説明

放射線検査装置及びそのアライメント方法

【課題】放射線検査装置の放射線源と放射線検出器とのアライメントについて、その装置の再組立て時に分解前のアライメントに極力合わせて再現する。
【解決手段】放射線源101と検出器103とが、被検体の配管215を挟んで対向した位置に配置され、放射線源101からの放射線が配管215を透過し、その透過放射線を検出器103にて検出する放射線検査装置において、放射線源101と検出器103間の距離を距離計測器107a,107b,107cで計測し、この計測量から放射線源101と検出器103の相対位置を導出して、これを初期値とし、放射線検査装置を検査現場で再組立て時に前記距離の計測と同じ方法にて前記距離を再計測し、再計測による前記相対位置と前記初期値との差分量を導出し、その差分量に基づいて前記放射線源と前記検出器間の相対位置関係を位置調整機構105で調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線源と放射線の検出器との間に被検体を設置してCL(Computed Laminography)方式の検査手法を適用する放射線検査装置に関し、検査現場で用いる際の検査装置の高精度のアライメント方法に有益な技術である。
【背景技術】
【0002】
発電所等で長期間使用されている配管は、内部減肉が生じる。これは、流体が配管壁面に繰り返し衝突することにより、表面が機械的に損傷を受け、その一部が脱離する現象(エロージョン)と化学的作用による腐食(コロージョン)との相互作用により発生する。特に曲がり個所、オリフィスなど流体の流れに乱れが生じる個所において減肉は顕著に見られる。この減肉量が限界値を超えると配管損傷の可能性が高まる。
【0003】
この減肉量の程度を非破壊的に認識するために、配管検査が定期的に実施されている。従来の配管検査の一つは、超音波探傷器等で配管に直接探触子を接触させて超音波探傷検査を実施していた。しかし、発電所等における配管は外部が保温材にて被覆されていることが多く、超音波探傷検査では保温用の被覆材を外してから検査していた。そのために、被覆材の撤去や再装着作業に時間と費用がかかり、さらには被覆材の廃棄処理費用が必要になる問題があった。
【0004】
これに対し、放射線源と検出器の組合せによる放射線透過撮影を行う配管内部検査は、配管が保温材で被覆された状態でも保温材内部の配管の状況が検査可能であり、検査の効率化に有効な手段である(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、従来実施されている透過撮像では三次元物体の情報が二次元平面上に投影されるために、減肉位置,形状の把握や減肉の定量評価が困難である。
【0006】
配管内部情報を立体的に得るために有効な方法の一つとしてCT(Computed Tomography)がある。CTは放射線源と検出器を被検体の周囲で回転することにより、全周方向からの透過データを取得し、画像再構成演算により断面像を得るものである。これによりミリメートル以下の分解能を持つ画像が得られる。
【0007】
しかし、発電所など実際のプラントにおける検査現場においては配管周囲に放射線源と検出器を回転でき得る空間がない場合が多い。そこで、放射線源と検出器を平行移動することで被検体の断層像を求め、立体情報を得るCL(Computed Laminography)と言われる方式による検査手法が開発されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
CL方式による放射線検査においては、放射線源と検出器を平行移動することで検査対象の様々な角度からの放射線透過データを得る。この透過データを再構成することで検査対象の断層像を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−89810号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S.Gondrom, S.Schropfer :“Digital computed laminography and tomosynthesis - functional principles and industrial applications”Proceedings BB 67-CD, Computerized Tomography for Industrial Applications and Image Processing in Radiography (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
