説明

放射線治療システム、絞り画像解析装置及び制御プログラム

【課題】多分割絞り体に設けられた絞りブロックの経時的な位置ズレを放射線照射強度分布の不均一性に影響されることなく正確に検出する。
【解決手段】絞り画像解析装置3は、所定位置に対しその端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて基準画像データを生成する基準画像データ生成し、更に、前記所定位置あるいはその近傍に前記端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて評価用画像データを生成する画像データ生成部31と、前記基準画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報と前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報とに基づいて前記所定位置に対する前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出部35を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線絞り部に設けられた絞りブロックの画像データに基づいてその位置ズレを検出し、得られた検出結果に基づいて絞りブロックの端部を所定の位置へ移動させる放射線治療システム、絞り画像解析装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、最小侵襲治療と呼ばれる治療法が注目を集めており、悪性腫瘍治療の分野においても最小侵襲治療への積極的な試みがなされている。特に悪性腫瘍の場合、その治療の多くを外科的手術に頼ってきたが、従来の外科的手術による治療、即ち広範囲の組織切除を行なう場合には、その臓器がもつ本来の機能や外見上の形態を大きく損なう場合が多く、生命を存えたとしても患者に対して多大な負担を与えることになる。このような従来の外科的治療に対してQOL(quality-of-life)を考慮した最小侵襲治療法が強く望まれており、その1つの方法として、腫瘍組織に対し放射線を照射して治療を行なう、所謂、放射線治療が行なわれている。
【0003】
特に、近年では、腫瘍の位置や形状をX線CT装置等の画像診断装置を用いて正確に判定し、この判定結果に基づいて予め設定した照射位置、照射領域、照射方向、照射量等を含んだ治療計画による治療が放射線治療装置によって行なわれるため、正常の組織に対する損傷や副作用が著しく低減されるようになった。このような放射線治療装置では、放射線照射領域を腫瘍等の疾患部に限定するための放射線絞り部が放射線発生部と患者の間に設けられ、放射線絞り部の多分割絞り体に設けられた複数からなる絞りブロックの各々を任意に移動させることにより不規則な形状を有している腫瘍等の疾患部に対しても最適な放射線照射領域の設定が可能となる。
【0004】
上述の放射線絞り部が備えられた放射線治療装置を用いて放射線治療を行なう際、予め設定された治療計画に基づく放射線照射領域の設定に先立ち、絞りブロックの経時的な位置ズレを補正しその端部を所定の位置へ正確に移動させるためのキャリブレーションが必要となる。このキャリブレーションの方法として、従来から、放射線絞り部の内部に光源とミラーを内蔵させ、光源からミラー及び絞りブロックの間隙部を通過した光をイメージングシート等に投影させることによって形成された画像データ(以下では、光学画像データと呼ぶ。)の観測下で絞りブロックの端部を所定位置へ手動で移動させる方法と、放射線発生部から発生し前記絞りブロックの間隙部を通過した放射線を平面検出器等に投影させることによって生成した放射線画像データの観察下で絞りブロックの端部を所定位置へ手動で移動させる方法が行なわれてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平03−44765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した光学画像データの観察下で行なう絞りブロックのキャリブレーションは、放射線を使用しないため後述する放射線照射強度分布の不均一性に起因した位置ズレを有さない正確なキャリブレーションが可能となるが、例えば、2列に配列された合計80個程からなる絞りブロックの各々を放射線照射領域に設定された7乃至10からなるキャリブレーション点の各々に対して正確に配置しなくてはならないため、キャリブレーションに多くの時間を要し、このキャリブレーションを行なう医療従事者(以下では、操作者と呼ぶ。)にとって大きな負担となっていた。
【0007】
一方、放射線画像データの観察下で行なう絞りブロックのキャリブレーションは、放射線照射領域における放射線照射強度分布が不均一な場合、この不均一性に起因した位置ズレが放射線画像データにおいて発生するため絞りブロックの端部位置情報を正確に得ることは困難であった。この場合、多数の検出素子によって構成される平面検出器を放射線検出部として備えた高性能の放射線治療装置では、検出素子の感度を放射線照射強度に対応させて補正することによりその不均一性に起因した位置ズレを低減することは可能であるが、特に、補正機能を有さないイメージングプレートを用いたCR(Computed Radiography)等においては、不均一な放射線照射強度分布に起因した放射線画像データの位置ズレにより絞りブロックのキャリブレーションを正確に行なうことができないという問題点を有していた。
【0008】
本開示は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の据え付け時等において行なわれる放射線絞り部の厳密なキャリブレーション(第1のキャリブレーション)にて収集された多分割絞り体の基準画像データと患者の疾患部に対する放射線治療に先立って行なわれる第2のキャリブレーションにて収集された前記多分割絞り体の評価用画像データとに基づいて多分割絞り体に設けられた絞りブロックの経時的な位置ズレを放射線照射強度分布の不均一性に影響されることなく正確に検出することが可能な放射線治療システム、絞り画像解析装置及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の実施形態における放射線治療システムは、多分割絞り体の絞りブロックを用いて疾患部に形成した放射線照射領域に対し放射線を照射することにより放射線治療を行なう放射線治療システムにおいて、所定位置に対しその端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて基準画像データを生成する基準画像データ生成手段と、前記所定位置あるいはその近傍に前記端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて評価用画像データを生成する評価用画像データ生成手段と、前記基準画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報と前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報とに基づいて前記所定位置に対する前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出手段と、前記疾患部の治療計画において予め設定された放射線照射領域の領域情報と前記位置ズレの情報に基づいて前記絞りブロックの端部を前記放射線照射領域に対応した位置へ移動させるための制御を行なう絞り移動制御手段とを備えたことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態における放射線治療システムの概略構成を示す図。
【図2】本実施形態の放射線治療システムが備える治療装置本体の外観図。
【図3】本実施形態における放射線治療システムの全体構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態の治療装置本体に備えられた放射線絞り部を説明するための図。
【図5】本実施形態の治療装置本体に備えられた放射線絞り部を説明するための図。
【図6】本実施形態の絞り画像解析装置が備える画像データ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図7】本実施形態における光学画像データと基準画像データの画素値分布を説明するための図。
【図8】本実施形態の第1のキャリブレーションにおいて形成される絞りブロックの光学画像データを示す図。
【図9】本実施形態の第1のキャリブレーションにおいて生成される絞りブロックの投影データを示す図。
【図10】本実施形態における補正値の検出手順を示すフローチャート。
【図11】本実施形態の基準ライン及び配置ラインを示す図。
【図12】本実施形態の多重露光撮影によって生成される基準画像データを説明するための図。
【図13】本実施形態における基準画像データの具体例を示す図。
【図14】本実施形態における放射線照射領域の設定手順を示すフローチャート。
【図15】本実施形態の放射線治療システムが備える絞り画像解析装置の変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。
【0012】
本実施形態における放射線治療システムでは、先ず、装置の据え付け時等にて行なわれる厳密なキャリブレーション(第1のキャリブレーション)において、放射線絞り部の多分割絞り体が備えた複数からなる絞りブロックの端部を光学画像データの観察下で所定の配置ラインに配置した状態での放射線撮影により基準画像データを収集し、この基準画像データにおける絞りブロックの端部の位置データと前記配置ラインの位置データとの比較により放射線照射強度分布の不均一性に起因した位置ズレを補正値として検出する。
【0013】
次いで、患者の疾患部に対する放射線治療に先立って行なわれるキャリブレーション(第2のキャリブレーション)において、第1のキャリブレーションと同様の絞り移動制御信号を用い前記配置ラインあるいはその近傍へ移動させた絞りブロックに対する放射線撮影によって評価用画像データを収集し、この評価用画像データにおける絞りブロックの端部の位置データと前記配置ラインの位置データとの差異と第1のキャリブレーションにおいて検出された補正値とを比較することにより絞りブロックの経時的な位置ズレを検出する。
【0014】
そして、当該疾患部に対する放射線治療に際し、治療計画において予め設定された前記疾患部に対する放射線照射領域の情報と上述の位置ズレ情報とに基づいて生成された絞り移動制御信号を用いて絞りブロックを所定の位置へ移動させることにより治療計画において予め設定された放射線照射領域を上述の疾患部に対して形成する。
【0015】
(放射線治療システムの構成及び機能)
本実施形態における放射線治療システムの構成と機能につき図1乃至図9を用いて説明する。尚、図1は、放射線治療システムの概略構成を示す図であり、図2は、この放射線治療システムが有する治療装置本体の外観図である。又、図3は、放射線治療システムの全体構成を示すブロック図であり、図4は、この放射線治療システムの治療装置本体に備えられた放射線絞り部を説明するための図である。
【0016】
本実施形態の放射線治療システム100は、図1に示すように腫瘍等の疾患部に対し高い放射線線量を有した治療用放射線を照射することにより放射線治療を行なうと共に、上述の治療用放射線より低い放射線線量を有した放射線(以下では、位置ズレ評価用放射線と呼ぶ。)を前記疾患部を含む撮影対象領域に対し照射することにより疾患部の形状に対応した放射線照射領域を設定する多分割絞り体の放射線画像データ(即ち、第1のキャリブレーションにおける基準画像データ及び第2のキャリブレーションにおける評価用画像データ)を生成する放射線治療装置4と、得られた多分割絞り体の基準画像データ及び評価用画像データに基づいて多分割絞り体に設けられた絞りブロックの経時的な位置ズレを検出する絞り画像解析装置3を備えている。そして、放射線治療装置4は、撮影対象領域に対し低放射線線量の位置ズレ評価用放射線を照射することにより上述した第1のキャリブレーションにおける絞りブロックの基準画像データ及び第2のキャリブレーションにおける前記絞りブロックの評価用画像データを生成し、これらの画像データを用いて絞り画像解析装置3が検出した上述の位置ズレに基づいて位置補正された絞りブロックにより設定した放射線照射領域に対し高放射線線量の治療用放射線を照射することにより当該疾患部位に対する放射線治療を行なう治療装置本体1と、治療装置本体1における放射線照射強度、絞りブロックの移動及び天板の移動を制御する治療制御装置2を備えている。
【0017】
次に、図2及び図3を用いて治療装置本体1について説明する。尚、既に述べたように、図2は、放射線治療システムが有する治療装置本体1の外観図であり、図3は、放射線治療システムの全体構成を示すブロック図である。
【0018】
