荷検出部70a(のTFT82a)で取り出される電荷数を増大させることができる。
【0137】
なお、図8では、各画素電極76aが正極性、共通電極78aが負極性となるように、直流電圧を印加した場合を図示しているが、各画素電極76aに負極性及び共通電極78aに正極性の直流電圧を印加した場合でも、上記の効果が得られることは勿論である。
【0138】
また、上記の説明では、発光箇所100から共通電極78aに向かって柱状結晶構造88bを直進する蛍光98が、該共通電極78aをそのまま透過して透過光102として半導体層74aに入射する場合について説明した。実際には、共通電極78aに向かって直進する蛍光98の一部は、共通電極78aと柱状結晶構造88bとの界面で第2の電荷検出部70b側に反射し、反射光104として第2の電荷検出部70bに向かって柱状結晶構造88bを直進し、フォトダイオード86bに至る。従って、フォトダイオード86bは、入射した反射光104も電荷に変換して蓄積することができる。
【0139】
また、共通電極78aは、500nm以下の短波長領域の蛍光98を透過光102として透過させ、一方で、500nmよりも長波長領域の蛍光98を反射光104として反射させるダイクロイックフィルタとして機能してもよい。あるいは、共通電極78aと柱状結晶構造88bとの間に、このような機能を奏するダイクロイックフィルタを介挿させてもよい。
【0140】
そして、第1実施形態に係る放射線撮影装置10Aでは、放射線16の照射の有無に関わりなく(放射線16の照射のタイミングと同調することなく)、第1の放射線変換パネル28a(の半導体層74a)、又は、第2の放射線変換パネル28b(のフォトダイオード86b)に対してリセット処理を実行することが可能である。
【0141】
すなわち、放射線撮影装置10Aで実行可能なリセット処理としては、前述のように、電気リセット処理、バイアスリセット処理、及び、光リセット処理の3種類のリセット処理がある。このうち、直接変換型の第1の放射線変換パネル28aに対しては、電気リセット処理を実行することが可能である。また、間接変換型の第2の放射線変換パネル28bに対しては、電気リセット処理、バイアスリセット処理、又は、光リセット処理のいずれかのリセット処理を実行することが可能である。
【0142】
そして、放射線撮影装置10Aでは、放射線16の照射のタイミングと同調しないことにより、放射線出力装置18から不意に放射線16が出力されて、被写体14に対する放射線撮影が突如行われることに対処するため、第1の放射線変換パネル28aに対してリセット処理(電気リセット処理)を実行するタイミング及び時間帯と、第2の放射線変換パネル28bに対してリセット処理(電気リセット処理、バイアスリセット処理又は光リセット処理)を実行するタイミング及び時間帯とを、ずらすようにしている。
【0143】
このようなリセット処理を実行するタイミング及び時間帯については、全て、リセット制御部45で決定され制御される。従って、リセット制御部45は、2つの放射線変換パネル28a、28bに対するリセット処理が時間的に重ならないように、リセット光源28c、駆動回路部30、読出回路部32及びバイアス電源40を制御することにより、各放射線変換パネル28a、28bに対する所望のリセット処理を実行させる。そのため、放射線16の照射中でも、あるいは、放射線16の非照射時においても、2つの放射線変換パネル28a、28bに対してリセット処理が同時に実行されることはない。
【0144】
図7〜図10には、放射線16の照射中、又は、放射線16の非照射時での放射線変換パネル28a、28bに対するリセット処理も図示されている。
【0145】
図7は、放射線16の非照射時における放射線検出器28の状態を図示している。
【0146】
ここで、第1の放射線変換パネル28aに対して電気リセット処理を実行する場合には、図4でも説明したように、TFT82a及びスイッチ120aをオンにすればよい。これにより、半導体層74aに蓄積された電荷(暗電流による電荷)を、TFT82a、スイッチ120a及びオペアンプ116aを介してグランドに放出させることができる。
【0147】
また、第2の放射線変換パネル28bに対してリセット処理を実行する場合には、図5でも説明したように、TFT82b及びスイッチ120bをオンにすればよい。これにより、フォトダイオード86bに蓄積された電荷(暗電流による電荷)を、TFT82b、スイッチ120b及びオペアンプ116bを介してグランドに放出させることができる。
【0148】
また、フォトダイオード86bがMIS構造であれば、バイアス電源40からフォトダイオード86bに供給されるバイアス電圧の極性を反転するか、バイアス電圧の供給を停止することにより、第2の放射線変換パネル28bに対するバイアスリセット処理を実行することができる。これにより、フォトダイオード86bに蓄積された電荷を消滅させるか、放出させることができる。
【0149】
あるいは、第2の放射線変換パネル28bに対して光リセット処理を実行する場合には、リセット光源28cからフォトダイオード86bにリセット光122cを照射すればよい。これにより、フォトダイオード86bの不純物準位に電荷を予め埋めておくことができる。
【0150】
図8〜図10は、放射線16の照射時における放射線検出器28の状態をそれぞれ図示している。
【0151】
図8において、第1の放射線変換パネル28aに対して電気リセット処理を実行する場合には、TFT82a及びスイッチ120aをオンにすればよい。これにより、半導体層74aに蓄積された電荷(正電荷94a、94b及び負電荷96a、96bを含む各種の電荷)を、TFT82a、スイッチ120a及びオペアンプ116aを介してグランドに放出させることができる。その際、第2の放射線変換パネル28bに対してリセット処理が実行されていないため、フォトダイオード86bは、蛍光98や反射光104を電荷に変換して蓄積することができる。従って、第2の放射線変換パネル28bでは、該電荷を放射線画像に応じた電荷信号として出力することができる。
【0152】
一方、図8においても、図7の場合と同様に、第2の放射線変換パネル28bに対する電気リセット処理又はバイアスリセット処理を実行することが可能である。さらに、図9においても、図7の場合と同様に、第2の放射線変換パネル28bに対する光リセット処理を実行することが可能である。
【0153】
このような第2の放射線変換パネル28bに対してリセット処理が実行される時間帯においては、第1の放射線変換パネル28aに対して電気リセット処理が実行されることはない。従って、第1の放射線変換パネル28aにおいて、半導体層74aは、放射線16を正電荷94a及び負電荷96aに変換して蓄積することができる。また、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理の実行の有無に関わりなく、柱状結晶構造88bの発光箇所100では、放射線16を蛍光98に変換可能である。そのため、半導体層74aは、共通電極78aを透過して半導体層74aに入射した透過光102も正電荷94b及び負電荷96bに変換して蓄積することができる。従って、第1の放射線変換パネル28aでは、該各電荷96a、96bを放射線画像に応じた電荷信号として出力することができる。
