説明

放射線治療装置校正用ファントム、放射線治療装置、及び放射線治療装置校正方法

【課題】寝台の上に載置した状態で撮影を行うことで、放射線治療装置の稼働軸の位置ずれを容易に判断することができる放射線治療装置校正用ファントムを提供する。
【解決手段】放射線が通過可能な材質で構成された直方体の形状を有するアクリル部材101と、アクリル部材101における平行な各辺の中心点を結ぶ位置に配置された、放射線を遮蔽する効果を有する材質で構成された各々直交する3つの鉛板部材102と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置が有する複数の稼働軸の位置の校正の支援を行う放射線治療装置校正用ファントム、放射線治療装置、及び放射線治療装置校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線(特にX線)を癌や腫瘍等の病変部に照射することにより、当該病変部の組織細胞の破壊や分裂阻止等を行うことで、その治癒を目指す放射線治療が広く行われるようになっている。ここで、放射線としては、例えば直線加速器(リニアアクセラレータ=LINAC)によって加速された電子を、所定のターゲット(タングステン、金、白金等)に照射することで発生するX線、等が広く利用される。この直線加速器とターゲットで構成される部材が放射線源である。このような放射線治療装置は、放射線を照射する放射線源や放射線源から照射された放射線を絞る絞り装置を有する医用ライナック(「架台」ともいう。)を有する。
【0003】
ところで、このような放射線治療を実施するにあたっては、上記病変部に対する十分な治療効果を得るために相応の放射線照射(ないし線量)が必要であるとともに、病変部以外の他の正常組織に関しては、障害が発生しないように、その許容線量を超えるような放射線照射は可能な限り行わない、という条件を満足しなければならない。このとき特に、病変部の近傍に、放射線に対して高感受性を有する組織(例えば、甲状腺や眼球(水晶体))が存在する場合においては、より高度の注意が必要となる。
【0004】
したがって、放射線治療を実際に開始する前には、上記条件を満足するため、病変部の位置、大きさ、形状、数等を正確に把握し(病変部の特定)、それに基づき放射線を照射する領域(照射野)、照射角度、照射門数等を決定して、当該病変部に放射線が集中するよう、かつ、当該病変部周囲の線量分布が適当なものとなるような放射線治療計画を策定する必要がある。そして、実際の放射線治療は、このように策定された放射線治療計画に基づいて実施されることになる。
【0005】
このとき、放射線治療装置における放射線の照射中心(アイソセンタ)がずれていた場合、上述した放射線治療計画がいかに正しくても結果的に所望の位置に放射線が当たらず、正確に病変部に放射線を照射することができない。特に近年は高度な手法を用いた照射方法(IMRT等)が確立されていることから、放射線治療装置の調整が精密に行われていなければならない。ここで、放射線治療装置には複数の回転軸があるため、その回転軸が所定の位置からずれていた場合、放射線の照射中心がずれてしまう。そのため、放射線治療装置の各回転軸の位置を調整することで、放射線の照射中心の位置を正確に調整する必要がある。この調整は毎日治療開始前に位置調整を行うことが推奨される場合もあるが、点検に時間がかかるため、放射線技師への負担が増加している。
【0006】
従来、月に1回もしくは年に1回の割合で、正確な調整を行う方法としていくつか提案されている。その一つに、コリメータを回転させることでコリメータに表示されている十字のマークを回転させ、その十字マークの回転による位置ずれによりコリメータの回転軸の位置ずれを計測する方法。それ以外にも、まず鉛のブロックでコリメータの片側の一部を遮蔽し放射線ビームを照射し画像を撮像し、その後、医用ライナックを回転させ180度反対の位置から同じように画像を撮像して、その各画像の位置ずれを基に医用ライナックの回転軸の位置ずれを計測する方法がある。しかし、これらの方法は煩雑であり、時間がかかるため、毎日の簡単な位置ずれの計測には用いることは困難である。
【0007】
そこで従来は、毎日の簡単な位置ずれの計測としては、部屋に設置されているアイソセンタを計測するためのレーザ光線を照射し、中心位置がずれていないことを操作者が眼で確認していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−59872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のような測定は、前述のように複雑な手法を用いて時間がかかるものが多い。また、操作者が視認する方法では、操作者の感覚に依存するため許容値を下回る精度になってしまう場合もある。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、放射線治療装置の稼働軸の位置ずれを容易に判断することができる放射線治療装置校正用ファントム、該校正用ファントムを使用する放射線治療装置、及び該校正用ファントムを使用した放射線治療装置校正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線治療装置校正用ファントムは、放射線が通過可能な材質で構成された直方体の形状を有する直方体部材と、該直方体部材における平行な各辺の中心点を結ぶ位置に配置された、放射線を遮蔽する効果を有する材質で構成された各々直交する3つの平板部材と、で構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の放射線治療装置は、被検体を載置する天板と、前記天板を3次元的に移動可能に支持する寝台と、前記寝台を支える支柱を中心に床と水平方向に回転させる第1寝台回転手段と、前記寝台を放射線の放射中心線を中心に前記寝台を水平方向に回転させる第2寝台回転手段と、前記被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段と、前記放射線照射手段から照射された放射線の照射野を規定する、前記放射線の照射方向と直交する方向に回転可能なコリメータとを有し、かつ前記天板の長手方向の