説明

放射線検査装置

【課題】検査すべき物品から試料を採取することなく物品から放出される放射線量を測定し、物品中の放射能濃度が所定の基準値内であるか否かを判定する。
【解決手段】放射線検査装置は、搬送路上を搬送される物品の荷重に応じて秤量信号を出力する秤量手段の秤量信号に基づいて算出する質量と、搬送路上の物品から放出される放射線の強度を検出する放射線検出部の放射線の強度とに基づいて算出する放射能レベルとにより物品から放出される放射能濃度(単位質量あたりの放射能レベル)を算出し、放射能濃度が所定の基準値以下であるか否かを判定する判定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば野菜、果物、穀物等の物品などの放射線量を検査する放射線検査装置に係り、特に搬送される物品に対し物品中の放射能濃度を検査する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜、果物、穀物等の食品などの放射線量を測定する装置として、試験管ガイド台によって保持された試験管の内部の試料からの放射線を検出し、この検出出力に基づき試料の放射線量を求める放射線測定装置がある。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
この放射線測定装置は、鉛直方向にスルーホールが形成されたシンチレータからなる放射線検出器を有し、放射線検出系の下方には、試料の質量を測定するための質量測定器(例えば、電子天びん)が配設されている。質量測定器の測定皿上には、試験管をガイドするガイド筒部と質量測定器上に載置される基台部からなる試験管ガイド台が載置されている。この試験管ガイド台は、試料がスルーホール型シンチレータのスルーホール内部に収まるような高さにて試験管を保持するためのガイド部材であり、試験管ガイド台は、スルーホール型シンチレータのスルーホールに緩く挿通された状態となっており、測定時に試験管を試験管ガイド台に立てかけると、質量測定器にて試験管の質量を測定することができるようになっている。
【0004】
測定される試験管は、試料自動交換機構のマニピュレータによって把持されてラックから引き抜かれて放射線量検出器の上方まで搬送され、マニピュレータで把持された状態で下方に移送される。そして、試験管の底部が試験管ガイド台のガイド筒部の底面に接触すると、試験管は、マニピュレータから解放され、試験管ガイド台のみによって支持された状態となる。この状態で、放射線測定が行われると共に、質量測定器によって、試料を含んだ試験管の質量の測定が行われる。
【0005】
そして、放射線測定で求められた試料の放射線量と質量測定器で測定された試料の質量とに基づき、試料の単位質量当たりの放射線量を求めている。なお、質量測定器で求められるのは試料含んだ試験管全体の質量であるため。予め空の試験管の質量を測定しておき、空の試験管の質量を差し引いて試料の質量を求め、この質量で試料の放射線量を割ることにより、単位質量当たりの放射線量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-285945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の放射線測定装置は、食品から試験用の試料を採取して試験管に保存し、その試験管内の試料について測定を行うため、被検査物の食品について全数検査を行うには多大な労力と時間がかかってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、検査すべき物品(例えば食品)から試料を採取することなく物品から放出される放射線量を測定して放射能レベルに換算し、物品中の放射能濃度(単位質量あたりの放射線レベル)が所定の基準値内であるか否かを判定する放射線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された放射線検査装置1は、物品Wを所定方向に搬送する搬送手段2,3,4と、前記搬送手段により搬送路上を搬送される前記物品の荷重に応じて秤量信号を出力する秤量手段5と、前記秤量手段から出力される秤量信号に基づいて前記物品の質量を算出する質量算出手段23と、前記搬送路上の前記物品から放出される放射線の強度を検出する放射線検出部6と、前記質量算出手段により