説明

放射線源収容治具

【課題】放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定可能な放射線検出器の校正のために使用される放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることが可能な放射線源収容治具を提供する
【解決手段】本発明にかかる放射線源収容治具は、所定の幅と所定の長さを有する板状部と、板状部に設けられた放射線源収容孔と、放射線源収容孔を覆う蓋部と、蓋部の一端を基端として蓋部が開閉可能に、一端を板状部に取り付けるヒンジ部と、蓋部の他端を板状部に係止する係止部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を検査する装置、特に原子力発電所において、放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定することにより放射性物質を検査する放射線検出器、の校正のために使用される放射線源を収容する放射線源収容治具に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所においては、原子力発電所の運転に伴い、原子炉、タービン発電機、各種ポンプ、配管等の設備機器や部材等が放射化され、放射性物質に変化したり、新たな放射性物質が生じたりする。これらの放射性物質は、低レベル放射性廃棄物として、廃棄処分される。これらの低レベル放射性廃棄物は、例えば、放射性物質を封入したドラム缶として発電所外に搬出された後、所定の場所に移送され、廃棄処分される。
【0003】
低レベル放射性廃棄物として廃棄処分されるドラム缶は、発電所外に搬出される際、放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率などが低レベル放射性廃棄物としての所定の基準を満たしているか放射線検出器により測定される。かかる放射線検出器は性能維持のため適宜校正が必要である。この校正には、コバルト60やセシウム137の放射線源が用いられる。
【0004】
これらの放射線源から放射される放射線を測定することにより、放射線検出器は校正が行われる。かかる放射線源は、放射線検出器の校正に使用される時は、低レベル放射性廃棄物と同じドラム缶形状の校正装置の所定位置に、例えば、放射線源収容治具に収容された状態で配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特になし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの放射線源は、法律に基づき管理される線源であるため、放射線検出器の校正等に使用される時以外は、所定の保管容器に保管しなければならない。このため、使用の都度、放射線源を保管容器から取り出し、ドラム缶形状の校正装置に配置する必要がある。そして、放射線検出器の校正等に使用した後、再び保管容器に収めて保管しなければならない。
【0007】
法律に基づき管理される線源であることから、取扱者の被曝量が所定値を超えないように、これらの放射線源を取り扱う時間も制限される。このため、放射線源の取扱時間を可能な限り短くすることが求められていた。特に、放射線源を収容する放射線源収容治具において、放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることを可能にする工夫が要請されていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定可能な放射線検出器の校正のために使用される放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることが可能な放射線源収容治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる放射線源収容治具の代表的な構成は、所定の幅と所定の長さを有する板状部と、板状部の一面に開口部を有する放射線源収容孔と、放射線源収容孔の開口部を覆う蓋部と、蓋部の一端を基端として蓋部が開閉可能に、一端を板状部に取り付けるヒンジ部と、蓋部を板状部に係止する係止部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、蓋部を開閉することにより、放射線源を放射線源収容孔に容易に収容し、放射線源収容孔から容易に取り出すことができる。従って、放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることができる。
【0011】
