説明

放射線治療装置、放射線治療装置の患部追尾方法及びイメージング画像の画質向上方法

【課題】
本発明の目的は、治療放射線を確実に照射対象に照射することができる放射線照射装置および放射線治療装置における患部追尾方法およびイメージング画像の画質向上方法を提供することである。
【解決手段】
透視画像取得用の照射タイミングおよび治療用放射線の起動タイミングを制御することにより、微妙な濃淡差が確保された透視画像を取得する。これにより、治療放射線を確実に照射対象に照射して、治療時間を短縮して患者への負担軽減を図る。
また、時系列データに基づいて治療放射線照射時点での最も確からしい患部位置を予測することにより、患部に精度良く安全に放射線を照射する。
また、取得された照射対象の透視画像を特定の評価因子について基準画像と照合することにより、照射対象に対して信頼性の高い照射制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置、放射線治療装置における患部追尾方法およびイメージング画像の画質向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療においては、患者の患部(癌病巣部)に照射する放射線の照射精度を上げ、また、患部以外の正常な細胞組織に放射線が照射されるのを防ぐため、患者の呼吸等によって移動する患部を動体追尾しながら、患部に放射線を照射することが行われてきた。これにより、1回の照射治療で患部に照射される放射線量を増やし、逆に周囲にある正常な細胞組織に照射される照射量を極力減らすことができる。そして、患部に対する照射治療の回数を減らすことができる。その結果、患者の身体的負担を軽減できるほか、正常な細胞組織に対する放射線照射の影響を最小限に抑えることができる。
【0003】
従来の放射線治療装置の全体構成を図1に示す。従来の放射線治療装置1は、患者Pを寝かせる治療用寝台9と、治療用の放射線を放射する放射線発生装置2および患者Pの体内にある患部の位置を確認するための透視画像を取得するための複数の放射線源(イメージャ)13a、13bとを備えている。
【0004】
放射線治療装置1のシステム全体は、後に述べるアイソセンタ10を原点として座標系が設定されている。そして、放射線発生装置2から放射される放射線の放射線軸Aは、このアイソセンタ10を通るように設定されている。また、患者Pの患部も放射線照射時にアイソセンタ10にその中心が来るように位置調整される。
【0005】
治療用の放射線を放射する放射線発生装置2と、患者Pの体内にある患部の位置を確認するための複数の放射線源(イメージャ)13a、13bとは、ガイド3の円枠内に内接されて回動軸Gまわりに360度回動自在な回転部材15に配設されている。ガイド3は、その両支持軸を支持部材4に嵌合されており、支持部材4に配設されている駆動モータ4aの駆動により傾倒軸11まわりに回動自在である。回動軸Gと傾倒軸11とは直交関係にある。ガイド3の円筒面が垂直向きのときに、放射線発生装置2は図1に見られるように、ガイド3の円枠の中心を通る垂線上に可動部材5を介して配設され、放射線発生装置2の放射線照射軸Aはガイド3の円枠の中心に向けられる。また、複数の放射線源(イメージャ)13a、13bは、放射線発生装置2に対して対象となる位置に配設され、それぞれの放射線照射軸E,Fは、放射線発生装置2の放射線照射軸Aと同様にガイド3の円枠の中心に向けられる。
【0006】
放射線発生装置2は、既述したように可動部材5を介して回転部材15に搭載されており、可動部材5は直交する回動軸CおよびDの2軸方向に対して回動自在である。このため、放射線発生装置2の放射線照射軸AはUおよびV方向に対して微動され、照射軸Aの指向方向が調整される。また、放射線発生装置2の放射線照射軸AがUおよびV方向に対して微動されることにより、放射線発生装置2から照射される放射線の照射対象に対する動体追尾がなされる。
【0007】
上記したアイソセンタ10は、ガイド3の円枠の中心軸Gと傾倒軸11との交点に設定されており、放射線発生装置2の放射線照射軸A、放射線源(イメージャ)13aおよび13bからの放射線照射軸E,Fは全てこのアイソセンター10において1点に交わるように調整される。
【0008】
放射線発生装置2の放射線照射軸Aの軸合わせの為に検出器6が使用される。軸合わせの際には、この検出器6はアイソセンター10に対して放射線発生装置2の点対称な位置に配置されて放射線発生装置2の放射線照射軸Aの微調整がなされるが、図1においては治療用寝台9の横に避難されている。放射線源(イメージャ)13a、13bからの透視画像取得および放射線照射軸E,Fの軸合わせの為にイメージャ用検出器14aおよび14bが使用される。放射線源(イメージャ)13aおよび13bの放射線軸EおよびFの軸合わせのため、イメージャ用検出器14aおよび14bは、アイソセンタ10に対して放射線源(イメージャ)13aおよび13bの点対称な位置に配設され、放射線源(イメージャ)13aおよび13bの放射線軸EおよびFがアイソセンタ10を通るように微調整される。イメージャ用検出器14aおよび14bについては、回転部材15に常に配設されているため、患者Pの患部はイメージャ13aおよび13bによりリアルタイムでモニタリングされる。
【0009】
以下に、患者Pの患部に放射線を動的追尾照射するため、患者Pの患部中心に放射線発生装置2の放射線軸Aを追尾させる従来の手順を説明する。
【0010】
放射線治療前にX線CTスキャナー(Computed Tomography Scanner)により患者の患部近傍のCT断層像が撮影される。複数の2次元CT画像を元に、指定された臓器および患部(癌病巣部)の3次元DRR(Digital Reconstructed Radiograph)画像が再構成される。このDRR画像に基づき、患部に照射される放射線の方向、照射範囲および放射線量が決められて治療計画が作成される。治療計画が作成されると、コンピュータにより線量分布シミュレーションが実行され、患部と臓器部分における放射線吸収量が算出される。シミュレーションにより、患部における放射線量が十分かどうかの確認が行われ、問題が無ければ実際の放射線治療の段階となる。
【0011】
放射線治療においては、図1に示されているように患者Pが治療用寝台9に寝かされて固定される。治療用寝台9が患者Pの患部中心をアイソセンタ10に位置させるように移動調整される。患者Pの患部がおおよそアイソセンタ10に設定されると、放射線源(イメージャ)13a、13bから透視画像取得のための放射線がそれぞれ放射線軸E,Fに沿って同時に放射され、患者Pの患部領域の画像がリアルタイムでイメージャ用検出器14aおよび14bにより取得される。取得されたイメージャ13a、13bの画像は解析装置7に入力される。解析装置7には、既に治療計画時に作成されて患部の位置情報を備えた3次元DRR画像が入力されている。3次元DRR画像における患部の位置と取得された現在のイメージャー画像との相対位置関係から、現在の患部がアイソセンタ10に対してどの位ズレているのかが算出される。算出された患部とアイソセンタ10とのズレ量のデータは解析装置7から制御装置8へ入力される。制御装置8は、入力されたズレ量のデータに基づいて、治療用寝台9の位置、ガイド3の傾倒軸11の角度および回転部材15のガイド3に対する相対位置を適宜最適な組み合わせで移動調整することにより、リアルタイムで患部中心をアイソセンタ10に移動させる。
