説明

放射線治療装置の精度管理用カセッテ及び放射線治療装置の精度管理方法

【課題】スターショット解析法によって放射線治療装置の精度管理を行うにあたり、正確で信頼性が高い精度管理が可能であり、しかも、X線フィルムと相違して、繰り返して使用できる輝尽性蛍光体プレートを用いるため、経済的な管理作業ができる放射線治療装置の精度管理用カセッテ及び放射線治療装置の精度管理方法を提供する。
【解決手段】精度管理用カセッテ5は、輝尽性蛍光体プレート52を収容することができると共に、放射線と位置確認光の照射を受ける照射面部511を有するカセッテ本体51を備えている。照射面部511の所要の位置には、照射される位置確認光の照射野を合わせることができると共に、カセッテ本体51の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート52に潜像退行現象を生じさせることができる光通過孔53a,53b,53c,53dが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置の精度管理用カセッテ及び放射線治療装置の精度管理方法に関する。
更に詳しくは、スターショット解析法によって放射線治療装置の精度管理を行うにあたり、X線フィルムを用いた従来の精度管理方法と相違して、難しい暗室での孔あけ作業を行う必要がないため、熟練を要しない管理者であっても正確で信頼性が高い精度管理が可能であり、しかも、X線フィルムと相違して、繰り返して使用できる輝尽性蛍光体プレートを用いるため、経済的な管理作業ができる放射線治療装置の精度管理用カセッテ及び放射線治療装置の精度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
定位放射線治療(stereotactic radiotherapy)は、放射線を数回に分けて照射することにより、病巣部に対し多方向から集中的に放射線を照射して治療を行う方法である。この方法によれば、病変周囲の正常組織への放射線量を最小限にとどめることが可能である。
【0003】
近年、この定位放射線治療に、放射線治療装置であるリニアック(直線加速装置)を使用する方法が期待され、一般の病院に普及している。このリニアックを用いた放射線治療装置は、ガンマナイフと称される多線源方式の放射線治療装置と区別して、単線源方式の放射線治療装置とも称される。
【0004】
(リニアックを用いた放射線治療装置)
以下、図10を参照しながら、一般的なリニアックを用いた放射線治療装置の概略を説明する。
【0005】
図10に示すように、放射線治療装置は、固定架台1に回動可能に支持されたガントリ2を有している。ガントリ2は、治療台3に寝かされた患者Aの周囲を右回りまたは左回りに(図10に示す矢印のような時計回りか、あるいは逆の反時計回り)に回転させることができる。ガントリ2には、アイソセンターに向かって放射線を放出する照射ヘッド21が設けてある。アイソセンターは、放射線を異なる角度から標的部位(病巣部)に照射した際の放射線の交点となる照射中心を意味しており、ガントリ2の回転中心と一致している。
【0006】
更にガントリ2は、照射ヘッド21の先端部に設けられているコリメータ部22を有している。コリメータ部22の内部には、照射ヘッド21に対向して設けられ放射線をアイソセンターに導く孔を有するコリメータ(図面では表れない)が設けてある。
【0007】
コリメータは、放射線が射出される方向に対して直角方向の面上を左周りまたは右周りに回転する。放射線治療時において、コリメータの回転は、治療する部位の形状・方向におよそ合うように回転させて行う。また、不必要な部位を照射部位から外すことを目的としても行われる。
【0008】
また日本放射線腫瘍学会研究調査委員会編集の「外部放射線治療装置の保守管理プログラム」によれば、アイソセンターとは、「架台が回転する治療装置において、架台回転と照射野限定システムの回転によって対称照射野のビーム軸が作る最小球体の中心」を指す。ここで、図10に示した放射線治療装置で言えば、架台とはガントリ2を指し、照射野限定システムとはコリメータ部22内のコリメータを指す。よって、アイソセンターとは「ガントリ2が回転する治療装置において、ガントリ2の回転とコリメータの回転によって対称照射野のビーム軸が作る最小球体の中心」を意味する。
【0009】
更に、図10で例えば放射線治療室内の左側の壁部B1、右側の壁部B2、ガントリ2正面側の壁部(符号省略)及び天上部C等の所要の位置には、寝かせた患者Aに対して、可視光線からなる位置確認光R1,R2,R3,R4(外部レーザ光ともいう)をそれぞれ発する複数の位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dが適宜設置されている。
【0010】
なお、図10では、その一つの例として、各位置確認光照射装置から合計四つの位置確認光を照射できる放射線治療装置を図示している。以下、位置確認光R1,R2,R3,R4のうち、左側の壁部B1から照射されるものを「左位置確認光R1」、右側の壁部B2から照射されるものを「右位置確認光R2」、ガントリ2の正面側の壁部(符号省略)から照射されるものを「正面位置確認光R3」、天井部cから照射されるものを「天井位置確認光R4」という場合がある。
【0011】
図10に示すように、左位置確認光R1及び右位置確認光R2は、アイソセンター方向へ水平に照射され、丸で囲んで示した拡大断面図のように、その断面が十字形(各縦横の長さが例えば20cm以上)である。また、天井位置確認光R4は、アイソセンター方向に向けて鉛直に照射され、同じく丸で囲んで示した拡大断面図のようにその断面が十字形(各縦横の長さが例えば20cm以上)である。
【0012】
更に、正面位置確認光R3は、ガントリ2正面の壁部からアイソセンターに向けて下方斜めに照射され、丸で囲んで示した拡大断面図のようにその断面が細長い棒状の長方形(縦の長さが例えば20cm以上)である。この位置確認光照射装置41c(想像線で示す)は、通常、ガントリ2の正面側の壁面上方に設置されている。
【0013】
これら複数の位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから発せられた各位置確認光R1,R2,R3,R4の交点は、上記したアイソセンターと正確に一致するように予め設定されている。そして、各位置確認光R1,R2,R3,R4は、放射線を正確に病巣部へ照射するための基準線として、上記アイソセンターと患者の病巣部との位置合わせに用いられる。
【0014】
(放射線治療装置を用いた放射線治療方法)
このような放射線治療装置を用い、通常、以下のような手順で放射線治療が行われる。図10を参照する。
(1) 治療台3に患者Aを寝かせる。患者Aの体表には、事前の画像診断で得られた病巣部の位置や大きさに基づき、マーキングが施されている。
(2) 各位置確認光R1,R2,R3,R4が患者Aの体表に施されたマーキングに投影されるように、治療台3を移動させる。
(3) 治療台3を中心に放射線治療装置のガントリ2を回動させ、病巣部である標的部位に異なる角度から放射線を照射する。
【0015】
(放射線治療装置の精度管理の重要性)
ところで、近年の放射線治療の著しい進歩に伴って、技術的にも高度な治療が要求されており、そのためには、放射線を病巣部にミリ単位あるいはミリ単位以下の精度で正確に照射することが極めて重要である。そして、この精度管理を適正に行うためには、以下に説明する3つの軸回転が正しく設定されているかが重要になってくる。3つの軸回転とは「ガントリ2の回転に関する精度管理」、「コリメータの回転に関する精度管理」、「治療台3の回転に関する精度管理」のことを指す。その詳細は以下の通りである。
【0016】
[1.ガントリ2の回転に関する精度管理]
ガントリ2の回転の精度管理は、各位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから発せされる位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置P(図10参照)が、上記アイソセンターとずれていないかを確認することで行う。
【0017】
したがって、具体的には、各位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pが、ガントリ2の回転・停止を繰り返しながら照射される放射線の交点と一致しているかどうかを確認すれば良い。そして、上記交差位置Pがその放射線の交点(アイソセンター)とずれていた場合には、ずれがあった位置確認光照射装置のレーザ光軸を調整する。
【0018】
なお、上記した位置確認光R1,R2,R3,R4の交点がアイソセンターとずれる原因としては、例えば様々な要因により位置確認光照射装置の照射部に誤って触れたりすると、照射部の照射角度がずれ、アイソセンターと一致しなくなる場合がある。その他、特に竣工後の建物内に放射線治療室を新設した場合、養生後、年月がそれ程経過していないコンクリートの壁面位置がコンマ数ミリの単位でずれ、それによって位置確認光の照射精度に悪影響を与えることがある。
【0019】
[2.コリメータの回転に関する精度管理]
コリメータの回転に関する精度管理は、上記したガントリ2の回転の精度管理が済んだ後に行い、具体的には、各位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pを通る線を軸中心として、コリメータが正確に回転しているかを確認することで行う。したがって、各位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pが、回転するコリメータの中心軸からずれていないかを確認すれば良い。
【0020】
そして、上記交差位置Pがコリメータの中心軸から治療台3の長手方向へずれていた場合は、治療台3の長手方向に沿って左位置確認光R1、右位置確認光R2及び天井位置確認光R4のレーザ調整を行う。治療台3の幅方向にずれていた場合は、コリメータ回転軸のギアの締め付け調整を行う。
【0021】
[3.治療台3の回転に関する精度管理]
