説明

放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネル

【課題】 輝度に優れ、振動特性の良好な放射線画像変換パネル製造方法の及び放射線画像変換パネルの提供。
【解決手段】 支持体12上に気相堆積法(気相法)により輝尽性蛍光体層11を形成後、何れか1種の化合物が脂肪族系化合物であるアミン化合物及びイソシアネート化合物を用いて蛍光体層上にポリウレア保護膜15を蒸着により形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医療用の放射線画像変換パネルの製造方法(以下、単に、製造方法ともいう)及び放射線画像変換パネル(以下、放射線像変換パネルともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像を得るために、放射線照射によって得られた潜像をレーザー光等を使い光信号を取り出す方法がとられてきた。放射線を吸収してからある時間経過後に光信号を取り出すには、輝尽性蛍光体層(以下、単に蛍光体層ともいう)が必要で、その蛍光体層を設けるには、従来塗布による方法があったが、塗布材料はバインダー等の発光に寄与しない成分を含むため、最近では蒸着等の気相堆積法が用いられるれるようになってきた。
【0003】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線画像を画像化する方法が開発されている。
【0004】
即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0005】
具体的な方法としては、支持体上に蛍光体層を設けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線及び赤外線の一方又は両方を用いる放射線画像変換方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
より高輝度、高感度の蛍光体を用いた放射線画像変換方法として、例えば特開昭59−75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−72087号等に記載されているようなアルカリハライド蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−73786号、同61−73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+及びCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体が開発されている。
【0007】
更に、近年診断画像の解析においてより高鮮鋭性の放射線画像変換パネルが要求されている鮮鋭性改善の為の手段として、例えば、特定の製造方法により製造される蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされているが、高感度、鮮鋭性については未だ満足するものではなかった。(例えば、特許文献2を参照)

【0008】
これらの試みの1つの方法として、例えば特開昭61−142497号等に記載されている微細な凹凸パターンを有する支持体上に蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる蛍光体層を用いる方法がある。
【0009】
また、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されている支持体上に形成された蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載に記載されているように、支持体上に蒸着により空洞を有する蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0010】
更に、気相堆積法によって支持体上に、支持体の方線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した蛍光体層を有する放射線画像変換パネルが記載されている。(例えば、特許文献3を参照)
これらの蛍光体層の形状をコントロールする方法は、いずれも蛍光体層を柱状とすることで、輝尽励起光又は輝尽発光の横方向への拡散を抑える(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)ことができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができるという特徴がある。
【0011】
最近、CsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した蛍光体を用いた放射線画像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来不可能であったX線変換効率の向上が可能になると期待された。
【0012】
しかし、蒸着法等による蛍光体の形成では、蒸着時の蒸気流またはルツボ輻射熱及び基板加熱の必要から、基板は耐熱性(80℃〜200℃程度)があることが必要であった。
【0013】
かつ、蛍光体層が設けられる基板表面は非常に平滑であることが求められており、X線等の照射放射線が基板側から入射するシステムにおいては、X線等の吸収量が少ない基板、また、基板による振動特性の改良が必須とされている。
【0014】
従って、輝度が改良され、振動特性も良好な放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネルが求められていた。
【特許文献1】米国特許第3,859,527号明細書
【特許文献2】特開平3−123899号公報
【特許文献3】特開2002−72381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、輝度に優れ、振動特性の良好な放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0017】
(請求項1)
支持体上に気相堆積法(気相法)により形成された蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層を形成後、何れか1種の化合物が脂肪族系化合物であるアミン化合物及びイソシアネート化合物を用いて蛍光体層上にポリウレア保護膜を蒸着により形成することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0018】
