放射線治療の有効性を増強するためのMET阻害剤
【課題】患者の放射線治療に対する耐性を低減するおよび/またはなくするため、癌に罹患している患者の治療において使用するための阻害剤の提供。
【解決手段】(i)抗−Metモノクローナル抗体、(ii)抗−Metモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、および、(iii)抗−Metモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、から選択され、腫瘍に罹患している患者の治療における使用のためのMet阻害剤であって、Met遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減する、および/または、なくすることができるMet阻害剤。
【解決手段】(i)抗−Metモノクローナル抗体、(ii)抗−Metモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、および、(iii)抗−Metモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、から選択され、腫瘍に罹患している患者の治療における使用のためのMet阻害剤であって、Met遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減する、および/または、なくすることができるMet阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、癌に罹患している患者における放射線治療の有効性を増強するためのMET 阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
癌患者の治療のために成功裏に使用されているにもかかわらず、放射線治療は腫瘍を根絶することができないことがあり、腫瘍がより悪性の表現型を伴って再発する場合がある。それに一致して、電離放射線 (IR)の矛盾した転移誘発(pro-metastatic)効果が、動物モデルにおける古典的研究によって明らかになってきた。放射線治療の後の腫瘍の進行は、本質的に放射線耐性である、「癌幹細胞」亜集団の正の選択に起因しうる。しかしながら、顕著な証拠が、選択に加えて、IRが組織再生を目的とした適応(adaptive)表現型を促進することを示しており、それは転移挙動に進展しうる。この表現型は、DNA 損傷に対する「ストレスおよび回復(stress-and-recovery)」応答として規定され、単細胞および組織レベルの両方において起こる。単細胞において、DNA 損傷の検出は、おもにATM-p53 軸によって組織化されている特異的な分子機構を誘発し、それは複製を阻害し、DNA 修復を活性化する。損傷が非可逆的である場合、正常細胞は、アポトーシスを経るか、あるいは老化を介してその増殖能を引きこもらせるようにプログラムされる。しかしながら、変異細胞の死の後、組織は元の構造および機能を取り戻すために適正な細胞数およびパターンを回復しなければならない。したがって、再生 (または「創傷治癒」)が、正常または腫瘍性の生存細胞によって開始される。インビトロで観察されるように、このプロセスは、傷の縁からの脱離、線維芽細胞表現型の獲得、傷ついた部位への遊走、そしておそらくは、増殖といった工程を含む。この全プログラムは、形態学的特徴を強調する専門用語である「上皮間葉移行」 (EMT)と称されてきた。より最近には、このプログラムはまた、癌に関する機能的側面を強調する語である、「浸潤性増殖」(IG)としても規定されている。現在では、EMT/IGは、組織発達および再生のための生理的プログラムであるということが広く受け入れられており、それは、浸潤および転移を行うために癌細胞によって奪われる。EMT/IGは癌細胞において、(a)時折、クローン選択を支持する遺伝子損傷の結果として; (b)より頻繁に、不利な環境条件への適応応答の結果として、活性化される。
【0003】
したがって、EMT/IGは、数個の特定の転写因子によって最終的には制御され、少数の細胞外シグナルによって調整される遺伝的プログラムである。後者は、細胞分散因子(scatter factor)、例えば、肝細胞増殖因子 (HGF)およびマクロファージ刺激タンパク質 (MSP)を含み、これらは、Met ファミリーに属するチロシンキナーゼ受容体に結合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の目的および概要
それゆえ、腫瘍に罹患している患者における放射線治療の有効性を増強するための改善された解決手段に対する必要性が感じられている。
【0005】
本開示の目的は、かかる改善された解決手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記目的は添付の特許請求の範囲において具体的に記載されている特定事項のおかげで達成され、それらは本開示の不可分の部分を形成するものとして理解される。
【0007】
本発明のある態様は、腫瘍、好ましくは秩序を失った(deregulated)Met 経路を示す腫瘍に罹患している患者の治療におけるMet 阻害剤の使用を提供し、ここで、Met 阻害剤は以下から選択され:
i) 抗-Met モノクローナル抗体、
ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む遺伝子組み換え (genetically engineered)抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、
ここで、Met 阻害剤は 、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することおよび放射線治療に対する患者の耐性を低減するおよび/またはなくすることができる。
【0008】
好ましい態様において、抗-Met モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株 ICLC PD 05006によって産生されるDN30 抗-Met モノクローナル抗体である。
【0009】
さらに好ましい態様において、a)遺伝子組み換え抗体、または、b)抗-Met モノクローナル抗体または遺伝子組み換え抗体の断片に含まれる相補性決定領域 (CDR)は、アミノ酸配列を配列番号12〜14および20〜22に示すDN30 抗-Met モノクローナル抗体のCDRである。
【0010】
本開示の別の態様は、腫瘍、好ましくは、秩序を失った Met 経路を表す腫瘍に罹患している患者の治療 (例えば、遺伝子治療による)における使用のためのMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列に関し、該 Met 阻害剤は以下から選択され:
i) 抗-Met モノクローナル抗体、
ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む遺伝子組み換え抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、
ここで、該 Met 阻害剤は、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減するおよび/またはなくすることができるものである。
【0011】
好ましい態様において、抗-Met モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株 ICLC PD 05006によって産生されるDN30 抗-Met モノクローナル抗体である。
【0012】
好ましい態様において、a)遺伝子組み換え抗体、または、 b)抗-Met モノクローナル抗体または遺伝子組み換え抗体の断片をコードするヌクレオチド配列に含まれる相補性決定領域 (CDR)は、アミノ酸配列が配列番号12〜14および20〜22に示されるDN30 抗-Met モノクローナル抗体のCDRである。
【0013】
好ましい態様によると、Met 阻害剤は、i)注射または注入による可溶性タンパク質の形態における、または、ii)全身的または腫瘍内投与のためのベクターの手段による投与のためのものである。
【0014】
さらなる好ましい態様によると、Met 阻害剤は、少なくとも一つの安定化分子(stabilizing molecule)に所望により結合していてもよい(conjugated) Fab 断片の形態におけるものであり、ここで、安定化分子は、ポリエチレングリコール、アルブミン結合ドメイン、アルブミンから選択される。
【0015】
本開示は、照射がMET 発現 (癌の「浸潤性増殖」を駆動することが知られている癌遺伝子)をアップレギュレートすることを開示し、それは次いで細胞浸潤を促進し、細胞を放射線に誘導されるアポトーシスから保護する。したがって、特定の化合物、即ち、特定のMet 阻害剤により、MET 発現をなくすることまたはそのキナーゼ活性を阻害することは、アポトーシスを促進し、放射線に誘導される浸潤に対抗し、したがって放射線治療の有効性を増強する。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明を添付の図面に言及して例示的にのみ以下に説明する、ここで:
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図 1。IRはMET 転写を誘導する。a、照射 (10 Gy)後示された時点でのMDA-MB-435SにおけるMet タンパク質。 ctrl、時間0でのMet。b、照射 (1-10 Gy)の12時間後のMDA-MB-435SにおけるMet タンパク質。c、照射 (10 Gy)後示された時点でのMDA-MB-435SにおけるMET 転写産物。d、照射 (10 Gy; ctrl、非照射細胞)後示された時点でのMDA-MB-231におけるMET プロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ活性 (基底、プロモーター無しのコンストラクト) 。棒:2つの独立した実験の三連の分析の平均± s.e.m. (* p<0.05、n = 6、対応のあるt-検定)。a.u.、任意単位。
【図2】図2。IR-誘導性 MET 転写はNF-κBを必要とする。a、照射 (10 Gy)後示された時点または低酸素状態 (1% O2)において24時間培養後に分析されたMDA-MB-435Sにおけるタンパク質の核内蓄積。ctrl、時間0での非照射細胞。b、照射された MDA-MB-231におけるクロマチン免疫沈降(10 Gy; ctrl、非照射細胞)。棒は、MET プロモーターにおける各NF-κB 結合配列 (κB1またはκB2)の抗-p65/RelA および非特異的 IgG 免疫沈降の間の比を表す (三連の分析の平均 ± s.e.m.)。NFKBIA (IκBα) プロモーターを陽性対照として用いた。c、p65/RelA 発現につきサイレンシングされ(siRELA; siCTRL、対照)、照射された (10 Gy; ctrl、非照射細胞)、MDA-MB-231におけるMET プロモーター活性。棒は、 MET プロモーター-駆動ルシフェラーゼ発現およびプロモーター無しの(基底) ルシフェラーゼ発現の間の比を表す (3つの独立した実験における三連の分析の平均 ± s.e.m)。 差し込み図: siRNA トランスフェクションの後のp65/RelA タンパク質。d、p65/RelA 発現についてサイレンシングされたMDA-MB-435Sにおける (siRELA; siCTRL、対照)、照射 (ctrl、時間0での非照射細胞)後示された時点でのMet タンパク質蓄積。
【図3】図 3。IR-誘導性 MET 発現はATM キナーゼ活性化を必要とする。ATM キナーゼ阻害剤 CGK733で処理され、照射後示された時点にて抽出されたMDA-MB-435SにおけるMet タンパク質発現、Chk2 リン酸化 (p-Chk2) およびp65/RelA 核転座。ctrl、時間0での非照射細胞。
【図4】図 4。IR-誘導性浸潤性増殖はMetを必要とする。a、照射された MDA-MB-231またはU-251 (10 Gy; ctrl、対照)による基底膜浸潤。トランスウェルフィルターの顕微鏡写真(10X)。b、示された HGF濃度の存在下または非存在下(-) で培養された、照射された MDA-MB- 435S (10 Gy; ctrl、対照)における異常な Met-誘導性分枝形態形成。 スケール・バー: 100μm。
【図5】図 5。Met 阻害は、細胞をIR-誘導性アポトーシスおよび増殖抑制に対して感作する(sensitize)。48 時間、10 Gyで照射された、および/または、DN30 抗-Met 抗体のFab 断片の存在下で培養された、U-251の生存能力(媒体: 非照射細胞)。棒:3つの独立した実験の三連の分析の平均±s.e.m. (* p<0.05、Fab-DN30 または 10 Gyのいずれか単独に関して有意に低減した生存能力、n = 9、対応のあるt-検定)。棒:クローンを作る細胞のパーセンテージ (2つの独立した実験の三連の分析の平均 ± s.e.m.、* p< 0.05、n = 6、対応のあるt-検定)。
【図6】図6。IRは Met リン酸化を誘導する。HGF (50 nM) および/または IR (10 Gy)で処理されたMDA-MB-231細胞におけるMet リン酸化を、示された時点にて抗-Met 抗体で免疫沈降させ、抗-ホスホ-Tyr 抗体 (p-Tyr)を用いるウェスタンブロットにより分析した。Metは、タンパク質免疫沈降の対照として示した。ctrl、HGF 陰性対照で処理した細胞 (方法を参照)。
【図7】図7。マウスおよびヒト MET プロモーターのアラインメント。ヒト MET プロモーター (GenBank 受入番号AF046925)を転写因子結合部位の同定のためにTRANSFAC 7.0 ソフトウェア (Biobase Biological Database Gmbh、Wolfenbuttel、Germany)により分析した。2つの推定 NF-κB 結合部位 (κB1 およびκB2)が判明した。ヒトおよびマウス (遺伝子番号: 17295) MET プロモーターのアラインメントは、κB2 部位 (ヒト配列における-1149/-1136、長方形)が2つの種の間で高度に保存されていることを示す。
【図8】図 8: DN30 モノクローナル抗体重鎖の核酸 (a)およびアミノ酸 (b) 配列。CDR 領域は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方において下線で示す。
【図9】図 9: DN30 モノクローナル抗体軽鎖の核酸 (a)およびアミノ酸 (b) 配列。CDR 領域は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方において下線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の態様の詳細な説明
本発明を非限定的な例によっていくつかの好ましい態様に関して詳細に説明する。
【0019】
以下の記載において、様々な具体的な詳細が態様の理解の補助を提供するために与えられる。これらの態様は具体的な詳細の1以上を用いずに実践できるし、その他の方法、成分、材料などを用いても実施できる。別の例において、周知の構造、材料、または操作は、態様の側面を不明瞭にすることを避けるために詳細には示されないし、記載されない。
【0020】
本明細書において提供される見出しは便宜の目的のためのみのものであり、態様の範囲や意味を解釈するためのものではない。
