説明

放射線活性可能な樹脂を含むセルロース繊維

【課題】吸収性物品において使用するための架橋セルロースの脆弱性及び弾力性特性のよりよい釣り合いを可能にすること。
【解決手段】セルロース繊維を含む繊維性材料であって、該繊維が、放射線エネルギーを受けると架橋結合を形成することができる、共有結合した放射線活性可能基を含むポリマー樹脂を含み、前記放射線活性可能基が、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンジル、キサントン類からなる群から、好ましくはベンゾフェノン類の群から選択される、ことを特徴とする、繊維性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線活性可能樹脂を含むセルロース繊維性材料と、そのような繊維性材料を含む構造と、そのような繊維性材料又は構造を含む吸収性物品、とりわけ使い捨て吸収性物品とに関する。さらに、そのような繊維性材料、構造、又は物品を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品において使用するための架橋セルロースは周知であり、欧州特許第0427316号(ヘロン(Herron))、米国特許第5,549,791号(ヘロン(Herron))、国際公開第98/27262号(ウェストランド(Westland))、又は米国特許第6,184,271号(ウェストランド(Westland))などに開示されている。このような繊維は、有用な特性を示し、広範な商業用途が見出されているが、とりわけこのような繊維の脆弱性及び弾力性特性のよりよい釣り合いを可能にすることに関して、このような繊維を改良することが依然として必要とされている。改善された液体処理などのために開放構造を維持できるように、しばしば剛性が望まれるが、現在の材料では、例えば繊維製造及び繊維処理プラントから繊維ユーザへの繊維の移送時に望ましくない破断を引き起こす、繊維の脆弱性の増加につながることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの問題を改善するために、本発明は、セルロース繊維への放射線活性可能樹脂の適用と、放射線を適用して架橋された放射線活性可能樹脂を含む繊維とに関する。
【0004】
放射線硬化可能樹脂自体は、当該技術分野において既知であり、例えば、ドイツ国特許第3836370号(ヒンツェ(Hintze);BASF)又は米国特許第5,026,806号(レーマー(Rehmer);BASF)に開示されており、アクリル酸(メタクリル酸)エステル又はそのコポリマーを主体としたUV架橋可能材料が、特にホットメルト(コンタクト)接着剤及びシーリング加工物における使用について記載されている。光硬化可能樹脂の光ファイバへの適用については、例えば、国際公開第99/30843号に開示されており、不織布ウェブへの適用については、米国特許第4,748,044号に記載されている。さらに、光硬化可能なセルロースを主体とする組成物が知られており、これはセルロースを主体とする材料から得られ、例えば、日本特許第2298501号(信越(Shin Etsu))又は日本特許第08006252号(ソニー(Sony))に記載されており、後者は一般用の感光樹脂組成物に関するものである。米国特許第6,090,236号(ノア(Nohr))には、モノマー又はオリゴマー(oligimeric)材料の放射線誘発重合によってウェブ用のコーティングを形成するためのプロセスが記載されている。
【0005】
しかしながら、これまでに、セルロース繊維との関連でポリマー材料の放射線誘発架橋を有効に利用することは意図されていない。
【0006】
これから、本発明は、放射線活性可能な架橋又は硬化樹脂を含むセルロースを主体とする繊維と、そのような繊維を含む構造及びとりわけ吸収性物品と同様に、そのような繊維又は構造を製造する方法とを提供することを目的とする。
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、セルロース繊維材料を取り扱う改良型プロセスを提供するが、とりわけこの繊維材料が全体的な取り扱いの際、移送又は保管される時に、従来の移送又は保管に比べて、そのような取り扱いによって得られる改善された繊維特性を備えたプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、セルロース繊維を含む繊維性材料に関し、この繊維は、放射線エネルギーを受けると架橋結合を形成することができる、共有結合した放射線反応基をもったポリマー樹脂を含む。セルロースを主体とする繊維は、捲縮された繊維、カールされた繊維であり得るが、好ましくはフラッシュ乾燥された繊維である。好ましくは、少なくとも85%の架橋度まで架橋した時に、このポリマー樹脂が30℃超過、好ましくは50℃超過のTを有し、放射線活性可能基は、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンジル(benzile)、キサントン類からなる群、好ましくはベンゾフェノン類の群から選択される。好ましくは、ポリマー樹脂が、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、イソブチレン、スチレン、イソプレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸(methacylic acid)、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートアクリレート、エポキシアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、及びウレタンアクリレート類の群から選択される分子を有する、ポリマー主鎖のモノマーを含む。
【0009】
前記ポリマー樹脂に与える放射線エネルギーは、好ましくはUV又はIR光、より好ましくはUV光であり、さらに好ましくは200nm〜280nmの波長をもったUV光である。
【0010】
放射線活性可能樹脂反応基に加えて、繊維は、放射線エネルギーを受けずに架橋結合を形成できる第二の架橋化学物質又は化学基を有することができ、この第二の架橋基が、好ましくは、アルデヒド及び尿素を主体とするホルムアルデヒド;カルボン酸、好ましくは少なくとも3つのカルボキシル基を含有するC2〜C9のポリカルボン酸、好ましくはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、タルトレートモノコハク酸、マレイン酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル−co−マレアート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル−co−イタコネート)コポリマー、アクリル酸のコポリマー類、及びマレイン酸のコポリマー類からなる群から選択されるもの、からなる群から選択される。架橋は、同じ又は異なるセルロース繊維のセルロース分子間であり得る。