算出した質量と前記放射線検出部により検出した放射線の強度とに基づいて前記物品から放出される単位質量あたりの放射能レベルを算出する放射能レベル算出手段25と、前記放射能レベル算出手段により算出した単位質量あたりの放射能レベルが所定の基準値以下であるか否かを判定する判定手段26とを備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載された放射線検査装置1は、請求項1に記載の放射線検査装置において、前記搬送手段は、前記秤量手段の荷重変化を検知する秤量台となる秤量コンベア3と該秤量コンベアの次段に配設された間欠搬送する間欠コンベア4とを含み、前記間欠コンベアの搬送路上の検査空間内で前記物品から放出される放射線の強度を検出するように前記放射線検出部が配設され、前記検査空間を覆う前記物品が搬入される搬入口10aと該物品が搬出される搬出口10bとを有する遮蔽カバー8を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載された放射線検査装置1、は請求項2に記載の放射線検査装置において、前記遮蔽カバーは、前記間欠コンベアが停止しているときに、前記搬入口および搬出口を遮蔽する遮蔽部材9を有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載された放射線検査装置1は、請求項2または請求項3に記載の放射線検査装置において、前記放射線検出部が、間欠コンベアの搬送面より下方側に配設されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載された放射線検査装置1は、請求項2または請求項3に記載の放射線検査装置において、前記放射線検出部が、間欠コンベアの搬送面より上方側に配設され、前記秤量コンベアの上流側に配設され前記物品の形状を測定する形状測定手段18と、前記形状測定手段により測定した形状に応じて前記放射線検出部と前記物品との距離が所定の値となるように前記放射線検出部を移動させる検出部移動手段12とを備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載された放射線検査装置1は、請求項2から5に記載の放射線検査装置において、前記放射能レベル算出手段は、前記物品から放出される放射線の強度から、前記間欠コンベア上に物品がないときの前記放射線検出部が検出した放射線の強度を差し引いて放射能レベルを算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された放射線検査装置によれば、検査すべき物品から試料を採取することなく物品から放出される放射線量を測定して放射能レベルに換算し、物品中の放射能濃度(単位質量あたりの放射線レベル)が所定の基準値内であるか否かを判定することができる。
【0016】
請求項2に記載された放射線検査装置によれば、請求項1記載の放射線検査装置による効果に加え、放射線検出部により放射線を検出する検査空間が遮蔽カバーに覆われているので、外部からの放射能を受けにくくなり物品から放出される放射線を精度よく検出することができる。
【0017】
請求項3に記載された放射線検査装置によれば、請求項2記載の放射線検査装置による効果において、停止時に搬送入出口を放射線部材で遮蔽するので、物品から放出される放射線をより精度よく検出することができる。
【0018】
請求項4に記載された放射線検査装置によれば、請求項1記載の放射線検査装置による効果に加え、放射線検出部が搬送手段の搬送面の下方側に搬送面に近接して配設されているため、物品と放射線検出部との距離が常に一定とすることができ、安定して物品から放出される放射線を検出することができる。
【0019】
請求項5に記載された放射線検査装置によれば、請求項1記載の放射線検査装置による効果に加え、物品の形状に合わせて放射線検出部を移動させることができるので、物品と放射線検出部との距離が常に一定とすることができ、安定して物品から放出される放射線を検出することができる。
【0020】