治療診断本体1は、図2に示すように、床面に固定して据付けられた固定架台11と、固定架台11の側面で連結され、この連結部において回転自在に保持された回転架台12と、回転架台12のL字型アーム2aの先端部に設けられ所定照射強度の放射線(即ち、低放射線線量の位置ズレ評価用放射線及び高放射線線量の治療用放射線)を発生する放射線発生部13と、放射線発生部13から不均一に放射された治療用放射線の照射強度分布を補正する補償フィルタ17と、補償フィルタ17を透過した治療用放射線及び位置ズレ評価用放射線の放射線照射領域を形成する放射線絞り部14と、放射線絞り部14の絞りブロックによって囲まれた領域(以下では、間隙領域と呼ぶ。)を通過した放射線を2次元的に検出することにより放射線絞り部14に設けられた絞りブロックの基準画像データ及び評価用画像データを生成する放射線検出部15と、患者90を載置する天板161とこの天板161を水平方向へ移動させることにより疾患部の中心部を絞りブロックによって形成される放射線照射領域の中心部に配置する図示しない天板移動機構を有した寝台部16を備えている。
【0019】
即ち、第1のキャリブレーション及び第2のキャリブレーションでは、放射線発生器3から放射され放射線絞り部14の間隙領域を通過した低放射線線量の位置ズレ評価用放射線は放射線検出部15によって検出されて絞りブロックの投影データが生成される。そして、絞り画像解析装置3は、放射線検出部15において得られた投影データを用いて基準画像データ及び評価用画像データを生成し、これらの画像データに基づいて絞りブロックの経時的な位置ズレを検出する。一方、当該疾患部に対する放射線治療に際しては、放射線発生器3から放射され位置ズレ補正された放射線絞り部14の絞りブロックを通過した高放射線線量の治療用放射線を天板161に載置された患者90の疾患部に対して照射することにより放射線治療が行なわれる。
【0020】
図3の治療装置本体1が備える放射線発生部13は、治療制御装置2に備えられた後述の放射線制御部21から供給される照射制御信号に基づいて所定の照射強度、照射期間及び照射タイミングを有する位置ズレ評価用放射線及び治療用放射線を放射線絞り部14や患者90の疾患部に対して放射する。
【0021】
次に、図3に示した治療装置本体1の放射線絞り部14につき図4及び図5を用いて更に詳しく説明する。放射線絞り部14は、図4に示すように第1の方向(図4(a)のY方向)に対する放射線照射範囲を設定する1対の絞り体141a及び141bと、第2の方向(図4(b)のX方向)に対する放射線照射範囲を設定する1対の多分割絞り体142a及び142bが設けられ、多分割絞り体142a及び142bは夫々N個の絞りブロック145a及び145bから構成されている。
【0022】
そして、絞り体141a及び141bはY方向移動機構146a及び146bを用いて、又、多分割絞り体142a及び142bの絞りブロック145a及び145bはX方向移動機構147a及び147bを用いて所定の位置へ移動させることにより疾患部の大きさや形状に対応した放射線照射領域Raを患者90の疾患部に対して形成することができる。この場合、絞り体141a及び141bは、回転シャフト148a及び148bを介してY方向移動機構146a及び146bに接続され、同様にして、多分割絞り体142a及び142bの各々が有するN個の絞りブロック145a及び145bは、N本からなる回転シャフト149a及び149bを介してX方向移動機構147a及び147bに接続されている。
【0023】
図5は、多分割絞り体142aに設けられた絞りブロック145a−1乃至145a−Nとこれらの絞りブロック145aをX軸に沿って所定の位置へ移動させるX方向移動機構147a−1乃至147a−N、及び、多分割絞り体142bに設けられた絞りブロック145b−1乃至145b−Nとこれらの絞りブロック145bをX軸にそって移動させるX方向移動機構147b−1乃至147b−Nを示しており、絞りブロック145a及び145bは、X方向移動機構147a及び147bにより独立に移動させることが可能となっている。そして、絞りブロック145a及び145bによって囲まれた間隙領域Rbに対応した放射線照射領域Ra(図4参照)が天板161に載置された患者90の疾患部において形成される。
【0024】
図4へ戻って、放射線絞り部14は、更に、可視光を発生する光源143と、光源143から放射された可視光を反射させて放射線絞り部14の多分割絞り体142a及び142bへ照射するミラー144を有している。そして、この光源143とミラー144を用いることにより、放射線絞り部14の間隙領域を通過した可視光は患者90の疾患部に対応する位置に配置された方眼紙等の図示しないイメージングシートに照射され、絞りブロック145a及び145bの配置状態やこれらの絞りブロックによって囲まれた間隙領域を示す光学画像データが形成される。
【0025】
即ち、放射線治療システム100の操作者は、イメージングシート上に形成された光学画像データの観察下において多分割絞り体142a及び142bに設けられた絞りブロック145a及び145bの各々を所定の位置へ移動させることにより、その端部を予め設定された配置ラインに高い精度で配置することが可能となる。
【0026】
次に、図3の補償フィルタ17は、疾患部位に対し治療用放射線が照射された場合、その放射線照射強度分布を均一にする機能を有し、放射線照射領域の中央付近を透過する放射線に対して大きな減衰量が設定され、周辺部を透過する放射線に対して小さな減衰量が設定されるように構成されている。放射線に対する減衰量を放射線照射の中心軸から離れるほど小さくなるように設定することにより均一な放射線照射強度分布を有する治療用放射線を形成することが可能となる。但し、この場合、高放射線線量を有する治療用放射線の分布が均一になるようにその減衰特性が予め設定されるため、低放射線線量の位置ズレ評価用放射線に対しては後述の図9(a)に示すような不均一な放射線照射強度分布が形成される。
【0027】
一方、放射線検出部15は、例えば、輝尽性蛍光体を用いた図示しないイメージングプレートを備え、放射線絞り部14の間隙領域を通過した放射線を捕獲電子の状態で保存することにより2次元の投影データを生成する。尚、イメージングプレートは、これらの投影データを1週間以上の長期に渡って保存することが可能である。
【0028】
次に、放射線治療装置4の治療制御装置2は、図3に示すように、操作部24における初期設定等によって予め設定された放射線の照射強度、照射期間、照射タイミング等の照射条件に基づいて生成した照射制御信号を治療装置本体1の放射線発生部13へ供給する放射線制御部21と、操作部24からシステム制御部25を介して供給される絞り移動指示信号に基づいて生成した絞り移動制御信号、あるいは、別途設置された図示しない治療計画装置からシステム制御部25を介して供給された当該疾患部に対する放射線照射領域の領域情報と絞り画像解析装置3からシステム制御部25を介して供給される絞りブロック145a及び145bの位置ズレ情報とに基づいて生成した絞り移動制御信号を治療装置本体1の放射線絞り部14へ供給する絞り移動制御部22と、操作部24からシステム制御部25を介して供給される天板移動指示信号に基づいて生成した当該疾患部の中心部と放射線照射領域の中心部とを一致させるための天板移動制御信号を治療装置本体1の天板移動機構へ供給する天板移動制御部23を備えている。
