説明

放射線画像変換パネルの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、支持体と保護層との間に輝尽性蛍光体層を封着部材により封止した構造の放射線画像変換パネルの製造方法に関し、特に、剥離や割れの発生を防止した放射線画像変換パネルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば医療の分野においては、病気の診断にX線画像のような放射線画像が多く用いられている。放射線画像の形成方法としては、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収させ、しかる後この蛍光体を例えば光または熱エネルギーで励起することにより、この蛍光体に吸収されて蓄積されていた放射線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を検出して画像化する方法が提案されている。
【0003】例えば米国特許第3,859,527号明細書、特開昭55−12144号公報には、輝尽性蛍光体を用い、可視光線または赤外線を輝尽励起光として用いた放射線画像変換方法が示されている。この方法は、支持体上に輝尽性蛍光体層を形成した放射線画像変換パネルを使用するものであり、この放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて、被写体の各部の放射線透過度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて潜像を形成し、しかる後にこの輝尽性蛍光体層を輝尽励起光で走査することによって各部に蓄積された放射線エネルギーを輝尽発光として放射させ、この光の強弱による光信号を例えば光電変換し、画像再生装置により画像化するものである。この最終的な画像はハードコピーとして再生されるか、またはCRT上に再生される。
【0004】このような放射線画像変換方法に用いられる輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、輝尽励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰り返して使用することができる。このような放射線画像変換パネルでは、通常、支持体と保護層との間に輝尽性蛍光体層が設けられ、そして、外部からの物理的または化学的刺激から保護するために、当該輝尽性蛍光体層を支持体と保護層との間に封着部材によって封止することが行われている。封着部材による封止技術としては、従来、封着部材の硬化時に支持体および保護層の温度を放射線画像変換パネルの使用時の温度との差が±20℃以内となるように保持する技術が提案されている(特開平1−316999号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の従来の技術では、放射線画像変換パネルの使用時の温度が封着部材の硬化温度よりも高い場合には、剥離(接着界面破壊あるいは封着部材の凝集破壊)や割れ(保護層あるいは支持体の凝集破壊)が発生する問題があった。このように剥離や割れが生ずると放射線画像変換パネルの耐湿性が低下する。そこで、本発明の目的は、剥離や割れの生じない耐久性の優れた放射線画像変換パネルを製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の放射線画像変換パネルの製造方法は、支持体と保護層との間に輝尽性蛍光体層が設けられ、支持体と保護層の周縁部が二重のスペーサを介して封着部材により封着されて当該輝尽性蛍光体層が支持体と保護層との間に封止された構造の放射線画像変換パネルの製造方法において、前記封着部材による封止の際には、支持体、保護層および封着部材を、放射線画像変換パネルの使用時の上限温度の近傍温度に保持した状態で、当該封着部材を硬化させることを特徴とする。
【0007】
【作用】封着部材による封止の際には、支持体、保護層および封着部材を、放射線画像変換パネルの使用時の上限温度の近傍温度に保持した状態で、当該封着部材を硬化させるので、剥離や割れを伴わずに長期間安定に使用できる放射線画像変換パネルを製造することができる。
【0008】以下、本発明を具体的に説明する。図1は、本発明の製造方法によって得られる放射線画像変換パネルの一例を示し、支持体2と保護層3との間に輝尽性蛍光体層1が配置され、この輝尽性蛍光体層1を外部からの物理的または化学的刺激から保護するために、支持体2と保護層3の周縁部が封着部材4によって封着され、輝尽性蛍光体層1が封止されている。