【0021】
細胞内標的に損傷を与えることに加えて、電離放射線 (ほとんどは活性酸素種の生成を介する)は、調節分子の活性を調整し、かかる調節分子は、ストレスおよび回復の(stress-and-recovery) 生物学的応答を制御する。
【0022】
MET 癌遺伝子の転写上方制御(upregulation)は、この応答において重要な事象として現れ、その結果として放射線-誘導性損傷に対抗する生存促進性(pro-survival)および再生のプログラムの実行がおこる。本開示は、IR-誘導性 MET 上方制御はDNA 損傷の検出の後にタンパク質キナーゼ ATMによって誘発されるシグナル伝達経路によって制御されることを示す。この経路は、ATM キナーゼの核外輸送および転写因子 NF-κBの阻害解除を伴う。注目すべきことに、DNA 損傷によるNF-κBの活性化は放射線に対する防御応答において鍵となる役割を果たすことが知られている。というのは、NF-κBは、抗-アポトーシス遺伝子の卓越した調節因子であるからである。NF-κBによって促進される細胞生存は、癌細胞の放射線治療に対する「適応耐性」を誘導するために有効であることが提案されている。本発明者らは、NF-κBによって支持される放射線に対する適応応答は重要なことに MET 癌原遺伝子を伴うことをこのたび示す。
【0023】
IR によるMET 誘導は二相性転写事象であり、NF-κBのMET プロモーターに位置する2つのκB特異的応答要素への結合によって媒介される。照射の1-2時間以内に起こる初期転写応答はおそらくは、DNA 損傷センサー-ATMによって駆動される内因性経路によるNF-κBの活性化に依存する。考えられる限りでは、 IR-誘導性 Met 過剰発現はそれ自体で、低酸素状態-誘導性Met 過剰発現の場合において示されるように、生理的濃度の遍在する(ubiquitous)リガンド HGFの存在下でシグナル伝達を誘発するために十分である。後期および持続性 MET 上方制御 - 24時間を超えて延長するもの -はまたおそらくはNF-κBに作用する複数の外因性シグナル伝達経路によって支持されている。実際、照射はサイトカイン、例えば、TNF-α、IL-1 および IL-10の発現を促進し、これらサイトカインは、一方でNF-κB標的であり、他方でNF-κB 転写活性を刺激する。本発明者らは、生組織において、照射はNF-κBに影響する自己分泌/傍分泌ループを誘導し、それは損傷組織にわたって生存シグナルの波を伝播することを考慮する。
【0024】
注目すべきことに、NF-κBに対する転写応答には、生存促進性遺伝子に加えて、EMT/IGに責任のある分子が含まれることが知られている。生存促進性プログラムおよびEMT/IG 遺伝的プログラムの組み合わせての実行は、両刃の剣として作用する:正常組織においては、これらプログラムは生存および損傷の後の再生をもたらし;癌細胞においては、これらは悪性腫瘍への進行を助長する。
【0025】
MET 癌原遺伝子は、ストレスおよび回復(stress-and-recovery) 応答の明るい側と暗い側の両方を組織化するために必要な、決定的な(critical)NF-κB 標的であるための基準を満たす。本開示において示されるように、一方で、 IR-誘導性 Met 過剰発現は細胞が損傷した単分子層を治癒させることを可能にする。他方で、IRは細胞が基底膜を横切ることを刺激し、これは悪性腫瘍の典型的な特徴である。より驚くべきことに、IRはMet-誘導性分枝形態形成の生理的プロセスを三次元マトリックスにわたる無秩序な細胞伝播(dissemination)へと向かわせることが報告されている。すべての場合において、MET ノックダウンまたは機能阻害を介して、いくつかのNF-κB 標的遺伝子が照射された細胞において発現するが、本発明者らは、Metが生理的浸潤性増殖 (創傷治癒)と悪性浸潤性増殖 (浸潤)との両方に必要であることを示す。照射の後に再発する腫瘍の報告されている攻撃性は、したがって、MET 癌遺伝子の緊密な制御の下でのEMT/IG プログラムの活性化を伴う可能性がある。
【0026】
Metが、抗-アポトーシス、再生およびIRに対する侵襲性応答に関与している(implied)という観察は、重要な治療の結果を有する:放射線治療と Met 阻害との組合せは癌細胞を放射線増感する一方、侵襲促進性(pro-invasive) 副作用を防止する。実際、本開示は、Met 阻害が治療量のIRへの曝露の後の細胞生存およびコロニー形成活性を顕著に損なうことを示す。もっとも重要なことに、いくつかの正常組織の幹/前駆部分(compartment)において発現されるが、METは考えられる限りでは癌幹細胞においても発現され、それはしばしば正常幹細胞または増殖する前駆細胞の直接の形質転換に由来する。IR-誘導性 Met 発現および活性化は、癌 (幹) 細胞の放射線耐性および侵襲能力を支持し、したがって、それらの正の選択および伝播(dissemination)の機会を増やす。
【0027】
それゆえ、従来の治療法、即ち、放射線治療と組み合わせた、Met 阻害 (可溶性タンパク質の形態におけるMet 阻害剤の投与によるか、または、遺伝子治療、即ち、以下に規定するMet 阻害剤をコードするベクターの投与による)は、癌を根絶するためのさらなる戦略である。
【0028】
本開示において、「Met 阻害剤」という表現は、抗-Met モノクローナル抗体、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができるその誘導体および/または断片を意味する。好ましい態様において、「Met 阻害剤」は、DN30 抗-Met モノクローナル抗体、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができるその誘導体および/または断片である。
【0029】
「抗体誘導体」という表現は、抗体の相補性決定領域(CDR)を含む分子、例えば、抗体のCDRを含む遺伝子組み換えまたはヒト化抗体または抗体のCDRを含むペプチドを意味する。
【0030】
「抗体断片」という表現は、i)抗-Met モノクローナル抗体、および、 ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含む遺伝子組み換えまたはヒト化抗体の、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2 断片から選択される断片を意味する。
【0031】
薬理学的観点からは、Fab 断片の使用は長所と短所の両方を有する。Fab 分子は、下等真核生物および原核生物などの単純な発現系を用いて容易に産生することができる(Chambers RS. Curr Opin Chem Biol 2005 9:46-50)。Fab 分子はまた、抗体全体と比べて免疫原性が低く、それらの低い分子量は組織浸透を改善する。
【0032】
臨床現場におけるFab 断片の使用における問題点は、より高い腎臓クリアランスに起因するFab 断片の短い血漿中半減期に関する。これはFab 分子の腫瘍部位への局所投与によって回避することができる。全身送達および延長された(長期)治療を必要とする治療への応用のためには、Fab 半減期を増大させるための行為が必要である。増大した Fab 半減期を得るために、安定化分子 (Fab 断片の抗原結合特性を改変しないもの)との接合(conjugation)によって得られるFabの安定化された形態が実現されている。
【0033】
PEG化はもっとも強化された技術であるが (Chapman AP. Adv Drug Deliv Rev 2002 54:531-545)、PEG化は、治療用タンパク質の安定性を満たすための唯一の可能性ではない。
【0034】
化学修飾に代えて、組み換え Fab 分子を、高アフィニティーにて血清アルブミンと結合することができるペプチドまたはドメインをコードする配列を組み込むように一次ヌクレオチド配列のレベルで修飾することができ (Dennis MS, et al., J Biol Chem 2002 277:35035-35043; Stork R, et al. Protein Eng Des Sel 2007 20:569-576)、あるいは、Fabをコードする鎖の一つが生物学的に不活性なタンパク質(例えば、血清アルブミン (Subramanian GM、et al. Nat Biotechnol 2007 25:1411-1419))をコードする配列とインフレームにて融合するようなキメラ分子として作成することもできる。ポリエチレングリコール、アルブミン結合ドメイン、アルブミン、またはFab 断片の抗原結合特性を改変しないその他のあらゆる配列が、Fab 断片のインビボ血漿中半減期を上昇させることができる安定化分子として用いることができる。
【0035】
DN30 抗-cMet モノクローナル抗体は、Advanced Biotechnology Center (ABC)、Interlab Cell Line Collection (ICLC), S.S. Banca Cellule e Colture in GMP, Largo Rosanna Benzi 10, Genova, Italyに受託番号 ICLC PD 05006にて寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される。
【0036】
本開示による、放射線治療耐性を低減するおよび/またはなくするための、Met 阻害剤の投与に好適な腫瘍としては、i)癌腫、好ましくは、膀胱、乳房、胆管癌、結腸直腸、子宮内膜、食道、胃、頭頸部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、卵巣、膵臓/胆嚢、前立腺、甲状腺(癌)から選択されるもの、ii) 軟部組織肉腫、好ましくは、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、MFH/線維肉腫から選択されるもの、iii) 骨格筋肉腫、好ましくは、骨肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫から選択されるもの、iv) 造血器悪性腫瘍、好ましくは、急性骨髄性白血病、成人T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫から選択されるもの、v)その他の腫瘍、好ましくは、脳腫瘍、黒色腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍から選択されるものが挙げられる。
【0037】
これらのすべての腫瘍は、実際、「秩序を失った Met 経路」を示し、ここでこの表現は、これらの腫瘍が以下の少なくとも一つに起因する異常な Met シグナル伝達によって特徴づけられることを意味する:i) Met 突然変異、ii) Met タンパク質過剰発現、iii) MET遺伝子増幅、iv)循環 HGFのレベル上昇。
【0038】
Met 阻害剤のヒト患者への投与
抗-Met 抗体は、ヒト悪性腫瘍に関与するその他の受容体チロシンキナーゼを標的化する抗体(例えば、トラスツズマブ、HER-2に対する抗体)について採用されているものと類似の投与計画によって投与される。典型的には、抗体またはその誘導体または断片は、5-10 mg/kg、好ましくは、4-8 mg/kgの範囲の週用量にて静脈内注入により投与される。放射線治療との組合せのためには、抗-Met 抗体の投与は照射の一週間前、より好ましくは一日前に開始し、放射線治療が終わった後一週間まで、好ましくは 6 〜 48 時間まで継続する。
【0039】
抗-Met 抗体、またはその誘導体または断片をコードするcDNA 配列も、「遺伝子治療」手順によってヒト患者に投与することができる。cDNA 配列は、ウイルス起源 (レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス等)の形質導入(transduction)ベクターにクローニングされ、特異的な表面結合タンパク質によって腫瘍または腫瘍関連細胞を特異的に標的化することができるウイルス粒子へとアセンブリーされる。次いで、ウイルス粒子調製物はGMPグレードの設備において産生される。この調製物は、単回または複数回注射によって全身的または腫瘍内のいずれかによって送達されうる。ウイルスベクターにより形質導入された(transduced) 腫瘍組織は、抗-Met 抗体、またはその誘導体または断片の配列によってコードされるタンパク質を発現し、それにより、自己抑制的(auto-inhibitory)回路を提供する。
【0040】
以下の実験データが提供される; 実験はDN30 モノクローナル抗体および/またはその誘導体および/または断片を用いて実施し、その目的はいくつかの好ましい態様の詳細な記載を提供することであり、本発明の目的を限定する意図のものではない。
【実施例】
【0041】
材料および方法
細胞株およびsiRNA。細胞株(A549、MDA-MB-231、LoVo、MDAMB- 435S、U-87MG、U-251、PC3、SF295、DLD1、SK-N-SH)はATCCから得た。ATM キナーゼ阻害のために、細胞を照射の前に4時間前処理し、次いで、CGK733 (DMSO中10 μM)の存在下で維持した。siRNAs 標的化RELA (ON-TARGET plus SMART pool L-003533-00 Human RELA、NM_021975、Dharmacon、100 nM)、または 対照 siRNAs (ON-TARGET plus SMART pool、siCONTROL Non Targeting siRNA、Dharmacon)を一過性にトランスフェクトした。
【0042】
siRNA 配列は以下の通りであった。
「SMART pool L-003533-00 Human RELA NM_021975」は、以下の二本鎖配列の1:1:1:1:混合物であった:
(1) センス: GGAUUGAGGAGAAACGUAAUU (配列番号1)、
アンチセンス: 5’-NUUUCCUACAAGCUCGUGGGUU (配列番号2)、
(2) センス: CCCACGAGCUUGUAGGAAAUU (配列番号3)、
アンチセンス: 5’-NUUUCCUACAAGCUCGUGGGUU (配列番号4)、
(3) センス: GGCUAUAACUCGCCUAGUGUU (配列番号5)、
アンチセンス: 5’-NCACUAGGCGAGUUAUAGCCUU (配列番号6)、
(4) センス: CCACACAACUGAGCCCAUGUU (配列番号7)、
アンチセンス: 5’-NCAUGGGCUCAGUUGUGUGGUU (配列番号8)。
【0043】
SMART pool、siCONTROL Non Targeting siRNA (1つのシングルデュープレックス(single duplex)配列):
センス: AUGUAUUGGCCUGUAUUAG (配列番号9)。
【0044】
DN30 抗体およびDN30 Fab 断片産生。DN30 モノクローナル抗体を、Prat M. et al., 1998, J. Cell Sci 111:237−247に記載されているように産生し、Advanced Biotechnology Centerに、受託番号 ICLC PD 05006にて寄託した。DN30 Fab 断片をDN30 パパイン消化およびアフィニティー精製 (Immunopure Fab Preparation Kit, Pierce)を介して得た。
【0045】
DN30 重鎖のアミノ酸配列を図 8bに図示し、配列番号10に示し、DN30 重鎖のヌクレオチド配列を図 8aに図示し、配列番号11に示す。
