説明

放射線治療の処置計画の適合化

放射線治療方法において、治療対象の1枚以上の計画用画像が取得される(102)。この1枚以上の計画用画像において少なくとも悪性組織の特徴が輪郭表示され、1つ以上の当初の特徴輪郭が作成される。治療対象の1枚以上の処置用画像が取得される(114)。この1枚以上の処置用画像に基づいて前記1つ以上の当初の特徴輪郭が更新される(122)。この更新された1つ以上の特徴輪郭に基づいて放射線処置パラメータが最適化される(126)。この最適化されたパラメータを用いて治療対象の放射線処置が実行される(130)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線治療技術に関する。本発明は、特に、高エネルギーのX線又はガンマ線を用いた強度変調放射線治療に適用されるものであり、特にそれを参照して説明される。しかしながら、本発明はまた、X線、ガンマ線、荷電粒子ビーム等の何れを使用しようと、また断層撮影的に回転するビーム源、又は複数の固定ビーム源の何れを使用しようと、3次元原体放射線治療及びその他の種類の放射線治療にも一般的に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、癌及びある一定の悪性組織に対抗するための有力なツールである。例えばX線、ガンマ線、陽子若しくは中性子の粒子などの電離放射線が、癌性腫瘍、癌になった器官、又は悪性組織を含む他の領域に適用される。電離放射線は細胞DNAを損傷し、それによって照射された細胞が殺される。成長し急速に増殖する癌細胞は一般的に、健康な細胞と比較して、放射線によって損傷を受けやすく且つそのような損傷を修復しにくいので、健康な組織を生存させて癌組織に損傷を与えるのに好ましい生来の選択性をもたらしている。健康な組織への損傷をさらに低減するために、放射線治療は一般に、数日又は数週間かけて行われる一連の処置を含んでいる。放射線治療を一連の処置として延長された期間にわたって行うことにより、損傷を受けた癌でない組織が処置の間に回復することが促進される。
【0003】
原体放射線治療においては、放射線ビームは照射方向からの癌性腫瘍又は領域の輪郭形状と実質的に共形となるように成形される。原体放射線治療の1つの種類は強度変調放射線治療であり、この治療法においては、多葉(multileaved)コリメータ又はその他のビーム成形素子を用いて放射線ビーム、すなわち複数の放射線ビームがビーム領域上で強度変調される。治療対象の周りの様々な角度位置にある複数のビームが用いられてもよいし、単一のビームが断層撮影的に治療対象の周りを回転させられてもよい。一般に、総合的な放射線量は複数のビームが交差する領域、すなわち、断層撮影回転の中心付近の領域で最も高くなる。処置計画は、ビーム位置、ビーム発散角、多葉コリメータ設定などの適切な選択を含んでおり、送達される放射線を正確に制御することにより、敏感で危険を伴う隣接器官の放射線被ばくを制限しながら癌性領域を照射する。
【0004】
放射線処置に先立って、詳細にわたるCT計画用画像が生成される。処置計画はこの計画用画像に基づいて作成される。放射線治療に伴う1つの困難は長期にわたる治療対象の安定性である。日や週の単位で延長された一連の放射線治療セッションの間に、危険を伴う器官が大きさ、形状、向き、位置などを変えることがある。一部の放射線治療のシリーズにて、放射線治療に肯定的に反応し、癌性腫瘍が時間とともに縮小したり、その他の変化を示したりすることもある。
【0005】
空間的な変化を不具にするため、超音波、コンピュータ断層撮影イメージング、又はその他の位置監視手段を用いて、悪性組織を処置計画の治療中心及び方向にして、治療対象を放射線治療の支持台上に再調整するようにしている。しかしながら、患者を位置合わせすることは概して、悪性組織と危険を伴う器官との相対位置の変化を解消することができない。また、患者の位置合わせは、腫瘍又は危険を伴う器官の大きさ、形状、若しくはその他の特徴の変化を解消することが不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の制約その他を解決した、改善された放射線治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に従った放射線治療方法においては、治療対象に複数の放射線処置セッションが実行される。各セッションは事前に選定された放射線処置計画を使用する。少なくとも一部のセッションは、(i)治療対象の1枚以上の処置用画像を取得すること、(ii)放射線処置計画のパラメータを前記1枚以上の処置用画像に基づいて調整し、調整された処置計画パラメータを生成すること、及び(iii)調整された処置計画パラメータを用いて放射線処置計画を実行することを含む。