【0154】
図10では、放射線16の照射時に、第1の放射線変換パネル28aに対して電気リセット処理を実行する際に、TFT82a及びスイッチ120aをオンにすると共に、電圧供給部42のスイッチ108をオフにしている。すなわち、該電気リセット処理の実行中、半導体層74aで正電荷94a、94b及び負電荷96a、96bが生成されても、これらの電荷94a、94b、96a、96bは、全てグランドに放出されるため、半導体層74aでのアバランシェ効果による電荷94a、94b、96a、96bの増幅動作は不要である。そこで、電気リセット処理が行われる画素62aについては、スイッチ108をオフにすることにより、電力消費の低減を図ってもよい。
【0155】
この場合、第2の放射線変換パネル28bでは、フォトダイオード86bにおいて、蛍光98及び反射光104を電荷に変換して蓄積するため、該電荷を放射線画像に応じた電荷信号として出力することができる。
【0156】
[第1実施形態の動作]
次に、第1実施形態に係る放射線撮影装置10Aを備えた放射線撮影システム12Aの動作について説明する。
【0157】
ここでは、放射線撮影システム12Aの基本的な動作(例えば、1枚分の放射線画像の撮影(静止画撮影))について最初に説明し、次に、第1実施形態の特徴的な動作(動画撮影でのリセット処理の制御)について、図11〜図14を参照しながら説明する。
【0158】
先ず、コンソール20(図1参照)の制御処理部52は、RIS24又はHIS26からオーダ情報を取得し、取得したオーダ情報をオーダ情報記憶部54に記憶する。
【0159】
次に、制御処理部52は、オーダ情報に含まれる被写体14の撮影部位及び撮影方法や、放射線撮影装置10A及び放射線出力装置18の情報に基づいて、放射線出力装置18から被写体14の撮影部位に放射線16を照射させるための撮影条件(管電圧、管電流、曝射時間)を設定し、設定した撮影条件とオーダ情報とを撮影条件記憶部56に記憶する。
【0160】
次に、医師又は技師は、被写体14と撮影台との間に放射線撮影装置10Aを挿入した後に、放射線撮影装置10A及び放射線出力装置18に対する被写体14の撮影部位のポジショニングを行う。
【0161】
この場合、放射線出力装置18は、コンソール20に撮影条件等の送信を要求し、制御処理部52は、通信部50を介して受信した放射線出力装置18の送信要求に基づき、撮影条件記憶部56に記憶された撮影条件を通信部50を介して無線により放射線出力装置18に送信する。
【0162】
一方、放射線撮影装置10A内において、バッテリ38からカセッテ制御部34及び通信部36に電力が供給されていれば、カセッテ制御部34は、通信部36を介してコンソール20にオーダ情報等の送信を要求する。制御処理部52は、通信部50を介して受信したカセッテ制御部34の送信要求に基づき、撮影条件記憶部56に記憶されたオーダ情報、撮影条件及び指示情報を通信部50を介して無線により放射線撮影装置10Aに送信する。カセッテ制御部34は、通信部36を介して受信したオーダ情報、撮影条件及び指示情報を画像メモリ46及び/又はカセッテIDメモリ48に記憶する。
【0163】
また、バイアス電源40から各画素62bを構成するフォトダイオード86bにバイアス電圧が供給されることにより、各フォトダイオード86bでは、放射線16の高エネルギー成分から変換された蛍光98や反射光104を電荷に変換して蓄積可能な状態に至る。
【0164】
そして、被写体14のポジショニング等の撮影準備が完了したことを前提に、医師又は技師は、図示しない曝射スイッチを投入する。これにより、制御処理部52は、放射線出力装置18からの放射線16の出力の開始と、放射線検出器28における放射線16の検出及び放射線画像への変換との同期を取ることにより、被写体14の撮影部位に対する放射線撮影を実行するための同期制御信号を生成する。そして、制御処理部52は、生成した同期制御信号を通信部50を介して無線により放射線撮影装置10A及び放射線出力装置18に送信する。
【0165】
これにより、放射線出力装置18は、同期制御信号を受信すると、前記撮影条件に従って、所定の線量からなる放射線16を被写体14の撮影部位に照射する。
【0166】
放射線16が被写体14の撮影部位を透過して放射線撮影装置10A内の放射線検出器28に至ると、a−Seの半導体層74aでは、放射線16の低エネルギー成分を吸収して正電荷94a及び負電荷96aの電荷対を生成する。半導体層74aで吸収されなかった放射線16の高エネルギー成分は、第2の放射線検出部72bに至り、柱状結晶構造88bでは、放射線16の高エネルギー成分を吸収して蛍光98を発生する。
【0167】
この場合、柱状結晶は、図7〜図10の上下方向に沿って形成されているため、発光箇所100で発生した蛍光98の一部は、フォトダイオード86bに向かって柱状結晶を伝播し(直進し)、他の一部は、共通電極78aに向かって柱状結晶を直進する。
【0168】
共通電極78aに向かって直進した蛍光98は、その一部は、透過光102として共通電極78aを透過して半導体層74aに入射し、他の一部は、反射光104としてフォトダイオード86b側に反射し、該フォトダイオード86bに向かって柱状結晶を直進する。従って、フォトダイオード86bは、入射した蛍光98及び反射光104を共に電荷に変換して蓄積する。また、半導体層74aでは、入射した透過光102を吸収して正電荷94b及び負電荷96bの電荷対を生成する。
【0169】
ここで、電圧供給部42から各画素電極76a及び共通電極78a間に直流電圧が印加されて、半導体層74aに直流電界が発生していれば、正電荷94a、94b及び負電荷96a、96bは、直流電界に従って、各画素電極76a又は共通電極78aに移動する。アバランシェ効果を発生させる程度の直流電圧(直流電界)であれば、各正電荷94a、94b及び各負電荷96a、96bは、アバランシェ効果によって増幅されるので、各画素電極76aを介して第1の電荷検出部70aで取り出される電荷数を増大させることができる。
【0170】
次に、カセッテ制御部34は、通信部36を介して同期制御信号を受信しているので、アドレス信号発生部44から駆動回路部30にアドレス信号を供給させることにより、蓄積状態の各画素62a、62bに保持された被写体14の放射線画像である電荷情報を読み出す。
【0171】
この場合、駆動回路部30は、アドレス信号発生部44から供給されるアドレス信号に従って、先ず、1行目の各画素62a、62bに接続された2本のゲート線64a、64bを介して、該1行目の各画素62a、62bのTFT82a、82bのゲートに制御信号をそれぞれ供給する。
