説明

放射線治療情報管理システム

【課題】複数の段階を経て放射線治療を行うときに発生する照射録情報を管理する治療情報管理システムを提供する。
【解決手段】放射線治療の各工程において照射録情報が入力されるクライアント端末と、ネットワークを介して前記クライアント端末に接続され、前記クライアント端末に入力された照射録情報を記録するサーバと、放射線治療の各工程において、各工程で必要となる照射録情報を前記サーバから受信し、前記クライアント端末に表示する表示装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線治療、特に重粒子線治療における治療情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療(重粒子線治療、陽子線治療など)において患者の受付から治療が終了するまでには一連の業務フロー、即ち、病院受付、診察、放射線治療受付、診断、治療方針決定、固定具作成、CTシミュレーション、治療計画、治療討議、補償フィルタ発注、QA(Quality Assurance)・実験モード、リハーサル、治療照射、治療終了、フォローアップまでの多段階の工程がある。各工程は、病院スタッフ(医師、看護師、技師、医学物理士、事務員)、患者、治療リソース(治療計画室、固定具作成室、CTシミュレーション室(SIM室)、カンファレンス室、治療室等の病室や、加速器、照射装置、MRI,CT等の治療機器)、病院情報システム(HIS:hospital information system)と密な関係を有している。
【0003】
各工程を管理し、照射するまでの条件やデータを入力し管理する書類が照射録である。病院スタッフは、この照射録を中心に重粒子線治療を進行させることになる。通常では、この照射録は各工程において医師等の人手により作成され、順次ファイルされて各工程において治療のために参照されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−242719号公報
【特許文献2】特開平11−253565号公報
【特許文献3】特開平10−162064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従前のように人手により照射録を作成する方法では、重粒子線治療のような多くの工程を必要とする場合、照射録の数は膨大となり、照射録の作成及び参照に時間がかかってしまう。また、多数の患者を診断及び治療できるように照射録の作成の省力化が必要となっている。そこで、照射録の作成を電子化し、診断、治療計画並びに治療照射のために敏速に適切な患者情報などを取得できる治療情報管理システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数の工程を経て放射線治療を行うときに生成される照射録情報を管理する放射線治療情報管理装置であって、放射線治療の各工程において照射録情報が入力されるクライアント端末と、ネットワークを介して前記クライアント端末に接続され、前記クライアント端末に入力された照射録情報を記録するサーバと、放射線治療の各工程において、各工程で必要となる照射録情報を前記サーバから受信し、前記クライアント端末に表示する表示装置と、により構成される放射線治療情報管理システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粒子線治療情報管理システム11が各工程で作成される照射録情報を電子化し、集計し、解析し、治療情報の集中管理及び治療情報による治療の支援を可能とし、重粒子線治療の質の向上、効率の向上に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】重粒子線治療情報管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】重粒子線治療情報管理システムの各工程を示す図である。
【図3】重粒子線治療の各工程と重粒子線治療データ管理との関連を示す図である。
【図4】重粒子線治療情報管理システムのシステム構成図である。
【図5】クライアント端末の表示形態を示す図である。
【図6】照射録作成管理のための表示画像を示す図である。
【図7】固定具作成リポートの各工程における関連性を示す図である。
【図8】固定具作成リポートの詳細画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の一実施例として、重粒子線治療情報管理システム11の全体の体系を図1に示す。重粒子線治療情報管理システム11は、重粒子線治療工程管理システム12、重粒子線治療データ管理システム13及び重粒子線治療データ解析システム14を有している。
