放射線治療装置
【課題】優れた治療性能を有する放射線治療装置を提供すること。
【解決手段】電子銃、線形加速器及びターゲットを有する照射ヘッド220と、この照射ヘッド220を予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構210と、床に設置されるマイクロ波発振器230と、一端部がマイクロ波発振器230に電磁気的に接続され、他端部が線形加速器に電磁気的に接続される導波管部240,250,260と、照射ヘッド220内に位置する導波管部240,250,260に設けられるRF窓とを具備する放射線治療装置である。
【解決手段】電子銃、線形加速器及びターゲットを有する照射ヘッド220と、この照射ヘッド220を予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構210と、床に設置されるマイクロ波発振器230と、一端部がマイクロ波発振器230に電磁気的に接続され、他端部が線形加速器に電磁気的に接続される導波管部240,250,260と、照射ヘッド220内に位置する導波管部240,250,260に設けられるRF窓とを具備する放射線治療装置である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、腫瘍部を定位多軌道照射法により放射線治療する等に好適な放射線治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】放射線治療法の一つに、患部に対し多方向から放射線を集中照射して治療効果を上げると共に患部の周囲組織は被曝量が最小限に抑制され得る定位多軌道照射法がある。
【0003】この定位多軌道照射法は、原発性良性脳腫瘍部、大きさが3cm以下の単発の転移性脳腫瘍部、手術が難しい頭蓋底転移のような脳内の小病変部、動脈奇形部又は静脈奇形部等の如き患部の治療に有効とされている。
【0004】かかる定位多軌道照射法が実施可能な放射線治療装置として、従来、位置決め手段を用いて照射ヘッドを患部に対して位置合せした後に放射線を照射するものが知られているが、医者又は補助者が照射野を直接見て病巣の位置を確認した上で放射線を照射するものではないので、放射線の高精度照射は望めない。
【0005】これに対し、特表平6−502330号公報及び特表平8−504347号公報には、X線CT装置の回転ドラム内にリニアアクセラレータを組込むことで、放射線治療装置をX線CT装置と組み合わせた構成が開示されている。この構成では照射野の画像を確認しながら放射線の照射を行うことが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの装置は、リニアアクセラレータをX線CT装置の回転ドラム内に組み込んだ構造であることから、1回転軸周りの照射に止まると共にアイソセントリック照射のみに限られている。
【0007】本発明の目的は、優れた治療性能を有する放射線治療装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、電子銃、線形加速器及びターゲットを有する照射ヘッドと、この照射ヘッドを予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構と、前記照射ヘッドに供給すべきマイクロ波電力を発生する、静止部に配置されるマイクロ波発振器と、一端部が前記マイクロ波発振器に電磁気的に接続され、他端部が前記線形加速器に電磁気的に接続される導波管部と、前記照射ヘッド内に位置する前記導波管部に設けられるRF窓とを具備する放射線治療装置、である。
【0009】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1〜図3に示すように、本実施形態に係る放射線治療装置6は、患者4を載置する天板8を有する寝台7と、患者4に設定され得る照射野5に治療用放射線を照射する照射ヘッド10と、患部である照射野5の断層画像を取得するX線CT装置装置30とを備える。
【0010】天板8は寝台7に内蔵された駆動機構により寝台長手方向(X軸方向)と寝台幅方向(Y軸方向)と寝台上下方向(Z軸方向)との3軸に移動可能である。また、天板8は画像取得装置の撮影画像データに基づいて患部である照射野5がアイソセンタ5aに位置するように、システム制御装置80により統合制御された天板8により位置が調整されるようになっている(図9参照)。天板8は、X線CT装置装置やPET(Positron Emission Tomography)装置等の画像取得装置に適した材質及び形状が選定される。
【0011】照射ヘッド10は、傾倒軸26による(G1)回転、周回移動機構68および第1及び第2の首振り機構131,132によりアイソセンタ5aを中心とする上半部後方の二分の一球(1/2球)の範囲内で任意の照射位置がとれるようにガイドレール9に可動に支持されている。周回移動機構68は、図2に示すように照射ヘッド10をガイドレール9に沿って周回移動(H1)させるものであり、ラック・アンド・ピニオン方式やベルト方式を採用することができる。図10と、図11R>1(a)〜(d)に示すように第1の首振り機構131は照射ヘッド10を第1の軸S1まわりに首振り動作させるサーボモータを備え、第2の首振り機構132は照射ヘッド10を第2の軸S2まわりに首振り動作させるサーボモータを備えている。
【0012】また、照射ヘッド10は、図2に示す導波管系11のロータリRFカプラ16に首振り可能に連結される。図11(a)に示すジンバル機構上の導波管51及びロータリRFカプラ50によりマイクロ波発生源70(クライストロン)に接続されている。
【0013】第1の首振り機構131は、図2及び図11R>1(a)に示すように、照射ヘッド10をガイドレール9上でロータリRFカプラ16まわりに首振り(S1)させる機構である。ロータリRFカプラ16は、照射ヘッド10が首振りしたときの慣性力が小さくなるように、照射ヘッド10の慣性中心をほぼ通る軸上に設けられている。
【0014】第2の首振り機構132は、図1及び図11R>1(a)に示すように、照射ヘッド10をガイドレール9上でロータリRFカプラ50A,50Bまわりに首振り(S2)させる機構である。ロータリRFカプラ50A,50Bは、照射ヘッド10が首振りしたときの慣性力が小さくなるように、照射ヘッド10の慣性中心をほぼ通る軸上に設けられている。ちなみに、照射ヘッド10は、全長が500〜600mm、幅500mm×深さ300mm、重量が60〜80kgである。
【0015】ガイドレール9は、図2及び図3に示すように天板8より上半分の円弧状をなす半円リングからなり、天板8を幅方向に跨ぐように設けられている。このガイドレール9は、傾動機構により傾動可能に支持されている。傾動機構は、ガイドレール9を図2の傾動軸26まわりに0°〜180°の範囲内で図1に示すように傾ける(G1)ものである。ガイドレール9は、例えばステンレス鋼のように剛性の大きい材料でつくられ、幅が200〜400mm、厚みが20〜50mm、アイソセンタ5aからの半径が800〜1000mmである。
【0016】上記の2軸の駆動(G1,H1)により照射ヘッド10はアイソセンタ5aを中心とする1/2球殻上でアイソセントリックな動きが可能になる。さらに、上記の2軸の駆動(S1,S2)により照射ヘッド10は1/4球殻上で擬似的にノンアイソセントリックな動きが可能となる。この擬似ノンアイソセントリック動作は、照射ヘッド10の慣性中心まわりの首振り運動であるため、アイソセントリック動作と比べて格段に素早い動きとなる。擬似ノンアイソセントリックな高応答性の迅速な追尾モーションにより、例えば心鼓動等の早い動きに対しても照射ヘッド照準を高応答かつ精密に追従させることが可能となる。
【0017】X線CT装置30に、図1に示す画像取得装置傾射機構20により所定角度に傾斜した(例えば垂直軸に対して20°〜30°の傾き)姿勢で支持されている。画像取得装置傾斜機構20を駆動させると、X線CT装置30は軸まわりに傾動(K1)し、画像取得用X線3bの照射角が変えられるようになっている。なお、X線CT装置30とガイドレール9は機械的に密に結合されており、共通の座標基準を持つ。
【0018】X線CT装置30がガイドレール9及び照射ヘッド10が干渉しないように制御される。画像取得装置としてX線透視装置を用いる場合には、分解能やコントラストの点で問題があり、小型の金プレートを照射野の付近に埋め込んでマーカとしてこれを基準に照射野を標識する方がよい。
【0019】図2中に示すSAD(Source Axis Distance)は、アイソセンタ5aから照射ヘッド内のターゲット121(図4(a)参照)までの距離に相当するものである。本実施形態では基準となるSAD1を80cm〜100cmに設定している。
【0020】図6、図7及び図8に示すように照射野の移動に追従して照射するには、画像データから得られるシフト量DV1,DV2と所定の算式とを用いてS1首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ1とS2首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ2とをそれぞれ求める。該演算結果に従って首振り機構131,132の駆動をそれぞれ制御し、照射ヘッド10を微小変位角θ1および微小変位角θ2の分だけ高速首振りさせる。これにより頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて動く腫瘍等の患部5に対して照射ヘッド10の照準が迅速かつ高応答に追随し、放射線を高精度に照射することが可能となる。
【0021】図2中の符号14a〜14c,16は、加速用マイクロ波を軸回転で伝えるロータリRFカプラ50を内部に有する導波管系である。図12に示すように、リンクアーム13,15のなかには導波管51が設けられ、関節部14a〜14c,16内のロータリRFカプラ50により導波管51が電磁気的に連通している。図13に示すように、ロータリRFカプラ50はフランジ継手53,54により導波管51の各々に接続されている。符号21はサーキュレータ、22はダミーロードである。
【0022】また、図14に示すように、導波管51の導波路55a,55bはロータリRFカプラ50の回転部材56,57に取り囲まれた回転スペースに連通し、この中を管内モード2a(2b)でマイクロ波が導かれるようになっている。なお、図中にて符号58は軸受を示し、符号59はλ/4波長チョークを示す。このようなロータリRFカプラ50と導波管51との組み合わせにより、床等に固定されたクライストロン等の加速マイクロ波源70から移動する照射ヘッド10へ加速用のマイクロ波を円滑に供給することができる。
【0023】導波管系11は、第1の関節部14a、第1のアーム12、第2の関節部14b、第2のアーム13、第3の関節部14c、第3のアーム15、第4の関節部16、照射ヘッド10を互いに連結してなるリンク機構である。第1の関節部14aのみがY軸に沿って設けられ、第2〜第4の関節部14b,14c,16はそれぞれX軸に沿って設けられている。なお、リンク先端の照射ヘッド10は、周回移動機構68によりガイドレール9に沿ってスライドし、また、第1の首振り機構131により第4の関節部16まわりに首振りされるようになっている。
【0024】システム制御装置80は、X線CT装置装置30から照射野5のCT断層診断画像データが入力されると、このデータに基づいて周回移動機構68、レール傾動機構、天板8の駆動をそれぞれ制御することにより、アイソセンタ5aにある照射野5に照射ヘッド10の照準を合わせる。
【0025】さらに、照射野5が動いた場合には、システム制御装置80はX線CT装置装置30からの入力データに基づいて画像追尾のための演算を行い、その演算結果に基づいて第1及び第2の首振り機構131,132の動作をそれぞれ制御して照射ヘッド10を首振りさせる。なお、照射ヘッド10の首振り動作中はインターロックがはたらいて放射線が照射されないようになっているので、近傍部位の被曝量は最小限に抑えられる。
【0026】なお、本実施形態では検査装置としてX線CT装置装置30を放射線治療装置と組合せた場合について説明したが、本発明はこれのみに限定されることなく、X線透視装置、特殊な用途ではPET(Positron Emission Tomography)等の他の非磁気型画像取得装置を放射線治療装置と組合せることが可能である。
【0027】通常型のX線透視装置の場合には、異なる目視線をもつ2つ以上のカメラが必要である。また、コントラストの低い軟部組織等はイメージングできないため、骨組織等のコントラストの高いランドマークをもとに予めX線CT装置やMRI等で照射野の位置決めができるようにしておくか、小型の金プレート等を照射野付近に埋め込んでマーカとするか、若しくはDSA(Digital Subtraction Angiography)のように造影剤や差分画像処理により画像強調できるような工夫が必要となる。また、X線CT装置やPETではリアルタイムイメージングが必要であり、高速のリアルタイム画像再構成計算が必要となる。
【0028】次に、図4(a)〜(c)、図5及び図10R>0、図11(a)〜(d)を参照しながら照射ヘッド10について詳しく説明する。
【0029】照射ヘッド10は、4MeV〜10MeVの電子エネルギを有し、治療用のX線3aを発生する小型の電子リニアックからなり、アイソセンタ5aを中心とする上半後部の1/2球殻の範囲内で三次元移動して多方向から放射線を照射できるように、ガイドレール9に可動支持されるとともに、導波管系11のロータリRFカプラ16に首振り可能に連結されたものである。
【0030】照射ヘッド10は、カバー101で本体部が覆われ、本体部の先端側に放射線を出射するための出射部120が取り付けられている。照射ヘッド本体部を覆うカバー101内には電気回路/冷却水回路116、加速器110、RF窓52、導波管51、ロータリRFカプラの一部50B、排気管107、真空ポンプ112、ターゲット排気室119、ターゲット121、冷却板122が設けられている。
【0031】加速器尾部の絶縁碍子103から外部電源に接続されたケーブル(図示せず)がカバー101内に導入され、電子銃104のカソード105に接続されている。このカソード105と向き合ってアノード106が配置されている。カソード105とアノード106との間は真空ポンプ112に連通する排気管107により排気されるようになっている。電子銃104の電源はシステム制御装置80により制御されるものである。なお、電子銃104から加速器110に続き、さらに加速器110から出射部120に続いている。なお、絶縁碍子103から加速器110の先端までの長さは約360mmである。
