放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法
【課題】製造上の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性を示す放射線画像変換パネル及び前記放射線画像変換パネルの製造方法の提供。
【解決手段】支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該蛍光体層上に保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0とする。
【解決手段】支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該蛍光体層上に保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線画像を画像化する方法が開発されている。即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0003】
具体的な方法としては、支持体上に輝尽性蛍光体層を儲けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線および赤外線の一方または両方を用いる放射線画像変換方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
より高輝度、高感度の輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換方法として、例えば特開昭59−75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−72087号等に記載されているようなアルカリハライド蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−73786号、61−73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+およびCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体が開発されている。
【0005】
更に近年、診断画像の解析においてより高鮮鋭性の放射線画像変換パネルが要求されている。鮮鋭性改善の為の手段として、例えば形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0006】
これらの試みの1つとして、例えば特開昭61−142497号等において行われている様な、微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0007】
また、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されたような、支持体の面に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載のように、支持体の上面に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0008】
更に、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルが提案されている。(例えば、特許文献2を参照)
最近ではCsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来得られていなかった高いX線変換効率を導き出すことが可能となった。
【0009】
しかしながら、CsBr:Eu蛍光体層を形成するには蒸着方式にて膜形成することが求められる。蒸着膜形成では膜厚分布制御を行うために精度の高い基板−蒸発源の配置をして、物理的な位置を工夫することで高い精度の膜厚分布を実現させている。
【0010】
特にCsBr:EuではEuの熱による拡散が顕著であり、真空下における蒸気圧も高いために離散するなどにより母体中のEuの存在を遍在させる問題があり、蒸着機方法、基板材質が膜の均一性に重要となっている。
【0011】
特に大面積であり、厚膜化し性能を向上させるには基材及び蛍光体層の密着の均一性が重要である。基材表面に樹脂が存在するとその樹脂の製造プロセスにより残留溶媒や揮発性成分が多数存在するために、蛍光体成膜時に揮発成分が発生し真空度を変化させ、膜変動の原因となる。
【0012】
本発明では上記膜変動を抑制するためにdryプロセスを駆使し、基材表面及び蛍光体層更には保護層を形成すること密着性の優れた放射線画像変換パネルを形成することができた。
【0013】
本発明の目的は放射線画像変換パネルとして市場から要求される輝度、鮮鋭性の改善に見合う製造上の均一性に改良を行う点にある。
【特許文献1】米国特許第3,859,527号明細書
【特許文献2】特開平2−58000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、製造上の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性を示す放射線画像変換パネル及び前記放射線画像変換パネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0016】
(請求項1)
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該蛍光体層上に保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0017】
(請求項2)
前記輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
一般式(1)
M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はM1以外のLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる少なくとも一種の三価金属原子であり、X、X′およびX″はF、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、からなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
(請求項3)
前記保護膜の屈折率が1.5〜1.7である保護膜が形成されており、該保護膜の厚さが1〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
【0019】
(請求項4)
前記保護膜を形成後、プレート加熱処理して保護膜表面をレベリング調整することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明による放射線画像変換パネル及び前記放射線画像変換パネルの製造方法は製造上の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性を示し優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該輝尽性蛍光体層上保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする放射線画像変換パネルであり、これらの構成により本発明の目的を達成できたのである。
【0023】
即ち、輝尽性蛍光体層上に保護膜を蒸着プロセスで形成し、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする。
【0024】
上記保護膜としては、本発明においては、特にポリウレア保護膜が好ましい。
【0025】
理由は定かではないが、ポリウレア保護膜を用いた場合、柱状結晶がライトガイド効果をもたらすために結晶間の保護膜を経由した光学的な連続性を防止することができ、全反射条件でのライトガイド効果を得ることができ、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0026】