治療台3の回転に関する精度管理は、コリメータの回転と同様に、上記したガントリ2の回転の精度管理を行った後に行い、具体的には、放射線の照射方向を軸中心として、治療台3が正確に回転しているかを確認することで行う。したがって、各位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pが、回転する治療台3の中心軸からずれていないかを確認すれば良い。そして、上記交差位置Pが治療台の中心軸からずれていた場合には、治療台天板の長手方向及び幅方向のガタ(遊び)の調整あるいは治療台回転軸のギアの締め付け調整を行う。
【0022】
以上説明した3つの軸回転のうち、一つだけでも大幅にずれていた場合には、重篤な副作用が発生する可能性や、目的とする治療効果を得ることが困難になる場合が予想される。
【0023】
(X線画像診断用フィルムを使用した従来の精度管理方法)
従来、上記した3つの軸回転に関する精度管理は、以下に説明するように、何れもX線画像診断用フィルム(以下、「X線フィルム」という)を用いたスターショット解析法によって行っていた。図11を参照する。
【0024】
[1.ガントリ2の回転に関する精度管理]
まず、Xフィルム91(図11(a)参照)が中に入れられたレディパックと称される袋92に、油性ペン93等で十字の印94を付ける。
【0025】
次にこの十字の中心位置が、位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pに合致するように、治療台3(図10参照)上に立てた状態で載置したX線フィルム91入りの袋92を目視で位置合わせしながらアクリル製等のブロック(例えば縦30cm×横30cm×幅5cm)で挟み込みその配置を調整する(図11(b)参照)。
【0026】
そして、スターショット画像を得るために、コリメータと治療台3は回転させないで、ガントリ2の回転・停止を繰り返しながら、X線フィルム91入りの袋92に異なる角度から放射線を照射する(図11(c)参照)。図面では、X線フィルムに照射される放射線を破線で示している。
【0027】
X線フィルム91入りの袋92を暗室に持って行き、現像する前に袋92に付けた十字の印94の中心部からX線フィルム91へ、針96で孔97を一点開ける(図11(d)参照)。その後、袋92からX線フィルム91を取り出して現像し、スターショット画像を得る。そうして、スターショット画像の中心であるアイソセンターと、X線フィルムに開けられた孔との位置関係を目視で読み取るか、あるいはマニュアル(手作業)で線を引いてから定規で測る等して読み取り、ずれがあれば位置確認光のレーザ光軸を調整し、そのずれを補正する。
【0028】
[2.コリメータの回転に関する精度管理]
上記した(1)の精度管理と同様に、まず、Xフィルム91の袋92に十字の印94を付ける(図11(a)参照)。次に、この袋92を治療台3の上に寝かせ(図示省略)、十字の中心位置が、位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pに合致するように、治療袋92を目視で位置合わせしながらその配置を調整する。
【0029】
次に、ガントリ2と治療台3は回転させないで、図10に示す初期状態(上下方向)で固定した状態で、コリメータ部22内のコリメータのみの回転・停止を繰り返しながら(照射される放射線を回転軸とする水平方向の回転)、横に寝かせた袋92に対して角度を変えながら放射線を照射する(例えば図11(c)参照)。
【0030】
その後、上記した(1)の精度管理と同様に、暗室で孔を開けて現像し、スターショット画像を得る。そうして、スターショット画像の中心であるアイソセンターと、X線フィルムに開けられた孔との位置関係にずれがあれば、上記したように左位置確認光R1、右位置確認光R2及び天井位置確認光R4を調整、あるいはコリメータ回転軸のギアの締め付け調整を行う。
【0031】
[3.治療台3の回転に関する精度管理]
Xフィルム91の袋92を治療台3の上に寝かせ(図示省略)、その十字の中心位置が位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pに合致するようにその配置を調整するまでは、上記したコリメータの回転に関する精度管理と同じである。
【0032】
次に、ガントリ2及びコリメータを回動させることなく、治療台3のみの回転・停止を繰り返しながら(照射される放射線を回転軸とする水平方向の回転)、横に寝かせた袋92に対して角度を変えながら放射線を照射する。
【0033】
その後、上記した(1)及び(2)の精度管理と同様に、暗室で孔を開けて現像してスターショット画像を得る。そうして、スターショット画像の中心であるアイソセンターと、X線フィルムに開けられた孔とにずれがあれば、上記したように治療台天板の長手方向及び幅方向のガタ(遊び)の調整あるいは治療台回転軸のギアの締め付け調整を行う。
【0034】
(特許文献1記載のカセッテを用いた方法)
放射線治療装置の精度管理の参考として、例えば特許文献1には、上記した3つの軸回転に関する精度管理を目的とするものではないが、ガントリから照射される可視光線と放射線との位置を確認することを目的とした位置関係記録用カセッテ(以下、単に「カセッテ」という場合がある)が提案されている。このカセッテは、カセッテ内に輝尽性蛍光体プレートを収容しており、位置確認放射線及び位置確認光を透過でき、可視波長領域中の一部の波長領域の光を遮断するフィルタ窓を有している。
【特許文献1】特開2004−294507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
(X線フィルムを用いた従来方法の課題)
しかしながら、上記したX線フィルムを用いた従来の3つの軸回転に関する精度管理では、いずれも共通して以下のような課題があった。
【0036】
(1) 図11(a)に示すX線フィルム91は弾力性を有し、また袋92の中で固定されているものでもないので、針96を刺す際に袋92の中で動く可能性が高い。このため、袋92に付けた十字の印94の中心部から、X線フィルム91へ真直ぐ針を刺すことは非常に難しい。しかも、その孔開け作業は暗室で行うため、熟練を有する技術者でないと、正確な位置に孔を開けることは極めて困難である。このように、従来の方法では、熟練を有する技術者でないと、精度管理の信頼性が損なわれやすかった。
【0037】
(2) また、上記暗室での孔開け作業を避けるため、この孔開け作業を予め明るい室内で行い、その後に放射線を照射するといった、逆の手順を採ることも一応可能である。しかし、孔を先に開けてしまうと、袋92とX線フィルム91の間に空気が入って隙間が形成されやすく、その結果、そこから入った光がフィルム面に広く当たって不必要な黒化(光カブリ)が起こる可能性が高い。その場合、照射後の解析作業が難しくなり、精度管理の信頼性が著しく損なわれることになる。
【0038】
(3) 更に、X線フィルム91は繰り返して使用できないため、精度確認の度ごとにX線フィルム91に孔を開ける煩雑な上記作業が必要で、作業効率が悪かった。
【0039】
そこで本願発明者は、上記した課題を解決すべく鋭意研究に努めた結果、デジタルX線画像診断(Computed Radiography)に使用される「輝尽性蛍光体プレートの潜像退行現象」に着目するに至った。
【0040】
まず、輝尽性蛍光体プレートは、放射線の照射を受けるとその放射線エネルギーの一部を蓄積し、その後、更に可視光等の励起光の照射を受けることで、蓄積されたエネルギーに応じた輝尽発光を生じる蛍光体のことである。通常、輝尽性蛍光体プレートは、遮光性のカセッテに収容して取り扱われる。
【0041】
またこの輝尽性蛍光体プレートを用いたデジタルX線画像診断は、この輝尽性蛍光体プレートに被写体である人体を透過した放射線を照射することによって、人体の放射線画像情報を一旦記録し、次いでこの輝尽性蛍光体プレートを励起光で走査して輝尽発光を生じさせ、更にこの輝尽発光を光電的に読み取って得られた画像信号から人体の放射線画像を出力させて行われる。
【0042】
更に、上記した「輝尽性蛍光体プレートの潜像退行現象」とは、放射線を受けた後、時間経過とともに輝尽発光の量が減少する現象をいう。そして、臨床においては、病室撮影などにおいて、撮影後、読み取り処理を行うまでに時間を要する際に、得られた人体の放射線画像にノイズを与えるといった悪影響を及ぼす。
【0043】
そこで、本願発明者は、臨床において悪影響を及ぼす「輝尽性蛍光体プレートの潜像退行現象」を逆に放射線治療装置の精度管理に利用することができないか、という発想のもとに鋭意研究を進めた結果、自然光または可視光等の光を取り込んで積極的に潜像退行現象を輝尽性蛍光体プレートに生じさせることで、上記したXフィルムを用いた従来方法の課題を解決できる放射線治療装置の精度管理方法を見い出すに至り、本発明を完成したものである。
【0044】
(特許文献1記載のカセッテを用いた方法)
ところで、上記したように、特許文献1には輝尽性蛍光体プレートを収容したカセッテを用いる管理方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の管理対象は特殊な構造の放射線治療装置であり、一般の病院に普及しているリニアックとはその構造が異なっている。そして、この管理目的も、本願発明とは異なり、上記した3つの軸回転に関する精度管理を目的とするものではない。
【0045】
詳しくは、特許文献1に記載の放射線治療装置は、ガントリから断面十字形状であって可視波長領域(青色)の位置確認光を照射するために、放射線照射部内に十字形状の光反射ミラーを備えた特殊な構造をしている。そして、管理に使用するカセッテは、本願発明と相違して、その特殊な構造を備えたガントリから照射される青色の位置確認光と放射線との位置合わせを目的として開発されたものである。このため、上記したように、このカセッテは、位置確認放射線および位置確認光を透過させるが、可視波長領域中の一部の波長領域の光を遮断するフィルタ窓を有するといった複雑な構造となっている。
【0046】
つまり、特許文献1記載のカセッテは、本願発明とは相違して、上記した3つの軸回転に関する精度管理を目的としたカセッテではなく、ましてやスターショット解析法によって精度管理を行うものでもない。