【0032】図5に示すように、電子銃104のアノード106の中央孔は加速器110のバンチャ空洞109に連通している。加速器110は、電子銃104から出射された電子線を加速させ、高エネルギの電子ビームをX線ターゲット121に衝突させるものである。加速器110の内部には電子ビーム通過用の中央孔を有する加速空胴111bがつながって配置されている。加速空胴111bはサイドカップルキャビティ111aを介して左右一対の側方排気管108にそれぞれ連通し、左右一対の側方排気管108は真空ポンプ112に接続されて真空排気されるようになっている。すなわち、加速器110の内部は側方のサイドカップルキャビティ111aおよび側方排気管108を介して真空ポンプ112により真空排気されるものである。
【0033】加速器110には導波管51が連通している。導波管51はセラミック製のRF窓52およびロータリRFカプラ50A,50Bを経由してマイクロ波発振器70に連通している。RF窓52は、導波管51内に封入されたSF6ガスの漏洩を防ぐとともに、マイクロ波を加速器110へ導入させる入口である。なお、マイクロ波発振器70は出力安定性に優れたクライストロン方式のものである。マイクロ波発振器70の電源回路はシステム制御装置80に接続されている。
【0034】出射部120は、カバー101で覆われた照射ヘッド本体部の先端に設けられ、X線ターゲット121、ターゲット冷却板122、一次コリメータ123、フラットニングフィルタ124を備えている。電子銃104から加速器110を経てフラットニングフィルタ124に至るまでは電子ビームの光軸に沿って直列に並び、加速された電子線はターゲット排気室119を通って出射部120のターゲット121に入射するようになっている。
【0035】X線ターゲット121は、高エネルギの加速電子が入射して制動ふく射X線を出射するものであるため熱損傷を受けやすく、その対策として冷却板122が取り付けられ、冷却されている。なお、ターゲット121にはタングステン、タンタル等の高融点金属単体またはこれらの合金を用いる。
【0036】一次コリメータ123は、タングステンなどの放射線に対する遮蔽性に優れ、かつ熱中性子発生の少ない材料でつくられ、ターゲット121からのX線をフラットニングフィルタ124に導くものである。
【0037】フラットニングフィルタ124は、ターゲット121から出射されるX線の強度を平均化して均一なドーズ分布をもつ治療用放射線3aとするためのものである。
【0038】さらに、出射部120の先端側には二次コリメータ125および線量計測用電離箱126が取り付けられている。二次コリメータ125は、治療用のX線3aが透過できないタングステンなどの遮蔽性の高い材料でつくられ、中空部を通って線量計測用電離箱126に治療用放射線3aが送られるようになっている。この二次コリメータ125は一次コリメータ123の端面部に着脱可能にネジ込まれている。
【0039】線量計測用電離箱126は、二次コリメータ125の先端に取り付けられ、所定成分のガスが封入された電離箱であり、放電電荷を検出する検出回路(図示せず)が接続されている。この検出回路はシステム制御装置80の入力側に接続されている。システム制御装置80は、線量計測用電離箱126からの入力信号に基づいて照射ヘッド10から出射されるX線の線量を算出し、患者4が受ける治療用ドーズデータとしてメモリに保存するようになっている。
【0040】次に、図9を参照して本実施形態装置の制御システムについて説明する。
【0041】本実施形態装置の制御システムは、天板8、照射ヘッド10、X線CT装置30、信号処理装置31、マイクロ波発振器70、システム制御装置80、システムユーティリティ90からなり、システム制御装置80が全体を統括して制御するシステム構成となっている。
【0042】システム制御装置80は、システム制御計算機、システム管理アルゴリズム、画像追尾アルゴリズム、治療計画アルゴリズム、治療管理アルゴリズム、グラフィカルユーザインターフェイス、治療データベース、インターロックアルゴリズム及びシステムモニタを含むものであり、これを中心として他のシステムブロックがそれぞれ接続され、入出力信号のやりとりがなされるようになっている。
【0043】X線CT装置30は、信号処理装置31を経由してシステム制御装置80に接続されている。これにより画像診断が治療中にリアルタイムでなされ、医師はコンピュータディスプレイ上に表示された診断画像を観ながら治療を行うことができるようになっている。
【0044】マイクロ波発振器70は、クライストロンモジュレータ・アンド・リニアックシステム制御装置、クライストロン及びRFドライバを具備している。クライストロンは、導波管系11を介して照射ヘッド10に接続され、加速器110にマイクロ波を供給する供給源にあたる。
【0045】照射ヘッド10のアイソセントリック駆動機構および首振り駆動機構の各ドライバはシステム制御装置80に接続され、アイソセントリック照射時における照射ヘッド10の周回駆動68および擬似ノンアイソセントリック照射時における照射ヘッド10の2軸首振り駆動がそれぞれ制御されるようになっている。
【0046】次に、図10〜図11および図6〜図8を参照して照射ヘッドの2軸の首振り機構について詳しく説明する。
【0047】図10に示すように、照射ヘッドカバー101のジンバル構造の支持フレーム102に支持されている。支持フレーム102は照射ヘッド10の慣性中心を含むS1軸およびS2軸が通る位置座標に取り付けられている。
【0048】図11Aに示すように、支持フレーム102には、導波管系11のロータリRFカプラ16、一対のロータリRFカプラ50A,50B、S1首振り駆動用サーボモータ131、S2首振り駆動用サーボモータ132がそれぞれ各辺に取り付けられている。
【0049】導波管系11のロータリRFカプラ16は支持フレーム102の一方側長辺の中央に取り付けられ、これと向き合うようにS1首振り駆動用サーボモータ131の駆動軸131aがフレーム102の対向長辺の中央に取り付けられている(図11B参照)。サーボモータ駆動軸131aを回転駆動させると、図8に示すようにS1ドライブ軸まわりに照射ヘッド10が首振りするようになっている。
【0050】また、一対のロータリRFカプラ50A,50Bは支持フレーム102の一方側短辺の中央に取り付けられ(図11(d)参照)、これと向き合うようにS2首振り駆動用サーボモータ132の駆動軸132aがフレーム102の対向短辺の中央に取り付けられている(図11C参照)。すなわち、サーボモータ132の本体は支持フレーム側のブラケット102aに固定支持され、モータ駆動軸132aは軸受133を介して支持フレーム102に回転可能に支持されている。サーボモータ駆動軸132aを回転駆動させると、図7に示すように、S2ドライブ軸まわりに照射ヘッド10が首振りするようになっている。
【0051】図11Aに示すように、導波管系11の各リンクアーム13,15内には導波管51が設けられ、各関節部14,16内にはロータリRFカプラ50が設けられ、さらに一対のロータリRFカプラ50A,50Bを通って照射ヘッド内の加速器110にマイクロ波が導入されるようになっている。
【0052】図6〜図8に示すように、画像診断データから得られるシフト量DV1,DV2と所定の算式とを用いてS1首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ1とS2首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ2とをそれぞれ求め、その演算結果に従って首振り機構131,132の駆動をそれぞれ制御し、照射ヘッド10を微小変位角θ1および微小変位角θ2の分だけ高速首振りさせる。そして、首振り動作中に照射ヘッド10から放射線を出射する。これにより頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて動く腫瘍等の患部5に対しても照射ヘッド10の照準が迅速かつ高応答に追随する。ちなみに、診断画像の処理時間を含めて0.1秒以内に照射ヘッド10を高速で首振り動作させることができ、照射野(患部)の動きに対して迅速に追随させることができる。
【0053】次に、図15のタイミングチャートを参照しながら本実施形態の放射線治療装置の動作について、特に治療用放射線の直接線、漏洩線及び散乱線の画像取得装置検出器への影響を防止し、イメージングと治療用放射線の照射の時分割リアルタイムを実現する方法を説明する。
【0054】先ず放射線治療装置6のメインスイッチをONすると、治療用寝台システム7、照射ヘッド10、X線CT装置30、マイクロ波発振器70、システム制御装置80、システムユーティリティ90の電源がそれぞれ待機状態となる。治療用寝台システム7が作動して患者4が天板8とともに治療エリア内に移動し、画像取得装置を作動させて患部5が治療装置のアイソセンタ5aに一致するように天板8を動かせて位置合わせする。このアイソセントリック位置合わせ完了後、X線CT装置30によるリアルタイム画像診断と照射ヘッド10による放射線治療とを開始する。
【0055】図15中の時間t0において、X線CT装置30は、照射野5に向けて画像取得用X線3bの照射を開始する。その透過像を図15に示す時間t0〜t1において取得画像として検出する。なお、被曝を最小限度とするため画像取得用X線3bの照射時間も時間t0〜t1の間に限定する。また、少なくとも画像取得用X線3bを照射している時間t0〜t1において、治療用放射線3aの直接線、漏洩線及び散乱線が検出器に影響を与えないようにするため、照射ヘッド10は、治療用放射線3aを出射しないようにインターロックされている。
【0056】検出された取得画像は、時間t1〜t2において取り込まれる(収録される)。取り込まれた取得画像の追尾画像データなどの情報は、時間t2〜t3において信号処理装置31やシステム制御装置80で処理され、処理画像をディスプレイ上に表示される。また、この画像追尾計算の結果、処理された情報は、位置補正データとして、首振り機構131,132に送られる。そして、時間t0〜t3までと同じ画像取得から画像処理までのサイクルが、時間t3以降、繰返される。
【0057】時間t3〜t5にかけて次の画像検出と画像取り込みが行なわれている間に、首振り機構131,132の首振りサーボは、位置補正データとして送られてきた画像追尾計算の結果を基に、微小首振り角θ1及びθ2、駆動される。首振り機構131,132を駆動させている時間t3〜t5の間、治療用放射線3aを照射しないように、照射ヘッド10は、安全性を考慮してインターロックされている。
【0058】首振り機構131,132が停止する時間t5において、照射ヘッド10のインターロックは、解除され、治療用放射線3aは、照射されはじめる。治療用放射線3aの照射時間は、次に首振り機構131,132が駆動されるまでの、時間t5〜t6である。また、この時間t5〜t6と同期して、時間t3〜t5の間に取得された取得画像の追尾画像データの画像追尾計算が実行される。時間t6において、3回目の画像検出と2回目の首振りサーボ駆動が開始され、2回目の画像追尾計算と1回目の治療用放射線3aの照射が完了する。
【0059】治療用放射線3aの照射停止後、時間t6に画像取得用X線3bの照射を開始し、時間t6から始まる次の取得画像処理サイクルに移行する。時間t0から3回目の画像取り込み後のタイミングt8に照射ヘッド10のインターロックが解除され、2回目の治療用放射線3aの照射が再開される。
【0060】このように、画像処理のサイクルと首振り及び照射のサイクルとは、互いにオーバーラップしている。ある画像処理のサイクルの間に行なわれる首振りヘッドの駆動及び治療用放射線3aの照射を行うサイクルは、この画像処理のサイクルの1つ前に行なわれた画像処理のサイクルの情報に基づいて行なわれる。
【0061】なお、心鼓動などの早い動きに追従する場合、画像検出の開始から、照射ヘッド1000を首振りさせて、治療用放射線3aを照射し終わるまでの時間t0〜t6は、0.1秒以内が一つの目安とされている。そこで、図15に示すタイムチャートは、画像処理の1サイクル及び首振り及び照射の1サイクルをそれぞれ0.05秒とした場合を示している。したがって、図15R>5に示すタイムチャート中の時間は、一例であって、これ以外の時間間隔で実施されてもよい。
【0062】また、画像取得や画像追尾計算に異常が生じた場合、その時点で治療用放射線3aの照射を停止するようにインターロックをかけ、安全性を向上させる。なお、本実施形態の放射線治療装置6では、照射ヘッド10の首振り及び位置決めが正常に行われたことを確認してから治療用放射線3aの照射がなされるよう構成されている。
【0063】このように本実施形態の放射線治療装置6において、画像検出のサイクル、画像取込のサイクル、画像追尾計算のサイクル、それに基づくヘッド首振り制御のサイクル、治療用放射線3aの照射のサイクルが繰返され、寝台の1/2球殻の位置から照射野5への追従照射による治療が行われる。
【0064】次に、図15及び図16を参照して本発明の擬似ノンアイソセントリック型放射線治療装置を用いた治療の手順について説明する。
【0065】放射線治療においては医師が治療計画を立てる。その治療計画は術前に行われる種々の検査に基づくものであるが、さらに医師は手術中において本発明の装置を用いることにより患部の病巣を直接的にリアルタイムで画像診断することにより高精度で確実性の高い放射線治療を行うことができる。
【0066】図16の(a)に示すように、X線CT装置30のみを用いて照射野5及びその近傍領域の診断画像を構成する。システム画面で治療野5の各断面図を確認して、画像追尾のための輪郭線を定義する。治療開始に先立って照射野5のマッピングは終了しており、これを参考に複数のスライスで照射野5の輪郭を定義する。
【0067】図16の(b)に示すように、放射線治療装置の画像追尾システムが、実際の照射野5の画像の輪郭抽出を行い、定義された輪郭線とのパターンマッチングを行って画像追尾を開始する。医師は画像追尾状況を目視で確認する。
【0068】図16の(c)に示すように、画像追尾が安定した後に、医師はマスターアームスイッチ(Master Arm SW)を操作して、システムをARMED状態にする。システムは照準をクロスヘアラインで照射ボリュームを赤色で画像上に表示する。画像追尾が継続しているため、照準及び照射ボリュームは照射野の移動とともに自動的に追従する。
