説明

放射線治療装置、放射線治療システム、及び放射線治療装置制御方法

【課題】治療計画の承認の有無の判断に加え、患者の診断情報を基にその患者への放射線治療の可否を判断する放射線治療装置を提供する。
【解決手段】患者の放射線治療の実施条件を含む治療計画を予め記憶しておく治療計画記憶部101と、患者の所見及び患者の生化学検査情報を含む診断情報を予め記憶しておく診断情報記憶部102と、診断情報を参照し、患者の生科学検査情報が所定値を超えているか否かを判定する検査結果判定部107と、生化学検査情報が所定値を超えている場合に警告を報知する報知部108と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の患部に対し放射線を照射し治療を行う放射線治療装置に関する。さらに詳しくは、治療計画を基に治療を行う放射線治療装置、放射線治療システム、及び放射線治療装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線治療は被験者(患者)の治療対象外の正常組織が破壊されないように、対象部位の治療に必要な放射線量を複数の角度に分割し、数日間にわたって照射を繰り返すことで行われている。
【0003】
具体的には、複数の角度に分割された照射データ(架台角度、放射線量、絞り開度等)などの放射線治療の実施条件が、治療計画情報として治療計画装置に保存されており、治療実施時にこの治療計画情報を医師が選択し、放射線治療装置に送信することで、照射パラメータの設定を行っていた。
【0004】
また、この照射パラメータの設定としては、治療日時、患者氏名、患者ID、治療部位ID等のデータが、HIS(Hospital Information System)などから取得され、前記治療計画装置に予め登録し、上記治療計画に従って治療計画情報を選択し、放射線治療装置へのデータ送信を行う技術(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
近年では、放射線治療装置による誤照射を未然に防ぐために、治療計画データを放射線治療装置へ送信する前に、治療計画情報の承認が行われている。この承認は治療計画を立てた医師等の承認者が治療計画情報を確認し、正しい治療計画であれば承認を確定することで行われていた。
【0006】
そして、放射線治療装置は治療計画データが承認されているか否かを判断し、承認がある場合に放射線治療を開始し、承認がない場合にはアラートを報知するなどを行うのみで、実際の放射線治療を開始しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−253565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、放射線治療において誤照射を防ぎ安全性を確保するうえで、治療計画データの承認状態の確認と共に、患者が現在治療を行ってよい状態か否かといった診断情報を確認することが重要である。
【0009】
従来は、この診断情報の確認は、治療を行う予定の患者についてRIS(Radiology Information System:放射線治療システム)に登録された患者の診断情報をRIS端末で確認したり、ホワイトボードへ患者の診断情報を書き込み、医師、技師、及び看護師のそれぞれがホワイトボードを参照することで確認したり、朝礼などにおいて医師、技師、及び看護師のそれぞれが口頭で患者の診断情報を伝えたりすることで、情報の共有を行っていた。
【0010】
しかし、患者の診断情報を医師、技師、及び看護師のそれぞれの記憶に頼った場合には、治療を行ってはいけない状態と診断されている患者が誤って放射線治療に来てしまった場合、その患者に放射線治療を実施してはいけないことを気が付かずにそのまま放射線治療を行ってしまう誤照射の危険がある。また、患者が来てから、都度その患者の診断情報を確認していたのでは、放射線治療の可否を判断するための作業が煩雑となり、治療全体に費やす時間が増加してしまう。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、治療計画の承認の有無の判断に加え、患者の診断情報を基に、その患者への放射線治療を実施してよいか否かを自動的に判断する放射線治療装置、放射線治療システム、及び放射線治療装置制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線治療装置は、患者の放射線治療の実施条件を含む治療計画を予め記憶しておく治療計画記憶手段と、前記患者の所見及び前記患者の生化学検査情報を含む診断情報を予め記憶しておく診断情報記憶手段と、前記診断情報を参照し、前記患者の生科学検査情報が所定値を超えているか否かを判定する検査結果判定手段と、前記生化学検査情報が所定値を超えている場合に警告を報知する報知手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
請求項10に記載の放射線治療システムは、患者の放射線治療の実施条件を含む治療計画を予め記憶しておく治療計画装置と、前記患者の所見及び前記患者の生化学検査情報を含む診断情報を予め記憶しておく診断情報記憶装置と、前記患者に対し放射線治療を行った回数などの治療情報を記憶しておく治療情報記憶装置と、放射線を照射する放射線治療装置と、前記放射線治療装置に前記治療計画を出力する照合記憶装置と、を備えた放射線治療システムであって、前記照合記憶装置は、前記治療計画装置から前記患者の治療計画を取得する治療計画取得手段と、前記診断情報記憶装置を参照し、前記患者の生科学検査情報が所定値を超えているか否かを判断する検査結果判定手段と、前記生化学検査情報が所定値を超えている場合に警告を報知する報知手段と、を備え、前記放射線治療装置は、前記照合記憶装置から入力された治療計画を基に放射線の照射を行う、ことを特徴とするものである。
【0014】