【0029】
更に、治療制御装置2は、表示パネルやキーボード、各種スイッチ、マウス等の入力デバイスを有し患者情報の入力、照射条件の設定、配置ラインや後述する基準ラインの設定、絞り移動指示信号や天板移動指示信号を含む各種指示信号の入力等を行なう操作部24と、放射線治療システム100が備える各ユニットを統括的に制御し、当該疾患部に対する放射線照射領域の設定と前記疾患部に対する放射線治療を実行させるシステム制御部25を備えている。
【0030】
特に、上述の絞り移動制御部22は、装置の据え付け時等にて行なわれる厳密なキャリブレーション(第1のキャリブレーション)において、イメージングシート上に生成された光学画像データの観察下で操作部24から供給される絞り移動指示信号に基づき絞りブロック145a及び145bの端部を所定の配置ラインへ移動させるための絞り移動指示信号を生成する。
【0031】
更に、絞り移動制御部22は、光学画像データを用いた第1のキャリブレーションによって所定の配置ラインに配置された絞りブロック145a及び145bに対する放射線撮影により収集された画像データ(基準画像データ)と、患者90の疾患部に対する放射線治療に先立って行なわれる第2のキャリブレーションにおいて収集された絞りブロック145a及び145bの画像データ(評価用画像データ)との比較により検出された絞りブロック145a及び145bの位置ズレ情報と治療計画装置から供給された当該疾患部に対する放射線照射領域の領域情報とに基づいて前記疾患部の放射線治療に好適な放射線照射領域を形成するための絞り移動指示信号を生成する。
【0032】
一方、上述のシステム制御部25は、例えば、図示しないネットワークインターフェース及びネットワークを介して治療計画装置に接続され、この治療計画装置には、X線CT装置等の画像診断装置による当該疾患部の検査結果に基づいて設定された放射線照射領域の領域情報が保存されている。
【0033】
次に、図3の絞り画像解析装置3は、画像データ生成部31、補正値検出部33、補正値記憶部34、位置ズレ検出部35及び位置ズレ情報記憶部36を備えている。
【0034】
画像データ生成部31は、図6に示すように、放射線絞り部14の間隙領域を通過した放射線による投影データが蓄積されたイメージングプレートIPの輝尽性蛍光体をレーザビームで走査することにより投影データの輝度に対応した輝尽発光光を発生させるスキャナ部311と、微小な輝尽蛍光光をS/Nに優れた電気的な投影データへ変換する光電子増倍管312と、この投影データの振幅を対数変換することにより小さな信号成分を相対的に強調する対数変換増幅器313と、デジタル化における折り返し雑音を低減するためのローパスフィルタ314と、ローパスフィルタ314によって高周波成分が削除された投影データをアナログ/デジタル変換するA/D変換器315と、A/D変換器315から時系列的に出力される投影データを順次保存することにより絞りブロック145a及び145bの配置状態が示された基準画像データ及び評価用画像データを生成する投影データ記憶部316を備えている。そして、この画像データ生成部31によって生成された基準画像データは補正値検出部33へ供給され、評価用画像データは位置ズレ検出部35へ供給される。
【0035】
一方、絞り画像解析装置3の補正値検出部33は、上述の画像データ生成部31において生成された基準画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部位置情報と予め設定された配列ラインの位置情報(即ち、光学画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部位置情報)とを比較することにより、放射線照射強度分布の不均一性に起因して基準画像データに発生している絞りブロック145a及び145bの位置ズレを補正値として検出する。
【0036】
図7は、配列ラインに絞りブロック145の端部を配置した状態で収集される光学画像データと基準画像データの輝度(画素値)分布を比較したものであり、曲線Qoは、絞りブロック145の端部領域が示された光学画像データの画素値分布を、又、曲線Qxは、同様の端部領域が示された基準画像データの画素値分布を夫々示している。この場合、光学画像データに示された絞りブロック145の端部は、曲線Qoの最大値Aoと最小値Boとの中間値Co(Co=(Ao+Bo)/2)を有するXoに設定され、同様にして、基準画像データに示された絞りブロック145の端部は、曲線Qxの最大値Axと最小値Bxとの中間値Cx(Cx=(Ax+Bx)/2)を有するXxに設定される。即ち、光学画像データに示されたブロック145の真の端部位置Xoに対する基準画像データに示されたブロック145の端部位置Xxの位置ズレΔX(ΔX=Xx−Xo)は、放射線照射強度の増大に伴って増大する。
【0037】
具体的には、上述の補正値検出部33は、画像データ生成部31の投影データ記憶部316から供給された基準画像データを受信し、この基準画像データを用いて検出した絞りブロック145a及び145bの端部位置Xxと操作部24において予め設定された配置ラインの位置Xoとの位置ズレΔX(ΔX=Xx−Xo)を補正値として検出する。そして、得られた補正値ΔXは、絞りブロック145a及び145bの識別情報や配置ラインの位置情報を付帯情報として補正値記憶部34に保存される。
【0038】
一方、位置ズレ検出部35は、画像データ生成部31から供給された評価用画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部位置を計測し、この端部位置と予め設定された配置ラインの位置との差異を算出する。そして、得られた位置の差異と補正値記憶部34から読み出した補正値とを比較することにより、配置ラインに対する絞りブロック145a及び145bの端部の位置ズレを検出する。そして、検出された位置ズレの情報は、位置ズレ情報記憶部36に保存されると共に治療制御装置2のシステム制御部25を介して絞り移動制御部22へ供給される。
【0039】
