放射線治療装置および放射線透視装置
【課題】被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援する。
【解決手段】シンチレータプレート5bおよび5cが、治療用放射線Nによってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する。また、遮光板5dが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する。カメラ5eおよび5fが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光の画像を遮光板5dによって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する。そして、制御装置が、カメラ5eおよび5fによって撮影された画像を用いて、治療対象の領域である患部領域に含まれる生体組織ごとに分離された画像を生成する。
【解決手段】シンチレータプレート5bおよび5cが、治療用放射線Nによってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する。また、遮光板5dが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する。カメラ5eおよび5fが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光の画像を遮光板5dによって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する。そして、制御装置が、カメラ5eおよび5fによって撮影された画像を用いて、治療対象の領域である患部領域に含まれる生体組織ごとに分離された画像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置および放射線透視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線治療装置を用いた治療では、生体組織(例えば、骨、筋肉、脂肪など)のコントラストが高いエネルギー領域(例えば、数10keV〜数100keV)のX線を使った透視画像やCT(Computed Tomography)画像に基づいて、治療計画が立てられていた。さらに、近年では、治療の安全性確保の観点から、被検体と照射野の機械的な位置合わせだけでなく、治療用放射線源中心と同じ視点から見込んだX線透視画像による患部領域の再確認が行われるようになってきている。
【0003】
このような位置合せや再確認を行うため、近年では、EPID(Electronic Portal Imaging Device)と呼ばれる高エネルギー透視装置が利用され始めている。EPIDは、数MeVのエネルギーをもつ治療用放射線を線源とした透視画像を撮影する装置である。かかるEPIDには、半導体を用いた「平面X線検出器」または「シンチレータプレートとレンズ系とイメージングセンサー」が用いられるが、通常、耐放射線性の観点から後者が実装されることが多い。
【0004】
図11は、従来のEPIDの一例を示す図である。例えば、図11に示すように、シンチレータプレートとして、例えば1枚の「金属/りんシンチレーション検出器」を備え、その蛍光像を鏡で反射させた後、反射した蛍光像を「ビデオカメラ」で撮影する機構のEPIDが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−238969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、以下に示すように、術者にとって被検体の位置合せや患部領域の再確認を行うことが困難であるという課題があった。
【0007】
前述したように、従来のEPIDでは、数MeVのエネルギーをもつ治療用放射線が使用される。しかし、数MeVの放射線では、撮影される透視画像のコントラストが低くなってしまうことが知られている。
【0008】
図12は、生体組織ごとの光子エネルギーに対する質量エネルギー吸収係数を示す図である。図12に示すように、光子(フォトン)エネルギーが数10keV〜数100keVでは、骨、筋肉、脂肪の間で質量エネルギー吸収係数の差が比較的大きいが、数MeVでは差が小さくなる。ここで、質量エネルギー吸収係数と質量減弱係数とは単調増加関係にあることが知られている。そのため、質量減弱係数についても、光子エネルギーが数10keV〜数100keVでは、骨、筋肉、脂肪の間で差が比較的大きく、数MeVでは差が小さくなる。したがって、X線を使用して画像化した場合、光子エネルギーが数10keV〜数100keVでは、コントラストが高く、数MeVではコントラストが低くなる。
【0009】
例えば、前述した被検体の位置合せや患部領域の再確認は、数10keV〜数100keVのX線を使ったCT画像と、EPIDによって撮影された透視画像とを比較することによって行われる。図13は、数10keV〜数100keVのX線を使ったCT画像およびEPIDによって撮影された画像を示す図である。図13において、上段の画像はCT画像であり、下段の画像は従来のEPIDによって撮影された透視画像である。図13に示すように、CT画像とEPIDの画像とは非常に画質が異なる。そのため、術者にとって、それぞれの画像を比較して被検体の位置合せや患部領域の再確認を行うことは非常に困難であった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができる放射線治療装置および放射線透視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、被検体の治療に用いられる治療用放射線を発生する放射線発生手段と、前記放射線発生手段により発生する治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の本発明は、被検体の治療に用いられる治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1または6記載の本発明によれば、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施例1にかかる放射線治療装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施例1にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図3】図3は、本実施例2にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図4】図4は、本実施例3にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図5】図5は、本実施例4にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図6】図6は、本実施例5にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図7】図7は、通常のビデオカメラで光軸と斜交する物体面を撮影した様子を示す図である。
【図8】図8は、Scheimplugの原理を説明するための原理図である。
【図9】図9は、仮想平面上の画像Aとシンチレータプレート面上の画像Bとの対応関係を示す模式図である。
【図10】図10は、シンチレータプレート面上の画像Bとイメージセンサー面上の画像Cとの対応関係を示す模式図である。
【図11】図11は、従来のEPIDの一例を示す図である。
【図12】図12は、生体組織ごとの光子エネルギーに対する質量エネルギー吸収係数を示す図である。
【図13】図13は、数10keV〜数100keVのX線を使ったCT画像およびEPIDによって撮影された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる放射線治療装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
まず、本実施例1にかかる放射線治療装置の全体構成について説明する。図1は、本実施例1にかかる放射線治療装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施例1にかかる放射線治療装置100は、天板1、スタンド2、ガントリ3、治療ヘッド4、放射線透視部5および制御装置6を有する。
【0017】
天板1は、放射線治療の対象となる被検体Hが載置される寝台である。スタンド2は、ガントリ3を支持し、ガントリ3を回転させるための駆動装置を内部に備えている。ガントリ3は、天板1を挟んで対向するように治療ヘッド4と放射線透視部5とを支持しており、被検体Hが位置する水平方向の軸Gを中心に治療ヘッド4および放射線透視部5を移動させる。また、ガントリ3は、図示していない電子銃や導波ガイド等を内部に備えている。
【0018】
治療ヘッド4は、被検体Hの治療に用いられる治療用放射線を発生する。具体的には、治療ヘッド4は、導波ガイド4a、ベンディングマグネット4b、ターゲット4cおよびコリメータ4dを内部に備えている。そして、ガントリ3の電子銃によって発生した電子線Lは、導波ガイド4aによって加速されたうえで、ベンディングマグネット4bに入射する。ベンディングマグネット4bは、入射した電子線Lの方向を下方に向けることで、電子線Lをターゲット4cに衝突させる。これにより、治療用放射線Nが発生する。発生した治療用放射線Nは、コリメータ4dによって照射形状や線量分布が調整されたうえで、被検体Hに照射される。
【0019】
放射線透視部5は、被検体Hを透過した放射線を検出して、被検体Hの位置合せや患部領域の再確認を容易に行うための透視画像を撮影する。この放射線透視部5については、後に詳細に説明する。
【0020】
制御装置6は、放射線治療装置100全体を制御する。例えば、制御装置6は、操作者による指示に応じて、スタンド2が有する駆動装置を駆動することでガントリ3を回転させる。また、例えば、制御装置6は、放射線透視部5が有するカメラによって撮影された画像に対して所定の画像処理を施し、画像処理を施した画像を表示する。
【0021】
このような構成のもと、本実施例1では、放射線透視部5が、複数種類の吸収エネルギー分布に対応した透視画像を同時に撮影し、撮影した画像と、各生体組織の質量吸収係数の先験値情報とを用いて、生体組織ごとに分離された画像をリアルタイムに生成する。これにより、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像をリアルタイムに術者に提示することが可能になる。したがって、本実施例1によれば、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができる。
【0022】
次に、本実施例1にかかる放射線透視部5の構成について説明する。図2は、本実施例1にかかる放射線透視部5の構成を示す図である。本実施例1にかかる放射線透視部5は、透視画像を撮影する点、および、放射線治療装置100において治療用放射線源中心と同じ視点から撮影することで位置合わせの再確認を行う点では、従来の1枚のシンチレータプレートを使うEPIDと同様である。そのため、放射線透視部5は、被検体Hを挟んで治療用放射線源の中心と対向する位置に配置される。
