説明

放射線画像取得装置

【課題】異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、しかも、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる放射線画像取得装置を提供する。
【解決手段】本発明の放射線画像取得装置1では、表面検出器3および裏面検出器4によって、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得するデュアルエナジー撮像が実現される。ここで、対象物Aと波長変換板6との間には撮像手段が何ら介在していないため、対象物Aを透過した放射線に与える影響が低減され、低エネルギー帯の放射線が好適に検出される。しかも、裏面検出器4は、裏面6bの法線C方向に出射されるシンチレーション光を集光するため、あおりの無い裏面側画像Pbを取得することができ、この裏面側画像Pbを基準画像として表面側画像Paのあおりを適正に補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載されるように、X線源から発せられて撮像対象物を透過したX線を平板状のシンチレータに照射し、シンチレータで発光した可視光(シンチレーション光)をシンチレータの両面に積層させた固体光検出器により検出し、各固体光検出器から出力された画像信号を重ね合わせて放射線画像を取得する装置が知られている。この装置では、シンチレータにおけるX線の入射面およびその裏面に光検出素子をカップリングさせており、入射面側の光検出素子と裏面側の光検出素子とのそれぞれにおいて可視光を検出することで、可視光の検出効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−27866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにシンチレータの両面でシンチレーション光を検出する装置では、入射面側とその裏面側とで異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、いわゆるデュアルエナジーの画像取得が可能となる。
【0005】
しかしながら、上述した従来の装置では、対象物を透過した放射線は、入射面側の光検出素子を透過してシンチレータに到達するため、比較的低いエネルギー帯の放射線が入射面側の光検出素子に吸収されてしまう。例えば、対象物が軽い原子から形成される場合、対象物を透過した放射線が入射面側の光検出素子によって吸収されることがある。このように、対象物を透過した放射線が入射面側の光検出素子の影響を受けてしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、しかも、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる放射線画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放射線画像取得装置は、放射線を出射する放射線源と、放射線源から出射され、対象物を透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる平板状の波長変換部材と、波長変換部材の放射線の入射面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第1の撮像手段と、波長変換部材の入射面とは反対側の面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第2の撮像手段と、を備え、第1の撮像手段および第2の撮像手段の一方は、入射面または反対側の面からその法線方向に出射されるシンチレーション光を集光し、第1の撮像手段および第2の撮像手段の他方は、入射面または反対側の面からその法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る放射線画像取得装置によれば、第1の撮像手段および第2の撮像手段によって、波長変換部材の放射線の入射面とその反対側の面とから出射されるシンチレーション光がそれぞれ集光され、撮像される。これにより、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得するデュアルエナジー撮像が実現される。ここで、第1の撮像手段は、入射面から出射されるシンチレーション光を集光するため、波長変換部材から離間した位置に配置される。よって、対象物と波長変換部材との間に撮像手段が介在しない構成とすることができ、撮像手段が対象物を透過した放射線に影響を与えてしまうような事態を回避できる。従って、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる。さらには、第1の撮像手段および第2の撮像手段の一方は、入射面またはその反対側の面からその法線方向に出射されるシンチレーション光を集光するため、あおりの無い放射線画像を取得することができる。よって、一方の撮像手段で取得されたあおりの無い放射線画像を基準画像として、他方の撮像手段で取得された放射線画像のあおりを適正に補正することができる。
【0009】
また、第1の撮像手段および第2の撮像手段のそれぞれは、波長変換部材から出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部と、集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部と、を有すると好適である。この場合、波長変換部材の入射面および反対側の面の各面に焦点が合うように集光することで、エネルギー分別が良好で、明るい放射線画像を取得することができる。
【0010】
ここで、第1の撮像手段は、入射面の法線方向に出射されるシンチレーション光を集光すると共に、第2の撮像手段は、反対側の面の法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光すると好適である。この場合、第1の撮像手段により取得される放射線画像は、波長変換部材の入射面付近で変換されるシンチレーション光による像であるため、波長変換部材の内部で生じるボケの影響が低減され、ボケの少ない鮮明な画像となる。よって、あおりがなく、且つボケの少ない放射線画像を基準画像にできるので、第2の撮像手段により取得される放射線画像のあおりを補正するにあたり、より良好な基準画像を用いることができる。