【0012】
実際の放射線治療時には、さらに患者Pの呼吸等に起因する患部の動きが加わる。患者Pの呼吸等による患部の動きは±20mm程度あり、この動きを追尾するため、放射線発生装置2の放射線照射軸AがUおよびV方向に対して微動され、上記患者Pの呼吸等に起因する患部の動きに対する動的追尾が行われている。
【0013】
しかしながら放射線における濃淡差を利用して患部照射位置を決定する現状の透視画像撮影システムにおいては、複数の放射線源(イメージャ)13a、13bが異なった角度から放射線を患者Pの患部に同時に照射することにより、互いの放射線が患部で乱反射して散乱光が発生し、それぞれのイメージャ用検出器14a、14bに上記散乱光が入射することで微妙な濃淡差を検出すべき透視画像の画像に劣化が生じている。
【0014】
このため高精度な患部位置の判別が困難となり、患部位置の位置決めに時間がかかると伴に、患部の位置決め精度を高めることが必要な課題となっていた。
【0015】
このような技術に関連して、以下に示すような提案がなされている。
【0016】
特許第3394250号公報に開示されている「定位固定外科用装置」では、生体内の生きている組織のターゲット領域を選択的に照射することによって、放射線外科を行なうための装置であって、生体の少なくとも一部分の3次元写像を保存するデータ保存メモリ、3次元写像がターゲット領域を含み、かつターゲット領域よりも大きい写像領域を包含しており、光線発信装置が作動されると、ターゲット領域を壊死させるのに十分な強度の放射線外科用視準光線を放射する光線発信装置、光線発信装置を選択的に作動させるための手段、放射線外科用視準光線から分離し、かつ放射線外科用視準光線と異なる第1及び第2の診断用光線を実質的に同時に写像領域に通過させる手段、第1と第2の診断用光線は、互いに所定のゼロでない角度で配置され、写像領域内の各々第1および第2の射影の各々第1および第2の診断用光線の画像を生成し、第1及び第2の診断用光線の画像を表わす第1と第2のデジタル電子画像を生成するための手段、ターゲット領域のリアルタイムの位置を表わすデータを引き出すためにデジタル電子画像が生成された後に、デジタル形式の3次元写像を、時間的に十分近い第1と第2の診断用光線の画像を表わすデジタル電子画像とデジタル的に比較するための手段
、および放射線外科用視準光線が発せられると、放射線外科用視準光線が連続的にターゲット領域上に焦点を合わせるように、ターゲット領域のリアルタイムの位置を表わすデータに応答して、放射線外科用視準光線に対してターゲット領域を移動するために、必要な場合、光線発信装置及び生体の相対的位置を調節するための手段を有する放射線外科を行うための装置が提案されている。
【0017】
【特許文献1】特許第3394250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、治療放射線を確実に照射対象に照射することができる放射線照射装置および放射線治療装置における患部追尾方法およびイメージング画像の画質向上方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用する番号・符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0020】
本発明の放射線治療装置(10)は、アイソセンタ(100)に位置される患者(P)の患部に放射線を照射するための放射線治療装置(10)であって、アイソセンタ(100)を通る回転軸(G)に対して回動自在な回転部材(150)に配設される複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)と、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)のそれぞれから照射される放射線を検出して透視画像用放射線発生装置(130a、130b)との間に配置される患部のイメージ画像を検出する複数のイメージャ用検出器(140a、140b)と、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)のうちの2つが同時に放射線をアイソセンタ(100)に位置される患部に照射しないように複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を制御する制御装置(80)とを備える。
【0021】
また、本発明の放射線治療装置(10)は、さらに回転部材(150)に配設される放射線発生装置(20)と、解析装置(70)と、解析装置(70)に接続される時系列データ処理装置(93)とを備え、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)および複数のイメージャ用検出器(140a、140b)で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データが解析装置(70)を介して時系列データ処理装置(93)に送付され、時系列データ処理装置(93)は時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データに基づいて線形自己回帰モデルなどの数学的予測手法により次フレーム以降、予測したい先の時間における予測患部位置を演算し、予測患部位置の情報は解析装置(70)に送信され、解析装置(70)は予測患部位置の情報に基づいて予測患部位置に放射線発生装置(20)の照射軸(A)を移動させるための移動量を演算し、移動量の情報は制御装置(80)に送信され、制御装置(80)は移動量の情報に基づいて放射線発生装置(20)の照射軸(A)を予測患部位置に移動する。
【0022】
また、本発明の放射線治療装置(10)に係わる時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データは、規定データ長内で逐次古いものから1フレームずつ更新され、時系列データ処理装置(93)は、今回より前に予測した今回の予測患部位置と今回測定された実際の患部位置とを照合して、今回より前に予測した今回の予測患部位置と今回測定された実際の患部位置との予測誤差が規定値以上であると、次フレームでの放射線発生装置(20)からの照射が停止され、さらに停止の回数が規定回数を超えたときに放射線治療装置(10)の動作そのものが停止される。
【0023】