【0046】
DN30 重鎖のCDR 領域に対応するアミノ酸配列は以下の通りである: CDR-H1: GYTFTSYW (配列番号12); CDR-H2: INPSSGRT (配列番号13); CDR-H3: ASRGY (配列番号14)。DN30 重鎖のCDR 領域に対応するヌクレオチド配列は以下の通りである: CDR-H1: GGCTACACCTTCACCAGTTACTGGA (配列番号15); CDR-H2: ATTAATCCTAGCAGCGGTCGTACT (配列番号16); CDR-H3: GCAAGTAGG (配列番号17)。
【0047】
DN30 軽鎖のアミノ酸配列を図 9bに図示し、配列番号18に示し、DN30 軽鎖のヌクレオチド配列を図 9aに図示し、配列番号19に示す。
【0048】
DN30 軽鎖のCDR 領域に対応するアミノ酸配列は以下の通りである: CDR-L1: QSVDYDGGSY (配列番号20); CDR-L2: AAS (配列番号21); CDR-L3: QQSYEDPLT (配列番号22)。DN30 軽鎖のCDR 領域に対応するヌクレオチド配列は以下の通りである: CDR-L1: AAAGTGTTGATTATGATGGTGGTAGTTATAT (配列番号23); CDR-L2: GCTGCATCC (配列番号24); CDR-L3: CAGCAAAGTTATGAGGATCCGCTCACG (配列番号25)。
【0049】
インビトロ照射。X線は6 MVにて作動している線形粒子加速器 (Clinac 600C/D、Varian)によって放射した。
【0050】
ウェスタンブロット。タンパク質発現を、照射されたコンフルエントな、血清飢餓(serum-starved) 細胞において調べた。細胞質および核部分における分画のために、細胞を洗浄し、「バッファー A」(10 mM HEPES pH 7.9、10 mM KCl、0.1 mM EDTA、0.5% NP-40、1 mM ジチオスレイトール、1 mM フッ化フェニルメチルスルホニルおよびプロテアーゼ阻害剤の混合物(cocktail))中で氷上で10分間インキュベートした。細胞質抽出物を含む、上清を、遠心分離によって分離した。ペレットを「バッファー B」(20 mM HEPES pH 7.9、400 mM KCl、1 mM EDTA、1 mM ジチオスレイトール、10% グリセロール、1 mM フッ化フェニルメチルスルホニルおよびプロテアーゼ阻害剤の混合物)に再懸濁し、4℃で1時間激しく混合しながらインキュベートした。その結果得られた核溶解液を高速遠心分離によって清澄にした。等量のタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、以下の一次抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した: マウス抗-ヒト Met (Prat et al., Int. J. Cancer 49, 323-328 (1991)に開示のDL21)、マウス抗-p65/RelA およびマウス抗-HIF-1α (BD Biosciences)、ウサギ抗-ホスホ-Ser276およびウサギ 抗カスパーゼ-3 (Cell Signaling)、ウサギ抗-ホスホ-Chk2 (T68、R&D Systems)。ヤギ抗-アクチン (C-11; Santa Cruz Biotechnology)およびマウス 抗-ラミン B (Calbiochem)をそれぞれ等しい細胞質または核タンパク質ローディングの対照のために用いた。ブロットイメージをモレキュラーイメージャー (GelDoc XR; Bio-Rad Laboratories)を用いて獲得した。濃度測定分析をQuantity One 1-D (Bio-Rad Laboratories)を用いて行った。示されるウェスタンブロットは、少なくとも3つの独立した実験において得られた結果の代表である。
【0051】
ノザンブロット。コンフルエントな細胞を48時間血清飢餓させ、照射した。トータルRNAを0.8% アガロース-ホルムアルデヒドゲルにて分離し、標準的手順に従ってナイロンメンブレン(Amersham)にトランスファーした。全コード配列 (GenBank 受入番号J02958)を含むMET プローブをpCEV-MET プラスミド (Michieli et al., Oncogene 18, 5221-5231 (1999)参照)から得、[α-32P]dCTP (Megaprime、Amersham)で標識した。ハイブリダイゼーションを50% ホルムアミドの存在下で42℃で16時間行った。ナイロンメンブレンを2X SSC-0.1% SDSで2回、0.1X SSC-0.1% SDSで2回、42℃で洗浄し、オートラジオグラフィーに供した。
【0052】
ROS 検出。細胞内 ROS 生成を5-(および 6)-カルボキシ-2’-7’-ジクロロフルオレセインジアセタート (カルボキシ-H2DCFDA、Molecular Probes)を製造業者の指示に従って用いて評価した。簡単に説明すると、細胞を処理(IR: 10 Gy; 対照としてH2O2: 100 μM)の24時間前に黒色 96-ウェルプレート(3 x 104 細胞/ウェル)に播種した。細胞をフェノールレッド-非含有DMEM中でカルボキシ-H2DCFDA (10 μM)の存在下で1時間37℃でインキュベートした。細胞を洗浄し、カルボキシ-H2DCFDAの非存在下でフェノールレッド-非含有DMEM中でさらに30分間インキュベートし、次いで照射した。ROS 生成は、蛍光プレートリーダー (λex = 485 nm、λem = 535 nm) (DTX 880 Multimode Detector)を用いて照射の15分後に測定した。
【0053】
クロマチン免疫沈降 (ChIP)。4 x 107 の細胞を照射された細胞または対照細胞のいずれかについての10のChIPのために用いた。照射 (10 Gy)の後、細胞を15分間室温で1% ホルムアルデヒド中で固定し、反応をグリシン (0.125 M)を用いて終結させた。固定された細胞を洗浄し、プロテアーゼ阻害剤の混合物を補充した氷冷 PBS 中に収集し、遠心分離した。細胞質画分を上記のように抽出して廃棄し、核をペレット化し、1 mlのSDS-溶解バッファー (1% SDS、1 mM EDTA、50 mM Tris-HCl pH 8、およびプロテアーゼ阻害剤の混合物)に再懸濁した。核を次いで超音波処理により破壊し、バルクサイズ(bulk size)が400-1000 bpのDNA 断片を得た。細胞残屑を14.000 rpmで10分間の4℃での遠心分離により清澄にした。クロマチン調製物を含有する上清を希釈バッファー 10X (0.01% SDS、1.1% Triton X-100、1.2 mM EDTA、16.7 mM Tris-HCl pH 8、167 mM NaCl)で希釈した。クロマチンを次いで、プロテインG-セファロース (Amersham、0.2 mg/ml のサケ精子 DNA、0.1% BSA および 0.05% NaN3を補充した50%ゲルスラリー(gel slurry))を添加することにより1時間 4℃にてあらかじめ清澄にした(pre-cleared)。ビーズを4000 rpm で4℃での短い遠心分離によりペレット化し、上清を収集した。3%のクロマチン調製物をChIP 正規化(normalisation)のためのInputとして用いた。ChIP を一晩4℃で 4 μg の抗体 (抗-p65/RelA、Santa Cruz; 全(total)マウス IgG、Chemicon)を用いて行い、50 μlのプロテインG-セファロースビーズとともに3時間インキュベーションを行った。ビーズを回転台の上で 4℃で以下の溶液 (各10分間)を用いて連続的に洗浄した:低塩バッファー (0.1% SDS、1% Triton X-100、2 mM EDTA、20 mM Tris-HCl pH 8、150 mM NaCl)を用いて2回、高塩バッファー (0.1% SDS、1% Triton X-100、2 mM EDTA、20 mM Tris-HCl pH 8、500 mM NaCl)を用いて2回、LiCl バッファー (0.25 M LiCl、1% デオキシコール酸、0.5% NP-40、1 mM EDTA、10 mM Tris-HCl pH 8)を用いて1回、およびTE (10 mM Tris-HCl pH 8、1 mM EDTA)を用いて2回。ChIPをEB (1% SDS、0.1 M NaHCO3)中で2回溶出させ、一晩65℃で維持して、ホルムアルデヒド架橋を逆転させた(reverse)。RNase (50 μg/ml、37℃30分間)およびプロテイナーゼ-K (500 μg/ml、45℃2時間)による処理を行った。各サンプルをフェノール/クロロホルム抽出によって精製し、最後に40 μlの滅菌水に再懸濁した。2 μlの各サンプルをABI PRISM 7900HT 配列検出システム (Applied Biosystems)でのSYBR GREEN PCR Master Mix (Applied Biosystems)を用いるリアルタイム PCRのためのテンプレートとして用いた。
【0054】
用いたプライマーは以下の通りであった:
- NFKBIA (fw: GAACCCCAGCTCAGGGTTTAG - 配列番号26; rev: GGGAATTTCCAAGCCAGTCA - 配列番号27);
- κB1 (fw: AGGCCCAGTGCCTTATTACCA - 配列番号28; rev: GCGGCCTGACTGGAGATTT - 配列番号29);
- κB2 (fw: GGGACTCAGTTTCTTTACCTGCAA - 配列番号30; rev: GGGACTCAGTTTCTTTACCTGCAA - 配列番号31)。
【0055】
創傷治癒アッセイ。細胞を24-ウェルプレート中で集密になるまで成育させ、24 時間飢餓させ、プラスチックチップで掻き取った。培地を1% FBSを含む新鮮な培地および媒体(vehicle) のみ (DMSO)に交換し、直ちに照射した。24 時間後、細胞を11% グルタルアルデヒド (Sigma)により固定し、クリスタル・バイオレットにより染色した。画像を倒立光学顕微鏡 (DM IRB、Leica)に連結したLeica photocamera (Leica DFC320、Leica)により獲得した。画像は少なくとも3つの独立した実験において得られた結果の代表である。
【0056】
トランスウェルアッセイ。細胞浸潤をTranswell(商標) チャンバー (BD Falcon)において測定した。MDA-MB-231 および MDA-MB-435S 細胞 (5 x 105/トランスウェル)を、20 μg/cm2 の再構成されたマトリゲル基底膜 (Collaborative Research)により上側が被覆されたフィルター上に播種した。U-251 (104/トランスウェル)を50 μg/cm2に被覆されたフィルター上に播種した。1% FBSを補充した培地を両方のチャンバーに添加した。播種の1時間後、細胞を照射し (10 Gy)、37℃で24時間インキュベートした。フィルター上側の上の細胞を機械的に除き、下側へと遊走した細胞を上記のようにして固定し、染色し、撮像した。細胞浸潤の定量のために、1実験条件あたり10の視野をランダムに選択し、10X 対物レンズ(objective)を用いて上記のように顕微鏡写真撮影した。形態計測解析をMetaMorph 7.1 ソフトウェアを用いて行った。画像は少なくとも3つの独立した実験の代表である。
【0057】
分枝形態形成アッセイ。MDA-MB-435S 球状体(spheroid)を、240 mg/ml メチルセルロース (Sigma)中での単細胞再懸濁および非接着性 96-ウェルプレート (Greiner)における24時間の培養によって前もって形成させた。球状体を、1.3 mg/mlのラット尾部由来I 型コラーゲン(BD Biosciences)、10% FBS、および240 mg/ml メチルセルロースを含むマトリックスへと移した。24時間後、細胞を、照射および/またはHGFの存在下で7日間培養した。HGF をSF9 細胞中にバキュロウイルス組み換えタンパク質として得た。非感染細胞からの培養上清(conditioned medium)を陰性対照として用いた。画像は3つの独立した実験において得られた結果の代表である。
【0058】
DN30 Fabを用いる細胞生存能力アッセイ。103 の細胞を 96-ウェルプレートに播種し、24時間成育させた。培地を1% FBS およびDN30 Fab (28 μg/ml)を含む培地または媒体単独 (PBS)と交換した。24 時間後、細胞を照射した (10 Gy)。細胞生存能力を上記のようにして評価した。
【0059】
結果
IR はMET 転写を誘導する
本発明者らは、以前にMET 癌原遺伝子が細胞外および細胞内の特定のシグナル、例えば、増殖因子および酸素センサーによって転写的に制御されることを示している。ここでは、治療用量のIR (10 Gyまで)への曝露によるMet 発現の調節を調べる。
【0060】
様々な組織型の腫瘍組織 (乳房、肺、前立腺および結腸の癌腫; 黒色腫; 膠芽細胞腫; 神経芽細胞腫)に由来する10の細胞株において、Met タンパク質レベルが照射の24時間後に顕著に上昇したことが見いだされた。代表的な細胞株 (例えば、 MDA-MB-435SおよびMDA-MB-231)において、詳細な経時変化実験により、Met タンパク質蓄積の二相性プロファイルが明らかになった。これは、約1-2 時間のMet 誘導 (〜5倍)の初期ピーク、次いで、同様の 6 時間目に現れる後期ピークまたはプラトー、そして照射の24時間後の低下を特徴とする(図1a)。用量-応答実験により、Met 誘導は1 Gyの後に開始し、5 Gyにてプラトーに達することが示された (図1b)。照射された細胞において、MET mRNA 蓄積、および全長 MET プロモーターの活性化もまた観察され(図1c-d)、これはIR-誘導性 MET 過剰発現は転写機構を伴うことを示している。興味深いことに、MDA-MB-231において、一過性であってリガンドに依存しない Met 自己リン酸化もまた検出され、これはIRへの曝露後10分間以内に起こった (図6)。IR-誘導性 Met リン酸化の強度は非飽和濃度の HGF (50 ng/ml)によって引き起こされるものと匹敵していた。しかし、リン酸化の反応速度論は異なっており、IRによって誘導されたピークは10分後に達成された一方で、HGFにより誘導されたピークは、30分後に達成された。IR およびHGFによる同時に起こる刺激は相乗的ではなかった(図6)。
【0061】
IR-誘導性 MET 転写はNF-κBを必要とする
IRはいくつかの転写因子、例えば、NF-κBを調節することが知られている。したがって、ゲノム規模での発現プロファイリングは、調べた細胞株において、IRが顕著な初期 NF-κB 応答を誘導することを示した。例えば、MDA-MB-231において、照射の1 時間後に調節された33の遺伝子のうち9つはNF-κB 標的であり、予測されるよりも〜20 倍高い頻度を示した。さらに、MDA-MB-231、MDA-MB-435S または U-251 細胞を用いる経時変化実験において、IR (10 Gy) は迅速(30分以内) かつ 持続性の (24時間までの) NF-κB サブユニット p65/RelAの核内蓄積を誘導し、これは NF-κB 活性化の特徴である (図2a)。さらに、照射後初期の時点において、核 p65/RelA は一過性にSer276 においてリン酸化された(図2a)。このリン酸化はプロテインキナーゼ Aを介して活性酸素種(ROS)により誘導されること、および初期標的遺伝子のサブセットの上方制御に必要である転写補助活性化因子 CBP/p300とのp65/RelA 相互作用を促進することが知られている。これらのデータは、IRがp65/RelA サブユニットの核内蓄積および初期の一過性のリン酸化を介してNF-κBの機能活性化を促進することを示す。
