放射線標識されたCu−ビス(チオセミカルバゾン)錯体を容易に調合して、医療現場における62Cuキット製剤の高濃度輸送をするための小型62Zn/62Cu生成装置
【解決手段】新しいシステムでは、単純化された溶離液のみの生成装置と、凍結乾燥又はフリーズドライされたリガンドを用いる合成技術に基づいたキットとを利用することで、複数のPET放射性薬剤を容易で互換性のあるように作製できる。すなわち、単に凍結乾燥されたリガンドのバイアルキットを取り換えるだけで、同じ1つの62Zn/62Cu生成装置を用いながら、62Cuによって標識された放射性薬剤(62Cuリガンド)を、互換性のあるようにいくらでも合成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年9月提出の米国仮出願第60/501,156号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン断層法(PET)は、極めて高感度な撮像技術であり、その他の放射性核種撮像方式に比べて、数多くの実用上の利点を有している。これまで、その医療現場での利用の広まりは、最も一般的に使用される半減期の短いPET用放射性核種(15O、13N、11C、18F)の製造に必要となる専用(in-house)の生物医学用サイクロトロンの価格の高さや、運転コスト、そして、メンテナンス費用といった経済的理由から、限られたものにとどまっていた。PETの利点はよく知られていたものの、これらの高い費用を相殺できるほど十分なものではなかった。さらには、半減期の短い放射性核種を専用サイクロトロンを使用して迅速に作製することについて、FDAの規制は厳しいものであった。
【0003】
この10年間で、PETの放射性薬剤の作製及び配送において、重要な変化があった。18Fの可能性の発見がそれである。18Fは、小さなサイクロトロンで作製することができ、限定的な配送には十分な長さである110分の半減期をもっていたため、PET放射性薬剤の商用流通網がいくつか生じるに至った。これらの努力は、グルコース類似体(18F−FDG)に向けられたものであり、この類似体は、サイクロトロンを備えており、地方に配置された薬局を通じて流通される。これら薬局の各々が地方にある数多くの医療施設に提供できることから、北アメリカにおけるPETセンターの数は、2000年には230施設であったのが、2003年には603施設にまで膨れ上がった。同時に、大多数の施設がサイクロトロンを自前で持たず、商業的に製造及び流通する18F−FDGにもっぱら依存している。つまりは、PETは単一のトレーサーによる方式となってしまっており、その他のトレーサーを効率的に配送する方法に欠けている。
【0004】
研究所や病院における十分な数の研究は、各種の銅(II)ビス(チオセミカルバゾン)錯体(complexes)が、PET薬剤として利用できることを示唆している。有望な例として、銅(II)62Cuピルブアルデヒドビス(N4−メチルチオセミカルバゾン)、即ち62Cu−PTSMの改善が続けられており、これは、心筋、脳、腎臓及び腫瘍のパーフュージョン剤(perfusion agent)としての利用が実証されている。この薬剤は、9.7分という好ましい短さの半減期をもつため、患者に与える放射線量を減らすことができ、患者を撮像する一度の短いセッションの間に複数の試験を連続して行うことを可能とする。
【0005】
さらには、62Cuは、半減期が9.3時間である62Znを基礎とする生成装置で製造されるので、62Cu−PTSMは、地域又は国レベルのいずれの配送システムによっても、容易に病院に配送することができる。専用サイクロトロンによって製造する場合と異なり、規制機関は、生成装置を使用した配送を認めやすい。
【0006】
ビス(チオセミカルバゾン)群の薬剤では、その他に、62Cuエチルグリオキサール(ethylglyoxal)ビス(チオセミカルバゾン)、即ち62Cu−ETSが人体研究されている。62Cu−PTSMと構造上似ているが、62Cu−ETSは、大きな血流速度においてより線形吸収(linear uptake)するので、心筋かん流や肝臓血流の測定等の用途について、より優れたPET用パーフュージョントレーサーを提供することができるだろう。この数年間、もう一つのビス(チオセミカルバゾン)リガンドであるジアセチル−ビス(N4−メチルチオセミカルバゾン)、即ちH2ATSMについての研究が進められて、この化合物を銅を用いて標識したものが、低酸素状態用造影剤(hyproxia imaging agent)として非常に有望であることが明らかになった。それは、均一なパーフュージョン画像(homogeneous perfusion images)にて、腫瘍内で不均一に集積して、集積が低酸素状態の不均一性を反映していることを強力に示唆している。また、放射線標識されたH2ATSMは、実験的な冠動脈閉塞が引き起こした低酸素状態が反映された、「ホットスポット」のある心筋画像を描き出している。さらに、Cu−ATSMによる腫瘍の低酸素状態の画像は、病気の予後及び放射線治療の効果と関連があるという、数件の臨床結果が知られている。このように、62Cu−ATSMは、心臓や神経の病気の診断だけではなく、腫瘍の治療にも役立つPET画像を生み出す、非常に価値あるツールとなる可能性を持っている。9.7分という62Cuの短い半減期は、臨床での1度の短い撮像過程に、複数の放射線医薬を組み合わせることを可能にする。例えば、62Cu−ATSMによる検査のすぐそばで、62Cu−PTSによる腫瘍潅流と腫瘍低酸素状態の撮像を組み合わせて行うことで、非常に定量的で正確な腫瘍低酸素状態の評価を行える。最後に、62Cu放射線医薬品は、生成装置を用いずに製造される60Cu、61Cu及び64Cuに比べると、かなり経済的に配送できる。
【0007】
現在のところ圧倒的に、放射性画像(nuclear imaging)の最大の用途は、冠状動脈疾患の分析における心筋潅流の撮像にとどまっている。そのような撮像行為は、全ての放射性の検査の50%以上を数えるが、解像度が非常に低くて、減衰補正の効果は少ないような単一光子撮像(single photon imaging)と、ストレス下にある冠動脈における血流量の変化の追跡能に乏しい99mTcを基礎とするトレーサーとを用いて行われている。この分野におけるPETの完全な可能性を知るためには、パーフュージョントレーサーとして特に効果的な、18F−FDGではない別のトレーサーを配送する手段が必要がであることは明白である。
【0008】
米国特許第5,573,747号の記載にあるように、インライン合成法(method of in-line synthesis)によって作製されたビス(チオセミカルバゾン)族であって、62Cuで標識された薬剤を製造するようなモジュール式の62Zn/62Cu生成装置が開発されてきた。62Cuの9.7分という半減期は、放射線医薬の合成を容易にするのに十分な長さであると同時に、以前の投与による62Cuのバックグラウンドに干渉されることなく、適度に短い間隔で複数の撮像作業を連続して行うのには十分な短さである。また、このような検査は、適度な時間、およそ40分の間隔をおけば、18F−FDGなどの他の薬剤によるものでも構わない。撮像行為を連続して行えることは極めて有益である。というのも、これは心筋血流の評価に好ましい方法だからである。このような検査には、薬理学的又は実験ストレスの間、心筋における集積の位置的比較がそれによって安定していることが必要である。現在では、6時間という半減期を持つ99mTcトレーサーによって行われているそのような作業が、62Cuの短い半減期によって改善されることになる。
【0009】
生成装置で作製される62Cuは、2つの配送モデルのうちの1つを利用して、容易に医療施設に配送できる。親である62Zn(これは子である62Cu同位体へと崩壊する)の持つ9.3時間という半減期は、19MeVのサイクロトロンを用いて、18Fのラジオファーマシー(radiopharmacies)内又はその近くで製造することを可能とする。このような62Zn/62Cu生成装置は、すでに18Fのために整備されている地域配送網とまさに同じものを利用して配送できる。あるいは、親である62Znを、2、3の大きな集中施設において25MeVを超えるサイクロトロンを用いて製造し、生成装置に充填して、それを地域のラジオファーマシーに又は直接病院に搬送することも可能である。
【0010】
62Zn/62Cu生成装置を用いることには、規制の上でも数多くの利点がある。現在、ほぼ全てのFDA認可の放射線薬剤は、よく統制された状態にある中央商業施設で作製され、管理下にある地域の病院に配送される。生成システムを用いた配送は、一般的によく認められた行為であるとともに、99mTcの配送に主として用いられる手段でもあり、これは現行の核医学における大多数の実務上の要求に応えるものである。多数の病院内に設置されたサイクロトロンで放射線医薬が製造されるようなことは、現実の枠組みとして、FDAが承認していないし、承認するようなことはあり得ない。対照的に、米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置のような放射線核種生成システムは、FDAで承認されたGMP作製の代替となりうる。
【0011】
米国特許第5,573,747号に記載されたインライン合成式生成装置は、限られた臨床試験においては非常にうまく機能しているが、医療用途について大規模で商業的に実現することが難しいという欠点を持っている。あらゆる62Zn/62Cu生成装置がたった一日の利用にしか耐えないことを考慮すれば、システムを簡素化し、製品コストを下げることに対して、あらゆる可能な手段を尽くすことは不可欠である。また、米国特許第5,573,747号の生成装置に関して言えば、使用者によって繰り返し入れられることになる生成装置のセプタム(septum)に関して、FDAが強い懸念を表明している。つまり、「密閉され、あらかじめ消毒された空の瓶の中に直接回収される」製品が望ましく、生成装置を無菌状態に保つために求められる。米国特許第5,573,747号の生成装置のチューブセットは、製造コストがかかり、FDAは、再使用間の消毒性に関しても、留保を表明している。それによると、「製品は流体の複雑な流路を持ってる。この欠陥に対する対処として、計測試験を追加して、システムの完全性を示す必要がある。しかしながら、設計と、リサイクルの問題を考慮すると、十分な試験が可能であるか疑わしい。設計の改善が必要となるだろう」と述べている。さらには、米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置では、その内部のポンプを含めると、生成装置のハウジングの大きさは相当に膨れ上がって、輸送量の高騰を招いてしまう。さらには、750μlカラムに要する大きなシールドの運搬は非常に重く(35ポンド)、医療おいて1日の寿命しかない生成装置システムのコストの大きな部分を、輸送費が占めることとなる。こうしたわけで、62Zn/62Cu生成装置の重量と大きさを減らすためにあらゆる手段が講じられるべきである。もう一つの重大な制約は、33mLという注入量の大きさである。このような大きな容量が必要とされるわけは、溶離液溶液(eluant solution)の高い塩類含有量にあり、等張液を得るためには、注入用蒸留水(SWFI)で希釈しなければならない。この注入量の大きさゆえ、技術者の過度の被爆を避けるために、重くかさばるシールドが必要となり、また簡便な瓶合成技術を利用することができない。さらに、注入量が大きいと、過敏な患者に不都合をきたす恐れがあり、注射時間が長引いて、そのことにより、典型的なPET定量分析に必要な入力関数(input function)を確定するのが困難になる。米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置においては、生成装置内部でリガンドの付加が行われるため、装置を非常に複雑にすることなく製造できるのは、ただ一種の放射性薬剤でしかない。この制約は不幸なことであり、特に、数種の非常に有用な62Cu放射性薬剤の有効性と、2種又はそれを超える薬剤を用いた近接検査を応用することの魅力と照らし合わせるならばなおさらのことである。例えば腫瘍や心筋潅流は、62Cu−ATSMによる低酸素状態のスキャンによって即座に追跡することができる。そのようなパーフュージョンスキャンは、低酸素状態の有意義で定量的な評価を達成するためには不可欠である。
【0012】
複数のPET放射性薬剤の作製を容易で互換性のあるように行えるシステムや方法に対する需要がなおも存在することは明らかである。
【発明の開示】
【0013】
新しいシステムでは、単純化された溶離液のみの生成装置と、凍結乾燥(lyophilized)又はフリーズドライ(freeze dried)されたリガンドを用いる合成技術に基づいたキットとを利用することで、複数のPET放射性薬剤を容易で互換性のあるように作製できる。すなわち、単に凍結乾燥されたリガンドのバイアルキット(vial kit)を取り換えるだけで、同じ1つの62Zn/62Cu生成装置を用いながら、62Cuによって標識された放射性薬剤(62Cuリガンド)を、互換性のあるようにいくらでも合成できる。互換性のある放射性薬剤の作製について付け加えると、凍結乾燥されたキットの形態を用いることから、製造現場ではよく知られている通り、高い安定性と低コストという十分な利益を得られる。さらに、そのように作製された放射性薬剤では単位用量が大幅に減少するため、患者の快適さを向上させ、投与にかかる時間も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