【0011】
また、放射線源は、入射面の法線上に配置されると共に、第1の撮像手段は、入射面の法線から外れた位置に配置され、波長変換部材と放射線源との間に配置された反射ミラーを介してシンチレーション光を集光すると好適である。この場合、上記したように、あおりがなく、且つボケの少ない放射線画像を基準画像にできる。しかも、放射線源が入射面の法線上に配置されるため、波長変換部材への投影像にもあおりが生じず、投影像のあおりを補正するための演算が不要となる。さらには、放射線による第1の撮像手段の被曝を抑制することができ、第1の撮像手段の内部におけるノイズの発生を抑制できる。
【0012】
また、第2の撮像手段は、反対側の面の法線から外れた位置に配置され、反対側の面の法線上に配置された反射ミラーを介して反対側の面の法線方向に出射されるシンチレーション光を集光すると好適である。この場合、放射線による第2の撮像手段の被曝を抑制することができ、第2の撮像手段の内部におけるノイズの発生を抑制できる。よって、第2の撮像手段により取得される放射線画像を基準画像にする場合においても、良好な基準画像とすることができる。さらには、波長変換部材からの第1および第2の撮像手段までの光路長を調整することができ、第1および第2の撮像手段の位置合わせが容易になる。その結果として、第1および第2の撮像手段の撮像条件(撮像タイミングの同時性や撮像位置の同一性など)を合せやすくなる。
【0013】
また、波長変換部材の反対側の面と第2の撮像手段との間には、反対側の面に対面させてテーパファイバが配置されていると好適である。この場合、テーパファイバによって反対側の面側のシンチレーション光を高い集光効率で集光できる。さらには、テーパファイバによって放射線が遮断され、第2の撮像手段の被爆を防止することができる。よって、第2の撮像手段により取得される放射線画像を基準画像にする場合においても、良好な基準画像とすることができる。
【0014】
また、上記作用を効果的に奏する構成としては、一方の撮像手段によって撮像された画像を基準画像として、他方の撮像手段によって撮像された画像を補正する補正手段を更に備える構成が挙げられる。
【0015】
また、対象物は半導体デバイスであり、上記放射線画像取得装置は、当該半導体デバイスを検査対象とする半導体故障検査装置に適用されると好適である。この場合、検査対象となる半導体デバイスを透過した放射線が撮像部(画像取得用の撮像素子)によりカットされることがないため、半導体デバイスの故障などを精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、かつ、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図2】図1の放射線画像取得装置における投影像の説明図である。
【図3】図1の放射線画像取得装置における画像のあおり補正の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図5】図4の放射線画像取得装置における画像のあおり補正の説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図7】図6の放射線画像取得装置における投影像のあおりの説明図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図10】本発明の変形例である放射線画像取得装置の正面図である。
【図11】図11(a)及び(b)は、本発明の変形例である放射線画像取得装置の正面図である。
【図12】図12(a)〜(c)は、本発明の変形例である放射線画像取得装置の正面図である。
【図13】画像のあおり補正の変形例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0019】
図1に示すように、放射線画像取得装置1は、半導体デバイス等の電子部品や食料品等といった対象物Aの放射線画像を取得するための装置である。放射線画像取得装置1は、対象物Aに向けて白色X線等の放射線を出射する放射線源2と、放射線源2から出射されて対象物Aを透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる波長変換板6と、波長変換板6の放射線の入射面6aから出射されるシンチレーション光を集光して撮像する表面観察用光検出器3と、入射面6aとは反対側の面である裏面6bから出射されるシンチレーション光を集光して撮像する裏面観察用光検出器4と、を備えている。これらの放射線源2、波長変換板6、表面観察用光検出器3、及び裏面観察用光検出器4は、図示しない筐体に収容され、筐体内で固定される。
【0020】
波長変換板6は、平板状の波長変換部材であり、例えばGd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、Gd2SiO5:Ce、Lu0.4Gd1.6SiO5、Bi4Ge3O12、Lu2SiO5:Ce、Y2SiO5、YAlO3:Ce、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm等のシンチレータである。波長変換板6の厚さは数μm〜数mmの範囲で検出する放射線のエネルギー帯によって適切な値に設定されている。
【0021】
表面観察用光検出器3(以下、「表面検出器3」と称する)は、波長変換板6に投影された対象物Aの投影像(放射線透過像)を波長変換板6の入射面6a側から撮像する間接変換方式の撮像手段である。表面検出器3は、波長変換板6の入射面6aから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部3aと、集光レンズ部3aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部3bと、を有するレンズカップリング型の検出器である。集光レンズ部3aは、表面検出器視野13のシンチレーション光を集光する。撮像部3bとしては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等が用いられる。なお、表面検出器3が後述する一方の撮像手段に相当する場合、撮像部3bの受光面は入射面6aと略平行であるほうが好ましい。