また、本発明の放射線治療装置(10)は、さらに解析装置(70)に接続されてそれぞれの透視画像の患部位置に対応する事前に設定された基準患部画像を保持した画像処理装置(95)を備え、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)および複数のイメージャ用検出器(140a、140b)で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データが解析装置(70)を介して画像処理装置(95)に送付され、画像処理装置(95)は時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の患部位置と基準患部画像との特定の評価特徴因子に関したマッチング度を演算し、マッチング度が規定値以下であると、次フレームにおける放射線発生装置(20)から放射線の照射が停止され、さらに停止の回数が規定回数を超えたときに放射線治療装置(10)の動作そのものが停止される。
【0024】
また、本発明の放射線治療装置(10)に係わる特定の評価特徴因子は、画像における当該患部位置の濃淡差総量および当該患部のエッジ部分の長さや形状などの模様である。
【0025】
また、本発明の放射線治療装置(10)の放射線照射タイミング制御方法は、制御装置(80)に複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を起動させるための信号を入力するステップと、信号の入力に応答して、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)のうちの2つが同時に放射線をアイソセンタ(100)に位置される患部に照射しないように複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を制御するステップとを備える。
【0026】
また、本発明の放射線治療装置(10)の予測追尾方法は、制御装置(80)に複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を起動させるための信号を入力するステップと、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)および複数のイメージャ用検出器(140a、140b)で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを解析装置(70)に接続された時系列データ処理装置(93)に送付するステップと、時系列データ処理装置(93)において時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データに基づいて次フレーム以降における予測患部位置を演算するステップと、予測患部位置の情報に基づいて予測患部位置に放射線発生装置(20)の照射軸(A)を移動させるための移動量を演算するステップと、移動量の情報に基づいて放射線発生装置(20)の照射軸(A)を予測患部位置に移動するステップと、さらに時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを規定データ長内で逐次古いものから1フレームずつ更新するステップと、予測患部位置と今回測定された患部位置とを照合して、予測患部位置と今回測定された患部位置との予測誤差が規定値以上であると、放射線発生装置(20)からの放射線の照射を停止するステップと、さらに停止の回数が規定回数を超えたときに放射線治療装置(10)の動作そのものを停止させるステップとを備える。
【0027】
また、本発明の放射線治療装置(10)の画像マッチング判定方法は、制御装置(80)に複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を起動させるための信号を入力するステップと、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)および複数のイメージャ用検出器(140a、140b)で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを解析装置(70)に接続された画像処理装置(95)に送付するステップと、画像処理装置(95)において時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の患部位置と基準患部画像との評価特徴因子のマッチング度を求めるステップと、マッチング度を求めるステップにおいてマッチング度が規定値以下であると、放射線発生装置(20)からの放射線の照射を停止するステップと、さらに停止の回数が規定回数を超えたときに放射線治療装置(10)の動作そのものを停止させるステップとを備える。
【0028】
また、本発明の放射線治療装置の放射線照射タイミング制御プログラムは、制御装置(80)に複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を起動させるための信号を入力する手段と、信号を入力する手段により、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)のうちの2つが同時に放射線をアイソセンタ(100)に位置される患部に照射しないように複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を制御する手段とを備える。
【0029】
また、本発明の放射線治療装置の予測追尾プログラムは、制御装置(80)に複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を起動させるための信号を入力する手段と、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)および複数のイメージャ用検出器(140a、140b)で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを解析装置(70)に接続された時系列データ処理装置(93)に送付する手段と、時系列データ処理装置(93)において時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データに基づいて次フレーム以降における予測患部位置を演算する手段と、予測患部位置の情報に基づいて予測患部位置に放射線発生装置(20)の照射軸(A)を移動させるための移動量を演算する手段と、移動量の情報に基づいて放射線発生装置(20)の照射軸(A)を予測患部位置に移動する手段と、さらに時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを規定データ長内で逐次古いものから1フレームずつ更新する手段と、予測患部位置と今回測定された患部位置とを照合して、予測患部位置と今回測定された患部位置との予測誤差が規定値以上であると、放射線発生装置(20)からの放射線の照射を停止する手段と、さらに停止の回数が規定回数を超えたときに放射線治療装置(10)の動作そのものを停止させる手段とを備える。