上記の放射線源収容孔は、放射線源収容孔の底部と収容される放射線源との間に弾性体を備えるとよい。かかる構成によれば、蓋部を開けて放射線源を放射線源収容孔から取り出すときに、弾性体の弾性力により放射線源が放射線源収容孔の外方向に押し上げられる。これにより、放射線源を容易に取り出すことができる。従って、放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることができる。
【0012】
上記の係止部は、スライド部を有し、蓋部の板状部への係止は、スライド部をスライドさせて蓋部の他端を係止することにより行うとよい。かかる構成によれば、蓋部の板状部への係止を容易に行うことができる。これにより、放射線源の放射線源収容孔への収容および取り出しを容易にすることができるため、放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることができる。
【0013】
本発明にかかる放射線源収容治具の他の構成は、所定の幅と所定の長さを有する板状部と、板状部を貫通して設けられ、板状部の一面に第一の開口部を有し、板状部の他面に第二の開口部を有する放射線源収容孔と、放射線源収容孔の第一の開口部を覆う第一の蓋部と、放射線源収容孔側に弾性体を備え、放射線源収容孔の第二の開口部を覆う第二の蓋部と、第一の蓋部の一端を基端として第一の蓋部が開閉可能に、一端を板状部に取り付ける第一のヒンジ部と、第二の蓋部の一端を基端として第二の蓋部が開閉可能に、一端を板状部に取り付ける第二のヒンジ部と、第一の蓋部を板状部に係止する第一の係止部と、第二の蓋部を板状部に係止する第二の係止部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、放射線源を放射線源収容孔に収容する場合は、例えば第一の蓋部を閉めて第二の蓋部を開けた状態にして放射線源を第二の蓋部側から放射線源収容孔に収容した後、弾性体を備える第二の蓋部を閉めることにより、放射線源を容易に収容することができる。放射線源を放射線源収容孔から取り出す場合は、第一の蓋部および第二の蓋部が閉じられた状態から、第一の蓋部を開けて放射線源を取り出すときに、放射線源が弾性体の弾性力により放射線源収容孔の外方向に押し上げられることにより、放射線源を容易に取り出すことができる。従って、放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることができる。
【0015】
本発明にかかる放射線源収容治具の他の構成は、放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定可能な放射線検出器の校正のために使用される放射線源を収容することを特徴とする。
【0016】
放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定可能な放射線検出器の校正には、放射線源が収容されたドラム缶形状の校正装置が用いられる。ドラム缶形状の校正装置への放射線源の収容においては、放射線源を上記放射線源収容治具に収容して行うことにより、放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることができる。従って、かかる放射線源収容治具は、上述した使用方法において特に効果を発揮する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定可能な放射線検出器の校正のために使用される放射線源の取り扱いを簡易にし、放射線源の取扱時間を短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態にかかる放射線源収容治具の構成を示す概略図である。
【図2】放射線源収容部の構成を示す図である。
【図3】スライド部を説明する図である。
【図4】スライド部の板状部への取付状態を説明する図である。
【図5】蓋部の開閉による放射線源の収容を説明する図である。
【図6】係止部の他の構成を説明する図である。
【図7】第2実施形態にかかる放射線源収容治具の構成を示す概略図である。
【図8】ドラム缶形状の校正装置への配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明にかかる放射線源収容治具の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる放射線源収容治具の構成を示す概略図であり、図1(a)は線源収容治具1の正面図、図1(b)は線源収容治具の側面図である。
【0021】
図1に示すように、放射線源収容治具1(以下、「線源収容治具1」と称する)は、板状部11と、4つの放射線源収容部(以下、「線源収容部10」と称する)とから構成されている。1つの線源収容部10は、2つの放射線源収容孔(以下、「線源収容孔12」と称する)と、蓋部13と、ヒンジ部14と、係止部15とから構成されている。
