説明

放射線治療システム

【課題】臓器の動きに応じて、照射条件を動的に変更するとともに、線量分布を正確に評価し、治療計画に基づいた適切な治療を行うことができる放射線治療システムを得ることを目的とする。
【解決手段】 呼吸位相毎に撮像された複数の3次元画像と、複数の3次元画像のそれぞれに対して生成された治療計画データRTPを保持する4次元治療計画装置11と、治療対象部位の変位を計測する治療対象部位変位計測装置12と、計測した変位データと、複数の3次元画像とに基づいて、呼吸位相を算出する呼吸位相算出装置13と、算出した呼吸位相と治療計画データに基づいて照射装置17を制御する照射制御部15,16と、放射線の線量分布を評価する線量分布評価部20と、を備え、線量分布評価部20は、呼吸位相ごとに当該呼吸位相に対応する治療計画データに基づいて計算した線量分布を重ね合わせ、重ね合わせた線量分布に応じて放射線量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体内の患部組織に放射線を照射して治療を行う放射線治療システムに関するもので、とくに、治療中の患者の呼吸等に伴い動く臓器に対しても高精度な放射線治療を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、がん病巣に必要な線量の放射線を照射して腫瘍細胞にダメージを与えるものである。放射線治療では、荷電粒子線、中性子線、ガンマ線、X線、電子線など、さまざまな種類の放射線を利用することができるが、いずれの放射線であっても、がん病巣に的確に放射線を照射する一方、正常細胞への被ばくを可能な限り抑制する必要がある。そのため、放射線治療では、最適な治療を行うため、照射する線量や照射範囲、および照射角度等を定めた治療計画に基づいて照射を行う。さらに、肺、肝臓、膵臓など主に呼吸の影響で動く臓器に対しては、呼吸信号をモニタし、特定の呼吸振幅や呼吸位相に合わせて放射線を照射する方式が採用されていた。しかし、体表の呼吸信号から生体内の治療対象部位の位置を推定していたので、治療対象部位の運動を正確に把握することができず、放射線を精度よく照射することができなかった。
【0003】
そこで、X線透視や超音波を使用し治療対象部位の運動を実時間で直接観察し、直接観察した治療対象部位の移動ベクトルに基づいて放射線の照射を制御する放射線治療システムが提案されている。(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−185336号公報(段落0084〜0086、図12)
【特許文献2】特開2003−117010号公報(段落0029〜0035、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した放射線治療システムでは、治療対象部位の移動ベクトルに基づいて放射線の照射位置や照射方向を動的に変更するが、照射位置や照射方向を変更した場合の治療計画への影響、つまり、治療計画における線量分布と実際の照射における線量分布との差異については考慮されていない。したがって、治療対象部位やその周辺部への線量分布の評価が不正確になり、治療計画に基づいた適切な治療を行うことが困難であった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、治療対象部位の動きに応じて、照射位置や照射方向を動的に変更するとともに、線量分布を正確に評価し、治療計画に基づいた適切な治療を行うことができる放射線治療システムを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる放射線治療システムは、患者の治療対象部位に放射線を照射する照射装置と、前記患者の呼吸位相毎に事前に撮像された複数の3次元画像と、前記複数の3次元画像のそれぞれに対して生成された治療計画データとを保持する4次元治療計画装置と、前記治療対象部位の実時間の変位を計測する治療対象部位変位計測装置と、前記計測した治療対象部位の実時間の変位データと、前記複数の3次元画像とに基づいて、呼吸位相を算出する呼吸位相算出装置と、前記算出した呼吸位相と治療計画データに基づいて前記照射装置を制御する照射制御部と、前記治療対象部位に照射された放射線の線量分布を評価する線量分布評価部と、を備え、前記線量分布評価部は、前記呼吸位相に対応する治療計画データに基づいて線量分布を計算するとともに、前記呼吸位相ごとに計算した線量分布を重ね合わせ、重ね合わせた線量分布に応じて放射線の照射量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、呼吸位相に応じて照射位置や照射方向を動的に変更するとともに、当該呼吸位相に対応した治療計画を用いて線量分布を評価することにより、治療計画に基づいた適切な治療を行うことができる放射線治療システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムにて使用する4次元CT画像を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムにて使用する4次元治療計画を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムの構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムにて使用する4次元ボリュームデータを説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムにおける3次元計測装置について説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムにおける相関演算について説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムにおける照射タイミングについて説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムにおける照射タイミングの決定方法について説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる放射線治療システムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態2にかかる放射線治療システムの構成を示す模式図である。
【図12】本発明の実施の形態3にかかる放射線治療システムの構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態4にかかる放射線治療システムの構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態4にかかる放射線治療システムにおける相関演算について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1〜図9は、本発明の実施の形態1に係る放射線治療システムを説明するためのもので、図1は放射線治療システムの構成を示すブロック図、図2は4次元CT画像を説明するための図、図3は4次元治療計画を説明するための図、図4は放射線治療システムの模式図、図5は4次元ボリュームデータを説明するための図、図6は3次元計測装置について説明するための図、図7は相関演算について説明するための図、図8は照射タイミングについて説明するための図、図9は照射タイミングの決定方法について説明するための図である。
【0011】
本発明の実施の形態1に係る放射線治療システムは、図1に示すように、治療対象となる患者の1呼吸周期における位相の異なる複数の3次元CT画像データ群(合わせて4次元CT画像と称する)と、複数の3次元CT画像データ群のそれぞれに対して生成された複数の3次元治療計画データ(合わせて4次元治療計画データと称する)を格納する4次元治療データベースを有する4次元治療計画装置11と、治療対象部位の変位(臓器運動)を実時間で計測する治療対象部位変位計測装置12と、計測した治療対象部位の実時間の変位データと、前記複数の3次元画像とを比較して、呼吸位相を算出する呼吸位相算出装置13と、呼吸位相と治療対象部位の位置に応じて照射のタイミングや照射位置、角度等の照射制御信号と位相信号を出力する照射制御信号生成部15と、照射制御信号に基づいて照射装置17を制御する照射制御部16と、呼吸位相(位相信号)に応じて4次元治療計画データの中から選択した3次元治療計画に基づいて線量分布を評価する線量分布評価部20とを備え、線量分布評価部20では、呼吸位相ごとに呼吸位相に対応する治療計画データを用いて評価した線量分布を重ね合わせ、重ね合わせた線量分布が目標に達した場合にビーム照射を終了する照射終了信号を照射制御部16に出力するように構成している。以下、詳細を説明する。
【0012】
まず、4次元治療計画装置11にて扱う4次元治療計画データについて説明する。図2は4次元治療計画装置11で患者の治療対象部位に対して事前に撮影する4次元CT画像の構成を示す概念図である。4次元CT画像とは、通常の3次元CT画像(立体画像)に時間軸方向の概念を加えたもので、時系列の順番に並んだ3次元CT画像群として定義される。本実施の形態1においては、放射線治療を施す患者の1呼吸周期の間の順番に並んだN個の呼吸位相毎の3次元CT画像の集まりを4次元CT画像と称している。つまり、4次元CT画像は、体幹部領域で、呼吸の影響を受けて周期的な動きをする臓器の呼吸位相毎の立体画像データの集まりといえる。
【0013】
ここで、4次元CT画像の一般的な撮影方法について述べる。被験者(患者)に呼吸センサを装着した状態で、治療計画用CT画像を撮像する。撮像方法としては、「ゲーティングありCT撮像」と、「ゲーティングなしCT撮像」の2つがある。呼吸センサとしては体外設置型ストレイン(歪み)ゲージや、体表マーカ検出カメラ、レーザ変位計を利用することができる。いずれも、呼吸に伴う体表面の上下動運動を計測するものである。その他、サーミスタや換気量計など一般的な呼吸センサを利用することもできる。
【0014】
「ゲーティングありCT撮像」とは、1呼吸周期の間に、呼吸振幅もしくは呼吸位相ごとにトリガーをかけてCT撮像を行って、呼吸振幅もしくは呼吸位相の異なる複数のCT画像を順次得ていく方法である。広い領域を撮影しようとした場合には、シネモードで寝台を動かす必要があり、寝台ポジションごとに各呼吸振幅もしくは呼吸位相でトリガーをかける必要が生じ、手間と時間のかかる方法となる。ProspectiveなCT撮像とも呼ばれ
る。
【0015】
一方で、「ゲーティングなしCT撮像」では、呼吸振幅もしくは呼吸位相ごとにトリガーをかけることはせず、CT装置のX線管回転撮影における各投影データに呼吸振幅情報もしくは呼吸位相情報を付与しておき、数呼吸周期の間で連続撮像を実施する。広い領域を撮影しようとした場合には、シネモードで寝台ポジションごとに同様の撮像を実施する。その後、各寝台ポジションの各投影データを呼吸振幅もしくは呼吸位相でソーティングし、所定の呼吸振幅もしくは呼吸位相の投影データのみから画像を再構成する。このようにして、複数の呼吸振幅もしくは呼吸位相のCT画像を一挙に得ることができるので、「ゲーティングなしCT撮像」は効率面で有利な方法である。RetrospectiveなCT撮像とも呼ばれている。
