説明

放射線測定システム、放射線量計固定治具及び放射線測定用容器

【課題】放射線量計を用いてバックグラウンド測定の測定値と本測定の測定値とを差し引いて得られる正味の放射線量又はこれに関連する値を正確に測定する。
【解決手段】測定試料を収容する収容容器3に放射線量計2を固定する放射線量計固定治具5であって、放射線量計2を保持するとともに、収容容器3を着脱可能に支持し、放射線量計2のセンシング部21が収容容器3内に位置した状態で、放射線量計2を収容容器3に固定するものであり、放射線量計2による収容容器3内におけるバックグラウンド測定と、収容容器3に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、放射線量計2のセンシング部21を収容容器3に対して同一位置に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線測定システム、放射線量計を固定するための固定治具及び放射線測定用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線による人体への影響度合いを表す放射線量(線量当量率(Sv/h))や、飲料水、野菜、原乳、農畜産物及び魚介類などの食品の放射性物質汚染の度合いを表す放射能濃度(Bq/kg)が大きな関心事となっている。
【0003】
このような状況の下、各自治体において、生活環境における放射線量の測定及び食品の放射能濃度の測定が行われるようになってきており、放射能濃度を簡易な方法で測定することを切望している。
【0004】
ここで、非特許文献1に示すように、簡易な放射能濃度を測定する方法として、底部が内側に凹んでおり、所定容積(例えば2L)を有するマリネリ容器を用いた方法がある。この方法は、マリネリ容器の凹みに放射線量計を配置して、バックグラウンド測定及び本測定を行い、本測定の測定値からバックグラウンド測定の測定値を差し引いて正味の値(CPS(1秒間あたりの放射線の計数率))を計算し、正味の値(CPS)と換算係数(Bq/L/CPS)とから測定試料の放射能濃度(Bq/kg)を求めるものである。
【0005】
ところが、このマリネリ容器を用いた測定では、マリネリ容器と放射線量計との位置関係について厳密には記載されておらず、バックグラウンド測定と本測定とでマリネリ容器と放射線量計との位置関係がずれてしまう可能性があるという問題がある。そして、この位置ずれによって、バックグラウンド測定の測定値(放射線量)と本測定の測定値に重畳するバックグラウンドの放射線量とが異なることになり、本測定の測定値からバックグラウンド測定の測定値を差し引いたとしても、正味の値が不正確なものとなる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」、厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課、平成14年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、放射線量計を用いてバックグラウンド測定の測定値と本測定の測定値とを差し引いて得られる測定試料の正味の放射線量又はこれに関連する値を正確に測定することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る放射線測定システムは、放射線量を測定する放射線量計と、測定試料を収容する収容容器と、前記放射線量計のセンシング部が前記収容容器内に位置した状態で、前記放射線量計を前記収容容器に対して固定する固定機構とを備え、前記固定機構が、前記放射線量計による前記収容容器内におけるバックグラウンド測定と、前記収容容器に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、前記放射線量計のセンシング部を前記収容容器に対して同一位置に固定するものであることを特徴とする。なお、放射線量計のセンシング部を収容容器内に位置した状態とは、収容容器における測定試料が収容される内部空間内にセンシング部を位置させた状態、又は収容容器の側壁において内側に凹んだ凹部内にセンシング部を位置させた状態である。
【0009】
このようなものであれば、収容容器に放射線量計を固定する固定機構を有し、この固定機構がバックグラウンド測定及び本測定において放射線量計のセンシング部を収容容器に対して同一位置に固定することから、本測定の測定値に重畳するバックグラウンドの放射線量と、バックグラウンド測定により得られた測定値とを同一にすることができ、本測定の測定値からバックグラウンド測定の測定値を差し引いて得られる測定試料の正味の値を、位置決めされていない場合より正確に測定することができる。このように測定試料に由来する正味の放射線量を正確に測定することができるので、当該測定試料の放射能濃度を正確に算出することができる。したがって本発明によれば、比較的安価な携帯型の放射線量計を用いて測定試料の放射能濃度を簡易に且つ正確測定することができる。なお、放射線量計により出力される測定値としては、CPS(1秒間あたりの放射線の計数率)、CPM(1分間あたりの放射線の計数率)、μSv/h等が考えられる。