高度に単純化及び小型化された生成装置が図1に示されている。これは、溶離及び滅菌されたパイロジェンフリー(pyrogen-free)な62Cu2+のみを生成する。生成装置のカラム(10)のサイズを小さくしたことによって、溶出する62Cuの量について必要とされる減少を容易にする。生成装置は、1つの溶離液容器(1)と、体積が25〜100μLである小さなカラム(10)とを備えており、密閉された容離液容器(1)内に適度に圧力をかけることによって溶出がなされる。加圧によって、充填と溶出のプロセスを効率化及び簡素化することができ、米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置が必要とした蠕動ポンプが不要になる。カラムの小型化は、50mCiの62Znの質量がわずか10ngであることから可能となり、これは、ちょうどAG1X8樹脂ビーズの1μLにおける吸着能の0.8%に相当する。この革新によって、カラム体積を15分の1に縮小し、最新のタングステン合金のシールド(9)を使用し、さらに蠕動ポンプを廃することで、カラム周囲に必要だったシールドの重さを劇的に減少させることを達成し、そのことによって、搬送コストを相当に減らすことになる。しかしながら、カラム体積の縮小で得られるもっとも重要な利益は、15という相応な因子で、放射性薬剤製品の注入量を減らせることにある。食塩1.8M NaCl、0.2M HCL溶離液溶液は、NaAc緩衝液と共に、等張にするために6倍に希釈しなければならないので、凍結乾燥リガンドキットによる合成には、流出体積(elution volumes)が小さいことが不可欠である。この流出体積を大幅に減少させた効果によって、小型の生成装置、つまり「マイクロジェネレーター」によって、現実的な大きさ(例えば<5mL)の受け取りバイアル(17)に、注入可能な等張PET放射性薬剤を作製できる。
【0015】
62Zn/62Cu小型生成装置は図1に示されており、4つの主要な部分を含んでいる。すなわち、樹脂製の小型カラム(10)、溶離液容器(1)、充填ポート(8)、および溶離ポート(14)である。システムの要部である構成部品は、体積が大幅に縮小されたホウケイ酸塩ガラスのカラムである。ある実施例では、このカラムは全長2.9cmで、内径2mm、外径6mmである。このカラムの上部及び下部は、一般的な8mmの厚さでバイアル状に閉じられている。厚さ3mm、細孔径30ミクロンのガラスフリットが、カラムの底から5mmに溶接されている。このカラムは、50μlのAG1X8、つまり200から400メッシュの陰イオン交換樹脂によって計量線まで満たされる。カラムへの入口及び出口には、19.5ゲージ(外径1mm、内径0.7mm)の耐食性金属チューブ(例えば、Inconel 625)の小片が用いられる。カラム内の空隙容量(void volume)を小さくするために、カラムの入口及び出口のチューブは、1.6mm×7mmのバイトンセプタムを通って突き出る。セプタムの0.5mmの孔はチューブの挿入を容易にし、チューブは、8mmのアルミクリンプシールを用いてクリンプシールされる。小型カラム(10)の詳細寸法は重要ではなく、SWFIと混合されて、約5mLの体積を上回らない等張の注入液を作り出す場合に、単位容量の62Cu溶離液を提供するように決定される。
【0016】
カラム上側にある「T字型」接続部により、可撓性チューブ(例えば、Pharmed tubing [Cole-Parmer])の短い部分で動作するピンチバルブ(5)(6)を操作して、溶離液容器(1)又は充填ポート(8)からカラム(10)へと至るような流れの接続を可能にする。オートクレーブ後の滅菌を確実にし、システムに入ってくる滅菌されていない流体による汚染を避けるために、0.22μmの親水性(PVDF)滅菌フィルター(4a)が、充填ライン上に設置されている。充填ラインの末端には、HPLC接続部(7)があり、生成装置を容易に且つ滅菌状態のまま、図2に示された充填装置に取り付け、取り外すことを可能とする。図1のピンチバルブ(11)は、ソレノイド式又は手動式のアクチュエータ(12)によって調整され、カラム(10)の下に配置される。ピンチバルブ(11)を開閉することによって、流出プロセスが制御される。カラム(10)の下にバルブを配置することで、カラムの樹脂ベッド(resin bed)内の圧力を一定に保ち、それによって、溶解していた気体による気泡の発生を防ぐ。ピンチバルブの下には、針固定用支持部材(13)があり、キットのバイアル(17)のセプタムを貫いて針(14)が挿入されている間、針(14)を確実に固定する。図1に示されているように、着脱自在な上部を有するバイアル用シールド(15)が設けられ、バイアル用シールド(15)内にあるバイアル用キャビティの上には入口ポート(16)が設けられている。昇降調節機構(18)が、バイアル用シールド(15)内にある凍結乾燥されたリガンドのバイアル(17)を動かして、生成装置の溶出用針(14)が入ると、流出用針(14)は、入口ポートによってバイアル(17)のセプタムに至る。
【0017】
溶離液容器は、50mlのセラムバイアル(serum vial)であってよく、20mmのグレーのブチルセプタムと、アルミのクリンプシールとを備えている。カラムを通る流量はこの容器のヘットスペースで維持される圧力で制御される。そのボトルは、圧力ソース(3)によって加圧され、0.22μmの疎水性(PTFE)滅菌フィルター(4b)を通り、図1に示されるピンチバルブ(2)によって密閉される。
【0018】
充填装置は図2に示されており、圧空駆動式搬送システム用に設計されている。3mlの円すい形のテフロン(登録商標)製バイアル(25)が、充填用容器(loading vessel)として使用される。この容器を充填用容器としての使用に適するようにするために、底に若干小さめした孔が空けられ、容器は100℃に加熱される。加熱後、内径0.5mm、外径1.6mmのチューブ(例えば、テフロン)が開口に素早く挿入される。冷却された後、熱圧着によってラインは確実に固定される。このラインは、充填剤容器(25)から2cm下側に配置されているガイガープローブ(28)(これは(27)によってシールドされている)を横切る。これにより、管内にある放射性溶液の存在又は不存在が瞬時に判別されて表示される。
【0019】
充填剤容器の蓋のセプタムには2つの穿孔が空けられ、内径0.5mmのチューブ(例えばテフロン)が挿入可能になっている。一方は充填剤容器の加圧に用いられ、他方は、精製された62Znを充填剤容器に充填するために用いられる。ピンチクランプ(23)は、容器(215)へと導かれる圧空管路上に配置され、これによって、洗浄容器(26)と充填剤容器(25)の圧力差が可能となって、相互接続された流路が満たされる。圧力源(21)から加えられる圧力は、デジタル式圧力変換器(22)(例えば、オメガPX170)によって正確に計測される。圧力源と洗浄容器及び充填剤容器の間の接続は、内径0.5mmのテフロンチューブを用いて行われる。タイゴンチューブ(内径1.5mm)は、圧力変換器と充填圧力システムを接続する。
【0020】
洗浄容器(26)のセプタムには、充填剤容器(25)と同様に2つの穿孔があって、それらには内径0.5mmのチューブが挿入される。一方のラインは洗浄容器を加圧するもので、他方のラインは2M HClを充填ラインへと提供する。洗浄容器から流れ出るラインは、3方向HPLCセレクタバルブ(29)へとつながる。このバルブにより、洗浄容器から充填剤容器に至る流れで流体ラインを満たし、充填剤容器から生成装置の充填ポート(8)(図1)に至る流れで生成装置に充填し、洗浄容器から生成装置の充填ポート(8)に至る流れにで流体ラインを満たして生成装置に充填できる。充填装置の充填ラインの末端には、素早くHPLCクイックコネクト(30)があり、生成装置の充填ポート(8)への接続を提供している。
【0021】
充填された放射能(例えば、62Zn)は、図2の円錐状の充填剤容器(25)へと送り込まれ、充填システムで前処理される。前処理には、洗浄容器から送られる2MのHClで全てのラインを満たす工程が含まれる。充填工程は、以下の通りである。ピンチクランプ(23)は、大気圧下で閉じられて、3方向HPLCバルブ(29)に端を発して充填剤容器(25)で終わるラインを、洗浄容器(26)から送られる2MのHClで満たすのを助ける。その後、3方向バルブが回転されて、洗浄容器から充填ラインへに至る流路が選択されて、そのラインに液体が同様に満たされる。充填装置の出力部(30)は、連続した液体の流れに気泡が入らないように、生成装置の充填ポート(8)に接続される。溶離液容器(1)から「T字型」接続部への間に位置するピンチクランプ(5)は、62Znが溶離液容器に流入しないように閉じられており、そして、2M HClが、洗浄容器(26)(図2)から生成装置のカラム(10)へと運ばれ、望ましい導入流量が達成される。3方向バルブが切り替えられて、62Zn溶液が、充填剤容器(25)から生成装置のカラム(10)へと導入される。充填作業の間、ガイガープローブ(28)の測定値が結果的に急激に下がることで、3方向バルブが充填容器から洗浄容器へと切り替わったことが信号で伝えられる。そして、生成装置のカラム(10)は256μlの溶離液で洗われる。その後、充填容器が切り離され、生成装置のカラム(10)が使用可能になる。
【0022】
あらゆるビス(チオセミカルバゾン)誘導体(derivatives)は、同じ方法で、容易且つ積極的にCuをキレートする。図8は、銅(II)イオンのキレート化を描いており、これは、側鎖基Rx(x=1,2,3又は4)が何であるかに拘わらず成立する。それは、Cu+2イオンが、Rxの構成にはほとんど影響されないように、化合物内で窒素及び硫黄原子の混成軌道と相互作用するからである。リガンド内のπ共役系はこの反応内で保たれて、置換基は、この共役系の範囲外であって、キレート化のメカニズムには加わらない。銅イオンが硫黄原子に結合する場合、電子の再配置が起きて、その結果、2つの窒素−炭素二重結合が形成されて、2つのH+原子が失われる。リガンド錯体においては、銅原子は、銅2+の状態では一般的な四角構造(square configuration)で結合する。表1は、ビス(チオセミカルバゾン)錯体の一部リストであり、これは文献として既に報告されているものである。以下にビス(チオセミカルバゾン)錯体の構造を示す。
【0023】
【化3】
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
これらの化合物は、キレート化反応が非常に似ているが、側鎖基Rxが異なるために、生体内において化学的及び物理的に非常に異なった特質を示す。例えば、H2ATSMとH2PTSMは側鎖基R2が異なるのみだが、水/オクタノール分配係数は0.34も異なる(表2参照)。また、異なった側鎖基で置換することで、さまざまな血中の化合物への銅化合物の結合をかなり変化させることが可能となる。このような効果は、高度に種依存的であることが知られている。特に、Cu−PTSMは、人間を除く大多数の動物種において血液との結合力が低いが、人間にあっては極めて高い結合を示し、高い流速において非線形な集積を引き起こす。一方、異形(variant)Cu−ETSは血漿との可逆的結合性が低いために、心臓や腎臓等の血流速度が速い臓器の撮影用途において、Cu−PTSMよりも効果的な血流トレーサーとなる。
【0027】
図9は、チオール媒介によるCuII−PTSMの細胞内での分解と、それに関する通常細胞内における62Cuビス(チオセミカルバゾン)錯体を説明しており、CuII−PTSMの細胞内での分解は、これを静脈投与した後において62Cu放射性標識が「マイクロスフェア様」の細胞組織で長く保持されることと原因であると信じられている。非荷電で脂肪親和性の銅(II)ビス(チオセミカルバゾン)錯体は、細胞壁を容易に抜けて拡散するので、細胞内に遍在するグルタチオンなどのチオールと直ちに反応して還元分解する。チオールの硫黄からCu(II)ビス(チオセミカルバゾン)錯体への電子移動は、ビス(チオセミカルバゾン)リガンドからCu(I)を分離させて、細胞内の高分子と結合(及び効果的に捕捉)させる。別のCuIIビス(チオセミカルバゾン)錯体は明確な還元能を有しており、それが細胞内での捕捉に大きな効果を発揮する。CuATSMは、例えば、100mVにおけるCuPTSM又はCuETSよりも低い酸化還元能をもつ。その結果として、通常酸素状態の(normoxic)細胞組織内では還元されず、したがってすぐさま洗い流される。しかしながら、低酸素状態の細胞組織内においては、CuATSMのCu(II)は、電子キャリア(酸素)が欠けるために、直ち及び不可逆的にCu(I)に還元されて保持される。
【0028】