【0062】
MET ヒトプロモーターにおいて、配列 (GenBank 受入番号AF046925)の転写開始部位に対して、-1349/-1340 bpに位置するκB1と、-1149/-1136 bpに位置するκB2との2つの推定 NF-κB 結合部位がインシリコ分析により同定された。興味深いことに、κB2 部位は met マウスプロモーターにおいて高度に保存されている (図7; 配列番号32に示すmet マウス (mus musculus) プロモーター配列および配列番号33に示すmet ヒト (homo sapiens) プロモーター配列)。クロマチン免疫沈降実験は、p65/RelAのいずれかの部位への結合(association)が10 Gy に曝露された細胞において顕著に上昇したことを示し(図2b)、MET が、照射された細胞においてNF-κB によって転写的に制御されていることが示された。これらの知見は、本発明者らが NF-κB がIRによるMET 誘導のための絶対条件であるかどうかを調べることを促した。p65/RelAはいくつかのNF-κB ヘテロダイマーのそれぞれの形成に関与しており、それにより全体のNF-κB-駆動転写活性にとって重要であるため、p65/RelA 発現を RNA 干渉を介して消失させた(abrogated)。p65/RelAに対するsiRNA (SMART pool L-003533-00 Human RELA、配列番号1〜8)で処理されたMDA-MB-231 またはMDA-MB-435Sにおいて、IRはもはや全長 MET プロモーター活性 (図2c)も Met タンパク質の蓄積も誘導することができなかった。これらをまとめると、これらのデータは、IR-誘導性 MET 上方制御が転写因子 NF-κBの活性化を必要とすることの説得力ある証拠を提供する。
【0063】
IR-誘導性 MET 転写における低酸素誘導因子-1 (HIF-1)の関与もまた考慮された。というのは、(a) HIF-1は照射された細胞においてROS 形成の結果として活性化されることが示されており、そして、 (b) HIF-1はMET 発現の顕著な調節因子であるからである。しかし、HIF-1の関連性は相補的なアプローチにより示されるようにごくわずかであった。第一に、MDA-MB-231 およびMDA-MB-435Sにおいて、IRはHIF-1 活性化の特徴であるHIF-1α サブユニットの核転座を誘導せず、それはそうではなく細胞を低酸素濃度において培養した場合に観察された (図2a)。HIF-1 活性化の欠如は照射された細胞における弱いROS 産生に起因するのではなかった。というのは、ROSは、10 Gyへの曝露の15分後に、平均して25 ±3.5%上昇したからである。これは、1-10 Gyに曝露された細胞株における以前の観察によると、照射の2-5分後の平均80%のROS 誘導に対応すると見積もられた。さらに、IRは、低酸素状態-誘導性 MET 上方制御に必要な2つの機能的な低酸素応答性領域 (HRE)、およびAp-1 部位を含む、いわゆる 「最小(minimal)」 MET プロモーターを活性化することができないことが判明した。これらをまとめると、これらのデータは、HIF-1 がIR によるMET 上方制御に関与していないことを示す。しかし、低酸素状態がp65/RelA 核転座およびセリンリン酸化を誘導したことが観察された (図2a)。最後に、顕著な IR-標的である転写因子 p53の関与もまた除外された。実際、MDA-MB-435S および MDA-MB-231 (IR による最高のMET 誘導を示す2つの細胞株)はp53 を不活性化する突然変異 (それぞれ、G266E およびR280K)を有している(harbour)。さらに、マウスプロモーターとは異なり、ヒト MET プロモーターは、p53の構成的に活性な形態によってはアップレギュレートされない。
【0064】
IR-誘導性 MET 発現はATM キナーゼ活性化により媒介される
NF-κBは、細胞外および細胞内シグナルの両方により惹起されるいくつかの経路の交差点である。後者にはDNA 損傷の検出の後にプロテインキナーゼ ATMによって引き起こされるものが含まれる。IR によるMET 誘導がATM キナーゼの活性化に依存するか否かを調べるために、MDA-MB-435S または MDA-MB-231を10 μM の特異的低-分子阻害剤 CGK733により処理した。経時変化実験において、CGK733は特異的 ATM 基質である Chk2のIR-誘導性リン酸化、ならびに p65/RelA 核転座、およびMet タンパク質過剰発現を妨げた。これらのデータはATM キナーゼがIR-誘導性 MET 上方制御のために必要であることを示す (図3)。
【0065】
IR-誘導性浸潤性増殖はMetを必要とする
Met 過剰発現は、細胞外リガンドであるHGFの非存在下においてはキナーゼ活性化を意味しない。しかし、それはリガンド-依存性シグナル伝達活性における顕著な上昇を引き起こす (即ち、 感作)。これは、低酸素状態が、照射によって誘導されるものに匹敵するまたはそれより低いレベルへとMet 発現をアップレギュレートした細胞において観察された。
【0066】
本発明者らはしたがって、IR-誘導性 Met 過剰発現がMet-依存的生物学的応答を引き起こすかまたは増強することができるか否かを調べた。これらには浸潤性増殖の生理的および病理学的側面が含まれる。細胞が損傷した組織を再生する能力(即ち、生理的浸潤性増殖)を評価する創傷治癒アッセイにおいて、照射された MDA-MB-231、ならびにMDA-MB-435Sは、創傷の端から離れること、および傷ついた部位にわたって遊走することによって、治癒プログラムを自発的に行った。24時間モニターされたこの応答は、HGF によって刺激されたものと重複していた。HGFは、細胞解離および運動性を促進するので、「細胞分散因子(Scatter Factor)」としても知られている。しかし、IRによって引き起こされた治癒応答はHGF自己分泌ループの誘導に起因するものではなかった。というのは照射された細胞は、定量的 PCRによって評価した場合にHGFを発現していなかったからである。本発明者らは、IR-誘導性 Met 過剰発現は1% 血清を補充された培地に存在する少量の HGFに対して細胞を感作すると結論づける。この条件はおそらくは細胞外マトリックスに遍在的に埋め込まれたHGFのインビボでの生理的存在を模倣しているようである。
【0067】
照射された細胞を次いでトランスウェルアッセイにおいて評価し、インビボ浸潤、即ち、悪性浸潤性増殖と緊密に相関する、人工基底膜をインビトロで侵す能力を測定した。実際、照射された細胞 (例えば、 MDA-MB-231、MDA-MB-435S、またはU-251)は低血清濃度 (1%)の存在下で自発的にトランスウェル基底膜を横切り(図4a)、これもまたHGFによって引き起こされる挙動を模倣していた。
【0068】
IRはMet-誘導性形態形成を侵襲性プロセスへと向かわせる
分枝形態形成は、発達の際に三次元器官を生成するためにHGF によって誘導される複雑な生理的プロセスである。この多段階のプログラムは、細胞遊走、増殖および空間再編成を引き起こし、最終的には極性細胞によって覆われた中空の分枝管の生成を導く。研究した細胞株のいくつか、例えば、 MDA-MB-435Sは、分枝形態形成プログラムをインビトロで完全に実行することができる。
【0069】
IR への曝露はこれらの細胞を最適以下の濃度の外因性 HGF (5 nM)に対して感作し、これは - 単独では - 分枝形態形成を誘導することができないものである (図4b)。重要なことに、HGFにより刺激された照射された細胞は、細胞が反管腔側面(abluminal surface)から離れ、周囲のマトリックスへと広がったため、顕著に構造変化した小管を作った(図4b)。この挙動は、TNFαに対する応答において起こる異常な形態形成の形態として説明される「三次元分散(scatter)」を想起させる。治療用量のIRは生理的分枝形態形成を異常な侵襲誘発性(pro-invasive)プロセスへと向かわせる可能性があると結論された。
【0070】
Met 阻害は細胞をIR-誘導性アポトーシスおよび増殖抑制に対して感作する
EMT/IG プログラムの一部として、Met はPI3-キナーゼ/AKTを含む下流の経路の持続的活性化を介して強力な抗-アポトーシスシグナルを発する。本発明者らはしたがって、MET 上方制御は照射によって誘導される胞細死を妨げることができること、および、逆に、Met 阻害は放射線治療の有効性を上昇させることができることを推論した。
【0071】
細胞生存能力の低下(75%まで)がDN30 抗-Met 抗体のFab 断片の存在下で維持された照射された細胞において観察された。DN30 抗-Met 抗体のFab 断片はMET ダウンレギュレーションを誘導し、したがってMET シグナル伝達および生物学的活性を阻害することが知られている(Petrelli et al.、PNAS 103: 5090-5、2006) (図5)。
【0072】
これらの結果は、Met 阻害活性は細胞死を上昇させ、治療後の増殖を再開させる能力を低減することにより、細胞を放射線治療に対して感作することを示す。
【0073】
当然のことであるが、本発明の原理は同じままであるが、構成の詳細および態様は、本発明の範囲を逸脱することなく、単に例示により記載および説明されたことに関して大幅に変動しうる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、癌に罹患している患者における放射線治療の有効性を増強するためのMET 阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
癌患者の治療のために成功裏に使用されているにもかかわらず、放射線治療は腫瘍を根絶することができないことがあり、腫瘍がより悪性の表現型を伴って再発する場合がある。それに一致して、電離放射線 (IR)の矛盾した転移誘発(pro-metastatic)効果が、動物モデルにおける古典的研究によって明らかになってきた。放射線治療の後の腫瘍の進行は、本質的に放射線耐性である、「癌幹細胞」亜集団の正の選択に起因しうる。しかしながら、顕著な証拠が、選択に加えて、IRが組織再生を目的とした適応(adaptive)表現型を促進することを示しており、それは転移挙動に進展しうる。この表現型は、DNA 損傷に対する「ストレスおよび回復(stress-and-recovery)」応答として規定され、単細胞および組織レベルの両方において起こる。単細胞において、DNA 損傷の検出は、おもにATM-p53 軸によって組織化されている特異的な分子機構を誘発し、それは複製を阻害し、DNA 修復を活性化する。損傷が非可逆的である場合、正常細胞は、アポトーシスを経るか、あるいは老化を介してその増殖能を引きこもらせるようにプログラムされる。しかしながら、変異細胞の死の後、組織は元の構造および機能を取り戻すために適正な細胞数およびパターンを回復しなければならない。したがって、再生 (または「創傷治癒」)が、正常または腫瘍性の生存細胞によって開始される。インビトロで観察されるように、このプロセスは、傷の縁からの脱離、線維芽細胞表現型の獲得、傷ついた部位への遊走、そしておそらくは、増殖といった工程を含む。この全プログラムは、形態学的特徴を強調する専門用語である「上皮間葉移行」 (EMT)と称されてきた。より最近には、このプログラムはまた、癌に関する機能的側面を強調する語である、「浸潤性増殖」(IG)としても規定されている。現在では、EMT/IGは、組織発達および再生のための生理的プログラムであるということが広く受け入れられており、それは、浸潤および転移を行うために癌細胞によって奪われる。EMT/IGは癌細胞において、(a)時折、クローン選択を支持する遺伝子損傷の結果として; (b)より頻繁に、不利な環境条件への適応応答の結果として、活性化される。
【0003】
したがって、EMT/IGは、数個の特定の転写因子によって最終的には制御され、少数の細胞外シグナルによって調整される遺伝的プログラムである。後者は、細胞分散因子(scatter factor)、例えば、肝細胞増殖因子 (HGF)およびマクロファージ刺激タンパク質 (MSP)を含み、これらは、Met ファミリーに属するチロシンキナーゼ受容体に結合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の目的および概要
それゆえ、腫瘍に罹患している患者における放射線治療の有効性を増強するための改善された解決手段に対する必要性が感じられている。
【0005】
本開示の目的は、かかる改善された解決手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記目的は添付の特許請求の範囲において具体的に記載されている特定事項のおかげで達成され、それらは本開示の不可分の部分を形成するものとして理解される。
【0007】
本発明のある態様は、腫瘍、好ましくは秩序を失った(deregulated)Met 経路を示す腫瘍に罹患している患者の治療におけるMet 阻害剤の使用を提供し、ここで、Met 阻害剤は以下から選択され:
i) 抗-Met モノクローナル抗体、
ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む遺伝子組み換え (genetically engineered)抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、
ここで、Met 阻害剤は 、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することおよび放射線治療に対する患者の耐性を低減するおよび/またはなくすることができる。
【0008】
好ましい態様において、抗-Met モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株 ICLC PD 05006によって産生されるDN30 抗-Met モノクローナル抗体である。
【0009】
さらに好ましい態様において、a)遺伝子組み換え抗体、または、b)抗-Met モノクローナル抗体または遺伝子組み換え抗体の断片に含まれる相補性決定領域 (CDR)は、アミノ酸配列を配列番号12〜14および20〜22に示すDN30 抗-Met モノクローナル抗体のCDRである。
【0010】
本開示の別の態様は、腫瘍、好ましくは、秩序を失った Met 経路を表す腫瘍に罹患している患者の治療 (例えば、遺伝子治療による)における使用のためのMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列に関し、該 Met 阻害剤は以下から選択され:
i) 抗-Met モノクローナル抗体、
ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む遺伝子組み換え抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR(s))を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、
