説明

放射線治療寝台用天板及び放射線治療寝台

【課題】サイドフレーム方式とセンタースパイン方式との間を相互に変更する可動部を無くした簡略な構造で、この可動部の位置ずれを抑制した放射線治療寝台用天板を得ることを目的とする。
【解決手段】放射線治療寝台20に設置された固定板6と、固定板9に着脱可能に結合された分離板9とを備え、分離板9は、固定板6に表裏変更可能に結合する固定板接続部52と、固定板接続部52から該分離板9の長手方向に延伸した棒状アーム51とを有する分離板フレーム5と、分離板フレーム5に着脱可能に接続される分割側板2、3、4を複数有し、棒状アーム51は、該分離板9の長手方向における中心線13から該分離板9の短手方向に離れた位置に配置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療で使用される放射線治療装置において、患者を放射線照射位置に設定し、固定する為に用いられる放射線治療寝台の天板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線治療寝台は、放射線治療の際に患者を放射線照射位置に設定し、固定する為に用いられる。放射線治療寝台の天板およびその支持機構を構成する材料として、放射線吸収率の低い材料を用いることが好ましく、特に放射線が照射され、放射線照射位置に至る間に存在する構造物の材料にはアルミニウム等の放射線吸収率の高い金属を用いないようにしている。
【0003】
一般的に、放射線治療寝台は、サイドフレーム方式及びセンタースパイン方式に2つのタイプがある。サイドフレーム方式は、アルミニウム等の放射線吸収率の高い金属からなるフレームを、放射線治療寝台用天板の短手方向の中央に配置せず、放射線治療寝台用天板の短手方向の両側に配置したものである。センタースパイン方式は、アルミニウム等の放射線吸収率の高い金属からなるフレームを、放射線治療寝台用天板の短手方向の両側に配置せず、放射線治療寝台用天板の短手方向の中央に配置したものである。放射線の照射位置に応じて、放射線治療寝台用天板のタイプを選択して使用していた。
【0004】
特許文献1には、サイドフレーム方式とセンタースパイン方式との間を相互に変更できる放射線治療装置の治療台が開示されている。この治療台は、天板部がその長さ方向に平行に配列された2本の棒状アームと、棒状アームの両端部に配設され、2本の棒状アームを支持し、天板部の幅方向にそって棒状アームを個々に平行移動させるアーム移動手段を具備しており、アーム移動手段によって2本の棒状アームの位置を変えることにより天板開口部の幅と位置を変えることができるように構成されていた。天板部のアーム移動手段は、棒状アームの両端に設けられたラック・ピニオン機構で構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−354638号公報(0032段乃至0034段、図8、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の放射線治療装置の治療台は、2本の棒状アームが移動することで、センタースパイン方式とサイドフレーム方式を使い分けることが可能に構成されてはいるが、天板部の構造が非常に複雑となり、移動可能な棒状アームと治療台の固定側との連結部分にがたつきが生じて、患者の体位、治療台の動作角度などによっては棒状アームの位置ずれが生じ、放射線照射部のずれが生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、サイドフレーム方式とセンタースパイン方式との間を相互に変更する可動部を無くした簡略な構造で、この可動部の位置ずれを抑制した放射線治療寝台用天板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
放射線治療寝台に設置された固定板と、固定板に着脱可能に結合された分離板とを備える。分離板は、固定板に表裏変更可能に結合する固定板接続部と、固定板接続部から該分
