説明

放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネル

【課題】画像ノイズの発生を低減し、高画質な画像を得ることができる放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネルを提供すること。
【解決手段】蒸着工程を経て、支持体2と、支持体2上に形成される蛍光体層3とから構成される蛍光体プレートを形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、蛍光体層3の表面上に存在する突出部のみを平坦化させる平坦化工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネルに関し、特に蒸着法により形成される放射線画像変換パネルの製造方法及び放射線画像変換パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野においては、病気の診断にX線のような放射線画像が多く用いられている。放射線画像の形成方法としては、従来、被検体を透過した放射線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせてこの可視光を通常の写真を撮るときと同じように、銀塩を使用したフィルムに照射して潜像形成の後に現像する、いわゆる放射線写真を用いる方法が一般的であった。
【0003】
しかるに、近年、銀塩を塗布したフィルムを使用しないで放射線画像を形成する方法として、被検体を透過した放射線を輝尽性蛍光体プレートの輝尽性蛍光体に吸収させ、しかる後この輝尽性蛍光体を例えば光又は熱エネルギーで励起させることにより、この輝尽性蛍光体に吸収されて蓄積されている放射線エネルギーを輝尽光として放射させて、この輝尽光を検出して画像化する方法が提案されている。
【0004】
ここで、輝尽性蛍光体プレートは、放射線画像変換パネルの一つの方式であり、このような輝尽性蛍光体プレートに代表される放射線画像変換パネルは、できる限り放射線に対する感度が高く、画質(鮮鋭度、粒状性など)の良い画像を与えるものであることが望まれており、従来から放射線画像変換パネルの高感度化及び画質の改善の研究が進められている。
【0005】
そして、放射線画像変換パネルを使用した放射線画像変換方式の優劣は、該パネルの輝尽性発光輝度およびパネルの発光均一性に大きく左右され、特に、これらの特性には用いる輝尽性蛍光体の特性が大きく支配されていることが知られている。
【0006】
ところで、このような放射線画像変換パネルは、使用する蛍光体素材によっては、蒸着法により形成可能であり、特許文献1には、蒸着法による輝尽性蛍光体プレートの製造方法が開示されている。蒸着法では、蛍光体材料を蒸発・気化させ、支持体上に付着した結晶を成長させることで、支持体表面に柱状結晶など、結晶が整然と並んだ構成の蛍光体プレートを形成させることができる。
【0007】
しかしながら、この方法では、原材料が気化する際に発生する突沸や支持体上に僅かに付着していたキズあるいはゴミなどの異物により、当該異物の付着箇所を基点として支持体上に成長する結晶が異常成長を起こす場合があり、支持体上の結晶が異常成長を生じた箇所では、その異常が蛍光体プレート表面まで及び、その周囲に比べて結晶が部分的に突出した突出部を生じさせてしまうことがあった。
【0008】
そして、蛍光体表面上において、このような異常成長による突出部を生じた蛍光体プレートでは、放射線画像変換パネルに対して照射した励起光が突起部により不要な方向に散乱や屈折を起こし、また、励起されて発生する輝尽光も同様に、正常部とは異なる散乱や屈折を起こすことで斑点状などの画像ノイズを発生させて画質の低下を招いていた。
【0009】
これに対し、特許文献2では、蒸着法により形成した蛍光体プレートの表面全体を研磨剤で均一な層厚となるように研磨する加工を備えた放射線画像変換パネルの製造方法が開示されており、不均一な膜厚分布をもつ蛍光体プレートの膜厚を均一化することが図られている。
【特許文献1】特開2003−279696号公報
【特許文献2】特表2004−537646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、蛍光体プレートの表面全体を単に研磨剤で均一な層厚となるように研磨する加工では、蛍光体プレートの表面に研磨剤や研磨工程で発生するゴミ・研磨屑が付着し、あるいは結晶の隙間に研磨剤が入り込むことで発光特性の異常や画像故障など、新たに別の異常を生じさせる恐れがある。また、研磨剤の使用も含めて材料に無駄が生じ、コストアップしてしまう恐れがある。
【0011】
本発明の目的は、画像ノイズの発生を防いで高画質な画像を提供することができる放射線画像変換パネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、