【0008】
本発明の他の一態様に従った放射線治療方法においては、治療対象の1枚以上の計画用画像が取得される。この1枚以上の計画用画像において少なくとも悪性組織の特徴が輪郭表示され、1つ以上の当初の特徴輪郭が作成される。治療対象の1枚以上の処置用画像が取得される。この1枚以上の処置用画像に基づいて前記1つ以上の当初の特徴輪郭が更新される。この更新された1つ以上の特徴輪郭に基づいて放射線処置パラメータが最適化される。この最適化されたパラメータを用いて治療対象の放射線処置が実行される。
【0009】
本発明の他の一態様に従った、(i)照射されるべき悪性組織、及び(ii)1つ又は複数の危険を伴う器官を表す情報に基づいて計算された放射線処置計画に従って治療対象の放射線治療を行うための放射線治療システムは、先に選定された放射線処置計画の放射線処置パラメータを処置用画像に基づいて調整し、調整された処置計画を作成する手段を有する。
【0010】
本発明の更に他の一態様に従った放射線治療システムにおいては、治療対象の1枚以上の計画用画像を取得する手段が設けられている。この1枚以上の計画用画像内の少なくとも悪性組織の特徴を輪郭表示し、1つ以上の当初の特徴輪郭を作成する手段が設けられている。また、治療対象の1枚以上の処置用画像を取得する手段が設けられている。この1枚以上の処置用画像に基づいて前記1つ以上の当初の特徴輪郭を更新する手段が設けられている。この更新された1つ以上の特徴輪郭に基づいて放射線処置パラメータを最適化する手段が設けられている。そして、この最適化されたパラメータを用いて治療対象の放射線処置を実行する手段が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の好適な実施形態による1つの利点は、悪性組織への放射線送達の精度が向上されるとともに、付随する健康な組織への放射線損傷が低減されることにある。
【0012】
他の利点は、一連の放射線治療セッションにおける作業効率が改善されることにある。さらに他の利点は、一連の放射線治療セッションのコースにわたる悪性組織や危険を伴う器官の位置、向き、大きさ、形状又は放射線感受性の変化に対して、処置計画を迅速且つ正確に適合させられることにある。
【0013】
以下の詳細な説明により、多数のさらなる効果が当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は様々な構成要素とその配置、及び様々な処理操作及びその編成の形態を取り得る。図面は、好ましい実施形態を例示するためだけのものであり、本発明を限定するものと解釈されるものではない。
【0015】
図1を参照するに、放射線治療システムは計画作成用のコンピュータ断層撮影イメージングスキャナ10を含んでいる。例示されたスキャナ10は、円錐ビームX線源12及び2次元X線検出器アレイ14を含んでおり、これらは撮像領域20を挟んで反対側になるように、回転式ガントリー16に搭載されている(これらの機構は説明のために図1に示されているが、認識されるように、一般的にX線源12、検出器アレイ14、及び回転式ガントリー16は固定されたガントリー筐体に包囲されている)。例えば癌患者などの放射線治療対象は患者支持台22に置かれて撮像領域20に移動され、治療対象のコンピュータ断層撮影投影データがスキャナ10を用いて取得される。再構成プロセッサ26はフィルタ補正逆投影法又は他の再構成アルゴリズムを用いて、取得された投影データを放射線治療対象の1枚以上の計画用画像に再構成する。計画用画像は計画用画像メモリ30に記憶される。
【0016】