【0011】
本発明はまた、前述したような繊維を含むウェブのような繊維性凝集体にも関し、このウェブは、任意選択的にパターンをもった、本質的に一様な又は異なる架橋度を有することができる。
【0012】
繊維又は凝集体は、液体処理材料として使用すると特に有用及び有益であり、使い捨て吸収性物品のような吸収体における捕捉及び/又は分配のための材料として使用すると、さらに有用及び有益である。
【0013】
本発明は、さらに、セルロース繊維を処理する方法に関し、この方法は、a)セルロース繊維の提供、b)繊維凝集体の形成、f)繊維への放射線活性可能樹脂の適用、g)樹脂の放射線活性型硬化の諸工程を有しており、該諸工程は、a)の後にb)の順番で実行される。これらの必須工程に加えて、この方法はさらに、(d)中間体ウェブの形成及び(e)分解、又は(h)非放射線活性可能樹脂の適用及び(i)その非放射線活性型架橋、の任意選択的な工程を有することができ、また繊維若しくは凝集体の移送工程(c)も含むことができる。1つ以上のプロセス工程を繰り返してもよい。放射線活性可能樹脂は、形成された繊維凝集体の予め定められた領域に選択的に適用することができ、又は形成された繊維凝集体の予め定められた領域に予め定められた種々の濃度で選択的に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
様々な天然起源のセルロース繊維が、本発明に利用可能である。アフリカハネガヤ、バガス、ケンプ、亜麻、及び他の木質性(lignaceous)及びセルロース繊維含有源のような様々な供給源から入手可能であるが、好ましいセルロース繊維は、木材パルプ、とりわけ軟木、硬木、又は綿リンターからの消化繊維である。本発明と共に使用するのに好適な木材パルプ繊維は、クラフト法及び亜硫酸法のような周知の化学的プロセスの後、漂白して又は漂白せずに得ることができる。パルプ繊維はまた、サーモメカニカル方法、ケミ・サーモ・メカニカル方法、又はこれらの組み合わせによって加工してもよい。好ましいパルプ繊維は、化学法によって生産される。砕木繊維、再生又は二次木材パルプ繊維、並びに漂白及び無漂白木材パルプ繊維を使用することができる。好ましい出発物質は、サザンパイン、ダグラスファー、トウヒ、及びアメリカツガのような、長繊維の針葉樹種から調製される。木材パルプの生産の詳細は、当業者には周知である。これらの繊維は、多数の企業から市販されており、例えば、ウェアハウザー社(Weyerhaeuser Company)(米国ワシントン)からCF416、NF405、PL416、FR516、又はNB416の称号で市販されている。
【0015】
繊維は、スラリー、非シート化、又はシート化形態で供給してもよい。ウエットラップ、ドライラップ、又は他のシート化形態として供給される繊維は、シートを機械的に分解することによって非シート化形態にすることができる。繊維は、濡れた若しくは湿った状態で提供することができ、又はネバードライ(never-dried)繊維にすることができる。
ドライラップの場合、繊維への損傷を最小限に抑えるために、機械的分解の前に繊維を湿らせることができる。
【0016】
繊維は、さらに、機械的繊維離解に起因する、又は好ましい方法、例えば、米国特許第5,549,791号(ヘロン(Herron))又は米国特許第3,987,968号に記載されているような、当該技術分野で周知のいわゆる「フラッシュ乾燥」に起因する、繊維にカール若しくは撚り(twist)を与えるような処理をすることができるが、前記特許は本明細書に特に参照のために本開示に示す。
【0017】
繊維はさらに、放射線活性可能ではなく熱処理のような従来の状況下で架橋可能な架橋剤によって、処理することができる。このようなセルロース架橋剤には、アルデヒド、及び尿素を主体とするホルムアルデヒド付加生成物のような、当該技術分野において既知の架橋剤が挙げられる。例えば、米国特許第3,224,926号;米国特許第3,241,533号、米国特許第3,932,209号;米国特許第4,035,147号、米国特許第3,756,913号、米国特許第4,689,118号;米国特許第4,822,453号、米国特許第3,440,135号、米国特許第4,935,022号、米国特許第4,889,595号、米国特許第3,819,470号、米国特許第3,658,613号、米国特許第4,853,086号を参照されたい。なお、これら全ての全体を本明細書に特に引用して援用する。他の好適な架橋剤には、ポリカルボン酸のようなカルボン酸架橋剤が挙げられる。全て本明細書に特に引用して援用する、米国特許第5,137,537号、米国特許第5,183,707号、及び米国特許第5,190,563号は、架橋剤として少なくとも3つのカルボキシル基(例えば、クエン酸及びオキシジコハク酸)を含有するC2〜C9のポリカルボン酸の使用を記載している。好適な、尿素を主体とする架橋剤には、メチロレーテッドウレア類、メチロレーテッド環状ウレア類、メチロレーテッド低級アルキル環状ウレア類、メチロレーテッドジヒドロキシ環状ウレア類、ジヒドロキシ環状ウレア類、及び低級アルキル置換環状ウレア類のような置換ウレア類が挙げられる。好適なポリカルボン酸架橋剤には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、タルトレートモノコハク酸、及びマレイン酸が挙げられる。他のポリカルボン酸架橋剤には、ポリマーポリカルボン酸、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル−co−マレアート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル−co−イタコネート)コポリマー、アクリル酸のコポリマー類、及びマレイン酸のコポリマー類が挙げられる。ポリアクリル酸ポリマー類、ポリマレイン酸ポリマー類、アクリル酸のコポリマー類、及びマレイン酸のコポリマー類のような、ポリマーポリカルボン酸架橋剤の使用が、米国特許第5,998,511号に記載されており、これもまた本明細書に引用して援用する。架橋剤の混合物又はブレンドも使用することができる。
【0018】
適用した後には、架橋剤を従来の方法で処理して、架橋を達成することができる。例えば、架橋剤を硬化させ、架橋された繊維性材料を提供するのに十分な温度及び時間で架橋剤を加熱することができる。架橋を達成するもう1つの方法は、架橋剤で処理された繊維性材料を架橋触媒で処理することであり、その後任意選択的に、得られるウェブを加熱して架橋剤を硬化させる。繊維性材料又は繊維を含むウェブを架橋するもう1つの従来の方法は、ウェブのpHを調節して架橋反応を促進させるものである。
