説明

放射線測定装置と同装置からのデータ通信システム及び放射線異常判別システム

【課題】 簡易な構造で放射線のエネルギを高精度に求めることができる放射線測定装置を提供する。
【解決手段】
放射線のもつエネルギを検出し、当該エネルギに相当する波高のアナログ電気信号を出力する化合物半導体検出器20と、当該検出器20から出力されたアナログ電気信号を増幅して出力する積分アンプ21と、この積分アンプ21からの出力信号を、あらかじめ設定されたサンプリング間隔でデジタル変換するA/Dコンバータ25と、デジタル変換された電気信号をデータ処理して、検出器に入力した放射線のエネルギを求める中央処理部(データ処理部)61と、を含む。積分アンプ21は、A/Dコンバータ25のサンプリング間隔よりも長い時間をかけて出力信号を放電するように時定数を設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性物質から放射された放射線量を測定するための放射線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の福島第一原子力発電所で発生した事故に伴い、我が国のみならず世界各国の人々が放射線の人体への影響に関心を抱いており、特に放射性物質が飛散したと思われる地域に住む人々からは、当該地域が如何ほどの放射線量となっているか自らの手で測定したいとの要望が多々寄せられている。
このような要望に対応できる簡易タイプの放射線測定装置は、従来も提案されているが(例えば、特許文献1、2を参照)、いずれも充分な測定精度を有しているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−306268号公報
【特許文献2】特開2005−321274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した人々の要望に応えるべく開発されたもので、簡易な構造で放射線のエネルギを高精度に求めることができる放射線測定装置の提供を目的とする。
また、放射線測定装置で測定され且つ送信されたデータが、改竄されていないことを判別し、正確度の高い解析結果を求めることのできるデータ通信システムの提供を目的とする。
さらに、本発明は、同放射線測定装置から出力されるデータの通信システム、及び同放射線測定装置から出力されるデータに基づき放射線の異常を的確に判別できる放射線異常判別システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、放射線のもつエネルギを検出し、当該エネルギに相当する波高のアナログ電気信号を出力する検出器と、
検出器から出力されたアナログ電気信号を増幅して出力する積分アンプと、
積分アンプからの出力信号を、あらかじめ設定されたサンプリング間隔でデジタル変換するA/Dコンバータと、
デジタル変換された電気信号をデータ処理して、検出器に入力した放射線のエネルギを求めるデータ処理部と、を含み、
積分アンプは、A/Dコンバータのサンプリング間隔よりも長い時間をかけて出力信号を放電するように時定数を設定してあることを特徴とする。
【0006】
このように構成することで、A/Dコンバータにおけるサンプリングに際して、積分アンプからの出力信号を取りこぼすエラーを回避して、高精度なデータ処理を行うことが可能となる。
【0007】
ここで、積分アンプの時定数は、A/Dコンバータのサンプリング間隔において出力信号の波高値の減少が5%以内に抑えられる値に設定することが好ましい。
このように設定することで、積分アンプからの出力信号のピーク波高値又はその近傍の波高値を確実にA/Dコンバータにてサンプリングすることができる。積分アンプからの出力信号のピーク波高値は、検出器で検出した放射線のエネルギに相当する値であり、かかるピーク波高値か少なくともその近傍の波高値をサンプリング可能とすることで、高精度な放射線のエネルギを求めることができる。
【0008】
また、検出器としては、化合物半導体検出器を用いることで、同様の機能を有するシンチレーション検出器に比べて安価に製作することが可能となる。
【0009】
本発明は、ガイガーミュラー検出器で構成された第2の検出器と、
第2の検出器から出力されたアナログ電気信号が、あらかじめ設定してあるしきい値を超えたときにパルス状の信号を出力するコンパレータと、
コンパレータからの信号出力数を計数するカウンタと、を含み、
データ処理部が、カウンタからの出力に基づき単位時間あたりの放射線検出個数(cpm)を求める構成を付加することもできる。
【0010】
さらに加えて、データ処理部が、検出器からの出力に基づき求めた放射線のエネルギをもって特定された変換係数によって、第2の検出器からの出力に基づき求めた単位時間あたりの放射線検出個数データ(cpm)を、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率(μSv/hなど)に変換する機能を備えた構成とすれば、かかるデータ変換を高精度に行うことが可能となる。なお、本明細書では、cpmやμSv/hなどの単位を標記しているが、これらの単位に限定されるものではない。
【0011】
ガイガーミュラー検出器からの出力に基づき求めた単位時間あたりの放射線検出個数データ(cpm)を、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率(μSv/hなど)に変換する場合、公知の変換係数を用いた所定の演算式をもってその換算処理は実行される。ここで、公知の換算係数は、放射線を放出している核種(放射性物質)や、放射線のエネルギによって大きく異なるために、核種やエネルギが特定されない限り、cpmから線量等量率(μSv/hなど)へ正確に換算することはできない。
従来市販されているガイガーミュラー検出器を用いた簡易型の放射線測定装置にあっては、核種の同定や放射線エネルギの測定を行うことなく、通常もっとも多いであろうと考えられる核種(例えば、セシウム137)を想定して、換算係数を特定しcpmから線量等量率(μSv/hなど)へ換算する方式が採られていた。よって、この種の簡易型の放射線測定装置における線量等量率(μSv/hなど)の測定結果は信頼性に欠けるものであった。
【0012】
これに対して本発明では、検出器からの出力に基づき求めた放射線のエネルギをもって変換係数を特定するため、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率(μSv/hなど)を高い信頼性をもって求めることができる。
なお、検出器からの出力に基づき求めた放射線のエネルギから核種を同定し、その核種から変換係数を求める構成も、本発明には含まれている。
【0013】
具体的には、核種ごとに放射線エネルギのピーク位置と強度が登録された放射性同位元素データベースをあらかじめ保存してあるメモリを備え、
前記データ処理部は、前記検出器からの出力に基づき放射線のスペクトルを求め、当該スペクトルをスムージング処理し、次いでバックグラウンド除去処理を行ってピーク成分を抽出し、当該抽出されたピーク成分からピーク位置と強度を求め、当該ピーク位置と強度を前記放射性同位元素データベースと照合して核種同定処理を行い、当該同定した核種から変換係数を特定して、当該変換係数により、前記第2の検出器からの出力に基づき求めた単位時間あたりの放射線検出個数データを、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率のデータに変換する機能を備えている。
【0014】
また、核種ごとに放射線のスペクトルが登録された放射性同位元素データベースをあらかじめ保存してあるメモリを備え、