【0009】図2は、本発明の製造方法によって得られる放射線画像変換パネルの他の例を示し、支持体2上に輝尽性蛍光体層1が設けられ、この輝尽性蛍光体層1に対して低屈折率層6を介して保護層3が配置され、支持体2と保護層3の周縁部が、スペーサ5を介して封着部材4により封着され、輝尽性蛍光体層1が封止されている。
【0010】図3は、本発明の製造方法によって得られる放射線画像変換パネルのさらに他の例を示し、支持体2と保護層3の周縁部が、二重のスペーサ5A,5Bを介して封着部材4により封着されている以外は、図2と同様の構成である。この構成では、■スペーサ5A,5B間に封着部材4の柱状部4Aができ、これが封着部材4中の透湿に対して、緩衝部としての機能を果たし、透湿による水分進入が遅くなる、■封着剤塗布工程が容易である、というメリットがあるが、反面、放射線画像変換パネルを高温雰囲気で使用した場合に、柱状部4Aにより剥離や割れが生じやすいことから、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0011】本発明において、封着部材4が硬化した状態とは、支持体2と保護層3が封着部において固定され、通常使用される状態で与えられる外力の範囲では相対的な位置が変化しなくなった状態をいう。また、支持体2と保護層3との間にスペーサ5を設ける場合には、支持体2とスペーサ5、およびスペーサ5と保護層3が封着部において固定され、相対的な位置が変化しなくなり、支持体2と保護層3がスペーサ5を介して固定され、通常使用される状態で与えられる外力の範囲では相対的な位置が変化しなくなった状態をいう。
【0012】本発明の製造方法においては、封着部材4により輝尽性蛍光体層1を封止する工程で、封着部材4を硬化させる時に、支持体2と保護層3の温度を放射線画像変換パネルの使用時の上限温度の近傍温度となるように保持する。ここで、放射線画像変換パネルの使用時の上限温度の近傍温度とは、上限温度をTmax、近傍温度をTとするとき、Tmax≦T≦Tmax+20℃より好ましくは、Tmax≦T≦Tmax+10℃を満たす範囲の温度をいう。
【0013】放射線画像変換パネルの使用時の温度は、使用目的によって異なり一概には規定できないが、通常は、−10〜60℃の範囲である。例えば倉庫保管時の温度は−10〜60℃、輸送時の温度は−5〜30℃、病院等での非動作時の温度は−5〜50℃、病院等での動作時の温度は20〜30℃である。保持温度が上記近傍温度Tよりも高すぎる場合、あるいは低すぎる場合には、剥離や割れを生じやすくなる。
【0014】封着部材4としては、エポキシ系接着剤が好ましい。特に、二液型エポキシ系接着剤が好ましい。二液型エポキシ系接着剤としては、エポキシ樹脂を主剤とした従来公知のものが用いられる。硬化剤としては、ポリアミン、ポリアミド、ポリチオール、変性ポリアミン、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミン、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、変性脂環式ポリアミン、イミダゾール等が用いられる。
【0015】本発明において「輝尽性蛍光体」とは、最初の光または高エネルギー放射線が照射された後に、光的、熱的、機械的、化学的または電気的等の刺激(輝尽励起)により、最初の光または高エネルギー放射線の照射量に対応した輝尽発光を示す蛍光体をいうが、実用的な面からは、波長が500nm以上の輝尽励起光によって輝尽発光を示す蛍光体が好ましい。
【0016】輝尽性蛍光体層を構成する輝尽性蛍光体としては、以下のものを用いることができる。
(1)特開昭48−80487号公報に記載のBaSO4 :Axで表される蛍光体。ただし、Aは、Dy,Tb,Tmの少なくとも1種を表し、xは0.001≦x<1モル%を満たす数を表す。
(2)特開昭48−80489号公報に記載のSrSO4 :Axで表される蛍光体。ただし、Aは、Dy,Tb, Tmの少なくとも1種を表し、xは0.001≦x<1モル%を満たす数を表す。
【0017】(3)特開昭53−39277号公報に記載のLi2 4 7 :Cu,Ag等の蛍光体。
(4)特開昭54−47883号公報に記載のLi2 O・(B22 ) x :Cu、Li2 O・(B2 2 ) x :Cu,Ag等の蛍光体。ただし、xは2<x≦3を満たす数を表す。
(5)米国特許第3,859,527号明細書に記載のSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、La2 2 S:Eu,Sm、(Zn,Cd)S:Mn,Xで表される蛍光体。ただし、Xはハロゲンを表す。
【0018】(6)特開昭55−12142号公報に記載されたZnS:Cu,Pb等の蛍光体。
