説明

放射線照射装置

【課題】線量計プローブの位置調整を精度よく、短時間で行うことができるX線照射装置を提供する。
【解決手段】線量計プローブの支持機構は、線量計プローブ7bの一部を覆う放射線遮蔽体41と、放射線遮蔽体41を線量計プローブ7bに対して相対的に移動させることにより、線量計プローブが放射線遮蔽体41から露出される長さを調整する調整機構とを備える。例えば調整機構は、送りねじ46と、送りねじ46の回転量に応じて、放射線遮蔽体を線量計プローブの長手方向に移動させる機構40、45等を含む構成とする。これにより、線量計プローブ露出長さを調整し、モニター線量率を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射装置に関し、特に輸血用血液を封入する血液バッグ(以下、血液製剤という。)等にX線またはγ線を含む放射線を照射する放射線照射装置における、血液製剤等の試料の厚みによる放射線照射量の補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液バッグ内の輸血用血液は、GVHD(Graft Versus Host Disease)と呼ばれる副作用を生じることが知られている。これを予防するため、血液製剤に放射線を照射し、血液製剤の内のリンパ球を不活性化する処理を施す必要がある。不活性化処理に用いられる放射線としては、放射性同位元素137Cs(セシウム)を利用したγ線とX線とがある。
【0003】
不活性化処理のための放射線照射装置としては、例えば特許文献1に開示がなされた二方向照射装置が知られている。二方向照射装置は、X線管装置(第一のX線管装置と称する)と、第二のX線管装置の陰極及び陽極が第一のX線管装置と対面して防護室に組み込まれ、第一、第二のX線管装置の中間に試料皿(以下、トレイと称する)が配置される。照射線量をモニタリングする線量計プローブがトレイの近傍に配置される。二つのX線管装置により、試料の上面と下面から同時にX線の照射を行うことにより、トレイを裏返す必要がなく、かつ、従来の装置よりも大線量かつ均一な照射を行うことができる。線量計プローブにより照射線量をモニタリングし、規定の線量に到達したら自動的に放射線照射を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−43679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二方向照射装置では、X線照射範囲内に置かれた血液製剤に、必ず予め定められた値以上の線量のX線が照射されることを担保するため、線量計プローブの検出する線量率(単位時間当たりのX線照射線量)をプローブの露出長さにより調整している。調整手順としては、最初に血液バッグに水を充填した模擬の血液製剤もしくは血液製剤相当のファントームをトレイ収納範囲内(X線照射範囲内)に配置し、線量計プローブを用いて、トレイ収納範囲内の各箇所でX線の線量を測定することにより線量分布を求める。線量分布から、トレイ収納範囲内の線量率の最小値を特定する。線量分布測定に用いた線量計プローブを、トレイ近傍の所定位置(モニター位置)に配置し、この位置で線量計プローブが検出する線量率が、トレイ収納範囲内の最小の線量率以下になるように、線量計プローブがX線遮蔽体から露出される長さを調整する。
【0006】
線量計プローブは、形状が棒状であり、筒状のX線遮蔽体(金属)の支持部によって支持されている。線量計プローブと支持部との固定は押しねじによって固定される。線量計プローブへのX線量の入射量は、支持部から線量計プローブが露出されている長さで決まり、長く露出されているとモニター線量率が増え、逆に引き込むとモニター線量率は下がる。
【0007】
すなわち、モニター位置で線量計プローブが検出する線量率がトレイ収納範囲内の線量率よりも低くなるように露出長さを調整しているため、モニター位置で計測される線量はX線照射範囲内のどの部位よりも低い。このため、モニター位置での測定結果が規定の線量に到達した時点で放射線照射を停止することで、X線照射範囲内に置かれた血液製剤には必ず規定量以上のX線が照射される。
【0008】
X線管装置から放射されるX線量は、陽極ターゲット表面が熱電子の衝突により荒れてくるのに伴い、次第に減衰し、トレイ収納範囲内の線量率の最小値も変化する。このため、線量計プローブの露出長さの調整は、定期的に行う必要がある。
【0009】