蒸着工程を経て、支持体と、前記支持体上に形成される蛍光体層とから構成される蛍光体プレートを形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、前記蛍光体層表面上に存在する突出部のみを平坦化させる平坦化工程を有することを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、蛍光体層表面上に存在する突出部のみを平坦化させる平坦化工程を有するので、蛍光体表面の突出部のみを平坦にして、励起光や蛍光の異常散乱及び異常屈折を低減させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体プレートは前記蛍光体層表面を覆うように設けた保護層を有することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、蛍光体プレートは蛍光体層表面を覆う保護層を有すので、蛍光体層表面を外部からの傷等の物理的なダメージや吸湿等の化学的ダメージから守ることができる。また、突起により保護層に与える形状的な変形及びそれに伴って保護層内及び保護層と蛍光体層との境界面で生じる異常散乱や異常屈折を低減することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記平坦化工程は、前記蛍光体層表面をレーザーアブレーション法により前記蛍光体層の層厚方向に部分的に除去させる工程であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、前記平坦化工程は、前記蛍光体層表面をレーザーアブレーション法により前記蛍光体層の層厚方向に部分的に除去させる工程であり、蛍光体層表面の突出部を瞬時且つ局所的に温度上昇させて熱分解やガス化などを引き起こさせ、蛍光体の層厚方向に一定量部分的に除去させて蛍光体層表面を平坦化させる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体層表面に対し、前記突出部の有無を判定する判定工程を有しており、前記蒸着工程の後に前記判定工程を行い、かつ、前記判定工程の後に前記平坦化工程を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、突出部の有無を判定する判定工程を有し、蒸着工程、判定工程、平坦化工程と順に行うので、蒸着工程後の蛍光体層表面の突出部を把握し、その結果をもとに該突出部に対して平坦化工程を行うことができ、突出部に対して確実に平坦化工程を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記判定工程と前記平坦化工程とを繰り返し行うことを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、判定工程と平坦化工程とを繰り返し行うので、平坦化工程の後に、再び判定工程を行うことができ、判定工程における結果と平坦化工程における結果とをフィードバックさせることができ、蛍光体プレートの表面の状態に応じてよりきめ細かく突出部を平坦化させることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体層は気層堆積法により形成される蛍光体からなることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、蛍光体層の作製方法として、気層堆積法を適用させるにあたり、請求項1〜請求項5の発明と同様の作用を得ることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体は輝尽性蛍光体であることを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、蛍光体の材料として、輝尽性蛍光体を適用させるにあたり、請求項1〜請求項6の発明と同様の作用を得ることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記輝尽性蛍光体は、下記一般式(1)で表される組成の化合物を含有することを特徴とする。
M1X・aM2X′・bM3X″:eA・・・(1)
[ここで、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X′及びX″はF,Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、Aは、Eu,Tb,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,TI,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であり、a,b,eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を示す。]
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体として、前記一般式(1)を満たす化合物を含有するものを適用させることができ、請求項7の発明と同様の作用を得ることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の放射線画像変換パネルの製造方法であって前記輝尽性蛍光体は、下記一般式(2)で表される組成の化合物を含有することを特徴とする。
CsX:eA・・・(2)
[ここで、XはCl,BrまたはIであり、AはEu,Sm,In,TI,GaまたはCeであり、eは0.0000001≦e≦0.01の範囲の数値を示す。]
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体として、前記一般式(2)を満たす化合物を含有するものを適用させることができ、請求項7又は請求項8の発明と同様の作用を得ることができる。
【0030】
請求項10に記載の発明は、支持体と、蒸着工程を経て前記支持体上に形成される蛍光体層とから構成される蛍光体プレートを備えた放射線画像変換パネルにおいて、