請求項11に記載の放射線治療装置制御方法は、患者の放射線治療の実施条件を含む治療計画を予め記憶しておく治療計画記憶段階と、前記患者の所見及び前記患者の生化学検査情報を含む診断情報を予め記憶しておく診断情報記憶段階と、前記診断情報を参照し、前記患者の生科学検査情報が所定値を超えているか否かを判定する検査結果判定段階と、前記生化学検査情報が所定値を超えている場合に警告を報知する報知段階と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の放射線治療装置、請求項10に記載の放射線治療システム、及び請求項11に記載の放射線治療装置制御方法では、患者の診断情報に基づいてその患者への放射線治療の可否を判定する。これにより、患者の診断情報を基に、その患者への放射線治療を実施してよいか否かを自動的に判断することができるため、患者の状態による放射線治療の可否の判断ができ、容易に放射線治療の可否を判断することが可能となるとともに、誤照射の危険を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1及び第2の実施形態に係る放射線治療装置のブロック図
【図2】本実施形態に係る放射線治療装置の患者への放射線治療の可否の判定及びその患者への放射線治療の実施のフローチャート
【図3】第3の実施形態に係る放射線治療システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係る放射線治療装置について説明する。図1は本発明に係る放射線治療装置の機能を表すブロック図である。ただし、一点鎖線で表わされる統括制御部111に含まれる判定停止部113は、本実施形態における放射線治療装置では備えておらず第2の実施形態で説明する。
【0018】
図1の点線で囲われている部分が放射線治療装置100である。放射線治療装置100は、図1に示すように外部の医用情報端末001とネットワークを介してデータの送受信が可能に接続されている。
【0019】
医用情報端末001は、医師等が使用するPCなどのコンピュータである。医用情報端末001を使用して、医師や検査技師は、放射線治療装置100に、患者の生化学検査の結果及び患者が放射線治療を受けられるか否かといった所見を含む診断情報、医師が作成した患者の治療計画及びその患者の識別情報を入力する。生化学検査とは、患者の血液を生化学的に分析し、特にない造詣の異常をチェックする検査である。本実施形態では、生化学検査として、一般的に血液化学検査と呼ばれる検査も含むものとする。生化学検査には、具体的には、白血球数を測定する検査などがある。ここで、放射線治療が受けられるか否かの情報は、患者の診断情報に対し放射線治療不可のフラグを立てるなどしておくことで可能である。
【0020】
また、医師は、医用情報端末001を用いて放射線治療装置100に治療計画への承認の情報を入力する。さらに、来院した患者の放射線治療の受付を行ったときに、看護師などの操作者は医用情報端末001を用いて受付した患者の識別情報及びその患者の受付が行われたという情報を放射線治療装置100へ入力する。さらに、医師や検査技師などは実際に放射線治療を行うに際し、放射線治療開始前に医用情報端末001を用いて放射線治療を開始する旨の情報を放射線治療装置100へ入力する。
【0021】
ここで、図1では医用情報端末001は1台しか記載していないが、実際には複数台の医用情報端末001が放射線治療装置100と接続されていてもよく、上述した入力を行う場合に異なる医用情報端末001を使用してもよい。たとえば、受付の情報を入力するための医用情報端末001は病院の入り口付近に配置された受付に設けられていることなどが多い。以下では、医用情報端末001を操作する医師、検査技師、及び看護師をまとめて単に「操作者」とよぶ。この操作者は、医用情報端末001の配置されている場所などに応じて適宜、その医用情報端末001の操作を担当する者を指すものとする。
【0022】
統括制御部111は、CPU及びメモリなどで構成されている。統括制御部111は、以下で説明する各機能部の動作タイミングの制御や、各機能部間のデータの受け渡しの制御を行う。図1における点線矢印が統括制御部111と各機能部間のデータの流れを表している。ここで、実際には各機能部間のデータの受け渡しや命令の入力は、統括制御部111を介して行われるが、以下の説明では都合上、各機能部間で直接データの受け渡しや命令の入力を行っているように説明している場合がある。
【0023】
治療計画記憶部101は、ハードディスクなどの記憶媒体を有して構成されている。統括制御部111は、操作者により医用情報端末001から入力された患者の治療計画に対し識別情報を付加し、さらにその患者の識別情報に対応させて、治療計画記憶部101に記憶させる。この治療計画記憶部101が本発明における「治療計画記憶手段」にあたる。
【0024】
診断情報記憶部102は、ハードディスクなどの記憶媒体を有して構成されている。統括制御部111は、医師や検査技師などにより医用情報端末001から入力された診断情報を診断情報記憶部102に記憶させる。この診断情報記憶部102が本発明における「診断情報記憶手段」にあたる。
【0025】
承認受付部103は、メモリなどの記憶領域を有している。承認受付部103は、治療計画に対する承認の情報及びその承認を受けた治療計画の識別情報の入力を医用情報端末001から受ける。そして、承認受付部103は、治療計画の識別情報とその治療計画に対する承認の情報を対応させて記憶する。この承認受付部103が本発明における「承認受付手段」にあたる。
【0026】
承認判定部104は、患者の受付が行われた又は患者の放射線治療が開始されるという情報の入力を患者の識別情報と共に医用情報端末001から受ける。そして、承認判定部104は、入力された患者の識別情報を基に治療計画記憶部101を参照し、入力された患者の治療計画の識別情報を取得する。
【0027】
次に、承認判定部104は、治療計画の識別情報を基に承認受付部103を参照し、入力された識別情報を有する患者の治療計画に対し既に承認がなされているか否かを判定する。
【0028】
治療計画に対し承認がなされていないと判定した場合には、承認判定部104は、報知部108に対し患者の識別情報と共に承認がなされていない旨の通知(治療不可の通知)を出力する。
【0029】
治療計画に対し承認がなされていると判定した場合には、放射線開始時であれば、承認判定部104は、患者の識別情報と共に治療計画出力部109に対し承認がなされている旨の通知(治療可の通知)を出力する。これに対し、受付時である場合には承認判定部104は治療計画出力部109への通知を行わない。この承認判定部104が本発明における「承認判定手段」にあたる。
【0030】
計画判定部105は、メモリなどの記憶領域を有している。計画判定部105は、自己の記憶領域に1回の治療で照射する放射線量の閾値を記憶している。また、計画判定部105は、後述する放射線治療部110からの患者への治療実施の入力を受けてその回数を記憶していくことで、過去に実施された放射線治療の回数を患者の識別情報に対応させて記憶している。