前記データ処理部は、前記検出器からの出力に基づき放射線のスペクトルを求め、当該スペクトルをスムージング処理し、次いで当該スペクトル全体を前記放射性同位元素データベースと照合して核種同定処理を行い、当該同定した核種から変換係数を特定して、当該変換係数により、前記第2の検出器からの出力に基づき求めた単位時間あたりの放射線検出個数データを、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率のデータに変換する機能を備えた構成とすることもできる。
【0015】
また、本発明に係る放射線測定装置は、データ処理部から出力されるデータを外部のサーバへ送るデータ通信システムを構築することができる。
すなわち、放射線測定装置は、
個別の放射線測定装置ごとにあらかじめ設定された暗号キーと、データ処理部から出力されるデータとを含むパラメータに基づき、データ処理部から出力される個々のデータごとに固有のハッシュ値(装置ハッシュ値)を生成する装置ハッシュ値生成手段と、
データ処理部から出力されるデータ及び装置ハッシュ値を含むデータを送信するデータ送信手段と、を備え、
暗号キーは、データ送信手段から外部に送信されず、
サーバは、データが送られてくる各放射線測定装置に設定された暗号キーをあらかじめ記憶する手段と、当該暗号キーと放射線測定装置から送られてきたデータとに基づき放射線測定装置と同様にハッシュ値(比較用装置ハッシュ値)を生成する手段と、生成した比較用装置ハッシュ値を放射線測定装置から送られてきた装置ハッシュ値と比較して当該放射線測定装置から送られてきたデータの改竄の有無を判別する手段と、を含むシステムを構築することができる。
【0016】
さらに、放射線測定装置から送られてきたデータを受信し、インターネットを経由してサーバへ送信する携帯端末を備え、
携帯端末は、
放射線測定装置から送られてきたデータを受信する受信手段と、
放射線測定装置から送られてきたデータに含まれる装置ハッシュ値と、当該携帯端末で付加されるデータとを含むパラメータに基づき、当該携帯端末に固有のハッシュ値(端末ハッシュ値)を生成する端末ハッシュ値生成手段と、
放射線測定装置から送られてきたデータ、端末ハッシュ値、及び当該携帯端末で付加したデータをまとめてサーバへ送信する端末データ送信手段と、を備え、
サーバは、携帯端末から受信したデータに基づき当該携帯端末と同様にハッシュ値(比較用端末ハッシュ値)を生成する手段と、生成した比較用端末ハッシュ値を携帯端末から送られてきた端末ハッシュ値と比較して当該携帯端末から送られてきたデータの改竄の有無を判別する手段と、を含むシステムとしてもよい。
【0017】
また、本発明に係る放射線測定装置は、同装置を所持する多数のユーザから送られてくるデータに基づき放射線の異常を判別する放射線異常判別システムを構築することもできる。
すなわち、放射線測定装置は、測定時刻に関するデータ(時刻データ)を出力する手段と、当該放射線測定装置とともにユーザが所持する携帯端末へ、データ処理部から出力されるデータに時刻データを付加して送信するデータ送信手段とを備え、
携帯端末は、GPSを利用した位置情報の取得機能を備え、放射線測定装置から送られてきたデータに当該位置情報を付加して、インターネットを経由して外部のサーバへ送信する中継基地としての機能を備え、
外部のサーバは、携帯端末から送られてきた位置情報を含むデータに基づき放射線の異常を判別する機能を備えるシステムを構築することができる。
【0018】
ここで、サーバは、次のような基準をもって放射線の異常を判別する構成とすることができる。
(イ)多数のユーザが所持する放射線測定装置のデータ処理部から出力されたデータが放射線の異常を示しており、時間経過に伴う放射線の変化量は所定のしきい値よりも小さく、且つ当該放射線の異常を示すデータが送られてきた放射線測定装置が所定範囲よりも狭い地域に集中しているときは、当該地域にホットスポットが存在すると判別する
(ロ)多数のユーザが所持する放射線測定装置のデータ処理部から出力されたデータが放射線の異常を示しており、時間経過に伴う放射線の変化量は所定のしきい値よりも小さく、且つ当該放射線の異常を示すデータが送られてきた放射線測定装置が所定範囲よりも広い地域に分散しているときは、当該地域での広域汚染が生じていると判別する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の放射線測定装置によれば、簡易な構造で放射線のエネルギを高精度に求めることができる。
また、放射線測定装置で測定され且つ送信されたデータが、改竄されていないことを判別し、正確度の高い解析結果を求めることができる。
さらに、本発明の放射線異常判別システムによれば、放射線測定装置から出力されるデータに基づき放射線の異常を的確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線測定装置の外観を示す図で、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
【図2】GM検出器の放射線入射面に装着される保護カバーを示す図で、(a)は正面側を見た斜視図、(b)は裏面側を見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る放射線測定装置における信号処理系統の概要を示すブロック図である。
【図4】図3に続く、信号処理系統の概要を示すブロック図である。
【図5】(a)は積分アンプの構成例を示す図、(b)は積分アンプに入力されるアナログ電気信号の例を示す図、(c)(d)はそれぞれ積分アンプからの出力信号の例を示す図である。
【図6】(a)は積分アンプの時定数とA/Dコンバータのサンプリング間隔の関係を説明するための図、(b)は中央処理部で求めた放射線スペクトルの例を示す図である。
【図7】核種同定・データ変換モードにおけるデータ変換処理を示すフローチャートである。
【図8】核種の同定に用いるデータベースの一例を示す表である。
【図9】図6(b)のスペクトルに対し、同定処理を行った具体例を示す表である。
【図10】本発明の実施形態に係る本実施形態の放射線測定装置を利用したデータ通信システムを説明するための図である。
【図11】データ通信システムに組み込まれた送信データの改竄の有無を判別する機能を説明するための図である。
【図12】図11に続く、データ通信システムに組み込まれた送信データの改竄の有無を判別する機能を説明するための図である。
【図13】図12に続く、データ通信システムに組み込まれた送信データの改竄の有無を判別する機能を説明するための図である。
【図14】図13に続く、データ通信システムに組み込まれた送信データの改竄の有無を判別する機能を説明するための図である。
【図15】外部のサーバが備える放射線の異常判別機能について説明するためのフローチャートである。
【図16】メッシュ分割解析を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔放射線測定装置の構造〕
図1は本実施形態に係る放射線測定装置の外観を示す図、図2はGM検出器の放射線入射面に装着される保護カバーを示す図である。
【0022】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る放射線測定装置の外観構成を説明する。
放射線測定装置は、図1(a)に示すように、装置本体1の正面に操作部2と表示部3を配置してあり、操作部2に設けた各種操作ボタンの押圧操作をもって同装置を作動又は停止させることができる。表示部3は、例えば液晶パネルで構成してあり、この表示部3に検出結果や各操作に必要な案内が表示される。
【0023】