【0022】
裏面観察用光検出器4(以下、「裏面検出器4」と称する)は、波長変換板6に投影された対象物Aの投影像(放射線透過像)を波長変換板6の裏面6b側から撮像する間接変換方式の撮像手段である。裏面検出器4は、波長変換板6の裏面6bから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部4aと、集光レンズ部4aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部4bと、を有するレンズカップリング型の検出器であり、上記の表面検出器3と同様の構成を有している。集光レンズ部4aは、裏面検出器視野14のシンチレーション光を集光する。撮像部4bとしては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等が用いられる。なお、なお、裏面検出器4が後述する一方の撮像手段に相当する場合、撮像部4bの受光面は裏面6bと略平行であるほうが好ましい。
【0023】
さらに、放射線画像取得装置1は、表面検出器3および裏面検出器4における撮像タイミングを制御するタイミング制御部7と、表面検出器3および裏面検出器4から出力された画像信号を入力し、入力した各画像信号に基づいて画像処理等の所定の処理を実行する画像処理装置8と、画像処理装置8から出力された画像信号を入力し、放射線画像を表示する表示装置9とを備えている。タイミング制御部7および画像処理装置8は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。表示装置9としては、公知のディスプレイが用いられる。なお、タイミング制御部7および画像処理装置8は、単一のコンピュータにより実行されるプログラムとして構成してもよいし、個別に設けられるユニットとして構成してもよい。
【0024】
続いて、上記した放射線源2、波長変換板6、表面検出器3、及び裏面検出器4の位置関係について説明する。図1に示すように、放射線源2は、放射線の光軸Xが波長変換板6の入射面6aの法線Bに一致するように配置されている。すなわち、放射線源2は、対象物Aおよび入射面6aに対峙すると共に、入射面6aの法線B上に配置されている。ここで、放射線の光軸Xとは、放射線源2の放射線出射点と波長変換板6の入射面6a上の任意の点γとを結ぶ直線である。本実施形態では、任意の点γが入射面6aの中心点となるように設定されており、この場合、比較的ムラなく放射線が照射される。また、法線Bとは、入射面6a上の任意の点αから延びる入射面6aに対して垂直な直線である。本実施形態では、任意の点αが入射面6aの中心点となるように設定されており、放射線の光軸Xと法線Bとは一致している。もちろん、任意の点γおよび任意の点αは入射面6aの中心点である必要はない。
【0025】
表面検出器3は、波長変換板6の入射面6aから出射されたシンチレーション光を撮像可能なように、内蔵する集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように配置されている。すなわち、表面検出器3は、入射面6aに対峙すると共に、入射面6aの法線Bから外れた位置に配置されている。この集光レンズ部3aは、入射面6aに焦点を合わせ、入射面6aから法線Bに対して角度θをなす方向に出射されたシンチレーション光を撮像部3bに向けて集光する。集光レンズ部3aとして、シフトレンズやチルトレンズを用いることもできる。この表面検出器3は、入射面6aから法線B方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光する他方の撮像手段に相当する。
【0026】
上記のようにして、表面検出器3は、放射線源2の光軸Xから外して配置されている。すなわち、表面検出器3は、放射線源2からの放射線の出射領域(放射線束12が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源2からの放射線による表面検出器3の被曝が防止され、表面検出器3の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。
【0027】
裏面検出器4は、波長変換板6の裏面6bから出射されたシンチレーション光を撮像可能なように、内蔵する集光レンズ部4aの光軸Gが裏面6bに対して直交するように配置されている。ここで、集光レンズ部4aの光軸Gは、裏面6bの法線Cに一致している。すなわち、裏面検出器4は、裏面6bに対峙すると共に、裏面6bの法線C上に配置されている。従って、裏面検出器4は、裏面6bの法線C方向に出射されたシンチレーション光を撮像可能であるため、あおりの少ない画像を取得しやすい。ここで、法線Cとは、裏面6b上の任意の点βから延び、裏面6bに対して垂直な直線である。特に、本実施形態では、任意の点βが裏面6bの中心点に設定されており、入射面6a上の任意の点αと裏面6b上の任意の点βは同一直線上に位置し、この直線は法線Bと法線Cに一致する。集光レンズ部4aは、裏面6b上に焦点を合わせ、裏面6bから法線C方向に出射されたシンチレーション光を撮像部4bに向けて集光する。この裏面検出器4は、裏面6bから法線C方向に出射されるシンチレーション光を集光する一方の撮像手段に相当する。
【0028】
放射線画像取得装置1では、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長と、波長変換板6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長とは、等しくなっている。なお、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長と、波長変換板6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長とは異なっていてもよいが、この場合、画像処理等により画像の大きさなどを合わせる必要がある。
【0029】