【0069】図16の(d)に示すように、医師のトリガ操作で治療用放射線3aの照射を開始する。治療計画の段階で予定の照射時間は決まっており、画面上ではカウントダウンが開始され、カウントゼロ(時刻t4)になると治療用放射線は自動的に停止する。画面上には線量分布が継続的に表示され、医師はこれを確認しながらトリガを引き続けて照射を継続する。システムは画像のサンプリング、治療用放射線の照射を高速に交互に続け、画像追尾と治療用放射線の照射とをリアルタイムで継続する。カウントダウンがゼロになる前であっても、医師がトリガを離せば、そのタイミングで直ちに治療用放射線は停止するので、安全性は十分に確保される。
【0070】図16の(e)に示すように、医師はマスターアームスイッチ(Master Arm SW)をSAFE位置としてシステムを安全な状態にし、照射ヘッド10を次の照射位置へ移動させる。各ポータルにおける照射終了後と一連の照射終了後に医師は累積被曝線量の総計にあたるトータルドウズ(Total Dose)を確認する。累積線量および1クール内の累積線量分布が画面に表示され、患者毎に作成される治療ファイルに記憶される。
【0071】本実施形態の治療装置によれば、画像処理時間を含めて0.1秒以内に照射ヘッドを高速首振り動作させ、照射野(患部)の動きに対して追随させることができるので、高精度に放射線を照射することができる。このように患部の動きに対応して高応答かつ高精度にノンアイソセントリック照射することが可能であるので、頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて腫瘍等の照射対象が移動する部位を治療対象とすることができるようになる。
【0072】本実施形態によれば、照射ヘッド部全体のアイソセントリックな動きに加えて、照射ヘッド部自体をその慣性中心等の適当な回転中心のまわりに1軸又は2軸の首振り動作することにより、擬似的にノンアイソセントリックな照射治療が可能となり、その効果は完全にノンアイソセントリックな照射治療装置に対して全く遜色の無いレベルものが得られる。また、所要の首振り角は、約3°(±1.5°)であり、呼吸や心鼓動による照射野の移動に対応して高速に追従可能である。
【0073】本実施形態によれば、剛性の点で問題の多い片持型のロボットアームと異なり、高強度・高剛性の照射ヘッド支持構造を採用することができ、高い絶対精度を機械的に保証することが可能となる。このため、ロボットアームを使用して所要の位置決め精度を確保する場合に必要となるティーチングが不要となり、効率的な治療が可能となる。
【0074】ノンアイソセントリックな照射治療に所要の自由度を遙かに超える過剰な自由度を持つ汎用の産業用ロボットアームを適用するのは患者の安全性の点で問題がある。即ち、ロボットアームの誤動作等の事故の際に、ロボットアームもしくはその先端の照射ヘッドが患者に接触して、患者に対して外傷的な危害が及ぶ可能性がある。これに対して、本実施形態では、照射ヘッド支持機構及び照射ヘッド自体が機械的に可動範囲が制限されており、患者に対する絶対的な安全性が確保できる。
【0075】従来技術では、照射治療中に照射野をリアルタイムに監視することができず、推定に基づく照射を余儀なくされたが、本発明によれば、通常のX線透視装置や、X線CT装置、PET、DSA等の画像取得装置で、照射治療中に照射野をリアルタイムで監視することが可能となり、信頼性・安全性の高い照射治療が可能となる。
【0076】また、リアルタイムに得られる上記の照射野画像を基にして画像追尾を行い、移動する照射野への追従照射が可能となる。
【0077】本発明の実施形態に示される医師とのマンマシン・インタフェイスにより、安全性・信頼性に優れた確実な放射線治療が可能となる。
【0078】(第2の実施形態)次に、図17および図1818を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0079】本実施形態の装置6Aでは、回転ドラム(治療用ガントリ)99上に治療用の照射ヘッド10、画像取得用X線源(CT用X線管)97およびセンサアレイ98を搭載している。すなわち、装置全体構造としては、上記第1実施形態の回転型のX線CT装置装置30のドラム部の上に照射ヘッド10を装備した構造としている。回転ドラム(治療用ガントリ)99の回転中心はアイソセンタ5aとされている。照射ヘッド10は、4MeV〜10MeVの電子リニアックからなり、図示のように2軸(S1,S2)に首振りでき、これらの首振り動作によってドラム回転軸周りにノンアイソセントリックな照射が可能である。なお、S2軸の首振りには、ドラムの回転に伴う照準角度補正も含める必要がある。一方、S1軸の首振りに関しての照準角度補正は不要である。
【0080】画像取得用X線源97およびセンサアレイ98は照射ヘッド10と干渉を生じない箇所にそれぞれ取り付けられ、画像取得用X線源97とセンサアレイ98とは互いに向き合っている。検出用のX線センサアレイ98はマルチ配列(Multirow)タイプの多列センサである。なお、X線CT装置やPETではリアルタイムイメージングが必要であり、高速のリアルタイム画像再構成計算処理が必要となる。
【0081】(第3の実施形態)次に、図19を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0082】本実施形態の装置6Bでは、回転ドラム(治療用ガントリ)99上に照射ヘッド10、通常のX線透視装置を構成する2組のX線源97A,97B及びセンサアレイ98A,98Bのセットが装備されている。すなわち、上記第2実施形態とは異なり、回転ドラム99にはX線CT装置用のX線源とセンサアレイが装備されているのではなく、本実施形態では通常のX線透視装置を構成する2組のX線源97A,97B及びセンサアレイ98A,98Bを装備しており、X線透視装置のセットの目視線は互いに一致しないようになっている。これにより患者4の体内のランドマーク若しくは微小の金プレート等のマーカのX線透視画像を2軸方向について取得し、患部位置の動きを把握するようにしている。なお、X線透視画像の画像強調方式としては、造影剤を用いてDSAのような画像処理を行う方式も考えられる。
【0083】照射ヘッド10は、4MeV〜10MeVの電子リニアックからなり、図示のように2軸(S1,S2)に首振りでき、これらの首振り動作によってドラム回転軸周りにノンアイソセントリックな照射が可能である。なお、S2軸の首振りには、ドラムの回転に伴う照準角度補正も含める必要がある。一方、S1軸の首振りに関しての照準角度補正は不要である。
【0084】(第4実施形態)次に、図20〜図28を参照して本発明の第4実施形態に係る放射線治療装置を説明する。
【0085】図20に示すように、本実施形態の放射線治療装置は、治療室200側に配置される要素と、隔壁201により治療室200から隔離された操作室202に配置される要素とからなる。
【0086】治療室200に配置される要素は、支持移動機構210と、この支持移動機構210により予め定めた第1球面座標上で支持され且つ移動する照射ヘッド220と、マイクロ波発振器230と、照射ヘッド220内の治療用放射線発生部221にマイクロ波発振器230で発生させたマイクロ波電力を伝送するマイクロ波伝送系である固定導波管部240、移動導波管部250及びヘッド内導波管部260と、寝台部270とである。
【0087】操作室202に配置される要素は、システム制御卓280である。
【0088】支持移動機構210は、治療室200の床に固定される一対の基台211,212と、この基台211,212に設けられた一対の傾動機構213,214と、照射ヘッド220を支持且つ移動させるための半円弧状軌道が形成されたガイドレール215と、一対のウエイト216,217とを含む。すなわち、ガイドレール215の中間部に前記軌道215Aが形成されると共にその両端215B1,215B2は、基台211,212に設けた傾動機構213,214により支持される。傾動機構213,214を駆動することにより、アイソセンタ300を中心に符号301に示す方向にガイドレール215は回転駆動される。
【0089】照射ヘッド220は、電子銃、加速器、ターゲット、コリメータ、真空ポンプ等からなる治療用放射線発生部221と、ラック・アンド・ピニオン、ベルト及びプーリ等の機構により照射ヘッド220を軌道215Aに沿って符号302に示す方向に周回移動させる周回移動機構222と、治療用放射線発生部221を符号303に示す直行2方向に首振りさせるジンバル機構223とを有する。ここに、傾動機構213,214及び周回移動機構222の動作により、照射ヘッド220を、アイソセンタ300をアイソセントリック回転させることができる。また、後述するジンバル機構223の動作は、照射ヘッド220を疑似ノンアイソセントリックな回転をさせることができる。
【0090】マイクロ波発振器230は、クライストロンの如きマイクロ波電子管からなる。このマイクロ波発振器230、マイクロ波伝送系及び治療用放射線発生部221は、従来の小型電子リニアックの如き放射線治療装置では回転体である照射ヘッドを含むガントリ内に一体化されて組み込まれているものがあったが、本実施形態の放射線治療装置においては、重量物であるマイクロ波発振器230を治療室200の床に設置することで、軽量化された照射ヘッドを実現している。このような軽量化された照射ヘッド220であることと、特徴的な支持移動機構210との組合せにより、照射ヘッド220を、治療室200の空間上で規定される球面座標系上での任意位置への移動を可能としている。
【0091】移動導波管部250は、第1,第2直線形導波管251,252と、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255を含むパンタグラフ機構であり、固定導波管部240とヘッド内導波管部260とを連結する。すなわち、同種の第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255のうち、代表として第2ロータリRFカプラ254を第1,第2直線形導波管251,252を含めて、図21を参照して説明する。
【0092】図21において、第2ロータリRFカプラ254は、一端側に第1直線導波管251が接続される第1筒体254Aと、この第1筒体254Aと同一の軸芯を持ち第1筒体254Aの他端側に一端側がベアリング254Cを介して回転可能に組み合わされ且つ他端側に第2直線導波管252が接続される第2筒体254Bとを含む。尚、第1,第2筒体254A,254Bの軸心方向と、第1,第2直線導波管251,252の伸長方向とは直角である。
【0093】また、第1,第2筒体254A,254Bの開口部には、2つの開口を形成してなる帯域フィルタ板254Dが設けられている。さらに第1筒体254Aと第2筒体254Bとの間には磁性シール機構254Eが設けられている。この磁性シール機構254Eは気密封止のためOリングに代わるものであり、一対の電磁石254E1,254E2により磁性流体254E3を挟みこんだ構造である。このような磁性シール機構254Eを第1筒体254Aと第2筒体254Bとの間に設けていることにより、従来のような劣化に伴う定期交換を必要とするOリングに比べて、保守管理の面で有利である。
【0094】このような第2ロータリRFカプラ254及び第1,第2直線形導波管251,252によれば、第1直線導波管251の伸長方向から伝送されたマイクロ波電力は、第2ロータリRFカプラ254の入口で直角に曲げられて、出口で再度直角に曲げられて第2直線導波管252の伸長方向に伝送される。また、第2ロータリRFカプラ254の第1筒体254A,第2筒体254Bは互いに回転可能であるので、第1,第2筒体254A,254Bに直角に接続された第1直線導波管251と第2直線導波管252とを互いに異なる方向に回転させることができる。
【0095】従って、移動導波管部250は、第2ロータリRFカプラ254に一端部が接続された第1直線導波管251の他端部を、第2ロータリRFカプラ254と同様の構造を有しガイドレール215の端部に固定された第1ロータリカプラ253に接続し、第2ロータリRFカプラ254に一端部が接続された第2直線導波管252の他端部を、第2ロータリRFカプラ254と同様の構造を有し照射ヘッド220に固定された第3ロータリRFカプラ255に接続しているので、照射ヘッド220の移動に伴って、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255それぞれの第1,第2筒体254A,254Bが回転して第1,第2直線導波管251,252を、第2ロータリRFカプラ254を中心に開閉することができる。これは、第1,第2直線形導波管251,252と、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255とを含む移動導波管部250が、パンタグラフ機構であることを示している。
【0096】また、図22は、2つのロータリRFカプラ254,254′と、5本の導波管とを用いて、曲がった伝送経路を形成する例を示している。この例では、図21と同様のロータリRFカプラ254及び直線導波管256,257と、これと同様のロータリRFカプラ254′及び直線導波管256′,257′とを、ベンド形導波管258により連結した構成である。
【0097】このように、図21に示すロータリRFカプラ254及び複数の導波管の組を複数製作し、これらをベンド形導波管により連結することにより、曲がった伝送経路を容易に形成することができる。
【0098】次に図23を参照して、照射ヘッド220と移動導波管部250との関係を説明する。すなわち、図20においてアイソセンタ300を規定したとき、照射ヘッド220は、支持移動機構210により治療室200の空間上で規定される球面座標系上での任意位置への移動を可能としている。この球面座標系を図23において、P1(r1,θ1,φ1)で示すことができる。この場合、r1は、アイソセンタ300とターゲットとの間の距離とする。また、移動導波管部250の第3ロータリRFカプラ255は、照射ヘッド220が球面座標系P1(r1,θ1,φ1)で移動すると、この座標系に応動してP2(r2,θ2,φ2)で示す球面座標系上での移動が行われる。r2は、アイソセンタ300と第3ロータリRFカプラ255の軸心との間の距離とする。