また、装置本体1の裏面には、図1(c)に示すように、ガイガーミュラー検出器(以下、GM検出器という)10(第2の検出器)の放射線入射面10aが配置してある。周知のとおり、GM検出器10は、α線、β線、γ線を取り込み、これらの放射線量を検出することができる放射線検出器であり、市販されている放射線測定装置に広く用いられている。このGM検出器10は、入射した放射線量に相当するパルス状の電気信号を出力するが、放射線のエネルギ分解能はない。よって、放射線のエネルギを求めることはできない。
【0024】
ここで、GM検出器10では、γ線のみならずα線、β線をも透過するマイカ製の薄膜を窓材として使用し、放射線入射面10aが形成されている。GM検出器10の内部には約1/10気圧に減圧した動作ガスを封入してあるため、窓材に触れると破損する危険がある。そこで、放射線入射面10aには、図1(c)に示すようにメッシュ状の補強部10bが金属材によって設けてある。さらに、GM検出器10の放射線入射面10aには、
図2に示すようなキャップ形状をした保護カバー4が着脱自在となっている。保護カバー4は、α線およびβ線を遮蔽して、γ線を透過する特性を有するプラスチック材や金属材で形成してある。GM検出器10の放射線入射面10aにこの保護カバー4を装着した状態では、γ線のみをGM検出器10が検出する。一方、GM検出器10の放射線入射面10aから保護カバー4を取り外した状態では、α線、β線、γ線の各放射線が取り込まれる。よって、保護カバー4を取り外した状態での検出データと、保護カバー4を装着した状態での検出データの差分をもって、α線およびβ線の放射線量を求めることができる。
【0025】
図には示されていないが、装置本体1には放射線入射面10aに保護カバー4が装着されているか否かを検出するセンサが組み込まれており、保護カバー4の有無によって、各種放射線の検出に最適な仕様へ内部回路の設定を自動変更できる構成となっている。
【0026】
また、装置本体1には、化合物半導体検出器20が、放射線入射部を装置本体1の裏面側に向けて内蔵されている。
周知のとおり、化合物半導体検出器は、他の放射線検出器に比べエネルギ分解能に優れているため、放射線のもつエネルギを精密に測定できるという特徴をもつ。半導体として、シリコン、ゲルマニウムなどの単一元素半導体と、CdTe(Cadmium Telluride、テルル化カドミウム)系、InSb(Indium Antimonide)などの化合物半導体が知られているが、本実施形態では、放射線の吸収効率が高く、またバンドギャップが大きいため室温での高抵抗化が可能なCdTe(Cadmium Telluride、テルル化カドミウム)系を用いた。CdTe系の化合物半導体検出器20は、光電効果を利用することによって、シンチレーション検出器のように放射線を光に変換する必要がなく、しかも室温で動作する高感度の検出器である。このCdTe系の化合物半導体検出器20は、放射線のもつエネルギを検出し、当該エネルギに相当する波高のアナログ電気信号を出力する検出器として機能する。この化合物半導体検出器20は、主としてγ線の検出に適している。装置本体1はプラスチックで成形されており、γ線は装置本体1を透過して化合物半導体検出器20の放射線入射部へ入射する。
【0027】
装置本体1の上面には、図1に示すように外部検出器接続用のコネクタ6が設けてあり、このコネクタ6を介してオプションにてシンチレーション検出器30や3He中性子検出器40のいずれかを接続可能となっている。コネクタ6は多ピンとなっており、高圧電源、検出器信号、温度センサ信号、検出器接続信号を入出力することができる。
【0028】
装置本体1の側面には、図1(b)に示すように、USB等の外部接続インターフェース73のソケットが設けてある。なお、装置本体1の基部は、操作者が片手で握ることができる把持部5を形成している。
【0029】
〔放射線測定装置の信号処理系統〕
図3及び図4は、本実施形態に係る放射線測定装置における信号処理系統の概要を示すブロック図である。
次に、図3及び図4を主に参照して、本実施形態に係る放射線測定装置の信号処理系統の構成を説明する。これらの図に示す信号処理系統に含まれる各構成要素は、すべて装置本体1に内蔵されている。
【0030】
図3に示すように、本実施形態の放射線測定装置は、既述したGM検出器10および化合物半導体検出器20のほか、オプションにてシンチレーション検出器30や3He中性子検出器40を接続可能となっている。これらの検出器はオプションとして、省略することもできる。
シンチレーション検出器30としては、例えばNaI(Tl)シンチレーション検出器などが好適である。NaI(Tl)シンチレーション検出器は、ヨウ化ナトリウム(NaI)の結晶(タリウム含む)を検出器として利用したもので、当該結晶に放射線が入射したときに発生する蛍光を増幅して電気信号に変換する構成となっている。このシンチレーション検出器30は、化合物半導体検出器20と同様に主としてγ線の検出に適しており、放射線のもつエネルギを検出し、当該エネルギに相当する波高のアナログ電気信号を出力する検出器として機能する。
また、3He中性子検出器40は、ヘリウム3(3He)を用いた比例計数管であり、3Heが中性子を吸収した際に生じる電荷を検出することにより電気信号へと変換する構成となっている。
【0031】
これらの各検出器は、高圧電源回路(HV回路)50から電力供給されて作動する。高圧電源回路50には、CWC(Cockcroft-Walton's high-voltage circuit コッククロフト・ウォルトン型高電圧回路)51を用いている。CWC51は、整流器とコンデンサを組み合わせた回路を多段に積み重ねた回路で、交流電圧から安定した直流高電圧を発生させることができる。
上述した検出器のうち、GM検出器10には、例えば950V程度の電源供給が必要であり、一方、化合物半導体検出器20、シンチレーション検出器30および3He中性子検出器40には、例えば700V程度の電源供給が必要である。CWC51からなる高圧電源回路50は、これら異なった電圧の電源をそれぞれ供給することができる。よって、各検出器ごとに電源を備える必要がなく、装置本体1の小形化を図ることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、後述するように、A/Dコンバータ25を一系統しか装備していないため、化合物半導体検出器20、シンチレーション検出器30、3He中性子検出器40のうちのいずれかの検出器を、操作部2からの操作指令に基づきセレクタ23が切り替えてA/Dコンバータ25へ出力するようにしている。また、これらの検出器の信号をA/Dコンバータ25へ出力せず、カウンタ42へ出力することも可能である。高圧電源回路50は十分な容量を持ち、接続したすべての検出器へ安定した高電圧を供給することができる。
【0033】
GM検出器10に放射線が入射すると、内部の気体が電離されかつそれが増幅されてパルス状のアナログ電気信号が出力される。GM検出器10からのアナログ電気信号にはノイズ成分が含まれているため、一定のしきい値を設定したコンパレータ11によりノイズ成分を除去し、GM検出器10に入射した放射線量に相当するパルス状のアナログ電気信号のみが取り出される。
このパルス状のアナログ電気信号がカウンタ12によって計数され、その計数データが図4に示す中央処理部(CPU)61に送られる。中央処理部61は、メモリ62にあらかじめ保存してあるデータ処理プログラムを実行して、カウンタ12からの計数データから、単位時間あたりの放射線検出個数(放射線計数率:cpm)を求め、これを検出結果として表示部3に表示する。ここで、中央処理部61は、カウンタ12からの出力に基づき単位時間あたりの放射線検出個数を求めるデータ処理部として機能している。
【0034】
また、データ処理プログラムには、従来の放射線測定装置と同様に、通常もっとも多いであろうと考えられる核種(例えば、セシウム137)を想定して換算係数を特定し、単位時間あたりの放射線検出個数(放射線計数率:cpm)から線量等量率(μSv/hなど)へ換算するモードが含まれており、操作部2においてこのモードが選択された場合は、かかる換算係数により簡易的に換算した線量等量率(μSv/hなど)が表示部3に表示される。
