放射線治療用化学毒性剤としての金属トリカルボニル錯体の使用
本発明は、放射性金属を使用する場合は放射線治療的および化学毒性的の両方であり、コールドレニウムまたは巨視的量の長寿命Tc-99を使用する場合は化学毒性的である、癌治療用の薬剤の製造のための、一般式[M(CO)3L3]+(ただし、式中Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体でありLは配位子である)の金属トリカルボニル化合物の使用に関する。本発明の薬剤は、特にDNA中に鎖内結合を生じることにより化学毒性的である。特定の実施態様では、Lの少なくとも1つはOH2ではない。さらに本発明は、一般式[M(CO)3X1X2X3]+(ただし、式中Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体でありX1、X2およびX3の少なくとも1つが単座配位子であるか;または、X1、X2およびX3の2つが二座配位子の部分であり、他の1つが場合によって単座配位子である)の新規化合物およびそれらの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、癌治療用の薬剤の製造のための金属トリカルボニル錯体の使用に関する。さらに、本発明は、新規な化学毒性的で場合により放射線治療的化合物の癌治療での使用、およびこれらの化合物の体内での存在をモニターする方法での使用に関する。
【0002】
主要な抗癌剤シスプラチンの細胞毒性は、DNA中の近接する2つのグアニン残基の各N7原子間での1,2-鎖内(intrastrand)付加物の形成によるものであることが、現在一般的に受け入れられている。この相互作用の産物は、d (GpG)クロスリンクであり、d(ApG)であることはより頻度が少ない。これらの付加物は、インビトロおよびインビボの両方で観察されるだけでなく、臨床的に不活性な化合物はこのようなクロスリンクを形成しない。
【0003】
初期の構造活性相関研究は、いずれかのシスプラチンのcis-PtA2X2類縁体(A2は2つのアミン、または二座アミン配位子であり、Xはアニオン性離脱基)に対して、キャリアーアミン配位子はその薬剤が抗癌活性を保持するために、少なくともプロトン1つを有しなければならないことを示した。この所見は、d(GpG)が金属中心の周辺で異なる立体構造をとることができるという認識と共にして、結合されたG配位子とその薬剤のキャリアーアミン間の水素結合相互作用が、鎖内損傷によって惹起されたDNAの歪みの安定化に重要であるという仮説を導いた。また、キャリアーアミン配位子の水素へのグアニンO6 H-結合は塩基が金属中心の周辺で特定の配置をとることに重要でないことが示され、そして、その水素の結合能力よりもむしろNH基が小さいサイズであることがその薬剤の抗癌活性に重要であることが仮説とされた。
【0004】
シスプラチンの主な不利益の一つは、薬剤の非特異性および比較的高用量の投与による、その重篤な毒性のある副作用である。かかる薬剤は、DNAとの相互作用においておよび実質的にどの塩基もプラチナ化され得ることにおいて非特異的である。さらには、多くの悪性腫瘍が本薬剤に対して抵抗性を示す。また、金属イオンの配位圏は、このようにして得られた分子が活性を損なうので、標的薬剤で誘導化されることができない。したがって、シスプラチンと同じ様式でDNA塩基に結合することができ、上記に記載された不利益を呈さない金属錯体の合成が大いなる興味の対象として残っている。
【0005】
更なる癌治療は、とりわけ、お互いを補完するいくつかの薬剤またはいくつかの効果の組合せから構成されるであろう。本発明者は、かかる組合せがまた、放射線治療法および化学療法を構成し、癌治療に重要な治療上の利益をもたらすことを意図する。もし、放射性および化学毒性が単一の化合物に基づいているのであれば、かかる治療戦略は特に用途が広いであろう。したがって、本発明者は、金属中心の固有の放射活性と組み合わして、金属中心を2つのプリン塩基へ配位することによりDNAの鎖内結合を生じる、シスプラチン誘導体として機能的に作用する化合物を用いることが望ましいと考えた。かかるクラスの化合物は、標的腫瘍組織に高度に局所的な放射線量を送達する間に、DNA転写を阻害するために作用するであろう。かかる分子は、またよく確立されたイメージング技術により生体内で正確に局所化され、標的組織での薬剤量の正確な定量化が可能となる。
【0006】
このような考察に基づき、本発明の目的は両方の性質を兼ね備えた新規遷移金属錯体の提供にある。
【0007】
本発明によると、[M(CO)3]+コア(M=Re, Tc)は、GGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを良い安定性で結合することができ、シスプラチンと同様のDNA内の構造変化を導くことが見出された。このことは、このコアとDNA塩基の連携が立体的に込み入りすぎて良い安定性が得られないだろうと当業者は予測したであろうから予想外であった。さらに、適切な配位子群に囲まれている[M(CO)3]+コアは化学毒性であり、Mが放射性同位体であれば放射能毒性をも有することが見出された。
【0008】
したがって、本発明は、化学毒性であり場合によっては放射能毒性を有する癌治療薬の製造のための金属トリカルボニル化合物[M(CO)3L3]+(式中、Mは、レニウムまたはテクネチウムまたはその同位体であり、Lは配位子である。)の使用に関する。コールドレニウムまたは巨視的量の長寿命Tc-99を使う場合、本発明の薬剤は化学毒性薬である。放射活性金属を使う場合は、本発明の化合物はまた放射線治療性でもある。
【0009】
本発明は、特にDNAの鎖内結合による化学毒性および放射能毒性の両方を有する癌治療薬の製造のための、一般式[M(CO)3L3]+(式中、Mはレニウム(特にRe(I))またはテクネチウム(特にTc(I)) の同位体およびLは配位子である。)のトリカルボニル化合物の使用に関する。特定の実施態様において、Lの少なくとも1つはOH2ではない。
【0010】
本発明の使用の特定の実施態様において、本発明のトリカルボニル化合物は、一般式:
【化1】
ここで、Mはレニウム(Re(I))またはテクネチウム(Tc(I))またはそれらの同位体であり;X1、X2およびX3の少なくとも1つは単座配位子であるか;またはX1、X2およびX3のうち2つは二座配位子の部分であり、他の1つは場合によっては単座配位子である、を有するものである。
【0011】
本発明はまた、式Iの新規化合物それ自体に関する。したがって、当該化合物に関する以下の明細書は、当該化合物それ自体、および当該化合物について特許請求されているそれらの使用に関する。
【0012】
本発明の配位子群には2の特性がある。第一に、それらはDNAとの結合速度および安定性を改善する。これは特に単座配位子に関係する。したがって、本発明の化合物は、1つの単座配位子(例えば錯体16)、2つの単座配位子(例えば錯体18)または3つの単座配位子(例えば錯体2)を有し得る。少なくとも2つの単座配位子の存在は、また[M(CO)3]+コアが血清蛋白と結合するのをも防ぐ。したがって、かかる化合物はプロドラッグである。細胞内空間で、これらの配位子が放出され、本発明の薬剤を形成する。二座配位子は排他的な保護をする。6、10-13の様な錯体は新規であり、かつプロドラッグである。これらの二座配位子を放出すると、当該化合物はDNAのクロスリンク化において活性となる。単座または二座配位子だけを含む化合物は(シスプラチンのように)非特異性であるが、それらのいずれかへの標的生体分子の結合はそれらを標的特異性とする。
【0013】
本発明の単座配位子は、同じものでも異なるものでもよく、ハロゲン、CO、芳香族ヘテロ環、チオエーテル類およびイソシアン化物からなる群から選択され得る。芳香族ヘテロ環は、環のメンバーの1またはそれ以上がC以外の元素、例えば、N、S、O、Pおよびそれらの組合せである5-または6-員芳香環である。
【0014】
この群の中でハロゲンは臭素、ヨウ素、フッ素、塩素からなる群から選択される。適切な芳香族ヘテロ環の例はピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾールからなる群および不可欠な部分としてこのグループのうちの1つを有する有機分子から選択される。チオエーテル類の適切な例は、直鎖の置換ジアルキル-チオエーテルまたはテトラヒドロチオフェンのような環状チオエーテル類からなる群およびその不可欠部分としてチオエーテル官能基を含む他の有機分子から選択され、適切なイソシアン化物の例は、アルキル鎖に結合した末端-NC基を含み、場合によって-COOH,-NH2,-X,-SH,-OHのような末端官能基を含む有機分子から選択される。ハロゲンのそれぞれ1つは、同種の1または2つのハロゲンと、または芳香族ヘテロ環のそれぞれ1つと、および/またはチオエーテル類のそれぞれ1つと、および/またはイソシアン化物のそれぞれ1つと結合され得る。
【0015】
単座配位子のそれぞれ1つは大きな分子の一部であり得る。例えば、イミダゾールはペプチドにおいてヒスチジンの側鎖であり得る。言い換えると、そのペプチドは標的とするペプチドであり得る。
【0016】
本発明の化合物が二座配位子を含む場合、それはアミノ酸およびジカルボン酸塩から選択され得る。
【0017】
特定の態様において、二座配位子はアミノ酸である。その有利な点は、アミノ酸が接触されると、例えば癌細胞およびリソソーム内において、低pHでRe(I)-またはTc(I)-中心から切り離される、それ故に、錯体の活性部分が薬として放出されることである。好適には、アミノ酸は非天然のα-またはβ-アミノ酸である。特に有用な実施態様では、非天然アミノ酸はN,N-ジメチルグリシンである。理論に縛られることを望まないが、2つのメチル基は立体的に要求性が強く、配位子がメチル化されてないグリシンに比較してRe(I)またはTc(I)と弱く結合することから、これは低pHでの容易な放出を引き起こす。
【0018】
特定の実施態様において、本発明の化合物は図16で表されたような錯体6、10、11、12、13および18から選択される。
【0019】
上記一般式Iの化合物は、それらが以下の基準を満たすのであれば、必要な化学毒性活性を有すると考えられる。式Iに示される化合物中の配位子の少なくとも2つが、グアニンまたはグアノシンがレニウム、テクネチウムよりも僅かに過剰に存在している場合に、37℃、3日間の後、グアニンまたはグアノシンによって交換されるのであれば、出発錯体は癌治療に対して必要な要求性を有すると考えられる。
【0020】
本発明の化合物はX1および/またはX2および/またはX3が標的部分に結合されているという意味で誘導体化され得る。標的部分は当分野で知られており、当業者は要求を満たす標的部分を選択することができる大変優れた能力を有する。標的部分の適切な例は、ボンベシン、ニューロテンシン、ソマトスタチン、グルコサミン、ヌクレオシド、核内局在配列ペプチド(NLS-ペプチド)、オリゴヌクレオチド、アントラサイクリン、アクリジンおよび他のインターカレーターのような核標的分子、およびそれらの誘導体または類縁体である。
【0021】
本明細書に記載された化合物および本発明に合致して使用される化合物は、金属中心の固有の放射活性をシスプラチンの機能的性質と組み合わせた、金属イオンの単一核の8面体錯体に基づく。これは、8面体錯体が一般的に立体的に込み入りすぎてある程度でDNAと相互作用することができないと信じられているので、予想外である。それにもかかわらず、本発明者は2つの核-プリンがシス配列でRe(I)中心に結合し、プラチナ化合物と同程度で結合して、シスプラチンと同等の化学毒性活性を導くということを示した。
【0022】
N7原子を介して2つのグアニンに特異的に結合したテクネチウムおよびレニウム錯体のX線構造(実施例4参照)は、[M(CO)3(H20)3]+(式中、MはRe、Tcおよびそれらの同位体)とGおよび2dGとの相互作用の速度論的および熱力学的データと共に、実験的に意図した構造特性を証明する。同様に、これらのデータと[Pt(NH3)2(H20)2] 2+のデータとの比較により、1および2がシスプラチンと同様にDNAに作用する潜在力のある化学毒性剤であることが示される。Re-186/188の放射能毒性作用様式はよく確立されている。Ptの場合のように、2つのグアニン配位子は8面体[(CO)3Re(I)(プリン)2X]錯体(X=H20、Br)において、いくつかの立体的構造をとり得る。
【0023】
本発明者はまた、開環のおよびスーパーコイル形態のプラスミドDNAの電気泳動の移動度が変化することにより、少なくとも2つの利用可能な配位部位を有するレニウム錯体がΦX174DNAの三次元構造に影響を及ぼすことを示した。[Re(1)(CO)3]+部分は主として例えばシスプラチンと同様のプラスミドDNAに対する反応性パターンを示す。それは、2つの遊離なグアニンと特異的に結合し、DNA中で近接するグアニンとの相互作用の可能性も示唆する。惹起された変化は単なる静電的総合作用よりも2塩基への共有結合を必要とする。
