説明

放射線検出器および放射線画像撮影装置

【課題】ソフトウェアの誤動作が発生した場合であっても、ドライバ、さらには、ドライバを含む信号取り出し回路の破損を未然に防止できる放射線検出器および放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線検出器は、放射線の受光量に対応する量の電荷を蓄積する受光パネルと、受光パネルの各画素に対応して設けられ、受光パネルの各画素からの電荷の出力を制御するトランジスタと、各々のトランジスタのオン/オフを制御する駆動信号を生成するドライバと、駆動信号を生成するためにドライバに供給される複数の制御電圧の状態に基づいて、電源の立ち上げ時および立ち下げ時に、複数の制御電圧のオン/オフの順序が、あらかじめ設定された順序となるように制御するインターロック機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線源から照射される放射線に対応する放射線画像の電気信号を生成するフラットパネル型の放射線検出器と、この放射線検出器を用いて被写体(被検者)の放射線画像を生成する放射線画像撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線画像撮影装置は、例えば、医療用の診断画像や工業用の非破壊検査などを含む各種の分野で利用されている。放射線画像撮影装置において、被写体を透過した放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を検出する放射線検出器として、現在では、放射線を電気信号に変換するフラットパネル型放射線検出器(FPD(Flat Panel Detector))を用いるものがある。
【0003】
FPDを用いた放射線画像撮影装置では、放射線源から被写体に放射線を照射し、被写体を透過した放射線を受光パネルで受光して電気信号に変換し、FPDから被写体の放射線画像に相当する電気信号を読み出して放射線画像を生成する。
【0004】
ここで、FPDでは、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などのスイッチング素子を用いて、受光パネルに蓄積された放射線画像の電荷を、例えば、1ラインずつ順次選択して出力する。そのため、FPDは、TFTのオン/オフ(TFTのゲート電圧)を制御するゲート駆動信号を出力するゲートドライバ(ゲート制御回路)を備えている。
【0005】
ゲートドライバには、電源の立ち上げ時(システム起動時)に、複数の制御電圧が供給される。これら複数の制御電圧は、所定の順序(タイミング)でオン/オフ(ゲートドライバに供給/停止)する必要があり、オン/オフの順序は、電源の立ち上げ時のと電源の立ち下げ(システム停止時)時とで逆の順序にする必要がある。従来、制御電圧のオン/オフの順序は、ソフトウェア(プログラム)により制御されている。
【0006】
しかし、何らかの原因でソフトウェアが誤動作し、制御電圧のオン/オフの順序が変わると、ゲートドライバ、さらには、このゲートドライバの他にTFTやA/D(アナログ/デジタル)コンバータ等を含む信号取り出し回路の一部ないしは全部が破損する虞がある。その場合、X線撮影が行えないことはもちろん、信号取り出し回路を交換して修理するための手間とコストがかかる。
【0007】
本発明に関連性のある先行技術文献として特許文献1がある。
【0008】
特許文献1は、直接変換タイプのフラットパネル型放射線検出器(FPD)に関するものである。同文献では、FPDの信号取り出し回路が常に先に動作中となって安定な回路状態に入った後で、FPDの共通電極へのバイアス高電圧の供給が開始される。そのため、バイアス高電圧の供給開始の際にTFTに電荷が過剰に蓄積されず、バイアス高電圧供給開始時のFPDの信号取り出し回路の破損が確実に防止できるとしている。
【0009】
また、特許文献1では、電源出力供給停止制御部により、常にFPDの信号取り出し回路が動作中で安定な回路状態にある間に、FPDの共通電極へのバイアス高電圧の供給が停止される。そのため、バイアス高電圧の供給停止の際にTFTに電荷が過剰に蓄積されず、バイアス高電圧供給停止時のFPDの信号取り出し回路の破損も確実に防止できるとしている。
【0010】
しかし、特許文献1の制御方式では、TFTの駆動制御を行うゲートドライバの駆動方式によっては、ゲートドライバが、さらには、信号取り出し回路が破損する虞がある。その場合、上記と同じ問題が発生する。
【0011】