【0172】
一方、読出回路部32は、駆動回路部30によって選択されたゲート線64a、64bに接続された1行目の各画素62a、62bに保持された電荷情報である放射線画像を、信号線66a、66bを介して順次読み出す。
【0173】
選択されたゲート線64a、64bに接続された1行目の各画素62a、62bから読み出された放射線画像は、読出回路部32のチャージアンプ110a、110bにおいて増幅され、A/D変換器112a、112bによりデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された放射線画像は、カセッテ制御部34の画像メモリ46に一旦記憶される。
【0174】
駆動回路部30は、このような動作を、アドレス信号発生部44から供給されるアドレス信号に従って、それぞれの行の各画素62a、62bに対して順次行う。これにより、読出回路部32は、各ゲート線64a、64bに接続されている各画素62a、62bに保持された電荷情報である放射線画像を、信号線66a、66bを介して読み出し、カセッテ制御部34の画像メモリ46に記憶させる。
【0175】
このようにして、放射線出力装置18からの放射線16の照射によって得られた放射線画像が画像メモリ46に記憶される。
【0176】
画像メモリ46への放射線画像の記憶後、カセッテ制御部34の画像処理部47は、画像メモリ46に記憶された2枚の放射線画像(第1の放射線変換パネル28aから取得した第1の放射線画像、第2の放射線変換パネル28bから取得した第2の放射線画像)に対する加算処理を行い、加算処理後の放射線画像(加算画像)も画像メモリ46に記憶する。そして、カセッテ制御部34は、画像メモリ46に記憶された各放射線画像(第1の放射線画像、第2の放射線画像、加算画像)と、カセッテIDメモリ48に記憶されたカセッテID情報とを、通信部36を介して無線によりコンソール20に送信する。
【0177】
コンソール20の制御処理部52は、通信部50を介して受信した各放射線画像と、カセッテID情報とを対応付けて画像メモリ60に記憶する。そして、制御処理部52は、画像メモリ60に記憶した加算画像を、オーダ情報に応じた医師による読影診断が可能な読影画像として、通信部50を介して無線により表示装置22に送信し、表示装置22は、受信した読影画像を表示する。
【0178】
医師又は技師は、表示装置22に表示された読影画像を視認して所望の放射線画像が得られたのであれば、被写体14をポジショニング状態から解放して、被写体14に対する撮影を終了させる。一方、表示装置22に表示された読影画像が所望の放射線画像でなければ、被写体14に対する再撮影を実行する。
【0179】
なお、カセッテ制御部34の画像処理部47において第1の放射線画像及び第2の放射線画像に対する加算処理を行わなかった場合、制御処理部52は、画像処理部58に対して、第1の放射線画像と第2の放射線画像との加算処理を行って加算画像を生成するように制御する。
【0180】
次に、第1実施形態の特徴的な動作について、図11〜図14を参照しながら説明する。
【0181】
この特徴的な動作とは、図11、図13及び図14に示すように、被写体14に対する動画撮影(被写体14に対して放射線16を繰り返し照射する放射線撮影)において、全てのフレームで動画像が取得できるように(画像欠落のフレームが発生しないように)、第1の放射線変換パネル28aに対する電気リセット処理と、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理(電気リセット処理、光リセット処理又はバイアスリセット処理)とを、互いに異なる時間帯に実行するというものである。
【0182】
先ず、図11の例について説明する。
【0183】
図11に示すように、被写体14に対する動画撮影では、被写体14に対する放射線16の照射時間t3を含む周期t4を1フレーム(フレームレート:1/t4)として、被写体14に放射線16を繰り返し照射(パルス照射)する。
【0184】
この場合、第1の放射線変換パネル28a(パネル1)での今回の電気リセット処理の開始時刻と、次回の電気リセット処理の開始時刻との第1の間隔t1を、t1>(t3+t4)に設定している。また、第1の放射線変換パネル28aでの今回の電気リセット処理の開始時刻と、第2の放射線変換パネル28b(パネル2)でのリセット処理の開始時刻との第2の間隔t2について、t1>t2>t3に設定している。さらに、これらの間隔t1、t2についても、周期t4との関連において、t4≠t1且つt4≠t2に設定している。
【0185】
そして、図11のタイムチャートにおいて、パネル1及びパネル2の各パルス(実線で示したパルス波形)は、第1の放射線変換パネル28a及び第2の放射線変換パネル28bがそれぞれ蓄積状態、すなわち、放射線画像を取得可能な状態であることを図示している。また、破線で示したパルスは、放射線16の照射中にリセット処理を実行することにより、蓄積した電荷信号が捨てられてしまうため、放射線16が入射しても放射線画像の取得ができない状態にあることを図示している。
【0186】
また、第1実施形態では、第1の放射線変換パネル28aで取得された第1の放射線画像(動画像)と、第2の放射線変換パネル28bで取得された第2の放射線画像(動画像)とを、画像処理部47又は画像処理部58で加算処理することにより、医師の読影診断に適した読影画像(加算画像)を生成する。
【0187】
従って、図11で4番目に放射線16の照射が行われるフレームのように、放射線16の照射中、いずれの放射線変換パネル28a、28bに対してもリセット処理が実行されないフレームでは、画像処理部47又は画像処理部58での加算処理によって高画質の加算画像を生成することができる。
【0188】
これに対して、放射線16の照射中に、いずれか一方の放射線変換パネルでリセット処理が実行されるフレーム(図11で1番目〜3番目に放射線16の照射が行われるフレーム)では、リセット処理が実行されなかった他方の放射線変換パネルでしか動画像を取得することができない。しかも、取得された動画像は、2枚の動画像を加算して得た加算画像と比較しても、信号レベルが小さい。
【0189】
そこで、第1実施形態では、いずれか一方の放射線変換パネルでリセット処理が実行されるフレームにおいて、リセット制御部45は、リセット処理が実行されなかった他方の放射線変換パネルで取得される動画像の電荷信号を増幅するオペアンプ(オペアンプ116a又はオペアンプ116b)のゲインを、通常時のゲインよりも高く設定し、設定したゲインにて電荷信号を増幅するように制御している。これにより、任意のフレームにおいて、1枚の動画像しか取得できない場合であっても、加算画像の信号レベルと略同レベルの画像信号を得ることができる。
【0190】
