説明

放射線検査装置

【課題】放射線源とライン型検出器との間に検査対象物等が配置されている状態であっても精度良く校正を行うことが可能な放射線検査装置を提供する。
【解決手段】放射線検査装置としての厚さ検査装置は、検査対象物としてのシートSTの一方側に配置されてシートST上に設定された検査方向(X方向)に延びるライン状の放射線をシートSTに照射する放射線源11と、シートSTの他方側に配置されてシートSTを透過したライン状の放射線を検出するライン型検出器12と、放射線源11とシートSTとの間及びシートSTとライン型検出器12との間の少なくとも一方に配置され、検査方向に沿って移動しつつ放射線源11からの放射線を検出する校正用検出器13,14と、校正用検出器13,14の検出結果を用いてライン型検出器12の検出結果を校正する校正装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を用いて検査対象物を検査する放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検査装置は、放射線(例えば、X線、β線、γ線、紫外線、可視光線、赤外線、電波等の波長10ミクロン以上の電磁波)を検査対象物に照射し、検査対象物を透過した放射線を検出して透過特性を求めることにより、検査対象物の検査を行う装置である。この放射線検査装置は、検査対象物を破壊することなくその特性を検査することが可能であるため、様々な分野で用いられている。例えば、生産分野においては、生産されたシートやフィルム(単層フィルム及び多層フィルム)の厚さや塗工量等をオンラインで検査する厚さ検査装置として用いられることが多い。
【0003】
ここで、上記の厚さ検査装置は、「走査型検査装置」と「全面検査型検査装置」とに大別される。前者の「走査型検査装置」は、例えば放射線を発生する線源ヘッドと電離箱等の検出器ヘッドとを検査対象物を挟むように対向配置し、検査対象物の流れ方向と交差する方向(検査対象物の幅方向)にこれら両ヘッドを一体的に往復運動させることが可能な装置である。これに対し、後者の「全面検査型検査装置」は、例えば検査対象物の幅方向にライン状に延びる放射線を発生する線源ヘッドと検査対象物の幅方向に複数の検出素子が配列されたライン型検出器を備える検出器ヘッドとを検査対象物を挟むように固定配置した装置である。
【0004】
「走査型検査装置」は、線源ヘッドと検出器ヘッドとを一体的に検査対象物の幅方向に往復運動させつつ線源ヘッドから放出される放射線を検出器ヘッドで検出することにより検査対象物の幅方向の厚さの分布を測定している。これに対し、「全面検査型検査装置」は、線源ヘッド及び検出器ヘッドを移動させることなく、線源ヘッドから放出されるライン状の放射線を検出器ヘッドのライン型検出器で検出することにより検査対象物の幅方向の厚さの分布を測定している。尚、以下の特許文献1,2には、上述した「走査型検査装置」及び「全面検査型検査装置」の従来例がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7−52573号公報
【特許文献2】実開昭62−193505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、厚さ検査装置は、経時変化による線源ヘッドの劣化、検出器の感度変化、環境変化(季節又は朝晩等における温度・湿度等の周期的な変化)等が原因で検査精度が悪化する。このため、上述した「走査型検査装置」及び「全面検査型検査装置」の何れの厚さ検査装置であっても、検査対象物を一旦取り除いて線源ヘッドからの放射線が検出器ヘッドに直接照射される状態にして校正を行う必要がある。
【0007】
連続生産を行う生産ラインの全長は数十〜百数十メートル程度と長く、生産中に検査対象物(生産物)を容易に取り除くことはできない。このため、例えば生産する品種の切り替え、或いは、生産休止によって検査対象物が途切れるタイミングが校正を行う最良のタイミングであると考えられる。しかしながら、近年においては、生産効率を高めるために、生産する品種の切り替えを行う場合であっても、ダミーシートを用いて切替前後の品種を繋いで、一時期であっても検査対象物が途切れないようにして生産が行われることが多い。このような生産が行われる状況下においては、線源ヘッドと検出器ヘッドとの間には検査対象物或いはダミーシートが常時存在することになるため、正確な校正を行うことは困難である。
【0008】
ここで、上述した「走査型検査装置」及び「全面検査型検査装置」の何れの厚さ検査装置であっても、検査対象物やダミーシートを介することなく線源ヘッドと検出器ヘッドとを向かい合わせることができる待避位置を設ければ、検査対象物が途切れない状況下においても正確な校正が可能になる。「走査型検査装置」は、線源ヘッド及び検出器ヘッドが小型であり、さほど大きな待避位置が必要にならないため、待避位置を設けて校正を行うのは現実的である。しかしながら、「全面検査型検査装置」は、検査対象物の幅と同程度の長さを有する検出器ヘッドを備えているため、検査対象物の幅と同程度の長さの待避位置が必要になる。