【0016】
いずれの方法にしても、4次元CTを使った治療計画用CT画像は、任意の呼吸振幅もしくは呼吸位相で、呼吸によるブレのない画像となるため、治療計画の精度を向上させることが可能となる。
【0017】
4次元治療計画装置11では、上記のようにして得られた4次元CT画像中の位相の異なる3次元CT画像の各々に対して、いわゆる治療計画を生成する。治療計画では、がん病巣(治療対象部位)の位置や形状から照射ターゲットを特定し、放射線を照射する方向や照射線量の分布をシミュレーションして、治療の妥当性を評価して、照射装置17でのビーム照射に必要な治療パラメータを決定する。ここで、3次元CT画像がN個あるとすると、図3に示すように、N個の治療計画(RTP〜RTP)が作成されることになる。位相毎の治療計画は、その位相における治療対象部位自体の3次元形状や周辺組織、および放射線を照射する際の体表面からの深さ等を基に、治療対象部位に対し様々な方向(図では2方向であるが、それより多くてもよく、また1方向だけでもよい。)からの放射線の照射範囲や強度を定めていく。特に荷電粒子ビームを使用する場合には、ブラッグピークと呼ばれ荷電粒子ビームの運動エネルギーによってビームエネルギーが吸収される深さ(照射する組織の体表面からの深さ)が定まるので、この治療計画はがん病巣への照射と周辺組織の被ばく量を制御する点において重要である。Nは通常、1呼吸周期を分割する数に相当し、N=10程度が一般的であるが、この数字に限定されるわけではない。こうして生成された呼吸周期の位相毎の3次元の治療計画データ(まとめて4次元治療計画データと称する)は、4次元治療計画データベース111に格納される。
【0018】
治療対象部位変位計測装置12は、図4に示すように、3次元超音波診断装置本体21と3次元超音波診断装置本体21に接続され超音波を送受信する超音波プローブ22と超音波プローブ22を支持固定し、体幹部体表面に密着して内部臓器の運動(治療対象部位の変位)を計測できるようにする支持固定具23とを備えている。これにより、体幹部領域で、動きのある臓器をリアルタイムで計測できる。このように3次元超音波診断装置を使用して3次元ボリュームデータをリアルタイムで収集することにより、内部臓器の4次元ボリュームデータを収集可能である。図5に示すように、時々刻々の3次元ボリュームデータ(VD〜VD)を時系列の順番に蓄積することで4次元ボリュームデータ(3次元ボリュームデータ群)を構成する。この基本的な原理は4次元CTと同様のものであるが、超音波の場合、データ獲得時間が短く、CTよりもサンプリングの間隔の短いボリュームデータをリアルタイムで獲得することができるという特徴がある。なお、ここでは、治療対象部位変位計測装置12として超音波について述べたが、超音波に限定されるわけではなく、X線透視など内部臓器運動を計測できる手段であれば何でも良い。
【0019】
呼吸位相算出装置13は、治療対象部位変位計測装置12で計測した呼吸にともない変化するがん病巣の立体形状および位置情報と、予め生成された4次元治療計画データとを照合して呼吸位相を算出する装置であり、治療対象部位変位計測装置12が計測した4次元ボリュームデータをそれぞれ治療室内の3次元座標に変換する3次元位置計測部131と、事前に撮像され、記録された4次元ボリュームデータとリアルタイムで計測された立体形状および位置の情報とを照合して、照射対象となる治療対象部位の3次元追跡を行い、呼吸位相を算出する相関演算部132と、を備えている。
【0020】
3次元位置計測部131はいわゆる3次元計測装置と呼ばれるものであり、計測マーカ41〜43、及び計測マーカを検出するカメラ44、45などで構成される。図6を用いて具体的に説明する。超音波プローブ22の筐体には計測マーカ41〜43が取り付けられ、天井等に設置されたカメラ44、45から計測マーカ41〜43を認識し、3次元座標値を算出する。カメラ44、45は2台以上で構成され、いわゆるステレオ視により3次元計測を実現する。この3次元座標値は放射線ビームの照射中心であるアイソセンタCを原点とした治療室座標系での値であり、計測マーカを3つ以上認識することで、超音波プローブ22の位置とその姿勢を計測することができる。これは、事前の較正作業によって3次元位置計測部131の座標系と治療室座標系の2つの座標系間の変換式を求めておくことで実現できる。
【0021】
また、超音波ファントムなどを使って、治療対象部位変位計測装置12の超音波診断装置21の座標系と超音波プローブ22上に取り付けられた計測マーカ41〜43が張る座標系の2つの座標系間の変換式も事前に求めておくことができる。超音波診断装置21の座標系と計測マーカが張る座標系、計測マーカが張る座標系と治療室座標系の2つの変換式が既知であることにより、超音波診断装置で撮影した画像データの座標を治療室座標系での座標に対応付けることも可能となる。以上は、超音波プローブ22が移動可能な場合についての説明であるが、治療台の中に埋め込む、固定式アームで支持する等、治療室内の不稼動部に固定する構成としても良い。この場合でも、事前に超音波診断装置21の座標系と治療室座標系との関係を求めておくことで、両者の座標を対応付けることが可能となる。
【0022】