請求項6に記載された放射線検査装置によれば、請求項1記載の放射線検査装置による効果に加え、物品から放出される放射線の強度から物品がないときに、放射線検出部が検出した放射線の強度を差し引いて放射能レベルを算出するため、より精度の高い放射線レベルを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る放射線検査装置の第1実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明に係る放射線検査装置の第1実施形態の搬送手段と放射線検出部の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る放射線検査装置の第1実施形態における重量測定および間欠動作のタイミングを説明するための説明図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明に係る放射線検査装置の第1実施形態における放射能検出の動作を説明するための説明図である。
【図5】本発明に係る放射線検査装置の第2実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
【図6】本発明に係る放射線検査装置の第2実施形態の検出部移動手段の構成を示す平面図である。
【図7】本発明に係る放射線検査装置の第2実施形態における放射線検出部の移動動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
1.第1実施形態(図1)
図1は、本発明の第1実施形態を示す図である。まず、その構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、放射線検査装置1は、搬送手段としての助走コンベア2、秤量コンベア3、間欠コンベア4と、秤量手段5と、放射線検出部6と、遮蔽カバー8と、表示操作部20と、制御部21とを備えて構成されている。また、放射線検査装置1の後段には選別部40が接続されている。
【0025】
この放射線検査装置1は、例えば野菜、果物、穀物等、魚、等の検査対象物となる物品Wが搬送される図示しない検査ラインに組み込まれ、物品W中の放射能レベルが規定値以内であるか否かを検査するものである。
【0026】
搬送手段2,3,4は、検査対象物となる例えば食品の中から予め表示操作部20で設定される品種の物品Wを順次搬送するもので、上流側から、助走コンベア2、秤量コンベア3、間欠コンベア4が、例えば装置本体に対して水平に配設されたベルトコンベアにより構成される、各コンベアは、2つのローラとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとにより構成され、図示しない駆動モータにより駆動され、予め設定された所定の搬送速度で、搬入された物品Wを図1の矢印方向に搬送するようになっている。
【0027】
助走コンベア2は、図示しない前段のコンベア等から搬入された物品Wを受け入れ前段のコンベアの搬送速度に対し加速または減速することにより、物品間隔を安定させて秤量コンベア3に受け渡すベルトコンベアである。秤量コンベア3は、秤量手段5に取り付けられており、助走コンベア2から受け入れた物品Wを搬送しながら、秤量手段5によって重量を計量するためのベルトコンベアである。
【0028】
間欠コンベア4は、秤量コンベア3から物品Wが搬入されると、放射線検出部6により放射線の強度を検出する間、所定の位置で停止しているようになっている。そして、放射線の強度の検出が終了すると搬送を再開して物品Wがさらに後段の選別部40の選別コンベア41に搬送され、振り分けられるようになっている。
【0029】
秤量手段5は、秤量コンベア3を秤量台として支持し、秤量台上の物品Wの荷重に応じた秤量信号を出力する荷重センサである。秤量手段5は物品Wが秤量コンベア3で搬送されている間に秤量手段5に加わる荷重を測定するダイナミック秤であり、電磁平衡式秤(フォースバランス)、電気抵抗線式秤(ロードセル)、または差動トランス式秤などで構成されている。
【0030】
ここで、秤量手段5が電磁平衡式秤として構成されている場合、秤量手段5は、秤量コンベア3に載った物品Wの重量による負荷と、磁石と電磁コイルに流す電流で発生する力とを平衡させ、この時に電磁コイルに流れる電流値を物品Wの重量として計量できるようになっている。
【0031】
また、秤量手段5電気抵抗線式秤として構成されている場合、秤量手段5は、秤量コンベア3に載った物品Wの重量による負荷で発生するロードセルの歪みを、ロードセルに張り付けた電気抵抗線の抵抗値の変化としてとらえることにより、物品Wの重量を計量できるようになっている。
