説明

放射線治療装置制御装置および放射線治療装置の作動方法

【課題】治療用放射線を曝射する放射線照射装置をより高精度に駆動すること。
【解決手段】患部が測定時刻t0〜tnに配置される患部位置71−0〜71−nに基づいて予測経路73を算出するステップと、予測経路73に基づいて制御経路75を算出するステップと、制御経路75に放射線照射装置が向くように、その放射線照射装置を駆動する駆動装置を制御するステップと、その放射線照射装置が向く位置と予測経路73との差が所定誤差範囲内であるときにのみ、治療用放射線が曝射されるように、その放射線照射装置を制御するステップとを備えている。このような動作によれば、その患部にその治療用放射線が曝射される期間がより長くなるように、その放射線照射装置をより高精度に駆動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置制御装置および放射線治療装置の作動方法に関し、特に、人体内部の腫瘍患部を放射線治療するときに利用される放射線治療装置制御装置および放射線治療装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍患部に治療用放射線を曝射することにより患者を治療する放射線治療が知られている。その放射線治療を実行する放射線治療装置は、その治療用放射線を曝射する治療用放射線照射装置と、その患者の患部の位置を測定するセンサと、その測定された位置にその治療用放射線が照射されるようにその治療用放射線照射装置を駆動する駆動装置とを備えている。このような放射線治療装置によれば、その患者の呼吸等に伴ってその患部が動く場合でも、その患部に治療用放射線を照射することができる。このような放射線治療は、治療効果が高いことが望まれ、その治療用放射線は、その患部の細胞に曝射される線量に比較して、正常な細胞に曝射される線量がより小さいことが望まれている。このため、その放射線治療装置は、その治療用放射線をより高精度にその患部に曝射することが望まれ、その治療用放射線照射装置をより高精度に駆動することが望まれている。
【0003】
特開平02−202607号公報には、単純な数式で表すことのできない曲線状の経路を微小長さの直線で近似する場合に、その移動速度を高めるようにしたサーボモータの制御方法が開示されている。そのサーボモータの制御方法は、一定周期毎に機械の位置指令の演算を行う関数発生演算の1周期を複数回に分割し、分割された周期毎のサーボモータへの位置指令を発生するようにしたサーボモータの制御方法において、1回の関数発生中にサーボモータ制御周期K回分の移動量を算出し、前記移動量の転送は前記K回分の移動量を一度に行い、転送された前記K回分の移動量をバッファに格納し、前記サーボモータ制御周期毎に前記バッファから移動量を一点ずつ読み出して前記サーボモータの制御を行うようにしたことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−202607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、放射線を曝射する放射線照射装置をより高精度に駆動する放射線治療装置制御装置および放射線治療装置の作動方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、被検体の被ばく線量を低減し、かつ、放射線を曝射する放射線照射装置をより高精度に駆動する放射線治療装置制御装置および放射線治療装置の作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、発明を実施するための形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
本発明による放射線治療装置制御装置(10)は、被検体(43)の内部の特定部位(61)が測定時刻(t0〜tn)に配置される特定部位位置(71−0〜71−n)に基づいて測定時刻(t0〜tn)より後の複数の制御時刻(76)に特定部位(61)がそれぞれ配置される複数の予測位置(73)を算出する予測経路算出部(56)と、被検体(43)に放射線(23)を曝射する放射線照射装置(16)が配置される現在位置(74)と複数の予測位置(73)とに基づいて複数の制御時刻(76)に対応する複数の制御位置(75)を算出する制御経路算出部(57)と、複数の制御位置(75)のうちの現在時刻に対応する制御位置に放射線照射装置(16)が配置されるように、放射線照射装置(16)を駆動する駆動装置(15)を制御する駆動部(58)とを備えている。このような放射線治療装置制御装置(10)は、特定部位(61)に放射線(23)が曝射される期間がより長くなるように、放射線照射装置(16)をより高精度に駆動することができる。
【0008】
本発明による放射線治療装置制御装置(10)は、放射線照射装置(16)がその現在時刻に配置される位置と複数の予測位置(73)のうちのその現在時刻に対応する予測位置との差が所定誤差範囲内であるときに、その現在時刻に放射線(23)が曝射されるように、放射線照射装置(16)を制御する照射部(59)をさらに備えている。このとき、その照射部(59)は、その差がその所定誤差範囲内でないときに、その現在時刻に放射線(23)が曝射されないように、放射線照射装置(16)を制御することが好ましい。
【0009】
本発明による放射線治療装置制御装置(10)は、被検体(43)のうちの特定部位(61)と異なる他の部位(62)に関して測定時刻(t0〜tn)に測定されたサロゲート値を収集するサロゲート値収集部と、そのサロゲート値に基づいて特定部位位置(71−0〜71−n)を算出する特定部位算出部とをさらに備えている。このような放射線治療装置制御装置(10)は、被検体(43)を透過する放射線を用いないでそのサロゲート値を測定するときに、被検体(43)を透過する放射線を用いて特定部位(61)の特定部位位置(71−0〜71−n)を測定することに比較して、被検体(43)の被ばく線量を低減することができる。
【0010】
そのサロゲート値は、測定時刻(t0〜tn)に撮影された画像に被検体(43)の表面に配置されたマーカ(62)が映る位置を示していることが好ましい。
【0011】
本発明による放射線治療装置制御装置(10)は、複数のテーブル作成時時刻に被検体(43)を透過した放射線(23)に基づいてそれぞれ撮影された複数の透過画像とその複数のテーブル作成時時刻にそれぞれ測定された複数のサロゲート値とに基づいて、サロゲート値集合(67)を特定部位位置集合(68)に対応付けるテーブル(65)を作成するテーブル作成部をさらに備えている。特定部位位置(71−0〜71−n)は、特定部位位置集合(68)のうちのそのサロゲート値に対応する要素であることが好ましい。
【0012】