実際の生産現場においてはフットプリントを少なくするために極力装置の間隔を詰めて配置されることが多いため、検査対象物の幅と同程度の長さを有する待避位置を確保するのは現実的ではないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、放射線源とライン型検出器との間に検査対象物等が配置されている状態であっても精度良く校正を行うことが可能な放射線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の放射線検査装置は、放射線を用いて検査対象物(ST)を検査する放射線検査装置(1〜3)において、前記検査対象物の一方側に配置されて前記検査対象物上に設定された検査方向(D1、X方向)に延びるライン状の放射線を前記検査対象物に照射する放射線源(11)と、前記検査対象物の他方側に配置されて前記検査対象物を透過したライン状の放射線を検出するライン型検出器(12)と、前記放射線源と前記検査対象物との間及び前記検査対象物と前記ライン型検出器との間の少なくとも一方に配置され、前記検査方向に沿って移動しつつ前記放射線源からの放射線を検出する校正用検出器(13、14)と、前記校正用検出器の検出結果を用いて前記ライン型検出器の検出結果を校正する校正装置(20、30、40)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、放射線源から検査対象物に照射されて検査対象物を透過したライン状の放射線がライン型検出器で検出されるとともに、検査対象物に照射されるライン状の放射線と検査対象物を透過したライン状の放射線との少なくとも一方が検査方向に移動可能な校正用検出器で検出され、ライン型検出器の検出結果が校正用検出器の検出結果を用いて校正される。
また、本発明の放射線検査装置は、前記校正用検出器が、前記放射線源と前記検査対象物との間に配置されており、前記校正装置が、前記検査方向における検査位置毎に、前記ライン型検出器の検出結果を前記校正用検出器の検査結果で除算する除算部(21)を備えることを特徴としている。
或いは、本発明の放射線検査装置は、前記校正用検出器が、前記検査対象物と前記ライン型検出器との間に配置されており、前記校正装置は、前記ライン型検出器の検出結果に基づいて、前記検査方向における検査位置毎に前記検査対象物の厚さを求める第1演算部(31)と、前記校正用検出器の検出結果に基づいて、前記検査方向における検査位置毎に前記検査対象物の厚さを求める第2演算部(32)と、前記検査方向における検査位置毎に、前記第1,第2演算部で求められた前記検査対象物の厚さの差分を示す補正値を求める補正値算出部(33)と、前記検査方向における検査位置毎に、前記第1演算部で求められた前記検査対象物の厚さを前記補正値算出部で求められた補正値で補正する補正部(34)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の放射線検査装置は、前記補正値算出部が、前記第1演算部で求められた前記検査方向の予め定められた原点位置における前記検査対象物の厚さと、前記第2演算部で求められた前記原点位置における前記検査対象物の厚さとの差を用いて、前記第1,第2演算部で求められた前記検査対象物の前記原点位置における厚さを同値化することを特徴としている。
ここで、本発明の放射線検査装置は、前記校正用検出器が、前記検査対象物と前記ライン型検出器との間に加えて、前記放射線源と前記検査対象物との間にも配置されており、前記校正装置が、前記検査方向における検査位置毎に、前記第1演算部で用いられる前記ライン型検出器の検出結果を前記放射線源と前記検査対象物との間に配置された第1校正用検出器の検査結果で除算し、前記第2演算部で用いられる前記検査対象物と前記ライン型検出器との間に配置された第2校正用検出器の検出結果を前記第1校正用検出器の検査結果で除算する除算部(41)を備えることを特徴としている。
また、本発明の放射線検査装置は、前記除算部が、前記検査方向の予め定められた原点位置における前記ライン型検出器及び前記校正用検出器の検出結果との比を用いて、前記ライン型検出器の検出結果を正規化することを特徴としている。
また、本発明の放射線検査装置は、前記検査方向が、前記検査対象物の搬送方向に対して交差する方向に設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射線源から検査対象物に照射されて検査対象物を透過したライン状の放射線をライン型検出器で検出し、検査対象物に照射されるライン状の放射線と検査対象物を透過したライン状の放射線との少なくとも一方を検査方向に移動可能な校正用検出器で検出し、ライン型検出器の検出結果を校正用検出器の検出結果を用いて校正しているため、放射線源とライン型検出器との間に検査対象物等が配置されている状態であっても精度良く校正を行うことが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による放射線検査装置としての厚さ検査装置を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるX方向の検査位置を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態における処理装置の要部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態における動作を示すフローチャートの例である。
【図5】本発明の第2実施形態による放射線検査装置としての厚さ検査装置を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態における信号処理装置の要部構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態における動作を示すフローチャートの例である。