【0032】
また、秤量手段5が差動トランス式秤として構成されている場合、秤量手段5は、秤量コンベア3に載った物品Wの重量による負荷で発生する変位を作動トランスで電気信号に変換することで、物品Wの重量を計量できるようになっている。
【0033】
放射線検出部6は、間欠コンベア4の搬送面下方に設けられ、間欠コンベア4上の搬送路に載置された物品Wから放出される放射線を検出する検出器であり、例えばシンチレーションサーベィメータを用いて構成されている。
【0034】
シンチレーションサーベィメータは、間欠コンベア4上の物品Wからの放射線によりシンチレータ内で発生したシンチレーション光を例えば光電子増倍管で検出し、光電子増倍管の検出信号を放射線の強度として出力するようになっている。ここでは、シンチレータとして、NaI(TI)結晶体を用いたNaI(TI)シンチレータを使用している。
【0035】
遮蔽カバー8は放射線防護材料から構成されている。遮蔽カバー8は、図2に示すように間欠コンベア4の搬送面上の検査空間11を覆うように設けられ、遮蔽カバー8の両側面には、遮蔽カバー8内に物品Wを搬入するための搬入口10aと、遮蔽部6内から搬出するための搬出口10bが設けられている。また、遮蔽カバー8の両側面には、外部からの放射線の影響を小さくするため、これらの開口(搬入口10a及び搬出口10b)を遮る遮蔽部材9として短冊状の遮蔽カーテンが遮蔽カバー内部に吊り下げられている。
【0036】
なお、遮蔽部材9は、物品Wが遮蔽カバー8内に搬入されて間欠コンベアが停止したときに搬入口10a及び搬出口10bを遮蔽するものであればよく、搬入時に搬入口を開口させ、搬出時に排出口を開口させるようなシャッター機構の遮蔽部材でもよい。
【0037】
選別部40は、放射線検査装置1の後段に接続されており、選別コンベア41および選別機構部42により構成されている。選別コンベア41は、搬送手段の各コンベアと同様に2つのローラとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとにより構成され、予め設定された所定の搬送速度で駆動モータ(不図示)により駆動される。選別機構部42は、例えば、フリッパ方式の選別機構により構成されている。選別機構部は、良品と不良品とを選別できるものであればよく、押し出し型の選別機構、ドロップアウト機構、エアジェット機構などの選別機構で構成してもよい。選別機構部42は、上流のコンベアから搬送される物品Wが選別コンベア41で搬送されている間に、不良品と判定された物品Wに対して搬送方向と異なる方向(例えば搬送方向に対し垂直な方向)へのゲート操作やジェットエアの吹き付けを行うようになっており、不良の物品Wを選別コンベア41上から排出し、良品の物品Wと区別することにより選別を行っている。
【0038】
表示操作部20は、設定や指示のために操作する複数のキーやスイッチ等を有しており、搬送手段によって搬送させる物品Wの品種の設定操作や、物品Wに対する放射能レベルの規定値等に関する各種設定操作や指示操作を行うようになっている。
【0039】
また、表示操作部20は、例えば液晶表示器等を有しており、物品Wの品種の設定操作が行われるときの設定値、指示操作が行われるときの指示値、各種判定結果等、種々の表示を行うようになっている。
【0040】
制御部21は、秤量手段5からの秤量信号および放射線検出部6からの放射線の強度(検出信号)に基づいて各種検査処理を含む信号処理及び制御を行っている。制御部21は、例えばCPUやRAM/ROM等のマイクロコンピュータで構成され、図1に示すように、記憶手段22、質量算出手段23、搬送制御手段24、放射能レベル算出手段25、判定手段26を備えている。
【0041】
記憶手段22は、記憶媒体などから構成されており、搬送手段の各コンベアによる物品Wの所定の搬送条件、質量算出手段23および放射能レベル算出手段25における所定の信号処理条件を含む条件パラメータ等を物品Wの品種に対応させて記憶するようになっている。
【0042】