【0035】
次に、化合物半導体検出器20に放射線が入射すると、その放射線のもつエネルギに相当する波高のアナログ電気信号が出力される。この化合物半導体検出器20から出力されたアナログ電気信号は、積分アンプ(PreAMP)21により増幅して出力される。
積分アンプ21は、図5(a)に示すように、オペアンプを利用した構成となっており、入力したアナログ電気信号の電荷は、コンデンサCに蓄えられた後、抵抗Rを介して徐々に放電されていく。
【0036】
図5(b)は積分アンプ21に入力されるアナログ電気信号の例を示しており、同図(c)(d)は積分アンプ21からの出力信号の例を示している。化合物半導体検出器20からは、入射した放射線のエネルギに相当する波高値をもった図5(b)に示すようなアナログ電気信号が出力され、同信号が積分アンプ21に入力される。
積分アンプ21からは、放射線のエネルギに相当するピーク波高値L1、L2から徐々に波高値が減少していく三角波の電気信号が出力される(図5(c))。
また、化合物半導体検出器20に立て続けに放射線が入射すると、同検出器20から短い間隔でアナログ電気信号が出力される。その場合、図5(d)に示すように積分アンプ21からの出力信号は、例えばピーク波高値L1から徐々に波高値が減少していく三角波状の電気信号に対して、次に出力されたピーク波高値L2の三角波の電気信号が重なり合った鋸歯状波の状態で出力される。重なった電気信号のピーク波高値L2は、その交わった点を起点にして求めることができる。
【0037】
積分アンプ21からの出力信号は、第2アンプ22でさらに増幅され、セレクタ23を通して可変ゲインアンプ24でゲイン調整がなされて、A/Dコンバータ25に送られる。第2アンプ22は、化合物半導体検出器20からの出力が低感度なため、積分アンプ21の出力をさらに増幅して出力するために設けてある。また、可変ゲインアンプ24は、化合物半導体検出器20や後述するシンチレーション検出器30の感度調整(キャリブレーション)を実行するために設けてある。
【0038】
A/Dコンバータ25は、入力したアナログ電気信号をあらかじめ設定されたサンプリング間隔でデジタル変換する。A/Dコンバータ25のサンプリング間隔は、1μ秒以下とすることが好ましい。サンプリング間隔をこのような短時間に設定することで、化合物半導体検出器20の不感時間と同程度かそれよりも小さい間隔でアナログ電気信号を入力することができ、漏れのない高精度な信号変換が可能となる。
【0039】
積分アンプ21の時定数は、図6(a)に示すように、A/Dコンバータ25のサンプリング間隔Dよりも長い時間をかけて出力信号aを放電するような値に設定してある。本実施形態では、A/Dコンバータ25のサンプリング間隔Dにおいて出力信号の波高値の減少が5%以内(好ましくは、2%以内)に抑えられる値に、積分アンプ21の時定数が設定してある。
このように設定することで、積分アンプ21からの出力信号のピーク波高値又はその近傍の波高値を、確実にA/Dコンバータ25でサンプリングすることができる。積分アンプ21からの出力信号のピーク波高値は、化合物半導体検出器20で検出した放射線のエネルギに相当する値であり、かかるピーク波高値か少なくともその近傍の波高値をサンプリング可能とすることで、高精度な放射線のエネルギを求めることができる。
【0040】
A/Dコンバータ25でデジタル変換された信号は、中央処理部61へ送られる。
中央処理部61は、メモリ62にあらかじめ保存してあるデータ処理プログラムを実行して、入力した信号を波形処理するとともに、同信号の波高値ごとにエネルギ分解し、図6(b)に示すような放射線スペクトルを作成する。
ここで、中央処理部61は、A/Dコンバータ25から入力した信号を波形処理する際に、図5(d)に示すように処理対象となる信号が重なり合っている場合、信号の交点(すなわち、信号の立ち上がりにおける下端)の座標位置を求め、その座標位置からピーク位置までの高さをもってピーク波高値L2を算出する。
【0041】
本実施形態では、エネルギ1MeVの放射線に対する波高値が約1Vとなるように可変ゲインアンプ24のゲイン調整を行っている。A/Dコンバータ25は、充分に高い波高値(例えば、5V)まで入力可能としてあり、三角波の減衰が不十分な状態で高計数率の放射線が入射しても、飽和することなくA/D変換可能である。
さらに、正確なエネルギ値を求めるために、事前に校正作業を行い、エネルギと波高の関係を求めてある。すなわち、既知の複数の放射線同位元素を含む標準線源から発生する放射線を測定し、エネルギと波高の関係からゲインとベースラインの校正係数を求め、メモリ62に記録してある。この校正係数を用い、計測された波高値を正確なエネルギ値に変換している。
【0042】
例えば、本実施形態では、放射線のエネルギ2MeV(ミリオンエレクトロンボルト)を約2keV(キロエレクトロンボルト)毎に1024個の領域に等分割し、検出された個々の放射線のエネルギを各分割区域に割り当て、それぞれの領域に分類された個数を計数するようにしている。そして、横軸をエネルギ、縦軸を個数としたヒストグラムを作成することにより、図6bに示すようなスペクトルを得ることができる。ここで横軸の最大値は2MeVに相当する。なお、放射線のエネルギの最大値や分割数は任意に設定することができる。
【0043】
さらに、中央処理部61は、操作部2で選択された検出モードに応じて、放射線スペクトルから線量等量率(μSv/hなど)への換算や、放射線の核種の同定を実行し、そのデータ処理結果を検出結果として表示部3へ表示する。
【0044】
また、本実施形態では、化合物半導体検出器20により取得したデータに基づき放射線の核種を同定し、且つその核種を利用して、GM検出器10からの出力から求めた単位時間あたりの放射線検出個数(放射線計数率:cpm)を、中央処理部61が放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率(μSv/hなど)へ高精度に変換する核種同定・データ変換モードが設定されている。
【0045】
〔放射線測定装置による核種同定とデータ変換処理〕
次に、主に図7を参照して、核種同定・データ変換モードにおけるデータ変換処理について説明する。
本実施形態では、化合物半導体検出器20の検出データから得られたスペクトルを利用して放射線の核種同定を行うためのプログラムを、あらかじめメモリ62に保存してある。中央処理部61は、このプログラムに従い核種同定・データ変換モードにおけるデータ変換処理を実行する。
すなわち、中央処理部61は、化合物半導体検出器20の検出データからスペクトルを求めた後(ステップS1)、当該スペクトルを「移動平均法」等の公知の手段よりスムージング処理(平滑化処理)を実行してノイズ成分を低減する(ステップS2)。次いで、公知の手段でバックグラウンド除去処理を行い(ステップS3)、スペクトルのピーク成分のみを抽出する。なお、このピーク成分はスペクトルに関するものであるから、幅方向(図6(b)の横軸に相当)はエネルギ、高さ方向(図6(b)の縦軸に相当)はカウント値である。
本実施形態では、複数の検出器を使用しており、それぞれの検出器によりバックグラウンドの形状が異なることから、形状によらずバックグラウンドの計算が可能なSonnerveld-Visser法と呼ばれる手段を採用した。
【0046】
抽出されたピーク成分を、放射性同位元素データベースと照合し、核種同定処理を行う(ステップS4)。そして、中央処理部61は、同定した核種から変換係数を特定して、GM検出器10からの出力から求めた単位時間あたりの放射線検出個数(放射線計数率:cpm)を、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率(μSv/hなど)に変換し(ステップS5)、当該変換結果を表示部3に表示する。