また、ポリウレア保護膜のイソシアネートとポリアミンの比率、芳香族から脂肪族へ変更することで屈折率を1.2〜2.0まで変化させることが可能である。
【0027】
また、本発明においては、蒸着プロセスにより保護膜を蛍光体層上に設けることを特徴としている。
【0028】
CsBr蛍光体成膜では蒸着プロセスで蛍光体膜形成を行う。輝度鮮鋭性の優れた結晶として柱状結晶を形成してことがポイントである。
【0029】
本発明者らは、光ライトガイド効果を上げるために柱状としては結晶性の良い、先端径数ミクロンで形成された柱状結晶を形成することが望ましい。この柱状結晶は蒸着チャンバー内で真空化で形成を行うと、成膜後大気下の取り出しでは表面に水分を吸着し、性能が低下する問題が有ることを見いだし、性能を高めるために柱状結晶先端径を細くするとより毛細管影響による吸着影響が現れ、この影響を防止するために連続成膜による吸着防止保護膜形成が有効であることを見いだした。
【0030】
ポリイソシアネートとポリアミンの組成比、及び芳香族脂肪族を組み合わせることで屈折率を任意にコントロールすることが可能となり、応力緩和を行いながら透明性を維持することが可能とする。
【0031】
上記膜応力緩和手法として蒸着終了後の加熱手法を通じて緩衝効果がより得られる。
【0032】
本発明に好ましく用いられる、前記一般式(1)において、M1は、Li、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属原子を表し、Rb及びCsから選ばれるアルカリ土類金属原子が好ましく、更に好ましく用いられるのはCsである。
【0033】
M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのは、Y、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びInから選ばれる三価の金属原子である。
【0034】
輝尽性蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′およびX″はF、Cl、BrおよびIから選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子であるが、F、Cl及びBrから選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子が好ましく、更に好ましく用いられるのは、Br及びIから選ばれるハロゲン原子である。
【0035】
また、一般式(1)において、b値は0≦b<0.5であるが、好ましくは、0≦b≦10-2である。
【0036】
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体は、例えば以下に述べる製造方法により製造される。
【0037】
まず蛍光体原料として、以下の組成となるように炭酸塩に酸(HI、HBr、HCl、HF)を加え混合攪拌してた後、中和点にて濾過を行い得られたのちの炉液の水分を蒸発気化させて以下の結晶を作製する。
【0038】
一般式(1)において
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr、CsIのうちの1種もしくは2種以上、
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCI2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2、NiI2のうち1種もしくは2種以上、及び
(c)は、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgから選ばれる金属原子を有する賦活剤原料が用いられる。
【0039】
化学量論的に一般式(I)で示される輝尽性蛍光体において、0≦a<0.5好、ましくは0≦a<0.01、0≦b<0.5、好ましくは0≦b≦10-2、0<e≦0.2、好ましくは0<e≦0.1。
【0040】
上記の数値範囲の混合組成になるように前記(a)〜(c)の蛍光体原料を秤量し、純水にて溶解する。
この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合しても良い。
【0041】
次に、得られた水溶液のpH値を調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0042】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボ或いはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500乃至1000℃が適当である。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、一般には0.5乃至6時間が適当である。焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気或いは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。尚、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば蛍光体の発光輝度を更に高めることができる、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気もしくは中性雰囲気のままで冷却してもよい。また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気もしくは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができる。
【0043】
また、本発明に係る輝尽性蛍光体層は気相成長法(気相堆積法ともいう)によって形成される。
【0044】
輝尽性蛍光体の気相成長法としては蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0045】
第1の方法としての蒸着法においては、まず支持体を蒸着装置内に設置した後装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とする。次いで、前記輝尽性蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。
【0046】
この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0047】
蒸着終了後、必要に応じて前記輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対の側に保護層を設けることにより本発明の放射線画像変換パネルが製造される。尚、保護層上に輝尽性蛍光体層を形成した後、支持体を設ける手順をとってもよい。
【0048】
さらに前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着物(支持体あるいは保護層)を冷却あるいは加熱してもよい。また、蒸着終了後輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法に於いては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性蒸着を行ってもよい。
【0049】
第2の方法としてのスパッタリング法においては、蒸着法と同様に支持体をスパッタリング装置内に設置した後装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、前記支持体表面に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに成長させる。
【0050】
前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0051】
第3の方法としてCVD法がある。また、第4の方法としてイオンプレーティング法がある。