【0010】
重粒子線治療工程管理システム12は、照射録作成管理システム15、情報共有管理システム16及びスケジュール管理システム17を含む。照射録作成管理システム15は後述するように一連の作業フローの管理と照射録の作成を行う。情報共有管理システム16はHIS、照射機器とのインターフェース及び人間型の情報共有を支援する。スケジュール管理システム17は事前にどの程度の患者数が治療できるかのプランニング機能、日々治療する患者が発生した場合に準備から治療完了までの予約スケジュール機能、その日のスケジュール変更を行うリアルタイムスケジュール機能を有し、年間のスケジュールから1日のスケジュールまでを管理する。
【0011】
粒子線治療データ管理システム13は、データベースシステム18及び検索システム19を含む。データベースシステム18は照射録を中心とした患者由来の情報と照射機器などの機器由来の情報(機器の標準設定、校正データ、設定データ等)をデータベースに蓄積し、検索可能な状態で保存する。検索システム19はデータベースシステム18に保存されているデータの検索を医師等の病院スタッフがそれぞれの立場で必要となるデータの検索に使用される。
【0012】
重粒子線治療データ解析システム14は、重粒子線治療データ管理システム13と連携して、各種患者の治療情報や照射機器由来の情報の集計及び解析をする機能を有する。例えば、医師がカプラン・マイヤー法を活用した生存率の集計をプロトコール(がんのある臓器や進行の段階によって、照射回数等を定めたひな形)や治療計画と関連づけて評価することによって治療の質を向上させることが挙げられる。また、患者の過去の状態や治療の効果等を参照し、次回の治療についてプロトコールや治療計画を決める意思決定支援情報として活用する。技師や医学物理士にとっては、トラブルが生じたときに、照射機器及び患者由来の情報を入手することでトラブルの原因究明に寄与し、看護士にとっては、患者の心理状態や体調などの患者に密接したデータを取得することにより、こまやかな看護を実現することが可能となる。
【0013】
次に、図2及び図3を参照して重粒子線治療の業務フローを説明する。まず、HISから重粒子線治療情報管理システム11にオーダが発行される。続いて、患者は病院の受付で受診の受付を行う(S11)。この受付においては、診察に必要な検査及び撮影などが指示され、患者は検査室及び/又は撮影室に行き検査及び/又は撮影を受ける。検査及び/又は撮影を受けた患者は診察室に行き医師の診察を受ける(S12)。患者が重粒子線治療が必要との医師の診断を受けた場合には、治療受付が行われる(S13)。このとき、照射録情報として他の病院の紹介か、他の科の紹介かなどの情報も記録される。治療受付が終わると、患者は治療計画室に入り、再度診察され、適応が判断される(S14)。この診察・適用判断では、CT画像、病巣、転移の有無、感染症などの照射録情報が作成される。
【0014】
診察・適用判断が行われた後に、患者の治療方針が決定される(S15)。この治療方針決定では、プロトコール、他治療との併用、シェーマ図、前処理情報、患者スケジュールなどの照射録情報が作成される。治療方針が決定されると、決定された治療方針に基づいて患者を固定するための固定具が固定具作成室にて作成される(S16)。
【0015】
次に、CTシミュレーションがSIM室にて行われる(S17)。このCTシミュレーションでは、作成された固定具に患者を固定し、CT撮影を行う。このCT写真を基に医師が、治療すべき個所をコンピュータ上に入力し、線量分布が作られる。このCTシミュレーションにより、CT画像リスト等の照射録情報が作成される。この後、得られた照射録情報に基づいて治療計画が治療計画室にて行われる(S18)。この治療計画により、ポート情報、患者位置決め情報等の照射に必要な照射録情報が作成される。作成された治療計画に基づいて治療討議がコンファレンス室にて行われる(S19)。この治療討議により、重粒子線治療工程管理システム12で作成された情報を参照しながら、線量分布図、患者位置決め情報などの照射録情報が確定される。
【0016】
治療討議により治療計画が決定されると、補償フィルタ(患者のがんの形状に即した線量調整器具)の発注が行われる(S20)。この補償フィルタ発注において補償フィルタデータ、製作スケジュールなどの照射録情報が作成される。
【0017】
次に、治療室にて、QA・実験モードが実施される(S21)。このQA・実験モードの実施において、線量、気圧、測定結果などの照射録情報が作成される。QA・実験モードが実施された後に、必要な患者には治療のリハーサルがSIM室にて行われる(S22)。