放射性標識されたCuビス(チオセミカルバゾン)化合物を合成する新しい方法は、凍結乾燥状態のリガンドを使用することを中核としている。凍結乾燥又はフリーズドライは、凍結して真空状態においた後に製品から水分が除去されるプロセスであって、液相を経ることなく、氷を固体から気体へと直接に昇華させることを可能とする。このプロセスは、溶質の結晶化を効果的に防げるので、通常のように固体状態のまま行う場合と比較して、溶質が遥かに容易に溶ける。無菌凍結乾燥の後、乾燥した結果のケーキは無菌状態を保っており、製薬業界でよく知られているような水溶液に保持される場合よりも、長期間の保存に耐える。問題のリガンドを含む溶液は、賦形剤とともに凍結乾燥されて、2〜5mlのバイアルに保存される。バイアルの中身は、注入用滅菌水(SWFI)を、又は酢酸ナトリウムなどの緩衝剤を含んだSWFIを加えるだけで、ほぼ瞬時に溶解する(戻される)。62Zn/62Cu生成装置又はその他のソースから提供される滅菌された放射性Cu2+溶液を、その後バイアルに加えて、放射性標識されたCu−リガンド錯体が即座に作製される。このような即時の合成法は、実際の医療現場において、62Cu(t1/2=9.7分)などの半減期の短い薬剤を利用するためには不可欠である。62Cuを62Zn/62Cu生成装置から得る場合、溶液は、1.8M NaCl、0.2M HClからなるのが好ましく、バイアルの中身は、2モルを超える酢酸ナトリウム又はその他の中和剤と多量のSWFIを含んでおり、SWFIは、62Cuを含む溶液と共に用いられて、最終的な注入液の浸透圧を血液に近い値(7.7atm)にし、pHを最も好ましくは5.5〜7.0の範囲内にする。
【0029】
凍結乾燥を基礎としたキット合成法を用いて、ビス(チオセミカルバゾン)リガンドの相溶性(compatibility)を評価する試験が、H2PTSMをモデル化合物として用いて行われた。これらの試験では、第1にリガンドの凍結乾燥と即時の再構成の実現可能性が評価された。ビス(チオセミカルバゾン)化合物のあらゆるものは水に非常に溶けにくい。その結果、凍結乾燥に要する主たる水溶液を用意するために、結晶状態のH2PTSMが、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に最大濃度で溶かされた(200mg/mL H2PTSM)。リガンドの溶解性はDMSOにて高いことから、極めて少量のこの溶液が水に加えられて、リガンドの濃度が2μg/mLであるような、ほとんどDMSOを含まない水溶液が作製された。リガンドの沈殿の可能性を低減するために、DMSO溶液は、素早くかき混ぜながら湯(90℃)に加えられた。この溶液は、その後室温にまで冷却されて、分光光度計を用いて有効性が測定された。水溶液に含まれる極めて少量のDMSOは、凍結乾燥の過程で水分とともに昇華することが望ましい。凍結乾燥の後の有効性を最大化するために、賦形剤(ブドウ糖[6.7mg/mL]、トレハロース[6.7mg/mL]又は酢酸ナトリウム[5.4mg/mL]のいずれか)が加えられた。賦形剤を加える目的は、凍結乾燥の間、ケーキの中に分散した状態を保つことで、リガンドの結晶化を防ぐことにあった。酢酸ナトリウムにはさらなる役割があって、62Zn/62Cu生成装置の流出液0.1〜0.15mLを加えることで、最終製品が適切なpHになるように緩衝する。結晶化した状態を水溶液に戻すのは極めて困難なので、リガンドの結晶化は何をもってしても避けなければならない。賦形剤を加えた2μg/mlのリガンドを含む溶液は、2mLのバイアルにつき1mlずつに分けられ、凍結乾燥された。バイアルの凍結乾燥は、まず試料を−70℃まで2時間冷却し、その後、(凍結乾燥器内の)バイアルを2時間−20℃に保つことで行われた。最後に、冷凍が終了し、18時間の真空(25〜50mTorr)サイクルが開始された。真空サイクルの最後に、バイアルは窒素ガス下でクリンプシールされた。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
生成装置のカラムを通る溶離液供給における加圧方法を評価するために、溶離液容器内の圧力に変化を加え、単位時間あたりに流出した体積を計測することによって、流量が決定された。望ましい流出流量は、3.6ml/分で流出する750μLのカラムの生成装置からスケーリングすることで推定される。各デザインにおける樹脂ベッド体積の比に従って流量をスケーリングすることで、新たなシステムについて、240μl/分の流量が示された。溶離液容器は、最初に5mlの溶離液を溜めている。医療現場で予想される最大のカラムの使用である、流出体積当たり約0.12mlで20回流出する場合を考えると、溶離液の体積にして2.4mlの減少であり、これは流出圧力においてわずか5%の違いを生じるのみであり、毎日の臨床使用での最大貯蔵期限である1日間にわたって使用したとしても、臨床使用において無視できる流量の差違である。
【0031】
圧力を加える流出方法によって、目標流出量である240μl/分が達成された。実験では、溶離液容器に5〜15psigの範囲に亘って圧力が加えられた。流出したサンプルの重量が量られて、特定の圧力下における流量が決定された。カラムの性能に与える流量変化の効果を調べるために、それぞれ5又は10秒区切りで、30秒、60又は120秒間における種々の圧力下の流出特性が集められた。全ての流出及びフラクション(fraction)は、Capintec製CRC−15Rによって即座に計測され、流出開始時点に対して減衰補正を行った。これら流出及びフラクションは同時に、単位時間当たりに流出した体積で測定された。
【0032】
簡素化された小型生成装置及びバイアル合成法に関する予備実験が行われた。これら試験の主目的は、製品の実現可能性を示し、物理的な大きさ及び体積を劇的に小さくした生成器カラムの十分な性能を示すことにあった。第2に、ポンプに代えて、受動圧を使った簡単なカラム流出方法の実現可能性が検討された。
【0033】
全部で4つのカラムが充填及び評価された。4つのカラムの全ては、10μml/分の流量で充填された。様々な充填体積が評価されて、ブレークスルー(breakthrough)と生成性能(yield performance)が求められた。体積は、0.15mlから1.5mlの範囲にされた。充填される放射能を順次増大して試験を行ない、潜在的な放射線障害がカラムの性能に与えるあらゆる効果が評価された。放射能の範囲は2.9mCiから78mCiであった。
【0034】
選択された流出サンプルのブレークスルーは、NaIウェルカウンタ(サール モデル 1197)にて62Cuが完全に崩壊した後にカウントされた(流出後4時間)。精製した62Znがシステムの較正に使用された。ブレークスルーは、生成装置のコラムの62Znで溶離液溶液の62Znを割った比として報告される。それらは、同じ時点にて崩壊する。
【0035】
プロトタイプの4つの小型生成装置が作製された。各々は、50mLのガラス製溶離液容器を採用しており、容器は、50μLの樹脂で満たされたカラムにチューブを用いて直接に接続されて、出力チューブのラインに結合された。流出は、較正された手動ピンチクランプの開閉によって調節された。クランプは、チューブにかかる超過圧力が掛かるのを避けるように設計及び調整された。溶離液容器を加圧するために、容器のヘッドスペースから延びるチューブラインに圧力源が接続された(図1の(3)を参照)。圧力駆動される流れの実現可能性を示し、圧力と流量間の関係を確立するために、0〜15psigの容器圧力について、流出サンプルが集められて質量が計測された。さらに、流量の再現性を確立する実験が慎重に行われた。62Zn溶液は、10μL/分の充填量で、それぞれのカラムに充填された。非常に小さな樹脂ベッドへの潜在的な放射線障害の影響を検証するために、2.9.Ciから78mCiの範囲の放射能が調査された。0.15mL〜1.5mLの範囲について、62Cuの産出(yield)と62Znのブレークスルーに充填体積が与える影響についても調査された。各生成装置について、持続時間が30秒と60秒である流出サンプルが、2日間にわたって繰り返し回収された。また、流出サンプルが、連続して5〜10秒おきに回収された。試料の放射能レベルは線量較正器(Capintec製CRC−15)で分析されて、流出特性と産出量の推定値を得るために減衰補正された。62Cuの崩壊後(流出後4時間以上)、サンプルはNaI内でカウントされて、ブレークスルーが測定された。
【0036】
流量試験において、望ましい流量である50〜200μL/30秒を達成するためには、1〜2psigの圧力が適当であるとの結果が示された。しかしながら、このような低い圧力では、気温や溶離液の量の変化によって、流量に重大な影響が生じた。これらの因子の影響を小さくするために、容器の圧力をおおよそ10倍に増し、圧力−流量試験を5〜15psigの圧力で再度行った。付随して、溶離液容器とカラムの間にある内径が小さいチューブを長くすることで、これらの高圧下において、所望の流量が維持された。図3にみるように、流量と容器の圧力は、きわめて密接な直線関係を示す。したがって、最適な流量は、一度確立されてしまえば、容器圧力に対応するように選択することで容易に達成できる。試験結果はまた、圧力駆動の流れは高度な再現可能性を有することを示しており、それは図4の細いピークで示されている。10psigでは、30秒の流出は、中間値106.2μLを示し、標準偏差は1%より小さかった。
【0037】
図3に示された方程式と理想気体の法則を用いて、溶離液の体積と温度の変化が、30秒の流出で供給される量に与える影響を見積ることができる。容器の初期圧力を10psigと仮定すると、流量は〜106μL/30秒になり、初期温度は華氏77度であり、温度が華氏10度下がっても、供給量は4.0μLのみ減少する。溶離液の体積が2.12mL減少すると、これは20回の106μLの流出に相当するのだが、供給量にしておよそ9.7μL減少する。溶離液の体積と周辺温度のこうした変化は、臨床使用における極端なコンディションを正しく表している。不慮の事態が共に起こったとしても、供給量には僅かな変化(13%未満)のみが起こり、それは医療用途においては妥当なものであろう。
【0038】
プロトタイプの小型生成装置は、予備実験において極めてよい成績を残した。表3は、4つの小型生成装置と、医療現場で現行の一般的な生成装置とについて、産出とブレークスルーを示したデータである。プロトタイプの全ての生成装置において、最初の30秒の流出における平均産出値(流出した62Cu/カラムの62Zu)は現行の生成装置の産出と同等又はおおよそ50%上回っている。これらの結果は、小型化されたカラムを用いても、適切な生成量を達成できるという仮説をはっきりと支持している。さらには、図5に示すように、2日の試験期間を通じて繰り返し流出を行うという条件下においても、高い生成量は維持された。
【0039】
予備試験によって、生成装置の性能に影響を与える複数の因子が明らかになった。第1に、時間と共に、樹脂カラムを押し流される溶離液が増えるごとに、産出は増大する(図5参照)。第2に、充填体積が減ると最初は産出も減少する。例えば、生成装置Z123はZ122の10分の1の体積で充填されたが(150μl対1.5ml)、すると産出はざっと平均して10%減少した(表1参照)。おそらくは、充填体積が少ない条件下では、62Znの放射能がカラム頂部の近くでナローバンドに樹脂に捕捉される。結果として、62Cuがカラム出口に到達する前に、より大きな量を樹脂に流さなければならない。流出特性は(図6参照)、この仮説を支持している。これらの特性では、流出体積に対して放射能濃度がプロットされている。図6(a)に見るように、Z123は、Z122に比べてより遅れて放射線のピークを示す。その結果、充填体積が少ない生成装置では、30秒の流出において、より多くのピーク及びテールが切り捨てられることになって、産出が少なくなる。図5が示唆するように、適切な溶離液が樹脂ベッドを通過した後には、この産出は上昇するであろう。図6(b)は、Z123において、48及び118のベッド体積の溶離液がカラムを透過した後の流出特性を示している。本図に示されているように、後の特性の方が、早く且つ鋭いピークを示している。
【0040】
【表3】
【0041】
表3に示す結果は、親である放射性同位体の62Znのブレークスルーは、米国特許第5,573,747号のモジュラー生成装置では、かなり低いレベルに保たれていることを示している。充填溶液量がより大きくなるように製造された小型生成装置(Z121−122など)は、現行の医療用生成装置と同程度のブレークスルーを示した。しかし、生成装置Z123には、より少量でより濃度が高い62Zn溶液が充填され、初期ブレークスルーレベルにおいて劇的な減少を実現している。小さな充填体積が、低いブレークスルーレベルを保つために有効であることを示している(図7参照)。充填体積が最も少ないZ123では、〜40のベッド体積(〜20回の流出)を溶離液が通過した後もブレークスルーは2倍の増大に留まっており、Z121及びZ122では約10倍に増大するのに比べて対照的である。
【0042】
まとめると、先行試験の結果は、劇的に小型化したカラムは、産出とブレークスルーのような重要なパラメータに関しては、現行の生成装置と同様に作動でき、それらの能力は、期待される臨床利用の過程を通じて維持される。試験結果はまた、スケールを小さくしたカラムでも優れた性能を示し得ることを示唆している。先行試験結果がさらに示唆することには、圧力駆動の流出は高度に再現可能であり、供給量の変化は受認限度内に収まっている。総合すれば、これらの発見は、ここに提示される小型生成装置の設計の実現可能性を強力に指示している。
【0043】
[実施例2]
