説明

放射線検出装置及び放射線撮像システム

【課題】各光電変換部の直上の領域のシンチレータ層で発生したシンチレーション光が周りの光電変換部に漏れ込み、撮像画像の鮮鋭度低下を抑制する放射線検出装置を提供する。
【解決手段】光電変換部が2次元状に配されたセンサ部12、及び放射線を光に変換するシンチレータ層30を含む放射線検出装置であって、前記センサ部12の上に配された第1部材21と、前記第1部材21の上に配された第2部材22と、を含み、前記シンチレータ層30は前記第2部材22の上に配され、前記第1部材21の屈折率をn1、前記第2部材22の屈折率をn2、及び前記シンチレータ層30の屈折率をn3としたときに、n1<n2<n3となる材料を選択し、斜めに伝搬するシンチレーション光の伝搬光路が長くなることで減衰させ鮮鋭度低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置及び放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出装置は、複数の光電変換部が2次元状に配されたセンサ部及び放射線を光に変換するシンチレータ層を備える。センサ部の上にはセンサ保護層が配され、シンチレータ層の下にはシンチレータ層を蒸着するためのシンチレータ下地層が配されうる。例えば、特許文献1には、センサ部とシンチレータ層の間に上記2部材を含む構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−078471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各光電変換部の直上の領域のシンチレータ層において発生した光が、他の光電変換部(例えば、隣接する光電変換部)に漏れ込み、撮像された画像の鮮鋭度が低下するという課題がある。これは、発生した光がセンサ部に向かって垂直方向に進まず、斜め方向に進む光が存在することが一つの原因として考えられる。また、複数の部材を含む場合は、部材ごとの境界面において屈折率の差がもたらす光の屈折や反射によって、入射光の他の光電変換部への漏れ込みが生じることも一つの原因として考えられる。しかし、例えば、特許文献1には、放射線検出装置を構成する部材のそれぞれの屈折率を、個々の部材が有する所定の範囲からどのように選択すればよいか開示されておらず、前記課題が考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、この入射光の漏れ込みを低減し、鮮鋭度の高い放射線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は放射線検出装置にかかり、前記放射線検出装置は、光電変換部が2次元状に配されたセンサ部、及び放射線を光に変換するシンチレータ層を含む放射線検出装置であって、前記センサ部の上に配された第1部材と、前記第1部材の上に配された第2部材と、を含み、前記シンチレータ層は前記第2部材の上に配され、前記第1部材の屈折率をn1、前記第2部材の屈折率をn2、及び前記シンチレータ層の屈折率をn3としたときに、n1<n2<n3の関係が成り立つ、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鮮鋭度の高い放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】各実施形態の放射線検出装置の構成の一例を説明する図。
【図2】センサ部12の光感度の波長依存性を説明する図。
【図3】シンチレータ層30において発生する光の波長分布を説明する図。
【図4】各実施形態の放射線検出装置における光の屈折の一例を説明する図。
【図5】センサ部12において検知された光強度と波長の関係を説明する図。
【図6】本発明にかかる放射線撮像システムを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1乃至4を参照しながら、第1実施形態の放射線検出装置1を説明する。放射線検出装置1は、図1に例示されるように、センサパネル10、センサパネル10の上に配された構造ST、及び構造STの上に配されたシンチレータ層30を含みうる。センサパネル10は、センサ基板11、センサ基板11の上に配されたセンサ部12及び信号読出部13を含みうる。センサ部12は、2次元状に配された光電変換部(不図示)を含みうる。また、センサ部12は、光電変換部からの信号を処理するためのスイッチ素子(不図示)、スイッチ素子を駆動するための配線(不図示)等を含みうる。信号読出部13は、放射線検出装置1の外部から、センサ部12の出力に応じた信号を読み出すために用いられうる。