続いて、上記の構成を有する放射線画像取得装置1の動作について説明する。まず、表面検出器3および裏面検出器4による撮像が同時に行われるよう、タイミング制御部7による制御が行われる。タイミング制御部7の撮像タイミング制御により、対象物Aの放射線透過像を異なるエネルギー帯で画像化することができる。詳述すると、表面検出器3によって比較的低いエネルギー帯の放射線透過像が画像化され、また、裏面検出器4によって比較的高いエネルギー帯の放射線透過像が画像化される。これにより、デュアルエナジー撮像が実現される。なお、放射線画像取得装置1では、表面検出器3と裏面検出器4との撮像タイミングをそれぞれ異なるように制御することが可能である。また、表面検出器3と裏面検出器4とのそれぞれにおける露光時間や撮影枚数が異なるように制御してもよい。
【0030】
表面検出器3および裏面検出器4の機能に関し、換言すると、表面検出器3によって、比較的入射面6a側で変換された蛍光(シンチレーション光)が検出される。入射面6a側で変換された蛍光の検出は、蛍光のボケが少なく、また、蛍光の輝度が高いといった特長を有する。これは、表面観察においては、波長変換板6の内部における拡散や自己吸収の影響を低減できるためである。一方、裏面検出器4では、波長変換板6の比較的裏面6b側で変換された蛍光が検出される。この場合も、波長変換板6の内部における拡散や自己吸収の影響を低減できる。
【0031】
次に、表面検出器3および裏面検出器4のそれぞれによって、表裏両面の放射線画像に対応する画像信号が画像処理装置8に出力される。表面検出器3および裏面検出器4のそれぞれから出力された画像信号が画像処理装置8に入力されると、画像処理装置8によって、入力した画像信号に基づいてあおり補正や差分演算や加算演算といった画像間演算などの所定の処理が実行され、画像処理後の画像信号が表示装置9に出力される。そして、画像処理装置8から出力された画像処理後の画像信号が表示装置9に入力されると、表示装置9によって、入力した画像処理後の画像信号に応じた放射線画像が表示される。
【0032】
図2(a)は、放射線画像取得装置1における放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す斜視図、図2(b)は、放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す正面図、図2(c)は、波長変換板6に投影される対象物Aの投影像Dを示す平面図である。図2では、理解を容易にするために、対象物Aが立方体形状である場合について示している。図2(a)に示すように、放射線源2が入射面6aの法線B上に配置され、放射線の光軸Xが入射面6aの法線Bに一致していると、図2(c)に示すように、入射面6a上への投影像Dにはあおり(パース)が生じない。
【0033】
図3(a)は、放射線画像取得装置1における表面検出器3、裏面検出器4、及び波長変換板6の位置関係を示す斜視図、図3(b)は、表面検出器3によって取得されて画像処理装置8に入力される表面側画像Paを示す図、図3(c)は、裏面検出器4によって取得されて画像処理装置8に入力される裏面側画像Pbを示す図である。
【0034】
図3(a)に示すように、表面検出器3が入射面6aの法線Bから外れた位置に配置され、光軸Fが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなしていると、図3(b)に示すように、表面側画像Paにはあおり(パース)が生じることとなる。一方、図3(a)に示すように、裏面検出器4が裏面6bの法線C上に配置され、光軸Gが法線Cに一致していると、図3(c)に示すように、裏面側画像Pbにはあおりが生じない。
【0035】
ここで、画像処理装置8によって、波長変換板6上の投影像Dの一部が特徴部d(図3の例では、対象物Aの側面に対応する着色された部分)として認識される。表面側画像Paにおいては、波長変換板6の撮像画像である表面側波長変換板画像20a、対象物Aの撮像画像である表面側対象物画像Ha、及び表面側対象物画像Haの一部であり且つ特徴部dの撮像画像である表面側特徴部画像haにおいて、一様にあおりが生じる。
【0036】
そこで、画像処理装置8が補正手段として機能し、裏面側画像Pbを基準画像として表面側画像Paのあおりが補正される。その結果、図3(d)に示すように、裏面側画像Pbと略一致するあおりの無い補正後の表面側画像Pcが得られ、表面側画像Pcに対応する画像信号が生成される。すなわち、このあおり補正処理により、補正後の表面側画像Pcに含まれる表面側波長変換板画像20c、補正表面側対象物画像Hc、及び表面側特徴部画像hcは、基準画像である裏面側画像Pbに含まれる裏面側波長変換板画像20b、裏面側対象物画像Hb、及び裏面側特徴部画像hbと略等しい位置、大きさ、及び形状になる。
【0037】
以上説明した本実施形態の放射線画像取得装置1によれば、表面検出器3および裏面検出器4によって、波長変換板6の入射面6aと裏面6bとから出射されるシンチレーション光がそれぞれ集光され、撮像され、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得するデュアルエナジー撮像が実現される。ここで、表面検出器3は、波長変換板6から離間した位置に配置されており、対象物Aと波長変換板6との間には検出器が何ら介在していない。よって、撮像手段が対象物Aを透過した放射線に影響を与えてしまうような事態が回避される。従って、対象物Aを透過した放射線に与える影響が低減され、低エネルギー帯の放射線が好適に検出される。換言すれば、放射線透過像に検出器の影が映り込まないため、ノイズ成分の発生が抑制されると共に、検出器による放射線の減衰も生じないため、信号成分の減少が抑制される。その結果として、デュアルエナジー撮像における低エネルギー帯と高エネルギー帯との差を大きくでき、高度なエネルギー分解能が発揮され、高コントラスト化を図ることができる。この利点は、対象物Aがシリコンもしくはシリコンより軽い原子から形成される場合、特に顕著に発揮される。すなわち、対象物Aが軽い原子から形成される場合であっても、対象物Aを透過した低エネルギー帯の放射線が吸収されたり減衰したりすることなくシンチレーション光に変換され、この光が表面検出器3によって撮像されるため、低エネルギー帯の放射線画像を精度良く取得することができる。さらにまた、一回の撮像で低エネルギー画像と高エネルギー画像を同時に取得でき、同時性の確保、被爆量の低減、及び画素ずれ(ミスレジストレーション)の解消が図られる。また、1枚の波長変換板6でもデュアルエナジー化が実現される。しかも、裏面検出器4は、裏面6bの法線C方向に出射されるシンチレーション光を集光するため、あおりの無い裏面側画像Pbを取得することができ、この裏面側画像Pbを基準画像として表面側画像Paのあおりを適正に補正することができる。