ところで、前述のように、第1の放射線変換パネル28aは、第2の放射線変換パネル28bよりも放射線16の入射側に配置されている。また、第1の放射線変換パネル28aは、放射線16を電荷94a、96aに直接変換すると共に、第2の放射線変換パネル28bのシンチレータで放射線16から変換された蛍光98が透過光102として入射してきた場合に、該透過光102も電荷94b、96bに変換する。従って、第1の放射線変換パネル28aは、第2の放射線変換パネル28bと比較しても、感度が高く、且つ、高画質の放射線画像(静止画像、動画像)を取得することができる。従って、第1の放射線変換パネル28aで取得される第1の放射線画像は、有用な画像データであると言える。
【0191】
そのため、上述のt1>(t3+t4)の設定条件にすれば、第1の放射線変換パネル28aにおいて有用な動画像が2フレーム連続で取得に失敗する事態を回避することができる。
【0192】
また、t1>t2>t3の設定条件にすれば、第2の放射線変換パネル28bのフォトダイオード86bに対するリセット処理を確実に行うことができる。これにより、フォトダイオード86bに流れる暗電流の増加に起因して、第2の放射線画像に重畳するノイズが大きくなる結果、画像処理部47又は画像処理部58で加算処理を行ってノイズの多い加算画像が取得されたり、又は、加算処理ができなくなることを回避することができる。また、t1>t2>t3の設定条件であれば、1フレーム中に2つの放射線変換パネル28a、28bがリセット処理を実行することはないため、1フレーム分の画像欠落を回避することができる。
【0193】
さらに、t4≠t1且つt4≠t2の設定条件であれば、放射線16の照射中に、特定の放射線変換パネルが常にリセット処理を実行して、該特定の放射線変換パネルの動画像が取得できなくなることを回避することができる。
【0194】
このような設定条件でリセット処理を制御するために、リセット制御部45は、以下の機能を具備していることが望ましい。
【0195】
第1の放射線変換パネル28aに対する今回のリセット処理の完了と次回のリセット処理の開始との間の時間帯に、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を実行するように(t1>t2>t3)、リセット制御部45は、タイマ又はリレー等を利用して、今回のリセット処理を開始してから所定時間(第2の間隔t2)経過したときに、自動的に、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を開始させるように制御すればよい。これにより、今回のリセット処理の開始時刻、該今回のリセット処理の所要時間、及び、次回のリセット処理の開始時刻さえ分かっていれば、リセット制御部45は、第2の放射線変換パネル28bの挙動を監視していなくても、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を制御することができる。
【0196】
また、第1の放射線変換パネル28aに対するリセット処理が終了すれば、該第1の放射線変換パネル28aは、動画像の取得が可能な蓄積状態に移行する。そこで、リセット制御部45は、第1の放射線変換パネル28aに対するリセット処理の開始及び終了を監視して、第1の放射線変換パネル28aに対するリセット処理が終了したことを確認できれば、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を直ちに実行させてもよい。このようにすれば、任意のフレームでの画像欠落を回避することができる。
【0197】
また、図12Aに示すように、放射線検出器28の温度上昇に伴って暗電流は増加するため、図12Bに示すように、温度上昇に対応して、電気リセットを実行する際の間隔t1、t2を短く設定してもよい。このようにt1、t2を設定すれば、暗電流に起因したノイズを電気リセットにより効率よく除去することができる。なお、温度に対する間隔t1、t2の変化は、図12Bのように連続的な変化であってもよいし、階段状に変化するものであってもよい。
【0198】
図13の例では、どちらの放射線変換パネル28a、28bについても、放射線16の照射時間t3を避けるように、放射線16の非照射時にリセット処理を実行するようにしている。この場合には、全てのフレームにおいて、2つの放射線変換パネル28a、28bで動画像を確実に取得できるので、画像処理部47又は画像処理部58で加算処理を行えば、高画質の加算画像を取得することができる。
【0199】
図14の例では、フレーム毎に、2つの放射線変換パネル28a、28bで交互に動画像を取得する場合を図示している。すなわち、図14では、奇数番目のフレームでは、第1の放射線変換パネル28aで動画像を取得し、偶数番目のフレームでは、第2の放射線変換パネル28bで動画像を取得するようにしている。
【0200】
この場合、動画像を取得するタイミングを避けるように、リセット処理を行う必要がある。従って、パネル2のように、動画像を取得するタイミングと、リセット処理のタイミングとが重なると、そのフレームは、画像欠落のフレームとなるため、例えば、パネル1での動画像を取得するタイミング(図14の3番目のフレーム)でリセット処理を行えば、画像欠落のフレームが発生することを回避することができる。
【0201】
[第1実施形態の効果]
以上説明したように、第1実施形態に係る放射線撮影装置10Aによれば、2つの放射線変換パネル28a、28bを用いて放射線撮影を行う場合に、2つの放射線変換パネル28a、28bに対するリセット処理のタイミングをずらし、異なる時間帯でリセット処理をそれぞれ実行するようにしている。従って、第1実施形態では、2つの放射線変換パネル28a、28bに対してリセット処理を実行する時間帯が互いに重ならないように、リセット制御部45がリセット処理部としてのリセット光源28c、駆動回路部30、読出回路部32及びバイアス電源40を制御する。これにより、一方の放射線変換パネルに対してリセット処理を実行しつつ、他方の放射線変換パネルで放射線画像を取得することが可能となる。この結果、リセット処理によって放射線画像が取得できない状態になることを回避することができる。
【0202】
また、第1実施形態では、動画撮影において、1フレームにおける放射線16の照射中、2つの放射線変換パネル28a、28bの双方に対するリセット処理の実行を禁止するか、又は、いずれか一方の放射線変換パネルに対してのみリセット処理を実行する。これにより、動画像のフレームレートが高くなっても、全てのフレームにおいて、少なくとも一方の放射線変換パネルで動画像を確実に取得することができる。つまり、第1実施形態では、2つの放射線変換パネル28a、28bに対するリセット処理を上述のように実行することで、画像欠落のフレームを含まない動画像を取得することができる。この結果、動画像を表示装置22に画像表示すれば、該動画像を見ながら所定の作業を行っている作業者(例えば、動画像を見ながら患者にカテーテルを挿入する手術を行っている医師)は、当該作業を中断することなく、作業を完遂することができる。