【0018】
リハーサルが行われた後、実際の重粒子線による治療照射が治療室にて行われる(S23)。この治療照射おいては、治療討議で決定した照射の位置決め、線量等の情報をもとに照射を行う。治療の終了(S24)に伴い、ポート毎の照射回数や線量分布等の実施記録が作成され、重粒子線治療情報管理システム11に伝送され、照射録情報が作成される。CTシミュレーション(S17)、治療計画(S18)にてがんの部位や線量分布のデータを計画値として持ち、治療討議(S19)にて審査・承認がなされ、治療照射(S23)にて実績値が得られる。その後、フォローアップが行われる(S25)。このフォローアップは治療の追跡調査を行うものである。
【0019】
本実施形態では、重粒子線治療情報管理システム11における受付(S11)からフォローアップ(S25)の各工程で作成される照射録情報を電子化し、検索可能なデータとして保存し、集計・解析を実現し、治療情報の集中管理及び治療情報による治療の支援を可能としている。
【0020】
図4は、重粒子線治療情報管理システム11のシステム構成図である。図4に示されるサーバ31は、主に病院に設けられている。サーバ31には、グラフィックユーザインターフェースモジュール(GUI)311,インターフェースモジュール(I/F)312,スケジュールモジュール313,検索モジュール314,照射録モジュール315,データ管理モジュール316,解析モジュール317,通信モジュール318,データベース319及びオペレーティングシステム(OS)モジュール320が設けられている。
【0021】
スケジュールモジュール313は、スケジュール管理システム17に関連し、患者の治療予約をスケジュールするために使用され、例えば、特願2009−212190に記載された方法で治療予約を実施することができる。照射録モジュール315は、クライアント端末33からの情報を受けて照射録情報を作成するために使用される。データ管理モジュール316は、重粒子線治療データ管理システム13に関連し、検索モジュール314とデータベース319と協働して情報の記録及び検索などを行う。解析モジュール317は、データベース319に格納されるデータ及び情報を解析する。通信モジュール318は、インターフェースモジュール(I/F)312を介して、サーバ31とクライアント端末33、サーバ31とHIS、サーバ31と加速器等の照射機器との通信を行うために使用される。
【0022】
サーバ31は、ネットワーク32に接続される。このネットワーク32には、病院スタッフ及び治療リソース(治療計画室、固定具作成室、SIM室、カンファレンス室、治療室等)に設けられる複数のクライアント端末33が接続される。これらクライアント端末33から照射録情報が入力されると、照射録情報はネットワーク32を介してサーバ31に送られ、データベース319に記憶される。
【0023】
クライアント端末33では、重粒子線治療の患者毎の各工程における情報の閲覧、データ入力が同時に必要となり、画面が一つであると情報量が多く表示しきれない場合が生じる。そのため、クライアント端末33には複数の画面が準備される。本実施形態では、図5に示されるように、1台のクライアント端末に対して2つの表示器(入力画面と患者情報画面の2画面)が設けられる。例えば、一方の表示器は情報の入力のために使用され、他方の表示器は情報参照のために使用される。画面には複数のタグが並んでおり、そのタグを選ぶと対応する画面が表示されるようになっている。複数の画面(照射録情報)を同時に表示することができるので幾つか画面を開いておいてこれらを見ながら必要な情報を入力画面から入力することが可能となる。病院スタッフによって入力され、これらの情報が患者毎の照射録となり、ネットワークを介してサーバ31に送られ格納される。
【0024】
次に、照射録作成管理システム15の各工程の表示例を説明する。図2及び図3の治療受付(S13)においてクライアント端末33の表示器に表示された患者情報入力画面を参照して患者のIDが入力されると、表示器には患者情報が表示され、今日の治療スケジュールが表示される。このスケジュールに従って受付は患者に粒子線治療のための検査や撮影を指示する。例えば、CT室では、技師は技師のクライアント端末33の表示器の入力画面を参照して患者IDを入力すると、表示器に患者の撮影すべき部位が示され、技師は示された部位をCT撮影する。撮影画像はクライアント端末33からネットワーク32を介してサーバ31に送られ、データベース319に格納される。
【0025】