【0038】
また、放射線として白色X線を用いる場合でも、白色X線の一回の撮像で低エネルギー画像と高エネルギー画像を同時に取得でき、同時性の確保、被爆量の低減、及び画素ずれ(ミスレジストレーション)の解消が図られる。
【0039】
また、波長変換板6の入射面6aおよび裏面6bの各面に焦点が合うように、集光レンズ部3aおよび集光レンズ部4aによって集光することで、エネルギー分別が良好で、明るい放射線画像を取得できる。
【0040】
図4は、第2実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。図4に示す放射線画像取得装置1Aが図1に示した第1実施形態の放射線画像取得装置1と異なる点は、表面検出器3が、入射面6aの法線Bから外れた位置に配置され、波長変換板6と放射線源2との間で法線B(光軸X)上に配置された放射線を透過する反射ミラー15を介してシンチレーション光を集光する点と、集光レンズ部4aの光軸Gが裏面6bの法線Cに対して所定の角度θをなすように、裏面検出器4が配置されている点である。なお、図4においては、タイミング制御部7、画像処理装置8、及び表示装置9の図示は省略されている。図6及び図8〜図12においても、同様に、これらの構成の図示は省略されている。
【0041】
放射線画像取得装置1Aの構成に関し、より具体的には、反射ミラー15は、その反射面15aが法線B方向に対して所定の角度(例えば、45度)をなすように配置されており、入射面6aから法線B方向に出射されたシンチレーション光を法線Bに対して所定の方向に反射する。反射ミラー15としては、例えば光学ミラーが用いられる。表面検出器3は、内蔵する集光レンズ部3aの光軸Fおよび反射面15aのなす角と、法線Bおよび反射面15aのなす角とが等しくなるように配置されている。この集光レンズ部3aは、入射面6aから法線B方向に出射され、反射ミラー15により法線Bに対して所定の方向に反射されたシンチレーション光を撮像部3bに向けて集光する。この表面検出器3は、入射面6aから法線B方向に出射されるシンチレーション光を集光する一方の撮像手段に相当する。
【0042】
また、裏面検出器4は、裏面6bに対峙すると共に、裏面6bの法線Cから外れた位置に配置されている。この集光レンズ部4aは、裏面6bから法線Cに対して角度θをなす方向に出射されたシンチレーション光を撮像部4bに向けて集光する。集光レンズ部4aとして、シフトレンズやチルトレンズを用いることもできる。この裏面検出器4は、裏面6bから法線C方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光する他方の撮像手段に相当する。
【0043】
上記のようにして、表面検出器3は、放射線源2からの放射線の出射領域(放射線束12が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源2からの放射線による表面検出器3の被曝が防止され、表面検出器3の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。また、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長と、波長変換板6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長とは、等しいことが好ましい。
【0044】
放射線画像取得装置1Aにおいても、放射線画像取得装置1と同様、入射面6a上への投影像Dにはあおり(パース)が生じない(図2参照)。
【0045】
図5(a)は、放射線画像取得装置1Aにおける表面検出器3、裏面検出器4、及び波長変換板6の位置関係を示す斜視図、図5(b)は、表面検出器3によって取得されて画像処理装置8に入力される表面側画像Paを示す図、図5(c)は、裏面検出器4によって取得されて画像処理装置8に入力される裏面側画像Pbを示す図である。
【0046】
図5(a)に示すように、表面検出器3が、入射面6aから法線B方向に出射され、入射面6aの法線Bに垂直な方向に反射されたシンチレーション光を撮像部3bに向けて集光すると、図5(b)に示すように、表面側画像Paにはあおり(パース)が生じない。一方、図5(a)に示すように、裏面検出器4が裏面6bの法線Cから外れた位置に配置され、光軸Gが裏面6bの法線Cに対して所定の角度θをなしていると、図5(c)に示すように、裏面側画像Pbにはあおりが生じることとなる。
【0047】
ここで、画像処理装置8によって、波長変換板6上の投影像Dの一部が特徴部d(図5の例では、対象物Aの側面に対応する着色された部分)として認識される。裏面側画像Pbにおいては、波長変換板6の撮像画像である裏面側波長変換板画像20b、対象物Aの撮像画像である裏面側対象物画像Hb、及び裏面側対象物画像Hbの一部であり且つ特徴部dの撮像画像である裏面側特徴部画像hbにおいて、一様にあおりが生じる。
【0048】
そこで、画像処理装置8が補正手段として機能し、表面側画像Paを基準画像として裏面側画像Pbのあおりが補正される。その結果、図5(d)に示すように、表面側画像Paと略一致するあおりの無い補正後の裏面側画像Pdが得られ、裏面側画像Pdに対応する画像信号が生成される。すなわち、このあおり補正処理により、補正後の裏面側画像Pdに含まれる裏面側波長変換板画像20d、裏面側対象物画像Hd、及び裏面側特徴部画像hdは、基準画像である表面側画像Paに含まれる表面側波長変換板画像20a、表面側対象物画像Ha、及び表面側特徴部画像haと略等しい位置、大きさ、及び形状になる。
【0049】