【0010】
放射線量計を小型化することにより携帯性を向上させて使い勝手を良くするためには、前記放射線量計が、フォトダイオードを用いたものであることが望ましい。なお、一般的に使用されているNaI(Tl)シンチレータをシンチレータとして用いた場合には、光検出器に光電子増倍管を用いており、この光電子増倍管により放射線量計を小型化することが難しいという問題がある。
【0011】
放射線量計を小型化するとともに放射線の検出感度を良くするためには、前記放射線量計が、CsIシンチレータを有しており、このCsIシンチレータにより生じる光を前記フォトダイオードにより検出することが望ましい。なお、シンチレータにCsIシンチレータを用いた場合には、その発光の波長域の関係で、光電子増倍管を用いると感度(分解能)が低下してしまう。そこで、CsIシンチレータを用いた場合には、発光の波長域の関係の関係によりフォトダイオードを用いることで放射線の検出感度を良くすることができる。小型化できることにより、放射線量計、収容容器及び固定機構を用いた放射線測定システムの使い勝手を向上させることができる。
【0012】
また本発明に係る放射線量計固定治具は、測定試料を収容する収容容器に、放射線量を測定する放射線量計を固定する放射線量計固定治具であって、前記放射線量計を保持するとともに、前記収容容器に着脱可能に設けられており、前記放射線量計のセンシング部が前記収容容器内に位置した状態で、前記放射線量計を前記収容容器に固定するものであり、前記放射線量計による前記収容容器内におけるバックグラウンド測定と、前記収容容器に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、前記放射線量計のセンシング部を前記収容容器に対して同一位置に固定するものであることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、放射線量計固定治具によって、バックグラウンド測定及び本測定において放射線量計のセンシング部を収容容器に対して同一位置に固定することから、本測定の測定値に乗るバックグラウンドの放射線量と、バックグラウンド測定により得られた測定値とを同一にすることができ、本測定の測定値からバックグラウンド測定の測定値を差し引いて得られる測定使用の正味の値を正確に測定することができる。また、収容容器の容量を変更することで、測定レンジを柔軟に変更することができる。
【0014】
また、前記収容容器がその容器壁に前記放射線量計のセンシング部を収容可能な凹部を有するものであり、前記放射線量計固定治具が、基台に対して前記収容容器を位置決めして支持する容器支持部と、前記容器支持部に支持された収容容器の凹部に前記放射線量計のセンシング部が位置するように、前記放射線量計を前記基台に対して位置決めして支持する線量計支持部とを有することが望ましい。これならば、容器支持部に載置する収容容器の容量を変更することで、測定レンジを柔軟に変更することができる。また、収容容器及び放射線量計それぞれを基台に対して位置決めしていることにより、収容容器の凹部の形状に関係なく、放射線量計のサイズに関係なく、収容容器と放射線量計との相対位置を固定することができる。さらに、収容容器を放射線量計により支持することなく、容器支持部により支持していることから、収容容器を安定して支持することができ、収容容器が転倒して放射性物質に汚染した測定試料による外部汚染を防止することができる。
【0015】
また本発明に係る放射線測定用容器は、測定試料の放射線量を測定するために前記測定試料が収容される放射線測定用容器であって、放射線量を測定する放射線量計のセンシング部が容器内に位置する状態で、前記放射線量計を前記容器に固定する固定機構を有し、前記固定機構が、前記放射線量計による前記容器内におけるバックグラウンド測定と、前記容器に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、前記放射線量計のセンシング部を前記容器に対して同一位置に固定するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、放射線量計を用いてバックグラウンド測定の測定値と本測定の測定値とを差し引いて得られる測定試料の正味の放射線量又はこれに関連する値を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の放射線測定システムの正面から見た断面図。