記憶手段22には、物品Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF(Low Pass Filter)特性が記憶されている。搬送速度は、物品Wを搬送する搬送手段の速度であり、LPF特性は、秤量信号から低周波成分のみを通過させるLPFがどのような特性のローパスフィルタであるかを示す。また、記憶手段22には、物品Wに対する放射能レベルの規定値、バックグランド値等が記憶されている。バックグランド値とは、物品Wがない状態で放射線検出部6が検出する放射線の強度を示すものである。
【0043】
これらの記憶情報は、表示操作部20からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。
【0044】
質量算出手段23は、秤量手段5から秤量信号に基づいて物品Wの質量を算出している。具体的には、秤量手段5からの秤量信号を増幅してデジタル変換された信号を記憶手段22に記憶しているLPF特性でフィルタ処理を行って図3に示すような秤量応答波形を生成している。
【0045】
そして、この秤量応答波形に対し、搬入センサ7aによって物品Wが秤量コンベア3に搬入したことを検知してから所定の基準時間Tk(物品Wが秤量コンベア3に完全に載り移り秤量信号が安定するまでに必要な時間)が経過した後の所定期間Twの秤量値を平均化して重量を算出し、さらに質量に換算して物品Wの質量を算出している。
【0046】
なお、搬入センサ7aは、例えば一対の投光部および受光部からなる透過形光電センサで構成されており、助走コンベア2と秤量コンベア3との間に配置されている。
【0047】
搬送制御手段24は、間欠コンベア4の搬送を制御している。具体的には、図3に示すように、搬入センサ7bによって物品Wが間欠コンベア4に搬入したことを検知したら所定位置で停止するように間欠コンベア4の駆動モータを制御する。その後、放射線検出部6で物品Wから放出される放射線の強度を検出する所定の検出時間Tcだけ停止してから物品Wを後段の選別部へ搬出すように間欠コンベア4の駆動モータを作動させる。
【0048】
また、搬送制御手段24は、物品Wが間欠コンベア4に搬入されてから停止するまでの時間Tiと放射線の強度を検出するために間欠コンベア4が停止している時間Tcと間欠コンベアが再始動して物品Wが間欠コンベアから搬出される時間Toの合計時間から物品Wが間欠コンベア4上に存在する時間Ttを算出し、間欠コンベア4が停止している時間Tcと間欠コンベア4上に存在する時間Ttを放射能レベル算出手段25に出力している。
【0049】
なお、搬入センサ7bは、例えば一対の投光部および受光部からなる透過形光電センサで構成されており、秤量コンベア3と間欠コンベア4との間に配置されるようにしたが、搬入センサを用いず、物品Wが間欠コンベア4に載り移り秤量コンベアから完全に離れた時点を秤量応答波形から判別し、そこを起点として間欠コンベア4の搬送を制御するとともに物品Wが間欠コンベア4上に存在する時間Ttを算出するようにしてもよい。
【0050】
放射能レベル算出手段25は、放射線検出手段6からの検出信号に基づいて物品Wが放出する放射能レベルを算出している。具体的には、搬送制御手段から得られる間欠コンベア4が停止している時間Tcの期間について検出信号から放射線を測定したときの単位時間あたりに入射した放射線のカウント数である計数率(cpm)を求め、記憶手段22に記憶しているバックグランド値を差し引いた正味の計数率に対して所定の換算係数を用いて換算し、物品Wが放出する放射能レベル(Bq)を算出している。
【0051】
また、放射能レベル算出手段25は、搬送制御手段から得られる物品Wが間欠コンベア4上に存在する時間Tt以外の時間すなわち間欠コンベア4上に物品Wが存在しない状態において、放射線検出手段からの検出信号に基づいて計数率(cpm)を求め、所定のタイミングで記憶手段22のバックグランド値を更新するようにしている。
【0052】
放射能レベル算出手段25は、さらに、放射線検出手段の検出信号から得られた放射能レベルを質量算出手段23で算出した質量で除算することにより物品W中の放射能濃度としての単位当たりの放射能レベル(Bq/kg)を算出している。
【0053】
判定手段26は、放射能レベル算出手段25で算出した単位質量あたりの放射能レベルに基づいて、物品W中の放射能濃度が規定値以内であるか否かの良否判定を行うとともに、判定結果を表示操作部20に表示させるようになっている。
【0054】
次に、放射線検査装置1の一連の処理動作について図4を用いて説明する。
【0055】