【特許文献1】特開2005−118348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、ソフトウェアの誤動作が発生した場合であっても、ドライバ、さらには、ドライバを含む信号取り出し回路の破損を未然に防止できる放射線検出器および放射線画像撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、放射線源から照射される放射線に対応する放射線画像の電気信号を生成する放射線検出器であって、
放射線の受光量に対応する量の電荷を蓄積する受光パネルと、
前記受光パネルの各画素に対応して設けられ、前記受光パネルの各画素からの電荷の出力を制御するトランジスタと、
各々の前記トランジスタのオン/オフを制御する駆動信号を生成するドライバと、
前記駆動信号を生成するために前記ドライバに供給される複数の制御電圧の状態に基づいて、前記複数の制御電圧のオン/オフの順序が、あらかじめ設定された順序となるように制御するインターロック機構とを備えていることを特徴とする放射線検出器を提供するものである。
【0014】
ここで、さらに、前記受光パネルから供給される電荷を、当該電荷の量に対応するアナログ電圧に変換するチャージアンプを備え、
前記ドライバは、前記チャージアンプの入力のバーチャルショートが確定してから、各々のラインの前記トランジスタのオン/オフを制御することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、放射線源と、
前記放射線源を駆動し、放射線照射の制御を実施する放射線源制御回路と、
請求項1または2に記載の放射線検出器と、
前記放射線源制御回路および前記放射線検出器の動作を制御するシステムコントローラとを備え、
前記システムコントローラは、前記放射線源制御回路により前記放射線源から放射線を被写体に照射し、被写体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出するように制御して、被写体が撮影された放射線画像を生成することを特徴とする放射線画像撮影装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ソフトウェアの誤動作が発生した場合であっても、ドライバ、さらには、ドライバを含む信号取り出し回路の破損を未然に防止できるので、これに起因する撮影不可の状態を招くことなく、破損を修復するための膨大なコストと手間も節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の放射線検出器および放射線画像撮影装置を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の放射線画像撮影装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。同図に示すX線画像撮影装置10は、X線を被写体(被検者)に照射し、被写体を透過したX線を検出して、被写体が撮影されたX線画像を生成する。撮影装置10は、システムコントローラ12と、X線源制御回路14と、X線源16と、X線検出器18とによって構成されている。
【0019】
システムコントローラ12は、X線源制御回路14およびX線検出器18と接続(X線検出器18とは光ファイバ通信で接続)されており、X線源制御回路14およびX線検出器18の動作を制御する部位である。システムコントローラ12は、入力手段、表示手段、記憶手段、制御手段等を有するパーソナルコンピュータ(PC)(専用制御回路や撮影制御用プログラムを含む)等で構成される。
【0020】
X線源制御回路14は、システムコントローラ12の制御に従って、X線源16を駆動し、X線曝射(照射)などの制御を実施する部位である。X線源制御回路14は、撮影条件に応じて設定された強度の放射線が、設定された時間だけX線源16から照射されるように照射量を制御する。X線源16から照射されるX線は、被写体を透過してX線検出器18に照射される。
【0021】
X線検出器(パネルユニット)18は、システムコントローラ12の制御に従って、X線源16から照射されるX線に対応するX線画像の電気信号(デジタルデータ)を生成する部位である。X線検出器18は、受光パネル20と、チャージアンプ22およびMUX24と、A/Dコンバータ26と、TFT28と、ゲートドライバ30と、パネルユニット制御回路32とによって構成されている。
【0022】
受光パネル20は、X線源16から受光したX線の受光量に対応する量の電荷を蓄積する部位である。受光パネル20は、それぞれが複数の画素を含む複数のラインで構成されている。受光パネル20に蓄積されたX線画像の電荷は1ラインずつ順次読み出され、チャージアンプ22に供給される。本実施形態の場合、受光パネル20は、直接方式のa−Se(アモルファスセレン)のパネルであり、1ラインは3072画素である。