【0024】
さらにここで、200μMの濃度でレニウム錯体がある種のヒト癌細胞株の増殖を阻害する能力があることが示された。
【0025】
上述の化合物の当分野の現状に対する改善は以下のようである。単一核8面体186Re(I)または188Re(I)錯体は金属中心の放射活性をDNAの鎖内または鎖間の結合と組み合わせることができる。かかるクラスの化合物は、標的癌細胞に高度に限局して放射線量を供給している間、DNAの転写を阻害することができる。したがって、この種の錯体は癌治療に適した化学毒性放射性医薬品として作用できる。単一核8面体99mTc(I)錯体は上記186Re(I)または188Re(I)化合物の診断用アナログとして用いられ得る。
【0026】
本発明の化合物は細胞質内での標的、能動的取り込みおよび分解を可能にするベクター(すなわちポリペプチド)と容易に結合させることができる。標的生体分子はX1またはX2またはX3に結合され得るか、X2/X3は例えばペプチド中のヒスチジンのイミダゾール側鎖、またはオリゴヌクレオチド中のGGモチーフのような大きい構造の一部であり得る。後者の場合、GGモチーフはRe(I)活性中心を保護するが、細胞質内でのオリゴヌクレオチド分解の後で放出される。
【0027】
さらに、放射活性物と同一の構造を有する非放射活性物質を治療効率を改善するために添加(トレーサ添加)することができ、一方、類似する放射活性化合物は生体分布のモニターリングを可能にする。これは、臨床で使用される現在の、どの金属基盤のまたは有機化学毒性剤を用いても可能なことではない。
【0028】
放射線治療法と化学療法を組み合わせることによって、癌治療のための重要な治療利益が得られることは良く知られているものの、上述の分子は1分子内に両方の性質(すなわち、放射活性および化学毒性)を含む分子種の最初の例である。
【0029】
金属のコアが標的部位で更なる相互作用をすること防止する、放射線治療法の目的に専ら適しているRe(I)基盤の化合物の設計をもたらす他のほとんどの戦略と反対に、本発明の化合物は、送達され、望まれる標的の腫瘍部位で積極的に生化学に関与する。
【0030】
本発明はさらに系統的な創薬を可能にする。置換基X1、X2 およびX3を異なる部位で変化させることにより、多様な種類の化合物が過度の負担無くして得られる。結果として、分子はDNA塩基との相互作用に向けて微調整され得る。もちろん、決定的な試験はかかる化合物が活性基準を満たすか否かである。
【0031】
それらの更なる態様によれば、本発明はプロドラッグに関する。かかる化合物において、配位子はプロドラッグから放出され、例えば、癌細胞内でpHが低下した場合、活性型の薬剤を生成する。本発明の好適なプロドラッグの例は、X1、X2 およびX3の少なくとも2つが上記に定義した単座配位子、または二座配位子の一部である、式Iの化合物である。さらに、プロドラッグは治療指数を増加する標的薬剤または代謝活性物質に結合され得る。プロドラッグの配位子は[M(CO)3]+コアを保護することができ、癌細胞内で活性型の薬剤を乖離し、放出することができる。
【0032】
プロドラッグの場合、式Iの化合物において、X1は例えば単座配位子を表し、一方、X2およびX3は単座配位子、または共に二座キレーターを形成する。X1、X2 およびX3は上記のように定義される。X2、X3は保護基配位子を表し、プロドラッグを形成し、放出されて薬剤を形成する。X1はDNAの結合効率およびプロドラッグの放出に影響を及ぼす。
【0033】
本発明の異なる態様は図1で説明される。この図において、化合物Iは分離されたGまたはDNAと反応し、鎖内または鎖間のクロスリンクを形成し(実施例4、5および7)、化合物IIはGまたはDNAと反応し、鎖内または鎖間のクロスリンクを形成する(実施例3および13)。化合物IおよびIIは、それらがまた血清蛋白と結合し、したがって、直ぐには細胞内に取り込まれることができず、よって、不活性であるので薬剤として考えられ、化合物IIIは中間物である。それは細胞に取り込まれた後DNA(薬剤)と直接反応する。血清タンパク質と強く相互作用しないので、それはプロドラッグとして考えられ(実施例13、錯体8)、またはそれは1つの配位子を放出し、化合物IIとなり、薬剤として作用できる。実際のプロドラッグはIVおよびVである。両者とも血清タンパク質とは反応しないが(したがって、それらはプロドラッグである)、原理上DNAと直接反応できる。より可能性があり、実施例8で示されているのは、化合物IIを形成し、よって薬剤となる、配位子X2およびX3の欠損である。経路1-5は薬剤であり、経路6-8はプロドラッグである。
【0034】
本出願で用語「化学毒性の」および「細胞毒性の」は同義的に使用される。例えば、化合物はそれ自体化学毒性であるが、細胞において細胞毒性の効果を有する。したがって、細胞毒性試験は化合物が細胞に及ぼす影響に関するが、化学毒性は化合物固有の特徴である。さらに、用語「化合物」と「錯体」は同義的に使用される。
【0035】
本発明は本発明を制限する意図の全くない以下の実施例でさらに説明される。説明は以下の図に対してなされる:
図1は化合物および特許請求する化合物の反応経路の一般スキームを示す。
図2は本発明の化合物の活性試験を示す。
図3は実施例3の化合物のHPLC-MSクロマトグラフを示す。
図4は[Re(9-MeG)2(H20)(CO)3](Cl04)および [99Tc(9-MeG)2(CH30H)(CO)3](Cl04)のX線結晶構造を示す。
図5Aは1とd(CpGpG)との反応終了時での芳香族領域(7.0-9.0ppm)を示す。
図5Bはbis[Re(CO)3d(CpGpG)(H20)]-がグアニン残基のN7原子に付加結合することを確認するpH依存性試験を示す。
図6AはΦX174プラスミドDNAに対するシスプラチンの作用を示す。ライン4-8はシスプラチンのシス-GG結合の結果としてスクランブル(scrambling)の量が増加することを示す。
図6Bは上述の条件下でのΦX174プラスミドDNAに対する錯体1の相互作用を示す。結果は図6Aでのシスプラチンで認められた結果と同様である。
図6Cはカチオン性錯体2とΦX174プラスミドDNAの相互作用を示す。DNAのスクランブルは認められない。
図7、レーン2-7は2つの不安定なシス-配位子を有する錯体がΦX174プラスミドDNAのスクランブルを誘導することを示し、一方、レーン8-14では構造変化が認められない。
図8AはΦX174プラスミドDNAと錯体1および6の相互作用を示す。明らかに、錯体6は、シスプラチンに比較して、GGクロスリンクの指標となるDNAスクランブルを引き起こす。
図8Bはプロドラッグ6および結果として生じる薬剤1の構造およびプロドラッグのX線構造を示す。
図8Cはプロドラッグ6の活性薬剤への図式化された変換を示す。
【0036】
図9Aは実施例6に記載された方法によるΦX174プラスミドDNAと錯体1および7のインキュベーションを示す。
図9Bは金属錯体を放出するための、およびΦX174プラスミドDNAの原型を再構成するためのヒスチジンとのインキュベーションの後の同じサンプルを示す。
図10は実施例10-13で使用されているレニウム錯体の細胞毒性を決定するための典型的なXTT細胞増殖試験を示す。
図11は錯体1、3、4および5がMDA-MB-4355乳癌細胞(ATCC#TB129)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図12は錯体1、3、4および5がOVMZ-6-WT卵巣癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbHから入手可能)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図13は錯体1、3、4および5がHSC45-M2胃癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図14Aは錯体1乃至13がB16F1マウスメラノーマ細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図14Bは錯体1、2および14乃至21がB16F1マウスメラノーマ細胞(ATCC)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)をシスプラチンに比較して表したグラフである。
図15は標的部分アクリジンのN-エチルアミノ−イミダゾールへの結合を示す。
図16は本発明の化合物のまとめである。
【実施例】
【0037】
実施例1
単座配位子を有する本発明の化合物の合成
1.一般的な方法
単座配位子を有する本発明の化合物は一般的に1の溶液に1当量の配位子を加えることにより合成できる。
2.特定例([Et4N][ReBr2(Im)(CO)3](16))
例として16の合成手順を以下に示す:(Et4N)2[ReBr3(CO)3](1、96mg、0.12mmol)をCH2Cl2(5ml)に溶解した。イミダゾール(Im、8mg、0.12mmol)を加え、混合物を室温で攪拌した。30分後白色固体が出現した。これを濾過し減圧下乾燥した。収率:45mg、60%。
元素分析が16に対してC14H24N3O3Br2Re (628,38):C, 26.75; H, 3.82 ; N, 6.68、と算出され、C, 26.83 ; H, 3.71 ; N, 6.62と見出された。
【0038】
実施例2
二座配位子を有する本化合物の合成
1.一般的な方法
二座配位子を有する本発明の化合物は一般的に1の溶液に1またはそれ以上の当量の配位子を加えることにより合成できる。
2.特定例([Re(L-Ser)2(CO)3](10))
例として10の合成手順を以下に示す:(Et4N)2[ReBr3(CO)3](100mg、0.13mmol)をメタノール/水混合物(9:1、5ml)に溶解した。L-セリン(48mg、0.46mmol)を添加し、混合物を僅かなN2圧力下、3時間、50℃で攪拌した。反応をHPLCでモニターし、更なる変化が観察されなければ(3h)停止した。溶液を室温に平衡化し、HPLCで精製した。白色固体を得る。収率:23mg、37%。X線解析に適した結晶はH2Oをゆっくりと蒸発させることにより得られる。
元素分析が10に対してC9H13N2O9Re (479,41):C, 22.55; H, 2.73 ; N, 5.84と算出され、 C, 23.17 ; H, 3.20 ; N, 5.47と見出された。
【0039】
実施例3
グアニンへの[M(CO)3]+の結合
金属トリカルボニルがプリン塩基に結合できるか否かを試験するために、以下の試験を実施した。37℃、3日間、6倍過剰量のグアニンとインキュベーションした一般式Iの化合物1mMの水溶液(またはH2O/CH3OH混合物)は、50%以上の金属中心に対する1または2つのグアニンの結合を示す(図2)。
【0040】
水中で、(37℃)16は9-MeGと段階的に反応する。我々のHPLCでは、錯体16は13.9分の保持時間(室温)である。1時間後、第2のピークを室温17.4分に観察する。HPLC-MSクロマトグラフィーはこの種が[Re(Im)(9-MeG)(H2O)(CO)3](16a)であることを示す。さらに12時間後、第3および4のピークが17.0および16.2分に出現し、それはHPLC-MSクロマトグラフィーにより、それぞれ[Re(9-MeG)2(H2O)(CO)3]+(3)および[Re(9-MeG)(H2O)2(CO)3]+(3a)と同定する。そのピークの相対的な高さは、種3および3aの濃度の増加に伴い、更なる12時間のインキュベーションの後で観察された他方の変化のみを与える(図3)。
【0041】
この例はグアニンが一般式Iの化合物中にある保護配位子としてイミダゾールを置換することができることを示す。化合物3はDNA中グアニンにクロスリンクした後の[M(CO)3]+部分の構造的特徴に対するモデルである。
【0042】
実施例4
[M(CO)3]+(M=99Tc(I),Re(I))ビスグアニン付加物[Re(9-MeG)2(H2O)(CO)3](ClO4)(3)の生成
(Et4N)2[ReBr3(CO)3](30mg, 0.04mmol)を高温(〜40℃)水(3ml)に溶解した。AgClO4(28mg、 0.14mmol)を添加し、混合物をAgBrを濾過し取り除いた後、3時間攪拌した。9-メチルグアニン(16.5mg, 0.1mmol)を添加し、混合物を僅かなN2圧力下で50℃に加熱した。無色溶液が数分以内に明るい黄色に変化した。反応をHPLCでモニターし、3.5時間後、更なる変化が観察できない時に停止した。混合溶液を室温に平衡化し、濃縮し、その後短いC18カラムで精製した。
【0043】