【0031】
計画判定部105は、患者の受付が行われた又は患者の治療が開始されるという情報の入力を患者の識別情報と共に医用情報端末001から受ける。そして、計画判定部105は、入力された患者の識別情報を基に治療計画記憶部101を参照し、入力された識別情報を有する患者の治療計画を取得する。
【0032】
そして、計画判定部105は、患者毎に自己が記憶している過去に実施された放射線治療の回数が治療計画に記載されている放射線治療の回数に達しているか否かを判断する。記憶している回数が治療計画に記載されている回数に達している場合には、計画判定部105は、報知部108に対し治療回数を超えている旨の通知(治療不可の通知)を出力する。
【0033】
また、記憶している回数が治療計画に記載されている回数に達していない場合には、計画判定部105は、患者毎に治療計画に記載されている今回の治療における放射線量が自己の記憶している放射線量の閾値を超えているか否か判断する。今回の治療における放射線量が閾値を超えている場合には、計画判定部105は、報知部108に対し放射線量が多すぎる旨の通知(治療不可の通知)を出力する。
【0034】
そして、治療計画に記載されている回数に放射線治療の回数が達しておらず、且つ今回の治療における放射線量が閾値を超えていない場合には、放射線開始時点であれば、計画判定部105は、治療計画出力部109に対し治療計画に異常がない旨(治療可の通知)の通知を出力する。これに対し、受付時である場合には計画判定部105は治療計画出力部109への通知を行わない。この計画判定部105が本発明における「計画判定手段」にあたる。
【0035】
治療可否判定部106は、患者の受付が行われた又は患者の治療が開始されるという情報の入力を患者の識別情報と共に医用情報端末001から受ける。そして、治療可否判定部106は、入力された患者の識別情報を基に診断情報記憶部102を参照し、入力された識別情報を有する患者が放射線治療を受けられるか否かを判定する。ここで、放射線治療を受けられるか否かの判定は、上述したように患者の診断情報に「放射線治療不可」を表すフラグが立っているか否かで判断できる。
【0036】
その患者が放射線治療を受けることができないと判定した場合には、治療可否判定部106は、報知部108に対し患者の識別情報と共にその患者が放射線治療を受けられない旨の通知(治療不可の通知)を出力する。
【0037】
その患者が放射線治療を受けることができると判定した場合には、放射線開始時点であれば、治療可否判定部106は、治療計画出力部109に対し患者の識別情報と共にその患者が放射線治療を受けられる旨の通知(治療可の通知)を出力する。これに対し、受付時である場合には治療可否判定部106は治療計画出力部109への通知を行わない。この治療可否判定部106が本発明における「治療可否判定手段」にあたる。
【0038】
検査結果判定部107は、ハードディスクやメモリなどで構成される記憶領域を有している。そして、検査結果判定部107は、自己の記憶領域に生化学検査で得られた検査結果における治療を行える許容値(上限値及び下限値)を記憶している。この許容値が本発明における「所定値」にあたる。例えば、生化学検査において得られる白血球数の上限値及び下限値を記憶している。本実施形態では、白血球数の上限値として9700/μl、下限値として3500/μlを記憶している。
【0039】
検査結果判定部107は、患者の受付が行われた又は患者の治療が開始されるという情報の入力を患者の識別情報と共に医用情報端末001から受ける。そして、検査結果判定部107は、入力された患者の識別情報を基に診断情報記憶部102を参照し、入力された識別情報を有する患者の生化学検査の検査結果を取得する。検査結果判定部107は、自己が記憶している許容値と取得した検査結果とを比較し、検査結果が許容値を超えている(上限値を上回る又は下限値を下回る)か否かを判定する。
【0040】
その患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えていると判定した場合には、検査結果判定部107は、報知部108に対し患者の識別情報と共にその患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えている旨の通知(治療不可の通知)を出力する。
【0041】
また、その患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えていないと判定した場合には、放射線開始時点であれば、検査結果判定部107は、治療計画出力部109に対し患者の識別情報と共にその患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えていない旨の通知(治療可の通知)を出力する。この検査結果判定部107が本発明における「検査結果判定手段」にあたる。
【0042】
報知部108は、患者の治療計画に承認がなされていない場合には、承認判定部104から治療計画に承認がない旨の通知の入力を受ける。報知部108は、承認判定部104からの通知を受けて、医用情報端末001に患者の治療計画に承認がなされていない旨の警告を送信し、医用情報端末001のモニタに表示させるなどして医用情報端末001を操作する操作者に対し患者の治療計画に承認がなされていないことを知らせる。
【0043】
また、報知部108は、今回行われる治療が治療計画に設定された回数を超えていたり、治療計画に設定された放射線量が閾値を超えていたりといった治療計画に異常があった場合には、計画判定部105から治療計画に異常が有る旨の通知の入力を受ける。報知部108は、計画判定部105からの通知を受けて、医用情報端末001に患者の治療計画に異常がある旨の警告を送信し、医用情報端末001を操作する操作者に対し報知する。
【0044】
また、報知部108は、患者が放射線治療を受けられないと診断されている場合には、治療可否判定部106から放射線治療不可の旨の通知の入力を受ける。報知部108は、治療可否判定部106からの通知を受けて、医用情報端末001に患者が放射線治療を受けられない旨の警告を送信し、医用情報端末001を操作する操作者に対し報知する。
【0045】