ここで、該 Met 阻害剤は、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減するおよび/またはなくすることができるものである。
【0011】
好ましい態様において、抗-Met モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株 ICLC PD 05006によって産生されるDN30 抗-Met モノクローナル抗体である。
【0012】
好ましい態様において、a)遺伝子組み換え抗体、または、 b)抗-Met モノクローナル抗体または遺伝子組み換え抗体の断片をコードするヌクレオチド配列に含まれる相補性決定領域 (CDR)は、アミノ酸配列が配列番号12〜14および20〜22に示されるDN30 抗-Met モノクローナル抗体のCDRである。
【0013】
好ましい態様によると、Met 阻害剤は、i)注射または注入による可溶性タンパク質の形態における、または、ii)全身的または腫瘍内投与のためのベクターの手段による投与のためのものである。
【0014】
さらなる好ましい態様によると、Met 阻害剤は、少なくとも一つの安定化分子(stabilizing molecule)に所望により結合していてもよい(conjugated) Fab 断片の形態におけるものであり、ここで、安定化分子は、ポリエチレングリコール、アルブミン結合ドメイン、アルブミンから選択される。
【0015】
本開示は、照射がMET 発現 (癌の「浸潤性増殖」を駆動することが知られている癌遺伝子)をアップレギュレートすることを開示し、それは次いで細胞浸潤を促進し、細胞を放射線に誘導されるアポトーシスから保護する。したがって、特定の化合物、即ち、特定のMet 阻害剤により、MET 発現をなくすることまたはそのキナーゼ活性を阻害することは、アポトーシスを促進し、放射線に誘導される浸潤に対抗し、したがって放射線治療の有効性を増強する。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明を添付の図面に言及して例示的にのみ以下に説明する、ここで:
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図 1。IRはMET 転写を誘導する。a、照射 (10 Gy)後示された時点でのMDA-MB-435SにおけるMet タンパク質。 ctrl、時間0でのMet。b、照射 (1-10 Gy)の12時間後のMDA-MB-435SにおけるMet タンパク質。c、照射 (10 Gy)後示された時点でのMDA-MB-435SにおけるMET 転写産物。d、照射 (10 Gy; ctrl、非照射細胞)後示された時点でのMDA-MB-231におけるMET プロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ活性 (基底、プロモーター無しのコンストラクト) 。棒:2つの独立した実験の三連の分析の平均± s.e.m. (* p<0.05、n = 6、対応のあるt-検定)。a.u.、任意単位。
【図2】図2。IR-誘導性 MET 転写はNF-κBを必要とする。a、照射 (10 Gy)後示された時点または低酸素状態 (1% O2)において24時間培養後に分析されたMDA-MB-435Sにおけるタンパク質の核内蓄積。ctrl、時間0での非照射細胞。b、照射された MDA-MB-231におけるクロマチン免疫沈降(10 Gy; ctrl、非照射細胞)。棒は、MET プロモーターにおける各NF-κB 結合配列 (κB1またはκB2)の抗-p65/RelA および非特異的 IgG 免疫沈降の間の比を表す (三連の分析の平均 ± s.e.m.)。NFKBIA (IκBα) プロモーターを陽性対照として用いた。c、p65/RelA 発現につきサイレンシングされ(siRELA; siCTRL、対照)、照射された (10 Gy; ctrl、非照射細胞)、MDA-MB-231におけるMET プロモーター活性。棒は、 MET プロモーター-駆動ルシフェラーゼ発現およびプロモーター無しの(基底) ルシフェラーゼ発現の間の比を表す (3つの独立した実験における三連の分析の平均 ± s.e.m)。 差し込み図: siRNA トランスフェクションの後のp65/RelA タンパク質。d、p65/RelA 発現についてサイレンシングされたMDA-MB-435Sにおける (siRELA; siCTRL、対照)、照射 (ctrl、時間0での非照射細胞)後示された時点でのMet タンパク質蓄積。
【図3】図 3。IR-誘導性 MET 発現はATM キナーゼ活性化を必要とする。ATM キナーゼ阻害剤 CGK733で処理され、照射後示された時点にて抽出されたMDA-MB-435SにおけるMet タンパク質発現、Chk2 リン酸化 (p-Chk2) およびp65/RelA 核転座。ctrl、時間0での非照射細胞。
【図4】図 4。IR-誘導性浸潤性増殖はMetを必要とする。a、照射された MDA-MB-231またはU-251 (10 Gy; ctrl、対照)による基底膜浸潤。トランスウェルフィルターの顕微鏡写真(10X)。b、示された HGF濃度の存在下または非存在下(-) で培養された、照射された MDA-MB- 435S (10 Gy; ctrl、対照)における異常な Met-誘導性分枝形態形成。 スケール・バー: 100μm。
【図5】図 5。Met 阻害は、細胞をIR-誘導性アポトーシスおよび増殖抑制に対して感作する(sensitize)。48 時間、10 Gyで照射された、および/または、DN30 抗-Met 抗体のFab 断片の存在下で培養された、U-251の生存能力(媒体: 非照射細胞)。棒:3つの独立した実験の三連の分析の平均±s.e.m. (* p<0.05、Fab-DN30 または 10 Gyのいずれか単独に関して有意に低減した生存能力、n = 9、対応のあるt-検定)。棒:クローンを作る細胞のパーセンテージ (2つの独立した実験の三連の分析の平均 ± s.e.m.、* p< 0.05、n = 6、対応のあるt-検定)。
【図6】図6。IRは Met リン酸化を誘導する。HGF (50 nM) および/または IR (10 Gy)で処理されたMDA-MB-231細胞におけるMet リン酸化を、示された時点にて抗-Met 抗体で免疫沈降させ、抗-ホスホ-Tyr 抗体 (p-Tyr)を用いるウェスタンブロットにより分析した。Metは、タンパク質免疫沈降の対照として示した。ctrl、HGF 陰性対照で処理した細胞 (方法を参照)。
【図7】図7。マウスおよびヒト MET プロモーターのアラインメント。ヒト MET プロモーター (GenBank 受入番号AF046925)を転写因子結合部位の同定のためにTRANSFAC 7.0 ソフトウェア (Biobase Biological Database Gmbh、Wolfenbuttel、Germany)により分析した。2つの推定 NF-κB 結合部位 (κB1 およびκB2)が判明した。ヒトおよびマウス (遺伝子番号: 17295) MET プロモーターのアラインメントは、κB2 部位 (ヒト配列における-1149/-1136、長方形)が2つの種の間で高度に保存されていることを示す。
【図8】図 8: DN30 モノクローナル抗体重鎖の核酸 (a)およびアミノ酸 (b) 配列。CDR 領域は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方において下線で示す。
【図9】図 9: DN30 モノクローナル抗体軽鎖の核酸 (a)およびアミノ酸 (b) 配列。CDR 領域は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方において下線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の態様の詳細な説明
本発明を非限定的な例によっていくつかの好ましい態様に関して詳細に説明する。
【0019】
以下の記載において、様々な具体的な詳細が態様の理解の補助を提供するために与えられる。これらの態様は具体的な詳細の1以上を用いずに実践できるし、その他の方法、成分、材料などを用いても実施できる。別の例において、周知の構造、材料、または操作は、態様の側面を不明瞭にすることを避けるために詳細には示されないし、記載されない。
【0020】
本明細書において提供される見出しは便宜の目的のためのみのものであり、態様の範囲や意味を解釈するためのものではない。
【0021】
細胞内標的に損傷を与えることに加えて、電離放射線 (ほとんどは活性酸素種の生成を介する)は、調節分子の活性を調整し、かかる調節分子は、ストレスおよび回復の(stress-and-recovery) 生物学的応答を制御する。
【0022】
MET 癌遺伝子の転写上方制御(upregulation)は、この応答において重要な事象として現れ、その結果として放射線-誘導性損傷に対抗する生存促進性(pro-survival)および再生のプログラムの実行がおこる。本開示は、IR-誘導性 MET 上方制御はDNA 損傷の検出の後にタンパク質キナーゼ ATMによって誘発されるシグナル伝達経路によって制御されることを示す。この経路は、ATM キナーゼの核外輸送および転写因子 NF-κBの阻害解除を伴う。注目すべきことに、DNA 損傷によるNF-κBの活性化は放射線に対する防御応答において鍵となる役割を果たすことが知られている。というのは、NF-κBは、抗-アポトーシス遺伝子の卓越した調節因子であるからである。NF-κBによって促進される細胞生存は、癌細胞の放射線治療に対する「適応耐性」を誘導するために有効であることが提案されている。本発明者らは、NF-κBによって支持される放射線に対する適応応答は重要なことに MET 癌原遺伝子を伴うことをこのたび示す。
【0023】
IR によるMET 誘導は二相性転写事象であり、NF-κBのMET プロモーターに位置する2つのκB特異的応答要素への結合によって媒介される。照射の1-2時間以内に起こる初期転写応答はおそらくは、DNA 損傷センサー-ATMによって駆動される内因性経路によるNF-κBの活性化に依存する。考えられる限りでは、 IR-誘導性 Met 過剰発現はそれ自体で、低酸素状態-誘導性Met 過剰発現の場合において示されるように、生理的濃度の遍在する(ubiquitous)リガンド HGFの存在下でシグナル伝達を誘発するために十分である。後期および持続性 MET 上方制御 - 24時間を超えて延長するもの -はまたおそらくはNF-κBに作用する複数の外因性シグナル伝達経路によって支持されている。実際、照射はサイトカイン、例えば、TNF-α、IL-1 および IL-10の発現を促進し、これらサイトカインは、一方でNF-κB標的であり、他方でNF-κB 転写活性を刺激する。本発明者らは、生組織において、照射はNF-κBに影響する自己分泌/傍分泌ループを誘導し、それは損傷組織にわたって生存シグナルの波を伝播することを考慮する。
【0024】
注目すべきことに、NF-κBに対する転写応答には、生存促進性遺伝子に加えて、EMT/IGに責任のある分子が含まれることが知られている。生存促進性プログラムおよびEMT/IG 遺伝的プログラムの組み合わせての実行は、両刃の剣として作用する:正常組織においては、これらプログラムは生存および損傷の後の再生をもたらし;癌細胞においては、これらは悪性腫瘍への進行を助長する。
【0025】
MET 癌原遺伝子は、ストレスおよび回復(stress-and-recovery) 応答の明るい側と暗い側の両方を組織化するために必要な、決定的な(critical)NF-κB 標的であるための基準を満たす。本開示において示されるように、一方で、 IR-誘導性 Met 過剰発現は細胞が損傷した単分子層を治癒させることを可能にする。他方で、IRは細胞が基底膜を横切ることを刺激し、これは悪性腫瘍の典型的な特徴である。より驚くべきことに、IRはMet-誘導性分枝形態形成の生理的プロセスを三次元マトリックスにわたる無秩序な細胞伝播(dissemination)へと向かわせることが報告されている。すべての場合において、MET ノックダウンまたは機能阻害を介して、いくつかのNF-κB 標的遺伝子が照射された細胞において発現するが、本発明者らは、Metが生理的浸潤性増殖 (創傷治癒)と悪性浸潤性増殖 (浸潤)との両方に必要であることを示す。照射の後に再発する腫瘍の報告されている攻撃性は、したがって、MET 癌遺伝子の緊密な制御の下でのEMT/IG プログラムの活性化を伴う可能性がある。
【0026】
Metが、抗-アポトーシス、再生およびIRに対する侵襲性応答に関与している(implied)という観察は、重要な治療の結果を有する:放射線治療と Met 阻害との組合せは癌細胞を放射線増感する一方、侵襲促進性(pro-invasive) 副作用を防止する。実際、本開示は、Met 阻害が治療量のIRへの曝露の後の細胞生存およびコロニー形成活性を顕著に損なうことを示す。もっとも重要なことに、いくつかの正常組織の幹/前駆部分(compartment)において発現されるが、METは考えられる限りでは癌幹細胞においても発現され、それはしばしば正常幹細胞または増殖する前駆細胞の直接の形質転換に由来する。IR-誘導性 Met 発現および活性化は、癌 (幹) 細胞の放射線耐性および侵襲能力を支持し、したがって、それらの正の選択および伝播(dissemination)の機会を増やす。
【0027】
それゆえ、従来の治療法、即ち、放射線治療と組み合わせた、Met 阻害 (可溶性タンパク質の形態におけるMet 阻害剤の投与によるか、または、遺伝子治療、即ち、以下に規定するMet 阻害剤をコードするベクターの投与による)は、癌を根絶するためのさらなる戦略である。
【0028】
本開示において、「Met 阻害剤」という表現は、抗-Met モノクローナル抗体、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができるその誘導体および/または断片を意味する。好ましい態様において、「Met 阻害剤」は、DN30 抗-Met モノクローナル抗体、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができるその誘導体および/または断片である。
【0029】
「抗体誘導体」という表現は、抗体の相補性決定領域(CDR)を含む分子、例えば、抗体のCDRを含む遺伝子組み換えまたはヒト化抗体または抗体のCDRを含むペプチドを意味する。
【0030】
「抗体断片」という表現は、i)抗-Met モノクローナル抗体、および、 ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含む遺伝子組み換えまたはヒト化抗体の、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2 断片から選択される断片を意味する。
【0031】
薬理学的観点からは、Fab 断片の使用は長所と短所の両方を有する。Fab 分子は、下等真核生物および原核生物などの単純な発現系を用いて容易に産生することができる(Chambers RS. Curr Opin Chem Biol 2005 9:46-50)。Fab 分子はまた、抗体全体と比べて免疫原性が低く、それらの低い分子量は組織浸透を改善する。
【0032】