CL方式の放射線検査は通常のCT方式の放射線検査と異なり、放射線源と検出器の回転動作によるデータ取得を行っていない。
【0012】
通常のCT方式では回転中心が求まれば、検出器を構成している各放射線検出素子と放射線源とを結ぶ線分と中心軸との距離と角度により、素子ごとの放射線透過データの再配置による画像再構成が可能になる。
【0013】
しかし、CL方式では回転中心がないために、放射線源と検出器の各放射線検出素子とを結ぶ線分の幾何配置をあらかじめ正確に認識しなければ画像再構成ができない。
【0014】
実際の放射線検査の検査現場での放射線検査装置の運用においては、現地プラントへ放射線検査装置を運搬するために放射線検査装置を分解し、現地プラント内の検査現場で放射線検査装置の再組立てをする必要がある。
【0015】
その再組立ての際、分解前に設定した初期のアライメントに対して再組立て後のアライメントがずれて、狂っている恐れがある。
【0016】
放射線検査装置のアライメントが狂うと放射線透過データの再配置による画像再構成処理に際し、分解前のアライメントをパラメータとして利用できなくなる。
【0017】
そのため、再組立て後の放射線検査装置のアライメントに分解前のそれとずれが無いか、検査現場で再組立て後の放射線検査装置のアライメントを正確に把握してそのずれを正確に認識する必要がある。
【0018】
従って、本発明の目的は、放射線検査装置の組立てに際しての放射線検査装置のアライメントを正確に把握することであって、さらに好ましくは、正確に把握したアライメントに基づいて分解前のアライメントに極力合わせる、乃至は画像再構成の際に利用するアライメントを補正して、できるだけ分解能の高い検査を行うことに寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的を達成するための放射線検査装置は、放射線源と検出器とが検査対象物を挟んでそれぞれが対向した位置に配置され、放射線源から照射された放射線が検査対象物を透過し、その透過放射線を検出器にて検出する放射線検査装置において、前記放射線検査装置における前記検出器の位置を特定する手段を備えた放射線検出装置であり、その放射線検査装置のアライメント方法は、前記放射線検査装置の分解前に予め前記放射線源と前記検出器の相対位置を特定しておき、前記放射線検査装置の再組立て時に前記相対位置を再度特定し、前記両特定結果間の差分量を導出して前記相対位置の変化を検出する放射線検査装置のアライメント方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、放射線検査装置の放射線源と検出器の各検出素子との幾何配置について、放射線検査装置の再組立て前後における変化量が確認できるという効果が得られる。このような効果によって、再組立て後の放射線検査装置のアライメントを精度良く決めることができ、放射線検査装置における放射線透過データを利用した画像再構成に際して高分解能画像再構成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1による放射線検査装置の概略図であり、(a)図は立面図を、(b)図は下方向から治具とX線管方向を視た図である。
【図2】本発明の実施例1の放射線検査装置の実機使用時の構成図である。
【図3】本発明の放射線検査装置の画像再構成領域を示した模式図である。
【図4】本発明の実施例1における側面距離計測例を示す図であり、(a)図は立面図を、(b)図は下方向から治具とX線管方向を視た図である。
【図5】本発明の実施例2に用いる校正ファントムの構成を示す図である。
【図6】図5の校正ファントムに装備した垂直細線の透過像からX線源の位置を導出する原理を示す模式図であり、(a)図は垂直細線の放射線透過像を示す図、(b)図は(a)図の放射線透過像の仮想延長線とその交点を示す概念図である。
【図7】本発明の実施例2による校正ファントムの垂直細線の放射線透過像を用いてX線源と検出器間の距離を導出する原理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例では、放射線源(以下、X線源ともいう。)と放射線検出器(以下、単に検出器ともいう。)が、検査対象物を挟んでそれぞれが対向した位置に配置され、放射線源から照射された放射線が検査対象物を透過し、その透過放射線を検出器にて検出するCL方式の放射線検出装置において、その放射線検査装置を分解再組立てする際に、その分解前に放射線源と検出器間との相対位置を計測し、この計測量に基づく相対位置を導出して、その放射線検査装置の再組立て時に再度放射線源と検出器間との相対位置を再計測し、その再計測により導出した放射線源と検出器の相対位置を導出し、分解前の相対位置と再実施による相対位置との差分量から再組立て時の放射線源と検出器間の位置と距離の分解前に対する変化量を導出することによりその放射線検出装置のアライメントの再現精度を知るようにした。