また、報知部108は、患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えている場合には、検査結果判定部107からその患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えている旨の通知の入力を受ける。報知部108は、検査結果判定部107からの通知を受けて、医用情報端末001に患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えている旨の警告を送信し、医用情報端末001を操作する操作者に対し報知する。この報知部108が本発明における「報知手段」にあたる。
【0046】
ここで、本実施形態では、報知部108が報知を行う医用情報端末001は、患者の受付が行われたという情報を入力した端末、又は患者の治療が開始されるという情報を入力した端末である。ただし、この報知先の医用情報端末001は、放射線治療装置100に接続されている端末であればどの端末に情報を送信してもよく、また複数の医用情報端末001に対し情報を送信する構成でもよい。
【0047】
医用情報端末001に表示された警告などを参照した操作者(例えば受付にいる看護師)は、その警告に対する対処を行う。例えば、治療計画に対し承認がない場合、その治療計画を作成した医師に対し承認を行ってくれる旨の通知を行う。この通知を受けて、医師は医用情報端末001を用いてその治療計画に対する承認の入力を行う。この様に、警告が報知された時点でその警告への対処を迅速に実施することが可能である。また、医用情報端末001を参照して患者に対し放射線治療が行えない旨の情報を受けて、操作者が医師などにその患者への放射線治療の可否を確認し、放射線治療が行えないと確定した場合には、その日にはその患者への放射線治療は行えないため、それ以降のその患者への放射線治療の準備などの作業を省略することができる。
【0048】
また、医用情報端末001に対して警告の報知が行われた場合、その警告に対する対処を完了させたもしくは警告を確認した(すなわち、単に判定をスキップする)旨の入力を操作者が医用情報端末001から放射線治療装置100に対して行い、この入力がなければ放射線治療装置100が動作しないように統括制御部111が制御する構成にしてもよい。この場合、操作者の入力時においてパスワードを求めることで、誤操作の危険が軽減されより安全性が向上できる。
【0049】
治療計画出力部109は、承認判定部104からの治療計画の承認有りの通知、計画判定部105からの治療計画に異常なしの通知、治療可否判定部106からの患者への放射線治療可能の通知、及び検査結果判定部107からの患者の検査結果が許容値内にあることの通知を受ける。この通知は患者受付時にはなされず、放射線治療開始時にのみ行われる。さらに、治療計画出力部109は、統括制御部111から患者の識別情報を取得する。ここで、治療計画出力部109は、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、又は検査結果判定部107のいずれかから患者の識別情報を取得してもよい。治療計画出力部109は、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、及び検査結果判定部107からの治療可の通知をすべて受けると、治療計画記憶部101を参照し、患者の識別情報に対応する治療計画の情報を取得する。
【0050】
治療計画出力部109は、取得した治療計画の情報を放射線治療部110に出力する。この治療計画出力部109が本発明における「治療計画出力手段」にあたる。
【0051】
放射線治療部110は、操作者からの治療開始の入力を受けて、治療計画出力部109から入力された治療計画に基づいて、今回の治療に対応する放射線の照射を行う。ただし実際には、放射線治療部110は操作者によるユーザインタフェース112を用いた放射線治療の開始命令を受けてから放射線の照射を行う。放射線治療部110は、放射線治療を行った場合には、その患者の識別情報と放射線治療を行った旨の通知を計画判定部105に出力する。この放射線治療部110が本発明における「放射線治療手段」にあたる。
【0052】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る放射線治療装置100の患者への放射線治療の可否の判定及びその患者への放射線治療の実施の流れについて説明する。ここで、図2は本実施形態に係る放射線治療装置100の患者への放射線治療の可否の判定及びその患者への放射線治療の実施のフローチャートである。
【0053】
図2のフローの前提条件として、各医用情報端末001から、治療計画記憶部101には患者の治療計画が、診断情報記憶部102には患者の診断情報が入力され、その情報が記憶されている。さらに、治療計画への承認が行われている場合には、医用情報端末001から承認受付部103に対し治療計画を承認した旨の情報の入力が行われ、その情報が記憶されている。
【0054】
ステップS001:操作者は、患者の放射線治療の受け付けを行い、医用情報端末001を用いて、患者の受け付けを行った旨の入力を行う。このとき、医用情報端末001から患者の識別情報も出力される。
【0055】
ステップS002:承認判定部104は、医用情報端末001から患者受付の情報の入力を受けて、入力された患者の識別情報を基に治療計画記憶部101から患者の識別情報に対応する治療計画の識別情報を取得する。そして、承認判定部104は、取得した治療計画の識別情報を基に承認受付部103を参照し、その治療計画に承認がなされているか否かを判定する。治療計画に承認がないと判定した場合(Noの場合)にはステップS003へ進む。治療計画に承認があると判定した場合(Yesの場合)にはステップS004へ進む。
【0056】
ステップS003:報知部108は、承認判定部104から治療計画に承認がない旨の通知を受けて、医用情報端末001に対し治療計画に承認がない旨の通知を送信し、操作者に報知する。
【0057】
ステップS004:計画判定部105は、医用情報端末001から患者受付の情報の入力を受けて、入力された患者の識別情報を基に治療計画記憶部101から患者の識別情報に対応する治療計画を取得する。そして、計画判定部105は、自己が記憶している治療回数に治療計画に記載されている治療回数に一致しているか、治療計画に記載された放射線量が記憶している放射線量の閾値を超えていないかを確認し、その治療計画に異常が有るか否かを判定する。治療計画に異常が有ると判定した場合(Noの場合)にはステップS005へ進む。治療計画に異常がないと判定した場合(Yesの場合)にはステップS006へ進む。
【0058】
