説明

放射線照射装置

【課題】放射線照射装置の照射野内の線量分布の不均一を低減し、被照射物に悪影響を与えずにトレイ上の非照射物体に照射される放射線の線量率の均一度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】線中心部分の線量が高く周辺に近づくほど線量が低くなる傾向にある照射野内の線量分布状態に合わせて付加するX線フィルタの形状を形成する。具体的には、X線フィルタの形状を、X線中心付近の厚みを厚くし、照射野周辺に向かって薄くなるよう形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射装置の放射線量の制御技術に関する。特に、照射する放射線の線量分布の均一性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
輸血後GVHD(Graft Versus Host Disease)と呼ばれる輸血による副作用がある。これを予防するため、放射線を照射し、輸血用血液製剤の内のリンパ球を不活性化する技術が知られている。用いられる放射線には、放射性同位元素137Cs(セシウム)を利用したγ線とX線とがある。X線やγ線等の放射線を血液に照射することは、リンパ球の不活性化には有効であるが、リスク要因も少なからず存在する。このため、必要最小限の照射に留めなければならず、血液製剤への照射量は厳密に制御する必要がある。
【0003】
例えば、X線を照射するX線照射装置は、X線管装置と、X線管装置に対面して配置された円盤状のトレイ部とを備え、トレイ部に被照射物体である輸血用血液製剤を載せ、X線を照射する。このとき、トレイ部の輸血用血液製剤全てに均等にX線が照射されると、当該製剤の配置による照射量の差を考慮しなくて良いため、輸血用血液製剤への照射量制御を容易に行うことができる。ところが、X線管装置の構造上、照射野内において、X線中心が最も高い線量率を示し、照射野周辺に向かうほど線量率が低くなる。また、照射野内において、X線管装置の管軸方向についても陰極側に偏ることが知られている。さらに、X線は、物体を通り抜ける際、吸収されるため、輸血用血液製剤の上部と下部との間に線量差が生まれる。
【0004】
上部と下部との線量差を小さくするため、X線照射装置では、X線管装置と輸血用血液製剤との間にX線フィルタを配し、線質、すなわち波長域を調整している。一般に用いられる管電圧150kV、管電流20mAの場合、X線フィルタとして厚さ1mmのアルミフィルタを用いると、輸血用血液製剤の上部と下部との線量差が少なく、短時間に多くの血液を照射できることが実験で確かめられている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
さらに、管軸方向の線量率の差を低減させるものとして、トレイ部を回転させるもの、上下二方向にX線管装置を配置してそれぞれ陰極と陽極とを対向させて設置するもの(二方向X線照射装置)などがある。二方向X線照射装置は、トレイ部における照射野のX線中心と照射野周辺との差を低減するだけでなく、短時間の照射を実現するとともに輸血用血液製剤の厚み方向の均一性も向上させている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0006】
【非特許文献1】日本輸血学会雑誌 Vol.6 No.4「輸血後移植片対宿主病の予防を目的とする血液製剤へのX線照射条件の検討 平成2年3月1日」
【特許文献1】特開2007−132723号公報
【特許文献2】実公平7−43679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、照射野内のX線中心と照射野周辺との線量分布の不均一は上記工夫では解消されない。X線フィルタは、線量分布による差や物体の厚み方向によるX線吸収量の差を低減する効果がある。このため、X線フィルタ全体の厚みを増すことにより、線量分布の不均一はある程度解消することができる。しかし、一方で、全体的に線量率が低下し、必要な照射量を得るためには照射時間を長くする必要がある。被照射物体が低温保存を要する輸血用血液製剤の場合、常温環境に長時間置いて照射を行うことは望ましくない。従って、均一性を向上させる手段としては適さない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、放射線照射装置の照射野内の線量分布の不均一を低減し、被照射物に悪影響を与えずにトレイ上の被照射物体に照射される放射線の線量率の均一度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、X線中心部分の線量が高く周辺に近づくほど線量が低くなる傾向にある照射野内の線量分布状態に合わせて付加するX線フィルタの形状を形成する。すなわち、X線フィルタの形状を、X線中心付近の厚みを厚く、照射野周辺に向かって薄くなるよう形成する。
【0010】