【図8】本発明の第3実施形態による放射線検査装置としての厚さ検査装置を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態における信号処理装置の要部構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による放射線検査装置について詳細に説明する。尚、以下では、放射線(例えば、X線、β線、γ線、紫外線、可視光線、赤外線、電波等の波長10ミクロン以上の電磁波)を用いてシートの厚さをオンラインで検出する厚さ検査装置を例に挙げて説明するが、本発明はシートの厚さを検査する厚さ検査装置以外にもフィルムの厚さや塗工量をオンラインで検査する厚さ検査装置等にも適用可能である。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による放射線検査装置としての厚さ検査装置を示す図であって、(a)は正面透視図であり、(b)は側面透視図である。図1に示す通り、本実施形態の厚さ検査装置1は、筐体10、放射線源11、ライン型検出器12、及び校正用検出器13を備えており、例えばシート生産工場に設置されたシート生産ラインに取り付けられて、シート生産装置で生産されたシートST(検査対象物)の厚さを放射線を用いて検査する。
【0015】
尚、以下の説明においては、図中に設定したXYZ直交座標系を必要に応じて参照しつつ各部材の位置関係について説明する。但し、説明の便宜のため、各図に示すXYZ直交座標系の原点は固定せずに、各図毎にその位置を適宜変更するものとする。図1に示すXYZ直交座標系は、X軸がシートSTの幅方向に沿う方向(検査方向)、Y軸がシートSTの搬送方向に沿う方向、Z軸が鉛直方向に沿う方向にそれぞれ設定されている。
【0016】
筐体10は、外径形状が略直方体形状であって内部が中空とされた部材であり、その内部に放射線源11、ライン型検出器12、及び校正用検出器13を収容する。この筐体10の上端部付近(+Z方向の端部付近)には、−X方向の端部から+X方向の端部付近にまで延びて、シートSTが介挿される切欠部10aが形成されている。筐体10に切欠部10aが形成されていることにより、シート生産ラインからシートSTを取り除くことなく厚さ検査装置1の設置や取り外しを行うことが可能である。
【0017】
放射線源11は、筐体10内部の下端部付近に取り付けられて固定されており、例えばX線、β線、γ線等の放射線をシートSTに向けて放射する。具体的に、放射線源11は、シートSTが筐体10の切欠部10aに介挿されている状態でシートSTの下方(一方側:−Z方向)に配置され、シートSTの幅方向であるX方向に延びるライン状の放射線をシートSTの底面に照射する。
【0018】
ライン型検出器12は、筐体10内部の上端部付近に取り付けられて固定されており、シートSTを透過したライン状の放射線を検出する。具体的に、ライン型検出器12は、X方向に沿って一定間隔で配列された複数の検出素子12a(例えば、シリコン・フォトダイオード等の半導体検出素子)を備えており、筐体10に形成された切欠部10aの上方(他方側:+Z方向)であって、シートSTを透過した放射線が照射される位置に固定配置される。このライン型検出器12は、シートSTを介さずに放射線源11からの放射線を受光することができる位置に、検出素子12aの一部が配置されていることが望ましい。
【0019】
以下では、理解を容易にするために、ライン型検出器12がN個(Nは2以上の整数)の検出素子12aを備えているものとし、図2に示す通り、番号「0」〜「N−1」によって各々の検出素子12aを区別するものとする。図2は、本発明の第1実施形態におけるX方向の検査位置を説明するための図である。ここで、X方向におけるシートSTの厚さは、ライン型検出器12に設けられた検出素子12aの各々の検出結果に基づいて検査される。このため、図2に示す番号「0」〜「N−1」が付された検出素子12aが配置されているX方向における位置X〜XN−1は、X方向における検査位置ということができる。以下では、X方向における検査位置Xを「原点位置」という。尚、検査位置XN−1を「原点位置」にしても良い。
【0020】
校正用検出器13は、シリコン・フォトダイオード等の半導体検出素子を備えており、放射線源11とシートSTとの間に配置されて、図1中に示す移動方向D1(X方向:検査方向)に沿って移動しつつ放射線源11からの放射線を検出する。具体的に、校正用検出器13は、図1に示す通り、筐体10の内部において切欠部10aの下方近傍に配置されて、放射線源11から放射されるライン状の放射線をX方向に横切るように移動経路が設定されている。尚、図1においては図示を省略しているが、筐体10には校正用検出器13をX方向に沿って往復運動させる機構が収容されている。この校正用検出器13の検出結果は、ライン型検出器12の検出結果を校正するために用いられる。
【0021】
ここで、校正用検出器13を移動方向D1に沿って移動させつつ放射線源11からの放射線を検出すれば、放射線のX方向における連続的な分布を検出することが可能である。しかしながら、本実施形態では、説明を簡単にするために、校正用検出器13における検査も、図2に示す検査位置X〜XN−1で行われるものとする。つまり、校正用検出器13を移動方向D1に沿って移動させて放射線を検出したときには、検査位置X〜XN−1における離散的な検出結果が得られるものとする。
【0022】
次に、厚さ検査装置1が備える信号処理装置について説明する。図3は、本発明の第1実施形態における信号処理装置の要部構成を示すブロック図である。図3に示す通り、信号処理装置20(校正装置)は、除算部21及び厚さ演算部22を備えており、ライン型検出器12及び校正用検出器13の検出信号の信号処理を行ってシートSTの厚さを求める。具体的には、校正用検出器13の検出信号の検出結果を用いてライン型検出器12の検出結果を校正し、校正したライン型検出器12の検出結果を用いてシートSTの厚さを求める。
【0023】
除算部21は、校正用検出器13の検出信号の検出結果を用いてライン型検出器12の検出結果を校正する。具体的には、原点位置におけるライン型検出器12の検出結果と校正用検出器13の検出結果との比を求め、検査位置X〜XN−1毎にライン型検出器12の検出結果から校正用検出器13の検出結果を除算した値に上記の比を乗算することによりライン型検出器12の検出結果を校正する。尚、以上の処理によって校正されたライン型検出器12の検出結果は、原点位置における値が「1」になるように正規化されている。
