放射線断層撮影装置
【課題】対消滅γ線のペアの数え落としを防止し、高画質な断層画像を取得できる放射線断層撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明の構成によれば、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う同時計数手段を備えている。この様にすることで、時間幅を跨ぐ対消滅放射線の検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が低下せず、断層画像の画質の劣化が防がれる。
【解決手段】本発明の構成によれば、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う同時計数手段を備えている。この様にすることで、時間幅を跨ぐ対消滅放射線の検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が低下せず、断層画像の画質の劣化が防がれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放出されたγ線をイメージングする放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置50は、図18に示すように被検体Mを載置する天板52と、同時入射のγ線を検出する検出器リング62とを備えている。検出器リング62の開口は天板52ごと被検体Mを挿入できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の放射線断層撮影装置50を用いて、被検体Mの放射性薬剤の分布を知ろうとする場合は、被検体Mが検出器リング62の開口の内部に存する位置に移動される。そして、被検体Mから放出された対消滅γ線のペアの発生位置をイメージングして放射線断層画像が取得される。この様な放射線断層撮影装置をPET(positron emission tomography)装置と呼ぶ。検出器リング62は、複数の放射線検出器を円環状に配列して構成されている。
【0004】
対消滅γ線のペアの検出は、検出器リング62における異なる2つの場所で、同時にγ線を検出することで行われる。すなわち、検出器リング62を構成する2つの放射線検出器が同時にγ線を検出したとき、この2つのγ線は対消滅γ線のペアであるとされるのである。
【0005】
検出器リング62が検出した2つのγ線についての同時性の判断は、放射線検出器がγ線を検出したときの時刻を基に行われる。すなわち、1つのγ線が検出された時点を中心に時間的な幅を考えて、この期間に別のγ線が検出された場合、これら2つのγ線は、同時に検出器リング62に入射されたものとされる。このときの時間的幅はタイムウィンドウと呼ばれ、数〜数十n秒程度である。
【0006】
放射線検出器が用いる時刻情報について説明する。放射線検出器は、0n秒から126n秒までについて2n秒ごとに付したシリアル番号を用いて放射線が入射した時刻を表す。放射線検出器がγ線を検出したときに出力する検出データには、このシリアル番号が付された時刻情報が含まれている。シリアル番号の桁数は、所定の桁数に設定される。桁数を大きくしすぎると、検出データあたりのデータサイズが大きくなり、単位時間当たりに転送できる検出データ数の制限が厳しくなるからである。
【0007】
したがって、放射線検出器が出力する検出データに付されたシリアル番号は、ある一定の時間ごとに同じ値が繰り返されることになる。放射線検出器が内蔵するクロック装置は、0n秒からカウントを始めて126n秒までカウントする。126n秒までカウント終えると、クロック装置は、再び0n秒からカウントを始める。したがって、放射線検出器が出力する検出データには、0n秒〜126n秒までのいずれかを表す時刻情報が付されていることになる。
【0008】
対消滅γ線のペアを検出する同時計数部は、2つの検出データに含まれる時刻情報同士を比較する。時刻情報が同時とされた検出データは、対消滅γ線とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−232548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来構成によれば、次のような問題がある。
すなわち、従来装置によれば、対消滅γ線のペアの数え落としが生じてしまう。この問題について説明する。時刻情報が繰り返す0n秒から126n秒までの期間をフレームとよぶ。放射線検出器が内蔵するクロック装置は、放射線検出器の間で同期されているので、フレームの開始・終了タイミングは同期している。対消滅γ線のペアの検出は、同期したフレームの間でしかすることができない。
【0011】
説明の簡単のため、検出器リング62は、2つの放射線検出器によって構成されているとする。2つの放射線検出器は、時刻情報を出力することができ、互いの時刻情報は、同期している。図19に示すように、一方の放射線検出器のフレームは、128n秒ごとにフレームm1,m2,m3と変遷しているものとし、もう一方の放射線検出器のフレームは、128n秒ごとにフレームn1,n2,n3と変遷しているものとする。そして、フレームm1,m2,m3は、フレームn1,n2,n3のそれぞれに同期しているものとする。
【0012】
フレームm2の期間内に一方の放射線検出器がγ線を検出したとする。この検出時点を図19では矢印で示している。このγ線のペアを探索するときには、もう一方の放射線検出器の検出データが参照されることになる。このとき検出データが参照される範囲は、フレームm2に同期しているフレームn2に限られる。同期していないフレームが示す時刻情報は互いに異なる時点を表すので、同期していないフレーム同士で同時性を判断することはできないからである。
【0013】
次に、フレームm2の期間内において、1n秒の時点でγ線が検出されたとする。この検出時点を図20では実線の矢印で示している。このとき、ペアのγ線は、やはりフレームn2の中から探索される。しかしながら、実際は、ペアのγ線が図20に示すようにフレームn1の末端で検出されていた場合もある。この検出時点を図20では破線の矢印で示している。
【0014】
この様な事情があるにも関わらず、従来の構成によれば、同期したフレーム同士でしかγ線の同時性を判断しない。したがって、図20のようにフレームの切り替わり時点を跨いで検出される対消滅γ線のペアは、検出されない。
【0015】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、対消滅γ線のペアの数え落としを防止し、より高画質な断層画像を取得できる放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線断層撮影装置は、被検体から照射される対消滅放射線をイメージングする放射線断層撮影装置であって、複数の放射線検出器と、所定の時間幅の開始から終了までを示す時刻情報を放射線検出器の各々に送信し、時間幅が終了すると、再び時間幅を開始させて時刻情報を放射線検出器の各々に送信する動作を繰り返す時刻情報送信手段と、第1の放射線検出器と第2の放射線検出器とのそれぞれが検出した放射線について対消滅放射線の同時計数を行う同時計数手段とを備え、同時計数手段は、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行うことを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]本発明の構成によれば、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う同時計数手段を備えている。この様にすることで、時間幅を跨ぐ対消滅放射線のペアの検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が増加し、断層画像の画質を向上できる。
【0018】
また、本発明の構成によれば、時間幅を短くすることができる。従来構成では、時間幅の切り替わりの頻度を少なくする必要があるので、時間幅を短くすることができない。従来構成のまま時間幅を短くすると、時間幅を跨いで入射する対消滅放射線が増加し、同時計数の数え落としが増大するからである。しかし、本発明によれば、この様な制約がないので、時間幅が短くできる。これにより、放射線検出器が出力する検出データのサイズを小さくすることができる。時間幅が短いとそれだけ検出データに含まれる時刻情報のサイズが小さくなるからである。したがって、本発明によれば、装置構成が簡単で、検出データの処理速度が改善された放射線断層撮影装置が提供できる。
【0019】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、隣接時間幅に加えて、検出時点時間幅で第2の放射線検出器が検出した放射線についても同時計数を行えばより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。上述の構成によれば、時間幅を跨いでの対消滅放射線の検出に加えて、従来通りの時間幅を跨がない対消滅放射線の検出も行うので、より確実に高画質の断層画像を生成することができる。
【0021】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、検出時点時間幅に対して未来方向に隣接した隣接時間幅と、検出時点時間幅に対して過去方向に隣接した隣接時間幅とのいずれかの期間に第2の放射線検出器が検出した放射線について同時計数を行えばより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。同時計数手段が同時計数をする隣接時間幅は、検出時点時間幅にとっての未来方向の隣接時間幅、および過去方向の隣接時間幅であれば、検出時点時間幅にとって未来方向、過去方向のいずれの方向に時間幅を跨ぐ対消滅放射線であっても検出が可能となる。
【0023】
また、上述の放射線断層撮影装置において、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点から所定の時間だけ離間した時点において第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う遅延同時計数手段を備え、遅延同時計数手段は、第1の放射線検出器が検出時点時間幅の期間に検出した放射線と、第2の放射線検出器が隣接時間幅の期間に検出した放射線との間で同時計数を行えばより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。すなわち、偶発的な放射線の同時検出が同時計数に与える影響を除去する目的で行われる遅延同時計数についても同時計数と同様に時間幅を跨ぐ対消滅放射線をカウントする。このようにすることで遅延同時計数をするときの条件を同時計数をするときの条件に合わせるようにすることができる。したがって、同時計数に含まれる偶発同時計数を正確に除去できる遅延同時計数をカウントすることができる。
【0025】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、検出時点時間幅および隣接時間幅の期間に検出された放射線の検出データを用いることにより、第1の放射線検出器が出力する検出データが示す時刻と、第2の放射線検出器とが出力する検出データが示す時刻とのズレを認識して、このズレを補正して動作すればより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。すなわち、同時計数手段が検出時点時間幅および隣接時間幅の期間に検出された放射線の検出データを用いることにより、放射線検出器の各々が出力する検出データが示す時刻とのズレを認識するようになっている。この様にすればより時刻のズレを正確に認識することができる。時刻のズレの認識は時間幅の影響を受けることがないからである。
【0027】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作すればより望ましい。