(7)同55−12142号公報に記載のBaO・xAl2 3:Euで表されるアルミン酸バリウム蛍光体。ただし、xは0.8≦x≦10を満たす数を表す。
(8)同55−12142号公報に記載のMIIO・xSiO2:Aで表されるアルカリ土類金属ケイ酸塩系蛍光体。ただし、MIIは、Mg,Ca,Sr,Zn,Cd, Baを表し、Aは、Ce,Tb,Eu,Tm,Pb,Tl,Bi,Mnの少なくとも1種を表し、xは、0.5≦x<2.5を満たす数を表す。
【0019】(9)特開昭55−12143号公報に記載の(Ba1-x-y Mgx Cay )FX:eEu2+で表される蛍光体。ただし、Xは、Br,Clの少なくとも1種を表し、x,y,eは、それぞれ、0<x+y≦0.6、x・y≠0、10-6≦e≦5×10-2を満たす数を表す。
(10)特開昭55−12144号公報に記載のLnOX:xAで表される蛍光体。ただし、Lnは、La,Y,Gd,Luの少なくとも1種を表し、Xは、Cl,Brの少なくとも1種を表し、Aは、Ce,Tbの少なくとも1種を表し、xは0<x<0.1を満たす数を表す。
【0020】(11)特開昭55−12145号公報に記載の(Ba1-xIIx )FX:yAで表される蛍光体。ただし、MIIは、Mg,Ca,Sr,Zn,Cdの少なくとも1種を表し、Xは、Cl,Br,Iの少なくとも1種を表し、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Erの少なくとも1種を表し、x,yは、0≦x≦0.6、0≦y≦0.2を満たす数を表す。
(12)特開昭55−84389号公報に記載のBaFX:xCe,yAで表される蛍光体。ただし、Xは、Cl,Br,Iの少なくとも1種を表し、Aは、In,Tl,Gd,Sm,Zrの少なくとも1種を表し、x,yは、0<x≦2×10-1、0<y≦5×10-2を満たす数を表す。
【0021】(13)特開昭55−160078号公報に記載のMIIFX・xA:yLnで表される希土類元素付活2価金属フルオロハライド蛍光体。ただし、MIIは、Mg,Ca,Ba,Sr,Zn,Cdの少なくとも1種を表し、Aは、BeO,MgO,CaO,SrO,BaO,ZnO,Al2 3 ,Y2 3 ,La23 ,In2 3 ,SiO2 ,TiO2 ,ZrO2 ,GeO2 ,SnO2,Nb2 5 ,Ta2 5 ,ThO2 の少なくとも1種を表し、Lnは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Sm,Gdの少なくとも1種を表し、Xは、Cl,Br,Iの少なくとも1種を表し、x,yは、5×10-5≦x≦0.5、0<y≦0.2を満たす数を表す。
【0022】(14)同55−160078号公報に記載のZnS:A、(Zn,Cd)S:A、CdS:A、ZnS:A,X、CdS:A,Xで表される蛍光体。ただし、Aは、Cu,Ag,Au,Mnのいずれかを表し、Xは、ハロゲンを表す。
【0023】(15)特開昭59−38278号公報に記載のxM3 (PO4 2 ・NX2 :yA、M3 (PO4 2 ・yAで表される蛍光体。ただし、M,Nは、それぞれ、Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cdの少なくとも1種を表し、Xは、F,Cl,Br,Iの少なくとも1種を表し、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Sb,Tl,Mn,Snの少なくとも1種を表し、x,yは、0<x≦6、0≦y≦1を満たす数を表す。
(16)特開昭59−155487号公報に記載のnReX3 ・mAX' 2 :xEunReX3 ・mAX' 2 :xEu,ySmで表される蛍光体。ただし、Reは、La,Gd,Y,Luの少なくとも1種を表し、Aは、Ba,Sr,Caの少なくとも1種のアルカリ土類金属を表し、X,X’は、F,Cl,Brの少なくとも1種を表し、x,yは、1×10-4<x<3×10-1、1×10-4<y<1×10-1を満たす数を表し、n/mは、1×10-3<n/m<7×10-1を満たす数を表す。
【0024】(17)特開昭61−72087号公報に記載のMI X・aMIIX' 2 ・bMIII X''3 :cAで表されるアルカリハライド蛍光体。ただし、MI は、Li,Na,K,Rb,Csの少なくとも1種のアルカリ金属を表し、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu,Niの少なくとも1種の2価の金属を表し、MIII は、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga,Inの少なくとも1種の3価の金属を表し、X,X' , X''は、F,Cl,Br,Iの少なくとも1種のハロゲンを表し、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,Mgの少なくとも1種の金属を表し、a,b,cは、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<c≦0.2を満たす数を表す。