【0099】このように本実施形態の放射線治療装置によれば、照射ヘッド220が移動する球面座標系P1に従って移動導波管部250を球面座標系P2上で移動することができ、移動導波管部250の動きを照射ヘッド220の動きに追従させることができる。
【0100】次に、固定導波管部240について説明する。すなわち、固定導波管部240は、移動導波管部250で用いた直線形導波管と同様の導波管、図24に示す両端にフランジ241,242が設けられたEベント形導波管243、図25に示す両端にフランジ244,245が設けられたHベント形導波管245、移動導波管部250で用いたロータリRFカプラ253,254,255と同様のロータリカプラを含み、マイクロ波発振器230と移動導波管部250とを連結する。図20R>0において、固定導波管部240は、マイクロ波発振器230の出力端から基台212内を通ってガイドレール215の端部215B2に設けた第1ロータリRFカプラ253に接続されている。
【0101】次に、図26(a)及び(b)を参照して、照射ヘッド220及びヘッド内導波管部260について説明する。照射ヘッド220は、図20で説明したように、治療用放射線発生部221、周回移動機構222、ジンバル機構223を有すると共にヘッド内導波管部260を付設している。なお、図26(a)及び(b)においては、図面に周回移動機構222は現れない。ジンバル機構223のフレーム223Aに直行2方向に首振りさせるサーボ機構223B,223Cが設けられており、周回移動機構で位置決めされた位置で、フレーム223A全体を首振りさせる。フレーム223Aには、電子銃221A,Cバンド定在波線形加速器の如き加速器221B,ターゲット221C,コリーメータ221D及び加速器221Bに連結される真空ポンプ221Eが搭載されている。
【0102】このような治療用放射線発生部221は、電子銃221Aから発射した電子線を加速器221Bより加速して、該加速した電子線をターゲット221Cに衝突させて放射線を発生させ、また該放射線をコリーメータ221Dで成形して、治療用放射線を照射ヘッド220から図示しない患者に照射する。また。
【0103】上記において加速器221Bにはヘッド内導波管部260が接続されている。このヘッド内導波管部260は、RF窓262を内部に有しつ且つ一端側が加速器221Bに接続されたロータリRFカプラ261を有する。このロータリRFカプラ261の他端側には、ベンド形導波管263が接続されている。RF窓262を内部に有するロータリRFカプラ261及びベンド形導波管263は、ジンバル機構223のフレーム223Aに搭載されている。
【0104】ここにRF窓262から加速器221Bまでの導波管部262Aと、電子銃221Aと、加速器221Bと、ターゲット221とによる空間は真空ポンプ221Eにより真空引きされる。また、RF窓262からマイクロ波発振器230までのヘッド内導波管部260、固定導波管部240及び移動導波管部250の内部は、SF6ガス等の電気絶縁ガスが、0.1〜0.2MPaGの圧力で充填されている。
【0105】また、周回移動機構側には、導波管265,266,267が設けられ、導波管267は移動導波管部250の第3ロータリRFカプラ255に接続されている。ここにジンバル機構223のフレーム223Aに搭載されたベンド形導波管263と、周回移動機構側に設けられた導波管265とは、詳細を図27に示すフランジ264A,264Bを有するフレキシブル導波管264により連結されている。なお、図24,図25R>5,図27におけるフランジは、図28に示すフランジ268を用いることができる。なお、ヘッド内導波管部260においても、曲った伝送路を構成する場合には、図24に示す両端にフランジ241,242が設けられたEベント形導波管243、図25に示す両端にフランジ244,245が設けられたHベント形導波管245を用いることができる。
【0106】図20に示す、寝台部270は、患者272を載置しつつZ方向(垂直方向)と、X,Y方向(水平方向)とのうち少なくとも一方に移動する天板271を有する。この天板271の移動は、寝台部270に備わる図示しない移動機構により行われる。
【0107】図20に示す、システム制御卓280は、傾動機構213,214、照射ヘッド220の治療用放射線発生部221、周回移動機構222、ジンバル機構223、マイクロ波発振器230及び寝台部270を、自動又は手動により々制御する。
【0108】以上のように構成された本実施形態の放射線治療装置によれば、次のよう効果がある。すなわち、重量物であるマイクロ波発振器230を治療室200の床に設置して軽量化された照射ヘッド220を実現し且つ特徴的な支持移動機構210との組合せにより、照射ヘッド220を、治療室200の空間上で規定される球面座標系P1上での任意位置に移動することが可能となる。
【0109】また、本実施形態の放射線治療装置によれば、照射ヘッド220が移動する球面座標系P1に従って移動導波管部250を球面座標系P2上で移動することができ、移動導波管部250の動きを照射ヘッド220の動きに追従させることができ、任意の位置における照射ヘッド220に対しマイクロ波電力を容易に供給することができる。
【0110】さらに、移動導波管部250は、第1,第2直線形導波管251,252と、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255とによりパンタグラフ機構を構成しているので、第2ロータリRFカプラ254を中心に第1直線形導波管251と第2直線形導波管252とを容易に開閉し且つ移動量を吸収することができ、患者272への干渉を未然に防止とすることができる。
【0111】また、固定導波管部240及びヘッド内導波管部260は、直線形導波管と共にEベント形導波管243、Hベント形導波管245、ロータリRFカプラ253,254,255と同様のロータリRFカプラを用いて構成しているので、曲がった伝送路を最短距離で形成することができ、小型化に寄与するものとなる。
【0112】さらに、ロータリRFカプラ254の第1筒体254Aと第2筒体254Bとの間には磁性シール機構254Eを設けていることにより、従来のOリングに比べて、摩耗に伴うリーク発生を抑制することができ、また劣化に伴う交換サイクルを延ばすことができる。
【0113】また、ヘッド内導波管部260におけるジンバル機構223に搭載されるベンド形導波管263と、周回移動機構側に設けられた導波管265とは、フレキシブル導波管264により連結しているので、ジンバル機構223によりベンド形導波管263を含む治療用放射線発生部221が首振り動作により微少角変位しても、この首振り動作の伴う治療用放射線発生部221の位置ずれは容易にフレキシブル導波管264により吸収することができる。これにより、治療用放射線発生部221に所定のマイクロ波電力を供給しつつジンバル機構223により、照射ヘッド220を円滑に疑似ノンアイソセントリック回転させることが可能となる。
【0114】さらに、本実施形態の放射線治療装置においては、マイクロ波発振器230と加速器221Bとの間におけるマイクロ波伝送系において、マイクロ波を利用する部分である加速器221Bの近傍にRF窓262を設けているので、真空にする必要がある部分は、RF窓262から加速器221Bまでの導波管部262Aと、電子銃221Aと、加速器221Bと、ターゲット221とによる、加速器221Bの近傍の狭い空間だけとなるので、真空ポンプ221Eは小容量のものを用いることができ、照射ヘッド220の小型化且つ軽量化に大きく寄与する。また、真空にする必要がある部分が加速器221Bの近傍の狭い空間であるので高真空度到達が達成され放電リスクが軽減される。さらに、真空にする必要がある部分が加速器221Bの近傍の狭い空間であるので真空漏れの発生頻度は低減され得る。
【0115】また、RF窓262からマイクロ波発振器230までのマイクロ波伝送系、つまりヘッド内導波管部260、固定導波管部240及び移動導波管部250の内部は、SF6ガス等の電気絶縁ガスが、0.1〜0.2MPaGの圧力で充填されているので、マイクロ波伝送系内の内圧により、マイクロ波伝送系の保全能力が向上する。
【0116】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、優れた治療性能を有する放射線治療装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放射線治療装置を寝台軸に直交する方向から見た構成図。
【図2】同実施形態の放射線治療装置を寝台軸方向から見た構成図。
【図3】同実施形態の放射線治療装置による放射線治療を説明する斜視図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る放射線治療装置における照射ヘッドを示し、(a)は正面から見た部分断面図、(b)は(a)におけるIVB−IVBに沿う断面図、(c)は(a)におけるIVC−IVCに沿う断面図。
【図5】同実施形態の放射線治療装置における照射ヘッドに備わる超小型C−Band加速器を示す構成図。
【図6】同実施形態の放射線治療装置による擬似ノンアイソセントリックで放射線治療を行う際の照射ヘッド及び患者を示す斜視図。
【図7】同実施形態の放射線治療装置による擬似ノンアイソセントリックで放射線治療を行う際の照射ヘッドの首振り動作の一例を説明するものであって、図6におけるVII−VIIに沿う部分断面図。
【図8】同実施形態の放射線治療装置による擬似ノンアイソセントリックで放射線治療を行う際の照射ヘッドの首振り動作の他例を説明するものであって、図5におけるVIII−VIIIに沿う部分断面図。
【図9】同実施形態に係る放射線治療装置のブロック図。
【図10】同実施形態に係る放射線治療装置の照射ヘッドを示す斜視図。
【図11】図11は同実施形態における首振り機構を示し、(a)は導波管と首振り機構及び駆動モータを示す斜視図、(b)は(a)におけるXIB−XIBに沿う断面図、(c)は(a)におけるXIC−XICに沿う断面図、(d)は(a)におけるXID−XIDに沿う断面図。
【図12】同実施形態の放射線治療装置における導波管系及びロータリRFカプラを示す斜視図。
【図13】同実施形態の放射線治療装置におけるロータリRFカプラ及び導波管を示す斜視図。
【図14】同実施形態の放射線治療装置におけるロータリRFカプラを説明する図。
【図15】同実施形態における動作を示すタイミングチャート。
【図16】同実施形態における放射線治療の操作手順を、モニタ画面の変化で示す図。
【図17】本発明の第2実施形態に係る放射線治療装置を、寝台軸の方向から見た構成図。
【図18】同実施形態に係る放射線治療装置を、寝台軸の方向から見た構成図。
【図19】本発明の第3実施形態に係る放射線治療装置を、寝台軸の方向から見た構成図。
【図20】本発明の第4実施形態に係る放射線治療装置を示す斜視図。
【図21】同実施形態におけるロータリRFカプラの断面図。
【図22】同実施形態におけるロータリRFカプラ及び導波管を組み合わせた伝送系を示す図。
【図23】同実施形態における照射ヘッドに係る球面座標系と移動導波管部に係る球面座標系との関係を示す図。
【図24】同実施形態におけるEベンド形導波管を示す図。
【図25】同実施形態におけるHベンド形導波管を示す図。
【図26】同実施形態における照射ヘッドを示し、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図27】同実施形態におけるフレキシブル導波管を示す図。
【図28】同実施形態におけるフランジを示す図。
【符号の説明】
200…治療室
201…隔壁
202…操作室
210…支持移動機構
211,212…基台
213,214…傾動機構
215…ガイドレール
215A…軌道
216,217…ウエイト
220…照射ヘッド
221…治療用放射線発生部
222…周回移動機構
223…ジンバル機構
230…マイクロ波発振器
240…固定導波管部
250…移動導波管部
260…ヘッド内導波管部
270…寝台部
280…システム制御卓
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、腫瘍部を定位多軌道照射法により放射線治療する等に好適な放射線治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】放射線治療法の一つに、患部に対し多方向から放射線を集中照射して治療効果を上げると共に患部の周囲組織は被曝量が最小限に抑制され得る定位多軌道照射法がある。
【0003】この定位多軌道照射法は、原発性良性脳腫瘍部、大きさが3cm以下の単発の転移性脳腫瘍部、手術が難しい頭蓋底転移のような脳内の小病変部、動脈奇形部又は静脈奇形部等の如き患部の治療に有効とされている。
【0004】かかる定位多軌道照射法が実施可能な放射線治療装置として、従来、位置決め手段を用いて照射ヘッドを患部に対して位置合せした後に放射線を照射するものが知られているが、医者又は補助者が照射野を直接見て病巣の位置を確認した上で放射線を照射するものではないので、放射線の高精度照射は望めない。
【0005】これに対し、特表平6−502330号公報及び特表平8−504347号公報には、X線CT装置の回転ドラム内にリニアアクセラレータを組込むことで、放射線治療装置をX線CT装置と組み合わせた構成が開示されている。この構成では照射野の画像を確認しながら放射線の照射を行うことが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの装置は、リニアアクセラレータをX線CT装置の回転ドラム内に組み込んだ構造であることから、1回転軸周りの照射に止まると共にアイソセントリック照射のみに限られている。
【0007】本発明の目的は、優れた治療性能を有する放射線治療装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、電子銃、線形加速器及びターゲットを有する照射ヘッドと、この照射ヘッドを予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構と、前記照射ヘッドに供給すべきマイクロ波電力を発生する、静止部に配置されるマイクロ波発振器と、一端部が前記マイクロ波発振器に電磁気的に接続され、他端部が前記線形加速器に電磁気的に接続される導波管部と、前記照射ヘッド内に位置する前記導波管部に設けられるRF窓とを具備する放射線治療装置、である。