精製された錯体を含むメタノール画分に3%H2O(v/v)を添加した。ペンタンを溶液内に拡散し、X線用の品質の結晶を沈殿させた。
収率:定量的
元素分析が3に対してC15H16ClN10O10Re(718.01): C, 25.09 ; H, 2.25 ; N, 19.51、と算出され、C, 25.34 ; H, 2.70 ; N, 19.45と見出された。
X線結晶構造を図4に示す。
【0044】
実施例5
[M(CO)3]+とオリゴヌクレオチドの相互作用
図5Aは[Re(H20)3(CO)3]+(1)と1当量のd(CpGpG)の反応のD2O中での1H NMRスペクトルを示す。d(CpGpG)溶液に1を37℃で添加することにより、遊離のd(CpGpG)のH8シグナルによる共鳴スペクトルが消失し、H8プロトンと非等価である新しい一連のシャープな良く分離されたピークが出現する。
【0045】
図5Aは1とd(CpGpG)の反応終了時(1時間インキュベーション)の芳香族領域(7.0-9.0ppm)を示す。
2つのグアニン塩基はN7を介してRe(I)に結合し、この事実はpH2近傍でH8共鳴がpH非依存的であることにより裏付けられている(図5B)。実際、遊離のグアニンN7に対して予想されるのと反対に、H8の全ての化学シフトは4以下のpHの低下によって影響を受けない。
【0046】
実施例6
ΦX174プラスミドDNAと錯体1および2の相互作用
ΦX174プラスミドはPromegaから購入し、更なる精製をせずに用いた。ΦX174RFプラスミドDNA(0.1mg)をH2O中、[錯体]/[bp]0.018-1.8/1で対応するレニウム錯体と混合した。混合物をゲル電気泳動による解析の前に、暗所で22時間、37℃、水中でインキュベートした。全ての場合で、混合物のpHは約7で一定に保たれた。1mMまたは10mM NaClO4で実施された実験は1とΦX174RFプラスミドDNAの結合に有意な差異を示さなかった。
【0047】
DNA結合をゲル電気泳動移動シフトアッセイにより、9cm、0.75%アガローススラブゲルでTAE泳動緩衝液を用いて試験する。ゲルを室温で電圧50および75Vの間で泳動した。泳動時間は電圧により変わり、通常1.5-2時間であった。得られたゲルはバッファー緩衝液中エチジウムブロマイド約0.3μg/mlの濃度で染色した。バンドはデジタルカメラを装着したソフトウェアUVトランスイルミネイターで可視化した。
【0048】
図6AはΦX174プラスミドDNAに対するシスプラチンの作用を示す。ライン4-8はシスプラチンのシス-GG結合の結果としてスクランブル(scrambling)の量が増加することを示す。
図6Bは上述の条件下でのΦX174プラスミドDNAに対する錯体1の相互作用を示す。結果は図6Aでのシスプラチンで認められた結果と同様である。
図6Cはカチオン性錯体2とΦX174プラスミドDNAの相互作用を示す。DNAのスクランブルは認められない。
[M(CO)3]+がΦXプラスミドDNAとシスプラチンと同様の様式で相互作用することが理解された。また、相互作用が静電効果に因らないことが示された。
【0049】
実施例7
2つの不安定なシス配位子がΦX174プラスミドDNAの構造変化の惹起に必要である。
この実施例で、ΦX174プラスミドDNAを単座または二座の配位子を含む異なる錯体とインキュベートする。錯体1および3は不安定なシス-配位子を含み、一方錯体4および5は2つのGとの置換に対し安定である。
図7、レーン2-7は2つの不安定なシス-配位子を有する錯体がΦX174プラスミドDNAのスクランブルを誘導することを示し、一方、レーン8-14では構造変化が認められない。2つの不安定なシス配位子がゆっくりと放出されるだけである場合、前駆体の錯体はプロドラッグと考えられる。この様式を実施例8に記載する。
【0050】
実施例8
プロドラッグの調製
有効な薬剤として錯体1を含むプロドラッグはシス配列中にRe(I)中心からゆっくりと放出される2つの不安定な配位子を含有する。不安定な配位子を切り離した後、活性な薬剤に相当する組成[M(X1)(OH2)2(CO)3]の錯体が形成される。我々は本明細書で、N,N-ジメチル-グリシンを不安定なシス-配位子として含むかかるプロドラッグの合成を記載する。
【0051】
(Et4N)2[ReBr3(CO)3](100mg, 0.13mmol)をメタノール/水混合物(4:1、10ml)に溶解した。N,N-ジメチルグリシン(70mg, 0.7mmol)を加え、僅かなN2圧力下で12時間、50℃で攪拌した。溶液を室温に平衡化し、短いC18フィルターで濃縮し、精製する。白色結晶の固体を得た。収率:20mg、40%。
【0052】
X線回折に適した結晶を、錯体のCH3NC溶液中のエーテルをゆっくり拡散することにより得た。元素分析は6に対して、C2lH24N3Ol5Re3 (1117.05) : C, 22.58 ; H, 2.17 ; N, 3.76と算出され、C, 23.19 ; H,2.78 ; N, 3.84と見出された。1H NMR(500MHz,DMSO-d6,d/ppm): 4.18(s, 2H), 3.46(s, 3H), 3.15(s, 3H)。
6に対するFT-IR(KBr,v/cm-l):(C=O)2022(s), (C=O)1911(b), (C=O)1890(s), (C=O)1866(s)。6に対するESI-MS(ESI+,40V,m/z):1117.0([M]+)。6に対する室温HPLC(HPLC,グラジエント1分):15.7。
【0053】
図8AはΦX174プラスミドDNAと錯体1および6の相互作用を示す。明らかに、錯体6は、シスプラチンに比較して、GGクロスリンクの指標となるDNAスクランブルを引き起こす。
図8Bはプロドラッグ6および結果として生じる薬剤1の構造およびプロドラッグのX線構造を示す。
錯体6とグアニンの相互作用を実施例4に概説された試験によって検討した。NMRとHPLC実験は、ΦXプラスミドDNAで起きていることと同じように、二座配位子N,N-ジメチル−グリシンが切り離され、2つのグアニンに置き換えられることを明確に示す。図8Cはプロドラッグ6の活性薬剤への図式化された変換を示す。
【0054】
実施例9
[M(CO3)]+ΦX174プラスミドDNA付加物の安定性
実施例6に概説されているように、不安定なシス-配位子を有する錯体はおそらくGG鎖間または鎖内クロスリンクを介してΦX174プラスミドDNAに結合できる。シスプラチンがDNAに結合する場合、この相互作用は不可逆的である。本出願で請求している2例の化合物の安定性を調べるために、錯体1および7のインビトロ研究を実施した。
【0055】
実施例6に記載したように、錯体1および7をΦX174プラスミドDNAとインキュベートした。その後、ΦX174プラスミドDNAから錯体を切り離すためにプラスミドにヒスチジンを添加した。100倍過剰量のヒスチジンを使用したが、放出を全く観察できなかった。つまり、ΦX174プラスミドDNAの構造変化は元に戻せなかった。22時間後のゲル電気泳動の結果を図9Aに示す。
図9Aは実施例6に記載された方法によるΦX174プラスミドDNAと錯体1および7のインキュベーションを示す。図9Bは金属錯体を放出するための、およびΦX174プラスミドDNAの原型を再構成するためのヒスチジンとのインキュベーションの後の同じサンプルを示す。
【0056】
実施例10
細胞毒性手順
典型的な実験では(図10参照)、平均2000個の細胞を最終ウェル当たり100μlの培養液の量で、マイクロタイタープレート(組織培養グレード、96穴、平底)で、湿気のある環境(37℃、>6.5%CO2)において培養した。24時間後、レニウム錯体をウェルに添加し(Reを基準として最終濃度200μM)、細胞をさらに24時間湿気のある環境下において培養した。インキュベーション期間経過後、XTTラベリング混合物50μlをそれぞれのウェルに添加した。プレートをさらに4時間インキュベーションした。この最終インキュベーションの後、それぞれのウェルの分光学的吸収(吸光度OD)を450nmで測定した。
【0057】
コントロール実験をレニウム錯体を添加をしないで、上記の通りに実施した。ブランクはXTTラベリング混合物の代わりに50μlのH2Oを添加することにより得た。実験は各2点で実施し、結果を平均値で表す。
細胞生存%をサンプルの相対ODに基づいて算出した。最大のコントロールODを細胞生存100%とした。
【0058】
実施例11
MDA-MB-4355乳癌細胞株に対する[Re(I)(Co)3]+錯体(200μM)の細胞毒性
図11は錯体1、3、4および5がMDA-MB-4355乳癌細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物1、3および4が細胞増殖を阻害することを示す。錯体5は実施例3に示された条件下で安定であり、この乳癌細胞株に対して細胞毒性を示さない。
【0059】
実施例12
OVMZ-6-WT卵巣癌細胞株に対する[Re(I)(Co)3]+錯体(200μM)の細胞毒性
手順は実施例10および図10に記載した通りである。癌細胞株のみ相違する。
図12は錯体1、3、4および5がOVMZ-6-WT卵巣癌細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに、化合物1がこの癌細胞株において細胞増殖を阻害することを示す。
【0060】
実施例13
HSC45-M2胃癌細胞株に対する[Re(I)(Co)3]+錯体(200μM)の細胞毒性
手順は実施例10および図10に記載した通りである。癌細胞株のみ相違する。
図13は錯体1、3、4および5がHSC45-M2胃癌細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物5がこの癌細胞株において細胞増殖を阻害することを示す。
【0061】
実施例14
B16F1マウスメラノーマ細胞に対する異なるレニウム錯体の細胞毒性
手順は実施例10および図10に記載した通りである。癌細胞株のみ相違する。
図14Aは錯体1乃至13がB16F1マウスメラノーマ細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物1および2が細胞増殖を強力に阻害することを示す。水溶性が悪いため、化合物4、5、6および11乃至13の濃度は200μM以下である。それ故に、上記の化合物は200μMでより強い細胞毒性を示すであろう。
【0062】
図14Bは錯体1、2および14乃至21がB16F1マウスメラノーマ細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物1、2および14乃至18がシスプラチンと比較できる程度で細胞増殖を阻害することを示す。
【0063】
実施例15
本発明の化合物の標的部分への結合
本実施例では、標的部分は、受容体に結合せず核を標的とする有機分子である、アクリジン(A)を意味する。アクリジンを[M(CO)3]+部分へ結合する目的で、イソシアニドおよびイミダゾールで誘導体化する。基本の活性構造は錯体16および18の構造であり、両方ともΦX174プラスミドDNAにクロスリンクすることが示されている。核標的薬剤の製造のための一般的な反応スキームは図15で与えられる。
【0064】
化合物Aを標準的な結合技術によりN-エチルアミノ-イミダゾールと結合させる。AをTHFに溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN-ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性化する。活性化が完了した後、0.9当量のイミダゾール誘導体を添加し、混合物を12時間室温で攪拌する。HPLCによりA→Bの定量的な変換が示された。化合物を更なる精製をせずに用いた。
【0065】
化合物Aを上記のように活性化し、THF中で50倍過剰量の1,2-ジアミノエタンと混合した。溶液を一晩攪拌した。溶媒を吸引により取り除き、残渣を飽和NaHCO3で数回洗浄した。残渣をメタノールに溶解し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/CH2Cl2 1/3 v/v)により精製した。その後、化合物Cをイソシアノ−酢酸−エチルエステルと混合し、48時間反応させた。この時間の後、Cは定量的にDに変換した。反応混合物はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2/ヘキサン 2/1)により精製した。
1当量の化合物Dを1と反応させ、式Iの組成物である化合物[Re(D)Br2(CO)3]-を得る。
【0066】
実施例16
本発明の化合物の生体分布のモニターリング