【0028】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。すなわち、同時計数手段は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作する。この様にすれば、被検体の撮影の前にファントムを撮影する必要がなくなる。従来構成であれば、被検体の検出データでは時刻のズレを正確に知ることはできない。しかし、本発明によれば、従来構成よりも時刻のズレを正確に認識することができるので、ファントムの撮影を省略することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の構成によれば、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う同時計数手段を備えている。この様にすることで、時間幅を跨ぐ対消滅放射線のペアの検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が増加し、断層画像の画質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係る検出器リングの構成を説明する平面図である。
【図4】実施例1に係る同時計数部の動作について説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る同時計数部の動作について説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る同時計数部の動作について説明する模式図である。
【図7】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図8】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図9】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図10】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図11】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図12】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図13】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図14】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図15】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図16】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図17】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図18】従来の放射線断層撮影装置の構成を説明する図である。
【図19】従来の放射線断層撮影装置の構成を説明する図である。
【図20】従来の放射線断層撮影装置の構成を説明する図である。
【実施例1】
【0031】
<放射線断層撮影装置の構成>
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置9の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置9の構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、全身撮影用となっており、被検体Mを載置する天板10と、天板10をその長手方向(z方向)から導入させる開口を有するガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた天板10をz方向に導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口は、z方向(天板10の長手方向、被検体Mの体軸方向)に伸びた円筒形となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に延伸している。ガントリ11は、被検体Mが収納できる程度の大きさの開口が設けられている。この開口に被検体Mが挿入されることになる。
【0032】
天板10は、ガントリ11(検出器リング12)の開口をz方向から貫通するように設けられているとともに、z方向に沿って進退自在となっている。この様な天板10の摺動は、天板移動機構15によって実現される。天板移動機構15は、天板移動制御部16によって制御される。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御する天板移動制御手段である。天板10は、その全域が検出器リング12の外側に位置している位置から摺動して、検出器リング12の開口にその一方側から導入される。
【0033】
ガントリ11の内部には、被検体Mから放射される対消滅γ線のペアを検出する検出器リング12が備えられている。この検出器リング12は、被検体Mの体軸方向に伸びた筒状であり、そのz方向の長さは、15cmから26cm程度である。リング状の吸収体13a,13bは、検出器リング12の中心軸方向(z方向)の両端を覆うように設けられている。吸収体13a,13bは、γ線を透過しにくい部材で生成されており、検出器リング12の外部から内部にγ線が入射するのを防いでいる。吸収体13a,13bは、被検体Mの断層画像Dの撮影に邪魔となる検出器リング12の外部で生じたγ線を除去する目的で設けられている。この吸収体13a,13bの内径は、検出器リング12の内径よりも小さくなっている。
【0034】
検出器リング12を構成する放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図2は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図2に示すようにγ線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0035】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が二次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶Cは、Ceが拡散したLu2(1−X)Y2XSiO5(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。放射線検出器1は、蛍光の強度により検出したγ線のエネルギーを求め、エネルギーデータを出力することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0036】
検出器リング12の構成について説明する。実施例1によれば、図3に示すように複数個の放射線検出器1がz方向に垂直な平面上の仮想円に配列することで1つの単位リング12bが形成される。この単位リング12bを中心軸方向(z方向)に複数配列されて検出器リング12を構成してもよい。
【0037】
クロック19は、放射線検出器1の各々に時刻情報を送信する。クロック19が送出する時刻情報は、例えば、所定の桁数を有するシリアルナンバーとなっている。クロック19が送信するシリアルナンバーが2進数で6桁あるとし、2n秒ごとにシリアルナンバーの番号を1ずつ増加させていくものとする。この場合、クロック19は、128n秒の間の時間を識別しうる時刻情報を生成することができることになる。また、高精度の時間情報を生成するために専用のIC(TDC)を用いてもよい。時刻情報の生成に関して、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0038】
クロック19が生成する時刻情報における時間識別可能な長さをフレームFと呼ぶことにする。クロック19は、0n秒から126n秒までカウントをして、2n秒ごとにシリアルナンバーを放射線検出器1の各々に送出する。クロック19は、126n秒までカウントを終えると再び0n秒からカウントを開始する。つまり、クロック19は、フレームFの開始から終了までを示す時刻情報を放射線検出器1の各々に送信し、フレームFが終了すると、再びフレームFを開始させて時刻情報を放射線検出器の各々に送信するという動作を繰り返す。
【0039】
放射線検出器1は、γ線を検出すると、検出強度を示すデータに、検出時点の時刻情報を付加して検出データを生成し、検出データを同時計数部20に送出する。同時計数部20は、このγ線が対消滅γ線であったとしたときのもう一方のγ線を探し出す動作をする。具体的には同時計数部20は、各放射線検出器1から送られてくる検出データを検索して、このγ線を検出した放射線検出器1とは別の放射線検出器1がγ線を検出しているかを調べる。同時計数部20は、γ線が検出された時刻に近い時点で別のγ線が検出されている場合にこれら2つのγ線が対消滅γ線のペアであることを認識する。同時計数部20は、この対消滅γ線のペアを計数して、結果をデータ保持部22に送出する。データ保持部22は、同時計数データを保持する目的で設けられている。
【0040】
検出データは、遅延同時計数部21にも送出される。遅延同時計数部21は、放射線検出器1がγ線を検出した時点から、所定の時間だけ遅れた時点において検出されたγ線を探し出す動作をする。具体的には、遅延同時計数部21は、各放射線検出器1から送られてくる検出データを検索して、このγ線とは別のγ線を検出しているかを調べる。遅延同時計数部21は、γ線が検出された時刻から所定の時間だけ遅れた時刻に近い時点で別のγ線が検出されている場合にこれら2つのγ線を認識する。遅延同時計数部21も同時計数部20と同様にタイムウィンドウをγ線のペアの認定に用いている。遅延同時計数部21の用いるタイムウィンドウの時間的位置は、同時計数部20の場合と異なりγ線の入射時点からずれた範囲となっている。遅延同時計数部21は、このγ線のペアを計数して、結果をデータ保持部22に送出する。データ保持部22は、上述の同時計数データの他、遅延同時計数データをも保持する。
【0041】
遅延同時計数データの意味について説明する。同時計数データは、対消滅γ線でないγ線のペアについても計数を行ってしまっている。つまり、同時計数データが示す計数値は、実際の対消滅γ線の計数値よりも多いことになる。この様な現象が起こる理由について説明する。同時計数部20は、同時に(正確にはほぼ同時に)検出されたγ線を対消滅γ線のペアとするという動作を行う。このような同時に検出された2つのγ線には、対消滅γ線のペアの他、2つのγ線が偶発的に同時に検出されたものも含まれている。このような偶発的なペアは、対消滅γ線のペアではない。同時計数データは、この様な偶発的なペアについても計数してしまっている。
【0042】
遅延同時計数データは、同時計数データにおける偶発的なペアの数えすぎを補正する目的で計数される。すなわち、遅延同時計数データは、所定時間だけずれて検出された2つの放射線対であり、対消滅γ線のペアではないことは確実である。むしろ、この2つの放射線対は、一方のγ線と、このγ線が検出されてから、所定時間だけ遅れて偶然検出されたγ線とのペアなのである。同時計数データには、遅延同時計数データが示す計数値の分だけ偶発的に2つのγ線が余計に検出されていると推察される。
【0043】
したがって、同時計数データの計数値より遅延同時計数データだけ計数を減算して補正すれば、同時計数データにおける偶発的なγ線のペアについての影響を除去することができるのである。
【0044】
<同時計数部の動作>
次に、本発明の最も特徴的な部分である同時計数部20の動作について説明する。図4は、同時計数部20の動作を説明する模式図である。図4においては、簡単のため、検出器リング12を構成する2つの放射線検出器の間の動作について説明するものであり、以降の説明においても同様とする。図4におけるフレームFa1,Fa2,Fa3,Fa4はこの順に経時的に隣接したフレームであり、一方の放射線検出器についてのフレームを意味している。同様に、フレームFb1,Fb2,Fb3,Fb4はこの順に経時的に隣接したフレームであり、もう一方の放射線検出器についてのフレームを意味している。フレームFa1,Fa2,Fa3,Fa4の順は時間の経過に対応しており、フレームFa1,Fa2,Fa3,Fa4の各々は、フレームFb1,Fb2,Fb3,Fb4の各々と同期している。各フレームの長さは128n秒である。また、説明の便宜上、同時計数部20は、検出器リング12を構成する2つの放射線検出器の組み合わせについて動作するものとする。