【図2】同実施形態の放射線測定システムの側面から見た断面図。
【図3】同実施形態の固定機構の模式図。
【図4】第2実施形態の放射線量計固定治具の正面から見た断面図。
【図5】同実施形態の放射線量計固定治具の側面から見た断面図。
【図6】放射線量計固定治具の変形例を示す斜視図及び正面図。
【図7】放射線量計固定治具の変形例を示す側面から見た断面図。
【図8】第1実施形態の固定機構の変形例を示す断面図。
【図9】第1実施形態の固定機構の変形例を示す断面図。
【図10】第2実施形態の固定治具の変形例を示す断面図。
【図11】第2実施形態の固定治具の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<1.第1実施形態>>
以下に本発明の放射線測定システム100に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態の放射線測定システム100は、図1及び図2に示すように、放射線量を測定する放射線量計2と、測定試料を収容する収容容器3と、前記放射線量計2のセンシング部が前記収容容器3内に位置した状態で、放射線量計2を収容容器3に対してがたなく固定する固定機構4とを備えている。
【0020】
放射線量計2は、空間放射線量を測定する携帯型のものであり、図1に示すように、放射線により発光するCsI(Tl)シンチレータ21と、当該CsIシンチレータ21の発光を検出するフォトダイオード(シリコンフォトダイオード)22と、当該フォトダイオードにより得られた検出信号(電流信号)により放射線量を算出する演算器23とを有する。また、放射線量計2の機器正面には、前記演算器23により算出された測定値(放射線量(Sv/h))を表示するディスプレイ24が設けられている。その他、機器正面には、測定開始/停止をするための電源ボタン(Poworボタン)25及びブザーボタン26が設けられている。なお、図示しないが、放射線量計2には、例えばBluetooth等の無線通信機器が内蔵されており、外部機器と無線通信可能に構成されている。また、図示しないが、外部メモリや充電機器が接続されるコネクタも設けられている。また、この放射線量計2においてCsIシンチレータ21がセンシング部となる。図1に示す+印は、センシング部(CsIシンチレータ21)の正面視における中央部を示している。
【0021】
収容容器3は、図1及び図2に示すように、一定容積を有する概略直方体形状をなすものであり、本実施形態では例えばアクリル板等の透明材料から形成されている。なお、収容容器3は、概略円柱形状をなすもの等その他の形状であっても良い。
【0022】
この収容容器3は、上部開口を有する容器本体31と、当該容器本体31の上部開口を閉塞する蓋体32とを備えている。そして蓋体32の下面には、容器本体31を塞ぐ際に容器本体31に対して蓋体32を位置決めするための突起33が4つ角に設けられている。
【0023】
また蓋体32の中央部には、放射線量計2が挿入される開口部32Aが形成されている。本実施形態の開口部32Aは、放射線量計2の側周面と相似形状をなすものである。本実施形態の放射線量形2の側周面は概略矩形状をなすものであり、開口部32Aも概略矩形状をなすものである。
【0024】
固定機構4は、図3に示すように、蓋体32の開口部32Aの周囲に設けられた起立板41と、起立板41又は放射線量計2の一方に設けられた凹部42と、起立板41又は放射線量計2の他方に設けられ、前記凹部42に嵌る凸部43とを有する。
【0025】
起立板41は、前記蓋体32と同様にアクリル板から形成されており、この起立板41は、蓋体32に対して略垂直に起立している。起立板41に設けられた凹部42又は凸部43は、起立板41に沿って垂直方向に延びて形成されている。また、放射線量計2に設けられた凸部42又は凹部43は、放射線量計2の中心軸に沿って形成されている。なお、図3においては、起立板41に凸部42が形成され、放射線量計2の背面に凹部43が形成された例を示しているが、凹部42及び凸部43の配置態様はこれに限られず、種々の変形が可能である。
【0026】