診察・適応判断(S14)では、医師はクライアント端末33の表示器の画面に従って患者IDを入力すると、2つの表示器に入力画面と患者情報画面がそれぞれ表示される。患者情報画面では診察・適応判断に必要な画像を選択するためのタグが表示される。医師はタグを選択すると、ネットワークを介してサーバ31から、例えば、患者のCT画像が送られてきて患者情報画面に表示される。医師はこの患者情報画面を見てがんの位置、大きさ、このがんは重粒子線で治療できる範囲のものか、転移していないかなどの情報を、患者情報画面を参照して入力する。このようにして入力された情報はネットワークを介してサーバ31に格納される。
【0026】
治療方針決定(S15)では、図6に示されるように治療計画室のクライアント端末33において治療オーダが受信される。このときクライアント端末33の表示器の患者一覧エリアに治療対象となる患者の一覧表が表示される。医師は患者一覧から1名の患者を選択すると、その患者の治療オーダ依頼内容確認画面(*1)が表示される。具体的には、患者が選択されると、患者一覧エリアが閉じ、患者情報エリアが左にシフトし、右側に業務ベースエリアが表示される。患者情報エリアでは、業務に対応した治療患者に関する情報、例えば、治療方針、治療照射にいたる情報及び情報の入力画面が表示される。業務ベースエリアでは、患者情報エリアに対する入力補助、編集を行うことができる。
【0027】
画面*1により依頼内容が確認されると、医師は治療方針決定に必要な情報を取得するために対応するタグを選択する。タグの選択により、治療計画概要を見るための治療計画概要画面*2、治療前作業指示のための治療前作業指示画面*3、指示図作成のための指示図作成画面*4,スケジュール作成のためのスケジュール作成画面*5,治療開始確認のための治療開始確認画面*6,説明と同意のための説明と同意画面*7がサーバ31から対応する情報を取り込んで、クライアント端末33の表示器に順次表示され、医師は各画面に表示された情報の支援を受けて各画面に応じて判断を下し、入力画面を参照して治療に必要な情報を入力していく。これらの入力情報はネットワークを介してサーバ31に送られ格納される。
【0028】
治療討議では、プロトコールの仮選択、スケジュールの仮割当、固定具作成指示入力がクライアント端末33を介して行われる。これら作業により発生する情報は、クライアント端末33からネットワーク32を介してサーバ31に送られ、データベース319に記録する。
【0029】
上述のようにして治療方針が決定されると、固定具の作成が着手される。この場合、固定具作成技師はクライアント端末33を操作してタグに基づいて固定具作成レポート画面*8を選択する。この固定具作成では、当日スケジュール作成、患者在情報(受付)、当日変更、固定具作成室入室、患者同定・確認、固定具型取り、患者予定確認、作成作業・仕上げ、固定具作成報告入力、IDラベル作成、固定具登録入力、固定具保管、実施サマリが行われる。当日スケジュール作成では、当日のスケジュールを参照し、印刷し、当日までの患者情報を加味してスケジュールを入力する。患者在情報受付では、IDカード(又は端末操作)により受付されたことを判断する。患者同定・確認では、IDカードと端末の確認画面を使って患者を照合する。
【0030】
固定具型取りでは、部位の撮影画像や指示内容を表示し、作業内容をデジタルカメラにて取り込む。患者予定確認では、受付にて次回の予定を確認し、次回の予定を印刷し、配布する。固定具作成報告入力では、作成した固定具のレポート情報を入力し、固定具レポート画面に表示する。
【0031】
IDラベル作成では、固定具に貼るバーコードを作成し、作成したバーコードを固定具に貼付ける。固定具登録入力では、バーコードのIDをサーバ31に登録する。バーコード付固定具を認識するかを確認する。固定具保管では、保管場所の番号をサーバ31に登録する。実施サマリでは、HISに対して固定具作成を実施したことをサーバ31から通知する。
【0032】
上述した固定具の作成においては、具体的には、治療方針決定において、何回照射するかについては幾つかのひな形が準備されており、そのひな形が割当てられる。割当てられたひな形に従って固定具が決められる。
【0033】
固定具が作成されると、SIM室では、医師又は技師がクライアント端末の表示器に表示されたタグを選択し、CTシミュレーションのためのCTシミュレーションレポート情報を、ネットワークを介してサーバから取り込む。取り込まれたCTシミュレーションレポート情報はクライアント端末の表示器にCTシミュレーションレポート画面*9として表示される。このCTシミュレーションでは、患者に対してCTシミュレーションがCTシミュレーションレポート画面*9に表示された情報に従って行われる。このCTシミュレーションにおいて医師は治療部位を特定し、部位に対して粒子線を照射する方向及び部位の照射中心(アイソセンタ)を決定する。