【0019】
放射線活性可能樹脂として好適な架橋化学物質は、一般にポリマー構造であり、ポリマーの主鎖及び放射線活性可能部位を有しており、すなわち、特定の化学基は放射線を受けた時にだけ化学的に活性−ゆえに反応性−になる。放射線という用語は、本発明の一般的な状況では任意の放射線を指し、例えば、電子ビーム放射線、又は電磁放射線、とりわけUV又はIR放射線を指す。樹脂は、さらに、セルロース繊維のセルロース分子と反応するのに好適な他の反応部位、又は例えば、従来の架橋を含むことができる。
【0020】
放射線を受けると、放射線活性可能基はラジカルを形成し、それが次にはセルロース繊維のセルロース分子、又はポリマー主鎖のような樹脂自体の他の分子に結合することができ、それによって架橋されたポリマー網状組織が形成される。
【0021】
放射線誘起反応が終わった後には、一般に、いくらかの未反応部位、すなわちそれぞれいくらかの未反応放射線活性可能基をもった網状組織構造がいくらか存在する。好ましくは、反応が、高い架橋度を目標として行われ、好ましくは放射線活性可能基の少なくとも50%まで、より好ましくは少なくとも70%まで、さらに好ましくは少なくとも85%まで行われる。さらに、架橋反応が、放射線活性可能基を含むように、すなわちポリマーの主鎖又は他の非放射線活性可能基の分子間などにあまり多くの反応が起こらないように、優勢に行われることが好ましい。好ましくは、13C−NMRによって評価した時に、形成された結合の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が放射線活性可能基を含む。
【0022】
本発明に好適な放射線活性可能基は、フリーラジカルを生成する光開始剤として当該技術分野において周知である。このような基の最大の基は、カルボニル化合物、例えば、ケトン類、とりわけα−芳香族ケトン類である。α−芳香族ケトン光開始剤の例には、これは単なる例にすぎないが、ベンゾフェノン類;キサントン類及びチオキサントン類;α−ケトクマリン類;ベンジル(benzil)類;α−ルコキシデオキシベンゾイン類(α-lkoxydeoxybenzoins);ベンジルケタール類又はα,α−ジアルコキシデオキシベンゾイン類;ベンゾイルジアルキルホスホネート類;アセトフェノン類、例えば、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α,α−ジメチル−α−ヒドロキシアセトフェノン、α,α−ジメチル−α−オルホリノ(orpholino)−4−メチルチオアセトフェノン(methzylthioacetophenone)、α−エチル−α−ベンジル−α−ジメチルアミノアセトフェノン、α−エチル−α−ベンジル−α−ジメチルアミノ−4−モルホリノアセトフェノン、α−エチル−α−ベンジル−α−ジメチルアミノ−3,4−ジメトキシアセトフェノン、α−エチル−α−ベンジル−α−ジメチルアミノ−4−メトキシアセトフェノン、α−エチル−α−ベンジル−α−ジメチルアミノ−4−イメチルアミノアセトフェノン(imethylaminoacetophenone)、α−エチル−α−ベンジル−α−ジメチルアミノ−4−メチルアセトフェノン、α−エチル−α−(2−プロペニル)−α−ジメチルアミノ−4−モルホリノアセトフェノン、α,α−ビス(2−プロペニル)−α−ジメチルアミノ−4−モルホリノアセトフェノン、α−メチル−α−ベンジル−α−ジメチルアミノ−4−オルホリノアセトフェノン(orpholinoacetophenone)、及びα−メチル−α−(2−プロペニル)−α−ジメチルアミノ−4−モルホリノアセトフェノン;α,α−ジアルコキシアセトフェノン類;α−ヒドロキシアルキルフェノン類;O−アシルα−オキシミノ(oximino)ケトン類;アシルホスフィンオキシド類;フルオレノン類、例えば、フルオレノン、2−t−ブチルペルオキシカルボニル−9−フルオレノン,4−t−ブチルペルオキシカルボニル−ニトロ−9−フルオレノン、及び2,7−ジ−t−ブチ
ルペルオキシカルボニル−9−フルオレノン;並びにα−及びα−ナフチルカルボニル化合物が挙げられる。他のフリーラジカルを生成する光開始剤の例としては、トリアリールシリルt−ブチル過酸化物のようなトリアリールシリル過酸化物、アシルシラン類、及び何らかの有機金属化合物が挙げられる。フリーラジカルを生成する開始剤は、望ましくは、アセトフェノン類、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン類(安全面から、未反応の残基レベルを最小限に抑えるか、又はヒトが触れるところから排除すべきである)、9,10(フェン)−アントラキノン(安全面から、未反応の残基レベルを十分に制御すべきである)、ベンジル(benzile)、((2−クロロ−)チオ−)キサントン類、及びさらに好ましくはベンゾフェノン類からなる群から選択される。
【0023】
好適な主鎖ポリマーは、多種多様なモノマー類から製造することができ、これには例えば、エチレン;プロピレン;塩化ビニル;イソブチレン;スチレン;イソプレン;アクリロニトリル;アクリル酸;メタクリル酸(methacylic acid);エチルアクリレート;メチルメタクリレート;ビニルアクリレート;アリルメタクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;トリメチロールプロパンエトキシレートアクリレート;エポキシアクリレート類、例えば、ビスフェノールAエポキシドとアクリル酸との反応生成物;ポリエステルアクリレート類、例えば、アクリル酸とアジピン酸/ヘキサンジオールを主体とするポリエステルとの反応生成物;ウレタンアクリレート類、例えば、ヒドロキシプロピルアクリレートとジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとの反応生成物;及びポリブタジエンジアクリレートオリゴマーがある。
【0024】
重合後に顕れる好ましい主鎖材料は、20℃超過、好ましくは30℃超過、さらに好ましくは50℃超過のTを示すように選択される。
【0025】
放射線活性可能基及び主鎖を組み合わせて、例えば、アクリレート(メタクリレート)コポリマー及びモノエチレン的に(monoethylenically)不飽和の芳香族ケトン類を形成することができ、これは例えば、米国特許第4,737,559号(本明細書に引用して援用する)により詳細に記載されているが、コンタクト接着剤における使用について記載されているような紫外光によって架橋可能である。大気中の酸素下で紫外線の放射によって架橋可能であり、アクリレート(メタクリレート)コポリマーを主体とし、共重合可能なベンゾフェノン誘導体又はアセトフェノン誘導体を含有する他の材料は、米国特許第5,026,806号にさらに詳述されているが、これもまた本明細書に引用して援用する。この化学反応は、それが空気中で(不活性大気下でなく)架橋することができ、溶媒及び不飽和モノマー類を含まない適用を可能にするので、米国特許第4,737,559号に記載のものを超えるさらなる利点を有する。