線量計プローブの露出長さを調整する手順を詳しく説明する。まず、約15kg程度ある防護カバーを取り外し、線量計プローブをモニター位置から取り外し、トレイ収納範囲内の所定個所に配置し、防護カバーを取り付けて線量率を測定する。この動作を繰り返し、トレイ収納範囲内の線量分布を測定する。再び防護カバーを取り外して、線量計プローブをモニター位置の支持部へ差し込み、押しねじで固定する。防護カバーを再び装着し、X線を照射する。この時のモニター線量率を読取り、線量分布測定によって得られた最小の線量率よりもモニター線量率の値の方が大きければ防護カバーを再び外し、線量計プローブを固定している押しねじを緩め、線量計プローブの放射線検出部を支持部の中に手で引き込む。その後、線量計プローブの押しねじを再度締めて固定する。その後、防護カバーを取り付けて、X線を照射し、最小の線量率と同じ値になっているかを確認し、同じにならなければ同じ値になるまでこれを繰り返す。
【0010】
以上のように従来の二方向照射装置では、線量計プローブの位置調整を手作業で行っており、露出長さの調整も目分量に頼るものであるから、引き込み過ぎや出し過ぎによる繰り返し作業が多く、正確に調整するには時間を要していた。重たい防護カバーを取り外し、取り付ける作業を繰り返す必要があり、調整を行う作業者の負担が大きい。また、調整後に押しねじが緩み、線量計プローブの位置ずれが起きると、照射線量不足や過照射等の誤照射を起こす可能性があるため、押しねじの取り付けには細心の注意が必要であった。
【0011】
本発明の目的は、線量計プローブの位置調整を精度よく、短時間で行うことができる放射線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、以下のような放射線照射装置が提供される。すなわち、被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、放射線照射部の放射線照射領域に被照射物を搭載する搭載部と、放射線照射領域の近傍の所定位置に配置された線量計プローブと、線量計プローブの検出した線量により放射線照射部の放射線照射を停止させる制御部とを有する放射線照射装置であって、線量計プローブは、線量計プローブ支持機構に支持され、線量計プローブ支持機構は、線量計プローブの一部を覆う放射線遮蔽体と、放射線遮蔽体を線量計プローブに対して相対的に移動させることにより、線量計プローブが放射線遮蔽体から露出される長さを調整する調整機構とを備える。
【0013】
例えば上記調整機構は、送りねじと、送りねじの回転量に応じて、放射線遮蔽体を線量計プローブの長手方向に移動させる機構とを含む構成とする。
【0014】
また、放射線照射部および線量計プローブが配置された空間の外側を覆う放射線防護カバーには、調整機構を操作するための開口を設け、開口には着脱可能な防護カバーを取り付けられていることが好ましい。
【0015】
放射線防護カバーの開口および着脱可能な防護カバーの少なくともに一方には、開口に着脱可能な防護カバーが取り付けられていることを検出する検出部を備える構成にすることが可能である。
【0016】
検出部が着脱可能な防護カバーが取り付けられていることを検出していない場合、制御部は、放射線照射部に放射線を照射させないように構成することができる。また、制御部は、着脱可能な防護カバーが取り付けられていない場合、エラー表示を表示部に表示させることも可能である。
【発明の効果】
【0017】
以上、本発明によれば、線量計プローブの位置調整を精度よく、短時間で行うことができる。また、モニター線量率調整後の位置ずれによる誤照射を防止することができ、かつ、操作者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の放射線照射装置(二方向照射装置)100の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置のプローブ支持機構70の上面図である。
【図3】図2のプローブ支持機構のA矢視図である。
【図4】図2の拡大図である。
【図5】図4のB矢視図である。
【図6】図2のプローブ支持機構70の線量計プローブ7aを支持する機構70aを示す上面図である。
【図7】図6のD矢視図である。
【図8】実施形態の放射線照射装置の小窓用防護カバー31を取り外した状態のプローブ支持機構70の上面図である。