このように形成された凹凸構造が嵌るように、起立板41に放射線量計2を取り付けることで、放射線量計2は、蓋体32の開口部32Aに対して垂直方向上方から下方に向かって(鉛直下方に向かって)挿入されることになる。そして、凹凸構造がそれ以上スライドしない位置(例えば、凹部42の垂直方向端面と凸部43の垂直方向端面とが接触する位置)までスライドさせることによって、放射線量計2のセンシング部21の垂直方向の(上下位置)の位置決めがされる。なお、凹凸構造により当然に水平方向(左右方向及び前後方向)の位置決めがされる。この状態で、放射線量計2のCsIシンチレータ21は、収容容器3に収容された測定試料内に埋没する。ここで、直方体形状をなすCsIシンチレータ21の一面にはフォトダイオード22が設けられており、その他の5面において、放射線を受ける入射面の面積が相対的に大きい少なくとも1面(図2においては左側面及び右側面)の前方には、相対的に多くの測定試料が配置される構成としている。
【0027】
この固定機構4により、放射線量計2が固定機構4により固定された状態で、放射線量計2のセンシング部21の中心が収容容器3の中心と略一致することになる。したがって、収容容器3内に測定試料を収容した状態においては、放射線量計2のセンシング部21の周囲に均等に測定試料が位置することになり、測定試料からの放射線量を精度良く測定することができる。また、放射線量計2による収容容器3内のバックグラウンド測定と、収容容器3に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、放射線量計2のセンシング部21を収容容器3に対して同一位置に固定することができる。
【0028】
次にこのように構成した放射線測定システム100を用いたバックグラウンド測定及び本測定、並びにそれらの測定結果を用いた放射能濃度の算出について説明する。
【0029】
まず、収容容器3を空にした状態で、容器本体31を蓋体32で閉塞する。そして、蓋体32の起立板41に放射線量計2を取り付ける。なお、放射線量計2は、本測定と測定条件を同じにするため汚染防止用のビニル(包装体)に収容している。この状態で、放射線量計2の電源ボタン25を押すことで、バックグラウンド測定を行う。そして、得られたバックグラウンド測定における測定値を記録する。
【0030】
このバックグラウンド測定が終了した後、容器本体31から蓋体32を取り外し、容器本体31内に測定試料を収容し、再び蓋体32で容器本体31を閉塞する。そして、蓋体32の起立板41に放射線量計2を取り付ける。ここで、放射線量計2のディスプレイ24は外部から視認可能なように開口部32A外に位置している。このとき、固定機構4により放射線量計2のセンシング部21の固定位置は、バックグラウンド測定の固定位置と同一位置となっている。なお、放射線量計2には、汚染防止用のビニルに収容している。この状態で、放射線量計2の電源ボタン25を押すことで、本測定を行う。そして、得られた本測定における測定値を記録する。なお、バックグラウンド測定を終了した後に本測定を行う際には、蓋体32の起立板41に放射線量計2を固定したままであっても良い。
【0031】
上記バックグラウンド測定及び本測定で得られた各測定値(μSvやCPS)を差し引くことで、測定試料の正味の値(CPS)を算出する。別途収容容器3に収容した測定試料の重量を計測しておき、この重量と、正味の値(CPS)及び測定値(CPS)及び放射能濃度(Bq/kg)との関係を示す検量線又は変換係数を用いて、測定試料の放射能濃度を算出する。
【0032】
このように構成した本実施形態に係る放射線測定システム100によれば、収容容器3に放射線量計2を固定する固定機構4を有し、この固定機構4がバックグラウンド測定及び本測定において放射線量計2のセンシング部21を収容容器3に対して同一位置に固定することから、本測定の測定値に重畳するバックグラウンドの放射線量と、バックグラウンド測定により得られた測定値とを同一にすることができ、本測定の測定値からバックグラウンド測定の測定値を差し引いて得られる測定試料の正味の値を正確に測定することができる。このように測定試料に由来する正味の放射線量を正確に測定することができるので、当該測定試料の放射能濃度を正確に算出することができる。したがって、比較的安価な携帯型の放射線量計2を用いて測定試料の放射能濃度を簡易に且つ正確測定することができる。
【0033】
<<2.第2実施形態>>
以下に本発明の放射線量計固定治具に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
本実施形態の放射線量計固定治具5は、放射線量計2及び収容容器3の間に介在して設けられて、放射線量計2を収容容器3に固定するものであり、放射線量計2を保持するとともに、収容容器3を着脱可能に支持するものである。
【0035】
具体的このものは、図4及び図5に示すように、底壁の中央部に放射線量計2のセンシング部21を収容可能な凹部が形成された収容容器3を基台51に対して位置決めして支持する容器支持部52と、前記容器支持部52に支持された収容容器3の下部に放射線量計2を基台51に対して位置決めして支持する線量計支持部53とを備えている。