離板の長手方向に延伸した棒状アームとを有する分離板フレームと、分離板フレームに着脱可能に接続される分割側板を複数有し、棒状アームは、該分離板の長手方向における中心線から該分離板の短手方向に離れた位置に配置された。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る放射線治療寝台用天板は、放射線治療寝台に設置された固定板と、固定板に着脱可能に結合された分離板とを備え、分離板の棒状アームが該分離板の長手方向に沿った中心線から該分離板の短手方向に離れた位置に配置されたので、分離板フレームを表裏変更して棒状アームの位置を変更でき、サイドフレーム方式とセンタースパイン方式との間を相互に変更する可動部を無くした簡略な構造で、この可動部の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1による放射線治療寝台を示す図である。
【図2】図1の分割式天板の分割構造を示す図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2の分割側板を示す図である。
【図5】図2の分割側板を示す図である。
【図6】本発明の放射線治療寝台を用いた照射を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態2による放射線治療寝台を示す図である。
【図8】図7の分割式天板の分割構造を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3によるプレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による放射線治療寝台を示す図である。図1(a)は放射線治療寝台20を上から見た図であり、図1(b)は放射線治療寝台20を横から見た図である。図2は、分割式天板の分割構造を示す図である。放射線治療寝台20は、患者12を搭置し固定する分割式天板15(以後、単に天板と呼ぶ。)と、天板15をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各軸方向に並進させ、X軸周りのθ方向、Y軸周りのφ方向、Z軸周りのξ方向の各方向に回転させる駆動装置11とを有する。駆動装置11は天板15の位置を移動させる。天板15は、駆動装置11に固定される固定板6と固定板6から分離される分離板9を有する。分離板9は、固定板6に表裏変更可能に結合する。分離板9は、分離板フレーム5と、分離板フレーム5に着脱可能な複数の分割板を有する。図1及び図2では、複数の分割板として、分割端板1、分割側板2、分割側板3、分割側板4の4つを有る場合を示している。分離板フレーム5は、棒状アーム51、固定板接続部52、分割端板接続部53から構成される。固定板接続部52には固定板6の結合溝18に結合する結合突部19が設けられ、分離板9は、結合突部19を結合溝18に結合し、ボルトやナットなどの固定部品で固定板6に固定される。ここで、分離板フレーム5、分割端板1、分割側板2、分割側板3、分割側板4はそれぞれ20kg以下である。
【0012】
図3は、図2のA−A断面図である。分離板9の分離板フレーム5は、固定板接続部52から分離板9の長手方向に延伸し、天板15の長手方向における中心線13及びこの中心線13を通り天板15の垂直方向における中心線14から天板15の短手方向である左右方向にオフセットして配置している。すなわち、分離板フレーム5は、中心線13から短手方向に離れた位置に配置される。分離板フレーム5の棒状アーム51は、天板15の垂直方向における両側に、4つの係合溝7が設けられている。係合溝7は、分離板9の表面側に位置する表面51a及び分離板9の裏面側に位置する裏面51dに、それぞれ分離板9の長手方向に延伸して形成される。
【0013】
係合溝7は、後述する分割側板2の係合突部21、分割側板3の係合突部31、分割側板4の係合突部41と係合する。表面51aに形成された係合溝7及び裏面51dに形成された係合溝7は、分離板9に平行な平面に投影した際の位置がそれぞれ一致するように配置される。分割側板2、3、4は、それぞれの接続部23、33、34と棒状アーム51の角部の両面に当接して接続される(図4、図5参照)。図3において、棒状アーム51の角部の両面とは、上面と側面である。
【0014】
図4は分割側板2を示す図であり、図5は分割側板3を示す図である。分割側板2は、プレート2aと、シート2bと、分割側板フレーム2cを有する。分割側板2はプレート2aが分離可能になっている。分割側板フレーム2cは、開口部2dを形成するU字形の形状を有しており、この開口部2dの周辺にプレート2aを支持するプレート支持部22が設けられる。また、分割側板フレーム2cは、プレート2aが挿入される側に、分離板フレーム5の棒状アーム51に接続する接続部23を有し、この接続部23には分離板フレーム5の棒状アーム51に係合する係合突部21が設けられる。シート2bは開口部2dを覆っている。