無作為に選択された凍結乾燥バイアルについて実験が行われて、凍結乾燥前のリガンドと、戻した後のリガンドの濃度を比較した。ビス(チオセミカルバゾン)リガンドの濃度の計測に関する信頼でき感度の高い技術は、UV/VISスペクトロスコピー分析を用いて実現された。この技術は、リガンドが積極的に銅イオンキレート化することと、結果として産出する銅化合物が、はっきりと視認できる吸光度のピークを持つことに基づいている。各バイアルの中身は、1.0mLの脱イオン化された水で戻されて、水晶分光光度計のキュベットで3.0mLに希釈され、結果として、溶液に100%戻った状態で0.67μg/mLの濃度となった。過度のCuCl2(1μg)が加えられて、Cu−PTSMの定量的な形成が可能となる。このプロセスは素早く達成されて(2〜3分)、UV/VISスペクトルが30秒以内に測定された。このようにして、瞬時の再構成の実現可能性が評価された。スペクトルは、3種の賦形剤溶液(ブドウ糖、トレハロース、酢酸ナトリウム)内のCu−PTSMと、賦形剤を含まないCu−PTSM参照溶液から得られた。
【0044】
第2の試験では、小型生成装置で製造された62Cu2+を有した再構成凍結乾燥リガンドによる体内の放射性標識の実現可能性が評価されて、放射化学的純度が高い62CuPTSMが製造された。Cu−PTSMの組成及び純度は、薄膜クロマトグラフィー(TLC)を用いて計測された。凍結乾燥H2PTSM(2μg)とトレハロース賦形剤は、0.4M酢酸ナトリウム(緩衝剤)105μLと脱イオン化水1.5mLを用いて凍結乾燥バイアル内で戻されて、生成装置の溶離液(1.8M NaClと0.2M HCl)105μlに加えて、等張にするために必要な2倍のモル濃度の緩衝剤及び希釈水が供給された。バイアルは30秒間攪拌されて、その後10分間静置された。バイアルのゴムストッパーは外され、小型カラムから流出した105μLをそのままバイアルに供給した。溶液の混合物は、数秒間丁寧にかき混ぜられて、30秒間室温で放置された。その後直ちに、複製された0.5μLアリコートが、C18及びシリカゲルのTLCプレート上の1.0cmのマーク位置に落とされた。ガラスプレートはディベロップメントタンク(development tank)の中に置かれ、100%エタノールの移動相において30分間処理された。さらに、参照62Cu2+イオンプレートが別個に処理された。この試験において、脂溶性の62CuPTSM化合物が溶体と共にに移動するにも拘わらず、あらゆるCu2+イオンは原点にとどまった。ストロー検知器をベースとしたスキャナが用いられて、各プレートの各トラックの放射線文分布が計測された。各トラックで少なくとも10,000カウントが検出された。
【0045】
上記の技術を用いて、リガンドと賦形剤のケーキを含む凍結乾燥したバイアルが製造された。製造は、3つの試験賦形剤全てを用いて成功裏に遂行された。さらに、瞬時の再構成の実現可能性に関する試験は、すばらしい結果を残した。吸光度スペクトルを、図10〜13に示す。図10は、濃度0.67μg/mLの非凍結乾燥H2PTSM溶液の吸光度スペクトルと(●で示す)、0.5μgのCuCl2を3mlキュベットに加えて作製されたCu−PTSM溶液の吸光度スペクトル(■で示す)とを示している。図から読み取れるであるように、銅イオンを投与すると、H2PTSMの吸光度のピーク(320nm)は消失し、代わりに特徴的なCu−PTSM(462nmおよび308nm)に置き変わり、H2PTSMからCu−PTSMへの完全な置換がなされたことが示されている。H2PTSMが凍結乾燥バイアルから戻ることの効果は、このCu−PTSMスペクトルを比較参照することで確かめられるであろう。図11、図12及び図13は、アセテート、ブドウ糖およびトレハロースのそれぞれの賦形剤について、2つの代表的な凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを夫々示している。比較のために、各パネルは、図10にみられる凍結乾燥されていないCu−PTSMの参照スペクトルを含んでいる。これらに示されているように、賦形剤3種の全てについて、凍結乾燥リガンドから得られるスペクトルは、参照スペクトルとほとんど同じに見える。これらの結果は、凍結乾燥リガンド完全かつ迅速に戻せることを示している。
【0046】
図14は、C18上の62CuPTSMと、シリカゲル媒体上の62CuPTSMと、62Cu2+イオンのTLCカウント特性である。予期されるように、62CuPTSMの特性について(図14(a)及び(b)参照)、移動する単一の放射性の種が観測されており、それぞれのトラックにある単一のピークによってそのことは示されている。Rf値は、2本のトラックに亘って平均すると、C18とシリカゲルについて、夫々0.49と0.72になった。これらの値は、他の方法を用いて作製された62CuPTSMについて常に得られるRf値と一致する。反対に、図14(c)に示すように、銅イオンは両方の媒体において原点に残り、62Cu2+イオンのRf値は、C18とシリカゲルとについて、夫々0.23と0.19になった。62CuPTSMのデータ(図14(a)及び(b))に参照ピークが見られないことは、リガンドと結合した後に銅イオンが全く残っていないことを示している。62CuPTSMの放射化学的純度の平均は、TLCデータ(n=4)に基づくと、96%であった。
【0047】
62Zn/62Cu小型生成装置及び凍結乾燥リガンドキットは、広範な放射性薬剤を合成するために、半減期の短いPET用同位体の供給源として、臨床でのPET撮影の進歩に重大な役割を果たす。小型生成装置は、キット合成技術を伴って、現行の規制と、放射性薬剤の配送の商業上の枠組みとにシームレスに適合できる。1つのセンターは、さらされたターゲットを処理し、必要な放射化学的処理をして62Znを純化し、多数の生成装置を充填できる。交換可能なキットが同じ生成装置に採用されているため、合成技術は柔軟に軟に利用でき、経済的である。62Zn/62Cu小型生成装置及び凍結乾燥リガンドキットは、腫瘍学、心臓学、神経学における臨床でのPET撮影の進歩に主要な役割を果たす。最後に、生成装置の小型化によって、医療現場において便利な薬剤の投与量を可能にし、搬送及び標識化を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、高度に単純化及び小型化された生成装置を示しており、この生成装置は、溶出菌されてパイロジェンフリー(pyrogen-free)な62Cu2+のみを製造する。
【図2】図2は、充填装置を描いており、図1の生成装置に62Znを充填するために用いられる。
【図3】図3は、図1の生成装置から流出する溶離液の流量と、図1の生成装置の溶離液容器のヘッドスペースにかかる圧力との関係を示している。
【図4】図4は、図1の生成装置の流量の再現性(reproducibility)を描いている。
【図5】図5は、図1の生成装置(Z122)のカラムを通過する溶離液のベッド容量(bed volumes)に対する産出(溶出した62Cu/カラム上の62Zn)の関係を示している。
【図6】図6(a)は、2種の生成装置の溶離特性を示し、一方(Z122)は、66.1mCiの62Zn溶液1.5mlを充填したものであり、他方(Z123)は78.0mCiの62Zn溶液150μlを充填したものである。図6(b)は、生成装置の一種(Z123)において、48及び118のベッド体積の溶離液がカラムを通過するに設定した後における溶出特性を示している。
【図7】図7は、62Znの充填が異なる数種の生成装置においての62Znのブレイクスルーレベル(breakthrough levels)を示している。
【図8】図8は、銅(II)イオンのキレート化を示しており、これは側鎖基Rx(x=1,2,3又は4)の何であるに関わらず有効である。
【図9】図9は、チオール媒介によるCuII−PTSMの細胞内での分解と、それに関する通常細胞内における62Cuビス(チオセミカルバゾン)錯体を説明しており、CuII−PTSMの細胞内での分解は、これを静脈投与した後において62Cu放射性標識が「マイクロスフェア様」の細胞組織で長く保持されることと原因であると信じられている。
【図10】図10は、濃度が0.67μg/mLである凍結乾燥していないH2PTSM(●で示す)溶液と、3mLキュベットにCuCl2を0.5μg加えて作製したCu−PTSM(■で示す)溶液とについて、参照吸収度のスペクトルを示している。
【図11】図11は、アセテート賦形剤として用いられる、代表的な2種の凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを表している。
【図12】図12は、ブドウ糖賦形剤として用いられる、代表的な2種の凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを表している。
【図13】図13は、トレハロース賦形剤として用いられる、代表的な2種の凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを表している。
【図14】図14は、C18及びシリカゲル媒体上の62CuPTSMと、イオンの62Cu2+とに関して得られたTLCカウントの結果である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年9月提出の米国仮出願第60/501,156号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン断層法(PET)は、極めて高感度な撮像技術であり、その他の放射性核種撮像方式に比べて、数多くの実用上の利点を有している。これまで、その医療現場での利用の広まりは、最も一般的に使用される半減期の短いPET用放射性核種(15O、13N、11C、18F)の製造に必要となる専用(in-house)の生物医学用サイクロトロンの価格の高さや、運転コスト、そして、メンテナンス費用といった経済的理由から、限られたものにとどまっていた。PETの利点はよく知られていたものの、これらの高い費用を相殺できるほど十分なものではなかった。さらには、半減期の短い放射性核種を専用サイクロトロンを使用して迅速に作製することについて、FDAの規制は厳しいものであった。
【0003】
この10年間で、PETの放射性薬剤の作製及び配送において、重要な変化があった。18Fの可能性の発見がそれである。18Fは、小さなサイクロトロンで作製することができ、限定的な配送には十分な長さである110分の半減期をもっていたため、PET放射性薬剤の商用流通網がいくつか生じるに至った。これらの努力は、グルコース類似体(18F−FDG)に向けられたものであり、この類似体は、サイクロトロンを備えており、地方に配置された薬局を通じて流通される。これら薬局の各々が地方にある数多くの医療施設に提供できることから、北アメリカにおけるPETセンターの数は、2000年には230施設であったのが、2003年には603施設にまで膨れ上がった。同時に、大多数の施設がサイクロトロンを自前で持たず、商業的に製造及び流通する18F−FDGにもっぱら依存している。つまりは、PETは単一のトレーサーによる方式となってしまっており、その他のトレーサーを効率的に配送する方法に欠けている。
【0004】
研究所や病院における十分な数の研究は、各種の銅(II)ビス(チオセミカルバゾン)錯体(complexes)が、PET薬剤として利用できることを示唆している。有望な例として、銅(II)62Cuピルブアルデヒドビス(N4−メチルチオセミカルバゾン)、即ち62Cu−PTSMの改善が続けられており、これは、心筋、脳、腎臓及び腫瘍のパーフュージョン剤(perfusion agent)としての利用が実証されている。この薬剤は、9.7分という好ましい短さの半減期をもつため、患者に与える放射線量を減らすことができ、患者を撮像する一度の短いセッションの間に複数の試験を連続して行うことを可能とする。
【0005】
さらには、62Cuは、半減期が9.3時間である62Znを基礎とする生成装置で製造されるので、62Cu−PTSMは、地域又は国レベルのいずれの配送システムによっても、容易に病院に配送することができる。専用サイクロトロンによって製造する場合と異なり、規制機関は、生成装置を使用した配送を認めやすい。
【0006】
ビス(チオセミカルバゾン)群の薬剤では、その他に、62Cuエチルグリオキサール(ethylglyoxal)ビス(チオセミカルバゾン)、即ち62Cu−ETSが人体研究されている。62Cu−PTSMと構造上似ているが、62Cu−ETSは、大きな血流速度においてより線形吸収(linear uptake)するので、心筋かん流や肝臓血流の測定等の用途について、より優れたPET用パーフュージョントレーサーを提供することができるだろう。この数年間、もう一つのビス(チオセミカルバゾン)リガンドであるジアセチル−ビス(N4−メチルチオセミカルバゾン)、即ちH2ATSMについての研究が進められて、この化合物を銅を用いて標識したものが、低酸素状態用造影剤(hyproxia imaging agent)として非常に有望であることが明らかになった。それは、均一なパーフュージョン画像(homogeneous perfusion images)にて、腫瘍内で不均一に集積して、集積が低酸素状態の不均一性を反映していることを強力に示唆している。また、放射線標識されたH2ATSMは、実験的な冠動脈閉塞が引き起こした低酸素状態が反映された、「ホットスポット」のある心筋画像を描き出している。さらに、Cu−ATSMによる腫瘍の低酸素状態の画像は、病気の予後及び放射線治療の効果と関連があるという、数件の臨床結果が知られている。このように、62Cu−ATSMは、心臓や神経の病気の診断だけではなく、腫瘍の治療にも役立つPET画像を生み出す、非常に価値あるツールとなる可能性を持っている。9.7分という62Cuの短い半減期は、臨床での1度の短い撮像過程に、複数の放射線医薬を組み合わせることを可能にする。例えば、62Cu−ATSMによる検査のすぐそばで、62Cu−PTSによる腫瘍潅流と腫瘍低酸素状態の撮像を組み合わせて行うことで、非常に定量的で正確な腫瘍低酸素状態の評価を行える。最後に、62Cu放射線医薬品は、生成装置を用いずに製造される60Cu、61Cu及び64Cuに比べると、かなり経済的に配送できる。