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1では、放射線源と検出器とが、検査対象物を挟んでそれぞれが対向した位置に配置され、放射線源から照射された放射線が検査対象物を透過し、その透過放射線を検出器にて検出するCL方式の放射線検出装置において、その放射線検査装置を分解再組立てする際に、その分解前に放射線源と検出器間の距離を計測し、この計測量から線源と検出器の相対位置を導出して、これを基準の値とし、その放射線検査装置の再組立て時に前記距離計測を再実施して線源と検出器の相対位置を導出し、再実施により導出した値と基準の値との差分量から再組立て時の放射線源と検出器間の位置と距離の分解前に対する変化量を導出することによりその放射線検出装置のアライメントの再現精度を知るようにした。
【0024】
図1に本発明の実施例1を示す。図1(a)にはCL方式の放射線検査装置を横方向から見た構成を示している。放射線源であるX線源101を内部に有したX線管球102と、複数の放射線検出素子を二次元平面内に集合配置させた2次元検出素子を有する検出器103とは互いに対向するように配置している。
【0025】
配管215などの被検体は、図2のように、X線源101と検出器103との間に配置されて放射線検査の検査対象物とされる。
【0026】
X線源101と検出器103とは支持構造物104により相対位置が決定されるように組立てられている。また、検出器103の背面に位置調整機構105が設けられている。その位置調整機構105は、検出器103を上下左右方向、ならびに回転方向の位置調整を司っている。
【0027】
図1(b)に下方向からX線管球102方向を見た場合の構成を示す。X線管球102を固定する治具106に、3個以上の距離計測器107が一直線状にはならない配置で、計測方向を検出器103方向に向けて、着脱自在に設置される。この距離計測器107は距離の計測時のみ治具106に取り付けられ、配管215の検査時には取り外される。
【0028】
図2は、図1の放射線検査装置の制御部を含む実機使用時の構成例を示している。図2のように、X線管球102は高電圧ケーブル207と冷却ケーブル208で高圧電源201と冷却器202に接続され、高圧電源201は高電圧発生器制御ケーブルで、冷却器202は冷却器制御ケーブル210でX線管システム制御部203に接続され、X線管システム制御部203による制御によってX線管球102には常に安定した管電圧と管電流を供給できる。
【0029】
検出器103は検出器制御ケーブル211で接続された検出器制御部204によりデータ取り込みタイミングやデータ収集の制御が加えられる。X線管システム制御部203,検出器制御部204は、中央制御部205に制御ケーブル212,213で接続されており、この中央制御部205にて各機器の動作タイミング調整や、制御部内部の演算装置にてデータ処理が実施される。放射線検査装置の動作状態や、検査結果は中央制御部205とモニタケーブル214で接続されたモニタ206にて表示される。
【0030】
本実施例の放射線検査装置の構成においては、X線管球102と検出器103は同時、あるいはいずれか一方のみが並進して検査対象の透過データを取得し、これを再構成することで断層像を得るものである。
【0031】
画像再構成領域を図3に示すような格子301状とすると、本実施例の放射線検査装置では通常のCT装置のような回転運動を行わないために、放射線検査装置の幾何配置を回転中心からの相対位置として扱うことができない。
【0032】
そのため、画像再構成を実施するには放射X線304の内のX線源101と検出器103の各検出素子とを結ぶ線に沿って検出素子に入射するX線302が画像再構成領域の格子301のどの箇所をどれくらいの長さ通過したかを正確に把握することが必要になる。そのためには、X線源101の検出器103からの位置と距離を知ることが必須である。
【0033】
図1に示した3台の距離計測器107の取り付け位置は、X線管固定治具106上に設定した基準点108からの座標位置があらかじめ判明している位置に設定されている。そしてX線源101からの基準点108の座標位置は判明しているので、3台の距離計測器107の取り付け座標位置や基準点108からの距離が既知となっている。
【0034】
このような相対位置関係が既知となっている状態で、それぞれの距離計測器107と対向する検出器103の面までの距離を計測すると、基準点108から検出器103上の計測点までのベクトルが3つ以上得られる。
【0035】