軸に直交する方向から放射線が照射されるように前記放射線照射手段及び前記コリメータを備えており、さらに前記天板の長手方向の軸に直交する方向に回転可能に配置された架台と、前記被検体を透過した放射線を基に画像を生成する画像生成手段と、を有する放射線治療装置であって、放射線を遮蔽する効果を有する材質で構成された各々直交する3つの平板部材を有する放射線治療装置校正用ファントムを備え、前記放射線照射手段から該校正用ファントムに向けて放射線を照射し、前記画像生成手段により生成された前記校正用ファントムの前記床に対して略鉛直方向又は前記床に対する鉛直方向と前記天板の長手方向の軸とに略直交する方向の前記平板部材に基づく略十字の画像を基に、前記第1寝台回転手段、前記第2寝台回転手段、前記コリメータ、又は前記架台の各回転軸のうちの少なくとも一つのずれがあることを検出する画像処理手段、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の放射線治療装置校正方法は、被検体を載置する天板と、前記天板を3次元的に移動可能に支持する寝台と、前記寝台を支える支柱を中心に床と水平方向に回転させる第1寝台回転手段と、前記寝台を放射線の放射中心線を中心に前記寝台を回転させる第2寝台回転手段と、前記被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段と、前記放射線照射手段から照射された放射線の照射野を規定する、前記放射線の照射方向と直交する方向に回転可能なコリメータとを有し、前記天板の長手方向の軸に直交する方向から放射線が照射されるように前記放射線照射手段及び前記コリメータを備えており、さらに前記天板の長手方向の軸に直交する方向に回転可能に配置された架台と、前記被検体を透過した放射線を基に画像を生成する画像生成手段と、を備えた放射線治療装置の回転軸の校正を行う放射線治療装置校正方法であって、放射線を遮蔽する効果を有する材質で構成された各々直交する3つの平板部材を有する放射線治療装置校正用ファントムを前記天板に配置するファントム配置段階と、前記天板に配置された前記放射線治療装置校正用ファントムへ向けて放射線を照射する放射線照射段階と、前記放射線治療装置校正用ファントムを透過した放射線を基に、該校正用ファントムの画像を生成する段階と、前記校正用ファントムの画像から前記床に対して略鉛直方向の前記平板部材部分に基づく略十字の第1の画像を取得する第1画像取得段階と、前記校正用ファントムの画像から前記床に対する鉛直方向と前記天板の長手方向の軸とに略直交する方向の前記平板部材に基づく略十字の第2の画像を取得する第2画像取得段階と、前記1の画像と前記第2の画像との各々を基に、前記第1回転手段、前記第2回転手段、前記コリメータ、又は前記架台の各回転軸のうちの少なくとも一つにずれがあることを検出するずれ検出段階と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の放射線治療装置校正用ファントム、請求項3に記載の放射線治療装置、及び請求項6に記載の放射線治療装置校正方法によると、所定の方向から該放射線治療装置校正用ファントムの撮像を行うことで放射線治療装置が有する複数の回転軸のうちのいずれかがずれているということが検出できる構成である。これにより、操作者は放射線治療装置の回転軸のずれの有無を容易に検出することができ、正確な放射線治療の実施に寄与することができるとともに、放射線治療装置の校正における操作者の負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムの斜視図
【図2】第1の実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムの平面図
【図3】1枚の鉛板部材と、鉛板部材を除いたアクリル部材とを模式的に表した図
【図4】本発明に係る放射線治療装置の機能を表すブロック図
【図5】本発明に係る放射線治療装置の外観の一例を示す斜視図
【図6】(A)十字の画像の辺が傾いている状態の校正用ファントムの画像の一例の図、(B)十字の画像の周囲に影が発生している状態の校正用ファントムの画像の一例の図
【図7】第2の実施形態に係る放射線治療装置による回転軸のずれの検出を説明するフローチャートの図
【図8】天板に放射線治療装置校正用ファントムを固定した状態の一例を表す模式図
【図9】第3の実施形態に係る放射線治療装置による回転軸のずれの検出を説明するフローチャートの図
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムについて説明する。図1は本実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムの斜視図である。図2は本実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムの平面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントム100(以下では、省略して単に「校正用ファントム100」という。)は、全体の形としては立方体の形状を有している。そして、校正用ファントム100は、アクリル部材101と鉛板部材102とで構成されている。そして、概要としては、校正用ファントム100は、校正用ファントム100の外形を形成する立方体形状のアクリル部材101の中に平板形状の鉛板部材102が挿入されて(言い換えれば、アクリル部材101の間に鉛板部材102を挟む状態で)構成されている。ここで、本実施形態では校正用ファントム100を立方体として形成しているが、直方体(立方体を含む)であればどのような形状でもよい。
【0018】