【0024】
ここで、ライン型検出器12の検出結果は、以下の(A)〜(C)に示す要因の影響を受けたものである。
(A)放射線のX方向における強度分布
(B)シートSTのX方向における厚さ分布
(C)検出素子12aの器差
これに対し、校正用検出器13の検出結果は、以下の(A),(D)に示す要因の影響を受けたものである。
(A)放射線のX方向における強度分布
(D)移動方向D1への移動時における位置誤差
【0025】
除算部21は、検査位置毎にライン型検出器12の検出結果から校正用検出器13の検出結果を除算することによって、上記(A)に示す要因による影響を排除する。尚、上記(D)に示す要因による影響は、上記(A)〜(C)に示す要因による影響に比べて小さいため無視するが、必要に応じて補正しても良い。例えば、校正用検出器13の位置誤差を検出するセンサを設け、このセンサの検出結果に基づいて校正用検出器13の検出結果を補正するといった具合である。
【0026】
具体的に、ライン型検出器12の検出結果をA(i)とし、校正用検出器13の検出結果をB(i)とすると、除算部21は、以下の(1)式に示す演算を行うことによって、上記(A)に示す要因による影響を排除している。尚、変数iは0≦i≦Nを満たす整数である。
R・A(i)/B(i) …(1)
但し、上記(1)中の変数Rは、原点位置におけるライン型検出器12の検出結果と、校正用検出器13の検出結果との比(R=A(0)/B(0))である。
【0027】
厚さ演算部22は、除算部21で校正されたライン型検出器12の検出結果に対して厚さ演算を施すことにより、X方向におけるシートSTの厚さ(図2に示す検査位置X〜XN−1の各々におけるシートSTの厚さ)を検出する。ここで、除算部21で校正されたライン型検出器12の検出結果は上記(A)に示す要因による影響が排除されたものであるため、厚さ演算部22で検出されるシートSTの厚さも上記(A)に示す要因による影響が排除されたものになる。
【0028】
次に、上記構成の厚さ検査装置1の動作について説明する。厚さ検査装置1の動作は、大別すると、搬送されるシートSTのX方向の厚さ分布を検出する際の動作と、ライン型検出器12の検出結果を校正する際の動作とに大別されるが、以下では主に後者の動作について説明する。尚、後者の動作は、シートSTの搬送が停止されており、シートST(或いは、シートSTを繋ぐダミーシート)が筐体10の切欠部10aに介挿されている状態で行われる。
【0029】
図4は、本発明の第1実施形態における動作を示すフローチャートの例である。厚さ検査装置1の動作が開始されると、まず放射線源11からシートSTの底面に対してX方向に延びるライン状の放射線が照射され、シートSTを通過したライン状の放射線がライン型検出器12で検出される(ステップS11)。ライン型検出器12による放射線の検出が終了すると、筐体10に収容された不図示の機構によって校正用検出器13の移動方向D1(例えば、+X方向)への移動が開始され、放射線源11から放射されるライン状の放射線が校正用検出器13で検出される(ステップS12)。尚、ライン型検出器12及び校正用検出器13による検出結果は、信号処理装置20に入力される。
【0030】
ライン型検出器12の検出結果及び校正用検出器13の検出結果の双方が信号処理装置20に入力されると、まず除算部21において、原点位置における検出結果の比Rが算出される(ステップS13)。具体的には、原点位置におけるライン型検出器12の検出結果A(0)を、原点位置における校正用検出器13の検出結果B(0)で除算することによって比Rが算出される。
【0031】
次いで、除算部21において、検査位置X〜XN−1毎に、ライン型検出器12の検出結果を、校正検出器13の検出結果で除算する処理が行われる(ステップS14)。具体的には、ライン型検出器12の検出結果A(i)を、校正検出器13の検出結果B(i)で除算する処理が行われる。次に、除算部21において、除算されたライン型検出器12の検出結果を正規化する処理が行われる(ステップS15)。具体的には、上記のステップS13で算出された比Rを、上記のステップS14で除算されたライン型検出器12の検出結果に乗算する処理が行われる。
【0032】
以上の処理によって、ライン型検出器12の検出結果は前述した(A)に示す放射線のX方向における強度分布の要因による影響が排除されたものに校正され、且つ、原点位置における値が「1」になるように正規化される。以上の処理が終了すると、校正されたライン型検出器12の検出結果が厚さ演算部22に出力されて厚さ演算が行われる(ステップS16)。これにより、X方向におけるシートSTの厚さ(図2に示す検査位置X〜XN−1の各々におけるシートSTの厚さ)が検出される。
【0033】
尚、以上の説明では、理解を容易にするために、動作の順をステップS11,S12に分散したが、適宜入れ替えたりまとめたりしても良い。また、除算器21で行われる処理をステップS13〜S15の処理に分解して説明したが、前述した(1)式に示す演算を行うことにより、ステップS14,S15の処理をまとめて行うようにしても良い。このような処理を行うことにより、演算や処理に要する時間を短縮することができる。
【0034】
以上の通り、本実施形態では、移動方向D1に沿って移動可能な校正用検出器13を放射線源11とシートSTとの間に設け、ライン型検出器12の検出結果を校正用検出器13の検出結果で除算して正規化している。このため、放射線源11とライン型検出器12との間にシートSTやダミーシートが配置されている状態であっても、ライン型検出器12の検出結果を、放射線のX方向における強度分布の要因による影響が排除されたものに校正することができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態による放射線検査装置としての厚さ検査装置を示す図であって、(a)は正面透視図であり、(b)は側面透視図である。図2に示す通り、本実施形態の厚さ検査装置2は、図1に示す厚さ検査装置1が備える校正用検出器13に代えて校正用検出器14を設けた構成である。