ベクトルが3つ得られた場合、それぞれを(X1,Y1,Z1),(X2,Y2,Z2),(X3,Y3,Z3)とすると、空間上における検出器103が存在する平面は式(1)で表される。そして、X線源101と基準点108との位置関係が既知であるから、X線源101を基準にした検出器103が存在する平面も表せる。
【0036】
【数1】

【0037】
また、図4に示すように検出器103の側面に垂直に取り付けた計測治具401を用いて、検出器103の側面との距離を側面距離計測用の距離計測器402により計測する。この際、側面計測には水平90°方角の異なる2側面の距離を計測するため、計測治具401と距離計測器402は、水平90°方角の異なる2側面に設置される。この2個の距離計測器402の治具106への取り付け座標位置も基準点108及びX線源101を基準にして既知である。
【0038】
従って、式(1)から平面が決定されており、前述の側面距離計測の結果と合わせることで検出器103のX線源101に対する相対位置が特定される。
【0039】
以上のような計測を放射線検査装置を検査現場へ搬送するための分解を行う前に実施しておき、相対位置に関する基準データとして検査現場へ持ち込める過般可能なコンピュータのメモリーに保存しておく。その保存は紙に記載しての保存であっても、他の保存形態であっても良く、検査現場で基準データを認識できるものであればどのような保存手段であっても良い。
【0040】
本実施例の放射線検査装置は現地プラントの検査現場での使用を対象にしている。そのため、狭隘部での装置設置が可能である必要があり、装置の分割,再組立てが必須となる。
【0041】
従って、基準データを取得した後は、放射線検査装置を分解して検査現場へ搬送し、検査現場で放射線検査装置を再組立てする。
【0042】
その再組立てが開始された後であって、放射線検査に供用する前、即ちこの期間を再組立て時と称しているが、その再組立て時に放射線検査装置の分解前に距離計測装置を用いた距離計測と同様な距離計測を再実施する。
【0043】
この再実施による計測結果から検査現場に持ち込んだコンピュータでX線源101と検出器103の相対位置のデータを求め、その求めたデータと保存しておいた基準データと比較して、その比較による差分量が許容範囲以下ならば、そのまま組立てを完成させて放射線検査に供用する。
【0044】
逆にその差分量が許容範囲以上と大きくずれる場合には、許容範囲以下となるように位置調製機構105で検出器103の位置を修正する。これにより放射線検査装置の再構成画像の精度を確保可能となる。
【0045】
放射線検査装置の再構成画像の精度を確保するに当たって位置調整機構105を用いない場合には、放射線検査装置の再組立て時の距離計測結果から求まるX線源101と検出器103の相対位置のデータと、基準データとの差分量を用いて新たにX線源101と検出器103の配置を画像再構成演算のパラメータとして放射線検査装置に設定することによっても可能である。
【実施例2】
【0046】
本発明の実施例2は、既述の実施例1で述べたように放射線検査装置の分解前に距離計測器107,402による距離計測を実施例1と同様に行い計測結果を取得し、さらには、X線源101と検出器103の相対位置と相対距離を計測可能な校正ファントムによる計測も合わせて実施し、距離計測器107,402による計測結果と校正ファントムによる計測による相対位置との相関を求めて相関データとして保存し、放射線検査装置の再組立て時においては分解前の距離計測と同様に距離計測器による再計測を行って、既述の相関データに基づいて、その再計測結果に相関する相対位置を求め、放射線検査装置の分解前と再組立て時との相対位置の差分量から、分解前と再組立て時とにおけるX線源101と検出器103との間の相対位置の変化量を導出して放射線検出装置のアライメントの精度を認識するようにしている。
【0047】
さらに具体的に次の通りである。前述したように、CL方式の放射線検出装置においては、X線源101の検出器103からの位置と距離を正確に知ることが必要となる。
【0048】
そこで、放射線検査装置を検査現場へ搬送する前に行う分解作業の前に、実施例1と同様に距離計測器107による距離計測で計測結果を取得する。それと同時に、或いは前後して、校正ファントムを検出器103に置いてX線源101と検出器103との相対位置と距離を計測して校正ファントムを利用した計測結果を取得する。
【0049】
校正ファントムの一例を図5に示す。校正ファントムは、アクリルなどのX線の減衰が比較的小さい部材501内部に垂直に金属製の垂直細線502が少なくとも2本以上設けられている。垂直細線502はタングステンなどの重金属が望ましい。
【0050】