(18)特開昭60−84381号公報に記載の一般式MII2 ・aMIIX' 2 ・xEu2+で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体。(ただし、MIIは、Ba,Sr,Caの少なくとも1種のアルカリ土類金属であり、XおよびX' は、Cl,Br,Iの少なくとも1種のハロゲンであって、かつX≠X' であり、a,xは、0.1≦a≦10.0、0<x≦0.2を満たす数を表す。)
(19)特開昭63−27588号公報に記載の一般式MX2 ・aMX' 2 ・bEu2+で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体。(ただし、Mは、Ca,Sr,Baの少なくとも1種のアルカリ土類金属であり、XおよびX' は、Cl,Br,Iの少なくとも1種のハロゲンであって、かつX≠X' であり、a,bは、0.5≦a≦1.8、10-4≦b≦10-2を満たす数を表す。)
(20)第51回応用物理学会学術講演会講演予稿集(1990年秋季)1086頁に記載されている、一般式BaX2 :Eu(Xはハロゲン)で表される二価ユーロピウム賦活ハロゲン化バリウム蛍光体。
【0025】以上の中でも、特にアルカリハライド蛍光体は、真空蒸着法、スパッタリング法等によって輝尽性蛍光体層を形成するのが容易である点で好ましい。ただし、本発明においては、以上の蛍光体に限定されず、放射線を照射した後、輝尽励起光を照射した場合に輝尽発光を示す蛍光体であればその他の蛍光体を用いてもよい。本発明の製造方法により得られる放射線画像変換パネルは、前記の輝尽性蛍光体の少なくとも1種類を含む1つもしくは2つ以上の輝尽性蛍光体層からなる輝尽性蛍光体層群であってもよい。また、それぞれの輝尽性蛍光体層に含まれる輝尽性蛍光体は同一であってもよいが異なっていてもよい。
【0026】輝尽性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線画像変換パネルの放射線に対する感度、輝尽性蛍光体の種類等によっても異なるが、結着剤を含有しない場合には10〜1000μmが好ましく、特に20〜800μmが好ましく、結着剤を含有する場合には20〜1000μmが好ましく、特に50〜500μmが好ましい。このような輝尽性蛍光体層は、支持体上に塗布法や気相堆積法等を用いて形成されるが、輝尽性蛍光体層を保護層上に形成した後、支持体に積層してもよい。気相堆積法としては、例えば蒸着法、スパッタリング法、CVD法等が挙げられる。
【0027】気相堆積法により形成された輝尽性蛍光体層に加熱処理を施す場合には、X線に対する感度が向上する。また、支持体または保護層上に付活剤を含まない輝尽性蛍光体母体層を形成した後に、熱拡散法等の方法により、輝尽性蛍光体母体層に付活剤をドーピングして所定の輝尽性蛍光体層とすることもできる。
【0028】支持体の材料としては、各種高分子材料、ガラス、セラミックス、金属等が用いられる。高分子材料としては、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。金属としては、アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シートまたは金属板、あるいは金属酸化物の被覆層を有する金属シートまたは金属板が挙げられる。ガラスとしては、化学的強化ガラス、結晶化ガラス等が挙げられる。セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニアの焼結板等が挙げられる。
【0029】支持体の厚さは、その材質等によっても異なるが、一般的には80μm〜5000μmであり、取扱い上の便利性から、特に200μm〜2000μmが好ましい。支持体は、防湿性の観点から透湿度が低いことが望ましく、透湿度は10〔g/m2 ・24hr〕以下が好ましく、特に1〔g/m2 ・24hr〕以下が好ましく、気密性に優れ透湿度が実質的に0であるようなガラス、セラミックス、金属等が特に好ましい。