まず、物品Wが助走コンベア2に搬入し、助走コンベア2から秤量コンベア3へと図4(a)に示すような位置に物品Wが搬送されると、搬入センサ7aによって物品Wが秤量コンベア3に搬入したことを検知すると、質量算出手段23は、その検知してから所定の基準時間Tk後の所定期間Twの秤量値を平均化して重量を算出し、さらに質量に換算して物品Wの質量を算出する。
【0056】
続いて、物品Wが秤量コンベア3から間欠コンベア4へと搬送されると、図4(b)に示すように、物品Wは遮蔽カバー8の搬入口10aにある遮蔽部材9を押して搬入口を開口させて遮蔽カバー8の中に搬入する。また、搬入センサ7bによって物品Wが間欠コンベア4に搬入したことを検知すると、搬送制御手段24は、間欠コンベア4の駆動モータを制御して物品Wを間欠コンベア4上の所定位置(例えば、搬送法の物品Wの中心位置が放射線検出部6の中心位置となる位置)に停止させる。間欠コンベアが停止するときは、図4(c)に示すように、遮蔽部材9は元の位置に戻り、開口されていた搬入口10aは遮蔽部材9により遮蔽される。
【0057】
続いて、間欠コンベア4の停止時間Tcが終了すると、搬送制御手段24は、間欠コンベア4の駆動モータを再駆動して物品Wを再び搬送し、図4(d)に示すように、物品Wは遮蔽カバー8の搬出口10bにある遮蔽部材9を押して搬出口10bを開口させて遮蔽カバー8の外へ搬出する。
【0058】
続いて、物品Wの全体が選別コンベア41に載り移った後に、図4(e)に示すように、遮蔽部材9は元の位置に戻り、開口されていた搬出口10bは遮蔽部材9により遮蔽される。
【0059】
一方、放射能レベル算出手段25は、物品Wの間欠コンベア4への搬入タイミングと間欠コンベア4の停止の情報を搬送制御手段24から受け取り、間欠コンベア4が停止している時間Tcの期間について、放射線検出手段6が出力する検出信号から計数率(cpm)を求め、記憶手段22に記憶しているバックグランド値を差し引いた正味の計数率に対して所定の換算係数を用いて換算して物品Wが放出する放射能レベル(Bq)を算出し、さらに、質量算出手段23で算出した質量で除算して物品Wの単位質量あたりの放射能レベル(Bq/kg)を算出する。
【0060】
次に、判定手段26は、放射能レベル算出手段25で算出した単位質量あたりの放射能レベルが、所定の規定値以内であるか否かの良否判定を行い、判定結果を表示操作部20に表示させるとともに、選別部40に出力し、選別部40は、判定結果が否のときに搬送機構41を作動させて、物品Wを搬送コンベアから搬送方向と異なる方向へ排出させる。
【0061】
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る射線検査装置1は、物品Wを所定方向に搬送する搬送手段2,3,4と、前記搬送手段により搬送路上を搬送される前記物品Wの荷重に応じて秤量信号を出力する秤量手段5と、前記秤量手段から出力される秤量信号に基づいて前記物品の質量を算出する質量算出手段23と、前記搬送路上の前記物品から放出される放射線の強度を検出する放射線検出部6と、前記質量算出手段により算出した質量と前記放射線検出部により検出した放射線の強度とに基づいて前記物品から放出される単位質量あたりの放射能レベルを算出する放射能レベル算出手段25と、前記放射能レベル算出手段により算出した単位質量あたりの放射能レベル(放射能濃度)が所定の基準値以下であるか否かを判定する判定手段26とを備えたことを特徴としている。
【0062】
したがって、検査すべき物品から試料を採取することなく物品から放出される放射線量を測定し、物品中の放射能濃度が所定の基準値レベル内であるか否かを判定することができる。
【0063】
さらに、放射線検出部6により放射線を検出する検査空間11が遮蔽カバーに覆われているので、外部からの放射能を受けにくく物品から放出される放射線を精度よく検出することができる。
【0064】
また、放射線検出部4が搬送手段の搬送面の下方側に搬送面に近接して配設されているので、物品Wと放射線検出部6との距離が常に一定とすることができ安定して放射線の強度を検出することができる。
【0065】
2.第2実施形態(図5)