アクリル部材101は上述のように立方体の形状を有している。このアクリル部材101が本発明における「直方体部材」にあたる。本実施形態では、アクリル部材101は1辺が30cmの立方体である。ここで、本実施形態ではアクリル部材101の大きさはサイズが大きいほうが後述する十字像による回転軸のずれの検出の精度を上げることができる。そこで、アクリル部材101は20cm以上であることが好ましい。ただし、本実施形態では放射線の照射野が最大で40cmである放射線治療装置200の使用を考慮しているので、40cm以上は必要ない。また、本実施形態で考慮している放射線治療装置200における他の条件、例えば放射線検出器までの距離などにより本実施形態では1辺を30cmとしている。実際には、この辺の長さは放射線治療装置200の各条件に基づいて決定されることが好ましい。ここで、本実施形態ではこの部材の材料としてアクリルを使用しているが、放射線を透過させる材料であれば他の材料でもよい。また、本実施形態ではこのアクリル部材101を立方体として形成しているが、直方体(立方体を含む)であればどのような形状でもよい。
【0019】
鉛板部材102は、1組の向かい合う面が正方形で高さが1mmの厚さを有している平板状の部材である。この鉛板部材102の前述の正方形の面の大きさはアクリル部材101の一つの面と同一の大きさである。すなわち、本実施形態では1辺が30cmの正方形となる。ここで、本実施形態では鉛板部材102の厚さを1mmとしているが、この厚さは放射線を完全に遮蔽することなくある程度の放射線が透過可能な厚さであれば他の厚さでもよい。一般的にはより薄いほうが好ましいとも言える。しかし、現在の放射線治療装置200の分解能では鉛板部材102があまり薄いと厚み方向から撮像した場合に鉛板部材102を画像として構成できない。そこで、鉛板部材102の厚さは5mm以下が好ましく、1mm〜2mmがより好ましい。ただし、この厚さは放射線治療装置200の分解能に基づいて決定することが好ましい。この鉛板部材102が本発明における「平板部材」にあたる。ここで、本実施形態ではこの部材の材料として鉛を使用しているが、放射線を遮蔽する効果を有する材料であれば他の材料でもよい。ここで、放射線を遮断する効果とは、板の広い面(ここでは正方形の面)に向けて放射線を照射した場合、ある程度の放射線を透過させ、広さ方向に向けて放射線を照射した場合、完全に放射線を遮蔽する効果を有するものを指す。
【0020】
図3は1枚の鉛板部材102と、鉛板部材102を除いたアクリル部材101とを模式的に表した図である。アクリル部材101上に記載された一点鎖線103は、図3におけるアクリル部材101の高さ方向の辺の中心を結ぶ線である。実際の校正用ファントム100にはこの一点鎖線103は存在しない。そして、鉛板部材102上に記載されている点線104は、図3における鉛板部材102の高さ方向の辺の中心を結ぶ線である。この点線104も実際の校正用ファントム100には存在しない。そして、校正用ファントム100はこの一点鎖線103と点線104とを一致させてアクリル部材101の中に鉛板部材102を挿入した状態として構成される。これが本発明における「立法部材における平行な各辺の中心点を含む位置に配置」にあたる。ここでは、1枚の鉛板部材102を用いて説明したが、図3におけるアクリル部材101の横方向の辺の中央を結ぶ位置及び縦方向の辺の中央を結ぶ位置にも同様に鉛板部材102が配置される。すなわち、アクリル部材101の中には図1に示すように3枚の鉛板部材102が挿入された状態として構成される。実際の製造では3枚の鉛板部材102が組み合わさった部材を製造し、そこにアクリル部材101を配置することになる。
【0021】
この3枚の鉛板部材102はそれぞれ直交する。たとえば、校正用ファントム100の上面から見た場合、図2に示すように2枚の鉛板部材102は各々直交する十字の形を形成する。また、図2は十字の部分以外にはアクリル部材101が見えているが、そのアクリル部材101の後ろに鉛板部材102の正方形の面が配置されている。校正用ファントム100のいずれの面においても、正面から見た場合には図2のような十字の図形が表れている。
【0022】
すなわち、校正用ファントム100のいずれかの面の法線方向から放射線を当てた場合、図2における十字の部分は鉛板部材102の正方形の面の広さそのものが厚みになるため、実効的に厚みが厚くなり、すべての放射線が遮蔽される。そして、図2の十字以外の部分では、放射線はアクリル部材101を透過したのち鉛板部材102の正方形の面側から鉛板部材102に当たる。この場合、鉛板部材102は厚みが薄いためすべての放射線を遮蔽できず、ある程度の放射線が透過することになる。その後その後ろのアクリル部材101を通りぬけて校正用ファントム100をある程度の放射線が透過していくことになる。
【0023】
以上で説明したように、本実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムは、1つの面の法線方向から放射線が照射された場合十字の部分は放射線を透過させず、他の部分はある程度の放射線を透過させる構成である。これにより、1つの面の撮像を行った場合には放射線の放射方向が法線からずれていなければ正確な十字の画像が生成可能である。また、放射線の放射方向が法線からずれている場合には十字の画像の周りに鉛板部材の影によるにじみが発生する。また、撮像したときに放射線治療装置校正用ファントムの撮像された面の縦横が撮像における縦横と正確に一致していれば、生成された十字の画像の各辺は画像の垂直方向及び水平方向と一致しているはずであるが、撮像された面の縦横が撮像における縦横に対してずれている場合には、各辺が垂直方向及び水平方向から傾いた十字の画像が生成される。したがって、構成したい放射線治療装置の各回転軸を回転軸にずれが発生していなければ本実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムの特定の面の法線方向から放射線を照射する状態に調整して、該放射線治療装置校正用ファントムを撮像することでいずれかの回転軸においてずれが発生していることを検出することが可能となり、回転軸のずれの検出を容易に行うことが可能となる。また、本実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムは3枚の鉛板部材を直交するように配置しているため、直方体(立方体を含む)のどの面においても十字の画像が撮像できる。これにより、本実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムのどの面を撮像する方向に向けて配置しても、回転軸のずれを検出することが可能である。
【0024】
〔第2の実施形態〕