一般式Iの錯体を、99mTc(I)を用いてレニウムについて概説したのと同様の手順に従って合成する。出発錯体1(99mTc(I))をIsolinkキットから、または刊行された手順(Alberto et al. J. Am. Chem. Soc. 1999,121 (25), 6076-6077)に従って調製する。「コールド」の細胞毒性レニウム錯体を「ホット」の放射能毒性99mTc(I)または188/186Re(I)錯体と混合する。Tc(I)またはRe(I)のどちらかの同位体を有するこれらの錯体は互いに類似体であるので、標準的な技術であるSPECTカメラによってイメージングすることで、化合物がどこに蓄積するのかを追跡することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は化合物および特許請求する化合物の反応経路の一般スキームを示す。
【図2】図2は本発明の化合物の活性試験を示す。
【図3】図3は実施例3の化合物のHPLC-MSクロマトグラフを示す。
【図4】図4は[Re(9-MeG)2(H20)(CO)3](Cl04)および [99Tc(9-MeG)2(CH30H)(CO)3](Cl04)のX線結晶構造を示す。
【図5A】図5Aは1とd(CpGpG)との反応終了時での芳香族領域(7.0-9.0ppm)を示す。
【図5B】図5Bはbis[Re(CO)3d(CpGpG)(H20)]-がグアニン残基のN7原子に付加結合することを確認するpH依存性試験を示す。
【図6A】図6AはΦX174プラスミドDNAに対するシスプラチンの作用を示す。ライン4-8はシスプラチンのシス-GG結合の結果としてスクランブル(scrambling)の量が増加することを示す。
【図6B】図6Bは上述の条件下でのΦX174プラスミドDNAに対する錯体1の相互作用を示す。結果は図6Aでのシスプラチンで認められた結果と同様である。
【図6C】図6Cはカチオン性錯体2とΦX174プラスミドDNAの相互作用を示す。DNAのスクランブルは認められない。
【図7】図7、レーン2-7は2つの不安定なシス-配位子を有する錯体がΦX174プラスミドDNAのスクランブルを誘導することを示し、一方、レーン8-14では構造変化が認められない。
【図8A】図8AはΦX174プラスミドDNAと錯体1および6の相互作用を示す。明らかに、錯体6は、シスプラチンに比較して、GGクロスリンクの指標となるDNAスクランブルを引き起こす。
【図8B】図8Bはプロドラッグ6および結果として生じる薬剤1の構造およびプロドラッグのX線構造を示す。
【図8C】図8Cはプロドラッグ6の活性薬剤への図式化された変換を示す。
【図9A】図9Aは実施例6に記載された方法によるΦX174プラスミドDNAと錯体1および7のインキュベーションを示す。
【図9B】図9Bは金属錯体を放出するための、およびΦX174プラスミドDNAの原型を再構成するためのヒスチジンとのインキュベーションの後の同じサンプルを示す。
【図10】図10は実施例10-13で使用されているレニウム錯体の細胞毒性を決定するための典型的なXTT細胞増殖試験を示す。
【図11】図11は錯体1、3、4および5がMDA-MB-4355乳癌細胞(ATCC#TB129)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図12】図12は錯体1、3、4および5がOVMZ-6-WT卵巣癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbHから入手可能)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図13】図13は錯体1、3、4および5がHSC45-M2胃癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図14A】図14Aは錯体1乃至13がB16F1マウスメラノーマ細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図14B】図14Bは錯体1、2および14乃至21がB16F1マウスメラノーマ細胞(ATCC)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)をシスプラチンに比較して表したグラフである。
【図15】図15は標的部分アクリジンのN-エチルアミノ−イミダゾールへの結合を示す。
【図16】図16は本発明の化合物のまとめである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、癌治療用の薬剤の製造のための金属トリカルボニル錯体の使用に関する。さらに、本発明は、新規な化学毒性的で場合により放射線治療的化合物の癌治療での使用、およびこれらの化合物の体内での存在をモニターする方法での使用に関する。
【0002】
主要な抗癌剤シスプラチンの細胞毒性は、DNA中の近接する2つのグアニン残基の各N7原子間での1,2-鎖内(intrastrand)付加物の形成によるものであることが、現在一般的に受け入れられている。この相互作用の産物は、d (GpG)クロスリンクであり、d(ApG)であることはより頻度が少ない。これらの付加物は、インビトロおよびインビボの両方で観察されるだけでなく、臨床的に不活性な化合物はこのようなクロスリンクを形成しない。
【0003】
初期の構造活性相関研究は、いずれかのシスプラチンのcis-PtA2X2類縁体(A2は2つのアミン、または二座アミン配位子であり、Xはアニオン性離脱基)に対して、キャリアーアミン配位子はその薬剤が抗癌活性を保持するために、少なくともプロトン1つを有しなければならないことを示した。この所見は、d(GpG)が金属中心の周辺で異なる立体構造をとることができるという認識と共にして、結合されたG配位子とその薬剤のキャリアーアミン間の水素結合相互作用が、鎖内損傷によって惹起されたDNAの歪みの安定化に重要であるという仮説を導いた。また、キャリアーアミン配位子の水素へのグアニンO6 H-結合は塩基が金属中心の周辺で特定の配置をとることに重要でないことが示され、そして、その水素の結合能力よりもむしろNH基が小さいサイズであることがその薬剤の抗癌活性に重要であることが仮説とされた。
【0004】
シスプラチンの主な不利益の一つは、薬剤の非特異性および比較的高用量の投与による、その重篤な毒性のある副作用である。かかる薬剤は、DNAとの相互作用においておよび実質的にどの塩基もプラチナ化され得ることにおいて非特異的である。さらには、多くの悪性腫瘍が本薬剤に対して抵抗性を示す。また、金属イオンの配位圏は、このようにして得られた分子が活性を損なうので、標的薬剤で誘導化されることができない。したがって、シスプラチンと同じ様式でDNA塩基に結合することができ、上記に記載された不利益を呈さない金属錯体の合成が大いなる興味の対象として残っている。
【0005】
更なる癌治療は、とりわけ、お互いを補完するいくつかの薬剤またはいくつかの効果の組合せから構成されるであろう。本発明者は、かかる組合せがまた、放射線治療法および化学療法を構成し、癌治療に重要な治療上の利益をもたらすことを意図する。もし、放射性および化学毒性が単一の化合物に基づいているのであれば、かかる治療戦略は特に用途が広いであろう。したがって、本発明者は、金属中心の固有の放射活性と組み合わして、金属中心を2つのプリン塩基へ配位することによりDNAの鎖内結合を生じる、シスプラチン誘導体として機能的に作用する化合物を用いることが望ましいと考えた。かかるクラスの化合物は、標的腫瘍組織に高度に局所的な放射線量を送達する間に、DNA転写を阻害するために作用するであろう。かかる分子は、またよく確立されたイメージング技術により生体内で正確に局所化され、標的組織での薬剤量の正確な定量化が可能となる。
【0006】
このような考察に基づき、本発明の目的は両方の性質を兼ね備えた新規遷移金属錯体の提供にある。
【0007】
本発明によると、[M(CO)3]+コア(M=Re, Tc)は、GGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを良い安定性で結合することができ、シスプラチンと同様のDNA内の構造変化を導くことが見出された。このことは、このコアとDNA塩基の連携が立体的に込み入りすぎて良い安定性が得られないだろうと当業者は予測したであろうから予想外であった。さらに、適切な配位子群に囲まれている[M(CO)3]+コアは化学毒性であり、Mが放射性同位体であれば放射能毒性をも有することが見出された。
【0008】
したがって、本発明は、化学毒性であり場合によっては放射能毒性を有する癌治療薬の製造のための金属トリカルボニル化合物[M(CO)3L3]+(式中、Mは、レニウムまたはテクネチウムまたはその同位体であり、Lは配位子である。)の使用に関する。コールドレニウムまたは巨視的量の長寿命Tc-99を使う場合、本発明の薬剤は化学毒性薬である。放射活性金属を使う場合は、本発明の化合物はまた放射線治療性でもある。
【0009】
本発明は、特にDNAの鎖内結合による化学毒性および放射能毒性の両方を有する癌治療薬の製造のための、一般式[M(CO)3L3]+(式中、Mはレニウム(特にRe(I))またはテクネチウム(特にTc(I)) の同位体およびLは配位子である。)のトリカルボニル化合物の使用に関する。特定の実施態様において、Lの少なくとも1つはOH2ではない。
【0010】
本発明の使用の特定の実施態様において、本発明のトリカルボニル化合物は、一般式:
【化1】
ここで、Mはレニウム(Re(I))またはテクネチウム(Tc(I))またはそれらの同位体であり;X1、X2およびX3の少なくとも1つは単座配位子であるか;またはX1、X2およびX3のうち2つは二座配位子の部分であり、他の1つは場合によっては単座配位子である、を有するものである。
【0011】
本発明はまた、式Iの新規化合物それ自体に関する。したがって、当該化合物に関する以下の明細書は、当該化合物それ自体、および当該化合物について特許請求されているそれらの使用に関する。
【0012】
本発明の配位子群には2の特性がある。第一に、それらはDNAとの結合速度および安定性を改善する。これは特に単座配位子に関係する。したがって、本発明の化合物は、1つの単座配位子(例えば錯体16)、2つの単座配位子(例えば錯体18)または3つの単座配位子(例えば錯体2)を有し得る。少なくとも2つの単座配位子の存在は、また[M(CO)3]+コアが血清蛋白と結合するのをも防ぐ。したがって、かかる化合物はプロドラッグである。細胞内空間で、これらの配位子が放出され、本発明の薬剤を形成する。二座配位子は排他的な保護をする。6、10-13の様な錯体は新規であり、かつプロドラッグである。これらの二座配位子を放出すると、当該化合物はDNAのクロスリンク化において活性となる。単座または二座配位子だけを含む化合物は(シスプラチンのように)非特異性であるが、それらのいずれかへの標的生体分子の結合はそれらを標的特異性とする。
【0013】
本発明の単座配位子は、同じものでも異なるものでもよく、ハロゲン、CO、芳香族ヘテロ環、チオエーテル類およびイソシアン化物からなる群から選択され得る。芳香族ヘテロ環は、環のメンバーの1またはそれ以上がC以外の元素、例えば、N、S、O、Pおよびそれらの組合せである5-または6-員芳香環である。
【0014】
この群の中でハロゲンは臭素、ヨウ素、フッ素、塩素からなる群から選択される。適切な芳香族ヘテロ環の例はピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾールからなる群および不可欠な部分としてこのグループのうちの1つを有する有機分子から選択される。チオエーテル類の適切な例は、直鎖の置換ジアルキル-チオエーテルまたはテトラヒドロチオフェンのような環状チオエーテル類からなる群およびその不可欠部分としてチオエーテル官能基を含む他の有機分子から選択され、適切なイソシアン化物の例は、アルキル鎖に結合した末端-NC基を含み、場合によって-COOH,-NH2,-X,-SH,-OHのような末端官能基を含む有機分子から選択される。ハロゲンのそれぞれ1つは、同種の1または2つのハロゲンと、または芳香族ヘテロ環のそれぞれ1つと、および/またはチオエーテル類のそれぞれ1つと、および/またはイソシアン化物のそれぞれ1つと結合され得る。
【0015】
単座配位子のそれぞれ1つは大きな分子の一部であり得る。例えば、イミダゾールはペプチドにおいてヒスチジンの側鎖であり得る。言い換えると、そのペプチドは標的とするペプチドであり得る。
【0016】
本発明の化合物が二座配位子を含む場合、それはアミノ酸およびジカルボン酸塩から選択され得る。
【0017】
特定の態様において、二座配位子はアミノ酸である。その有利な点は、アミノ酸が接触されると、例えば癌細胞およびリソソーム内において、低pHでRe(I)-またはTc(I)-中心から切り離される、それ故に、錯体の活性部分が薬として放出されることである。好適には、アミノ酸は非天然のα-またはβ-アミノ酸である。特に有用な実施態様では、非天然アミノ酸はN,N-ジメチルグリシンである。理論に縛られることを望まないが、2つのメチル基は立体的に要求性が強く、配位子がメチル化されてないグリシンに比較してRe(I)またはTc(I)と弱く結合することから、これは低pHでの容易な放出を引き起こす。