放射線画像取得装置1Aによれば、放射線画像取得装置1と同様の作用効果が奏される。また、表面検出器3により取得される表面側画像Paは、波長変換板6の入射面6a付近で変換されるシンチレーション光による像であるため、波長変換板6の内部で生じるボケの影響が低減され、ボケの少ない鮮明な画像となる。よって、あおりがなく、且つボケの少ない鮮明な表面側画像Paを基準画像にでき、裏面検出器4により取得される裏面側画像Pbのあおりを補正するにあたり、より良好な基準画像を用いることができる。
【0050】
従って、画像処理装置8によるあおり補正処理では、ボケの少ない鮮明な表面側画像Paを基準画像として裏面側画像Pbを補正することにより、表面側画像Paと裏面側画像Pdとの画像間演算により得られる画像も鮮明な断層画像となる。
【0051】
しかも、放射線源2が入射面6aの法線B上に配置されるため、波長変換板6への投影像Dにもあおりが生じず、投影像Dのあおりを補正するための演算が不要になっている。さらには、放射線による表面検出器3の被曝が防止され、表面検出器3の内部におけるノイズの発生が防止される。
【0052】
図6は、第3実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。図6に示す放射線画像取得装置1Bが図4に示した第2実施形態の放射線画像取得装置1Aと異なる点は、放射線の光軸Xが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように、放射線源2が配置されている点と、表面検出器3が入射面6aの法線B上に配置されている点である。より具体的には、表面検出器3は、内蔵する集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aに対して直交するように配置されている。ここで、集光レンズ部3aの光軸Fは、入射面6aの法線Bに一致している。また、裏面検出器4は、集光レンズ部4aの光軸Gと放射線源2の光軸Xとが同一平面上に位置するように、且つ法線B,Cを基準として同じ側に位置するように配置されている。なお、ここで、任意の点γおよび任意の点αは入射面6aの中心点である必要はなく、同一の点である必要もない。
【0053】
上記のようにして、表面検出器3は、放射線源2の光軸Xから外して配置されている。すなわち、表面検出器3は、放射線源2からの放射線の出射領域(放射線束12が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源2からの放射線による表面検出器3の被曝が防止され、表面検出器3の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。
【0054】
図7(a)は、放射線画像取得装置1Bにおける放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す斜視図、図7(b)は、放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す正面図、図7(c)は、波長変換板6に投影される対象物Aの投影像Eを示す平面図である。図7では、理解を容易にするために、対象物Aが立方体形状である場合について示している。図7(a)に示すように、放射線源2が入射面6aの法線Bから外れた位置に配置され、放射線の光軸Xが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなしていると、図7(c)に示すように、入射面6a上への投影像Eにはあおり(パース)が生じることとなる。この投影像Eのあおりは、画像処理装置8によって、必要に応じて補正される。なお図7(a)では、説明の便宜上、放射線源2の本体が光軸Xに対して平行となるよう図示されているが、放射線源2が配置される向きは、装置のレイアウトに応じて適宜設定することができる。
【0055】
放射線画像取得装置1Bによれば、放射線画像取得装置1,1Aと同様の作用効果が奏される。
【0056】
図8は、第3実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。図8に示す放射線画像取得装置1Cが図1に示した第1実施形態の放射線画像取得装置1と異なる点は、裏面検出器4が、裏面6bの法線Cから外れた位置に配置され、法線C上に配置された反射ミラー16を介してシンチレーション光を集光する点である。より具体的には、反射ミラー16は、その反射面16aが法線C方向に対して所定の角度(例えば、45度)をなすように配置されており、裏面6bから法線C方向に出射されたシンチレーション光を法線Cに対して所定の方向に反射する。反射ミラー16としては、例えば光学ミラーや又はプリズムが用いられる。裏面検出器4は、内蔵する集光レンズ部4aの光軸Gおよび反射面16aのなす角と、法線Cおよび反射面16aのなす角とが等しくなるように配置されている。この集光レンズ部4aは、裏面6bから法線C方向に出射され、反射ミラー16により法線Cに対して所定の方向に反射されたシンチレーション光を撮像部4bに向けて集光する。
【0057】
上記のようにして、裏面検出器4は、放射線源2からの放射線の出射領域(放射線束12が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源2からの放射線による裏面検出器4の被曝が防止され、裏面検出器4の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。また、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長と、波長変換板6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長とは、等しいことが好ましい。
【0058】
放射線画像取得装置1Cによれば、放射線画像取得装置1,1A,1Bと同様の作用効果が奏される。また、放射線による裏面検出器4の被曝が防止され、裏面検出器4の内部におけるノイズの発生が防止される。さらには、波長変換板6からの表面検出器3および裏面検出器4までの光路長を調整することができ、第1および第2の撮像手段の位置合わせが容易になる。その結果として、第1および第2の撮像手段の撮像条件(撮像タイミングの同時性や撮像位置の同一性など)を合せやすくなる。
【0059】