【0052】
また、前記気相成長における輝尽性蛍光体層の成長速度は0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。成長速度が0.05μm/分未満の場合には本発明の放射線画像変換パネルの生産性が低く好ましくない。また成長速度が300μm/分を越える場合には成長速度のコントロールがむずかしく好ましくない。放射線画像変換パネルを、前述の真空蒸着法、スパッタリイング法などにより得る場合には、結着剤が存在しないので輝尽性蛍光体の充填密度を増大でき、感度、解像力の上で好ましい放射線画像変換パネルが得られる。
【0053】
前記輝尽性蛍光体層の乾燥厚みは、放射線画像変換パネルの使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により変化するが、本発明に記載の効果を得る観点から50μm以上の膜厚が必要であり、好ましくは、50μm〜300mmであり、更に好ましくは、100μm〜500μmであり、特に好ましくは、400〜500μmである。
【0054】
上記の気相成長法による輝尽性蛍光体層の作製にあたり、輝尽性蛍光体層が形成される支持体の温度は、100℃以上に設定することが好ましく、更に好ましくは、150℃以上であり、特に好ましくは150℃〜400℃である。
【0055】
本発明の放射線画像変換パネルに係る輝尽性蛍光体層は、支持体上に前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を気相成長させて形成されるが、層形成時に該輝尽性蛍光体が柱状結晶を形成することが好ましい。
【0056】
蒸着、スパッタリング等の方法で柱状の輝尽性蛍光体層を形成するために、前記一般式(1)で表されるような輝尽性蛍光体材料が用いられるが、前記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体が好ましく用いられるが、中でも、CsBr系蛍光体が特に好ましく用いられる。
【0057】
この様にして支持体上に形成した輝尽性蛍光体層は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、輝尽性蛍光体を結着剤中に分散した分散型の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の輝尽性蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0058】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい、これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0059】
高反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属など、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
【0060】
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al2O3、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも一種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも一種である。)、CaCO3、ZnO、Sb2O3、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させうる。
【0061】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
【0062】
また、色材は、有機若しくは無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料があげられる。
【0063】
本発明の放射線パネルに用いる支持体
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられるが、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。
【0064】
これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0065】
また、本発明においては、支持体と輝尽性蛍光体層の接着性を向上させるために、必要に応じて支持体の表面に予め接着層を設けてもよい。これら支持体の厚みは用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜2000μmであり、取り扱い上の観点から、更に好ましいのは80μm〜1000μmである。
【0066】
また、本発明に係る輝尽性蛍光体層は、保護層を有していても良い。
【0067】
画像変換パネルの構成の1例を示す概略図である。
【0068】
図1において21は放射線発生装置、22は被写体、23は輝尽性蛍光体を含有する可視光ないし赤外光輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネル、24は放射線画像変換パネル23の放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、25は放射線画像変換パネル23より放出された輝尽発光を検出する光電変換装置、26は光電変換装置25で検出された光電変換信号を画像として再生する装置、27は再生された画像を表示する装置、28は光源24からの反射光をカットし、放射線画像変換パネル23より放出された光のみを透過させるためのフィルタである。尚、図3は被写体の放射線透過像を得る場合の例であるが、被写体12自体が放射線を放射する場合には、前記放射線発生装置21は特に必要ない。また、光電変換装置25以降は放射線画像変換パネル23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、前記に限定されない。
【0069】
図1に示されるように、被写体22を放射線発生装置21と放射線画像変換パネル23の間に配置し放射線Rを照射すると、放射線Rは被写体22の各部の放射線透過率の変化に従って透過し、その透過像RI(すなわち放射線の強弱の像)が放射線画像変換パネル23に入射する。この入射した透過像RIは放射線画像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収され、これによって輝尽性蛍光体層中に吸収された放射線量に比例した数の電子及び/または正孔が発生し、これが輝尽性蛍光体のトラップレベルに蓄積される。すなわち放射線透過像のエネルギーを蓄積した潜像が形成される。次にこの潜像を光エネルギーで励起して顕在化する。すなわち可視あるいは赤外領域の光を照射する光源24によって輝尽性蛍光体層に照射してトラップレベルに蓄積された電子及び/または正孔を追い出し、蓄積されたエネルギーを輝尽発光として放出せしめる。この放出された輝尽発光の強弱は蓄積された電子及び/または正孔の数、すなわち放射線画像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収された放射線エネルギーの強弱に比例しており、この光信号を例えば光電子増倍管等の光電変換装置25で電気信号に変換し、画像処理装置26によって画像として再生し、画像表示装置27によってこの画像を表示する。画像処理装置26は単に電気信号を画像信号として再生するのみでなく、いわゆる画像処理や画像の演算、画像の記憶、保存等が出来るものを使用するとより有効である。
【0070】
