説明

放射線検出器、超高圧放射線検出器および超高圧放射線検出器作成方法

高エネルギー放射線検出用の医療および産業アプリケーション、特に、断層治療(tomotherapy)、および他の画像誘導放射線治療システムで用いられる検知器。本検知器は、筐体に収容されているのが好ましい。複数の検知器要素が、筐体内にインストールされている。検知器要素は、基板(38)、基板の少なくとも1つの表面上に付着した読出し電極層(40)、読出し電極層の少なくとも1つの表面に付着したアモルファスセレニウム層(42)、およびアモルファスセレニウム層の少なくとも1つの表面に付着した高電圧電極層(44)を含んでいるのが好ましい。比較的簡単で、安価で、高効率な放射線検出器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府により研究または開発を後援されたことに関する声明
本発明は、スモールビジネスイノベーションリサーチ(Small Business Innovation Reseach)(SBIR)許可番号第1R43CA79383‐01号、および第2R44CA079383‐02号の下で、国立衛生研究所(NIH)により賞を受け、合衆国政府の支援で完成された。合衆国政府は、本発明における特定の権利を有する。
【0002】
一般的に、本発明は、放射線検出器に関し、さらに詳しく述べると、高エネルギー放射線検出用の医療および産業アプリケーション、特に、断層治療(tomotherapy)、および他の画像誘導放射線治療システムで用いられるアモルファスセレニウム(a‐Se)検知器に関する。
【背景技術】
【0003】
現在利用可能な検知器技術は、高エネルギー放射線検出アプリケーションのためには、適切ではない。高エネルギーX線検知器での基本的制限の1つは、物体における高エネルギーX線の相互作用断面がかなり減少することである。これは、超高圧放射線治療撮像アプリケーションに対して、厳しい問題をつきつけるものである。所与の分解能で不十分なコントラストを受け入れるか、さもなければ画質を高めるために、患者への放射線量を増加させなければならない。画質を改良するポイントは、X線と検知器が相互作用する確率を増加させることである。
【0004】
一般に、現在市販されているソリッドステート検出器の設計は、変換効率を増加させるよう、X線センサの正面にコンバータ材料の層を組み込んでいる。こうした技術の例は、若干のシンチレータおよびカメラベース検知器への増感蛍光スクリーンの追加、またはフラットパネルアモルファスセレニウム検知器システムの正面への高密度物質の薄層の追加を含んでいる。しかしながら、これらの従来技術システムからの改良は、コンバータ材料がいったんある厚みに達すると、二次電子の停止のために、かなり制限される。
【0005】
放射線学(デジタルラジオグラフィまたはマンモグラフィ)アプリケーション、およびキロボルト(kV)コンピュータ断層撮影法(CT)アプリケーションのための、現在市販されている検知器のいずれであれ、高エネルギー放射線検知器に必要なあらゆる特性が備わっているというわけではない。現在、市販されている検知器は大雑把に2つのカテゴリに分けられる。デジタルラジオグラフィおよびマンモグラフィ用フラットパネル検知器、およびkV CTスキャナ用検知器である。これらの検知器で用いられるアクティブセンサは、ヨウ化セシウム結晶などのシンチレータ、またはアモルファスセレニウムなどのダイレクト荷電変換材料のいずれかである。フラットパネル検知器はずば抜けた空間分解能を提供するが、一方、最新のkV CTスキャナ用検知器は、通常、kVX線に対して90%を上回る、非常に高い検出効率を伴うよう設計されている。フラットパネル検知器は薄膜トランジスタ(TFT)で読み出されるが、CT検知器は通常フォトダイオードで読み出される。フラットパネル検知器のセンサの厚みは通常0.5mm未満あるが、CT検知器のセンサの厚みは通常2〜3mmである。放射線治療エネルギーでは、フラットパネル検知器の変換効率がおよそ0.5%であるのに対し、タングステン酸カドミウム結晶の2mmの層を有する典型的なCT検知器の変換効率はおよそ10%であろう。いずれも、高エネルギー放射線治療撮像アプリケーションの要求を適切に満たしているとは言えない。
【0006】
市販されているフラットパネル検知器は、以下の理由で、高エネルギーまたは超高圧(MV)撮像アプリケーションには明らかに不適当である。