(請求項2)
前記ポリウレア保護膜を形成する化合物の何れもが脂肪族系アミン化合物及び脂肪族系イソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0019】
(請求項3)
前記気相堆積法(気相法)により形成された蛍光体層中の蛍光体が柱状結晶であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0020】
(請求項4)
蛍光体層が含有する蛍光体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0021】
一般式(1)
1X・aM2X′・bM3X″:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
(請求項5)
前記蛍光体が下記一般式(2)で表される蛍光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0022】
一般式(2)
CsX:yA
〔式中、XはCl、BrまたはIを表し、Aは、Eu、Sm、In、Tl、GaまたはCeを表す。yは、1×10-7〜1×10-2までの数値を表す。〕
(請求項6)
前記蛍光体層上に前記ポリウレア保護膜(PU:ポリ尿素)膜とSiOx或いはAl23を組み合わせた積層構成の保護層を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0023】
(請求項7)
請求項1〜6の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法から得られることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【発明の効果】
【0024】
本発明による放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネルは、輝度に優れ、振動特性も良好で優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に詳細に述べる。
【0026】
放射線画像変換パネルの製造方法
本発明は支持体上に気相堆積法(気相法)により形成された蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層を形成後、何れか1種の化合物が脂肪族系化合物であるアミン化合物及びイソシアネート化合物を用いて蛍光体層上にポリウレア保護膜を蒸着により形成することを特徴とし、これらの構成によりはじめて、輝度に優れ、振動特性の良好な放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法を提供できたのである。
【0027】
本発明においては、前記ポリウレア保護膜を形成する化合物の何れも脂肪族系アミン化合物及び脂肪族系イソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であること、前記気相堆積法(気相法)により形成された蛍光体層中の蛍光体が柱状結晶であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であること、蛍光体層が含有する蛍光体が前記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であること、前記蛍光体が前記一般式(2)で表される蛍光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であることが本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0028】
また、本発明は支持体(基板)上に、前記一般式(1)で表される蛍光体(柱状結晶)を含有する蛍光体層形成後に、蛍光体(本発明においては柱状結晶が好ましい)層上に蒸着によりポリウレア(PU:ポリ尿素)膜とSiOx或いはAl23を組み合わせた積層構成の保護層を有することが好ましく、これらの構成により耐湿性も良好で、且つ、本発明の効果である輝度、振動特性もより良好に奏する点で好ましい。
【0029】
塗設方法としては、例えば、基板上に輝尽性蛍光体層を公知の蒸着装置で塗設し、該輝尽性蛍光体層表面に、公知のイオンビームスパッタリング法、真空蒸着法、ハイバリア材料の開発、成膜技術とバリア性の測定・評価方法(2004、7月発刊)に記載の方法で、例えば、ポリウレア(PU:ポリ尿素)膜とSiOx膜或いはAl23膜を組み合わせて塗設することができる。
【0030】
また、前記保護層をポリウレア膜→SiOx/Al23の順に積層することで耐湿性に優れ、更に、上記保護層をポリウレア膜→SiOx/Al23→ポリウレア膜の順に積層することで、振動特性が向上することも分かった。
【0031】
また、本発明は前記保護層の積層の組み合わせは、2層のポリウレア膜でSiOx及びAl23から選ばれる少なくとも1層を挟む構成も好ましい。
【0032】
尚、2層以上のポリウレア膜を組み合わせる場合には、ポリウレア膜を形成するアミン化合物、イソシアネート化合物の種類及び組成比の変更から選ばれる少なくとも1種の手段を用いることで可能である。
【0033】
本発明の蛍光体層は公知の気相堆積法、例えば蒸着法で容易に作製することができる。
【0034】
蛍光体として、前記一般式(1)で表される蛍光体で、輝尽性である必要はなく、放射線画像変換パネル、フラットパネルディテクタに用いることができるが、本発明の放射線画像変換パネルに用いる場合は、前記一般式(1)で表される蛍光体が輝尽性蛍光体であることが好ましい。
【0035】
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法から得れられる放射線画像変換パネルである。
【0036】
本発明において、上述した如く、蛍光体層上に設けるポリウレア保護膜を蒸着で形成する何れか1種が脂肪族系化合物であるアミン化合物及びイシシアネート化合物であことを特徴としており、2種とも脂肪族系のアミン化合物及びイシシアネート化合物であることが好ましい。
【0037】