【0015】
分割側板3も分割側板2と同様の構造になっている。分割側板3は、プレート3aと、シート3bと、分割側板フレーム3cを有する。分割側板3はプレート3aが分離可能になっている。分割側板フレーム3cは、開口部3dを形成するU字形の形状を有しており、この開口部3dの周辺にプレート3aを支持するプレート支持部32が設けられる。また、分割側板フレーム3cは、プレート3aが挿入される側に、分離板フレーム5の棒状アーム51に接続する接続部33を有し、この接続部33には分離板フレーム5の棒状アーム51に係合する係合突部31が設けられる。シート3bは開口部3dを覆っている。
【0016】
分割側板4は、一体となる分離板9の内側に位置する側に、分離板フレーム5の棒状アーム51に接続する接続部43を有し、この接続部43には分離板フレーム5の棒状アーム51に係合する係合突部41が設けられる。
【0017】
分割端板1は、内側に開口部1dが形成された分割端板フレーム1cと、シート1bを有する。分割端板1の開口部1dは、患者12の頭部が配置された場合に、粒子線ビームを分割端板1の下方から照射する際に分割端板フレーム1cが粒子線ビームを遮らないような大きさにしている。シート1bは開口部1dを覆っている。分割端板1は、分離板フレーム5の分割端板接続部53に設けられた位置決突部17に係合する係合穴を有する。分割端板1は、分割端板接続部53の位置決突部17を係合穴に係合され、分割端板接続部53にボルトやナットなどの固定部品で固定される。
【0018】
分離板9のフレーム等は、従来と同様にアルミニウム等の金属を用いる。アルミニウム等の金属は、放射線吸収率は高くなるが、軽量であり、加工性も高く、従来から放射線治療装置用寝台のフレームに用いられてきた。実施の形態1の分離板9においては、分割端板フレーム1c、分割側板フレーム2c、分割側板フレーム3c、分割側板4、分離板フレーム5に、アルミニウム等の金属を用いている。
【0019】
図3を用いて、分割側板2、3、4と分離板フレーム5の棒状アーム51との接続部分を詳しく説明する。分割側板2は、係合突部21が棒状アーム51の係合溝7(図3において左上側)に係合し、接続部23が棒状アーム51の上面51aと左側面51bに当接して、がたつきがないように着脱可能に接続される。分割側板4は、係合突部41が棒状アーム51の係合溝7(図3において右上側)に係合し、接続部43が棒状アーム51の上面51aと右側面51cに当接して、がたつきがないように着脱可能に接続される。分割側板3は、分割側板2と同様に、係合突部31が棒状アーム51の係合溝7(図3において左上側)に係合し、接続部33が棒状アーム51の上面51aと左側面51bに当接
して、がたつきがないように着脱可能に接続される。
【0020】
分割側板4における分離板9の長手方向の長さは、分割端板接続部53と固定板接続部52との間の長さより多少短くなっており、分割側板4が分離板フレーム5に装着される際や取り外す際に、着脱しやすいようになっている。分割側板2及び3は、分割側板2及3における分離板9の長手方向の長さの合計が、分割端板接続部53と固定板接続部52との間の長さより多少短くなっており、分割側板2及び3が分離板フレーム5に装着される際や取り外す際に、着脱しやすいようになっている。なお、分割側板2及び3や分割側板4が分離板9の長さ方向において、分割端板接続部53と固定板接続部52との間で多少の余裕を持っているが、患者12が天板15に搭置し固定された際は、患者12の体重によりがたつくことはない。
【0021】
次に実施の形態1の放射線治療寝台20を用いた照射を説明する。図6は、本発明の放射線治療寝台を用いた照射を説明する図である。放射線として陽子線や重粒子線などの荷電粒子線を用いる例で説明する。天板15に固定された患者12に粒子線治療装置60により粒子線ビーム62を照射する。粒子線治療装置60の照射ノズル61から粒子線ビーム62を照射する方向は、患者12の照射対象である患部の位置により、適切な方向が選択される。例えば、粒子線治療装置60の照射ノズル61は回転ガントリに設置され、患者12の周り360度のいずれの方向からも照射することができる。図6では、3つの方向を図示している。粒子線ビーム62Aは患者12の真上から照射される場合であり、粒子線ビーム62Bは患者12の斜め下方から照射される場合であり、粒子線ビーム62Cは患者12の真下から照射される場合である。粒子線ビーム62Aは、患者12の真上に配置された粒子線治療装置60Aの照射ノズル61Aから照射される。同様に粒子線ビーム62Bは患者12の斜め下方に配置された粒子線治療装置60Bの照射ノズル61Bから照射され、粒子線ビーム62Cは、患者12の真下に配置された粒子線治療装置60Cの照射ノズル61Cから照射される。