次に、第1のキャリブレーションにおいて、絞りブロック145a−1乃至145a−N及び絞りブロック145b−1乃至145b−Nの端部を所定の配置ラインに配置した状態で光源143とミラー144を用いて得られる光学画像データと、放射線発生部13を用いた放射線撮影によって得られる投影データの差異につき図8及び図9を用いて説明する。但し、この場合、患者90の疾患部に対応した位置に配置されたイメージングシートにおいて形成される光学画像データの大きさと放射線検出部15のイメージングプレートにおいて形成される投影データの大きさは、放射線発生部13からイメージングシート及びイメージングプレートまでの距離の差異に伴って異なるが、ここでは説明を簡単にするために同一の大きさを有した光学画像データ及び投影データを用いて説明する。
【0040】
図8は、イメージングシート上に形成された光学画像データの観察下で操作部24の入力デバイスを用いて絞りブロック145a−1乃至145a−N及び絞りブロック145b−1乃至145b−Nを所定の配置ラインD1及びD2に配置した場合の光学画像データを示している。この光学画像データのリアルタイム観察により、絞りブロック145a−1乃至145a−Nの右端部を図8のY方向に設定された基準ラインD0から左方向へ距離dだけ離れた配置ラインD1に配置し、絞りブロック145b−1乃至145b−Nの左端部を基準ラインD0から右方向へ距離dだけ離れた配置ラインD2に配置することができる。
【0041】
一方、図9は、図8の光学画像データに示されたように絞りブロック145a−1乃至145a−N及び絞りブロック145b−1乃至145b−Nの端部が配置ラインD1及びD2に配置された状態で行なわれる放射線撮影(即ち、低放射線線量の位置ズレ評価用放射線を用いた放射線撮影)により生成された投影データを示したものであり、図9(a)は、補償フィルタ17を透過した低放射線線量の位置ズレ評価用放射線に起因して基準ラインD0及びその近傍に発生する不均一な放射線照射強度分布を、又、図9(b)は、図9(a)の不均一な放射線照射強度分布を有する放射線撮影により放射線検出部15において生成された絞りブロック145a及び145bの投影データを示している。
【0042】
例えば、図9(a)に示すように多分割絞り体142a及び142bの端部領域(図9(a)の上方)において強い放射線が照射された場合、既に、図7において述べたように、絞りブロック145aと絞りブロック145bによって囲まれた間隙領域RbはX方向に対して拡張するため、投影データにおける絞りブロック145aの右端部は配置ラインD1から左方向へ離反し、絞りブロック145bの左端部は配置ラインD2から右方向へ離反する。
【0043】
本実施形態では、このように低放射線線量の位置ズレ評価用放射線を用いることにより発生する放射線照射強度分布の不均一性に起因した間隙領域が異なる投影データを後述する複数の基準ラインD0において収集し、これらの投影データに基づいて生成した基準画像データを用いて放射線照射強度分布の不均一性に起因した絞りブロック145a及び145bの位置ズレ(例えば、図9(b)に示したΔXa1乃至ΔXaN及びΔXb1乃至ΔXbN)を補正値として検出する。(補正値の検出手順)。
【0044】
次に、絞りブロック145a及び145bの位置ズレ検出に用いる補正値の検出手順につき図10乃至図13を用いて説明する。尚、図10は、上述の手順を示すフローチャートである。補正値の検出に用いる基準画像データの生成に際し、放射線治療システムの操作者は、操作部24において図11に示すような基準ラインD0−1乃至D0−MをX方向に対して所定間隔dxで設定し、更に、基準ラインD0−m(m=1乃至M)から距離dだけ離れた位置に配置ラインD1−m及び配置ラインD2−mを設定する(図10のステップS1)。そして、基準ラインD0−mと配置ラインD1−m及びD2−mの設定が終了したならば、絞りブロック145aの右端部を配置ラインD1−1へ移動させるための絞り移動指示信号をイメージングシートに形成された光学画像データの観察下で入力する。
【0045】
一方、治療制御装置2の絞り移動制御部22は、操作部24からシステム制御部25を介して供給される上述の絞り移動指示信号に基づいて生成した絞り移動制御信号を放射線絞り部14のX方向移動機構147aへ供給し、X方向移動機構147aは、絞りブロック145a−1乃至145−Nの右端部を配置ラインD1−1へ順次移動させる(図10のステップS2)。
【0046】
更に、操作者は、同様の手順により絞りブロック145bの左端部を配置ラインD2−1へ移動させるための絞り移動指示信号を入力し、治療制御装置2の絞り移動制御部22は、この絞り移動制御信号に基づいて生成した絞り移動制御信号を放射線絞り部14のX方向移動機構147bへ供給して絞りブロック145b−1乃至14b−Nの左端部をラインD2−1へ順次移動させる(図10のステップS3)。
【0047】
そして、配置ラインD1−1に対する絞りブロック145a−1乃至145a−Nの配置及び配置ラインD2−1に対する絞りブロック145b−1乃至145b−Nの配置が終了したならば、操作者は、操作部24において撮影開始指示信号を入力し、治療制御装置2の放射線制御部21は、システム制御部25を介して供給される上述の撮影開始指示信号に基づいて生成した照射制御信号を治療装置本体1の放射線発生部13へ供給して放射線絞り部14に対して低放射線線量の位置ズレ評価用放射線を照射する。そして、放射線絞り部14の間隙領域を通過した上述の放射線は、放射線検出部15のイメージングプレートに照射され、基準ラインD0−1を中心とする絞りブロック145a及び145bの投影データが生成される(図10のステップS4)。
【0048】
以下、同様の手順により、光学画像データの観察下で絞りブロック145aの右端部及び絞りブロック145bの左端部を配置ラインD1−m及びD2−m(m=2乃至M)へ移動させた後、多重露光の放射線撮影を行なうことにより基準ラインD0−mを中心とする絞りブロック145a及び145bの投影データが基準ラインD0−1を中心とする上述の投影データに隣接して生成される(図10のステップS2乃至ステップS4)。
【0049】
そして、基準ラインD0−1乃至D0−Mに対する投影データの生成が終了したならば、絞り画像解析装置3の画像データ生成部31は、上述の投影データが蓄積されたイメージングプレートの輝尽性蛍光体をレーザビームで順次走査することにより得られた輝尽発光光をS/Nに優れた電気的な投影データへ変換し、更に、この投影データに対して対数変換処理、フィルタリング処理及びA/D変換処理を行なって図12に示すようなM本のスリットからなる基準画像データIm0を生成する(図10のステップS5)。そして、得られた基準画像データを補正値検出部33へ供給する。