【0036】
容器支持部52は、基台51に対して収容容器3を所定位置に支持するものであり、基台51から上部に延出して設けられた複数本の支柱521と当該支柱521の先端を連結するように設けられた支持リング体522とを有する。そして、この支持リング522に嵌るように収容容器3が載置されて、収容容器3の鍔部等の側周縁部が支持リング522の上面に接触することで、支持リング522に収容容器3が載置される。これによって収容容器3が基台51に対して垂直方向(上下方向)及び水平方向(前後方向及び左右方向)に位置決めされて支持される。
【0037】
なお、容器支持部52は、複数本の支柱521のみを有するものであっても良い。この場合、支柱521の上端面に収容容器3の鍔部等の側周縁部が接触することになる。ここで複数本の支柱521により容器支持部52を構成していることから、放射線量計2及び収容容器3を基台51に取り付けた状態において、各支柱521の間に形成される隙間(操作空間)により放射線量計2の電源ボタン25等を操作し易くすることができる。その他、図6及び図7に示すように、容器支持部52を、収容容器が載置される載置部52xと、当該載置部52xから下方に延びる脚部52yと一体形成したものであっても良い。なお、図6等における載置部52xには、左右両側の少なくとも一方に取っ手52x1が設けられており、固定治具5に放射線量計2を取り付ける作業を簡単化している。つまり、取っ手52x1と線量計支持部53との位置関係が固定されているため、取っ手52x1をつかむことで放射線量計の取り付ける際の向きを容易に看取することができる。また、脚部52yはその正面側に線量計2操作用の開口部が形成されている。なお、この固定治具5に支持される収容容器3は底壁に行くにつれて縮径するものであり、測定試料が収容されていない複数の収容容器を重ね合わせて保存することができ、省スペース化することができる。なお、摺良容器3を使い捨てのものとしても良い。また、収容容器3の凹部3Mの形状を放射線量計2の先端部の面に沿った形状として、固定治具5に放射線量計2及び収容容器を取り付けた状態で、凹部3Mと放射線量計2との間に形成される隙間が無いあるいはその隙間を小さくするようにしている。これにより、凹部3Mと放射線量計2との間に形成される隙間による放射線の減衰を起こらないあるいは起こりにくいように構成している。
【0038】
線量計支持部53は、基台51の上面において、前記容器支持部52により支持される収容容器3の中心部に放射線量計2が位置するように、つまり、収容容器3の凹部3M内に放射線量計2のセンシング部21が位置するように、基台51に対して放射線量計2を位置決めして支持するものである。本実施形態の線量計支持部53は、放射線量計2の後端部の4つの側面それぞれに接触して放射線量計2を基台51に対して水平方向に位置決めして支持する接触板である。なお、線量計支持部53は、基台51の上面に放射線量計2の後端部が嵌る凹部を形成することにより、放射線量計2を基台51に対して水平方向に位置決めして支持するように構成しても良い。
【0039】
次にこのように構成した放射線量計固定治具5を用いた測定方法について説明する。
【0040】
まず基台51上に線量計支持部53により放射線量計2を起立した状態で取り付ける。その後、収容容器3を容器支持部52に支持させて取り付ける。なお、放射線量計2のセンシング部21を収容容器3の凹部3M内に入れるように、放射線量計2及び収容容器3を同時に取り付けるようにしても良い。この状態で、放射線量計2の電源ボタン25を押すことで、バックグラウンド測定を行う。そして、得られたバックグラウンド測定における測定値を記録する。
【0041】
このバックグラウンド測定が終了した後、収容容器3を容器支持部52から取り外す。このとき、放射線量計2は固定治具5に取り付けたままである。そして、取り外した収容容器3に測定試料を収容してその重量を測定する。なお容器3自体の重量は予め測定しておく。次に、測定試料を収容した収容容器3を容器支持部52に取り付ける。これにより、放射線量計2のセンシング部21は、水平方向全周及び上部が測定試料により囲まれた状態となる。また、放射線量計2のディスプレイ24は、凹部3M外に位置しており、外部から視認可能である。このとき、収容容器3は容器支持部52により基台51に対して位置決めされ、放射線量計2は位置決め部53により基台51に対して位置決めされており、収容容器3に対する放射線量計2のセンシング部21の固定位置は、バックグラウンド測定の固定位置と同一位置となる。この状態で、放射線量計2の電源ボタン25を押すことで、本測定を行う。そして、得られた本測定における測定値を記録する。