図9は、第5実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。図9に示す放射線画像取得装置1Dが図1に示した第1実施形態の放射線画像取得装置1と異なる点は、裏面6bと裏面検出器4との間で裏面6bに対面させてテーパファイバ17が配置されている点である。より具体的には、テーパファイバ17は、その軸線が裏面6bの法線Cに一致するように配置されており、裏面6bから法線C方向に出射されたシンチレーション光を裏面検出器4の集光レンズ部に導光する。このテーパファイバ17と裏面検出器4とによって、ファイバカップリング検出器18が構成されている。
【0060】
放射線画像取得装置1Dによれば、放射線画像取得装置1,1A〜1Cと同様の作用効果が奏される。また、テーパファイバ17によって裏面6b側のシンチレーション光が高い集光効率で集光される。通常、波長変換板6の裏面6b側の蛍光象は暗くなりがちであるが、ファイバカップリング検出器18を採用することで光学系のロスを減らすことが可能になっている。さらには、テーパファイバ17によって放射線源2からの放射線が遮断され、裏面検出器4の被爆が防止される。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、図10に示すように、放射線源2を入射面6aの法線Bから外して配置すると共に、入射面6a側に反射ミラー15を配置した放射線画像取得装置1Eとすることもできる。この場合において、裏面検出器4は、集光レンズ部4aの光軸Gと放射線源2の光軸Xとが同一平面上に位置するように、且つ法線B,Cを基準として同じ側に位置するように配置されている。
【0062】
また、放射線源2を入射面6aの法線Bから外して配置する場合において、図11に示す各種の変形態様を採ることもできる。すなわち、図11(a)に示すように、入射面6aの法線B上に表面検出器3を配置すると共に、集光レンズ部4aの光軸Gが裏面6bの法線Cに対して所定の角度θをなすように裏面検出器4を配置した放射線画像取得装置1Fとすることもできる。ここで、裏面検出器4は、集光レンズ部4aの光軸Gと放射線源2の光軸Xとが同一平面上に位置するように、且つ法線B,Cを基準として互いに反対側に位置するように配置されている。また、図11(b)に示すように、入射面6a側に反射ミラー15を配置すると共に、集光レンズ部4aの光軸Gが裏面6bの法線Cに対して所定の角度θをなすように裏面検出器4を配置した放射線画像取得装置1Gとすることもできる。この場合においても、裏面検出器4は、放射線画像取得装置1Fと同様に配置される。これらの放射線画像取得装置1F,1Gでは、表面検出器3が一方の撮像手段に相当し、裏面検出器4が他方の撮像手段に相当する。
【0063】
また、放射線源2を入射面6aの法線Bから外して配置する場合において、図12に示す各種の変形態様を採ることもできる。すなわち、図12(a)に示すように、集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように表面検出器3を配置すると共に、裏面6bの法線C上に裏面検出器4を配置した放射線画像取得装置1Hとすることもできる。また、図12(b)に示すように、集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように表面検出器3を配置すると共に、裏面6b側に反射ミラー16を配置した放射線画像取得装置1Jとすることもできる。また、図12(c)に示すように、集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように表面検出器3を配置すると共に、裏面6b側にファイバカップリング検出器18を配置した放射線画像取得装置1Kとすることもできる。これらの放射線画像取得装置1H,1J,1Kでは、裏面検出器4が一方の撮像手段に相当し、表面検出器3が他方の撮像手段に相当する。
【0064】
また、上記実施形態では、画像処理装置8によるあおり補正において、投影像Dの特徴部dの画像を用いてあおりを有する画像を補正する場合について説明したが、あおり補正の手法はこれに限られない。例えば、図13に示すように、波長変換板6の入射面6aおよび裏面6bの隅部(図13の例では波長変換板6の対角線上に位置する2箇所の隅部)に補正用マーク(印)Rを付し、この補正用マークRの画像である表面側補正用マーク画像Saおよび裏面側補正用マーク画像Sbを用いてあおり補正を行ってもよい。図13に示す例では、表面側画像Paが基準画像として用いられて裏面側画像Pbがあおり補正され、補正後の裏面側画像Pdが得られる。ここで、表面側画像Paに含まれる表面側補正用マーク画像Saと裏面側画像Pdに含まれる補正後の裏面側補正用マーク画像Sdとにおける間隔および形状が一致するように、あおり補正が行われる。なお、波長変換板6に付される補正用マークは、このように互いに離間した位置に付された複数のマークであってもよいし、単一のマークであってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、反射ミラー15,16を用いる場合、反射ミラー15,16が法線B,Cに対して45度をなすように配置され、集光レンズ部3a,4aの光軸が法線B,Cに対して直交する場合について説明したが、このような配置に限られず、反射ミラー15,16の角度や表面検出器3および裏面検出器4の配置は、装置内のレイアウトに応じて適宜変更することができる。
【0066】