【0023】
図2に示すように、本実施例1にかかる放射線透視部5は、暗箱5a、2枚のシンチレータプレート5bおよび5c、遮光板5d、2台のカメラ5eおよび5fを有する。また、第1のカメラ5eは、第1のレンズ系および第1のイメージセンサーを内部に有しており、第2のカメラ5fは、第2のレンズ系および第2のイメージセンサーを内部に有している。
【0024】
ここで、シンチレータプレート5bおよび5cは、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。そして、シンチレータプレート5bおよび5cは、遮光板5dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように、暗箱5aの内部に配置されている。
【0025】
なお、ここでは、各シンチレータプレートによって生じる蛍光の方向を規制するための手段として遮光板を用いた場合について説明するが、例えば、遮光板の代わりに、遮光効果を有するX線フィルタを用いてもよい。
【0026】
上記の構成において、加速された電子線Lがターゲット4cに当たって発生する治療用放射線Nは、ターゲット4cと電子線Lとの衝突位置を中心とする点光源とみなすことができる。この点光源は治療用放射線源中心に相当し、フラットニングフィルタ7を通過することで、放射線強度が方向によらずほぼ均一になるように調整される。
【0027】
そして、治療用放射線Nは、コリメータ4dと被検体Hを通過したのちに、第1のシンチレータプレート5bに当たって第1の蛍光を発生させる。次に、治療用放射線Nは、遮光板5dを通過した後に、吸収エネルギー分布の異なる第2のシンチレータプレート5c
に当たって第2の蛍光を発生させる。ここで、遮光板5dは、第1の蛍光と第2の蛍光が混ざらないようにするために設けられているだけなので、治療用放射線Nに対して減衰や散乱といった影響をほとんど与えない。
【0028】
第1の蛍光を撮影した画像(以下、「第1の蛍光画像」と呼ぶ)は、カメラ5eが有する第1のレンズ系および第1のイメージングセンサーによってリアルタイムに撮影される。また、第2の蛍光を撮影した画像(以下、「第2の蛍光画像」と呼ぶ)も同様に、カメラ5fが有する第2のレンズ系および第2のイメージングセンサーによって撮影される。それぞれのレンズ系およびイメージングセンサーの幾何学的配置は固定されているため、撮影された画像は、図2に示す仮想平面Π(治療用放射線Nの中心軸Fと直交する平面)において、撮影した画像に逆変換される。この逆変換については、後に詳細に説明する。
【0029】
こうして、カメラ5eおよび5fによって撮影された蛍光画像蛍光画像は、それぞれ制御装置6に送信される。
【0030】
制御装置6は、カメラ5eおよび5fによって撮影された蛍光画像をもとに、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像を生成する。具体的には、制御装置6は、カメラ5eによって撮影された第1の蛍光画像およびカメラ5fによって撮影された第2の蛍光画像をそれぞれ受信すると、各組織に対する質量源弱係数といった先験情報に基づいて、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像を生成する。また、制御装置6は、撮像された画像はリアルタイムに歪補正/アフィン変換等を行い、幾何学的に合同な画像に変換する。
【0031】
第1の蛍光画像および第2の蛍光画像それぞれにおいて、同じ位置にある画素の信号位置は、異なる吸収エネルギー分布のX線源に対する各組織のX線吸収の積分値に対応する。そのため、各組織の代表的な質量源弱係数の先験値情報から、画素ごとに逆問題を解くことができ、最終的に組織ごとの画像に分離することが可能である。
【0032】
ここで、生体組織ごとに分離された画像の生成方法の一例について具体的に説明する。なお、ここでは、生体組織が骨と筋肉だけから構成されていると仮定する。一般的に、あるエネルギーEのX線が被検体によって吸収された後のX線の強度Iは、以下に示す式(1)のように表される。
【0033】
【数1】
【0034】
上記の式(1)において、I0(E)は被検体がないときのX線強度、μ(E)は質量源弱係数(cm2/g)、ρは密度(g/cm3)、tは厚さ(cm)である。また、添え字BおよびMは、それぞれ骨と筋肉を意味している。
【0035】
また、第1の蛍光画像のときの「被検体がないときのX線強度」をI01、「第1のシンチレータプレートで測定されるX線強度」をI1、「組織の質量源弱係数」をそれぞれμB1、μM1とし、第2の蛍光画像のときの「被検体がないときのX線強度」をI02、「第2のシンチレータプレートで測定されるX線強度」をI2、「組織の質量源弱係数」をμB2、μM2とする。
【0036】
ここで、I1、I2はシンチレータプレートで検出される測定値であり、I01、I02、μB1、μM1、μB2、μM2が先験値として与えられているものとすれば、以下に示す式(2)および式(3)が成立する。
【0037】
【数2】
【0038】
この連立線形方程式を解くことによって、全ての画素で骨密度ρBtB、筋肉密度ρMtMを求めることができる。これにより、以下に示す式(4)、式(5)に対応する分離された骨画像IBや筋肉画像IMを生成することができる。
【0039】
【数3】
【0040】
こうした一連の手順を実行することで、制御装置6は、カメラ5eおよび5fによって撮影された蛍光画像をもとに、生体組織ごとに分離された画像をリアルタイムに生成する。このように、制御装置6が、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付けと加算処理が行われた合成画像を参照することで、従来の「治療用放射線を線源とした透過画像」では判別しにくかった画像をより見やすくすることが可能になる。
【0041】
上述してきたように、本実施例1では、ターゲット4cが、被検体Hの治療に用いられる治療用放射線Nを発生する。また、シンチレータプレート5bおよび5cが、治療用放射線Nによってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する。また、遮光板5dが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する。カメラ5eおよび5fが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光の画像を遮光板5dによって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する。そして、制御装置6が、カメラ5eおよび5fによって撮影された画像を用いて、治療対象の領域である患部領域に含まれる生体組織ごとに分離された画像を生成する。
【0042】
したがって、本実施例1によれば、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができる。具体的には、組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像をリアルタイムに術者に提示することで「等価的にコントラスト比の高い画像」を利用できるようになる。その結果、被検体の位置合わせや患部領域の再確認が容易に行えるようになる。
【0043】
ところで、上記実施例1では、2種類のシンチレータプレートを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、2種類以上のシンチレータプレートを用いてもよい。そこで、以下では実施例2として、2種類以上のシンチレータプレートを用いた場合について説明する。なお、本実施例2にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例2にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例2】
【0044】
図3は、本実施例2にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図3に示すように、本実施例2にかかる放射線透視部は、治療用放射線Nの中心軸Fに沿う方向に放射線透視部15および25を積み重ねることによって構成されている。
【0045】
第1の放射線透視部15は、暗箱15a、2枚のシンチレータプレート15bおよび15c、遮光板15d、2台のカメラ15eおよび15fを有する。また、第2の放射線透視部25は、暗箱25a、2枚のシンチレータプレート25bおよび25c、遮光板25d、2台のカメラ25eおよび15fを有する。
【0046】
ここで、第1の放射線透視部15における暗箱15a内でのシンチレータプレート15bおよび15c、遮光板15d、カメラ15eおよび15fの配置は、実施例1の放射線透視部5における暗箱5a内でのシンチレータプレート5bおよび5c、遮光板5d、カメラ5eおよび5fの配置と同様である。
【0047】
また、第2の放射線透視部25における暗箱25a内でのシンチレータプレート25bおよび25c、遮光板25d、カメラ25eおよび25fの配置も、実施例1の放射線透視部5における暗箱5a内でのシンチレータプレート5bおよび5c、遮光板5d、カメラ5eおよび5fの配置と同様である。
【0048】
なお、ここでは、実施例1と同様に、各シンチレータプレートによって生じる蛍光の方向を規制するための手段として遮光板を用いた場合について説明するが、例えば、遮光板の代わりに、遮光効果を有するX線フィルタを用いてもよい。
【0049】
ここで、第1の放射線透視部15のシンチレータプレート15bおよび15c、第2の放射線透視部25のシンチレータプレート25bおよび25cは、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。したがって、本実施例2にかかる放射線透視部によれば、4種類のエネルギー分布の放射線を検出することができる。
【0050】
すなわち、本実施例2では、患部領域に4種類の生体組織が存在する場合でも、それぞれの生体組織に対応する画像を生成することができる。同様に、例えば、n種類の吸収エネルギー分布を持つシンチレータプレートを有する放射線透視部によれば、n種類の組織画像を求めることが可能になる。
【0051】
上述してきたように、本実施例2では、2種類以上のシンチレータプレートが、それぞれ異なる吸収エネルギー分布に応じて放射線を検出する。したがって、本実施例2によれば、より多くの種類の生体組織ごとに分離された画像を生成することができる。
【0052】
ところで、上記実施例1および2では、平坦なプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに直交するように、各シンチレータプレートを配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、プレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜めに交わるように、各シンチレータプレートを配置してもよい。そこで、以下では実施例3として、プレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜めに交わるように、各シンチレータプレートを配置した場合について説明する。なお、本実施例3にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例3にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例3】