【0009】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1〜図3に示すように、本実施形態に係る放射線治療装置6は、患者4を載置する天板8を有する寝台7と、患者4に設定され得る照射野5に治療用放射線を照射する照射ヘッド10と、患部である照射野5の断層画像を取得するX線CT装置装置30とを備える。
【0010】天板8は寝台7に内蔵された駆動機構により寝台長手方向(X軸方向)と寝台幅方向(Y軸方向)と寝台上下方向(Z軸方向)との3軸に移動可能である。また、天板8は画像取得装置の撮影画像データに基づいて患部である照射野5がアイソセンタ5aに位置するように、システム制御装置80により統合制御された天板8により位置が調整されるようになっている(図9参照)。天板8は、X線CT装置装置やPET(Positron Emission Tomography)装置等の画像取得装置に適した材質及び形状が選定される。
【0011】照射ヘッド10は、傾倒軸26による(G1)回転、周回移動機構68および第1及び第2の首振り機構131,132によりアイソセンタ5aを中心とする上半部後方の二分の一球(1/2球)の範囲内で任意の照射位置がとれるようにガイドレール9に可動に支持されている。周回移動機構68は、図2に示すように照射ヘッド10をガイドレール9に沿って周回移動(H1)させるものであり、ラック・アンド・ピニオン方式やベルト方式を採用することができる。図10と、図11R>1(a)〜(d)に示すように第1の首振り機構131は照射ヘッド10を第1の軸S1まわりに首振り動作させるサーボモータを備え、第2の首振り機構132は照射ヘッド10を第2の軸S2まわりに首振り動作させるサーボモータを備えている。
【0012】また、照射ヘッド10は、図2に示す導波管系11のロータリRFカプラ16に首振り可能に連結される。図11(a)に示すジンバル機構上の導波管51及びロータリRFカプラ50によりマイクロ波発生源70(クライストロン)に接続されている。
【0013】第1の首振り機構131は、図2及び図11R>1(a)に示すように、照射ヘッド10をガイドレール9上でロータリRFカプラ16まわりに首振り(S1)させる機構である。ロータリRFカプラ16は、照射ヘッド10が首振りしたときの慣性力が小さくなるように、照射ヘッド10の慣性中心をほぼ通る軸上に設けられている。
【0014】第2の首振り機構132は、図1及び図11R>1(a)に示すように、照射ヘッド10をガイドレール9上でロータリRFカプラ50A,50Bまわりに首振り(S2)させる機構である。ロータリRFカプラ50A,50Bは、照射ヘッド10が首振りしたときの慣性力が小さくなるように、照射ヘッド10の慣性中心をほぼ通る軸上に設けられている。ちなみに、照射ヘッド10は、全長が500〜600mm、幅500mm×深さ300mm、重量が60〜80kgである。
【0015】ガイドレール9は、図2及び図3に示すように天板8より上半分の円弧状をなす半円リングからなり、天板8を幅方向に跨ぐように設けられている。このガイドレール9は、傾動機構により傾動可能に支持されている。傾動機構は、ガイドレール9を図2の傾動軸26まわりに0°〜180°の範囲内で図1に示すように傾ける(G1)ものである。ガイドレール9は、例えばステンレス鋼のように剛性の大きい材料でつくられ、幅が200〜400mm、厚みが20〜50mm、アイソセンタ5aからの半径が800〜1000mmである。
【0016】上記の2軸の駆動(G1,H1)により照射ヘッド10はアイソセンタ5aを中心とする1/2球殻上でアイソセントリックな動きが可能になる。さらに、上記の2軸の駆動(S1,S2)により照射ヘッド10は1/4球殻上で擬似的にノンアイソセントリックな動きが可能となる。この擬似ノンアイソセントリック動作は、照射ヘッド10の慣性中心まわりの首振り運動であるため、アイソセントリック動作と比べて格段に素早い動きとなる。擬似ノンアイソセントリックな高応答性の迅速な追尾モーションにより、例えば心鼓動等の早い動きに対しても照射ヘッド照準を高応答かつ精密に追従させることが可能となる。
【0017】X線CT装置30に、図1に示す画像取得装置傾射機構20により所定角度に傾斜した(例えば垂直軸に対して20°〜30°の傾き)姿勢で支持されている。画像取得装置傾斜機構20を駆動させると、X線CT装置30は軸まわりに傾動(K1)し、画像取得用X線3bの照射角が変えられるようになっている。なお、X線CT装置30とガイドレール9は機械的に密に結合されており、共通の座標基準を持つ。
【0018】X線CT装置30がガイドレール9及び照射ヘッド10が干渉しないように制御される。画像取得装置としてX線透視装置を用いる場合には、分解能やコントラストの点で問題があり、小型の金プレートを照射野の付近に埋め込んでマーカとしてこれを基準に照射野を標識する方がよい。
【0019】図2中に示すSAD(Source Axis Distance)は、アイソセンタ5aから照射ヘッド内のターゲット121(図4(a)参照)までの距離に相当するものである。本実施形態では基準となるSAD1を80cm〜100cmに設定している。
【0020】図6、図7及び図8に示すように照射野の移動に追従して照射するには、画像データから得られるシフト量DV1,DV2と所定の算式とを用いてS1首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ1とS2首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ2とをそれぞれ求める。該演算結果に従って首振り機構131,132の駆動をそれぞれ制御し、照射ヘッド10を微小変位角θ1および微小変位角θ2の分だけ高速首振りさせる。これにより頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて動く腫瘍等の患部5に対して照射ヘッド10の照準が迅速かつ高応答に追随し、放射線を高精度に照射することが可能となる。
【0021】図2中の符号14a〜14c,16は、加速用マイクロ波を軸回転で伝えるロータリRFカプラ50を内部に有する導波管系である。図12に示すように、リンクアーム13,15のなかには導波管51が設けられ、関節部14a〜14c,16内のロータリRFカプラ50により導波管51が電磁気的に連通している。図13に示すように、ロータリRFカプラ50はフランジ継手53,54により導波管51の各々に接続されている。符号21はサーキュレータ、22はダミーロードである。
【0022】また、図14に示すように、導波管51の導波路55a,55bはロータリRFカプラ50の回転部材56,57に取り囲まれた回転スペースに連通し、この中を管内モード2a(2b)でマイクロ波が導かれるようになっている。なお、図中にて符号58は軸受を示し、符号59はλ/4波長チョークを示す。このようなロータリRFカプラ50と導波管51との組み合わせにより、床等に固定されたクライストロン等の加速マイクロ波源70から移動する照射ヘッド10へ加速用のマイクロ波を円滑に供給することができる。
【0023】導波管系11は、第1の関節部14a、第1のアーム12、第2の関節部14b、第2のアーム13、第3の関節部14c、第3のアーム15、第4の関節部16、照射ヘッド10を互いに連結してなるリンク機構である。第1の関節部14aのみがY軸に沿って設けられ、第2〜第4の関節部14b,14c,16はそれぞれX軸に沿って設けられている。なお、リンク先端の照射ヘッド10は、周回移動機構68によりガイドレール9に沿ってスライドし、また、第1の首振り機構131により第4の関節部16まわりに首振りされるようになっている。
【0024】システム制御装置80は、X線CT装置装置30から照射野5のCT断層診断画像データが入力されると、このデータに基づいて周回移動機構68、レール傾動機構、天板8の駆動をそれぞれ制御することにより、アイソセンタ5aにある照射野5に照射ヘッド10の照準を合わせる。
【0025】さらに、照射野5が動いた場合には、システム制御装置80はX線CT装置装置30からの入力データに基づいて画像追尾のための演算を行い、その演算結果に基づいて第1及び第2の首振り機構131,132の動作をそれぞれ制御して照射ヘッド10を首振りさせる。なお、照射ヘッド10の首振り動作中はインターロックがはたらいて放射線が照射されないようになっているので、近傍部位の被曝量は最小限に抑えられる。
【0026】なお、本実施形態では検査装置としてX線CT装置装置30を放射線治療装置と組合せた場合について説明したが、本発明はこれのみに限定されることなく、X線透視装置、特殊な用途ではPET(Positron Emission Tomography)等の他の非磁気型画像取得装置を放射線治療装置と組合せることが可能である。
【0027】通常型のX線透視装置の場合には、異なる目視線をもつ2つ以上のカメラが必要である。また、コントラストの低い軟部組織等はイメージングできないため、骨組織等のコントラストの高いランドマークをもとに予めX線CT装置やMRI等で照射野の位置決めができるようにしておくか、小型の金プレート等を照射野付近に埋め込んでマーカとするか、若しくはDSA(Digital Subtraction Angiography)のように造影剤や差分画像処理により画像強調できるような工夫が必要となる。また、X線CT装置やPETではリアルタイムイメージングが必要であり、高速のリアルタイム画像再構成計算が必要となる。
【0028】次に、図4(a)〜(c)、図5及び図10R>0、図11(a)〜(d)を参照しながら照射ヘッド10について詳しく説明する。
【0029】照射ヘッド10は、4MeV〜10MeVの電子エネルギを有し、治療用のX線3aを発生する小型の電子リニアックからなり、アイソセンタ5aを中心とする上半後部の1/2球殻の範囲内で三次元移動して多方向から放射線を照射できるように、ガイドレール9に可動支持されるとともに、導波管系11のロータリRFカプラ16に首振り可能に連結されたものである。
【0030】照射ヘッド10は、カバー101で本体部が覆われ、本体部の先端側に放射線を出射するための出射部120が取り付けられている。照射ヘッド本体部を覆うカバー101内には電気回路/冷却水回路116、加速器110、RF窓52、導波管51、ロータリRFカプラの一部50B、排気管107、真空ポンプ112、ターゲット排気室119、ターゲット121、冷却板122が設けられている。
【0031】加速器尾部の絶縁碍子103から外部電源に接続されたケーブル(図示せず)がカバー101内に導入され、電子銃104のカソード105に接続されている。このカソード105と向き合ってアノード106が配置されている。カソード105とアノード106との間は真空ポンプ112に連通する排気管107により排気されるようになっている。電子銃104の電源はシステム制御装置80により制御されるものである。なお、電子銃104から加速器110に続き、さらに加速器110から出射部120に続いている。なお、絶縁碍子103から加速器110の先端までの長さは約360mmである。
【0032】図5に示すように、電子銃104のアノード106の中央孔は加速器110のバンチャ空洞109に連通している。加速器110は、電子銃104から出射された電子線を加速させ、高エネルギの電子ビームをX線ターゲット121に衝突させるものである。加速器110の内部には電子ビーム通過用の中央孔を有する加速空胴111bがつながって配置されている。加速空胴111bはサイドカップルキャビティ111aを介して左右一対の側方排気管108にそれぞれ連通し、左右一対の側方排気管108は真空ポンプ112に接続されて真空排気されるようになっている。すなわち、加速器110の内部は側方のサイドカップルキャビティ111aおよび側方排気管108を介して真空ポンプ112により真空排気されるものである。
【0033】加速器110には導波管51が連通している。導波管51はセラミック製のRF窓52およびロータリRFカプラ50A,50Bを経由してマイクロ波発振器70に連通している。RF窓52は、導波管51内に封入されたSF6ガスの漏洩を防ぐとともに、マイクロ波を加速器110へ導入させる入口である。なお、マイクロ波発振器70は出力安定性に優れたクライストロン方式のものである。マイクロ波発振器70の電源回路はシステム制御装置80に接続されている。
【0034】出射部120は、カバー101で覆われた照射ヘッド本体部の先端に設けられ、X線ターゲット121、ターゲット冷却板122、一次コリメータ123、フラットニングフィルタ124を備えている。電子銃104から加速器110を経てフラットニングフィルタ124に至るまでは電子ビームの光軸に沿って直列に並び、加速された電子線はターゲット排気室119を通って出射部120のターゲット121に入射するようになっている。
【0035】X線ターゲット121は、高エネルギの加速電子が入射して制動ふく射X線を出射するものであるため熱損傷を受けやすく、その対策として冷却板122が取り付けられ、冷却されている。なお、ターゲット121にはタングステン、タンタル等の高融点金属単体またはこれらの合金を用いる。
【0036】一次コリメータ123は、タングステンなどの放射線に対する遮蔽性に優れ、かつ熱中性子発生の少ない材料でつくられ、ターゲット121からのX線をフラットニングフィルタ124に導くものである。
【0037】フラットニングフィルタ124は、ターゲット121から出射されるX線の強度を平均化して均一なドーズ分布をもつ治療用放射線3aとするためのものである。
【0038】さらに、出射部120の先端側には二次コリメータ125および線量計測用電離箱126が取り付けられている。二次コリメータ125は、治療用のX線3aが透過できないタングステンなどの遮蔽性の高い材料でつくられ、中空部を通って線量計測用電離箱126に治療用放射線3aが送られるようになっている。この二次コリメータ125は一次コリメータ123の端面部に着脱可能にネジ込まれている。
【0039】線量計測用電離箱126は、二次コリメータ125の先端に取り付けられ、所定成分のガスが封入された電離箱であり、放電電荷を検出する検出回路(図示せず)が接続されている。この検出回路はシステム制御装置80の入力側に接続されている。システム制御装置80は、線量計測用電離箱126からの入力信号に基づいて照射ヘッド10から出射されるX線の線量を算出し、患者4が受ける治療用ドーズデータとしてメモリに保存するようになっている。
【0040】次に、図9を参照して本実施形態装置の制御システムについて説明する。