【0023】
チャージアンプ22は、受光パネル20から供給される1ライン分の3072個の電荷を、それぞれ、電荷の量に対応するアナログ電圧に変換してMUX24に供給する部位であり、オペアンプとコンデンサで構成される。
【0024】
また、MUX(マルチプレクサ)24は、チャージアンプ22から供給される1ライン分の3072個のアナログ電圧を複数回に分けて時分割で出力する部位である。MUX24から出力されるアナログ電圧はA/Dコンバータ26に供給される。
【0025】
本実施形態の場合、256チャネル×12系統のチャージアンプ22と、チャージアンプ22から供給される3072個のアナログ電圧から12個のアナログ電圧を順次選択的に出力する12個のMUX24が設けられている。3072個のアナログ電圧を同時に出力するための回路を構成するとコストアップなどにつながるため、12個のMUX24で同時に12個のアナログ電圧を選択し、256回に分けて時分割で順次出力する。
【0026】
A/D(アナログ/デジタル)コンバータ26は、MUX24から供給される12個のアナログ電圧(X線画像データ)をデジタル信号に変換する部位である。A/Dコンバータ26から出力されるX線画像データはパネルユニット制御回路32に供給される。
【0027】
TFT28は、受光パネル20の各画素に対応して設けられており、その各画素からの電荷の出力を制御するスイッチング素子である。1ライン分の3072個の画素に対応するTFT28が同時にオンとされ、各々のラインに対応するTFT28が順次オンされる。あるラインに対応するTFT28がオンすると、そのラインの各画素に蓄積された1ライン分の電荷が同時に出力され、チャージアンプ22に供給される。
【0028】
ゲートドライバ(ゲート制御回路)30は、パネルユニット制御回路32から供給される複数の制御電圧に応じて、各々のラインに対応するTFT28のゲートに接続されるゲート線を駆動するためのゲート駆動信号を生成し、各々のラインに対応するTFT28のオン/オフを制御する部位である。ゲートドライバ30から出力されるゲート駆動信号は、各ラインに対応するTFT28のゲートに入力される。
【0029】
パネルユニット制御回路32は、X線検出器18の動作を制御する部位である。パネルユニット制御回路32は、電源の立ち上げ時に、制御電圧として、チャージアンプ22、MUX24、A/Dコンバータ26等に電源電圧を供給し、受光パネル20に高電圧を印加するとともに、ゲートドライバ30に、電源電圧VDD、ローレベル駆動電圧VGLおよびハイレベル駆動電圧VGHを供給して、これらの部位を動作状態にする。また、パネルユニット制御回路32は、撮影装置10の起動中に、システムコントローラ12からの制御要求に従って、ゲートドライバ30を制御してX線撮影を行い、取得したX線画像データをシステムコントローラ12へ伝送する、などの制御を実施する。
【0030】
ここで、電源電圧VDDは、各部位を動作させるための電圧である。ローレベル駆動電圧VGLおよびハイレベル駆動電圧VGHは、それぞれ、ゲートドライバ30から出力されるゲート駆動信号のローレベルおよびハイレベルを決定するための電圧である。
【0031】
図2に示すように、チャージアンプ22およびMUX24と、A/Dコンバータ26と、TFT28と、ゲートドライバ30と、パネルユニット制御回路32は、受光パネル20からの信号取り出し回路を構成する。X線源16から照射されるX線は受光パネル20で受光され、受光パネル20で受光されたX線画像の撮影データが信号取り出し回路でデジタルデータ化されてシステムコントローラ12に伝送される。
【0032】
次に、X線画像の撮影時の撮影装置10の動作を説明する。
【0033】
システムコントローラ12からX線源制御回路14およびX線検出器18のパネルユニット制御回路32に対して撮影の開始が指示される。撮影が開始されると、X線源制御回路14の制御により、X線源16から、撮影条件に応じて設定された強度のX線が、設定された時間だけ照射(曝射)される。照射されたX線は、被写体を透過してX線検出部18の受光パネル20に照射され、被写体を透過したX線に対応する電荷が受光パネル20に蓄積される。
【0034】
受光パネル20に蓄積された電荷は、パネルユニット制御回路32の制御により、ゲートドライバ30から出力されるゲート駆動信号によって各ラインに対応するTFT28のオン/オフが制御され、オンされた1ライン分の電荷が同時に出力される。出力された1ライン分の電荷は、チャージアンプ22によりアナログ電圧に変換され、MUX24により時分割に出力され、さらに、A/Dコンバータ26によりデジタルデータ(X線画像データ)に変換される。