複数の制御時刻を含んでいる制御期間(76)は、分離時刻(tp)より前の第1期間(77)と、分離時刻(tp)より後の第2期間(78)とを含んでいる。複数の制御位置(75)のうちの第2期間(78)に対応する複数の収束制御位置は、複数の予測位置(73)のうちの第2期間(78)に対応する複数の収束予測位置にそれぞれ一致していることが好ましい。
【0013】
分離時刻(tp)は、入力装置を介して入力される情報に基づいて算出されることが好ましい。
【0014】
本発明による放射線治療装置の作動方法は、被検体(43)に放射線(23)を曝射する放射線照射装置(16)と、放射線照射装置(16)を駆動する駆動装置(15)とを備えている放射線治療装置(3)を制御する放射線治療装置制御装置(10)により実行される。本発明による放射線治療装置の作動方法は、被検体(43)の内部の特定部位(61)が測定時刻(t0〜tn)に配置される特定部位位置(71−0〜71−n)に基づいて測定時刻(t0〜tn)より後の複数の制御時刻(76)に特定部位(61)がそれぞれ配置される複数の予測位置(73)を算出するステップと、放射線照射装置(16)が配置される現在位置(74)と複数の予測位置(73)とに基づいて複数の制御時刻(76)に対応する複数の制御位置(75)を算出するステップと、複数の制御位置(75)のうちの現在時刻に対応する制御位置に放射線照射装置(16)が配置されるように、駆動装置(15)を制御するステップとを備えている。このような放射線治療装置の作動方法によれば、放射線治療装置制御装置(10)は、特定部位(61)に放射線(23)が曝射される期間がより長くなるように、放射線照射装置(16)をより高精度に駆動することができる。
【0015】
本発明による放射線治療装置の作動方法は、被検体(43)のうちの特定部位(61)と異なる他の部位(62)に関して測定時刻(t0〜tn)に測定されたサロゲート値に基づいて特定部位位置(71−0〜71−n)を算出するステップとをさらに備えている。このような放射線治療装置の作動方法によれば、放射線治療装置制御装置(10)は、被検体(43)を透過する放射線を用いないでそのサロゲート値を測定するときに、被検体(43)を透過する放射線を用いて特定部位(61)の特定部位位置(71−0〜71−n)を測定することに比較して、被検体(43)の被ばく線量を低減することができる。
【0016】
放射線(23)治療装置は、被検体(43)の表面に配置されたマーカ(62)を映す画像を測定時刻(t0〜tn)に撮影するカメラ(45)をさらに備えている。そのサロゲート値は、その画像にマーカ(62)が映る位置を示していることが好ましい。
【0017】
本発明による放射線治療装置の作動方法は、複数のテーブル作成時時刻に被検体(43)を透過した放射線(23)に基づいてそれぞれ撮影された複数の透過画像とその複数のテーブル作成時時刻にそれぞれ測定された複数のサロゲート値とに基づいて、サロゲート値集合(67)を特定部位位置集合(68)に対応付けるテーブル(65)を作成するステップをさらに備えている。特定部位位置(71−0〜71−n)は、特定部位位置集合(68)のうちのそのサロゲート値に対応する要素であることが好ましい。
【0018】
複数の制御時刻を含んでいる制御期間(76)は、分離時刻(tp)より前の第1期間(77)と、分離時刻(tp)より後の第2期間(78)とを含んでいる。複数の制御位置(75)のうちの第2期間(78)に対応する複数の収束制御位置は、複数の予測位置(73)のうちの第2期間(78)に対応する複数の収束予測位置にそれぞれ一致していることが好ましい。
【0019】
分離時刻(tp)は、入力装置を介して入力される情報に基づいて算出されることが好ましい。
【0020】
本発明によるコンピュータプログラムは、本発明による放射線治療装置の作動方法を放射線治療装置制御装置(10)に実行させるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明による放射線治療装置制御装置および放射線治療装置の作動方法によれば、その特定部位にその放射線が曝射される期間がより長くなるように、その放射線照射装置をより高精度に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、放射線治療装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、患者を示す側面図である。
【図3】図3は、放射線治療装置制御装置を示すブロック図である。
【図4】図4は、テーブルを示す図である。
【図5】図5は、予測経路と制御経路とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明による放射線治療装置制御装置の実施の形態を記載する。その放射線治療装置制御装置10は、図1に示されているように、放射線治療システムに適用されている。その放射線治療システムは、放射線治療装置制御装置10と放射線治療装置3とを備えている。放射線治療装置制御装置10は、パーソナルコンピュータに例示されるコンピュータである。放射線治療装置制御装置10と放射線治療装置3とは、双方向に情報を伝送することができるように、互いに接続されている。
【0024】
放射線治療装置3は、Oリング12と走行ガントリ14と治療用放射線照射装置16とを備えている。Oリング12は、リング状に形成され、回転軸17を中心に回転可能に基礎に支持されている。回転軸17は、鉛直方向に平行である。走行ガントリ14は、リング状に形成され、Oリング12のリングの内側に配置され、回転軸18を中心に回転可能にOリング12に支持されている。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通っている。回転軸18は、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。
【0025】
治療用放射線照射装置16は、走行ガントリ14のリングの内側に配置されている。治療用放射線照射装置16は、チルト軸21に回転可能に、かつ、パン軸22に回転可能に、走行ガントリ14に支持されている。パン軸22は、走行ガントリ14に対して固定され、回転軸18に交差しないで回転軸18に平行である。チルト軸21は、パン軸22に直交している。チルト軸21とパン軸22との交点は、アイソセンタ19から1mだけ離れている。
【0026】
放射線治療装置3は、さらに、旋回駆動装置11と首振り装置15とを備え、図示されていない走行駆動装置を備えている。旋回駆動装置11は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、回転軸17を中心にOリング12を回転させる。旋回駆動装置11は、さらに、基礎に対してOリング12が配置される旋回角度を測定し、その旋回角度を放射線治療装置制御装置10に出力する。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させる。その走行駆動装置は、さらに、Oリング12に対して走行ガントリ14が配置されるガントリ角度を測定し、そのガントリ角度を放射線治療装置制御装置10に出力する。