【0036】
校正用検出器14は、校正用検出器13と同様にシリコン・フォトダイオード等の半導体検出素子を備えるが、校正用検出器13とは異なり、シートSTとライン型センサ12との間に配置されており、図5中に示す移動方向D1(X方向)に沿って移動しつつ放射線源11からの放射線を検出する。具体的に、校正用検出器14は、図5に示す通り、筐体10の内部において切欠部10aとライン型センサ12との間に配置されており、放射線源11から放射されるライン状の放射線をX方向に横切るように移動経路が設定されている。
【0037】
尚、図5においては図示を省略しているが、筐体10には校正用検出器14をX方向に沿って往復運動させる機構が収容されている。また、本実施形態においても、説明を簡単にするために、校正用検出器14を移動方向D1に沿って移動させて放射線を検出したときには、校正用検出器13を移動方向D1に沿って移動させて放射線を検出した場合と同様に、検査位置X〜XN−1における離散的な検出結果が得られるものとする。
【0038】
図6は、本発明の第2実施形態における信号処理装置の要部構成を示すブロック図である。図6に示す通り、信号処理装置30(校正装置)は、厚さ演算部31(第1演算部)、厚さ演算部32(第2演算部)、補正値算出部33、及び補正部34を備えており、ライン型検出器12及び校正用検出器14の検出信号の信号処理を行ってシートSTの厚さを求める。具体的には、ライン型検出器12及び校正用検出器14の検出信号を用いてシートSTの厚さをそれぞれ演算し、得られた厚さの差分を示す補正値を求め、ライン型検出器12の検出信号を用いて得られた厚さを補正値で補正する。
【0039】
厚さ演算部31は、ライン型検出器12の検出結果に対して厚さ演算を施すことにより、X方向におけるシートSTの厚さ(図2に示す検査位置X〜XN−1の各々におけるシートSTの厚さ)を求める。厚さ演算部32は、校正用検出器14の検出結果に対して厚さ演算を施すことにより、X方向におけるシートSTの厚さ(図2に示す検査位置X〜XN−1の各々におけるシートSTの厚さ)を求める。
【0040】
補正値算出部33は、検査位置X〜XN−1毎に、厚さ演算部31で求められた厚さと厚さ演算部32で求められた厚さとの差分を示す補正値を求める。具合的には、まず厚さ演算部31で求められた原点位置における厚さと、厚さ演算部32で求められた原点位置における厚さとの比を求める。そして、検査位置X〜XN−1毎に、厚さ演算部31で求められた厚さに上記の比を乗算して得られる値から、厚さ演算部32で求められる厚さを減算することにより補正値を算出する。
【0041】
補正部34は、検査位置X〜XN−1毎に、厚さ演算部31で求められた厚さを、補正値算出部33で求められた補正値で補正する。具体的には、厚さ演算部31で求められた検査位置X〜XN−1毎の厚さから、補正値算出部33で算出された検査位置X〜XN−1毎の補正値を減ずることにより、厚さ演算部31で求められた厚さを補正する。
【0042】
ここで、ライン型検出器12の検出結果は、前述した通り、以下の(A)〜(C)に示す要因の影響を受けたものである。
(A)放射線のX方向における強度分布
(B)シートSTのX方向における厚さ分布
(C)検出素子12aの器差
これに対し、校正用検出器14の検出結果は、以下の(A),(B),(D)に示す要因の影響を受けたものである。
(A)放射線のX方向における強度分布
(B)シートSTのX方向における厚さ分布
(D)移動方向D1への移動時における位置誤差
【0043】
信号処理装置30は、まずライン型検出器12及び校正用検出器14の検出結果を用いてシートSTの厚さを求め、次にそれら厚さの差分を示す補正値を求め、ライン型検出器12の検出結果を用いて求められたシートSTの厚さを補正値で補正することによって、上記(A),(B)に示す要因による影響を排除する。尚、上記(D)に示す要因による影響は、第1実施形態と同様に無視できる程度に小さい。
【0044】
具体的に、ライン型検出器12の検出結果から得られた厚さをT1(i)とし、校正用検出器14の検出結果から得られた厚さをT2(i)とすると、補正値算出部33は、以下の(2)式に示す演算を行うことによって補正値Δ(i)を算出する。
Δ(i)=Q・T1(i)−T2(i) …(2)
但し、上記(2)中の変数Qは、原点位置におけるライン型検出器12の検出結果から得られた厚さと、校正用検出器14の検出結果から得られた厚さとの比(Q=T1(0)/T2(0))である。
【0045】
補正部34は、以下の(3)式に示す演算を行うことにより、ライン型検出器12の検出結果から得られた厚さT1(i)を補正する。
T1(i)−Δ(i) …(3)
上記の(3)に示す演算によって得られた厚さは、上記(A),(B)に示す要因による影響が排除されたものになる。
【0046】
次に、上記構成の厚さ検査装置2の動作について説明する。尚、本実施形態においても、シートSTの搬送が停止されており、シートST(或いは、シートSTを繋ぐダミーシート)が筐体10の切欠部10aに介挿されている状態で行われるライン型検出器12の検出結果を校正する際の動作について主に説明する。
【0047】