前記蛍光体プレートは、平坦化工程により前記蛍光体層表面上に存在する突出部のみが平坦化されて構成されることを特徴とする。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、蛍光体層表面上に存在する突出部のみを平坦化させる平坦化工程をを経て、蛍光体表面の突出部のみが平坦にされた蛍光体プレートを備える放射線画像変換パネルとすることができるので、当該パネルにおいて励起光や蛍光の異常散乱及び異常屈折を低減させることができる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載の発明によれば、画像ノイズを低減させ、高画質な画像を得ることができる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、蛍光体層表面への物理的・化学的ダメージから保護するとともに、突起による保護層に与える形状的な変形及びそれに伴って生じる異常散乱や異常屈折を低減することができるので、画像ノイズを低減させ、高画質な画像を得ることができる。
【0034】
請求項3に記載の発明によれば、励起光や蛍光の異常散乱や異常屈折を低減させることができ、画像ノイズを低減させて高画質な画像を得ることができる。
【0035】
請求項4に記載の発明によれば、突出部に対して確実に平坦化工程を行うことができるので、励起光や蛍光の異常散乱及び異常屈折を低減させることができ、画像ノイズを低減させて高画質な画像を得ることができる。
【0036】
請求項5に記載の発明によれば、蛍光体プレートの表面の状態に応じてよりきめ細かく突出部を平坦化させることができるので、励起光や蛍光の異常散乱及び異常屈折をさらに低減させることができ、さらに画像ノイズを低減させて高画質な画像を得ることができる。
【0037】
請求項6に記載の発明によれば、蛍光体層の作製方法として、気層堆積法を適用させるにあたり、請求項1〜請求項5の発明と同様の効果を得ることができる。
【0038】
請求項7に記載の発明によれば、蛍光体の材料として、輝尽性蛍光体を適用させるにあたり、請求項1〜請求項6の発明と同様の効果を得ることができる。
【0039】
請求項8に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体として、前記一般式(1)を満たす化合物を含有するものを適用させることができるので、高輝度・高画質の蛍光体プレートを作製することができる。
【0040】
請求項9に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体として、前記一般式(2)を満たす化合物を含有するものを適用させることができるので、前記一般式(1)の中でも特に高輝度・高画質の蛍光体プレートを作製することができる。
【0041】
請求項10に記載の発明によれば、画像ノイズを低減させ、高画質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明の実施の形態例について詳細に述べる。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0043】
図1に示すように、本発明の放射線画像変換パネル1は、所定の支持体2上に蛍光体層3が形成されてなる蛍光体プレート4を有している。
【0044】
本実施形態で用いられる支持体2としては、各種高分子材料、ガラス、セラミックス、金属、カーボン繊維、カーボン繊維を含む複合材料などを用いることができ、例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス、結晶化ガラスなどの板ガラス;アルミナ、窒素珪素などのセラミックス;セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム;アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シート及び親水性微粒子などの被覆層を有する金属シートなどが好ましい。
【0045】
また、支持体2の表面2aは滑面であってもよいし、蛍光体層3との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。さらに支持体2と蛍光体層3との接着性を向上させるために、必要に応じて、その表面2a上に予め接着層を設けてもよい。
【0046】
蛍光体層3は、少なくとも1層以上から構成され、また、蛍光体の種類により異なるが、その層厚は50μm以上、本発明の効果を得る観点でより好ましくは50〜1000μmの範囲である。また、蛍光体層3は、蛍光体から構成された多数の柱状結晶3a,3a,…が並んだ柱状構造を有している。(図3参照。)。
【0047】
ここで、蛍光体層3を構成する蛍光体について詳しく述べる。
蛍光体としては、輝尽性蛍光体が好ましく、特に、一般式(1)で表される化合物を含有する輝尽性蛍光体を使用することができる。
【0048】
1X・aM2X’2・bM3X’’3:eA ・・・(1)
【0049】
ここで、M1はLi,Na,K,Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属原子が好ましく、さらに好ましくはCs原子である。
【0050】
2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属原子であり、特に、Be,Mg,Ca,Sr、及びBaから選ばれる少なくとも一種の原子であることが好ましい。