【0007】
1) 多くの場合、十分なコンバータ材料を提供できない程度にアモルファスセレニウム層の厚みが薄過ぎるので、量子効率が低過ぎる。
【0008】
2) SN比、および、通常10ビットの読出しダイナミックレンジは、MV撮像アプリケーションには小さ過ぎる。比較すると、典型的な最新のkV読出しエレクトロニクスは、20ビットのダイナミックレンジを有している。
【0009】
3) 通常30Hzの読出しフレームレートは、低過ぎて、検知器システムがパーパルスベースの読出しとなるのを許容しない。関連する問題は、読出しエレクトロニクスの同期である。パーパルス取得は、直線加速装置(linac)パルスに同期する必要がある。加えて、アモルファスセレニウム検知器から全ての荷電を効率的に集めるために、この場合3kVの印加電圧を要する、およそ10V/μmの電界を必要とする。
【0010】
4) 検知器は、多量の放射線被曝の後、深刻な放射線障害を受けることもある。「放射線障害」という用語は、検知器が多量の放射線被曝に耐えた後、検知器からの出力信号が変化してしまう(通常小さくなる)ことを指している。読出しエレクトロニクスにTFTが使われる場合、高エネルギー放射線環境での累積放射線被曝レベルを乗り切ることができるかは疑わしい。
【0011】
5) 画素サイズは、超高圧アプリケーションに対して小さ過ぎる。超高圧エネルギーでは、エネルギー二次電子輸送に起因する、本来のぼけは、達成可能な空間分解能を制限する。これらの検知器は、また、二次散乱に影響されやすい場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
アモルファスセレニウムの使用は、X線撮像検知器が良好に記録されるということである。デジタルラジオグラフィおよびマンモグラフィにおいて、フラットパネルアプリケーションにアモルファスセレニウムを用いるよう、重要な努力が捧げられてきた。本発明において、超高圧撮像にアモルファスセレニウムを使用するのは最新のアプローチである。
【0013】
アモルファスセレニウムは、ダイレクト検知器である。アモルファスセレニウム検知器は、放射線を直接電気的信号に変換する。アモルファスセレニウムは、放射線にさらされると放射線強度に比例する電流を発生させる光伝導体である。これは、イオン化が最初に光に変換されその後電子信号へ戻されるために、その過程で様々な損失をインストールしてしまう間接的な検知器と比べて、かなり改善された検出量子効率(DQE)を実現することができる。セレニウムは、ガスイオンチャンバーと比べ、何千倍も高密度であり、特に高エネルギーでは、遥かにコンパクトな検知器設計が可能となる。セレニウムは、室温で良好な絶縁体であり、半導体ベースの検知器よりはるかに小さな暗電流を有している。また、アモルファスセレニウムは、放射線障害に対して耐性がある。これらのすべての特性は、放射線治療撮像アプリケーションに望しい。
【0014】
必要とされるものは、高エネルギー断層治療、および他の画像誘導放射線治療撮像アプリケーションに適した、比較的簡単で、安価で、高効率の放射線検出器である。
【0015】
本発明は、医療および産業アプリケーション用の、超高圧放射線検出器を提供する。また、本発明は、超高圧X線のために、検知器の検出効率をかなり高めることが可能な、新規の技術を提供する。高密度コンバータを検知器システムに組み入れる概念は、使用される実際のセンサにかかわらず適用可能である。また、本発明は、高性能な高エネルギーX線検出が必要とされる、いかなる分野にも適用可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の実施態様に係る検知器アセンブリは、最上部、底部、少なくとも2つの側部、および少なくとも2つの終端を有する筐体を含んでいる。さらに、検知器アセンブリは、アセンブリ内にインストールされた、複数の検知器要素を含んでいる。複数の検知器要素は、検知器アセンブリ内で垂直に方向付けられているのが好ましい。各検知器要素は、基板、基板の少なくとも1つの表面上に付着した読出し電極層、読出し電極層の少なくとも1つの表面に付着したアモルファスセレニウム層、およびアモルファスセレニウム層の少なくとも1つの表面に付着した高電圧電極層を含んでいるのが好ましい。検知器アセンブリは、放射線源からのX線ビームが、検出器要素を通して下向きおよび放射状に方向付けられる形で、断層治療または他の画像誘導放射線治療機器内部に位置決めされているのが好ましい。さらに、電界は、検知器要素にわたって、横方向または垂直方向に印加される。読出し電極層は、放射線ファンビーム全体を覆い、X線源と整列する異なる実施態様を形作る、様々な構成に指向した、複数の伝導ストリップおよびギャップを含んでいるのが好ましい。