図7は、本発明の第2実施形態における動作を示すフローチャートの例である。厚さ検査装置1の動作が開始されると、まず放射線源11からシートSTの底面に対してX方向に延びるライン状の放射線が照射され、シートSTを通過したライン状の放射線がライン型検出器12で検出される(ステップS21)。ライン型検出器12による放射線の検出が終了すると、筐体10に収容された不図示の機構によって校正用検出器14の移動方向D1(例えば、+X方向)への移動が開始され、放射線源11から放射されるライン状の放射線が校正用検出器14で検出される(ステップS22)。尚、ライン型検出器12及び校正用検出器14による検出結果は、信号処理装置30に入力される。
【0048】
ライン型検出器12の検出結果が信号処理装置30に入力されると、厚さ演算部31において厚さ演算が行われてシートSTの厚さが検査位置X〜XN−1毎に求められる(ステップS23)。同様に、校正用検出器14の検出結果が信号処理装置30に入力されると、厚さ演算部32において厚さ演算が行われてシートSTの厚さが検査位置X〜XN−1毎に求められる(ステップS24)。
【0049】
厚さ演算部31の演算結果は補正値算出部33と補正部34とに出力される一方で、厚さ演算部32の演算結果は補正値算出部33のみに出力される。厚さ演算部31,32の演算結果が入力されると、補正値算出部33において、原点位置における厚さの比Qが算出される(ステップS25)。具体的には、厚さ演算部31で求められた原点位置における厚さT1(0)を、厚さ演算部32で求められた原点位置における厚さT2(0)で除算することによって比Qが算出される。
【0050】
次いで、補正値算出部33において、厚さ演算部31で求められた厚さT1(i)を正規化する処理が行われる(ステップS26)。具体的には、上記のステップS25で算出された比Qを、厚さ演算部31で求められた厚さT1(i)に乗算する処理が行われる。そして、補正値算出部33において、検査位置X〜XN−1毎の補正値Δ(i)を算出する処理が行われる(ステップS27)。具体的には、ステップS26で正規化された厚さT1(i)から、厚さ演算部32で求められた厚さT2(i)を減ずる処理が行われる。
【0051】
補正値算出部23で算出された補正値Δ(i)は補正部34に出力され、補正部34において、厚さ演算部31で求められた厚さT1(i)を補正値Δ(i)で補正する処理が行われる(ステップS28)。具体的には、前述した(3)式に示す演算が行われる。以上の処理によって得られるシートSTの厚さは、前述した(A)に示す放射線のX方向における強度分布の要因による影響と、前述した(B)に示すシートSTのX方向における厚さ分布の要因による影響とが排除されたものである。
【0052】
尚、以上の説明では、理解を容易にするために、補正値算出部33で行われる処理をステップS25〜S27の処理に分解して説明したが、前述した(2)式に示す演算を行うことにより、ステップS26,S27の処理をまとめて行うようにしても良い。このような処理を行うことにより、演算や処理に要する時間を短縮することができる。また、ステップS21,S22及びステップS23,S24の順番を適宜入れ替えたりまとめたりしても良い。
【0053】
以上の通り、本実施形態では、移動方向D1に沿って移動可能な校正用検出器14をシートSTとライン型検出器12との間に設け、ライン型検出器12の検出結果から得られるシートの厚さを、校正用検出器14の検出結果から得られるシートの厚さを用いて校正している。このため、放射線源11とライン型検出器12との間にシートSTやダミーシートが配置されている状態であっても、放射線のX方向における強度分布の要因による影響とシートSTのX方向における厚さ分布の要因による影響とが排除されたシートSTの厚さを得ることができる。
【0054】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態による放射線検査装置としての厚さ検査装置を示す図であって、(a)は正面透視図であり、(b)は側面透視図である。図8に示す通り、本実施形態の厚さ検査装置3は、図1に示す厚さ検査装置1が備える校正用検出器13と図5に示す厚さ検査装置2が備える校正用検出器14との双方を備える構成である。
【0055】
図9は、本発明の第3実施形態における信号処理装置の要部構成を示すブロック図である。図9に示す通り、信号処理装置40(校正装置)は、図6に示す信号処理装置30が備える厚さ演算部31〜補正部34に除算部41を追加した構成である。除算部41は、校正用検出器13の検出信号の検出結果を用いてライン型検出器12及び校正用検出器14の検出結果を校正する。
【0056】
具体的には、原点位置におけるライン型検出器12の検出結果と校正用検出器13の検出結果との比を求め、検査位置X〜XN−1毎にライン型検出器12の検出結果から校正用検出器13の検出結果を除算した値に上記の比を乗算することによりライン型検出器12の検出結果を校正する。同様に、原点位置における校正用検出器14の検出結果と校正用検出器13の検出結果との比を求め、検査位置X〜XN−1毎に校正用検出器14の検出結果から校正用検出器13の検出結果を除算した値に上記の比を乗算することにより校正用検出器14の検出結果を校正する。尚、以上の処理によって校正されたライン型検出器12及び校正用検出器14の検出結果は、原点位置における値が「1」になるように正規化されている。
【0057】
除算部41は、検査位置毎にライン型検出器12の検出結果から校正用検出器13の検出結果を除算することによって、ライン型検出器12の検出結果から上記(A)に示す要因による影響を排除する。同様に検査位置毎に校正用検出器14の検出結果から校正用検出器13の検出結果を除算することによって、校正用検出器14の検出結果から上記(A)に示す要因による影響を排除する。
【0058】