【0051】
3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属原子であり、特に、Y,La,Ce,Sm,Eu,Gd,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の原子であることが好ましい。
【0052】
X、X’及びX’’はF、Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、特にBr及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種の原子が好ましく、さらに好ましくはBr原子である。
【0053】
AはEu,Tb,In,Ga,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho、Nd,Yb、Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属原子であり、特にEu,Cs,Sm,Tl及びNaからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属原子であることが好ましく、さらに好ましくはEu原子である。
【0054】
a,b,eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を示す。
【0055】
ここで、アルカリハライド蛍光体は、蒸着、スパッタリング等の方法で柱状の輝尽性蛍光体を形成させやすいので、特に好ましいものであり、この中でも特に、下記一般式(2)で表される化合物が含有された輝尽性蛍光体を有することが好ましい。
【0056】
CsX:yA・・・(2)
ここで、XはCl,BrまたはIであり、AはEu,Sm,In,TI,GaまたはCeであり、eは0.0000001≦e≦0.01の範囲の数値を示す。yは特にEuを賦活材とするとX線変換効率が向上し、高輝度・高画質にすることが期待できる。
【0057】
また、放射線画像変換パネル1では、蛍光体プレート4を保護する保護層が必要に応じて設けられている。保護層として2枚の防湿性保護フィルム5,6を有しており、蛍光体プレート4は、図1に示すように蛍光体層3の上側に配置された第1の防湿性保護フィルム5と、支持体2の下側に配置された第2の防湿性保護フィルム6との間に介在されるようになっている。
【0058】
放射線画像変換パネル1では、第1,第2の防湿性保護フィルム5,6の各周縁部同士が全周にわたって融着されており、第1,第2の防湿性保護フィルム5,6で蛍光体プレート4を完全に封止した構成を有している。第1,第2の各防湿性保護フィルム5,6は、蛍光体プレート4を封止することにより、蛍光体プレート4への水分の浸入を防止するとともに、蛍光体表面へのゴミ・キズの付着を防止して当該蛍光体プレート4を保護するようになっている。
【0059】
保護層に用いられる材質としては、ポリアルキレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルムなどを使用することができ、例えばポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどが透明性、強度の面から好ましい。
【0060】
また、防湿性を高めるため、保護層として水蒸気と酸素とを透過しにくい材質、例えばアルミナ、シリカなどを蒸着させたフィルムを用いることがさらに好ましい。他にガラス基板を用いることもできる。
【0061】
続いて、本発明に係る放射線画像変換パネル1の製造方法について説明する。
【0062】
始めに、所定の支持体2を準備して、図2に示すように、その支持体2上に周知の気相堆積法で蛍光体層3を形成する。
【0063】
例えば、複数存在する周知の気相堆積法のうち、蒸着法で蛍光体層3を形成する場合について簡単に説明すると、支持体2を蒸着装置内の支持体ホルダに固定・設置し、当該蒸着装置内を排気して一定の真空度とする。その後、抵抗加熱法,エレクトロンビーム法等の方法により蛍光体を蒸着源として当該蛍光体を加熱・蒸発させ、支持体2の表面2a上に蛍光体を所望の厚さになるまで成長させ、蛍光体層3を支持体2上に形成する。
【0064】
すると、蛍光体層3の表面では、図4に示すように長さ数10〜数100μm,平均直径数μmの柱状結晶3aが整然と並んだ構造の蛍光体を成膜することができる。
【0065】
しかしながら、支持体2上の表面2a上に蛍光体を成長させる際に、加熱溶融した蛍光体から突沸が発生したり、あるいは、製造過程において支持体2上の表面2a上にキズやゴミなどが付着するなど、表面2a上や成長中の蛍光体表面の当該異物を核として、図5に例示するような、その周囲に比べて柱状結晶3aが部分的に異常な成長を起こし、周囲の正常箇所と比べて突出した突出部7が生じてしまう時がある。
【0066】
そして、このような蛍光体層3表面では、放射線画像変換パネル1に対して照射した励起光が突起部により不要な方向に散乱や屈折を起こし、また、励起されて発生する輝尽光も同様に、正常部とは異なる散乱や屈折を起こすことで斑点状などの画像ノイズを発生させて画質の低下を招いていた。
【0067】
そこで、支持体2上に蛍光体層3を形成したら、当該蛍光体層3に対し、判定工程を行い、その後、その判定結果に基づいて平坦化工程を行うことにより、突出部7に対して所定の加工が施されて画質が良好な蛍光体プレート4を生成する。