【0030】
また、本発明の放射線治療装置の画像マッチング判定プログラムは、制御装置(80)に複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)を起動させるための信号を入力する手段と、複数の透視画像用放射線発生装置(130a、130b)および複数のイメージャ用検出器(140a、140b)で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを解析装置(70)に接続された画像処理装置(95)に送付する手段と、画像処理装置(95)において時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の患部位置と基準患部画像との評価特徴因子のマッチング度を求める手段と、マッチング度を求める手段においてマッチング度が規定値以下であると、放射線発生装置(20)からの放射線の照射を停止する手段と、さらに停止の回数が規定回数を超えたときに放射線治療装置(10)の動作そのものを停止させる手段とを備える。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、微妙な濃淡差が確保された透視画像を取得することができ、患部の位置決めを高精度で行うことにより、治療放射線を確実に照射対象に照射することができる。また、透視画像取得用の照射タイミングおよび治療用放射線の起動タイミングを制御することにより、治療時間を短縮して患者への負担軽減を図ることが出来る。
【0032】
また、本発明により、治療放射線照射時点での最も確からしい患部位置を求めて治療用放射線を制御することにより、患部に精度良く安全に放射線を照射することができる。
【0033】
また、本発明により、取得された照射対象の透視画像を特定の評価因子について基準画像と照合することにより、照射対象に対して信頼性の高い照射制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
添付図面を参照して、本発明による放射線治療装置、放射線治療装置における患部追尾方法およびイメージング画像の画質向上方法を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0035】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係わる放射線治療装置は、患部の位置決めのための透視画像取得用の放射線源から照射される放射線の照射タイミングを制御することによって、微妙な濃淡差を保持した透視画像を検出することができる。
【0036】
本発明の実施形態に係わる放射線治療装置の全体構成を図2Aに示す。本実施の形態に係わる放射線治療装置10は、患者Pを寝かせる治療用寝台90、治療用の放射線を放射する放射線発生装置20、患者Pの体内にある患部の位置を確認するための透視画像取得用の複数の放射線源(イメージャ)130a、130b、イメージャ用検出器140a、140bにより取得された透視画像の患部位置座標を測定して患部の現在位置とアイソセンタ100との相対位置を演算する解析装置80、解析装置80により演算された患部の現在位置とアイソセンタ100との相対位置に基づき患部および放射線発生装置20の放射線軸Aとの位置合わせをする制御装置80を備えている。解析装置70には、イメージャ用検出器140a、140bにより取得された透視画像を時系列で保存し、その時系列データに基づいて次フレームにおける患部の予測位置座標を求める時系列データ処理装置93と、予め設定された基準となる患部画像を保持しており、イメージャ用検出器140a、140bにより取得された透視画像と上記の予め設定された基準となる患部画像とを照合して特定の評価特徴因子に関してマッチング度を演算する画像処理装置95とが接続されている。制御装置80は、バスライン80bに接続されたCPU80a、メモリ1(80c)、メモリ2(80d)およびメモリ3(80e)を備えている。また、放射線発生装置20には、動的追尾照射のできる駆動機構が備えられている。
【0037】
放射線治療装置10のシステム全体は、後に述べるアイソセンタ100を原点として座標系が設定されている。そして、放射線発生装置20から放射される放射線の放射線軸Aは、このアイソセンタ100を通るように設定される。また、患者Pの患部も放射線照射時にアイソセンタ100にその中心が来るように位置合わせされる。
【0038】
治療用の放射線を放射する放射線発生装置20と、患者Pの体内にある患部の位置を確認するための複数の放射線源(イメージャ)13a、13bとは、ガイド30の円枠内に内接されて回動軸Gまわりに360度回動自在な回転部材150に配設されている。ガイド30は、その両支持軸を支持部材40に嵌合されており、支持部材40に設置されている駆動モータ40aの駆動により傾倒軸110まわりに回動自在である。回動軸Gと傾倒軸110とは直交関係にある。ガイド30の円筒面が垂直向きのときに、放射線発生装置20は図2Aに見られるように、ガイド30の円枠の中心を通る垂線上に可動部材50を介して配設され、放射線発生装置20の放射線照射軸Aはガイド30の円枠の中心に向けられる。また、複数の放射線源(イメージャ)130a、130bは、放射線発生装置20に対して対象となる位置に配設され、それぞれの放射線照射軸E,Fは、放射線発生装置20の放射線照射軸Aと同様にガイド30の円枠の中心に向けられる。
【0039】
放射線発生装置20は、既述したように可動部材50を介して回転部材150に搭載されており、可動部材50は直交する回動軸CおよびDの2軸方向に対して回動自在である。これにより、放射線発生装置20から照射される放射線の照射対象に対するU方向およびV方向に対する動的追尾が行われる。
【0040】
上記したアイソセンタ100は、ガイド30の円枠の中心軸Gと傾倒軸110との交点に設定されており、放射線発生装置20の放射線照射軸A、放射線源(イメージャ)130aおよび130bからの放射線照射軸E,Fは全てこのアイソセンター100において1点に交わる。
【0041】
放射線発生装置20の放射線照射軸Aの軸合わせの為に検出器60が使用される。軸合わせの際には、この検出器60はアイソセンター100に対して放射線発生装置20の点対称な位置に配置されて放射線発生装置20の放射線照射軸Aの微調整がなされるが、図2Aにおいては治療用寝台90の横に避難されている。放射線源(イメージャ)130a、130bからの透視画像取得および放射線照射軸E,Fの軸合わせの為にイメージャ用検出器140aおよび140bが使用される。放射線源(イメージャ)130aおよび130bの放射線軸EおよびFの軸合わせのため、イメージャ用検出器140aおよび140bは、アイソセンタ100に対して放射線源(イメージャ)130aおよび130bの点対称な位置に配設され、放射線源(イメージャ)130aおよび130bの放射線軸EおよびFがアイソセンタ100を通るように微調整される。イメージャ用検出器140aおよび140bについては、回転部材150に常に配設されているため、患者Pの患部はイメージャ130aおよび130bによりリアルタイムでモニタされる。