【0017】
本発明の第2の実施態様に係る検知器アセンブリは、最上部、底部、少なくとも2つの側部、および少なくとも2つの終端を有する筐体を含んでいる。さらに、検知器アセンブリは、アセンブリ内にインストールされた、複数の検知器要素を含んでいる。複数の検知器要素は、アーク形をしており、検知器アセンブリ内で水平方向に向いているのが好ましい。各検知器要素は、基板、基板の少なくとも1つの表面上に付着した読出し電極層、読出し電極層の少なくとも1つの表面に付着したアモルファスセレニウム層、およびアモルファスセレニウム層の少なくとも1つの表面に付着した高電圧電極層を含んでいるのが好ましい。検知器アセンブリは、放射線源からのX線ビームが、検知器要素を通して下向きおよび放射状に方向付けられる形で、断層治療または他の画像誘導放射線治療機器内部に位置決めされているのが好ましい。さらに、電界は、検知器要素にわたって、横方向または垂直方向に印加される。この場合も、読出し電極層は、放射線ファンビーム全体を覆い、X線源と整列する異なる実施態様を形作る、様々な形状で指向した、複数の伝導ストリップおよびギャップを含んでいるのが好ましい。
【0018】
また、本発明は、超高圧放射線検出器の作成方法を企図している。
【0019】
本発明は、超高圧アプリケーションにおいて、かなり良好な感度を有する検知器アセンブリを提供する。本発明の検知器読出しは、X線パルスに同期している。また、パルス‐バイ‐パルスベースの信号の読出しも可能である。本発明の検知器アセンブリはまた、高放射線照射線量率の下で良好な性能を有しており、放射線治療環境において、重要な放射線障害または性能劣化もなく使用可能である。
【0020】
本発明は、(エネルギー、強度、およびビームの他の動作パラメータが可変な)断層治療ビームでの撮像が実行される、断層治療システムにおけるアプリケーションが考えられる。本発明でのX線ビームの検出効率はかなり改善され、その結果、対象物の分解能力もかなり改善される。断層治療システムでの撮像機能は、患者登録のための処置前撮像、治療の画像誘導のための治療中のダイナミック撮像、および線量復元および治療検証のための治療後の撮像を含んでいる。
【0021】
本発明は、また、高エネルギーX線ビーム(1MeVより大きなエネルギー)の検出、および放射線治療ビームでの患者の撮像が必要または有益な、従来の強度変調放射線治療、および他の従来の放射線治療におけるポータル撮像に適用されてもよい。これらのタイプのアプリケーションでは、撮像装置は、放射線治療ビームでの撮像が、治療実行装置のセットアップ、および治療実行システムの動作を確認する目的で実行される、放射線治療システム内の患者の後(post−patient)に配置される。撮像モードは、X線フィルムと同様の簡単な投影撮像であってもよいし、または、患者の三次元情報を抽出するX線断層撮影撮像復元技術であってもよい。例えば、本発明の検知器は、これらのユニットにCT撮像能力を提供する、標準Cアームガントリー医療アクセラレータに、容易に適合可能であってもよい。ポータル撮像に使用されると、本発明の検知器は、検出効率におけるマグニチュード改善のオーダーに起因して、画質に対する著しい改善を提供する。
【0022】
kV CTアプリケーションと同様に、ビーム方向に沿う検知器の縦方向長さが少し過度であっても、本発明の検知器は作用することに留意すべきである。しかしながら、本発明の検知器は、二重エネルギー撮像アプリケーションに非常に魅力的である。
【0023】
本発明の検知器アセンブリは、超高圧アプリケーションに優れた性能を提供するだけでなく、断層治療システム製造費を倹約するために素晴らしい潜在能力も提供するものである。検知器要素、および機械的アセンブリの製造過程は、大幅に簡単化され、費用は低減されている。検知器システムの主なコスト節減はエレクトロニクスであり、これは、本発明における信号振幅が遥かに大きいため、従来技術システムよりずっと簡単である。
【0024】