以下、この発明の第2の実施形態に係る放射線治療装置について説明する。本実施形態に係る放射線治療装置は第1の実施形態で説明した放射線治療装置校正用ファントムを用いて自己が有する回転軸のずれを検出する構成を有している。以下の説明において、使用する放射線治療装置校正用ファントムは第1の実施形態と同一のものとする。図4は、本発明に係る放射線治療装置の機能を表すブロック図である。図5は本発明に係る放射線治療装置の外観の一例を示す斜視図である。
【0025】
放射線治療装置200は、寝台209、天板208、実際に撮像を行うための医用ライナック220と、それらを制御する制御部、照合記録部201、画像収集部206、及び画像処理部207を有する。
【0026】
天板208は、被検体を載置する板状の部材である。天板208は、寝台209の上に3次元的に移動可能に配置されている。
【0027】
天板移動部213は、後述する照合記録部201より治療計画情報に基づく天板208の移動量の入力を受ける。そして、天板移動部213は、入力された移動量に基づいて天板208を移動させる。
【0028】
寝台209は、天板208を移動可能に保持している。そして、寝台209は、図5に示す支柱214で床から所定の高さに支持されている。また、寝台209は支柱214を中心として第1の回転を行えるように支持されている。さらに、寝台209は、図5に示すZ軸を中心(すなわち、図5に示す床上の点301を中心)に第2の回転を行えるように構成されている。ここで、Z軸は後述するように放射線の照射中心であるアイソセンタを通過する床に鉛直方向の線である。この放射線の照射中心であるアイソセンタを通過する床に鉛直方向の線が本発明における「放射線の放射中心線」にあたる。すなわち放射線の放射中心線は、放射線源からアイソセンタを通過する床に鉛直方向の線である。
【0029】
第1寝台回転部210は、寝台209の支柱214を中心とする第1の回転を行わせる。この第1寝台回転部210が本発明における「第1寝台回転手段」にあたる。第1寝台回転部210は、寝台回転制御部212の命令を受けて回転を行う。
【0030】
第2寝台回転部211は、寝台209をZ軸と床との交点である点301を中心として第2の回転を行わせる。この第2寝台回転部211が本発明における「第2寝台回転手段」にあたる。第2寝台回転部211は、寝台回転制御部212の命令を受けて回転を行う。
【0031】
寝台回転制御部212は、寝台209の支柱214の中心が架台221から離れた側の点で図5のY軸上に一致している状態で、寝台209の長手方向(すなわち天板208に被検体を乗せた場合の体軸方向)と図5のY軸が平行になる状態を、第1寝台回転部210の基準位置として記憶しており、その第1寝台回転部210の基準位置からの角度で第1寝台回転部210による寝台209の第1の回転を制御する。すなわち、寝台回転制御部212は、第1寝台回転部210の基準位置における寝台209の第1の回転角度を0度と記憶している。この基準位置を以下では「第1回転基準位置」という。
【0032】
また、寝台回転制御部212は、寝台209の支柱214の中心が架台221から離れた側の点で図5のY軸上に一致している状態を第2寝台回転部211の基準位置として記憶しており、その第2寝台回転部211の基準位置からの角度で寝台209の第2の回転を制御する。すなわち、寝台回転制御部212は、第2寝台回転部211の基準位置における寝台209の第2の回転角度を0度と記憶している。この基準位置を以下では「第2回転基準位置」という。
【0033】
医用ライナック220は、例えば被検体内に存在する腫瘍などの特定部位に放射線を照射して治療を行う。この放射線としては、例えばX線、γ線、α線、電子線、又は陽子線などが用いられる。この医用ライナック220は、医用ライナック220の本体部分である架台221、放射線源222、コリメータ(絞り装置)223、及びFPD(Flat Panel Detector:平面検出器)224を有する。一般的には「架台」というと医用ライナック220の全体を指すが、ここでは説明の都合上、医用ライナックの本体部分を「架台221」として、放射線源222、コリメータ223、及びFPD224を含む全体としての医用ライナック220とその本体部分である架台221とを区別して説明する。
【0034】
放射線源222は、図示しない電子加速器やターゲット等が内設されている。そして、放射線源222は、電子加速器により加速された電子が、ターゲットに照射されることで放射線を発生する。この放射線源222が本発明における「放射線発生手段」にあたる。
【0035】
コリメータ223は、放射線源222から照射された放射線を絞り、例えば被検体に照射する放射線の照射野を規定する。コリメータ223は複数の開度に可変可能であり、さらに、放射線の放射方向を回転軸として回転する。このコリメータの回転軸は図5に示すZ軸である。このZ軸は放射線の照射方向が床に向かって正確に鉛直方向になった時の放射線の照射方向と一致する。
【0036】
FPD224は、半導体からなる複数の受光素子を平面状に配置してなる。FPD224は、放射線源222から照射され、コリメータ223を通過し被検体を透過した放射線を撮影し、この撮影信号を画像収集部206へ出力する。FPD224は図5に示す状態ではたたまれて架台221に密着した状態であるが、実際の撮影時にはパネルの位置が架台221から離れた位置まで移動し、被検体や校正用ファントム100が載置されている天板208を挟んで放射線源222と対向する位置に配置される。
【0037】
架台221は、図5に示すように放射線源222、コリメータ223、及びFPD224が配置されている。そして、架台221は、後述する天板208の高さの位置をほぼ中心に回転可能に支持されている。この架台221の回転軸は図5に示すY軸である。このY軸は後述する寝台209が回転していない状態で被検体を載置した時の被検体の体軸方向と一致する。ここで、架台221はY軸を中心に回転するため、放射線源222からの放射線の照射方向もY軸を中心に回転する。この様にY軸を中心に架台221を回転させながら放射線の照射を行った場合に、放射線源222からの放射線が常に照射される点が照射中心(アイソセンタ)といわれ、図5に示す点300で表わされる点である。このアイソセンタから床に向かって鉛直に下した線は上述したZ軸と一致する。また、Y軸とZ軸とに直交する方向の軸をX軸とする。
