説明

放射線治療装置、放射線治療装置用治療台、及び放射線治療装置の座標校正方法

【課題】 高精度な放射線照射を可能とする放射線治療装置を提供する。
【解決手段】 放射線治療装置は、患部の位置を特定するためのX線イメージャを持っている。X線イメージャは、第1方向からX線画像を撮影するX線放射装置と、第2方向からX線画像を撮影するX線放射装置とを備えている。X線イメージャの光学系の校正を行うとき、6個以上の相互に固定された剛球を持つ校正具が置かれる。X線イメージャを所定の角度づつ変えながら、X線イメージャにより校正具を撮影する。撮影された校正具の位置と、直接に測定された校正具の位置とのずれから、X線イメージャの光学系の特徴量の補正値を算出する。算出された特徴量の補正値は、X線イメージャの角度と対応づけてメモリ内のテーブルに格納される。患者を治療する場合には、X線イメージャが位置する角度に対応する補正値が抽出され、X線画像から得られる情報はその値に応じて補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線などの放射線を体表面の外側から患部に照射して患部の治療を行う放射線治療装置が知られている。
【0003】
支持柱上に取り付けられたベースフレーム、上記ベースフレーム上に上記ベースフレームの長手方向にスライド移動可能に連結された中間フレーム、上記中間フレーム上に上記中間フレームの長手方向にスライド移動可能に連結された治療寝台となる天板を備え、患者を寝かせた上記天板を治療方向に移動し、放射線照射位置に位置合わせして治療を行う放射線治療台において、上記天板を治療方向に移動させるにともなって、上記天板と上記中間フレームとの第一の連結部、若しくは上記第一の連結部並びに上記中間フレームと上記ベースフレームとの第二の連結部が上記支持柱に近づくように構成されていることを特徴とする放射線治療台が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
基準体に対する被測定体の相対的な三次元座標を求める三次元座標計測方法であって、複数のカメラで互いに異なる角度から互いに同一の校正体上の少なくとも6点を観察して該カメラの撮像面上の二次元座標と前記校正体の三次元座標との変換式を求め、前記複数のカメラの共通の視野内に前記標準体と前記被測定体を配置し、前記基準体上の少なくとも3点の三次元座標を求めることにより該基準体上に基準座標系を求め、前記被測定体上の所定点の三次元座標を求めることにより該所定点の前記基準座標系上の位置を求めることを特徴とする三次元座標計測方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−219183号公報
【特許文献2】特開平5−164517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、患部の位置を映し出すためのX線イメージャの校正が精度よく行われる放射線治療装置、及びその座標校正方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、患部にX線を照射して治療する放射線発生装置の校正が精度よく行われる放射線治療装置、及びその座標校正方法を提供することである。
【0008】
本発明の更に他の目的は、高精度に校正が行われた放射線発生装置に適合した放射線治療装置用治療台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明による放射線治療装置(1)は、放射線発生装置(2)と、アイソセンタ(10)を中心とする所定の周回軌道(15)を形成するリング(3)と、放射線発生装置(2)を搭載し、周回軌道(15)に沿って移動するジンバル機構(5)と、周回軌道(15)における座標を示す走行角と、ジンバル機構(5)が放射線発生装置(2)に与える補正角とを対応付けて格納する第1テーブル(32)と、ジンバル機構(5)が所定の走行角にあるとき、第1テーブル(32)において対応する補正角を用いてジンバル機構(5)の角度を補正する第1補正部(36)とを備えている。
【0011】
本発明による放射線治療装置(1)において、第1補正部(36)は、放射線発生装置(2)が発生する放射線がアイソセンタ(10)に向かうようにジンバル機構(5)の角度を補正する。
【0012】