ステップS005:報知部108は、計画判定部105から治療計画に異常がある旨の通知を受けて、医用情報端末001に対し治療計画に異常が有る旨の通知を送信し、操作者に報知する。
【0059】
ステップS006:治療可否判定部106は、医用情報端末001から患者受付の情報の入力を受けて、入力された患者の識別情報を基に診断情報記憶部102から患者の識別情報に対応する患者の診断情報を取得する。そして、治療可否判定部106は、取得した診断情報を参照し患者の放射線治療が可能か否かを判定する。患者の放射線治療が不可能と判定した場合(Noの場合)にはステップS007へ進む。患者の放射線治療が可能と判定した場合(Yesの場合)にはステップS008へ進む。
【0060】
ステップS007:報知部108は、治療可否判定部106から患者の放射線治療が不可能である旨の通知を受けて、医用情報端末001に対し患者が放射線治療を受けることができない旨の通知を送信し、操作者に報知する。
【0061】
ステップS008:検査結果判定部107は、医用情報端末001から患者受付の情報の入力を受けて、入力された患者の識別情報を基に診断情報記憶部102から患者の識別情報に対応する患者の生化学検査の検査結果を取得する。そして、治療可否判定部106は、取得した検査結果が記憶している許容値を超えているか否かを判定する。検査結果が許容値を超えていると判定した場合(Noの場合)にはステップS009へ進む。検査結果が許容値を超えていないと判定した場合(Yesの場合)にはステップS010へ進む。
【0062】
ステップS009:報知部108は、検査結果判定部107から検査結果が許容値を超えている旨の通知を受けて、医用情報端末001に対し患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えている旨の通知を送信し、操作者に報知する。
【0063】
ステップS010:統括制御部111は、医用情報端末001からの入力を基に、患者の受付時か放射線治療開始時かを判断する。患者受付時(Noの場合)であれば、ステップS011に進む。放射線治療開始時(Yesの場合)であれば、ステップS012に進む。
【0064】
ステップS011:操作者は、医用情報端末001を用いて、放射線治療を開始するという情報を放射線治療装置100に対し入力する。その後、ステップS002へ戻る。
【0065】
ステップS012:治療計画出力部109は、承認判定部104からの治療計画の承認有りの通知、計画判定部105からの治療計画に異常なしの通知、治療可否判定部106からの患者への放射線治療可能の通知、及び検査結果判定部107からの患者の検査結果が許容値内にあることの通知を全て受けたかを確認し、何らかの警告の報知が行われたか否かを判定する。上記全ての通知を受けている場合には、治療計画出力部109はいずれの警告の報知も行われていないと判定する(Yesの場合)。この場合、ステップS013へ進む。上記の通知のうちいずれかの通知を受けていない場合には、治療計画出力部109は警告の報知が行われたと判定する(Noの場合)。この場合、統括制御部111は放射線治療装置100の動作を終了する。
【0066】
ステップS013:治療計画出力部109は、治療計画記憶部101から患者の治療計画を取得し、その取得した治療計画を放射線治療部110へ出力する。
【0067】
ステップS014:操作者は、治療計画が放射線治療部110へ入力されているのを確認して、ユーザインタフェース112を用いて放射線治療の開始命令を放射線治療部110へ入力する。
【0068】
ステップS015:放射線治療部110は、入力された治療計画を基に放射線を照射する。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態に係る放射線治療装置は、患者を受け付けたとき及び放射線治療を行う直前に、患者の治療計画及び患者の診断情報を基に、患者への放射線治療の可否を判定する構成である。
【0070】
これにより、治療計画の承認の有無の判断に加え、患者の診断情報を基に、その患者への放射線治療を実施してよいか否かを自動的に判断することができるため、治療計画の正確性だけでなく、患者の状態による放射線治療の可否の判断ができ、容易に放射線治療の可否を判断することが可能となるとともに、誤照射の危険を軽減することが可能となる。
【0071】
また、2度のチェックを行うため、より確実な放射線治療の可否判断が行え、誤照射の危険をより軽減することができる。また、患者に対し放射線治療が行えないことが受付時に判明するため、それ以降の病院スタッフの作業を省くことが可能となる。
【0072】
ここで、本実施形態では、上述のように放射線治療の可否判断の確実性を高めるために2度のチェックを行っているが、確実性の要求が低ければこれは一度でもよい。例えば、放射線治療開始時にのみ各種判定を行う構成にしてもよい。このように、一度だけのチェックを行う構成にした場合、患者の放射線治療の全体に係る時間を短縮することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態では、治療計画出力部109を設けて、警告の報知がない場合には自動的に放射線治療部110へ治療計画を出力する構成にしているが、この治療計画出力部109は設けなくてもよい。その場合、操作者が警告の報知がないことを確認して、統括制御部111に対し、治療計画記憶部101に記憶されている患者の治療計画の放射線治療部110への出力を指示する構成にすればよい。
【0074】
さらに、以上の説明では、計画判定部105を設けて、治療計画に異常があるか否かの判定を行ったが、この計画判定部105は設けなくても、治療計画の承認の有無、及び患者の診断情報のチェックは行え、誤照射の危険を回避することは十分に可能である。この様に計画判定部105を省いた構成の場合、報知部108は治療計画に異常がある旨の警告の報知を行わず、また、治療計画出力部109は計画判定部105からの通知の入力を待たずに治療計画の出力を行うことになる。
【0075】
〔第2の実施形態〕
以下、この発明の第2の実施形態に係る放射線治療装置について説明する。本実施形態に係る放射線治療装置は、操作者による各機能部で行われる判定のうちのいずれかの選択を受けて、その判定動作を停止させる構成であることが第1の実施形態と異なるものである。そこで、以下では判定動作の停止を行う構成を主に説明する。本実施形態に係る放射線治療装置のブロック図も図1に表わされる機能ブロック図と同様である。以下の説明では、第1の実施形態と同一の符号を付された機能部は特に説明のない限り同じ機能を有するものとする。