保護膜の膜厚は0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましく、0.1〜2μmが特に好ましい。
【0038】
以下に、上記アミン化合物、イソシアネート化合物について説明する。
【0039】
脂肪族アミン化合物としては、炭素数1〜15の脂肪族アミン、炭素数7〜15の脂肪族ポリアミン化合物が挙げられる。
【0040】
ポリアミンとして、具体的には、例えば、置換、無置換のエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピレンジアミン、ポリエチレンポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド等の低分子量及び高分子量ポリアミンが挙げられるが、本発明これらのポリアミンに限定されない。
【0041】
芳香族アミンとしてはジフェニルジアミン、4、4′−メチレン−ジアニリン等が挙げられる。
【0042】
イソシアネート化合物(脂肪族、芳香族)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナトフェニル)チオフォスフェート、ウレタン変成トルエンジイソシアネート、アロファネート変成トルエンジイソシアネート、ビウレット変成トルエンジイソシアネート、イソシアヌレート変成トルエンジイソシアネート、ウレタン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ウレトニミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、アシル尿素変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられるが、本発明これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明においては、アミン化合物、イソシアネート化合物から得られる脂肪族ポリウレアが好ましいが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピレンジアミン、イソシアネート化合物としては、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネートが挙げられる。
【0044】
尚、本発明においては、保護膜を脂肪族系ポリウレアでなく、芳香族系ポリウレアにすると黄変するため、蛍光体の発光光を吸収してしまい、輝度が低下し、また、環境特性に難があるが、脂肪族系ポリウレア保護膜は透明性が良く、輝度に優れ環境特性についても安全である。
【0045】
次に、本発明に好ましく用いられる前記一般式(1)で表される蛍光体について説明する。
【0046】
前記一般式(1)で表される蛍光体において、M1は、Li、Na、K、Rb及びCs等の各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子を表し、中でもRb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子が好ましく、更に好ましくはCs原子である。
【0047】
2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNi等の各原子から選ばれる少なくとも1種の二価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのは、Be、Mg、Ca、Sr及びBa等の各原子から選ばれる二価の金属原子である。
【0048】
3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びIn等の各原子から選ばれる少なくとも1種の三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びIn等の各原子から選ばれる三価の金属原子である。
【0049】
AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。
【0050】
蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′及びX″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲンで原子を表すが、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が好ましい。
【0051】
中でも、本発明においては前記一般式(2)で表される蛍光体が更に好ましい。
【0052】
前記一般式(2)において、XはCl、BrまたはIを表し、Aは、Eu、Sm、In、Tl、GaまたはCeを表す。yは、1×10-7〜1×10-2までの数値を表す。
【0053】
前記蛍光体は、例えば以下に述べる製造方法により製造される。
【0054】
まず蛍光体原料として、以下の組成となるように炭酸塩に酸(HI、HBr、HCl、HF)を加え混合攪拌した後、中和点にて濾過を行い得られた後、ろ液の水分を蒸発気化させて以下の結晶を作製する。
【0055】
前記蛍光体原料としては、
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIから選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
【0056】
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCI2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2及びNiI2の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
【0057】
(c)前記一般式(1)において、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMg等の各原子から選ばれる金属原子を有する化合物が用いられる。
【0058】
(d)賦活剤Aは、例えばEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子が用いられる。
【0059】
一般式(1)で表される化合物において、aは0≦a<0.5、好ましくは0≦a<0.01、bは0≦b<0.5、好ましくは0≦b≦0.01、eは0<e≦0.2、好ましくは0<e≦0.1である。