【0022】
実施の形態1の天板15は、上述したように分離板フレーム5に、分割端板1を固定し、分割側板2、3、4を接続できるような構造となっている。患者12の放射線照射位置が分割側板3の位置にあり、患者12の斜め下方から放射線を照射する場合は、プレート3aを取外した後、患者12の斜め下方から放射線を照射する。この際、分割側板フレーム3cにシート3bが貼付けられているので、プレート3aを取外した際に、患者12の分割側板フレーム3cの中央部への沈み込みを抑えることができる。患者12の放射線照射位置が分割側板2の位置にあり、患者12の斜め下方から放射線を照射する場合も同様である。ここで、シート2b、シート3bはポリエステルフィルム等の放射線吸収率が低い材質を用いる。放射線吸収率が低い材質を用いることで、放射線の飛程にほぼ影響を与えることがない。したがって、シート2b、シート3bを放射線が通過しても、シート2b、シート3bによる放射線の吸収は問題がなく、放射線治療を行うことがきる。なお、シート1bもポリエステルフィルム等の放射線吸収率が低い材質を用いる。
【0023】
実施の形態1の天板15は、分離板フレーム5の棒状アーム51が天板15の長手方向における中心線13及びこの中心線13を通り天板15の垂直方向における中心線14から左右方向にオフセットして配置している。棒状アーム51が中心線13から左右方向にオフセットして配置いることにより、従来のセンタースパイン天板では不可能であった、天板真下付近からの照射も可能となる。ただし、図3に示す通り、分離板フレーム5の剛性を確保する為には、棒状アーム51は左又は右へ大きくオフセットさせることは困難である。天板の中心線13に対して正確に真下から広い照射範囲を照射することは困難な場合がある。しかし、患者12の放射線照射位置を天板長手方向の中心線13から棒状フレーム51が粒子線ビーム62の照射範囲に位置しないように患者12を若干移動させて対応できる。具体的には、患者12を若干移動させ、その移動によるアイソセンターからの位置ずれを放射線治療装置用寝台20が備えている駆動装置11により、左右方向駆動を使用するなどの方法によって、調整することがきる。したがて、実施の形態1の天板15は、従来のセンタースパイン方式の天板よりも、粒子線ビーム62の照射方向をカバーできる範囲を広範囲にすることができる。
【0024】
次に、患者12の放射線照射位置が分割側板4の位置にあり、患者12の斜め下方から放射線を照射する場合を考える。分離板フレーム5を図1の状態から、表裏逆に固定板6に設置し、分割端板1を表裏逆にし、分割側板2および3と分割側板4の配置を入れ替える。すなわち、分離板フレーム5の棒状アーム51の位置は、図1において左右が逆になり、分割側板4は図1の分割側板2および3側に配置し、分割側板2および3は図1の分割側板4側に配置する。
【0025】
実施の形態1の天板15は、図2に示す通り、構造が単純であり、かつ、分割端板1、分割側板2〜4は簡単に分離板フレーム5から取外すことができる。分離板フレーム5、分割端板1、分割側板2、分割側板3、分割側板4はそれぞれ20kg以下なので、分離板フレーム5の表裏の入れ替えは人手で問題なく実施できる。また、固定板6と分離板9との接続インターフェース、すなわち固定板6の結合溝18に結合する分離板9の結合突部19を備えた他の分離板にも付け替えることができる。また、分離板9を違う場所に設置された放射線治療寝台20に、結合させて使用することができる。固定板6と分離板9との接続インターフェースを統一することで、複数の放射線治療寝台20で分離板9を供用することができる。供用化することで、予備の部材を放射線治療寝台20毎に保管する必要がなく、天板15のメンテナンスも放射線治療寝台20の使用を妨げることなく実施でき、融通性、利便性を高めることができる。
【0026】