【0035】
A/Dコンバータ26から出力されるデジタルデータは、パネルユニット制御回路32に供給され、さらに、光ファイバ通信により、パネルユニット制御回路32からシステムコントローラ12に伝送される。
【0036】
上記の動作は、被写体の撮影が行われる毎に、受光パネルの全てのラインについて1ラインずつ順次繰り返し行われる。
【0037】
その後、システムコントローラ12において、取得したX線画像データに対して、オフセット補正、残像補正等の各種の画像処理が施され、モニタ上への表示、プリント出力、X線画像データの記憶装置への保存等が行われる。
【0038】
次に、X線検出器18において、電源の立ち上げ時および立ち下げ時の制御電圧のオン/オフの順序(タイミング)について説明する。
【0039】
図3に示すように、電源の立ち上げ時には、パネルユニット制御回路32は、自身への電源供給後に、システムコントローラ12からの制御要求に従って、ゲートドライバ30、チャージアンプ22、MUX24、A/Dコンバータ26などを駆動する。そして、ゲートドライバ30を制御してTFT28のゲート駆動(オン/オフの制御)を行い、高電圧供給電源34から受光パネル20に高電圧を印加した後に撮影を行う準備状態となる。
【0040】
図2に示す電圧(1)〜(3)、ゲート駆動信号(5)および高電圧(6)は、図3のタイミングチャートに示すように、電源の立ち上げ時には、この順序でオン(アクティブ状態)とされる。また、電源の立ち下げ時は、立ち上げ時とは逆の順序でオフ(非アクティブ状態)とされる。すなわち、高電圧(6)、ゲート駆動信号(5)、電圧(3)〜(1)の順序で順次オフとされる。
【0041】
図3のタイミングチャートにおいて、ローレベル駆動電圧(2)は、ローレベルの時がオンであり、ハイレベルの時がオフである。それ以外の電圧(1)、(3)、(4)、(6)および信号(5)は、ハイレベルの時がオンであり、ローレベルの時がオフである。
【0042】
なお、高電圧(6)のオン/オフのタイミングは、図3のタイミングチャートに示すように、TFT28の駆動中、すなわち、ゲート駆動信号(5)がオンの期間中に実施する。これにより、高電圧印加による暗電流等の電荷がTFT28に溜まり、TFT28が破損することを防止できる。
【0043】
また、電圧(4)のオン/オフのタイミングは、電源の立ち上げ時および立ち下げ時ともに、電圧(1)〜(3)のオン/オフのタイミングとは無関係に決定される。電源電圧(4)は、図3のタイミングチャートに示すように、電源の立ち上げ時には、ゲート駆動信号(5)がオンする前にオンされ、電源の立ち下げ時には、ゲート駆動信号(5)がオフした後でオフされる。すなわち、チャージアンプ22の電源電圧が確定し、その入力のバーチャルショートが確定してから、ゲート駆動信号(5)を駆動する(各々のラインのTFT28のオン/オフを制御する)。これにより、チャージアンプ22が動作状態となる前に受光パネル20から電荷がチャージアンプ22に流れ込むことを防止できる。
【0044】
ここで、電圧(1)〜(3)、すなわち、ゲートドライバ30の電源電圧VDD、ローレベル駆動電圧VGLおよびハイレベル駆動電圧VGHは、ゲートドライバ30、さらには、信号取り出し回路の破損を防止するために、電源の立ち上げ時および立ち下げ時に上記の順序でオン/オフを制御する必要がある。すなわち、電圧(1)〜(3)は、図3のタイミングチャートに示す順序(タイミング)でオン/オフを制御する必要がある。
【0045】
従来、電圧(1)〜(3)のオン/オフの順序は、システムコントローラ12からのソフトウェア(プログラム)動作によって制御されている。従って、ソフトウェアの誤動作等が発生した場合、上記順序が保たれず、ゲートドライバ30さらには信号取り出し回路が破損する虞がある。これを防止するために、X線検出器18内(例えば、パネルユニット制御回路32内)には、電圧(1)〜(3)のオン/オフの順序をハードウェアで制限(制御)するインターロック機構(インターロック回路)が設けられている。
【0046】
インターロック機構は、電源の立ち上げ時に、電圧(1)〜(3)の順序、すなわち、電源電圧VDD、ローレベル駆動電圧VGL、および、ハイレベル駆動電圧VGHの順序でオンするように制御するとともに、電源の立ち下げ時に、電圧(3)〜(1)の順序、すなわち、ハイレベル駆動電圧VGH、ローレベル駆動電圧VGL、および、電源電圧VDDの順序でオフするように制御する。
【0047】
以下、上記のインターロック機構について説明する。
【0048】