【0068】
ここで、判定工程及び平坦化工程は、図6に示すような加工装置10を用いて行う。
【0069】
図6に示すように、加工装置10は、蛍光体プレート4をX−Y方向に移動可能に支持するX−Yステージ11を備えている。このX−Yステージ11の上方には、平坦化加工用にレーザを照射するハイパワーレーザヘッド12を配設した顕微鏡光学系13が備えられている。ここでは、ハイパワーレーザヘッド12から照射されるレーザの光軸を光軸14として図示している。
【0070】
顕微鏡光学系13には、蛍光体プレート4中の蛍光体を励起させるために、例えば、紫外線(UV)等の励起光を照射する励起用UV照明15が備えられている。この励起用UV照明15には、光軸14と同軸で蛍光体プレート4表面を照射することができるように、レンズ16と、光軸14に対して所定の角度で配置された反射ミラー17と、対物レンズ18を通してX−Yステージ11上の蛍光体プレート4に所定の形状・サイズのスポット状の励起光を照射する光学系(図示せず。)とが備えられており、励起用UV照明15から照射された励起光は、レンズ16を透過した後、反射ミラー17で反射されてから、対物レンズ18を通してX−Yステージ11上の蛍光体プレート4に対してスポット状に照射し、蛍光体プレート4のスポット状に励起光が照射された箇所では、蛍光(瞬時発光)を放射するようになっている。例えば、蛍光体材料として輝尽性蛍光体であるCsBr:Eu2+を用いた場合、X線などで励起されると、輝尽光として蛍光体プレート4に潜像を蓄えるほかに、励起された瞬間に蛍光を発する、いわゆる瞬時発光を引き起こす。この瞬時発光で生じる蛍光は、紫外域の光でも励起することができ、CsBr:Eu2+の場合では、蛍光体プレート4に励起用UV照明15で約360nmの励起光を照射させると、440nm付近の蛍光を放射させることが可能である。なお、励起用UV照明15は、蛍光体プレート4中の蛍光体を励起させることが可能なものであればよく、UV以外の光や放射線などの電磁波を放出する励起用光照明の適用することが可能である。
【0071】
また、顕微鏡光学系13には、蛍光体プレート4の表面を観察するCCDカメラ19が備えられている。このCCDカメラ19には、蛍光体プレート4の表面の画像を取り込めるように、光軸14と同軸で、かつ、光軸14に対して所定の角度で配置された反射ミラー20と、レンズ21とが備えられており、蛍光体プレート4から放射された蛍光は対物レンズ18及び反射ミラー20を通して入射され(二点鎖線)撮像を得るようになっている。なお、CCDカメラ19は、従来公知のものが適用可能であるとともに、CCDカメラ19で得られる像の大きさは、対物レンズ18の倍率を変えることで簡易に調整することが可能である。
【0072】
ここで、顕微鏡光学系13内に備えられた反射ミラー17,20について説明する。反射ミラー17,20としては、顕微鏡光学系13に透過率・反射率に分光特性を持たせたミラーを常備したものでもよいし、あるいは、前記ミラーを励起用UV照明15による励起光照射やCCDカメラ19による蛍光体プレート4の表面観察をする際にのみ、顕微鏡光学系13に挿入する挿抜機構を設けたものであってもよい。前者の反射ミラー17,20としては、ハイパワーレーザヘッド12から照射されるレーザの波長の透過率が高く、かつ、紫外域の反射率を高めるようなコーティングを設けたミラーとすればよく、これにより、レーザ加工中のミラー透過ロスと、励起光・蛍光観察時の励起光及び蛍光の反射ロスの双方が極小となるコーティングを選択することで実現できる。一方、後者の反射ミラー17,20としては、レーザ加工と、紫外励起及び蛍光観察の際に、光路を切替えるような挿抜機構とすることで実現できる。
【0073】
CCDカメラ19には、処理装置(図示せず)が接続されている。処理装置は、CCDカメラ19で撮影された情報を基に蛍光体プレート4表面の状態を計測・判定するためのものであり、ここでは、CCDカメラ19で撮影された像を基に、蛍光体プレート4から放射される蛍光を画像化して平均輝度等を用いて数値化し、異常の判定を行う。例えば、処理装置では、図4に示すような蛍光体プレート4表面が平坦になっている箇所(正常箇所)では所定の数値の輝度が検出されるのに対して、図5に示す蛍光体プレート4の表面の突出部7では、正常箇所と異なる数値の輝度が検出され、異常と判断するようになっている。これは、蛍光体プレート4表面の突出部では、励起用UV照明15から放射された光により蛍光体プレート4が蛍光を放射する際に、入射光及び放射光が異常散乱や異常屈折するため、正常箇所とは異なる輝度として観察されるためである
【0074】
また、処理装置では、異常と判断された箇所(異常箇所)を突出部として蛍光体プレート4上の位置に対応付けて記憶するとともに、異常箇所における輝度と、正常箇所における輝度との差(輝度差)を突出量として換算して記憶するようになっている。
【0075】
次に、ハイパワーレーザヘッド12について説明する。ハイパワーレーザヘッド12は、処理装置で判定された情報を基にX−Yステージ11上の蛍光体プレート4に向かってレーザを照射するためのものであり、ハイパワーレーザヘッド12から照射されたレーザは、ハイパワーレーザヘッド12内部及び顕微鏡光学系13内部に設けられた図示しないビーム整形光学系、並びに対物レンズ18を通して蛍光体プレート上に所定サイズ形状のビームスポットを結ぶ(点線)ようになっている。
【0076】