臨床現場におけるFab 断片の使用における問題点は、より高い腎臓クリアランスに起因するFab 断片の短い血漿中半減期に関する。これはFab 分子の腫瘍部位への局所投与によって回避することができる。全身送達および延長された(長期)治療を必要とする治療への応用のためには、Fab 半減期を増大させるための行為が必要である。増大した Fab 半減期を得るために、安定化分子 (Fab 断片の抗原結合特性を改変しないもの)との接合(conjugation)によって得られるFabの安定化された形態が実現されている。
【0033】
PEG化はもっとも強化された技術であるが (Chapman AP. Adv Drug Deliv Rev 2002 54:531-545)、PEG化は、治療用タンパク質の安定性を満たすための唯一の可能性ではない。
【0034】
化学修飾に代えて、組み換え Fab 分子を、高アフィニティーにて血清アルブミンと結合することができるペプチドまたはドメインをコードする配列を組み込むように一次ヌクレオチド配列のレベルで修飾することができ (Dennis MS, et al., J Biol Chem 2002 277:35035-35043; Stork R, et al. Protein Eng Des Sel 2007 20:569-576)、あるいは、Fabをコードする鎖の一つが生物学的に不活性なタンパク質(例えば、血清アルブミン (Subramanian GM、et al. Nat Biotechnol 2007 25:1411-1419))をコードする配列とインフレームにて融合するようなキメラ分子として作成することもできる。ポリエチレングリコール、アルブミン結合ドメイン、アルブミン、またはFab 断片の抗原結合特性を改変しないその他のあらゆる配列が、Fab 断片のインビボ血漿中半減期を上昇させることができる安定化分子として用いることができる。
【0035】
DN30 抗-cMet モノクローナル抗体は、Advanced Biotechnology Center (ABC)、Interlab Cell Line Collection (ICLC), S.S. Banca Cellule e Colture in GMP, Largo Rosanna Benzi 10, Genova, Italyに受託番号 ICLC PD 05006にて寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される。
【0036】
本開示による、放射線治療耐性を低減するおよび/またはなくするための、Met 阻害剤の投与に好適な腫瘍としては、i)癌腫、好ましくは、膀胱、乳房、胆管癌、結腸直腸、子宮内膜、食道、胃、頭頸部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、卵巣、膵臓/胆嚢、前立腺、甲状腺(癌)から選択されるもの、ii) 軟部組織肉腫、好ましくは、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、MFH/線維肉腫から選択されるもの、iii) 骨格筋肉腫、好ましくは、骨肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫から選択されるもの、iv) 造血器悪性腫瘍、好ましくは、急性骨髄性白血病、成人T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫から選択されるもの、v)その他の腫瘍、好ましくは、脳腫瘍、黒色腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍から選択されるものが挙げられる。
【0037】
これらのすべての腫瘍は、実際、「秩序を失った Met 経路」を示し、ここでこの表現は、これらの腫瘍が以下の少なくとも一つに起因する異常な Met シグナル伝達によって特徴づけられることを意味する:i) Met 突然変異、ii) Met タンパク質過剰発現、iii) MET遺伝子増幅、iv)循環 HGFのレベル上昇。
【0038】
Met 阻害剤のヒト患者への投与
抗-Met 抗体は、ヒト悪性腫瘍に関与するその他の受容体チロシンキナーゼを標的化する抗体(例えば、トラスツズマブ、HER-2に対する抗体)について採用されているものと類似の投与計画によって投与される。典型的には、抗体またはその誘導体または断片は、5-10 mg/kg、好ましくは、4-8 mg/kgの範囲の週用量にて静脈内注入により投与される。放射線治療との組合せのためには、抗-Met 抗体の投与は照射の一週間前、より好ましくは一日前に開始し、放射線治療が終わった後一週間まで、好ましくは 6 〜 48 時間まで継続する。
【0039】
抗-Met 抗体、またはその誘導体または断片をコードするcDNA 配列も、「遺伝子治療」手順によってヒト患者に投与することができる。cDNA 配列は、ウイルス起源 (レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス等)の形質導入(transduction)ベクターにクローニングされ、特異的な表面結合タンパク質によって腫瘍または腫瘍関連細胞を特異的に標的化することができるウイルス粒子へとアセンブリーされる。次いで、ウイルス粒子調製物はGMPグレードの設備において産生される。この調製物は、単回または複数回注射によって全身的または腫瘍内のいずれかによって送達されうる。ウイルスベクターにより形質導入された(transduced) 腫瘍組織は、抗-Met 抗体、またはその誘導体または断片の配列によってコードされるタンパク質を発現し、それにより、自己抑制的(auto-inhibitory)回路を提供する。
【0040】
以下の実験データが提供される; 実験はDN30 モノクローナル抗体および/またはその誘導体および/または断片を用いて実施し、その目的はいくつかの好ましい態様の詳細な記載を提供することであり、本発明の目的を限定する意図のものではない。
【実施例】
【0041】
材料および方法
細胞株およびsiRNA。細胞株(A549、MDA-MB-231、LoVo、MDAMB- 435S、U-87MG、U-251、PC3、SF295、DLD1、SK-N-SH)はATCCから得た。ATM キナーゼ阻害のために、細胞を照射の前に4時間前処理し、次いで、CGK733 (DMSO中10 μM)の存在下で維持した。siRNAs 標的化RELA (ON-TARGET plus SMART pool L-003533-00 Human RELA、NM_021975、Dharmacon、100 nM)、または 対照 siRNAs (ON-TARGET plus SMART pool、siCONTROL Non Targeting siRNA、Dharmacon)を一過性にトランスフェクトした。
【0042】
siRNA 配列は以下の通りであった。
「SMART pool L-003533-00 Human RELA NM_021975」は、以下の二本鎖配列の1:1:1:1:混合物であった:
(1) センス: GGAUUGAGGAGAAACGUAAUU (配列番号1)、
アンチセンス: 5’-NUUUCCUACAAGCUCGUGGGUU (配列番号2)、
(2) センス: CCCACGAGCUUGUAGGAAAUU (配列番号3)、
アンチセンス: 5’-NUUUCCUACAAGCUCGUGGGUU (配列番号4)、
(3) センス: GGCUAUAACUCGCCUAGUGUU (配列番号5)、
アンチセンス: 5’-NCACUAGGCGAGUUAUAGCCUU (配列番号6)、
(4) センス: CCACACAACUGAGCCCAUGUU (配列番号7)、
アンチセンス: 5’-NCAUGGGCUCAGUUGUGUGGUU (配列番号8)。
【0043】
SMART pool、siCONTROL Non Targeting siRNA (1つのシングルデュープレックス(single duplex)配列):
センス: AUGUAUUGGCCUGUAUUAG (配列番号9)。
【0044】
DN30 抗体およびDN30 Fab 断片産生。DN30 モノクローナル抗体を、Prat M. et al., 1998, J. Cell Sci 111:237−247に記載されているように産生し、Advanced Biotechnology Centerに、受託番号 ICLC PD 05006にて寄託した。DN30 Fab 断片をDN30 パパイン消化およびアフィニティー精製 (Immunopure Fab Preparation Kit, Pierce)を介して得た。
【0045】
DN30 重鎖のアミノ酸配列を図 8bに図示し、配列番号10に示し、DN30 重鎖のヌクレオチド配列を図 8aに図示し、配列番号11に示す。
【0046】
DN30 重鎖のCDR 領域に対応するアミノ酸配列は以下の通りである: CDR-H1: GYTFTSYW (配列番号12); CDR-H2: INPSSGRT (配列番号13); CDR-H3: ASRGY (配列番号14)。DN30 重鎖のCDR 領域に対応するヌクレオチド配列は以下の通りである: CDR-H1: GGCTACACCTTCACCAGTTACTGGA (配列番号15); CDR-H2: ATTAATCCTAGCAGCGGTCGTACT (配列番号16); CDR-H3: GCAAGTAGG (配列番号17)。
【0047】
DN30 軽鎖のアミノ酸配列を図 9bに図示し、配列番号18に示し、DN30 軽鎖のヌクレオチド配列を図 9aに図示し、配列番号19に示す。
【0048】
DN30 軽鎖のCDR 領域に対応するアミノ酸配列は以下の通りである: CDR-L1: QSVDYDGGSY (配列番号20); CDR-L2: AAS (配列番号21); CDR-L3: QQSYEDPLT (配列番号22)。DN30 軽鎖のCDR 領域に対応するヌクレオチド配列は以下の通りである: CDR-L1: AAAGTGTTGATTATGATGGTGGTAGTTATAT (配列番号23); CDR-L2: GCTGCATCC (配列番号24); CDR-L3: CAGCAAAGTTATGAGGATCCGCTCACG (配列番号25)。
【0049】
インビトロ照射。X線は6 MVにて作動している線形粒子加速器 (Clinac 600C/D、Varian)によって放射した。
【0050】
ウェスタンブロット。タンパク質発現を、照射されたコンフルエントな、血清飢餓(serum-starved) 細胞において調べた。細胞質および核部分における分画のために、細胞を洗浄し、「バッファー A」(10 mM HEPES pH 7.9、10 mM KCl、0.1 mM EDTA、0.5% NP-40、1 mM ジチオスレイトール、1 mM フッ化フェニルメチルスルホニルおよびプロテアーゼ阻害剤の混合物(cocktail))中で氷上で10分間インキュベートした。細胞質抽出物を含む、上清を、遠心分離によって分離した。ペレットを「バッファー B」(20 mM HEPES pH 7.9、400 mM KCl、1 mM EDTA、1 mM ジチオスレイトール、10% グリセロール、1 mM フッ化フェニルメチルスルホニルおよびプロテアーゼ阻害剤の混合物)に再懸濁し、4℃で1時間激しく混合しながらインキュベートした。その結果得られた核溶解液を高速遠心分離によって清澄にした。等量のタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、以下の一次抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した: マウス抗-ヒト Met (Prat et al., Int. J. Cancer 49, 323-328 (1991)に開示のDL21)、マウス抗-p65/RelA およびマウス抗-HIF-1α (BD Biosciences)、ウサギ抗-ホスホ-Ser276およびウサギ 抗カスパーゼ-3 (Cell Signaling)、ウサギ抗-ホスホ-Chk2 (T68、R&D Systems)。ヤギ抗-アクチン (C-11; Santa Cruz Biotechnology)およびマウス 抗-ラミン B (Calbiochem)をそれぞれ等しい細胞質または核タンパク質ローディングの対照のために用いた。ブロットイメージをモレキュラーイメージャー (GelDoc XR; Bio-Rad Laboratories)を用いて獲得した。濃度測定分析をQuantity One 1-D (Bio-Rad Laboratories)を用いて行った。示されるウェスタンブロットは、少なくとも3つの独立した実験において得られた結果の代表である。
【0051】
ノザンブロット。コンフルエントな細胞を48時間血清飢餓させ、照射した。トータルRNAを0.8% アガロース-ホルムアルデヒドゲルにて分離し、標準的手順に従ってナイロンメンブレン(Amersham)にトランスファーした。全コード配列 (GenBank 受入番号J02958)を含むMET プローブをpCEV-MET プラスミド (Michieli et al., Oncogene 18, 5221-5231 (1999)参照)から得、[α-32P]dCTP (Megaprime、Amersham)で標識した。ハイブリダイゼーションを50% ホルムアミドの存在下で42℃で16時間行った。ナイロンメンブレンを2X SSC-0.1% SDSで2回、0.1X SSC-0.1% SDSで2回、42℃で洗浄し、オートラジオグラフィーに供した。
【0052】
ROS 検出。細胞内 ROS 生成を5-(および 6)-カルボキシ-2’-7’-ジクロロフルオレセインジアセタート (カルボキシ-H2DCFDA、Molecular Probes)を製造業者の指示に従って用いて評価した。簡単に説明すると、細胞を処理(IR: 10 Gy; 対照としてH2O2: 100 μM)の24時間前に黒色 96-ウェルプレート(3 x 104 細胞/ウェル)に播種した。細胞をフェノールレッド-非含有DMEM中でカルボキシ-H2DCFDA (10 μM)の存在下で1時間37℃でインキュベートした。細胞を洗浄し、カルボキシ-H2DCFDAの非存在下でフェノールレッド-非含有DMEM中でさらに30分間インキュベートし、次いで照射した。ROS 生成は、蛍光プレートリーダー (λex = 485 nm、λem = 535 nm) (DTX 880 Multimode Detector)を用いて照射の15分後に測定した。
【0053】