具体的には、被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、前記放射線照射部の放射線照射方向に設置され、前記被照射物を配置するトレイ部と、を備える放射線照射装置であって、前記放射線照射部と前記トレイ部との間に、前記放射線の照射野の線量分布に応じた厚みを有するフィルタを備え、前記照射野の線量分布は、前記フィルタを用いずに計測されたものであり、前記フィルタの厚みは、前記照射野の線量分布において線量率の高い位置に対する前記フィルタの部分ほど増すよう設定されていることを特徴とする放射線照射装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射線照射装置のトレイ部における線量分布の不均一を低減し、被照射物に悪影響を与えずにトレイ上の非照射物体に照射される放射線の線量率の均一度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用する実施形態について図面を参照し説明する。なお、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。本実施形態では、放射線照射装置として二方向X線照射装置を例にあげて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の二方向X線照射装置の構成図である。ここでは、二方向X線照射装置を例にあげて説明する。本実施形態の二方向照射装置100は、輸血用血液製剤等の試料13に対し上下からX線を照射するための上部X線管装置2および下部X線管装置3と、上部X線管装置2および下部X線管装置3それぞれのX線の線量分布の均一性や透過力を向上させるためのX線フィルタ11および12と、X線を発生するための高電圧を発生させる高電圧発生装置4(4a、4b)と、上部X線管装置2および下部X線管装置3の陽極を冷却するために冷却油を供給するための冷却装置5と、上部X線管装置2および下部X線管装置3によって温められた冷却油を冷却するために冷却水を供給する循環式冷却装置もしくは水道水9と、試料13に照射されるX線量を計測するプローブ7aを備えた線量計7と、照射線量や試料13の厚み補正用の設定等及びエラー表示をするための操作盤8と、X線を照射する照射室1bからX線が外部に漏れないようにするための遮へい体1aを備える防護ボックス1と、高電圧発生ユニット4、線量計7、冷却装置5および循環式冷却装置(もしくは水道水)9等の各ユニットを制御する制御装置6と、試料13を載置するトレイ10と、を備える。なお、X線フィルタ11、12は、照射室1bにねじ止めされる。
【0014】
上記構成を有する二方向X線照射装置100では、上部X線管装置2および下部X線管装置3の2つのX線管装置が、トレイ10に載置された試料13の両面からX線を照射する。二方向X線照射装置100は、上下両方向からX線を照射するため、これら2つのX線管装置に、1方向から照射するX線照射装置のX線管装置と同じ管電流を供給することで、線量を2倍にすることができる。
【0015】
一般に、照射野における線量分布は、X線管装置の陰極および陽極の配列方向(管軸方向)について線束の中心軸に関して非対称である。これを解消するため、本実施形態の二方向X線照射装置100は、下部X線管装置3の陰極および陽極が上部X線管装置2のそれらと互いに反対位置に配置される。例えば、上部X線管装置2において、図面に+の記号で示す陽極を左側に、−の記号で示す陰極を右側に配置している場合、下部X線管装置3においては、+で示す陽極を右側に、−で示す陰極を左側に配置する。このように配置することにより、トレイ10の面上の照射野内における、それぞれのX線管装置2、3の陰極および陽極における線束2a、3aの中心軸の両側における線量分布の不均一が打ち消される。
【0016】
さらに、本実施形態では、X線フィルタ11および12として、照射野内のX線の線量分布に従って厚みを調整したフィルタを用いる。
【0017】
まず、X線フィルタ11および12として、一様な厚みのX線フィルタ11aおよび12aを用い、X線管装置2によるトレイ10面上の照射野のX線の線量分布を、線量計7に接続されたプローブ7aを用いて計測する。ここでは、一様な厚みのX線フィルタ11aおよび12aを用いて計測する場合を例にあげて説明する。一様な厚みのX線フィルタ11aおよび12aを用いた場合の円盤状のトレイ10面上の、直径方向の線量分布30を図2に示す。横軸は直径方向の距離、縦軸は線量率であるX線強度を示す。この場合、本図に示すように、線量分布30は、照射野のX線中心Cの線量率が最も高く、X線照射野周辺(EL、ER)に向かうほど線量率が低くなり、全体として山形を呈する。この計測結果を元に照射野周辺(EL、ER)の線量率すなわち線量率の低い領域の線量率に照射野内の各部の線量率を近づけるよう、X線フィルタ11および12の厚みを決定する。以下、決定の手法を説明する。
【0018】
X線がある物体を透過したときの透過前後の線量は、以下の式(1)で求められる。
I/I=exp(−μt) (1)