【0047】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、スターショット解析法によって放射線治療装置の精度管理を行うにあたり、X線フィルムを用いた従来の方法と相違して、難しい暗室での孔あけ作業を行う必要がないため、熟練を要しない管理者であっても正確で信頼性が高い精度管理が可能であり、しかも、X線フィルムと相違して、繰り返して使用できる輝尽性蛍光体プレートを用いるため、経済的な管理作業ができる放射線治療装置の精度管理用カセッテ及び放射線治療装置の精度管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0048】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、アイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を異なる角度から複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が設けられている、放射線治療装置の精度管理用カセッテである。
【0049】
本発明は、アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a)が設けられており、該光通過部(53a)は、少なくとも上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)を合わせることができる孔(53a)で構成されている、放射線治療装置の精度管理用カセッテである。
【0050】
本発明は、アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53b,53c,53d,53e)が設けられており、該光通過部(53b,53c,53d,53e)は、少なくとも、アイソセンター方向へ水平に照射された位置確認光(R1)(R2)の位置を合わせるための孔(53b,53c)と、上記アイソセンター方向へ鉛直に照射された位置確認光(R4)または/及び上記アイソセンター方向へ下斜め方向に照射された位置確認光(R3)の位置に合わせるための孔(53d,53e)で構成されている、放射線治療装置の精度管理用カセッテである。
【0051】
本発明は、アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が設けられており、該光通過部(53b,53c,53d,53e)は、少なくとも、上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)を合わせることができる中央孔(53a)と、アイソセンター方向へ水平に照射された位置確認光(R1)(R2)の位置を合わせることができる左方孔(53b)及び右方孔(53c)と、上記アイソセンター方向へ鉛直に照射された位置確認光(R4)または/及び上記アイソセンター方向へ下斜め方向に照射された位置確認光(R3)の位置に合わせるための上方孔(53d)及び下方孔(53e)で構成され、上記中心孔(53a)、左方孔(53b)、右方孔(53c)、上方孔(53d)及び下方孔(53e)を結ぶ線分は、全体で上記中央孔(53a)を中心とした十字形を形成するように配置されている、放射線治療装置の精度管理用カセッテである。
【0052】
本発明は、上記カセッテ本体(51)の照射面部(511)に、光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射野または交差位置(P)に一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置合わせを行う際の補助線として使用できる目盛が施されている、放射線治療装置の精度管理用カセッテである。
【0053】
本発明は、アイソセンター方向に異なる角度から放射線を照射できる照射部を備えており、座標目盛り付きの金属フレーム及び座標ボックスで被検体の標的部位の位置合わせを行う放射線治療装置の精度管理に用いられ、位置合わせした被検体の標的部位がアイソセンターからずれていないかどうかを確認する際に使用する放射線治療装置の精度管理用カセッテ(5)であって、輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、上記照射面部(511)の所要の位置には、上記金属フレーム及び座標ボックスの原点座標に合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が設けられている、放射線治療装置の精度管理用カセッテである。
【0054】
本発明は、アイソセンターを中心にして水平面上で回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)において、スターショット解析法を用いてアイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかを確認できる精度管理方法であって、輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)を、治療台(3)上に直接的または間接的に立てた状態で載置し、該精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が照射された上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)と一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置確認光(R1,R2,R3,R4)に対する配置を調整するステップ、スターショット画像を得るために、コリメータ及び治療台(3)は回転させないでガントリ(2)を回転させて上記精度管理用カセッテ(5)に異なる角度から放射線を照射するステップ、上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させて、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、上記放射線の照射によって得られたスターショット画像と、上記潜像退行現象によってスターショット画像中に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置関係を読み取るステップ、を含む、放射線治療装置の精度管理方法である。
【0055】
本発明は、アイソセンターを中心にして水平面上で回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)において、スターショット解析法を用いて、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかを確認できる放射線治療装置(100)の精度管理方法であって、輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)を、治療台(3)上に直接的または間接的に寝かせた状態で載置し、該精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が照射された上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)と一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置確認光(R1,R2,R3,R4)に対する配置を調整するステップ、スターショット画像を得るために、ガントリ(2)及び治療台(3)は回転させないでコリメータを回転させて上記精度管理用カセッテ(5)に放射線を照射するステップ、上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させて、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、上記放射線の照射によって得られたスターショット画像と、上記潜像退行現象によってスターショット画像中に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置関係を読み取るステップ、を含む、放射線治療装置の精度管理方法である。
【0056】
本発明は、アイソセンターを中心にして水平面上で回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)において、スターショット解析法を用いて回転する治療台(3)の中心軸がアイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかを確認できる放射線治療装置(100)の精度管理方法であって、輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)を、治療台(3)上に直接的または間接的に寝かせた状態で載置し、該精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が照射された上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)と一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置確認光(R1,R2,R3,R4)に対する配置を調整するステップ、スターショット画像を記録させるために、コリメータ及びガントリ(2)は回転させないで治療台(3)を回転させて上記精度管理用カセッテ(5)に異なる角度から放射線を照射するステップ、上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させることにより、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、該潜像退行現象によってスターショット画像中に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置から、位置確認光の交差位置(P)とアイソセンターとの位置関係を読み取るステップ、を含む、放射線治療装置の精度管理方法である。
【0057】