【0038】
医用ライナック制御部202は、後述する照合記録部201から入力された治療計画情報の入力を受ける。医用ライナック制御部202は、入力された治療計画情報に基づいて架台221を回転させる。また、医用ライナック制御部202は、入力された治療計画情報に基づいて、放射線の照射量を照射制御部203へ、コリメータ223の開度および回転量をコリメータ制御部204へ、FPD224の動作情報をFPD制御部205へそれぞれ出力することで医用ライナック220のセットアップを行う。そして、医用ライナック制御部202は、セットアップした状態を照合記録部201へ出力する。医用ライナック制御部202は、放射線源222からの放射線の照射方向が床に鉛直方向となる場合の架台221の状態を基準位置として記憶しており、この基準位置からの回転角度で架台221の回転を制御する。すなわち、医用ライナック制御部202は、基準位置では架台221の回転角度が0度と記憶している。この基準位置を以下では、「架台基準位置」という。
【0039】
照射制御部203は、医用ライナック制御部202から放射線の照射量の入力を受ける。照射制御部203は、入力された照射量で放射線の照射を行う。
【0040】
コリメータ制御部204は、医用ライナック制御部202からコリメータ223の開度および回転量の入力を受ける。コリメータ制御部204は、入力された回転量でコリメータ223を回転させる。さらに、コリメータ制御部204は、入力された開度にコリメータ223の開度を調整する。コリメータ制御部204は、コリメータが回転していない状態での位置を基準位置として記憶しており、そこからの角度でコリメータの回転量を調整する。すなわち基準位置は回転量が0度となる位置である。この基準位置を以下では「コリメータ基準位置」という。
【0041】
FPD制御部205は、医用ライナック制御部202からFPD224の動作情報の入力を受ける。そして、FPD制御部205は、入力された動作情報に基づいてFPD224を制御する。
【0042】
画像収集部206は、FPD224から入力された撮影信号を基に放射線の照射野を撮影した画像データを収集する。そして、画像収集部206は、画像データを照合記録部201へ出力する。この画像収集部206が本発明における「画像生成手段」にあたる。
【0043】
照合記録部201は、治療計画装置(不図示)から治療計画情報を受け取って記憶する。そして、照合記録部201は治療計画情報を医用ライナック制御部202へ出力する。その後、照合記録部201は、医用ライナック制御部202からセットアップ状態の入力を受ける。そして、照合記録部201は、治療計画情報とセットアップ状態とを照合する。そして、照合記録部201は、治療計画情報とセットアップ状態の照合結果、実際の放射線の照射のデータを記憶する。
【0044】
画像処理部207は、CPU及びメモリやハードディスクなどの記憶領域(いずれも不図示。)を有している。画像処理部207は、自己の記憶領域に予め、コントラストの変化の閾値、及び十字の画像の辺の傾きの閾値を記憶している。ここで、コントラストの閾値とは、十字の辺の中心から外に向かっての画像の階調の傾きの閾値を表している。傾きがきついほど奥行き方向のずれは少なく、傾きが緩やかなほど奥行き方向のずれが大きくなる。したがって、コントラストの変化の閾値よりも傾きが緩やかな場合に奥行き方向のずれが発生していると判断できる。また十字の画像の辺の傾きとは、回転軸にずれがない状態で架台221及びコリメータ223を基準位置にした状態からの各辺の傾きである。そして、回転軸にずれがない状態であれば架台221及びコリメータ223を基準位置にした状態では撮像方向の縦横と各十字の辺の縦横とが一致しているので、画像を基に十字の画像の辺の傾きを計測するには撮像方向の縦横からの傾きを計測すればよい。ここで、本実施形態ではコントラストの変化の閾値として階調の傾きを使用したが、これは奥行き方向に鉛板部材102がある程度の傾きを有していることを判断できればよく、例えば十字の画像の辺からの一定以上のコントラストを有する部分の幅を閾値として用いてもよい。
【0045】
画像処理部207は、通常モードと校正モードという2つのモードを有している。通常モードとは、放射線治療や被検体の撮像を行うモードであり、構成モードとは、放射線治療装置200の校正を行うモードである。そして、画像処理部207は、操作者によるいずれかのモード選択の入力を受けて、通常モードの場合には動作を行わず、校正モードの場合にのみ動作を行う。
【0046】
校正モードの場合には、第1の実施形態で説明した放射線治療装置校正用ファントム(以下「校正用ファントム100」という。)の撮像がCBCT撮影により行われる。ここで、CBCT撮影とは、架台221を270度回転させて撮影を行ない、3D画像を生成する撮影である。このとき、操作者は、天板208の適当な位置に校正用ファントム100を配置し、その後、寝台209及び天板208の位置を調整し、校正用ファントム100の中心がアイソセンタに位置し、且つ校正用ファントム100の2枚の鉛板部材102が交わった部分の辺が図5のX軸、Y軸、Z軸に一致するように移動させる。ここで、本実施形態に係る放射線治療装置200が設置されている部屋には、壁からX軸、Y軸、Z軸と一致する3本のレーザ光線が照射される構造を有している。操作者は、このレーザ光線に一致するように校正用ファントム100の位置を調整することで、上述した調整を行うことができる。つまり、寝台209の回転軸にずれがないとして校正を行うことになる。そして、校正用ファントム100の撮像を行う。
【0047】