【0027】
首振り装置15は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、チルト軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させ、パン軸22を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。首振り装置15は、さらに、チルト軸21を中心に走行ガントリ14に対して治療用放射線照射装置16が回転するチルト角を測定し、そのチルト角を放射線治療装置制御装置10に出力する。首振り装置15は、さらに、パン軸22を中心に走行ガントリ14に対して治療用放射線照射装置16が回転するパン角を測定し、そのパン角を放射線治療装置制御装置10に出力する。
【0028】
治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、治療用放射線23を曝射する。治療用放射線23は、パン軸22とチルト軸21とが交差する交点を頂点とするコーンビームである。治療用放射線23は、一様強度分布を持つように形成されている。治療用放射線照射装置16は、マルチリーフコリメータ20を備えている。マルチリーフコリメータ20は、治療用放射線23が進行する領域に配置されるように、治療用放射線照射装置16に固定されている。マルチリーフコリメータ20は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、治療用放射線23の一部を遮蔽し、治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状を変更する。
【0029】
治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、治療用放射線照射装置16がアイソセンタ19に向かうように走行ガントリ14に固定されると、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。
【0030】
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、第1診断用X線源24と第2診断用X線源25と第1センサアレイ32と第2センサアレイ33とを備えている。第1診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持され、アイソセンタ19から第1診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とのなす角が鋭角になるように、走行ガントリ14のリングの内側に配置されている。第2診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持され、アイソセンタ19から第2診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とのなす角が鋭角になるように、走行ガントリ14のリングの内側に配置されている。第2診断用X線源25は、さらに、アイソセンタ19から第1診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から第2診断用X線源25を結ぶ線分とのなす角が直角(90度)になるように、配置されている。第1センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持され、アイソセンタ19を介して第1診断用X線源24に対向するように、配置されている。第2センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持され、アイソセンタ19を介して第2診断用X線源25に対向するように、配置されている。
【0031】
第1診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、所定のタイミングで第1診断用X線35をアイソセンタ19に向けて曝射する。第1診断用X線35は、第1診断用X線源24が有する1点から曝射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。第2診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、所定のタイミングで第2診断用X線36をアイソセンタ19に向けて曝射する。第2診断用X線36は、第2診断用X線源25が有する1点から曝射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
【0032】
第1センサアレイ32は、受光部を備えている。第1センサアレイ32は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、その受光部に受光されるX線に基づいて第1透視画像を生成する。第2センサアレイ33は、受光部を備えている。第2センサアレイ33は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、その受光部に受光されるX線に基づいて第2透視画像を生成する。その透視画像は、複数の画素から形成されている。その複数の画素は、その透視画像上にマトリクス状に配置され、それぞれ輝度に対応付けられている。その透視画像は、その複数の画素の各々に対応する輝度がその複数の画素の各々に着色されることにより、被写体を映し出している。第1センサアレイ32と第2センサアレイ33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0033】
このようなイメージャシステムによれば、第1センサアレイ32と第2センサアレイ33とにより得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする透視画像を生成することができる。
【0034】
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、x軸とy軸とz軸とを中心に回転移動可能に、かつ、そのx軸とy軸とz軸とに平行に平行移動可能に基礎に支持されている。そのx軸とy軸とz軸とは、互いに直交している。カウチ41は、その放射線治療システムにより治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、患者43が動かないように、患者43をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、カウチ41を回転移動させ、カウチ41を平行移動させる。