つぎに、相関演算部132について図7を用いて説明する。相関演算部132は、超音波診断装置本体21から得られ、3次元位置計測部131により座標変換済みの4次元ボリュームデータを使って照射ターゲットである治療対象部位Taの3次元追跡を行う。任意のフレームで計測した3次元ボリュームデータVD内で、治療対象部位Taの存在するROI(Region of Interest)領域を領域RIとして設定する。領域RIの設定は手動で行うこともできるし、自動で行うようにしても良い。自動の場合は、4次元治療計画データベース111に格納されている治療対象部位Taの輪郭情報の少なくとも一つを使い、当該輪郭に最も適合するような領域を領域RIとすればよい。この自動設定の時も、次に述べるのと同様の相関計算を利用することができる。領域RIが設定されたフレーム以降で取得される3次元ボリュームデータVDに対して探索領域RSを設定し、領域RIとの間で相関を計算し相関値が最大となる位置を求める。
【0023】
具体的には、探索領域RS内で領域RIを走査していきながら両者の相関を計算する。その際の走査としては、3自由度の並進移動のみでも良いし、3自由度の並進移動と3自由度の回転移動を組み合わせたものでも良い。相関値としては一様な輝度変動などにロバストな手法である正規化相互相関法を用いる。しかし、類似度尺度は正規化相互相関法に限定されるわけではなく、相互情報量など確率的な類似度尺度を利用することもできる。また、これらに限定されるわけではない。
【0024】
そして、計測した治療対象部位Taと4次元治療計画データでの治療対象部位Taとの距離が最小となる位相を現在の呼吸位相として算出する。
【0025】
また、相関演算部132は、GPU(Graphic Processing Unit)を搭載し、高速並列計算を活用して、瞬時に複数ボリュームデータとの相関演算を実施するようにしても良い。このように、4次元ボリュームデータを使ったマッチングを導入することで、真に3次元的な精度の高い追跡により呼吸位相を算出できる。
【0026】
照射制御信号生成部15は、算出した呼吸位相(およびそれに対応する治療計画データ)と治療対象部位Taの変位に応じて照射のタイミングや照射位置、角度等の照射制御信号と位相信号を生成し、照射制御部16と線量分布評価部20に出力する。
【0027】
照射制御信号生成部15の機能のうち、はじめに照射タイミングの制御について説明する。具体的には図8に示すように、4次元治療計画データRTP4Dの位相毎の3次元治療計画データのうち、ビーム照射可の位相範囲を事前に決定しておけば良い。図8では、1呼吸周期をN分割した内の、(i-1)分割目、i分割目、(i+1)分割目の3つの位相(RTPi−1,RTP,RTPi+1をビーム照射可の範囲として設定している。
【0028】
上記照射可能の範囲として選択する位相は、治療対象部位Taの変形や移動またはそれのばらつきが小さく、治療対象部位Taに対して高い精度で放射線を照射することができる、つまり、高精度を保ったまま容易に連続的な照射ができる位相が好ましい。また、照射装置17の動作を大きく変えないような範囲を選択すれば、照射位置や照射角度の変更が少なくて済む。とくに、上述したブラッグピークを有する荷電粒子ビームの場合は、照射深さの変化が小さいと、荷電粒子ビームの運動エネルギーを変化させる量が少なくて済むので、深さ変化が小さい位相や位置を選択することが好ましい。
【0029】
さらに、図9に示すように当該位相(分割)における3次元治療計画データにおける治療対象部位Taの位置と相関演算部132、3次元位置計測部131で解析した治療対象部位Taの追跡結果との距離Lが事前に設定した閾値Thより小さい場合には、治療対象部位Taが照射可の範囲に属しているものと判断し、ビーム照射可の信号を生成する。一方で、当該分割における治療対象部位Taの位置と相関演算部132、3次元位置計測部131での治療対象部位Taの追跡結果との距離Lが事前に設定した閾値Th以上の場合には、治療対象部位Taが照射可の範囲に属していないものと判断し、ビーム照射不可の信号を生成する。このようなことは、3次元計測手段131によって、治療対象部位変位計測装置12で計測した治療対象部位Taの3次元データが、4次元治療計画データRTP4Dと同一座標系(治療室座標系)上で表現できることによって実現できる。
【0030】
この例では、1呼吸周期を位相でN分割する場合について示したが、1呼吸周期を振幅でN分割する場合にも、同様の方法でビーム照射可否の信号を生成することが可能である。振幅で分割した場合には、同一分割内に、2個のビーム照射可の範囲が存在するので、呼吸の振幅の変化の方向から、呼気相であるか、吸気相であるかを判断し、2個の内のどちらのビーム照射可の範囲を使うかを決定する必要がある。また、領域は連続している必要もなく、離散的な領域を複数選択することもできる。
【0031】
また、照射制御信号生成部15は照射制御部16に対して、呼吸位相と呼吸位相に対応する3次元治療計画データに基づいてビームの照射位置や照射方向を変更するような照射制御指示を送る。したがって、照射制御信号生成部15と照射制御部16とで照射装置17の動作を制御することになる。
【0032】
照射装置17は照射制御部16からの制御により、ビーム照射可の信号が照射制御信号生成部15から来ている場合には、指定された照射位置や方向から治療対象部位Taに向けてビームを照射するようにする。これにより、照射装置17はビームの照射位置や照射方向を変更しながら治療対象部位Taに連続的に放射線を照射することができ、効率的な治療が可能となる。
【0033】