【0060】
上記の数値範囲の混合組成になるように前記(a)〜(d)の蛍光体原料を秤量し、純水にて溶解する。
【0061】
この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合しても良い。
【0062】
次に、得られた水溶液のpH値Cを0<C<7に調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0063】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボ或いはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500〜1000℃が好ましい。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
【0064】
焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気或いは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。
【0065】
尚、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば蛍光体の発光輝度を更に高めることができ、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気もしくは中性雰囲気のままで冷却してもよい。また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気もしくは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができる。
【0066】
また、本発明の蛍光体層は気相成長法によって形成される。
【0067】
蛍光体の気相成長法としては蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0068】
本発明においては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0069】
第1の方法の蒸着法は、まず、支持体を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とする。
【0070】
次いで、前記蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記支持体表面に蛍光体を所望の厚さに成長させる。
【0071】
この結果、結着剤を含有しない蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて蛍光体層を形成することも可能である。
【0072】
また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする蛍光体を合成すると同時に蛍光体層を形成することも可能である。
【0073】
蒸着終了後、必要に応じて前記蛍光体層の支持体側とは反対の側に保護層を設けることにより本発明の放射線画像変換パネルが製造される。尚、保護層上に蛍光体層を形成した後、支持体を設ける手順をとってもよい。
【0074】
さらに、前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着体(支持体、保護層又は中間層)を冷却あるいは加熱してもよい。
【0075】
また、蒸着終了後蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法においては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
【0076】
第2の方法としてのスパッタリング法は、蒸着法と同様、保護層又は中間層を有する支持体をスパッタリング装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、前記支持体上に蛍光体層を所望の厚さに成長させる。
【0077】
前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0078】
第3の方法としてCVD法があり、又、第4の方法としてイオンプレーティング法がある。
【0079】
また、前記気相成長における蛍光体層の成長速度は0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。成長速度が0.05μm/分未満の場合には本発明の放射線画像変換パネルの生産性が悪く好ましくない。また成長速度が300μm/分を越える場合には成長速度のコントロールがむずかしく好ましくない。
【0080】
放射線画像変換パネルを、前記の真空蒸着法、スパッタリング法などにより得る場合には、結着剤が存在しないので蛍光体の充填密度を増大でき、感度、解像力の上で好ましい放射線画像変換パネルが得られ好ましい。
【0081】
前記蛍光体層の膜厚は、放射線画像変換パネルの使用目的によって、また蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50μm〜1mmであり、好ましくは50〜500μmであり、更に好ましくは100〜500μmであり、特に好ましくは、150〜400μmである。
【0082】
上記の気相成長法による蛍光体層の作製にあたり、蛍光体層が形成される支持体の温度は、40℃以上に設定することが好ましく、更に好ましくは、40〜150℃である。
【0083】
この様にして支持体上に形成した蛍光体層は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、蛍光体を結着剤中に分散した分散型の蛍光体層を有する放射線画像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0084】
また、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい、これにより前記補強効果をもたせるほか、蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0085】