【0026】
さらに好適な放射線活性可能樹脂は、ベンゾフェノン型の化学的に組み込まれた光開始剤と組み合わされたアクリルコポリマーで、例えば、acResin(登録商標)の称号でBASF AG(ドイツ、ルートヴィッヒスハーフェン)から自動接着性用途で市販されており、少なくとも約30℃のTを示すように調節される。特定の用途では、このようなポリマーは、親水性化剤、例えば、ポリマー主鎖にグラフト化された親水性基、又は表面に適用されるいわゆる界面活性剤を含んでもよい。
【0027】
本発明に有用な樹脂は、電子ビーム又は赤外光のような任意の種類の放射線によって活性化させることができ、好ましくはUV光によって活性化を実行することができる。より好ましくは、活性化プロファイルを放射線の波長の関数として表して、反応プロセスのよりよい制御を可能にし、環境通過(例えば、太陽)放射線のような前及び/又は後硬化を最小限に抑えることである。
【0028】
好ましくは、活性化活性可能樹脂が酸素活性されたものでも酸素抑制されたものでもなく、そのため特定の不活性雰囲気の必要なしに容易な操作が可能である。また、活性可能樹脂が、労働者、ユーザ、及び環境の安全に危険を及ぼさないことが好ましい。
【0029】
放射線硬化可能樹脂は、好ましくは他の添加物及び/又は適用補助剤と適合性があり、それらと非反応性である。樹脂は、溶媒中に可溶性であり、好ましくは水性の液体中に可溶性又は懸濁可能である。
【0030】
本発明の状況内での議論では、「硬化」及び「架橋」、又は「硬化可能」及び「架橋可能」という用語は、一般に置き換え可能に使用することができ、2つの分子の2つの活性部位を互いに結合させる化学反応を指す。本発明の状況では、そのようにして連結された分子は、一般にポリマー分子である。このことは、以下に記載するような樹脂の「主鎖」のモノマー類又はオリゴマー類の間では一般に反応が起こらないが、既に形成されたポリマー鎖の間では架橋反応が優勢に起こり、その結果、放射線活性型重合によってポリマーが形成されるのでなく、ポリマー網状組織が形成されるという事実を参照している。
【0031】
硬化反応は、熱的な効果によってではなく放射線によって優勢に活性化されるべきであるので、熱によって誘起される従来の架橋反応も引き起こすよう放射線で温度が上昇する前に、放射線活性型の反応を十分な程度まで終わらせるべきである。
【0032】
多くの用途では、硬化及び反応した樹脂が、さらなる放射線又は他の反応条件、例えば、温度及び/又は圧力及び/又は加水分解条件に対して安定であることが特に好ましい。
さらに、多くの用途では、反応した樹脂が、残留するべたつき感又は粘着性を示さないことが望ましい。放射線活性可能樹脂と同様に、反応した樹脂が、労働者、ユーザ、及び環境の安全に危険を及ぼさないことが好ましい。
【0033】
本発明による放射線硬化可能樹脂によってセルロース繊維を処理するプロセスには、当該技術分野において既知のように、あるプロセス特徴が含まれる。
【0034】
a)セルロース繊維の提供
当業者には、前述のようなセルロース繊維の提供方法が周知である。したがって、セルロース繊維生産プラントの状況では、繊維は、個別化された形態で送達することができ(すなわち、繊維は本質的に気体又は液体のようなキャリア手段中に懸濁されるが、以下に記載するような凝集体は形成しない)、例えば、空気圧輸送繊維又は流動床などには、水性スラリーの形態又は気体に懸濁させた形態で送達される。
【0035】
さらに、任意選択的に反応又は未反応状態において、例えば、撚り及びカールの程度を増加させることにより、及び/又は従来の(すなわち非放射線活性可能)架橋樹脂を含むことにより、繊維を前述したような処理された繊維にすることができる。
【0036】
b)繊維凝集体の形成
また、様々な手段又はプロセスによってセルロース繊維を繊維凝集体構造に形成できることも、当業者には周知である。本明細書で使用する時には、「繊維凝集体」という用語は、繊維を含む構造を指し、繊維が相互に接触してこの構造を形成している。隣接繊維間の接触は、例えば、摩擦若しくは絡合のような機械的効果、又は水素結合若しくは架橋(「繊維間架橋」と呼ばれ、以下で別に記載するような従来の架橋方法によって、又は本発明による放射線硬化可能架橋によって達成できる)のような化学的効果などに基づいて確立することができる。接触はまた、例えば、接着剤、バインダー樹脂などのような結合手段によって確立することもできる。このような凝集の結果得られるものは、しばしば、ウェブ、シート、又はベールと呼ばれ、一般にこのような凝集体を形成するためのプロセス工程は、当業者には既知である。
【0037】
このような凝集体は、広範な形状、形態、密度、又は厚さを有することができる。吸収性物品の分野における好ましい用途には、凝集体は、好ましくは約800g/m未満の坪量及び約0.60g/cm未満の密度を有する。本発明の繊維に意図される他の用途には、約0.03g/cm未満であってもよい密度を有する低密度ウェブが挙げられる。
【0038】
セルロース繊維凝集体は、さらに加工して他の要素と直接組み合わせて、物品、例えば、吸収性物品を形成することができる。
【0039】
d)セルロース繊維凝集体をまた、ロール、スプール、又は箱入り若しくはベール梱包構造のような中間体構造に形成することもでき、これが容易な一時保管及び/又は移送を可能にし、結果としてこのような凝集体を凝集体の製造場所以外の異なる場所で使用できるようになる。特定の例がセルロース材料の湿式載置ロールの形成であり、次にこれを吸収性物品がセルロース材料を含んで製造される「転換場所」に輸送することができる。この製造時には、凝集体はその元の構造を留めてもよく、切断されて物品に挿入される。
【0040】
e)凝集体はまた、ハンマー・ミル、ベール・オープナー、又は再スラリー化などのような周知の手段などによって、さらに分解されてもよい。その後、前述したようなさらなる凝集体形成工程を用いて、最終的な凝集体(今日ではウェブの形態であることが多い)を形成する。
【0041】
f)放射線活性可能樹脂の適用
このような周知のプロセス工程に加えて、前述したような放射線活性可能樹脂がセルロース繊維に適用される。この目的で、セルロース繊維をそれぞれの放射線活性可能樹脂と接触させる必要がある。ある適用形態はある種の放射線活性可能樹脂に特定の利益を提供し得るが、特定の適用形態が本発明に重要であることは見出されていない。
【0042】
この接触は、セルロース繊維が個別化されている時に、又はこれらの繊維がウェブのような凝集体形態の時に達成することができる。繊維が離解された状態にある場合、それを前述したように「毛羽(fluff)」として知られる低密度の個別化された繊維形態にすることができる。