【0053】
図4は、本実施例3にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図4に示すように、本実施例3にかかる放射線透視部35は、暗箱35a、2枚のシンチレータプレート35bおよび35c、遮光板35d、2台のカメラ35eおよび35fを有する。
【0054】
ここで、シンチレータプレート35bおよび35cは、実施例1および2におけるシンチレータプレートと同様に、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。そして、本実施例3では、シンチレータプレート35bおよび35cは、遮光板35dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜交するように、暗箱35aの内部に配置されている。このとき、シンチレータプレート35bの表面がカメラ35e側に向き、シンチレータプレート35cの表面がカメラ35f側に向くように、シンチレータプレート35bおよび35cが設けられる。
【0055】
なお、ここでは、実施例1および2と同様に、各シンチレータプレートによって生じる蛍光の方向を規制するための手段として遮光板を用いた場合について説明するが、例えば、遮光板の代わりに、遮光効果を有するX線フィルタを用いてもよい。
【0056】
このように、シンチレータプレート35bおよび35cを配置することによって、例えば、図2に示した放射線透視部5と比べて、治療用放射線Nの中心軸Fに添った方向の厚みを小さくすることができる。この場合、イメージングセンサーで撮影した画像を仮想平面Πに逆投影するための変換計算が若干変わるだけで、処理の流れは全く同じである。
【0057】
上述してきたように、本実施例3では、シンチレータプレート35bおよび35cの表面が、それぞれカメラ35e側およびカメラ35f側に向くように、シンチレータプレート35bおよび35cが斜めに傾けて設けられる。したがって、本実施例3によれば、放射線透視部について、治療用放射線Nの中心軸Fに添った方向の厚みを小さくすることができる。
【0058】
ところで、上記実施例1、2および3では、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、同じ吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートを用いてもよい。そこで、以下では実施例4として、同じ吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートを用いた場合について説明する。なお、本実施例4にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例4にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例4】
【0059】
図5は、本実施例4にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図5に示すように、本実施例4にかかる放射線透視部は、実施例2と同様に、治療用放射線Nの中心軸Fに沿う方向に2つの放射線透視部45および55を積み重ねることによって構成されている。
【0060】
第1の放射線透視部45は、暗箱45a、2枚のシンチレータプレート45bおよび45c、放射線用フィルタ45d、2台のカメラ45eおよび45fを有する。また、第2の放射線透視部55は、暗箱55a、2枚のシンチレータプレート55bおよび55c、放射線用フィルタ55d、2台のカメラ55eおよび55fを有する。
【0061】
ここで、シンチレータプレート45b、45c、55bおよび55cは、それぞれが同じ吸収エネルギー分布を有している。そして、シンチレータプレート45bおよび45cは、放射線用フィルタ45dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように、暗箱45aの内部に配置されている。また、シンチレータプレート55bおよび55cは、放射線用フィルタ55dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように、暗箱55aの内部に配置されている。
【0062】
ここで用いられる放射線用フィルタ45dおよび55dとしては、例えば、アルミや鉛などの金属からなる「単層で平坦な金属板」、または、それらの金属板を積層した「多層で平坦な金属板」などが利用可能である。また、各放射線用フィルタは、遮光効果も有しているものとする。
【0063】
このように、同じ吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートの間に放射線用フィルタを設けることによって、各シンチレータプレートがそれぞれ異なる帯域の放射線を検出するようになる。これにより、異なる吸収エネルギー分布を有する複数種類のシンチレータプレートを用意する必要がなくなるので、設計の自由度を向上させることができる。
【0064】
上述してきたように、本実施例4では、シンチレータプレート45b、45c、55bおよび55cが、それぞれ同一の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発する。また、放射線用フィルタ45dおよび55dが、各シンチレータプレートが異なる吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発するように配置されている。
【0065】
したがって、本実施例4によれば、ひとつの吸収エネルギー分布を有するシンチレータプレートのみを用いて装置を構成することができるので、設計の自由度を向上させることができる。また、異なる吸収エネルギー分布を有する複数種類のシンチレータプレートをそれぞれ用意する場合と比べて、製造コストを低減することができる。
【0066】
ところで、上記実施例1〜4では、シンチレータプレートと、遮光板または放射線用フィルタとを積層した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、シンチレータプレートと、遮光板または放射線用フィルタとをそれぞれ別の構造体としてもよい。そこで、以下では実施例5として、シンチレータプレートと遮光板とをそれぞれ別の構造体とした場合について説明する。なお、本実施例5にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例5にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例5】
【0067】
図6は、本実施例5にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図6に示すように、本実施例5にかかる放射線透視部65は、暗箱65a、2枚のシンチレータプレート65bおよび65c、遮光板65d、2台のカメラ65eおよび65fを有する。
【0068】
ここで、シンチレータプレート65bおよび65cは、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。そして、本実施例5では、シンチレータプレート65bは暗箱65aの上面に設けられており、シンチレータプレート65cは暗箱65aの下面に設けられている。また、遮光板65dは、治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜めに交わるように、暗箱65aの内部に配置されている。ここで、遮光板65dは、暗箱65aの上面および下面に対する角度が45度をなすように、設けられている。
【0069】
そして、本実施例5では、遮光板65dの表面が鏡面仕上げされている。そのため、遮光板65dは、シンチレータプレート65bおよび65cから放射された蛍光を反射する「鏡」として機能する。すなわち、本実施例5では、シンチレータプレート65bおよび65cから放射された蛍光は、いったん遮光板65dで反射され、その鏡像をカメラ65eおよび65fが撮影するという仕組みになっている。
【0070】
上述してきたように、本実施例5では、シンチレータプレート65bおよび65cが、治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように配設されている。また、遮光板65dの表面が鏡面仕上げされ、治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜交するように配設されている。そして、カメラ65eおよび65fが、遮光板65dに映った蛍光の鏡像を撮影する。遮光板65dに映る鏡像は、斜め方向から撮影した場合でも全ての領域についてピントが合うので、ひずみなどに関する補正を行う必要がなく、画像処理を容易に行うことができる。
【0071】
なお、上記で説明した各実施例において、シンチレータプレート、遮光板、放射線用フィルタによる散乱X線が邪魔になる場合には、シンチレータプレートの間にブッキー装置(Bucky Device)を設けてもよい。ここで、「ブッキー装置」とは、機械的に高速に往復運動可能なコリメータである。
【0072】
また、上記で説明した実施例1〜4では、シンチレータプレート上の蛍光画像は、レンズ系を通して斜め方向からイメージングセンサーで撮影される。その場合、通常のビデオカメラで蛍光画像を撮影すると、レンズ面とイメージセンサー面が平行となっているため、全領域でピントが合ったものを撮影することができない。
【0073】
図7は、通常のビデオカメラで光軸と斜交する物体面を撮影した様子を示す図である。図7に示すように、通常のビデオカメラで光軸と斜交する物体面を撮影した場合には、一部の領域のみピントが合った画像となり、全領域でピントが合った画像を撮影することができない。このようなピントの問題を回避する方法としては、例えば、被写界深度を深くする方法が挙げられるが、設定可能な被写界深度には限界がある。
【0074】
そこで、例えば、レンズ面とイメージセンサー面とが常にScheimplugの原理を満たす位置関係となるように、カメラのレンズ系を配置する。ここでいう「レンズ面」とは、レンズ光軸と直交し、かつレンズ中心を通る平面である。また、「イメージセンサー面」とは、イメージセンサー内部の受光面である。
【0075】
図8は、Scheimplugの原理を説明するための原理図である。図8に示すように、Scheimplugの原理では、物体面(Subject Plane)と、レンズ面(Lens Plane)と、イメージセンサー面(Image Plane)とが、唯一の共通交線(Scheimpflug Intersection)で交わるように配置される。ここでいう物体面は、上記で説明した各実施例では、シンチレータプレート面に対応する。