【0030】また、前述のような輝尽性蛍光体層の加熱処理を行う場合には、支持体には耐熱性が要求され、500℃以上での連続使用においても割れや変形を起こさないことが好ましい。さらに加熱処理中に、輝尽性蛍光体と反応してX線感度等の性能に影響を与えないことが好ましい。耐熱性に優れ、輝尽性蛍光体層との反応性が乏しい支持体としては、例えば結晶化ガラス板、石英板、アルミナシリカ焼結板等が挙げられる。
【0031】結晶化ガラスは、ガラスセラミックスともいい、以下に示す特殊な組成のガラスを溶融成形した後、十分に制御された条件下で再加熱し原形を保ったまま、アモルファス状態から均一な微細結晶の凝集体に変わったものである。現在実用に供されている結晶化ガラスの組成系の主なものとしては、例えばケイ酸塩ガラスとしてLi2 O−SiO2 、Na2 O−CaO−MgO−SiO2 、アルミノケイ酸塩系としてLi2 O−Al2 3 −SiO2 、Na2 O−Al2 3 −SiO2 −MgO−Al2 3 −SiO2 、ホウ酸塩ガラスとしてPbO−ZnO−B2 3 、ホウケイ酸塩ガラスとしてZnO−B2 3 −SiO2 等が挙げられる。
【0032】支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。また、支持体の表面は凹凸面としてもよいし、個々に独立した微小タイル状板を密に配置した表面構造としてもよい。さらに、支持体上には、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよいし、必要に応じて光反射層、光吸収層等を設けてもよい。
【0033】保護層は、輝尽性蛍光体層を物理的にまたは化学的に保護するために設けられるものであり、透光性がよく、シート状に成形できるものが使用される。保護層は、輝尽励起光および/または輝尽発光を効率よく透過するために、広い波長範囲で高い透過率を示すことが望ましく、光透過率は400〜800nmの波長範囲で80%以上が好ましく、特に90%以上が好ましく、また、360〜400nmの波長範囲では60%以上が好ましく、特に80%以上が好ましい。
【0034】そのような材料としては、石英、ホウケイ酸ガラス、化学的強化ガラス等の板ガラスや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の有機高分子化合物が挙げられる。ホウケイ酸ガラスは330nm〜2.6μmの波長範囲で80%以上の光透過率を示し、石英ガラスではさらに短波長においても高い光透過率を示す。さらに、保護層の表面に、MgF2 等の反射防止層を設けると、輝尽励起光および輝尽発光を効率よく透過するとともに、鮮鋭性の低下を小さくする効果もあり好ましい。
【0035】保護層の層厚は、例えば25μm〜5mmであり、良好な防湿性と耐衝撃性を得るためには、100μm〜3mmが好ましい。保護層の透湿度は、放射線画像変換パネルの耐湿性の観点から低いことが望ましく、例えば10〔g/m2 ・24hr〕以下が好ましく、特に1〔g/m2 ・24hr〕以下が好ましい。気密性に優れ、透湿度が実質的に0であり、なおかつ透光性の良いガラスが特に好ましい。
【0036】保護層は、単一層であってもよいし、2種類以上の層からなっていてもよい。例えば第1の保護層(外側)としてガラスを用い、有機高分子層を第2の保護層(内側)として用いてもよい。第2の保護層として、吸湿性の高い有機高分子層、例えばポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体等を用いて、これを第1の保護層の輝尽性蛍光体層側に設ける場合には、封着時に輝尽性蛍光体層に吸着していた水分が第2の保護層によって吸着除去されるようになり、輝尽性蛍光体層の水分による劣化がさらに有効に防止され、放射線画像変換パネルの初期性能がさらに向上する。
【0037】輝尽性蛍光体層は支持体および保護層の両者に接触していてもよいが、輝尽性蛍光体層と保護層との間に低屈折率層を設けることが好ましい。この低屈折率層は外部雰囲気から遮断された状態で存在するものであり、この低屈折率層が存在することにより、鮮鋭性の低下を招かずに保護層の層厚を実質的に厚くすることが可能となり、防湿性および耐久性をさらに向上させることができる。そのような低屈折率層としては、空気、窒素、アルゴン等の不活性な気体からなる層および真空層等の屈折率が実質的に1である層、メチルアルコール(屈折率1.33)、エチルアルコール(屈折率1.36)等の液体からなる層、CaF2 (屈折率1.23〜1.26)、Na3 AlF6(屈折率1.35)、MgF2 (屈折率1.38)、SiO2 (屈折率1.46)等の物質からなる層等が挙げられる。これらの中でも、特に、気体層または真空層からなる低屈折率層が鮮鋭性の低下を防止する効果が高くて好ましい。低屈折率層の層厚は、通常、0.05μm〜3mmが実用的である。