【0018】
特定の実施態様において、本発明の化合物は図16で表されたような錯体6、10、11、12、13および18から選択される。
【0019】
上記一般式Iの化合物は、それらが以下の基準を満たすのであれば、必要な化学毒性活性を有すると考えられる。式Iに示される化合物中の配位子の少なくとも2つが、グアニンまたはグアノシンがレニウム、テクネチウムよりも僅かに過剰に存在している場合に、37℃、3日間の後、グアニンまたはグアノシンによって交換されるのであれば、出発錯体は癌治療に対して必要な要求性を有すると考えられる。
【0020】
本発明の化合物はX1および/またはX2および/またはX3が標的部分に結合されているという意味で誘導体化され得る。標的部分は当分野で知られており、当業者は要求を満たす標的部分を選択することができる大変優れた能力を有する。標的部分の適切な例は、ボンベシン、ニューロテンシン、ソマトスタチン、グルコサミン、ヌクレオシド、核内局在配列ペプチド(NLS-ペプチド)、オリゴヌクレオチド、アントラサイクリン、アクリジンおよび他のインターカレーターのような核標的分子、およびそれらの誘導体または類縁体である。
【0021】
本明細書に記載された化合物および本発明に合致して使用される化合物は、金属中心の固有の放射活性をシスプラチンの機能的性質と組み合わせた、金属イオンの単一核の8面体錯体に基づく。これは、8面体錯体が一般的に立体的に込み入りすぎてある程度でDNAと相互作用することができないと信じられているので、予想外である。それにもかかわらず、本発明者は2つの核-プリンがシス配列でRe(I)中心に結合し、プラチナ化合物と同程度で結合して、シスプラチンと同等の化学毒性活性を導くということを示した。
【0022】
N7原子を介して2つのグアニンに特異的に結合したテクネチウムおよびレニウム錯体のX線構造(実施例4参照)は、[M(CO)3(H20)3]+(式中、MはRe、Tcおよびそれらの同位体)とGおよび2dGとの相互作用の速度論的および熱力学的データと共に、実験的に意図した構造特性を証明する。同様に、これらのデータと[Pt(NH3)2(H20)2] 2+のデータとの比較により、1および2がシスプラチンと同様にDNAに作用する潜在力のある化学毒性剤であることが示される。Re-186/188の放射能毒性作用様式はよく確立されている。Ptの場合のように、2つのグアニン配位子は8面体[(CO)3Re(I)(プリン)2X]錯体(X=H20、Br)において、いくつかの立体的構造をとり得る。
【0023】
本発明者はまた、開環のおよびスーパーコイル形態のプラスミドDNAの電気泳動の移動度が変化することにより、少なくとも2つの利用可能な配位部位を有するレニウム錯体がΦX174DNAの三次元構造に影響を及ぼすことを示した。[Re(1)(CO)3]+部分は主として例えばシスプラチンと同様のプラスミドDNAに対する反応性パターンを示す。それは、2つの遊離なグアニンと特異的に結合し、DNA中で近接するグアニンとの相互作用の可能性も示唆する。惹起された変化は単なる静電的総合作用よりも2塩基への共有結合を必要とする。
【0024】
さらにここで、200μMの濃度でレニウム錯体がある種のヒト癌細胞株の増殖を阻害する能力があることが示された。
【0025】
上述の化合物の当分野の現状に対する改善は以下のようである。単一核8面体186Re(I)または188Re(I)錯体は金属中心の放射活性をDNAの鎖内または鎖間の結合と組み合わせることができる。かかるクラスの化合物は、標的癌細胞に高度に限局して放射線量を供給している間、DNAの転写を阻害することができる。したがって、この種の錯体は癌治療に適した化学毒性放射性医薬品として作用できる。単一核8面体99mTc(I)錯体は上記186Re(I)または188Re(I)化合物の診断用アナログとして用いられ得る。
【0026】
本発明の化合物は細胞質内での標的、能動的取り込みおよび分解を可能にするベクター(すなわちポリペプチド)と容易に結合させることができる。標的生体分子はX1またはX2またはX3に結合され得るか、X2/X3は例えばペプチド中のヒスチジンのイミダゾール側鎖、またはオリゴヌクレオチド中のGGモチーフのような大きい構造の一部であり得る。後者の場合、GGモチーフはRe(I)活性中心を保護するが、細胞質内でのオリゴヌクレオチド分解の後で放出される。
【0027】
さらに、放射活性物と同一の構造を有する非放射活性物質を治療効率を改善するために添加(トレーサ添加)することができ、一方、類似する放射活性化合物は生体分布のモニターリングを可能にする。これは、臨床で使用される現在の、どの金属基盤のまたは有機化学毒性剤を用いても可能なことではない。
【0028】
放射線治療法と化学療法を組み合わせることによって、癌治療のための重要な治療利益が得られることは良く知られているものの、上述の分子は1分子内に両方の性質(すなわち、放射活性および化学毒性)を含む分子種の最初の例である。
【0029】
金属のコアが標的部位で更なる相互作用をすること防止する、放射線治療法の目的に専ら適しているRe(I)基盤の化合物の設計をもたらす他のほとんどの戦略と反対に、本発明の化合物は、送達され、望まれる標的の腫瘍部位で積極的に生化学に関与する。
【0030】
本発明はさらに系統的な創薬を可能にする。置換基X1、X2 およびX3を異なる部位で変化させることにより、多様な種類の化合物が過度の負担無くして得られる。結果として、分子はDNA塩基との相互作用に向けて微調整され得る。もちろん、決定的な試験はかかる化合物が活性基準を満たすか否かである。
【0031】
それらの更なる態様によれば、本発明はプロドラッグに関する。かかる化合物において、配位子はプロドラッグから放出され、例えば、癌細胞内でpHが低下した場合、活性型の薬剤を生成する。本発明の好適なプロドラッグの例は、X1、X2 およびX3の少なくとも2つが上記に定義した単座配位子、または二座配位子の一部である、式Iの化合物である。さらに、プロドラッグは治療指数を増加する標的薬剤または代謝活性物質に結合され得る。プロドラッグの配位子は[M(CO)3]+コアを保護することができ、癌細胞内で活性型の薬剤を乖離し、放出することができる。
【0032】
プロドラッグの場合、式Iの化合物において、X1は例えば単座配位子を表し、一方、X2およびX3は単座配位子、または共に二座キレーターを形成する。X1、X2 およびX3は上記のように定義される。X2、X3は保護基配位子を表し、プロドラッグを形成し、放出されて薬剤を形成する。X1はDNAの結合効率およびプロドラッグの放出に影響を及ぼす。
【0033】
本発明の異なる態様は図1で説明される。この図において、化合物Iは分離されたGまたはDNAと反応し、鎖内または鎖間のクロスリンクを形成し(実施例4、5および7)、化合物IIはGまたはDNAと反応し、鎖内または鎖間のクロスリンクを形成する(実施例3および13)。化合物IおよびIIは、それらがまた血清蛋白と結合し、したがって、直ぐには細胞内に取り込まれることができず、よって、不活性であるので薬剤として考えられ、化合物IIIは中間物である。それは細胞に取り込まれた後DNA(薬剤)と直接反応する。血清タンパク質と強く相互作用しないので、それはプロドラッグとして考えられ(実施例13、錯体8)、またはそれは1つの配位子を放出し、化合物IIとなり、薬剤として作用できる。実際のプロドラッグはIVおよびVである。両者とも血清タンパク質とは反応しないが(したがって、それらはプロドラッグである)、原理上DNAと直接反応できる。より可能性があり、実施例8で示されているのは、化合物IIを形成し、よって薬剤となる、配位子X2およびX3の欠損である。経路1-5は薬剤であり、経路6-8はプロドラッグである。
【0034】
本出願で用語「化学毒性の」および「細胞毒性の」は同義的に使用される。例えば、化合物はそれ自体化学毒性であるが、細胞において細胞毒性の効果を有する。したがって、細胞毒性試験は化合物が細胞に及ぼす影響に関するが、化学毒性は化合物固有の特徴である。さらに、用語「化合物」と「錯体」は同義的に使用される。
【0035】
本発明は本発明を制限する意図の全くない以下の実施例でさらに説明される。説明は以下の図に対してなされる:
図1は化合物および特許請求する化合物の反応経路の一般スキームを示す。
図2は本発明の化合物の活性試験を示す。
図3は実施例3の化合物のHPLC-MSクロマトグラフを示す。
図4は[Re(9-MeG)2(H20)(CO)3](Cl04)および [99Tc(9-MeG)2(CH30H)(CO)3](Cl04)のX線結晶構造を示す。
図5Aは1とd(CpGpG)との反応終了時での芳香族領域(7.0-9.0ppm)を示す。
図5Bはbis[Re(CO)3d(CpGpG)(H20)]-がグアニン残基のN7原子に付加結合することを確認するpH依存性試験を示す。
図6AはΦX174プラスミドDNAに対するシスプラチンの作用を示す。ライン4-8はシスプラチンのシス-GG結合の結果としてスクランブル(scrambling)の量が増加することを示す。
図6Bは上述の条件下でのΦX174プラスミドDNAに対する錯体1の相互作用を示す。結果は図6Aでのシスプラチンで認められた結果と同様である。
図6Cはカチオン性錯体2とΦX174プラスミドDNAの相互作用を示す。DNAのスクランブルは認められない。
図7、レーン2-7は2つの不安定なシス-配位子を有する錯体がΦX174プラスミドDNAのスクランブルを誘導することを示し、一方、レーン8-14では構造変化が認められない。
図8AはΦX174プラスミドDNAと錯体1および6の相互作用を示す。明らかに、錯体6は、シスプラチンに比較して、GGクロスリンクの指標となるDNAスクランブルを引き起こす。
図8Bはプロドラッグ6および結果として生じる薬剤1の構造およびプロドラッグのX線構造を示す。
図8Cはプロドラッグ6の活性薬剤への図式化された変換を示す。
【0036】
図9Aは実施例6に記載された方法によるΦX174プラスミドDNAと錯体1および7のインキュベーションを示す。
図9Bは金属錯体を放出するための、およびΦX174プラスミドDNAの原型を再構成するためのヒスチジンとのインキュベーションの後の同じサンプルを示す。
図10は実施例10-13で使用されているレニウム錯体の細胞毒性を決定するための典型的なXTT細胞増殖試験を示す。
図11は錯体1、3、4および5がMDA-MB-4355乳癌細胞(ATCC#TB129)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図12は錯体1、3、4および5がOVMZ-6-WT卵巣癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbHから入手可能)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図13は錯体1、3、4および5がHSC45-M2胃癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図14Aは錯体1乃至13がB16F1マウスメラノーマ細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
図14Bは錯体1、2および14乃至21がB16F1マウスメラノーマ細胞(ATCC)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)をシスプラチンに比較して表したグラフである。
図15は標的部分アクリジンのN-エチルアミノ−イミダゾールへの結合を示す。
図16は本発明の化合物のまとめである。
【実施例】
【0037】
実施例1
単座配位子を有する本発明の化合物の合成
1.一般的な方法
単座配位子を有する本発明の化合物は一般的に1の溶液に1当量の配位子を加えることにより合成できる。
2.特定例([Et4N][ReBr2(Im)(CO)3](16))
例として16の合成手順を以下に示す:(Et4N)2[ReBr3(CO)3](1、96mg、0.12mmol)をCH2Cl2(5ml)に溶解した。イミダゾール(Im、8mg、0.12mmol)を加え、混合物を室温で攪拌した。30分後白色固体が出現した。これを濾過し減圧下乾燥した。収率:45mg、60%。
元素分析が16に対してC14H24N3O3Br2Re (628,38):C, 26.75; H, 3.82 ; N, 6.68、と算出され、C, 26.83 ; H, 3.71 ; N, 6.62と見出された。
【0038】
実施例2
二座配位子を有する本化合物の合成
1.一般的な方法
二座配位子を有する本発明の化合物は一般的に1の溶液に1またはそれ以上の当量の配位子を加えることにより合成できる。