高反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高い物質のことをいい、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銀、インジウム、その他の金属等、白色顔料及び緑色〜赤色領域の色材を用いることができる。白色顔料は輝尽発光も反射することができる。
【0086】
白色顔料としては、例えば、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al23、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの各原子から選ばれるの少なくとも一種の原子であり、XはCl原子又はBr原子である。)、CaCO3、ZnO、Sb23、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。
【0087】
これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させることができる。
【0088】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボンブラック、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンブラックは輝尽発光も吸収する。
【0089】
また、色材は、有機又は無機系色材のいずれでもよい。
【0090】
有機系色材としては、例えば、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。
【0091】
また、カラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。
【0092】
無機系色材としては群青、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系等の無機顔料があげられる。
【0093】
図1は本発明の放射線画像変換パネルの基本的な構成の一例を示す概略図である。所定の大きさに断裁された、支持体上に蛍光体層が設けられている蛍光体への水分の進入をより確実に低減するためには、基板上に蒸着された蛍光体層の上から。保護フィルムを貼り付けることで、蛍光体の外周部からの水分進入も阻止できる。
【0094】
図1において、11は輝尽性蛍光体層(気相堆積型)を表し、12は支持体である。支持体は例えば、結晶化ガラス等が挙げられる。13、14は防湿性保護フィルムを表し、13が蛍光体面、14が蛍光体面裏面の防湿性保護フィルムであり、15が保護層(保護膜)である。
【0095】
また、この封止構造を実現するにあたって、該蛍光体面側の防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層を、熱融着性を有する樹脂とすることにより、蛍光体シートの周縁部より外側の領域で、該上下の防湿性保護フィルムが融着可能となり封止作業を効率化できる。
【0096】
ここでいう熱融着性フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられるが、本発明はこれに限られるものではない。
【0097】
ここでいう熱融着性フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0098】
前記保護層を有する蛍光体層とは反対側になる外側の表面はマット化されており、該保護層の表面粗さの平均傾斜角Δaが0.01〜0.1であることが放射線画像変換パネルにおいては、更に好ましい。
【0099】
ここでいう表面粗さの平均傾斜角Δaとは、JIS−B−0601(1998)による算術平均傾斜角Δaのことである。
【0100】
また保護層のフィルムの表面の表面粗さの平均傾斜角Δaを大きくするためには、保護層のフィルム表面にシリカ等の無機物を分散したフッ素系樹脂含有樹脂組成物層液を塗設する方法や、前記フィルムを複数枚積層する方法において、最表面の樹脂フィルム種を選択する方法等があるが、本発明はこれに限られるものではない。
【0101】
各種表面形状の樹脂フィルムは広く市場に出回っており、必要とされる平均傾斜角Δaを有するフィルムを選択することは容易である。
【0102】
また、本発明においては、散乱光や反射光を抑制する効果があると推測される励起光吸収層を設けることが好ましい。
【0103】
励起光吸収層とは、励起光を選択的に吸収する着色剤を含有する層のことであって、後述する様に、これらの層が、前記保護フィルムの一方の面に塗設されてあってもよいし、両面に塗設されてあってもよいし、或いは保護層自体が着色され励起光吸収層となっていてもよい。
【0104】
これにより、被写体の放射線画像以外の濃淡すなわち画像ムラや、保護フィルムの製造工程中に起因すると思われる線状のノイズ等が減少する。
【0105】
この効果は平均傾斜角Δaが0.01以上であることによって顕著となる。
【0106】
この値付近の傾斜角Δaで、保護層(保護フィルム)界面での励起光の全反射が防止されると推測されるが、励起光吸収層が保護層に備わっていない場合はこの効果は小さいことから、上記効果は励起光吸収層の散乱防止効果と、表面粗さの平均傾斜角Δaの全反射防止の相乗効果であると推測される。
【0107】
前述のように、励起光吸収層放射線画像変換パネルの保護フィルムを着色し、散乱光や反射光を抑制し、鮮鋭性を向上させる方法については、特公昭59−23400号に、放射線画像変換パネルを構成する支持体、下引層、蛍光体層、中間層、保護層の各層が着色された場合の種々の実施形態の一例として記載されている。
【0108】
本発明において放射線画像変換パネルの保護層に好ましく使用される着色剤としては、該放射線画像変換パネルの励起光を吸収する特性を有する色剤が好ましく用いられる。
【0109】
好ましくは、保護フィルムの励起光波長における光透過率が、該励起光吸収層を有しないことだけが異なる該保護フィルムの光透過率の98%〜50%(例えば、He−Neレーザー光(633nm))となるように励起光吸収層を設けることである。光透過率が98%を超えると本発明の効果は小さく、50%未満では放射線画像変換パネルの輝度が急激に低下してくる。
【0110】