【図9】図8のF矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の放射線照射装置の全体構成を示すブロック図である。ここでは、図1のように二方向から被照射物にX線を照射する二方向照射装置を例に説明する。二方向照射装置100は、トレイ保持部10と、トレイ保持部10を挟んで上下に対向配置されたX線管装置2,3と、トレイ保持部10の近傍に配置された線量計プローブ7aと、プローブ支持機構70と、これらが配置されている空間を覆うX線の遮蔽体1aとを備えている。トレイ保持部10は、血液製剤等の被照射物13aを収容するトレイ13を搭載する。トレイ保持部10は、トレイ13を外部に搬出するために、遮蔽体1aの外側の位置10aに引き出し可能な構造である。
【0021】
二方向照射装置100は、さらに、X線管装置2、3に電力を供給する高電圧発生ユニット4、X線管装置2,3を冷却するための冷却装置5、線量計7、タッチパネル等の操作盤8、制御装置6およびバーコードリーダー14を備えている。
【0022】
トレイ13は、厚い血液製剤を内装するためのトレイと、薄い血液製剤を内装するためのトレイの2種類あるいは3種類以上が準備されている。トレイ13には、各々バーコードが付与されており、バーコードリーダー14で読み取るとバーコード情報が制御装置6に送られ、トレイの厚みを認識する。
【0023】
上部X線管装置2とトレイ13の間にはX線フィルター11が配置され、下部X線管装置3とトレイ13の間にはX線フィルター12が配置されている。X線フィルター11,12は、所定のX線透過率のものが用いられる。X線フィルター11とX線フィルター12で挟まれた空間を、X線照射室1bと呼ぶ。
【0024】
上部X線管装置2には、高電圧発生ユニット4の高電圧発生装置4aによって独立に高電圧が印加され、下部X線管装置3には高電圧発生装置4bによって独立に高電圧が印加される。これにより、上部X線管装置2および下部X線管装置3からそれぞれX線線束2a,3aがそれぞれ放射され、トレイ13内の被照射物に照射される。
【0025】
冷却装置5は、X線管装置2、3に冷却油を供給することにより、陽極を冷却する。冷却装置5には、循環式冷却装置(もしくは水道)9が接続されており、X線管装置2、3によって温められた冷却油を冷却水により冷却する。
【0026】
線量計7は、線量計プローブ7aに入射したX線量を計測する。線量計プローブ7aを支持するプローブ支持機構70には、トレイ13の厚みに応じてX線吸収量の補正を行うための補正フィルター25が備えられている。プローブ支持機構70の構成については後で詳しく説明する。
【0027】
トレイ13に照射する上部X線管装置2および下部X線管装置3の線量、トレイの厚さ等のX線照射条件の設定、メッセージ表示、各種データの登録は、操作盤(タッチパネル)8を操作者が操作することによってなされる。遮蔽体1aは、照射室1bからX線が外部に漏れないよう遮蔽する。
【0028】
このように、二つのX線管装置2,3により、被照射物13aの上面と下面から同時にX線線束2a,3aの照射を行うことにより、トレイ13を裏返す必要がなく、かつ、大線量かつ均一なX線照射を行うことができる。線量計プローブ7aにより照射線量をモニタリングし、線量計7の線量が設定された値に到達したならば、制御装置6は放射線照射を停止する。
【0029】
二方向照射装置では、X線照射範囲50内に置かれた被照射物13aに必ず予め定められた値以上の線量率でX線が照射されることを担保するため、線量計プローブの露出長さを調整している。調整手順としては、ファントームをX線照射範囲50内に配置し、線量計プローブ7aを用いて、トレイ収納範囲内の各箇所でX線の線量を測定することにより線量分布を求める。線量分布から、トレイ収納範囲50内の線量率の最小値を特定する。線量分布測定に用いた線量計プローブ7aを、プローブ支持機構70に取り付けこの位置で線量計プローブが検出する線量率が、トレイ収納範囲内の最小の線量率以下になるように、線量計プローブ7aがX線遮蔽体から露出される長さを調整する。
【0030】
以下、図2から図5を用いてプローブ支持機構70について説明する。図2は、遮蔽体1aを切り欠いて示したプローブ支持機構70の上面図、図3は、図2のA矢視図(遮蔽体1aの一部切り欠き)、図4は、図2の拡大図、図4は、図5のB矢視図(正面図)である。
【0031】