そして、4次元治療計画装置11で立案した位相毎の治療計画、位相に関する情報や照射位置や照射方向の変更の情報は、線量分布評価部20にも出力される。入力された位相等の情報により、ビーム照射位置や照射方向を変更する度に、線量分布評価部20は線量分布を計算する元となる治療計画も変更し、治療対象部位Ta、治療対象部位Taの近傍にある注意臓器の線量を重ね合わせる。この時、治療対象部位Taは移動変形し、治療対象部位Ta近傍の注意臓器も移動変形しているため、前記重ね合わせは非剛体的なマッチング処理として行われる。このようにして、最終的に呼吸位相毎の線量分布の重ね合わせを実施することで、線量分布の正確な評価が可能となる。重ね合わされた後の治療計画線量分布において、治療計画目標となる照射線量に達した場合に、照射制御部16に信号を送り、ビーム照射を終了する。また、線量分布評価部20において、図示しないデータ記録部を設け、位相毎にどれだけの線量を照射したのかも記録できるようにしておくと良い。
【0034】
以上のように本発明の実施の形態1にかかる放射線治療システムは、患者の治療対象部位Taに放射線を照射する照射装置17と、治療対象部位Ta(およびその周辺組織)に対して患者の(1呼吸周期における)呼吸位相毎に事前に撮像された複数の3次元画像(4次元CT画像)、および複数の3次元画像のそれぞれに対して生成された治療計画データRTPを保持する4次元治療計画装置11と、治療対象部位Taの実時間の変位を計測する治療対象部位変位計測装置12と、計測した治療対象部位Taの実時間の変位データと、事前に撮像された複数の3次元画像とに基づいて、呼吸位相を算出する呼吸位相算出装置13と、算出した呼吸位相と治療計画データに基づいて照射装置17を制御する照射制御部15,16と、治療対象部位Taに照射された放射線の線量分布を評価する線量分布評価部20と、を備え、線量分布評価部20は、前記呼吸位相ごとに当該呼吸位相に対応する治療計画データに基づいて線量分布を計算するとともに、呼吸位相ごとに計算した線量分布を重ね合わせ、重ね合わせた線量分布に応じて放射線の照射量を制御するように構成したので、照射ターゲットである治療対象部位Taの動きに応じて、照射位置や照射方向を動的に変更するとともに、線量分布を正確に評価し、治療計画に基づいた適切な治療を行うことができる
【0035】
とくに、治療対象部位変位計測装置12は、治療対象部位Taの変位(臓器運動)を計測するため、治療対象部位Taの3次元画像を実時間で撮像し、呼吸位相算出装置13は、撮像した治療対象部位Taの実時間3次元画像VDと、事前に撮像された複数の3次元画像とを比較して、呼吸位相を算出するように構成したので、4次元治療計画装置11で計画された治療対象部位Taの移動経路とリアルタイム超音波画像を使った、3次元ボリュームデータを用いて治療時の治療対象部位Taのマッチングを行うことになる。つまり、治療計画における想定位置と実際の位置との比較に基づいて呼吸位相を算出している。さらに、想定した位置とのずれ量Lを算出し、算出した呼吸位相や位置ずれ量Lに応じて、照射位置や照射方向を制御するようにしたので、患者の呼吸や呼吸以外の要因で治療対象部位Taの位置が移動しても、位相や治療対象部位Taの位置を正確にとらえることができるようになる。その結果、照射位置や照射方向を呼吸の位相や治療対象部位Taの実際の位置にあわせて的確に変更し、治療計画通りの正確な治療を実施することができる。また、呼気相(息を吐き切った状態)だけではなく,吸気相(息を吸い切った状態)も含めて、定義した全ての呼吸位相で照射が可能となる、といった従来にない顕著な効果を奏することができる。
【0036】
また、あらかじめ放射線を照射する呼吸位相を決めておき、治療対象部位Taの実時間変位データから算出した呼吸位相が決めておいた位相と一致している場合のみ、照射装置17から放射線を照射させるようにしたので、例えば、治療対象部位Taの変形や移動、またはそれらのばらつきが小さい位相を選択するようにすれば、治療対象部位Taに対して高い精度で放射線を照射することができる。つまり、高精度を保ったまま容易に連続的な照射ができる。
【0037】
なお、本実施の形態1においては、事前に撮影した3次元CT画像のそれぞれに対して治療計画データを作成する例について説明したが、3次元CT画像の数を治療計画よりも多く撮像しておいてもよい。その場合、各治療計画の位相を補完するように3次元CT画像を撮って(例えば、治療計画をN個としたときに3次元CT画像の数を3N個)おき、実時間のデータが補完部分に対応するCT画像と最も相関が高い場合には、当該3次元CT画像に近い位相の治療計画を選択するようにすればよい。
【0038】
なお、呼吸を停止する息止め照射を想定した場合でも、上述した、治療計画時の画像データと実時間における治療対象部位Taの3次元データとを比較する手法を適用することができる。この場合、治療計画を生成する際に位相毎の3次元画像として、各息止め時の治療対象部位Taの位置を計測し、その位置に応じた治療計画を生成する。そして、息止め状態の患者の治療対象部位Taの位置を実時間で計測し、計測した位置と3次元画像群とを比較して、どの息止め状態(位相に対応)であるかを判定し、ビーム照射位置や照射方向を変更し、さらにそれに応じて治療計画も選択して線量分布を評価すればよい。