また、光エネルギーで励起する際、輝尽励起光の反射光と輝尽性蛍光体層から放出される輝尽発光とを分離する必要があることと、輝尽性蛍光体層から放出される発光を受光する光電変換器は一般に600nm以下の短波長の光エネルギーに対して感度が高くなるという理由から、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光はできるだけ短波長領域にスペクトル分布を持ったものが望ましい。本発明に係わる輝尽性蛍光体の発光波長域は300〜500nmであり、一方輝尽励起波長域は500〜900nmであるので前記の条件を同時に満たすが、最近、診断装置のダウンサイジング化が進み、放射画像変換パネルの画像読み取りに用いられる励起波長は高出力で且つ、コンパクト化が容易な半導体レーザが好まれ、そのレーザ光の波長は680nmであり、本発明の放射線画像変換パネルに組み込まれた輝尽性蛍光体は、680nmの励起波長を用いた時に、極めて良好な鮮鋭性を示すものである。
【0071】
すなわち、本発明に係わる輝尽性蛍光体はいずれも500nm以下に主ピークを有する発光を示し、輝尽励起光の分離が容易でしかも受光器の分光感度とよく一致するため、効率よく受光できる結果、受像系の感度を固めることができる。
【0072】
輝尽励起光源24としては、放射線画像変換パネル23に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、又、輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率をあげることができ、より好ましい結果が得られる。
【0073】
レーザとしては、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。又、フィルタ28を用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0074】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0075】
フィルタ28としては放射線画像変換パネル23から放射される輝尽発光を透過し、輝尽励起光をカットするものであるから、これは放射線画像変換パネル23に含有する輝尽性蛍光体の輝尽発光波長と輝尽励起光源24の波長の組合わせによって決定される。
【0076】
例えば、輝尽励起波長が500〜900nmで輝尽発光波長が300〜500nmにあるような実用上好ましい組合わせの場合、フィルタとしては例えば東芝社製C−39、C−40、V−40、V−42、V−44、コーニング社製7−54、7−59、スペクトロフィルム社製BG−1、BG−3、BG−25、BG−37、BG−38等の紫〜青色ガラスフィルタを用いることができる。又、干渉フィルタを用いると、ある程度、任意の特性のフィルタを選択して使用できる。光電変換装置25としては、光電管、光電子倍増管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、光導電素子等光量の変化を電子信号の変化に変換し得るものなら何れでもよい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0078】
実施例
《放射線画像変換パネル試料1〜8(実施例1〜8)の作製》
表1に示した条件で、1mm厚の結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)支持体の表面に図2で示した蒸着装置(但し、θ1=5度、θ2=5度に設定する)を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0079】
図2に示した蒸着装置においては、アルミニウム製のスリットを用い、支持体とスリットとの距離dを60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら蒸着を行ない、輝尽性蛍光体層の厚みが300μmになるように調整した。
【0080】
尚、蒸着にあたっては、前記支持体を蒸着器内に設置し、次いで、蛍光体原料(CsBr:Eu)を蒸着源としてプレス成形し水冷したルツボにいれた。
【0081】
その後、蒸着器内を一旦排気し、その後N2ガスを導入し0.133Paに真空度を調整した後、支持体の温度(基板温度ともいう)を約350℃に保持しながら、蒸着した。
【0082】
輝尽性蛍光体層の膜厚が300μmとなったところで蒸着を終了させ、次いで、この蛍光体層を温度400℃で加熱処理した。
【0083】
その後、蛍光体層上に表1に記載の屈折率になるように前記蒸着装置を用いて透明保護膜を形成した。
【0084】
実施例1〜3ではポリアミンにMDA(メチレンジアミン)を用い、ポリイソシアネートを所定の屈折率になるように炭素数7〜14の脂肪族イソシアネートの中から選定、調整した。
【0085】
実施例4〜8では脂肪族ポリアミンHMDA(ヘキサメチレンジアミン)を用い、ポリイソシアネートを所定の屈折率になるように炭素数7〜14の脂肪族イソシアネートの中から選定、調整した。また実施例7ではシリコン系骨格を有するイソシアネートを用い、調整した。表1中に透明保護膜形成後のプレート熱処理温度を記載した。
【0086】
《鮮鋭性評価》
放射線画像変換パネル試料の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。
【0087】
MTFは、放射線画像変換パネル試料にCTFチャートを貼賦した後、放射線画像変換パネル試料に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。表の値は、2.0lp/mmのMTF値。
【0088】
《輝度、輝度分布の評価》
輝度はコニカミノルタ(株)製Regius350を用いて評価を行った。
【0089】
鮮鋭性評価と同様にX線をタングステン管球にて80kVp、10mAsで爆射線源とプレート間距離2mで照射した後、Regius350にプレートを設置して読みとった。得られたフォトマルからの電気信号を元に相対評価を行った。試料2の輝度1.0とし、後はその相対値で表した。
【0090】
撮影された面内のフォトマルからの電気信号分布を相対評価し、標準偏差を求め、それぞれ各試料の輝度分布(S.D)とした。
【0091】
上記の各々の評価が良好であると賦活剤が均一に蛍光体母体結晶内部に含有されている。
【0092】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の放射線像変換パネルの構成の一例を示す概略図。
【図2】蒸着により支持体上に輝尽性蛍光体層を作製する方法の一例を示す概略図。
【符号の説明】
【0094】
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層
13 柱状結晶
14 柱状結晶間に形成された間隙
15 支持体ホルダ
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 該変換パネルにより放射された輝尽蛍光を検出する光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線画像を画像化する方法が開発されている。即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0003】
具体的な方法としては、支持体上に輝尽性蛍光体層を儲けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線および赤外線の一方または両方を用いる放射線画像変換方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
より高輝度、高感度の輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換方法として、例えば特開昭59−75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−72087号等に記載されているようなアルカリハライド蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−73786号、61−73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+およびCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体が開発されている。