【0050】
図13は、画像データ生成部31によって生成されたM=9における基準画像データIm0の具体例を示したものであり、破線で示した放射線照射強度が相対的に大きな上部領域及び下部領域におけるスリットの幅は、図7等において説明した理由により拡大している(図9参照)。
【0051】
一方、図3に示した絞り画像解析装置3の補正値検出部33は、画像データ生成部31において生成された基準画像データにおける絞りブロック145a及び145bの位置情報と上述のステップS1において設定された配置ラインD1−m及び配置ラインD2−m(m=1乃至M)の位置情報を比較することにより、放射線照射強度分布の不均一性に起因した基準画像データにおける絞りブロック145a及び145bの位置ズレΔXan及びΔXbn(n=1乃至N)を補正値として検出し、得られた補正値を、絞りブロック145a及び145bの識別情報と配置ラインD1−m及びD2−m(m=1乃至M)の位置情報を付帯情報として補正値記憶部34へ保存する(図10のステップS6)。
【0052】
(放射線照射領域の設定手順)
次に、当該疾患部の放射線治療に好適な放射線照射領域の設定手順につき図14のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
放射線治療システムの操作者による絞りブロックのキャリブレーション開始指示信号が操作部24において入力されたならば(図14のステップS11)、この指示信号を受信したシステム制御部25は、放射線制御部21及び絞り移動制御部22を制御し、図10のステップS2乃至ステップS5と同様の手順により絞りブロック145aの配置ラインD1−1乃至D1−Mへの配置(図14のステップS12)、絞りブロック145bの配置ラインD2−1乃至D2−Mへの配置(図14のステップS13)及び多重露光撮影による絞りブロック145a及び145bの投影データの生成を行ない(図14のステップS14)、更に、この投影データを処理して評価用画像データを生成する(図14のステップS15)。
【0054】
一方、位置ズレ検出部35は、画像データ生成部31から供給された評価用画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部の位置を計測し、これらの位置データと図10のステップS1において設定された配置ラインD1−m及びD2−m(m=1乃至M)の位置データとの差異を検出する。そして、位置データ間の差異と補正値記憶部34から読み出した補正値とを比較することにより、配置ラインD1−m及びD2−mに対する絞りブロック145a及び145bの端部の位置ズレを検出する(図14のステップS16)。そして、検出された位置ズレの情報は、位置ズレ情報記憶部36に保存されると共に治療制御装置2のシステム制御部25を介して絞り移動制御部22へ供給される。
【0055】
次いで、当該疾患部に対する放射線治療に際し、システム制御部25は、別途設置された図示しない治療計画装置からネットワーク等を介して供給された前記疾患部に対する放射線照射領域の情報を絞り移動制御部22へ供給し、絞り移動制御部22は、上述の放射線照射領域の情報と位置ズレ検出部35から供給された絞りブロック145a及び145bの位置ズレ情報に基づいて絞り移動制御信号を生成する(図14のステップS17)。
【0056】
そして、放射線絞り部14のX方向移動機構147a及び147bは、絞り移動制御部22から供給された絞り移動制御信号に基づいて絞りブロック145a及び145bをx方向へ移動させ、治療計画において設定された放射線照射領域を天板161に載置された患者90の疾患部に対して形成する(図14のステップS18)。
【0057】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。上述の実施形態における絞り画像解析装置3では、光学画像データの観察下で行なわれる第1のキャリブレーションにて収集された基準画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部位置情報と予め設定された配置ラインの位置情報との比較により放射線照射強度分布の不均一性に起因した位置ズレを補正値として検出し、第2のキャリブレーションにて収集された評価用画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部位置情報と前記配置ラインの位置情報との差異と前記補正値とに基づいて絞りブロック145a及び145bの経時的な位置ズレを検出する場合について述べたが、本変形例では、上述の基準画像データ及び評価用画像データの各々における絞りブロック145a及び145bの端部位置情報を直接比較することにより絞りブロック145a及び145bの経時的な位置ズレを検出する場合について述べる。
【0058】
即ち、図15に示す本変形例の絞り画像解析装置3aは、治療装置本体1の放射線検出部15において投影データが蓄積されたイメージングプレートの輝尽性蛍光体をレーザビームで順次走査することにより第1のキャリブレーションにおける基準画像データ及び第2のキャリブレーションにおける評価用画像データを生成する画像データ生成部31と、第1のキャリブレーションにおいて得られた基準画像データを保存する基準画像データ記憶部32と、画像データ生成部31から供給された評価用画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部位置情報と基準画像データ記憶部32から読み出した基準画像データにおける絞りブロック145a及び145bの端部位置情報とを比較することにより絞りブロック145a及び145bの経時的な位置ズレを検出する位置ズレ検出部35aと、絞りブロック145a及び145bの識別情報と配置ラインD1−m及びD2−m(m=1乃至M)の位置情報が付加された上述の位置ズレ情報を保存する位置ズレ情報記憶部36とを備えている。この変形例によれば、基準画像データに示された絞りブロック145a及び145bの端部位置情報と評価用画像データに示された絞りブロック145a及び145bの端部位置情報が直接比較されるため位置ズレ検出に要する時間を短縮することができる。
【0059】
以上述べた本実施形態によれば、装置の据え付け時等において行なわれる放射線絞り部の厳密なキャリブレーション(第1のキャリブレーション)にて収集された多分割絞り体の基準画像データと当該患者の疾患部に対する放射線治療に先立って行なわれる第2のキャリブレーションにて収集された前記多分割絞り体の評価用画像データとに基づいて多分割絞り体に設けられた絞りブロックの経時的な位置ズレを放射線照射強度分布の不均一性に影響されることなく正確に検出することができる。