画像処理部207は、照合記録部201より校正用ファントム100を撮像した3D画像の画像データの入力を受ける。画像処理部207は、入力された画像データを基に校正用ファントム100を架台基準位置方向から撮像した画像を取得する。さらに、画像処理部207は、架台221を架台基準位置から90度回転させた方向から校正用ファントム100を撮像した画像を取得する。この2つの画像は架台221及びコリメータ223の回転軸にずれがなければ撮像方向の縦と横に正確に各辺が一致する十字の画像になる。ただし、架台221とコリメータ223の少なくとも1つの回転軸にずれが生じている場合には、十字の辺が撮像方向の縦横から傾く、もしくは十字の辺の周りに影によるにじみが生じる。そこで、画像処理部207は、撮像方向の縦横の軸からの十字の辺の傾きを計測し、自己が記憶している十字の画像の辺の傾きの閾値と比較する。そして、撮像した十字の画像の辺の傾きが閾値を超えて傾いている場合には、画像処理部207は、架台221もしくはコリメータ223の回転軸もしくは両方の回転軸にずれが発生していることを検出する。この場合の画像としては図6(A)に示すような十字の画像になる。ここで、図6(A)は十字の画像の辺が傾いている状態の校正用ファントム100の画像の一例の図である。図6(A)に示すように回転軸にずれがある場合には鉛板部材102に基づく十字の画像が傾いた画像となる。また、画像処理部207は、撮像した十字の辺から離れるにつれてのコントラストの変化を計測する。そして、画像処理部207は、撮像した十字の辺の周囲のコントラストの変化と、自己が記憶しているコントラストの変化の閾値とを比較する。撮像した十字の辺の周囲のコントラストの変化がコントラストの変化の閾値を超えている場合には、画像処理部207は、架台221もしくはコリメータ223の回転軸の両方もしくはいずれか一方にずれが発生していることを検出する。この場合の画像としては図6(B)に示すような十字の画像になる。ここで図6(B)は十字の画像の周囲に影が発生している状態の校正用ファントム100の画像の一例の図である。図6(B)に示すように鉛板部材102に基づく十字の画像の各辺の周辺に影部分105が発生する。この影部分105の幅が長くなるとコントラストの傾きが緩くなり、より奥行き方向に傾いていることが検出できる。
【0048】
画像処理部207は、回転軸のずれの発生を検出した場合、その結果を照合記録部201へ通知する。この画像処理部207が本発明における「画像処理手段」にあたる。
【0049】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る放射線治療装置200による回転軸のずれの検出の動作を説明する。ここで、図7は本実施形態に係る放射線治療装置200による架台221及びコリメータ223の回転軸のずれの検出を説明するフローチャートの図である。
【0050】
ステップS001:操作者は、天板208の上に校正用ファントム100を載置する。
【0051】
ステップS002:操作者は、天板208及び寝台209を移動し、校正用ファントム100の3枚の鉛板部材102の交点をアイソセンタに合わせるとともに、2枚の鉛板部材102が交わった部分の辺をそれぞれX軸、Y軸、Z軸に合わせる。
【0052】
ステップS003:校正用ファントム100を対象にCBCT撮影を行う。
【0053】
ステップS004:画像処理部207は、照合記録部201から受けた3D画像の画像データを基に、架台基準位置から校正用ファントム100を撮像した画像と、架台基準位置から90度架台221を回転させた状態で校正用ファントム100を撮像した画像とを取得する。
【0054】
ステップS005:取得した画像における、十字の辺の傾き及び十字の辺の周囲のコントラストの変化と、記憶している十字の辺の傾きの閾値及びコントラストの変化の閾値を比較する。
【0055】
ステップS006:取得した画像における十字の辺の傾きが閾値を超えている場合にはステップS007に進む。取得した画像における十字の辺の傾きが閾値を超えていない場合にはステップS008に進む。
【0056】
ステップS007:画像処理部207は、十字の辺の傾き方向への放射線治療装置200の回転軸のずれを検出し、照合記録部201へ通知する。
【0057】
ステップS008:取得した画像における十字の辺の周囲のコントラストの変化が閾値を超えている場合にはステップS009に進む。取得した画像における十字の辺の周囲のコントラストの変化が閾値を超えていない場合には回転軸のずれの検出を終了する。
【0058】
ステップS009:画像処理部207は、十字の画像の奥行き方向への放射線治療装置200の回転軸のずれを検出し、照合記録部201へ通知する。
【0059】
以上で説明したように、本実施形態に係る放射線治療装置は、第1の実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムの撮像を行うことで自己が有する回転軸のずれの発生を検出する構成である。これにより、容易に回転軸のずれの発生を検出することが可能となる。これにより、毎日簡単なチェックを行うことができ、放射線治療装置の回転軸の校正を行うことができ、放射線治療の精度を向上させることに寄与することができる。
【0060】
〔第3の実施形態〕
以下、この発明の第3の実施形態に係る放射線治療装置について説明する。本実施形態に係る放射線治療装置は第2の実施形態に係る放射線治療装置において天板部分に放射線治療装置校正用ファントムの固定部を有することが異なるものである。すなわち、本実施形態では放射線治療装置校正用ファントムを配置する場所が決まっているため、架台及びコリメータの回転軸のずれのみを検出する第2の実施形態とは異なり、架台、コリメータ、第1寝台回転部、及び第2寝台回転部の回転軸のずれを検出することができる構成である。
【0061】
以下の説明において、使用する放射線治療装置校正用ファントムは第1の実施形態と同一のものとする。本実施形態に係る放射線治療装置のブロック図も図4に示すブロック図と同様である。また、本実施形態に係る放射線治療装置の外観も図5で表わされるものと同様である。以下の説明で第2の実施形態の放射線治療装置と同一の符号を有する機能部は、特に説明のない限り同一の機能を有するものとする。
【0062】