図6(a)は本実施例における垂直細線502部分の放射線透過像のイメージを示したものである。本実施例は検出器103は複数の放射線検出素子を二次元面に配置した2次元検出面を有しているため、放射線透過像は平面像として得られる。
【0051】
図6(a)は、垂直細線502を4本採用した校正ファントムを用いた場合の放射線透過像のイメージを示している。X線源101は1mm未満の微小な大きさであり、X線を放射状に放出している。そのため、垂直細線502の放射線透過像601は、垂直細線502からX線源101を見込んだ方向の反対側に投影される。
【0052】
よって、図6(b)に示すように、それぞれの垂直細線502の透過像601a,601b,601c,601dを延長した線分602a、602b,602c,602dの交点603の上部にX線源101が位置する。垂直細線502は、少なくとも2本以上あればX線源101の位置を導出できる。2本の場合には、2本の垂直細線502を結ぶ線分上にX線源101が位置しないことが必要条件となる。
【0053】
また、垂直細線502の放射線透過像によりX線源101の位置を導出するため、像の幅は極力細い方が誤差が小さくなる。その幅としては検出器103の素子程度が望ましい。よって、細線径も同様に検出器103の素子大きさと同程度とすることが望ましい。垂直細線502の数を増加することで位置精度が向上する。細線の数をn本とした場合、統計誤差は1/√nで減少する。このように校正ファントムを用いた場合の計測は計測精度の向上が期待できる。
【0054】
図7は本実施例において垂直配線502によりX線源101と検出器103との距離を導出するための概念図を示している。垂直細線502の任意の2本を選択し、細線の下端間の距離をL1、上端間の距離をL2とする。また、細線の高さをDとする。これら3つの数値は、校正用ファントム製作時に精密に制御可能である。また、X線源101から垂直細線503下端部までの距離をZ1、上端部までの距離をZ2とし、X線源101と検出器103の検出面までの距離をHとする。これら3つの数値は未知数である。さらに、検出器103で得られた放射線透過像から、下端部透過像の距離をL1′、上端部透過像の距離をL2′とする。
【0055】
透過像の拡大率を下端部でr1、上端部でr2とすると、それぞれ下式のように表される。
【0056】
【数2】

【0057】
【数3】

これらを変形すると、
【0058】
【数4】

【0059】
【数5】

細線高さDはZ1とZ2の差であるから
【0060】
【数6】

これにより、既知の数値からX線源101と検出器103の検出面間の距離Hが導出される。
【0061】
上記により求まったX線源101と検出器103の相対位置と距離Hとのデータと、距離計測器107,402による計測結果のデータとの相関関係を作成し、相関データとして検査現場に持ち込めるコンピュータのメモリーに保存しておく。その保存方法はコンピュータによらず紙に記録するなど、他の保存手段を用いても良い。
【0062】
分解されて検査現場に搬入された放射線検査装置は、その検査現場にて再組立てされる。その際には、実施例1と同様に、放射線検査装置の再組立て時において、距離計測器107,402による距離計測を再実施して計測結果を取得する。
【0063】
この再実施による計測結果に相関するX線源101と検出器103の相対位置と距離Hを相関データに基づいて求める。
【0064】
このようにして求めたX線源101と検出器103の相対位置と距離Hを、放射線検査装置の分解前に校正ファントムを利用して求めたX線源101と検出器103の相対位置と距離Hを比較して、ずれ量を差分量として算出して放射線検査装置のアライメントの再現精度の程度を認識する。その差分量から修正値を導出して、差分量が許容範囲以下となるように、その修正値を参酌して、位置調整機構105で検出器103の位置を修正する。これにより再構成画像の精度を確保可能となる。
【0065】
放射線検査装置の再構成画像の精度を確保するに当たって位置調整機構105を用いない場合には、既述の差分量から新たにX線源101と検出器103の配置を計算し、この値を画像再構成演算のパラメータとして設定することによっても可能である。
【0066】
このような実施例2によれば、校正ファントムを利用して導出したX線源101と検出器103の相対位置と距離Hを放射線検査装置の分解前のデータとして用いているため、位置精度が向上する。その上、検査現場での校正ファントムの使用は放射線透過像データを取得するための放射線の照射などの作業を伴う等の困難性がつきまとうので、検査現場での計測は距離計測器による距離計測作業でまかなうことが作業の容易化に貢献している。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、各種プラントに敷設された配管などプラント構成物の放射線検査装置に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0068】