本発明は、アイソセンター方向に異なる角度から放射線を照射できる照射部を備えており、座標目盛り付きの金属フレーム及び座標ボックスで被検体の標的部位の位置合わせを行う放射線治療装置において、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された放射線がアイソセンターからずれていないかどうかを確認できる放射線治療装置の精度管理方法であって、輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が、座標目盛り付きの金属フレーム及び座標ボックスの原点座標と一致するように精度管理用カセッテ(5)の配置を調整するステップ、上記精度管理用カセッテ(5)に異なる角度から放射線を照射するステップ、上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させて、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、輝尽性蛍光体プレート(52)に記録された放射線の画像と、上記潜像退行現象によって放射線の画像上に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置関係を読み取るステップ、を含む、放射線治療装置の精度管理方法である。
【発明の効果】
【0058】
(a)本発明によれば、スターショット解析法によって放射線治療装置の精度管理を行うにあたり、中に収容された輝尽性蛍光体プレートに潜像退行現象を生じさせることができる光通過部を備えた精度管理用カセッテを使用することにより、X線フィルムを用いた従来の精度管理方法と相違して、難しい暗室での孔あけ作業を行う必要がないため、熟練を要しない管理者であっても正確で信頼性が高い精度管理が可能となる。しかも、X線フィルムと相違して、繰り返して使用できる輝尽性蛍光体プレートを用いるため、経済的な管理作業ができる。
【0059】
(b)カセッテ本体の照射面部に目盛が施されている精度管理用カセッテを使用すれば、光通過部が位置確認光の照射野または交差位置に一致するように、精度管理用カセッテの位置合わせを行う際の補助線として使用できるので、位置合わせ作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明では、放射線治療装置の精度管理に、輝尽性蛍光体プレートが収容された放射線治療装置の精度管理用カセッテ(以下、単に「精度管理用カセッテ」という場合がある。)を使用する。また輝尽性蛍光体プレートは、蓄光性蛍光パネル、あるいはイメージングプレートとも称されるデジタルX線画像診断(Computed Radiography)で使用されるものと同じものが使用できる。
【0061】
精度管理用カセッテは、輝尽性蛍光体プレートを収容することができ、更には放射線画像読取装置で輝尽性蛍光体プレートに記録した輝尽発光を光電的に読み取ることができれば、特にその形態や大きさを限定するものでもない。また、市販されているデジタルX線画像診断用のカセッテを利用して形成することもできるし、放射線治療装置の精度管理専用として新たに製造したものを使用できることは言うまでもない。
【0062】
またデジタルX線画像診断用のカセッテと同様に、中に収容した輝尽性蛍光体プレートをカセッテ本体から取り外すことができるように、カセッテ本体に開閉口を設けても良い。あるいは、カセッテ本体から取り外すことができない構造であっても良い。
【0063】
精度管理用カセッテのカセッテ本体に設けられる光通過部は、カセッテ本体の外から自然光または可視光等の光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレートに潜像退行現象を生じさせることができれば、特にその形態や形状は特に限定されない。光通過部としては、例えば孔で構成される光通過孔や、透光性を有するカバーまたは蓋体で塞がれた孔を挙げることができる。
【0064】
光通過部を光通過孔で構成する場合、その孔の形状は特に限定されない。孔の形状としては、例えば円形、楕円形、三角形、星形、長方形状や正方形状、あるいはその他の多角形や異形状(不規則な形状)を挙げることができる。ただし、孔の重心(中心)位置を容易に判別することができるといった理由により、光通過部は円形の孔で構成されていることが好ましい。
【0065】
放射線治療装置の照射ヘッドから照射される放射線の幅は、スターショット撮影の場合、通常、1〜10mm程度である。これに対して、カセッテに設けられる光通過孔の大きさは、照射ヘッドから照射される放射線の幅によっても異なるが、直径1〜10mmが好ましく、直径1〜2mmがより好ましい。
【0066】
光通過孔の直径が1mmより小さいと、スターショット画像上に潜像退行現象に起因する点が写らなくなる可能性が高くなるので好ましくない。
また光通過孔の直径が10mmよりも大きいと、スターショットの放射線の幅より大きくなり、スターショット撮影のための厳密な配置設定が行いにくくなり、更に大きすぎる孔は、放射線照射後の解析時においてその孔の中心位置を求める時にノイズ等の余分な誤差を多く含む可能性があり、このような理由で、解析結果に誤差が生じる可能性が高くなるので好ましくない。
【0067】
つまり、光通過孔の直径は、放射線の幅よりも小さいか、最大でも同じ大きさであることが好ましい。仮に放射線の幅よりも大きくなると、放射線の照射位置に対する位置レーザ光の照射位置にずれが生じていることが分かった場合に、光通過孔の孔全体が放射線の幅内に写らなくなる可能性がある。そうなると、孔の中心位置を正確に求めにくくなり、その結果、上記ずれがどのくらい生じているのかをより正確に算出することが難しくなって、精度管理の信頼性が低くなる可能性があるので、好ましくない。
【0068】
本発明の管理対象である具体的な放射線治療装置としては、リニアック、ガンマナイフ、マイクロトロン、陽子線治療装置、重粒子線治療装置等が挙げられる。
【0069】
単線源方式のリニアックについての詳細な精度管理方法については、後述する実施例で詳細に説明する。
また多線源方式のガンマナイフの場合、リニアックとは相違して、放射線を照射する標的部位の位置合わせに位置確認光は使用されず、座標目盛り付金属フレームあるいは座標ボックスの原点座標が使用される。よって、輝尽性蛍光体プレートを収容する精度管理用カセッテに設けられた光通過部が、座標目盛り付金属フレームあるいは座標ボックスの原点座標と合致するように、精度管理用カセッテの配置を調整した後、スターショット画像を得るための放射線を照射するようにする。
【0070】
以下、本発明を図面に示した実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0071】
図1ないし図6は、本発明に係る放射線治療装置の精度管理用カセッテを用いた放射線治療装置の精度管理方法の一実施例を説明するための図である。
【0072】
図1は、本実施例に係る精度管理用カセッテの概略斜視説明図、
図2は、図1に示す精度管理用カセッテを用いて放射線治療装置の精度管理を行っている状態を示す概略斜視説明図、
図3は、図2に示す精度管理用カセッテと放射線治療装置を正面方向から見た部分拡大説明図であり、治療台の台部よりも上方を主に拡大して表している。
図4は、精度管理用カセッテを治療台の上で支持するための支持装置を示す斜視説明図、
図5は、放射線治療装置を構成するガントリの回転・停止を繰り返しながら、精度管理用カセッテに対して異なる角度から放射線を照射している状態を示す正面視説明図、
図6は、精度管理用カセッテに対して放射線を照射することで得られたスターショット画像を示す概略説明図である。
【0073】
なお、本実施例では、放射線治療装置としてリニアック(直線加速装置)の精度管理を行う場合について説明する。また図2に示す放射線治療装置100は、図10で示した放射線治療装置と同じか大体において同じであるため、図10で付した同じ符号を用いて説明する。
【0074】
図1に示す精度管理用カセッテ5は、放射線治療装置100の精度管理を、スターショット解析法を用いて行うためのものである。精度管理用カセッテ5を説明する前に、図2を参照して、管理対象である放射線治療装置100の概略について説明する。
【0075】
図2に示す放射線治療装置100は、固定架台1に回動可能に支持された回転可能な架台であるガントリ2を有している。ガントリ2は、患者を寝かせる治療台3の周囲を右回りまたは左回りに(図2に示す矢印Iのような時計回りか、あるいは逆の反時計回り)に回動可能となっている。
【0076】
ガントリ2には、アイソセンターに向かって放射線を放出する照射ヘッド21と、照射ヘッド21の先端部に設けられているコリメータ部22を有している。コリメータ部22の内部には、照射ヘッド21に対向して設けられ放射線をアイソセンターに導く孔を有するコリメータ(図面では表れない)が設けてある。コリメータは、放射線が射出される方向に対して直角方向の面上を左周りまたは右周りに回転する。
【0077】
患者を載置する治療台3は、照射ヘッド21から照射される放射線に対し、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向(図示省略)に移動できるように構成されている。また固定架台1の設置面に対しても回動可能となっている。
【0078】
更に治療台3は、アイソセンターを原点とするX軸、Y軸、Z軸の3次元の位置座標を表示できる表示部(図示省略)を有している。そして、その位置座標から治療台3の位置を正確に把握することができ、更に移動させたい位置座標をインプットすれば、目的とする所要の位置に正確に治療台3を移動させることができる。
【0079】
放射線治療室内の壁部B1,B2及び天上部Cの所要の位置には、寝かせた患者に対して、可視光線からなる位置確認光である位置確認光R1,R2,R3,R4をそれぞれ発する複数の位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dが設置されている。これら複数の位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから発せられた各位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pは、アイソセンターと正確に一致するように設定してある。