本実施形態に係る天板208には図8に示すような放射線治療装置校正用ファントム(以下では、「校正用ファントム100」という。)を固定する固定部400を有している。この固定部400が本発明における「固定手段」にあたる。図8は天板208に放射線治療装置校正用ファントムを固定した状態の一例を表す模式図である。ここでは、校正用ファントム100に4隅に孔を板状の固定部400を取りつけ、この固定部400の孔を通して天板208にねじ止めすることで固定する構成である。ただし、この固定部400は校正用ファントム100が天板208の所定の位置に配置できれば他の構成でもよい。例えば、校正用ファントム100の位置決め用のマーカが天板208に記載されているだけでもよい。この固定部400は校正用ファントム100を定位置にセットするための部材であり、この定位置とはその位置に校正用ファントム100が置かれた場合に、寝台209を第1回転基準位置及び第2回転基準位置にセットしたときに、第1回転基準位置及び第2回転基準位置にずれがなければ校正用ファントム100の3つの鉛板部材102の交点がアイソセンタと一致するとともに、2枚の鉛板部材102が交わる部分の各辺がX軸、Y軸、Z軸とにそれぞれ一致する位置である。
【0063】
操作者は、天板208の固定部400に校正用ファントム100を設置するとともに、コリメータ223をコリメータ基準位置にセットし、寝台209を第1回転基準位置及び第2回転基準位置にセットする。
【0064】
本実施形態でも放射線治療装置200が設置された部屋の壁からはX軸、Y軸、Z軸と一致するレーザ光線が照射されている。そのため、この時点で操作者は寝台209の回転軸のずれを大まかに確認することができる。その後、放射線治療装置200により機械的により正確な回転軸のずれの検出を行うことになる。すなわち、寝台209の回転軸が大きくずれている場合には、寝台209を第1回転基準位置及び第2回転基準位置にセットした時点で、レーザ光線がアイソセンタ及び各軸とずれていることが目視で確認できるためこの時点で寝台209の大きなずれを発見することができる。その場合には操作者はいったん撮影を行わず校正モードを中止し寝台209の各回転軸の調整を行った上で、再度校正モードを実施することが好ましい。
【0065】
次に、操作者は校正用ファントム100を対象にCBCT撮影を行う。
【0066】
画像処理部207は、第2の実施形態と同様に十字の画像を基に、十字の辺の傾き方向のずれ及び十字の画像の奥行き方向のずれを検出することで、架台221、コリメータ223、第1寝台回転部210、及び第2寝台回転部211のそれぞれの回転軸のいずれかもしくは複数にずれが発生していることを検出し、照合記録部201へ通知する。ここで、本実施形態でも第2実施形態における閾値と同じ閾値を画像処理部207は使用することができる。つまり、架台221、コリメータ223、第1寝台回転部210、及び第2寝台回転部211のそれぞれの回転軸のいずれかにずれがあれば十字の画像の各辺の傾きが発生したり十字の画像の各辺の周囲のコントラストの変化が発生したりするので、第2実施形態と同じ閾値を使用して上記各部の回転軸のずれを検出することができる。
【0067】
次に、図9を参照して、本実施形態に係る放射線治療装置200による回転軸のずれの検出の動作を説明する。ここで、図9は本実施形態に係る放射線治療装置200による回転軸のずれの検出を説明するフローチャートの図である。
【0068】
ステップS101:操作者は、第1寝台回転部210を第1基準位置に合わせ、第2寝台回転部211を第2基準位置に合わせることで、寝台209の各回転軸を基準位置に合わせる。
【0069】
ステップS102:操作者は、天板208の固定部400に校正用ファントム100を設置する。
【0070】
ステップS103:操作者は、部屋の壁から照射されているX軸、Y軸、Z軸と一致する3本のレーザ光線が、校正用ファントム100の2枚の鉛板部材102の交わる部分の3つの辺と一致し、3枚の鉛板部材102の交わる点を通過しているかを目視確認する。
【0071】
ステップS104: 操作者は、レーザ光線と校正用ファントム100との間に位置ずれが確認できるか否かを判断する。位置ずれが確認できる場合には、ステップS105へ進む。位置ずれが確認できない場合には、ステップS106へ進む。
【0072】
ステップS105:操作者は、第1寝台回転部210及び第2寝台回転部211の調整を行い、寝台209の各回転軸の調整を行う。
【0073】
ステップS106:校正用ファントム100を対象にCBCT撮影を行う。
【0074】
ステップS107:画像処理部207は、照合記録部201から受けた3D画像の画像データを基に、架台基準位置から校正用ファントム100を撮像した画像と、架台基準位置から90度架台221を回転させた状態で校正用ファントム100を撮像した画像とを取得する。
【0075】
ステップS108:取得した画像における、十字の辺の傾き及び十字の辺の周囲のコントラストの変化と、記憶している十字の辺の傾きの閾値及びコントラストの変化の閾値を比較する。
【0076】
ステップS109:取得した画像における十字の辺の傾きが閾値を超えている場合にはステップS110に進む。取得した画像における十字の辺の傾きが閾値を超えていない場合にはステップS111に進む。
【0077】
ステップS110:画像処理部207は、十字の辺の傾き方向への放射線治療装置200の回転軸のずれを検出し、照合記録部201へ通知する。
【0078】
ステップS111:取得した画像における十字の辺の周囲のコントラストの変化が閾値を超えている場合にはステップS112に進む。取得した画像における十字の辺の周囲のコントラストの変化が閾値を超えていない場合には回転軸のずれの検出を終了する。
【0079】
ステップS112:画像処理部207は、十字の画像の奥行き方向への放射線治療装置200の回転軸のずれを検出し、照合記録部201へ通知する。
【0080】
以上で説明したように、本実施形態に係る放射線治療装置は、第1の実施形態に係る放射線治療装置校正用ファントムの撮像を行うことで架台、コリメータ、第1寝台回転部、及び第2寝台回転部のいずれかもしくは複数のずれの発生を検出する構成である。これにより、より多くの回転軸のずれを検出することができる。これにより、より正確に放射線治療装置の回転軸の校正を行うことができ、放射線治療の精度を向上させることに寄与することができる。
【符号の説明】
【0081】
100 放射線治療装置校正用ファントム
101 アクリル部材
102 鉛板部材
200 放射線治療装置
201 照合記録部
202 医用ライナック制御部
203 照射制御部
204 コリメータ制御部