【0042】
上記バックグラウンド測定及び本測定で得られた各測定値(CPS)を差し引くことで、測定試料の正味の値(CPS)を算出する。別途測定した測定試料の重量と、正味の値(CPS)及び測定値(CPS)及び放射能濃度(Bq/kg)との関係を示す検量線又は変換係数を用いて、測定試料の放射能濃度を算出する。
【0043】
このように構成した本実施形態に係る放射線量計固定治具5によれば、バックグラウンド測定及び本測定において放射線量計2のセンシング部21を収容容器3に対して同一位置に固定することから、本測定の測定値に重畳するバックグラウンドの放射線量と、バックグラウンド測定により得られた測定値とを同一にすることができ、本測定の測定値からバックグラウンド測定の測定値を差し引いて得られる測定試料の正味の値を正確に測定することができる。また、容器支持部52に載置する収容容器3の容量を変更することで、測定レンジを柔軟に変更することができる。さらに、収容容器3及び放射線量計2それぞれを基台51に対して位置決めしていることにより、収容容器3の凹部3Mの形状に関係なく、放射線量計2のサイズに関係なく(但し、凹部3M内に入る大きさのセンシング部21を有するものに限る。)、収容容器3と放射線量計2との相対位置を固定することができる。その上、収容容器3を放射線量計2により支持することなく、容器支持部52により支持していることから、収容容器3を安定して支持することができ、収容容器3が転倒して放射性物質に汚染した測定試料による外部汚染を防止することができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0045】
例えば前記第1実施形態の固定機構としては、面ファスナー(マジックテープ(登録商標))を用い、起立板又は放射線量計の一方にフック面を設け、起立板又は放射線量計の他方にループ面を設けることにより構成しても良い。また、起立板及び放射線量計を両面テープで接着することにより構成しても良い。また、起立板41に放射線量計を紐状体44で締め付けて固定するものであっても良い(図8参照)。このとき収容容器3と放射線量計2との位置決めは、放射線量計2の側面と収容容器3の蓋体32の一部との接触により行っても良いし、収容容器3の蓋体32又は起立板41に位置決め用の突起等の位置決め構造を形成することにより行っても良い。
【0046】
その他の固定機構としては、図9に示すように、放射線量計2の外側周面(左右側面2m、2n)と蓋体32に形成された開口部32Aの内面32Am、32Anとの接触により放射線量計2を蓋体32に対して固定するように構成しても良い。なお、放射線量計2の左右側面2m、2nは、先端に行くにしたがって左右側面2m、2nの距離が縮小する傾斜部分を有しており、この傾斜部分に開口部32Aの内面32Am、32Anが接触する。このようなものであれば、固定機構の構成を簡略化することができる。
【0047】
また、前記第1実施形態では、収容容器の一部に設けた開口部に放射線量計のセンシング部を挿入するものであったが、収容容器の一部に設けた凹部に放射線量計のセンシング部を挿入するものであっても良い。このように凹部に放射線量計のセンシング部を挿入するものであれば、センシング部が直接測定試料に接触することが無いので、放射線量計を汚染防止用のビニル(包装体)に収容する手間を省くことができる。
【0048】
前記第2実施形態の放射線量計固定治具としては、上部開口を有する収容容器3の上部開口を塞ぐように設けられて、放射線量計2を容器3内に配置するものであっても良い。具体的にこの放射線量計固定治具6は、図10に示すように、収容容器3の上部開口を塞ぐとともに、放射線量計2の一部が挿入される凹部61Mを有する蓋部材61と、蓋部材61に対して放射線量計2を固定する固定機構62とを有する。固定機構62としては、例えば、凹部61Mの内面と放射線量計2の側面との接触により蓋部材61に対して位置決めして固定するものの他、凹部61Mの内面と放射線量計2の側面との間にスペーサを挿入して蓋部材61に対して位置決めして固定するもの等が考えられる。
【0049】
前記第2実施形態の固定治具は、収容容器の底壁に設けられた凹部に放射線量計を配置するものであったが、凹部が底壁以外の側壁、例えば側周壁に設けられている場合には、図11に示すように、収容容器3を支持する容器支持部52と、当該容器支持部52により支持された収容容器3の凹部3M内に放射線量計2のセンシング部21を位置させるように位置決めして支持する線量計支持部53とを有するものが考えられる。この線量計支持部53は、容器支持部52により支持された収容容器3の側方において、放射線量計2を水平状態で支持するものである。