また、放射線源2、表面検出器3、及び裏面検出器4は、光軸X、光軸F、及び光軸Gが同一平面状に配置される場合に限られず、法線B,C方向の軸線周りにおいて適宜3次元的に配置することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、表面検出器3が入射面6aの法線B方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光する場合において、集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように、表面検出器3が配置される態様について説明したが、このような態様に限られない。例えば、集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aに対して垂直(すなわち法線Bに平行)であると共に、その光軸Fが入射面6aの範囲外に位置するように、表面検出器3が配置されてもよい。この場合においても、表面検出器3は、他方の撮像手段として、入射面6aから法線B方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光して撮像することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、裏面検出器4が裏面6bの法線C方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光する場合において、集光レンズ部4aの光軸Gが裏面6bの法線Cに対して所定の角度θをなすように、裏面検出器4が配置される態様について説明したが、このような態様に限られない。例えば、集光レンズ部4aの光軸Gが裏面6bに対して垂直(すなわち法線Cに平行)であると共に、その光軸Gが裏面6bの範囲外に位置するように、裏面検出器4が配置されてもよい。この場合においても、裏面検出器4は、他方の撮像手段として、裏面6bから法線C方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光して撮像することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、検出器としてレンズカップリング型の検出器を用いたが、集光レンズ部と撮像部とをそれぞれ別体として備えてもよい。
【0070】
また、対象物Aを半導体デバイスとし、その半導体デバイスを検査対象とする半導体故障検査装置として上記実施形態の放射線画像取得装置を適用すると有効である。この場合、検査対象となる半導体デバイスを透過した放射線が撮像部(画像取得用の撮像素子)によりカットされることがないため、半導体デバイスの故障などを精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A〜1H,1J,1K…放射線画像取得装置、2…放射線源、3…表面観察用光検出器(第1の撮像手段)、3a…集光レンズ部、3b…撮像部、4…裏面観察用光検出器(第2の撮像手段)、4a…集光レンズ部、4b…撮像部、6…波長変換板(波長変換部材)、6a…入射面、6b…裏面(反対側の面)、8…画像処理装置(補正手段)、15…反射ミラー、16…反射ミラー、17…テーパファイバ、A…対象物、B…入射面の法線、C…裏面の法線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を出射する放射線源と、
前記放射線源から出射され、対象物を透過した前記放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる平板状の波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記放射線の入射面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第1の撮像手段と、
前記波長変換部材の前記入射面とは反対側の面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第2の撮像手段と、
を備え、
前記第1の撮像手段および前記第2の撮像手段の一方は、前記入射面または前記反対側の面からその法線方向に出射されるシンチレーション光を集光し、
前記第1の撮像手段および前記第2の撮像手段の他方は、前記入射面または前記反対側の面からその法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光する
ことを特徴とする放射線画像取得装置。
【請求項2】
前記第1の撮像手段および前記第2の撮像手段のそれぞれは、
前記波長変換部材から出射される前記シンチレーション光を集光する集光レンズ部と、
集光された前記シンチレーション光を撮像する撮像部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の放射線画像取得装置。
【請求項3】
前記第1の撮像手段は、前記入射面の法線方向に出射されるシンチレーション光を集光すると共に、
前記第2の撮像手段は、前記反対側の面の法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線画像取得装置。
【請求項4】
前記放射線源は、前記入射面の法線上に配置されると共に、
前記第1の撮像手段は、前記入射面の法線から外れた位置に配置され、前記波長変換部材と前記放射線源との間に配置された反射ミラーを介してシンチレーション光を集光する
ことを特徴とする請求項3記載の放射線画像取得装置。
【請求項5】
前記第2の撮像手段は、前記反対側の面の法線から外れた位置に配置され、前記反対側の面の法線上に配置された反射ミラーを介して前記反対側の面の法線方向に出射されるシンチレーション光を集光する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線画像取得装置。
【請求項6】
前記波長変換部材の前記反対側の面と前記第2の撮像手段との間には、前記反対側の面に対面させてテーパファイバが配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線画像取得装置。
【請求項7】
前記一方の撮像手段によって撮像された画像を基準画像として、前記他方の撮像手段によって撮像された画像を補正する補正手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線画像取得装置。
【請求項8】
前記対象物は半導体デバイスであり、
当該半導体デバイスを検査対象とする半導体故障検査装置に適用される
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図5】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−154734(P2012−154734A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13195(P2011−13195)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】