【0038】保護層を輝尽性蛍光体層に対して距離をおいて配設する場合には、支持体と保護層との間に、輝尽性蛍光体層を取囲むスペーサが設けられる。スペーサとしては、輝尽性蛍光体層を外部雰囲気から遮断した状態で保持することができるものであれば特に制限されず、ガラス、セラミックス、金属、プラスチック等が挙げられる。
【0039】図4は本発明の方法により製造された放射線画像変換パネルを用いて構成された放射線画像変換装置の概略を示し、10は放射線発生装置、11は被写体、12は放射線画像変換パネル、13は輝尽励起光源、14は放射線画像変換パネル12より放射された輝尽発光を検出する光電変換装置、15は光電変換装置14で検出された信号を画像として再生する再生装置、16は再生装置15により再生された画像を表示する表示装置、17は輝尽励起光と輝尽発光とを分離し、輝尽発光のみを透過させるフィルターである。
【0040】この放射線画像変換装置においては、放射線発生装置10からの放射線は被写体11を通して放射線画像変換パネル12に入射する。この入射した放射線は放射線画像変換パネル12の輝尽性蛍光体層に吸収され、そのエネルギーが蓄積され、放射線透過像の蓄積像が形成される。次に、この蓄積像を輝尽励起光源13からの輝尽励起光で励起して輝尽発光として放射させる。放射される輝尽発光の強弱は、蓄積された放射線エネルギー量に比例するので、この光信号を例えば光電子増倍管等の光電変換装置14で光電変換し、再生装置15によって画像として再生し、表示装置16によって表示することにより、被写体11の放射線透過像を観察することができる。
【0041】
【実施例】以下、さらに具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例11.1mm厚の結晶化ガラスからなる支持体(400mm×500mm)をエレクトロンビーム法(EB法)を採用した蒸着装置内に設置した。次いで、蒸発源としてプレス成形したアルカリハライド(RbBr)を水冷したルツボに入れた。続いて、蒸着装置内を排気し、5×10-6Torrの真空度とした。次に、支持体を40〜45℃に保持しながら、EBガンに電力を供給して、RbBrを蒸発させた。目的とするRbBr層を得るために、膜厚モニタにより蒸着速度が105 Å/minとなるようにコントロールした。また、EBはルツボの蒸発源表面をラスター状にスキャンさせた。
【0042】RbBr層の層厚が300μmとなったところで蒸着を終了させ、蒸着パネルを得た。この蒸着パネルを付活ドーピング剤粉末(RbBr:10-4Tl)を入れた石英製ルツボに入れ、蓋をした後、600℃で1時間加熱することにより、蒸着パネルのRbBr層中にTlをドープして輝尽性蛍光体層を得た。この輝尽性蛍光体層上に1.1mm厚で線熱膨張係数32.5×10-7/℃のホウケイ酸ガラスからなる保護層(スペーサ上部相当部に砂目処理を施したもの,400mm×500mm)を載置した。次いで、輝尽性蛍光体層の周縁部を封着部材である二液型エポキシ系接着剤(AW−136とHY994,日本チバガイギー(株)製)を用いて封着した。上記接着剤が硬化し、放射線画像変換パネルが密閉されるまで、放射線画像変換パネルを恒温器中に入れて、支持体と保護層の温度を40℃に12時間保持した。かくして図1に示す構造の放射線画像変換パネルを製造した。その後、放射線画像変換パネルを40℃で使用し、放射線画像変換パネルの変化を調べた。結果を後記表1に示す。
【0043】実施例2実施例1において、後記表1に示す条件としたほかは同様にして放射線画像変換パネルを製造し、同様にして評価した。
【0044】実施例3実施例1と同様にして、RbBr蒸着パネルを作製し、Tlをドープした後に、図2に示すように、支持体上に輝尽性蛍光体層を取り囲んで厚さ1.1mmで線熱膨張係数10×10-7/℃の結晶化ガラスからなるスペーサを設け、その上に空隙を介して厚さ1.1mmで線熱膨張係数32.5×10-7/℃のホウケイ酸ガラスからなる保護層(スペーサ上部相当部に砂目処理を施したもの,400mm×500mm)を載置した。保護層とスペーサ、および支持体とスペーサの間には、封着部材である二液型エポキシ系接着剤(AW−136とHY994,日本チバガイギー(株)製)を封着した。接着剤が硬化し、放射線画像変換パネルが密閉されるまでは放射線画像変換パネルを恒温器内に入れて支持体と保護層の温度を40℃に12時間保った。かくして図2に示す構造の放射線画像変換パネルを製造した。その後、放射線画像変換パネルを0℃で使用し、放射線画像変換パネルの変化を調べた。結果を後記表1に示す。