【0043】
樹脂は、樹脂を含む水溶液又は懸濁液のようなキャリア又は溶媒液を用いて、繊維に適用してもよい。その後、一般に既知の方法によって、キャリア液及び樹脂を繊維と接触させることができるが、これには、繊維の水性スラリーを形成し、任意選択的にキャリアを用いて、樹脂をスラリーに添加することが含まれる。スラリーを脱水すると、樹脂が繊維上に付着するか、又は実際に繊維中に浸透することができる。樹脂は、繊維が本質的に個別化された状態にある時に、例えば、キャリアを用いて又は用いずに樹脂を噴霧することによって、例えば、空気流に懸濁させることによって、繊維に適用してもよい。ウェブの形成の状況で以下に記載するような方法の後で、反応剤によって処理する前に、繊維をベール又はシートのような構造に形成してもよい。
【0044】
本明細書で使用する時、「有効量」は、架橋していない繊維に比べて、繊維自体及び/又は架橋された繊維を含有する吸収構造の少なくとも1つの重要な吸収特性を改善するのに十分な薬剤の量を指す。当業者には容易に明らかなように、薬剤の量は、主鎖ポリマーに対する放射線活性可能基の量に関する化学的組成によって異なる。繊維及び樹脂の(したがってキャリア(使用する場合)を除いた)量に対して重量基準で20%の量は、典型的でなくはないが、経済的な理由からだけでなく、約15%未満のような少ない量が好ましく、しばしば、十分な架橋度を提供するのに、約0.5%より多く、好ましくは1%より多く、しばしば5%より多く必要である。
【0045】
g)放射線活性型架橋
放射線活性可能樹脂をセルロース繊維に適用した後、樹脂を放射線に曝す必要があり、このことは、樹脂自体について前述したような架橋反応を活性化させるのに好適である。
【0046】
架橋反応を活性化させるのに有用な放射線は、試薬の特定の化学的性質によって決まり、前述したような電磁的ビーム(可視光、UV−A、B、C、若しくはIRを含む)又は電子ビームであってもよい。
【0047】
UV光を使用して実行することが好ましく、さらに好ましいのは、例えば、特に放射線活性可能基がベンゾフェノン基である時には、約200nm〜約280nmの波長を有するようなUV−C光を使用することである。ただし、315nm〜400nmの範囲内のUV−A光も、有利に使用することができる。このような波長を使用することの特定の利益は、容易に入手可能な機器(すなわち、例えば、160W/cm〜200W/cmの長さのランプを提供し、UV−C感応性試薬に特に好適な水銀蒸気を使用する、又はUV−A/B感応性材料に鉄をドープしたハロゲン化金属を使用する、ISTメッツ社(IST Metz GmbH)(ドイツ、ヌエルチンゲン(Nuertingen))から市販されているような水銀灯)と同様に、可視光/太陽光に対する強度にあり、したがって反応のための放射時又は放射後に、望ましくない反応を防ぐことに関する予防策を特にとる必要がない。
【0048】
それぞれの反応を行うのに必要なエネルギーレベルは、特定の化学的性質、所望の架橋度、並びに単位時間及び/又は単位面積当りに処理される材料の量によって決まる。さらに、繊維及び放射線放出要素、すなわちランプの相対的な位置にも依存する。一般に、反応を起こすには強度が極めて重要であり、したがって高強度の放射線を短時間適用することにより、高エネルギーの入力によって色のような他の材料特性を歪ませずに、優れた反応の完全性を達成できることが見出された。
【0049】
放射すべき繊維と、放射線放出源(例えば、ランプ)との間の相対的な位置は、様々なものにすることができる。例えば、繊維を層状(ウェブ)配置に位置決めする場合、放射線がウェブ内にある程度浸透するが、これを所望の架橋度のために使用することができる。これが望ましくない場合、繊維を放射ダクト内で自由に移動させるなど、他の配置を選択することができる。装置はさらに、放射線をより均一に分配させるために、又は放射線をある領域に集中させるために、鏡を含んでもよい。
【0050】
1つの実施形態では、繊維間結合が実質的にない状態、すなわち、繊維間接触を毛羽立ちのない(unfluffed)パルプ繊維に対して低い発生度で維持するか、又は繊維を繊維間結合、とりわけ水素結合の形成を促進しない溶液に含浸させた状態で、架橋剤を繊維と反応させる。あるいは、必要に応じて、架橋を使用して繊維間架橋を形成することができる。
【0051】
記載したプロセス工程のいずれかの任意選択的な繰り返し以外に、材料、製品、又はプロセスにさらなる利益を提供し得るさらなる工程を追加することができる。
【0052】
特に、放射線活性型架橋だけでないことが望ましい時には、
h)放射線硬化可能でない繊維への架橋剤の適用と、
i)そのように処理された繊維を、熱処理など、放射線の適用なしの架橋条件に曝すこと
とにより従来の架橋を含むことができる。
【0053】
さらに、繊維性材料を形成する時には、さらなるプロセス工程は、
k)合成繊維、又は粒子状材料(例えば、粉末又は顆粒)のような、セルロース繊維への他の材料の添加であり得る。繊維性材料のセルロース繊維の支配的な特性をなお優勢に維持するには、添加する材料の量を過剰にすべきではなく、典型的には全繊維性材料の50%を超えない。
【0054】
追加される合成繊維は、ポリエチレン(例えば、PULPEX(登録商標))のような熱可塑性ポリオレフィン類、及びポリプロピレン、ポリエステル類、コポリエステル類、ポリビニルアセテート、ポリエチルビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル類、ポリアミド類、コポリアミド類、ポリスチレン類、ポリウレタン類などを含む、様々なポリマーから製造することができる。好適な繊維はまた、当該技術分野において周知のような超吸収性材料から製造してもよい。意図される特定の用途に応じて、好適な繊維性材料は、例えば、親水性化剤を樹脂に組み込むことによって、又は表面を処理することによって、親水性になった疎水性繊維を含んでもよい。好適な熱可塑性繊維は、単一のポリマーから製造することができ(単成分繊維)、又は1超過のポリマーから製造することもできる(例えば、シース/コア繊維のような二成分繊維)。合成繊維の長さは広範に変化させることができるが、典型的には、これらの熱可塑性繊維は、約0.3〜約7.5cm、好ましくは約0.4〜約3.0cm、最も好ましくは約0.6〜約1.2cmの長さを有する。これらの熱可塑性繊維の直径は、通常、デニール(9000メートル当りのグラム数)又はデシテックス(10,000メートル当りのグラム数)のいずれかに関して定義される。好適な熱可塑性繊維は、約1.0〜約20、好ましくは約1.4〜約10、最も好ましくは約1.7〜約3.3の範囲のデシテックスを有することができる。
【0055】