【0050】
その上、前記各実施形態では、放射線量計のセンシング部を含む一部を収容容器内又はその凹部内に位置させるものであったが、放射線量計全体を収容容器内に位置させるように構成しても良い。このとき収容容器内部に放射線量計を位置決めするための位置決め構造を設ける。位置決め構造としては、収容容器の内面に設けられて放射線量計の側面に接触する接触突起を設けることが考えられる。
【0051】
また、例えば飲料水、野菜、原乳、農畜産物及び魚介類などの測定試料別毎の計量目盛を収容容器に設けることで測定をより一層簡便にすることができ、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0052】
前記実施形態の放射線量計は、CsIシンチレータ及びフォトダイオードを用いたものであったが、NaIシンチレータ及び光電子増倍管を用いたものであっても良いし、例えばゲルマニウム等の半導体検出器を用いたものであっても良い。
【0053】
また、収容容器自体に放射線量計を位置決め固定するための固定機構を設けたものであっても良い。例えば、図11に示す蓋部材61と収容容器3とを併せて収容容器とすることで、固定機構を有する収容容器を構成することが考えられる。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・放射線測定システム
2 ・・・放射線量計
21 ・・・CsIシンチレータ(センシング部)
22 ・・・フォトダイオード
3 ・・・収容容器
4 ・・・固定機構
5 ・・・放射線量計固定治具
51 ・・・基台
52 ・・・容器支持部
53 ・・・線量計支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量を測定する放射線量計と、
測定試料を収容する収容容器と、
前記放射線量計のセンシング部が前記収容容器内に位置した状態で、前記放射線量計を前記収容容器に対して固定する固定機構とを備え、
前記固定機構が、前記放射線量計による前記収容容器内におけるバックグラウンド測定と、前記収容容器に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、前記放射線量計のセンシング部を前記収容容器に対して同一位置に固定するものである放射線測定システム。
【請求項2】
前記放射線量計が、フォトダイオードを用いたものである請求項1記載の放射線測定システム。
【請求項3】
前記放射線量計が、CsIシンチレータを有しており、このCsIシンチレータにより生じる光を前記フォトダイオードにより検出する請求項2記載の放射線測定システム。
【請求項4】
測定試料を収容する収容容器に、放射線量を測定する放射線量計を固定する放射線量計固定治具であって、
前記放射線量計を保持するとともに、前記収容容器を着脱可能に支持し、前記放射線量計のセンシング部が前記収容容器内に位置した状態で、前記放射線量計を前記収容容器に固定するものであり、
前記放射線量計による前記収容容器内におけるバックグラウンド測定と、前記収容容器に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、前記放射線量計のセンシング部を前記収容容器に対して同一位置に固定するものである放射線量計固定治具。
【請求項5】
前記収容容器がその容器壁に前記放射線量計のセンシング部を収容可能な凹部を有するものであり、
前記放射線量計固定治具が、基台に対して前記収容容器を位置決めして支持する容器支持部と、前記容器支持部に支持された収容容器の凹部に前記放射線量計のセンシング部が位置するように、前記放射線量計を前記基台に対して位置決めして支持する線量計支持部とを有する請求項4記載の放射線量計固定治具。
【請求項6】
測定試料の放射線量を測定するために前記測定試料が収容される放射線測定用容器であって、
放射線量を測定する放射線量計のセンシング部が容器内に位置する状態で、前記放射線量計を前記容器に固定する固定機構を有し、
前記固定機構が、前記放射線量計による前記容器内におけるバックグラウンド測定と、前記容器に収容された測定試料の放射線量を測定する本測定とで、前記放射線量計のセンシング部を前記容器に対して同一位置に固定するものである放射線測定用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−36957(P2013−36957A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175644(P2011−175644)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】