ここで、ハイパワーレーザヘッド12は、レーザが照射された蛍光体層3表面をレーザーアブレーション法により蛍光体層3の層厚方向に部分的に除去させる、つまり、蛍光体層3表面の突出部7を瞬時且つ局所的に温度上昇させて熱分解やガス化などを引き起こさせ、蛍光体の層厚方向に一定量部分的に除去させ、蛍光体層3表面を平坦化させるためのものであり、ここでは、検査結果から処理装置で記憶された蛍光体プレート4上の突出部7に対してレーザ照射を行うようになっている。
【0077】
なお、レーザとしては、YAGレーザやCO2レーザなどが挙げられる。また、レーザに非線形光学結晶を組み込むことにより様々な波長に変換したレーザの利用も可能である。例えばYAGレーザの場合、基本波長1064nmに対し、2倍高調波=532nm(グリーン)、3倍高調波=355nm(紫外)、4倍高調波=266nm(紫外)などの波長を利用することができ、蛍光体プレート4を構成する蛍光体結晶の光の吸収性や反射性など結晶の光学特性や光化学的反応の上で加工に有利な波長を選択することが可能である。また、波長を選択する際には、加工に有利な波長を選択するだけでなく、特定の波長に対する蛍光体プレート4の損傷や蛍光発光特性への影響などを考慮して総合的に評価し、使用するレーザ波長を選択することが好ましい。
【0078】
また、ハイパワーレーザヘッド12は、蛍光体プレート4表面において所望の大きさの像(スポット径)を得るために、レーザの射出口や射出口から対物レンズの間までのレーザ光の光軸14上に適当なサイズの絞りや、ビーム整形用のレンズを設けてもよい。あるいは、前述の対物レンズ18の倍率を変更することでもスポット径を変更することも可能である。
【0079】
また、ハイパワーレーザヘッド12から照射されるレーザは、処理装置で記憶された輝度差をもとに、その強度が調整されており、突出部の掘削量の調整は、判定工程で検出された突出量に応じて決定される。
【0080】
図7はレーザ条件と掘削量の関係について示したものである。図7では、ハイパワーレーザヘッド12に高調波発生機能を備えたYAGレーザを用いて、波長を1064nm及び355nmとし、蛍光体表面でのビーム径を約100μm,1064nm及び355nmの波長のレーザ光の平均出力をそれぞれ0.56mJ,0.21mJとして、パルス発光の繰り返し周波数(パルス周波数)を50Hz(パルス幅;約10nsec)に設定し、蛍光体表面に照射されるレーザ照射エネルギーを変化させた時に除去される蛍光体表面における蛍光体の除去量(掘削量)を数値化したものがグラフ化されている。ここでは、レーザ照射エネルギーとは、蛍光体表面に照射するレーザのパルス数(照射パルス数)を示している。なお、除去加工を施す蛍光体には、層厚全体が約350μmのCsBr:Eu2+の柱状結晶を用いた。
【0081】
図7によると、1064nm及び355nmのいずれの波長を用いても、ある照射パルス数を超えると掘削量は照射したパルス数に応じて増加している様子が示されており、照射パルス数で蛍光体表面の掘削量を制御することが可能である。そのため、図示される数値結果をもとに目的とする掘削量を決定し、レーザ条件を制御することが可能となる。なお、当該条件は、蛍光体プレート4の製造条件(主として蒸着条件)や、その結晶構造、あるいは当該プレートを構成する蛍光体材料の種類等に応じて結晶の硬度や脆弱度、レーザによるアブレーション反応の程度が異なるため、ハイパワーレーザヘッド12を使用する前に、使用する蛍光体材料やその製造条件で、予め照射パルス数に対する蛍光体表面の掘削量の関係を計測しておき、その結果を基にハイパワーレーザヘッド12に適用する加工条件を決定することで高精度な加工を行うことが可能となる。
【0082】
また、蛍光体プレート4に照射されるレーザの強度(照射強度)の調整方法としては、レーザの光路に適当な光減衰器を搭載し、光量を調整することが可能である。あるいは、例えば、YAGレーザをフラッシュランプ励起などでパルス発振させる場合、レーザを照射する際に、パルス発振する回数で照射強度を調整したり、一定周期でパルス発振させておき、その照射時間で照射強度を調整することも可能である。
【0083】
前述の加工装置10を用いて判定工程及び平坦化工程を行う場合には、まず、X−Yステージ11上に前述の方法で作製された蛍光体プレート4を載せ、励起用UV照明15を点灯させる。すると、蛍光体プレート4には、励起用UV照明15からの励起光が照射され、励起光が照射された箇所では、蛍光体が励起されて蛍光(瞬時発光)を放射する。
【0084】
すると、放射された蛍光の発光状態は、CCDカメラ19で撮影され、処理装置にて蛍光体プレート4の当該箇所が異常もしくは正常のいずれであるかが判定され、異常と判断された場合には、輝度差とともに蛍光体プレート4の異常箇所、すなわち、突出部7が記憶される。
【0085】
そして、蛍光体プレート4の残りの箇所についてもX−Yステージ11を移動させることで同様に走査し、蛍光体プレート4の全面の蛍光画像を判定する。
【0086】
このようにして判定工程が行われた後、ハイパワーレーザヘッド12は、異常と判定された箇所、すなわち突出部7に対して、処理装置で記憶された輝度差をもとに、照射強度を調整してレーザを照射する。すると、突出部7では瞬時且つ局所的に温度が上昇して熱分解やガス化などが引き起こされ、蛍光体の層厚方向に一定量の蛍光体が掘削される。その結果、レーザ照射前に存在していた突出部7は、部分的に除去されて、図7に示すように蛍光体表面が平坦になる。
【0087】