【0041】本実施形態装置の制御システムは、天板8、照射ヘッド10、X線CT装置30、信号処理装置31、マイクロ波発振器70、システム制御装置80、システムユーティリティ90からなり、システム制御装置80が全体を統括して制御するシステム構成となっている。
【0042】システム制御装置80は、システム制御計算機、システム管理アルゴリズム、画像追尾アルゴリズム、治療計画アルゴリズム、治療管理アルゴリズム、グラフィカルユーザインターフェイス、治療データベース、インターロックアルゴリズム及びシステムモニタを含むものであり、これを中心として他のシステムブロックがそれぞれ接続され、入出力信号のやりとりがなされるようになっている。
【0043】X線CT装置30は、信号処理装置31を経由してシステム制御装置80に接続されている。これにより画像診断が治療中にリアルタイムでなされ、医師はコンピュータディスプレイ上に表示された診断画像を観ながら治療を行うことができるようになっている。
【0044】マイクロ波発振器70は、クライストロンモジュレータ・アンド・リニアックシステム制御装置、クライストロン及びRFドライバを具備している。クライストロンは、導波管系11を介して照射ヘッド10に接続され、加速器110にマイクロ波を供給する供給源にあたる。
【0045】照射ヘッド10のアイソセントリック駆動機構および首振り駆動機構の各ドライバはシステム制御装置80に接続され、アイソセントリック照射時における照射ヘッド10の周回駆動68および擬似ノンアイソセントリック照射時における照射ヘッド10の2軸首振り駆動がそれぞれ制御されるようになっている。
【0046】次に、図10〜図11および図6〜図8を参照して照射ヘッドの2軸の首振り機構について詳しく説明する。
【0047】図10に示すように、照射ヘッドカバー101のジンバル構造の支持フレーム102に支持されている。支持フレーム102は照射ヘッド10の慣性中心を含むS1軸およびS2軸が通る位置座標に取り付けられている。
【0048】図11Aに示すように、支持フレーム102には、導波管系11のロータリRFカプラ16、一対のロータリRFカプラ50A,50B、S1首振り駆動用サーボモータ131、S2首振り駆動用サーボモータ132がそれぞれ各辺に取り付けられている。
【0049】導波管系11のロータリRFカプラ16は支持フレーム102の一方側長辺の中央に取り付けられ、これと向き合うようにS1首振り駆動用サーボモータ131の駆動軸131aがフレーム102の対向長辺の中央に取り付けられている(図11B参照)。サーボモータ駆動軸131aを回転駆動させると、図8に示すようにS1ドライブ軸まわりに照射ヘッド10が首振りするようになっている。
【0050】また、一対のロータリRFカプラ50A,50Bは支持フレーム102の一方側短辺の中央に取り付けられ(図11(d)参照)、これと向き合うようにS2首振り駆動用サーボモータ132の駆動軸132aがフレーム102の対向短辺の中央に取り付けられている(図11C参照)。すなわち、サーボモータ132の本体は支持フレーム側のブラケット102aに固定支持され、モータ駆動軸132aは軸受133を介して支持フレーム102に回転可能に支持されている。サーボモータ駆動軸132aを回転駆動させると、図7に示すように、S2ドライブ軸まわりに照射ヘッド10が首振りするようになっている。
【0051】図11Aに示すように、導波管系11の各リンクアーム13,15内には導波管51が設けられ、各関節部14,16内にはロータリRFカプラ50が設けられ、さらに一対のロータリRFカプラ50A,50Bを通って照射ヘッド内の加速器110にマイクロ波が導入されるようになっている。
【0052】図6〜図8に示すように、画像診断データから得られるシフト量DV1,DV2と所定の算式とを用いてS1首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ1とS2首振りドライブ軸まわりの微小変位角θ2とをそれぞれ求め、その演算結果に従って首振り機構131,132の駆動をそれぞれ制御し、照射ヘッド10を微小変位角θ1および微小変位角θ2の分だけ高速首振りさせる。そして、首振り動作中に照射ヘッド10から放射線を出射する。これにより頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて動く腫瘍等の患部5に対しても照射ヘッド10の照準が迅速かつ高応答に追随する。ちなみに、診断画像の処理時間を含めて0.1秒以内に照射ヘッド10を高速で首振り動作させることができ、照射野(患部)の動きに対して迅速に追随させることができる。
【0053】次に、図15のタイミングチャートを参照しながら本実施形態の放射線治療装置の動作について、特に治療用放射線の直接線、漏洩線及び散乱線の画像取得装置検出器への影響を防止し、イメージングと治療用放射線の照射の時分割リアルタイムを実現する方法を説明する。
【0054】先ず放射線治療装置6のメインスイッチをONすると、治療用寝台システム7、照射ヘッド10、X線CT装置30、マイクロ波発振器70、システム制御装置80、システムユーティリティ90の電源がそれぞれ待機状態となる。治療用寝台システム7が作動して患者4が天板8とともに治療エリア内に移動し、画像取得装置を作動させて患部5が治療装置のアイソセンタ5aに一致するように天板8を動かせて位置合わせする。このアイソセントリック位置合わせ完了後、X線CT装置30によるリアルタイム画像診断と照射ヘッド10による放射線治療とを開始する。
【0055】図15中の時間t0において、X線CT装置30は、照射野5に向けて画像取得用X線3bの照射を開始する。その透過像を図15に示す時間t0〜t1において取得画像として検出する。なお、被曝を最小限度とするため画像取得用X線3bの照射時間も時間t0〜t1の間に限定する。また、少なくとも画像取得用X線3bを照射している時間t0〜t1において、治療用放射線3aの直接線、漏洩線及び散乱線が検出器に影響を与えないようにするため、照射ヘッド10は、治療用放射線3aを出射しないようにインターロックされている。
【0056】検出された取得画像は、時間t1〜t2において取り込まれる(収録される)。取り込まれた取得画像の追尾画像データなどの情報は、時間t2〜t3において信号処理装置31やシステム制御装置80で処理され、処理画像をディスプレイ上に表示される。また、この画像追尾計算の結果、処理された情報は、位置補正データとして、首振り機構131,132に送られる。そして、時間t0〜t3までと同じ画像取得から画像処理までのサイクルが、時間t3以降、繰返される。
【0057】時間t3〜t5にかけて次の画像検出と画像取り込みが行なわれている間に、首振り機構131,132の首振りサーボは、位置補正データとして送られてきた画像追尾計算の結果を基に、微小首振り角θ1及びθ2、駆動される。首振り機構131,132を駆動させている時間t3〜t5の間、治療用放射線3aを照射しないように、照射ヘッド10は、安全性を考慮してインターロックされている。
【0058】首振り機構131,132が停止する時間t5において、照射ヘッド10のインターロックは、解除され、治療用放射線3aは、照射されはじめる。治療用放射線3aの照射時間は、次に首振り機構131,132が駆動されるまでの、時間t5〜t6である。また、この時間t5〜t6と同期して、時間t3〜t5の間に取得された取得画像の追尾画像データの画像追尾計算が実行される。時間t6において、3回目の画像検出と2回目の首振りサーボ駆動が開始され、2回目の画像追尾計算と1回目の治療用放射線3aの照射が完了する。
【0059】治療用放射線3aの照射停止後、時間t6に画像取得用X線3bの照射を開始し、時間t6から始まる次の取得画像処理サイクルに移行する。時間t0から3回目の画像取り込み後のタイミングt8に照射ヘッド10のインターロックが解除され、2回目の治療用放射線3aの照射が再開される。
【0060】このように、画像処理のサイクルと首振り及び照射のサイクルとは、互いにオーバーラップしている。ある画像処理のサイクルの間に行なわれる首振りヘッドの駆動及び治療用放射線3aの照射を行うサイクルは、この画像処理のサイクルの1つ前に行なわれた画像処理のサイクルの情報に基づいて行なわれる。
【0061】なお、心鼓動などの早い動きに追従する場合、画像検出の開始から、照射ヘッド1000を首振りさせて、治療用放射線3aを照射し終わるまでの時間t0〜t6は、0.1秒以内が一つの目安とされている。そこで、図15に示すタイムチャートは、画像処理の1サイクル及び首振り及び照射の1サイクルをそれぞれ0.05秒とした場合を示している。したがって、図15R>5に示すタイムチャート中の時間は、一例であって、これ以外の時間間隔で実施されてもよい。
【0062】また、画像取得や画像追尾計算に異常が生じた場合、その時点で治療用放射線3aの照射を停止するようにインターロックをかけ、安全性を向上させる。なお、本実施形態の放射線治療装置6では、照射ヘッド10の首振り及び位置決めが正常に行われたことを確認してから治療用放射線3aの照射がなされるよう構成されている。
【0063】このように本実施形態の放射線治療装置6において、画像検出のサイクル、画像取込のサイクル、画像追尾計算のサイクル、それに基づくヘッド首振り制御のサイクル、治療用放射線3aの照射のサイクルが繰返され、寝台の1/2球殻の位置から照射野5への追従照射による治療が行われる。
【0064】次に、図15及び図16を参照して本発明の擬似ノンアイソセントリック型放射線治療装置を用いた治療の手順について説明する。
【0065】放射線治療においては医師が治療計画を立てる。その治療計画は術前に行われる種々の検査に基づくものであるが、さらに医師は手術中において本発明の装置を用いることにより患部の病巣を直接的にリアルタイムで画像診断することにより高精度で確実性の高い放射線治療を行うことができる。
【0066】図16の(a)に示すように、X線CT装置30のみを用いて照射野5及びその近傍領域の診断画像を構成する。システム画面で治療野5の各断面図を確認して、画像追尾のための輪郭線を定義する。治療開始に先立って照射野5のマッピングは終了しており、これを参考に複数のスライスで照射野5の輪郭を定義する。
【0067】図16の(b)に示すように、放射線治療装置の画像追尾システムが、実際の照射野5の画像の輪郭抽出を行い、定義された輪郭線とのパターンマッチングを行って画像追尾を開始する。医師は画像追尾状況を目視で確認する。
【0068】図16の(c)に示すように、画像追尾が安定した後に、医師はマスターアームスイッチ(Master Arm SW)を操作して、システムをARMED状態にする。システムは照準をクロスヘアラインで照射ボリュームを赤色で画像上に表示する。画像追尾が継続しているため、照準及び照射ボリュームは照射野の移動とともに自動的に追従する。
【0069】図16の(d)に示すように、医師のトリガ操作で治療用放射線3aの照射を開始する。治療計画の段階で予定の照射時間は決まっており、画面上ではカウントダウンが開始され、カウントゼロ(時刻t4)になると治療用放射線は自動的に停止する。画面上には線量分布が継続的に表示され、医師はこれを確認しながらトリガを引き続けて照射を継続する。システムは画像のサンプリング、治療用放射線の照射を高速に交互に続け、画像追尾と治療用放射線の照射とをリアルタイムで継続する。カウントダウンがゼロになる前であっても、医師がトリガを離せば、そのタイミングで直ちに治療用放射線は停止するので、安全性は十分に確保される。
【0070】図16の(e)に示すように、医師はマスターアームスイッチ(Master Arm SW)をSAFE位置としてシステムを安全な状態にし、照射ヘッド10を次の照射位置へ移動させる。各ポータルにおける照射終了後と一連の照射終了後に医師は累積被曝線量の総計にあたるトータルドウズ(Total Dose)を確認する。累積線量および1クール内の累積線量分布が画面に表示され、患者毎に作成される治療ファイルに記憶される。
【0071】本実施形態の治療装置によれば、画像処理時間を含めて0.1秒以内に照射ヘッドを高速首振り動作させ、照射野(患部)の動きに対して追随させることができるので、高精度に放射線を照射することができる。このように患部の動きに対応して高応答かつ高精度にノンアイソセントリック照射することが可能であるので、頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて腫瘍等の照射対象が移動する部位を治療対象とすることができるようになる。
【0072】本実施形態によれば、照射ヘッド部全体のアイソセントリックな動きに加えて、照射ヘッド部自体をその慣性中心等の適当な回転中心のまわりに1軸又は2軸の首振り動作することにより、擬似的にノンアイソセントリックな照射治療が可能となり、その効果は完全にノンアイソセントリックな照射治療装置に対して全く遜色の無いレベルものが得られる。また、所要の首振り角は、約3°(±1.5°)であり、呼吸や心鼓動による照射野の移動に対応して高速に追従可能である。
【0073】本実施形態によれば、剛性の点で問題の多い片持型のロボットアームと異なり、高強度・高剛性の照射ヘッド支持構造を採用することができ、高い絶対精度を機械的に保証することが可能となる。このため、ロボットアームを使用して所要の位置決め精度を確保する場合に必要となるティーチングが不要となり、効率的な治療が可能となる。
【0074】ノンアイソセントリックな照射治療に所要の自由度を遙かに超える過剰な自由度を持つ汎用の産業用ロボットアームを適用するのは患者の安全性の点で問題がある。即ち、ロボットアームの誤動作等の事故の際に、ロボットアームもしくはその先端の照射ヘッドが患者に接触して、患者に対して外傷的な危害が及ぶ可能性がある。これに対して、本実施形態では、照射ヘッド支持機構及び照射ヘッド自体が機械的に可動範囲が制限されており、患者に対する絶対的な安全性が確保できる。
【0075】従来技術では、照射治療中に照射野をリアルタイムに監視することができず、推定に基づく照射を余儀なくされたが、本発明によれば、通常のX線透視装置や、X線CT装置、PET、DSA等の画像取得装置で、照射治療中に照射野をリアルタイムで監視することが可能となり、信頼性・安全性の高い照射治療が可能となる。
【0076】また、リアルタイムに得られる上記の照射野画像を基にして画像追尾を行い、移動する照射野への追従照射が可能となる。
【0077】本発明の実施形態に示される医師とのマンマシン・インタフェイスにより、安全性・信頼性に優れた確実な放射線治療が可能となる。