【0035】
放射線治療装置3は、さらに、第1赤外線カメラ45と第2赤外線カメラ46とを備えている。第1赤外線カメラ45は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、赤外線を用いてカウチ41に横臥した患者43を映す第1赤外線画像を撮影する。第2赤外線カメラ46は、第1赤外線カメラ45が配置される位置と異なる位置に配置されている。第2赤外線カメラ46は、放射線治療装置制御装置10により制御されることにより、赤外線を用いてカウチ41に横臥した患者43を映す第2赤外線画像を撮影する。
【0036】
図2は、患者43を示している。患者43は、患部61と赤外線マーカ62とを備えている。患部61は、病気がある部位を示し、治療用放射線23を照射すべき部位を示している。患部61としては、肺の一部が例示される。赤外線マーカ62は、第1赤外線カメラ45により撮像される第1赤外線画像に映し出され、第2赤外線カメラ46により撮像される第2赤外線画像に映し出されるものから形成され、患者43の体表面に貼り付けられている。なお、赤外線マーカ62は、その第1赤外線画像またはその第2赤外線画像の一方だけに映し出されるものから形成されることもできる。
【0037】
図3は、放射線治療装置制御装置10を示している。その放射線治療装置制御装置10は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置とリムーバルメモリドライブと通信装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、放射線治療装置制御装置10にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUに利用される情報を記録し、そのCPUにより生成される情報を記録する。そのリムーバルメモリドライブは、記録媒体が挿入されたときに、その記録媒体に記録されているデータを読み出すことに利用される。そのリムーバルメモリドライブは、特に、コンピュータプログラムが記録されている記録媒体が挿入されたときに、そのコンピュータプログラムを放射線治療装置制御装置10にインストールするときに利用される。その通信装置は、通信回線網を介して接続される他のコンピュータから配信される情報を放射線治療装置制御装置10にダウンロードする。その通信装置は、特に、他のコンピュータからコンピュータプログラムを放射線治療装置制御装置10にダウンロードし、そのコンピュータプログラムを放射線治療装置制御装置10にインストールするときに利用される。その入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、マウスが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成された情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、そのCPUにより生成された画像を表示するディスプレイが例示される。
【0038】
そのインターフェースは、放射線治療装置制御装置10に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、放射線治療装置3の旋回駆動装置11と走行駆動装置と首振り装置15と治療用放射線照射装置16とマルチリーフコリメータ20と第1診断用X線源24と第2診断用X線源25と第1センサアレイ32と第2センサアレイ33とカウチ駆動装置42と第1赤外線カメラ45と第2赤外線カメラ46とを含んでいる。
【0039】
放射線治療装置制御装置10にインストールされるコンピュータプログラムは、放射線治療装置制御装置10に複数の機能をそれぞれ実現させるための複数のコンピュータプログラムから形成されている。その複数の機能は、治療計画収集部51とテーブル作成部52と漸近期間設定部53とサロゲート値収集部54と特定部位位置算出部55と予測経路算出部56と制御経路算出部57と駆動部58と照射部59とを含んでいる。
【0040】
治療計画収集部51は、入力装置から治療計画を収集する。その治療計画は、照射角度と線量との組み合わせを示している。その照射角度は、患部61に治療用放射線23を照射する方向を示し、カウチ位置とOリング回転角とガントリ回転角とを示している。そのカウチ位置は、基礎に対するカウチ41の位置を示している。そのOリング回転角は、基礎に対するOリング12の位置を示している。そのガントリ回転角は、Oリング12に対する走行ガントリ14の位置を示している。その線量は、その照射角度から患者43に照射される治療用放射線23の線量を示している。
【0041】
テーブル作成部52は、互いに異なる複数の時刻にカウチ41に横臥した患部61を映す複数の第1透過画像と複数の第2透過画像とがそれぞれ撮影されるように、放射線治療装置3を制御する。すなわち、テーブル作成部52は、その透過画像に患部61が映る位置にカウチ41が配置されるように、カウチ駆動装置42を制御する。テーブル作成部52は、さらに、その透過画像に患部61が映る位置にOリング12が配置されるように、旋回駆動装置11を制御する。テーブル作成部52は、さらに、その透過画像に患部61が映る位置に走行ガントリ14が配置されるように、放射線治療装置3の走行駆動装置を制御する。テーブル作成部52は、さらに、所定の期間に第1診断用X線35が患者43に周期的に(たとえば、50ms間隔で)曝射されるように、第1診断用X線源24を制御する。その所定の期間としては、呼吸2〜3周期分が例示され、30秒が例示される。テーブル作成部52は、さらに、第1診断用X線35が曝射される複数の時刻に第2診断用X線36が患者43に周期的に曝射されるように、第2診断用X線源25を制御する。テーブル作成部52は、さらに、第1診断用X線35が患者43に曝射されたときに、患者43を透過したX線に基づいて複数の第1透過画像が生成されるように、第1センサアレイ32を制御する。テーブル作成部52は、さらに、第2診断用X線36が患者43に曝射されたときに、患者43を透過したX線に基づいて複数の第2透過画像が生成されるように、第2センサアレイ33を制御する。
【0042】
テーブル作成部52は、さらに、第1診断用X線35が曝射される複数の時刻に、患者43を映す複数の第1赤外線画像が撮影されるように、第1赤外線カメラ45を制御する。テーブル作成部52は、さらに、第1診断用X線35が曝射される複数の時刻に、患者43を映す複数の第2赤外線画像が撮影されるように、第2赤外線カメラ46を制御する。テーブル作成部52は、さらに、その複数の第1透過画像とその複数の第2透過画像とその複数の第1赤外線画像とその複数の第2赤外線画像とに基づいてテーブルを作成する。
【0043】