【0039】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2にかかる放射線治療システムは、リアルタイム(実時間)で治療対象部位Taの位置を測定する治療対象部位変位計測装置12の超音波プローブ22により、治療時の線量分布をみだすことがないように、超音波プローブ22の動作範囲に制限をかける構成を備えている。図10と図11は、本実施の形態2にかかる放射線治療システムを説明するためのもので、図10は放射線治療システムを説明するためのブロック図、図11は放射線治療システムの模式図である。図10に示すように実施の形態2にかかる放射線治療システムは、実施の形態1にかかる放射線治療システムに警報発生部19を追加したものであり、3次元位置計測部131bは、治療対象部位変位計測装置12の超音波プローブ22の位置および姿勢をモニタできるようにしている。また、照射制御信号生成部15bから警報発生部19へ警報発生タイミングを生成する信号を送信する。この警報発生部19は照射制御部の一部として機能している。
【0040】
また、4次元治療計画装置11bにあっては、4次元治療計画データベース111bに治療計画ごとに、ビームラインLB(放射線のビーム中心:照射装置の出射口の中心からアイソセンタCを結ぶラインに相当)に対する超音波プローブ22の位置と、その位置関係での超音波プローブ22の有無による線量分布の誤差との関係、つまり、超音波プローブ22の存在による線量分布への影響を線量影響データとして格納している。その他の部分については、実施の形態1と共通するため、詳細な説明は省略する。図11に線量影響データを説明する模式図を示す。図において、誤差10%と示している一点鎖線内に超音波プローブ22が入ると線量が10%乱れる可能性があることを、誤差5%と示している一点鎖線内に超音波プローブ22が入ると線量が5%乱れる可能性があることを、誤差3%と示している二点鎖線内に超音波プローブ22が入ると線量が3%乱れる可能性があることを、示している。つまり、4次元治療計画データベース111bには、治療計画ごとに、超音波プローブ22の3次元の位置と線量の変動量とがマッピングされているデータが格納されている。図11においては、誤差5%の領域内に超音波プローブ22が進入しているため、最大で5%の線量誤差が発生する可能性がある。なお、図11中の10%や5%や3%といった数値の設定は一例であり、任意の値で、任意の細かいピッチで誤差を設定することができる。
【0041】
つぎに、動作について説明する。
3次元位置計測部131で、超音波プローブ22がビームライン47上に位置するような場合はもちろんのこと、事前に設定した閾値(N%)以上の誤差値で、線量分布を乱す可能性が生じた、つまり、設定した閾値を超える線量の変動を引き起こす可能性のある領域内に超音波プローブ22が入った場合には、警報装置19からアラーム信号を発生してユーザに知らしめるとともに、照射制御信号生成部15にインターロック信号を送って、照射タイミング不可の信号を生成するように制御する。
【0042】
以上、本実施の形態2にかかる放射線治療システムによれば、4次元治療計画装置11bは、治療計画ごとに、放射線のビーム中心(ビームラインLB)に対する治療対象部位変位計測装置の超音波プローブ22の位置と、治療対象部位Taへの放射線の線量の変動とを関係づけた線量変動データを格納し、照射制御部は、呼吸位相算出装置13bの3次元位置計測部131bが測定した超音波プローブ22の位置と、格納された線量影響データに基づいて、超音波プローブ22による線量への影響が所定値より大きいと判定すると警報を発する警報装置19を備えるように構成したので、超音波プローブ22による線量分布の乱れを防止することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態2においては、超音波プローブ22の存在により、線量が乱れないようにする構成について説明したが、さらに、放射線被ばくにより超音波プローブ22自身が壊れないように、超音波プローブ22をタングステン等の金属の筐体で放射線防護するようにしてもよい。その場合、超音波プローブ22が放射線被ばくにより故障することがないので、治療中の治療対象部位Taの追跡が安定する、といった効果が得られる。
【0044】
なお、超音波プローブ22に貼り付けるマーカについては、赤外線を自ら発光するアクティブーマーカや赤外線を反射するパッシブマーカを用いることが出来、耐放射線性能という点では全く問題がないことから、特に防護する必要はない。
【0045】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3にかかる放射線治療システムは、治療対象部位Taの位置を正確に測定するために、治療時の放射線が超音波プローブ22に対してノイズとならないように照射タイミングと超音波プローブ22の動作タイミングを制御する構成を備えている。図12は、本実施の形態3にかかる放射線治療システムを説明するためのブロック図である。図12に示すように、本実施の形態3にかかる放射線治療システムは、照射制御部16cから治療対象部位変位計測装置12cに向かって計測タイミングを生成する信号を送信する。その他の構成については、実施の形態1にかかる放射線照射システムと共通するので説明を省略する。
【0046】
つぎに動作について説明する。
図において、照射制御部16cに照射制御信号生成部15からのビーム照射可の制御信号が入力され、照射装置17からビームを照射させている期間は、治療対象部位変位計測装置12cでのリアルタイム超音波画像取得を中断させる。一方、照射制御部16cに照射制御信号生成部15からのビーム照射不可の制御信号が入力され、照射装置17からビームを照射させていない期間は、治療対象部位変位計測装置12cでのリアルタイム超音波画像取得を実施するよう計測タイミングの信号を治療対象部位変位計測装置に出力する。これにより、内部臓器計測手段12cは、照射装置17から放射線を照射している間はリアルタイム超音波画像を取得せず、照射装置17から放射線を照射していない間にリアルタイム超音波画像を取得するようになる。