本例の放射線検査装置1は、第1実施形態の構成の他に、放射線検出部6を移動する検出部移動手段12と、その移動量を算出するための形状測定手段18を備えていることが異なっているものであり、その他の構成は第1実施形態と同様なので、第1実施形態の構成と異なる部分について説明し、その他の構成に関しては、第1実施形態の構成と対応する部分には図中に第1実施形態と同様の符号を付し、第1実施形態の説明を矛盾のない範囲で適宜援用して再度の説明を省略するものとする。
【0066】
本実施の形態では、図5に示すように間欠コンベア4の搬送面上方において、放射線検出部6の高さを物品Wの高さに近接させるための高さ調整機構として、放射線検出部6を支持する移動機構を有する検出部移動手段12と、物品Wの高さを測定するための形状測定手段18を備えている。
【0067】
検出部移動手段12の移動機構は、図6に示すように、間欠コンベア4の側面に移動機構のフレーム13が固設されており。このフレーム13には、放射線検出部6を保持する保持部材14と、この保持部材14を鉛直上下方向にスライド移動可能に支持する支持レール15と、フレーム13に回転可能に軸支されて保持部材14に螺合して回転することにより保持部材14を鉛直上下方向に移動させる回転軸16と、パルス駆動するモータ17(ステッピングモータ)が取り付けられているとともにモータ17の出力軸が回転軸16に連結されて構成されている。
【0068】
このように構成することで、このモータ17の回転角度、回転数に応じて放射線検出部6の高さを所望の移動方向に必要な移動量だけ移動することができる。
【0069】
形状測定手段18は、搬送面からの高さや搬送方向に垂直な方向である搬送幅方向の長さと搬送幅方向の位置を求めるものであり、本実施形態では、搬送面上方に例えば超音波センサや光学式距離センサなどの高さ測定用のセンサで構成され、センサから物品Wまでの距離を距離に比例した電圧を距離信号としてアナログ出力するものを使用している。
【0070】
制御部21は、高さ測定用のセンサから出力されるアナログ出力の電圧からからセンサと物品Wとの距離Dsを求め、さらに、予め設定されている高さ測定用のセンサの位置Hsから求めた距離Dsを差し引いて搬送面からの物品Wの高さHwを求めている。
【0071】
なお、高さ測定用のセンサは、搬送面からの物品Wの高さが測定できるものであればよく、例えば、スポットの小さなレーザセンサを等間隔で高さ方向にならべ、そこを物品Wが通過したときの遮光したセンサの一番上のセンサ位置を高さとするようにしてもよい。また、側面に撮像装置を設けて搬送ベルト上の物品Wの側面を撮像し、その撮像画像により搬送面からの物Wの高さを求めようにしてもよい。
【0072】
次に、放射線検出部6の移動動作について説明する。
【0073】
まず、物品Wが助走コンベア2に搬入し、形状測定手段18の下方を通過すると、制御部は、形状測定手段18が出力する距離信号を検出してその距離信号から、図7に示すようなセンサから物品Wまでの距離Dsを求め、さらに、予め設定されている高さ測定用のセンサの位置Hsから距離Dsを差し引いて搬送面からの物品Wの高さHwを求める。
【0074】
次に、予め設定されている放射線検出部6の搬送面からの高さHrから物品Wの高さHwを差し引いて放射線検出部6の移動距離dを求める。そして、その移動距離dに応じて、モータの回転方向と駆動パルス数を決定し、その駆動パルスによりモータ17を駆動して放射線検出部6を移動する。
【0075】
このように、本実施の形態では、形状測定手段18により測定した物品Wの高さに応じて放射線検出部6を検出部移動手段12によって移動し、放射線検出部6と物品Wとの距離が一定になるようにしている。
【0076】
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る放射線検査装置1は、放射線検出部6が、間欠コンベア4の搬送面より上方側に配設され、物品Wの形状を測定する形状測定手段18と、前記形状測定手段18により測定した形状に応じて前記放射線検出部6と前記物品Wとの距離が所定の値となるように前記放射線検出部6を移動させる検出部移動手段12とを備えたことを特徴としている。
【0077】
したがって、物品の形状に合わせて放射線検出部6を移動させることができるので、物品Wと放射線検出部6との距離が常に一定とすることができ、安定して物品から放出される放射線を検出することができる。
【0078】