【0005】
更に近年、診断画像の解析においてより高鮮鋭性の放射線画像変換パネルが要求されている。鮮鋭性改善の為の手段として、例えば形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0006】
これらの試みの1つとして、例えば特開昭61−142497号等において行われている様な、微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0007】
また、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されたような、支持体の面に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載のように、支持体の上面に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0008】
更に、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルが提案されている。(例えば、特許文献2を参照)
最近ではCsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来得られていなかった高いX線変換効率を導き出すことが可能となった。
【0009】
しかしながら、CsBr:Eu蛍光体層を形成するには蒸着方式にて膜形成することが求められる。蒸着膜形成では膜厚分布制御を行うために精度の高い基板−蒸発源の配置をして、物理的な位置を工夫することで高い精度の膜厚分布を実現させている。
【0010】
特にCsBr:EuではEuの熱による拡散が顕著であり、真空下における蒸気圧も高いために離散するなどにより母体中のEuの存在を遍在させる問題があり、蒸着機方法、基板材質が膜の均一性に重要となっている。
【0011】
特に大面積であり、厚膜化し性能を向上させるには基材及び蛍光体層の密着の均一性が重要である。基材表面に樹脂が存在するとその樹脂の製造プロセスにより残留溶媒や揮発性成分が多数存在するために、蛍光体成膜時に揮発成分が発生し真空度を変化させ、膜変動の原因となる。
【0012】
本発明では上記膜変動を抑制するためにdryプロセスを駆使し、基材表面及び蛍光体層更には保護層を形成すること密着性の優れた放射線画像変換パネルを形成することができた。
【0013】
本発明の目的は放射線画像変換パネルとして市場から要求される輝度、鮮鋭性の改善に見合う製造上の均一性に改良を行う点にある。
【特許文献1】米国特許第3,859,527号明細書
【特許文献2】特開平2−58000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、製造上の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性を示す放射線画像変換パネル及び前記放射線画像変換パネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0016】
(請求項1)
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該蛍光体層上に保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0017】
(請求項2)
前記輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
一般式(1)
M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はM1以外のLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる少なくとも一種の三価金属原子であり、X、X′およびX″はF、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、からなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
(請求項3)
前記保護膜の屈折率が1.5〜1.7である保護膜が形成されており、該保護膜の厚さが1〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
【0019】
(請求項4)
前記保護膜を形成後、プレート加熱処理して保護膜表面をレベリング調整することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明による放射線画像変換パネル及び前記放射線画像変換パネルの製造方法は製造上の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性を示し優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該輝尽性蛍光体層上保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする放射線画像変換パネルであり、これらの構成により本発明の目的を達成できたのである。
【0023】
即ち、輝尽性蛍光体層上に保護膜を蒸着プロセスで形成し、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする。
【0024】
上記保護膜としては、本発明においては、特にポリウレア保護膜が好ましい。
【0025】
理由は定かではないが、ポリウレア保護膜を用いた場合、柱状結晶がライトガイド効果をもたらすために結晶間の保護膜を経由した光学的な連続性を防止することができ、全反射条件でのライトガイド効果を得ることができ、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0026】
また、ポリウレア保護膜のイソシアネートとポリアミンの比率、芳香族から脂肪族へ変更することで屈折率を1.2〜2.0まで変化させることが可能である。
【0027】
また、本発明においては、蒸着プロセスにより保護膜を蛍光体層上に設けることを特徴としている。
【0028】
CsBr蛍光体成膜では蒸着プロセスで蛍光体膜形成を行う。輝度鮮鋭性の優れた結晶として柱状結晶を形成してことがポイントである。
【0029】
本発明者らは、光ライトガイド効果を上げるために柱状としては結晶性の良い、先端径数ミクロンで形成された柱状結晶を形成することが望ましい。この柱状結晶は蒸着チャンバー内で真空化で形成を行うと、成膜後大気下の取り出しでは表面に水分を吸着し、性能が低下する問題が有ることを見いだし、性能を高めるために柱状結晶先端径を細くするとより毛細管影響による吸着影響が現れ、この影響を防止するために連続成膜による吸着防止保護膜形成が有効であることを見いだした。
【0030】
ポリイソシアネートとポリアミンの組成比、及び芳香族脂肪族を組み合わせることで屈折率を任意にコントロールすることが可能となり、応力緩和を行いながら透明性を維持することが可能とする。
【0031】
上記膜応力緩和手法として蒸着終了後の加熱手法を通じて緩衝効果がより得られる。
【0032】
本発明に好ましく用いられる、前記一般式(1)において、M1は、Li、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属原子を表し、Rb及びCsから選ばれるアルカリ土類金属原子が好ましく、更に好ましく用いられるのはCsである。
【0033】
M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのは、Y、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びInから選ばれる三価の金属原子である。
【0034】