本発明による放射線治療装置(1)は、第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャ(13a、14a)と第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャ(13b、14b)とを含むX線イメージャを備えている。放射線治療装置(1)は更に、X線イメージャの周回軌道(15)における位置を示す走行角と、第1X線イメージャ(13a、14a)の光学系を設定するために決められる設定定数と第2X線イメージャ(13b、14b)の光学系を設定するために決められる設定定数との補正値とを対応づけて格納する第2テーブル(34)と、X線イメージャが所定の走行角にあるとき、第2テーブル(34)において対応する補正値(α〜α12)を用いて第1X線イメージャ(13a、14a)及び第2X線イメージャ(13b、14b)により撮影された画像に含まれる情報の補正を行う第2補正部(36)とを備えている。
【0013】
本発明による放射線治療装置(1)は、アイソセンタ(10)を中心とする周回軌道(15)を形成するリング(3)と、第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャ(13a、14a)と第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャ(13b、14b)とを含むX線イメージャと、前記X線イメージャの走行角(前記周回軌道における位置を示す座標)と、前記第1X線イメージャ(13a、14a)の光学系を設定するために決められる設定定数と前記第2X線イメージャ(13b、14b)の光学系を設定するために決められる設定定数との補正値とを対応づけて格納する第2テーブル(34)と、前記X線イメージャが所定の前記走行角にあるとき、前記第2テーブル(34)において対応する前記補正値(α〜α12)を用いて前記第1X線イメージャ(13a、14a)及び前記第2X線イメージャ(13b、14b)により撮影された画像に含まれる情報の補正を行う第2補正部(36)とを備えている。
【0014】
本発明による放射線治療装置用治療台(15)は、第1軸(x軸)に沿って患者が寝載される治療台の天板を移動する第1リニアガイド(50)と、第2軸(y軸)に沿って天板を移動する第2リニアガイド(52)と、第3軸(z軸)に沿って天板を移動する第3リニアガイド(54)とを備えている。
【0015】
本発明による放射線治療装置用治療台(15)は、第1軸(x軸)に沿った位置を測定する第1デジタルスケール(図示せず)と、第2軸(y軸)に沿った位置を測定する第2デジタルスケール(図示せず)と、第3軸(z軸)に沿った位置を測定する第3デジタルスケール(図示せず)とを備えている。
【0016】
本発明による放射線治療装置用治療台(15)は、第1X線イメージャ(13a、14a)と第2X線イメージャ(13b、14b)との原点を校正するために使用される基準部材(40)が埋め込まれている。基準部材は、X線イメージャによって観察しやすいものが好ましく、例えば金属球である。
【0017】
本発明による放射線治療装置(1)の座標校正方法は、アイソセンタ(10)を中心とする所定の周回軌道(15)を形成するリング(3)と、周回軌道(15)の上を移動し第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャ(13a、14a)と第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャ(13b、14b)とを搭載するX線イメージャとを備える放射線治療装置(1)の座標校正方法である。座標校正方法は、相互の位置関係が固定された少なくとも6つの基準点(44)を有する校正具(42)を設置するステップと、X線イメージャを周回軌道の所定の角度に設定するステップと、基準点(44)を第1X線イメージャ(13a、14a)で撮影して第1画像を得るステップと、基準点を第2X線イメージャ(13b、14b)で撮影して第2画像を得るステップと、第1画像と第2画像とにより基準点の3次元的な位置に関する情報を生成する3次元位置解析ステップと、基準点(44)の測定された相互の3次元的な位置と3次元位置解析ステップにより生成された相互の3次元的な位置とを比較して、第1X線イメージャ(13a、13b)の光学系を設定するために決められる設定定数と第2X線イメージャ(14a、14b)の光学系を設定するために決められる設定定数とを補正するための補正値を算出するステップと、X線イメージャの周回軌道(15)の上での角度と補正値(α〜α12)とを対応づけて格納するテーブル(34)を作成するステップと、所定の角度でX線イメージャで撮影を行うときテーブル(34)を参照して所定の角度に対応する補正値(α〜α12)により撮影された画像から得られる情報を補正するステップとを備えている。
【0018】