【0076】
このように、シンチレータプレート面、レンズ面およびイメージセンサー面がScheimplugの原理を満たす位置関係となるように、シンチレータプレート、レンズ系およびイメージセンサーをそれぞれ配置することによって、全領域でピントが合った蛍光画像を撮影することができる。
【0077】
次に、図2〜6に示した仮想平面Πにおいて撮影画像を逆変換するための方法について説明する。なお、ここでは、治療用放射線Nの中心軸Fと直交する仮想平面Πにおける画像を「A」、シンチレータプレート面(または放射線用フィルタの鏡面)上の画像を「B」、Scheimplugの原理を満たすときのイメージングセンサー面上での画像を「C」とし、各画像の対応関係を求める。
【0078】
最初に、仮想平面上の画像Aとシンチレータプレート面上の画像Bとの対応関係を導出する。図9は、仮想平面上の画像Aとシンチレータプレート面上の画像Bとの対応関係を示す模式図である。
【0079】
図9に示すように、まず、治療用放射線源の中心点を点P、治療用放射線の中心軸をZ軸とする。すなわち、点PはZ軸上にある。また、Z軸と直交する仮想平面を平面Πとし、Z軸と平面Πとの交点を点Qとする。また、点Qを通ってZ軸と直交する2つの軸をX軸、Y軸とする。また、Z軸と斜交する平坦なシンチレータプレート面を平面Σとし、Z軸と平面Σとの交点を点Rとする。また、平面Σ上に、点Rにおいて直交するX’軸、Y’軸を設定する。このとき、Y’軸については、平面Π上のY軸と平行になるように設定する。
【0080】
そして、X軸に平行な単位ベクトルをe1、Y軸(またはY’軸)に平行な単位ベクトルをe2、Z軸に平行な単位ベクトルをe3、X’軸に平行な単位ベクトルをe4とする。また、平面Π上の任意の点をSとした場合に、点Sは点Qを始点として以下に示す式(6)で表され、点Pは点Qを始点として以下に示す式(7)で表されるものとする。
【0081】
【数4】
【数5】
【0082】
さらに、線分PSを延長して平面Σと交わる点を点Tとした場合に、点Tが平面Σ上の点として以下に示す式(8)で表されると仮定する。また、点Pは点Rを始点として以下に示す式(9)で表されているものとする。
【0083】
【数6】
【数7】
【0084】
この結果、式(6)および式(7)から式(10)が導かれる。また、式(8)および式(9)から式(11)が導かれる。
【0085】
【数8】
【数9】
【0086】
ここで、ベクトルPSとベクトルPTとはそれぞれ同一直線上にあることから、それぞれの間の比例係数をKとおくと、以下に示す式(12)の関係が成立する。また、前述した定義から、単位ベクトルe4は、単位ベクトルe1と単位ベクトルe3との線形結合で表されるはずである。そこで、単位ベクトルe4を以下に示す式(13)で表す。
【0087】
【数10】
【数11】
【0088】
そして、式(13)を式(12)に代入し、単位ベクトルe1、e2、e3がそれぞれ独立であることを用いれば、簡単な計算によって以下に示す式(14)、式(15)、式(16)の関係式が導かれる。
【0089】
【数12】
【0090】
以上のことから、画像Aと画像Bとの対応関係は、平面Π上の任意の点S(平面Π上で点Qを始点としたときの座標(x1,y1))と、平面Σ上の点T(平面Σ上で点Rを始点としたときの座標(x2,y2))との対応関係と同じであり、その対応関係、すなわち点Tから点Sへの写像は、式(14)、式(15)で対応付けられることが分かる。
【0091】
続いて、シンチレータプレート面上の画像Bとイメージセンサー面上の画像Cとの対応関係を導出する。図10は、シンチレータプレート面上の画像Bとイメージセンサー面上の画像Cとの対応関係を示す模式図である。ここでは、シンチレータプレート面とレンズ面とイメージセンサー面とがScheimplugの原理を満たす位置関係にあると仮定した場合に、シンチレータプレート面(=平面Σ)上の任意の点Tが、イメージングセンサー面上の点Uにどのように対応付けられるかという関係式を導出する。なお、ここでは、イメージングセンサー面を平面Δ、レンズ面を平面Γ、レンズの中心点を点O’とする。
【0092】
図10に示すように、ここではシンチレータプレート面とレンズ面とイメージセンサー面とがSchieimplugの原理を満たすことと仮定しているので、平面Σ、平面Γおよび平面Δの共通交線は、図9に示したY軸(またはY’軸)と平行になる。したがって、各平面の共通交線は単位ベクトルe2と平行になる。また、図9に示したX’軸と、平面Σ、平面Γおよび平面Δの共通交線との交点を点Oとし、点Oを始点として任意の点Tの座標をベクトル式で表現すると、以下に示す式(17)のように表される。
【0093】
【数13】
【0094】
ここで、平面Δ上で点Oを通り、かつ共通交線と直交する軸をX’’軸とし、X’’軸と平行な単位ベクトルをe5とする。また、点Tから出た光は必ずレンズ中心O’を通り、直進して点Uに到達する。ここで、点Uは、点Oを始点として以下に示す式(18)で表されるものとする。
【0095】
【数14】
【0096】
なお、計算の便宜上、ここでは、レンズ中心O’は点Oを通り、平面Γ上で共通交線と直交する線上にあることとする。実際には、レンズ面とレンズ中心とがこのような関係を満たすように配置される。この場合、点O’は、始点Oとして以下に示す式(19)で表されることとする。このとき、ベクトルOO’は、単位ベクトルe4と単位ベクトルe5との線形結合で表される。
【0097】
【数15】
【0098】
また、ベクトルTO’とベクトルUO’とは互いに平行な関係にあることから、それぞれの間の比例係数をHとすると、以下に示す式(20)の関係が成立する。
【0099】
【数16】
【0100】
そして、単位ベクトルe2、e4、e5がそれぞれ独立であることを用いれば、簡単な計算によって以下に示す式(21)、式(22)、式(23)の関係式が導かれる。
【0101】
【数17】
【0102】
以上のことから、画像Bと画像Cとの対応関係は、平面Π上の任意の点T(平面Π上で点Oを始点としたときの座標(x’2,y’2)と、平面Δ上の点U(平面Δ上で点Oを始点としたときの座標(x3,y3))との対応関係と同じであり、その対応関係、すなわち点Uから点Tへの写像は、式(21)、式(22)で対応付けられることが分かる。
【0103】
最後に、平面Σ上において点Tを始点としたときの点Tの座標(x2,y2)(=ベクトルRT)と、点Oを始点としたときの座標(x'2,y'2)(=ベクトルOT)との関係式を導く。図10において、点T、点R、点Oとの間には、以下に示す式(24)のベクトル式が成り立つ。
【0104】
【数18】
【0105】
このとき、ベクトルORは、x’軸と平行な定ベクトルであることから、x’20を定数とすると、以下に示す式(25)で表される。
【0106】
【数19】
【0107】
したがって、簡単な計算によって以下に示す式(26)、式(27)の関係式が導かれる。
【0108】
【数20】
【0109】
ここで、式(21)および式(22)ならびに式(26)および式(27)から、点Uは点Tに写像でき、さらに、式(14)および式(15)によって、点Tは点Sに写像できることが分かる。すなわち、画像Cが画像Bに1対1に対応付けられ、画像Bが画像Aに1対1に対応づけられることが分かる。
【0110】
以上のことから、イメージングセンサー面Δ上の画像Cは、仮想平面Π上の画像Aに1対1の関係を保ったまま変換可能であることが分かる。したがって、前述した各実施例において、放射線透視部によって撮影された異なるシンチレータプレートによる複数枚の画像は、シンチレータプレートの位置が異なっても、イメージセンサーで撮影した画像情報と、光学系の位置情報(=シンチレータプレートの位置、各レンズの位置、各イメージセンサーの位置)とから、仮想平面Π上の画像に逆変換(逆写像)することができる。このことと、先に説明した生体組織分離のアルゴリズムとを組み合わせることによって、生体組織ごとの分離画像を得ることができる。
【0111】
なお、上記実施例で説明した放射線透視部を用いてCone−Beam CT撮影を行えば、数MeVのエネルギーを持つ放射線では金属も比較的容易に透過してしまうので、ストリークアーチファクトのない組織ごとの断層像を得ることも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 天板
2 スタンド
3 ガントリ
4 治療ヘッド
4a 導波ガイド
4b ベンディングマグネット
4c ターゲット
4d コリメータ
5,15,25,35,45,55,65 放射線透視部
5a,15a,25a,35a,45a,55a,65a 暗箱
5b,5c,15b,15c,25b,25c,35b,35c,45b,45c,55b,55c,65b,65c シンチレータプレート
5d,15d,25d,35d,45d,55d,65d,45d 遮光板または放射線用フィルタ
5e,5f,15e,15f,25e,25f,35e,35f,45e,45f,55e,55f,65e,65f, カメラ
6 制御装置
7 フラットニングフィルタ
100 放射線治療装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置および放射線透視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線治療装置を用いた治療では、生体組織(例えば、骨、筋肉、脂肪など)のコントラストが高いエネルギー領域(例えば、数10keV〜数100keV)のX線を使った透視画像やCT(Computed Tomography)画像に基づいて、治療計画が立てられていた。さらに、近年では、治療の安全性確保の観点から、被検体と照射野の機械的な位置合わせだけでなく、治療用放射線源中心と同じ視点から見込んだX線透視画像による患部領域の再確認が行われるようになってきている。
【0003】
このような位置合せや再確認を行うため、近年では、EPID(Electronic Portal Imaging Device)と呼ばれる高エネルギー透視装置が利用され始めている。EPIDは、数MeVのエネルギーをもつ治療用放射線を線源とした透視画像を撮影する装置である。かかるEPIDには、半導体を用いた「平面X線検出器」または「シンチレータプレートとレンズ系とイメージングセンサー」が用いられるが、通常、耐放射線性の観点から後者が実装されることが多い。
【0004】
図11は、従来のEPIDの一例を示す図である。例えば、図11に示すように、シンチレータプレートとして、例えば1枚の「金属/りんシンチレーション検出器」を備え、その蛍光像を鏡で反射させた後、反射した蛍光像を「ビデオカメラ」で撮影する機構のEPIDが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−238969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、以下に示すように、術者にとって被検体の位置合せや患部領域の再確認を行うことが困難であるという課題があった。
【0007】
前述したように、従来のEPIDでは、数MeVのエネルギーをもつ治療用放射線が使用される。しかし、数MeVの放射線では、撮影される透視画像のコントラストが低くなってしまうことが知られている。