【0045】
図4においては、一方の放射線検出器がフレームFa2に属する時点に検出されたγ線pについて同時計数部20が同時計数を行う様子を示している。同時計数部20は、γ線pが対消滅γ線のペアであったとしたときの対をなすγ線をもう一方の放射線検出器が出力した検出データから探し出す。対をなすγ線は、γ線pが検出された時点から時間的にさほど違いがない時点で検出されているはずである。そこで、同時計数部20は、γ線pが検出した時点を中心に所定の幅を有するタイムウィンドウTWの期間内にもう一方の放射線検出器がγ線を検出していないかを調べるのである。タイムウィンドウTWの幅としては例えば10n秒が選択される。図4のようにγ線pの検出時点がフレームFa2の中間的な位置に属するときは同時計数部20は、フレームFa2と同期しているフレームFb2の期間中に検出されたγ線の中から対をなすγ線を探索する。
【0046】
図5は、γ線pがフレームFa2の後端で検出された場合を図示している。フレームFa2の後端とは、フレームFa2から後続フレームFa3への切り替わりの直前を表し、フレームFa2の期間の終わり頃を意味している。この様な場合、タイムウィンドウTWがフレームFb2に収まりきらない。この場合、同時計数部20は、タイムウィンドウTWをフレームFb3まで拡張して、タイムウィンドウTWの幅を確保する。この様にすることで、一方の放射線検出器が検出したγ線と、この放射線検出器がγ線を検出した時点を含んだフレームであるフレームFa2(検出時点時間幅)に経時的に隣接したフレームFb3(隣接時間幅)の期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う。
【0047】
また、γ線pがフレームFa2の前端で検出された場合は、同時計数部20は、タイムウィンドウTWをフレームFb1まで拡張してタイムウィンドウTWの幅を確保して動作することになる。フレームFa2の前端とは、前段のフレームFa1から現在のフレームFa2へ切り替わった直後を表し、フレームFa2の期間が始まった頃を意味している。この様にすることで、一方の放射線検出器が検出したγ線と、この放射線検出器がγ線を検出した時点を含んだフレームであるフレームFa2(検出時点時間幅)に経時的に隣接したフレームFb1(隣接時間幅)の期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う。
【0048】
つまり、図6に示すように、同時計数部20は、フレームFa2(検出時点時間幅)に対して未来方向に隣接したフレームFb3(隣接時間幅)と、フレームFa2(検出時点時間幅)に対して過去方向に隣接したフレームFb1(隣接時間幅)とのいずれかの期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線について同時計数を行う。図6においては、γ線pを検出した時点が属するフレームFa2を網掛けで示している。また、このγ線のペアを検索する際に参照とされるフレームFb1,Fb2,Fb3は斜線で表している。この様に同時計数部20は、フレームFa1に同期しているフレームFb1(隣接時間幅)に加えて、γ線pの検出時点が属するフレームFa2に同期しているフレームFb2(検出時点時間幅)でもう一方の放射線検出器が検出したγ線についても同時計数を行う。
【0049】
<遅延同時計数部の動作>
遅延同時計数部21の動作は、同時計数部20の動作と同様である。異なる点は、タイムウィンドウTWがγ線pが検出された時点から過去方向または未来方向にシフトしていることである。すなわち、遅延同時計数部21は、一方の放射線検出器が検出したγ線と、一方の放射線検出器がγ線を検出した時点から所定の時間だけ離間した時点においてもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う。また、説明の便宜上、遅延同時計数部21は、検出器リング12を構成する2つの放射線検出器の組み合わせについて動作するものとする。
【0050】
遅延同時計数部21においても、γ線pがフレームFa2の後端で検出された場合は、γ線pと、フレームFb2およびフレームFb3の期間中に検出されたγ線との間で同時計数を行う。また、遅延同時計数部21は、γ線pがフレームFa2の前端で検出された場合は、γ線pと、フレームFb2およびフレームFb1の期間中に検出されたγ線との間で同時計数を行う。つまり、遅延同時計数部21は、一方の放射線検出器がフレームFa2の期間に検出したγ線と、もう一方の放射線検出器が隣接時間幅の期間に検出したγ線との間で同時計数を行う。γ線pの検出のタイミング、タイムウィンドウTWの検出時点とのシフト量によっては、タイムウィンドウTWがフレームFb1,Fb2,F3のいずれかのみに属する場合もある。
【0051】
このように構成することにより、同時計数や遅延同時計数をする際に動作対象のγ線pの検出時点がフレームFa2のどこにあったとしても、同時計数や遅延同時計数をする際のタイムウィンドウTWは、縮小しない。これにより、フレームFb2,Fb3を跨いで検出された対消滅γ線も数え落とすことなく正確に同時計数や遅延同時計数ができる。
【0052】
画像生成部25は、データ保持部22が保持する同時計数に関するデータ、および遅延同時計数に関するデータを基に被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた断層画像Dを生成する。
【0053】
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41と、放射線断層画像を表示する表示部36とを備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部16,19,20,21,23,25を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。操作卓35は、各部16,19,20,21,23,25に対して術者の操作を入力させるものである。
【0054】
<本発明の効果>
本発明の効果としては、同時計数の数え落としを防ぎ、鮮明な断層像を取得することにある。本発明の構成は、この効果の他、偶発同時計数をより正確に行う効果も有している。この効果の詳細について説明する。
【0055】
(1)従来構成の場合
図7は、従来の構成を示している。従来構成によれば、同時計数はフレームFaとこのフレームに同期したフレームFbとの間で同時計数を行う。フレームFaは対消滅γ線を検出する一方の放射線検出器についてのフレームである。同様にフレームFbは、対消滅γ線を検出するもう一方の放射線検出器についてのフレームである。
【0056】
図7に示すように、一方の放射線検出器が時点p1にγ線を検出したとし、もう一方の放射線検出器が時点p2にγ線を検出したとする。時点p1と時点p2との間の時間をΔpとして表すことにする。
【0057】
図8は、Δpを変化させると対消滅γ線の検出がどのように変化するかを示している。同時計数は、各フレームを64分割してこれを2n秒幅の単位時間として計数動作をするものとする。すなわち、同時計数は、単位時間よりも細かい同時性を判断しないで動作する。図8の左側は、Δpが0n秒のときを表している。Δpが0n秒であるとは、すなわち、時点p1と時点p2が等しいということである。この場合、図8左側の斜線で示すように、同時刻となっている単位時間同士で対消滅γ線の計数が行われる。このとき対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、64通りあることになる。単位時間は、1フレームに64個あるからである。
【0058】
図8の右側は、Δpが2n秒のときを表している。Δpが2n秒であるとは、すなわち、時点p2は時点p1よりも2n秒だけ遅いということである。この場合、図8右側の斜線で示すように、フレームFaの終端に位置する単位時間のペアはフレームFbにはない。従来の構成では、フレームFaとフレームFbとの間で同時計数がされるからである。したがって、このとき対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、先程から1つ減って63通りあることになる。
【0059】
このように、Δpが0n秒から離れるにつれ対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、減少する。すなわち、Δpが0n秒から増加するにつれ、対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペア減少し、Δpが62n秒のときペアは、1通りとなる。また、Δpが0n秒から減少するにつれ、対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペア減少し、Δpが−62n秒のときペアは、1通りとなる。
【0060】
このことは、Δpの絶対値が大きくなるにつれ同時計数でカウントされる対消滅γ線のカウント数が減少することを意味している。Δpが0n秒のときは、64通りあるペアのいずれかで対消滅γ線の判定をなすことできるので、対消滅γ線が見つかる機会が多い。しかし、Δpが62n秒のときは、1通りのペアにより対消滅γ線の判定をせねばならず、対消滅γ線が見つかる機会が少ない。図9は、Δpと対消滅γ線のカウント数との関係を示している。この関係図は、Δpが0n秒であるときを頂点とする三角形状となっている。
【0061】
図10は、この三角形状において同時計数と遅延同時計数がどのような位置に当たるかを意味している。三角形状のΔpが0n秒付近における斜線で示す部分は、同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分がΔpの方向に幅を有するのは、同時計数がタイムウィンドウTWを用いて実行されるからである(図4参照)。図10における三角形状の両傍らにおける網掛けで示す部分は、遅延同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分は、Δpが正の領域と負の領域の2つに分かれて存在する。この様にしないと遅延同時計数をするときのカウント数が足りず、正確な遅延同時計数をすることができないからである。
【0062】
(2)本発明の構成の場合
図11は、本発明の構成を示している。本発明の構成によれば、同時計数はフレームFa2とフレームFb1,フレームFb2,フレームFb3との間で同時計数を行う。フレームFa2は対消滅γ線を検出する一方の放射線検出器についてのフレームである。同様にフレームFb1,フレームFb2,フレームFb3は、対消滅γ線を検出するもう一方の放射線検出器についてのフレームである。
【0063】
図12は、Δpが2n秒であるときの対消滅γ線の検出の様子を意味している。この場合、図12の斜線で示すように、フレームFa2の終端に位置する単位時間のペアはフレームFb3にある。本発明の構成では、フレームFa2とフレームFb3との間でも同時計数がされるからである。したがって、このとき対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、図8で説明した減少が起こらず、64通りあることになる。図13は、Δpと対消滅γ線のカウント数との関係を示している。この関係図は、Δpが0n秒であるときを中心とする台形状となっている。
【0064】
図14は、この三角形状において同時計数と遅延同時計数がどのような位置に当たるかを意味している。三角形状のΔpが0n秒付近における斜線で示す部分は、同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分がΔpの方向に幅を有するのは、同時計数がタイムウィンドウTWを用いて実行されるからである(図4参照)。図14における網掛けで示す部分は、遅延同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分は、Δpが負の領域に存在する。この様にしても遅延同時計数をするときのカウント数が十分であり、正確な遅延同時計数をすることができるからである。