機能情報又は照射されるべき悪性組織に従って少ない或いは多い放射線量を必要とする腫瘍及び副腫瘍の領域の輪郭と、典型的に、1つ又は複数の危険を伴う器官の輪郭とを示し、その精度を高めるために輪郭表示プロセッサ34が使用される。例えば、前立腺癌を有する患者の場合、癌になった前立腺の輪郭が示されるとともに、放射線治療中に余分な放射線被ばくを受ける危険を伴う隣接器官も輪郭表示される。前立腺の放射線治療の場合、例えば直腸や膀胱などがこのような危険を伴う器官に含まれる。輪郭表示プロセッサ34は、放射線技師がグラフィカルユーザインターフェース又は他の道具を用いて手作業で輪郭を定めるマニュアルのプロセッサとすることができる。あるいは、輪郭表示プロセッサ34は、好適なパターン認識アルゴリズムを用いて腫瘍及び危険を伴う器官を自動的に特定し、それらの輪郭を示す自動化されたプロセッサとすることができる。好ましくは、自動化されたプロセッサの場合に、計算された結果が放射線技師に表示され、放射線技師は手作業で輪郭を調整したり、精度を高めたりすることができる。得られた1つ又は複数の輪郭は輪郭メモリ36に記憶される。例えば放射線減衰情報又は組織密度情報などの、1枚以上の計画用画像から得られた他の解剖学的データもまた、一般に、輪郭メモリ36に記憶される。
【0017】
輪郭メモリ36に記憶された解剖学的情報は放射線処置計画パラメータ最適化プロセッサ40によって使用され、放射線処置計画のために最適化されたパラメータが決定される。強度変調放射線治療においては、腫瘍又は他の悪性組織を照射するために複数の放射線ビーム、又は治療対象の周りを断層撮影的に回転させられる単一の放射線ビームが使用される。最適化プロセッサ40は、例えば、アパーチャ形状を定める多葉コリメータ設定、全体的なビーム強度又は負担(weight)、ビーム方向、くさび角度、分割(fractionation)スケジュール等のパラメータを、少なくとも(i)悪性組織の実質的な照射を行うこと、及び(ii)危険を伴う器官の照射を制限すること、を含む最適化基準を用いて最適化する。最適化された処置計画パラメータは処置計画パラメータメモリ42に記憶される。
【0018】
最適化された処置計画パラメータを含む処置計画を作成する際、癌性領域の高解像度の3次元画像が一般的に用いられる。悪性組織及び危険を伴う器官を輪郭表示することは、多大な時間と計算とを必要とするものである。高画質・高解像度の3次元計画用画像が輪郭表示を行う際に使用されることが好ましい。
【0019】
従って、計画用のコンピュータ断層撮影スキャナ10は、最初の放射線治療セッションに先立って治療対象を撮像する、典型的に高分解能のマルチスライス型又は円錐ビーム型のスキャナである。例えば、治療対象は最初の放射線治療セッションの数日前くらいに放射線治療医院又はその他の撮像施設に来院する。これにより、放射線治療の開始前に、放射線技師が十分な時間を掛けて正確な輪郭表示を行うことが可能になる。
【0020】
最初の放射線治療セッションでは、治療対象は放射線送達システム52に付随する可動テーブル又は他の対象支持台50に置かれる。典型的に、治療対象、又は少なくとも放射線治療を受けるべき治療対象の部分は、紐、留め具、クッション、又は他の拘束具を用いて対象支持台50上に実質的に固定される。例示された実施形態においては、放射線送達システム52は線形電子加速器(すなわち、ライナック)54を含む断層撮影システムであり、線形電子加速器54はタングステン又はその他の標的に衝突させる加速電子ビームを作り出し、治療対象に照射するX線又はガンマ線のビームを生成する。多葉コリメータ56はX線又はガンマ線のビームを成形し、あるいは強度変調する。処置の間、放射線源は治療対象の周りを断層撮影的に回転させられ、治療対象は360°に至る角度視野範囲から照射される。例示された断層撮影放射線送達システム52に代えて、例えばマルチビームシステム等の、他の放射線送達システムが用いられてもよい。マルチビームシステムとは、複数の放射線源が対象ガントリーの周りの固定又は調整可能な角度位置に角度的に間隔を空けて設けられ、治療対象を同時に、あるいは代わる代わる照射する複数の放射線ビームを作り出すシステムである。例えば、各々が別個の多葉コリメータを有する9個の放射線源が治療対象の周りに40°間隔で配置され、9個の別個に強度変調された放射線ビームを発生する。
【0021】
放射線治療を施すことに先立って、第2の撮像システム60が治療対象を撮像する。対象支持台50は、好ましくは、放射線送達システム52と第2の撮像システム60との双方に共通の対象支持台としての役割を果たし、放射線治療対象を先ず第2の撮像システム60の撮像視野内に、そして続いて放射線送達システムへと直線的に移動させる。こうして、第2の撮像システム60は、対象支持台50上に固定された位置にある照射されるべき領域に対して、その処置用画像を作成する。
【0022】