【0042】
以下に、実施の形態1に係わる放射線治療装置により、患者Pの患部の透視画像を取得する部分を主として、患部に放射線を照射する手順を説明する。また、図2Bに放射線照射タイミング制御フローを示す。
【0043】
放射線治療前に、X線CTスキャナー(Computed Tomography Scanner)により患者Pの患部近傍のCT断層像が撮影される。撮影された複数の2次元CT画像を元に指定された臓器および患部(癌病巣部)の3次元DRR(Digital Reconstructed Radiograph)画像が作成される。この3次元DRR画像により、患者Pの患部の位置や状況が診断され、患部に照射される放射線の方向、照射範囲および放射線量が決められて治療計画が作成される。治療計画が作成されると、コンピュータにより線量分布シミュレーションが実行され、患部と臓器部分における放射線吸収量が算出される。シミュレーションにより、患部における放射線量が十分かどうかの確認が行われ、問題が無ければ放射線治療の段階となる。
【0044】
放射線治療においては、図2Aに示されているように患者Pが治療用寝台90に寝かされて固定される。治療用寝台90が患者Pの患部をアイソセンタ100に位置させるように移動調整される。患者Pの患部がおおよそアイソセンタ100に設定されると、放射線源(イメージャ)130a、130bから透視画像取得のための放射線がそれぞれ放射線軸E,Fに沿って放射され、患者Pの患部領域の画像がリアルタイムでイメージャ用検出器140aおよび140bにより取得される。
【0045】
図2Cに、イメージャ用検出器140aおよび140bにより患部の透視画像が取得されている模式図を示す。実際の透視画像の取得においては、複数の方向から同時に放射線が患部に対して照射されることにより患部で散乱光が発生し、イメージャ用検出器140aで放射線源130bから照射された散乱光を拾ってしまう、あるいは、イメージャ用検出器140bで放射線源130aから照射された散乱光を拾ってしまうことにより、微妙な濃淡差を検出すべき透視画像の画質が劣化してしまうことがあった。
【0046】
実施の形態1に係わる放射線治療装置においては、図2Aに示すように制御装置80のメモリ1(80c)に放射線照射タイミング制御プログラムが格納されている。外部から制御装置80に放射線の照射を開始させる指示が入力される(S1)と、CPU80aによりバスライン80bを介してメモリ1に保存されていた放射線照射タイミング制御プログラムが読み込まれる(S2)。CPU80aは、読み込んだ放射線照射タイミング制御プログラムのタイムチャートに基づき、放射線発生装置20および放射線源130a、130bから照射される放射線の照射のタイミングを制御する(S3)。図3に、放射線照射タイミング制御プログラムによる放射線発生装置20、放射線源(A)130aおよび(B)130bから照射される放射線の照射のタイミングチャートを示す。
【0047】
図3に示されるタイミングチャートにおいては、1フレーム(33mS)の間に放射線源(A)および放射線源(B)から順次放射線が照射されて、その間にそれぞれのシャッターが開かれることにより、患部に向けて放射線が交互に照射される。透視画像取得用放射線が放射線源(A)および放射線源(B)から非同時に照射されることにより、上記した互いの照射による散乱光を検出することがなくなり、イメージャ用検出器140aおよび140bによって透視画像の微妙な濃淡差を検出することができる。
【0048】
解析装置70には、既に治療計画時に作成された患部近傍の3次元DRR画像情報が入力されている。解析装置70において、3次元DRR画像における患部の位置と、今回取得されて画像処理された処理画像における患部対応部位とが照合される。そして、今回取得された透視画像の患部位置が判別されて、患部の位置座標が測定される。そして、測定された患部の位置座標の座標データに基づいて、現在の患部がアイソセンタ100に対してどの位ズレているのかが算出される。算出された患部とアイソセンタ100とのズレ量のデータは解析装置70から制御装置80へ入力される。制御装置80は、入力されたズレ量のデータに基づいて、治療用寝台90の位置、ガイド30の傾倒軸110の角度および回転部材150のガイド30に対する相対位置を適宜最適な組み合わせで移動調整することにより、リアルタイムで患部中心をアイソセンタ100に移動させる。
【0049】
本実施の形態においては、放射線発生装置20および放射線源130a、130bから照射される放射線の照射のタイミングを最適に制御することにより、微妙な濃淡差が確保された透視画像を取得でき、そのため高い精度で患部の位置を判別することができる。また、放射線発生装置20および放射線源130a、130bから照射される放射線の照射のタイミングを制御することで、治療全体に必要な照射時間を最少にすることができ、患者の負担軽減に繋がる。
【0050】
(実施の形態2)
放射線治療装置において、患者の呼吸によって患部位置が時間的に変動する場合、その位置変動を検出して追尾照射する動体追尾照射が望まれている。しかし、透視画像を用いて患部の位置を検出するには画像処理時間が必要となり、患部の位置検出値が出力された時には既に画像処理に要した時間分だけ目標患部位置は移動している。このため、単に透視画像に基づいた患部の位置情報だけで放射線の照射軸を向ける方向を決めると、患部以外の正常な細胞組織に放射線を照射する危険性が高い。
【0051】
本発明の実施の形態2においては、実施の形態1に加えてさらに目標患部位置の時系列情報を用いて、画像処理に必要な時間分だけ先の動きを予想し、その目標位置に向けて放射線を照射する予測制御手法を取り入れた動体追尾が実現される。
【0052】
実施の形態2に係わる放射線治療装置の基本構成は実施の形態1と同様である。
【0053】
但し本実施の形態においては、解析装置70に接続されてイメージャ用検出器140a、140bで取得された透視画像の時系列データに基づいて、放射線発生装置20で次フレームに放射線を照射する対象患部の予測患部位置を求める時系列データ処理装置93を備えている。また、本実施の形態においては、図2Aに示すように制御装置80のメモリ2(80d)に予測追尾プログラムが格納されている。
【0054】
本実施の形態における、予測制御手法を取り入れた照射対象患部に対する動体追尾の手順を以下に説明する。また、図4に動体追尾のフローを示す。放射線源(イメージャ)130a、130bおよびイメージャ用検出器140a、140bにより透視画像を取得し、取得された透視画像の画像データが解析装置70に入力されるまでは実施の形態1と同様である。
【0055】