具体的に、ライン型検出器12の検出結果をA(i)とし、校正用検出器13の検出結果をB(i)とし、校正用検出器14の検出結果をC(i)とすると、除算部41は、以下の(4)式に示す演算を行うことによってライン型検出器12の検出結果から上記(A)に示す要因による影響を排除し、以下の(5)式に示す演算を行うことによって校正用検出器14の検出結果から上記(A)に示す要因による影響を排除している。
R1・A(i)/B(i) …(4)
R2・C(i)/B(i) …(5)
【0059】
但し、上記(4)中の変数R1は、原点位置におけるライン型検出器12の検出結果と、校正用検出器13の検出結果との比(R1=A(0)/B(0))である。また、上記(5)中の変数R2は、原点位置における校正用検出器13の検出結果と、校正用検出器14の検出結果との比(R2=C(0)/B(0))である。
【0060】
次に、上記構成の厚さ検査装置3の動作について説明する。尚、本実施形態においても、シートSTの搬送が停止されており、シートST(或いは、シートSTを繋ぐダミーシート)が筐体10の切欠部10aに介挿されている状態で行われるライン型検出器12の検出結果を校正する際の動作について主に説明する。
【0061】
図10は、本発明の第3実施形態における動作を示すフローチャートである。厚さ検査装置1の動作が開始されると、まず放射線源11からシートSTの底面に対してX方向に延びるライン状の放射線が照射され、シートSTを通過したライン状の放射線がライン型検出器12で検出される(ステップS31)。ライン型検出器12による放射線の検出が終了すると、校正用検出器13,14の移動方向D1(例えば、+X方向)への移動が順次開始され、放射線源11から放射されるライン状の放射線が校正用検出器13,14で順次検出される(ステップS32)。尚、ライン型検出器12及び校正用検出器13,14による検出結果は、信号処理装置40に入力される。
【0062】
ライン型検出器12及び校正用検出器13,14の検出結果が信号処理装置40に入力されると、除算部41において、原点位置におけるライン型検出器12と校正用検出器13との検出結果の比R1が算出される(ステップS33)。具体的には、原点位置におけるライン型検出器12の検出結果A(0)を、原点位置における校正用検出器13の検出結果B(0)で除算することによって比R1が算出される。次いで、除算部41において、原点位置における校正用検出器13,14の検出結果の比R2が算出される(ステップS34)。具体的には、原点位置における校正用検出器14の検出結果C(0)を、原点位置における校正用検出器13の検出結果B(0)で除算することによって比R2が算出される。
【0063】
次いで、除算部41において、検査位置X〜XN−1毎に、ライン型検出器12の検出結果を、校正検出器13の検出結果で除算する処理が行われる(ステップS35)。具体的には、ライン型検出器12の検出結果A(i)を、校正検出器13の検出結果B(i)で除算する処理が行われる。そして、除算部41において、除算されたライン型検出器12の検出結果を正規化する処理が行われる(ステップS36)。具体的には、上記のステップS33で算出された比R1を、上記のステップS35で除算されたライン型検出器12の検出結果に乗算する処理が行われる。
【0064】
また、除算部41において、検査位置X〜XN−1毎に、校正用検出器14の検出結果を、校正検出器13の検出結果で除算する処理が行われる(ステップS37)。具体的には、校正用検出器14の検出結果C(i)を、校正検出器13の検出結果B(i)で除算する処理が行われる。そして、除算部41において、除算された校正用検出器14の検出結果を正規化する処理が行われる(ステップS38)。具体的には、上記のステップS34で算出された比R2を、上記のステップS37で除算された校正用検出器14の検出結果に乗算する処理が行われる。
【0065】
以上の処理が終了すると、ステップS36で正規化されたライン型検出器12の検出結果が厚さ演算部31に出力されるとともに、ステップS38で正規化された校正用検出器14の検出結果が厚さ演算部32に出力される。そして、図7に示すステップS23〜S28の処理が順次行われる。
【0066】
尚、以上の説明では、理解を容易にするために、除算部41で行われる処理をステップS33〜S38の処理に分解して説明したが、前述した(4)式に示す演算を行うことによりステップS35,S36の処理をまとめて行うとともに、前述した(5)式に示す演算を行うことによりステップS37,S38の処理をまとめて行うようにしても良い。このような処理を行うことにより、演算に要する時間を短縮することができる。
【0067】
以上の通り、本実施形態では、移動方向D1に沿って移動可能な校正用検出器13を放射線源11とシートSTとの間に設けるとともに、移動方向D1に沿って移動可能な校正用検出器14をシートSTとライン型検出器12との間に設け、ライン型検出器12及び校正用検出器14の検出結果を、校正用検出器14の検出結果を用いて校正してから、第2実施形態のステップS23〜S28の処理を行っている。このため、放射線源11とライン型検出器12との間に、大きな厚さを有するシートSTやダミーシートが配置されている状態であっても、放射線のX方向における強度分布の要因による影響とシートSTのX方向における厚さ分布の要因による影響とが排除されたシートSTの厚さを精度良く得ることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態による放射線検査装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、校正用検出器13,14をX方向に複数回に亘って往復運動させつつ放射線を検出し、各々の検出結果を平均化することで精度向上を図ることができる。また、以上の説明では、原点位置における値が「1」になるように正規化を行う例について説明したが、ライン型検出器12の検出結果の取り扱いを容易にするために、正規化した後で適当な定数を乗算しても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、校正用検出器13,14が、シリコン・フォトダイオード等の半導体検出素子を備える例について説明したが、校正用検出器13,14にはシンチレーション検出器、計数管、或いは電離箱等が設けられていても良い。つまり、放射線源11から放射される放射線の波長域や性質に応じて校正用検出器13,14に設ける検出器を適宜選択すればよい。