第2の撮像システム60は比較的低分解能の第2のコンピュータ断層撮影スキャナ(図1の外観では円形のガントリー筐体のみが見て取れる)とし得る。再構成プロセッサ62はコンピュータ断層撮影スキャナによって取得された投影データを1枚以上の処置用画像に再構成し、この処置用画像は処置用画像メモリ64に記憶される。コンピュータ断層撮影スキャナではなく、例えば、超音波イメージングシステム、透視(fluoroscopy)イメージングシステム、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナ、単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)スキャナ、陽電子放出型断層撮影(PET)スキャナなどの、その他の画像診断装置が第2の撮像システム60としての役割を果たしてもよい。さらに、一部の実施形態においては、超高圧(megavolt)イメージングスキャナが、断層撮影イメージングのための超高圧放射線源として放射線送達システム52を使用する。
【0023】
画像整合プロセッサ70は、第2の撮像システム60によって取得された1枚以上の処置用画像を、計画用スキャナ10によって前もって取得された1枚以上の計画用画像に整合させる。実質的に如何なる種類の画像整合アルゴリズムが用いられてもよい。一部の実施形態においては、弾性(elastic)作用を用いるボクセルに基づく整合方法が使用される。このような整合方法は画像空間で有利に機能し、またユーザ入力から実質的に独立したものである。弾性作用を用いるボクセルに基づく整合方法は、1枚又は1組の画像を変形させて他の1枚又は1組の画像に整合させる。好ましくは計画用画像が処置用画像に整合されるように変形されるが、計画用画像に整合されるように処置用画像を変形させることも同様に意図される。
【0024】
画像が整合されると、輪郭更新プロセッサ72が、画像を整合させるのに必要な変形に従って、悪性組織及び1つ又は複数の危険を伴う器官を表す輪郭を変形させ、あるいは他の方法で更新する。更新された輪郭は輪郭メモリ36に記憶されるとともに、処置計画パラメータ最適化プロセッサ40に入力される。処置計画パラメータ最適化プロセッサ40はこの更新された輪郭に基づいて処置計画パラメータを更新し、来たる放射線治療セッションでの使用のために更新されたパラメータを処置計画パラメータメモリ42に記憶させる。
【0025】
処置用画像と、それから計算された輪郭の変形は、組織又は器官の位置、向き、大きさ、形状及び放射線感受性の変化を不具にするものである。例えば、前立腺癌の治療のための数回の放射線治療セッションのコースにわたって、直腸、膀胱及びその他の解剖学的特徴は、膀胱内の異なる流体面、直腸の内容物の変化、放射線治療の成功による癌性腫瘍の縮小などに起因して、位置、向き、大きさ及び形状を変える場合がある。
【0026】
図1と、さらに図2とを参照して、好適な放射線治療の作業の流れを説明する。処理操作102にて、コンピュータ断層撮影スキャナ10を用いて、高解像度の計画用画像が取得される。処理操作104にて、輪郭表示プロセッサ34が手動的、半自動的、又は自動的に、癌性腫瘍、癌になった器官、又はその他の悪性組織の当初の輪郭を決定するとともに、1つ又は複数の危険を伴う放射線感受性の器官、その領域内の骨又はその他の高密度構造などの輪郭を決定する。
【0027】
好ましくは、放射線処置計画のための当初のパラメータ値がパラメータ最適化処理106にて決定される。この最適化は、当初の解剖学的又は機能的な輪郭、及び計画用画像から得られた、例えば、癌性腫瘍又は器官の近傍の様々な組織及び器官の放射線減衰情報又は組織密度情報などの、他の解剖学的情報に基づくものである。量的な一例として、治療対象の周りに40°間隔で配置された9個の別々の角度のビーム位置が存在し(9個の固定された放射線源を用いること、又はこれら9個の位置を通って断層撮影的に移動するビームを有する例示された単一ビーム放射線源52を用いることの何れかによって実現される)、且つ各ビーム位置が多葉コリメータによって0.5×0.5cm2のビームレットに選択的に分割される10×10cm2のビーム面積を有する場合、最適化されるべきビームレットは9×400=3600個存在する。また、9個の放射線ビームの各々はまた、全体ビーム強度又は負担、ビーム方向、くさび角度、分割(fractionation)スケジュール等の全体的パラメータを有し得る。このように多数のパラメータを最適化するのに適した最適化技術の1つが米国特許第6735277号明細書(国際公開第03/099380号パンフレット)にて開示されている。