【0022】
板状部11は、所定の幅と所定の長さを有する板状の部材である。部材の厚さは例えば8mmである。板状部11は、例えば機械的特性および電気的特性に優れたポリアセタール(polyacetal;POM)を材質とすることができる。図1(b)に示すように、板状部11の背面には補強部60が設けられている。補強部60は、例えば板状部と同じ幅と長さを有し、厚さが2mmのアルミ製の板状部材である。補強部60により、板状部11の機械的強度を高めることができる。
【0023】
図2は、放射線源収容部の構成を示す図であり、図2(a)は線源収容部10の正面図、図2(b)は線源収容部10の背面図である。
【0024】
線源収容孔12は、板状部11の一面に略円形の開口部12aを有する略円筒状の孔であり、1つの線源収容部10に2つ設けられる。板状部11の一面を加工することにより形成することができる。
【0025】
蓋部13は、線源収容孔12の開口部12aを覆うものである。図2(a)に示すように、蓋部13は、例えば矩形状であり、1つの蓋部13により2つの開口部12aを覆うことができる。蓋部13は、板状部11と同様にPOMを材質とすることができる。
【0026】
ヒンジ部14は、蓋部13の一端13aを板状部11に取り付けるものである。図2(a)に示すように、板状部11の表面に蓋部13の一端13aを取り付けることにより、ヒンジ部14を介して蓋部13の一端13aを基端として蓋部13を開閉可能とすることができる。
【0027】
係止部15は、蓋部13を板状部11に係止するものである。第1実施形態における係止部15は、スライド部15からなり、スライド部15を閉じられた蓋部13の方向にスライドさせて蓋部13の他端13bを係止することにより、蓋部13を板状部11に係止することができる。
【0028】
図3は、スライド部を説明する図である。スライド部15の本体は、分割スライド部15a、15bにより構成される。分割スライド部15aは、一端に略直方体の切欠部15gを有する略直方体の部材に略円筒状の接続部15cが付装されてなる。略直方体の部材と接続部15cは、一体として加工成形されて分割スライド部15aを形成することができる。分割スライド部15aには、接続部15cを含めて分割スライド部15aを貫通するねじ穴15hが設けられている。
【0029】
分割スライド部15bは、隅に丸みを有する略直方体の部材であり、2つのボールプランジャ15e、15fを備える。ボールプランジャ15e、15fは、その先端部が分割スライド部15bの分割スライド部15aと向き合う面から所定の長さだけ突出している。分割スライド部15bには、分割スライド部15bを貫通するねじ穴15kが設けられている。
【0030】
スライド部15は、分割スライド部15aと15bを、分割スライド部15aの接続部15cを有する面と、分割スライド部15bのボールプランジャ15e、15fの先端部が突出する面とを向き合うようにして、ねじ穴15hと15kを合致させた状態で、両ねじ穴15h、15kに雄ねじ15dをねじ込むことにより構成されている。
【0031】
図4は、スライド部の板状部への取付状態を説明する図であり、図4(a)はスライド部15を取り付ける前の板状部11の裏面の概略図、図4(b)はスライド部15を取り付けた後の同面の概略図である。
【0032】
図4(a)に示す通り、補強部60および板状部11の背面から所定の厚さ部分には、隅に丸みを有する略直方体の穴が形成されている。この略直方体の穴は、その幅が分割スライド部15bの幅と略同じであり、その長さが分割スライド部15bの長さよりも、スライド部15がスライド可能な分だけ長く、その厚さが分割スライド部15bの厚さと略同じである。
【0033】
板状部11の中間厚さ部分には、略矩形状の溝部17が形成されている。この溝部17は、その幅が接続部15cの直径と略同じであり、その長さが接続部15cの直径よりも、スライド部15がスライド可能な分だけ長く、その厚さが接続部15cの厚さと略同じである。
【0034】
分割スライド部15aの略直方体の部材が図4(a)の奥側に配置されるように接続部15cが溝部17に挿入される。分割スライド部15bが、ボールプランジャ15e、15fの先端部が分割スライド部15aに向き合うように、図4(a)の手前側から挿入される。そして、雄ねじ15dをねじ込むことにより分割スライド部15aと15bは接続される。これにより一体とされたスライド部15は、溝部17に沿ってスライドすることができる。
【0035】