【0047】
ここで、ステップS4で行われる核種同定のアルゴリズムとしては、例えば、次に示す二つの手段のいずれかを採用することができる。
【0048】
1)ピーク位置と強度を算出し、データベースとパターンマッチングする手段
上記で抽出したピーク成分のスペクトルをエネルギで微分する。微分値は、ピークの立ち上がりで「正」、立下りで「負」の値をとる。そして、「0」にクロスする点がピーク位置(ピークエネルギ)を示し、その位置の強度がピーク強度である。複数のピークを持つスペクトルの場合には、ピーク位置、ピーク強度のテーブルが作成される。
メモリ62には、あらかじめ図8に示すような形式のデータベースを作成して格納しておく。そして、得られたピークのテーブルとデータベースを照合し、最小二乗法により核種の存在比を計算する。
【0049】
2) スペクトル全体をデータベースとマッチングする手段
上記1)の手段では、例えばセシウム134とセシウム137をNaIシンチレーション計数機で検出した場合には、エネルギ分解能の範囲で複数のピークが重なり分離が困難である。これを解決するためには、1)の手法に代え、スペクトル全体に対してパターンマッチングする手法が好ましい。この手法で核種同定する場合は、ピーク成分とバックグラウンド成分を含むスペクトル全体が対象となるので、ステップS3のバックグラウンド除去処理は省略できる。この手法において、測定したスペクトルと核種含有量の関係は、次の式(1)で表される。
【0050】
【数1】


ここで、「y」は測定データを示すベクトル(1024要素の強度)、「Φ」はデータベースにより構成される行列(1024行×64列)、「θ」はそれぞれの核種の含有量を表すベクトル(64要素の含有量)、「e」は誤差を表すベクトル(1024要素)である。
【0051】
【数2】


次に、上記の式(2)に従い、最小二乗法により、θを最適化することにより核種含有量を求めることができる。
ここで、あらかじめ線形最小自乗法の正規方程式(一般化逆行列)を計算しておくことにより、計算時間を短縮することができる。すなわち、64行×1024列の行列である(ΦTΦ)-1ΦTをあらかじめ計算して、メモリ62に保存しておけば、単純な計算のみで核種同定を行うことが可能である。
この方法では、データベースをピーク成分とバックグラウンドを含むスペクトルの形で保管しているため、検出効率のエネルギ依存性やコンプトン散乱、エスケープピークなどもデータベースに含ませることができ、同定の精度を向上することができる。この場合、測定スペクトルからバックグラウンドを除去する処理は不要になる。さらに、式(2)の一般化逆行列に単位変換成分を含ませておくことで、計算結果を線量等量率(μSv/hなど)とすることも可能になる。
【0052】
図9は、図6(b)のスペクトルに対し、同定処理を行った具体例を示している。ここでは、テストのため、データベースからセシウム136成分を除外して同定処理を行った。その結、1048keVに同定できないピークが現れ、その他のピークは同定されており、アルゴリズムの正しさを示している。
【0053】
本実施形態ではエネルギは1024分割としたが、半導体検出器のエネルギ分解能は1%程度、またシンチレーション検出器のエネルギ分解能は数%程度であるため、同定処理を行う際の分割数は256、128、64程度に低減しても差し支えない。
また、核種は64種としたが、実用上は30種程度として差し支えない。
さらに、ユーザがそれぞれの環境で実際に測定する核種をデータベースに追加できることが好ましく、一般化逆行列を再計算できる機能を備えた構成とすることもできる。
【0054】
さて、操作部2においてシンチレーション検出器30が選択されると、スイッチ32が積分アンプ31(PreAMP)をセレクタ23に接続し、セレクタ23は積分アンプ31からのアナログ電気信号を可変ゲインアンプ24に送る回路構成に変更される。
そして、シンチレーション検出器30に放射線が入射すると、その放射線のもつエネルギに相当する波高のアナログ電気信号が出力される。このシンチレーション検出器30から出力されたアナログ電気信号は、積分アンプ31により増幅される。積分アンプ31は、図5(a)に示した積分アンプ21と同様の機能を有している。この積分アンプ31で増幅されたアナログ電気信号は、セレクタ23を経由して可変ゲインアンプ24でゲイン調整されてA/Dコンバータ25に送られる。A/Dコンバータ25は、入力したアナログ電気信号をデジタル変換して中央処理部61へ送る。中央処理部61では、メモリ62にあらかじめ保存してあるデータ処理プログラムを実行して、入力したデジタル信号を波形処理するとともに、化合物半導体検出器20からのデータと同様のデータ処理が行われる。
【0055】
次に、操作部2において3He中性子検出器40が選択されると、スイッチ32が積分アンプ31とコンパレータ41を接続する。
3He中性子検出器40に中性子線が入射すると、中性子線量に応じたアナログ電気信号が出力される。3He中性子検出器40からのアナログ電気信号にはノイズ成分が含まれているため、一定のしきい値を設定したコンパレータ41によりノイズ成分を除去し、3He中性子検出器40に入射した中性子線量に相当するアナログ電気信号のみが取り出される。
このアナログ電気信号がカウンタ42によって計数され、その計数データが中央処理部61に送られる。中央処理部61は、メモリ62にあらかじめ保存してあるデータ処理プログラムを実行して、カウンタ42からの計数データから、中性子線量を求める。
【0056】
本実施形態では、図4に示すように、上述したカウンタ12、42、A/Dコンバータ25、中央処理部61及びメモリ62を含めた構成要素が、すべて1チップでできたマイクロコンピュータ(1チップマイコン)60によって構成されている。したがって、装置本体1内に組み込まれるハードウエアが少なく小形化が図られる。
【0057】
〔データ通信システムの概要〕
図10は本実施形態に係る本実施形態の放射線測定装置を利用したデータ通信システムを説明するための図である。
本実施形態の放射線測定装置100は、図4に示すように通信モジュール72を内蔵しており、この通信モジュール72を経由して、中央処理部61で処理した放射線に関するデータを携帯端末101に送信する機能を有している。
【0058】
通信モジュール72としては、Bluetooth(登録商標)や無線LAN、赤外線通信など、携帯端末101との間でデータ通信ができる各種の無線通信手段を適用することができる。また、通信モジュール72経由ではなく、USB等の外部接続インターフェース73を経由して携帯端末101にデータを送ることもできる。これら通信モジュール72や外部接続インターフェース73は、放射線測定装置100の中央処理部61(データ処理部)から出力される放射線に関するデータを、携帯端末101へ送るデータ送信手段として機能する。
【0059】
携帯端末101としては、例えば、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、UMPC(Ultra Mobile Personal Computer)、ネットブック、ノート型パーソナルコンピュータや、カーナビゲーションシステム等がある。なお、必要に応じて、携帯端末101に代え、据え置き型のパーソナルコンピュータ等を適用することも可能である。
【0060】
携帯端末101に送るデータには、測定開始時刻(本実施形態では、中央処理部61が信号の入力を開始する時刻)とカウント数を含み、さらに、核種同定結果乃至スペクトルを含んでもよい。測定開始時刻のデータは、装置本体1に内蔵されたタイマー71から出力される(図4参照)。
携帯端末101に送られたデータは、携帯端末101のメモリに保存される。