他の分離板の例としては、身長の低い人用に、天板長手方向の短い分離板や、分離板9のフレーム等をカーボンファイバー製にした分離板などがある。分離板9のフレーム等をカーボンファイバー製にすれば、さらに軽量にでき、カーボンファイバーはアルミニウムに比べて放射線の吸収量が少ないので、棒状アーム51を通過するように放射線を患者12に照射することができる。
【0027】
なお、分割端板1及び分割側板2、3のシート1b、2b、3bは開口部2d、3dをほとんど全て覆う場合で説明したが、シートが開口部の途中まで、すなわち接続部側の一部しか覆わないものを適用してもよい。この場合、粒子線治療装置60の照射ノズル61をシートの境界近くまで、患者12に近づけることができる。また、分割端板1のシート1bの一部が開口を有る場合は、患者12がうつ伏せになっても、患者12が呼吸を楽にすることができる。したがって、放射線治療における患者12の体位、照射ノズル61の位置や線量のバリエーションを多様にすることができる。
【0028】
また、表面51aに形成された係合溝7及び裏面51dに形成された係合溝7は、分離板9に平行な平面に投影した際の位置がそれぞれ一致するように配置される例で説明したが、略一致する場合でもよい。分離板9を表裏変更した際に、分離板9の端から分割側板2、3、4が極端に突出したり、へこんだりしなければよい。
【0029】
以上のように実施の形態1の放射線治療寝台用天板15によれば、放射線治療寝台20に設置された固定板6と、固定板9に着脱可能に結合された分離板9とを備え、分離板9は、固定板6に表裏変更可能に結合する固定板接続部52と、固定板接続部52から該分離板9の長手方向に延伸した棒状アーム51とを有する分離板フレーム5と、分離板フレーム5に着脱可能に接続される分割側板2、3、4を複数有し、棒状アーム51は、該分離板9の長手方向における中心線13から該分離板9の短手方向に離れた位置に配置されたので、分離板フレームを表裏変更して棒状アームの位置を変更でき、サイドフレーム方式とセンタースパイン方式との間を相互に変更する可動部を無くした簡略な構造で、この可動部の位置ずれを抑制することができる。
【0030】
以上のように実施の形態1の放射線治療寝台20によれば、患者12を搭置する放射線治療寝台用天板15と、放射線治療寝台用天板15の位置を移動させる駆動装置11とを備え、放射線治療寝台用天板15は、放射線治療寝台20に設置された固定板6と、固定板9に着脱可能に結合された分離板9とを備え、分離板9は、固定板6に表裏変更可能に結合する固定板接続部52と、固定板接続部52から該分離板9の長手方向に延伸した棒状アーム51とを有する分離板フレーム5と、分離板フレーム5に着脱可能に接続される分割側板2、3、4を複数有し、棒状アーム51は、該分離板9の長手方向における中心線13から該分離板9の短手方向に離れた位置に配置されたので、放射線治療寝台用天板がサイドフレーム方式とセンタースパイン方式との間を相互に変更する可動部を無くした簡略な構造で、この可動部の位置ずれを抑制することができ、放射線治療における放射線照射部のずれを抑制することができ、放射線治療を高精度に行うことができる。
【0031】
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2による放射線治療寝台を示す図であり、図8は実施の形態2による分割式天板の分割構造を示す図である。実施の形態2の放射線治療寝台50は、実施の形態1とは、分離板10を固定板8から完全に外さずに回転させて、分離板10の表裏を入れ替えることができる点で異なる。放射線治療寝台50は、患者12を搭置し固定する分割式天板16(以後、単に天板と呼ぶ。)と、天板16をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各軸方向に並進させ、X軸周りのθ方向、Y軸周りのφ方向、Z軸周りのξ方向の各方向に回転させる駆動装置11とを有する。天板16は、駆動装置11に固定される固定板8と固定板8から分離可能な分離板10を有する。
【0032】
分離板10は、実施の形態1の分離板9の分離板フレーム5を分離板フレーム35に代えたものである。分離板フレーム35は、分離板フレーム5の固定板接続部52から固定板接続部54に代えたものである。固定板8は分離板フレーム35の固定板接続部54に接続する係合柱26を有する。係合柱26は円柱状であり、その中心軸は天板16を上から見た際の天板16の長手方向における中心線13上に位置する。係合柱26の先端部には、分離板10の表裏の位置を決める位置決突起27が設けられる。位置決突起27は、例えば、四角柱状の形状をしており、位置決突起27の中心軸は、係合柱26の中心軸と一致している。分離板10の固定板接続部54は、固定板8の係合柱26に係合する係合穴28を有し、係合穴28の先端部に位置決突起27と係合する位置決穴29が設けられる。また、分離板10の固定板接続部54は、固定板8に固定する固定部55が設けられ、この固定部55にボルトやナットの固定部品を用いて固定板8に固定する。