【0008】
図12は、生体組織ごとの光子エネルギーに対する質量エネルギー吸収係数を示す図である。図12に示すように、光子(フォトン)エネルギーが数10keV〜数100keVでは、骨、筋肉、脂肪の間で質量エネルギー吸収係数の差が比較的大きいが、数MeVでは差が小さくなる。ここで、質量エネルギー吸収係数と質量減弱係数とは単調増加関係にあることが知られている。そのため、質量減弱係数についても、光子エネルギーが数10keV〜数100keVでは、骨、筋肉、脂肪の間で差が比較的大きく、数MeVでは差が小さくなる。したがって、X線を使用して画像化した場合、光子エネルギーが数10keV〜数100keVでは、コントラストが高く、数MeVではコントラストが低くなる。
【0009】
例えば、前述した被検体の位置合せや患部領域の再確認は、数10keV〜数100keVのX線を使ったCT画像と、EPIDによって撮影された透視画像とを比較することによって行われる。図13は、数10keV〜数100keVのX線を使ったCT画像およびEPIDによって撮影された画像を示す図である。図13において、上段の画像はCT画像であり、下段の画像は従来のEPIDによって撮影された透視画像である。図13に示すように、CT画像とEPIDの画像とは非常に画質が異なる。そのため、術者にとって、それぞれの画像を比較して被検体の位置合せや患部領域の再確認を行うことは非常に困難であった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができる放射線治療装置および放射線透視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、被検体の治療に用いられる治療用放射線を発生する放射線発生手段と、前記放射線発生手段により発生する治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の本発明は、被検体の治療に用いられる治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1または6記載の本発明によれば、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施例1にかかる放射線治療装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施例1にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図3】図3は、本実施例2にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図4】図4は、本実施例3にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図5】図5は、本実施例4にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図6】図6は、本実施例5にかかる放射線透視部の構成を示す図である。
【図7】図7は、通常のビデオカメラで光軸と斜交する物体面を撮影した様子を示す図である。
【図8】図8は、Scheimplugの原理を説明するための原理図である。
【図9】図9は、仮想平面上の画像Aとシンチレータプレート面上の画像Bとの対応関係を示す模式図である。
【図10】図10は、シンチレータプレート面上の画像Bとイメージセンサー面上の画像Cとの対応関係を示す模式図である。
【図11】図11は、従来のEPIDの一例を示す図である。
【図12】図12は、生体組織ごとの光子エネルギーに対する質量エネルギー吸収係数を示す図である。
【図13】図13は、数10keV〜数100keVのX線を使ったCT画像およびEPIDによって撮影された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる放射線治療装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
まず、本実施例1にかかる放射線治療装置の全体構成について説明する。図1は、本実施例1にかかる放射線治療装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施例1にかかる放射線治療装置100は、天板1、スタンド2、ガントリ3、治療ヘッド4、放射線透視部5および制御装置6を有する。
【0017】
天板1は、放射線治療の対象となる被検体Hが載置される寝台である。スタンド2は、ガントリ3を支持し、ガントリ3を回転させるための駆動装置を内部に備えている。ガントリ3は、天板1を挟んで対向するように治療ヘッド4と放射線透視部5とを支持しており、被検体Hが位置する水平方向の軸Gを中心に治療ヘッド4および放射線透視部5を移動させる。また、ガントリ3は、図示していない電子銃や導波ガイド等を内部に備えている。
【0018】
治療ヘッド4は、被検体Hの治療に用いられる治療用放射線を発生する。具体的には、治療ヘッド4は、導波ガイド4a、ベンディングマグネット4b、ターゲット4cおよびコリメータ4dを内部に備えている。そして、ガントリ3の電子銃によって発生した電子線Lは、導波ガイド4aによって加速されたうえで、ベンディングマグネット4bに入射する。ベンディングマグネット4bは、入射した電子線Lの方向を下方に向けることで、電子線Lをターゲット4cに衝突させる。これにより、治療用放射線Nが発生する。発生した治療用放射線Nは、コリメータ4dによって照射形状や線量分布が調整されたうえで、被検体Hに照射される。
【0019】
放射線透視部5は、被検体Hを透過した放射線を検出して、被検体Hの位置合せや患部領域の再確認を容易に行うための透視画像を撮影する。この放射線透視部5については、後に詳細に説明する。
【0020】
制御装置6は、放射線治療装置100全体を制御する。例えば、制御装置6は、操作者による指示に応じて、スタンド2が有する駆動装置を駆動することでガントリ3を回転させる。また、例えば、制御装置6は、放射線透視部5が有するカメラによって撮影された画像に対して所定の画像処理を施し、画像処理を施した画像を表示する。
【0021】
このような構成のもと、本実施例1では、放射線透視部5が、複数種類の吸収エネルギー分布に対応した透視画像を同時に撮影し、撮影した画像と、各生体組織の質量吸収係数の先験値情報とを用いて、生体組織ごとに分離された画像をリアルタイムに生成する。これにより、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像をリアルタイムに術者に提示することが可能になる。したがって、本実施例1によれば、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができる。
【0022】
次に、本実施例1にかかる放射線透視部5の構成について説明する。図2は、本実施例1にかかる放射線透視部5の構成を示す図である。本実施例1にかかる放射線透視部5は、透視画像を撮影する点、および、放射線治療装置100において治療用放射線源中心と同じ視点から撮影することで位置合わせの再確認を行う点では、従来の1枚のシンチレータプレートを使うEPIDと同様である。そのため、放射線透視部5は、被検体Hを挟んで治療用放射線源の中心と対向する位置に配置される。
【0023】
図2に示すように、本実施例1にかかる放射線透視部5は、暗箱5a、2枚のシンチレータプレート5bおよび5c、遮光板5d、2台のカメラ5eおよび5fを有する。また、第1のカメラ5eは、第1のレンズ系および第1のイメージセンサーを内部に有しており、第2のカメラ5fは、第2のレンズ系および第2のイメージセンサーを内部に有している。
【0024】
ここで、シンチレータプレート5bおよび5cは、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。そして、シンチレータプレート5bおよび5cは、遮光板5dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように、暗箱5aの内部に配置されている。
【0025】
なお、ここでは、各シンチレータプレートによって生じる蛍光の方向を規制するための手段として遮光板を用いた場合について説明するが、例えば、遮光板の代わりに、遮光効果を有するX線フィルタを用いてもよい。
【0026】
上記の構成において、加速された電子線Lがターゲット4cに当たって発生する治療用放射線Nは、ターゲット4cと電子線Lとの衝突位置を中心とする点光源とみなすことができる。この点光源は治療用放射線源中心に相当し、フラットニングフィルタ7を通過することで、放射線強度が方向によらずほぼ均一になるように調整される。
【0027】
そして、治療用放射線Nは、コリメータ4dと被検体Hを通過したのちに、第1のシンチレータプレート5bに当たって第1の蛍光を発生させる。次に、治療用放射線Nは、遮光板5dを通過した後に、吸収エネルギー分布の異なる第2のシンチレータプレート5c
に当たって第2の蛍光を発生させる。ここで、遮光板5dは、第1の蛍光と第2の蛍光が混ざらないようにするために設けられているだけなので、治療用放射線Nに対して減衰や散乱といった影響をほとんど与えない。
【0028】
第1の蛍光を撮影した画像(以下、「第1の蛍光画像」と呼ぶ)は、カメラ5eが有する第1のレンズ系および第1のイメージングセンサーによってリアルタイムに撮影される。また、第2の蛍光を撮影した画像(以下、「第2の蛍光画像」と呼ぶ)も同様に、カメラ5fが有する第2のレンズ系および第2のイメージングセンサーによって撮影される。それぞれのレンズ系およびイメージングセンサーの幾何学的配置は固定されているため、撮影された画像は、図2に示す仮想平面Π(治療用放射線Nの中心軸Fと直交する平面)において、撮影した画像に逆変換される。この逆変換については、後に詳細に説明する。
【0029】
こうして、カメラ5eおよび5fによって撮影された蛍光画像蛍光画像は、それぞれ制御装置6に送信される。
【0030】
制御装置6は、カメラ5eおよび5fによって撮影された蛍光画像をもとに、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像を生成する。具体的には、制御装置6は、カメラ5eによって撮影された第1の蛍光画像およびカメラ5fによって撮影された第2の蛍光画像をそれぞれ受信すると、各組織に対する質量源弱係数といった先験情報に基づいて、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像を生成する。また、制御装置6は、撮像された画像はリアルタイムに歪補正/アフィン変換等を行い、幾何学的に合同な画像に変換する。
【0031】
第1の蛍光画像および第2の蛍光画像それぞれにおいて、同じ位置にある画素の信号位置は、異なる吸収エネルギー分布のX線源に対する各組織のX線吸収の積分値に対応する。そのため、各組織の代表的な質量源弱係数の先験値情報から、画素ごとに逆問題を解くことができ、最終的に組織ごとの画像に分離することが可能である。
【0032】