【0070】
また、ライン型検出器12と校正用検出器13,14との距離に応じて検出結果を補正する処理を追加しても良い。更には、ライン型検出器12が備える検出素子12aが配置されているX方向の位置や校正用検出器13,14のX方向の位置に応じて変化する放射線源11とのなす角に応じて検出結果を補正する処理を追加しても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、理解を容易にするために、校正用検出器13のみを備える形態(第1実施形態)、校正用検出器14のみを備える形態(第2実施形態)、及び校正用検出器13,14の双方を備える形態(第3実施形態)について説明した。しかしながら、校正用検出器13,14の双方を備える構成にして、ユーザの指示に応じて図4,図7,図10に示す処理を切り替え可能にすることが望ましい。
【符号の説明】
【0072】
1〜3 放射線検査装置
11 放射線源
12 ライン型検出器
13,14 校正用検出器
20,30,40 信号処理装置
21 除算部
31,32 厚さ演算部
33 補正値算出部
34 補正部
41 除算部
D1 移動方向
ST シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を用いて検査対象物を検査する放射線検査装置において、
前記検査対象物の一方側に配置されて前記検査対象物上に設定された検査方向に延びるライン状の放射線を前記検査対象物に照射する放射線源と、
前記検査対象物の他方側に配置されて前記検査対象物を透過したライン状の放射線を検出するライン型検出器と、
前記放射線源と前記検査対象物との間及び前記検査対象物と前記ライン型検出器との間の少なくとも一方に配置され、前記検査方向に沿って移動しつつ前記放射線源からの放射線を検出する校正用検出器と、
前記校正用検出器の検出結果を用いて前記ライン型検出器の検出結果を校正する校正装置と
を備えることを特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
前記校正用検出器は、前記放射線源と前記検査対象物との間に配置されており、
前記校正装置は、前記検査方向における検査位置毎に、前記ライン型検出器の検出結果を前記校正用検出器の検査結果で除算する除算部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記校正用検出器は、前記検査対象物と前記ライン型検出器との間に配置されており、
前記校正装置は、前記ライン型検出器の検出結果に基づいて、前記検査方向における検査位置毎に前記検査対象物の厚さを求める第1演算部と、
前記校正用検出器の検出結果に基づいて、前記検査方向における検査位置毎に前記検査対象物の厚さを求める第2演算部と、
前記検査方向における検査位置毎に、前記第1,第2演算部で求められた前記検査対象物の厚さの差分を示す補正値を求める補正値算出部と、
前記検査方向における検査位置毎に、前記第1演算部で求められた前記検査対象物の厚さを前記補正値算出部で求められた補正値で補正する補正部とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記補正値算出部は、前記第1演算部で求められた前記検査方向の予め定められた原点位置における前記検査対象物の厚さと、前記第2演算部で求められた前記原点位置における前記検査対象物の厚さとの差を用いて、前記第1,第2演算部で求められた前記検査対象物の前記原点位置における厚さを同値化することを特徴とする請求項3記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記校正用検出器は、前記検査対象物と前記ライン型検出器との間に加えて、前記放射線源と前記検査対象物との間にも配置されており、
前記校正装置は、前記検査方向における検査位置毎に、前記第1演算部で用いられる前記ライン型検出器の検出結果を前記放射線源と前記検査対象物との間に配置された第1校正用検出器の検査結果で除算し、前記第2演算部で用いられる前記検査対象物と前記ライン型検出器との間に配置された第2校正用検出器の検出結果を前記第1校正用検出器の検査結果で除算する除算部を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の放射線検査装置。
【請求項6】
前記除算部は、前記検査方向の予め定められた原点位置における前記ライン型検出器及び前記校正用検出器の検出結果との比を用いて、前記ライン型検出器の検出結果を正規化することを特徴とする請求項2又は請求項5記載の放射線検査装置。
【請求項7】
前記検査方向は、前記検査対象物の搬送方向に対して交差する方向に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の放射線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−181028(P2012−181028A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42240(P2011−42240)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】