【0028】
一般的に、放射線治療計画操作102、104、106は最初の放射線処置セッションに先立って行われる。放射線治療は、単一のセッションで実施されてもよいが、より一般的には、日、週、又はより長い期間にわたる複数の放射線処置セッションに分割される。各放射線治療セッションの作業の流れ110は以下のように進められる。処理操作112にて、治療対象が、少なくとも治療対象の照射されるべき部分を実質的に固定されて、対象支持台50上に位置付けられる。支持台50は固定された領域を第2の撮像システム60の視野内に直線的に移動させる(あるいは、第2の撮像システムが患者の方に移動される)。処理操作114にて、放射線送達システム52に付随する第2の撮像システム60を用いて、1枚以上の処置用画像が取得される。処理操作120にて、処置用画像及び計画用画像が画像整合プロセッサ70によって整合される。このとき、一方の画像セットを弾性的に変形して、この画像セットを他方の画像セットに整合させる整合技術が使用される。幾つかの好適な整合技術が、例えば、Maintz等の「A Survey of Medical Image Registration」(1998年、第2巻、p.1-57)に提示されている。画像空間で作用するボクセルに基づく整合技術が一般的に好ましい。特徴に基づく、あるいはセグメント化に基づく整合技術も使用可能であるが、これらは実質的なユーザ入力を必要とすることがある。
【0029】
処置用画像と計画用画像とが整合されると、処理操作122にて、輪郭更新プロセッサ72によって輪郭が更新される。例えば、膀胱に相当する局部的な画像領域が画像整合によって(恐らくは、膀胱内の流体の蓄積によって)5%だけ等方的、弾性的に拡張された場合、それに対応するように膀胱を表す輪郭が5%だけ等方的に好ましく拡張される。同様に、局部的あるいは全体的に用いられた剛体変換、アフィン変換、射影変換、湾曲変換、あるいは他の画像整合変換が、対応する輪郭の変換にマッピングされ、処理操作122における更新された輪郭を作り出す。
【0030】
更新された輪郭に基づいて、処理操作126にて、処置計画パラメータが処置計画パラメータ最適化プロセッサ40によって最適化される。任意的な当初の最適化処理操作106が実行されている場合、最適化処理操作126は事実上の再最適化であり、当初の最適化処理操作106で決定された当初の処置計画パラメータを開始時の値として利用することができる。同様に、2回目又は後続の放射線処置セッションでは、先行する処置セッションで使用されたパラメータ値が開始時の値として利用され得る。一般的に、最適に近いパラメータ値を開始時に使用すること(これは、開始時のパラメータ値が当初の最適化106、又は先行する放射線処置セッションから取られるときの通常の場合である)は、最適化処理126の高効率で迅速な収束をもたらす。最適化処理操作126によって決定されたパラメータ値は処置計画パラメータメモリ42に記憶され、放射線送達システム52によって放射線治療を行う処理操作130にて使用される。
【0031】
照射領域の変化の度合い及び大きさに応じて、ある場合には、更新処理操作114、120、122は一部の放射線処置セッションから省略されてもよい。例えば、これらの更新処理操作は、他の放射線処置セッションごと、3度の放射線処置セッションごとなどに実行され得る。さらに、照射領域が前回の処置セッション以降、実質的に安定していることを整合処理120が指し示す場合、来たる放射線処置セッションでは最適化処理126が任意的に省略される。
【0032】
第2の撮像システム60によって取得された処置用画像は輪郭を構築するためには使用されない。むしろ、処置用画像は輪郭の大きさ、形状、向き、位置、又はその他の空間的性状を調整するために使用されるだけである。従って、第2の撮像システム60は、典型的に、計画用のコンピュータ断層撮影スキャナに対して低い解像度で画像を作り出す。このことは、第2の撮像システム60を、1枚以上の処置用画像を素早く取得する低コスト、低分解能の撮像機とすることを可能にする。さらに、処置用画像は処置計画を調整するための放射線減衰又は組織密度についての情報を抽出するためには使用されないので、第2の撮像システム60は、例えば超音波又は磁気共鳴などの、放射線に基づかない撮像法を用いることができる(ただし、第2の撮像システム60がコンピュータ断層撮影スキャナ、又は組織密度情報を提供する他の撮像機である場合、これは更新操作122に含められ得る)。処置用画像は悪性組織及び危険を伴う器官の大きさ、向き、位置、及び全体形状に関する比較的粗い情報を提供するために使用される。