いかなる着色剤を用いるかは放射線画像変換パネルに用いる蛍光体の種類によって決まるが、放射線画像変換パネル用の蛍光体としては、通常、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が用いられる。このため、着色剤としては通常、青色〜緑色の有機系もしくは無機系の着色剤が用いられる。
【0111】
青色〜緑色の有機系着色剤の例としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト社製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学社製)、スミアクリルブルーF−GSL(住友化学社製)、D&CブルーNo.1(ナショナル・アニリン社製)、スピリットブルー(保土谷化学社製)、オイルブルーNo.603(オリエント社製)、キトンブルーA(チバ・ガイギー社製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土谷化学社製)、レイクブルーA、F、H(協和産業社製)、ローダリンブルー6GX(協和産業社製)、ブリモシアニン6GX(稲畑産業社製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学社製)、シアニンブルーBNRS(東洋インキ社製)、ライオノルブルーSL(東洋インキ社製)が挙げられる。青色〜緑色の無機系着色剤の例としては、群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−CoO−NiO系顔料が挙げられるがこれらに限られるものではない。
【0112】
(蛍光体層)
次いで、前記保護フィルムにより被覆することにより放射線画像変換パネルを構成する前記蛍光体について説明する。
【0113】
本発明において好ましい、これらの蛍光体を用いて得られる柱状結晶、即ち各々の結晶がある間隙をおいて柱状に成長している結晶は、前記、特開平2−58000号に記載された方法により得ることができる。
【0114】
即ち、基板上に蛍光体の蒸気又は該原料を供給し、蒸着等の気相成長(堆積)させる方法によって独立した細長い柱状結晶からなる蛍光体層を得ることができる。
【0115】
例えば、蒸着時の蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させることにより、基板面に対してほぼ垂直柱状の結晶を得ることが出来る。
【0116】
これらの場合において、基板と坩堝との最短部の間隔は蛍光体の平均飛程に合わせて通常10cm〜80cmに設置するのが適当である。
【0117】
蒸発源となる蛍光体は、均一に溶解させるか、プレス、ホットプレスによって成形して坩堝に仕込まれる。この際、脱ガス処理を行うことが好ましい。蒸発源から蛍光体を蒸発させる方法は通常電子銃により発した電子ビームの走査により行われるが、これ以外の方法にて蒸発させることもできる。
【0118】
また、蒸発源は必ずしも蛍光体である必要はなく、蛍光体原料を混和したものであってもよい。
【0119】
また、賦活剤は母体(basic substance)に対して賦活剤(actibator)を混合したものを蒸着してもよいし、母体のみを蒸着した後、あとから賦活剤をドープしてもよい。例えば、母体をCsBrとした場合、CsBrのみを蒸着した後、例えば賦活剤であるInをドープしてもよい。即ち、結晶が独立しているため、膜が厚くとも充分にドープ可能であるし、結晶成長が起こりにくいので、変調伝達関数(MTF)は低下しないからである。
【0120】
ドーピングは形成された蛍光体の母体層中にドーピング剤(賦活剤)を熱拡散、イオン注入法によって行うことが出来る。
【0121】
図2は本発明に用いられる気相堆積(蒸着)装置の一例及び該気相堆積装置を用いて支持体12上に蛍光体層が蒸着により形成される様子を示す図である。11は形成される蛍光体柱状結晶からなる蛍光体層を模式的に表している。蛍光体の蒸気流Vの基板面の方線方向(P)に対する入射角度をθ2とすると、形成される柱状結晶の基板面の方線方向(P)に対する角度はθ1で表される。入射角度θ2に依存して一定の角度θ1で柱状結晶が形成される。形成された柱状結晶の角度は、蛍光体材料によってそれぞれ異なり、例えば、アルカリハライド系蛍光体のうち、本発明において特に好ましいCsBr系蛍光体の場合には、例えば、蒸着時の蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させる(即ちθ2が0〜5度)ことにより、基板面に対してほぼ垂直柱状(θ1がほぼ0度)の結晶を得ることが出来る。
【0122】
この様にして基板上に形成した蛍光体層11は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、蛍光体を結着剤中に分散した分散型の蛍光体層を有する放射線画像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0123】
封止構造は後述する実施例記載の積層保護フィルムA(熱融着なし)を2枚用いて袋状にして、蛍光体シートを減圧しながら包み、蛍光体層面側の蛍光体周縁より外側にある領域で基板と保護フィルムを熱融着性シートを用いて融着し、その後裏面の保護フィルムを除去して封止する構造であることが好ましく、本発明の放射線画像変換パネルを作製する。
【0124】
支持体(基板)としては、炭素繊維強化樹脂(CFRP)、CFRPコンポジット、アルミニウム板の他に、例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス、結晶化ガラスなどの板ガラス、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)フィルム等のプラスチックフィルム、鉄、銅、クロム等の金属シートを併用しても良い。
【実施例】
【0125】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0126】
実施例1
《放射線画像変換パネル1の作製》
以下に記載の方法に従って、蛍光体層を有する放射線画像変換パネル1を作製した。
【0127】
(蛍光体シートの作製)
1mm厚の結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)支持体の表面に図2に示す蒸着装置(但し、θ1=5度、θ2=5度に設定する)を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0128】