【0033】
分離板10の表裏を入れ替える方法を説明する。分離板10の固定板接続部54から固定部品を外して、分離板10を固定板8から回転可能にする。分離板フレーム35から分割側板2〜4を外し、分離板フレーム35を固定板8から係合柱26の中心軸方向における離れる方向に、位置決突起27と位置決穴29の係合が外れるように移動させる。分離板フレーム35を、その表裏を入れ替えるように回転させる。分離板フレーム35を係合柱26の中心軸方向における固定板8に近づく方向に、位置決突起27と位置決穴29とが係合するように移動させる。分離板10の固定板接続部54は、固定板8に固定する固定部55が設けられ、この固定部55にボルトやナットの固定部品を用いて固定板8に固定する。
【0034】
分離板フレーム35の表裏を変更した後は、実施の形態1で説明したように、分割端板1を表裏逆にし、分割側板2および3と分割側板4の配置を入れ替える。
【0035】
実施の形態2の天板16は、分離板10を固定板8から完全に分離することなしに、分離板10の表裏を変更することができる。分離板10を固定板8から完全に分離しないので、実施の形態1よりも小さな力で容易に変更することができる。実施の形態2の放射線治療寝台50は、天板16の分離板10を実施の形態1よりも小さな力で容易に変更することができる。したがって、分離板10の表裏を実施の形態1よりも短時間で変更することができる。これにより、放射線治療寝台50を患者12毎の所定の状態にすることが、短時間にでき、放射線治療にかかるトータルの時間を短くすることができる。
【0036】
なお、係合柱26の中心軸は天板16を上から見た際の天板16の長手方向における中心線13上に位置する例で説明したが、略一致する場合でもよい。分離板9を表裏変更した際に、分離板9の端から分割側板2、3、4が極端に突出したり、へこんだりしなければよい。
【0037】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3による分割側板のプレートを示す図である。図9(a)は、分割側板2(3)のプレート2a(3a)の内部もしくは表面に金属球24を埋め込んだ例である。図9(b)は、分割側板2(3)のプレート2a(3a)の内部もしくは表面に金属プレート25を埋め込んだり、貼付けたりした例である。金属球24や金属プレート25は、X線を減衰させるX線減衰部を構成する。図9に示すように、分割側板2(3)のプレート2a(3a)に、金属球24や金属プレート25のX線減衰部を設けたので、患者12を放射線治療寝台に固定した際に放射線照射位置のプレート2a(3a)を抜き忘れた場合でも、放射線治療において通常実施するX線画像撮影による照射位置確認の際に、X線画像に金属球24や金属プレート25が写るので、プレート2a(3a)の抜き忘れを確認することが可能となる。したがって、放射線治療の照射の際において、分割側板2(3)のプレート2a(3a)の抜き忘れを防止することができる。
【0038】
実施の形態3による分割側板のプレートは、実施の形態1の放射線治療寝台20及び実施の形態2の放射線治療寝台50のいずれにも適用することができる。
【0039】
なお、金属球24や金属プレート25以外にもプレート2a(3a)および人体とはX線吸収率が大きく異なる材質を用いて、プレート2a(3a)に埋め込みや貼付けを施すことで同様な効果が得られる。
【0040】
なお、実施の形態1〜3では、分離板フレーム5(35)に取り付ける分割板の分割構成は4つの場合で説明したが、分割構成は他の場合でもよく、分割数を少なくしたり、多くしたりしてもよい。
【0041】
また、棒状アーム51は、分離板9の表面及び裏面に平行な四角柱の例で説明したが、分離板9の表面及び裏面に平行ではない四角柱や、円柱、楕円柱など他の形状であっても構わない。表面51aに形成された係合溝7及び裏面51dに形成された係合溝7は、分離板9に平行な平面に投影した際の位置がそれぞれ一致するように配置されることで、分離板9(10)が表裏変更した際、すなわち棒状アーム51の表裏変更した際にも、分割側板2〜4のそれぞれの接続部23、33、43は、表面及び裏面にもぴったりと接続することができる。