【0076】
以下では、承認判定部104による治療計画に承認がないという判定、計画判定部105による治療計画に異常があるという判定、治療可否判定部106による患者が放射線治療を受けられないという判定、及び検査結果判定部107による検査結果が許容値内にないという判定を、治療可の判定という。また、それぞれの逆の判定を治療不可の判定という。
【0077】
本実施形態に係る放射線治療装置100は、第1の実施形態に係る放射線治療装置に加えて判定停止部113を備えている。
【0078】
統括制御部111は、医用情報端末001から患者の放射線治療を受け付けた旨の情報の入力があった場合には、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、及び検査結果判定部107に対しそれぞれの判定を実行させる。そして、各機能部の治療不可の判定に基づき警告の報知が必要な場合には、報知部108に警告の報知を実施させる。
【0079】
そして、患者受付時に医用情報端末001に表示された警告などを参照した操作者(例えば、受付にいる看護師など。)は、その警告に対する対処を行う。例えば、治療計画に対し承認がない場合、その治療計画を作成した医師に対し承認を行ってくれる旨の通知を行う。この通知を受けて、医師は医用情報端末001を用いてその治療計画に対する承認の入力を行う。また、その患者に対する放射線治療が行えないという警告を受けた場合には、その患者の担当医などに対し実際に患者に対する放射線治療が行えないか否かを確認する。そこで、担当医などが患者を診察し、現在の患者の状態が治療を行える状態だと診断した場合、医用情報端末001の操作者はその診断結果を受けて、放射線治療装置100に対し、治療可否判定部106における患者が放射線治療を受けられるか否かの判定を行わない指示を入力する。また、担当医などに患者の状態を相談したときに、その担当医が治療を行うときに患者を診察し判断を行うといった通知を受けた場合にも、放射線治療装置100に対し、治療可否判定部106における患者が放射線治療を受けられるか否かの判定を行わない指示を入力してもよい。
【0080】
この入力は例えば以下のように行われる。報知部108が警告を医用情報端末001に対し警告を報知するときに、医用情報端末001のモニタ等にこの判定を行わないようにするか否かを選択できるダイアログボックスを表示させる。そして、操作者はそのダイアログボックスを使用して判定を行わない指示の入力を行う。
【0081】
以上では、治療可否判定部106による患者が放射線治療を受けられるか否かの判定について説明したが、他の判定についても同様であり、治療不可の判定に基づく警告に対する対処を実施し、治療開始時に再度の判定が必要ないと判断される場合にはその判定を行わない指示を、操作者は医用情報端末001を用いて放射線治療装置100に入力する。
【0082】
判定停止部113は、医用情報端末001からの各種判定を行わない指示の入力を受ける。判定停止部113は、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、及び検査結果判定部107のうちの入力された種類の判定を行う機能部に対し、判定を行わないよう制御する。
【0083】
判定停止部113は、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、及び検査結果判定部107のうち、判定停止部113から判定を行わないように制御された機能部は、医用情報端末001から患者の治療開始の通知の入力を受けても判定を行わず治療計画出力部109へ治療可の判定の出力を行う。これに対し、判定停止部113から判定を行わないよう制御されていない機能部は、判定を行い、報知部108への治療不可の判定の出力又は治療計画出力部109への治療可の判定の出力を行う。この判定停止部113が本発明における「判定停止手段」にあたる。
【0084】
また、以上で説明した「判定を行わない指示の入力」を第1の実施形態において説明し「警告に対する対処を完了させた旨の入力」及び「警告を確認した(すなわち、単に判定をスキップする)旨の入力」に対応させてもよい。この場合、判定停止部113は、警告を確認した旨の入力を基に各機能部に判定を行わせるか否かの制御を行う。具体的には、警告を確認した旨の入力の場合には判定を行わせないよう制御する。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態に係る放射線治療装置は受付時に判定を行い、治療不可の判定がなされた判定に対する操作者による判定停止の入力を受けて治療開始時の判定を停止する構成である。
【0086】
これにより、警告に基づいて対処を行ったが、記憶させてあるデータの内容の変更まで行えない情報に関して、2回目のチェックの時に判定を行わずに済ませることができ、迅速な放射線治療を行うことが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では患者の受付時には判定を行い、治療不可の判定となった判定に対してのみ停止を行える構成にしたが、この判定の停止の制御は他の構成にしてもよい。たとえば、いつの時点でも操作者の選択に基づいてどの判定も停止することが可能な構成にしてもよい。具体的には、操作者が医用情報端末001を用いて判定停止部113は、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、及び検査結果判定部107のうちのいずれか一つ又は複数を選択し、その選択を受けて判定停止部113が選択された機能部における判定を停止する構成となる。
【0088】
このような構成にすることで、自由に判定の停止の制御を行うことができ、病院の運用に合わせて放射線治療装置100による放射線治療の可否の判定の種類を調整することが可能となる。
【0089】
さらに、統括制御部111は、各判定部の動作を受けて、判定を行ったか又は判定を行わなかったか、その時の患者情報、判定機能部の種類、操作者、時間、警告表示の有無などを他の記憶部(不図示)に記憶させる構成にしてもよい。この様な構成にすることで、後にどのような判定が行われ、どのような警告が出されたのかを確認することができ、放射線治療の安全性を向上させることが可能となる。
【0090】
〔第3の実施形態〕