【0047】
以上、本実施の形態3にかかる放射線治療システムによれば、照射装置17から放射線を照射している期間は超音波プローブ22による治療対象部位Taの変位計測を中断し、照射装置17から放射線を照射していない期間のみ治療対象部位Taの運動計測を実行するように構成したので、放射線照射による背景ノイズを低減し、鮮明な治療対象部位Taの超音波画像を取得することができる。その結果、治療対象部位Taの追跡精度が向上し、治療計画通りに放射線治療を実施することができる。
【0048】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4にかかる放射線治療システムでは、実施の形態1において用いた3次元位置計測部131を使用せず、治療対象部位Taの実時間3次元画像データと位相毎の3次元画像とを直接比較して位相を算出するようにする。図13と図14は、本発明の実施の形態4にかかる放射線治療システムを説明するためのもので、図13は放射線治療システムを説明するためのブロック図、図14は位相を算出する方法を説明するための図である。
【0049】
図13に示すように、相関演算部132dでは、治療計画のため事前に撮像された3次元CT画像群と、リアルタイムで測定した治療対象部位Taの位置データとを3次元位置計測部による座標合わせを行わずに、比較して相関を演算して位相を算出する。具体的には、相関演算部132dには、4次元治療計画データベース111dから入力される4次元超音波画像データの中から任意の斜断面を抽出する斜断面抽出部(図示せず)を備え、治療対象部位変位計測装置12から得られる3次元超音波画像データのある走査断面と、4次元超音波画像データから抽出した任意斜断面とを直接比較することで、両者の相関を計算し、相関値の一番高い任意斜断面を含む3次元超音波画像データの位相を、その時の位相と判断する。
【0050】
もしくは、治療対象部位変位計測装置12から得られる3次元超音波画像データのある走査断面と、4次元治療計画データベース111から得られる4次元CT画像データの任意斜断面とを直接比較することで、異なるモダリティ間で両者の画像相関を計算し、相関値の一番高い任意斜断面を含む3次元CT画像データの位相を、その時の位相と判断するようにしても良い。このような適切な呼吸位相の特定から腫瘍経路を決定することができ、照射制御信号生成部15にて、照射タイミング信号を生成できるようになる。
【0051】
また、臓器内に金属マーカなどが存在せず、相関計算だけでは位相を検出するのが難しい場合には、次に述べる方法を用いることができる。このとき、リアルタイム超音波画像として、走査面ごとに得られた、例えば、図14に示すような直交する2断面画像(PS1,PS2)を使用することができる。そして、直交2断面画像内で、動脈、静脈、門脈などの主要となる血管BTの断面CBTを3つ以上検出する。3つの位置関係から、4次元治療計画データベース111d内に格納された3次元CT画像データ群のどの断面を現在のリアルタイム超音波画像が描出しているかを計算する。
【0052】
図14を用いて具体的な方法を説明する。超音波ボリュームデータVDは治療対象部位変位計測装置12から得られるものである。呼吸位相算出装置13dは、撮像した治療部位の実時間3次元画像の中から直交する2つの走査断面を抽出する図示しない走査断面抽出部を備えている。そして、図14(a1)に示すように超音波ボリュームデータVDから生成される直交する2つの走査面を走査面PS1と走査面PS2とする。走査面PS1、もしくは、走査面PS2のどちらか一方の走査面で、血管が3つ以上うつるように超音波プローブ22の固定場所を決定するようにする。図14(a2)、図14(a3)に示すように走査面PS1に血管BT1、BT2、BT3(まとめて血管BTと称する。)の断面CBT1,CBT2,CBT3が映ったとする。これらの血管BTの抽出は、当該血管の情報を4次元治療データベース111dにテンプレートとして事前登録しておき、相関演算部132dがそれを利用することにより実施することができる。また、これら、比較対象とする血管BTとして、動脈、静脈、門脈などの内、中枢からの分岐の回数の少ない、主要な太い系のものを利用するようにすると、血管の特定、つまり識別が容易となる。
【0053】
次に、時間が経過し、図14(b1)に示すように超音波ボリュームデータVDが取得されたものとする。この時、治療対象部位Taを含む臓器Orgが動き、図14(b2)、図14(b3)に示すように走査面PS1、PS2にうつる血管BT1、BT2、BT3の断面CBT1,CBT2,CBT3の位置関係も変化する。この血管BT1、BT2、BT3の断面CBT1,CBT2,CBT3それぞれの中心点(3点)の位置関係の変化から、治療対象部位Taを含む臓器Orgの移動変化そのものを推定する。ここでは、超音波ボリュームデータを使って説明したが、超音波ボリュームデータの代わりに治療計画時のCTボリュームデータを使って同様の推定をすることもできる。
【0054】
以上のように、本実施の形態4によれば、呼吸位相算出装置13dは、複数の3次元画像の中から任意の斜断面を抽出する斜断面抽出部を備え、治療対象部位変位計測装置12から得られる超音波画像データ(3次元)のある走査断面と、抽出した斜断面とを直接比較することで、両者の相関を計算して位相を算出するように構成したので、簡単な構成で位相を算出することができる。
【0055】