図2〜図5に示すように、遮蔽体1aには、照射室1bの線量計プローブ7aが配置される領域の外側を覆う箱型のカバー30が備えられている。カバー30は、遮蔽体1a同様のX線遮蔽体によって形成されている。
【0032】
カバー30の内側の遮蔽体1aには、プローブ支持機構70を挿入するための開口が形成されている。開口の外側に、板状のベース60が固定具60aにより固定されている。プローブ支持機構70は、板状のベース60に固定され、遮蔽体1aの開口から照射室1b側に挿入されている。
【0033】
プローブ支持機構70は、線量計プローブ7aを支持する機構70aと、補正フィルター25を支持する機構70bとを含む。補正フィルター25は、被照射物13aの厚みによるX線吸収量相当のX線量を減衰させ、線量計プローブ7aで検出されるX線量が被照射物13aの厚みの中心部のX線量となるように補正するフィルター25である。被照射物13aの中心部に照射される線量率の値は、被照射物(血液製剤)13aの厚みによって変化し、厚い血液製剤の方が薄い血液製剤よりもX線吸収量が大きいため、中心部の線量率の値は、熱い血液製剤の方が薄い血液製剤よりも更に小さくなる。このX線吸収量は次の式により表されることは周知である。
I/I=exp(−μt)
(ここにI:透過後の線量、I:透過前の線量、μ:吸収係数、t:物体の厚さ)
この吸収差を補正するために、二方向照射装置ではX線吸収量に応じた補正フィルター25を必要に応じて、線量計プローブ7aに被せ、被照射物13aの中心部に近い状態に補正し、X線量をモニタリングする。
【0034】
補正フィルター25を支持する機構70bは、図2のモーター21の駆動力により、補正フィルター25を矢印71の方向にスライドさせる機構である。これにより、補正フィルター25が線量計プローブ7aを覆った状態と、覆っていない状態とを選択的に切り替える。機構70bは構成は、広く知られているので、詳細な説明は省略する。モーター21の動作は、制御装置6により制御される。具体的には、操作盤8において操作者が設定した被照射物13aの厚さが補正フィルター25が必要な厚さである場合は、制御装置6は線量計プローブ7aに補正フィルター25を被せる方向にフィルター25をスライドさせるようにモーター21を駆動し、補正フィルター25が必要が無い場合には、フィルター25を退避させる方向にスライドさせるようにモーター21を駆動する。
【0035】
線量計プローブ7aを支持する機構70aを説明するために、図4のプローブ支持機構70から補正フィルター25の支持機構70bを取り除いた構成の拡大図を図6に示す。図6のD矢視図を図7に示す。図6および図7のように、線量計プローブ7aを支持する機構70aは、固定金具43、支持台44、遮蔽体41、コロ42、ガイド40、伝達金具45、送りねじ46、固定ねじ47とを備えて構成されている。
【0036】
線量計プローブ7aは、固定金具43に挿入され、固定ねじ43aで締めることにより、固定金具43に固定されている。支持台44は、長手方向が線量計プローブ7aと平行で、平らな上面を有し、一端がベース60に固定されている。固定金具43は、連結金具48により、支持台44の側面に固定されている。
【0037】
ガイド40は、遮蔽体41を直動案内するため、線量計プローブ7aと平行に配置された棒材であり、一端はベース60に固定されている。遮蔽体41は、X線を遮蔽する材料からなり、2本の平行な貫通孔が設けられている。貫通孔の一方には線量計プローブ7aの先端部が挿入され、他方にはガイド40が挿入されている。遮蔽体41の側面には、コロ42が取り付けられており、コロ42は、支持台44の上面に搭載されている。これにより、遮蔽体41は、ガイド40と支持台44により支持され、かつ、コロ42により線量計プローブ7aの長手方向に可動である。
【0038】
伝達金具45は、先端の上面がねじ45aにより遮蔽体41の下面と連結されている。伝達金具45のベース側の端面には、送りねじ46が挿入されている。また、伝達金具45のベース側の端面には、固定ねじ47の先端が突き当てられている。固定ねじ47がベース60と接する部分には、固定ねじ47をロックするためのナット47aが配置されている。
【0039】
次に各部の動きについて説明する。操作者が固定ねじ47のロックナット47aを緩めてロックを解除し、送りねじ46を時計回りに回転させると、伝達金具45がベース60に接近する方向へ移動を始め、連結されている遮蔽体41もガイド40に案内されてベース60方向に接近する方向に移動する。これにより、線量計プローブ7aの先端の放射線検出部7bが遮蔽体41から露出される長さが長くなり、モニターされる線量率を増加させることができる。