【0045】実施例4,5実施例3において、後記表1に示す条件としたほかは同様にして放射線画像変換パネルを製造し、同様にして評価した。
【0046】実施例6実施例1と同様にして、RbBr蒸着パネルを作製し、Tlをドープした後に、図3に示すように、支持体上に輝尽性蛍光体層を取り囲んで厚さ1.1mmで線熱膨張係数10×10-7/℃の結晶化ガラスからなる二重スペーサを設け、その上に空隙を介して厚さ1.1mmで線熱膨張係数32.5×10-7/℃のホウケイ酸ガラスからなる保護層(スペーサ上部相当部に砂目処理を施したもの,400mm×500mm)を載置した。保護層とスペーサ、および支持体とスペーサの間は、封着部材である二液型エポキシ系接着剤(AW−136とHY994,日本チバガイギー(株)製)により封着した。接着剤が硬化し、放射線画像変換パネルが密閉されるまでは放射線画像変換パネルを恒温器内に入れて支持体と保護層の温度を40℃に12時間保った。かくして図3に示す構造の放射線画像変換パネルを製造した。その後、放射線画像変換パネルを40℃で使用し、放射線画像変換パネルの変化を調べた。結果を後記表1に示す。
【0047】実施例7実施例6において、後記表1に示す条件としたほかは同様にして放射線画像変換パネルを製造し、同様にして評価した。
【0048】比較例1実施例1において、後記表1に示す条件としたほかは同様にして放射線画像変換パネルを製造し、同様にして評価した。
【0049】比較例2実施例3において、後記表1に示す条件としたほかは同様にして放射線画像変換パネルを製造し、同様にして評価した。
【0050】比較例3実施例6において、後記表1に示す条件としたほかは同様にして放射線画像変換パネルを製造し、同様にして評価した。
【0051】
【表1】


【0052】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の製造方法によれば、剥離や割れの生じない放射線画像変換パネルを製造することができる。すなわち、使用温度範囲を0〜60℃と想定すると、60℃に保持した状態で封着部材を硬化させると、剥離や割れを生じない放射線画像変換パネルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により製造される放射線画像変換パネルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の製造方法により製造される放射線画像変換パネルの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の製造方法により製造される放射線画像変換パネルのさらに他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の製造方法により得られた放射線画像変換パネルを用いて構成される放射線画像変換装置の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
1 輝尽性蛍光体層 2 支持体
3 保護層 4 封着部材
5 スペーサ 5A スペーサ
5B スペーサ 6 低屈折率層
10 放射線発生装置 11 被写体
12 放射線画像変換パネル 13 輝尽励起光源
14 光電変換装置 15 再生装置
16 表示装置 17 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体と保護層との間に輝尽性蛍光体層が設けられ、支持体と保護層の周縁部が二重のスペーサを介して封着部材により封着されて当該輝尽性蛍光体層が支持体と保護層との間に封止された構造の放射線画像変換パネルの製造方法において、前記封着部材による封止の際には、支持体、保護層および封着部材を、放射線画像変換パネルの使用時の上限温度の近傍温度に保持した状態で、当該封着部材を硬化させることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3046646号(P3046646)
【登録日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【発行日】平成12年5月29日(2000.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−159928
【出願日】平成3年6月5日(1991.6.5)
【公開番号】特開平4−359199
【公開日】平成4年12月11日(1992.12.11)
【審査請求日】平成10年5月28日(1998.5.28)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【参考文献】
【文献】特開 平2−85799(JP,A)