繊維性材料は、さらに粒子状材料を含んでもよいが、これはウェブの強度特性を高めるために加えてもよく、またポリマー粒子であり得、任意選択的に、結合剤の機能を提供するように部分的に溶融される。このような粒子は、いわゆる超吸収体材料を使用する時のように流体処理特性を高めるために加えてもよく、又は気体若しくは臭気吸着特性を改善するために加えてもよい。したがって、好適な粒子は、部分的に架橋されたポリアクリレート、シリカ、ゼオライト、又は任意の他の天然若しくは合成材料で製造してもよい。個々の粒径は、典型的には約1000μm以下であり、多くの場合、取り扱い及び塵埃に関連した理由から、約50μmより小さい粒子の量が制限されていることが望ましい。
【0056】
本発明の特定の態様は、様々なプロセス工程の順番に関する。上記では、次のプロセス工程を特定した。
【0057】
a)セルロース繊維の提供、
b)繊維凝集体の形成、
c)移送、
d)中間体ウェブの形成、
e)中間体の分解、
f)放射線活性可能樹脂の適用、
g)放射線活性型硬化、
h)非放射線活性可能樹脂の適用、
i)非放射線活性型架橋、
k)他の材料の添加。
【0058】
これらの工程のうち、a)、b)、f)、及びg)は、本発明を実行するための本質的なプロセス工程と見なされ、残りの工程c)、d)、e)、h)、i)、及びk)と同様に、特定の工程の繰り返しは、任意工程と見なされる。前述の工程は、処理プロセスにおいて実行できる順番では列記されていないが、これらの工程のあるものにはある相対的順番がある。とりわけ、放射線活性可能樹脂の適用(工程f)は、放射を実施する(工程g)の前に実行する必要があり、同じ原則が、非放射線硬化(工程i)の前の、非放射線活性型樹脂の適用(工程h)に適用される。また、一時的な分解工程(e)は、凝集体が形成された(工程b)又はd)のいずれか)の後にしか実行することができない。
【0059】
本発明によるプロセスは、繊維取り扱いプロセスのいずれの段階でも繊維に放射線硬化可能樹脂を適用することによって実行することができるし、またその後のいずれの段階でも放射線活性化を実行することができる。
【0060】
例えば、従来の毛羽パルプ繊維は、毛羽立った状態で、又は凝集体若しくはウェブに形成される時のいずれかで、放射線活性可能樹脂によって処理することができ、また放射線硬化させることもでき、その際、個々の毛羽は、それが放射線を受ける活性化パイプを通じてさらに運ばれる。
【0061】
その結果、このようなプロセスにおいて、全ての個別化された繊維に架橋を均一に適用することができる。放射線はまた、放射線活性可能樹脂が適用された繊維から形成されたウェブに適用することもでき、又は樹脂を繊維には添加せず、ウェブ自体に添加して、繊維から形成されたウェブに適用することもできる。いずれの場合にも、均質な架橋が達成されるように、放射線をウェブに適用することができる。これは、放射線がウェブ内に十分に浸透できるようにウェブの厚さを制御することによって実施することができる。放射線はまた、予め定められたウェブに選択的に適用することもでき、その結果、例えば、ウェブの厚みを通って架橋プロファイルを形成することにより、特定の特性プロファイルをウェブ内に設計することができる。吸収性物品に組み込まれるウェブを考えると、液体負荷を受ける領域において、さらなる放射線活性可能樹脂の適用により、又はさらなる放射により、架橋度を高くすることができ、それによってよりよい噴出処理特性が付与される一方、負荷を受け取る領域からさらに遠くにあるウェブの他の領域は、架橋度を低くすることによってよりよい液体保持特性を有する。
【0062】
1つの特定の実施形態では、本発明は、パルプ工場から製品生産場所へというように、ある場所から別の場所への繊維の移送(工程c)を含むプロセスに関する。この議論の状況では、「移送」は、繊維が、ロール又はベール又はバッグ内のような不連続移送を可能にする凝集形態にある時の操作、さらには一時的な保管をも指す。したがって、1つの生産場所内の連続配管システム内、又は現場のサブサイト間のような直接移送は、この用語から除外されるが、一時保管貯蔵所(その貯蔵所からの繊維の移動より繊維の送達を切り離す)内への運搬は、一時保管を伴う移送という用語に含まれる。
【0063】
背景技術の項で論じたような従来の架橋技術を考えると、架橋は、パルプ生産場所において形成され、架橋された繊維は、物品、例えば、吸収性物品の形成のようなさらなる加工のための転換場所に移送される。しかしながら、架橋工程は、繊維の特性を改変させることを目的としているので、移送時にこれらの特性が部分的に失われることがある。吸収性物品における使用の場合のように、架橋工程が、繊維、及びそれから製造されるウェブ、又はそのような繊維を含む物品の液体処理特性を改善することが望ましいことが多く、この改善は、負荷を受けた時の湿潤時及び乾燥時の弾力性又は剛性をよりよくするように繊維を改変させることによって達成されることが多い。また、より解放された構造を得るために、セルロース繊維に撚り及びカールを付与することなどによって嵩を高めるように繊維が改変されてきた。
【0064】
しかしながら、これらの効果は、繊維の移送のための取り扱いがより困難であり、及び/又はこの移送時に繊維の損傷の危険性があることを意味しており、したがって繊維が元の処理によって付与される利益をいくらか失うことがある。この問題に対処しようとする既知の手法は、従来の湿式載置ロール形成よりも低い密度でのベール形態のような低密度包装である。他の手法が、欧州特許第0705365号(ストラ(STORA))に記載されているが、その中では、繊維にアルコールを加えて、架橋材樹脂の適用と架橋工程との間に繊維を移送可能にすることができる。しかしながら、従来の架橋剤の使用では、架橋を活性化するのに熱処理が必要であるので、移送工程後のプロセスには、機器の点から見てかなりの労力が必要になる。また、アルコールの添加が、繊維及び/又は得られるウェブ又は製品の特性に影響を及ぼすこともある。
【0065】
このような状況のために、本発明は、硬化工程からより独立した、架橋樹脂のより良好で容易な適用により、代替的なプロセス構成を可能にする。
【0066】
他の繊維又は粒子のようなさらなる添加物の添加工程(工程k)は、放射線活性可能樹脂を添加する前又はその後の、セルロース繊維との組み合わせを含め、材料の種類に応じて多くの時点でプロセスに組み込むことができる。非セルロース材料を添加した後で繊維性材料に樹脂を適用する場合、樹脂を添加した材料の一部と反応させてもよく、又はこのような材料の表面上で反応させてもよい。
【0067】
セルロース繊維を処理する好ましいプロセスは、次の諸工程(前述のプロセス工程一覧に対する参照の点から)を次の順序で含む。
【0068】
a)パルプ工場のような繊維生産場所でのセルロース繊維の提供、
f)同じ場所での繊維への放射線活性可能樹脂の適用、
d)繊維生産場所での、ロール形態又はベール形態のような繊維凝集体の形成、
c)おむつのプラントのような物品製造プラントへの凝集体の移送、
e)繊維の分解、