【0203】
さらに、図11に示すように、t1>(t3+t4)の設定条件にすれば、第1の放射線変換パネル28aにおいて、有用な画像データである動画像の取得失敗が、2フレーム連続で発生しないようにすることができる。
【0204】
また、t1>t2>t3の設定条件にすれば、1フレームにおける放射線16の照射中、2つの放射線変換パネル28a、28bの双方に対するリセット処理の実行が禁止されると共に、第1の放射線変換パネル28aに対する前後の2つのリセット処理の間に、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を実行させることができる。これにより、2つの放射線変換パネル28a、28bでの残像の発生を効果的に抑制すると共に、画像欠落のフレームが発生することを阻止することができる。
【0205】
さらに、t4≠t1且つt4≠t2の設定条件とすれば、各フレームにおける放射線16の照射中に、特定の放射線変換パネルのみに対してリセット処理が繰り返し実行され、該特定の放射線変換パネルでの動画像の取得ができなくなる事態を回避することが可能となる。
【0206】
このように、2つの放射線変換パネル28a、28bに対するリセット処理のタイミングを、上記のように設定すれば、リセット処理のタイミングと、放射線16の照射のタイミングとを同調させなくても、動画像が連続して取得できなくなる事態を回避しつつ、作業者が見やすい、残像が除去された動画像(放射線画像)を取得することができる。
【0207】
また、リセット処理のタイミングを上述のように設定すれば、リセット処理と放射線16の照射とを同期させるための複雑な制御や該放射線16の検知も不要となる。さらに、2つの放射線変換パネル28a、28bが互いに特性の異なる放射線変換パネルであれば、その特性の違いに応じて、各間隔t1、t2を予め設定することもできる。
【0208】
さらに、第1の放射線変換パネル28aでの今回のリセット処理の開始時刻、該今回のリセット処理の所要時間、及び、次回のリセット処理の開始時刻が予め分かっていれば、リセット制御部は、第2の放射線変換パネル28bの挙動を監視することなく、タイマ又はリレー等を利用して、今回のリセット処理を開始してから所定時間(第2の間隔t2)経過したときに、自動的に、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を開始させることもできる。すなわち、第1の放射線変換パネル28aに対する今回のリセット処理の完了と次回のリセット処理の開始との間の時間帯に、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を実行させることも可能となる。
【0209】
また、第1の放射線変換パネル28aに対するリセット処理が終了すれば、該第1の放射線変換パネル28aは、動画像の取得が可能な状態に移行するので、該リセット処理の終了を確認した後に、第2の放射線変換パネル28bに対するリセット処理を開始することにより、任意のフレームでの動画像の欠落を回避することができる。
【0210】
さらに、第1実施形態では、1フレームの動画像を取得するための放射線16の照射前、又は、該放射線16の照射が終了して2つの放射線変換パネル28a、28bから動画像に応じた画像信号が出力された後に、2つの放射線変換パネル28a、28bに対するリセット処理を実行してもよい。この場合には、放射線16の照射の前後に、2つの放射線変換パネル28a、28bに対するリセット処理がそれぞれ実行されるので、2つの放射線変換パネル28a、28bは、それぞれ、全てのフレームにおいて、残像が除去された動画像を取得することができる。
【0211】
また、画像処理部47又は画像処理部58により、2つの放射線変換パネル28a、28bで取得した動画像に応じた画像信号を加算すれば、高画質な動画像(加算画像)を形成することができる。この結果、作業者は、表示装置22に表示された加算画像を見ながら、所定の作業をスムーズに遂行することができる。
【0212】
また、画像処理部47又は画像処理部58は、1フレームの動画像を取得するための放射線16の照射中、いずれか一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が実行された場合には、当該1フレームでの加算処理を行わないので、リセット処理の対象となる残像を含んだ画像データが誤って加算処理に用いられることを回避することができる。従って、当該リセット処理が行われたフレームに関しては、リセット処理が実行されなかった放射線変換パネルで取得された動画像が1フレームの動画像になる。
【0213】
但し、この動画像の画像信号の信号レベルは、加算処理を行った画像信号の信号レベルよりも小さいため、リセット制御部45は、オペアンプ116a、116bの増幅率を上げて該画像信号を増幅させることにより、片方の放射線変換パネルの画像信号しか得られないフレームであっても、作業者にとり見やすい動画像を表示装置22に表示させることが可能となる。
【0214】
また、第2の放射線変換パネル28bのシンチレータで放射線16から変換された蛍光98が第1の放射線変換パネル28aに透過光102として入射する。そのため、第1の放射線変換パネル28aは、該第1の放射線変換パネル28aに照射された放射線16を電荷94a、96aに変換すると共に、第2の放射線変換パネル28bから入射した透過光102も電荷94b、96bに変換することができる。この結果、第1の放射線変換パネル28aの感度を高めると共に、該第1の放射線変換パネル28aにおいて、より高画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0215】
また、第2の放射線変換パネル28bが間接変換型の放射線変換パネルであるため、電気リセット処理に加え、バイアスリセット処理や光リセット処理も行うことが可能となる。従って、第2の放射線変換パネル28bの構成や状態に応じて好適なリセット処理を行うことができる。
【0216】
また、フォトダイオード86bがMIS構造であれば、バイアスリセット処理を実行することが可能となる。この場合には、バイアスリセット処理の終了後、次のフレームの動画を取得するために、バイアスの極性を元に戻すか、又は、バイアスの供給を再開する処理が必要となるため、フォトダイオード86bが安定した状態に復帰するまで多少の時間はかかるが、残像を確実に消去することができる。
【0217】