【0040】
一方、送りねじ46を半時計回りに回転させると、伝達金具45と遮蔽体41は、ベース60から遠ざかる方向に移動し、遮蔽体41が、放射線検出部7bの上に被さるため、放射線検出部7bのモニターする線量率を低下させることができる。送りねじ46のねじピッチを細かくすれば、遮蔽体41をより微細に調整することが可能なる。
【0041】
また線量計プローブ7aの位置は、プローブ固定金具43、連結金具48、支持台44を介してベース60に固定されているため、操作者が、送りねじ46を回転させてモニター線量率の調整作業を行っても、線量計プローブ7aが位置ずれを起こす心配がない。
【0042】
このように、本実施形態では、送りねじ46を回転させる操作を操作者が行うことにより、線量計プローブ7aの先端の放射線検出部7bが遮蔽体41から露出される長さを連続的に微細に調整することができる。これにより、従来のように操作者が試行錯誤で線量計プローブの位置を調整してモニター線量率を調整すること必要がなく、精度よく線量計プローブのモニター線量率を調整することができる。
【0043】
しかも、本実施形態では、一般に約15kg程度の重たい防護カバー30全体を取り外すことなく、線量計プローブ7aのモニター線量率を調整することができる。以下、これを説明する。
【0044】
線量計プローブ7aの露出長さを調整するための送りねじ46は、ベース60の外側に配置されている。本実施形態では、図2〜図5に示したように、防護カバー30の送りねじ46および固定ねじ47に対向する領域に、小窓(開口)30aを設け、小窓用防護カバー31をねじ31aにより着脱可能に取り付けている。小窓用防護カバー31は、防護カバー30と同じX線を遮蔽する材質である。
【0045】
よって、線量計プローブ7aのモニター線量率を調整する際には、小窓用防護カバー31を図8、図9のように取り外すことにより、小窓30aを開放し、操作者が小窓30aを通して、送りねじ46、固定ねじ47およびナット47aにアクセスすることができる。本実施形態では、15kg程度の重たい防護カバー30を外す必要がなく、2kg程度の小窓用防護カバー30を外して送りねじ46とロックナット47にアクセスすることができるため、操作者の負担を軽減できる。なお、図8、図9において、7cは、線量計プローブ7aと線量計7とを接続するケーブルである。
【0046】
また、X線照射範囲50の線量分布測定時には、線量計プローブ7aを支持機構70aから取り外す必要があるが、本実施形態では、連結金具48を固定金具43から取り外すことにより、線量計プローブ7aを固定金具43ごと取り外し、照射室1b内に引き出して線量分布を測定することができる。つまり防護カバー30全体を取り外すことなく、線量計プローブ7aを固定金具43ごと取り外して、線量分布測定を行うことができる。また、線量計の校正等のために、線量計プローブ7aを照射室1bの外部に取り出す場合には、固定ねじ43aを緩め線量計プローブ7aから固定金具を取り外したうえで、小窓30aから線量計プローブ7aのみを取り出すことができる。つまり防護カバー30全体を取り外すことなく、小窓30aから線量計プローブ7aの脱着作業が可能になる。従来装置では、線量分布測定および線量計の構成等の場合には、防護カバー全体を取り外し、その後、照射室内のつまみねじを緩めて線量計プローブを引き抜く必要があったが、本実施形態では防護カバー30全体を取り外す必要がないため、操作者の作業が軽減される。
【0047】
更に本実施形態では、小窓用防護カバー31の付け忘れによるX線漏えいが発生しないように、ベース60に検出スイッチ33を設け、小窓用防護カバー31の内側に、検出スイッチ33を押すための突起状のカム34を付加している。これにより、検出スイッチ33が図4のように小窓用防護カバー31のカム34で押されていることを電気的に検出することができ、小窓用防護カバー31の付け忘れを検出できる。検出スイッチ33がカム34で押されていない時には、制御装置6は、X線照射が開始できないように構成されている。また、制御装置6は、小窓用防護カバー31のつけ忘れを示すエラー表示を操作盤8の表示部に表示する等により操作者に報知する。
【0048】