とくに、4次元治療計画装置11dの4次元治療計画データベース111dには、治療計画ごとに治療対象部位Ta(を含む臓器Org)周辺の複数の血管BT1、BT2、BT3の位置データが記録され、呼吸位相算出装置13dは、撮像した治療部位の実時間3次元画像の中から直交する2つの走査断面PS1,PS2を抽出する走査断面抽出部を備え、撮像した治療対象部位Ta周辺の実時間3次元画像の所定の走査断面PS1、PS2に映る複数の血管CBT1,CBT2,CBT3の位置関係と血管の位置データとを比較して呼吸位相を算出するようにしたので、マーカが存在しない場合でも、治療対象部位Taの追跡を行い、位相を算出することができる。
【0056】
なお、上記実施の形態4における血管の検出数である3という数字には限定があるわけではなく、特徴的な血管であれば、2点でも位相算出は可能である。一方、検出数が多いほど、臓器Orgの移動変化の推定精度は向上するので、対象となる臓器Orgや、その周辺の血管の構成や状態に応じて、適宜検出数を決定すればよい。治療計画時に、腫瘍経路と臓器運動の位置関係は事前に調べておくことができるので、このような臓器運動の抽出から腫瘍経路を決定することができ、照射制御信号生成部15dにて、照射タイミング信号を生成できるようになる。
【符号の説明】
【0057】
11 4次元治療計画装置(111 4次元治療計画データベース)、
12 治療対象部位変位計測装置、
13 呼吸位相算出装置(131 3次元位置計測部、 132 相関演算部)、
15 照射制御信号生成部、 16 照射制御部、 17 照射装置、 19 警報発生部、 20 線量分布評価部、
21 3次元超音波診断装置本体、 22 超音波プローブ、 23 支持固定具、 41〜43 計測マーカ、44〜45 カメラ、
BT 血管、 CBT 血管の断面(像)、 C アイソセンタ、 LB ビームライン、 Org 治療対象部位を含む臓器、 PS1、PS2 走査面、 RTP 3次元治療計画データ、 RTP4D 4次元治療計画データ、 Ta 治療対象部位(照射ターゲット)、 VD 3次元ボリュームデータ。
添え字:b〜dは実施の形態により変形した例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の治療対象部位に放射線を照射する照射装置と、
前記治療対象部位に対して前記患者の呼吸位相毎に事前に撮像された複数の3次元画像と、前記複数の3次元画像のそれぞれに対して生成された治療計画データとを保持する4次元治療計画装置と、
前記治療対象部位の実時間の変位を計測する治療対象部位変位計測装置と、
前記計測した治療対象部位の実時間の変位データと、前記事前に撮像された複数の3次元画像とに基づいて、呼吸位相を算出する呼吸位相算出装置と、
前記算出した呼吸位相と前記治療計画データに基づいて、前記照射装置を制御する照射制御部と、
前記治療対象部位に照射された放射線の線量分布を評価する線量分布評価部と、を備え、
前記線量分布評価部は、前記呼吸位相ごとに当該呼吸位相に対応する治療計画データに基づいて線量分布を計算するとともに、前記呼吸位相ごとに計算した線量分布を重ね合わせ、重ね合わせた線量分布に応じて放射線の照射量を制御することを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
前記治療対象部位変位計測装置は、前記治療対象部位の3次元画像を実時間で撮像し、
前記呼吸位相算出装置では、撮像した治療対象部位の実時間3次元画像と、前記事前に撮像された複数の3次元画像とを比較して、呼吸位相を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記照射制御部は、前記算出した呼吸位相があらかじめ定めた呼吸位相と一致している場合のみ、前記照射装置に放射線を照射させるようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記4次元治療計画装置は、前記放射線のビーム中心に対する前記治療対象部位変位計測装置のプローブの位置と、前記治療対象部位への放射線の線量の変動とを関係づけた線量変動データを格納し、
前記照射制御部は、測定したプローブの位置と、前記線量影響データに基づいて、前記治療対象部位の線量分布への影響が所定値より大きいと判定すると警報を発する警報装置を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記照射装置から放射線を照射している期間は前記治療対象部位の変位計測を中断し、前記照射装置から放射線を照射していない期間のみ前記治療対象部位の変位計測を実行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記呼吸位相算出装置は、前記複数の3次元画像の中から任意の斜断面を抽出する斜断面抽出部を備え、
撮像した治療対象部位の実時間3次元画像の所定の走査断面と、前記抽出した斜断面とを比較して、前記呼吸位相を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記4次元治療計画装置には、前記治療計画ごとに前記治療対象部位周辺の複数の血管の位置データが記録され、
前記呼吸位相算出装置は、前記撮像した治療部位の実時間3次元画像の中から直交する2つの走査断面を抽出する走査断面抽出部を備え、
抽出した走査断面に映る複数の血管の位置関係と前記血管の位置データから前記呼吸位相を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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