【0065】
図10と図14とにおいて網掛けで示す遅延同時計数のカウントを見れば分かるように、本発明における遅延同時計数のカウントは同時計数のカウントをΔpについて負の方向にシフトしたようになっている。このようにすることで、遅延同時計数をするときの条件を同時計数をするときの条件に合わせるようにすることができる。したがって、同時計数に含まれる偶発同時計数を正確に除去できる遅延同時計数をカウントすることができる。
【0066】
<本発明の別の効果>
本発明の構成は、この効果の他、放射線検出器の時間的ズレをより正確に補正できるという効果も有している。この効果の詳細について説明する。
【0067】
図15は、従来装置におけるΔpと対消滅γ線との関係を表している。図9を用いた説明では言及しなかったが、実測に基づく関係図には、符号bで示すピークが現れる。このピークは、対消滅γ線に由来している。図15に示すピークbは、本来はΔpが0n秒のところに現れるはずである。対消滅γ線は、2つの放射線検出器に同時に入射するからである。図15によれば、ピークbの位置はΔpについて正の方向にシフトしている。この原因は、2つの放射線検出器が認識している時刻に差があるからである。放射線検出器には検出の個体差があり、検出器リング12に設けられている位置も異なる。すると、対消滅γ線のペアが2つの放射線検出器に同時に入射したとしても、2つの放射線検出器は、それぞれ異なる時刻情報が付与された検出データを出力することがあるのである。
【0068】
同時計数部20は、図15に示す関係図を基にピークbの位置を取得し、放射線検出器同士の時間的ズレを補正して同時計数を行う。すなわち、同時計数部20は、フレームFb1,フレームFb2,フレームFb3の期間に検出されたγ線の検出データを用いることにより、一方の放射線検出器が出力する検出データが示す時刻と、もう一方の放射線検出器とが出力する検出データが示す時刻とのズレを認識して、このズレを補正して動作する。遅延同時計数部21も同様の動作をする。しかし、従来の構成によれば、ピークbは、図15に示す三角形状のグラフ形の傍らに現れるので、同時計数部20は、ピークbの位置を正確に取得することが難しい。図15のグラフ形は、説明の便宜上、ピークb以外の部分は直線的に描いている。しかし、実際は多くのノイズを含むので、グラフ形はギザギザとなっている。この中からピークbの位置を正確に特定することは難しい。
【0069】
図16は、本発明におけるΔpと対消滅γ線との関係を表している。図16のグラフ形には図15で説明したのと同様に対消滅γ線に由来するピークbが現れている。図16によれば、ピークbの位置はΔpについて正の方向にシフトしている。この原因は、2つの放射線検出器が認識している時刻に差があるからである。この詳細は図15を用いて既に説明済みである。
【0070】
同時計数部20は、図16に示す関係図を基にピークbの位置を取得し、放射線検出器同士の時間的ズレを補正して同時計数を行う。遅延同時計数部21も同様の動作をする。本発明の構成によれば、ピークbは、図16に示す台形状の上底部に現れるので、同時計数部20は、ピークbの位置を正確に取得することができる。図16におけるグラフ形もノイズによりギザギザとなっている。しかし、図15の場合と異なり、図16の場合は、平坦となっている台形の上底部に現れるのであるから、この中からピークbの位置を正確に特定することが容易なのである。
【0071】
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、図17に示す放射線断層撮影装置9の動作について説明する。
【0072】
<被検体載置ステップS1>
実施例1の構成により、放射性薬剤の分布を知る検査を行うには、図1に示すように放射性薬剤が投与された被検体Mが天板10に載置される。そして、天板移動機構15により天板10が移動され、被検体Mが検出器リング12の内部に導入される。
【0073】
<同時計数開始ステップS2>
続いて、術者が操作卓35を通じて同時計数の開始を指示すると、被検体Mから放射される対消滅γ線の検出が開始される。このとき、同時計数部20がフレームFa2の期間に検出されたγ線に対し各フレームFb1,Fb2,Fb3を跨いだ期間に検出されたγ線について同時計数を開始する。同時計数部20は、同時計数を行うフレームをフレームFa2からフレームFa3,そしてフレームFa4……の順に変更し、その度に同時計数する相手のフレームをフレームFb1,Fb2,Fb3から、フレームFb2,Fb3,Fb4,そしてフレームFb3,Fb4,Fb5……と変更する。遅延同時計数部21も同様の動作を行う。
【0074】
同時計数部20は、同時計数開始ステップS2を行う際、図16で説明したような放射線検出器同士の時間的ズレを補正しながら同時計数を行う。時間的ズレの補正値は、遅延同時計数部21にも送出され、遅延同時計数部21は、この補正値に基づいて検出データの時刻情報を補正しながら動作する。つまり、同時計数部20は、放射線検出器の出力データの間における時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作する。この様な構成とできるのは、本発明によれば放射線検出器同士の時間的ズレをより正確に取得できるからである。とはいうものの、従来のように放射性のファントムを検出器リング12に導入して時間ズレを予め求めておいて、これを基に被検体測定時の検出データを補正するようにしてもよい。
【0075】
<再構成ステップS3>
同時計数部20および遅延同時計数部21は、同時計数データおよび遅延同時計数データをデータ保持部22に送出する。画像生成部25か両データを基に被検体内の放射性薬剤の分布を示した断層画像Dを取得する。この断層画像Dが表示部36に表示されて検査は終了となる。
【0076】
以上のように本発明の構成によれば、一方の放射線検出器が検出したγ線と、一方の放射線検出器がγ線を検出した時点を含んだフレームFであるフレームFa2に経時的に隣接した隣接フレームFの期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う同時計数部20を備えている。この様にすることで、フレームFを跨ぐ対消滅γ線のペアの検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が低下せず、断層画像Dの画質の劣化が防がれる。
【0077】
また、本発明の構成によれば、時間幅を短くすることができる。従来構成では、フレームFの切り替わりの頻度を少なくする必要があるので、フレームFを短くすることができない。従来構成のままフレームFを短くすると、フレームFを跨いで入射する対消滅γ線が増加し、同時計数の数え落としが増大するからである。しかし、本発明によれば、この様な制約がないので、フレームFが短くできる。これにより、放射線検出器1が出力する検出データのサイズを小さくすることができる。フレームFが短いとそれだけ、検出データに含まれる時刻情報のサイズが小さくなるからである。したがって、本発明によれば、装置構成が簡単で、検出データの処理速度が改善された放射線断層撮影装置が提供できる。
【0078】
また、上述の構成は、フレームFを跨いでの対消滅γ線の検出に加えて、従来通りのフレームFを跨がない対消滅γ線の検出も行うので、より確実に高画質の断層画像Dを生成することができる。
【0079】
上述の構成における同時計数部20が同時計数をする隣接フレームFは、フレームFa2にとっての未来方向に隣接するフレームFb3,および過去方向に隣接するフレームFb1であれば、フレームFa2にとって未来方向、過去方向のいずれの方向にフレームFを跨ぐ対消滅γ線であっても検出が可能となる。
【0080】
また、上述の構成は、偶発的なγ線の同時検出が同時計数に与える影響を除去する目的で行われる遅延同時計数についても同時計数と同様にフレームFを跨ぐ対消滅γ線をカウントする。このようにすることで遅延同時計数をするときの条件を同時計数をするときの条件に合わせるようにすることができる。したがって、同時計数に含まれる偶発同時計数を正確に除去できる遅延同時計数をカウントすることができる。
【0081】
本発明では、同時計数手部20がフレームFa2および隣接フレームFの期間に検出されたγ線の検出データを用いることにより、放射線検出器の各々が出力する検出データが示す時刻とのズレを認識するようになっている。この様にすればより時刻のズレを正確に認識することができる。時刻のズレの認識はフレームFの影響を受けることがないからである。
【0082】
上述の同時計数部20は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作する。この様にすれば、被検体Mの撮影の前にファントムを撮影する必要がなくなる。従来構成であれば、被検体Mの検出データでは時刻のズレを正確に知ることはできない。しかし、本発明によれば、従来構成よりも時刻のズレを正確に認識することができるので、ファントムの撮影を省略することができる。
【0083】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することが可能である。
【0084】
(1)上述した実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、LGSO(Lu2(1−X)G2XSiO5)やGSO(Gd2SiO5)などの他の材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0085】
(2)上述した実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 放射線検出器
F フレーム(時間幅)
Fa2 フレーム(検出時点時間幅)
Fb3 フレーム(隣接時間幅)
19 クロック(時刻情報送信手段)
20 同時計数部(同時計数手段)
23 遅延同時計数部(遅延同時計数手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放出されたγ線をイメージングする放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置50は、図18に示すように被検体Mを載置する天板52と、同時入射のγ線を検出する検出器リング62とを備えている。検出器リング62の開口は天板52ごと被検体Mを挿入できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の放射線断層撮影装置50を用いて、被検体Mの放射性薬剤の分布を知ろうとする場合は、被検体Mが検出器リング62の開口の内部に存する位置に移動される。そして、被検体Mから放出された対消滅γ線のペアの発生位置をイメージングして放射線断層画像が取得される。この様な放射線断層撮影装置をPET(positron emission tomography)装置と呼ぶ。検出器リング62は、複数の放射線検出器を円環状に配列して構成されている。
【0004】
対消滅γ線のペアの検出は、検出器リング62における異なる2つの場所で、同時にγ線を検出することで行われる。すなわち、検出器リング62を構成する2つの放射線検出器が同時にγ線を検出したとき、この2つのγ線は対消滅γ線のペアであるとされるのである。
【0005】
検出器リング62が検出した2つのγ線についての同時性の判断は、放射線検出器がγ線を検出したときの時刻を基に行われる。すなわち、1つのγ線が検出された時点を中心に時間的な幅を考えて、この期間に別のγ線が検出された場合、これら2つのγ線は、同時に検出器リング62に入射されたものとされる。このときの時間的幅はタイムウィンドウと呼ばれ、数〜数十n秒程度である。
【0006】
放射線検出器が用いる時刻情報について説明する。放射線検出器は、0n秒から126n秒までについて2n秒ごとに付したシリアル番号を用いて放射線が入射した時刻を表す。放射線検出器がγ線を検出したときに出力する検出データには、このシリアル番号が付された時刻情報が含まれている。シリアル番号の桁数は、所定の桁数に設定される。桁数を大きくしすぎると、検出データあたりのデータサイズが大きくなり、単位時間当たりに転送できる検出データ数の制限が厳しくなるからである。
