説明

放射線治療装置およびその操作方法

【課題】 3次元図と比較して各断面図は容易に解明可能であり視覚化することができる。
【解決手段】 放射線治療装置は、治療用放射線の光源と、撮像用放射線の光源と、撮像用放射線による2次元画像の撮像装置と、撮像装置からの出力により断層撮影データを準備する演算手段と、を備え、治療用光源は断層撮影データからのフィードバックに基づいて制御可能となっており、演算手段は、撮像装置からの出力により複数の互いに交差する断面図を準備し、この断面図はポータル画像と類似するがコントラストがより良好であり断面図の細部は投影図の細部よりも細かくなっている。像のピクセルは、断面を横断して、通常は断面と直交して直線状に設けられた複数のボクセルの平均化により得られるものとなっている。オペレータに対して断面図を表示するディスプレイ手段が設けられていることが好ましい。オペレータからの指示に基づいて治療用光源を制御することができる。重ね合わせられた画像は、以前の検査または患者の治療のいずれかのものにより得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置およびこの放射線治療装置の操作および制御を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の放射線治療装置は、癌性細胞を殺すために、患者の内部にある腫瘍に向かって放射線ビームを照射させようとしている。その性質により、放射線は有害であり、患者の健常領域への放射線の照射を制限するようその作用力が設定されている。一般的に、ビームのコリメータ(照準器)を使用し、またビームが様々な方向から腫瘍に向かって照射するような方向指示テクニックを用いており、その結果、腫瘍箇所における照射量を最大として近隣領域の照射量を最小としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなテクニックは、オペレータによる腫瘍の位置の認識に基づいている。通常はこの知識は、以前の検査、および次の治療を改善するために治療後に行われるオフライン分析によって得られる。しかしながら、軟組織は短期間でも不規則に移動しがちであり、このことにより履歴情報の使用が制限されてしまう。
【0004】
この問題は、とりわけ前立腺の癌の治療において深刻となっている。前立腺は直腸や膀胱のような他の組織に近い位置にあり、これらの直腸や膀胱は治療時に照射される放射線の作用力に対して敏感である。注意を怠ったときに、このような部位への照射により発生する好ましくない副作用が容易に発生してしまう。しかしながら、これらの組織および前立腺の移動は共通しており、3〜8mmの間となっている。この距離は、組織間の離間距離よりも十分に大きいものであり、このことにより治療が困難となっている。
【0005】
前立腺の現在位置を確認してそれに応じて放射線ビームの方向づけを行うために、放射線治療装置にコンピュータ断層撮影(CT)装置を組み合わせることが提案されている。CTスキャンの3次元結果により、オペレータは前立腺の同定を行って放射線が照射されるべき所定箇所を確認することができる。このような構成により、制御が行われることによって治療の精度をより向上させることができる。
【0006】
一つの問題点は、3次元の(ホログラフィックの)ディスプレイを使用することができず、データセットは必ず2次元のスクリーン上に投影されるということである。トレースは、放射線が照射されるべき3次元の組織についてこの2次元スクリーン上で必ず行われる。適切なソフトウェアはデータセットを分析して照射パターンを出力することができるが、ソフトウェアからの出力は必ずオペレータにとって確認することができるよう理解可能なものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、治療用放射線および撮像用放射線を用いる放射線治療装置において、撮像用放射線による2次元画像の撮像装置と、この撮像装置からの出力により断層撮影データを準備する演算手段と、断層撮像データからのフィードバックに基づいて制御可能な治療用光源と、を備え、前述の演算手段は、撮像手段からの出力により複数の互いに交差する断面図を準備するよう構成されているような放射線治療装置を提供している。
【0008】
このような断面図は、「ポータル」画像を取り扱うのに慣れたオペレータにとってなじみのある様式となっている。このポータル画像は、患者を通過する放射線による治療の間において得られるものである。しかしながら、前述の断面図は、投影図と比較してコントラストが良好であり一部分の詳細をより細かく示すことができるようになっている。3次元図と比較して各断面図は容易に解明可能であり視覚化することができる。
【0009】
各断面図は、視覚化をより容易に行うために直交して形成されることが好ましい。各断面図は2つの自由度を与えているので少なくとも3つの断面図が用いられ、その結果3つの断面図は6つの自由度を与えることとなる。これらが照合されることにより、データセットが信頼性のあるものとなり、オペレータは大きなエラーを発生させることが確実になくなる。
【0010】
断面図は、実質的に治療用光源のアイソセンタにおいて交差することが好ましい。治療対象領域がこのアイソセンタ位置となることが多く、このように近接状態において放射線治療装置の精度が最も良好となる。
【0011】
各断面図は複数のピクセルを有するデジタル画像である。簡潔なアプローチ方法は、断層撮影のデータセットのボクセルの2次元平面に対応するようなピクセルを形成することである。しかしながら、このようにして形成された画像は非常に多くのノイズを含んでいる。概して、隣接するピクセルを平均化することによりノイズが取り除かれるが、このことにより解像度が低下してしまうという損失がある。一般的なCTセットにおいては、解像度は1つのボクセルあたり約1mmであり、このため解像度の低下が問題となりがちである。
【0012】