以下、この発明の第3の実施形態に係る放射線治療システムについて説明する。本実施形態に係る放射線治療システムは、第1及び第2の放射線治療装置の中の機能部を複数の装置に配置した構成である。図3は本実施形態に係る放射線治療システムの構成図である。以下の説明では、第1の実施形態と同一の符号を付された機能部は特に説明のない限り同じ機能を有するものとする。
【0091】
図3に示すように、本実施形態に係る放射線治療システムは、医用情報端末001、治療計画装置002、RIS003、HIS004、及びライナック005のそれぞれと照合記憶装置200とがネットワークでデータの送受信可能に接続されている。ここで、図3では、説明を分かり易くするために、医用情報端末001、治療計画装置002、RIS003、及びHIS004が接続されている患者の放射線治療の可否の判定で用いられるネットワークと、ライナック005が接続されている治療計画をダウンロードするネットワークとを異なるネットワークとして表わしているが、これは同じネットワークでもよい。
【0092】
治療計画装置002は、医師が治療計画を作成し、作成した治療計画を記憶しておくための装置であり、第1の実施形態における治療計画記憶部101の機能を有している。治療計画装置002には、複数の患者の治療計画及びその治療計画の識別情報が患者の識別情報に対応させて予め記憶されている。この治療計画装置002が本発明における「治療計画装置」にあたる。
【0093】
RIS003は、放射線科の医師により行われた患者の診断の結果である診断情報を記憶しておく装置であり、第1の実施形態における診断情報記憶部102にあたる。RIS003には、複数の患者の診断情報が患者の識別情報に対応させて予め記憶されている。このRIS003が本発明における「診断情報記憶装置」にあたる。
【0094】
HIS004は、患者に対し実施した放射線治療の回数や、どのような治療を行ったか等という治療情報を記憶しておく装置であり、第1の実施形態における計画判定部105の一部の機能を有する装置である。HIS004には、患者に対し過去に実施した放射線治療の回数が患者の識別情報に対応させて予め記憶されている。このHIS004が本発明における「治療情報記憶装置」にあたる。
【0095】
ライナック005は、放射線を照射して放射線治療を行う装置である。ライナック005は、第1及び第2の実施形態における放射線治療部110にあたる。このライナック005が本発明における「放射線治療装置」にあたる。
【0096】
照合記憶装置200は、承認受付部103、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、検査結果判定部107、報知部108、治療計画出力部109、統括制御部111、及びユーザインタフェース112を備えている。この照合記憶装置200が本発明における「照合記憶装置」にあたる。
【0097】
承認受付部103は、医用情報端末001から治療計画の識別情報と共にその識別情報を有する治療計画に対する承認の入力を受ける。
【0098】
承認判定部104は、医用情報端末001から患者受付の通知又は放射線治療開始の通知の入力を患者の識別情報と共に受ける。そして、承認判定部104は、治療計画装置002から患者の識別情報に対応する治療計画の識別情報を取得する。次に、承認判定部104は、取得した治療計画の識別情報を基に承認判定部104を参照し、その識別情報の治療計画に承認がなされているか否かを判定する。その後、承認判定部104は、承認がある場合には治療計画出力部109に判定結果を出力し、承認がない場合には報知部108に判定結果を出力する。
【0099】
計画判定部105は、医用情報端末001から患者受付の通知又は放射線治療開始の通知の入力を患者の識別情報と共に受ける。そして、計画判定部105は、治療計画装置002から患者の識別情報に対応する治療計画の情報を取得する。また、計画判定部105は、HIS004から識別情報に対応する患者の実施した放射線治療の回数を取得する。そして、計画判定部105は、取得した治療計画の情報を参照し、その識別情報の治療計画に記載された放射線治療の回数に、HIS004から取得した治療回数が達しているか否かを判定する。さらに、計画判定部105は、取得した治療計画に記載された今回の治療の放射線量が、自己が記憶している放射線量の閾値を超えているか否かを判定する。これにより、計画判定部105は、治療計画に異常があるか否かを判定する。その後、計画判定部105は、異常がない場合には治療計画出力部109に判定結果を出力し、異常がある場合には報知部108に判定結果を出力する。
【0100】
治療可否判定部106は、医用情報端末001から患者受付の通知又は放射線治療開始の通知の入力を患者の識別情報と共に受ける。そして、治療可否判定部106は、RIS003に記憶されている患者の識別情報に対応する診断情報を参照し、その患者が放射線治療を受けられるか否かを判定する。その後、治療可否判定部106は、放射線治療が可能な場合には治療計画出力部109に判定結果を出力し、放射線治療が不可能な場合には報知部108に判定結果を出力する。
【0101】
検査結果判定部107は、医用情報端末001から患者受付の通知又は放射線治療開始の通知の入力を患者の識別情報と共に受ける。そして、検査結果判定部107は、RIS003に記憶されている患者の識別情報に対応する診断情報からその患者の生化学検査の検査結果を取得する。そして、検査結果判定部107は、取得した検査結果と自己が記憶している許容値とを比較し、その患者の生化学検査の検査結果が許容値を超えているか否かを判定する。その後、検査結果判定部107は、許容値を超えていない場合には治療計画出力部109に判定結果を出力し、許容値を超えている場合には報知部108に判定結果を出力する。
【0102】
報知部108は、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、及び検査結果判定部107のいずれか一つ又は複数から判定結果を受けて、医用情報端末001に警告の報知を行う。
【0103】
治療計画出力部109は、承認判定部104、計画判定部105、治療可否判定部106、及び検査結果判定部107のすべてから判定結果を受けて、ライナック005に治療計画を出力する。
【0104】
以上に説明したように、本実施形態に係る放射線治療システムは、患者を受け付けたとき及び放射線治療を行う直前に、患者の治療計画及び患者の診断情報を基に、患者への放射線治療の可否を判定する構成である。
【0105】