【0007】
したがって、放射線検出器が出力する検出データに付されたシリアル番号は、ある一定の時間ごとに同じ値が繰り返されることになる。放射線検出器が内蔵するクロック装置は、0n秒からカウントを始めて126n秒までカウントする。126n秒までカウント終えると、クロック装置は、再び0n秒からカウントを始める。したがって、放射線検出器が出力する検出データには、0n秒〜126n秒までのいずれかを表す時刻情報が付されていることになる。
【0008】
対消滅γ線のペアを検出する同時計数部は、2つの検出データに含まれる時刻情報同士を比較する。時刻情報が同時とされた検出データは、対消滅γ線とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−232548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来構成によれば、次のような問題がある。
すなわち、従来装置によれば、対消滅γ線のペアの数え落としが生じてしまう。この問題について説明する。時刻情報が繰り返す0n秒から126n秒までの期間をフレームとよぶ。放射線検出器が内蔵するクロック装置は、放射線検出器の間で同期されているので、フレームの開始・終了タイミングは同期している。対消滅γ線のペアの検出は、同期したフレームの間でしかすることができない。
【0011】
説明の簡単のため、検出器リング62は、2つの放射線検出器によって構成されているとする。2つの放射線検出器は、時刻情報を出力することができ、互いの時刻情報は、同期している。図19に示すように、一方の放射線検出器のフレームは、128n秒ごとにフレームm1,m2,m3と変遷しているものとし、もう一方の放射線検出器のフレームは、128n秒ごとにフレームn1,n2,n3と変遷しているものとする。そして、フレームm1,m2,m3は、フレームn1,n2,n3のそれぞれに同期しているものとする。
【0012】
フレームm2の期間内に一方の放射線検出器がγ線を検出したとする。この検出時点を図19では矢印で示している。このγ線のペアを探索するときには、もう一方の放射線検出器の検出データが参照されることになる。このとき検出データが参照される範囲は、フレームm2に同期しているフレームn2に限られる。同期していないフレームが示す時刻情報は互いに異なる時点を表すので、同期していないフレーム同士で同時性を判断することはできないからである。
【0013】
次に、フレームm2の期間内において、1n秒の時点でγ線が検出されたとする。この検出時点を図20では実線の矢印で示している。このとき、ペアのγ線は、やはりフレームn2の中から探索される。しかしながら、実際は、ペアのγ線が図20に示すようにフレームn1の末端で検出されていた場合もある。この検出時点を図20では破線の矢印で示している。
【0014】
この様な事情があるにも関わらず、従来の構成によれば、同期したフレーム同士でしかγ線の同時性を判断しない。したがって、図20のようにフレームの切り替わり時点を跨いで検出される対消滅γ線のペアは、検出されない。
【0015】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、対消滅γ線のペアの数え落としを防止し、より高画質な断層画像を取得できる放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線断層撮影装置は、被検体から照射される対消滅放射線をイメージングする放射線断層撮影装置であって、複数の放射線検出器と、所定の時間幅の開始から終了までを示す時刻情報を放射線検出器の各々に送信し、時間幅が終了すると、再び時間幅を開始させて時刻情報を放射線検出器の各々に送信する動作を繰り返す時刻情報送信手段と、第1の放射線検出器と第2の放射線検出器とのそれぞれが検出した放射線について対消滅放射線の同時計数を行う同時計数手段とを備え、同時計数手段は、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行うことを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]本発明の構成によれば、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う同時計数手段を備えている。この様にすることで、時間幅を跨ぐ対消滅放射線のペアの検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が増加し、断層画像の画質を向上できる。
【0018】
また、本発明の構成によれば、時間幅を短くすることができる。従来構成では、時間幅の切り替わりの頻度を少なくする必要があるので、時間幅を短くすることができない。従来構成のまま時間幅を短くすると、時間幅を跨いで入射する対消滅放射線が増加し、同時計数の数え落としが増大するからである。しかし、本発明によれば、この様な制約がないので、時間幅が短くできる。これにより、放射線検出器が出力する検出データのサイズを小さくすることができる。時間幅が短いとそれだけ検出データに含まれる時刻情報のサイズが小さくなるからである。したがって、本発明によれば、装置構成が簡単で、検出データの処理速度が改善された放射線断層撮影装置が提供できる。
【0019】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、隣接時間幅に加えて、検出時点時間幅で第2の放射線検出器が検出した放射線についても同時計数を行えばより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。上述の構成によれば、時間幅を跨いでの対消滅放射線の検出に加えて、従来通りの時間幅を跨がない対消滅放射線の検出も行うので、より確実に高画質の断層画像を生成することができる。
【0021】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、検出時点時間幅に対して未来方向に隣接した隣接時間幅と、検出時点時間幅に対して過去方向に隣接した隣接時間幅とのいずれかの期間に第2の放射線検出器が検出した放射線について同時計数を行えばより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。同時計数手段が同時計数をする隣接時間幅は、検出時点時間幅にとっての未来方向の隣接時間幅、および過去方向の隣接時間幅であれば、検出時点時間幅にとって未来方向、過去方向のいずれの方向に時間幅を跨ぐ対消滅放射線であっても検出が可能となる。
【0023】
また、上述の放射線断層撮影装置において、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点から所定の時間だけ離間した時点において第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う遅延同時計数手段を備え、遅延同時計数手段は、第1の放射線検出器が検出時点時間幅の期間に検出した放射線と、第2の放射線検出器が隣接時間幅の期間に検出した放射線との間で同時計数を行えばより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。すなわち、偶発的な放射線の同時検出が同時計数に与える影響を除去する目的で行われる遅延同時計数についても同時計数と同様に時間幅を跨ぐ対消滅放射線をカウントする。このようにすることで遅延同時計数をするときの条件を同時計数をするときの条件に合わせるようにすることができる。したがって、同時計数に含まれる偶発同時計数を正確に除去できる遅延同時計数をカウントすることができる。
【0025】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、検出時点時間幅および隣接時間幅の期間に検出された放射線の検出データを用いることにより、第1の放射線検出器が出力する検出データが示す時刻と、第2の放射線検出器とが出力する検出データが示す時刻とのズレを認識して、このズレを補正して動作すればより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。すなわち、同時計数手段が検出時点時間幅および隣接時間幅の期間に検出された放射線の検出データを用いることにより、放射線検出器の各々が出力する検出データが示す時刻とのズレを認識するようになっている。この様にすればより時刻のズレを正確に認識することができる。時刻のズレの認識は時間幅の影響を受けることがないからである。
【0027】
また、上述の放射線断層撮影装置において、同時計数手段は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作すればより望ましい。
【0028】
[作用・効果]上述の構成は、本発明装置のより具体的な構成を示すものとなっている。すなわち、同時計数手段は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作する。この様にすれば、被検体の撮影の前にファントムを撮影する必要がなくなる。従来構成であれば、被検体の検出データでは時刻のズレを正確に知ることはできない。しかし、本発明によれば、従来構成よりも時刻のズレを正確に認識することができるので、ファントムの撮影を省略することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の構成によれば、第1の放射線検出器が検出した放射線と、第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う同時計数手段を備えている。この様にすることで、時間幅を跨ぐ対消滅放射線のペアの検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が増加し、断層画像の画質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係る検出器リングの構成を説明する平面図である。
【図4】実施例1に係る同時計数部の動作について説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る同時計数部の動作について説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る同時計数部の動作について説明する模式図である。
【図7】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図8】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図9】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図10】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図11】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図12】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図13】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図14】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図15】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図16】実施例1の効果について説明する模式図である。
【図17】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図18】従来の放射線断層撮影装置の構成を説明する図である。
【図19】従来の放射線断層撮影装置の構成を説明する図である。
【図20】従来の放射線断層撮影装置の構成を説明する図である。
【実施例1】
【0031】
<放射線断層撮影装置の構成>