【0060】
特に、上述の第1のキャリブレーションは、多分割絞り体に対して収集された光学画像データの観察下で行なわれるため、絞りブロックの端部を予め設定された位置あるいは配置ラインへ正確に配置することが可能となる。
【0061】
又、絞りブロックの経時的な位置ズレは、上述のように放射線照射強度分布の不均一性に影響されないため、比較的低コストのCRシステムによって収集された基準画像データ及び評価用画像データに基づいて行なうことが可能となる。
【0062】
更に、多重露光の放射線撮影によって収集された基準画像データと評価用画像データに基づいて絞りブロックの経時的な位置ズレが検出されるため、放射線照射領域に含まれた複数の位置や領域における位置ズレを短時間で検出することができる。尚、上述の配置ラインによって囲まれた位置や領域における位置ズレは、これらの配置ラインにおいて検出された位置ズレ情報を補間処理することによって得ることができる。
【0063】
又、光学画像データ観察下でのマニュアル操作により絞りブロックの端部を所定の位置あるいは配置ラインへ正確に配置する第1のキャリブレーションは、装置据え付け時等の限られたタイミングにおいてのみ行なえばよく、放射線治療に先立って行なわれる第2のキャリブレーションは、第1のキャリブレーションにおいて収集された基準画像データに基づいて自動的に行なわれるため、第2のキャリブレーションに要する時間は短縮され、操作者の負担も大幅に軽減される。
【0064】
一方、上述の実施形態における絞り画像解析装置は、位置ズレの検出結果を保存する位置ズレ情報記憶部を備えているため、第2のキャリブレーションにおいて発生した位置ズレの傾向や原因等を位置ズレ情報記憶部に保存された位置ズレ情報を用いて分析することが可能となる。
【0065】
以上、本開示の実施形態及びその変形例について述べてきたが、本開示は、上述の実施形態及びその変形例に限定されるものでは無く更に変形して実施することが可能である。例えば、本実施形態及びその変形例では、イメージングプレートを用いたCR撮影によって収集される投影データに基づいて第1のキャリブレーションにおける基準画像データ及び第2のキャリブレーションにおける評価用画像データを生成する場合について述べたが、平面検出器やI.I.(イメージインテンシファイア)等を用いた放射線撮影によって収集される投影データに基づいて基準画像データ及び評価用画像データを生成してもよい。
【0066】
更に、第1のキャリブレーションにおいて絞りブロック145a及び145bの端部を複数からなる直線状の配置ラインD1−m及びD2−m(m=1乃至M)に配置する場合について述べたが、放射線照射領域を含む領域内の所定位置に配置しても構わない。
【0067】
又、多分割絞り体142a及び142bを構成する絞りブロック145a及び145bの端部を当該疾患部の治療に好適な位置へ移動させる場合について述べたが、更に、絞り体141a及び141bを同様の手順により所望位置へ移動させてもよい。
【0068】
尚、本開示の実施形態に係る放射線治療システム100あるいは絞り画像解析装置3の一部は、コンピュータ等をハードウェアとして用いることでも実現することができる。例えば、絞り画像解析治療3の各ユニットは、上述のコンピュータに搭載されたCPU等のプロセッサに所定の制御プログラムを実行させることにより各種機能を実現することができる。この場合のシステム制御部25等は、上述の制御プログラムをコンピュータに予めインストールしてもよく、又、コンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体への保存あるいはネットワークを介して配布された制御プログラムのコンピュータへのインストールであっても構わない。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…治療装置本体
13…放射線発生部
14…放射線絞り部
141…絞り体
142…多分割絞り体
143…光源
144…ミラー
145…絞りブロック
146…Y方向移動機構
147…X方向移動機構
148、149…回転シャフト
15…放射線検出部
161…天板
17…補償フィルタ
2…治療制御装置
21…放射線制御部
22…絞り移動制御部
23…天板移動制御部
24…操作部
25…システム制御部
3、3a…絞り画像解析装置
31…画像データ生成部
32…基準画像データ記憶部
33…補正値検出部
34…補正値記憶部
35、35a…位置ズレ検出部
36…位置ズレ情報記憶部
100…放射線治療システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多分割絞り体の絞りブロックを用いて疾患部に形成した放射線照射領域に対し放射線を照射することにより放射線治療を行なう放射線治療システムにおいて、
所定位置に対しその端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて基準画像データを生成する基準画像データ生成手段と、
前記所定位置あるいはその近傍に前記端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて評価用画像データを生成する評価用画像データ生成手段と、
前記基準画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報と前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報とに基づいて前記所定位置に対する前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出手段と、
前記疾患部の治療計画において予め設定された放射線照射領域の領域情報と前記位置ズレの情報に基づいて前記絞りブロックの端部を前記放射線照射領域に対応した位置へ移動させるための制御を行なう絞り移動制御手段とを
備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
前記基準画像データ生成手段は、装置の据え付け時等において行なわれる第1のキャリブレーションにてその端部が前記所定位置に配置された前記絞りブロックの投影データに基づいて前記基準画像データを生成し、前記評価用画像データ生成手段は、前記疾患部の放射線治療に先立って行なわれる第2のキャリブレーションにおいて前記所定位置あるいはその近傍に配置されている前記絞りブロックの投影データに基づいて前記評価用画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項3】