また、本発明の検知器設計は、キャスト自動車部品または飛行機部品などの製造アイテム内部の材料的または構造的欠陥の検出に、高エネルギーX線ビームで撮像される欠陥検出などの、産業アプリケーションを見出すこともできる。これらの部品の放射線厚み(radiological thickness)のために、高エネルギーX線は、撮像される対象物を貫通する必要がある。従来の検知器は、検出効率が制限されており、不十分な画質をもたらす。本発明は、改善された画像および空間分解能を検知器に提供する。空間分解能は、これらの部品の小さな欠陥を検出するのに重要である。本発明の他の産業アプリケーションは、食品パッケージ内の異物の検出、および木材産業において木の伐採決定前に、材木の品質の確認に、生きている木を撮像することを含んでいる。
【0025】
また、本発明の検知器は、高エネルギーX線の迅速で効率的な検出を要する多くの分野で、潜在的アプリケーションを見出すことになろう。一例をあげると、透過力および空間分解能を要し、船、飛行機、およびトラックから大きな手荷物および他の商品を、確実に検査することを含む、港検査などの自国保安である。国境および港検査で使用されている現在の従来技術撮像装置は、そのほとんどが低エネルギーX線機器であり、著しく厚い容器を貫通することはできない。したがって、本発明の高エネルギーX線検知器は、自国保安において重要な貢献をすることもあろう。セキュリティ関連アプリケーションの他の分野には、高エネルギーX線を要する、空港手荷物の検査、核廃棄物の検査、および他の大型コンテナの検査がある。
【0026】
以下は、本発明の検知器システムの特徴の概要である。
1) 検知器は、平均エネルギーがおよそ2MeVの、断層治療エネルギーでのおよそ50%の高検出効率を提供する。この要件は、空間的、およびコントラストの良好な分解能を得る基礎を形成する。比較として、平均エネルギーがおよそ60KeVのkV CTスキャナのための古いXeガス検知器は、70%のオーダーの効率で動作し、一方、最新のソリッドステート検出器は95%より大きい効率で動作する。MVエネルギーで用いられる従来技術のポータル画像検知器は、1%のオーダーの効率を有するだけである。
【0027】
2) 検知器は、高強度放射線被曝に耐えることが可能で、著しい性能劣化もなく、かなりの量の蓄積被曝に曝すことが可能である。典型的な診療所施設では、検知器へ1年でおよそ100〜200kGyを蓄積する。典型的な線量率は、1分あたり3Gyである。
【0028】
3) 検知器は、およそ300Hzの標準反復率の、速いパルス環境で動作することができ、あらゆるパルスが読出し可能である。アフターグローは、小さく、安定しており、必要に応じて、確実に修正可能である。
【0029】
4) 検知器は、かなり細かい空間分解能を伴う二次元構成になっており、断層治療システムにおける最大のビーム設定をカバーしている。
【0030】
5) 検知器応答は、放射線治療機器の一般的放射および電磁波放射に対し、線形で、安定し、不感受である。読出しエレクトロニクスは、好ましくは20ビットの、広いダイナミックレンジを有している。
【0031】
6) 従来技術検知器と比較し、検知器の製造費が低い。
本発明の様々な他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明から当業者には明白なものとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ここで図面を参照すると、図1〜3は、本発明に係る検知器アセンブリ10の実施の形態の異なる図面を示している。検知器アセンブリ10は、図1に示したように、筐体12に収容されているのが好ましい。筐体12は、アーク形をしており、かつ最上部14、底部16、少なくとも2つの側部18、20、および少なくとも2つの終端22、24を含んでいるのが好ましい。高電圧バスバー26は、高電圧源(図示せず)への接続のために、側部18の1つから伸びている。第1の誘電体素子28は、バスバー26の周りに広がり、支えているのが好ましい。断層治療、および他の画像誘導放射線治療システムへインストールされると、筐体12の最上部14および底部16は、検知器アセンブリ10の支持および整列を補助する。図2は、アセンブリの最上部14が取り外された、図1の検知器アセンブリ10を示している。複数の検知器要素30が、アセンブリ10内へインストールされている。