図5は、蓋部の開閉による放射線源の収容を説明する図であり、図5(a)は蓋部13が開状態の側面図であり、図5(b)は蓋部13が閉状態の側面図である。
【0036】
図5(a)に示すように、線源収容孔12は、その底部12bと、線源収容孔12に収容される放射線源50a、50bとの間に弾性体16を備える。弾性体16は例えば螺旋状のコイルばね16である。放射線源50a、50bは、例えば、コバルト60やセシウム137であり、略円板状に形成されており、その厚さは5〜6mmである。
【0037】
放射線源50a、50bを2つの線源収容孔12にそれぞれ収容する場合は、図5(a)に示すように、蓋部13を開き、線源収容孔12、12に放射線源50a、50bを挿入する。このとき、適切な弾性力を有するばね16を選定することにより、放射線源50a、50bに力が加わらない状態では、放射線源50a、50bの厚さ2mm程度の下部が線源収容孔12、12に収まり、放射線源50a、50bの厚さ3〜4mm程度の上部は線源収容孔12、12の外に出るようにすることができる。ばね16と放射線源50a、50bとの間に、例えばPOM製の円板状の薄板を配置することにより、ばね16により放射線源50a、50bが損傷するのを防ぐことができる。
【0038】
続いて放射線源50a、50bを上面から押圧しながら、蓋部13を閉じる。スライド部15は、切欠部15gが閉じられた蓋部13側に位置するように板状部11に取り付けられており、蓋部13を閉じた後、蓋部13と反対側のスライド可能な端から蓋部13の方向にスライドされる。これにより、図5(b)に示すように、蓋部13の他端13bは切欠部15gに挿入され、蓋部13は板状部11に係止される。
【0039】
なお、板状部11のボールプランジャ15e、15fの先端部と向き合う面には、スライド部15がスライド可能なそれぞれの端にあるときに、ボールプランジャ15e、15fの先端部が接する箇所に、それぞれ凹部が設けられている(図示せず)。これにより、スライド部15がスライド可能なそれぞれの端に位置したときにボールプランジャ15e、15fの先端部とこの凹部が嵌合することにより、スライド部15をスライド可能な両端において、固定することができる。
【0040】
これにより、蓋部13を閉じた後の蓋部13の板状部11への係止および係止状態からの解放を容易に行うことができ、放射線源50a、50bの線源収容孔12への収容および取り出しを容易に行うことができる。このため、放射線源50a、50bの取り扱いを簡易にし、放射線源50a、50bの取扱時間を短くすることができる。従って、放射線源50a、50bの取扱者の放射線源50a、50b取り扱い時の放射線被曝量を低減させることができる。
【0041】
図6は、係止部の他の構成を説明する図であり、図6(a)は放射線源50a、50bを線源収容孔12に収容する前の図、図6(b)は放射線源50a、50bを線源収容孔12に挿入したときの図、図6(c)は放射線源50a、50bを線源収容孔12に収容した後の図である。
【0042】
第1実施形態における係止部の他の構成として、図6(a)に示すように、蓋部23の他端23bに、中央部が開口した矩形状の金具(係止具)26が設けられる。板状部11の所定位置には係止具26と係合可能な係止部25が設けられる。かかる構成によれは、図6(b)に示すように、蓋部23を開いた状態で放射線源50a、50bを線源収容孔12に挿入し、その後、図6(c)に示すように、蓋部23を閉じた後、係止具26と係止部25の係合により、蓋部23は板状部11に係止される。
【0043】
従って、かかる構成によっても、蓋部23を容易に開閉して放射線源50a、50bを線源収容孔12に収容し、線源収容孔12から取り出すことができる。これにより、放射線源50a、50bの取り扱いを簡易にし、放射線源50a、50bの取扱時間を短くすることができる。このため、放射線源50a、50bの取扱者の放射線源50a、50b取り扱い時の放射線被曝量を低減させることができる。
【0044】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態にかかる放射線源収容治具の構成を示す概略図である。第2実施形態にかかる放射線源収容治具(以下、「線源収容治具3」と称する)は、蓋部が板状部の両面に設けられる点で第1実施形態の線源収容治具1と大きく異なる。なお、以下の説明では、第1実施形態の線源収容治具1と実質的に同一の機能や構成を有する要素については、同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0045】
図7に示すように、線源収容治具3は、所定の幅と所定の長さを有する板状部31と、4つの放射線源収容部(以下、「線源収容部30」と称する)とから構成されている。
【0046】