イメージングプレート等を有する放射線検出手段を備え、前記基準画像データ生成手段及び前記評価用画像データ生成手段は、前記放射線検出手段によるCR撮影にて得られた投影データに基づいて前記基準画像データ及び前記評価用画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記基準画像データ生成手段及び前記評価用画像データ生成手段は、前記絞りブロックを複数からなる前記所定位置へ順次移動させながら行なう多重露光の放射線撮影によって収集された投影データに基づいて前記基準画像データ及び前記評価用画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項5】
多分割絞り体の絞りブロックを用いて疾患部に形成した放射線照射領域に対し放射線を照射することにより放射線治療を行なう放射線治療システムにおいて、
放射線照射強度分布の違いにより生じる画像データ上の前記絞りブロックの端部の位置ズレを補正するための基準画像データを保存する基準画像データ記憶手段と、
放射線を照射して、前記絞りブロックの位置を撮影した評価用画像データを生成する評価用画像データ生成手段と、
前記基準画像データと前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報に基づいて前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出手段とを
備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項6】
前記基準画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報と前記所定位置との位置ズレを補正値として検出する補正値検出手段を備え、前記位置ズレ検出手段は、前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報と前記所定位置との差異と前記補正値とを比較することにより前記所定位置に対する前記絞りブロックの位置ズレを検出することを特徴とする請求項1又は請求項5に記載した放射線治療システム。
【請求項7】
多分割絞り体の絞りブロックにより疾患部に形成された放射線照射領域における放射線治療を支援する絞り画像解析装置であって、
所定位置に対しその端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて基準画像データを生成する基準画像データ生成手段と、
前記所定位置あるいはその近傍に前記端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて評価用画像データを生成する評価用画像データ生成手段と、
前記基準画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報と前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報とに基づいて前記所定位置に対する前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出手段とを
備えたことを特徴とする絞り画像解析装置。
【請求項8】
多分割絞り体の絞りブロックにより疾患部に形成された放射線照射領域における放射線治療を支援する絞り画像解析装置であって、
放射線照射強度分布の違いにより生じる画像データ上の前記絞りブロックの端部の位置ズレを補正するための基準画像データを保存する基準画像データ記憶手段と、
放射線を照射して、前記絞りブロックの位置を撮影した評価用画像データを生成する評価用画像データ生成手段と、
前記基準画像データと前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報に基づいて、それぞれの前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出手段とを
備えたことを特徴とする絞り画像解析装置。
【請求項9】
多分割絞り体の絞りブロックを用いて疾患部に形成した放射線照射領域に対し放射線を照射することにより放射線治療を行なう放射線治療システムに対し、
所定位置に対しその端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて基準画像データを生成する基準画像データ生成機能と、
前記所定位置あるいはその近傍に前記端部が配置された前記絞りブロックに対する放射線撮影によって収集された投影データに基づいて評価用画像データを生成する評価用画像データ生成機能と、
前記基準画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報と前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報とに基づいて前記所定位置に対する前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出機能と、
前記疾患部の治療計画において予め設定された放射線照射領域の領域情報と前記位置ズレの情報に基づいて前記絞りブロックの端部を前記放射線照射領域に対応した位置へ移動させるための制御を行なう絞り移動制御機能を
実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項10】
多分割絞り体の絞りブロックにより疾患部に形成された放射線照射領域における放射線治療を支援する絞り画像解析装置に対し、
放射線照射強度分布の違いにより生じる画像データ上の前記絞りブロックの端部の位置ズレを補正するための基準画像データを保存する基準画像データ保存機能と、
放射線を照射して、前記絞りブロックの位置を撮影した評価用画像データを生成する評価用画像データ生成機能と、
前記基準画像データと前記評価用画像データに示された前記絞りブロックの端部の位置情報に基づいて前記絞りブロックの位置ズレを検出する位置ズレ検出機能を
実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−217644(P2012−217644A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86706(P2011−86706)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】