このように、第1実施形態では、第1の放射線変換パネル28a及び第2の放射線変換パネル28bは、電気リセット処理、バイアスリセット処理及び光リセット処理のうち、少なくとも1つのリセット処理を行えば、残像の発生を効率よく抑制することができる。なお、第1実施形態では、放射線撮影装置10Aの構成や状態等に応じて、1種類のリセット処理のみ実行したり、又は、複数の種類のリセット処理を使い分けて実行してもよいことは勿論である。
【0218】
[第2実施形態の説明]
次に、第2実施形態に係る放射線撮影装置10Bについて、図15〜図20を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、これまでに説明した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、その詳細な説明を省略する。
【0219】
第2実施形態に係る放射線撮影装置10Bを具備する放射線撮影システム12Bは、図15に示すように、放射線撮影装置10Bを構成する放射線検出器28が、放射線16の入射方向に沿って、リセット光源28dと、間接変換型の第1の放射線変換パネル28aと、間接変換型の第2の放射線変換パネル28bと、リセット光源28cとの積層構造である点で、放射線撮影システム12Aとは異なる。従って、第2実施形態において、バイアス電源40は、第1の放射線変換パネル28aにもバイアス電圧を供給し、リセット制御部45は、リセット光源28dも制御し、さらに、電圧供給部42は存在しない。
【0220】
図16に示すように、間接変換型の第1の放射線変換パネル28aにおいて、絶縁性基板68aは、リセット光源28dからのリセット光122dを透過可能であるか、又は、該リセット光122dに対する吸収性や遮光性が低い性質をさらに有する材料からなることが好ましい。
【0221】
第1の放射線検出部72aは、CsI(CsI:Na、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム))の柱状結晶を含むシンチレータである。
【0222】
このシンチレータも、CsIを真空蒸着法で短冊状の柱状結晶構造88aとして形成したものであり、該シンチレータの第1の電荷検出部(第1の光検出部)70a側の基端部分は、非柱状結晶部分90aとされ、第1の電荷検出部70aと密着している。非柱状結晶部分90aを設けることで、第1の放射線検出部72aのシンチレータと、第1の電荷検出部70a及び絶縁性基板68aとの密着性を高めることができる。また、非柱状結晶部分90aの空隙率を0%に近づけたり、(例えば、10μm程度にまで)その厚みを薄くすることにより、蛍光の反射を抑えることができる。
【0223】
柱状結晶構造88aを構成する各柱は、放射線16の入射方向に沿ってそれぞれ形成され、隣接する各柱の間には、ある程度の隙間が確保されている。また、該シンチレータにおいても、ポリパラキシリレン樹脂からなる光透過性の防湿保護材92aで封止されている。そして、柱状結晶構造88aの先端部分と第2の放射線検出部72bとが密着されている。
【0224】
第1の電荷検出部70aは、第2の電荷検出部70bと同様に、TFT82a(図5及び図17参照)やフォトダイオード86aを含み構成され、前記シンチレータで変換された蛍光を電荷に変換し、変換した電荷を電気信号として信号線66aを介し読出回路部32に出力する。但し、シンチレータで放射線16を蛍光に変換させる必要があるため、第1の電荷検出部70aのTFT82a及びフォトダイオード86aについては、放射線16に対する吸収性が低い材料(例えば、a−Si)を用いる必要がある。
【0225】
リセット光源28dは、リセット光源28cと同様に、エッジライト方式のバックライト光源であり、絶縁性基板68aの上面に導光板124dを配置し、放射線16の非照射領域である導光板124dの側部に冷陰極管126dを配置している。導光板124dと絶縁性基板68aとの間には、第1の電荷検出部70aと対向するように拡散シート128dが介挿されている。リセット光源28dにおける拡散シート128dの箇所以外の外表面には、導光板124d及び冷陰極管126dを囲繞するように反射シート130dも配置されている。
【0226】
この場合、リセット制御部45の制御により冷陰極管126dが駆動して、該冷陰極管126dから導光板124dに光が入射すると、導光板124dに入射した前記光は、該導光板124d内部で拡散シート128d及び反射シート130dとの間で表面反射を繰り返した後、該拡散シート128dから絶縁性基板68aにリセット光122dとして出射される。
【0227】
図16においても、1本のリセット光122dのみ図示されているが、実際には、拡散シート128dから面発光のリセット光122dが出射され、絶縁性基板68aを介して第1の電荷検出部70aに均一にリセット光122dを照射することになる。これにより、第1の電荷検出部70aを構成する各フォトダイオード86aに対して、残像の発生を抑制するためのリセット処理を行うことができる。
【0228】
また、図17に示すように、図16の構成を1つの画素62について拡大して図示した場合、第1の電荷検出部70aは、絶縁性基板68aの第1の放射線検出部72a側の表面に配設されたTFT82a及びフォトダイオード86aのアレイを有し、1つの画素62aに対して1つのTFT82aと1つのフォトダイオード86aとが割り当てられている。この場合も、絶縁性基板68aにTFT82a及びフォトダイオード86aのアレイを形成すると、該絶縁性基板68aの第1の放射線検出部72a側は凹凸状となるので、平坦化膜84aを形成しておくことが望ましい。
【0229】
一方、第2の放射線変換パネル28bにおいて、第2の放射線検出部72bは、CsI:Naの柱状結晶のシンチレータではなく、GOS(GdS:Tb)、CaWO、YTaO:Nb、BaFX:Eu(XはBr又はCl)、又は、LaOBr:Tm等の粒状のシンチレータである。これらのシンチレータも、入射した放射線16の高エネルギー成分を蛍光に変換することが可能である。
【0230】
このような第2実施形態に係る放射線撮影装置10Bにおいて、図18に示すように、放射線検出器28に放射線16が入射すると、先ず、第1の放射線検出部72aにおけるCsIのシンチレータでは、柱状結晶構造88a(の発光箇所150)で放射線16の低エネルギー成分が吸収され蛍光152に変換される。発光箇所150で発生した蛍光152の一部(フォトダイオード86aの感度波長領域の光)は、放射線16の入射方向に略平行に形成された柱状結晶を直線的に伝播して(直進して)フォトダイオード86aに至り、該フォトダイオード86aは、蛍光152の一部を電荷に変換して蓄積する。
【0231】
また、発光箇所150で発生した蛍光152の他の一部は、第2の放射線検出部72bに向かって柱状結晶を直進するが、柱状結晶構造88aの先端部分と第2の放射線検出部72bのシンチレータとの界面で反射し、反射光154として該柱状結晶を絶縁性基板68aの方向に直進する。この結果、フォトダイオード86aは、入射した反射光154も電荷に変換して蓄積することができる。