メモリに保存した放射線に関するデータは、携帯端末101の表示画面に表示することができる。例えば、放射線スペクトルなどのデータは高精細な携帯端末101の表示画面に表示した方が視認しやすい。
【0061】
また、携帯端末101は、GPS(Global Positioning System)102を利用した位置情報の取得機能を備えている。携帯端末101がかかる機能を備えることで、本実施形態の放射線測定装置100により取得した放射線に関するデータに位置情報を付加してメモリに保存することができる。放射線測定装置100と携帯端末101は、通常、ユーザがいっしょに携帯して活動するため、放射線測定装置100により放射線に関するデータを取得した場所で、携帯端末101により位置情報を取得してメモリに保存すれば、当該位置情報がそのまま放射線に関するデータを取得した場所の位置情報となる。
【0062】
さらに、携帯端末101がカメラ機能を備えていれば、本実施形態に係る放射線測定装置100によって放射線に関するデータを取得した場所を撮影し、その写真データを放射線に関するデータと併せてメモリに保存することができる。
【0063】
携帯端末101は中継基地としての機能を担っており、携帯電話回線網やWiFiに準拠したネットワーク通信網を経由してインターネット103への接続が可能な通信機能を有していることが好ましい。
携帯端末101には、本実施形態の放射線測定装置100から放射線に関するデータを受信して、当該データやGPS102により取得した位置情報をインターネット103を経由して自動又は手動で送信するためのアプリケーションプログラムをあらかじめインストールしておく必要がある。勿論、携帯端末101は、当該アプリケーションプログラムに従いデータ通信を実行できる機能を有していることが前提となる。
【0064】
携帯端末101からインターネット103を経由してデータが送られる先は、例えば、外部のサーバ104や、他の携帯端末106、パーソナルコンピュータ107等がある。このうち、他の携帯端末106やパーソナルコンピュータ107には、例えば、電子メールの機能を使ってデータを送ることができる。
外部のサーバ104は、後述するように、前記携帯端末から送られてきた位置情報を含むデータに基づき放射線の異常を判別する機能を備えている。
さらに、外部のサーバ104は、例えば、グーグル社(Google, Inc.)によって提供されるグーグルマップアプリケーションのような、ウエブベース地図表示サービスアプリケーションを利用して、地図上における携帯端末101で取得した位置情報に対応する地点に、放射線に関する情報を表示して、一般公衆が閲覧できるように構成することもできる。
【0065】
〔送信データの改竄の有無判別〕
図11〜図14はデータ通信システムに組み込まれた送信データの改竄の有無を判別する機能を説明するための図である。
図11に示すように、放射線測定装置100は、個別の放射線測定装置ごとにあらかじめ設定された暗号キー、当該装置に固有の装置ID、測定データ、測定時刻に関するデータ(時刻データ)をパラメータとして、測定を行うごと(すなわち、個々の測定データごと)に装置ハッシュ値を生成する。
ここで、暗号キーと装置IDは、あらかじめメモリ62に記憶してある(図4参照)。また、測定データは、中央処理部61(データ処理部)からの出力データである。本実施形態では、中央処理部61がカウンタ12、A/Dコンバータ25、又はカウンタ42から信号を入力するタイミングを測定開始時刻としており、測定時刻に関する時刻データは、当該タイミングでタイマー71から出力される。なお、時刻データとしては、データ処理部がデータ処理を行う間の適宜の時刻や、データ処理部からデータが出力された終了時刻等、測定に関連した適宜の時刻を用いることができる。
装置ハッシュ値は、中央処理部61が、SHA−256に準拠したアルゴリズムをもって生成される。
そして、放射線測定装置100は、当該装置に固有の装置ID、測定データ、時刻データ、及び生成した装置ハッシュを装置出力データにまとめて外部へ送信する。ただし、暗号キーは、放射線測定装置100から送信されない。
装置出力データは、放射線測定装置100のユーザが所持している携帯端末101が受信する。
【0066】
次に、図12に示すように、携帯端末101は、あらかじめ設定された端末番号(例えば、電話番号やシリアル番号)、GPS102から取得した位置情報と当該位置情報の取得日時に関するデータ、及び携帯端末101に内蔵されたカメラで撮影した現場写真のデータを端末付加データとして、装置出力データに付加して送信する。加えて、携帯端末101は、放射線測定装置100から受信した装置ハッシュ値と、これら端末付加データをパラメータとして、端末ハッシュ値を生成する機能を有している。生成した端末ハッシュ値も装置出力データに付加して送信される。
【0067】
外部のサーバ104は、携帯端末101から装置出力データ、端末付加データ、及び端末ハッシュ値をまとめて受信する。図13に示すように、外部のサーバ104は、データが送られてくる各放射線測定装置100に設定された前記暗号キーを、図示しない記憶媒体にあらかじめ記憶している。そして、受信した装置出力データに含まれる装置ID、測定データ、及び時刻データと、当該装置出力データを送信した放射線測定装置100に対応する暗号キーとをパラメータとして、放射線測定装置100で生成したと同様のアルゴリズムで比較用装置ハッシュ値を生成する。
受信したデータが途中で改竄されていなければ、この比較用装置ハッシュ値は、同じデータをパラメータとして同様のアルゴリズムで生成された装置ハッシュ値と同じ値になる。一方、受信したデータが途中で改竄されていた場合は、生成した比較用装置ハッシュ値は、受信したデータに含まれる装置ハッシュ値と異なる値となる。これによって、データが途中で改竄されたか否かを判別でき、受信データの高い信頼性を補償することが可能となる。
【0068】
さらに、図14に示すように、外部のサーバ104は、受信した端末付加データ(端末番号、位置情報、位置情報の取得日時、及び現場写真)と、上述のように生成した比較用装置ハッシュ値とをパラメータとして、携帯端末101で生成したと同様のアルゴリズムで比較用端末ハッシュ値を生成する。
受信したデータが途中で改竄されていなければ、この比較用端末ハッシュ値は、同じデータをパラメータとして同様のアルゴリズムで生成された端末ハッシュ値と同じ値になる。一方、受信したデータが途中で改竄されていた場合は、生成した比較用端末ハッシュ値は、受信したデータに含まれる端末ハッシュ値と異なる値となる。これによって、データが途中で改竄されたか否かを判別できる。特に、上述した比較用装置ハッシュ値が装置ハッシュ値と同じ値であるが、生成した比較用端末ハッシュ値は、受信したデータに含まれる端末ハッシュ値と異なる場合は、携帯端末101よりも下流で改竄されたものと判別でき、トレーサビリティを確保することも可能となる。
【0069】
〔外部サーバでの放射線の異常判別〕
図15は外部のサーバが備える放射線の異常判別機能について説明するためのフローチャートである。
サーバ104は、多数のユーザが所持する放射線測定装置100の中央処理部61送信され、携帯端末101を中継して受信した測定データを蓄積している。そして、測定データの受信状況を常時監視しており(ステップS1)、新規の測定データを受信する毎に(ステップS2)、データ解析を実行し(ステップS3)、解析結果に基づいて放射線の異常点の有無を判定する(ステップS4)。ここで行われるデータ解析と異常点の有無判定は、多変量正規分布解析やメッシュ分割解析など、複数の解析手法を組み合わせることで解析・判定精度の向上を図ることができる。
【0070】