本発明による放射線治療装置(1)の座標校正方法において、放射線治療装置(1)は更に、カメラ(図示せず)を搭載し、周回軌道(15)を移動するジンバル機構(5)を備えている。基準点(44)のうちの1つはアイソセンタ(10)に置かれる。座標校正方法は更に、ジンバル機構(5)を周回軌道(15)の所定の角度に設定するステップと、カメラによりアイソセンタ(10)に置かれた基準点(44)を撮影して、カメラがアイソセンタ(10)を向くように、ジンバル機構(5)が備えるパン軸とチルト軸とのジンバル補正値を算出するステップと、ジンバル機構(5)の周回軌道(15)の上での角度とジンバル補正値とを対応づけて格納するジンバル補正テーブル(32)を作成するステップと、周回軌道(15)の所定の角度にあるジンバル機構(5)に搭載されるビーム(2)でアイソセンタ(10)を狙うとき、ジンバル補正テーブル(32)において所定の角度に対応するジンバル補正値を用いてパン軸とチルト軸との少なくとも一方を動かすステップとを備える。
【0019】
本発明による放射線治療装置(1)の座標校正方法は、アイソセンタ(10)を中心とする所定の周回軌道(15)を形成するリングと、周回軌道(15)の上を移動し第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャ(13a、13b)と第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャ(14a、14b)とを搭載するX線イメージャと、X線に対して不透明な基準部材(40)が固定されたカウチ(15)とを備える放射線治療装置(1)の座標校正方法である。座標校正方法は、カウチ(15)を所定の座標位置に移動するステップと、基準部材(40)を第1X線イメージャ(13a、14a)で撮影して第1画像を得るステップと、基準部材を第2X線イメージャ(13b、14b)で撮影して第2画像を得るステップと、第1画像と第2画像とにより基準部材(40)の3次元的な位置に関する情報を得る3次元位置解析ステップと、カウチ(15)が座標位置にあるときの基準部材(40)の座標と3次元位置解析ステップにより得られた相互の3次元的な位置とを比較して、ずれを算出する演算部(22)を備えている。
【0020】
本発明による放射線治療装置(1)の座標校正方法は、ずれの時系列的な変化を記録しモニターするステップを備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、患部の位置を映し出すためのX線イメージャの校正が精度よく行われる放射線治療装置、及びその座標校正方法が提供される。
【0022】
更に本発明によれば、患部にX線を照射して治療する放射線発生装置の校正が精度よく行われる放射線治療装置、及びその座標校正方法が提供される。
【0023】
更に本発明によれば、高精度に校正が行われた放射線発生装置に適合した放射線治療装置用治療台が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明における放射線治療装置、放射線治療装置用治療台、及び放射線治療装置の座標校正方法について詳細に説明する。
【0025】
図1を参照すると、本発明における放射線治療装置1と治療台16とが示されている。放射線治療装置1は、中空のリング3を備えている。リング3には周回軌道15が設けられている。リング3には放射線発生装置2を搭載したジンバル機構5が取り付けられている。ジンバル機構5は、周回軌道15の上を移動する。ジンバル機構5は、放射線発生装置2が放射線を照射する方向Aを、図にU軸(周回軌道15に垂直な方向)、V軸(周回軌道15に沿った方向)で示される2軸に沿って変える首振り運動をする。リング3の中心付近には、放射線が集中して照射されるアイソセンタ10がある。
【0026】
放射線発生装置2、ジンバル機構5、及び後述するX線検出装置14a、14bは、解析装置7に接続されている。解析装置7は制御装置8に接続されており、制御装置8は治療台16に接続されている。
【0027】
治療台16は、図1に示される座標系においてアイソセンタ10からy軸の負方向に設置されている。治療台16は、治療台本体9と、治療台本体9に支持され患者を寝載するための天板9bを備えている。治療台16は後述するように、鉛直方向を向くz軸、y軸、及びz軸とy軸とに垂直なx軸の3軸に平行に可動である。治療台16が動かされることにより、患者の患部は概ねアイソセンタ10の位置に動かされる。
【0028】
天板9b(または治療台本体9)には、金属球40が埋め込まれている。
【0029】
図2を参照すると、放射線治療装置1のリング3の付近をy軸の負方向から見た様子が示されている。放射線治療装置1は、患部の位置をモニターするためのX線を照射する第1の X線発生装置13aと、X線発生装置13aから照射されたX線を検出し第1のX線イメージを生成する第1のX線検出装置14aとを備えている。放射線治療装置1は更に、患部の位置をモニターするためのX線を照射する第2のX線発生装置13bと、X線発生装置13bから照射されたX線を検出し第2のX線イメージを生成する第2のX線検出装置14bとを備えている。第1のX線イメージと第2のX線イメージとは、共にアイソセンタ10の付近のX線イメージである。異なる角度から撮影された第1のX線イメージと第2のX線イメージとにより、患部の3次元的な位置に関する情報が得られる。