【0007】
現在のところ圧倒的に、放射性画像(nuclear imaging)の最大の用途は、冠状動脈疾患の分析における心筋潅流の撮像にとどまっている。そのような撮像行為は、全ての放射性の検査の50%以上を数えるが、解像度が非常に低くて、減衰補正の効果は少ないような単一光子撮像(single photon imaging)と、ストレス下にある冠動脈における血流量の変化の追跡能に乏しい99mTcを基礎とするトレーサーとを用いて行われている。この分野におけるPETの完全な可能性を知るためには、パーフュージョントレーサーとして特に効果的な、18F−FDGではない別のトレーサーを配送する手段が必要がであることは明白である。
【0008】
米国特許第5,573,747号の記載にあるように、インライン合成法(method of in-line synthesis)によって作製されたビス(チオセミカルバゾン)族であって、62Cuで標識された薬剤を製造するようなモジュール式の62Zn/62Cu生成装置が開発されてきた。62Cuの9.7分という半減期は、放射線医薬の合成を容易にするのに十分な長さであると同時に、以前の投与による62Cuのバックグラウンドに干渉されることなく、適度に短い間隔で複数の撮像作業を連続して行うのには十分な短さである。また、このような検査は、適度な時間、およそ40分の間隔をおけば、18F−FDGなどの他の薬剤によるものでも構わない。撮像行為を連続して行えることは極めて有益である。というのも、これは心筋血流の評価に好ましい方法だからである。このような検査には、薬理学的又は実験ストレスの間、心筋における集積の位置的比較がそれによって安定していることが必要である。現在では、6時間という半減期を持つ99mTcトレーサーによって行われているそのような作業が、62Cuの短い半減期によって改善されることになる。
【0009】
生成装置で作製される62Cuは、2つの配送モデルのうちの1つを利用して、容易に医療施設に配送できる。親である62Zn(これは子である62Cu同位体へと崩壊する)の持つ9.3時間という半減期は、19MeVのサイクロトロンを用いて、18Fのラジオファーマシー(radiopharmacies)内又はその近くで製造することを可能とする。このような62Zn/62Cu生成装置は、すでに18Fのために整備されている地域配送網とまさに同じものを利用して配送できる。あるいは、親である62Znを、2、3の大きな集中施設において25MeVを超えるサイクロトロンを用いて製造し、生成装置に充填して、それを地域のラジオファーマシーに又は直接病院に搬送することも可能である。
【0010】
62Zn/62Cu生成装置を用いることには、規制の上でも数多くの利点がある。現在、ほぼ全てのFDA認可の放射線薬剤は、よく統制された状態にある中央商業施設で作製され、管理下にある地域の病院に配送される。生成システムを用いた配送は、一般的によく認められた行為であるとともに、99mTcの配送に主として用いられる手段でもあり、これは現行の核医学における大多数の実務上の要求に応えるものである。多数の病院内に設置されたサイクロトロンで放射線医薬が製造されるようなことは、現実の枠組みとして、FDAが承認していないし、承認するようなことはあり得ない。対照的に、米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置のような放射線核種生成システムは、FDAで承認されたGMP作製の代替となりうる。
【0011】
米国特許第5,573,747号に記載されたインライン合成式生成装置は、限られた臨床試験においては非常にうまく機能しているが、医療用途について大規模で商業的に実現することが難しいという欠点を持っている。あらゆる62Zn/62Cu生成装置がたった一日の利用にしか耐えないことを考慮すれば、システムを簡素化し、製品コストを下げることに対して、あらゆる可能な手段を尽くすことは不可欠である。また、米国特許第5,573,747号の生成装置に関して言えば、使用者によって繰り返し入れられることになる生成装置のセプタム(septum)に関して、FDAが強い懸念を表明している。つまり、「密閉され、あらかじめ消毒された空の瓶の中に直接回収される」製品が望ましく、生成装置を無菌状態に保つために求められる。米国特許第5,573,747号の生成装置のチューブセットは、製造コストがかかり、FDAは、再使用間の消毒性に関しても、留保を表明している。それによると、「製品は流体の複雑な流路を持ってる。この欠陥に対する対処として、計測試験を追加して、システムの完全性を示す必要がある。しかしながら、設計と、リサイクルの問題を考慮すると、十分な試験が可能であるか疑わしい。設計の改善が必要となるだろう」と述べている。さらには、米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置では、その内部のポンプを含めると、生成装置のハウジングの大きさは相当に膨れ上がって、輸送量の高騰を招いてしまう。さらには、750μlカラムに要する大きなシールドの運搬は非常に重く(35ポンド)、医療おいて1日の寿命しかない生成装置システムのコストの大きな部分を、輸送費が占めることとなる。こうしたわけで、62Zn/62Cu生成装置の重量と大きさを減らすためにあらゆる手段が講じられるべきである。もう一つの重大な制約は、33mLという注入量の大きさである。このような大きな容量が必要とされるわけは、溶離液溶液(eluant solution)の高い塩類含有量にあり、等張液を得るためには、注入用蒸留水(SWFI)で希釈しなければならない。この注入量の大きさゆえ、技術者の過度の被爆を避けるために、重くかさばるシールドが必要となり、また簡便な瓶合成技術を利用することができない。さらに、注入量が大きいと、過敏な患者に不都合をきたす恐れがあり、注射時間が長引いて、そのことにより、典型的なPET定量分析に必要な入力関数(input function)を確定するのが困難になる。米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置においては、生成装置内部でリガンドの付加が行われるため、装置を非常に複雑にすることなく製造できるのは、ただ一種の放射性薬剤でしかない。この制約は不幸なことであり、特に、数種の非常に有用な62Cu放射性薬剤の有効性と、2種又はそれを超える薬剤を用いた近接検査を応用することの魅力と照らし合わせるならばなおさらのことである。例えば腫瘍や心筋潅流は、62Cu−ATSMによる低酸素状態のスキャンによって即座に追跡することができる。そのようなパーフュージョンスキャンは、低酸素状態の有意義で定量的な評価を達成するためには不可欠である。
【0012】
複数のPET放射性薬剤の作製を容易で互換性のあるように行えるシステムや方法に対する需要がなおも存在することは明らかである。
【発明の開示】
【0013】
新しいシステムでは、単純化された溶離液のみの生成装置と、凍結乾燥(lyophilized)又はフリーズドライ(freeze dried)されたリガンドを用いる合成技術に基づいたキットとを利用することで、複数のPET放射性薬剤を容易で互換性のあるように作製できる。すなわち、単に凍結乾燥されたリガンドのバイアルキット(vial kit)を取り換えるだけで、同じ1つの62Zn/62Cu生成装置を用いながら、62Cuによって標識された放射性薬剤(62Cuリガンド)を、互換性のあるようにいくらでも合成できる。互換性のある放射性薬剤の作製について付け加えると、凍結乾燥されたキットの形態を用いることから、製造現場ではよく知られている通り、高い安定性と低コストという十分な利益を得られる。さらに、そのように作製された放射性薬剤では単位用量が大幅に減少するため、患者の快適さを向上させ、投与にかかる時間も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
高度に単純化及び小型化された生成装置が図1に示されている。これは、溶離及び滅菌されたパイロジェンフリー(pyrogen-free)な62Cu2+のみを生成する。生成装置のカラム(10)のサイズを小さくしたことによって、溶出する62Cuの量について必要とされる減少を容易にする。生成装置は、1つの溶離液容器(1)と、体積が25〜100μLである小さなカラム(10)とを備えており、密閉された容離液容器(1)内に適度に圧力をかけることによって溶出がなされる。加圧によって、充填と溶出のプロセスを効率化及び簡素化することができ、米国特許第5,573,747号の62Zn/62Cu生成装置が必要とした蠕動ポンプが不要になる。カラムの小型化は、50mCiの62Znの質量がわずか10ngであることから可能となり、これは、ちょうどAG1X8樹脂ビーズの1μLにおける吸着能の0.8%に相当する。この革新によって、カラム体積を15分の1に縮小し、最新のタングステン合金のシールド(9)を使用し、さらに蠕動ポンプを廃することで、カラム周囲に必要だったシールドの重さを劇的に減少させることを達成し、そのことによって、搬送コストを相当に減らすことになる。しかしながら、カラム体積の縮小で得られるもっとも重要な利益は、15という相応な因子で、放射性薬剤製品の注入量を減らせることにある。食塩1.8M NaCl、0.2M HCL溶離液溶液は、NaAc緩衝液と共に、等張にするために6倍に希釈しなければならないので、凍結乾燥リガンドキットによる合成には、流出体積(elution volumes)が小さいことが不可欠である。この流出体積を大幅に減少させた効果によって、小型の生成装置、つまり「マイクロジェネレーター」によって、現実的な大きさ(例えば<5mL)の受け取りバイアル(17)に、注入可能な等張PET放射性薬剤を作製できる。
【0015】
62Zn/62Cu小型生成装置は図1に示されており、4つの主要な部分を含んでいる。すなわち、樹脂製の小型カラム(10)、溶離液容器(1)、充填ポート(8)、および溶離ポート(14)である。システムの要部である構成部品は、体積が大幅に縮小されたホウケイ酸塩ガラスのカラムである。ある実施例では、このカラムは全長2.9cmで、内径2mm、外径6mmである。このカラムの上部及び下部は、一般的な8mmの厚さでバイアル状に閉じられている。厚さ3mm、細孔径30ミクロンのガラスフリットが、カラムの底から5mmに溶接されている。このカラムは、50μlのAG1X8、つまり200から400メッシュの陰イオン交換樹脂によって計量線まで満たされる。カラムへの入口及び出口には、19.5ゲージ(外径1mm、内径0.7mm)の耐食性金属チューブ(例えば、Inconel 625)の小片が用いられる。カラム内の空隙容量(void volume)を小さくするために、カラムの入口及び出口のチューブは、1.6mm×7mmのバイトンセプタムを通って突き出る。セプタムの0.5mmの孔はチューブの挿入を容易にし、チューブは、8mmのアルミクリンプシールを用いてクリンプシールされる。小型カラム(10)の詳細寸法は重要ではなく、SWFIと混合されて、約5mLの体積を上回らない等張の注入液を作り出す場合に、単位容量の62Cu溶離液を提供するように決定される。
【0016】
カラム上側にある「T字型」接続部により、可撓性チューブ(例えば、Pharmed tubing [Cole-Parmer])の短い部分で動作するピンチバルブ(5)(6)を操作して、溶離液容器(1)又は充填ポート(8)からカラム(10)へと至るような流れの接続を可能にする。オートクレーブ後の滅菌を確実にし、システムに入ってくる滅菌されていない流体による汚染を避けるために、0.22μmの親水性(PVDF)滅菌フィルター(4a)が、充填ライン上に設置されている。充填ラインの末端には、HPLC接続部(7)があり、生成装置を容易に且つ滅菌状態のまま、図2に示された充填装置に取り付け、取り外すことを可能とする。図1のピンチバルブ(11)は、ソレノイド式又は手動式のアクチュエータ(12)によって調整され、カラム(10)の下に配置される。ピンチバルブ(11)を開閉することによって、流出プロセスが制御される。カラム(10)の下にバルブを配置することで、カラムの樹脂ベッド(resin bed)内の圧力を一定に保ち、それによって、溶解していた気体による気泡の発生を防ぐ。ピンチバルブの下には、針固定用支持部材(13)があり、キットのバイアル(17)のセプタムを貫いて針(14)が挿入されている間、針(14)を確実に固定する。図1に示されているように、着脱自在な上部を有するバイアル用シールド(15)が設けられ、バイアル用シールド(15)内にあるバイアル用キャビティの上には入口ポート(16)が設けられている。昇降調節機構(18)が、バイアル用シールド(15)内にある凍結乾燥されたリガンドのバイアル(17)を動かして、生成装置の溶出用針(14)が入ると、流出用針(14)は、入口ポートによってバイアル(17)のセプタムに至る。