1つの線源収容部30は、2つの放射線源収容孔(以下、「線源収容孔32」と称する)と、第一の蓋部33と、第二の蓋部43と、第一のヒンジ部34と、第二のヒンジ部44と、第一の係止部35と、第二の係止部45とから構成されている。以下、第1実施形態と相違する機能、構成を有する要素について主に説明する。
【0047】
線源収容孔32は、板状部31を貫通して設けられ、板状部31の一面に略円形の第一の開口部32aを有し、板状部31の他面に略円形の第二の開口部32bを有する。
【0048】
第一の蓋部33は、線源収容孔32の第一の開口部32aを覆うものである。第一の蓋部33の第一のヒンジ部34と反対側の端部(他端33b)には切欠部33cが形成されている。第二の蓋部43は、線源収容孔32側に弾性体36を備え、線源収容孔32の第二の開口部32bを覆うものである。第二の蓋部43の第二のヒンジ部44と反対側の端部(他端43b)には切欠部43cが形成されている。
【0049】
第一のヒンジ部34は、第一の蓋部33の一端33aを板状部31に取り付けるものである。第一のヒンジ部34により、板状部31の表面に第一の蓋部33の一端33aを取り付けることにより、第一の蓋部33の一端33aを基端として第一の蓋部33を開閉可能とすることができる。
【0050】
第二のヒンジ部44は、第二の蓋部43の一端43aを板状部31に取り付けるものである。第二のヒンジ部44により、板状部31の表面に第二の蓋部43の一端43aを取り付けることにより、第二の蓋部43の一端43aを基端として第二の蓋部43を開閉可能とすることができる。
【0051】
第一の係止部35は、第一の蓋部33を板状部31に係止するものである。第一の係止部35は、スライド可能な部材を有しており、かかる部材を閉じられた第一の蓋部33の方向にスライドさせて第一の蓋部33の切欠部33cと係合させることにより、第一の蓋部33を板状部31に係止することができる。
【0052】
第二の係止部45は、第二の蓋部43を板状部31に係止するものである。第二の係止部45は、スライド可能な部材を有しており、かかる部材を閉じられた第二の蓋部43の方向にスライドさせて第二の蓋部43の切欠部43cと係合させることにより、第二の蓋部43を板状部31に係止することができる。
【0053】
線源収容治具3によれば、放射線源50a、50bを線源収容孔32に収容する場合は、例えば第一の蓋部33を閉める一方、第二の蓋部43を開けた状態にして放射線源50a、50bを第二の蓋部43側から線源収容孔32に収容した後、弾性体36を備える第二の蓋部43を閉めることにより放射線源50a、50bを収容することができる。すなわち、放射線源50a、50bの全体を線源収容孔32に収容した後に、第二の蓋部43を閉じるため、弾性体36の弾性力を放射線源50a、50bの押し込みに有効に使用することにより、放射線源50a、50bを容易に収容することができる。
【0054】
放射線源50a、50bを線源収容孔32から取り出す場合は、第一の蓋部33および第二の蓋部43が閉じられた状態から、第一の蓋部33を開けたときに、弾性体36の弾性力により放射線源50a、50bが線源収容孔32の外方向に押し上げられることにより、放射線源50a、50bを取り出すことができる。これにより、放射線源50a、50bを容易に取り出すことができる。
【0055】
従って、放射線源50a、50bの取り扱いを簡易にし、放射線源50a、50bの取扱時間を短くすることができる。このため、放射線源50a、50bの取扱者の放射線源50a、50b取り扱い時の放射線被曝量を低減させることができる。
【0056】
また、第一の蓋部33および第二の蓋部43が閉じられた状態のときに、板状部31と第一の蓋部33、板状部31と第二の蓋部43の外面がそれぞれ連続するように形成することにより、後述するドラム缶形状の校正装置70への挿入、取り出しを容易に行うことができる。
【0057】
図8は、ドラム缶形状の校正装置への配置を説明する図であり、図8(a)はドラム缶形状の校正装置(以下、適宜「校正装置70」と記載)の上部の概略構成図、図8(b)は校正装置70の一部断面図である。
【0058】
放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定可能な放射線検出器の校正には、図8に示すように、ドラム缶形状の校正装置70が用いられる。線源収容治具1、3は、かかる放射線検出器の校正のために使用される放射線源50a、50bを収容することができる。
【0059】