101 X線源
102 X線管球
103 検出器
104 支持構造物
105 位置調整機構
106 治具
107,107a,107b,107c,402,402a,402b 距離計測器
108 基準点
201 高圧電源
202 冷却器
203 X線管システム制御部
204 検出器制御部
205 中央制御部
206 モニタ
215 配管
302 X線
304 放射X線
401 計測治具
502,502a,502b,502c,502d 垂直細線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と検出器とが検査対象物を挟んでそれぞれが対向した位置に配置され、放射線源から照射された放射線が検査対象物を透過し、その透過放射線を検出器にて検出する放射線検査装置において、前記放射線検査装置における前記検出器の位置を特定する手段を備えた放射線検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記放射線源と前記検出器との間に配置され、前記検出器の検出面に対して垂直方向に設けられた垂直細線を内部に備えた校正ファントムを有したことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項3】
放射線検査装置を分解して再組立てする際に、前記放射線検査装置の放射線源と検出器との相対位置を、前記分解前の前記相対位置関係を前記再組立時に再現する放射線検査装置のアライメント方法において、前記放射線検査装置の分解前に予め前記放射線源と前記検出器の相対位置を特定しておき、前記放射線検査装置の再組立て時に前記相対位置を再度特定し、前記両特定結果間の差分量を導出して、その差分量に基づいて前記相対位置関係を調整することを特徴とする放射線検査装置のアライメント方法である。
【請求項4】
請求項3において、前記分解の前に、前記放射線源と前記検出器との両者間の距離を三箇所以上で計測し、この計測結果から前記両者間の相対位置を導出して基準とし、前記放射線検査装置の再組立て時に前記距離計測と同じ方法にて前記両者間の距離を再計測し、その再計測に基づいた前記両者間の相対位置と前記基準との差分量を導出することを特徴とする放射線検査装置のアライメント方法。
【請求項5】
請求項4において、前記計測は、前記放射線源と前記検出器の側面との距離を少なくとも90度角度が異なる2方向からの計測を含むことを特徴とする放射線検査装置のアライメント方法。
【請求項6】
放射線検査装置を分解して再組立てする際に、前記放射線検査装置の放射線源と検出器との両者間の相対位置を、前記分解前の前記相対位置関係を前記再組立時に再現する放射線検査装置のアライメント方法において、前記放射線検査装置の分解前に予め前記放射線源と前記検出器の距離を距離計測器で計測すると共に前記放射線検査装置で校正ファントムに放射線を照射して得られた放射線透過画像データに基づく計測で前記両者間の相対位置を特定し、前記距離計測器による計測と前記校正ファントムを用いた計測との前記相対位置の相関を求め、前記放射線検査装置の再組立て時には、前記距離計測を距離計測器を用いて再実施し、前記再実施結果と相関する前記校正ファントムを用いた計測による前記相対位置を求め、この求めた前記両者間の相対位置と前記分解前の前記両者間の相対位置との差分量を導出し、その差分量に基づいて前記再組立て時の前記両者間の相対位置関係を調整することを特徴とする放射線検査装置のアライメント方法。
【請求項7】
請求項6において、前記分解の前と前記再組立て時の前記両者間の距離計測は、同じ方法であって且つ三箇所以上で実施することを特徴とする放射線検査装置のアライメント方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7において、前記両者間の距離の計測は、前記放射線源と前記検出器の側面との距離を少なくとも90度角度が異なる2方向からの計測を含むことを特徴とする放射線検査装置のアライメント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−37345(P2012−37345A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176899(P2010−176899)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】