g)放射線処理(ration treatment)による繊維の硬化、
b)最終的なウェブの形成、及び物品へのその組み込み。
【0069】
このプロセスの修正形態では、繊維硬化の工程g)はまた、最終的なウェブが形成された(工程b)後に実行することもできる。
【0070】
他の好ましいプロセス選択肢には、パルプ工場の生産場所での従来の架橋がさらに含まれ、プロセス工程の順番は次のようになる。
【0071】
a)パルプ工場の生産場所でのセルロース繊維の提供、
f)同じ場所での繊維への放射線活性可能樹脂の適用、
h)繊維への非放射線活性可能樹脂の適用、
i)非放射線活性可能樹脂を硬化させるための繊維の熱処理、
d)繊維生産場所での、ロール形態又はベール形態のような繊維凝集体の形成、
c)おむつのプラントのような転換プラントへの凝集体の移送、
e)繊維の分解、
g)放射線処理(ration treatment)による繊維の硬化、
b)最終的なウェブの形成、及び物品へのその組み込み。
【0072】
前述と同様に、繊維の硬化工程g)はまた、最終的なウェブが形成された(工程b)後に実行することもできる。また、放射線活性可能樹脂及び非放射線活性可能樹脂の適用は、一工程で同時に行うことができ、放射線活性可能基と同様に従来の架橋基を含む1つの樹脂を添加することによって達成することができる。
【0073】
さらに他の好ましいプロセス選択肢は、次の順番のプロセス工程を含む。
【0074】
a)パルプ工場の生産場所でのセルロース繊維の提供、
f1)同じ場所での繊維への第一放射線活性可能樹脂の適用、
g1)第一放射線処理(ration treatment)による繊維の硬化、
d)パルプ工場での、ロール形態又はベール形態のような繊維凝集体の形成、
c)おむつのプラントのような転換プラントへの凝集体の移送、
e)繊維の分解、
f2)繊維への第二放射線活性可能樹脂の適用、
g2)第二放射線処理(ration treatment)による繊維の硬化、
b)最終的なウェブの形成、及び物品へのその組み込み。
【0075】
さらに他の好ましいプロセス選択肢には、パルプ工場生産場所での従来の架橋、並びに転換場所での放射線活性可能樹脂の適用及び硬化の両方が含まれ、プロセス工程の順番は以下のようになる。
【0076】
a)パルプ工場の生産場所でのセルロース繊維の提供、
h)繊維への非放射線活性可能樹脂の適用、
i)非放射線活性可能樹脂を硬化させるための繊維の熱処理、
d)パルプ工場での、ロール形態又はベール形態のような繊維凝集体の形成、
c)おむつのプラントのような転換プラントへの凝集体の移送、
e)繊維の分解、
f)同じ場所での繊維への放射線活性可能樹脂の適用、
g)放射線処理(ration treatment)による繊維の硬化、
b)最終的なウェブの形成、及び物品へのその組み込み。
【0077】
前述と同様に、繊維の硬化工程g)はまた、最終的なウェブが形成された(工程b)後に実行することもできる。
【0078】
従来のプロセスでもなされているように、さらなる乾燥工程、及び好ましくはフラッシュ乾燥工程を、工程h)(非放射線活性可能樹脂の適用)と、i)(非放射線活性硬化)との間に実施することができる。この工程は、繊維の撚り及びカールを増加させて液体処理機能を改善することができる。
【0079】
本発明による繊維は、例えば、吸収性物品のような物品において使用するのに好適な密度及び坪量で、試験に好適なウェブに形成して評価した時などに、有益な性能特性を示す。
【0080】
特に、このようなウェブは、国際公開第99/45879号(本明細書に引用して援用する)の試験方法の項に明確に記載されているような毛管収着試験(Capillary sorption test)に準じて評価することができ、好ましくは、材料が0cmでその能力の50%を放出した(すなわち、CSAC 0の)「毛管収着脱着高さ(Capillary Sorption Desorption Height)」(CSDH50)、これは時には「中間脱着圧力(Medium Desorption Pressure)」とも呼ばれ、cmで表されるが、その値が20cm未満、より好ましくは17cm未満、さらに好ましくは15cm未満を示す。
【0081】
このようなウェブは、好ましくは、0cmの高さ(CSAC 0)で毛管収着吸収能力(Capillary Sorption Absorbent Capacity)と同じ試験方法によって測定した時に、単位g(流体)/g(材料)で表される全体的な取り込み値が、10g/g超過、より好ましくは12g/g超過、さらに好ましくは14g/g超過である。
【0082】
さらに、本発明による繊維が、前述したような従来の架橋方法によって架橋された繊維に比べ、架橋時に示す輝度損失が低いことが見出された。特に、ISO基準2469の「紙、板材、及びパルプ−拡散反射因子の測定(Paper,board,and pulps-Measurement of diffuse reflectance factor)」、2470「紙及び板材−青色拡散反射因子の測定(ISO輝度)(Paper and Board-Measurement of Diffuse Blue Reflectance Factor (ISO Brightness))」、並びに3688「パルプ−青色拡散反射因子の測定(ISO輝度)(Pulps−Measurement of Diffuse Blue Reflectance Factor(ISO Brightness))」を使用する時には、本発明による方法によって架橋された繊維では、例えば、83%の未処理繊維の輝度を75%超過の値まで、好ましくは80%超過の値まで減少させることにより、輝度の損失が約7%未満、好ましくは約3%未満になる一方、同等の従来の架橋条件が7%超過、すなわち同じ例について76%未満までの輝度の損失をまねき得ることが見出された。
【0083】
本発明によって処理された繊維は、濾過繊維、充填、絶縁などのような広範な分野の用途に使用することができるが、好ましくは、液体処理材料、とりわけ吸収性物品、例えば、乳児及び/又は成人用の使い捨ておむつ、婦人用ケア物品(いわゆる生理用パッド又はタンポン)などに使用される。
【0084】
本発明の架橋繊維が、従来の非架橋繊維又はこれまでに既知の架橋繊維から製造された同等の密度の吸収性コアに比べて、液体捕捉速度、液体分配速度、及び一時的な液体保管能力が挙げられるがこれらに限定されない、大幅に改善された流体処理特性を有する吸収性コアを製造するのに使用できることが見出された。さらに、これらの改善された吸収力の結果を、湿潤時弾力性のレベルの増加と併せて得ることもできる。湿潤時弾力性という用語は、本発明の状況では、湿ったパッドが、圧縮力に曝される時、及び圧縮力から解放される時に、その元の形状及び体積に跳ね戻る能力を指す。未処理のセルロース繊維及びこれまでに既知の架橋繊維から製造されたコアに比べ、本発明の繊維から製造された吸収性コアは、湿潤及び乾燥圧縮力から解放されると、その元の体積のかなり高い割合を回復する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を含む繊維性材料であって、