【0030】
第1のX線発生装置13a、第1のX線検出装置14a、第2のX線発生装置13b、及び第2のX線検出装置14bは、一体をなすX線イメージャとして周回軌道の上を回転移動する。
【0031】
図3を参照すると、解析装置7の構成が示されている。解析装置7は、演算制御部22、記憶部24、入力部26、出力部28、及び通信部30を備えている。
【0032】
図4を参照すると、記憶部24に格納されているデータの一部が示されている。記憶部24は、ジンバル機構補正テーブル32、イメージャ補正テーブル34、補正演算プログラム36、及びアイソセンタ時系列グラフ38を格納している。
【0033】
図5を参照すると、ジンバル機構補正テーブル32の構成が示されている。図5の例では、角度(ジンバル機構が位置する周回軌道15の上の角度)が10度毎に、パン軸の補正値とチルト軸の補正値とが格納されている。
【0034】
図6を参照すると、イメージャ補正テーブル34の構成が示されている。イメージャ補正テーブル34は、角度(X線イメージャの周回軌道15の上の角度)が10度毎に、X線イメージャを形成する光学系の12種類の特徴量(光学系を設定するために決められる設定定数)の補正値α〜α12を格納している。
【0035】
図7を参照すると、アイソセンタ時系列グラフ38の例が示されている。横軸は日を単位とした目盛りであり、縦軸は後述する方法により測定されたアイソセンタの位置である。
【0036】
図8を参照すると、放射線治療装置1を校正するために使用される校正具42が示されている。校正具42は、8個の剛球が立方体の頂点を占め、剛球と剛球との間が支柱46で結合されたものである。校正具は、例えば一片が4cmほどの大きさである。校正具は高い精度で製作されている。
【0037】
校正具は、必ずしもこの形状に限定されるものでなく、最低6個の剛球または目印が、正確に相互の位置関係の分かる状態になっているものであれば、どのようなものでも使用可能である(12個ある光学系のパラメータを決めるには6個以上の目印が必要)。
【0038】
図9を参照すると、治療台9の可動部が示されている。治療台9は、x軸、y軸、z軸の3方向に各々リニアベアリング(リニアガイド)を備えている。そのため、例えば天板9bに体重が大きい人が載せられた場合でも動きは滑らかである。x軸、y軸、z軸の各々のリニアベアリングは、制御装置8から受信した信号に基づいてモータ(図示せず)により駆動される。さらに、x軸、y軸、z軸の3方向には各々、図示されないデジタルスケールが設置されており、治療台のx座標、y座標、z座標を例えば50μm程度の高精度で測定する。
【0039】
以上の構成を備える放射線治療装置において、ジンバル機構補正テーブル32とイメージャ補正テーブル34にデータを登録する方法について、図10を参照して説明する。
【0040】
ステップS2:校正具42の8つの剛球のうちの一つをアイソセンタ10の位置に合わせる。位置合わせは、予めアイソセンタ10の位置に照準を合わされたレーザーを用いる等の方法により行われる。
【0041】
ステップS4:ジンバル機構5が周回軌道15において所定の角度、回転される。放射線発生装置2は、ジンバル機構5のパン軸とチルト軸が固定された状態で概ねアイソセンタ10に向けて放射線が照射されるようになっている。
【0042】
ステップS6:しかし、ジンバル機構5が回転するに伴い自重による撓み等によって、アイソセンタ10から若干異なる方向に放射線が照射されるようになる。そのずれを、ジンバル機構5が備えるパン軸とチルト軸の首振りによって調節することにより、放射線発生装置2が発生する放射線が正確にアイソセンタ10を向くようにすることができる。その調節に必要なパン軸とチルト軸の首振りの角度は、放射線発生装置2と光軸を合わせられた光学カメラによりアイソセンタ10にある剛球を観察することにより得られる。
【0043】
ステップS8:ジンバル機構5の周回軌道15における角度(図5では10度刻み)と、ステップS6において算出されたパン軸とチルト軸の首振りの角度とが、ジンバル機構補正テーブル32に登録される。
【0044】
ステップS10:ジンバル機構5が周回軌道15を一周していなければ、ステップS4に戻りステップS10までの処理が繰り返される。ジンバル機構5が周回軌道15を一周したならば、ジンバル機構補正テーブル32は完成しており、処理はステップS12に移行される。
【0045】