【0017】
溶離液容器は、50mlのセラムバイアル(serum vial)であってよく、20mmのグレーのブチルセプタムと、アルミのクリンプシールとを備えている。カラムを通る流量はこの容器のヘットスペースで維持される圧力で制御される。そのボトルは、圧力ソース(3)によって加圧され、0.22μmの疎水性(PTFE)滅菌フィルター(4b)を通り、図1に示されるピンチバルブ(2)によって密閉される。
【0018】
充填装置は図2に示されており、圧空駆動式搬送システム用に設計されている。3mlの円すい形のテフロン(登録商標)製バイアル(25)が、充填用容器(loading vessel)として使用される。この容器を充填用容器としての使用に適するようにするために、底に若干小さめした孔が空けられ、容器は100℃に加熱される。加熱後、内径0.5mm、外径1.6mmのチューブ(例えば、テフロン)が開口に素早く挿入される。冷却された後、熱圧着によってラインは確実に固定される。このラインは、充填剤容器(25)から2cm下側に配置されているガイガープローブ(28)(これは(27)によってシールドされている)を横切る。これにより、管内にある放射性溶液の存在又は不存在が瞬時に判別されて表示される。
【0019】
充填剤容器の蓋のセプタムには2つの穿孔が空けられ、内径0.5mmのチューブ(例えばテフロン)が挿入可能になっている。一方は充填剤容器の加圧に用いられ、他方は、精製された62Znを充填剤容器に充填するために用いられる。ピンチクランプ(23)は、容器(215)へと導かれる圧空管路上に配置され、これによって、洗浄容器(26)と充填剤容器(25)の圧力差が可能となって、相互接続された流路が満たされる。圧力源(21)から加えられる圧力は、デジタル式圧力変換器(22)(例えば、オメガPX170)によって正確に計測される。圧力源と洗浄容器及び充填剤容器の間の接続は、内径0.5mmのテフロンチューブを用いて行われる。タイゴンチューブ(内径1.5mm)は、圧力変換器と充填圧力システムを接続する。
【0020】
洗浄容器(26)のセプタムには、充填剤容器(25)と同様に2つの穿孔があって、それらには内径0.5mmのチューブが挿入される。一方のラインは洗浄容器を加圧するもので、他方のラインは2M HClを充填ラインへと提供する。洗浄容器から流れ出るラインは、3方向HPLCセレクタバルブ(29)へとつながる。このバルブにより、洗浄容器から充填剤容器に至る流れで流体ラインを満たし、充填剤容器から生成装置の充填ポート(8)(図1)に至る流れで生成装置に充填し、洗浄容器から生成装置の充填ポート(8)に至る流れにで流体ラインを満たして生成装置に充填できる。充填装置の充填ラインの末端には、素早くHPLCクイックコネクト(30)があり、生成装置の充填ポート(8)への接続を提供している。
【0021】
充填された放射能(例えば、62Zn)は、図2の円錐状の充填剤容器(25)へと送り込まれ、充填システムで前処理される。前処理には、洗浄容器から送られる2MのHClで全てのラインを満たす工程が含まれる。充填工程は、以下の通りである。ピンチクランプ(23)は、大気圧下で閉じられて、3方向HPLCバルブ(29)に端を発して充填剤容器(25)で終わるラインを、洗浄容器(26)から送られる2MのHClで満たすのを助ける。その後、3方向バルブが回転されて、洗浄容器から充填ラインへに至る流路が選択されて、そのラインに液体が同様に満たされる。充填装置の出力部(30)は、連続した液体の流れに気泡が入らないように、生成装置の充填ポート(8)に接続される。溶離液容器(1)から「T字型」接続部への間に位置するピンチクランプ(5)は、62Znが溶離液容器に流入しないように閉じられており、そして、2M HClが、洗浄容器(26)(図2)から生成装置のカラム(10)へと運ばれ、望ましい導入流量が達成される。3方向バルブが切り替えられて、62Zn溶液が、充填剤容器(25)から生成装置のカラム(10)へと導入される。充填作業の間、ガイガープローブ(28)の測定値が結果的に急激に下がることで、3方向バルブが充填容器から洗浄容器へと切り替わったことが信号で伝えられる。そして、生成装置のカラム(10)は256μlの溶離液で洗われる。その後、充填容器が切り離され、生成装置のカラム(10)が使用可能になる。
【0022】
あらゆるビス(チオセミカルバゾン)誘導体(derivatives)は、同じ方法で、容易且つ積極的にCuをキレートする。図8は、銅(II)イオンのキレート化を描いており、これは、側鎖基Rx(x=1,2,3又は4)が何であるかに拘わらず成立する。それは、Cu+2イオンが、Rxの構成にはほとんど影響されないように、化合物内で窒素及び硫黄原子の混成軌道と相互作用するからである。リガンド内のπ共役系はこの反応内で保たれて、置換基は、この共役系の範囲外であって、キレート化のメカニズムには加わらない。銅イオンが硫黄原子に結合する場合、電子の再配置が起きて、その結果、2つの窒素−炭素二重結合が形成されて、2つのH+原子が失われる。リガンド錯体においては、銅原子は、銅2+の状態では一般的な四角構造(square configuration)で結合する。表1は、ビス(チオセミカルバゾン)錯体の一部リストであり、これは文献として既に報告されているものである。以下にビス(チオセミカルバゾン)錯体の構造を示す。
【0023】
【化3】
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
これらの化合物は、キレート化反応が非常に似ているが、側鎖基Rxが異なるために、生体内において化学的及び物理的に非常に異なった特質を示す。例えば、H2ATSMとH2PTSMは側鎖基R2が異なるのみだが、水/オクタノール分配係数は0.34も異なる(表2参照)。また、異なった側鎖基で置換することで、さまざまな血中の化合物への銅化合物の結合をかなり変化させることが可能となる。このような効果は、高度に種依存的であることが知られている。特に、Cu−PTSMは、人間を除く大多数の動物種において血液との結合力が低いが、人間にあっては極めて高い結合を示し、高い流速において非線形な集積を引き起こす。一方、異形(variant)Cu−ETSは血漿との可逆的結合性が低いために、心臓や腎臓等の血流速度が速い臓器の撮影用途において、Cu−PTSMよりも効果的な血流トレーサーとなる。
【0027】
図9は、チオール媒介によるCuII−PTSMの細胞内での分解と、それに関する通常細胞内における62Cuビス(チオセミカルバゾン)錯体を説明しており、CuII−PTSMの細胞内での分解は、これを静脈投与した後において62Cu放射性標識が「マイクロスフェア様」の細胞組織で長く保持されることと原因であると信じられている。非荷電で脂肪親和性の銅(II)ビス(チオセミカルバゾン)錯体は、細胞壁を容易に抜けて拡散するので、細胞内に遍在するグルタチオンなどのチオールと直ちに反応して還元分解する。チオールの硫黄からCu(II)ビス(チオセミカルバゾン)錯体への電子移動は、ビス(チオセミカルバゾン)リガンドからCu(I)を分離させて、細胞内の高分子と結合(及び効果的に捕捉)させる。別のCuIIビス(チオセミカルバゾン)錯体は明確な還元能を有しており、それが細胞内での捕捉に大きな効果を発揮する。CuATSMは、例えば、100mVにおけるCuPTSM又はCuETSよりも低い酸化還元能をもつ。その結果として、通常酸素状態の(normoxic)細胞組織内では還元されず、したがってすぐさま洗い流される。しかしながら、低酸素状態の細胞組織内においては、CuATSMのCu(II)は、電子キャリア(酸素)が欠けるために、直ち及び不可逆的にCu(I)に還元されて保持される。
【0028】
放射性標識されたCuビス(チオセミカルバゾン)化合物を合成する新しい方法は、凍結乾燥状態のリガンドを使用することを中核としている。凍結乾燥又はフリーズドライは、凍結して真空状態においた後に製品から水分が除去されるプロセスであって、液相を経ることなく、氷を固体から気体へと直接に昇華させることを可能とする。このプロセスは、溶質の結晶化を効果的に防げるので、通常のように固体状態のまま行う場合と比較して、溶質が遥かに容易に溶ける。無菌凍結乾燥の後、乾燥した結果のケーキは無菌状態を保っており、製薬業界でよく知られているような水溶液に保持される場合よりも、長期間の保存に耐える。問題のリガンドを含む溶液は、賦形剤とともに凍結乾燥されて、2〜5mlのバイアルに保存される。バイアルの中身は、注入用滅菌水(SWFI)を、又は酢酸ナトリウムなどの緩衝剤を含んだSWFIを加えるだけで、ほぼ瞬時に溶解する(戻される)。62Zn/62Cu生成装置又はその他のソースから提供される滅菌された放射性Cu2+溶液を、その後バイアルに加えて、放射性標識されたCu−リガンド錯体が即座に作製される。このような即時の合成法は、実際の医療現場において、62Cu(t1/2=9.7分)などの半減期の短い薬剤を利用するためには不可欠である。62Cuを62Zn/62Cu生成装置から得る場合、溶液は、1.8M NaCl、0.2M HClからなるのが好ましく、バイアルの中身は、2モルを超える酢酸ナトリウム又はその他の中和剤と多量のSWFIを含んでおり、SWFIは、62Cuを含む溶液と共に用いられて、最終的な注入液の浸透圧を血液に近い値(7.7atm)にし、pHを最も好ましくは5.5〜7.0の範囲内にする。
【0029】
凍結乾燥を基礎としたキット合成法を用いて、ビス(チオセミカルバゾン)リガンドの相溶性(compatibility)を評価する試験が、H2PTSMをモデル化合物として用いて行われた。これらの試験では、第1にリガンドの凍結乾燥と即時の再構成の実現可能性が評価された。ビス(チオセミカルバゾン)化合物のあらゆるものは水に非常に溶けにくい。その結果、凍結乾燥に要する主たる水溶液を用意するために、結晶状態のH2PTSMが、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に最大濃度で溶かされた(200mg/mL H2PTSM)。リガンドの溶解性はDMSOにて高いことから、極めて少量のこの溶液が水に加えられて、リガンドの濃度が2μg/mLであるような、ほとんどDMSOを含まない水溶液が作製された。リガンドの沈殿の可能性を低減するために、DMSO溶液は、素早くかき混ぜながら湯(90℃)に加えられた。この溶液は、その後室温にまで冷却されて、分光光度計を用いて有効性が測定された。水溶液に含まれる極めて少量のDMSOは、凍結乾燥の過程で水分とともに昇華することが望ましい。凍結乾燥の後の有効性を最大化するために、賦形剤(ブドウ糖[6.7mg/mL]、トレハロース[6.7mg/mL]又は酢酸ナトリウム[5.4mg/mL]のいずれか)が加えられた。賦形剤を加える目的は、凍結乾燥の間、ケーキの中に分散した状態を保つことで、リガンドの結晶化を防ぐことにあった。酢酸ナトリウムにはさらなる役割があって、62Zn/62Cu生成装置の流出液0.1〜0.15mLを加えることで、最終製品が適切なpHになるように緩衝する。結晶化した状態を水溶液に戻すのは極めて困難なので、リガンドの結晶化は何をもってしても避けなければならない。賦形剤を加えた2μg/mlのリガンドを含む溶液は、2mLのバイアルにつき1mlずつに分けられ、凍結乾燥された。バイアルの凍結乾燥は、まず試料を−70℃まで2時間冷却し、その後、(凍結乾燥器内の)バイアルを2時間−20℃に保つことで行われた。最後に、冷凍が終了し、18時間の真空(25〜50mTorr)サイクルが開始された。真空サイクルの最後に、バイアルは窒素ガス下でクリンプシールされた。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
生成装置のカラムを通る溶離液供給における加圧方法を評価するために、溶離液容器内の圧力に変化を加え、単位時間あたりに流出した体積を計測することによって、流量が決定された。望ましい流出流量は、3.6ml/分で流出する750μLのカラムの生成装置からスケーリングすることで推定される。各デザインにおける樹脂ベッド体積の比に従って流量をスケーリングすることで、新たなシステムについて、240μl/分の流量が示された。溶離液容器は、最初に5mlの溶離液を溜めている。医療現場で予想される最大のカラムの使用である、流出体積当たり約0.12mlで20回流出する場合を考えると、溶離液の体積にして2.4mlの減少であり、これは流出圧力においてわずか5%の違いを生じるのみであり、毎日の臨床使用での最大貯蔵期限である1日間にわたって使用したとしても、臨床使用において無視できる流量の差違である。
【0031】
圧力を加える流出方法によって、目標流出量である240μl/分が達成された。実験では、溶離液容器に5〜15psigの範囲に亘って圧力が加えられた。流出したサンプルの重量が量られて、特定の圧力下における流量が決定された。カラムの性能に与える流量変化の効果を調べるために、それぞれ5又は10秒区切りで、30秒、60又は120秒間における種々の圧力下の流出特性が集められた。全ての流出及びフラクション(fraction)は、Capintec製CRC−15Rによって即座に計測され、流出開始時点に対して減衰補正を行った。これら流出及びフラクションは同時に、単位時間当たりに流出した体積で測定された。