本発明においては、形成される画像の断面の性質により、ピクセルを、断面を横断して(通常は直交して、理論的には直線的に)設けられた複数のボクセルの平均化の結果とすることができる。このようにして、平均化により、CTセットの解像度を維持させながら、画像中のノイズを低減させることができる。3次元データセットのディスプレイと比較して、同じ解像度でより質が向上した画像による観察を行うことができ、また、より容易に解明を行うことができる。通常は、5以上20以下の数のボクセルを用いることにより良好な結果が得られる。約10、すなわち7以上15以下の数のボクセル数が最適である。
【0013】
オペレータに対して断面図を表示するディスプレイ手段が設けられていることが好ましい。マウスや他のポインタなどの入力手段を介して送られたオペレータからの指示に基づいて治療用光源を制御することができる。この入力手段はディスプレイと相関関係にあることが好ましい。相関関係は、ディスプレイで重ね合わせられた画像を経由するものとすることができ、このディスプレイは入力手段における操作に応答して移動可能となっている。重ね合わせられた画像は、以前の検査または患者の治療のいずれかのものから得ることができ、このことにより求めるべき領域または画像に形状を一致させることができる。重ね合わせられた画像は輪郭図であることが好ましく、このことにより下にある画像が鮮明となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、添付図面を参照して以下に記載する。
【0015】
図1に示すように、患者10は、寝床12または他の支持台の上に乗せられる。寝床の足下(または頭上)には回転可能なステージ14が配置され、このステージ14には、治療用放射線を発生させる治療用光源16と、撮像用放射線を発生させる診断用光源18と、(例えば)アモルファスシリコンからなる平板状の撮像装置20とがそれぞれ取り付けられている。このような撮像装置20は、CCDまたはフォトダイオードアレイを当該撮像装置に取り付けることにより、入射した撮像用放射線を可視画像または(この場合は)デジタル画像の出力に変換することができるようになっている。
【0016】
ステージ14は、アイソセンタ22と一致する水平軸を中心として回転可能となっている。アイソセンタは、治療すべき部分の仮想中心であり、患者のテーブル上方の近傍にある。光源16、18は、放射線がアイソセンタに向かうよう位置合わせが行われている。診断用光源18は、ステージの軸を中心とする回転により治療用光源16からオフセットしており、両方の光源の患者に向かう視野を鮮明とすることができるようになっている。撮像装置20は、診断用光源18と対向するようステージ14上で位置合わせが行われている。
【0017】
光源16、18間の回転オフセットは、撮像装置20を治療用光源16の放射線領域24の外部に設置するのに十分なものとなっている。このことにより、治療用光源16のMeVエネルギー放射線の被曝により損傷されるような撮像装置20を保護することができる。このMeVエネルギー放射線は、撮像用光源のkeVエネルギー放射線とは異なるものである。
【0018】
MeVおよびkeV放射線の両方を発生させることができる光源を、治療用および診断用の光源16、18両方に置き換えることができる。この場合には、治療の間に撮像装置が放射線領域の外方に移動可能なものとする必要があろう。この種の装置は英国特許公開公報GB−A−2353458号に開示されている。
【0019】
したがって、ステージ14が回転すると、両方の光源16、18および撮像装置20が患者を中心として共に回転し、相対位置は変わらない。このことにより、診断用光源18および撮像装置20は完全なコーンビームCTデータシートを作り出すことができる。また、治療用光源16は、複数の方向から放射線を患者の患部に向かって照射することができ、治療すべき場所の周囲の患部ではない場所への照射を制限することができる。
【0020】
図2は、データ処理装置を示す。診断用光源18およびステージ14は再構築サーバ26により制御され、この再構築サーバ26は撮像装置20からもデータを集めてこのデータを3次元CTデータセットに再構築している。このことは、ディスプレイ30とオペレータによって入力が行われる入力手段32とを有する治療用制御コンピュータ28を用いることにより行われる。一旦治療が決まると、これらのものは治療用光源16およびステージ14を制御するために用いられる。
【0021】
図3は、2次元投影におけるCTデータセット34を示す。データセット34内部の組織は、拡大された前立腺36および直腸38を含んでいる。この図において、画像の異なる部分の3次元における相対的な位置を識別することは困難である。ソフトウェアによりデータセットを分析して組織を識別することができるが、ソフトウェアの性質および組織が多数あることにより、オペレータにより照合が行われることが望ましい。このため、オペレータがデータセットを理解する必要がある。
【0022】
互いに直交する3つのスライス(薄片)40、42、44はデータセット34から取り出されたものである。これらのものは、データセット34の中央にあるアイソセンタで交差する。装置はたいていアイソセンタを目標としているので、これらのスライスは通常は照射対象領域を含んでいる。図4に示すように3つのスライスがディスプレイ30上に表示される。これらの画像により、(この場合では)前立腺36および直腸38の間の区別がより明らかとなる。装置は、患者の以前の診断検査から得られる治療対象の前立腺の画像46、または以前の治療において集められたデータから得られる画像46を重ね合わせる。この画像46は図4の点線で示されるが、実際上は画像を異なる色で示すようになっていることが好ましい。
【0023】
図4からわかるように、前立腺は、画像の収集時以降において移動している。このことは通常起こりうることであり、直腸および膀胱から受ける、患者により消化された食べ物や飲み物により発生する圧力によるものである。また、直腸および膀胱も移動し、このことは同時性の位置データがないことを意味し、放射線領域は、これらの組織の以前の位置およびその周囲の安全マージンの両方を避けるよう画定されなければならない。このことは、前立腺の全体が放射線により照射されることはないということを意味し、その結果、治療は不完全なものとなる。
【0024】