【0080】
本実施例では、アイソセンターに対して左右の各水平方向から位置確認光R1,R2をそれぞれ照射できるように、図2で左の壁部B1と右の壁部B2に位置確認光照射装置41a,41bがそれぞれ設置されている。左位置確認光R1及び右位置確認光R2は、図10の丸で囲んで示した拡大断面図のように、その断面が十字形(各縦横の長さが例えば20cm以上)である。
【0081】
またガントリ2の正面側の壁面(符号省略)にも、アイソセンターに対して下方斜め方向へ位置確認光R3を照射できるように、位置確認光照射装置41c(想像線で表す)が設置されている。正面位置確認光R3は、同じく図10の丸で囲んで示した拡大断面図のように、その断面が細長い棒状の長方形(縦の長さが例えば20cm以上)である。
【0082】
更には、アイソセンターの真上から位置確認光R4を照射できるように、位置確認光照射装置41dが天井に設置されている。天井位置確認光R4は、同じく図10の丸で囲んで示した拡大断面図のように、その断面が十字形(各縦横の長さが例えば20cm以上)である。
【0083】
そして、図1に示す精度管理用カセッテ5を用いて、位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pがアイソセンターとずれていないかの精度確認を行う。
【0084】
(精度管理用カセッテ5)
図1に示す精度管理用カセッテ5は、カセッテ本体51と、カセッテ本体51の中に収容された輝尽性蛍光体プレート52とを備えている。カセッテ本体51には、カセッテ本体51の外から中の輝尽性蛍光体プレート52に光が当たるように、輝尽性蛍光体プレート52に通じる光通過孔53a,53b,53c,53d,53eが設けてある。
【0085】
本実施例では、精度管理用カセッテ5の大きさは、縦が約33cm、横が約33cm、厚みが約1cmであるが、特にこの大きさに限定するものでない。
【0086】
本実施例では、光通過孔53a,53b,53c,53d,53eは、カセッテ本体51の表面部である照射面部511の中央付近に合計で五箇所設けてある。詳しくは、中心の1つの光通過孔53a(以下、「中心孔53a」という)に対し、上下左右に所要の間隔(本実施例では等間隔)で四つの孔53b,53c,53d,53e(以下、それぞれ「左方孔53b」、「右方孔53c」、「上方孔53d」、「下方孔53e」という。)が設けられ、各孔53a,53b,53c,53d,53eを結ぶ線分は、全体で中央孔53aを中心とした十字形を形成するように配置されている。
【0087】
本実施例では、各光通過孔53a,53b,53c,53d,53eの大きさは直径1mmであり、5cm間隔で配置されているが、特にこれに限定するものではない。なお、図1及びその他の図面において、各光通過孔53a,・・・の位置が分かりやすいように、各光通過孔53a,・・・の大きさをやや誇張して表している。
【0088】
(放射線治療装置100の精度管理方法)
[1.ガントリの回転に関する精度管理]
図1に示す精度管理用カセッテ5を用い、位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから発せされる位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pが、アイソセンターとずれていないかの精度確認を以下のようにして行う。
【0089】
(1) まず、図1に示す輝尽性蛍光体プレート52が収容された精度管理用カセッテ5を、図2及び図3に示すように、治療台3に立てた状態で配置する。精度管理用カセッテ5を垂直に立てた状態で配置するには、例えば図3及び図4に示した支持装置6が好適に使用できる。
【0090】
支持装置6は、支持装置本体61と足部62,62,62,62を備えている。支持装置本体61の上面部の中間部分には、立てた状態の精度管理用カセッテ5を嵌め入れて支持する挟持部611を有している。挟持部611の条溝612に精度管理用カセッテ5をややきつく嵌め入れることで、精度管理用カセッテ5を倒れないように固定できる。また本実施例では、足部62は支持装置本体61の四隅部分に合計で四箇所設けてある。
【0091】
支持装置6は、例えば金属、プラスチック、セラミックあるいは木材やそれらを組み合わせたもの等やその他の材料で形成することができる。なお、足部62は、支持装置本体61を水平に配置できるように、アジャスター等で各足部62の長さを調整できるものが好ましい。
【0092】
(2) 図2に示すように、各位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから位置確認光R1,R2,R3,R4をそれぞれ照射する。そして、精度管理用カセッテ5の中心孔53a(図3も参照)が、基準点となる位置確認光R1,R2,R3,R4の交点(光束の交差位置P)に合致するように、治療台3上の支持装置6あるいは治療台3を目視で位置合わせしながらその配置を調整する。
【0093】
このとき、図2で左右の水平方向から照射される位置確認光R1,R2は、図3で示す精度管理用カセッテ5の左方孔53b、中心孔53a及び右方孔53cを通る。ガントリ2正面の壁面から下方斜め方向に照射される位置確認光R3は、精度管理用カセッテ5の上方孔53d、中心孔53a、下方孔53eを通る。天上部Cの真上から照射される位置確認光R4は、図3で示す精度管理用カセッテ5の上方孔53d、中心孔53a、下方孔53eを通る。
【0094】
なお、位置確認光R1,R2,R3,R4を照射しているときは、位置確認光の照射方向がはっきりと分かるように、通常、室内照明の蛍光灯からダウンライトに切り替えて照明を落とすことが好ましい。これにより、精度管理用カセッテ5の中心孔53aを、位置確認光R1,R2,R3,R4の交点により正確に一致させることができる。
【0095】
更に、天井の位置確認光照射装置41dから鉛直方向の位置確認光R4を照射する際は、ガントリ2を左または右方向のどちらかに少し傾け、位置確認光R4がガントリ2に当たらないようにする。
【0096】
(3) 次に、コリメータの回転及び治療台3の回転を固定した状態で、図5に示すように、ガントリ2のみの回転・停止を繰り返しながら(例えば図2及び図5で矢印I方向で示す右回転)、精度管理用カセッテ5に対して異なる角度から放射線を照射する。本実施例では、図6に示すスターショット画像が得られるように、傾斜角度が30度のステップで合計6門のビーム数で行った。
【0097】
なお、このときの室内の照明は、点灯状態であっても、あるいは消灯状態であっても、精度管理に対する信頼性の高さに関しては変わりない。ただし、精度管理作業をより短時間で終わらせるためには、点灯状態で放射線を照射することがより好ましいようである。点灯状態で照射することで、後述する輝尽性蛍光体プレート52の潜像退行現象を積極的に推進できる。
【0098】
(4) 治療台3上の支持装置6から精度管理用カセッテ5を取り外し、点灯させた市販のX線写真観察機(図示省略)に光通過孔53a,53b,53c,53d,53eが開いた照射面部511を30秒ほど向けて光を当て、強制的に中の輝尽性蛍光体プレート52に潜像退行現象を起こさせる。
【0099】
なお、本実施例では、輝尽性蛍光体プレート52の潜像退行現象を積極的に推進させるために、光源として明るさの度合いが高いX線写真観察機を積極的に使用した。ただし、特にこれに限定するものでもなく、例えば蛍光灯卓上スタンド等といった他の照明手段を使用したり、室内の蛍光灯の明かりだけで潜像退行現象を起こさせることもできる。
【0100】
(5) 次に、精度管理用カセッテ5を放射線画像読取装置(図示省略)で読み取り、スターショット画像(図6参照)を出力させる。これにより、図6に示すように、放射線が照射された箇所には、6本の黒い線の画像が現れる。
更に、精度管理用カセッテ5の各光通過孔53a,53b,53c,53d、53eに対応する箇所には、強制的に潜像退行現象を起こさせた結果、黒の画像が消えて白抜きの点530a,530b,530c,530d、530eが現れる。本実施例では、孔を五つ設けた精度管理用カセッテ5を使用しているので、スターショット画像に五つの白い点530a,530b,530c,530d,530eが現れている。
【0101】
そして、精度管理用カセッテ5の各光通過孔53a,53b,53c,53d,53eに対応するこの五つの白い点530a,530b,530c,530d,530eを繋ぐ線分が、各位置確認光R1,R2,R3,R4の照射方向と一致している。よって、この白い点530a,530b,530c,530d,530eが放射線の黒い線とずれていれば、位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pがアイソセンターと一致せずに、ずれていることになる。
【0102】
(6) アイソセンターとのずれが確認できれば、まず、マニュアル(手作業)かパーソナルコンピュータ等を使ってその誤差の程度を測定する。マニュアルで行う場合は、例えば白い点530a,530b,530c,530d,530e上に線を引き、放射線の黒い線との誤差(ずれ)を定規で測定する。パーソナルコンピュータを使用する場合は、スターショット画像をスキャナでパーソナルコンピュータに取り込み、建築設計用のCADソフト等を使って誤差を測定する。そして、この誤差データを基に、以下のような調整(ずれ補正)を行う。
【0103】
(7) 本実施例の場合、上記したように、治療台3はアイソセンターを原点とするX軸,Y軸,Z軸の3次元の位置座標を表示できる表示部を有している。よって、まず、精度管理用カセッテ5を再びスターショット取得の配置(図2で示す支持装置6)に設定し、スターショット解析によって得られた上記誤差データ(ずれの情報)をもとに、その誤差がゼロになるように治療台3を移動させる。このとき、精度管理用カセッテ5の十字形の中心孔53aは真のアイソセンター座標に動くので、次に各位置確認光R1,R2,R3,R4がその位置を通るように調整する。
【0104】
ただし、治療台3の位置座標が表示されない放射線治療装置も存在する。この場合、上記した治療台3の位置座標を利用した調整はできない。よって、そのような場合は、以下のような方眼紙を利用した調整方法を採用できる。