【0032】
簡素化された小型生成装置及びバイアル合成法に関する予備実験が行われた。これら試験の主目的は、製品の実現可能性を示し、物理的な大きさ及び体積を劇的に小さくした生成器カラムの十分な性能を示すことにあった。第2に、ポンプに代えて、受動圧を使った簡単なカラム流出方法の実現可能性が検討された。
【0033】
全部で4つのカラムが充填及び評価された。4つのカラムの全ては、10μml/分の流量で充填された。様々な充填体積が評価されて、ブレークスルー(breakthrough)と生成性能(yield performance)が求められた。体積は、0.15mlから1.5mlの範囲にされた。充填される放射能を順次増大して試験を行ない、潜在的な放射線障害がカラムの性能に与えるあらゆる効果が評価された。放射能の範囲は2.9mCiから78mCiであった。
【0034】
選択された流出サンプルのブレークスルーは、NaIウェルカウンタ(サール モデル 1197)にて62Cuが完全に崩壊した後にカウントされた(流出後4時間)。精製した62Znがシステムの較正に使用された。ブレークスルーは、生成装置のコラムの62Znで溶離液溶液の62Znを割った比として報告される。それらは、同じ時点にて崩壊する。
【0035】
プロトタイプの4つの小型生成装置が作製された。各々は、50mLのガラス製溶離液容器を採用しており、容器は、50μLの樹脂で満たされたカラムにチューブを用いて直接に接続されて、出力チューブのラインに結合された。流出は、較正された手動ピンチクランプの開閉によって調節された。クランプは、チューブにかかる超過圧力が掛かるのを避けるように設計及び調整された。溶離液容器を加圧するために、容器のヘッドスペースから延びるチューブラインに圧力源が接続された(図1の(3)を参照)。圧力駆動される流れの実現可能性を示し、圧力と流量間の関係を確立するために、0〜15psigの容器圧力について、流出サンプルが集められて質量が計測された。さらに、流量の再現性を確立する実験が慎重に行われた。62Zn溶液は、10μL/分の充填量で、それぞれのカラムに充填された。非常に小さな樹脂ベッドへの潜在的な放射線障害の影響を検証するために、2.9.Ciから78mCiの範囲の放射能が調査された。0.15mL〜1.5mLの範囲について、62Cuの産出(yield)と62Znのブレークスルーに充填体積が与える影響についても調査された。各生成装置について、持続時間が30秒と60秒である流出サンプルが、2日間にわたって繰り返し回収された。また、流出サンプルが、連続して5〜10秒おきに回収された。試料の放射能レベルは線量較正器(Capintec製CRC−15)で分析されて、流出特性と産出量の推定値を得るために減衰補正された。62Cuの崩壊後(流出後4時間以上)、サンプルはNaI内でカウントされて、ブレークスルーが測定された。
【0036】
流量試験において、望ましい流量である50〜200μL/30秒を達成するためには、1〜2psigの圧力が適当であるとの結果が示された。しかしながら、このような低い圧力では、気温や溶離液の量の変化によって、流量に重大な影響が生じた。これらの因子の影響を小さくするために、容器の圧力をおおよそ10倍に増し、圧力−流量試験を5〜15psigの圧力で再度行った。付随して、溶離液容器とカラムの間にある内径が小さいチューブを長くすることで、これらの高圧下において、所望の流量が維持された。図3にみるように、流量と容器の圧力は、きわめて密接な直線関係を示す。したがって、最適な流量は、一度確立されてしまえば、容器圧力に対応するように選択することで容易に達成できる。試験結果はまた、圧力駆動の流れは高度な再現可能性を有することを示しており、それは図4の細いピークで示されている。10psigでは、30秒の流出は、中間値106.2μLを示し、標準偏差は1%より小さかった。
【0037】
図3に示された方程式と理想気体の法則を用いて、溶離液の体積と温度の変化が、30秒の流出で供給される量に与える影響を見積ることができる。容器の初期圧力を10psigと仮定すると、流量は〜106μL/30秒になり、初期温度は華氏77度であり、温度が華氏10度下がっても、供給量は4.0μLのみ減少する。溶離液の体積が2.12mL減少すると、これは20回の106μLの流出に相当するのだが、供給量にしておよそ9.7μL減少する。溶離液の体積と周辺温度のこうした変化は、臨床使用における極端なコンディションを正しく表している。不慮の事態が共に起こったとしても、供給量には僅かな変化(13%未満)のみが起こり、それは医療用途においては妥当なものであろう。
【0038】
プロトタイプの小型生成装置は、予備実験において極めてよい成績を残した。表3は、4つの小型生成装置と、医療現場で現行の一般的な生成装置とについて、産出とブレークスルーを示したデータである。プロトタイプの全ての生成装置において、最初の30秒の流出における平均産出値(流出した62Cu/カラムの62Zu)は現行の生成装置の産出と同等又はおおよそ50%上回っている。これらの結果は、小型化されたカラムを用いても、適切な生成量を達成できるという仮説をはっきりと支持している。さらには、図5に示すように、2日の試験期間を通じて繰り返し流出を行うという条件下においても、高い生成量は維持された。
【0039】
予備試験によって、生成装置の性能に影響を与える複数の因子が明らかになった。第1に、時間と共に、樹脂カラムを押し流される溶離液が増えるごとに、産出は増大する(図5参照)。第2に、充填体積が減ると最初は産出も減少する。例えば、生成装置Z123はZ122の10分の1の体積で充填されたが(150μl対1.5ml)、すると産出はざっと平均して10%減少した(表1参照)。おそらくは、充填体積が少ない条件下では、62Znの放射能がカラム頂部の近くでナローバンドに樹脂に捕捉される。結果として、62Cuがカラム出口に到達する前に、より大きな量を樹脂に流さなければならない。流出特性は(図6参照)、この仮説を支持している。これらの特性では、流出体積に対して放射能濃度がプロットされている。図6(a)に見るように、Z123は、Z122に比べてより遅れて放射線のピークを示す。その結果、充填体積が少ない生成装置では、30秒の流出において、より多くのピーク及びテールが切り捨てられることになって、産出が少なくなる。図5が示唆するように、適切な溶離液が樹脂ベッドを通過した後には、この産出は上昇するであろう。図6(b)は、Z123において、48及び118のベッド体積の溶離液がカラムを透過した後の流出特性を示している。本図に示されているように、後の特性の方が、早く且つ鋭いピークを示している。
【0040】
【表3】
【0041】
表3に示す結果は、親である放射性同位体の62Znのブレークスルーは、米国特許第5,573,747号のモジュラー生成装置では、かなり低いレベルに保たれていることを示している。充填溶液量がより大きくなるように製造された小型生成装置(Z121−122など)は、現行の医療用生成装置と同程度のブレークスルーを示した。しかし、生成装置Z123には、より少量でより濃度が高い62Zn溶液が充填され、初期ブレークスルーレベルにおいて劇的な減少を実現している。小さな充填体積が、低いブレークスルーレベルを保つために有効であることを示している(図7参照)。充填体積が最も少ないZ123では、〜40のベッド体積(〜20回の流出)を溶離液が通過した後もブレークスルーは2倍の増大に留まっており、Z121及びZ122では約10倍に増大するのに比べて対照的である。
【0042】
まとめると、先行試験の結果は、劇的に小型化したカラムは、産出とブレークスルーのような重要なパラメータに関しては、現行の生成装置と同様に作動でき、それらの能力は、期待される臨床利用の過程を通じて維持される。試験結果はまた、スケールを小さくしたカラムでも優れた性能を示し得ることを示唆している。先行試験結果がさらに示唆することには、圧力駆動の流出は高度に再現可能であり、供給量の変化は受認限度内に収まっている。総合すれば、これらの発見は、ここに提示される小型生成装置の設計の実現可能性を強力に指示している。
【0043】
[実施例2]
無作為に選択された凍結乾燥バイアルについて実験が行われて、凍結乾燥前のリガンドと、戻した後のリガンドの濃度を比較した。ビス(チオセミカルバゾン)リガンドの濃度の計測に関する信頼でき感度の高い技術は、UV/VISスペクトロスコピー分析を用いて実現された。この技術は、リガンドが積極的に銅イオンキレート化することと、結果として産出する銅化合物が、はっきりと視認できる吸光度のピークを持つことに基づいている。各バイアルの中身は、1.0mLの脱イオン化された水で戻されて、水晶分光光度計のキュベットで3.0mLに希釈され、結果として、溶液に100%戻った状態で0.67μg/mLの濃度となった。過度のCuCl2(1μg)が加えられて、Cu−PTSMの定量的な形成が可能となる。このプロセスは素早く達成されて(2〜3分)、UV/VISスペクトルが30秒以内に測定された。このようにして、瞬時の再構成の実現可能性が評価された。スペクトルは、3種の賦形剤溶液(ブドウ糖、トレハロース、酢酸ナトリウム)内のCu−PTSMと、賦形剤を含まないCu−PTSM参照溶液から得られた。
【0044】
第2の試験では、小型生成装置で製造された62Cu2+を有した再構成凍結乾燥リガンドによる体内の放射性標識の実現可能性が評価されて、放射化学的純度が高い62CuPTSMが製造された。Cu−PTSMの組成及び純度は、薄膜クロマトグラフィー(TLC)を用いて計測された。凍結乾燥H2PTSM(2μg)とトレハロース賦形剤は、0.4M酢酸ナトリウム(緩衝剤)105μLと脱イオン化水1.5mLを用いて凍結乾燥バイアル内で戻されて、生成装置の溶離液(1.8M NaClと0.2M HCl)105μlに加えて、等張にするために必要な2倍のモル濃度の緩衝剤及び希釈水が供給された。バイアルは30秒間攪拌されて、その後10分間静置された。バイアルのゴムストッパーは外され、小型カラムから流出した105μLをそのままバイアルに供給した。溶液の混合物は、数秒間丁寧にかき混ぜられて、30秒間室温で放置された。その後直ちに、複製された0.5μLアリコートが、C18及びシリカゲルのTLCプレート上の1.0cmのマーク位置に落とされた。ガラスプレートはディベロップメントタンク(development tank)の中に置かれ、100%エタノールの移動相において30分間処理された。さらに、参照62Cu2+イオンプレートが別個に処理された。この試験において、脂溶性の62CuPTSM化合物が溶体と共にに移動するにも拘わらず、あらゆるCu2+イオンは原点にとどまった。ストロー検知器をベースとしたスキャナが用いられて、各プレートの各トラックの放射線文分布が計測された。各トラックで少なくとも10,000カウントが検出された。
【0045】
上記の技術を用いて、リガンドと賦形剤のケーキを含む凍結乾燥したバイアルが製造された。製造は、3つの試験賦形剤全てを用いて成功裏に遂行された。さらに、瞬時の再構成の実現可能性に関する試験は、すばらしい結果を残した。吸光度スペクトルを、図10〜13に示す。図10は、濃度0.67μg/mLの非凍結乾燥H2PTSM溶液の吸光度スペクトルと(●で示す)、0.5μgのCuCl2を3mlキュベットに加えて作製されたCu−PTSM溶液の吸光度スペクトル(■で示す)とを示している。図から読み取れるであるように、銅イオンを投与すると、H2PTSMの吸光度のピーク(320nm)は消失し、代わりに特徴的なCu−PTSM(462nmおよび308nm)に置き変わり、H2PTSMからCu−PTSMへの完全な置換がなされたことが示されている。H2PTSMが凍結乾燥バイアルから戻ることの効果は、このCu−PTSMスペクトルを比較参照することで確かめられるであろう。図11、図12及び図13は、アセテート、ブドウ糖およびトレハロースのそれぞれの賦形剤について、2つの代表的な凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを夫々示している。比較のために、各パネルは、図10にみられる凍結乾燥されていないCu−PTSMの参照スペクトルを含んでいる。これらに示されているように、賦形剤3種の全てについて、凍結乾燥リガンドから得られるスペクトルは、参照スペクトルとほとんど同じに見える。これらの結果は、凍結乾燥リガンド完全かつ迅速に戻せることを示している。
【0046】
図14は、C18上の62CuPTSMと、シリカゲル媒体上の62CuPTSMと、62Cu2+イオンのTLCカウント特性である。予期されるように、62CuPTSMの特性について(図14(a)及び(b)参照)、移動する単一の放射性の種が観測されており、それぞれのトラックにある単一のピークによってそのことは示されている。Rf値は、2本のトラックに亘って平均すると、C18とシリカゲルについて、夫々0.49と0.72になった。これらの値は、他の方法を用いて作製された62CuPTSMについて常に得られるRf値と一致する。反対に、図14(c)に示すように、銅イオンは両方の媒体において原点に残り、62Cu2+イオンのRf値は、C18とシリカゲルとについて、夫々0.23と0.19になった。62CuPTSMのデータ(図14(a)及び(b))に参照ピークが見られないことは、リガンドと結合した後に銅イオンが全く残っていないことを示している。62CuPTSMの放射化学的純度の平均は、TLCデータ(n=4)に基づくと、96%であった。