以上のようにして判定工程及び平坦化工程を行った後、必要に応じて保護層を設ける。保護層は、例えば熱融着性を備えた2枚の防湿性フィルムを蛍光体プレート4の両面を覆い、その周縁部をインパルスヒーターなどで加熱圧着して形成してもよいし、予め別途形成した保護層を蛍光体層3に接着してもよい。また、この保護層は保護層用の材料を蛍光体層3の表面に直接塗布してもよいし、蒸着法、スパッタリング法等により、SiC,SiO,SiN,Al等の無機物質を積層して形成してもよい。なお、保護層の層厚は、0.1〜2000μmが好ましい。
【0088】
以上のような方法で作製された放射線画像変換パネル1では、従来の支持体上に気相堆積法で蛍光体層3が形成された蛍光体プレート4に対して平坦化工程を行わない方法に比べ、蛍光体表面の突出部7のみを平坦にして、蛍光体層3の表面を平坦化することができるので、励起光や蛍光の異常散乱及び異常屈折を低減させることができ、画像ノイズの発生を低減させて高画質な画像を得ることができる。
【0089】
特に、蛍光体プレート4に保護層を設けた場合には、蛍光体層3の表面を外部から遮断することができ、蛍光体層3の表面への物理的・化学的ダメージから保護することができる。一般的に蛍光体は吸湿性が高く、特に蛍光体プレートは吸湿により劣化しやすいものであるが、保護層により吸湿による劣化を防ぐことができるようになり、高画質な画像を維持することができる。その際、保護層と蛍光体プレート4との間に突起部7が存在しないため、突起部7により保護層に与える形状的な変形及びそれに伴って保護層内及び保護層と蛍光体層との境界面で生じる異常散乱や異常屈折を低減することができ、画像ノイズの発生を低減させて高画質な画像を得ることができる。
【0090】
なお、本発明は前記実施形態に限らず適宜変更可能であることはもちろんである。
【0091】
例えば、本実施形態における判定工程では、蛍光体プレート4に対して、励起用の光を照射し、蛍光体プレート4から放射される蛍光を読み取って得られる画像の輝度差から蛍光体プレート4における突出部7及び突出量を換算検出したが、蛍光体プレート4に対して、接触式・非接触式変位センサにより蛍光体プレート4における突出部7の突出量を計測してもよい。
【0092】
あるいは、図6の励起用UV照明15を一般的な照明用白色光源とし、蛍光体プレート4の表面画像をCCDカメラ19で撮像するとともに、撮像時のピント位置を計測し、正常箇所と突起部7との差から突起量を求めてもよい。
【0093】
また、平坦化工程において、蛍光体層3の表面をレーザーアブレーション法により蛍光体層3の層厚方向に部分的に除去させる手段としてレーザを使用したが、レーザの代わりに、レーザと同様の反応が得られるマイクロ波、プラズマ、加速イオン、加速電子等を利用して行ってもよい。
【0094】
また、平坦化工程として、蛍光体層3の表面をレーザーアブレーション法により蛍光体層3の層厚方向に部分的に除去させたが、平坦化工程は、蛍光体層3の表面を局所的に溶融させるものであってもよい。この場合には、蛍光体表面の突出部7を熱で溶融させることで蛍光体層3の表面を平坦化させることが可能である。また、蛍光体層3の表面の局所的な溶融は、レーザ、マイクロ波、プラズマ波等の光を利用して行うことが可能である。なお、蛍光体層3の表面をアブレーションさせるか溶融させるかは、蛍光体層3を構成する材料や結晶構造、使用目的から自ずと決定され、あるいは当該光の出力方法により決定されるものであり、使用形態に応じて適宜選択すればよい。
【0095】
さらに、平坦化工程は、加熱・加圧ロールを用いて行ういわゆるカレンダー処理により行ってもよい。この場合には、1対の加熱又は加圧ローラ間に蛍光体プレート4を通過させることで、蛍光体プレート4上の突出部7は押しつぶされ、蛍光体層3の表面を平坦化させることが可能である。
【0096】
また、判定工程及び平坦化工程は、繰り返し行うものであってもよい。この場合には、平坦化工程の後に、再び判定工程及び平坦化工程を行うことができ、判定工程における結果と平坦化工程における結果とをフィードバックさせることができるので、蛍光体プレート4の表面の状態に応じてよりきめ細かく突出部を平坦化させることができる。
【0097】
また、平坦化工程と同時、又は平坦化工程の後であって保護層を設ける工程の前に、アブレーションにより飛散した突出部の切片を吸引機等を用いて吸引・除去するサクション工程を設けてもよい。この場合には、平坦化工程で飛散された切片が除去され、より蛍光体層3の表面を平坦にさせることが可能となる。また、サクション工程は、吸引する代わりに、溶剤や粘着ロールにより異物の除去を行ってもよい。
【0098】
また、平坦化工程は、蛍光体プレート4に保護層を設ける工程の前、若しくは、保護層を設けた後に設けた保護層を剥離して行ってもよく、その場合には、蛍光体プレート4の表面に直接レーザ等の加工を加えることが好ましいが、使用する保護層の材質や蛍光体の種類、照射されるレーザの特性(波長や強度など)によっては、保護層を設けた状態で、蛍光体プレート4の表面を平坦化加工することもできる。例えば、保護層にガラスや樹脂フィルムを用いた場合、加工用のレーザに保護層での吸収が非常に低い波長のレーザを用い、かつ、保護層上でのビーム径を大きくした状態で透過した結晶面上でのビーム径が微小スポットとなるようにビーム整形された光学系を設計すればよい。このようにすることで、レーザによる保護層へのダメージを最小限にしつつ、保護層を施した状態で平坦化工程を行うことができ、蛍光体プレート4の表面に生じた突起部のみを平坦化加工することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線画像変換パネルを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放射線画像変換パネルの製造方法の一過程を示す概略図である。