【0010】
構造STは、第1部材21及び第2部材22を含みうる。第1部材21は、例えば、センサ保護層として機能して、センサ部12の表面を保護しうる。第2部材22は、例えば、シンチレータ下地層として機能し、大気圧プラズマ処理等の活性化処理を用いて表面を平坦化することにより、後に蒸着により形成されるシンチレータ層30との密着性が向上しうる。シンチレータ層30は、放射線(X線、α線、β線、γ線等の電磁波を含む)を光に変換しうる。このとき、第1部材21の屈折率n1、第2部材22の屈折率n2、及びシンチレータ層30の屈折率n3の関係は、n1<n2<n3となるとよい。
【0011】
放射線検出装置1は、シンチレータ層30の上に配されたシンチレータ保護層40、シンチレータ保護層40の上に配された反射層50、及び反射層50の上に配された保護層60を、さらに含みうる。反射層50は、放射線の入射側に向かって進んだ光をシンチレータ層30側に向けて反射しうる。これにより、シンチレータ層において発生した光の利用効率を向上させうる。また、反射層50は、同時に、シンチレータ層30において発生した光以外の光、例えば、外部からの光線を遮断する層としても機能しうる。保護層60は、湿気や物理的な衝撃のような外部環境から上記の構成部材のそれぞれを保護しうる。
【0012】
以下では、上記の構成部材のそれぞれについて、より詳細な具体例を述べる。センサ基板11には、例えば、ガラス、耐熱性プラスチック等を好適に用いることができる。センサ部12には、例えば、アモルファスシリコン(a−Si)等の半導体を用いて、例えば、MIS型センサ、PIN型センサ、TFT型センサのような光電変換部が設けられうる。例えば、MIS型a−Siセンサを用いたセンサ部12が検知しうる光の波長分布は、図2に示されるように、波長λ=550〜650nmの領域に波長ピークが存在しうる。光電変換された信号は、例えば、TFT(不図示)によって読み出され、信号配線を介して信号処理回路(不図示)に出力されうる。第1部材21には、例えば、SiN、SiO2等の無機の部材が用いられうる。
【0013】
第2部材22には、例えば、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、パラキシリレンやアクリル等の有機物質を含む樹脂が用いられ、例えば、熱硬化型のポリイミド系樹脂が代表的である。また、シンチレータ層30の蒸着やアニール処理のような高温条件を伴う処理において劣化しないように、耐熱性を有する樹脂がよい。
【0014】
シンチレータ層30には、光散乱の抑制や解像度の向上を目的として、一般に、柱状結晶構造を有するものが用いられうるが、柱状結晶構造でないものを用いてもよい。具体的には、例えば、ハロゲン化アルカリを主成分とする材料、例えば、CsI:Tl、CsI:Na、CsBr:Tl、NaI:Tl、LiI:Eu、KI:Tlが用いられうる。例えば、CsI:Tlの場合は、CsIとTlIを同時に蒸着することにより得られうる。また、例えば、酸化硫化ガドリニウム(GOS)のような粒子状結晶が用いられてもよい。シンチレータ層30にCsI:Tlを用いる場合は、図3(a)に例示されるように、λ=400〜700nmにわたる波長を含む光が発生しうる。この発光光は、波長λ=550〜600nm付近にピークを有しうる。同様に、シンチレータ層30にGOSを用いる場合は、図3(b)に例示されるように、その発光光は波長λ=540nm付近にピークを有しうる。
【0015】
シンチレータ保護層40には、例えば、ポリイミド系、エポキシ系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系のホットメルト樹脂を用いることができ、特に、水分透過率の低いものが望ましい。また、シンチレータ保護層40の厚さは、10〜200μm程度がよい。
【0016】