漸近期間設定部53は、入力装置を介して入力される情報に基づいて分離時刻を決定する。
【0044】
サロゲート値収集部54は、患者43の治療中に、患者43を映す複数の第1赤外線画像が周期的に(たとえば、50ms間隔で)撮影されるように、第1赤外線カメラ45を制御する。サロゲート値収集部54は、さらに、その複数の第1赤外線画像が撮影される複数の時刻に、患者43を映す複数の第2赤外線画像が撮影されるように、第2赤外線カメラ46を制御する。サロゲート値収集部54は、さらに、その複数の第1赤外線画像に赤外線マーカ62が映る位置とその複数の第2赤外線画像に赤外線マーカ62が映る位置とに基づいてサロゲート値を算出する。そのサロゲート値は、赤外線マーカ62の3次元位置を示している。
【0045】
特定部位位置算出部55は、テーブル作成部52により作成されたテーブルを参照して、サロゲート値収集部54により算出されたサロゲート値に基づいて特定部位位置を算出する。その特定部位位置は、サロゲート値収集部54により第1赤外線画像(第2赤外線画像)が撮影された時刻に患部61が配置されていた位置を示している。
【0046】
予測経路算出部56は、特定部位位置算出部55により算出された特定部位位置に基づいて予測経路を算出する。その予測経路は、特定部位位置算出部55により算出された特定部位位置に患部61が配置された後の期間に、患部61が配置される位置の軌跡を示している。
【0047】
制御経路算出部57は、治療用放射線照射装置16のチルト角とパン角とを測定するように、首振り装置15を制御する。制御経路算出部57は、そのチルト角とパン角とに基づいて治療用放射線照射装置16が現在時刻に向いている位置を算出する。制御経路算出部57は、その算出された位置と漸近期間設定部53により決定された分離時刻と予測経路算出部56により算出された予測経路とに基づいて制御経路を算出する。その制御経路は、予測経路算出部56により算出された予測経路が示す期間に、治療用放射線照射装置16が向けられる位置を示している。
【0048】
駆動部58は、制御経路算出部57により算出された制御経路のうちの現在時刻に対応する位置に治療用放射線照射装置16が向くように、すなわち、その位置に治療用放射線23が曝射されるように、首振り装置15を制御する。このとき、駆動部58は、サロゲート値収集部54により複数の第1赤外線画像が撮影される周期に比較して十分に短いサンプリング周期(たとえば、5ms)で首振り装置15を制御する。
【0049】
照射部59は、予測経路算出部56により算出された予測経路のうちの現在時刻に対応する位置と治療用放射線照射装置16が現在時刻に向いている位置との差が所定範囲に含まれるときに、治療用放射線23が曝射されるように、治療用放射線照射装置16を制御する。照射部59は、予測経路算出部56により算出された予測経路のうちの現在時刻に対応する位置と治療用放射線照射装置16が現在時刻に向いている位置との差が所定範囲に含まれないときに、治療用放射線23が曝射されないように、治療用放射線照射装置16を制御する。
【0050】
図4は、テーブル作成部52により作成されたテーブルを示している。そのテーブル65は、時刻集合66をマーカ位置集合67に対応付け、時刻集合66を患部位置集合68に対応付けている。すなわち、時刻集合66のうちの任意の要素は、マーカ位置集合67のうちの1つの要素に対応し、患部位置集合68のうちの1つの要素に対応している。時刻集合66の要素は、テーブル作成部52により複数の第1透過画像がそれぞれ撮影された複数の時刻のうちの1つの時刻を示している。マーカ位置集合67のうちのある時刻に対応する要素は、その時刻に撮影された赤外線画像にマーカ62が映る位置に基づいて算出されたマーカ62の3次元位置を示している。患部位置集合68のうちのある時刻に対応する要素は、その時刻に撮影された第1透過画像に患部61が映る位置と第2透過画像に患部61が映る位置とに基づいて算出された患部61の3次元位置を示している。
【0051】
すなわち、テーブル65は、マーカ位置集合67を患部位置集合68に対応付けている。すなわち、マーカ位置集合67のうちの任意の要素は、患部位置集合68のうちの1つの要素に対応している。患部位置集合68のうちのあるマーカ位置に対応する要素は、そのマーカ位置にマーカ62が配置されているときに、患部61が配置される3次元位置を示している。
【0052】
このとき、特定部位位置算出部55は、テーブル65を参照して、患部位置集合68のうちのサロゲート値収集部54により算出されたサロゲート値に対応する特定部位位置を算出する。
【0053】
図5は、特定部位位置算出部55により算出される複数の特定部位位置を示している。その複数の特定部位位置71−0〜71−n(n=1,2,3,4,…)は、それぞれ、サロゲート値収集部54により撮影される第1赤外線画像と第2赤外線画像とに基づいて算出される。すなわち、複数の特定部位位置71−0〜71−nの各特定部位位置71−i(i=0,1,2,3,…,n)は、サロゲート値収集部54により時刻tiに撮影される第1赤外線画像と第2赤外線画像とに基づいて算出され、患部61が時刻tiに配置される位置を示している。時刻tiと時刻t(i+1)との間隔Δtは、サロゲート値収集部54により複数の第1赤外線画像(または複数の第2赤外線画像)が撮影される周期と一致している。
【0054】
このとき、予測経路算出部56は、特定部位位置71−0〜71−nに基づいて予測特定部位位置72を算出する。予測特定部位位置72は、時刻t0から間隔Δtだけ後の時刻t0+Δtに患部61が配置される位置を示している。予測経路算出部56は、さらに、特定部位位置71−0〜71−nに基づいて予測経路73を算出する。予測経路73は、時刻t0から時刻t0+Δtまでの期間76に患部61が配置される位置の軌跡を示している。すなわち、予測経路73は、期間76に含まれる複数の時刻に患部61がそれぞれ配置される複数の位置を示している。その複数の時刻の間隔は、駆動部58により首振り装置15が制御されるサンプリング周期に一致している。
【0055】
このとき、漸近期間設定部53は、入力装置を介して入力される情報に基づいて分離時刻tpを決定する。その情報としては、時間が例示される。漸近期間設定部53は、入力装置を介して時間が入力されたときに、期間76が開始される時刻t0から、その入力された時間だけ経過した時刻を分離時刻tpに設定する。期間76は、第1期間77と第2期間78とから形成されている。第1期間77は、期間76のうちの漸近期間設定部53により決定される分離時刻tpより前の期間を示している。第2期間78は、期間76のうちの分離時刻tpより後の期間を示している。
【0056】