メッシュ分割解析とは、例えば図16に示すように、放射線の測定区域全体をメッシュ状に分割して、それぞれのメッシュ(ブロック)毎に放射線量を解析し、隣接するメッシュの解析値と比較することで、異常を判定する手法である。
また、時々刻々追加される大量のデータをリアルタイムに解析する手段として、多変量正規分布解析手法を用い、マハラノビスの汎距離を用いて異常点を検出することもできる。
放射線測定値は、時間、空間(緯度、経度)、個体を変数とする4次元空間で拡張正規分布しているとみなすことができる。すべての測定値から得られたデータの分布の中心から、個々の測定値がどの程度離れているかを見ることで異常状態を判定することができる。
【0071】
次に、本実施形態では、放射線測定装置100の個体に異常がないか判別するステップを挿入してある(ステップS5)。すなわち、近距離に存在する複数の放射線測定装置100のうち、一つのみから異常な測定データが送られてきた場合には、当該放射線測定装置100は故障していると判別する(ステップS6)。
【0072】
さらに、サーバ104は、放射線測定装置100からの測定データに基づき、時間経過に伴う放射線の変化量を監視して(ステップS7)、単位時間当たりの当該変化量が小さい場合(すなわち、恒常的に異常値を示す場合)には、当該放射線測定装置100が存在する地域は、放射線に汚染されていると判別する。この場合は、さらに当該地域の複数の測定データに着目して、放射線の異常値を示す地域的範囲の広狭を調べ(ステップS8)、異常値の検出範囲が広い地域に分散しているときは、当該地域での広域汚染が生じていると判別する(ステップS9)。一方、放射線の異常を示すデータが送られてきた放射線測定装置100が所定範囲よりも狭い地域に集中しているときは、当該地域にホットスポットが存在すると判別する(ステップS10)。
【0073】
また、本実施形態では、単位時間当たりの放射線の変化量が大きい場合には、当該放射線測定装置100が存在する地域において、放射能漏れ等の事故や放射能に汚染された物質の不法投棄があったと推測するステップを挿入してある。すなわち、当該地域の複数の測定データに着目して、放射線の異常値を示す地域的範囲の広狭を調べ(ステップS11)、異常値の検出範囲が広い地域に分散しているときは、当該地域での放射能漏れ等の事故が発生していると判別する(ステップS12)。一方、放射線の異常を示すデータが送られてきた放射線測定装置100が所定範囲よりも狭い地域に集中しているときは、当該地域に放射能に汚染された物質の不法投棄があったと判別する(ステップS13)。
【0074】
なお、ステップS7における時間経過に伴う放射線の変化量の監視は、放射線測定装置100から送られてくる時刻データを参照して行われる。また、ステップS8やステップS11における地域的範囲の広狭の判断は、携帯端末101から送られてくる位置情報に関するデータを参照して行われる。
【0075】
このようにして、放射線測定装置100から送られてきた測定データを解析して異常点を求め、さらにその異常の原因を判別して、かかる状況をウエブベース地図表示サービスアプリケーションへ送り、地図上に表示するとともに(ステップS14)、サーバ104のデータベースに記録する(ステップS15)。
【0076】
多くのユーザが所有する放射線測定装置100から多数の測定データが継続的に送られてくれば、上述した放射線異常の原因究明を迅速かつ高精度に実施することができ、しかもその判定結果をウエブベース地図表示サービスアプリケーションの地図に表示して一般公衆の閲覧に供すれば、多くの人々が放射能汚染に対する的確な判断の材料を得ることができる。
【0077】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その他にも種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
また、上述したデータ通信システムは、必要に応じて本発明に係る放射線測定装置と切り離して独自の発明を構成し、各種の放射線測定装置や、データを送信する機能をもつ各種の通信装置一般に適用することもできる。
その場合のデータ通信システムの構成は、次のようになる。
【0078】
〔構成1〕
放射線測定装置(又は通信装置)から出力されるデータを外部のサーバへ送るデータ通信システムであって、
前記放射線測定装置(又は通信装置)は、個別の放射線測定装置(又は通信装置)ごとにあらかじめ設定された暗号キーと、当該放射線測定装置(又は通信装置)から出力されるデータとを含むパラメータに基づき、当該放射線測定装置(又は通信装置)から出力される個々のデータごとに固有のハッシュ値(装置ハッシュ値)を生成する装置ハッシュ値生成手段と、
前記放射線測定装置(又は通信装置)から出力されるデータ及び前記装置ハッシュ値を含むデータを送信するデータ送信手段と、を備え、
前記暗号キーは、前記放射線測定装置(又は通信装置)から外部に送信されず、
前記サーバは、データが送られてくる各放射線測定装置(又は通信装置)に設定された前記暗号キーをあらかじめ記憶する手段と、当該暗号キーと前記放射線測定装置(又は通信装置)から送られてきたデータとに基づき放射線測定装置(又は通信装置)と同様にハッシュ値(比較用装置ハッシュ値)を生成する手段と、生成した比較用装置ハッシュ値を前記放射線測定装置(又は通信装置)から送られてきた装置ハッシュ値と比較して当該放射線測定装置(又は通信装置)から送られてきたデータの改竄の有無を判別する手段と、を含むことを特徴とするデータ通信システム。
【0079】
〔構成2〕
前記放射線測定装置(又は通信装置)から送られてきたデータを受信し、インターネットを経由して前記サーバへ送信する携帯端末を備え、
前記携帯端末は、
前記放射線測定装置(又は通信装置)から送られてきたデータを受信する受信手段と、
前記放射線測定装置(又は通信装置)から送られてきたデータに含まれる前記装置ハッシュ値と、当該携帯端末で付加されるデータとを含むパラメータに基づき、当該携帯端末に固有のハッシュ値(端末ハッシュ値)を生成する端末ハッシュ値生成手段と、
前記放射線測定装置(又は通信装置)から送られてきたデータ、前記端末ハッシュ値、及び当該携帯端末で付加したデータをまとめて前記サーバへ送信する端末データ送信手段と、を備え、
前記サーバは、前記携帯端末から受信したデータに基づき当該携帯端末と同様にハッシュ値(比較用端末ハッシュ値)を生成する手段と、生成した比較用端末ハッシュ値を前記携帯端末から送られてきた端末ハッシュ値と比較して当該携帯端末から送られてきたデータの改竄の有無を判別する手段と、を含むことを特徴とする上記構成1のデータ通信システム。
【符号の説明】
【0080】
1:装置本体、2:操作部、3:表示部、4:保護カバー、5:把持部、6:コネクタ
10:GM検出器、10a:放射線入射面、11:コンパレータ、12:カウンタ、
20:化合物半導体検出器、21:積分アンプ、22:第2アンプ、23:セレクタ、24:可変ゲインアンプ、25:A/Dコンバータ、
30:シンチレーション検出器、31:積分アンプ、32:スイッチ、
40:3He中性子検出器、41:コンパレータ、42:カウンタ、
50:高圧電源回路、51:CWC、
60:1チップマイコン、61:中央処理部、62:メモリ
71:タイマー、72:通信モジュール、73:外部接続インターフェース、
101:携帯端末、102:GPS、103:インターネット、104:外部のサーバ、106:他の携帯端末、107:パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線のもつエネルギを検出し、当該エネルギに相当する波高のアナログ電気信号を出力する検出器と、
前記検出器から出力されたアナログ電気信号を増幅して出力する積分アンプと、
前記積分アンプからの出力信号を、あらかじめ設定されたサンプリング間隔でデジタル変換するA/Dコンバータと、