反射層50には、例えば、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt、及びAu、若しくはこれらの合金のような反射率の高い金属が用いられうる。反射層50の厚さは1〜100μm程度にするとよい。反射層50の厚さを1μmより薄くすると、反射層50の形成時にピンホール欠陥が生じうる。一方で、反射層50の厚さを100μmより厚くすると、放射線の吸収量が大きく被撮影者が被爆する線量が増加しうる危険性が生じうる。また、シンチレータ層30とセンサパネル10を、これらの段差に隙間ができないように覆うことの困難性という製造上の問題が生じうる。
【0017】
保護層60には、いずれの材料も用いられうるが、放射線の透過率が高いものが好ましく、例えば、CFRP、アモルファスカーボンが用いられうる。その他、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド等のフィルム材料も用いられうる。保護層60の厚さは、10〜100μm程度にするとよい。また、反射層50と保護層60のうち一方の部材で双方の役割を兼ねるように当該一方の部材を設けてもよく、その場合は、例えば、Al、Au等の金属基板が用いられうる。
【0018】
前述のとおり、第1部材21の屈折率n1、第2部材22の屈折率n2、及びシンチレータ層30の屈折率n3の関係は、n1<n2<n3となるとよい。これにより、図4に図示されるように、斜めに進む光の光路長は長くなり、したがって、斜めに進む光は減衰されうる。これにより、放射線検出装置1によって取得されうる画像の鮮鋭度の指標となるMTF(Modulation Transfer Function)が向上しうる。
【0019】
以下では、図4を参照しながら、構成部材のそれぞれの屈折率が前述のように設けられている場合において、シンチレータ層30において発生した光がセンサ領域に到達するまでに進む横方向の距離を算出する。例えば、第1部材21として、厚さ0.5μm、屈折率1.45のSiO2を用いることができる。また、例えば、第2部材22として、厚さ5μm、屈折率1.7のポリイミド系樹脂を用いることができる。また、例えば、シンチレータ層30として、厚さ380μm、屈折率1.8のCsI:Tlを用いることができる。この場合、シンチレータ層30と第2部材22との界面Pにおける、臨界角α32=70.8°であり、界面Pにおいて入射角がα32以上の光は全反射されうる。また、第2部材22と第1部材21との界面Qにおける、臨界角α21=58.5°であり、界面Qにおいて入射角がα21以上の光は全反射されうる。
【0020】
発光点(放射線が光に変換された点)をXとして、光が発光点Xからセンサ領域に到達するまでに進む横方向の距離をLとし、構造STにおける臨界角をαSTとする。また、H1乃至H3は、それぞれ、第1部材21、第2部材22及びシンチレータ層30の厚さを示す。このとき、L=H3×tanαST+H2×n3×sinαST/(n2−(n3×sinαST1/2+H1×n3×sinαST/(n1−(n3×sinαST1/2が算出されうる。また、n3×sinθ=n2×sinθ=n1×sinθであるので、臨界角αST=arcsin(n1/n3)である。ここで、θ乃至θは、それぞれ、第1部材21、第2部材22及びシンチレータ層30における入射角を示す。ここで、αST=53°であるので、x=511μmが得られる。即ち、発光点Xからセンサ領域に到達するまでに進む横方向の距離xは、少なくとも511μm以下と算出されうる。このようにして、どのようにしてセンサ部12のピッチを設計すればよいか、又は構成部材のそれぞれの厚さや屈折率等をどのように選べばよいか、検討することができる。
【0021】
以上、本実施形態によると、鮮鋭度の高い放射線検出装置を提供することができる。
【0022】
<第2実施形態>
図1及び5を参照しながら、第2実施形態の放射線検出装置2を説明する。本実施形態は、第2部材22にカラーフィルタとしての機能を積極的に設け、第2部材22aとする点で第1実施形態と異なる。第2部材22aは、所望の波長の光が選択的に透過されるように、又は所望の波長の光が選択的に吸収されるように部材を選ぶことができ、シンチレータ層30において発生した光のピーク波長を含む領域の波長の光を吸収する材料を含みうる。
【0023】