ここで、生体組織ごとに分離された画像の生成方法の一例について具体的に説明する。なお、ここでは、生体組織が骨と筋肉だけから構成されていると仮定する。一般的に、あるエネルギーEのX線が被検体によって吸収された後のX線の強度Iは、以下に示す式(1)のように表される。
【0033】
【数1】
【0034】
上記の式(1)において、I0(E)は被検体がないときのX線強度、μ(E)は質量源弱係数(cm2/g)、ρは密度(g/cm3)、tは厚さ(cm)である。また、添え字BおよびMは、それぞれ骨と筋肉を意味している。
【0035】
また、第1の蛍光画像のときの「被検体がないときのX線強度」をI01、「第1のシンチレータプレートで測定されるX線強度」をI1、「組織の質量源弱係数」をそれぞれμB1、μM1とし、第2の蛍光画像のときの「被検体がないときのX線強度」をI02、「第2のシンチレータプレートで測定されるX線強度」をI2、「組織の質量源弱係数」をμB2、μM2とする。
【0036】
ここで、I1、I2はシンチレータプレートで検出される測定値であり、I01、I02、μB1、μM1、μB2、μM2が先験値として与えられているものとすれば、以下に示す式(2)および式(3)が成立する。
【0037】
【数2】
【0038】
この連立線形方程式を解くことによって、全ての画素で骨密度ρBtB、筋肉密度ρMtMを求めることができる。これにより、以下に示す式(4)、式(5)に対応する分離された骨画像IBや筋肉画像IMを生成することができる。
【0039】
【数3】
【0040】
こうした一連の手順を実行することで、制御装置6は、カメラ5eおよび5fによって撮影された蛍光画像をもとに、生体組織ごとに分離された画像をリアルタイムに生成する。このように、制御装置6が、生体組織ごとに分離された画像や、任意に重み付けと加算処理が行われた合成画像を参照することで、従来の「治療用放射線を線源とした透過画像」では判別しにくかった画像をより見やすくすることが可能になる。
【0041】
上述してきたように、本実施例1では、ターゲット4cが、被検体Hの治療に用いられる治療用放射線Nを発生する。また、シンチレータプレート5bおよび5cが、治療用放射線Nによってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する。また、遮光板5dが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する。カメラ5eおよび5fが、シンチレータプレート5bおよび5cによって発生した蛍光の画像を遮光板5dによって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する。そして、制御装置6が、カメラ5eおよび5fによって撮影された画像を用いて、治療対象の領域である患部領域に含まれる生体組織ごとに分離された画像を生成する。
【0042】
したがって、本実施例1によれば、被検体の位置合せや患部領域の再確認を容易に行うことができるように術者を支援することができる。具体的には、組織ごとに分離された画像や、任意に重み付け加算された合成画像をリアルタイムに術者に提示することで「等価的にコントラスト比の高い画像」を利用できるようになる。その結果、被検体の位置合わせや患部領域の再確認が容易に行えるようになる。
【0043】
ところで、上記実施例1では、2種類のシンチレータプレートを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、2種類以上のシンチレータプレートを用いてもよい。そこで、以下では実施例2として、2種類以上のシンチレータプレートを用いた場合について説明する。なお、本実施例2にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例2にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例2】
【0044】
図3は、本実施例2にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図3に示すように、本実施例2にかかる放射線透視部は、治療用放射線Nの中心軸Fに沿う方向に放射線透視部15および25を積み重ねることによって構成されている。
【0045】
第1の放射線透視部15は、暗箱15a、2枚のシンチレータプレート15bおよび15c、遮光板15d、2台のカメラ15eおよび15fを有する。また、第2の放射線透視部25は、暗箱25a、2枚のシンチレータプレート25bおよび25c、遮光板25d、2台のカメラ25eおよび15fを有する。
【0046】
ここで、第1の放射線透視部15における暗箱15a内でのシンチレータプレート15bおよび15c、遮光板15d、カメラ15eおよび15fの配置は、実施例1の放射線透視部5における暗箱5a内でのシンチレータプレート5bおよび5c、遮光板5d、カメラ5eおよび5fの配置と同様である。
【0047】
また、第2の放射線透視部25における暗箱25a内でのシンチレータプレート25bおよび25c、遮光板25d、カメラ25eおよび25fの配置も、実施例1の放射線透視部5における暗箱5a内でのシンチレータプレート5bおよび5c、遮光板5d、カメラ5eおよび5fの配置と同様である。
【0048】
なお、ここでは、実施例1と同様に、各シンチレータプレートによって生じる蛍光の方向を規制するための手段として遮光板を用いた場合について説明するが、例えば、遮光板の代わりに、遮光効果を有するX線フィルタを用いてもよい。
【0049】
ここで、第1の放射線透視部15のシンチレータプレート15bおよび15c、第2の放射線透視部25のシンチレータプレート25bおよび25cは、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。したがって、本実施例2にかかる放射線透視部によれば、4種類のエネルギー分布の放射線を検出することができる。
【0050】
すなわち、本実施例2では、患部領域に4種類の生体組織が存在する場合でも、それぞれの生体組織に対応する画像を生成することができる。同様に、例えば、n種類の吸収エネルギー分布を持つシンチレータプレートを有する放射線透視部によれば、n種類の組織画像を求めることが可能になる。
【0051】
上述してきたように、本実施例2では、2種類以上のシンチレータプレートが、それぞれ異なる吸収エネルギー分布に応じて放射線を検出する。したがって、本実施例2によれば、より多くの種類の生体組織ごとに分離された画像を生成することができる。
【0052】
ところで、上記実施例1および2では、平坦なプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに直交するように、各シンチレータプレートを配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、プレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜めに交わるように、各シンチレータプレートを配置してもよい。そこで、以下では実施例3として、プレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜めに交わるように、各シンチレータプレートを配置した場合について説明する。なお、本実施例3にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例3にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例3】
【0053】
図4は、本実施例3にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図4に示すように、本実施例3にかかる放射線透視部35は、暗箱35a、2枚のシンチレータプレート35bおよび35c、遮光板35d、2台のカメラ35eおよび35fを有する。
【0054】
ここで、シンチレータプレート35bおよび35cは、実施例1および2におけるシンチレータプレートと同様に、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。そして、本実施例3では、シンチレータプレート35bおよび35cは、遮光板35dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜交するように、暗箱35aの内部に配置されている。このとき、シンチレータプレート35bの表面がカメラ35e側に向き、シンチレータプレート35cの表面がカメラ35f側に向くように、シンチレータプレート35bおよび35cが設けられる。
【0055】
なお、ここでは、実施例1および2と同様に、各シンチレータプレートによって生じる蛍光の方向を規制するための手段として遮光板を用いた場合について説明するが、例えば、遮光板の代わりに、遮光効果を有するX線フィルタを用いてもよい。
【0056】
このように、シンチレータプレート35bおよび35cを配置することによって、例えば、図2に示した放射線透視部5と比べて、治療用放射線Nの中心軸Fに添った方向の厚みを小さくすることができる。この場合、イメージングセンサーで撮影した画像を仮想平面Πに逆投影するための変換計算が若干変わるだけで、処理の流れは全く同じである。
【0057】
上述してきたように、本実施例3では、シンチレータプレート35bおよび35cの表面が、それぞれカメラ35e側およびカメラ35f側に向くように、シンチレータプレート35bおよび35cが斜めに傾けて設けられる。したがって、本実施例3によれば、放射線透視部について、治療用放射線Nの中心軸Fに添った方向の厚みを小さくすることができる。
【0058】
ところで、上記実施例1、2および3では、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、同じ吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートを用いてもよい。そこで、以下では実施例4として、同じ吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートを用いた場合について説明する。なお、本実施例4にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例4にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例4】
【0059】
図5は、本実施例4にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図5に示すように、本実施例4にかかる放射線透視部は、実施例2と同様に、治療用放射線Nの中心軸Fに沿う方向に2つの放射線透視部45および55を積み重ねることによって構成されている。
【0060】
第1の放射線透視部45は、暗箱45a、2枚のシンチレータプレート45bおよび45c、放射線用フィルタ45d、2台のカメラ45eおよび45fを有する。また、第2の放射線透視部55は、暗箱55a、2枚のシンチレータプレート55bおよび55c、放射線用フィルタ55d、2台のカメラ55eおよび55fを有する。
【0061】