輝尽性蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′およびX″はF、Cl、BrおよびIから選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子であるが、F、Cl及びBrから選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子が好ましく、更に好ましく用いられるのは、Br及びIから選ばれるハロゲン原子である。
【0035】
また、一般式(1)において、b値は0≦b<0.5であるが、好ましくは、0≦b≦10-2である。
【0036】
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体は、例えば以下に述べる製造方法により製造される。
【0037】
まず蛍光体原料として、以下の組成となるように炭酸塩に酸(HI、HBr、HCl、HF)を加え混合攪拌してた後、中和点にて濾過を行い得られたのちの炉液の水分を蒸発気化させて以下の結晶を作製する。
【0038】
一般式(1)において
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr、CsIのうちの1種もしくは2種以上、
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCI2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2、NiI2のうち1種もしくは2種以上、及び
(c)は、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgから選ばれる金属原子を有する賦活剤原料が用いられる。
【0039】
化学量論的に一般式(I)で示される輝尽性蛍光体において、0≦a<0.5好、ましくは0≦a<0.01、0≦b<0.5、好ましくは0≦b≦10-2、0<e≦0.2、好ましくは0<e≦0.1。
【0040】
上記の数値範囲の混合組成になるように前記(a)〜(c)の蛍光体原料を秤量し、純水にて溶解する。
この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合しても良い。
【0041】
次に、得られた水溶液のpH値を調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0042】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボ或いはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500乃至1000℃が適当である。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、一般には0.5乃至6時間が適当である。焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気或いは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。尚、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば蛍光体の発光輝度を更に高めることができる、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気もしくは中性雰囲気のままで冷却してもよい。また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気もしくは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができる。
【0043】
また、本発明に係る輝尽性蛍光体層は気相成長法(気相堆積法ともいう)によって形成される。
【0044】
輝尽性蛍光体の気相成長法としては蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0045】
第1の方法としての蒸着法においては、まず支持体を蒸着装置内に設置した後装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とする。次いで、前記輝尽性蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。
【0046】
この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0047】
蒸着終了後、必要に応じて前記輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対の側に保護層を設けることにより本発明の放射線画像変換パネルが製造される。尚、保護層上に輝尽性蛍光体層を形成した後、支持体を設ける手順をとってもよい。
【0048】
さらに前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着物(支持体あるいは保護層)を冷却あるいは加熱してもよい。また、蒸着終了後輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法に於いては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性蒸着を行ってもよい。
【0049】
第2の方法としてのスパッタリング法においては、蒸着法と同様に支持体をスパッタリング装置内に設置した後装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、前記支持体表面に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに成長させる。
【0050】
前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0051】
第3の方法としてCVD法がある。また、第4の方法としてイオンプレーティング法がある。
【0052】
また、前記気相成長における輝尽性蛍光体層の成長速度は0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。成長速度が0.05μm/分未満の場合には本発明の放射線画像変換パネルの生産性が低く好ましくない。また成長速度が300μm/分を越える場合には成長速度のコントロールがむずかしく好ましくない。放射線画像変換パネルを、前述の真空蒸着法、スパッタリイング法などにより得る場合には、結着剤が存在しないので輝尽性蛍光体の充填密度を増大でき、感度、解像力の上で好ましい放射線画像変換パネルが得られる。
【0053】
前記輝尽性蛍光体層の乾燥厚みは、放射線画像変換パネルの使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により変化するが、本発明に記載の効果を得る観点から50μm以上の膜厚が必要であり、好ましくは、50μm〜300mmであり、更に好ましくは、100μm〜500μmであり、特に好ましくは、400〜500μmである。
【0054】
上記の気相成長法による輝尽性蛍光体層の作製にあたり、輝尽性蛍光体層が形成される支持体の温度は、100℃以上に設定することが好ましく、更に好ましくは、150℃以上であり、特に好ましくは150℃〜400℃である。
【0055】
本発明の放射線画像変換パネルに係る輝尽性蛍光体層は、支持体上に前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を気相成長させて形成されるが、層形成時に該輝尽性蛍光体が柱状結晶を形成することが好ましい。
【0056】
蒸着、スパッタリング等の方法で柱状の輝尽性蛍光体層を形成するために、前記一般式(1)で表されるような輝尽性蛍光体材料が用いられるが、前記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体が好ましく用いられるが、中でも、CsBr系蛍光体が特に好ましく用いられる。
【0057】