第2の誘電体素子32は、第1および第2の誘電体素子間の検知器要素30を支持し、かつ整列するよう、そこへ取り付けられた第1の誘電体素子28を有する、側部18と反対の側部20の一方の側部の上方内部表面に取り付けられているのが好ましい。誘電体素子28、32は、アセンブリ内部に検知器要素30を配置するための、整列機構を含んでいるのが好ましい。また、高電圧バスバー26および複数の検知器要素30に加えて、筐体12は、アセンブリのための信号調整およびデジタル化エレクトロニクス(図示せず)を収容している。図3は、図2の細部3を示した、図2に示した検知器アセンブリ12の上部コーナー部分の拡大詳細図である。図3は、高電圧バスバー26を支持する第1誘電体素子28、高電圧バスバー26のための高電圧接続34、および各検知器要素30から高電圧バスバー26への複数の結線36を示している。
【0033】
検知器アセンブリ10は、現在の市販の多列kV CTスキャナ検知器システムと比較して、多数の検知器要素30を提供することが好ましい。検知器要素30は、検知器アセンブリ10内で垂直に方向付けられるのが好ましい。検知器要素30は、発散するX線ビームに一致するよう構成されているのが好ましい。発散は、検知器要素の一方の側部上の、だんだん細くなる誘電体素子32により維持されるのが好ましい。誘電体素子28、30および検知器要素30の基板は、検知器要素の隣接する層の間に電気的遮蔽を提供する。
【0034】
図4〜6は、本発明に係る検知器要素30の1つの実施の形態を示している。図5は、図4の細部5を示した、図4の検知器要素30の部分の拡大詳細図である。図6は、図4および図5の検知器要素30の拡大分解図である。検知器要素30は、基板38、基板38の少なくとも1つの表面に付着した読出し電極層40、読出し電極層40の少なくとも1つの表面に付着したアモルファスセレニウム層42、およびアモルファスセレニウム層42の少なくとも1つの表面に付着した高電圧電極層44を含んでいるのが好ましい。これらの層の各々は、真空蒸着/蒸発、または他の適当な方法を用いて付着されるのが好ましい。基板38は、ガラス材料、または他の絶縁材料で製造されているのが好ましい。読出し電極層40は、図7に示したように、基板の少なくとも1つの表面に付着した、複数の伝導ストリップまたはライン46を含んでいるのが好ましい。この場合にも図7に示したように、伝導ストリップまたはライン46の間にはギャップまたはオープンスペース48が存在している。アモルファスセレニウム層42は、電荷収集電極層40上に付着した、均一、かつ接続的なアモルファスセレニウム材料蒸気を含んでいるのが好ましい。高電圧電極層44は、タングステン、または他の耐高電圧の非常に伝導性のある材料でできているのが好ましい。
【0035】
図6に示したように、放射線源(図示せず)からのX線ビーム50は、検知器要素30を通して、下向きおよび放射状に方向付けられる。電界52は、検知器要素30にわたって、横方向または垂直方向に印加される。したがって、電荷輸送は、垂直な力線に沿って抑制され、側部情報分布をかなり減少させる。これは、検知器出力が、入力放射線に密接に合致することを意味する。
【0036】
好適な実施の形態では、各検知器要素は、等センター(iso−center)で1×1mmの面積に投影する画素を形成する。検知器要素は、およそ0.25mmの厚みの片面基板から製造されるのが好ましい。基板の一面は、X線ビーム方向に沿う読出しストリップを含んでいるのが好ましい。読出しストリップは幅がおよそ1.4mmで、幅がおよそ0.1mmのギャップにより、互いに分離されているのが好ましい。ビーム方向に沿った検知器要素の長さは、50%の量子効率を達成するために、およそ5cmであるのが好ましい。基板の高さは、およそ8.5cmが好ましい。厚みがおよそ1mmのアモルファスセレニウム層は、読出しストリップの最上部上に付着しているのが好ましい。およそ200μmの高電圧電極タングステン層は、読出しストリップの最上部上に付着した側と反対で、アモルファスセレニウム層の他の側に取り付けられているのが望ましく、高電圧電極層を形成している。セレニウム表面とタングステン表面との間の良好な伝導インタフェースを確実にするよう、注意を払うのが好ましい。高電圧電極タングステン層は、また、検知器システムの内部、および上流の二次相互作用から生じる、非常に低いエネルギー光子を排斥するためのコンバータおよび隔壁として役立つ。X線ビームは、図6に示されるように、最上部から検知器に入る。電界の向きの線は、検知器要素層を横切る方向を指す。