ステップS12:校正具42を置いたまま、X線イメージャを所定の角度、周回軌道15において回転する。
【0046】
ステップS14:X線イメージャは、校正具42を撮影する。第1のX線検出装置14aにより撮像された剛球44の位置と第2のX線検出装置14bにより撮像された剛球44の位置とは、視差のためにずれている。さらに、X線イメージャの光学系の特徴量の校正が完全でなければ、校正のずれによってもずれている。補正演算部36は、撮影像から得られた校正具42の8つの剛球44の3次元位置と、実測された校正具42の8つの剛球の3次元位置とを用いて、X線イメージャの光学系の特徴量の補正値α〜α12を算出する。
【0047】
ステップS16:X線イメージャの周回軌道15における角度(図6では10度刻み)と、ステップS14において算出されたX線イメージャの光学系の特徴量の補正値とが、イメージャ補正テーブル34に登録される。
【0048】
ステップS18:X線イメージャが周回軌道15を一周していなければ、ステップS12に戻りステップS18までの処理が繰り返される。X線イメージャがが周回軌道15を一周したならば、イメージャ補正テーブル34は完成しており、処理は終了される。
【0049】
上記のフローによりジンバル機構補正テーブル32とイメージャ補正テーブル34とが登録される。これらを用いて、放射線治療は以下のように行われる。
【0050】
天板9bの上に患者が寝載される。治療計画が入力部26から入力されると、制御装置8は治療台本体9bに信号を送る。信号を受信した治療台本体9bは、x軸、y軸、z軸の各々のモータを駆動し、治療計画においてアイソセンタ10に位置すべき部分が概ねアイソセンタ10に位置する目標位置まで治療台16を動かす。治療台16が目標位置に到達すると、そこがデジタルスケールの目盛りの原点とされる。以後の治療台16の動きは、デジタルスケールによって高精度でモニターされる。かつ、その動きは、x軸、y軸、z軸ともリニアベアリング(リニアガイド)が用いられているためにガタが少なく精密である。こうした治療台は、高精度に校正された放射線治療装置と共に全体として高い精度で治療計画どおりの放射線照射を可能にする。
【0051】
X線イメージャが患者の患部付近のX線画像を撮影する。補正演算プログラム36はイメージャ補正テーブル34を参照して、X線イメージャ光学系の特徴量の補正を加えた上で、X線イメージャによる2方向からのX線画像から、患部の3次元位置を算出する。
【0052】
3次元位置が特定された患部に対して、治療計画に基づいて治療用のX線を照射する方向が決められる。補正演算プログラムはジンバル機構補正テーブル32を参照して、ジンバル機構5の周回軌道15における位置に対応するパン軸とチルト軸との補正値を抽出する。放射線発生装置2は、抽出された補正値によってパン軸とチルト軸との角度を調整した上で、治療用の放射線を照射する。こうした補正により、例えば放射線発生装置と共に周回軌道15を走行する機構が重く、角度によって撓みが発生する可能性がある場合でも、撓み量を補正して患部に正確に放射線を照射することが可能になる。そして、患部の周囲の正常な組織に照射される放射線量が少なく抑えられる。
【0053】
こうした放射線治療装置1は、以下に示されるように、簡易的に原点(アイソセンタ)の校正をすることが可能である。
【0054】
治療台16の天板9b(または治療台本体9)の所定の位置には、金属球40が埋め込まれている。治療台16のデジタルスケールの値が所定の位置を指す位置に動かされると、金属球40はアイソセンタに移動する。金属球40は、X線イメージャにより撮影される。撮影された金属球40の位置は、補正演算プログラム36がイメージャ補正テーブル34を参照することにより補正される。補正された金属球40の位置は記録され、時系列的にプロットされる。
【0055】
その一例が、図7に示されるアイソセンタ時系列グラフである。このようなグラフにより、アイソセンタの位置が合っているかどうか、どのようにずれているかのトレンドを知ることができる。アイソセンタの位置があまり大きくずれていなければ、光学系の特徴量が大きくずれていることは考えにくい。そのため、日常的に、例えば一日に一度、行う校正としてはこうした方法が簡易でかつ充分である。アイソセンタの測定位置が大きくずれた場合、あるいは図7に示される例における5日目以降のようにずれが徐々に大きくなるトレンドが観察されたときは、校正具42を用い、図10のフローを再度行って校正が行われる。
【0056】
校正具42を用いた校正は例えば1年に1度か2度行われ、金属球40を用いたアイソセンタの校正は例えば毎日行われる。こうした校正は、正確であり、日常的には簡易に行われ好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、放射線治療装置と治療台を示す。