第2部材22aには、例えば、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、パラキシリレン、アクリル等の有機物質を含む樹脂が用いられ、例えば、熱硬化型のポリイミド系樹脂が代表的である。また、シンチレータ層30の蒸着やアニール処理のような高温条件を伴う処理において劣化しないように、耐熱性を有する樹脂がよい。第2部材22aの厚さは、50μm以下とするとよく、特に、10μm以下が好適である。例えば、第2部材22aには、厚さ5μm、屈折率1.7、黄色フィルタのポリイミド系樹脂が用いられうる。このポリイミド系樹脂は、スリットコーター塗布、スピンコーター塗布、スクリーン印刷、ディッピング塗布、スプレー塗布、インクジェット方式等の塗布手段を用いて形成されうる。シート状のポリイミド系樹脂を接着材(粘着剤)で貼り合わせる事も可能である。
【0024】
また、第1実施形態と同様で、第1部材21、第2部材22a、及びシンチレータ層30の屈折率の関係は、n1<n2<n3とするとよい。これにより、斜めに入射した光の光路長は長くなり、斜めに進む光は第2部材22aにおいて効果的に吸収されうる。したがって、シンチレータ層30において発生した光のうち、センサ部12に到達するまでに起こりうる光学的に散乱された成分も低減されうる。これにより、放射線検出装置2によって取得されうる画像の鮮鋭度が向上しうる。
【0025】
ここで、CsI:Tlを用いたシンチレータ層30から発生しうる光における、カラーフィルタの色と吸収されうる光の波長λとの関係を、以下に述べる。青色はλ=480nm以上を吸収しうる。シアン色はλ=530nm以上を吸収しうる。緑色はλ=530nm以下と630nm以上を吸収しうる。黄色はλ=530nm以下を吸収しうる。マゼンタ色はλ=460nm以上630nm以下を吸収しうる。橙色はλ=611nm以下を吸収しうる。赤色はλ=660nm以下を吸収しうる。また、カーボンブラックの様な黒色、又は黒及び白の顔料を混ぜ合わせた灰色を用いることで、シンチレータ層30で発生した光の波長のうちセンサ部12が検知しうる波長の全域を吸収することもできる。いずれの色のカラーフィルタを用いるかは、所望の波長の光が選択的に透過されるように、又は選択的に吸収されるように、設計者が決めることができ、例えば、市販の光学フィルタを選んでもよい。
【0026】
例えば、CsI:Tlを用いたシンチレータ層30において発生する光は、λ=500〜550nmに波長ピークを有するので、例えば、マゼンタ色を選べばよい。図5は、シンチレータ層30から発生しうる光のピーク波長λに合わせてカラーフィルタを用いたときのセンサ部12に到達しうる光の強度の波長分布を例示する。実線Aは、カラーフィルタを使用しない場合を示す。点線Bは、ピーク波長の光を吸収するカラーフィルタを用いた場合を示す。また、破線Cは、ピーク波長よりも短い波長の光を吸収するカラーフィルタを用いた場合を示す。また、さらに、二点鎖線Dは、ピーク波長よりも短い波長と長い波長の光を吸収するカラーフィルタを用いた場合を示す。
【0027】
以上、本実施形態によると、鮮鋭度の高い放射線検出装置を提供することができる。
【0028】
<第3実施形態>
図1を参照しながら、第3実施形態の放射線検出装置3を説明する。本実施形態は、シンチレータ保護層40に代わって光吸収層40aが配される点で第1及び第2実施形態と異なる。光吸収層40aは、シンチレータ層30を保護する層としても機能しうるが、所定の波長の光を吸収するカラーフィルタとして用いられることも可能であり、シンチレータ層30において発生した光の一部又は全部を吸収しうる。これにより、放射線検出装置3によって取得されうる画像の鮮鋭度が向上しうる。シンチレータ層30は、放射線の入射側に近い方が、より多くの放射線を吸収して発光するため、散乱される光の量も当該入射側に近い方が多くなりうるからである。
【0029】
反射層50は、シンチレータ層からの光をシンチレータ層30側に向かって反射しうる。反射された当該光は、再び光吸収層40aの中を通過しうる。このとき、センサ部12に向かって斜め方向に進む光は光路長が長いため、光吸収層40aによって効果的に吸収されうる。このことに鑑みると、光吸収層40aの屈折率n4と、シンチレータ層30の屈折率n3との関係は、n3>n4となるとよい。
【0030】