正電荷または正孔は、それらが集められる基板上の伝導読出しストリップに向かって電界を印加することにより駆動される、主要な光子相互作用から、タングステンまたはセレニウム内に作成される。基板上の各読出し伝導ストリップは、1つの検知器を表している。1mm未満のアモルファスセレニウム層の適度な厚み、および約10V/μmの高電界では、電界方向に垂直な、垂直方向の荷電の広がりは、100μm未満の小さなものであると予想される。したがって、隣接する電極間の距離間隔は、100μmであることが好ましい。基板の外側の縁の、好ましくは各々5mmの広い読出しストリップは、好ましくは、電荷収集電極上の電子雑音を減少させるためにアースされるガード電極である。一次光子のエネルギーが高いため、1相互作用あたりの電子数は多くなるだろう。したがって、検知器は、恐らく、5V/μmのオーダーの、低電界で動作可能である。これにより、本発明の検知器およびデータ収集システムの複雑さが簡素化されることになる。
【0037】
図7は、図6の検知器要素の読出し電極層の1つの実施の形態の拡大詳細図である。図8は、図6の検知器要素の読出し電極層の他の実施の形態の拡大詳細図を示す。図8の読出し電極層は、元の読出しストリップおよびギャップに対して垂直に、そしてX線ビーム方向に対して垂直に形成された追加読出しストリップおよびギャップを含んでいる。これは、放射線のより詳細で正確な検出を提供する。
【0038】
必要な許容値の分析は、本発明の費用および性能を最適化するために重要である。読出し電極層のフォトエッチングの分解能は、5μmに維持されるのが好ましい。アモルファスセレニウム層の厚みは、50μmに維持されるのが好ましい。これらの許容値は、およそ5%の相互作用操業度差異(interaction volume variation)を導くことになろう。各検知器要素からの信号が、常に、断層治療および他の画像誘導放射線治療システムに患者が不在のときの検知器要素における信号に正規化されることになるので、これは性能に影響を及ぼすことがない。高電圧電極層の厚みは、25μmに維持されるのが好ましい。電極層または基板内の局所的または大域的変化は、層の厚みおよび分離の厚みが、集められた電荷量に影響を及ぼさないので、本発明の性能に影響を及ぼすことはなく、小さな変化は、活動状態の検知器ボリュームに対するのと同じ方法で正規化可能である。誘電体素子の厚み許容値は、2μmに維持されるのが好ましい。不規則変化は性能に影響を及ぼさないであろうし、体系的変化は、全ての層が積み重ねられ、調整された後に、明らかになるだろう。要素および層の許容値は、最新の機械加工およびフォトエッチング技術により、容易に維持可能である。
【0039】
検知器要素は、16ビットの集積化AD変換器(ADC)で、あらゆる入力放射線パルスに対して個別に読み出されることになる。ADCのディジタイザーは、20ビットの有効なADCレンジへ導く、断層治療または他の画像誘導放射線治療機器の撮像および治療モード間の出力信号の振幅における大差を扱うために、レンジ選択ビットを備えているのが好ましい。300Hzの標準的リニアック反復率では、データ転送速度は、最新のkV CT装置と比較してかなり適度な転送速度である、25k×2B×300/s=15MB/秒となる。上に述べたように、検出要素からのアナログ出力は、ディジタイザーへ多重送信されるのが好ましい。典型的な断層治療リニアック反復率では、ディジタイザーの数を25〜50まで減少させる、500〜1000の多重送信のレベルが可能である。これにより、本発明の検知器アセンブリの製造費を、実質的に減少させることを補助する。
【0040】
図9〜11は、本発明に係る検知器アセンブリ60の、他の実施の形態の異なる図を示している。図9は、アセンブリの最上部、一面、および1つの終端が取り外された、検知器アセンブリ60の透視図である。図10は、筐体および誘電性スペーサーの一部を透視した、検知器アセンブリ60の透視図である。図11は、図10の線11‐11に沿った、検知器アセンブリ60の断面図である。
【0041】