【0047】
62Zn/62Cu小型生成装置及び凍結乾燥リガンドキットは、広範な放射性薬剤を合成するために、半減期の短いPET用同位体の供給源として、臨床でのPET撮影の進歩に重大な役割を果たす。小型生成装置は、キット合成技術を伴って、現行の規制と、放射性薬剤の配送の商業上の枠組みとにシームレスに適合できる。1つのセンターは、さらされたターゲットを処理し、必要な放射化学的処理をして62Znを純化し、多数の生成装置を充填できる。交換可能なキットが同じ生成装置に採用されているため、合成技術は柔軟に軟に利用でき、経済的である。62Zn/62Cu小型生成装置及び凍結乾燥リガンドキットは、腫瘍学、心臓学、神経学における臨床でのPET撮影の進歩に主要な役割を果たす。最後に、生成装置の小型化によって、医療現場において便利な薬剤の投与量を可能にし、搬送及び標識化を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、高度に単純化及び小型化された生成装置を示しており、この生成装置は、溶出菌されてパイロジェンフリー(pyrogen-free)な62Cu2+のみを製造する。
【図2】図2は、充填装置を描いており、図1の生成装置に62Znを充填するために用いられる。
【図3】図3は、図1の生成装置から流出する溶離液の流量と、図1の生成装置の溶離液容器のヘッドスペースにかかる圧力との関係を示している。
【図4】図4は、図1の生成装置の流量の再現性(reproducibility)を描いている。
【図5】図5は、図1の生成装置(Z122)のカラムを通過する溶離液のベッド容量(bed volumes)に対する産出(溶出した62Cu/カラム上の62Zn)の関係を示している。
【図6】図6(a)は、2種の生成装置の溶離特性を示し、一方(Z122)は、66.1mCiの62Zn溶液1.5mlを充填したものであり、他方(Z123)は78.0mCiの62Zn溶液150μlを充填したものである。図6(b)は、生成装置の一種(Z123)において、48及び118のベッド体積の溶離液がカラムを通過するに設定した後における溶出特性を示している。
【図7】図7は、62Znの充填が異なる数種の生成装置においての62Znのブレイクスルーレベル(breakthrough levels)を示している。
【図8】図8は、銅(II)イオンのキレート化を示しており、これは側鎖基Rx(x=1,2,3又は4)の何であるに関わらず有効である。
【図9】図9は、チオール媒介によるCuII−PTSMの細胞内での分解と、それに関する通常細胞内における62Cuビス(チオセミカルバゾン)錯体を説明しており、CuII−PTSMの細胞内での分解は、これを静脈投与した後において62Cu放射性標識が「マイクロスフェア様」の細胞組織で長く保持されることと原因であると信じられている。
【図10】図10は、濃度が0.67μg/mLである凍結乾燥していないH2PTSM(●で示す)溶液と、3mLキュベットにCuCl2を0.5μg加えて作製したCu−PTSM(■で示す)溶液とについて、参照吸収度のスペクトルを示している。
【図11】図11は、アセテート賦形剤として用いられる、代表的な2種の凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを表している。
【図12】図12は、ブドウ糖賦形剤として用いられる、代表的な2種の凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを表している。
【図13】図13は、トレハロース賦形剤として用いられる、代表的な2種の凍結乾燥バイアルから得られるスペクトルを表している。
【図14】図14は、C18及びシリカゲル媒体上の62CuPTSMと、イオンの62Cu2+とに関して得られたTLCカウントの結果である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
62Cu放射性薬剤の作製に用いられる製造機器において、
溶離液の流出を調節する手段が取り付けられた溶離液を入れる溶離液容器と、
体積が25〜100μlと小さく、親放射性同位体である62Znと不可逆的に結合し、62Cuを選択的に溶液に放出する能力を有したビーズ又は粒子状の媒体を含むカラムとを具えており、
カラムは、カラムに入る62Znの溶液を選択的に受け入れる手段と、溶離液容器から出てカラムに入って通過し、調剤用排出点に至る溶離液の流れを制御する手段とを有している製造装置。
【請求項2】
調剤用排出点は針の先端である、請求項1の製造装置。
【請求項3】
放射性薬剤の作製に用いられる製造機器において、
加圧可能な溶離液容器であって、溶離液容器の加圧を制御する手段と、溶離液容器からの溶離液の放出を制御する手段とを有する溶離液容器と、
樹脂ビーズを備えたカラムとを具えており、
カラムは、カラムに入る放射性同位体の溶液の流れを選択的に受け入れる手段と、溶離液容器から出てカラムに入って通過し、調剤用排出点に至る溶離液の流れを制御する手段とを有している製造装置。
【請求項4】
調剤用排出点は針の先端である、請求項3の製造装置。
【請求項5】
放射性同位体が62Znである、請求項3の製造装置。
【請求項6】
放射性薬剤の各生成品について、カラムは0.1mlから0.3mLの溶離液で溶離される、請求項4に記載の製造装置。
【請求項7】
放射性薬剤を作製するキットにおいて、
下の化学式を持つ、凍結乾燥又はフリーズドライされたビス(チオセミカルバゾン)化合物を含み、セプタムで閉じられたバイタルを備えており、
【化1】
上記において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又はヒドロカルビル基であり、 R3は水素、ヒドロカルビル又はアリール基であり、R4は水素又はヒドロカルビル基であり、これら何れかのヒドロカルビル又はアリール基は、炭素原子の代わりにO、N、S、P及びSiからなる群から選ばれたヘテロ原子を、又は、水素原子の代わりにハロゲン原子を含んでおり、適切な賦形剤(膨張性薬剤)を備えており、バイアルの中身を戻すために用いられる注射用蒸留水と共に、請求項1又は3に記載の樹脂を含むカラムから流出した溶離液と混合されると(例えば溶液に入れられると)、pHを5.5〜7.5の範囲に調節することに加えて生理的等張にするように調節する化合物を備えているキット。
【請求項8】
セプタムで閉じられたバイアルは、0.2μg〜4μgのビス(チオセミカルバゾン)化合物を含む、請求項7のキット。
【請求項9】
放射性薬剤を製造する方法において、
溶離液容器から溶離液を放出し、結合した放射性同位体の樹脂ビーズを含むカラムを通して、調剤用排出点へと流す工程と、
針の先端である調剤用排出点から、水で戻される凍結乾燥又はフリーズドライのビス(チオセミカルバゾン)化合物を包含するセプタムで閉じられたバイアルへと溶離液を導いて、注入用溶液を作製する工程とを含んでおり、化合物の化学式は以下の通りであって、
【化2】
ここにおいて、R1及びR2はそれぞれ独立に水素又はヒドロカルビル基であって、R3は水素、ヒドロカルビル又はアリール基であって、R4は水素又はヒドロカルビル基であって、これら何れかのヒドロカルビル又はアリール基は、炭素原子の代わりにO、N、S、P及びSiからなる群から選ばれたヘテロ原子を、又は、水素原子の代わりにハロゲン原子を含んでいる方法。
【請求項10】
調剤用排出点は針の先端である、請求項9の方法。
【請求項11】
結合した放射性同位体が62Znである、請求項9の方法。
【請求項12】
溶離液が調剤用排出点へと62Cuを運ぶ、請求項9の方法。
【請求項13】
放射性薬剤の各生成品について、0.1乃至0.3mLの溶離液が、100〜500μL/分の流量でカラムを通って放出される、請求項9の方法。
【請求項1】
62Cu放射性薬剤の作製に用いられる製造機器において、
溶離液の流出を調節する手段が取り付けられた溶離液を入れる溶離液容器と、
体積が25〜100μlと小さく、親放射性同位体である62Znと不可逆的に結合し、62Cuを選択的に溶液に放出する能力を有したビーズ又は粒子状の媒体を含むカラムとを具えており、
カラムは、カラムに入る62Znの溶液を選択的に受け入れる手段と、溶離液容器から出てカラムに入って通過し、調剤用排出点に至る溶離液の流れを制御する手段とを有している製造装置。
【請求項2】
調剤用排出点は針の先端である、請求項1の製造装置。
【請求項3】
放射性薬剤の作製に用いられる製造機器において、
加圧可能な溶離液容器であって、溶離液容器の加圧を制御する手段と、溶離液容器からの溶離液の放出を制御する手段とを有する溶離液容器と、
樹脂ビーズを備えたカラムとを具えており、
カラムは、カラムに入る放射性同位体の溶液の流れを選択的に受け入れる手段と、溶離液容器から出てカラムに入って通過し、調剤用排出点に至る溶離液の流れを制御する手段とを有している製造装置。
【請求項4】
調剤用排出点は針の先端である、請求項3の製造装置。
【請求項5】
放射性同位体が62Znである、請求項3の製造装置。
【請求項6】
放射性薬剤の各生成品について、カラムは0.1mlから0.3mLの溶離液で溶離される、請求項4に記載の製造装置。
【請求項7】
放射性薬剤を作製するキットにおいて、
下の化学式を持つ、凍結乾燥又はフリーズドライされたビス(チオセミカルバゾン)化合物を含み、セプタムで閉じられたバイタルを備えており、
【化1】
上記において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又はヒドロカルビル基であり、 R3は水素、ヒドロカルビル又はアリール基であり、R4は水素又はヒドロカルビル基であり、これら何れかのヒドロカルビル又はアリール基は、炭素原子の代わりにO、N、S、P及びSiからなる群から選ばれたヘテロ原子を、又は、水素原子の代わりにハロゲン原子を含んでおり、適切な賦形剤(膨張性薬剤)を備えており、バイアルの中身を戻すために用いられる注射用蒸留水と共に、請求項1又は3に記載の樹脂を含むカラムから流出した溶離液と混合されると(例えば溶液に入れられると)、pHを5.5〜7.5の範囲に調節することに加えて生理的等張にするように調節する化合物を備えているキット。
【請求項8】
セプタムで閉じられたバイアルは、0.2μg〜4μgのビス(チオセミカルバゾン)化合物を含む、請求項7のキット。
【請求項9】
放射性薬剤を製造する方法において、
溶離液容器から溶離液を放出し、結合した放射性同位体の樹脂ビーズを含むカラムを通して、調剤用排出点へと流す工程と、
針の先端である調剤用排出点から、水で戻される凍結乾燥又はフリーズドライのビス(チオセミカルバゾン)化合物を包含するセプタムで閉じられたバイアルへと溶離液を導いて、注入用溶液を作製する工程とを含んでおり、化合物の化学式は以下の通りであって、
【化2】
ここにおいて、R1及びR2はそれぞれ独立に水素又はヒドロカルビル基であって、R3は水素、ヒドロカルビル又はアリール基であって、R4は水素又はヒドロカルビル基であって、これら何れかのヒドロカルビル又はアリール基は、炭素原子の代わりにO、N、S、P及びSiからなる群から選ばれたヘテロ原子を、又は、水素原子の代わりにハロゲン原子を含んでいる方法。
【請求項10】
調剤用排出点は針の先端である、請求項9の方法。
【請求項11】
結合した放射性同位体が62Znである、請求項9の方法。
【請求項12】
溶離液が調剤用排出点へと62Cuを運ぶ、請求項9の方法。
【請求項13】
放射性薬剤の各生成品について、0.1乃至0.3mLの溶離液が、100〜500μL/分の流量でカラムを通って放出される、請求項9の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−505126(P2007−505126A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526259(P2006−526259)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029252
【国際公開番号】WO2005/084168
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506078301)プロポーショナル テクノロジーズ,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PROPORTIONAL TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029252
【国際公開番号】WO2005/084168
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506078301)プロポーショナル テクノロジーズ,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PROPORTIONAL TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】
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