これに対して、同時性のCTデータを用いることにより、対象および非対象となる組織の実際の位置を確認することができ、それに応じて放射線照射の位置合わせを行うことができる。オペレータは、前立腺36を上重ねするために画像46を取り扱うことができ、制御コンピュータはこの情報を用いて治療用光源16の方向づけを行っている。この種のソフトウェアは、例えば出願人により提供されるiView(商標登録)ソフトウェア等、公知のものである。
【0025】
ソフトウェアにより示されるスライスは、「ポータル」画像、すなわち患者を通過して減衰する治療用放射線から得られる画像と近似している。オペレータは、ポータル画像を読みとるのに慣れているので、本発明の画像も容易に読みとることができる。しかしながら、ポータル画像は、計画された治療が有効と認められるまで放射線の治療レベルを患者に適用することを避けることを目的としているので、本発明のように用いるのに適していない。
【0026】
図5は、上述の処理における画像の質の向上方法を示す。上述の方法では、1枚のスライス48がデータセットから取り出されている。3次元のデータセットは3D配置のボクセルを有しており、各ボクセルは関連する強度を有する。スライスは5以上20以下の数のボクセル厚さを有し、通常は10個分の厚さとなっている。ソフトウェアは、スライス48の厚さ方向に延びるボクセル50のラインを選択する。これらのボクセルの強度が平均化され、この平均値が対応する画像54のピクセル52の強度として用いられる。
【0027】
その結果、画像における局所のトランジェットが滑らかとなり、画像はその粒状性の大部分を失う。組織をより容易に識別することができるようになる。しかしながら、平均化した場合のケースにおいて通常は画像の解析度は低下しない。
【0028】
上述の実施の形態においては、本発明の範囲内において多くの変形例を作ることができることが理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の治療装置の概略図である。
【図2】データ処理装置を示す図である。
【図3】CT装置により通常得られる、強調表示された治療対象領域のデータに係るデータセットの斜視図である。
【図4】本発明により得られる断面図である。
【図5】3次元のデータセットから2次元の画像への変換を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用放射線および撮像用放射線を用いる放射線治療装置において、
撮像用放射線による2次元画像の撮像装置と、
前記撮像装置からの出力により断層撮影データを準備する演算手段と、
前記断層撮影データからのフィードバックに基づいて制御可能な治療用光源と、
を備え、
前記演算手段は、前記撮像装置からの出力により複数の互いに交差する断面図を準備するよう構成されていることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
各断面図は直交していることを特徴とする請求項1または2記載の放射線治療装置。
【請求項3】
少なくとも3つの断面図が準備されることを特徴とする請求項1記載の放射線治療装置。
【請求項4】
各断面図は治療用光源のアイソセンタにおいて交差することを特徴とする請求項3記載の放射線治療装置。
【請求項5】
各断面図はピクセルを有する画像であり、このピクセルの強度は断層撮影データセットの複数のボクセルにより決められることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項6】
複数のボクセルは前記断面を横切るよう配置されることを特徴とする請求項5記載の放射線治療装置。
【請求項7】
複数のボクセルは前記断面と直交するよう配置されることを特徴とする請求項6記載の放射線治療装置。
【請求項8】
複数のボクセルは直線的に配置されることを特徴とする請求項6または7記載の放射線治療装置。
【請求項9】
5以上20以下の数のボクセルが用いられることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項10】
7以上15以下の数のボクセルが用いられることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項11】
10個のボクセルが用いられることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項12】
各断面図を表示するディスプレイ手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項13】
前記治療用光源は、入力手段を介してオペレータにより入力された指示に基づいて制御されることを特徴とする請求項12記載の放射線治療装置。
【請求項14】
入力手段は、ディスプレイと相関関係のあるものであることを特徴とする請求項13記載の放射線治療装置。
【請求項15】
前記相関関係は、前記ディスプレイで重ね合わせられた画像を経由するものであり、このディスプレイは入力手段における操作に応答して移動可能となっていることを特徴とする請求項14記載の放射線治療装置。
【請求項16】
重ね合わせられた画像は、以前の検査または患者の治療のうちのいずれかのものから得られることを特徴とする請求項15記載の放射線治療装置。
【請求項17】
重ね合わせられた画像は輪郭図であることを特徴とする請求項15または16記載の放射線治療装置。
【請求項18】
添付図面を参照して記載されるものおよび/または添付図面で示されるものであることを特徴とする放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−507864(P2006−507864A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554644(P2004−554644)
【出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004881
【国際公開番号】WO2004/047923
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】