【0034】
CTシミュレーション(S17)では、例えば、当日スケジュール作成転送、進捗状況表示、患者在情報(受付)、当日変更、患者入室、患者同定・確認、患者入室・固定具搬入、体位撮影条件、治療台移動・レーザポイント照合、治療計画CT撮影、フュージョン画像転送、簡易治療計画、DR画像撮影、患者予定確認、CTシミュレーション記録及び実施したことの通知が順次実行される。進捗状況表示では、患者リスト画面にてCTシミュレーションの患者を閲覧する。体位撮影条件では、CTに撮影体位、スライス厚、呼吸同期などが入力される。治療計画CT撮影は、この画像に基づいて線量計算を行うことと、CT画像上でアイソセンタを仮決定することの2つの目的を有する。フュージョン画像転送では、PACS内のPET、MRIデータと重粒子PACS内CTデータを合成する。簡易治療計画では、体位、アイソセンタ位置、スノート位置の決定が行われる。DR画像撮影では、治療シミュレータ位置決めシステムが稼動され、位置決めが行われる。患者予定確認では、受付にて次回の予定を確認し、次回の予定を印刷し、配布が行われる。CTシミュレーション記録では、指示に対するレポートや実施データのインポート、デジカメ画像の登録が行われる。実施サマリを受けたタイミングにおいて、HISに対してCTシミュレーションが実施されたことが通知される。上記のCTシミュレーションで発生する情報はクライアント端末33からネットワーク32を介してサーバ31に送られ、記録される。
【0035】
CTシミュレーション(S17)が終了すると、治療計画(S18)が行われる。この場合、クライアント端末33の表示器の画面から治療計画のための治療計画レポート画面*10のタグが選択されることにより、治療計画レポート画面*10が表示される。この治療計画では、治療計画レポート画面*10を参照して病院スタッフにより治療計画に関する情報がクライアント端末33に入力されると、治療計画が作成される。即ち、フュージョン画像転送、医師輪郭入力、計算依頼入力、計算、計算結果確認、作業記録、計算終了連絡、計算結果確認、治療計画保存、リハーサル指示入力が行われる。医師輪郭入力では、医師がクライアント端末にて輪郭を入力し、サーバ側に入力する情報を生成する。計算依頼入力では、照射方向、線量、回数、照射方法などが入力される。計算結果確認では、サーバ31にて確認が行われる。作業記録では、サーバ31に作業記録、分析データ、DVHなどがクライアント端末33から入力される。計算結果確認では、サーバ31を使用して確認される。リハーサル指示入力では、サーバ31にリハーサルの有無が入力される。また、HISに対して実施サマリが通知される。
【0036】
治療計画(S18)が終了すると、治療討議(S19)が行われる。医師はクライアント端末の表示器の画面から治療討議のための治療討議画面*11を示すタグを選択することによって、治療討議画面*11が表示される。この治療討議(S19)では、治療討議画面*11に表示されている患者の画像などを見て病院スタッフによって治療の討議が行われ、計画承認、スケジュール確定、変更時患者予定確認が行われる。計画承認では、承認ステータスがサーバに登録される。スケジュール確定では、治療計画データを固定し、スケジュールを仮から決定に切り替えられ、補償フィルタのデータ作成が行われ、治療装置への治療パラメータの転送が行われる。変更時患者予定確認では、治療日に変更が生じるとき、患者が来院する次回予定を調整する。
【0037】
治療討議(S19)が終わると、補償フィルタ発注(S20)が行われる。この補償フィルタ発注により、照射するときにがんの形に合わせて二次元的な形と深さ方向の線量の調整が行われ一回試し打ちが行われる。この試し打ちに基づいて、データ作成、データ登録、データ引き渡し、工作・検査、IDラベル貼付け、補償フィルタ受け取り、納品受入検査、登録、保管が行われる。
【0038】
補償フィルタ発注(S20)が終わると、QA・実験モード(S21)が実施される。QA・実験モードでは、治療室整備、QAファントム搬入、QAファントム設置、加速器QAモード/加速器エネルギー設定、水温測定又は室内気温測定、気圧測定、線量計操作・設定、線量計情報確認、作業者退室、ビーム照射、測定結果参照、測定結果確認、トレンド確認、合否判断入力、後片付けが行われる。これらの作業はサーバ31から取り込まれ、表示器に表示された情報の支援の下に実施される。