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置9の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置9の構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、全身撮影用となっており、被検体Mを載置する天板10と、天板10をその長手方向(z方向)から導入させる開口を有するガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた天板10をz方向に導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口は、z方向(天板10の長手方向、被検体Mの体軸方向)に伸びた円筒形となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に延伸している。ガントリ11は、被検体Mが収納できる程度の大きさの開口が設けられている。この開口に被検体Mが挿入されることになる。
【0032】
天板10は、ガントリ11(検出器リング12)の開口をz方向から貫通するように設けられているとともに、z方向に沿って進退自在となっている。この様な天板10の摺動は、天板移動機構15によって実現される。天板移動機構15は、天板移動制御部16によって制御される。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御する天板移動制御手段である。天板10は、その全域が検出器リング12の外側に位置している位置から摺動して、検出器リング12の開口にその一方側から導入される。
【0033】
ガントリ11の内部には、被検体Mから放射される対消滅γ線のペアを検出する検出器リング12が備えられている。この検出器リング12は、被検体Mの体軸方向に伸びた筒状であり、そのz方向の長さは、15cmから26cm程度である。リング状の吸収体13a,13bは、検出器リング12の中心軸方向(z方向)の両端を覆うように設けられている。吸収体13a,13bは、γ線を透過しにくい部材で生成されており、検出器リング12の外部から内部にγ線が入射するのを防いでいる。吸収体13a,13bは、被検体Mの断層画像Dの撮影に邪魔となる検出器リング12の外部で生じたγ線を除去する目的で設けられている。この吸収体13a,13bの内径は、検出器リング12の内径よりも小さくなっている。
【0034】
検出器リング12を構成する放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図2は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図2に示すようにγ線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0035】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が二次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶Cは、Ceが拡散したLu2(1−X)Y2XSiO5(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。放射線検出器1は、蛍光の強度により検出したγ線のエネルギーを求め、エネルギーデータを出力することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0036】
検出器リング12の構成について説明する。実施例1によれば、図3に示すように複数個の放射線検出器1がz方向に垂直な平面上の仮想円に配列することで1つの単位リング12bが形成される。この単位リング12bを中心軸方向(z方向)に複数配列されて検出器リング12を構成してもよい。
【0037】
クロック19は、放射線検出器1の各々に時刻情報を送信する。クロック19が送出する時刻情報は、例えば、所定の桁数を有するシリアルナンバーとなっている。クロック19が送信するシリアルナンバーが2進数で6桁あるとし、2n秒ごとにシリアルナンバーの番号を1ずつ増加させていくものとする。この場合、クロック19は、128n秒の間の時間を識別しうる時刻情報を生成することができることになる。また、高精度の時間情報を生成するために専用のIC(TDC)を用いてもよい。時刻情報の生成に関して、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0038】
クロック19が生成する時刻情報における時間識別可能な長さをフレームFと呼ぶことにする。クロック19は、0n秒から126n秒までカウントをして、2n秒ごとにシリアルナンバーを放射線検出器1の各々に送出する。クロック19は、126n秒までカウントを終えると再び0n秒からカウントを開始する。つまり、クロック19は、フレームFの開始から終了までを示す時刻情報を放射線検出器1の各々に送信し、フレームFが終了すると、再びフレームFを開始させて時刻情報を放射線検出器の各々に送信するという動作を繰り返す。
【0039】
放射線検出器1は、γ線を検出すると、検出強度を示すデータに、検出時点の時刻情報を付加して検出データを生成し、検出データを同時計数部20に送出する。同時計数部20は、このγ線が対消滅γ線であったとしたときのもう一方のγ線を探し出す動作をする。具体的には同時計数部20は、各放射線検出器1から送られてくる検出データを検索して、このγ線を検出した放射線検出器1とは別の放射線検出器1がγ線を検出しているかを調べる。同時計数部20は、γ線が検出された時刻に近い時点で別のγ線が検出されている場合にこれら2つのγ線が対消滅γ線のペアであることを認識する。同時計数部20は、この対消滅γ線のペアを計数して、結果をデータ保持部22に送出する。データ保持部22は、同時計数データを保持する目的で設けられている。
【0040】
検出データは、遅延同時計数部21にも送出される。遅延同時計数部21は、放射線検出器1がγ線を検出した時点から、所定の時間だけ遅れた時点において検出されたγ線を探し出す動作をする。具体的には、遅延同時計数部21は、各放射線検出器1から送られてくる検出データを検索して、このγ線とは別のγ線を検出しているかを調べる。遅延同時計数部21は、γ線が検出された時刻から所定の時間だけ遅れた時刻に近い時点で別のγ線が検出されている場合にこれら2つのγ線を認識する。遅延同時計数部21も同時計数部20と同様にタイムウィンドウをγ線のペアの認定に用いている。遅延同時計数部21の用いるタイムウィンドウの時間的位置は、同時計数部20の場合と異なりγ線の入射時点からずれた範囲となっている。遅延同時計数部21は、このγ線のペアを計数して、結果をデータ保持部22に送出する。データ保持部22は、上述の同時計数データの他、遅延同時計数データをも保持する。
【0041】
遅延同時計数データの意味について説明する。同時計数データは、対消滅γ線でないγ線のペアについても計数を行ってしまっている。つまり、同時計数データが示す計数値は、実際の対消滅γ線の計数値よりも多いことになる。この様な現象が起こる理由について説明する。同時計数部20は、同時に(正確にはほぼ同時に)検出されたγ線を対消滅γ線のペアとするという動作を行う。このような同時に検出された2つのγ線には、対消滅γ線のペアの他、2つのγ線が偶発的に同時に検出されたものも含まれている。このような偶発的なペアは、対消滅γ線のペアではない。同時計数データは、この様な偶発的なペアについても計数してしまっている。
【0042】
遅延同時計数データは、同時計数データにおける偶発的なペアの数えすぎを補正する目的で計数される。すなわち、遅延同時計数データは、所定時間だけずれて検出された2つの放射線対であり、対消滅γ線のペアではないことは確実である。むしろ、この2つの放射線対は、一方のγ線と、このγ線が検出されてから、所定時間だけ遅れて偶然検出されたγ線とのペアなのである。同時計数データには、遅延同時計数データが示す計数値の分だけ偶発的に2つのγ線が余計に検出されていると推察される。
【0043】
したがって、同時計数データの計数値より遅延同時計数データだけ計数を減算して補正すれば、同時計数データにおける偶発的なγ線のペアについての影響を除去することができるのである。
【0044】
<同時計数部の動作>
次に、本発明の最も特徴的な部分である同時計数部20の動作について説明する。図4は、同時計数部20の動作を説明する模式図である。図4においては、簡単のため、検出器リング12を構成する2つの放射線検出器の間の動作について説明するものであり、以降の説明においても同様とする。図4におけるフレームFa1,Fa2,Fa3,Fa4はこの順に経時的に隣接したフレームであり、一方の放射線検出器についてのフレームを意味している。同様に、フレームFb1,Fb2,Fb3,Fb4はこの順に経時的に隣接したフレームであり、もう一方の放射線検出器についてのフレームを意味している。フレームFa1,Fa2,Fa3,Fa4の順は時間の経過に対応しており、フレームFa1,Fa2,Fa3,Fa4の各々は、フレームFb1,Fb2,Fb3,Fb4の各々と同期している。各フレームの長さは128n秒である。また、説明の便宜上、同時計数部20は、検出器リング12を構成する2つの放射線検出器の組み合わせについて動作するものとする。
【0045】
図4においては、一方の放射線検出器がフレームFa2に属する時点に検出されたγ線pについて同時計数部20が同時計数を行う様子を示している。同時計数部20は、γ線pが対消滅γ線のペアであったとしたときの対をなすγ線をもう一方の放射線検出器が出力した検出データから探し出す。対をなすγ線は、γ線pが検出された時点から時間的にさほど違いがない時点で検出されているはずである。そこで、同時計数部20は、γ線pが検出した時点を中心に所定の幅を有するタイムウィンドウTWの期間内にもう一方の放射線検出器がγ線を検出していないかを調べるのである。タイムウィンドウTWの幅としては例えば10n秒が選択される。図4のようにγ線pの検出時点がフレームFa2の中間的な位置に属するときは同時計数部20は、フレームFa2と同期しているフレームFb2の期間中に検出されたγ線の中から対をなすγ線を探索する。
【0046】
図5は、γ線pがフレームFa2の後端で検出された場合を図示している。フレームFa2の後端とは、フレームFa2から後続フレームFa3への切り替わりの直前を表し、フレームFa2の期間の終わり頃を意味している。この様な場合、タイムウィンドウTWがフレームFb2に収まりきらない。この場合、同時計数部20は、タイムウィンドウTWをフレームFb3まで拡張して、タイムウィンドウTWの幅を確保する。この様にすることで、一方の放射線検出器が検出したγ線と、この放射線検出器がγ線を検出した時点を含んだフレームであるフレームFa2(検出時点時間幅)に経時的に隣接したフレームFb3(隣接時間幅)の期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う。
【0047】
また、γ線pがフレームFa2の前端で検出された場合は、同時計数部20は、タイムウィンドウTWをフレームFb1まで拡張してタイムウィンドウTWの幅を確保して動作することになる。フレームFa2の前端とは、前段のフレームFa1から現在のフレームFa2へ切り替わった直後を表し、フレームFa2の期間が始まった頃を意味している。この様にすることで、一方の放射線検出器が検出したγ線と、この放射線検出器がγ線を検出した時点を含んだフレームであるフレームFa2(検出時点時間幅)に経時的に隣接したフレームFb1(隣接時間幅)の期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う。
【0048】
つまり、図6に示すように、同時計数部20は、フレームFa2(検出時点時間幅)に対して未来方向に隣接したフレームFb3(隣接時間幅)と、フレームFa2(検出時点時間幅)に対して過去方向に隣接したフレームFb1(隣接時間幅)とのいずれかの期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線について同時計数を行う。図6においては、γ線pを検出した時点が属するフレームFa2を網掛けで示している。また、このγ線のペアを検索する際に参照とされるフレームFb1,Fb2,Fb3は斜線で表している。この様に同時計数部20は、フレームFa1に同期しているフレームFb1(隣接時間幅)に加えて、γ線pの検出時点が属するフレームFa2に同期しているフレームFb2(検出時点時間幅)でもう一方の放射線検出器が検出したγ線についても同時計数を行う。