【0078】(第2の実施形態)次に、図17および図1818を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0079】本実施形態の装置6Aでは、回転ドラム(治療用ガントリ)99上に治療用の照射ヘッド10、画像取得用X線源(CT用X線管)97およびセンサアレイ98を搭載している。すなわち、装置全体構造としては、上記第1実施形態の回転型のX線CT装置装置30のドラム部の上に照射ヘッド10を装備した構造としている。回転ドラム(治療用ガントリ)99の回転中心はアイソセンタ5aとされている。照射ヘッド10は、4MeV〜10MeVの電子リニアックからなり、図示のように2軸(S1,S2)に首振りでき、これらの首振り動作によってドラム回転軸周りにノンアイソセントリックな照射が可能である。なお、S2軸の首振りには、ドラムの回転に伴う照準角度補正も含める必要がある。一方、S1軸の首振りに関しての照準角度補正は不要である。
【0080】画像取得用X線源97およびセンサアレイ98は照射ヘッド10と干渉を生じない箇所にそれぞれ取り付けられ、画像取得用X線源97とセンサアレイ98とは互いに向き合っている。検出用のX線センサアレイ98はマルチ配列(Multirow)タイプの多列センサである。なお、X線CT装置やPETではリアルタイムイメージングが必要であり、高速のリアルタイム画像再構成計算処理が必要となる。
【0081】(第3の実施形態)次に、図19を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0082】本実施形態の装置6Bでは、回転ドラム(治療用ガントリ)99上に照射ヘッド10、通常のX線透視装置を構成する2組のX線源97A,97B及びセンサアレイ98A,98Bのセットが装備されている。すなわち、上記第2実施形態とは異なり、回転ドラム99にはX線CT装置用のX線源とセンサアレイが装備されているのではなく、本実施形態では通常のX線透視装置を構成する2組のX線源97A,97B及びセンサアレイ98A,98Bを装備しており、X線透視装置のセットの目視線は互いに一致しないようになっている。これにより患者4の体内のランドマーク若しくは微小の金プレート等のマーカのX線透視画像を2軸方向について取得し、患部位置の動きを把握するようにしている。なお、X線透視画像の画像強調方式としては、造影剤を用いてDSAのような画像処理を行う方式も考えられる。
【0083】照射ヘッド10は、4MeV〜10MeVの電子リニアックからなり、図示のように2軸(S1,S2)に首振りでき、これらの首振り動作によってドラム回転軸周りにノンアイソセントリックな照射が可能である。なお、S2軸の首振りには、ドラムの回転に伴う照準角度補正も含める必要がある。一方、S1軸の首振りに関しての照準角度補正は不要である。
【0084】(第4実施形態)次に、図20〜図28を参照して本発明の第4実施形態に係る放射線治療装置を説明する。
【0085】図20に示すように、本実施形態の放射線治療装置は、治療室200側に配置される要素と、隔壁201により治療室200から隔離された操作室202に配置される要素とからなる。
【0086】治療室200に配置される要素は、支持移動機構210と、この支持移動機構210により予め定めた第1球面座標上で支持され且つ移動する照射ヘッド220と、マイクロ波発振器230と、照射ヘッド220内の治療用放射線発生部221にマイクロ波発振器230で発生させたマイクロ波電力を伝送するマイクロ波伝送系である固定導波管部240、移動導波管部250及びヘッド内導波管部260と、寝台部270とである。
【0087】操作室202に配置される要素は、システム制御卓280である。
【0088】支持移動機構210は、治療室200の床に固定される一対の基台211,212と、この基台211,212に設けられた一対の傾動機構213,214と、照射ヘッド220を支持且つ移動させるための半円弧状軌道が形成されたガイドレール215と、一対のウエイト216,217とを含む。すなわち、ガイドレール215の中間部に前記軌道215Aが形成されると共にその両端215B1,215B2は、基台211,212に設けた傾動機構213,214により支持される。傾動機構213,214を駆動することにより、アイソセンタ300を中心に符号301に示す方向にガイドレール215は回転駆動される。
【0089】照射ヘッド220は、電子銃、加速器、ターゲット、コリメータ、真空ポンプ等からなる治療用放射線発生部221と、ラック・アンド・ピニオン、ベルト及びプーリ等の機構により照射ヘッド220を軌道215Aに沿って符号302に示す方向に周回移動させる周回移動機構222と、治療用放射線発生部221を符号303に示す直行2方向に首振りさせるジンバル機構223とを有する。ここに、傾動機構213,214及び周回移動機構222の動作により、照射ヘッド220を、アイソセンタ300をアイソセントリック回転させることができる。また、後述するジンバル機構223の動作は、照射ヘッド220を疑似ノンアイソセントリックな回転をさせることができる。
【0090】マイクロ波発振器230は、クライストロンの如きマイクロ波電子管からなる。このマイクロ波発振器230、マイクロ波伝送系及び治療用放射線発生部221は、従来の小型電子リニアックの如き放射線治療装置では回転体である照射ヘッドを含むガントリ内に一体化されて組み込まれているものがあったが、本実施形態の放射線治療装置においては、重量物であるマイクロ波発振器230を治療室200の床に設置することで、軽量化された照射ヘッドを実現している。このような軽量化された照射ヘッド220であることと、特徴的な支持移動機構210との組合せにより、照射ヘッド220を、治療室200の空間上で規定される球面座標系上での任意位置への移動を可能としている。
【0091】移動導波管部250は、第1,第2直線形導波管251,252と、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255を含むパンタグラフ機構であり、固定導波管部240とヘッド内導波管部260とを連結する。すなわち、同種の第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255のうち、代表として第2ロータリRFカプラ254を第1,第2直線形導波管251,252を含めて、図21を参照して説明する。
【0092】図21において、第2ロータリRFカプラ254は、一端側に第1直線導波管251が接続される第1筒体254Aと、この第1筒体254Aと同一の軸芯を持ち第1筒体254Aの他端側に一端側がベアリング254Cを介して回転可能に組み合わされ且つ他端側に第2直線導波管252が接続される第2筒体254Bとを含む。尚、第1,第2筒体254A,254Bの軸心方向と、第1,第2直線導波管251,252の伸長方向とは直角である。
【0093】また、第1,第2筒体254A,254Bの開口部には、2つの開口を形成してなる帯域フィルタ板254Dが設けられている。さらに第1筒体254Aと第2筒体254Bとの間には磁性シール機構254Eが設けられている。この磁性シール機構254Eは気密封止のためOリングに代わるものであり、一対の電磁石254E1,254E2により磁性流体254E3を挟みこんだ構造である。このような磁性シール機構254Eを第1筒体254Aと第2筒体254Bとの間に設けていることにより、従来のような劣化に伴う定期交換を必要とするOリングに比べて、保守管理の面で有利である。
【0094】このような第2ロータリRFカプラ254及び第1,第2直線形導波管251,252によれば、第1直線導波管251の伸長方向から伝送されたマイクロ波電力は、第2ロータリRFカプラ254の入口で直角に曲げられて、出口で再度直角に曲げられて第2直線導波管252の伸長方向に伝送される。また、第2ロータリRFカプラ254の第1筒体254A,第2筒体254Bは互いに回転可能であるので、第1,第2筒体254A,254Bに直角に接続された第1直線導波管251と第2直線導波管252とを互いに異なる方向に回転させることができる。
【0095】従って、移動導波管部250は、第2ロータリRFカプラ254に一端部が接続された第1直線導波管251の他端部を、第2ロータリRFカプラ254と同様の構造を有しガイドレール215の端部に固定された第1ロータリカプラ253に接続し、第2ロータリRFカプラ254に一端部が接続された第2直線導波管252の他端部を、第2ロータリRFカプラ254と同様の構造を有し照射ヘッド220に固定された第3ロータリRFカプラ255に接続しているので、照射ヘッド220の移動に伴って、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255それぞれの第1,第2筒体254A,254Bが回転して第1,第2直線導波管251,252を、第2ロータリRFカプラ254を中心に開閉することができる。これは、第1,第2直線形導波管251,252と、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255とを含む移動導波管部250が、パンタグラフ機構であることを示している。
【0096】また、図22は、2つのロータリRFカプラ254,254′と、5本の導波管とを用いて、曲がった伝送経路を形成する例を示している。この例では、図21と同様のロータリRFカプラ254及び直線導波管256,257と、これと同様のロータリRFカプラ254′及び直線導波管256′,257′とを、ベンド形導波管258により連結した構成である。
【0097】このように、図21に示すロータリRFカプラ254及び複数の導波管の組を複数製作し、これらをベンド形導波管により連結することにより、曲がった伝送経路を容易に形成することができる。
【0098】次に図23を参照して、照射ヘッド220と移動導波管部250との関係を説明する。すなわち、図20においてアイソセンタ300を規定したとき、照射ヘッド220は、支持移動機構210により治療室200の空間上で規定される球面座標系上での任意位置への移動を可能としている。この球面座標系を図23において、P1(r1,θ1,φ1)で示すことができる。この場合、r1は、アイソセンタ300とターゲットとの間の距離とする。また、移動導波管部250の第3ロータリRFカプラ255は、照射ヘッド220が球面座標系P1(r1,θ1,φ1)で移動すると、この座標系に応動してP2(r2,θ2,φ2)で示す球面座標系上での移動が行われる。r2は、アイソセンタ300と第3ロータリRFカプラ255の軸心との間の距離とする。
【0099】このように本実施形態の放射線治療装置によれば、照射ヘッド220が移動する球面座標系P1に従って移動導波管部250を球面座標系P2上で移動することができ、移動導波管部250の動きを照射ヘッド220の動きに追従させることができる。
【0100】次に、固定導波管部240について説明する。すなわち、固定導波管部240は、移動導波管部250で用いた直線形導波管と同様の導波管、図24に示す両端にフランジ241,242が設けられたEベント形導波管243、図25に示す両端にフランジ244,245が設けられたHベント形導波管245、移動導波管部250で用いたロータリRFカプラ253,254,255と同様のロータリカプラを含み、マイクロ波発振器230と移動導波管部250とを連結する。図20R>0において、固定導波管部240は、マイクロ波発振器230の出力端から基台212内を通ってガイドレール215の端部215B2に設けた第1ロータリRFカプラ253に接続されている。
【0101】次に、図26(a)及び(b)を参照して、照射ヘッド220及びヘッド内導波管部260について説明する。照射ヘッド220は、図20で説明したように、治療用放射線発生部221、周回移動機構222、ジンバル機構223を有すると共にヘッド内導波管部260を付設している。なお、図26(a)及び(b)においては、図面に周回移動機構222は現れない。ジンバル機構223のフレーム223Aに直行2方向に首振りさせるサーボ機構223B,223Cが設けられており、周回移動機構で位置決めされた位置で、フレーム223A全体を首振りさせる。フレーム223Aには、電子銃221A,Cバンド定在波線形加速器の如き加速器221B,ターゲット221C,コリーメータ221D及び加速器221Bに連結される真空ポンプ221Eが搭載されている。
【0102】このような治療用放射線発生部221は、電子銃221Aから発射した電子線を加速器221Bより加速して、該加速した電子線をターゲット221Cに衝突させて放射線を発生させ、また該放射線をコリーメータ221Dで成形して、治療用放射線を照射ヘッド220から図示しない患者に照射する。また。
【0103】上記において加速器221Bにはヘッド内導波管部260が接続されている。このヘッド内導波管部260は、RF窓262を内部に有しつ且つ一端側が加速器221Bに接続されたロータリRFカプラ261を有する。このロータリRFカプラ261の他端側には、ベンド形導波管263が接続されている。RF窓262を内部に有するロータリRFカプラ261及びベンド形導波管263は、ジンバル機構223のフレーム223Aに搭載されている。
【0104】ここにRF窓262から加速器221Bまでの導波管部262Aと、電子銃221Aと、加速器221Bと、ターゲット221とによる空間は真空ポンプ221Eにより真空引きされる。また、RF窓262からマイクロ波発振器230までのヘッド内導波管部260、固定導波管部240及び移動導波管部250の内部は、SF6ガス等の電気絶縁ガスが、0.1〜0.2MPaGの圧力で充填されている。
【0105】また、周回移動機構側には、導波管265,266,267が設けられ、導波管267は移動導波管部250の第3ロータリRFカプラ255に接続されている。ここにジンバル機構223のフレーム223Aに搭載されたベンド形導波管263と、周回移動機構側に設けられた導波管265とは、詳細を図27に示すフランジ264A,264Bを有するフレキシブル導波管264により連結されている。なお、図24,図25R>5,図27におけるフランジは、図28に示すフランジ268を用いることができる。なお、ヘッド内導波管部260においても、曲った伝送路を構成する場合には、図24に示す両端にフランジ241,242が設けられたEベント形導波管243、図25に示す両端にフランジ244,245が設けられたHベント形導波管245を用いることができる。