【0232】
また、第2の放射線検出部72bでは、シンチレータで放射線16の高エネルギー成分を吸収して蛍光98に変換する。発光箇所100で発生した蛍光98の一部(フォトダイオード86bの感度波長領域の光)は、フォトダイオード86bに至り、該フォトダイオード86bは、蛍光98の一部を電荷に変換して蓄積する。
【0233】
また、発光箇所100で発生した蛍光98の他の一部(主としてフォトダイオード86aの感度波長領域の光)は、第1の放射線変換パネル28aに向かって直進し、第2の放射線検出部72bのシンチレータと柱状結晶構造88aの先端部分との界面を透過すれば、透過光102として柱状結晶構造88aに入射する。この結果、フォトダイオード86aは、柱状結晶構造88aを直進して入射した透過光102も電荷に変換して蓄積することができる。
【0234】
さらに、第2の放射線検出部72bのシンチレータと柱状結晶構造88aの先端部分との界面をフォトダイオード86b側に反射した蛍光98は、反射光104として、フォトダイオード86bに至る。該フォトダイオード86bは、入射した反射光104も電荷に変換して蓄積する。
【0235】
この結果、駆動回路部30からの制御信号によってTFT82aがオンすると、フォトダイオード86aに蓄積された、放射線16の低エネルギー成分を反映した蛍光152及び反射光154に応じた電荷がTFT82aを介して流出し、信号線66aを介して該電荷に応じた電気信号として読出回路部32に出力することができる。また、駆動回路部30からの制御信号によってTFT82bがオンすると、フォトダイオード86bに蓄積された、放射線16の高エネルギー成分を反映した蛍光98及び反射光104に応じた電荷がTFT82bを介して流出し、信号線66bを介して該電荷に応じた電気信号として読出回路部32に出力することができる。
【0236】
なお、図5には、画素62aが間接変換型の第1の放射線変換パネル28aの画素の場合における、1画素分の電気的接続が図示されている。この場合、第1実施形態における図5の説明で、第2の放射線変換パネル28bの画素62bでの電荷の読み出し、電気リセット処理及びバイアスリセット処理の説明について、参照符号の「b」を「a」に置換することにより、第2実施形態における第1の放射線変換パネル28aの1つの画素62aでの電荷の読み出し、電気リセット処理及びバイアスリセット処理の説明となる。従って、第2実施形態では、電気リセット処理及びバイアスリセット処理の詳細な説明を省略する。
【0237】
また、図17、図19及び図20には、第2実施形態における光リセット処理が図示されている。これらの図は、第1実施形態における光リセット処理を図示した図7又は図9に対応する。第1実施形態における図7及び図9の説明では、第2の放射線変換パネル28bのフォトダイオード86bに対する光リセット処理について説明した。この説明における、第2の放射線変換パネル28bの各構成要素の参照符号の「b」を「a」に置換すると共に、リセット光源28cの各構成要素の参照符号の「c」を「d」に置換すれば、第1の放射線変換パネル28aのフォトダイオード86aに対する光リセット処理についての説明となる。従って、第2実施形態では、フォトダイオード86aに対する光リセット処理についての詳細な説明も省略する。
【0238】
以上説明したように、第2実施形態に係る放射線撮影装置10Bにおいても、フォトダイオード86aに対して各種のリセット処理を行うことが可能であるため、第1実施形態と同様の各効果を容易に得ることができる。
【0239】
特に、第1の放射線変換パネル28aが間接変換型の放射線変換パネルであるため、電気リセット処理に加え、光リセット処理やバイアスリセット処理も実行することが可能となり、これらのリセット処理を実行したことによる効果を容易に得られる。
【0240】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0241】
10A、10B…放射線撮影装置
12A、12B…放射線撮影システム
14…被写体
16…放射線
18…放射線出力装置
20…コンソール
22…表示装置
28…放射線検出器
28a…第1の放射線変換パネル
28b…第2の放射線変換パネル
28c、28d…リセット光源
30…駆動回路部
32…読出回路部
34…カセッテ制御部
40…バイアス電源
44…アドレス信号発生部
45…リセット制御部
47、58…画像処理部
62、62a、62b…画素
70a…第1の電荷検出部
70b…第2の電荷検出部
72a…第1の放射線検出部
72b…第2の放射線検出部
82a、82b…TFT
86a、86b…フォトダイオード
94a、94b…正電荷
96a、96b…負電荷
98、152…蛍光
102…透過光
104、154…反射光
110a、110b…チャージアンプ
112a、112b…A/D変換器
116a、116b…オペアンプ
118a、118b…コンデンサ
120a、120b…スイッチ
122c、122d…リセット光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の入射方向に沿って積層され、該放射線を放射線画像に変換可能な2つの放射線変換パネルと、
前記2つの放射線変換パネルに対して残像の発生を抑制するためのリセット処理を実行可能なリセット処理部と、
前記2つの放射線変換パネルに対する前記リセット処理を互いに異なる時間帯に実行するように前記リセット処理部を制御するリセット制御部と、
を有することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記放射線の照射が繰り返し行われることにより前記放射線画像としての動画像が取得される場合に、前記リセット制御部は、前記放射線の照射中、前記2つの放射線変換パネルに対する前記リセット処理の実行を禁止するか、又は、いずれか一方の放射線変換パネルに対する前記リセット処理を実行するように前記リセット処理部を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記リセット制御部は、一方の放射線変換パネルに対する今回のリセット処理の開始時刻と次回のリセット処理の開始時刻との第1の間隔が、前記放射線を繰り返し照射するための所定の周期と1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射時間との合計時間よりも長くなるように、前記リセット処理部を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記リセット制御部は、前記今回のリセット処理の開始時刻から他方の放射線変換パネルに対するリセット処理の開始時刻までの第2の間隔が、前記第1の間隔よりも短く且つ前記照射時間よりも長くなるように、前記リセット処理部を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記リセット制御部は、前記第2の間隔が前記周期と等しくならないように、前記リセット処理部を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の装置において、