205 FPD制御部
206 画像収集部
207 画像処理部
208 天板
209 寝台
210 第1寝台回転部
211 第2寝台回転部
212 寝台回転制御部
213 天板移動部
220 医用ライナック
221 架台
222 放射線源
223 コリメータ
224 FPD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が通過可能な材質で構成された直方体の形状を有する直方体部材と、
該直方体部材における平行な各辺の中心点を結ぶ位置に配置された、放射線を遮蔽する効果を有する材質で構成された各々直交する3つの平板部材と、
で構成されたことを特徴とする放射線治療装置校正用ファントム。
【請求項2】
前記直方体部材は、アクリルであり、前記平板部材は、鉛であることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療装置校正用ファントム。
【請求項3】
被検体を載置する天板と、
前記天板を3次元的に移動可能に支持する寝台と、
前記寝台を支える支柱を中心に床と水平方向に回転させる第1寝台回転手段と、
前記寝台を放射線の放射中心線を中心に前記寝台を水平方向に回転させる第2寝台回転手段と、
前記被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段と、前記放射線照射手段から照射された放射線の照射野を規定する、前記放射線の照射方向と直交する方向に回転可能なコリメータとを有し、かつ前記天板の長手方向の軸に直交する方向から放射線が照射されるように前記放射線照射手段及び前記コリメータを備えており、さらに前記天板の長手方向の軸に直交する方向に回転可能に配置された架台と、
前記被検体を透過した放射線を基に画像を生成する画像生成手段と、を有する放射線治療装置であって、
放射線を遮蔽する効果を有する材質で構成された各々直交する3つの平板部材を有する放射線治療装置校正用ファントムを備え、
前記放射線照射手段から該校正用ファントムに向けて放射線を照射し、前記画像生成手段により生成された前記校正用ファントムの前記床に対して略鉛直方向又は前記床に対する鉛直方向と前記天板の長手方向の軸とに略直交する方向の前記平板部材に基づく略十字の画像を基に、前記第1寝台回転手段、前記第2寝台回転手段、前記コリメータ、又は前記架台の各回転軸のうちの少なくとも一つのずれがあることを検出する画像処理手段、
を備えたことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、
コントラストの変化の閾値及び前記略十字の画像の傾きの閾値を記憶しており、
前記略十字の画像の幅方向のコントラストの変化が前記閾値以上の変化をしている、もしくは前記略十字の画像の各辺の傾きが前記傾きの閾値を超えている場合には、前記回転軸のずれを検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線治療装置。
【請求項5】
前記天板は、前記放射線治療装置校正用ファントムを固定する固定手段を有していることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の放射線治療装置。
【請求項6】
被検体を載置する天板と、前記天板を3次元的に移動可能に支持する寝台と、前記寝台を支える支柱を中心に床と水平方向に回転させる第1寝台回転手段と、前記寝台を放射線の放射中心線を中心に前記寝台を回転させる第2寝台回転手段と、前記被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段と、前記放射線照射手段から照射された放射線の照射野を規定する、前記放射線の照射方向と直交する方向に回転可能なコリメータとを有し、前記天板の長手方向の軸に直交する方向から放射線が照射されるように前記放射線照射手段及び前記コリメータを備えており、さらに前記天板の長手方向の軸に直交する方向に回転可能に配置された架台と、前記被検体を透過した放射線を基に画像を生成する画像生成手段と、を備えた放射線治療装置の回転軸の校正を行う放射線治療装置校正方法であって、
放射線を遮蔽する効果を有する材質で構成された各々直交する3つの平板部材を有する放射線治療装置校正用ファントムを前記天板に配置するファントム配置段階と、
前記天板に配置された前記放射線治療装置校正用ファントムへ向けて放射線を照射する放射線照射段階と、
前記放射線治療装置校正用ファントムを透過した放射線を基に、該校正用ファントムの画像を生成する段階と、
前記校正用ファントムの画像から前記床に対して略鉛直方向の前記平板部材部分に基づく略十字の第1の画像を取得する第1画像取得段階と、
前記校正用ファントムの画像から前記床に対する鉛直方向と前記天板の長手方向の軸とに略直交する方向の前記平板部材に基づく略十字の第2の画像を取得する第2画像取得段階と、
前記1の画像と前記第2の画像との各々を基に、前記第1回転手段、前記第2回転手段、前記コリメータ、又は前記架台の各回転軸のうちの少なくとも一つにずれがあることを検出するずれ検出段階と、
を有することを特徴とする放射線治療装置校正方法。
【請求項7】
前記ファントム配置段階の前に、前記寝台、前記コリメータ、及び前記架台の各回転軸がそれぞれの基準位置に設定される段階をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の放射線治療装置校正方法。
【請求項8】
前記ファントム配置段階と前記放射線照射段階の間に、前記直方体の中心が放射線の照射中心に一致するように、前記寝台の各回転軸が設定される段階をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の放射線治療装置校正方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−178989(P2010−178989A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26447(P2009−26447)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】