ここで、Iは、透過後の線量、Iは、透過前の線量、μは吸収係数、tは、物体の厚さである。本実施形態では、Iを、上記の条件で計測した線量、Iを目標の線量とし、X線フィルタ11および12の厚みtを算出する。なお、μには、X線フィルタ11および12として用いる素材に応じた吸収係数を採用する。
【0019】
照射野において、直径方向の中心からの距離をxとすると、xにおけるX線フィルタの厚みt(x)は、xにおける目標線量I(x)を用い、以下の式(2)により算出される。
t(x)=−ln(I(x)/I)/μ (2)
ここで、lnは、自然対数である。
【0020】
まず、上記式(2)に従って、直径方向のサイズが照射野の直径と等しいX線フィルタ20の形状を得る。このときのX線フィルタ20の形状を図3に示す。本図に示すように、本実施形態のX線フィルタ11および12は、X線中心部が厚く、照射野周辺に近づくにつれて薄くなる形状を有する。次に、X線フィルタの直径方向の大きさDを決定する。実際のX線フィルタ11および12の直径方向の大きさDは、X線フィルタ11および12が取り付けられる位置(X線管装置2、3からの距離L)により定まる。すなわち、図3に示すように、大きさDは、X線焦点XFを頂点とし、トレイ10上のX線フィルタ11および12の厚みを算出する際に使用した照射野IRを底面とする円錐の、位置Lにおける底面に平行な断面の直径である。X線フィルタ11および12は、上記式(2)に従って得られるX線フィルタ20の形状と相似形状を有し、取り付け位置Lに応じた直径方向の大きさDのものとなる。
【0021】
上記手順で決定したX線フィルタ11および12の形状およびX線フィルタ11および12を用いた場合の線量分布を、図4に示す。ここで、30は、一様な厚みのX線フィルタ11aおよび12aを用いた場合の線量分布、31は、X線フィルタ11および12を用いた場合の線量分布である。本図に示すように、X線フィルタ11および12により、照射野のX線中心に近い範囲の線量率が低下する。このため、トレイ10面上の直径方向の線量分布は、一様な厚みのX線フィルタ11aおよび12aを用いた場合の線量分布Iと比較し、その均一性が向上したものとなる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、トレイ10の面上で、照射野の中心部から周辺において均一性の高い線量分布が得られる。これにより、輸血用血液製剤等のX線を照射する対象の試料に対し、均一性の高い線量分布のX線を照射することができ、試料がトレイ10の面上のいずれの箇所に配置されていても略同じ照射量を得ることができる。従って、照射量の制御が容易になるとともに、いずれの箇所に配置されている試料であっても必要最低限のX線の照射で済む。例えば、試料が輸血用血液製剤の場合、トレイ10面のどの位置に置かれたものにも、均一に照射されるため、必要最小限の照射で処理ができる。このため、品質を確保し易くなる。
【0023】
なお、上記実施形態では、上記式(2)に従って、連続して厚みが変化するようX線フィルタ11および12を構成しているが、これに限られない。例えば、目標線量I(x)を離散的に計測し、厚みも離散的に変更するよう構成してもよい。すなわち、同心円状のフィルタを積層する積層型フィルタである。この場合の具体例を図5、図6に示す。
【0024】
図5(a)は、本実施形態の他の例である積層型フィルタ21の斜視図であり、図5(b)は、直径方向の断面図である。本図に示すように、積層型フィルタ21は、半径の異なる複数の円形状の一様な厚みのX線フィルタを、中心軸を共通にして重ねたものである。ここでは、一例として、21a、21b、21c、21dの4枚のフィルタから構成される場合を例に、その作成手順を説明する。
【0025】
上記実施形態同様、一様な厚みのX線フィルタ11aおよび12aを用いた場合のX線管装置2によるトレイ10面上の照射野のX線の線量分布を線量計7を用いて計測する。ここでは、例えば、X線中心Cと照射野周辺のER(またはEL)との間で、例えば、等間隔で4箇所計測する。それらの値と、各計測点における目標線量I(x)とを用いて、各計測位置に対応するフィルタの厚みを決定する。そして、決定した厚みと、X線フィルタの設置位置とに従って、それぞれ、21a、21b、21c、21dの厚みおよびサイズを決定する。
【0026】
図6に、一様な厚みのX線フィルタ11aおよび12aを用いた場合のトレイ10面上の直径方向の線量分布30と、上記積層型フィルタ21をX線フィルタ11および12として用いた場合の、線量分布32とを示す。本図に示すように、この場合も、X線フィルタ11および12により、X線中心に近い範囲の線量率が低下するため、その線量分布が均一化する。従って、上記実施形態同様の効果が得られる。さらに、積層型フィルタを採用する場合、既存の一様な厚みのX線フィルタで半径の異なるものを重ねあわせればよいため、製作も容易である。
【0027】
なお、積層型フィルタ21の重ね合わせ枚数、それぞれの大きさおよび厚みは、血液照射装置の照射野の大きさ、線量分布の状態、求める均一性に応じて決定する。すなわち、均一性を向上させたい場合は、前述した方法により、計測点を増やし、積層するX線フィルタを増やせばよい。すなわち、積層型フィルタによれば、均一性の向上の度合いと製作の容易さとを適宜調整できる。