【0106】図20に示す、寝台部270は、患者272を載置しつつZ方向(垂直方向)と、X,Y方向(水平方向)とのうち少なくとも一方に移動する天板271を有する。この天板271の移動は、寝台部270に備わる図示しない移動機構により行われる。
【0107】図20に示す、システム制御卓280は、傾動機構213,214、照射ヘッド220の治療用放射線発生部221、周回移動機構222、ジンバル機構223、マイクロ波発振器230及び寝台部270を、自動又は手動により々制御する。
【0108】以上のように構成された本実施形態の放射線治療装置によれば、次のよう効果がある。すなわち、重量物であるマイクロ波発振器230を治療室200の床に設置して軽量化された照射ヘッド220を実現し且つ特徴的な支持移動機構210との組合せにより、照射ヘッド220を、治療室200の空間上で規定される球面座標系P1上での任意位置に移動することが可能となる。
【0109】また、本実施形態の放射線治療装置によれば、照射ヘッド220が移動する球面座標系P1に従って移動導波管部250を球面座標系P2上で移動することができ、移動導波管部250の動きを照射ヘッド220の動きに追従させることができ、任意の位置における照射ヘッド220に対しマイクロ波電力を容易に供給することができる。
【0110】さらに、移動導波管部250は、第1,第2直線形導波管251,252と、第1,第2,第3ロータリRFカプラ253,254,255とによりパンタグラフ機構を構成しているので、第2ロータリRFカプラ254を中心に第1直線形導波管251と第2直線形導波管252とを容易に開閉し且つ移動量を吸収することができ、患者272への干渉を未然に防止とすることができる。
【0111】また、固定導波管部240及びヘッド内導波管部260は、直線形導波管と共にEベント形導波管243、Hベント形導波管245、ロータリRFカプラ253,254,255と同様のロータリRFカプラを用いて構成しているので、曲がった伝送路を最短距離で形成することができ、小型化に寄与するものとなる。
【0112】さらに、ロータリRFカプラ254の第1筒体254Aと第2筒体254Bとの間には磁性シール機構254Eを設けていることにより、従来のOリングに比べて、摩耗に伴うリーク発生を抑制することができ、また劣化に伴う交換サイクルを延ばすことができる。
【0113】また、ヘッド内導波管部260におけるジンバル機構223に搭載されるベンド形導波管263と、周回移動機構側に設けられた導波管265とは、フレキシブル導波管264により連結しているので、ジンバル機構223によりベンド形導波管263を含む治療用放射線発生部221が首振り動作により微少角変位しても、この首振り動作の伴う治療用放射線発生部221の位置ずれは容易にフレキシブル導波管264により吸収することができる。これにより、治療用放射線発生部221に所定のマイクロ波電力を供給しつつジンバル機構223により、照射ヘッド220を円滑に疑似ノンアイソセントリック回転させることが可能となる。
【0114】さらに、本実施形態の放射線治療装置においては、マイクロ波発振器230と加速器221Bとの間におけるマイクロ波伝送系において、マイクロ波を利用する部分である加速器221Bの近傍にRF窓262を設けているので、真空にする必要がある部分は、RF窓262から加速器221Bまでの導波管部262Aと、電子銃221Aと、加速器221Bと、ターゲット221とによる、加速器221Bの近傍の狭い空間だけとなるので、真空ポンプ221Eは小容量のものを用いることができ、照射ヘッド220の小型化且つ軽量化に大きく寄与する。また、真空にする必要がある部分が加速器221Bの近傍の狭い空間であるので高真空度到達が達成され放電リスクが軽減される。さらに、真空にする必要がある部分が加速器221Bの近傍の狭い空間であるので真空漏れの発生頻度は低減され得る。
【0115】また、RF窓262からマイクロ波発振器230までのマイクロ波伝送系、つまりヘッド内導波管部260、固定導波管部240及び移動導波管部250の内部は、SF6ガス等の電気絶縁ガスが、0.1〜0.2MPaGの圧力で充填されているので、マイクロ波伝送系内の内圧により、マイクロ波伝送系の保全能力が向上する。
【0116】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、優れた治療性能を有する放射線治療装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放射線治療装置を寝台軸に直交する方向から見た構成図。
【図2】同実施形態の放射線治療装置を寝台軸方向から見た構成図。
【図3】同実施形態の放射線治療装置による放射線治療を説明する斜視図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る放射線治療装置における照射ヘッドを示し、(a)は正面から見た部分断面図、(b)は(a)におけるIVB−IVBに沿う断面図、(c)は(a)におけるIVC−IVCに沿う断面図。
【図5】同実施形態の放射線治療装置における照射ヘッドに備わる超小型C−Band加速器を示す構成図。
【図6】同実施形態の放射線治療装置による擬似ノンアイソセントリックで放射線治療を行う際の照射ヘッド及び患者を示す斜視図。
【図7】同実施形態の放射線治療装置による擬似ノンアイソセントリックで放射線治療を行う際の照射ヘッドの首振り動作の一例を説明するものであって、図6におけるVII−VIIに沿う部分断面図。
【図8】同実施形態の放射線治療装置による擬似ノンアイソセントリックで放射線治療を行う際の照射ヘッドの首振り動作の他例を説明するものであって、図5におけるVIII−VIIIに沿う部分断面図。
【図9】同実施形態に係る放射線治療装置のブロック図。
【図10】同実施形態に係る放射線治療装置の照射ヘッドを示す斜視図。
【図11】図11は同実施形態における首振り機構を示し、(a)は導波管と首振り機構及び駆動モータを示す斜視図、(b)は(a)におけるXIB−XIBに沿う断面図、(c)は(a)におけるXIC−XICに沿う断面図、(d)は(a)におけるXID−XIDに沿う断面図。
【図12】同実施形態の放射線治療装置における導波管系及びロータリRFカプラを示す斜視図。
【図13】同実施形態の放射線治療装置におけるロータリRFカプラ及び導波管を示す斜視図。
【図14】同実施形態の放射線治療装置におけるロータリRFカプラを説明する図。
【図15】同実施形態における動作を示すタイミングチャート。
【図16】同実施形態における放射線治療の操作手順を、モニタ画面の変化で示す図。
【図17】本発明の第2実施形態に係る放射線治療装置を、寝台軸の方向から見た構成図。
【図18】同実施形態に係る放射線治療装置を、寝台軸の方向から見た構成図。
【図19】本発明の第3実施形態に係る放射線治療装置を、寝台軸の方向から見た構成図。
【図20】本発明の第4実施形態に係る放射線治療装置を示す斜視図。
【図21】同実施形態におけるロータリRFカプラの断面図。
【図22】同実施形態におけるロータリRFカプラ及び導波管を組み合わせた伝送系を示す図。
【図23】同実施形態における照射ヘッドに係る球面座標系と移動導波管部に係る球面座標系との関係を示す図。
【図24】同実施形態におけるEベンド形導波管を示す図。
【図25】同実施形態におけるHベンド形導波管を示す図。
【図26】同実施形態における照射ヘッドを示し、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図27】同実施形態におけるフレキシブル導波管を示す図。
【図28】同実施形態におけるフランジを示す図。
【符号の説明】
200…治療室
201…隔壁
202…操作室
210…支持移動機構
211,212…基台
213,214…傾動機構
215…ガイドレール
215A…軌道
216,217…ウエイト
220…照射ヘッド
221…治療用放射線発生部
222…周回移動機構
223…ジンバル機構
230…マイクロ波発振器
240…固定導波管部
250…移動導波管部
260…ヘッド内導波管部
270…寝台部
280…システム制御卓
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子銃、線形加速器及びターゲットを有する照射ヘッドと、この照射ヘッドを予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構と、前記照射ヘッドに供給すべきマイクロ波を発生する、静止位置に配置されるマイクロ波発振器と、一端部が前記マイクロ波発振器に電磁気的に接続され、他端部が前記線形加速器に電磁気的に接続される導波管部と、前記照射ヘッド内に位置する前記導波管部に設けられるRF窓とを具備する放射線治療装置。
【請求項2】 前記照射ヘッドにおける前記RF窓から前記線形加速器までの導波管部内部と、前記電子銃と前記線形加速器と前記ターゲットとを内装する容器内とを真空排気する真空ポンプを具備する請求項1の放射線治療装置。
【請求項3】 前記真空ポンプは、前記照射ヘッド内に配置される請求項2の放射線治療装置。
【請求項4】 前記照射ヘッドにおける前記RF窓から前記マイクロ波発振器までの導波管部に電気絶縁ガスが充填される請求項1乃至3いずれかの放射線治療装置。
【請求項5】 前記導波管部は第1の前記球面座標に従う第2の球面座標で移動する手段を備える請求項1乃至4いずれかの放射線治療装置。
【請求項6】 前記導波管部は、導波管及びロータリRFカプラを含む請求項1乃至5いずれかの放射線治療装置。
【請求項7】 前記波管部のうち少なくとも一つは、ベンド導波管を含む請求項1乃至6いずれかの放射線治療装置。
【請求項8】 前記波管部のうち少なくとも一つは、フレキシブル導波管を含む請求項1乃至7いずれかの放射線治療装置。
【請求項9】 前記ロータリRFカプラは、一端側に導波管が接続される第1筒体と、この第1筒体と同一の軸芯を持ち前記第1筒体の他端側に一端側が回転可能に組み合わされ且つ他端側に別の導波管が接続される第2筒体とを含む請求項6の放射線治療装置。
【請求項10】 前記ロータリRFカプラは、内部の真空及び前記電気絶縁ガスのうち少なくとも一方をシールする磁気シールを含む請求項6又は9いずれかの放射線治療装置。
【請求項11】 前記照射ヘッドをアイソセンタを中心に回転させるアイソセントリック回転機構と、前記アイソセントリック回転機構により前記照射ヘッドが所定角回転した位置で前記照射ヘッドの首振りを行う疑似ノンアイソセントリック回転機構とを更に具備する請求項1乃至10いずれかの放射線治療装置。
【請求項12】 前記照射ヘッドは、少なくとも直行する2軸方向に首振りさせるジンバル機構を具備する請求項11の放射線治療装置。
【請求項1】 電子銃、線形加速器及びターゲットを有する照射ヘッドと、この照射ヘッドを予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構と、前記照射ヘッドに供給すべきマイクロ波を発生する、静止位置に配置されるマイクロ波発振器と、一端部が前記マイクロ波発振器に電磁気的に接続され、他端部が前記線形加速器に電磁気的に接続される導波管部と、前記照射ヘッド内に位置する前記導波管部に設けられるRF窓とを具備する放射線治療装置。
【請求項2】 前記照射ヘッドにおける前記RF窓から前記線形加速器までの導波管部内部と、前記電子銃と前記線形加速器と前記ターゲットとを内装する容器内とを真空排気する真空ポンプを具備する請求項1の放射線治療装置。
【請求項3】 前記真空ポンプは、前記照射ヘッド内に配置される請求項2の放射線治療装置。
【請求項4】 前記照射ヘッドにおける前記RF窓から前記マイクロ波発振器までの導波管部に電気絶縁ガスが充填される請求項1乃至3いずれかの放射線治療装置。
【請求項5】 前記導波管部は第1の前記球面座標に従う第2の球面座標で移動する手段を備える請求項1乃至4いずれかの放射線治療装置。
【請求項6】 前記導波管部は、導波管及びロータリRFカプラを含む請求項1乃至5いずれかの放射線治療装置。
【請求項7】 前記波管部のうち少なくとも一つは、ベンド導波管を含む請求項1乃至6いずれかの放射線治療装置。
【請求項8】 前記波管部のうち少なくとも一つは、フレキシブル導波管を含む請求項1乃至7いずれかの放射線治療装置。
【請求項9】 前記ロータリRFカプラは、一端側に導波管が接続される第1筒体と、この第1筒体と同一の軸芯を持ち前記第1筒体の他端側に一端側が回転可能に組み合わされ且つ他端側に別の導波管が接続される第2筒体とを含む請求項6の放射線治療装置。
【請求項10】 前記ロータリRFカプラは、内部の真空及び前記電気絶縁ガスのうち少なくとも一方をシールする磁気シールを含む請求項6又は9いずれかの放射線治療装置。
【請求項11】 前記照射ヘッドをアイソセンタを中心に回転させるアイソセントリック回転機構と、前記アイソセントリック回転機構により前記照射ヘッドが所定角回転した位置で前記照射ヘッドの首振りを行う疑似ノンアイソセントリック回転機構とを更に具備する請求項1乃至10いずれかの放射線治療装置。
【請求項12】 前記照射ヘッドは、少なくとも直行する2軸方向に首振りさせるジンバル機構を具備する請求項11の放射線治療装置。
【図7】
【図8】
【図10】
【図12】
【図1】
【図2】
【図13】
【図18】
【図19】
【図24】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図9】
【図14】
【図25】
【図11】
【図15】
【図21】
【図23】
【図16】
【図17】
【図27】
【図28】
【図20】
【図22】
【図26】
【図8】
【図10】
【図12】
【図1】
【図2】
【図13】
【図18】
【図19】
【図24】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図9】
【図14】
【図25】
【図11】
【図15】
【図21】
【図23】
【図16】
【図17】
【図27】
【図28】
【図20】
【図22】
【図26】
【公開番号】特開2003−175117(P2003−175117A)
【公開日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−242624(P2002−242624)
【出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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