検知器アセンブリ60は、筐体62に収容されるのが好ましい。筐体62は、アーク形をしており、および最上部64、底部66、少なくとも2つの側部68、70、および少なくとも2つの終端72、74を含んでいるのが好ましい。高電圧接続76は、高電圧源(図示せず)への接続のために、検知器要素80の少なくとも1つの終端から伸びている。複数の検知器要素80が、アセンブリ60内へインストールされる。検知器要素80は、アーク形をしていて、検知器アセンブリ内で水平に方向付けられているのが好ましい。複数の上下の誘電体素子78は、検知器アセンブリ60内で検知器要素80を支え、かつ整列させるために、検知器要素80の最上部および底部に位置決めされる。検知器要素80は、放射線源(図示せず)に向かって整列されるのが好ましい。筐体62は、アセンブリのために、信号調整およびデジタル化エレクトロニクス(図示せず)をさらに含んでいる。
【0042】
図12は、本発明に係る検知器要素80の、他の実施の形態を示している。検知器要素80は、基板82、基板82の少なくとも1つの表面に付着した読出し電極層84、読出し電極層84の少なくとも1つの表面に付着したアモルファスセレニウム層86、およびアモルファスセレニウム層86の少なくとも1つの表面に付着した高電圧電極層88を含んでいるのが好ましい。これらの層の各々は、真空蒸着/蒸発、または他の適当な方法を用いて付着されるのが好ましい。基板82は、ガラス材料、または他の絶縁材料で製造されているのが好ましい。読出し電極層84は、図14に示したように、基板の少なくとも1つの表面に付着した、複数の伝導ストリップまたはライン90を含んでいるのが好ましい。この場合にも図14に示したように、伝導ストリップまたはライン90の間にはギャップまたはオープンスペース92が存在している。アモルファスセレニウム層86は、電荷収集電極層84にわたって付着した、均一、かつ接続的なアモルファスセレニウム材料蒸気を含んでいるのが好ましい。高電圧電極層88は、タングステン、または他の耐高電圧の非常に伝導性のある材料でできているのが好ましい。基板82は、検知器要素の隣接する層の間に電気的遮断を提供する。
【0043】
図12に示したように、放射線源(図示せず)からのX線ビーム94は、検知器要素80を通して、下向きおよび放射状に方向付けられる。電界96は、検知器要素80にわたって、横方向または垂直方向に印加される。各検知器要素80は、複数の異なる層から成っている。各層は、その平面内の放射線ファンビーム全体をカバーする、特定数のチャンネルを有することになる。基板は、トレースが整列し、X線源に収束するアークを形成するよう配列されているのが好ましい。トレースの長さは、最大のDQEに対して最適化されることになる。図13は、図12の検知器要素の読出し電極層84の他の実施の形態の拡大前部平面図である。
【0044】
図14は、図13の検知器要素の読出し電極層の1つの実施の形態の拡大詳細図である。図15は、図13の検知器要素の読出し電極層の他の実施の形態の拡大詳細図を示している。図15の読出し電極層は、元の読出しストリップおよびギャップに対して垂直に、そしてX線ビーム方向に対して垂直に形成された追加読出しストリップおよびギャップを含んでいる。これは、放射線のより詳細で正確な検出を提供する。
【0045】
図15に示したように、各電極からの信号の読出しは、各チャンネルのビーム方向に沿ってセグメント化されている。各セグメントは、分離されたエレクトロニクスに取り付けられ、別々に読出される。異なるセグメントからの信号、縦方向の(X線方向に沿った)線量付着についての情報を相互に関連させることにより、このようにして、X線のエネルギーが抽出可能である。
【0046】
上記の実施の形態では、電極のトレースは、特定のアプリケーションにおける必要性に応じて、異なるピッチおよび幅を有することができる。このアプリケーションに応じて、垂直および水平方向へのチャンネルの総数は、変更可能である。
【0047】
本発明は、好適な実施の形態を参照して説明されてきたが、本発明が、上に説明された特定の実施の形態に限定されることを意図したものではないことは、理解されるものであろう。本発明の精神または意図から逸脱することなく、特定の代替、改変、修正、および省略が可能であることは、当業者により理解されると認められるものである。したがって、以上の説明は、典型的であることのみを意味するものであり、本発明は、本発明の対象についての合理的なあらゆる同等物を含んでいると看做され、特許請求の範囲で説明される、本発明の範囲を限定すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る検知器アセンブリの1つの実施の形態の斜視図である。
【図2】アセンブリの上部が取り除かれた、図1の検知器アセンブリの斜視図である。