なお、放射線検出部6を間欠コンベア4の上方に配設するように説明したが、放射線検出部5を間欠コンベア4の側面に配設するようにしてもよい。この場合の検出部移動手段12の移動機構は、搬送幅方向に移動可能とし、また、形状測定手段18は、例えば、助走コンベア2の上方に設けられた撮像装置であり、搬送ベルト上の物品Wを撮像して放射線検出部6側の搬送幅方向の物品Wの位置を測定する。そして、検出部移動手段12により放射線検出部6を形状測定手段18で測定した位置まで移動させることにより同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明の放射線検査装置1は、物品Wを所定方向に搬送する搬送手段上で物品Wの質量と物品から放出される放射線の強度を検出して物品から放出される単位質量あたりの放射能レベルを算出し、単位質量あたりの放射能レベルが基準値内であるか否かを判定するので、検査すべき物品から試料を採取せず放射能濃度を連続的に検査する検査装置に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1…放射線検査装置
2…助走コンベア
3…秤量コンベア
4…間欠コンベア
5…秤量手段
6…放射線検出部
8…遮蔽カバー
12…検出部移動手段
18…形状測定手段
20…操作表示部器
21…制御部
22…記憶手段
23…質量算出手段
24…搬送制御手段
25…放射能レベル算出手段
26…判定手段
40…選別部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品(W)を所定方向に搬送する搬送手段(2,3,4)と、
前記搬送手段により搬送路上を搬送される前記物品の荷重に応じて秤量信号を出力する秤量手段(5)と、
前記秤量手段から出力される秤量信号に基づいて前記物品の質量を算出する質量算出手段(23)と
前記搬送路上の前記物品から放出される放射線の強度を検出する放射線検出部(6)と、
前記質量算出手段により算出した質量と前記放射線検出部により検出した放射線の強度とに基づいて前記物品から放出される単位質量あたりの放射能レベルを算出する放射能レベル算出手段(25)と、
前記放射能レベル算出手段により算出した単位質量あたりの放射能レベルが所定の基準値以下であるか否かを判定する判定手段(26)と、
を備えた放射線検査装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記秤量手段の荷重変化を検知する秤量台となる秤量コンベア(3)と該秤量コンベアの次段に配設され間欠搬送する間欠コンベア(4)とを含み、
前記間欠コンベアの搬送路上の検査空間内で前記物品から放出される放射線の強度を検出するように前記放射線検出部が配設され、前記検査空間を覆う前記物品が搬入される搬入口(10a)と該物品が搬出される搬出口(10b)とを有する遮蔽カバー(8)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記遮蔽カバーは、前記間欠コンベアが停止しているときに、前記搬入口および搬出口を遮蔽する遮蔽部材(9)を有することを特徴とする請求項2に記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記放射線検出部が、間欠コンベアの搬送面より下方側に配設されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記放射線検出部が、間欠コンベアの搬送面より上方側に配設され、
前記秤量コンベアの上流側に配設され前記物品の形状を測定する形状測定手段(18)と、
前記形状測定手段により測定した形状に応じて前記放射線検出部と前記物品との距離が所定の値となるように前記放射線検出部を移動させる検出部移動手段(12)と、
を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射線検査装置。
【請求項6】
前記放射能レベル算出手段は、前記物品から放出される放射線の強度から、前記間欠コンベア上に物品がないときの前記放射線検出部が検出した放射線の強度を差し引いて放射能レベルを算出することを特徴とする前記請求項2〜5に記載の放射線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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