【図2】図2は、放射線治療装置を正面から見た構成図を示す。
【図3】図3は、解析装置の構成を示す。
【図4】図4は、記憶部に格納されているデータの構成を示す。
【図5】図5は、ジンバル機構補正テーブルを示す。
【図6】図6は、イメージャ補正テーブルを示す。
【図7】図7は、アイソセンタ時系列グラフを示す。
【図8】図8は、校正具を示す。
【図9】図9は、治療台の可動部を示す。
【図10】図10は、ジンバル機構補正テーブル、イメージャ補正テーブルを作成する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 放射線治療装置
2 放射線発生装置
3 ガイド
4 支持部材
5 ジンバル機構
7 解析装置
8 制御装置
9 治療台本体
9b 天板
7 解析装置
10 アイソセンタ
13a 第1のX線発生装置
13b 第2のX線発生装置
14a 第1のX線検出装置
14b 第2のX線検出装置
15 周回軌道
16 治療台
24 記憶部
32 ジンバル機構補正テーブル
34 イメージャ補正テーブル
36 補正演算プログラム
38 アイソセンタ時系列グラフ
42 校正具
44 剛球
46 支柱
50 x軸リニアガイド
52 y軸リニアガイド
54 z軸リニアガイド
P 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生装置と、
アイソセンタを中心とする周回軌道を形成するリングと、
前記放射線発生装置を搭載し、前記周回軌道に沿って移動するジンバル機構と、
前記周回軌道における座標を示す走行角と、前記ジンバル機構が前記放射線発生装置に与える補正角とを対応付けて格納する第1テーブルと、
前記ジンバル機構が所定の前記走行角にあるとき、前記第1テーブルにおいて対応する前記補正角を用いて前記ジンバル機構の角度を補正する第1補正部
とを具備する
放射線治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載された放射線治療装置であって、
前記第1補正部は、前記放射線発生装置が発生する放射線が前記アイソセンタに向かうように前記ジンバル機構の角度を補正する
放射線治療装置。
【請求項3】
請求項1または2のうちのいずれか1項に記載された放射線治療装置であって、
更に、第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャと第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャとを含むX線イメージャと、
前記X線イメージャの前記周回軌道における位置を示す前記走行角と、前記第1X線イメージャの光学系を設定するために決められる設定定数と前記第2X線イメージャの光学系を設定するために決められる設定定数との補正値とを対応づけて格納する第2テーブルと、
前記X線イメージャが所定の前記走行角に位置するとき、前記第2テーブルにおいて対応する前記補正値を用いて前記第1X線イメージャ及び前記第2X線イメージャにより撮影された画像に含まれる情報の補正を行う第2補正部
とを具備する
放射線治療装置。
【請求項4】
アイソセンタを中心とする周回軌道を形成するリングと、
第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャと第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャとを含むX線イメージャと、
前記X線イメージャの走行角(前記周回軌道における位置を示す座標)と、前記第1X線イメージャの光学系を設定するために決められる設定定数と前記第2X線イメージャの光学系を設定するために決められる設定定数との補正値とを対応づけて格納する第2テーブルと、
前記X線イメージャが所定の前記走行角にあるとき、前記第2テーブルにおいて対応する前記補正値を用いて前記第1X線イメージャ及び前記第2X線イメージャにより撮影された画像に含まれる情報の補正を行う第2補正部
とを具備する
放射線治療装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか1項に記載された放射線治療装置に用いられる放射線治療装置用治療台であって、
第1軸に沿って患者が寝載される治療台の天板を移動する第1リニアガイドと、
第2軸に沿って前記天板を移動する第2リニアガイドと、
第3軸に沿って前記天板を移動する第3リニアガイド
とを具備する
放射線治療装置用治療台。
【請求項6】
請求項5に記載された放射線治療装置用治療台であって、
前記第1軸に沿った位置を測定する第1デジタルスケールと、
前記第2軸に沿った位置を測定する第2デジタルスケールと、