【図3】図2の細部3を示した、図2のアセンブリの上部コーナー部分の拡大詳細図である。
【図4】本発明に係る検知器要素の実施の形態の最上部平面図である。
【図5】図4の細部5を示した、図4の検知器要素の部分の拡大詳細図である。
【図6】図4および図5の検知器要素の拡大分解図である。
【図7】図6の検知器要素の、読出し電極層の実施の形態の拡大詳細図である。
【図8】図6の検知器要素の、読出し電極層の他の実施の形態の拡大詳細図である。
【図9】アセンブリの最上部、一つの側部、および1つの終端が取り外された、本発明に係る検知器アセンブリの他の実施の形態の透視図である。
【図10】筐体および誘電性スペーサーの一部を透視した、図9の検知器アセンブリの透視図である。
【図11】図10の線11‐11に沿った、図9および図10の検知器アセンブリの断面図である。
【図12】本発明に係る検知器要素の、他の実施の形態の拡大分解図である。
【図13】図12の検知器要素の読出し電極層の、他の実施の形態の拡大前部平面図である。
【図14】図12の細部14を示した、図12の検知器要素の読出し電極層の1つの実施の形態の拡大詳細図である。
【図15】図13の細部15を示した、図12の検知器要素の読出し電極層の、他の実施の形態の拡大詳細図である。
【符号の説明】
【0049】
10 検知器アセンブリ、12 筺体、14 最上部、16 底部、18 側部、20 側部、22 終端、24 終端、26 バスバー、28 第1の誘電体素子、30 検知器要素、32 誘電体素子、34 高電圧接続部、36 結線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を伝播軸に沿うように方向付ける放射線源と、
上記放射線を受けるように位置決めされた検出器であって、実質的に伝播軸に沿って伸びるように方向付けられるとともに伝播軸を横切る方向に間隔をあけて軸方向に伸び複数の検知器容積部を画成する複数のシートを含む検出器とを備えていて、
上記シートが、長手方向に放射線を受けるとともに、材料を出て検知器容積部に入る高エネルギー電子を発生させるようになっていて、
さらに、検知器容積部内に解放された正および負に荷電した高エネルギー粒子を検出して、実質的に独立した信号を生成する検出手段を備えている放射線検出器。
【請求項2】
上記検出手段がアモルファスセレニウム検知器である請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
超高圧放射線を伝播軸に沿うように方向付ける放射線源と、
上記放射線を受けるように位置決めされた検出器であって、実質的に伝播軸に沿って伸びるように方向付けられるとともに伝播軸を横切る方向に間隔をあけて軸方向に伸び複数の検知器容積部を画成する複数のシートを含む検出器とを備えていて、
上記シートが、長手方向に放射線を受けるとともに、材料を出て検知器容積部に入る高エネルギー電子を発生させるようになっていて、
さらに、検知器容積部内に解放された正および負に荷電した高エネルギー粒子を検出して、実質的に独立した信号を生成する検出手段を備えている超高圧放射線検出器。
【請求項4】
基板の少なくとも1つの表面上に、複数の読出し電極を付着させるステップと、
上記読出し電極の少なくとも1つの表面上に、アモルファスセレニウム層を付着させるステップと、
上記アモルファスセレニウム層の少なくとも1つの表面上に、高電圧電極層を付着させるステップとを含んでいる、超高圧放射線検出器を作成する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2006−509198(P2006−509198A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557446(P2004−557446)
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/038168
【国際公開番号】WO2004/050170
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(503328610)トモセラピー インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TOMOTHERAPY,INC.
【Fターム(参考)】