このとき、制御経路算出部57は、漸近期間設定部53により決定される分離時刻tpと予測経路73と時刻t0に治療用放射線照射装置16が配置される位置74とに基づいて制御経路75を算出する。制御経路75は、期間76に含まれる複数の時刻に対応する複数の位置を示している。その複数の時刻は、予測経路73が示す複数の位置に対応する複数の時刻に一致している。制御経路75のうちの第1期間77に対応する経路は、時間が経過するにつれて位置74から予測経路73に漸近するように、形成されている。制御経路75のうちの第2期間78に対応する経路は、予測経路73のうちの第2期間78に対応する経路に一致している。
【0057】
このとき、駆動部58は、治療用放射線照射装置16が現在時刻に配置されるチルト角とパン角とを測定するように、首振り装置15を制御する。駆動部58は、さらに、そのチルト角とパン角とに基づいて治療用放射線照射装置16が現在時刻に向いている位置を算出する。駆動部58は、さらに、制御経路75のうちの現在時刻に対応する位置に治療用放射線照射装置16が向くように、すなわち、その位置に治療用放射線23が曝射されるように、首振り装置15をフィードバック制御する。このような制御は、サロゲート値収集部54により複数の第1赤外線画像が撮影される周期に比較して十分に短いサンプリング周期で繰り返し実行される。
【0058】
なお、第1赤外線画像が撮影されてから制御経路75が算出されるまでに時間dtが必要であるときに、期間76は、時刻t0+dtから時刻t0+Δt+dtまでに置換される。
【0059】
放射線治療装置制御装置10により実行される動作は、テーブルを作成する動作と放射線治療する動作とを備えている。
【0060】
そのテーブルを作成する動作では、ユーザは、まず、入力装置を介して、事前に作成された治療計画を放射線治療装置制御装置10に入力する。その治療計画は、照射角度と線量との組み合わせを示している。その照射角度は、患者43の患部に治療用放射線23を照射する方向を示し、カウチ位置とOリング回転角とガントリ回転角とを示している。そのカウチ位置は、基礎に対するカウチ41の位置と向きとを示している。そのOリング回転角は、基礎に対するOリング12の位置を示している。そのガントリ回転角は、Oリング12に対する走行ガントリ14の位置を示している。その線量は、その各照射角度から患者43に照射される治療用放射線23の線量を示している。
【0061】
ユーザは、放射線治療装置3のカウチ41に患者43を固定する。放射線治療装置制御装置10は、カウチ41に横臥した患者43の内部を映す複数の第1透過画像と複数の第2透過画像とが撮影されるように、放射線治療装置3を制御する。すなわち、放射線治療装置制御装置10は、その透過画像に患部61が映る位置にカウチ41が配置されるように、カウチ駆動装置42を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、その透過画像に患部61が映る位置にOリング12が配置されるように、旋回駆動装置11を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、その透過画像に患部61が映る位置に走行ガントリ14が配置されるように、放射線治療装置3の走行駆動装置を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、所定の期間に第1診断用X線35が患者43に周期的に(たとえば、50ms間隔で)曝射されるように、第1診断用X線源24を制御する。その所定の期間としては、呼吸2〜3周期分が例示され、30秒が例示される。放射線治療装置制御装置10は、さらに、第1診断用X線35が曝射される複数の時刻に第2診断用X線36が患者43に周期的に曝射されるように、第2診断用X線源25を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、第1診断用X線35が患者43に曝射されたときに、患者43を透過したX線に基づいて複数の第1透過画像が生成されるように、第1センサアレイ32を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、第2診断用X線36が患者43に曝射されたときに、患者43を透過したX線に基づいて複数の第2透過画像が生成されるように、第2センサアレイ33を制御する。
【0062】
放射線治療装置制御装置10は、さらに、第1診断用X線35が曝射される時刻と同時に、患者43の赤外線マーカ62を映す複数の第1赤外線画像が撮影されるように、第1赤外線カメラ45を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、第1診断用X線35が曝射される時刻と同時に、患者43の赤外線マーカ62を映す複数の第2赤外線画像が撮影されるように、第2赤外線カメラ46を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、その複数の第1透過画像とその複数の第2透過画像とその複数の第1赤外線画像とその複数の第2赤外線画像とに基づいてテーブル65を作成する。
【0063】
その放射線治療する動作は、そのテーブルを作成する動作が終了した後に実行される。放射線治療装置制御装置10は、その治療計画が示すカウチ位置にカウチ41が配置されるように、カウチ駆動装置42を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、その治療計画が示すOリング回転角にOリング12が配置されるように、旋回駆動装置11を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、その治療計画が示すガントリ回転角に走行ガントリ14が配置されるように、放射線治療装置3の走行駆動装置を制御する。
【0064】
放射線治療装置制御装置10は、その治療計画が示す所定の位置にカウチ41とOリング12と走行ガントリ14とが所定の位置に配置された後に、患者43の赤外線マーカ62を映す複数の第1赤外線画像が撮影されるように、第1赤外線カメラ45を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、その第1赤外線画像が撮影される時刻と同時に、患者43の赤外線マーカ62を映す第2赤外線画像が撮影されるように、第2赤外線カメラ46を制御する。
【0065】
放射線治療装置制御装置10は、さらに、その複数の第1赤外線画像に赤外線マーカ62が映る位置とその複数の第2赤外線画像に赤外線マーカ62が映る位置とに基づいてサロゲート値を算出する。そのサロゲート値は、赤外線マーカ62の3次元位置を示している。放射線治療装置制御装置10は、テーブル65を参照して、患部位置集合68のうちの放射線治療装置制御装置10により算出されたサロゲート値に対応する特定部位位置71−0〜71−nを算出する。
【0066】