【0039】
QA・実験モード(S21)が終了すると、リハーサル(S22)が実施される。医師はクライアント端末の表示器の画面からリハーサルのためのリハーサルレポート画面*12を示すタグをクリックすることにより、リハーサルレポート画面*12が表示される。リハーサルレポート画面*12に示された情報を参照しながら、病院スタッフにより患者に対してリハーサルが行われる。このリハーサルでは、当日スケジュール作成・転送、進行状況の表示、患者在情報確認、当日変更確認、固定具準備確認、前処理、患者同定確認、情報設定確認、治療台移動・レーザポイント照射、参照画像再撮影、患者予定確認、実施記録が行われる。前処理では、処置内容を記録する。患者同定確認では、IDカードと端末の確認画面を使用して患者を照合する。患者予定確認では、受付にて次回の予定を確認し、次回の予定を印刷し、配布する。実施記録を受けて、HISに対してリハーサルを実施したことを通知する。
【0040】
リハーサル(S22)が終了すると、医師はクライアント端末の表示器の画面から治療照射のための照射録実施状況確認画面*13を示すタグをクリックすることにより、照射録実施状況確認画面*13が表示される。この治療照射では、照射録実施状況確認画面*13に表示された情報の支援を受けて患者に対して粒子線治療、即ち、粒子線治療が医師、技師、物理士、看護師によって行われる。具体的には、医師は病巣と照射回数を決めると、表示器の入力画面を参照してクライアント端末に病巣と照射回数を入力する。これにより、クライアント端末は一回の線量を計算する。計算された線量と回数が技師のクライアント端末の表示器に表示され、この表示情報に従って技師は粒子線の照射を実施する。
【0041】
この治療照射(S23)においては、当日スケジュール作成・転送、進捗状況の表示、患者在情報確認、当日変更確認、治療具・固定具準備確認、前処理、更衣、治療ホール入室、治療室決定、患者入室、患者同定・確認、照射パラメータ転送、照射器機設定確認、患者固定、治療台移動、レーザポイント照合、X線2方向DR撮影、位置決め照射、患者退室準備、患者退室などが表示器に表示された照射録実施状況確認画面に表示される情報の支援に基づいて行われる。前処理では、処理内容を記録する。患者退室準備では、患者の心理的因子の変化を記録する。
【0042】
治療後は、後片付け、患者予定確認、治療照射記録転送、実施サマリ、治療具・固定具片付け、投薬、会計が行われる。患者予定確認では、受付にて次回の予定を確認し、次回の予定を印刷し、配布する。治療照射記録転送では、照射装置の情報がネットワーク32を介してサーバ31に転送され、そこに保持させる。
【0043】
治療終了(S24)では、医師が治療期間の変更や途中終了時にスケジュールの変更を行う。また、スケジュールの最終決定を行う。更に、プロトコール毎に次の検査などの支援、期間内に行われているかの確認を行う。
【0044】
フォローアップ(S25)では、患者在情報確認、患者同定・確認、治療記録参照、診察、患者予定確認、統計処理が行われる。患者在情報確認では、IDカード(又は端末)にて受付がされたことを判断する。患者同定・確認では、IDカードと端末の確認画面を使って患者を照合する。治療記録参照では、重要データの経過記録、追跡調査の情報を参照する。診察、患者予定確認では、統計処理では、サーバの蓄積データを使って統計処理が行われる。フォローアップは、具体的には、経過観察と言って照射が例えば週4回行って16回の照射が行われたとすると、16回照射を行った後に副作用や再発の有無等を医師が観察する。治療後にそのような検査が行われるが、粒子線だけでなく、内視鏡の部門等の他部門と連携しながら治療後の患者の様態を観察する。観察結果は照射録情報としてクライアント端末に入力され、ネットワークを介してサーバのデータベースに蓄積される。例えば、いくらの線量で何回照射して治療した患者の治療経過に関するデータが統計的に収集される。収集されたデータから必要なデータを検索し、検索したデータを集計してグラフにする。
【0045】
次に、図6で説明した各画面の関連性について、固定具作成機能を一例として説明する。
【0046】
図7に示す固定具作成レポート画面では、固定具を作成したときのレポート情報が入力され、図8がこの固定具作成レポートの詳細である。この固定具作成レポート情報が、治療計画作業時、CTシミュレーション作業時、治療計画作業時、リハーサル作業時の各閲覧画面で参照することができる。図7に示すとおり、各画面の枠内にレポート情報として表示され、次の作業時において閲覧が可能となる。クライアント端末33において病院スタッフが、固定具作成レポート画面*8,CTシミュレーションレポート画面*9,治療計画画面*11及びリハーサルレポート画面12を、入力画面と患者情報画面(図5)の2画面に表示しながら作業を行うことができる。