本実施の形態においては、解析装置に入力される上記画像データは、時系列的に解析装置70を介して解析装置70に接続されている時系列データ処理装置93に入力される(S10)。時系列データ処理装置93は、入力されたイメージャ用検出器140a、140bで取得された透視画像の時系列データに基づいて線形自己回帰モデルなどの予測手法により、放射線発生装置20で次フレーム以降に放射線を照射する対象患部の予測患部位置を求める(S20)。図5に本実施の形態に係わる、時系列データを使用して線形自己回帰モデルなどにより次フレーム以降、必要な先の時間における予測患部位置を求める際の時系列データ例が示されている。図5においては、A1〜A4予測時点で予測された予測値A1〜A4と、それぞれに対応する実測値B1〜B4とが示されている。実際の予測患部位置は、(x、y、z)の3軸方向に対して求められる。時系列データ処理装置93に入力される透視画像の時系列データは、(x、y、z)の3軸方向ともに規定のデータ長とされる。そして、この時系列データは1フレームまたは、任意のデータ幅毎に更新される。
【0056】
時系列データ処理装置93で求められた3軸方向に対する予測患部位置の位置情報は、制御装置80に入力される。制御装置80に上記予測患部位置の位置情報が入力されると、CPU80aによりバスライン80bを介してメモリ2(80d)に保存されていた予測追尾プログラムが読み込まれて実行される。CPU80aは、読み込んだ予測追尾プログラムに基づき、放射線発生装置20の放射線照射軸を照射対象である予測患部位置に向けるように制御する(S30)。
【0057】
本実施の形態においては、図3に見られるようなイメージャ追尾用画像処理に要する時間に起因する照射対象患部位置のずれを予測することにより、正確に次フレーム以降における放射線発生装置の放射線照射軸を予測患部位置に移動させることができる。
【0058】
本実施の形態により、呼吸動作などに起因した患部の動きに対して治療放射線照射時点での最も確からしい患部位置が求まることになり、治療に必要な線量を確実に患部領域のみに照射することができる。また、患部の動きを予測することで、単に前回値に対する逸脱範囲を設定して放射線の照射を制御する場合に比べ、より精度の高い制御をすることができる。さらに、短周期の予測制御を行っていることで非常に誤差の小さい予測患部位置が求められる。
【0059】
(実施の形態3)
予測制御手法を取り入れた放射線治療装置における動体追尾照射においては、照射対称となる患部の予測患部位置を求める際に透視画像を用いている。しかし、透視画像は場合によっては濃淡変動を生じ、不鮮明な画像に基づいて画像処理された画像データから求められた予測患部位置には誤差が含まれる。そして、この予測患部位置に基づいて放射線の照射が行われると、患部以外の正常な細胞組織に放射線が照射されてしまう。
【0060】
本実施の形態に係わる放射線治療装置の基本的構成および動作原理は、実施の形態2と同等である。但し本実施の形態では、時系列データ処理装置93において、入力された透視画像の時系列データに基づいて、今回より前に予測した今回の予測患部位置と今回測定された実際の患部位置とが照合される。図5に示されるように、今回より前に予測した今回の予測患部位置(A1〜A4)と今回測定された実際の患部位置(B1〜B4)との予測誤差が規定値(Δd)以上であると、この情報が時系列データ処理装置93から解析装置70に入力され、解析装置70から制御装置80に次フレームでの放射線発生装置20からの照射を停止させる信号が送信される。そして、制御装置80から放射線発生装置20に向けて制御信号が送信されて、次フレームにおける放射線発生装置20からの放射線の照射が停止される。このとき、時系列データ処理装置93に入力される透視画像の時系列データは、規定データ長内で逐次古いものから1フレームずつ更新される。
【0061】
さらに、制御装置80への上記停止させる信号の送付回数が規定回数を超えたとき、あるいは連続してある回数発生した場合には、制御装置80からの制御信号により放射線発生装置20の動作そのものが停止される。
【0062】
本実施の形態では、呼吸動作などに起因した患部の動きに追従して治療放射線を照射する動体追尾において、予測患部位置の信頼性が劣る場合を判断して照射を実行できるため、患部以外の正常な細胞組織に対して不必要な放射線の照射を減らすことができ、治療の安全性を高めることができる。
【0063】
(実施の形態4)
本実施の形態4に係わる放射線治療装置においては、予め設定されている患部近傍の基準画像とイメージャ用検出器140a、140bで取得された患部の透視画像とを特定の評価因子に着目して照合してマッチング度を求める。このマッチング度により信頼性の高い透視画像を選別し、信頼性の高い透視画像を使って患部位置を求めることにより精度の高い動体追尾を行おうとするものである。
【0064】
実施の形態4に係わる放射線治療装置の基本構成は実施の形態1から3と同様である。但し本実施の形態においては、解析装置70に接続されて、予め設定されている患部近傍の基準画像を保持し、患部近傍の基準画像とイメージャ用検出器140a、140bで取得された透視画像とを照合してマッチング度を求める画像処理装置95を備えている。また、本実施の形態においては、図2Aに示すように制御装置80のメモリ3(80e)に画像マッチング判定プログラムが格納されている。
【0065】
本実施の形態における、画像マッチング判定手法を取り入れた照射対象患部に対する動体追尾の手順を以下に説明する。また、図6に画像マッチング判定フローを示す。放射線源(イメージャ)130a、130bおよびイメージャ用検出器140a、140bにより透視画像を取得し、取得された透視画像の画像データが解析装置70に入力されるまでは実施の形態1から3までと同様である。
【0066】
本実施の形態においては、解析装置70に入力される上記画像データは、解析装置70を介して解析装置70に接続されている画像処理装置95に入力される(S100)。
【0067】
画像処理装置95は、予め保存している患部近傍の基準画像とイメージャ用検出器140a、140bで取得された透視画像とを特定の評価因子に着目して照合し、両者のマッチング度を求める(S200)。特定の評価因子としては、画像における濃淡差の総量、患部のエッジ部分の長さや形状など、追尾対象患部の種類(肺癌か前立腺癌か等)により、そのとき評価する最適な特徴量を採用すれば良い。
【0068】
図7には、本実施の形態に係わる画像マッチング率を求める際の模式図が示されている。
【0069】
画像処理装置95で求められたマッチング度の情報は、解析装置70を介して制御装置80に入力される。制御装置80に上記マッチング度の情報が入力されると、CPU80aによりバスライン80bを介してメモリ3(80e)に保存されていた画像マッチング判定プログラムが読み込まれて実行される。CPU80aは、読み込んだ画像マッチング判定プログラムに基づき、放射線治療装置10を制御する(S300)。
【0070】