前記第3軸に沿った位置を測定する第3デジタルスケール
とを具備する
放射線治療装置用治療台。
【請求項7】
請求項5または6のうちのいずれか1項に記載された放射線治療装置用治療台であって、
更に、前記第1X線イメージャと前記第2X線イメージャとの原点を校正するために使用される基準部材が埋め込まれている
放射線治療装置用治療台。
【請求項8】
アイソセンタを中心とする所定の周回軌道を形成するリングと、
前記周回軌道の上を移動し第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャと第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャとを搭載するX線イメージャ
とを備える放射線治療装置の座標校正方法であって、
相互の位置関係が固定された少なくとも6つの基準点を有する校正具を設置するステップと、
前記X線イメージャを前記周回軌道の所定の角度に設定するステップと、
前記基準点を第1X線イメージャで撮影して第1画像を得るステップと、
前記基準点を第2X線イメージャで撮影して第2画像を得るステップと、
前記第1画像と前記第2画像とにより前記基準点の3次元的な位置に関する情報を生成する3次元位置解析ステップと、
前記基準点の測定された相互の3次元的な位置と前記3次元位置解析ステップにより生成された相互の3次元的な位置とを比較して、前記第1X線イメージャの光学系を設定するために決められる設定定数と前記第2X線イメージャの光学系を設定するために決められる設定定数とを補正するための補正値を算出するステップと、
前記X線イメージャの前記周回軌道の上での角度と前記補正値とを対応づけて格納するテーブルを作成するステップと、
所定の角度で前記X線イメージャで撮影を行うとき前記テーブルを参照して前記所定の角度に対応する前記補正値により撮影された画像から得られる情報を補正するステップ
とを具備する
放射線治療装置の座標校正方法。
【請求項9】
請求項8に記載された放射線治療装置の座標校正方法であって、
前記放射線治療装置は更に、カメラを搭載し、前記周回軌道を移動するジンバル機構を備え、
前記基準点のうちの1つはアイソセンタに置かれ、
更に、前記ジンバル機構を前記周回軌道の所定の角度に設定するステップと、
前記カメラにより前記アイソセンタに置かれた前記基準点を撮影して、前記カメラが前記アイソセンタを向くように、前記ジンバル機構が備えるパン軸とチルト軸とのジンバル補正値を算出するステップと、
前記ジンバル機構の前記周回軌道の上での角度と前記ジンバル補正値とを対応づけて格納するジンバル補正テーブルを作成するステップと、
前記周回軌道の所定の角度にある前記ジンバル機構に搭載されるビームで前記アイソセンタを狙うとき、前記ジンバル補正テーブルにおいて前記所定の角度に対応する前記ジンバル補正値を用いてパン軸とチルト軸との少なくとも一方を動かすステップ
とを具備する
放射線治療装置の座標校正方法。
【請求項10】
アイソセンタを中心とする所定の周回軌道を形成するリングと、
前記周回軌道の上を移動し第1方向からX線を照射することにより第1X線画像を撮影する第1X線イメージャと第2方向からX線を照射することにより第2X線画像を撮影する第2X線イメージャとを搭載するX線イメージャと、
X線に対して不透明な基準部材が固定されたカウチ
とを備える放射線治療装置の座標校正方法であって、
前記カウチを所定の座標位置に移動するステップと、
前記基準部材を第1X線イメージャで撮影して第1画像を得るステップと、
前記基準部材を第2X線イメージャで撮影して第2画像を得るステップと、
前記第1画像と前記第2画像とにより前記基準部材の3次元的な位置に関する情報を得る3次元位置解析ステップと、
前記カウチが前記座標位置にあるときの前記基準部材の座標と前記3次元位置解析ステップにより得られた相互の3次元的な位置とを比較して、ずれを算出する演算部
を具備する
放射線治療装置の座標校正方法。
【請求項11】
請求項10に記載された放射線治療装置の座標校正方法であって、
さらに、前記ずれの時系列的な変化を記録しモニターするステップ
を具備する
放射線治療装置の座標校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−51216(P2006−51216A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235586(P2004−235586)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/高精度四次元放射線治療装置システムに関する開発研究」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】