【符号の説明】
【0042】
2、3、4…分割側板、2a、3a、4a…プレート、2b、3b、4b…シート、2c、3c、4c…分割側板フレーム、2d、3d、4d…開口部、5、35…分離板フレーム、6、8…固定板、7…係合溝、9、10…分離板、11…駆動装置、12…患者、13…中心線、15、16…天板、20、50…放射線治療寝台、21、31、41…係合突部、23、33、43…接続部、24…金属球、25…金属プレート、26…係合柱、28…係合穴、51…棒状アーム、51a…上面、51d…下面、52、54…固定板接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療の際に患者を搭置し、前記患者を放射線照射位置に設定する放射線治療寝台に用いる放射線治療寝台用天板であって、
前記放射線治療寝台に設置された固定板と、前記固定板に着脱可能に結合された分離板とを備え、
前記分離板は、
前記固定板に表裏変更可能に結合する固定板接続部と、前記固定板接続部から該分離板の長手方向に延伸した棒状アームとを有する分離板フレームと、
前記分離板フレームに着脱可能に接続される分割側板を複数有し、
前記棒状アームは、該分離板の長手方向における中心線から該分離板の短手方向に離れた位置に配置されたことを特徴とする放射線治療寝台用天板。
【請求項2】
前記固定板は、前記分離板の前記固定板接続部に接続する係合柱を有し、
前記分離板は、前記固定板接続部に、前記係合柱に係合する係合穴を有し、
前記係合柱は、その中心軸が前記固定板を上から見た際の該固定板の長手方向における中心線に略一致する位置するように配置されたことを特徴とする請求項1記載の放射線治療寝台用天板。
【請求項3】
前記棒状アームは、前記分離板の表面側に位置する表面及び前記分離板の裏面側に位置する裏面に、それぞれ該分離板の長手方向に延伸して形成された係合溝を有し、
前記表面に形成された係合溝及び前記裏面に形成された係合溝は、前記分離板に平行な平面に投影した際の位置がそれぞれ略一致するように配置され、
前記分割側板は、前記棒状アームに接続する接続部を有し、
前記接続部に、前記係合溝に係合する係合突部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の放射線治療寝台用天板。
【請求項4】
前記棒状アームは、前記表面及び前記裏面のそれぞれに、平行した2本の前記係合溝を有することを特徴とする請求項3記載の放射線治療寝台用天板。
【請求項5】
前記分割側板の少なくとも1つは、開口部を形成した分割側板フレームと、前記開口部を覆ったシートと、前記開口部に着脱可能に設置されるプレートを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線治療寝台用天板。
【請求項6】
前記プレートは、X線を減衰させるX線減衰部を有することを特徴とする請求項5記載の放射線治療寝台用天板。
【請求項7】
前記シートは、前記開口部における前記分割側板の前記接続部側の部分を覆ったことを特徴とする請求項5または6に記載の放射線治療寝台用天板。
【請求項8】
前記シートは、その材質が放射線吸収率の低い材質であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の放射線治療寝台用天板。
【請求項9】
放射線治療の際に患者を搭置し、前記患者を放射線照射位置に設定する放射線治療寝台であって、
前記患者を搭置する放射線治療寝台用天板と、
前記放射線治療寝台用天板の位置を移動させる駆動装置とを備え、
前記放射線治療寝台用天板は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の放射線治療寝台用天板である放射線治療寝台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61039(P2012−61039A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205537(P2010−205537)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】