クロマチン免疫沈降 (ChIP)。4 x 107 の細胞を照射された細胞または対照細胞のいずれかについての10のChIPのために用いた。照射 (10 Gy)の後、細胞を15分間室温で1% ホルムアルデヒド中で固定し、反応をグリシン (0.125 M)を用いて終結させた。固定された細胞を洗浄し、プロテアーゼ阻害剤の混合物を補充した氷冷 PBS 中に収集し、遠心分離した。細胞質画分を上記のように抽出して廃棄し、核をペレット化し、1 mlのSDS-溶解バッファー (1% SDS、1 mM EDTA、50 mM Tris-HCl pH 8、およびプロテアーゼ阻害剤の混合物)に再懸濁した。核を次いで超音波処理により破壊し、バルクサイズ(bulk size)が400-1000 bpのDNA 断片を得た。細胞残屑を14.000 rpmで10分間の4℃での遠心分離により清澄にした。クロマチン調製物を含有する上清を希釈バッファー 10X (0.01% SDS、1.1% Triton X-100、1.2 mM EDTA、16.7 mM Tris-HCl pH 8、167 mM NaCl)で希釈した。クロマチンを次いで、プロテインG-セファロース (Amersham、0.2 mg/ml のサケ精子 DNA、0.1% BSA および 0.05% NaN3を補充した50%ゲルスラリー(gel slurry))を添加することにより1時間 4℃にてあらかじめ清澄にした(pre-cleared)。ビーズを4000 rpm で4℃での短い遠心分離によりペレット化し、上清を収集した。3%のクロマチン調製物をChIP 正規化(normalisation)のためのInputとして用いた。ChIP を一晩4℃で 4 μg の抗体 (抗-p65/RelA、Santa Cruz; 全(total)マウス IgG、Chemicon)を用いて行い、50 μlのプロテインG-セファロースビーズとともに3時間インキュベーションを行った。ビーズを回転台の上で 4℃で以下の溶液 (各10分間)を用いて連続的に洗浄した:低塩バッファー (0.1% SDS、1% Triton X-100、2 mM EDTA、20 mM Tris-HCl pH 8、150 mM NaCl)を用いて2回、高塩バッファー (0.1% SDS、1% Triton X-100、2 mM EDTA、20 mM Tris-HCl pH 8、500 mM NaCl)を用いて2回、LiCl バッファー (0.25 M LiCl、1% デオキシコール酸、0.5% NP-40、1 mM EDTA、10 mM Tris-HCl pH 8)を用いて1回、およびTE (10 mM Tris-HCl pH 8、1 mM EDTA)を用いて2回。ChIPをEB (1% SDS、0.1 M NaHCO3)中で2回溶出させ、一晩65℃で維持して、ホルムアルデヒド架橋を逆転させた(reverse)。RNase (50 μg/ml、37℃30分間)およびプロテイナーゼ-K (500 μg/ml、45℃2時間)による処理を行った。各サンプルをフェノール/クロロホルム抽出によって精製し、最後に40 μlの滅菌水に再懸濁した。2 μlの各サンプルをABI PRISM 7900HT 配列検出システム (Applied Biosystems)でのSYBR GREEN PCR Master Mix (Applied Biosystems)を用いるリアルタイム PCRのためのテンプレートとして用いた。
【0054】
用いたプライマーは以下の通りであった:
- NFKBIA (fw: GAACCCCAGCTCAGGGTTTAG - 配列番号26; rev: GGGAATTTCCAAGCCAGTCA - 配列番号27);
- κB1 (fw: AGGCCCAGTGCCTTATTACCA - 配列番号28; rev: GCGGCCTGACTGGAGATTT - 配列番号29);
- κB2 (fw: GGGACTCAGTTTCTTTACCTGCAA - 配列番号30; rev: GGGACTCAGTTTCTTTACCTGCAA - 配列番号31)。
【0055】
創傷治癒アッセイ。細胞を24-ウェルプレート中で集密になるまで成育させ、24 時間飢餓させ、プラスチックチップで掻き取った。培地を1% FBSを含む新鮮な培地および媒体(vehicle) のみ (DMSO)に交換し、直ちに照射した。24 時間後、細胞を11% グルタルアルデヒド (Sigma)により固定し、クリスタル・バイオレットにより染色した。画像を倒立光学顕微鏡 (DM IRB、Leica)に連結したLeica photocamera (Leica DFC320、Leica)により獲得した。画像は少なくとも3つの独立した実験において得られた結果の代表である。
【0056】
トランスウェルアッセイ。細胞浸潤をTranswell(商標) チャンバー (BD Falcon)において測定した。MDA-MB-231 および MDA-MB-435S 細胞 (5 x 105/トランスウェル)を、20 μg/cm2 の再構成されたマトリゲル基底膜 (Collaborative Research)により上側が被覆されたフィルター上に播種した。U-251 (104/トランスウェル)を50 μg/cm2に被覆されたフィルター上に播種した。1% FBSを補充した培地を両方のチャンバーに添加した。播種の1時間後、細胞を照射し (10 Gy)、37℃で24時間インキュベートした。フィルター上側の上の細胞を機械的に除き、下側へと遊走した細胞を上記のようにして固定し、染色し、撮像した。細胞浸潤の定量のために、1実験条件あたり10の視野をランダムに選択し、10X 対物レンズ(objective)を用いて上記のように顕微鏡写真撮影した。形態計測解析をMetaMorph 7.1 ソフトウェアを用いて行った。画像は少なくとも3つの独立した実験の代表である。
【0057】
分枝形態形成アッセイ。MDA-MB-435S 球状体(spheroid)を、240 mg/ml メチルセルロース (Sigma)中での単細胞再懸濁および非接着性 96-ウェルプレート (Greiner)における24時間の培養によって前もって形成させた。球状体を、1.3 mg/mlのラット尾部由来I 型コラーゲン(BD Biosciences)、10% FBS、および240 mg/ml メチルセルロースを含むマトリックスへと移した。24時間後、細胞を、照射および/またはHGFの存在下で7日間培養した。HGF をSF9 細胞中にバキュロウイルス組み換えタンパク質として得た。非感染細胞からの培養上清(conditioned medium)を陰性対照として用いた。画像は3つの独立した実験において得られた結果の代表である。
【0058】
DN30 Fabを用いる細胞生存能力アッセイ。103 の細胞を 96-ウェルプレートに播種し、24時間成育させた。培地を1% FBS およびDN30 Fab (28 μg/ml)を含む培地または媒体単独 (PBS)と交換した。24 時間後、細胞を照射した (10 Gy)。細胞生存能力を上記のようにして評価した。
【0059】
結果
IR はMET 転写を誘導する
本発明者らは、以前にMET 癌原遺伝子が細胞外および細胞内の特定のシグナル、例えば、増殖因子および酸素センサーによって転写的に制御されることを示している。ここでは、治療用量のIR (10 Gyまで)への曝露によるMet 発現の調節を調べる。
【0060】
様々な組織型の腫瘍組織 (乳房、肺、前立腺および結腸の癌腫; 黒色腫; 膠芽細胞腫; 神経芽細胞腫)に由来する10の細胞株において、Met タンパク質レベルが照射の24時間後に顕著に上昇したことが見いだされた。代表的な細胞株 (例えば、 MDA-MB-435SおよびMDA-MB-231)において、詳細な経時変化実験により、Met タンパク質蓄積の二相性プロファイルが明らかになった。これは、約1-2 時間のMet 誘導 (〜5倍)の初期ピーク、次いで、同様の 6 時間目に現れる後期ピークまたはプラトー、そして照射の24時間後の低下を特徴とする(図1a)。用量-応答実験により、Met 誘導は1 Gyの後に開始し、5 Gyにてプラトーに達することが示された (図1b)。照射された細胞において、MET mRNA 蓄積、および全長 MET プロモーターの活性化もまた観察され(図1c-d)、これはIR-誘導性 MET 過剰発現は転写機構を伴うことを示している。興味深いことに、MDA-MB-231において、一過性であってリガンドに依存しない Met 自己リン酸化もまた検出され、これはIRへの曝露後10分間以内に起こった (図6)。IR-誘導性 Met リン酸化の強度は非飽和濃度の HGF (50 ng/ml)によって引き起こされるものと匹敵していた。しかし、リン酸化の反応速度論は異なっており、IRによって誘導されたピークは10分後に達成された一方で、HGFにより誘導されたピークは、30分後に達成された。IR およびHGFによる同時に起こる刺激は相乗的ではなかった(図6)。
【0061】
IR-誘導性 MET 転写はNF-κBを必要とする
IRはいくつかの転写因子、例えば、NF-κBを調節することが知られている。したがって、ゲノム規模での発現プロファイリングは、調べた細胞株において、IRが顕著な初期 NF-κB 応答を誘導することを示した。例えば、MDA-MB-231において、照射の1 時間後に調節された33の遺伝子のうち9つはNF-κB 標的であり、予測されるよりも〜20 倍高い頻度を示した。さらに、MDA-MB-231、MDA-MB-435S または U-251 細胞を用いる経時変化実験において、IR (10 Gy) は迅速(30分以内) かつ 持続性の (24時間までの) NF-κB サブユニット p65/RelAの核内蓄積を誘導し、これは NF-κB 活性化の特徴である (図2a)。さらに、照射後初期の時点において、核 p65/RelA は一過性にSer276 においてリン酸化された(図2a)。このリン酸化はプロテインキナーゼ Aを介して活性酸素種(ROS)により誘導されること、および初期標的遺伝子のサブセットの上方制御に必要である転写補助活性化因子 CBP/p300とのp65/RelA 相互作用を促進することが知られている。これらのデータは、IRがp65/RelA サブユニットの核内蓄積および初期の一過性のリン酸化を介してNF-κBの機能活性化を促進することを示す。
【0062】
MET ヒトプロモーターにおいて、配列 (GenBank 受入番号AF046925)の転写開始部位に対して、-1349/-1340 bpに位置するκB1と、-1149/-1136 bpに位置するκB2との2つの推定 NF-κB 結合部位がインシリコ分析により同定された。興味深いことに、κB2 部位は met マウスプロモーターにおいて高度に保存されている (図7; 配列番号32に示すmet マウス (mus musculus) プロモーター配列および配列番号33に示すmet ヒト (homo sapiens) プロモーター配列)。クロマチン免疫沈降実験は、p65/RelAのいずれかの部位への結合(association)が10 Gy に曝露された細胞において顕著に上昇したことを示し(図2b)、MET が、照射された細胞においてNF-κB によって転写的に制御されていることが示された。これらの知見は、本発明者らが NF-κB がIRによるMET 誘導のための絶対条件であるかどうかを調べることを促した。p65/RelAはいくつかのNF-κB ヘテロダイマーのそれぞれの形成に関与しており、それにより全体のNF-κB-駆動転写活性にとって重要であるため、p65/RelA 発現を RNA 干渉を介して消失させた(abrogated)。p65/RelAに対するsiRNA (SMART pool L-003533-00 Human RELA、配列番号1〜8)で処理されたMDA-MB-231 またはMDA-MB-435Sにおいて、IRはもはや全長 MET プロモーター活性 (図2c)も Met タンパク質の蓄積も誘導することができなかった。これらをまとめると、これらのデータは、IR-誘導性 MET 上方制御が転写因子 NF-κBの活性化を必要とすることの説得力ある証拠を提供する。
【0063】
IR-誘導性 MET 転写における低酸素誘導因子-1 (HIF-1)の関与もまた考慮された。というのは、(a) HIF-1は照射された細胞においてROS 形成の結果として活性化されることが示されており、そして、 (b) HIF-1はMET 発現の顕著な調節因子であるからである。しかし、HIF-1の関連性は相補的なアプローチにより示されるようにごくわずかであった。第一に、MDA-MB-231 およびMDA-MB-435Sにおいて、IRはHIF-1 活性化の特徴であるHIF-1α サブユニットの核転座を誘導せず、それはそうではなく細胞を低酸素濃度において培養した場合に観察された (図2a)。HIF-1 活性化の欠如は照射された細胞における弱いROS 産生に起因するのではなかった。というのは、ROSは、10 Gyへの曝露の15分後に、平均して25 ±3.5%上昇したからである。これは、1-10 Gyに曝露された細胞株における以前の観察によると、照射の2-5分後の平均80%のROS 誘導に対応すると見積もられた。さらに、IRは、低酸素状態-誘導性 MET 上方制御に必要な2つの機能的な低酸素応答性領域 (HRE)、およびAp-1 部位を含む、いわゆる 「最小(minimal)」 MET プロモーターを活性化することができないことが判明した。これらをまとめると、これらのデータは、HIF-1 がIR によるMET 上方制御に関与していないことを示す。しかし、低酸素状態がp65/RelA 核転座およびセリンリン酸化を誘導したことが観察された (図2a)。最後に、顕著な IR-標的である転写因子 p53の関与もまた除外された。実際、MDA-MB-435S および MDA-MB-231 (IR による最高のMET 誘導を示す2つの細胞株)はp53 を不活性化する突然変異 (それぞれ、G266E およびR280K)を有している(harbour)。さらに、マウスプロモーターとは異なり、ヒト MET プロモーターは、p53の構成的に活性な形態によってはアップレギュレートされない。
【0064】
IR-誘導性 MET 発現はATM キナーゼ活性化により媒介される
NF-κBは、細胞外および細胞内シグナルの両方により惹起されるいくつかの経路の交差点である。後者にはDNA 損傷の検出の後にプロテインキナーゼ ATMによって引き起こされるものが含まれる。IR によるMET 誘導がATM キナーゼの活性化に依存するか否かを調べるために、MDA-MB-435S または MDA-MB-231を10 μM の特異的低-分子阻害剤 CGK733により処理した。経時変化実験において、CGK733は特異的 ATM 基質である Chk2のIR-誘導性リン酸化、ならびに p65/RelA 核転座、およびMet タンパク質過剰発現を妨げた。これらのデータはATM キナーゼがIR-誘導性 MET 上方制御のために必要であることを示す (図3)。
【0065】
IR-誘導性浸潤性増殖はMetを必要とする
Met 過剰発現は、細胞外リガンドであるHGFの非存在下においてはキナーゼ活性化を意味しない。しかし、それはリガンド-依存性シグナル伝達活性における顕著な上昇を引き起こす (即ち、 感作)。これは、低酸素状態が、照射によって誘導されるものに匹敵するまたはそれより低いレベルへとMet 発現をアップレギュレートした細胞において観察された。
【0066】
本発明者らはしたがって、IR-誘導性 Met 過剰発現がMet-依存的生物学的応答を引き起こすかまたは増強することができるか否かを調べた。これらには浸潤性増殖の生理的および病理学的側面が含まれる。細胞が損傷した組織を再生する能力(即ち、生理的浸潤性増殖)を評価する創傷治癒アッセイにおいて、照射された MDA-MB-231、ならびにMDA-MB-435Sは、創傷の端から離れること、および傷ついた部位にわたって遊走することによって、治癒プログラムを自発的に行った。24時間モニターされたこの応答は、HGF によって刺激されたものと重複していた。HGFは、細胞解離および運動性を促進するので、「細胞分散因子(Scatter Factor)」としても知られている。しかし、IRによって引き起こされた治癒応答はHGF自己分泌ループの誘導に起因するものではなかった。というのは照射された細胞は、定量的 PCRによって評価した場合にHGFを発現していなかったからである。本発明者らは、IR-誘導性 Met 過剰発現は1% 血清を補充された培地に存在する少量の HGFに対して細胞を感作すると結論づける。この条件はおそらくは細胞外マトリックスに遍在的に埋め込まれたHGFのインビボでの生理的存在を模倣しているようである。
【0067】
照射された細胞を次いでトランスウェルアッセイにおいて評価し、インビボ浸潤、即ち、悪性浸潤性増殖と緊密に相関する、人工基底膜をインビトロで侵す能力を測定した。実際、照射された細胞 (例えば、 MDA-MB-231、MDA-MB-435S、またはU-251)は低血清濃度 (1%)の存在下で自発的にトランスウェル基底膜を横切り(図4a)、これもまたHGFによって引き起こされる挙動を模倣していた。