このように、本発明ではモニター線量率の調整機構を設けることで、調整時間の短縮を図ることができ、更に線量計プローブの位置ずれによる誤照射を防止することが可能である。また、重たい防護カバーを取り外すことなく調整が可能であり、操作者の負担を軽減させ、モニター線量率の調整が可能である。
【0049】
なお、本実施形態では、放射線としてX線を照射する装置について説明したが、γ線等の他の放射線の照射装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:防護ボックス、1a:遮蔽体、1b:照射室、2:上部X線管装置、2a:上部X線線束、3:下部X線管装置、3a:下部X線線束、4:高電圧発生ユニット、4a:高電圧発生装置、4b:高電圧発生装置、5:冷却装置、6:制御装置、7:線量計、7a:線量計プローブ、7b:放射線検出部、7c:線量計プローブケーブル、8:操作盤(タッチパネル)、9:循環式冷却装置もしくは水道水、10:トレイ保持部、10a:トレイ保持部搬出位置、11:X線フィルター、12:X線フィルター、13:バーコード付トレイ、13a:被照射物、14:バーコードリーダー、21:フィルター駆動モータ、25:補正フィルター、30:防護カバー、31:小窓用防護カバー、33:小窓用防護カバー付け忘れ検出スイッチ、34:カム、40:ガイド、41:遮蔽体、42:コロ、43:プローブ固定金具、44:支持台、45:伝達金具、46:送りねじ、47:固定ねじ、47a:固定ナット、48:連結金具、50:トレイ収納範囲内に相当するX線照射範囲、60:ベース、70:プローブ支持機構、70a:線量計プローブ支持機構、70b:補正フィルター支持機構、100:X線照射装置(二方向照射装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、当該放射線照射部の放射線照射領域に被照射物を搭載する搭載部と、前記放射線照射領域の近傍の所定位置に配置された線量計プローブと、前記線量計プローブの検出した線量により前記放射線照射部の放射線照射を停止させる制御部とを有し、
前記線量計プローブは、線量計プローブ支持機構に支持され、該線量計プローブ支持機構は、前記線量計プローブの一部を覆う放射線遮蔽体と、前記放射線遮蔽体を前記線量計プローブに対して相対的に移動させることにより、前記線量計プローブが前記放射線遮蔽体から露出される長さを調整する調整機構とを備えることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線照射装置において、前記調整機構は、送りねじと、該送りねじの回転量に応じて、前記放射線遮蔽体を前記線量計プローブの長手方向に移動させる機構とを含むことを特徴とする放射線照射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線照射装置において、前記放射線照射部および前記線量計プローブが配置された空間の外側を覆う放射線防護カバーをさらに有し、
前記放射線防護カバーには、前記調整機構を操作するための開口が設けられ、前記開口には、着脱可能な防護カバーが取り付けられていることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線照射装置において、前記放射線防護カバーの前記開口および前記着脱可能な防護カバーの少なくともに一方には、前記開口に前記着脱可能な防護カバーが取り付けられていることを検出する検出部が備えられていることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線照射装置において、前記検出部が前記着脱可能な防護カバーが取り付けられていることを検出していない場合、前記制御部は、前記放射線照射部に放射線を照射させないことを特徴とする放射線照射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線照射装置において、前記制御部は、前記着脱可能な防護カバーが取り付けられていない場合、エラー表示を表示部に表示させることを特徴とする放射線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−326(P2013−326A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134269(P2011−134269)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】