2.特定例([Re(L-Ser)2(CO)3](10))
例として10の合成手順を以下に示す:(Et4N)2[ReBr3(CO)3](100mg、0.13mmol)をメタノール/水混合物(9:1、5ml)に溶解した。L-セリン(48mg、0.46mmol)を添加し、混合物を僅かなN2圧力下、3時間、50℃で攪拌した。反応をHPLCでモニターし、更なる変化が観察されなければ(3h)停止した。溶液を室温に平衡化し、HPLCで精製した。白色固体を得る。収率:23mg、37%。X線解析に適した結晶はH2Oをゆっくりと蒸発させることにより得られる。
元素分析が10に対してC9H13N2O9Re (479,41):C, 22.55; H, 2.73 ; N, 5.84と算出され、 C, 23.17 ; H, 3.20 ; N, 5.47と見出された。
【0039】
実施例3
グアニンへの[M(CO)3]+の結合
金属トリカルボニルがプリン塩基に結合できるか否かを試験するために、以下の試験を実施した。37℃、3日間、6倍過剰量のグアニンとインキュベーションした一般式Iの化合物1mMの水溶液(またはH2O/CH3OH混合物)は、50%以上の金属中心に対する1または2つのグアニンの結合を示す(図2)。
【0040】
水中で、(37℃)16は9-MeGと段階的に反応する。我々のHPLCでは、錯体16は13.9分の保持時間(室温)である。1時間後、第2のピークを室温17.4分に観察する。HPLC-MSクロマトグラフィーはこの種が[Re(Im)(9-MeG)(H2O)(CO)3](16a)であることを示す。さらに12時間後、第3および4のピークが17.0および16.2分に出現し、それはHPLC-MSクロマトグラフィーにより、それぞれ[Re(9-MeG)2(H2O)(CO)3]+(3)および[Re(9-MeG)(H2O)2(CO)3]+(3a)と同定する。そのピークの相対的な高さは、種3および3aの濃度の増加に伴い、更なる12時間のインキュベーションの後で観察された他方の変化のみを与える(図3)。
【0041】
この例はグアニンが一般式Iの化合物中にある保護配位子としてイミダゾールを置換することができることを示す。化合物3はDNA中グアニンにクロスリンクした後の[M(CO)3]+部分の構造的特徴に対するモデルである。
【0042】
実施例4
[M(CO)3]+(M=99Tc(I),Re(I))ビスグアニン付加物[Re(9-MeG)2(H2O)(CO)3](ClO4)(3)の生成
(Et4N)2[ReBr3(CO)3](30mg, 0.04mmol)を高温(〜40℃)水(3ml)に溶解した。AgClO4(28mg、 0.14mmol)を添加し、混合物をAgBrを濾過し取り除いた後、3時間攪拌した。9-メチルグアニン(16.5mg, 0.1mmol)を添加し、混合物を僅かなN2圧力下で50℃に加熱した。無色溶液が数分以内に明るい黄色に変化した。反応をHPLCでモニターし、3.5時間後、更なる変化が観察できない時に停止した。混合溶液を室温に平衡化し、濃縮し、その後短いC18カラムで精製した。
【0043】
精製された錯体を含むメタノール画分に3%H2O(v/v)を添加した。ペンタンを溶液内に拡散し、X線用の品質の結晶を沈殿させた。
収率:定量的
元素分析が3に対してC15H16ClN10O10Re(718.01): C, 25.09 ; H, 2.25 ; N, 19.51、と算出され、C, 25.34 ; H, 2.70 ; N, 19.45と見出された。
X線結晶構造を図4に示す。
【0044】
実施例5
[M(CO)3]+とオリゴヌクレオチドの相互作用
図5Aは[Re(H20)3(CO)3]+(1)と1当量のd(CpGpG)の反応のD2O中での1H NMRスペクトルを示す。d(CpGpG)溶液に1を37℃で添加することにより、遊離のd(CpGpG)のH8シグナルによる共鳴スペクトルが消失し、H8プロトンと非等価である新しい一連のシャープな良く分離されたピークが出現する。
【0045】
図5Aは1とd(CpGpG)の反応終了時(1時間インキュベーション)の芳香族領域(7.0-9.0ppm)を示す。
2つのグアニン塩基はN7を介してRe(I)に結合し、この事実はpH2近傍でH8共鳴がpH非依存的であることにより裏付けられている(図5B)。実際、遊離のグアニンN7に対して予想されるのと反対に、H8の全ての化学シフトは4以下のpHの低下によって影響を受けない。
【0046】
実施例6
ΦX174プラスミドDNAと錯体1および2の相互作用
ΦX174プラスミドはPromegaから購入し、更なる精製をせずに用いた。ΦX174RFプラスミドDNA(0.1mg)をH2O中、[錯体]/[bp]0.018-1.8/1で対応するレニウム錯体と混合した。混合物をゲル電気泳動による解析の前に、暗所で22時間、37℃、水中でインキュベートした。全ての場合で、混合物のpHは約7で一定に保たれた。1mMまたは10mM NaClO4で実施された実験は1とΦX174RFプラスミドDNAの結合に有意な差異を示さなかった。
【0047】
DNA結合をゲル電気泳動移動シフトアッセイにより、9cm、0.75%アガローススラブゲルでTAE泳動緩衝液を用いて試験する。ゲルを室温で電圧50および75Vの間で泳動した。泳動時間は電圧により変わり、通常1.5-2時間であった。得られたゲルはバッファー緩衝液中エチジウムブロマイド約0.3μg/mlの濃度で染色した。バンドはデジタルカメラを装着したソフトウェアUVトランスイルミネイターで可視化した。
【0048】
図6AはΦX174プラスミドDNAに対するシスプラチンの作用を示す。ライン4-8はシスプラチンのシス-GG結合の結果としてスクランブル(scrambling)の量が増加することを示す。
図6Bは上述の条件下でのΦX174プラスミドDNAに対する錯体1の相互作用を示す。結果は図6Aでのシスプラチンで認められた結果と同様である。
図6Cはカチオン性錯体2とΦX174プラスミドDNAの相互作用を示す。DNAのスクランブルは認められない。
[M(CO)3]+がΦXプラスミドDNAとシスプラチンと同様の様式で相互作用することが理解された。また、相互作用が静電効果に因らないことが示された。
【0049】
実施例7
2つの不安定なシス配位子がΦX174プラスミドDNAの構造変化の惹起に必要である。
この実施例で、ΦX174プラスミドDNAを単座または二座の配位子を含む異なる錯体とインキュベートする。錯体1および3は不安定なシス-配位子を含み、一方錯体4および5は2つのGとの置換に対し安定である。
図7、レーン2-7は2つの不安定なシス-配位子を有する錯体がΦX174プラスミドDNAのスクランブルを誘導することを示し、一方、レーン8-14では構造変化が認められない。2つの不安定なシス配位子がゆっくりと放出されるだけである場合、前駆体の錯体はプロドラッグと考えられる。この様式を実施例8に記載する。
【0050】
実施例8
プロドラッグの調製
有効な薬剤として錯体1を含むプロドラッグはシス配列中にRe(I)中心からゆっくりと放出される2つの不安定な配位子を含有する。不安定な配位子を切り離した後、活性な薬剤に相当する組成[M(X1)(OH2)2(CO)3]の錯体が形成される。我々は本明細書で、N,N-ジメチル-グリシンを不安定なシス-配位子として含むかかるプロドラッグの合成を記載する。
【0051】
(Et4N)2[ReBr3(CO)3](100mg, 0.13mmol)をメタノール/水混合物(4:1、10ml)に溶解した。N,N-ジメチルグリシン(70mg, 0.7mmol)を加え、僅かなN2圧力下で12時間、50℃で攪拌した。溶液を室温に平衡化し、短いC18フィルターで濃縮し、精製する。白色結晶の固体を得た。収率:20mg、40%。
【0052】
X線回折に適した結晶を、錯体のCH3NC溶液中のエーテルをゆっくり拡散することにより得た。元素分析は6に対して、C2lH24N3Ol5Re3 (1117.05) : C, 22.58 ; H, 2.17 ; N, 3.76と算出され、C, 23.19 ; H,2.78 ; N, 3.84と見出された。1H NMR(500MHz,DMSO-d6,d/ppm): 4.18(s, 2H), 3.46(s, 3H), 3.15(s, 3H)。
6に対するFT-IR(KBr,v/cm-l):(C=O)2022(s), (C=O)1911(b), (C=O)1890(s), (C=O)1866(s)。6に対するESI-MS(ESI+,40V,m/z):1117.0([M]+)。6に対する室温HPLC(HPLC,グラジエント1分):15.7。
【0053】
図8AはΦX174プラスミドDNAと錯体1および6の相互作用を示す。明らかに、錯体6は、シスプラチンに比較して、GGクロスリンクの指標となるDNAスクランブルを引き起こす。
図8Bはプロドラッグ6および結果として生じる薬剤1の構造およびプロドラッグのX線構造を示す。
錯体6とグアニンの相互作用を実施例4に概説された試験によって検討した。NMRとHPLC実験は、ΦXプラスミドDNAで起きていることと同じように、二座配位子N,N-ジメチル−グリシンが切り離され、2つのグアニンに置き換えられることを明確に示す。図8Cはプロドラッグ6の活性薬剤への図式化された変換を示す。
【0054】
実施例9
[M(CO3)]+ΦX174プラスミドDNA付加物の安定性
実施例6に概説されているように、不安定なシス-配位子を有する錯体はおそらくGG鎖間または鎖内クロスリンクを介してΦX174プラスミドDNAに結合できる。シスプラチンがDNAに結合する場合、この相互作用は不可逆的である。本出願で請求している2例の化合物の安定性を調べるために、錯体1および7のインビトロ研究を実施した。
【0055】
実施例6に記載したように、錯体1および7をΦX174プラスミドDNAとインキュベートした。その後、ΦX174プラスミドDNAから錯体を切り離すためにプラスミドにヒスチジンを添加した。100倍過剰量のヒスチジンを使用したが、放出を全く観察できなかった。つまり、ΦX174プラスミドDNAの構造変化は元に戻せなかった。22時間後のゲル電気泳動の結果を図9Aに示す。
図9Aは実施例6に記載された方法によるΦX174プラスミドDNAと錯体1および7のインキュベーションを示す。図9Bは金属錯体を放出するための、およびΦX174プラスミドDNAの原型を再構成するためのヒスチジンとのインキュベーションの後の同じサンプルを示す。
【0056】
実施例10
細胞毒性手順
典型的な実験では(図10参照)、平均2000個の細胞を最終ウェル当たり100μlの培養液の量で、マイクロタイタープレート(組織培養グレード、96穴、平底)で、湿気のある環境(37℃、>6.5%CO2)において培養した。24時間後、レニウム錯体をウェルに添加し(Reを基準として最終濃度200μM)、細胞をさらに24時間湿気のある環境下において培養した。インキュベーション期間経過後、XTTラベリング混合物50μlをそれぞれのウェルに添加した。プレートをさらに4時間インキュベーションした。この最終インキュベーションの後、それぞれのウェルの分光学的吸収(吸光度OD)を450nmで測定した。
【0057】
コントロール実験をレニウム錯体を添加をしないで、上記の通りに実施した。ブランクはXTTラベリング混合物の代わりに50μlのH2Oを添加することにより得た。実験は各2点で実施し、結果を平均値で表す。
細胞生存%をサンプルの相対ODに基づいて算出した。最大のコントロールODを細胞生存100%とした。
【0058】
実施例11
MDA-MB-4355乳癌細胞株に対する[Re(I)(Co)3]+錯体(200μM)の細胞毒性
図11は錯体1、3、4および5がMDA-MB-4355乳癌細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物1、3および4が細胞増殖を阻害することを示す。錯体5は実施例3に示された条件下で安定であり、この乳癌細胞株に対して細胞毒性を示さない。
【0059】
実施例12
OVMZ-6-WT卵巣癌細胞株に対する[Re(I)(Co)3]+錯体(200μM)の細胞毒性
手順は実施例10および図10に記載した通りである。癌細胞株のみ相違する。
図12は錯体1、3、4および5がOVMZ-6-WT卵巣癌細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに、化合物1がこの癌細胞株において細胞増殖を阻害することを示す。
【0060】
実施例13
HSC45-M2胃癌細胞株に対する[Re(I)(Co)3]+錯体(200μM)の細胞毒性
手順は実施例10および図10に記載した通りである。癌細胞株のみ相違する。
図13は錯体1、3、4および5がHSC45-M2胃癌細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物5がこの癌細胞株において細胞増殖を阻害することを示す。