【0047】
上記実施形態で説明したように、各工程で入力される、又は発生するデータ及び情報はクライアント端末33からネットワーク32を介してサーバ31に送られ、サーバ31のデータベース319に記憶される。また、業務フローにおいて治療機器、例えば、加速器、照射装置、及び診断機器、例えば、MRI,CTなどを使用する段階では、これらの機器の動作に関するデータ、例えば、線量、照射時間、照射回数等のデータがネットワーク32を介してサーバ31に送られ、記録される。
【0048】
サーバ31のデータベース319に記憶されたデータは、検索、集計、解析等の処理を受けてネットワーク32を介してクライアント端末33にフィードバックすることができる。このようにサーバ31のデータをクライアント端末33にフィードバックすることによりクライアント端末33では、医師、技師等の病院スタッフが判断するためのデータとして、前段階での情報等を照射録情報として表示器の画面上で利用することができる。これにより病院スタッフはこれらのデータ及び情報の支援を受け、敏速に的確な判断を行うことができる。
【0049】
また、加速器、照射装置、MRI,CT等の治療機器に関するデータがあれば、例えば何かトラブル(例えば、想定以上の照射量の場合)が発生したときにデータを辿っていけば事故の原因を突き止めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、一台の端末に対して2画面が表示できるので、一方の画面に照射録情報を表示し、他方の画面にCT写真を表示することができ、医師はこれらの表示内容を見て診断することができる。更に、1つの画面の中に入力データを表示することができるので、医師が必要とするものを直ぐに見ることができる。
【0051】
上記実施形態では、重粒子線治療を一例として説明してきたが、その他の陽子線治療等の粒子線治療や、X線、電子線、γ線、中性子線等の他の放射線治療にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
11…重粒子線治療情報管理システム、12…重粒子線治療工程管理支援システム、13…重粒子線治療データ管理支援システム、14…重粒子線治療データ解析支援システム、15…照射録作成管理支援システム、16…情報共有管理支援システム、17…スケジュール管理支援システム、18…データベースシステム、19…検索システム、31…サーバ、32…ネットワーク、33…クライアント端末、311…GUI、312…I/F、313…スケジュールモジュール、314…検索モジュール、315…照射録モジュール、316…データ管理モジュール、317…解析モジュール、318…通信モジュール、319…データベース、320…OS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程を経て放射線治療を行うときに生成される照射録情報を管理する放射線治療情報管理装置であって、
放射線治療の各工程において照射録情報が入力されるクライアント端末と、
ネットワークを介して前記クライアント端末に接続され、前記クライアント端末に入力された照射録情報を記録するサーバと、
放射線治療の各工程において、各工程で必要となる照射録情報を前記サーバから受信し、前記クライアント端末に表示する表示装置と、
を有することを特徴とする放射線治療情報管理システム。
【請求項2】
前記サーバは、照射録情報と、この照射録情報が必要となる放射線治療の工程との関連付けを記憶することを特徴とする請求項1記載の放射線治療情報管理システム。
【請求項3】
複数の工程を経て放射線治療を行うときに生成される照射録情報を管理する放射線治療情報管理方法であって、
放射線治療の各工程において照射録情報の入力を促すステップと、
入力された照射録情報を記録するステップと、
放射線治療の各工程において、各工程で必要となる照射録情報を前記サーバから受信し、前記クライアント端末に表示する工程と、
を含む、放射線治療情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−164957(P2011−164957A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27277(P2010−27277)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】