【0028】
また、積層型フィルタのベースとなるフィルタ21aは、基本的には円盤状であるが、これに限られない。照射野より十分大きくできるのであれば、照射室1bの取り付け穴を考慮して、正方形や長方形であってもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、管軸方向の線量分布の偏りを打ち消すことができる二方向X線照射装置を例にあげて説明している。管軸方向の線量分布の偏りを打ち消すためにトレイ部を回転させるX線照射装置でも同様である。すなわち、上記実施形態と同様に、トレイ部10の線量分布を計測し、計測結果と目標線量分布とから、X線フィルタの厚みを算出すればよい。
【0030】
さらに、管軸方向の線量分布の偏りを打ち消す機能を有しない、一般のX線照射装置であっても同様である。上記実施形態と同様に、トレイ部10の線量分布を計測し、計測結果と目標線量分布とから、X線フィルタの厚みを算出する。一般のX線照射装置では、照射野の線量分布について管軸方向に偏りがあるため、X線フィルタ11および12の形状は、この偏りのある線量分布に従ったものとなる。
【0031】
なお、X線高電圧装置とX線管装置の改良により、管電流を増加させて線量率を増加させることが可能となっている。上記実施形態のX線フィルタに管電流の増加を組み合わせることにより、均一性の向上に加え、照射時間が短時間になる。具体的には、20mAとしていた管電流を、例えば30mAに上げることにより、理論上1.5倍の線量率が得られることになる。よって照射時間は、1/1.5に短縮され、輸血用血液製剤の常温環境での放置時間が短縮される。
【0032】
<<実施例>>
以下に、上記積層型フィルタをX線フィルタとして用いた場合の、線量分布の均一性の改善例を示す。ここで、一般に線量率の均一性を示す指標として最低線量率と最大線量率との比が用いられる。以後、本指標を均一度と呼ぶ。一様な厚みの従来型X線フィルタを用いる、一般のX線照射装置の場合、その均一度は約1:3である。同様のX線フィルタを用いる二方向X線照射装置の場合、それが約1:1.4に改善する。
【0033】
二方向X線照射装置の照射野は、φ350mmであり、線量率の高い領域はφ175mmの範囲である。これを踏まえ、この線量率の高い範囲に、0.1mm程度のアルミフィルタを追加した場合の線量分布を計測した。
【0034】
ここでは、二方向X線照射装置を用い、1)二方向からX線を照射した場合、2)上側のX線管装置のみからX線を照射した場合、3)下側のX線管装置のみからX線を照射した場合、の3通りについて、それぞれ、A)直径(φ)300mm、厚み1.0mmの円盤状のアルミフィルタをXフィルタとして用いた場合、B)A)に、φ145mm、厚さ0.1mmの円盤状のアルミフィルタを中心軸を共通にして重ねたものをX線フィルタとして用いた場合、C)B)にさらに、φ145mm、厚さ0.1mmの円盤状のアルミフィルタを中心軸を共通にして重ねたものをX線フィルタとして用いた場合、D)C)にさらに、φ145mm、厚さ0.1mmの円盤状のアルミフィルタを中心軸を共通にして重ねたものをX線フィルタとして用いた場合、の4通りを計測した。
【0035】
図7は、上記1)の条件で、A)〜D)の計測結果である。また、図8は、上記2)の条件で、A)〜D)の計測結果である。図9は、上記3)の条件で、A)〜D)の計測結果である。それぞれ、中心から±75mm、±150mm、±175mmの位置で、線量率(Gy/min)を計測した。各図において、(a)は、計測結果をグラフに、(b)は、計測結果を表にしたものである。(a)のグラフにおいて、横軸は、中心からの位置を示し、縦軸は、A)の条件での中心位置での計測値を100%とした場合の比率である。一方、(b)の表内の数値は、A)〜D)それぞれの中心における計測結果を100%とした場合の、線量率の比率である。また、A)〜D)における均一度を併記する。
【0036】
図7〜図9に示すように、1)の条件の場合、A)の均一度は、1:1.25、B)は、1:1.21、C)は、1:1.18、D)は、1:1.13である。また、2)の条件の場合、A)は、1:1.40、B)は、1:1.32、C)は1:1.31、D)は、1:1.29、3)の条件の場合、A)は、1:1.45、B)は、1:1.42、C)は1:1.40、D)は、1:1.37である。いずれにおいても、X線フィルタの中央部の厚みを増すに従って、均一度が向上することがわかる。特に、1)の条件のD)のケースでは、上述のように均一度が1:1.13となり、従来の一様な厚みのフィルタを用いる場合に比べ、均一度が約20%程度向上することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態の二方向X線照射装置の構成図である。