【0061】
実施例14
B16F1マウスメラノーマ細胞に対する異なるレニウム錯体の細胞毒性
手順は実施例10および図10に記載した通りである。癌細胞株のみ相違する。
図14Aは錯体1乃至13がB16F1マウスメラノーマ細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物1および2が細胞増殖を強力に阻害することを示す。水溶性が悪いため、化合物4、5、6および11乃至13の濃度は200μM以下である。それ故に、上記の化合物は200μMでより強い細胞毒性を示すであろう。
【0062】
図14Bは錯体1、2および14乃至21がB16F1マウスメラノーマ細胞に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。結果は明らかに化合物1、2および14乃至18がシスプラチンと比較できる程度で細胞増殖を阻害することを示す。
【0063】
実施例15
本発明の化合物の標的部分への結合
本実施例では、標的部分は、受容体に結合せず核を標的とする有機分子である、アクリジン(A)を意味する。アクリジンを[M(CO)3]+部分へ結合する目的で、イソシアニドおよびイミダゾールで誘導体化する。基本の活性構造は錯体16および18の構造であり、両方ともΦX174プラスミドDNAにクロスリンクすることが示されている。核標的薬剤の製造のための一般的な反応スキームは図15で与えられる。
【0064】
化合物Aを標準的な結合技術によりN-エチルアミノ-イミダゾールと結合させる。AをTHFに溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN-ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性化する。活性化が完了した後、0.9当量のイミダゾール誘導体を添加し、混合物を12時間室温で攪拌する。HPLCによりA→Bの定量的な変換が示された。化合物を更なる精製をせずに用いた。
【0065】
化合物Aを上記のように活性化し、THF中で50倍過剰量の1,2-ジアミノエタンと混合した。溶液を一晩攪拌した。溶媒を吸引により取り除き、残渣を飽和NaHCO3で数回洗浄した。残渣をメタノールに溶解し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/CH2Cl2 1/3 v/v)により精製した。その後、化合物Cをイソシアノ−酢酸−エチルエステルと混合し、48時間反応させた。この時間の後、Cは定量的にDに変換した。反応混合物はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2/ヘキサン 2/1)により精製した。
1当量の化合物Dを1と反応させ、式Iの組成物である化合物[Re(D)Br2(CO)3]-を得る。
【0066】
実施例16
本発明の化合物の生体分布のモニターリング
一般式Iの錯体を、99mTc(I)を用いてレニウムについて概説したのと同様の手順に従って合成する。出発錯体1(99mTc(I))をIsolinkキットから、または刊行された手順(Alberto et al. J. Am. Chem. Soc. 1999,121 (25), 6076-6077)に従って調製する。「コールド」の細胞毒性レニウム錯体を「ホット」の放射能毒性99mTc(I)または188/186Re(I)錯体と混合する。Tc(I)またはRe(I)のどちらかの同位体を有するこれらの錯体は互いに類似体であるので、標準的な技術であるSPECTカメラによってイメージングすることで、化合物がどこに蓄積するのかを追跡することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は化合物および特許請求する化合物の反応経路の一般スキームを示す。
【図2】図2は本発明の化合物の活性試験を示す。
【図3】図3は実施例3の化合物のHPLC-MSクロマトグラフを示す。
【図4】図4は[Re(9-MeG)2(H20)(CO)3](Cl04)および [99Tc(9-MeG)2(CH30H)(CO)3](Cl04)のX線結晶構造を示す。
【図5A】図5Aは1とd(CpGpG)との反応終了時での芳香族領域(7.0-9.0ppm)を示す。
【図5B】図5Bはbis[Re(CO)3d(CpGpG)(H20)]-がグアニン残基のN7原子に付加結合することを確認するpH依存性試験を示す。
【図6A】図6AはΦX174プラスミドDNAに対するシスプラチンの作用を示す。ライン4-8はシスプラチンのシス-GG結合の結果としてスクランブル(scrambling)の量が増加することを示す。
【図6B】図6Bは上述の条件下でのΦX174プラスミドDNAに対する錯体1の相互作用を示す。結果は図6Aでのシスプラチンで認められた結果と同様である。
【図6C】図6Cはカチオン性錯体2とΦX174プラスミドDNAの相互作用を示す。DNAのスクランブルは認められない。
【図7】図7、レーン2-7は2つの不安定なシス-配位子を有する錯体がΦX174プラスミドDNAのスクランブルを誘導することを示し、一方、レーン8-14では構造変化が認められない。
【図8A】図8AはΦX174プラスミドDNAと錯体1および6の相互作用を示す。明らかに、錯体6は、シスプラチンに比較して、GGクロスリンクの指標となるDNAスクランブルを引き起こす。
【図8B】図8Bはプロドラッグ6および結果として生じる薬剤1の構造およびプロドラッグのX線構造を示す。
【図8C】図8Cはプロドラッグ6の活性薬剤への図式化された変換を示す。
【図9A】図9Aは実施例6に記載された方法によるΦX174プラスミドDNAと錯体1および7のインキュベーションを示す。
【図9B】図9Bは金属錯体を放出するための、およびΦX174プラスミドDNAの原型を再構成するためのヒスチジンとのインキュベーションの後の同じサンプルを示す。
【図10】図10は実施例10-13で使用されているレニウム錯体の細胞毒性を決定するための典型的なXTT細胞増殖試験を示す。
【図11】図11は錯体1、3、4および5がMDA-MB-4355乳癌細胞(ATCC#TB129)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図12】図12は錯体1、3、4および5がOVMZ-6-WT卵巣癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbHから入手可能)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図13】図13は錯体1、3、4および5がHSC45-M2胃癌細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図14A】図14Aは錯体1乃至13がB16F1マウスメラノーマ細胞(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinie DSMZ GmbH)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)を表したグラフである。
【図14B】図14Bは錯体1、2および14乃至21がB16F1マウスメラノーマ細胞(ATCC)に対して示した細胞毒性(細胞生存%)をシスプラチンに比較して表したグラフである。
【図15】図15は標的部分アクリジンのN-エチルアミノ−イミダゾールへの結合を示す。
【図16】図16は本発明の化合物のまとめである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療用の化学毒性で場合により放射線治療性の薬剤を製造するための、一般式[M(CO)3L3]+、(式中、Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体であり、Lは配位子である)、の金属トリカルボニル化合物の使用。
【請求項2】
該薬剤が、DNA内の鎖内結合を生じさせることにより化学毒性である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Lの少なくとも1つがOH2でない、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
該トリカルボニル化合物が、一般式:
【化1】
である、請求項1−3のいずれか1項に記載の使用。
ただし、式中、Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体であり;
X1、X2およびX3の少なくとも1つは単座配位子であり;または
X1、X2およびX3の2つは二座配位子の部分であり、他の1つが場合によっては単座配位子である。
【請求項5】
該単座配位子が、ハロゲン、CO、芳香族複素環、チオエーテル類およびイソシアン化物からなる群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
該ハロゲンが、臭素、ヨウ素、フッ素および塩素からなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
該芳香族複素環が、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾールからなる群および不可欠な部分としてこの群のうち1つを有する有機分子から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
該プリンが、グアニンまたは9−メチルグアニンである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
該チオエーテル類が、直鎖置換ジアルキル-チオエーテルまたはテトラヒドロチオフェンのような環状チオエーテル類からなる群およびその不可欠な部分としてチオエーテル官能基を含む他の有機分子から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
該イソシアン化物が、アルキル鎖に結合した末端-NC基を含み、場合によっては-COOH、-NH2、-X、-SH、-OH基のような官能基を含む有機分子からなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
該二座配位子が、アミノ酸またはジカルボン酸塩である、請求項5に記載の使用。
【請求項12】
該アミノ酸が、アニオン性アミノ酸である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
該アミノ酸が、非天然α-またはβ-アミノ酸である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
該非天然アミノ酸が、N,N-ジメチルグリシンである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
式Iで示されるトリカルボニル錯体の配位子の少なくとも2つが、グアニンまたはグアノシンがレニウムまたはテクネチウムより僅かに過剰に存在している場合に、37℃、3日後グアニンまたはグアノシンで交換されている、請求項4−14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
該化合物が、図16に記載された化合物およびそれらの組合せから選択される、請求項4−15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
X1および/またはX2および/またはX3が標的部分に結合されている、請求項4−16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
標的部分がボンベシン、ニューロテンシン、ソマトスタチン、グルコサミン、ヌクレオシド、核内局在配列ペプチド(NLS-ペプチド)、オリゴヌクレオチド、アントラサイクリン、アクリジンおよび他のインターカレーターのような核標的分子、およびそれらの誘導体または類縁体からなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
一般式:
【化2】
のトリカルボニル化合物。
ただし、式中、Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体であり;
X1、X2およびX3の少なくとも1つが、ハロゲン、CO、芳香族複素環、チオエーテル類、イソシアン化物からなる群から選択される単座配位子であるか;または、
X1、X2およびX3の2つが、アミノ酸およびジカルボン酸塩から選択される二座配位子の部分であり、他の1つが場合によって、ハロゲン、CO、芳香族複素環、チオエーテル類、イソシアン化物からなる群から選択される単座配位子である。
【請求項20】