図8(a)に示すように、校正装置70は、所定箇所に4つの治具挿入部72を有する。放射線源50a、50bを収容した4つの線源収容治具1、3は、治具挿入部72のそれぞれの開口部である治具挿入孔72a、72b、72c、72dから挿入される。従って、線源収容治具1、3をかかる方法で使用することにより、放射線源50a、50bの取り扱いを簡易にし、放射線源50a、50bの取扱時間を短くすることができる。これにより、放射線源50a、50bの取扱者の放射線源50a、50b取り扱い時の放射線被曝量を低減させることができる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、放射性物質を検査する装置、特に原子力発電所において、放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定することにより放射性物質を検査する放射線検出器、の校正のために使用される放射線源を収容する放射線源収容治具に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、3 …線源収容治具
10、30 …線源収容部
11、31 …板状部
12、32 …線源収容孔
12a …開口部
12b …底部
13、23 …蓋部
13a、33a、43a …蓋部の一端
13b、23b、33b、43b …蓋部の他端
14 …ヒンジ部
15 …スライド部(係止部)
15a、15b …分割スライド部
15c …接続部
15d …雄ねじ
15e、15f …ボールプランジャ
15g …切欠部
15h、15k …ねじ穴
16、36 …ばね(弾性体)
17 …溝部
25 …係止部
26 …係止具
32a …第一の開口部
32b …第二の開口部
33 …第一の蓋部
33c、43c …切欠部
34 …第一のヒンジ部
35 …第一の係止部
43 …第二の蓋部
44 …第二のヒンジ部
45 …第二の係止部
50a、50b …放射線源
60 …補強部
70 …ドラム缶形状の校正装置
71 …ドラム缶
72 …治具挿入部
72a、72b、72c、72d …治具挿入孔
73 …充填材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅と所定の長さを有する板状部と
前記板状部の一面に開口部を有する放射線源収容孔と、
前記放射線源収容孔の前記開口部を覆う蓋部と、
前記蓋部の一端を基端として前記蓋部が開閉可能に、該一端を前記板状部に取り付けるヒンジ部と、
前記蓋部を前記板状部に係止する係止部と、
を備えることを特徴とする放射線源収容治具。
【請求項2】
前記放射線源収容孔は、該放射線源収容孔の底部と収容される放射線源との間に弾性体を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線源収容治具。
【請求項3】
前記係止部は、スライド部を有し、
前記蓋部の前記板状部への係止は、前記スライド部をスライドさせて前記蓋部の他端を係止することにより行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線源収容治具。
【請求項4】
所定の幅と所定の長さを有する板状部と、
前記板状部を貫通して設けられ、前記板状部の一面に第一の開口部を有し、前記板状部の他面に第二の開口部を有する放射線源収容孔と、
前記放射線源収容孔の前記第一の開口部を覆う第一の蓋部と、
前記放射線源収容孔側に弾性体を備え、前記放射線源収容孔の前記第二の開口部を覆う第二の蓋部と、
前記第一の蓋部の一端を基端として前記第一の蓋部が開閉可能に、該一端を前記板状部に取り付ける第一のヒンジ部と、
前記第二の蓋部の一端を基端として前記第二の蓋部が開閉可能に、該一端を前記板状部に取り付ける第二のヒンジ部と、
前記第一の蓋部を前記板状部に係止する第一の係止部と、
前記第二の蓋部を前記板状部に係止する第二の係止部と、
を備えることを特徴とする放射線源収容治具。
【請求項5】
当該放射線源収容治具は、放射性物質が封入されたドラム缶の放射能濃度、表面汚染密度、表面線量当量率を測定可能な放射線検出器の校正のために使用される放射線源を収容することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線源収容治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−103193(P2012−103193A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253665(P2010−253665)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591130319)東電環境エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】