【0105】
即ち、方眼紙を立てた状態で治療台3上に配置する(図示省略)。方眼紙を立てた状態で配置する方法としては、書類収納用の合成樹脂製フォルダー(クリアフォルダー等と称される)等といった透光性または透視性を有する大きめのケースの中に方眼紙を入れ、これを図4に示すような把持可能な支持装置6や鉛ブロック等を使用して支持すれば良い。
【0106】
このときの方眼紙の向きは、左位置確認光R1及び右位置確認光R2を調整する場合、方眼紙の表面に各位置確認光R1,R2の十字形が投影されるように、各位置確認光R1,R2の照射方向に対して紙面が垂直になるように配置する。そして、この方眼紙に各位置確認光を再度投影し、上記測定で得た誤差分が差し引きゼロになるように、調整が必要な位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dのレーザ光軸を物理的に調整する(角度調整用のネジを回す等して調整する)。
【0107】
このように、透光性または透視性を有するケースを使用すれば、位置確認光を照射しながら位置合わせを行う際に、位置確認光がケースから透けて見えるので、上記した誤差分の位置合わせが容易に行いやすいという利点がある。
【0108】
具体的な調整方法を更に詳細に述べると、断面十字形の左位置確認光R1と右位置確認光R2の照射によって方眼紙上の同一位置に一つの十字形が投影されていない場合は、どちらかの位置確認光R1,R2の照射角度がずれていることになる。そして、レーザ光軸を調整して誤差分を補正した後、左位置確認光R1と右位置確認光R2が方眼紙の同一位置にずれずに一つの十字形を投影させていれば、左右の各位置確認光R1,R2は正確に調整されたことを示す。
【0109】
以上説明したように、図1に示す精度管理用カセッテ5を用いて、位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから発せされる位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pがアイソセンターとずれていないかの精度確認を行う。
【0110】
なお、スターショット画像を得る際に照射する放射線のビーム数は、アイソセンターが特定できれば良いため、照射角度を異にする(交差する)2門以上のビーム数であれば、特にその数を限定するものではない。
【0111】
また照射するビームの角度についても特に限定するものではないが、水平方向のビームと、このビームに直交する鉛直方向のビームの少なくとも2門を使用することが好ましい。この理由は、通常、放射線治療装置では、少なくとも左右の水平方向からそれぞれ照射される二本の位置確認光R1,R2(サイドレーザーとも称され、人体の左右の傾きを補正する目印となり、対で使用される)と、天井側から照射される鉛直方向の位置確認光R4(フロントレーザーとも称される)の二種類の位置確認光によって、人体の病巣部の位置合わせが行われるからである。
【0112】
即ち、一般的な放射線治療装置が有するこの二種類の位置確認光R1,R2,R4の照射方向と合致するように、同じく水平方向と鉛直方向からの少なくとも二本のビーム(放射線)を使用することが、放射線の黒い線と白抜きの点の位置関係を把握するために必要だからである。
【0113】
他方、コリメータの回転中心が位置確認光の基準点と一致しているかの精度確認(下記の項目2を参照)、治療台3の回転中心が位置確認光の基準点と一致しているかの精度確認(下記の項目3を参照)についても、図1に示す精度管理用カセッテ5を用いて行うことができる。
【0114】
[2.コリメータの回転に関する精度管理]
図7は、精度管理用カセッテを用いて放射線治療装置の精度管理を行っている他の使用状態を示す概略斜視説明図である。
【0115】
コリメータの回転中心が位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pと一致しているかの精度確認は以下のようにして行う。
なお、既に説明したアイソセンターの精度確認と同じ作業手順については、詳細な説明を省略する。また、上記したアイソセンターの精度確認とは相違して、ガントリ2を回動させることなく、図2に示す初期状態(上下方向)で固定したまま精度確認を行う。これらについては、後述する治療台3の回転の中心の精度確認についても同じである。
【0116】
(1) まず、図1に示す輝尽性蛍光体プレート52が収容された精度管理用カセッテ5を、治療台3に横に寝かせた状態で載置する(図7参照)。この際、図2に示す支持装置6は使用せず、光通過孔53a,53b,53c,53d,53eを有する照射面部511を天上に向けた状態で、直接、治療台3の載置面に載置する。
【0117】
(2) 次に、各位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから位置確認光R1,R2,R3,R4を照射する。そして、図7に示すように、横に寝かせた精度管理用カセッテ5の中心孔53a(図1も参照)が、基準点となる位置確認光R1,R2,R3,R4の交点(光束の交差位置P)に合致するように、精度管理用カセッテ5または治療台3を目視で位置合わせしながらその配置を調整する。
【0118】
なお、本実施例に係る精度管理用カセッテ5を使用した場合、精度管理用カセッテ5を寝かせた状態で位置確認光R1,R2,R3,R4の交点位置Pに合わせるために、図7に示すように、左の壁部B1と右の壁部B2からそれぞれ水平に照射される位置確認光R1,R2の高さ位置まで治療台3を上昇させる。
【0119】
(3) コリメータの細長い棒状の長方形(例えば短辺5mm、長辺350mm程度)のX線照射野を設定する。そして、ガントリ2及び治療台3の回転を固定したまま、コリメータ部22内のコリメータのみの回転・停止を繰り返しながら(照射される放射線を回転軸とする水平方向の回転、例えば図7で示す矢印II方向)、横に寝かせた精度管理用カセッテ5に対して角度を変えながら放射線を照射する。例えば、図6と同じスターショット画像が得られるように、傾斜角度が30度のステップで合計6門のビーム数で行う。
【0120】
次に、ガントリ2の回転に関する精度管理と同様にして、潜像退行現象を起こし、スターショット画像中に各光通過孔53a,53b,53c,53d,53eに対応する白い点530a,530b,530c,530d,530eを生じさせる。そして、放射線の黒い線との位置関係から、コリメータの回転中心が位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pと一致しているかの確認し、ずれがあればその誤差の程度を測定する。
【0121】
そして、その後は従来と同様、位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pがコリメータの中心軸から治療台3の長手方向へずれていた場合は、治療台3の長手方向に沿って左位置確認光R1、右位置確認光R2及び天井位置確認光R4のレーザ調整を行う。また治療台3の幅方向にずれていた場合は、コリメータ回転軸のギアの締め付け調整を行う。
【0122】
[3.治療台3の回転に関する精度管理]
次に、放射線の照射方向を軸中心として、治療台3が正確に回転しているかの精度確認は以下のようにして行う。
【0123】
(1) まず、図1に示す輝尽性蛍光体プレート52が収容された精度管理用カセッテ5を、図7に示した場合と同様に、治療台3に横に寝かせた状態で載置する。
【0124】
(2) 次に、各位置確認光照射装置41a,41b,41c,41dから位置確認光R1,R2,R3,R4を照射し、横に寝かせた精度管理用カセッテ5の中心孔53a(図1も参照)が、基準点となる位置確認光R1,R2,R3,R4の交点(光束の交差位置P)に合致するように、精度管理用カセッテ5または治療台3を目視で位置合わせしながらその配置を調整する。
【0125】
(3) コリメータの細長い棒状の長方形(例えば短辺5mm、長辺350mm程度)のX線照射野を設定する。そして、ガントリ2の固定は同じであるが、上記したコリメータの回転中心の精度確認の場合と相違して、コリメータ部22内のコリメータの回転を固定したまま、治療台3のみの回転・停止を繰り返しながら(照射される放射線を回転軸とする水平方向の回転、例えば図7で示す矢印III方向)、横に寝かせた精度管理用カセッテ5に対して角度を変えながら放射線を照射する。例えば、図6と同じスターショット画像が得られるように、傾斜角度が30度のステップで合計6門のビーム数で行う。
【0126】
次に、ガントリ2の回転に関する精度管理と同様にして、潜像退行現象を起こし、スターショット画像中に各光通過孔53a,53b,53c,53d,53eに対応する白い点530a,530b,530c,530d,530eを生じさせる。そして、放射線の黒い線との位置関係から、各位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pが、回転する治療台3の中心軸からずれていないか確認し、ずれがあればその誤差の程度を測定する。
【0127】
そして、その後は従来と同様、各位置確認光R1,R2,R3,R4の交差位置Pが治療台の中心軸からずれていた場合には、治療台天板の長手方向及び幅方向のガタ(遊び)の調整あるいは治療台回転軸のギアの締め付け調整を行う。
【0128】
以上説明したように、本実施例に係る精度管理用カセッテ5を使用すれば、X線フィルムを用いた従来方法と相違して、難しい暗室での孔あけ作業を行う必要がないため、熟練を要しない管理者であっても正確で信頼性が高い精度管理が可能となる。しかも、繰り返して使用できないX線フィルムと相違して、輝尽性蛍光体プレート91は繰り返して使用できるので、経済的な管理作業ができる。
【実施例2】
【0129】
図8は、本発明に係る精度管理用カセッテの他の実施例を示す平面視概略構成図である。なお、光通過孔の位置が分かりやすいようにその大きさをやや誇張して図示している。
【0130】
(精度管理用カセッテ5a)
図8(a)に示す精度管理用カセッテ5aでは、カセッテ本体51の照射面部のほぼ中央付近に光通過孔である中央孔53aを一つ設けた構成となっている。カセッテ本体51の照射面部511には、位置確認光と放射線の照射がそれぞれ照射される。この中央孔53aが、位置確認光の交差位置と合致するように、位置確認光に対する精度管理用カセッテ5aの配置を調整する。