図4の左側に示す状態遷移図は、4つの状態A〜Dおよび6つの遷移ア〜カを表す。図5のタイミングチャートに示すように、電源の立ち上げ時は、電圧(1)〜(3)の順序でオンとされ(状態遷移図において左側のA〜Dの流れ)、立ち下げ時は、電圧(3)〜(1)の順序でオフとされる(同右側のD〜Aの流れ)。状態遷移図において、電圧(1)〜(3)は、アクティブ状態を‘0’とし、非アクティブ状態を‘1’としている。
【0049】
状態Aは、電圧(1)〜(3)の全てが非アクティブ状態である。状態Aからは状態Bにだけ遷移することが可能である。図4の右側に示すように、状態Aにおけるインターロック回路は、NAND回路に、電圧(1)〜(3)、すなわち、電源電圧VDD、ローレベル駆動電圧VGL、ハイレベル駆動電圧VGHがそのまま入力されたものを用いる。NAND回路の出力en_A=0の時に限り、状態遷移図に遷移アで示すように、電圧(1)をオンとすることだけが許可されるように制御される。
【0050】
状態Bは、電圧(1)だけがアクティブ状態である。状態Bからは状態Cまたは状態Aに遷移することが可能である。図4の右側に示すように、状態Bにおけるインターロック回路は、NAND回路に、電圧(1)の反転電圧と電圧(2)および(3)が入力されたものを用いる。NAND回路の出力en_B=0の時に限り、遷移イで示すように、電圧(2)をオンとするか、または、遷移カで示すように、電圧(1)をオフとすることだけが許可されるように制御される。
【0051】
状態Cは、電圧(1)および(2)がアクティブ状態である。状態Cからは状態Dまたは状態Bに遷移することが可能である。図4の右側に示すように、状態Cにおけるインターロック回路は、NAND回路に、電圧(1)および(2)の反転電圧と電圧(3)が入力されたものを用いる。NAND回路の出力en_C=0の時に限り、遷移ウで示すように、電圧(3)をオンとするか、または、遷移オで示すように、電圧(2)をオフとすることだけが許可されるように制御される。
【0052】
状態Dは、電圧(1)〜(3)の全てが非アクティブ状態である。状態Dからは状態Cにだけ遷移することが可能である。図4の右側に示すように、状態Dにおけるインターロック回路は、NAND回路に、電圧(1)〜(3)全ての反転電圧が入力されたものを用いる。NAND回路の出力en_D=0の時に限り、遷移エで示すように、電圧(3)をオフとすることだけが許可されるように制御される。
【0053】
上記のように、ハードウェアによるインターロック機構を設けることにより、電源の立ち上げ時および立ち下げ時に、電圧(1)〜(3)のオン/オフの順序を制御するソフトウェアに誤動作が発生した場合であっても、ゲートドライバ30における電圧(1)〜(3)のオン/オフの順序が常に適切に保たれ、ゲートドライバ30、さらには、信号取り出し回路が破損することを未然に防止することができる。
【0054】
ゲートドライバ30、さらには、信号取り出し回路が破損した場合、X線撮影ができなくなるだけでなく、ゲートドライバ30を含む信号取り出し回路の交換が必要となり、膨大なコストと手間がかかる。言い換えると、上記実施形態のX線検出器18であれば、ソフトウェアの誤動作が発生した場合であっても、ゲートドライバ30、さらには、信号取り出し回路の破損を未然に防止できるので、これに起因する撮影不可の状態を招くことなく、破損を修復するための膨大なコストと手間も節約できる。
【0055】
なお、上記インターロック機構を構成する回路は一例であって、同様の機能を果たすことができる各種構成の回路を用いることができる。すなわち、インターロック機構は、駆動信号を生成するためにドライバ(ゲートドライバ)に供給される複数の制御電圧の状態に基づいて、複数(各々)の制御電圧のオン/オフの順序が、ドライバ、さらには、受光パネルからの信号取り出し回路が破損しないように、あらかじめ設定された順序、例えば、ドライバにかかる負荷電圧が逆電圧にならない順序や、ドライバに供給される複数の制御電圧が逆電圧にならない順序等となるように制御することができればよい。また、制御電圧の本数や種類は何ら制限されない。上記実施形態では、各NAND回路の出力信号en_A〜en_D以降の具体的な回路は例示していないが、当業者であれば、出力信号en_A〜en_Dの状態に応じて、状態遷移図の状態A〜Dの間を遷移することを許可するように制御する回路を構成することが当然にできるはずである。
【0056】
本発明は、X線に限らず、X線を含む各種放射線による撮影に適用可能である。この場合、X線画像撮影装置、X線源制御回路、X線源、X線検出器は、それぞれ、放射線画像撮影装置、放射線源制御回路、放射線源、放射線検出器となる。
【0057】