前記デジタル変換された電気信号をデータ処理して、前記検出器に入力した放射線のエネルギを求めるデータ処理部と、を含み、
前記積分アンプは、前記A/Dコンバータのサンプリング間隔よりも長い時間をかけて出力信号を放電するように時定数を設定してあることを特徴とする放射線測定装置。
【請求項2】
ガイガーミュラー検出器で構成された第2の検出器と、
前記第2の検出器から出力されたアナログ電気信号が、あらかじめ設定してあるしきい値を超えたときにパルス状の信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータからの信号出力数を計数するカウンタと、を含み、
前記データ処理部は、前記カウンタからの出力に基づき単位時間あたりの放射線検出個数を求めることを特徴とする請求項1の放射線測定装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、前記検出器からの出力に基づき求めた放射線のエネルギをもって特定された変換係数によって、前記第2の検出器からの出力に基づき求めた単位時間あたりの放射線検出個数データを、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率のデータに変換する機能を備えることを特徴とする請求項2の放射線測定装置。
【請求項4】
核種ごとに放射線エネルギのピーク位置と強度が登録された放射性同位元素データベースをあらかじめ保存してあるメモリを備え、
前記データ処理部は、前記検出器からの出力に基づき放射線のスペクトルを求め、当該スペクトルをスムージング処理し、次いでバックグラウンド除去処理を行ってピーク成分を抽出し、当該抽出されたピーク成分からピーク位置と強度を求め、当該ピーク位置と強度を前記放射性同位元素データベースと照合して核種同定処理を行い、当該同定した核種から変換係数を特定して、当該変換係数により、前記第2の検出器からの出力に基づき求めた単位時間あたりの放射線検出個数データを、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率のデータに変換する機能を備えることを特徴とする請求項3の放射線測定装置。
【請求項5】
核種ごとに放射線のスペクトルが登録された放射性同位元素データベースをあらかじめ保存してあるメモリを備え、
前記データ処理部は、前記検出器からの出力に基づき放射線のスペクトルを求め、当該スペクトルをスムージング処理し、次いで当該スペクトル全体を前記放射性同位元素データベースと照合して核種同定処理を行い、当該同定した核種から変換係数を特定して、当該変換係数により、前記第2の検出器からの出力に基づき求めた単位時間あたりの放射線検出個数データを、放射線による人体への影響度合いを表す線量等量率のデータに変換する機能を備えることを特徴とする請求項3の放射線測定装置。
【請求項6】
前記積分アンプの時定数は、前記A/Dコンバータのサンプリング間隔において出力信号の波高値の減少が5%以内に抑えられる値に設定してあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線測定装置。
【請求項7】
前記検出器として、化合物半導体検出器を用いたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の放射線測定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線測定装置における前記データ処理部から出力されるデータを外部のサーバへ送るデータ通信システムであって、
前記放射線測定装置は、
個別の放射線測定装置ごとにあらかじめ設定された暗号キーと、前記データ処理部から出力されるデータとを含むパラメータに基づき、前記データ処理部から出力される個々のデータごとに固有のハッシュ値(装置ハッシュ値)を生成する装置ハッシュ値生成手段と、
前記データ処理部から出力されるデータ及び前記装置ハッシュ値を含むデータを送信するデータ送信手段と、を備え、
前記暗号キーは、前記データ送信手段から外部に送信されず、
前記サーバは、データが送られてくる各放射線測定装置に設定された前記暗号キーをあらかじめ記憶する手段と、当該暗号キーと前記放射線測定装置から送られてきたデータとに基づき放射線測定装置と同様にハッシュ値(比較用装置ハッシュ値)を生成する手段と、生成した比較用装置ハッシュ値を前記放射線測定装置から送られてきた装置ハッシュ値と比較して当該放射線測定装置から送られてきたデータの改竄の有無を判別する手段と、を含むことを特徴とするデータ通信システム。
【請求項9】
前記放射線測定装置から送られてきたデータを受信し、インターネットを経由して前記サーバへ送信する携帯端末を備え、
前記携帯端末は、
前記放射線測定装置から送られてきたデータを受信する受信手段と、
前記放射線測定装置から送られてきたデータに含まれる前記装置ハッシュ値と、当該携帯端末で付加されるデータとを含むパラメータに基づき、当該携帯端末に固有のハッシュ値(端末ハッシュ値)を生成する端末ハッシュ値生成手段と、
前記放射線測定装置から送られてきたデータ、前記端末ハッシュ値、及び当該携帯端末で付加したデータをまとめて前記サーバへ送信する端末データ送信手段と、を備え、
前記サーバは、前記携帯端末から受信したデータに基づき当該携帯端末と同様にハッシュ値(比較用端末ハッシュ値)を生成する手段と、生成した比較用端末ハッシュ値を前記携帯端末から送られてきた端末ハッシュ値と比較して当該携帯端末から送られてきたデータの改竄の有無を判別する手段と、を含むことを特徴とする請求項8のデータ通信システム。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線測定装置を所持する多数のユーザから送られてくるデータに基づき放射線の異常を判別する放射線異常判別システムであって、
前記放射線測定装置は、測定時刻に関するデータ(時刻データ)を出力する手段と、当該放射線測定装置とともにユーザが所持する携帯端末へ、前記データ処理部から出力されるデータに前記時刻データを付加して送信するデータ送信手段とを備え、
前記携帯端末は、GPSを利用した位置情報の取得機能を備え、前記放射線測定装置から送られてきたデータに当該位置情報を付加して、インターネットを経由して外部のサーバへ送信する中継基地としての機能を備え、
前記外部のサーバは、前記携帯端末から送られてきた位置情報を含むデータに基づき放射線の異常を判別する機能を備えることを特徴とする放射線異常判別システム。
【請求項11】
前記サーバは、多数のユーザが所持する前記放射線測定装置のデータ処理部から出力されたデータが放射線の異常を示しており、時間経過に伴う放射線の変化量は所定のしきい値よりも小さく、且つ当該放射線の異常を示すデータが送られてきた放射線測定装置が所定範囲よりも狭い地域に集中しているときは、当該地域にホットスポットが存在すると判別することを特徴とする請求項10の放射線異常判別システム。
【請求項12】
前記サーバは、多数のユーザが所持する前記放射線測定装置のデータ処理部から出力されたデータが放射線の異常を示しており、時間経過に伴う放射線の変化量は所定のしきい値よりも小さく、且つ当該放射線の異常を示すデータが送られてきた放射線測定装置が所定範囲よりも広い地域に分散しているときは、当該地域での広域汚染が生じていると判別することを特徴とする請求項10又は11の放射線異常判別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−101095(P2013−101095A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46357(P2012−46357)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】