ある特定の評価因子に着目して求められたイメージャ用検出器140a、140bそれぞれの透視画像(実測画像)と基準画像とのマッチング度が規定値以上である場合には、実施の形態2に記載されているように、CPU80aは、読み込んだ予測追尾プログラムに基づき、放射線発生装置20の放射線照射軸を照射対象である予測患部位置に向けるように制御する。しかし、マッチング度が規定値以下であると、この情報が画像処理装置95から解析装置70に入力され、解析装置70から制御装置80に次フレームでの放射線発生装置20からの照射を停止させる信号が送信される。そして、制御装置80から放射線発生装置20に向けて制御信号が送信されて、次フレームにおける放射線発生装置20からの放射線の照射が停止される。さらに、制御装置80への上記停止させる信号の送付回数が規定回数を超えたとき、あるいは連続してある回数発生した場合には、制御装置80からの制御信号により放射線発生装置20の動作そのものが停止される。
【0071】
本実施の形態により、呼吸動作などに起因した患部の動きに追従して治療放射線を照射する動体追尾をする際に、患部の検出位置の信頼性が劣る場合を判別して放射線の照射を実行できるため、患部以外の正常な細胞組織に対する放射線の照射をなくし、照射の安全性を高めることができる。また、画像のマッチング度を求める際に着目する特定の評価因子として、照射対象となる患部の特徴に応じて最適な因子を設定することができるため、より信頼性の高い照射制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来の放射線治療装置を示す斜視図である。
【図2A】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置を示す斜視図である。
【図2B】放射線照射タイミング制御フローを示す図である。
【図2C】本発明の実施の形態1に係わる放射線源(イメージャ)およびイメージャ用検出器により構成される透視画像撮影の模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係わる放射線源(イメージャ)およびイメージャ用検出器により構成される透視画像撮影のタイミングチャートである。
【図4】動体追尾フローを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2および3に係わる、時系列データを使用して線形自己回帰モデルにより次フレームにおける予測患部位置あるいは予測ズレ量を求める際の時系列データ例である。
【図6】画像マッチング判定フローを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係わる画像マッチング率を求める際の模式図である。
【符号の説明】
【0073】
1、10…放射線治療装置
2、20…放射線発生装置
3、30…ガイド
4、40…支持部材
4a、40a…駆動用モータ
5、50…可動部材
6、60…検出器
7、70…解析装置
8、80…制御装置
9、90…治療用寝台
10、100…アイソセンタ
11、110…傾倒軸
13a、13b、130a、130b…放射線源(イメージャ)
14a、14b、140a、140b…イメージャ用検出器
15、150…回転部材
80a…CPU
80b…バスライン
80c…メモリ1
80d…メモリ2
80e…メモリ3
93…時系列データ処理装置
95…画像処理装置
A、E,F…照射軸
C,D、G…回動軸
U,V…首振り方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソセンタに位置される患者の患部に放射線を照射するための放射線治療装置であって、
アイソセンタを通る回転軸に対して回動自在な回転部材に配設される複数の透視画像用放射線発生装置と、
前記複数の透視画像用放射線発生装置のそれぞれから照射される放射線を検出して前記透視画像用放射線発生装置との間に配置される患部のイメージ画像を検出する複数のイメージャ用検出器と、
前記複数の透視画像用放射線発生装置のうちの2つが同時に放射線を前記アイソセンタに位置される前記患部に照射しないように前記複数の透視画像用放射線発生装置を制御する制御装置と
を具備する放射線治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線治療装置において、
さらに前記回転部材に配設される放射線発生装置と、
解析装置と、前記解析装置に接続される時系列データ処理装置とを備え、
前記複数の透視画像用放射線発生装置および前記複数のイメージャ用検出器で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データが前記解析装置を介して前記時系列データ処理装置に送付され、前記時系列データ処理装置は時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の画像データに基づいて次フレーム以降における予測患部位置を演算し、
前記予測患部位置の情報は前記解析装置に送信され、前記解析装置は前記予測患部位置の情報に基づいて前記予測患部位置に前記放射線発生装置の照射軸を移動させるための移動量を演算し、
前記移動量の情報は前記制御装置に送信され、前記制御装置は前記移動量の情報に基づいて前記放射線発生装置の前記照射軸を前記予測患部位置に移動する
放射線治療装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線治療装置において、
前記時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の画像データは、規定データ長内で逐次古いものから1フレームずつ更新され、
前記時系列データ処理装置は、今回より前に予測した今回の予測患部位置と今回測定された実際の患部位置とを照合して、前記今回より前に予測した今回の予測患部位置と前記今回測定された実際の患部位置との差が規定値以上であると、次フレームでの前記放射線発生装置からの照射が停止され、
さらに前記停止の回数が規定回数を超えたときに前記放射線治療装置の動作そのものが停止される放射線治療装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の放射線治療装置において、
さらに前記解析装置に接続されて前記それぞれの透視画像の患部位置に対応する事前に設定された基準患部画像を保持した画像処理装置を備え、
前記複数の透視画像用放射線発生装置および前記複数のイメージャ用検出器で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データが前記解析装置を介して前記画像処理装置に送付され、前記画像処理装置は時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の患部位置と前記基準患部画像との特定の評価特徴因子に関したマッチング度を演算し、前記マッチング度が規定値以下であると、次フレームにおける前記放射線発生装置から放射線の照射が停止され、