【0049】
<遅延同時計数部の動作>
遅延同時計数部21の動作は、同時計数部20の動作と同様である。異なる点は、タイムウィンドウTWがγ線pが検出された時点から過去方向または未来方向にシフトしていることである。すなわち、遅延同時計数部21は、一方の放射線検出器が検出したγ線と、一方の放射線検出器がγ線を検出した時点から所定の時間だけ離間した時点においてもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う。また、説明の便宜上、遅延同時計数部21は、検出器リング12を構成する2つの放射線検出器の組み合わせについて動作するものとする。
【0050】
遅延同時計数部21においても、γ線pがフレームFa2の後端で検出された場合は、γ線pと、フレームFb2およびフレームFb3の期間中に検出されたγ線との間で同時計数を行う。また、遅延同時計数部21は、γ線pがフレームFa2の前端で検出された場合は、γ線pと、フレームFb2およびフレームFb1の期間中に検出されたγ線との間で同時計数を行う。つまり、遅延同時計数部21は、一方の放射線検出器がフレームFa2の期間に検出したγ線と、もう一方の放射線検出器が隣接時間幅の期間に検出したγ線との間で同時計数を行う。γ線pの検出のタイミング、タイムウィンドウTWの検出時点とのシフト量によっては、タイムウィンドウTWがフレームFb1,Fb2,F3のいずれかのみに属する場合もある。
【0051】
このように構成することにより、同時計数や遅延同時計数をする際に動作対象のγ線pの検出時点がフレームFa2のどこにあったとしても、同時計数や遅延同時計数をする際のタイムウィンドウTWは、縮小しない。これにより、フレームFb2,Fb3を跨いで検出された対消滅γ線も数え落とすことなく正確に同時計数や遅延同時計数ができる。
【0052】
画像生成部25は、データ保持部22が保持する同時計数に関するデータ、および遅延同時計数に関するデータを基に被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた断層画像Dを生成する。
【0053】
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41と、放射線断層画像を表示する表示部36とを備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部16,19,20,21,23,25を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。操作卓35は、各部16,19,20,21,23,25に対して術者の操作を入力させるものである。
【0054】
<本発明の効果>
本発明の効果としては、同時計数の数え落としを防ぎ、鮮明な断層像を取得することにある。本発明の構成は、この効果の他、偶発同時計数をより正確に行う効果も有している。この効果の詳細について説明する。
【0055】
(1)従来構成の場合
図7は、従来の構成を示している。従来構成によれば、同時計数はフレームFaとこのフレームに同期したフレームFbとの間で同時計数を行う。フレームFaは対消滅γ線を検出する一方の放射線検出器についてのフレームである。同様にフレームFbは、対消滅γ線を検出するもう一方の放射線検出器についてのフレームである。
【0056】
図7に示すように、一方の放射線検出器が時点p1にγ線を検出したとし、もう一方の放射線検出器が時点p2にγ線を検出したとする。時点p1と時点p2との間の時間をΔpとして表すことにする。
【0057】
図8は、Δpを変化させると対消滅γ線の検出がどのように変化するかを示している。同時計数は、各フレームを64分割してこれを2n秒幅の単位時間として計数動作をするものとする。すなわち、同時計数は、単位時間よりも細かい同時性を判断しないで動作する。図8の左側は、Δpが0n秒のときを表している。Δpが0n秒であるとは、すなわち、時点p1と時点p2が等しいということである。この場合、図8左側の斜線で示すように、同時刻となっている単位時間同士で対消滅γ線の計数が行われる。このとき対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、64通りあることになる。単位時間は、1フレームに64個あるからである。
【0058】
図8の右側は、Δpが2n秒のときを表している。Δpが2n秒であるとは、すなわち、時点p2は時点p1よりも2n秒だけ遅いということである。この場合、図8右側の斜線で示すように、フレームFaの終端に位置する単位時間のペアはフレームFbにはない。従来の構成では、フレームFaとフレームFbとの間で同時計数がされるからである。したがって、このとき対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、先程から1つ減って63通りあることになる。
【0059】
このように、Δpが0n秒から離れるにつれ対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、減少する。すなわち、Δpが0n秒から増加するにつれ、対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペア減少し、Δpが62n秒のときペアは、1通りとなる。また、Δpが0n秒から減少するにつれ、対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペア減少し、Δpが−62n秒のときペアは、1通りとなる。
【0060】
このことは、Δpの絶対値が大きくなるにつれ同時計数でカウントされる対消滅γ線のカウント数が減少することを意味している。Δpが0n秒のときは、64通りあるペアのいずれかで対消滅γ線の判定をなすことできるので、対消滅γ線が見つかる機会が多い。しかし、Δpが62n秒のときは、1通りのペアにより対消滅γ線の判定をせねばならず、対消滅γ線が見つかる機会が少ない。図9は、Δpと対消滅γ線のカウント数との関係を示している。この関係図は、Δpが0n秒であるときを頂点とする三角形状となっている。
【0061】
図10は、この三角形状において同時計数と遅延同時計数がどのような位置に当たるかを意味している。三角形状のΔpが0n秒付近における斜線で示す部分は、同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分がΔpの方向に幅を有するのは、同時計数がタイムウィンドウTWを用いて実行されるからである(図4参照)。図10における三角形状の両傍らにおける網掛けで示す部分は、遅延同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分は、Δpが正の領域と負の領域の2つに分かれて存在する。この様にしないと遅延同時計数をするときのカウント数が足りず、正確な遅延同時計数をすることができないからである。
【0062】
(2)本発明の構成の場合
図11は、本発明の構成を示している。本発明の構成によれば、同時計数はフレームFa2とフレームFb1,フレームFb2,フレームFb3との間で同時計数を行う。フレームFa2は対消滅γ線を検出する一方の放射線検出器についてのフレームである。同様にフレームFb1,フレームFb2,フレームFb3は、対消滅γ線を検出するもう一方の放射線検出器についてのフレームである。
【0063】
図12は、Δpが2n秒であるときの対消滅γ線の検出の様子を意味している。この場合、図12の斜線で示すように、フレームFa2の終端に位置する単位時間のペアはフレームFb3にある。本発明の構成では、フレームFa2とフレームFb3との間でも同時計数がされるからである。したがって、このとき対消滅γ線と判定される可能性のある単位時間のペアは、図8で説明した減少が起こらず、64通りあることになる。図13は、Δpと対消滅γ線のカウント数との関係を示している。この関係図は、Δpが0n秒であるときを中心とする台形状となっている。
【0064】
図14は、この三角形状において同時計数と遅延同時計数がどのような位置に当たるかを意味している。三角形状のΔpが0n秒付近における斜線で示す部分は、同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分がΔpの方向に幅を有するのは、同時計数がタイムウィンドウTWを用いて実行されるからである(図4参照)。図14における網掛けで示す部分は、遅延同時計数で用いられるカウントを意味している。この部分は、Δpが負の領域に存在する。この様にしても遅延同時計数をするときのカウント数が十分であり、正確な遅延同時計数をすることができるからである。
【0065】
図10と図14とにおいて網掛けで示す遅延同時計数のカウントを見れば分かるように、本発明における遅延同時計数のカウントは同時計数のカウントをΔpについて負の方向にシフトしたようになっている。このようにすることで、遅延同時計数をするときの条件を同時計数をするときの条件に合わせるようにすることができる。したがって、同時計数に含まれる偶発同時計数を正確に除去できる遅延同時計数をカウントすることができる。
【0066】
<本発明の別の効果>
本発明の構成は、この効果の他、放射線検出器の時間的ズレをより正確に補正できるという効果も有している。この効果の詳細について説明する。
【0067】
図15は、従来装置におけるΔpと対消滅γ線との関係を表している。図9を用いた説明では言及しなかったが、実測に基づく関係図には、符号bで示すピークが現れる。このピークは、対消滅γ線に由来している。図15に示すピークbは、本来はΔpが0n秒のところに現れるはずである。対消滅γ線は、2つの放射線検出器に同時に入射するからである。図15によれば、ピークbの位置はΔpについて正の方向にシフトしている。この原因は、2つの放射線検出器が認識している時刻に差があるからである。放射線検出器には検出の個体差があり、検出器リング12に設けられている位置も異なる。すると、対消滅γ線のペアが2つの放射線検出器に同時に入射したとしても、2つの放射線検出器は、それぞれ異なる時刻情報が付与された検出データを出力することがあるのである。
【0068】
同時計数部20は、図15に示す関係図を基にピークbの位置を取得し、放射線検出器同士の時間的ズレを補正して同時計数を行う。すなわち、同時計数部20は、フレームFb1,フレームFb2,フレームFb3の期間に検出されたγ線の検出データを用いることにより、一方の放射線検出器が出力する検出データが示す時刻と、もう一方の放射線検出器とが出力する検出データが示す時刻とのズレを認識して、このズレを補正して動作する。遅延同時計数部21も同様の動作をする。しかし、従来の構成によれば、ピークbは、図15に示す三角形状のグラフ形の傍らに現れるので、同時計数部20は、ピークbの位置を正確に取得することが難しい。図15のグラフ形は、説明の便宜上、ピークb以外の部分は直線的に描いている。しかし、実際は多くのノイズを含むので、グラフ形はギザギザとなっている。この中からピークbの位置を正確に特定することは難しい。
【0069】
図16は、本発明におけるΔpと対消滅γ線との関係を表している。図16のグラフ形には図15で説明したのと同様に対消滅γ線に由来するピークbが現れている。図16によれば、ピークbの位置はΔpについて正の方向にシフトしている。この原因は、2つの放射線検出器が認識している時刻に差があるからである。この詳細は図15を用いて既に説明済みである。
【0070】
同時計数部20は、図16に示す関係図を基にピークbの位置を取得し、放射線検出器同士の時間的ズレを補正して同時計数を行う。遅延同時計数部21も同様の動作をする。本発明の構成によれば、ピークbは、図16に示す台形状の上底部に現れるので、同時計数部20は、ピークbの位置を正確に取得することができる。図16におけるグラフ形もノイズによりギザギザとなっている。しかし、図15の場合と異なり、図16の場合は、平坦となっている台形の上底部に現れるのであるから、この中からピークbの位置を正確に特定することが容易なのである。