【0131】
ただし、この場合は、ガントリ2の角度を補正する手段が無くなり、位置確認光R1,R2,R3,R4の入射角度の評価が難しくなる傾向がある。したがって、より精密な精度管理を行う場合は、図1に示す精度管理用カセッテ5を用いることが好ましい。
【0132】
(精度管理用カセッテ5b)
図8(b)に示す精度管理用カセッテ5bでは、放射線照射時のガントリ2の傾斜角度である30度ステップに対応させて、中央孔53aの周りの合計13箇所に光通過孔が設けてある。即ち、図1に示す精度管理用カセッテ5の中心孔53a,左方孔53a,右方孔53e,上方孔53d,下方孔53eの間に合計8つの光通過孔53fが設けてある。
【0133】
そして、この精度管理用カセッテ5bを使用する場合は、追加された光通過孔53fに対応する位置に位置確認光を照射可能な複数の位置確認光照射装置を設置する。これにより、より精密な精度管理が可能になり、高精度な放射線治療に対応できるようになる。なお、中央孔53aの周りの光通過孔53b,53c,53e,53fは、図8(b)では平面視方形状に配置されているが、円形状に配置することも可能である。
【0134】
(精度管理用カセッテ5c)
図8(c)に示す精度管理用カセッテ5cでは、図1に示す精度管理用カセッテ5と相違して、中央孔53aが省略されている。このような配置の精度管理用カセッテ5cでも放射線治療装置100の精度管理が可能であるが、より精密な精度管理を行う場合は、図1に示す精度管理用カセッテ5を用いることが好ましい。
【実施例3】
【0135】
図9は、精度管理用カセッテの更に他の実施例を示す概略斜視説明図である。
なお、実施例1と同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、実施例1で説明した箇所については、説明を省略し、主に相異点を説明する。
【0136】
図9に示す精度管理用カセッテ5aでは、カセッテ本体51の照射面部511に目盛531が施されている。この目盛531は、例えば1mmまたは1cm単位の幅で格子状に設けることができる。なお、目盛531の幅は特にこれに限定するものではなく、2mm幅や5mm幅、あるいはそれ以外の長さでも良い。目盛531は、図9に示すように、少なくとも光通過孔53a,53b,53c,53dが設けてある領域を含むように施すことが好ましく、照射面部511全体に設けることもできる。
【0137】
本実施例に係る精度管理用カセッテ5aを使用すれば、精度管理用カセッテ5aの中心孔53aが位置確認光R1,R2,R3,R4の交点に合致するように目視で位置合わせする際に、目盛531を位置合わせの補助線として使用できる。また、スターショット画像の解析後にずれがあった場合のずれ補正時にも、方眼紙の代わりに使用することも可能なので、利便性が高い。
【0138】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示の実施例に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0139】
更に、特許請求の範囲には、請求項記載の内容の理解を助けるため、図面において使用した符号を、括弧を用いて記載しているが、特許請求の範囲を図面記載のものに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本実施例に係る精度管理用カセッテの概略斜視説明図。
【図2】図1に示す精度管理用カセッテを用いて放射線治療装置の精度管理を行っている状態を示す概略斜視説明図。
【図3】図2に示す精度管理用カセッテと放射線治療装置を正面方向から見た部分拡大説明図。
【図4】精度管理用カセッテを治療台の上で支持するための支持装置を示す斜視説明図。
【図5】放射線治療装置を構成するガントリの回転・停止を繰り返しながら、精度管理用カセッテに対して異なる角度から放射線を照射している状態を示す正面視説明図。
【図6】精度管理用カセッテに対して放射線を照射することで得られたスターショット画像を示す概略説明図。
【図7】精度管理用カセッテを用いて放射線治療装置の精度管理を行っている他の使用状態を示す概略斜視説明図。
【図8】本発明に係る精度管理用カセッテの他の実施例を示す平面視概略構成図。
【図9】精度管理用カセッテの更に他の実施例を示す概略斜視説明図。
【図10】一般的なリニアックを用いた放射線治療装置の概略を説明するための斜視説明図。
【図11】X線画像診断用フィルムを使用した従来の精度管理方法を説明するための図。
【符号の説明】
【0141】
A 患者
B1,B2 壁部
C 天上
100 放射線治療装置
R1,R2,R3,R4 位置確認光
P 位置確認光の交差位置
1 固定架台
2 ガントリ
21 照射ヘッド
22 コリメータ
3 治療台
5,5a,5b ,5c 精度管理用カセッテ
51 カセッテ本体
511 照射面部
52 輝尽性蛍光体プレート
53a 中心孔
53b 左方孔
53c 右方孔
53d 上方孔
53e 下方孔
53f 光通過孔
530a,530b,530c,530d,530e 白抜きの点
531 目盛
6 支持装置
61 支持装置本体
611 挟持部
612 条溝
62 足部
41a,41b,41c,41d 位置確認光照射装置
91 X線フィルム
92 袋
93 油性ペン
94 十字の印
95 スターショット画像
96 針
97 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、アイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を異なる角度から複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、
アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、
上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、
回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、
上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が設けられている、
放射線治療装置の精度管理用カセッテ。
【請求項2】
アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、
アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、
上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、
回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、
上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a)が設けられており、該光通過部(53a)は、少なくとも上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)を合わせることができる孔(53a)で構成されている、
放射線治療装置の精度管理用カセッテ。
【請求項3】
アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、
アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、
上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、
回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、
上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53b,53c,53d,53e)が設けられており、
該光通過部(53b,53c,53d,53e)は、少なくとも、アイソセンター方向へ水平に照射された位置確認光(R1)(R2)の位置を合わせるための孔(53b,53c)と、上記アイソセンター方向へ鉛直に照射された位置確認光(R4)または/及び上記アイソセンター方向へ下斜め方向に照射された位置確認光(R3)の位置に合わせるための孔(53d,53e)で構成されている、
放射線治療装置の精度管理用カセッテ。
【請求項4】
アイソセンターを中心にして水平方向に回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)の精度管理に用いられ、
アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかの確認と、
上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかの確認と、
回転する治療台(3)の中心軸が上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかの確認をそれぞれ行う際に使用する放射線治療装置(100)の精度管理用カセッテ(5)であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線と位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、
上記照射面部(511)の所要の位置には、照射される位置確認光(R1,R2,R3,R4)を合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が設けられており、