さらに前記停止の回数が規定回数を超えたときに前記放射線治療装置の動作そのものが停止される放射線治療装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線治療装置において、
前記特定の評価特徴因子は、画像における当該患部位置の濃淡差総量および当該患部のエッジ部分の長さや形状などの模様である放射線治療装置。
【請求項6】
請求項1から5までの少なくとも一項に記載の放射線治療装置において、
前記制御装置に前記複数の透視画像用放射線発生装置を起動させるための信号を入力するステップと、
前記信号の入力に応答して、前記複数の透視画像用放射線発生装置のうちの2つが同時に放射線を前記アイソセンタに位置される前記患部に照射しないように前記複数の透視画像用放射線発生装置を制御するステップと
を具備する放射線治療装置の放射線照射タイミング制御方法。
【請求項7】
請求項2から5までの少なくとも一項に記載の放射線治療装置において、
前記制御装置に前記複数の透視画像用放射線発生装置を起動させるための信号を入力するステップと、
前記複数の透視画像用放射線発生装置および前記複数のイメージャ用検出器で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを前記解析装置に接続された前記時系列データ処理装置に送付するステップと、
前記時系列データ処理装置において時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の画像データに基づいて次フレーム以降における予測患部位置を演算するステップと、
前記予測患部位置の情報に基づいて前記予測患部位置に前記放射線発生装置の照射軸を移動させるための移動量を演算するステップと、
前記移動量の情報に基づいて前記放射線発生装置の照射軸を前記予測患部位置に移動するステップと、
さらに前記時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の画像データを規定データ長内で逐次古いものから1フレームずつ更新するステップと、
前記予測患部位置と今回測定された患部位置とを照合して、前記予測患部位置と前記今回測定された患部位置との予測誤差が規定値以上であると、前記放射線発生装置からの放射線の照射を停止するステップと、
さらに前記停止の回数が規定回数を超えたときに前記放射線治療装置の動作そのものを停止させるステップと
を具備する放射線治療装置の予測追尾方法。
【請求項8】
請求項4または5に記載の放射線治療装置において、
前記制御装置に前記複数の透視画像用放射線発生装置を起動させるための信号を入力するステップと、
前記複数の透視画像用放射線発生装置および前記複数のイメージャ用検出器で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを前記解析装置に接続された前記画像処理装置に送付するステップと、
前記画像処理装置において時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の患部位置と前記基準患部画像との評価特徴因子のマッチング度を求めるステップと、
前記マッチング度を求めるステップにおいて前記マッチング度が規定値以下であると、前記放射線発生装置からの放射線の照射を停止するステップと、
さらに前記停止の回数が規定回数を超えたときに前記放射線治療装置の動作そのものを停止させるステップと
を具備する放射線治療装置の画像マッチング判定方法。
【請求項9】
請求項1から5までの少なくとも一項に記載の放射線治療装置において、
前記制御装置に前記複数の透視画像用放射線発生装置を起動させるための信号を入力する手段と、
前記信号を入力する手段により、前記複数の透視画像用放射線発生装置のうちの2つが同時に放射線を前記アイソセンタに位置される前記患部に照射しないように前記複数の透視画像用放射線発生装置を制御する手段と
を具備する放射線治療装置の放射線照射タイミング制御プログラム。
【請求項10】
請求項2から5までの少なくとも一項に記載の放射線治療装置において、
前記制御装置に前記複数の透視画像用放射線発生装置を起動させるための信号を入力する手段と、
前記複数の透視画像用放射線発生装置および前記複数のイメージャ用検出器で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを前記解析装置に接続された前記時系列データ処理装置に送付する手段と、
前記時系列データ処理装置において時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の画像データに基づいて次フレーム以降における予測患部位置を演算する手段と、
前記予測患部位置の情報に基づいて前記予測患部位置に前記放射線発生装置の照射軸を移動させるための移動量を演算する手段と、
前記移動量の情報に基づいて前記放射線発生装置の照射軸を前記予測患部位置に移動する手段と、
さらに前記時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の画像データを規定データ長内で逐次古いものから1フレームずつ更新する手段と、
前記予測患部位置と今回測定された患部位置とを照合して、前記予測患部位置と前記今回測定された患部位置との予測誤差が規定値以上であると、前記放射線発生装置からの放射線の照射を停止する手段と、
さらに前記停止の回数が規定回数を超えたときに前記放射線治療装置の動作そのものを停止させる手段と
を具備する放射線治療装置の予測追尾プログラム。
【請求項11】
請求項4または5に記載の放射線治療装置において、
前記制御装置に前記複数の透視画像用放射線発生装置を起動させるための信号を入力する手段と、
前記複数の透視画像用放射線発生装置および前記複数のイメージャ用検出器で時系列に撮像されたそれぞれの透視画像の画像データを前記解析装置に接続された前記画像処理装置に送付する手段と、
前記画像処理装置において時系列に撮像された前記それぞれの透視画像の患部位置と前記基準患部画像との評価特徴因子のマッチング度を求める手段と、
前記マッチング度を求める手段において前記マッチング度が規定値以下であると、前記放射線発生装置からの放射線の照射を停止する手段と、
さらに前記停止の回数が規定回数を超えたときに前記放射線治療装置の動作そのものを停止させる手段と
を具備する放射線治療装置の画像マッチング判定プログラム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−51199(P2006−51199A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235301(P2004−235301)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/高精度四次元放射線治療装置システムに関する開発研究」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】