【0068】
IRはMet-誘導性形態形成を侵襲性プロセスへと向かわせる
分枝形態形成は、発達の際に三次元器官を生成するためにHGF によって誘導される複雑な生理的プロセスである。この多段階のプログラムは、細胞遊走、増殖および空間再編成を引き起こし、最終的には極性細胞によって覆われた中空の分枝管の生成を導く。研究した細胞株のいくつか、例えば、 MDA-MB-435Sは、分枝形態形成プログラムをインビトロで完全に実行することができる。
【0069】
IR への曝露はこれらの細胞を最適以下の濃度の外因性 HGF (5 nM)に対して感作し、これは - 単独では - 分枝形態形成を誘導することができないものである (図4b)。重要なことに、HGFにより刺激された照射された細胞は、細胞が反管腔側面(abluminal surface)から離れ、周囲のマトリックスへと広がったため、顕著に構造変化した小管を作った(図4b)。この挙動は、TNFαに対する応答において起こる異常な形態形成の形態として説明される「三次元分散(scatter)」を想起させる。治療用量のIRは生理的分枝形態形成を異常な侵襲誘発性(pro-invasive)プロセスへと向かわせる可能性があると結論された。
【0070】
Met 阻害は細胞をIR-誘導性アポトーシスおよび増殖抑制に対して感作する
EMT/IG プログラムの一部として、Met はPI3-キナーゼ/AKTを含む下流の経路の持続的活性化を介して強力な抗-アポトーシスシグナルを発する。本発明者らはしたがって、MET 上方制御は照射によって誘導される胞細死を妨げることができること、および、逆に、Met 阻害は放射線治療の有効性を上昇させることができることを推論した。
【0071】
細胞生存能力の低下(75%まで)がDN30 抗-Met 抗体のFab 断片の存在下で維持された照射された細胞において観察された。DN30 抗-Met 抗体のFab 断片はMET ダウンレギュレーションを誘導し、したがってMET シグナル伝達および生物学的活性を阻害することが知られている(Petrelli et al.、PNAS 103: 5090-5、2006) (図5)。
【0072】
これらの結果は、Met 阻害活性は細胞死を上昇させ、治療後の増殖を再開させる能力を低減することにより、細胞を放射線治療に対して感作することを示す。
【0073】
当然のことであるが、本発明の原理は同じままであるが、構成の詳細および態様は、本発明の範囲を逸脱することなく、単に例示により記載および説明されたことに関して大幅に変動しうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)抗-Met モノクローナル抗体、
ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、
から選択される、腫瘍に罹患している患者の治療における使用のためのMet 阻害剤であって、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減する、および/または、なくすることができるMet 阻害剤。
【請求項2】
腫瘍に罹患している患者の治療における使用のためのMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列であって、該 Met 阻害剤が:
i)抗-Met モノクローナル抗体、
ii) 抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む(i)または(ii)の断片、
から選択されるものであり、該 Met 阻害剤が、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減する、および/または、なくすることができるものである、Met阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項3】
請求項 1または 請求項 2のMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列であって、該 Met 阻害剤が:
i) DN30 抗-Met モノクローナル抗体,
ii) DN30 抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、ここで該 CDRは、配列番号12 〜 14 および 20 〜 22に示すアミノ酸配列を有する、および、
iii) DN30 抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む(i)または(ii)の断片またはそれらの組合せ、ここで該 CDRは、配列番号12 〜 14 および 20 〜 22に示すアミノ酸配列を有する、
から選択されるものであり、該 DN30 抗-Met モノクローナル抗体がハイブリドーマ細胞株 ICLC PD 05006によって産生されるものである、Met 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項4】
該 Met 阻害剤が、注射または注入による、可溶性タンパク質の形態における投与のためのものである、請求項 1 または請求項 3のMet 阻害剤。
【請求項5】
請求項 2または請求項 3の該 Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列であって、該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が、ベクターによる投与のためのものであり、該ベクターが粒子の形態におけるものである、Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項6】
該ベクターが腫瘍または腫瘍関連細胞を標的化するために好適なものである、請求項 5の該 Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項7】
該ベクターが、好ましくは注射による、全身的または腫瘍内投与のためのものである、請求項 5または請求項 6の該 Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項8】
該断片が Fab 断片、好ましくは少なくとも一つの安定化分子を含むFab 断片である前記請求項いずれかのMet 阻害剤または Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項9】
該少なくとも一つの安定化分子が、ポリエチレングリコール、アルブミン結合ドメイン、アルブミンから選択される、請求項 8のMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項10】
該 Met 阻害剤 および/または該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が、該患者を放射線治療に供する少なくとも一週間前に投与するためのものである、前記請求項いずれかのMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項11】
該 Met 阻害剤 および/または該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が該患者を放射線治療に供する一日前に投与するためのものである、前記請求項いずれかのMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項12】
該 Met 阻害剤 および/または該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が、放射線治療が終わった後、少なくとも一週間まで、好ましくは 6から48 時間まで投与するためのものである、前記請求項いずれかのMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項13】
該腫瘍が、癌腫、骨格筋肉腫、軟部組織肉腫、造血器悪性腫瘍、脳腫瘍、黒色腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍から選択される、前記請求項いずれかのMet 阻害剤または Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項1】
i)抗-Met モノクローナル抗体、
ii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む(i)または(ii)の断片、またはそれらの組合せ、
から選択される、腫瘍に罹患している患者の治療における使用のためのMet 阻害剤であって、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減する、および/または、なくすることができるMet 阻害剤。
【請求項2】
腫瘍に罹患している患者の治療における使用のためのMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列であって、該 Met 阻害剤が:
i)抗-Met モノクローナル抗体、
ii) 抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、および、
iii)抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む(i)または(ii)の断片、
から選択されるものであり、該 Met 阻害剤が、MET遺伝子によってコードされる受容体のダウンレギュレーションを誘導することができ、かつ、放射線治療に対する患者の耐性を低減する、および/または、なくすることができるものである、Met阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項3】
請求項 1または 請求項 2のMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列であって、該 Met 阻害剤が:
i) DN30 抗-Met モノクローナル抗体,
ii) DN30 抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む遺伝子組み換え抗体、ここで該 CDRは、配列番号12 〜 14 および 20 〜 22に示すアミノ酸配列を有する、および、
iii) DN30 抗-Met モノクローナル抗体の相補性決定領域 (CDR)を含む(i)または(ii)の断片またはそれらの組合せ、ここで該 CDRは、配列番号12 〜 14 および 20 〜 22に示すアミノ酸配列を有する、
から選択されるものであり、該 DN30 抗-Met モノクローナル抗体がハイブリドーマ細胞株 ICLC PD 05006によって産生されるものである、Met 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項4】
該 Met 阻害剤が、注射または注入による、可溶性タンパク質の形態における投与のためのものである、請求項 1 または請求項 3のMet 阻害剤。
【請求項5】
請求項 2または請求項 3の該 Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列であって、該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が、ベクターによる投与のためのものであり、該ベクターが粒子の形態におけるものである、Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項6】
該ベクターが腫瘍または腫瘍関連細胞を標的化するために好適なものである、請求項 5の該 Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項7】
該ベクターが、好ましくは注射による、全身的または腫瘍内投与のためのものである、請求項 5または請求項 6の該 Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項8】
該断片が Fab 断片、好ましくは少なくとも一つの安定化分子を含むFab 断片である前記請求項いずれかのMet 阻害剤または Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項9】
該少なくとも一つの安定化分子が、ポリエチレングリコール、アルブミン結合ドメイン、アルブミンから選択される、請求項 8のMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項10】
該 Met 阻害剤 および/または該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が、該患者を放射線治療に供する少なくとも一週間前に投与するためのものである、前記請求項いずれかのMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項11】
該 Met 阻害剤 および/または該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が該患者を放射線治療に供する一日前に投与するためのものである、前記請求項いずれかのMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項12】
該 Met 阻害剤 および/または該 Met 阻害剤をコードする該ヌクレオチド配列が、放射線治療が終わった後、少なくとも一週間まで、好ましくは 6から48 時間まで投与するためのものである、前記請求項いずれかのMet 阻害剤またはMet 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【請求項13】
該腫瘍が、癌腫、骨格筋肉腫、軟部組織肉腫、造血器悪性腫瘍、脳腫瘍、黒色腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍から選択される、前記請求項いずれかのMet 阻害剤または Met 阻害剤をコードするヌクレオチド配列。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−196206(P2012−196206A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−39193(P2012−39193)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(508238336)メセレシス・トランスレイショナル・リサーチ・ソシエタ・アノニマ (4)
【氏名又は名称原語表記】METHERESIS TRANSLATIONAL RESEARCH S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39193(P2012−39193)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(508238336)メセレシス・トランスレイショナル・リサーチ・ソシエタ・アノニマ (4)
【氏名又は名称原語表記】METHERESIS TRANSLATIONAL RESEARCH S.A.
【Fターム(参考)】
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