この様にして支持体上に形成した輝尽性蛍光体層は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、輝尽性蛍光体を結着剤中に分散した分散型の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の輝尽性蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0058】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい、これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0059】
高反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属など、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
【0060】
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al2O3、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも一種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも一種である。)、CaCO3、ZnO、Sb2O3、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させうる。
【0061】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
【0062】
また、色材は、有機若しくは無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料があげられる。
【0063】
本発明の放射線パネルに用いる支持体
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられるが、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。
【0064】
これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0065】
また、本発明においては、支持体と輝尽性蛍光体層の接着性を向上させるために、必要に応じて支持体の表面に予め接着層を設けてもよい。これら支持体の厚みは用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜2000μmであり、取り扱い上の観点から、更に好ましいのは80μm〜1000μmである。
【0066】
また、本発明に係る輝尽性蛍光体層は、保護層を有していても良い。
【0067】
画像変換パネルの構成の1例を示す概略図である。
【0068】
図1において21は放射線発生装置、22は被写体、23は輝尽性蛍光体を含有する可視光ないし赤外光輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネル、24は放射線画像変換パネル23の放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、25は放射線画像変換パネル23より放出された輝尽発光を検出する光電変換装置、26は光電変換装置25で検出された光電変換信号を画像として再生する装置、27は再生された画像を表示する装置、28は光源24からの反射光をカットし、放射線画像変換パネル23より放出された光のみを透過させるためのフィルタである。尚、図3は被写体の放射線透過像を得る場合の例であるが、被写体12自体が放射線を放射する場合には、前記放射線発生装置21は特に必要ない。また、光電変換装置25以降は放射線画像変換パネル23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、前記に限定されない。
【0069】
図1に示されるように、被写体22を放射線発生装置21と放射線画像変換パネル23の間に配置し放射線Rを照射すると、放射線Rは被写体22の各部の放射線透過率の変化に従って透過し、その透過像RI(すなわち放射線の強弱の像)が放射線画像変換パネル23に入射する。この入射した透過像RIは放射線画像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収され、これによって輝尽性蛍光体層中に吸収された放射線量に比例した数の電子及び/または正孔が発生し、これが輝尽性蛍光体のトラップレベルに蓄積される。すなわち放射線透過像のエネルギーを蓄積した潜像が形成される。次にこの潜像を光エネルギーで励起して顕在化する。すなわち可視あるいは赤外領域の光を照射する光源24によって輝尽性蛍光体層に照射してトラップレベルに蓄積された電子及び/または正孔を追い出し、蓄積されたエネルギーを輝尽発光として放出せしめる。この放出された輝尽発光の強弱は蓄積された電子及び/または正孔の数、すなわち放射線画像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収された放射線エネルギーの強弱に比例しており、この光信号を例えば光電子増倍管等の光電変換装置25で電気信号に変換し、画像処理装置26によって画像として再生し、画像表示装置27によってこの画像を表示する。画像処理装置26は単に電気信号を画像信号として再生するのみでなく、いわゆる画像処理や画像の演算、画像の記憶、保存等が出来るものを使用するとより有効である。
【0070】
また、光エネルギーで励起する際、輝尽励起光の反射光と輝尽性蛍光体層から放出される輝尽発光とを分離する必要があることと、輝尽性蛍光体層から放出される発光を受光する光電変換器は一般に600nm以下の短波長の光エネルギーに対して感度が高くなるという理由から、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光はできるだけ短波長領域にスペクトル分布を持ったものが望ましい。本発明に係わる輝尽性蛍光体の発光波長域は300〜500nmであり、一方輝尽励起波長域は500〜900nmであるので前記の条件を同時に満たすが、最近、診断装置のダウンサイジング化が進み、放射画像変換パネルの画像読み取りに用いられる励起波長は高出力で且つ、コンパクト化が容易な半導体レーザが好まれ、そのレーザ光の波長は680nmであり、本発明の放射線画像変換パネルに組み込まれた輝尽性蛍光体は、680nmの励起波長を用いた時に、極めて良好な鮮鋭性を示すものである。
【0071】
すなわち、本発明に係わる輝尽性蛍光体はいずれも500nm以下に主ピークを有する発光を示し、輝尽励起光の分離が容易でしかも受光器の分光感度とよく一致するため、効率よく受光できる結果、受像系の感度を固めることができる。
【0072】
輝尽励起光源24としては、放射線画像変換パネル23に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、又、輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率をあげることができ、より好ましい結果が得られる。
【0073】
レーザとしては、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。又、フィルタ28を用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0074】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0075】
フィルタ28としては放射線画像変換パネル23から放射される輝尽発光を透過し、輝尽励起光をカットするものであるから、これは放射線画像変換パネル23に含有する輝尽性蛍光体の輝尽発光波長と輝尽励起光源24の波長の組合わせによって決定される。
【0076】