【0033】
また、計画用画像は機能的又は生物学的性状を組み込み得る。例えば、組織の放射線吸収及び身体の生体構造についての情報を提供するコンピュータ断層撮影画像に加え、計画用画像は、例えば、単光子放出型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放出型断層撮影法(PET)、磁気共鳴分光法(MRS)等の好適な撮像法を用いて取得された機能的又は生物学的な画像を含むことができる。機能的計画用画像は、例えば放射線感受性などの機能的又は生物学的な差異に基づいて、ある特定種類の悪性組織を健康な組織から区別することができる。
【0034】
故に、意図される一部の実施形態においては、計画用画像は機能的又は生物学的な対比を有する機能的又は生物学的な計画用画像を含む。これらの計画用画像の機能的又は解剖学的特徴は、最適化処理106にて使用される輪郭を作成するように、輪郭表示処理操作104にて輪郭表示される。対応して、処置用画像もまた、必要な機能的又は生物学的な対比を提供するのに適した撮像法を用いて処理操作114にて取得された機能的又は生物学的な画像を含む。これらの機能的又は生物学的な処置用画像は、整合処理120にて整合されて、更新処理122にて対応する輪郭を更新するために使用される。この結果、最適化更新126にて使用される更新された輪郭が作成される。これらの更新は、例えば悪性腫瘍の放射線感受性パターンの変化などの、放射線処置計画に影響を与える非解剖学的な変化を補償するものである。なお、この放射線感受性パターンの変化は、照射によって主導される酸素分圧の局所変化(再酸素化)に応じて生じ得るものである。
【0035】
機能的又は生物学的な処置用画像は当初の輪郭表示や計画作成には使用されず、処置計画の修正調整に使用される。故に、機能的又は生物学的な処置用画像は元の計画用画像より粗い画像とすることができる。従って、機能的又は生物学的な処置用画像を取得するために使用される撮像システムは、任意的に、機能的又は生物学的な計画用画像を取得する撮像システムより低い分解能のシステムにされる。実際、処置用の撮像システム及び計画用の撮像システムの双方が同種の機能的又は生物学的な画像対比を提供するものである限り、処置用の撮像システムは任意的に、計画用撮像システムとは異なる撮像法、又は異なる撮像法の組み合わせを用いることができる。
【0036】
一部の実施形態においては、計画用画像を取得するために複数の撮像法が用いられる。一例として、計画用の撮像システムは、解剖学的情報及び組織の放射線吸収特性を取得するために使用される透過型コンピュータ断層撮影スキャナと、例えば放射線感受性情報などの機能的画像を取得するために使用される機能的撮像装置とを含む。計画用画像内の特徴は、透過型コンピュータ断層撮影画像を用いて輪郭表示された解剖学的特徴、及び機能的撮像装置によって取得された画像を用いて輪郭表示された生物学的又は機能的特徴を含めて、輪郭表示される。処置用の撮像システムもまた透過型コンピュータ断層撮影スキャナと機能的撮像装置とを含む。透過型コンピュータ断層撮影スキャナは、解剖学的特徴の輪郭が更新されるための処置用画像を生成する。一方、機能的撮像装置は、生物学的又は機能的な特徴の輪郭が更新されるための処置用画像を生成する。
【0037】
好ましい実施形態を参照して本発明について述べてきた。この詳細な説明を読んで理解した者によって変更及び改変が想到されることは明らかなところである。本発明は、添付の請求項又はそれに等価なものの範囲内に入る限りにおいて、そのような全ての変更及び改変を含むものとして解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一連の放射線治療処置を行う放射線治療システムを示す図である。
【図2】図1の放射線治療システムを用いて行われるのに適した放射線治療の作業の流れを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射される組織を表す情報に基づいて計算された放射線処置計画に従って治療対象の放射線治療を行うための放射線治療システムであって、調整された処置計画を作成するために、先に選定された放射線処置計画の放射線処置計画パラメータを処置用画像に基づいて調整する手段を有する放射線治療システム。