蒸着にあたっては、前記支持体を蒸着器内に設置し、次いで、輝尽性蛍光体原料(CsBr:Eu)を蒸着源としてプレス成形し水冷したルツボに入れた。その後、蒸着器内を一旦排気した後、再度N2ガスを導入し0.133Paに真空度を調整した後、支持体の温度(基板温度ともいう)を約350℃に保持しながら、蒸着した。輝尽性蛍光体層の膜厚が300μmとなったところで蒸着を終了させ、次いで、この輝尽性蛍光体層を温度400℃で加熱処理した。
【0129】
得られた結晶化ガラス支持体上には、幅約2.5μm、長さ約150μmの柱状結晶の蛍光体が垂直方向に密に林立した構造の輝尽性蛍光体層を形成した。
【0130】
上記作製した輝尽性蛍光体層の上に、図2に示す蒸着装置を用いて、表1に示す保護膜を形成し、蛍光体シートを作製した。
【0131】
(防湿性封止フィルムの作製)
下記構成で表されるアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂層を含む積層保護フィルムAを作製した。
【0132】
積層保護フィルムA:VMPET12///VMPET12///PET
積層保護フィルムAにおいて、VMPETは、アルミナ蒸着したポリエチレンテレフタレート(市販品:東洋メタライジング社製)を表し、PETはポリエチレンテレフタレートを表す。
【0133】
また、上記「///」は、ドライラミネーション接着層における2液反応型のウレタン系接着剤層の厚みが3.0μmであることを表し、各樹脂フィルムの後に表示した数字は、各フィルムの膜厚(μm)を表す。
【0134】
上記の保護フィルムを2枚使って袋状にして、蛍光体シートを減圧しながら包み、蛍光体面側の蛍光体周縁より外側にある領域で、蛍光体シートと保護フィルムをシーラントを使って融着し、裏面の保護フィルムは除去して放射線画像変換パネル1〜3(試料No.1〜3)を作製した。
【0135】
得られた放射線画像変換パネルの特性評価と振動評価を行った。
【0136】
(感度(輝度)の評価)
感度の測定は放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を10mAsで爆射線源とプレート間距離2mで照射した後、Regius350にパネルを設置して読みとった。得られたフォトマルからの電気信号を元に目視で評価を行った。
【0137】
○:良
△:普通
×:実用上許容できない
(振動特性評価)
管電圧80kVpのX線を200mAsで放射線源とプレート間距離2mで照射した。その後、放射線画像変換装置の放射線画像変換パネルのすぐ前にある前面板に、装置上部の握り棒から吊り下げた硬式テニスボールをスペーサーを使い、前面板から5cm離してセットし、そのスペーサーをX線照射から1分後のレーザー読み取り時に静かに抜き取ってテニスボールを前面板にぶつけて振動を与え、そのときの発生した横スジの信号値step差を解析した。(横スジは周りよりも信号値が高くなる。その周りとの信号値step差のデータどりを行った。Step差が小さいほうがよい。)
○…step差〜3未満で優
○△…step差3〜5未満で良
△…step差5〜12未満で許容下限
×…step差12以上で不良
【0138】
【表1】

【0139】
表1から明らかなように、本発明の放射線画像変換パネルは、比較の放射線画像変換パネルにひして、感度に優れ、振動特性も良好であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の放射線画像変換パネルの基本的な構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に用いられる気相堆積(蒸着)装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0141】
11 輝尽性蛍光体層
12 支持体
13、14 防湿性保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に気相堆積法(気相法)により形成された蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層を形成後、何れか1種の化合物が脂肪族系化合物であるアミン化合物及びイソシアネート化合物を用いて蛍光体層上にポリウレア保護膜を蒸着により形成することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
前記ポリウレア保護膜を形成する化合物の何れもが脂肪族系アミン化合物及び脂肪族系イソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記気相堆積法(気相法)により形成された蛍光体層中の蛍光体が柱状結晶であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項4】
蛍光体層が含有する蛍光体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
一般式(1)
1X・aM2X′・bM3X″:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
【請求項5】
前記蛍光体が下記一般式(2)で表される蛍光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
一般式(2)
CsX:yA
〔式中、XはCl、BrまたはIを表し、Aは、Eu、Sm、In、Tl、GaまたはCeを表す。yは、1×10-7〜1×10-2までの数値を表す。〕
【請求項6】
前記蛍光体層上に前記ポリウレア保護膜(PU:ポリ尿素)膜とSiOx或いはAl23を組み合わせた積層構成の保護層を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法から得られることを特徴とする放射線画像変換パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−220475(P2006−220475A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32743(P2005−32743)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】