例えば、輝尽励起波長が500〜900nmで輝尽発光波長が300〜500nmにあるような実用上好ましい組合わせの場合、フィルタとしては例えば東芝社製C−39、C−40、V−40、V−42、V−44、コーニング社製7−54、7−59、スペクトロフィルム社製BG−1、BG−3、BG−25、BG−37、BG−38等の紫〜青色ガラスフィルタを用いることができる。又、干渉フィルタを用いると、ある程度、任意の特性のフィルタを選択して使用できる。光電変換装置25としては、光電管、光電子倍増管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、光導電素子等光量の変化を電子信号の変化に変換し得るものなら何れでもよい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0078】
実施例
《放射線画像変換パネル試料1〜8(実施例1〜8)の作製》
表1に示した条件で、1mm厚の結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)支持体の表面に図2で示した蒸着装置(但し、θ1=5度、θ2=5度に設定する)を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0079】
図2に示した蒸着装置においては、アルミニウム製のスリットを用い、支持体とスリットとの距離dを60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら蒸着を行ない、輝尽性蛍光体層の厚みが300μmになるように調整した。
【0080】
尚、蒸着にあたっては、前記支持体を蒸着器内に設置し、次いで、蛍光体原料(CsBr:Eu)を蒸着源としてプレス成形し水冷したルツボにいれた。
【0081】
その後、蒸着器内を一旦排気し、その後N2ガスを導入し0.133Paに真空度を調整した後、支持体の温度(基板温度ともいう)を約350℃に保持しながら、蒸着した。
【0082】
輝尽性蛍光体層の膜厚が300μmとなったところで蒸着を終了させ、次いで、この蛍光体層を温度400℃で加熱処理した。
【0083】
その後、蛍光体層上に表1に記載の屈折率になるように前記蒸着装置を用いて透明保護膜を形成した。
【0084】
実施例1〜3ではポリアミンにMDA(メチレンジアミン)を用い、ポリイソシアネートを所定の屈折率になるように炭素数7〜14の脂肪族イソシアネートの中から選定、調整した。
【0085】
実施例4〜8では脂肪族ポリアミンHMDA(ヘキサメチレンジアミン)を用い、ポリイソシアネートを所定の屈折率になるように炭素数7〜14の脂肪族イソシアネートの中から選定、調整した。また実施例7ではシリコン系骨格を有するイソシアネートを用い、調整した。表1中に透明保護膜形成後のプレート熱処理温度を記載した。
【0086】
《鮮鋭性評価》
放射線画像変換パネル試料の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。
【0087】
MTFは、放射線画像変換パネル試料にCTFチャートを貼賦した後、放射線画像変換パネル試料に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。表の値は、2.0lp/mmのMTF値。
【0088】
《輝度、輝度分布の評価》
輝度はコニカミノルタ(株)製Regius350を用いて評価を行った。
【0089】
鮮鋭性評価と同様にX線をタングステン管球にて80kVp、10mAsで爆射線源とプレート間距離2mで照射した後、Regius350にプレートを設置して読みとった。得られたフォトマルからの電気信号を元に相対評価を行った。試料2の輝度1.0とし、後はその相対値で表した。
【0090】
撮影された面内のフォトマルからの電気信号分布を相対評価し、標準偏差を求め、それぞれ各試料の輝度分布(S.D)とした。
【0091】
上記の各々の評価が良好であると賦活剤が均一に蛍光体母体結晶内部に含有されている。
【0092】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の放射線像変換パネルの構成の一例を示す概略図。
【図2】蒸着により支持体上に輝尽性蛍光体層を作製する方法の一例を示す概略図。
【符号の説明】
【0094】
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層
13 柱状結晶
14 柱状結晶間に形成された間隙
15 支持体ホルダ
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 該変換パネルにより放射された輝尽蛍光を検出する光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該蛍光体層上に保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項2】
前記輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(1)
M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はM1以外のLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる少なくとも一種の三価金属原子であり、X、X′およびX″はF、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、からなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
【請求項3】
前記保護膜の屈折率が1.5〜1.7である保護膜が形成されており、該保護膜の厚さが1〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項4】
前記保護膜を形成後、プレート加熱処理して保護膜表面をレベリング調整することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項1】
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の該輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該蛍光体層上に保護膜が蒸着プロセスで形成されており、該蛍光体層上保護膜の屈折率が1.2〜2.0であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項2】
前記輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(1)
M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はM1以外のLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる少なくとも一種の三価金属原子であり、X、X′およびX″はF、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、からなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
【請求項3】
前記保護膜の屈折率が1.5〜1.7である保護膜が形成されており、該保護膜の厚さが1〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項4】
前記保護膜を形成後、プレート加熱処理して保護膜表面をレベリング調整することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2006−153475(P2006−153475A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340250(P2004−340250)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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