【請求項2】
前記治療対象の前記処置用画像を取得する手段;
前記情報を前記処置用画像に基づいて更新する手段;及び
調整された処置パラメータを用いて前記治療対象の放射線治療を実行する手段;
を更に有する請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項3】
照射されるべき組織を表す前記情報が、(i)解剖学的撮像法によって取得された解剖学的情報、及び(ii)機能的撮像法によって取得された生物学的情報又は機能的情報、の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記先に選定された処置計画パラメータが、計画用画像から作成された被照射組織の輪郭から最適化され、且つ前記調整する手段が:
前記被照射組織の輪郭を前記処置用画像に適合するように調整する輪郭更新プロセッサ;及び
調整された輪郭から前記処置計画パラメータを再最適化する処置計画パラメータ最適化プロセッサ;
を有する、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
処置用画像を取得するステップ;
弾性変形技術を用いて前記処置用画像を対応する計画用画像に整合させるステップ;及び
照射される組織の放射線治療計画用の輪郭を、前記処置用画像の変形可能整合に基づいて更新するステップ;
を有する放射線治療計画更新方法。
【請求項6】
前記弾性変形技術がボクセルに基づく整合技術である、請求項5に記載の放射線治療計画更新方法。
【請求項7】
更新された放射線治療計画用の輪郭から処置パラメータを再最適化するステップを更に有する請求項5に記載の放射線治療計画更新方法。
【請求項8】
処置用画像を取得する前記ステップが、前記計画用画像を取得するために使用される撮像法とは異なる撮像法を使用する、請求項5に記載の放射線治療計画更新方法。
【請求項9】
前記計画用画像が、(i)解剖学的特徴、(ii)生物学的特徴、及び(iii)機能的特徴、から成るグループから選択された特徴を含む、請求項5に記載の放射線治療計画更新方法。
【請求項10】
処置用画像を取得する手段;
弾性変形技術を用いて前記処置用画像を対応する計画用画像に整合させる手段;及び
照射される組織の放射線治療計画用の輪郭を、前記処置用画像の変形可能整合に基づいて更新する手段;
を有する放射線治療計画システム。
【請求項11】
治療対象の1枚以上の計画用画像を取得する手段;
1つ以上の当初の特徴輪郭を作成するために、前記1枚以上の計画用画像内の組織の特徴を輪郭表示する手段;
前記治療対象の1枚以上の処置用画像を取得する手段;
前記1枚以上の処置用画像に基づいて前記1つ以上の当初の特徴輪郭を更新する手段;
更新された1つ以上の特徴輪郭に基づいて放射線処置パラメータを最適化する手段;及び
最適化されたパラメータを用いて前記治療対象の放射線処置を実行する手段;
を有する放射線治療システム。
【請求項12】
前記1つ以上の当初の特徴輪郭を更新する前記手段が:(i)前記1枚以上の処置用画像を前記1枚以上の計画用画像に整合させる手段;及び(ii)前記整合に基づいて前記1つ以上の特徴輪郭を調整する手段を含む、請求項11に記載の放射線治療システム。
【請求項13】
前記1枚以上の処置用画像を前記1枚以上の計画用画像に整合する前記手段がボクセルに基づく弾性作用を使用し、且つ前記整合に基づいて1つ以上の特徴輪郭を調整する前記手段が、前記ボクセルに基づく弾性作用によって示された弾性変形に基づいて輪郭を調整する手段を含む、請求項12に記載の放射線治療システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−509715(P2008−509715A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525405(P2007−525405)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052554
【国際公開番号】WO2006/018761
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】