該ハロゲンが、臭素、ヨウ素、フッ素、塩素からなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
該芳香族ヘテロ環が、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾールからなる群および不可欠な部分としてこの群の1つを有する有機分子から選択される、請求項19または20に記載の化合物。
【請求項22】
該プリンが、グアニンまたは9-メチルグアニンである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
該チオエーテル類が、直鎖置換ジアルキル-チオエーテルまたはテトラヒドロチオフェンのような環状チオエーテル類からなる群およびその不可欠な部分としてチオエーテル官能基を含む他の有機分子から選択される、請求項19−22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
該イソシアン化物が、アルキル鎖に結合した末端-NC基を含み、場合によっては、-COOH、-NH2、-X、-SH、-OH基のような官能基を含む有機分子からなる群から選択される、請求項19−23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
該二座リガンドが、アミノ酸またはジカルボン酸塩である、請求項19−24のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
該アミノ酸がアニオン性アミノ酸である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
該アミノ酸が非天然α-またはβ-アミノ酸である、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
該非天然アミノ酸がN,N-ジメチルグリシンである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
式Iで示されるトリカルボニル錯体の配位子の少なくとも2つが、グアニンまたはグアノシンがレニウムまたはテクネチウムより僅かに過剰に存在している場合に37℃、3日間の後、グアニンまたはグアノシンで変換される、請求項19−28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
図16に示された化合物。
【請求項31】
錯体が図16に示された6、10、11、12、13および18である、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
X1および/またはX2および/またはX3が標的部分に結合されている、請求項19−31のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
該標的部分がボンベシン、ニューロテンシン、ソマトスタチン、グルコサミン、ヌクレオシド、核内局在配列ペプチド(NLS-ペプチド)、オリゴヌクレオチド、アントラサイクリン、アクリジンおよび他のインターカレーターのような核標的分子、およびそれらの誘導体または類縁体からなる群から選択される、請求項32の化合物。
【請求項1】
癌治療用の化学毒性で場合により放射線治療性の薬剤を製造するための、一般式[M(CO)3L3]+、(式中、Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体であり、Lは配位子である)、の金属トリカルボニル化合物の使用。
【請求項2】
該薬剤が、DNA内の鎖内結合を生じさせることにより化学毒性である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Lの少なくとも1つがOH2でない、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
該トリカルボニル化合物が、一般式:
【化1】
である、請求項1−3のいずれか1項に記載の使用。
ただし、式中、Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体であり;
X1、X2およびX3の少なくとも1つは単座配位子であり;または
X1、X2およびX3の2つは二座配位子の部分であり、他の1つが場合によっては単座配位子である。
【請求項5】
該単座配位子が、ハロゲン、CO、芳香族複素環、チオエーテル類およびイソシアン化物からなる群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
該ハロゲンが、臭素、ヨウ素、フッ素および塩素からなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
該芳香族複素環が、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾールからなる群および不可欠な部分としてこの群のうち1つを有する有機分子から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
該プリンが、グアニンまたは9−メチルグアニンである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
該チオエーテル類が、直鎖置換ジアルキル-チオエーテルまたはテトラヒドロチオフェンのような環状チオエーテル類からなる群およびその不可欠な部分としてチオエーテル官能基を含む他の有機分子から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
該イソシアン化物が、アルキル鎖に結合した末端-NC基を含み、場合によっては-COOH、-NH2、-X、-SH、-OH基のような官能基を含む有機分子からなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
該二座配位子が、アミノ酸またはジカルボン酸塩である、請求項5に記載の使用。
【請求項12】
該アミノ酸が、アニオン性アミノ酸である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
該アミノ酸が、非天然α-またはβ-アミノ酸である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
該非天然アミノ酸が、N,N-ジメチルグリシンである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
式Iで示されるトリカルボニル錯体の配位子の少なくとも2つが、グアニンまたはグアノシンがレニウムまたはテクネチウムより僅かに過剰に存在している場合に、37℃、3日後グアニンまたはグアノシンで交換されている、請求項4−14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
該化合物が、図16に記載された化合物およびそれらの組合せから選択される、請求項4−15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
X1および/またはX2および/またはX3が標的部分に結合されている、請求項4−16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
標的部分がボンベシン、ニューロテンシン、ソマトスタチン、グルコサミン、ヌクレオシド、核内局在配列ペプチド(NLS-ペプチド)、オリゴヌクレオチド、アントラサイクリン、アクリジンおよび他のインターカレーターのような核標的分子、およびそれらの誘導体または類縁体からなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
一般式:
【化2】
のトリカルボニル化合物。
ただし、式中、Mはレニウムまたはテクネチウムまたはそれらの同位体であり;
X1、X2およびX3の少なくとも1つが、ハロゲン、CO、芳香族複素環、チオエーテル類、イソシアン化物からなる群から選択される単座配位子であるか;または、
X1、X2およびX3の2つが、アミノ酸およびジカルボン酸塩から選択される二座配位子の部分であり、他の1つが場合によって、ハロゲン、CO、芳香族複素環、チオエーテル類、イソシアン化物からなる群から選択される単座配位子である。
【請求項20】
該ハロゲンが、臭素、ヨウ素、フッ素、塩素からなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
該芳香族ヘテロ環が、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾールからなる群および不可欠な部分としてこの群の1つを有する有機分子から選択される、請求項19または20に記載の化合物。
【請求項22】
該プリンが、グアニンまたは9-メチルグアニンである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
該チオエーテル類が、直鎖置換ジアルキル-チオエーテルまたはテトラヒドロチオフェンのような環状チオエーテル類からなる群およびその不可欠な部分としてチオエーテル官能基を含む他の有機分子から選択される、請求項19−22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
該イソシアン化物が、アルキル鎖に結合した末端-NC基を含み、場合によっては、-COOH、-NH2、-X、-SH、-OH基のような官能基を含む有機分子からなる群から選択される、請求項19−23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
該二座リガンドが、アミノ酸またはジカルボン酸塩である、請求項19−24のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
該アミノ酸がアニオン性アミノ酸である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
該アミノ酸が非天然α-またはβ-アミノ酸である、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
該非天然アミノ酸がN,N-ジメチルグリシンである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
式Iで示されるトリカルボニル錯体の配位子の少なくとも2つが、グアニンまたはグアノシンがレニウムまたはテクネチウムより僅かに過剰に存在している場合に37℃、3日間の後、グアニンまたはグアノシンで変換される、請求項19−28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
図16に示された化合物。
【請求項31】
錯体が図16に示された6、10、11、12、13および18である、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
X1および/またはX2および/またはX3が標的部分に結合されている、請求項19−31のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
該標的部分がボンベシン、ニューロテンシン、ソマトスタチン、グルコサミン、ヌクレオシド、核内局在配列ペプチド(NLS-ペプチド)、オリゴヌクレオチド、アントラサイクリン、アクリジンおよび他のインターカレーターのような核標的分子、およびそれらの誘導体または類縁体からなる群から選択される、請求項32の化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−509047(P2007−509047A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534727(P2006−534727)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011953
【国際公開番号】WO2005/039648
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501393966)ウニヴェルジテート・チューリッヒ (13)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011953
【国際公開番号】WO2005/039648
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501393966)ウニヴェルジテート・チューリッヒ (13)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
【Fターム(参考)】
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