光吸収層40aには、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、アクリル等のフィルム材料が用いられうる。また、熱圧着により成型が可能な樹脂として、例えば、ポリイミド系、エポキシ系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系のホットメルト樹脂が用いられてもよく、特に水分透過率の低い樹脂がよい。光吸収層40aの厚さは、2μm以上100μm以下とすると良い。さらに、5μm以上50μm以下とすると、取得されうる画像の鮮鋭度、及び輝度が、より良好となりうる。
【0031】
例えば、光吸収層40a及び第2部材22aを、共に、黄色フィルタ(λ=530nm以下の光を吸収)として設けることができる。シンチレータ層30からの光は、反射層50において反射され、センサ部12に到達するまでに光吸収層40aにおいて大きく減衰されうる。また、例えば、第2部材22aと光吸収層40aとを、異なる色のカラーフィルタとして設けることもできる。例えば、光吸収層40aには、屈折率1.6のアクリル製の赤色フィルタ(λ=660nm以下の光を吸収)とすることができる。黄色フィルタよりも赤色フィルタの方が、波長の広い領域について光を吸収しうる。したがって、第2部材22aからセンサ部12に到達する戻り光を、優先的に減衰させることができる。同様にして、光吸収層40aを、例えば、カーボンブラックを含むホットメルト樹脂を用いて、黒色フィルタ(広域の波長の光を吸収)として設けることもできる。また、例えば、第2部材22aを、緑色フィルタ(λ=530nm以下と570nm以上の光を吸収)とし、光吸収層40aを、マゼンタ色フィルタ(λ=460〜630nm以下の光を吸収)とすることも可能である。これは、例えば、シンチレータ層30にGOSを用いる場合は、図3(b)に示されるように、λ=530〜560nm付近に波長ピークを有する。そこで、第2部材22aにおいては、λ=530〜560nm付近の波長ピークの光を透過しつつ、λ=490nm、580nm、620nm付近の小さい波長ピークの光を吸収しうる。一方、光吸収層40aにおいては、シンチレータ層30から反射層50に向かって進んだ光を効果的に吸収されうる。また、さらに、例えば、第2部材22aを、灰色フィルタ(広域の波長の光を吸収)として設けることもできる。これは、例えば、センサ部12に入射した光が、例えば、センサ部12に含まれる金属配線によって反射・散乱され、この反射光・散乱光がセンサ部12へ再び入射することを防止しうる。
【0032】
以上、本実施形態によると、鮮鋭度の高い放射線検出装置を提供することができる。
【0033】
以上の3つの実施形態を述べたが、本発明はこれらに限られるものではなく、目的、状態、用途、機能、およびその他の仕様の変更が適宜可能であり、他の実施形態によっても実施されうることは言うまでもない。
【0034】
例えば、本発明を、シンチレータパネルとセンサパネルとを貼り合わせた、いわゆる貼り合わせ型の放射線検出装置に適用することも可能である。シンチレータパネルは、支持基板の上にシンチレータ下地層を設け、シンチレータ下地層の上にシンチレータ層を設け、その上をホットメルト樹脂層で覆うことにより形成されうる。支持基板には、例えば、金属板、金属箔、樹脂、ガラス、セラミック等、いずれの素材も用いられうるが、例えば、アモルファスカーボン基板、Al基板、CFRP基板、ガラス基板、石英基板等の放射線透過性を有する部材が用いられうる。このとき、例えば、第2部材22aは、シンチレータ層を覆う当該ホットメルト樹脂に対応し、その吸着性を利用して、シンチレータパネルとセンサパネルとを貼り合わせることができる。このとき、接着材を用いてもよい。この場合においても、第2部材22aは、斜めに入射する光や散乱された光を吸収しうる。接着材には、アクリル系、エポキシ系、オレフィン系、シリコーン系等の樹脂が用いられ得、特に、光学的に透過率の高いアクリル系のものがよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び加熱溶融固化型ホットメルト樹脂(例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等を主成分としたもの)でもよい。また、第2部材22aに代わって、又は第2部材22aと共に、第1部材21及び接着材のいずれか一方がカラーフィルタとして機能するように設けられてもよい。