【図3】支持体に蛍光体層が蒸着法により形成される様子を示す図である。
【図4】正常な蛍光体層表面の状態を示す模式図である。
【図5】蛍光体層表面に突出部が形成された状態を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る放射線画像変換パネルの製造方法に使用される加工装置を示す図である。
【図7】レーザ照射エネルギーと掘削量の関係について示したグラフである。
【図8】蛍光体層表面に形成された突出部が平坦化された状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0100】
1 放射線画像変換パネル
2 支持体
3 蛍光体層
4 蛍光体プレート
5 第1の防湿性保護フィルム
6 第2の防湿性保護フィルム
7 突出部
10 加工装置
11 X−Yステージ
12 ハイパワーレーザヘッド
13 顕微鏡光学系
14 光軸
15 励起用UV照明
16,21 レンズ
17,20 反射ミラー
18 対物レンズ
19 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着工程を経て、支持体と、前記支持体上に形成される蛍光体層とから構成される蛍光体プレートを形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、
前記蛍光体層表面上に存在する突出部のみを平坦化させる平坦化工程を有することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
前記蛍光体プレートは前記蛍光体層表面を覆うように設けた保護層を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記平坦化工程は、前記蛍光体層表面をレーザーアブレーション法により前記蛍光体層の層厚方向に部分的に除去させる工程であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項4】
前記蛍光体層表面に対し、前記突出部の有無を判定する判定工程を有しており、
前記蒸着工程の後に前記判定工程を行い、かつ、前記判定工程の後に前記平坦化工程を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項5】
前記蛍光体層表面に対し、前記突出部の有無を判定する判定工程を有しており、
前記蒸着工程の後、前記判定工程と前記平坦化工程とを繰り返し行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項6】
前記蛍光体層は気層堆積法により形成される蛍光体からなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項7】
前記蛍光体は輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項8】
前記輝尽性蛍光体は、下記一般式(1)で表される組成の化合物を含有することを特徴とする請求項7に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
M1X・aM2X′・bM3X″:eA・・・(1)
[ここで、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X′及びX″はF,Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、Aは、Eu,Tb,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,TI,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であり、a,b,eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を示す。]
【請求項9】
前記輝尽性蛍光体は、下記一般式(2)で表される組成の化合物を含有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
CsX:yA・・・(2)
[ここで、XはCl,BrまたはIであり、AはEu,Sm,In,TI,GaまたはCeであり、eは0.0000001≦e≦0.01の範囲の数値を示す。]
【請求項10】
支持体と、蒸着工程を経て前記支持体上に形成される蛍光体層とから構成される蛍光体プレートを備えた放射線画像変換パネルにおいて、
前記蛍光体プレートは、平坦化工程により前記蛍光体層表面上に存在する突出部のみが平坦化されて構成されることを特徴とする放射線画像変換パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−343123(P2006−343123A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166691(P2005−166691)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】