上記実施形態のように、X線検出器から出力される放射線画像の電気信号を、デジタルデータに変換することが望ましいが、デジタルデータに変換せずにアナログ電圧(アナログデータ)のままシステムコントローラに伝送してもよい。
【0058】
受光パネルのライン数、1ラインに含まれる画素数に制限はない。また、受光パネルは、アモルファスセレンのパネルに限らず、同様の機能を果たす各種材質のパネルを使用することができる。
【0059】
TFTは、各種のスイッチング素子で代用することはできるが、現実的には、MOS(金属酸化膜半導体)トランジスタやバイポーラトランジスタなどのトランジスタを用いることが望ましい。
【0060】
ドライバの具体的な回路構成は限定されない。同様の機能を果たす各種の回路で構成できる。実施形態では、1ライン分の電荷を順次読み出しているが、2ライン分以上の電荷を順次読み出してもよいし、全ライン(1画面分全部)の電荷を読み出すようにすることもできる。また、1ラインを時分割で分けて処理しているが、1ラインを同時に処理する構成とすることもできる。
【0061】
チャージアンプのバーチャルショートが確定したかどうかの検出方法は限定されない。例えば、チャージアンプに電源電圧を供給してから所定の時間の経過をもってバーチャルショートが確定したと判断することもできる。
【0062】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明の放射線検出器および放射線画像撮影装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。
【図2】制御電源およびゲート駆動信号の供給順序を表す概念図である。
【図3】X線画像の撮影時の制御電圧およびゲート駆動信号の変化を表すタイミングチャートである。
【図4】同図左側は、ゲートドライバに供給される電圧(1)〜(3)の状態遷移図であり、同右側は、インターロック機構を構成する回路の概略図である。
【図5】X線画像の撮影時の電圧(1)〜(3)の変化と状態A〜Dおよび遷移ア〜カとの関係を表すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10 X線画像撮影装置
12 システムコントローラ
14 X線源制御回路
16 X線源
18 X線検出器
20 受光パネル
22 チャージアンプ
24 MUX
26 A/Dコンバータ
28 TFT
30 ゲートドライバ
32 パネルユニット制御回路
34 高電圧供給電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射される放射線に対応する放射線画像の電気信号を生成する放射線検出器であって、
放射線の受光量に対応する量の電荷を蓄積する受光パネルと、
前記受光パネルの各画素に対応して設けられ、前記受光パネルの各画素からの電荷の出力を制御するトランジスタと、
各々の前記トランジスタのオン/オフを制御する駆動信号を生成するドライバと、
前記駆動信号を生成するために前記ドライバに供給される複数の制御電圧の状態に基づいて、前記複数の制御電圧のオン/オフの順序が、あらかじめ設定された順序となるように制御するインターロック機構とを備えていることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
さらに、前記受光パネルから供給される電荷を、当該電荷の量に対応するアナログ電圧に変換するチャージアンプを備え、
前記ドライバは、前記チャージアンプの入力のバーチャルショートが確定してから、各々のラインの前記トランジスタのオン/オフを制御することを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
放射線源と、
前記放射線源を駆動し、放射線照射の制御を実施する放射線源制御回路と、
請求項1または2に記載の放射線検出器と、
前記放射線源制御回路および前記放射線検出器の動作を制御するシステムコントローラとを備え、
前記システムコントローラは、前記放射線源制御回路により前記放射線源から放射線を被写体に照射し、被写体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出するように制御して、被写体が撮影された放射線画像を生成することを特徴とする放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−300261(P2009−300261A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155253(P2008−155253)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】