【0035】
ここで、図6は、本発明による放射線検出装置を放射線撮像システムに適用した応用例を示す。X線検出装置605には、各実施形態の放射線検出装置が用いられうる。X線ルーム600において、放射線源であるX線チューブ603で発生したX線606は、被験者604(例えば、患者)の胸部607を透過し、X線検出装置605に入射しうる。この入射したX線は、被験者604の体の内部の情報を含みうる。X線検出装置605は、この入射したX線に応じた電気的情報を取得しうる。この情報は、デジタル信号に変換され、イメージプロセッサ609(信号処理部)により画像処理されうる。画像処理された信号は、例えば、コントロールルーム601の内に設置されたディスプレイ608(表示部)に表示され、観察されうる。
【0036】
また、上記デジタル信号は、インターネットや電話回線などのネットワーク技術を用いた伝送手段610(伝送部)により、例えば、コントロールルーム601から遠隔地であるドクタールーム602に転送されうる。転送された信号は、例えば、ドクタールーム602に設置されたディスプレイ611に表示され、観察されうる。さらに、この信号は、例えば、フィルムプロセッサ614に入力され、レーザープリンタ613(記録部)を用いてフィルム612に記録することもできる。そして、ディスプレイ611又はフィルム612を観察することにより、遠隔地の医師等が被験者604の状態を診断することが可能である。また、さらに、上記の信号は、光ディスク等(保持部)に保持することもできる。
【0037】
以上の説明においては、X線検出装置について述べたが、本発明はシンチレータを置換することによって、α線、β線、γ線等の検出装置にも適用が可能である。シンチレータとしては、それぞれの放射線に感応する従来周知のものを用いることができる。例えば、α線に対しては、硫化亜鉛(銀)シンチレータが知られている。β線に対しては、ポリスチレンなどのプラスチックにPOPOPなどの有機蛍光色素を溶かし込んだプラスチックシンチレータが知られている。また、γ線に対しては、タリウムで活性化されたヨウ化ナトリウム単結晶から成るシンチレータが知られている。以上のように、それぞれの用途に応じて、本発明を適宜変更して実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部が2次元状に配されたセンサ部、及び放射線を光に変換するシンチレータ層を含む放射線検出装置であって、
前記センサ部の上に配された第1部材と、
前記第1部材の上に配された第2部材と、を含み、
前記シンチレータ層は前記第2部材の上に配され、
前記第1部材の屈折率をn1、前記第2部材の屈折率をn2、及び前記シンチレータ層の屈折率をn3としたときに、n1<n2<n3の関係が成り立つ、
ことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記第2部材は、光を吸収する部材を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記シンチレータ層の上に配され、光を吸収する光吸収層と、
前記光吸収層の上に配され、前記シンチレータ層からの光を前記シンチレータ層側に向けて反射する反射層と、を含み、
前記光吸収層の屈折率をn4としたときに、n3>n4の関係が成り立つ、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出装置と、
前記放射線検出装置からの信号を処理する信号処理部と、
前記信号処理部からの信号を記録するための記録部と、
前記信号処理部からの信号を表示するための表示部と、
前記信号処理部からの信号を伝送するための伝送部と、
前記放射線を発生させるための放射線源と、
を具備することを特徴とする放射線撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113685(P2013−113685A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259510(P2011−259510)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】