該光通過部(53b,53c,53d,53e)は、少なくとも、上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)を合わせることができる中央孔(53a)と、アイソセンター方向へ水平に照射された位置確認光(R1)(R2)の位置を合わせることができる左方孔(53b)及び右方孔(53c)と、上記アイソセンター方向へ鉛直に照射された位置確認光(R4)または/及び上記アイソセンター方向へ下斜め方向に照射された位置確認光(R3)の位置に合わせるための上方孔(53d)及び下方孔(53e)で構成され、上記中心孔(53a)、左方孔(53b)、右方孔(53c)、上方孔(53d)及び下方孔(53e)を結ぶ線分は、全体で上記中央孔(53a)を中心とした十字形を形成するように配置されている、
放射線治療装置の精度管理用カセッテ。
【請求項5】
カセッテ本体(51)の照射面部(511)には、光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が位置確認光(R1,R2,R3,R4)の照射野または交差位置(P)に一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置合わせを行う際の補助線として使用できる目盛が施されている、
請求項1ないし4のいずれかに記載の放射線治療装置の精度管理用カセッテ。
【請求項6】
アイソセンター方向に異なる角度から放射線を照射できる照射部を備えており、座標目盛り付きの金属フレーム及び座標ボックスで被検体の標的部位の位置合わせを行う放射線治療装置の精度管理に用いられ、位置合わせした被検体の標的部位がアイソセンターからずれていないかどうかを確認する際に使用する放射線治療装置の精度管理用カセッテ(5)であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)が収容されているか、あるいは輝尽性蛍光体プレート(52)を収容することができると共に、放射線の照射を受ける照射面部(511)を備えたカセッテ本体(51)を備えており、
上記照射面部(511)の所要の位置には、上記金属フレーム及び座標ボックスの原点座標に合わせることができると共に、カセッテ本体(51)の外から光を通過または透過させて中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせることができる光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が設けられている、
放射線治療装置の精度管理用カセッテ。
【請求項7】
アイソセンターを中心にして水平面上で回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)において、スターショット解析法を用いてアイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)がアイソセンターからずれていないかどうかを確認できる精度管理方法であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)を、治療台(3)上に直接的または間接的に立てた状態で載置し、該精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が照射された上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)と一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置確認光(R1,R2,R3,R4)に対する配置を調整するステップ、
スターショット画像を得るために、コリメータ及び治療台(3)は回転させないでガントリ(2)を回転させて上記精度管理用カセッテ(5)に異なる角度から放射線を照射するステップ、
上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させて、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、
上記放射線の照射によって得られたスターショット画像と、上記潜像退行現象によってスターショット画像中に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置関係を読み取るステップ、
を含む、
放射線治療装置の精度管理方法。
【請求項8】
アイソセンターを中心にして水平面上で回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)において、スターショット解析法を用いて、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)が、回転するコリメータの中心軸からずれていないかどうかを確認できる放射線治療装置(100)の精度管理方法であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)を、治療台(3)上に直接的または間接的に寝かせた状態で載置し、該精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が照射された上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)と一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置確認光(R1,R2,R3,R4)に対する配置を調整するステップ、
スターショット画像を得るために、ガントリ(2)及び治療台(3)は回転させないでコリメータを回転させて上記精度管理用カセッテ(5)に放射線を照射するステップ、
上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させて、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、
上記放射線の照射によって得られたスターショット画像と、上記潜像退行現象によってスターショット画像中に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置関係を読み取るステップ、
を含む、
放射線治療装置の精度管理方法。
【請求項9】
アイソセンターを中心にして水平面上で回転する治療台(3)と、上記アイソセンターを中心にして垂直面上で回転するガントリ(2)と、該ガントリ(2)に支持され上記アイソセンター方向に放射線を放出する照射ヘッド(21)と、該照射ヘッド(21)から放出される放射線を通すコリメータ孔を有するコリメータと、異なる角度からアイソセンター方向に可視波長領域の位置確認光(R1,R2,R3,R4)を複数照射することができる位置確認光照射装置(41a,41b,41c,41d)を備えた放射線治療装置(100)において、スターショット解析法を用いて回転する治療台(3)の中心軸がアイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された位置確認光(R1,R2,R3,R4)の交差位置(P)からずれていないかどうかを確認できる放射線治療装置(100)の精度管理方法であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)を、治療台(3)上に直接的または間接的に寝かせた状態で載置し、該精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が照射された上記位置確認光(R1,R2,R3,R4)と一致するように、精度管理用カセッテ(5)の位置確認光(R1,R2,R3,R4)に対する配置を調整するステップ、
スターショット画像を記録させるために、コリメータ及びガントリ(2)は回転させないで治療台(3)を回転させて上記精度管理用カセッテ(5)に異なる角度から放射線を照射するステップ、
上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させることにより、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、
該潜像退行現象によってスターショット画像中に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置から、位置確認光の交差位置(P)とアイソセンターとの位置関係を読み取るステップ、
を含む、
放射線治療装置の精度管理方法。
【請求項10】
アイソセンター方向に異なる角度から放射線を照射できる照射部を備えており、座標目盛り付きの金属フレーム及び座標ボックスで被検体の標的部位の位置合わせを行う放射線治療装置において、アイソセンター方向に異なる角度からそれぞれ照射された放射線がアイソセンターからずれていないかどうかを確認できる放射線治療装置の精度管理方法であって、
輝尽性蛍光体プレート(52)を収容する精度管理用カセッテ(5)に設けられた光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)が、座標目盛り付きの金属フレーム及び座標ボックスの原点座標と一致するように精度管理用カセッテ(5)の配置を調整するステップ、
上記精度管理用カセッテ(5)に異なる角度から放射線を照射するステップ、
上記光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)から光を通過または透過させて、精度管理用カセッテ(5)中の輝尽性蛍光体プレート(52)に潜像退行現象を生じさせるステップ、
輝尽性蛍光体プレート(52)に記録された放射線の画像と、上記潜像退行現象によって放射線の画像上に記録された光通過部(53a,53b,53c,53d,53e)の位置関係を読み取るステップ、
を含む、
放射線治療装置の精度管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−46422(P2008−46422A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222789(P2006−222789)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年2月20日 社団法人 日本放射線技術学会発行の「日本放射線技術学会 第62回総会学術大会」において文書をもって発表
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【Fターム(参考)】