ここで、シンチレータプレート45b、45c、55bおよび55cは、それぞれが同じ吸収エネルギー分布を有している。そして、シンチレータプレート45bおよび45cは、放射線用フィルタ45dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように、暗箱45aの内部に配置されている。また、シンチレータプレート55bおよび55cは、放射線用フィルタ55dを介して張り合わせられたうえで、それぞれのプレート面が治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように、暗箱55aの内部に配置されている。
【0062】
ここで用いられる放射線用フィルタ45dおよび55dとしては、例えば、アルミや鉛などの金属からなる「単層で平坦な金属板」、または、それらの金属板を積層した「多層で平坦な金属板」などが利用可能である。また、各放射線用フィルタは、遮光効果も有しているものとする。
【0063】
このように、同じ吸収エネルギー分布を有する複数のシンチレータプレートの間に放射線用フィルタを設けることによって、各シンチレータプレートがそれぞれ異なる帯域の放射線を検出するようになる。これにより、異なる吸収エネルギー分布を有する複数種類のシンチレータプレートを用意する必要がなくなるので、設計の自由度を向上させることができる。
【0064】
上述してきたように、本実施例4では、シンチレータプレート45b、45c、55bおよび55cが、それぞれ同一の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発する。また、放射線用フィルタ45dおよび55dが、各シンチレータプレートが異なる吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発するように配置されている。
【0065】
したがって、本実施例4によれば、ひとつの吸収エネルギー分布を有するシンチレータプレートのみを用いて装置を構成することができるので、設計の自由度を向上させることができる。また、異なる吸収エネルギー分布を有する複数種類のシンチレータプレートをそれぞれ用意する場合と比べて、製造コストを低減することができる。
【0066】
ところで、上記実施例1〜4では、シンチレータプレートと、遮光板または放射線用フィルタとを積層した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、シンチレータプレートと、遮光板または放射線用フィルタとをそれぞれ別の構造体としてもよい。そこで、以下では実施例5として、シンチレータプレートと遮光板とをそれぞれ別の構造体とした場合について説明する。なお、本実施例5にかかる放射線治療装置の全体構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、放射線透視部の構成が異なるのみであるので、ここでは、本実施例5にかかる放射線透視部の構成について説明する。
【実施例5】
【0067】
図6は、本実施例5にかかる放射線透視部の構成を示す図である。図6に示すように、本実施例5にかかる放射線透視部65は、暗箱65a、2枚のシンチレータプレート65bおよび65c、遮光板65d、2台のカメラ65eおよび65fを有する。
【0068】
ここで、シンチレータプレート65bおよび65cは、それぞれが異なる吸収エネルギー分布を有している。そして、本実施例5では、シンチレータプレート65bは暗箱65aの上面に設けられており、シンチレータプレート65cは暗箱65aの下面に設けられている。また、遮光板65dは、治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜めに交わるように、暗箱65aの内部に配置されている。ここで、遮光板65dは、暗箱65aの上面および下面に対する角度が45度をなすように、設けられている。
【0069】
そして、本実施例5では、遮光板65dの表面が鏡面仕上げされている。そのため、遮光板65dは、シンチレータプレート65bおよび65cから放射された蛍光を反射する「鏡」として機能する。すなわち、本実施例5では、シンチレータプレート65bおよび65cから放射された蛍光は、いったん遮光板65dで反射され、その鏡像をカメラ65eおよび65fが撮影するという仕組みになっている。
【0070】
上述してきたように、本実施例5では、シンチレータプレート65bおよび65cが、治療用放射線Nの中心軸Fに対して直交するように配設されている。また、遮光板65dの表面が鏡面仕上げされ、治療用放射線Nの中心軸Fに対して斜交するように配設されている。そして、カメラ65eおよび65fが、遮光板65dに映った蛍光の鏡像を撮影する。遮光板65dに映る鏡像は、斜め方向から撮影した場合でも全ての領域についてピントが合うので、ひずみなどに関する補正を行う必要がなく、画像処理を容易に行うことができる。
【0071】
なお、上記で説明した各実施例において、シンチレータプレート、遮光板、放射線用フィルタによる散乱X線が邪魔になる場合には、シンチレータプレートの間にブッキー装置(Bucky Device)を設けてもよい。ここで、「ブッキー装置」とは、機械的に高速に往復運動可能なコリメータである。
【0072】
また、上記で説明した実施例1〜4では、シンチレータプレート上の蛍光画像は、レンズ系を通して斜め方向からイメージングセンサーで撮影される。その場合、通常のビデオカメラで蛍光画像を撮影すると、レンズ面とイメージセンサー面が平行となっているため、全領域でピントが合ったものを撮影することができない。
【0073】
図7は、通常のビデオカメラで光軸と斜交する物体面を撮影した様子を示す図である。図7に示すように、通常のビデオカメラで光軸と斜交する物体面を撮影した場合には、一部の領域のみピントが合った画像となり、全領域でピントが合った画像を撮影することができない。このようなピントの問題を回避する方法としては、例えば、被写界深度を深くする方法が挙げられるが、設定可能な被写界深度には限界がある。
【0074】
そこで、例えば、レンズ面とイメージセンサー面とが常にScheimplugの原理を満たす位置関係となるように、カメラのレンズ系を配置する。ここでいう「レンズ面」とは、レンズ光軸と直交し、かつレンズ中心を通る平面である。また、「イメージセンサー面」とは、イメージセンサー内部の受光面である。
【0075】
図8は、Scheimplugの原理を説明するための原理図である。図8に示すように、Scheimplugの原理では、物体面(Subject Plane)と、レンズ面(Lens Plane)と、イメージセンサー面(Image Plane)とが、唯一の共通交線(Scheimpflug Intersection)で交わるように配置される。ここでいう物体面は、上記で説明した各実施例では、シンチレータプレート面に対応する。
【0076】
このように、シンチレータプレート面、レンズ面およびイメージセンサー面がScheimplugの原理を満たす位置関係となるように、シンチレータプレート、レンズ系およびイメージセンサーをそれぞれ配置することによって、全領域でピントが合った蛍光画像を撮影することができる。
【0077】
次に、図2〜6に示した仮想平面Πにおいて撮影画像を逆変換するための方法について説明する。なお、ここでは、治療用放射線Nの中心軸Fと直交する仮想平面Πにおける画像を「A」、シンチレータプレート面(または放射線用フィルタの鏡面)上の画像を「B」、Scheimplugの原理を満たすときのイメージングセンサー面上での画像を「C」とし、各画像の対応関係を求める。
【0078】
最初に、仮想平面上の画像Aとシンチレータプレート面上の画像Bとの対応関係を導出する。図9は、仮想平面上の画像Aとシンチレータプレート面上の画像Bとの対応関係を示す模式図である。
【0079】
図9に示すように、まず、治療用放射線源の中心点を点P、治療用放射線の中心軸をZ軸とする。すなわち、点PはZ軸上にある。また、Z軸と直交する仮想平面を平面Πとし、Z軸と平面Πとの交点を点Qとする。また、点Qを通ってZ軸と直交する2つの軸をX軸、Y軸とする。また、Z軸と斜交する平坦なシンチレータプレート面を平面Σとし、Z軸と平面Σとの交点を点Rとする。また、平面Σ上に、点Rにおいて直交するX’軸、Y’軸を設定する。このとき、Y’軸については、平面Π上のY軸と平行になるように設定する。
【0080】
そして、X軸に平行な単位ベクトルをe1、Y軸(またはY’軸)に平行な単位ベクトルをe2、Z軸に平行な単位ベクトルをe3、X’軸に平行な単位ベクトルをe4とする。また、平面Π上の任意の点をSとした場合に、点Sは点Qを始点として以下に示す式(6)で表され、点Pは点Qを始点として以下に示す式(7)で表されるものとする。
【0081】
【数4】
【数5】
【0082】
さらに、線分PSを延長して平面Σと交わる点を点Tとした場合に、点Tが平面Σ上の点として以下に示す式(8)で表されると仮定する。また、点Pは点Rを始点として以下に示す式(9)で表されているものとする。
【0083】
【数6】
【数7】
【0084】
この結果、式(6)および式(7)から式(10)が導かれる。また、式(8)および式(9)から式(11)が導かれる。
【0085】
【数8】
【数9】
【0086】
ここで、ベクトルPSとベクトルPTとはそれぞれ同一直線上にあることから、それぞれの間の比例係数をKとおくと、以下に示す式(12)の関係が成立する。また、前述した定義から、単位ベクトルe4は、単位ベクトルe1と単位ベクトルe3との線形結合で表されるはずである。そこで、単位ベクトルe4を以下に示す式(13)で表す。
【0087】
【数10】
【数11】
【0088】
そして、式(13)を式(12)に代入し、単位ベクトルe1、e2、e3がそれぞれ独立であることを用いれば、簡単な計算によって以下に示す式(14)、式(15)、式(16)の関係式が導かれる。
【0089】
【数12】
【0090】
以上のことから、画像Aと画像Bとの対応関係は、平面Π上の任意の点S(平面Π上で点Qを始点としたときの座標(x1,y1))と、平面Σ上の点T(平面Σ上で点Rを始点としたときの座標(x2,y2))との対応関係と同じであり、その対応関係、すなわち点Tから点Sへの写像は、式(14)、式(15)で対応付けられることが分かる。
【0091】
続いて、シンチレータプレート面上の画像Bとイメージセンサー面上の画像Cとの対応関係を導出する。図10は、シンチレータプレート面上の画像Bとイメージセンサー面上の画像Cとの対応関係を示す模式図である。ここでは、シンチレータプレート面とレンズ面とイメージセンサー面とがScheimplugの原理を満たす位置関係にあると仮定した場合に、シンチレータプレート面(=平面Σ)上の任意の点Tが、イメージングセンサー面上の点Uにどのように対応付けられるかという関係式を導出する。なお、ここでは、イメージングセンサー面を平面Δ、レンズ面を平面Γ、レンズの中心点を点O’とする。
【0092】
図10に示すように、ここではシンチレータプレート面とレンズ面とイメージセンサー面とがSchieimplugの原理を満たすことと仮定しているので、平面Σ、平面Γおよび平面Δの共通交線は、図9に示したY軸(またはY’軸)と平行になる。したがって、各平面の共通交線は単位ベクトルe2と平行になる。また、図9に示したX’軸と、平面Σ、平面Γおよび平面Δの共通交線との交点を点Oとし、点Oを始点として任意の点Tの座標をベクトル式で表現すると、以下に示す式(17)のように表される。