これにより、治療計画の承認の有無の判断に加え、患者の診断情報を基に、その患者への放射線治療を実施してよいか否かを自動的に判断することができるため、治療計画の正確性だけでなく、患者の状態による放射線治療の可否の判断ができ、容易に放射線治療の可否を判断することが可能となるとともに、誤照射の危険を軽減することが可能となる。
【0106】
また、以上では第1の実施形態に対応させた構成の放射線治療システムとして説明したが、これは第2の実施形態に対応させた構成の放射線治療システムとしても動作可能である。
【符号の説明】
【0107】
001 医用情報端末
002 治療計画装置
003 RIS
004 HIS
005 ライナック
100 放射線治療装置
101 治療計画記憶部
102 診断情報記憶部
103 承認受付部
104 承認判定部
105 計画判定部
106 治療可否判定部
107 検査結果判定部
108 報知部
109 治療計画出力部
110 放射線治療部
111 統括制御部
112 ユーザインタフェース
113 判定停止部
200 照合記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の放射線治療の実施条件を含む治療計画を予め記憶しておく治療計画記憶手段と、
前記患者の所見及び前記患者の生化学検査情報を含む診断情報を予め記憶しておく診断情報記憶手段と、
前記診断情報を参照し、前記患者の生科学検査情報が所定値を超えているか否かを判定する検査結果判定手段と、
前記生化学検査情報が所定値を超えている場合に警告を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
前記治療計画への承認を受け付ける承認受付手段と、
前記治療計画に対する承認の有無を判定する承認判定手段と、
前記診断情報を参照し、前記患者に対する放射線治療が不可とされているか否かを判定する治療可否判定手段と、
前記承認が有り、前記治療不可とされておらず、及び前記生化学検査情報が所定値を超えていない場合に、前記治療計画に基づき放射線を照射する放射線治療手段と、
をさらに備え、
前記報知手段は、前記承認がない場合、又は前記放射線治療が不可とされている場合、にも警告を報知する
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線治療装置。
【請求項3】
前記承認が有り、前記治療不可とされておらず、及び前記生化学検査情報が所定値を超えていない場合に、前記放射線治療手段に前記治療計画を出力する治療計画出力手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線治療装置。
【請求項4】
前記承認判定手段、前記治療可否判定手段、及び前記検査結果判定手段は、前記患者の放射線治療の受付時及び前記患者の治療開始時のそれぞれにおいて判定を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線治療装置。
【請求項5】
前記治療開始時の判定において、前記承認が有り、前記放射線治療が不可とされておらず、及び前記生化学検査情報が所定値を超えていない場合に、前記放射線治療手段に前記治療計画を出力する治療計画出力手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の放射線治療装置。
【請求項6】
前記受付時における判定後に、前記承認判定手段、前記治療可否判定手段、及び前記検査結果判定手段のうちのいずれか一つ又はその組み合わせの選択を受けて、前記治療開始時に、前記選択された手段による判定を停止する判定停止手段をさらに備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の放射線治療装置。
【請求項7】
前記選択は、前記報知手段に警告の報知を行わせた判定手段の中からその警告後になされることを特徴とする請求項6に記載の放射線治療装置。
【請求項8】
前記患者に対する放射線治療が前記治療計画と異なる、又は前記治療計画に問題が有るか否かを判定する計画判定手段をさらに備え、
前記報知手段は、前記治療計画と異なる場合又は前記治療計画に問題がある場合にも警告を報知する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の放射線治療装置。
【請求項9】
前記計画判定手段は、少なくとも前記治療計画に記載されている照射線の放射線量が予め記憶している閾値を超えている場合に前記治療計画に問題があると判定することを特徴とする請求項8に記載の放射線治療装置。
【請求項10】
患者の放射線治療の実施条件を含む治療計画を予め記憶しておく治療計画装置と、
前記患者の所見及び前記患者の生化学検査情報を含む診断情報を予め記憶しておく診断情報記憶装置と、
前記患者に対し放射線治療を行った回数などの治療情報を記憶しておく治療情報記憶装置と、
放射線を照射する放射線治療装置と、
前記放射線治療装置に前記治療計画を出力する照合記憶装置と、
を備えた放射線治療システムであって、
前記照合記憶装置は、
前記治療計画装置から前記患者の治療計画を取得する治療計画取得手段と、
前記診断情報記憶装置を参照し、前記患者の生科学検査情報が所定値を超えているか否かを判断する検査結果判定手段と、
前記生化学検査情報が所定値を超えている場合に警告を報知する報知手段と、
を備え、
前記放射線治療装置は、前記照合記憶装置から入力された治療計画を基に放射線の照射を行う、
ことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項11】
患者の放射線治療の実施条件を含む治療計画を予め記憶しておく治療計画記憶段階と、
前記患者の所見及び前記患者の生化学検査情報を含む診断情報を予め記憶しておく診断情報記憶段階と、
前記診断情報を参照し、前記患者の生科学検査情報が所定値を超えているか否かを判定する検査結果判定段階と、
前記生化学検査情報が所定値を超えている場合に警告を報知する報知段階と、
を有することを特徴とする放射線治療装置制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−301(P2011−301A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146263(P2009−146263)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】