放射線治療装置制御装置10は、特定部位位置71−0〜71−nに基づいて予測経路73を算出する。放射線治療装置制御装置10は、事前に決定された分離時刻tpと予測経路73と時刻t0に治療用放射線照射装置16が配置される位置74とに基づいて制御経路75を算出する。
【0067】
放射線治療装置制御装置10は、治療用放射線照射装置16が現在時刻に配置されるチルト角とパン角とを測定するように、首振り装置15を制御する。放射線治療装置制御装置10は、さらに、そのチルト角とパン角とに基づいて治療用放射線照射装置16が現在時刻に向いている位置を算出する。放射線治療装置制御装置10は、制御経路75のうちの現在時刻に対応する位置に治療用放射線照射装置16が向くように、すなわち、その位置に治療用放射線23が曝射されるように、首振り装置15をフィードバック制御する。このような制御は、サロゲート値収集部54により複数の第1赤外線画像が撮影される周期に比較して十分に短いサンプリング周期で繰り返し実行される。
【0068】
放射線治療装置制御装置10は、治療している期間が制御経路75で充填されるように、このような動作を間隔Δtごとに周期的に繰り返して実行する。
【0069】
放射線治療装置制御装置10は、予測経路73のうちの現在時刻に対応する位置と治療用放射線照射装置16が現在時刻に向いている位置との差が所定範囲に含まれるときに、治療用放射線23が曝射されるように、治療用放射線照射装置16を制御する。放射線治療装置制御装置10は、予測経路73のうちの現在時刻に対応する位置と治療用放射線照射装置16が現在時刻に向いている位置との差が所定範囲に含まれないときに、治療用放射線23が曝射されないように、治療用放射線照射装置16を制御する。放射線治療装置制御装置10は、第1赤外線画像(第2赤外線画像)が撮影される周期に比較して十分に短いサンプリング周期で、治療用放射線照射装置16を繰り返し制御する。
【0070】
治療用放射線照射装置16は、その第1赤外線画像と第2赤外線画像とに基づいて算出された患部61の1つの現在位置に治療用放射線照射装置16が駆動されるときに、または、その第1赤外線画像と第2赤外線画像とに基づいて算出された患部61の1つの予測位置に治療用放射線照射装置16が駆動されるときに、期間76のうちの短時間しか患部61に向かないことがある。たとえば、概ね等速に治療用放射線照射装置16が駆動されるように、かつ、治療用放射線照射装置16が時刻t0+Δtに予測位置72にちょうど向くように、すなわち、治療用放射線照射装置16が向く位置が制御経路80を辿るように、首振り装置15が制御されたときに、治療用放射線照射装置16は、時刻t0+Δtの近傍でしか患部61に向かないで、期間76のほとんどで患部61に向かないことがある。
【0071】
このような動作によれば、放射線治療装置制御装置10は、患部61の位置を測定する周期(第1赤外線画像が撮影される周期)に比較して首振り装置15を制御する周期が十分に短い場合でも、患部61の位置が測定されていない時刻に、患部61がその時刻に配置されると予測された位置に治療用放射線照射装置16を向けることができる。このため、放射線治療装置制御装置10は、治療用放射線照射装置16が向く位置が制御経路80を辿る制御に比較して、患部61に治療用放射線23が曝射される期間がより長くなるように、治療用放射線照射装置16をより高精度に駆動することができる。この結果、治療用放射線照射装置16は、治療用放射線23をより高精度に患部61に曝射することができ、放射線治療の治療時間を短縮することができ、患者43の負担を軽減することができる。
【0072】
このような動作によれば、さらに、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮影された透過画像に基づいて算出される患部61の位置を用いることに比較して、患者43の被曝線量を低減することができる。
【0073】
なお、予測経路算出部56は、1個の特定部位位置71−0に基づいて予測経路73を算出する他の予測経路算出部に置換されることもできる。このような予測経路算出部が適用された放射線治療装置制御装置は、既述の実施の形態における放射線治療装置制御装置10と同様にして、治療用放射線照射装置16をより高精度に駆動することができる。
【0074】
なお、特定部位算出部55は、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮影された透過画像に基づいて特定部位71−0〜71−nを算出する他の特定部位算出部に置換されることができる。このような特定部位算出部が適用された放射線治療装置制御装置は、既述の実施の形態における放射線治療装置制御装置10と同様にして、治療用放射線照射装置16をより高精度に駆動することができる。
【0075】
なお、サロゲート値収集部54は、赤外線カメラと異なる他のセンサを用いて測定されるサロゲート値を収集する他のサロゲート値収集部に置換されることができる。そのセンサとしては、患者43に放射線を曝射しないものが好ましく、たとえば、スパイロメータが例示される。このようなサロゲート値収集部が適用された放射線治療装置制御装置は、既述の実施の形態における放射線治療装置制御装置10と同様にして、治療用放射線照射装置16をより高精度に駆動することができる。
【0076】
なお、漸近期間設定部53は、入力装置を介して入力される情報と異なる情報に基づいて分離時刻tpを設定する他の漸近期間設定部に置換されることができる。たとえば、その漸近期間設定部は、固定値を分離時刻tpに設定し、または、予測経路73と位置74とに基づいて算出される時刻を分離時刻tpに設定する。このような漸近期間設定部が適用された放射線治療装置制御装置は、既述の実施の形態における放射線治療装置制御装置10と同様にして、治療用放射線照射装置16をより高精度に駆動することができる。
【0077】
なお、制御経路73は、時間が経過するにつれて位置74から予測経路73に漸近する制御経路80に置換されることもできる。制御経路80が適用された放射線治療装置制御装置は、時刻t0で測定された特定部位位置71−0と時刻t0で治療用放射線照射装置16が向いている位置74とが十分に近いときに、既述の実施の形態における放射線治療装置制御装置10と同様にして、治療用放射線照射装置16をより高精度に駆動することができる。
【符号の説明】
【0078】
3 :放射線治療装置
10:放射線治療装置制御装置
11:旋回駆動装置
12:Oリング
14:走行ガントリ
15:首振り装置
16:治療用放射線照射装置
17:回転軸
18:回転軸
19:アイソセンタ
20:マルチリーフコリメータ
21:チルト軸
22:パン軸
23:治療用放射線
24:第1診断用X線源
25:第2診断用X線源
32:第1センサアレイ
33:第2センサアレイ
35:第1診断用X線
36:第2診断用X線
41:カウチ
42:カウチ駆動装置
43:患者
45:第1赤外線カメラ
46:第2赤外線カメラ
51:治療計画収集部