該繊維が、放射線エネルギーを受けると架橋結合を形成することができる、共有結合した放射線活性可能基を含むポリマー樹脂を含み、前記放射線活性可能基が、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンジル、キサントン類からなる群から、好ましくはベンゾフェノン類の群から選択される、ことを特徴とする、繊維性材料。
【請求項2】
前記セルロースを主体とする繊維が、捲縮された繊維、カールされた繊維、撚られた繊維である、請求項1に記載の繊維性材料。
【請求項3】
前記ポリマー樹脂が、少なくとも85%の架橋度まで架橋する時、30℃超過のTgを有する、請求項1又は2に記載の繊維性材料。
【請求項4】
前記樹脂が、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、イソブチレン、スチレン、イソプレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートアクリレート、エポキシアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、及びウレタンアクリレート類の群から選択されるモノマー分子を含むポリマーの主鎖を含む、請求項1に記載の繊維性材料。
【請求項5】
前記ポリマー樹脂が、未反応の状態で繊維及び樹脂の50重量%未満の量で適用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維性材料。
【請求項6】
前記ポリマー樹脂が、反応した状態で0.25%超過量で適用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維性材料。
【請求項7】
前記ポリマー樹脂が液体キャリア中に可溶性又は分散性である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維性材料。
【請求項8】
前記ポリマー樹脂に与える前記放射線エネルギーが、UV、IR光の群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維性材料。
【請求項9】
放射線エネルギーを受けずに架橋結合を形成できる第二の架橋材料をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の繊維性材料。
【請求項10】
前記第二の架橋材が、アルデヒド及び尿素を主体とするホルムアルデヒド;カルボン酸、好ましくは少なくとも3つのカルボキシル基を含有するC2〜C9のポリカルボン酸、好ましくはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、タルトレートモノコハク酸、マレイン酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル−co−マレアート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル−co−イタコネート)コポリマー、アクリル酸のコポリマー類、及びマレイン酸のコポリマー類からなる群から選択されるもの、からなる群から選択される、請求項9に記載の繊維性材料。
【請求項11】
前記架橋が、前記セルロース繊維と同じ又は異なるセルロース分子間の架橋である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の繊維性材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の繊維を含む繊維性凝集体。
【請求項13】
異なる架橋度の放射線活性可能ポリマー樹脂の、事前に選択された少なくとも2つの領域を含む、請求項12に記載の繊維性凝集体。
【請求項14】
前記事前に選択された少なくとも2つの領域が、それに適用される異なる相対量の前記ポリマー樹脂を有する、請求項13に記載の繊維性凝集体。
【請求項15】
セルロース繊維を処理する方法であって、該方法が、
a)セルロース繊維を提供する工程、
b)繊維凝集体を形成する工程
を含み、さらに、
f)前記繊維へ放射線活性可能樹脂を適用する工程、
g)前記樹脂の放射線活性型硬化工程
を含むことを特徴とし、ここで、該工程がa)の後にb)の順番で実行される方法。
【請求項16】
中間体ウェブの形成(d)及び分解(e);又は、非放射線活性可能樹脂の適用(h)及びその非放射線活性型架橋の適用(i);又は、前記繊維若しくは前記ウェブの移送(c)のプロセス工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維への放射線活性可能樹脂の適用(f);又は、前記樹脂の放射線活性型硬化(g);又は、中間体ウェブの形成(d)及び分解(e);又は、非放射線活性可能樹脂の適用(h)及びその非放射線活性型架橋(i);又は、前記繊維若しくは前記ウェブの移送(c)のうち、1つ以上の工程が2回以上実行される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記放射線活性可能樹脂が、形成された繊維凝集体の予め定められた領域に選択的に適用されるか、又は形成された繊維凝集体の予め定められた領域に予め定められた種々の濃度で選択的に適用される、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線活性可能樹脂を硬化させる放射線が、前記形成された繊維凝集体の予め定められた領域に適用される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線活性可能樹脂が、UV放射線に曝されることによって活性化される、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記放射線活性可能樹脂が、前記凝集体の予め選択された異なる領域に予め選択された種々の強度で適用される、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2007−211392(P2007−211392A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141836(P2007−141836)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【分割の表示】特願2003−503880(P2003−503880)の分割
【原出願日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】