前記リセット制御部は、一方の放射線変換パネルに対する今回のリセット処理の完了と次回のリセット処理の開始との間の時間帯に、他方の放射線変換パネルに対するリセット処理を実行するように、前記リセット処理部を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の装置において、
前記リセット制御部は、一方の放射線変換パネルに対するリセット処理の開始及び終了を監視し、該一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が終了したことを確認した際に、他方の放射線変換パネルに対するリセット処理を実行するように、前記リセット処理部を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記リセット制御部は、1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射前、又は、該放射線の照射が終了して前記2つの放射線変換パネルから動画像に応じた画像信号が出力された後に、前記2つの放射線変換パネルに対するリセット処理を実行するように、前記リセット処理部を制御することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の装置において、
前記放射線撮影装置に備わる画像処理部、又は、外部の画像処理装置により、前記2つの放射線変換パネルで取得した動画像に応じた画像信号を加算することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記画像処理部又は前記画像処理装置は、1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射中、いずれか一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が実行された場合には、該1フレームでの加算処理を行わないことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項11】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の装置において、
前記動画像に応じた画像信号を増幅可能な信号増幅部をさらに有し、
前記信号増幅部は、1フレームの動画像を取得するための前記放射線の照射中、いずれか一方の放射線変換パネルに対するリセット処理が実行された場合に、前記リセット処理が実行されなかった他方の放射線変換パネルから出力された画像信号を増幅することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記放射線の入射方向に沿って、第1の放射線変換パネルと第2の放射線変換パネルとが順に積層され、
少なくとも一方の放射線変換パネルは、前記放射線を蛍光に変換するシンチレータと、前記蛍光を電荷に変換する光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記第1の放射線変換パネルは、前記放射線を電荷に直接変換する放射線検出部と、該放射線検出部から電荷を取り出す電荷取出部とを有する直接変換型の放射線変換パネルであり、
前記第2の放射線変換パネルは、前記第1の放射線変換パネルを透過した放射線を蛍光に変換する前記シンチレータと、前記蛍光を電荷に変換する前記光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項14】
請求項12記載の装置において、
前記第1の放射線変換パネルは、前記放射線を第1の蛍光に変換する第1のシンチレータと、前記第1の蛍光を電荷に変換する第1の光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであり、
前記第2の放射線変換パネルは、前記第1の放射線変換パネルを透過した放射線を第2の蛍光に変換する第2のシンチレータと、前記第2の蛍光を電荷に変換する第2の光検出部とを有する間接変換型の放射線変換パネルであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項15】
請求項13又は14記載の装置において、
前記第2の放射線変換パネルのシンチレータで放射線から変換された蛍光が前記第1の放射線変換パネルに入射した場合に、該第1の放射線変換パネルは、入射した前記蛍光を電荷に変換可能に構成されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の装置において、
前記光検出部は、前記蛍光を検出して電荷に変換する光検出素子を含み構成され、
前記リセット処理部は、リセット光源又はバイアス電源であり、
前記リセット光源から前記光検出素子にリセット光を照射することにより、又は、前記バイアス電源から前記光検出素子へのバイアスの供給を制御することにより、前記光検出素子に対するリセット処理が実行されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置において、
前記光検出素子がMIS構造のフォトダイオードである場合、前記バイアス電源は、前記フォトダイオードに供給するバイアスの極性を反転するか、又は、前記フォトダイオードへのバイアスの供給を停止することにより、前記フォトダイオードに対するリセット処理を実行することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の装置において、
前記2つの放射線変換パネルは、前記放射線を電荷に変換して蓄積する行列状に配置された複数の画素を有し、
前記リセット処理部は、前記電荷の蓄積が可能な蓄積状態、又は、蓄積された前記電荷を読み出し可能な読出状態に前記各画素を切り換える駆動回路部と、読出状態の画素から電荷を読み出す読出回路部とであり、
前記駆動回路部により前記各画素を前記読出状態に切り換え、前記読出回路部により前記各画素に蓄積された電荷を読み出してグランドに放出させることで、前記各画素に対するリセット処理が実行されることを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−96712(P2013−96712A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236632(P2011−236632)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】