52:テーブル作成部
53:漸近期間設定部
54:サロゲート値収集部
55:特定部位位置算出部
56:予測経路算出部
57:制御経路算出部
58:駆動部
59:照射部
61:患部
62:マーカ
65:テーブル
66:時刻集合
67:マーカ位置集合
68:患部位置集合
71−0〜71−n:特定部位位置
72:予測特定部位位置
73:予測経路
74:位置
75:制御経路
76:期間
77:第1期間
78:第2期間
80:制御経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の内部の特定部位が測定時刻に配置される特定部位位置に基づいて前記測定時刻より後の複数の制御時刻に前記特定部位がそれぞれ配置される複数の予測位置を算出する予測経路算出部と、
前記被検体に放射線を曝射する放射線照射装置が配置される現在位置と前記複数の予測位置とに基づいて前記複数の制御時刻に対応する複数の制御位置を算出する制御経路算出部と、
前記複数の制御位置のうちの現在時刻に対応する制御位置に前記放射線照射装置が配置されるように、前記放射線照射装置を駆動する駆動装置を制御する駆動部
とを具備する放射線治療装置制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記放射線照射装置が前記現在時刻に配置される位置と前記複数の予測位置のうちの前記現在時刻に対応する予測位置との差が所定誤差範囲内であるときに、前記現在時刻に前記放射線が曝射されるように、前記放射線照射装置を制御する照射部をさらに具備し、
前記照射部は、前記差が前記所定誤差範囲内でないときに、前記現在時刻に前記放射線が曝射されないように、前記放射線照射装置を制御する
放射線治療装置制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかにおいて、
前記被検体のうちの前記特定部位と異なる他の部位に関して前記測定時刻に測定されたサロゲート値を収集するサロゲート値収集部と、
前記サロゲート値に基づいて前記特定部位位置を算出する特定部位算出部
とをさらに具備する放射線治療装置制御装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記サロゲート値は、前記測定時刻に撮影された画像に前記被検体の表面に配置されたマーカが映る位置を示す
放射線治療装置制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4のいずれかにおいて、
複数のテーブル作成時時刻に前記被検体を透過した放射線に基づいてそれぞれ撮影された複数の透過画像と前記複数のテーブル作成時時刻にそれぞれ測定された複数のサロゲート値とに基づいて、サロゲート値集合を特定部位位置集合に対応付けるテーブルを作成するテーブル作成部をさらに具備し、
前記特定部位位置は、前記特定部位位置集合のうちの前記サロゲート値に対応する要素である
放射線治療装置制御装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、
前記複数の制御時刻を含む制御期間は、
分離時刻より前の第1期間と、
前記分離時刻より後の第2期間とを含み、
前記複数の制御位置のうちの前記第2期間に対応する複数の収束制御位置は、前記複数の予測位置のうちの前記第2期間に対応する複数の収束予測位置にそれぞれ一致する
放射線治療装置制御装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記分離時刻は、入力装置を介して入力される情報に基づいて算出される
放射線治療装置制御装置。
【請求項8】
被検体に放射線を曝射する放射線照射装置と、
前記放射線照射装置を駆動する駆動装置
とを備える放射線治療装置
を制御する放射線治療装置制御装置により実行される放射線治療装置の作動方法であり、
前記被検体の内部の特定部位が測定時刻に配置される特定部位位置に基づいて前記測定時刻より後の複数の制御時刻に前記特定部位がそれぞれ配置される複数の予測位置を算出するステップと、
前記放射線照射装置が配置される現在位置と前記複数の予測位置とに基づいて前記複数の制御時刻に対応する複数の制御位置を算出するステップと、
前記複数の制御位置のうちの現在時刻に対応する制御位置に前記放射線照射装置が配置されるように、前記駆動装置を制御するステップ
とを具備する放射線治療装置の作動方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記被検体のうちの前記特定部位と異なる他の部位に関して前記測定時刻に測定されたサロゲート値に基づいて前記特定部位位置を算出するステップ
とをさらに具備する放射線治療装置の作動方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記放射線治療装置は、前記被検体の表面に配置されたマーカを映す画像を前記測定時刻に撮影するカメラをさらに備え、
前記サロゲート値は、前記画像に前記マーカが映る位置を示す
放射線治療装置の作動方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10のいずれかにおいて、
複数のテーブル作成時時刻に前記被検体を透過した放射線に基づいてそれぞれ撮影された複数の透過画像と前記複数のテーブル作成時時刻にそれぞれ測定された複数のサロゲート値とに基づいて、サロゲート値集合を特定部位位置集合に対応付けるテーブルを作成するステップをさらに具備し、
前記特定部位位置は、前記特定部位位置集合のうちの前記サロゲート値に対応する要素である
放射線治療装置の作動方法。
【請求項12】
請求項8〜請求項11のいずれかにおいて、
前記複数の制御時刻を含む制御期間は、
分離時刻より前の第1期間と、
前記分離時刻より後の第2期間とを含み、
前記複数の制御位置のうちの前記第2期間に対応する複数の収束制御位置は、前記複数の予測位置のうちの前記第2期間に対応する複数の収束予測位置にそれぞれ一致する
放射線治療装置の作動方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記分離時刻は、入力装置を介して入力される情報に基づいて算出される
放射線治療装置の作動方法。
【請求項14】
請求項8〜請求項13のいずれかに記載される放射線治療装置の作動方法を前記放射線治療装置制御装置に実行させる
コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−160942(P2011−160942A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26158(P2010−26158)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】