【0093】
【数13】
【0094】
ここで、平面Δ上で点Oを通り、かつ共通交線と直交する軸をX’’軸とし、X’’軸と平行な単位ベクトルをe5とする。また、点Tから出た光は必ずレンズ中心O’を通り、直進して点Uに到達する。ここで、点Uは、点Oを始点として以下に示す式(18)で表されるものとする。
【0095】
【数14】
【0096】
なお、計算の便宜上、ここでは、レンズ中心O’は点Oを通り、平面Γ上で共通交線と直交する線上にあることとする。実際には、レンズ面とレンズ中心とがこのような関係を満たすように配置される。この場合、点O’は、始点Oとして以下に示す式(19)で表されることとする。このとき、ベクトルOO’は、単位ベクトルe4と単位ベクトルe5との線形結合で表される。
【0097】
【数15】
【0098】
また、ベクトルTO’とベクトルUO’とは互いに平行な関係にあることから、それぞれの間の比例係数をHとすると、以下に示す式(20)の関係が成立する。
【0099】
【数16】
【0100】
そして、単位ベクトルe2、e4、e5がそれぞれ独立であることを用いれば、簡単な計算によって以下に示す式(21)、式(22)、式(23)の関係式が導かれる。
【0101】
【数17】
【0102】
以上のことから、画像Bと画像Cとの対応関係は、平面Π上の任意の点T(平面Π上で点Oを始点としたときの座標(x’2,y’2)と、平面Δ上の点U(平面Δ上で点Oを始点としたときの座標(x3,y3))との対応関係と同じであり、その対応関係、すなわち点Uから点Tへの写像は、式(21)、式(22)で対応付けられることが分かる。
【0103】
最後に、平面Σ上において点Tを始点としたときの点Tの座標(x2,y2)(=ベクトルRT)と、点Oを始点としたときの座標(x'2,y'2)(=ベクトルOT)との関係式を導く。図10において、点T、点R、点Oとの間には、以下に示す式(24)のベクトル式が成り立つ。
【0104】
【数18】
【0105】
このとき、ベクトルORは、x’軸と平行な定ベクトルであることから、x’20を定数とすると、以下に示す式(25)で表される。
【0106】
【数19】
【0107】
したがって、簡単な計算によって以下に示す式(26)、式(27)の関係式が導かれる。
【0108】
【数20】
【0109】
ここで、式(21)および式(22)ならびに式(26)および式(27)から、点Uは点Tに写像でき、さらに、式(14)および式(15)によって、点Tは点Sに写像できることが分かる。すなわち、画像Cが画像Bに1対1に対応付けられ、画像Bが画像Aに1対1に対応づけられることが分かる。
【0110】
以上のことから、イメージングセンサー面Δ上の画像Cは、仮想平面Π上の画像Aに1対1の関係を保ったまま変換可能であることが分かる。したがって、前述した各実施例において、放射線透視部によって撮影された異なるシンチレータプレートによる複数枚の画像は、シンチレータプレートの位置が異なっても、イメージセンサーで撮影した画像情報と、光学系の位置情報(=シンチレータプレートの位置、各レンズの位置、各イメージセンサーの位置)とから、仮想平面Π上の画像に逆変換(逆写像)することができる。このことと、先に説明した生体組織分離のアルゴリズムとを組み合わせることによって、生体組織ごとの分離画像を得ることができる。
【0111】
なお、上記実施例で説明した放射線透視部を用いてCone−Beam CT撮影を行えば、数MeVのエネルギーを持つ放射線では金属も比較的容易に透過してしまうので、ストリークアーチファクトのない組織ごとの断層像を得ることも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 天板
2 スタンド
3 ガントリ
4 治療ヘッド
4a 導波ガイド
4b ベンディングマグネット
4c ターゲット
4d コリメータ
5,15,25,35,45,55,65 放射線透視部
5a,15a,25a,35a,45a,55a,65a 暗箱
5b,5c,15b,15c,25b,25c,35b,35c,45b,45c,55b,55c,65b,65c シンチレータプレート
5d,15d,25d,35d,45d,55d,65d,45d 遮光板または放射線用フィルタ
5e,5f,15e,15f,25e,25f,35e,35f,45e,45f,55e,55f,65e,65f, カメラ
6 制御装置
7 フラットニングフィルタ
100 放射線治療装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の治療に用いられる治療用放射線を発生する放射線発生手段と、
前記放射線発生手段により発生する治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、
前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、
各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、
前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段と
を備えたことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つのシンチレータプレートは、それぞれ同一の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発するものであり、
前記遮光板は、遮光効果を有する放射線用フィルタであるとともに、前記少なくとも2つのシンチレータプレートが異なる吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の放射線治療装置。
【請求項3】
前記シンチレータプレートおよび前記遮光板は、前記放射線発生手段によって発生する治療用放射線の中心軸に対して直交するように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線治療装置。
【請求項4】
前記シンチレータプレートは、前記放射線発生手段によって発生する治療用放射線の中心軸に対して直交するように配設されており、
前記遮光板は、表面が鏡面仕上げされ、前記放射線発生手段によって発生する治療用放射線の中心軸に対して斜交するように配設されており、
前記撮影手段は、前記遮光板に映った前記蛍光の鏡像を撮影することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線治療装置。
【請求項5】
前記撮影手段は、レンズおよびイメージセンサーを有し、
前記シンチレータプレート、前記レンズおよび前記イメージセンサーは、それぞれの面が唯一の共通交線で交わるように配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の放射線治療装置。
【請求項6】
被検体の治療に用いられる治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、
前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、
各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、
前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段と
を備えたことを特徴とする放射線透視装置。
【請求項1】
被検体の治療に用いられる治療用放射線を発生する放射線発生手段と、
前記放射線発生手段により発生する治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、
前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、
各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、
前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段と
を備えたことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つのシンチレータプレートは、それぞれ同一の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発するものであり、
前記遮光板は、遮光効果を有する放射線用フィルタであるとともに、前記少なくとも2つのシンチレータプレートが異なる吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の放射線治療装置。
【請求項3】
前記シンチレータプレートおよび前記遮光板は、前記放射線発生手段によって発生する治療用放射線の中心軸に対して直交するように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線治療装置。
【請求項4】
前記シンチレータプレートは、前記放射線発生手段によって発生する治療用放射線の中心軸に対して直交するように配設されており、
前記遮光板は、表面が鏡面仕上げされ、前記放射線発生手段によって発生する治療用放射線の中心軸に対して斜交するように配設されており、
前記撮影手段は、前記遮光板に映った前記蛍光の鏡像を撮影することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線治療装置。
【請求項5】
前記撮影手段は、レンズおよびイメージセンサーを有し、
前記シンチレータプレート、前記レンズおよび前記イメージセンサーは、それぞれの面が唯一の共通交線で交わるように配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の放射線治療装置。
【請求項6】
被検体の治療に用いられる治療用放射線によってそれぞれ所定の吸収エネルギー分布に応じて蛍光を発生する少なくとも2つのシンチレータプレートと、
前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間に設けられ、かつ、各シンチレータプレートによって発生した蛍光をそれぞれ異なる方向に遮光する遮光板と、
各シンチレータプレートによって発生した蛍光の画像を前記遮光板によって遮光されていない方向からそれぞれ撮影する少なくとも2つの撮影手段と、
前記少なくとも2つの撮影手段によって撮影された画像を用いて、参照用の画像を生成する画像処理手段と
を備えたことを特徴とする放射線透視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−253049(P2010−253049A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106810(P2009−106810)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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