【0071】
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、図17に示す放射線断層撮影装置9の動作について説明する。
【0072】
<被検体載置ステップS1>
実施例1の構成により、放射性薬剤の分布を知る検査を行うには、図1に示すように放射性薬剤が投与された被検体Mが天板10に載置される。そして、天板移動機構15により天板10が移動され、被検体Mが検出器リング12の内部に導入される。
【0073】
<同時計数開始ステップS2>
続いて、術者が操作卓35を通じて同時計数の開始を指示すると、被検体Mから放射される対消滅γ線の検出が開始される。このとき、同時計数部20がフレームFa2の期間に検出されたγ線に対し各フレームFb1,Fb2,Fb3を跨いだ期間に検出されたγ線について同時計数を開始する。同時計数部20は、同時計数を行うフレームをフレームFa2からフレームFa3,そしてフレームFa4……の順に変更し、その度に同時計数する相手のフレームをフレームFb1,Fb2,Fb3から、フレームFb2,Fb3,Fb4,そしてフレームFb3,Fb4,Fb5……と変更する。遅延同時計数部21も同様の動作を行う。
【0074】
同時計数部20は、同時計数開始ステップS2を行う際、図16で説明したような放射線検出器同士の時間的ズレを補正しながら同時計数を行う。時間的ズレの補正値は、遅延同時計数部21にも送出され、遅延同時計数部21は、この補正値に基づいて検出データの時刻情報を補正しながら動作する。つまり、同時計数部20は、放射線検出器の出力データの間における時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作する。この様な構成とできるのは、本発明によれば放射線検出器同士の時間的ズレをより正確に取得できるからである。とはいうものの、従来のように放射性のファントムを検出器リング12に導入して時間ズレを予め求めておいて、これを基に被検体測定時の検出データを補正するようにしてもよい。
【0075】
<再構成ステップS3>
同時計数部20および遅延同時計数部21は、同時計数データおよび遅延同時計数データをデータ保持部22に送出する。画像生成部25か両データを基に被検体内の放射性薬剤の分布を示した断層画像Dを取得する。この断層画像Dが表示部36に表示されて検査は終了となる。
【0076】
以上のように本発明の構成によれば、一方の放射線検出器が検出したγ線と、一方の放射線検出器がγ線を検出した時点を含んだフレームFであるフレームFa2に経時的に隣接した隣接フレームFの期間にもう一方の放射線検出器が検出したγ線との間で同時計数を行う同時計数部20を備えている。この様にすることで、フレームFを跨ぐ対消滅γ線のペアの検出が可能となる。これにより同時計数のカウント数が低下せず、断層画像Dの画質の劣化が防がれる。
【0077】
また、本発明の構成によれば、時間幅を短くすることができる。従来構成では、フレームFの切り替わりの頻度を少なくする必要があるので、フレームFを短くすることができない。従来構成のままフレームFを短くすると、フレームFを跨いで入射する対消滅γ線が増加し、同時計数の数え落としが増大するからである。しかし、本発明によれば、この様な制約がないので、フレームFが短くできる。これにより、放射線検出器1が出力する検出データのサイズを小さくすることができる。フレームFが短いとそれだけ、検出データに含まれる時刻情報のサイズが小さくなるからである。したがって、本発明によれば、装置構成が簡単で、検出データの処理速度が改善された放射線断層撮影装置が提供できる。
【0078】
また、上述の構成は、フレームFを跨いでの対消滅γ線の検出に加えて、従来通りのフレームFを跨がない対消滅γ線の検出も行うので、より確実に高画質の断層画像Dを生成することができる。
【0079】
上述の構成における同時計数部20が同時計数をする隣接フレームFは、フレームFa2にとっての未来方向に隣接するフレームFb3,および過去方向に隣接するフレームFb1であれば、フレームFa2にとって未来方向、過去方向のいずれの方向にフレームFを跨ぐ対消滅γ線であっても検出が可能となる。
【0080】
また、上述の構成は、偶発的なγ線の同時検出が同時計数に与える影響を除去する目的で行われる遅延同時計数についても同時計数と同様にフレームFを跨ぐ対消滅γ線をカウントする。このようにすることで遅延同時計数をするときの条件を同時計数をするときの条件に合わせるようにすることができる。したがって、同時計数に含まれる偶発同時計数を正確に除去できる遅延同時計数をカウントすることができる。
【0081】
本発明では、同時計数手部20がフレームFa2および隣接フレームFの期間に検出されたγ線の検出データを用いることにより、放射線検出器の各々が出力する検出データが示す時刻とのズレを認識するようになっている。この様にすればより時刻のズレを正確に認識することができる。時刻のズレの認識はフレームFの影響を受けることがないからである。
【0082】
上述の同時計数部20は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作する。この様にすれば、被検体Mの撮影の前にファントムを撮影する必要がなくなる。従来構成であれば、被検体Mの検出データでは時刻のズレを正確に知ることはできない。しかし、本発明によれば、従来構成よりも時刻のズレを正確に認識することができるので、ファントムの撮影を省略することができる。
【0083】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することが可能である。
【0084】
(1)上述した実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、LGSO(Lu2(1−X)G2XSiO5)やGSO(Gd2SiO5)などの他の材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0085】
(2)上述した実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 放射線検出器
F フレーム(時間幅)
Fa2 フレーム(検出時点時間幅)
Fb3 フレーム(隣接時間幅)
19 クロック(時刻情報送信手段)
20 同時計数部(同時計数手段)
23 遅延同時計数部(遅延同時計数手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から照射される対消滅放射線をイメージングする放射線断層撮影装置であって、
複数の放射線検出器と、
所定の時間幅の開始から終了までを示す時刻情報を放射線検出器の各々に送信し、前記時間幅が終了すると、再び前記時間幅を開始させて時刻情報を放射線検出器の各々に送信する動作を繰り返す時刻情報送信手段と、
第1の放射線検出器と第2の放射線検出器とのそれぞれが検出した放射線について対消滅放射線の同時計数を行う同時計数手段とを備え、
前記同時計数手段は、前記第1の放射線検出器が検出した放射線と、前記第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線断層撮影装置において、
前記同時計数手段は、前記隣接時間幅に加えて、前記検出時点時間幅で第2の放射線検出器が検出した放射線についても同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線断層撮影装置において、
前記同時計数手段は、前記検出時点時間幅に対して未来方向に隣接した隣接時間幅と、前記検出時点時間幅に対して過去方向に隣接した隣接時間幅とのいずれかの期間に第2の放射線検出器が検出した放射線について同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記第1の放射線検出器が検出した放射線と、前記第1の放射線検出器が放射線を検出した時点から所定の時間だけ離間した時点において前記第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う遅延同時計数手段を備え、
前記遅延同時計数手段は、前記第1の放射線検出器が前記検出時点時間幅の期間に検出した放射線と、前記第2の放射線検出器が前記隣接時間幅の期間に検出した放射線との間で同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記同時計数手段は、前記検出時点時間幅および前記隣接時間幅の期間に検出された放射線の検出データを用いることにより、前記第1の放射線検出器が出力する検出データが示す時刻と、前記第2の放射線検出器とが出力する検出データが示す時刻とのズレを認識して、このズレを補正して動作することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線断層撮影装置において、
同時計数手段は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項1】
被検体から照射される対消滅放射線をイメージングする放射線断層撮影装置であって、
複数の放射線検出器と、
所定の時間幅の開始から終了までを示す時刻情報を放射線検出器の各々に送信し、前記時間幅が終了すると、再び前記時間幅を開始させて時刻情報を放射線検出器の各々に送信する動作を繰り返す時刻情報送信手段と、
第1の放射線検出器と第2の放射線検出器とのそれぞれが検出した放射線について対消滅放射線の同時計数を行う同時計数手段とを備え、
前記同時計数手段は、前記第1の放射線検出器が検出した放射線と、前記第1の放射線検出器が放射線を検出した時点を含んだ時間幅である検出時点時間幅に経時的に隣接した隣接時間幅の期間に第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線断層撮影装置において、
前記同時計数手段は、前記隣接時間幅に加えて、前記検出時点時間幅で第2の放射線検出器が検出した放射線についても同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線断層撮影装置において、
前記同時計数手段は、前記検出時点時間幅に対して未来方向に隣接した隣接時間幅と、前記検出時点時間幅に対して過去方向に隣接した隣接時間幅とのいずれかの期間に第2の放射線検出器が検出した放射線について同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記第1の放射線検出器が検出した放射線と、前記第1の放射線検出器が放射線を検出した時点から所定の時間だけ離間した時点において前記第2の放射線検出器が検出した放射線との間で同時計数を行う遅延同時計数手段を備え、
前記遅延同時計数手段は、前記第1の放射線検出器が前記検出時点時間幅の期間に検出した放射線と、前記第2の放射線検出器が前記隣接時間幅の期間に検出した放射線との間で同時計数を行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記同時計数手段は、前記検出時点時間幅および前記隣接時間幅の期間に検出された放射線の検出データを用いることにより、前記第1の放射線検出器が出力する検出データが示す時刻と、前記第2の放射線検出器とが出力する検出データが示す時刻とのズレを認識して、このズレを補正して動作することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線断層撮影装置において、
同時計数手段は、検出データの時刻のズレを補正するときに被検体測定時に得られる検出データを用いて動作することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−88385(P2013−88385A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231592(P2011−231592)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]