【図2】一様な厚みのX線フィルタを用いた場合の線量分布を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態のX線フィルタの大きさを説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態のX線フィルタの形状および線量分布を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態の積層型フィルタ斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の積層型フィルタの断面図である。
【図7】本発明の実施例の計測結果を説明するための図である。
【図8】本発明の実施例の計測結果を説明するための図である。
【図9】本発明の実施例の計測結果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
1:防護ボックス、1a:遮へい体、1b照射室、2:上部X線管装置、2a:上部X線線束、3:下部X線管装置、3a:下部X線線束、4:高電圧発生ユニット、4a:高電圧発生装置、4b:高電圧発生装置、5:冷却装置、6:制御装置、7:線量計、7a:プローブ、8:操作盤、9:循環式冷却装置、10:トレイ、11:X線フィルタ、11a:一様な厚みのX線フィルタ、12:X線フィルタ、12a:一様な厚みのX線フィルタ、13:試料、20:本実施形態のX線フィルタ、21:積層型フィルタ、21a:一様な厚みのX線フィルタ、21b:一様な厚みのX線フィルタ、21c:一様な厚みのX線フィルタ、21d:一様な厚みのX線フィルタ、30:一様な厚みのX線フィルタ使用時の線量分布、31:本実施形態のフィルタ使用時の線量分布、32:積層型フィルタ使用時の線量分布、100:二方向X線照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、
前記放射線照射部の放射線照射方向に設置され、前記被照射物を配置するトレイ部と、を備える放射線照射装置であって、
前記放射線照射部と前記トレイ部との間に、前記放射線の照射野の線量分布に応じた厚みを有するフィルタを備え、
前記照射野の線量分布は、前記フィルタを用いずに計測されたものであり、
前記フィルタの厚みは、前記照射野の線量分布において線量率の高い位置に対する前記フィルタの部分ほど増すよう設定されていること
を特徴とする放射線照射装置。
【請求項2】
被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、
前記放射線照射部の放射線照射方向に設置され、前記被照射物を配置するトレイ部と、を備える放射線照射装置であって、
前記放射線照射部と前記トレイ部との間に、前記放射線の照射野の線量分布に応じた厚みを有するフィルタを備え、
前記照射野の線量分布は、前記フィルタを用いずに計測されたものであり、
前記フィルタの厚みは、当該フィルタを透過した放射線の強度が前記照射野において略等しくなるよう設定されていること
を特徴とする放射線照射装置。
【請求項3】
被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、
前記放射線照射部の放射線照射方向に設置され、前記被照射物を配置するトレイ部と、を備える放射線照射装置であって、
前記放射線照射部と前記トレイ部との間に、周辺部から中心に向かって厚みが増すフィルタを備えること
を特徴とする放射線照射装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載の放射線照射装置であって、
前記フィルタの厚みは、連続して変化すること
を特徴とする放射線照射装置。
【請求項5】
請求項1または3いずれか1項記載の放射線照射装置であって、
前記フィルタの厚みは、段階的に変化すること
を特徴とする放射線照射装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の放射線照射装置であって、
当該放射線装置は、
前記放射線照射部として、第一の放射線照射部と第二の放射線照射部とを備え、
前記フィルタとして、第一のフィルタと第二のフィルタとを備え、
前記第二の放射線照射部は、前記トレイ部を中間にして、前記第一の放射線照射部と対面して配置され、
前記第一のフィルタは前記第一の放射線照射部と前記トレイ部との間に配置され、
前記第二のフィルタは前記第二の放射線照射部と前記トレイ部との間に配置されること
を特徴とする放射線照射装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項記載の放射線照射装置であって、
前記トレイ部の中心と前記放射線照射部の中心とを結ぶ軸を回転軸として前記トレイ部を前記放射線照射部に対して相対的に回転させる回転手段をさらに備えること
を特徴とする放射線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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