放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置
【課題】放射線の非照射時に放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を誤検出した場合に、放射線技師がそのような放射線画像撮影装置に対して放射線を照射することを的確に回避することが可能な放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】放射線画像撮影システム50は、装置自体で放射線の照射開始を検出することが可能な放射線画像撮影装置1と、放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52を制御する放射線発生装置55と、報知手段58a、71を備える報知装置58、70とを備え、放射線画像撮影装置1の制御手段は、放射線の照射が開始されたことを検出すると報知装置58、70に放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信し、報知装置58、70は検出信号を受信すると、報知手段58a、71を介して放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知する。
【解決手段】放射線画像撮影システム50は、装置自体で放射線の照射開始を検出することが可能な放射線画像撮影装置1と、放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52を制御する放射線発生装置55と、報知手段58a、71を備える報知装置58、70とを備え、放射線画像撮影装置1の制御手段は、放射線の照射が開始されたことを検出すると報知装置58、70に放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信し、報知装置58、70は検出信号を受信すると、報知手段58a、71を介して放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線の照射開始を検出可能な放射線画像撮影装置およびそれを備える放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図5等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。
【0005】
そして、放射線画像撮影が行われる際には、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(後述する図5参照)から各走査線5にオフ電圧が印加され、各TFT8がオフ状態とされて、電荷蓄積状態に移行する。そして、この状態で、放射線源から放射線画像撮影装置に被写体を介して放射線が照射される。すると、放射線の照射により放射線画像撮影装置の各放射線検出素子7内で電荷が発生して各放射線検出素子7内にそれぞれ蓄積される。
【0006】
そして、放射線の照射後、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧が順次印加されて、各放射線検出素子7から電荷が読み出され、読み出し回路17で電荷が電荷電圧変換されて画像データDとして読み出される。放射線画像撮影装置では、このようにして各放射線検出素子7から画像データDが読み出される。
【0007】
このような放射線画像撮影を実現する方法としては、従来から、放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、放射線画像撮影装置との間で信号等のやり取りを行いながら両者が連携して撮影を行うように構成される場合が多かった。
【0008】
この場合、放射線技師が、放射線発生装置の曝射スイッチを操作すると、放射線発生装置から放射線画像撮影装置に照射開始信号が送信され、放射線画像撮影装置は、それまで行っていた例えば各放射線検出素子7のリセット処理を停止して、上記のように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから各走査線5にオフ電圧を印加して、各TFT8をオフ状態とする。
【0009】
そして、放射線画像撮影装置から放射線発生装置にインターロック解除信号が送信されると、放射線画像撮影装置の放射線源から放射線画像撮影装置に放射線が照射される。すると、上記のように、放射線の照射により放射線画像撮影装置の各放射線検出素子7内で電荷が発生し、その後、各放射線検出素子7からこれらの電荷が画像データDとして読み出される。
【0010】
しかし、放射線画像撮影装置と放射線発生装置の製造元が同じであれば、上記のようにして放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行いながら撮影を行うようにシステムを構築することが可能であるが、両者の製造元が異なっているような場合には、両者の間で信号等のやり取りを必ずしも的確に行うことができない場合がある。
【0011】
そのため、このような場合には、放射線画像撮影装置が、放射線発生装置からの信号等によらず、自ら放射線の照射が開始されたことを検出することが必要となる。そして、例えば特許文献4に記載された検出方法や、後述する本発明者らによって新たに見出された検出方法によって、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2009−219538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記のような検出方法では、通常、放射線が照射されると放射線画像撮影装置内で読み出されるデータや電流値等の値が大きくなることを利用して放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されるが、その一方で、本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置に何らかの衝撃や圧力が加わると、上記のデータや電流値等の値が大きくなることが分かってきた。
【0014】
そのため、上記のように、放射線画像撮影装置における放射線の照射開始の検出処理時に、放射線画像撮影装置に衝撃や圧力が加わると、放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されていないにもかかわらず、放射線の照射が開始されたと判断されて誤検出が生じる場合がある。
【0015】
また、放射線画像撮影装置では、放射線の照射開始を検出すると、上記のように、電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理、およびその後のオフセットデータOの読み出し処理や画像データD等の送信処理等が自動的に行われるように構成されている場合が少なくない。
【0016】
そのような場合に、上記のような誤検出が生じると、放射線画像撮影装置では、自動的に電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理等が行われるが、放射線画像撮影装置がそのような処理を行っていることを知らない放射線技師が放射線画像撮影装置に放射線を照射させると、読み出される画像データDは、被写体が撮影されていないか、或いは異常な画像が撮影されているものにしかならない。
【0017】
そのため、このような場合、通常、再撮影が必要になり、被写体である患者の身体に再度放射線を照射することが必要になる。そのため、被写体である患者の身体への被曝線量が増大してしまうといった問題が生じる虞れがあった。
【0018】
そして、それを回避するためには、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させようとしている放射線画像技師が、放射線画像撮影装置が誤検出したことを認識することができるように構成されることが望まれる。このように構成すれば、放射線技師は、誤検出を認識して、このまま放射線を照射しても正常な画像データDを得ることができない状態にある放射線画像撮影装置に対して放射線を照射することを回避することになる。
【0019】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線の非照射時に放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を誤検出した場合に、放射線技師がそのような放射線画像撮影装置に対して放射線を照射することを的確に回避することが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【0020】
そして、放射線画像撮影装置が誤検出したことを認識した放射線技師が、放射線画像撮影装置における各処理を停止させ、放射線の照射開始の検出処理に戻すように構成すれば、放射線画像撮影装置が電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理、オフセットデータOの読み出し処理等の各処理を終了するまで待たずに、次の撮影動作に移ることが可能となれば、放射線画像撮影の一連の処理を速やかに終了させることが可能となる。
【0021】
そのため、放射線画像撮影システムや放射線画像撮影装置が放射線技師にとって使い勝手がよいものとなるとともに、被写体である患者にとっても次の撮影まで長い時間待つ必要がなくなるため、患者にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0022】
そこで、本発明は、放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を誤検出した場合に、速やかに放射線の照射開始の検出処理を行う状態に戻すことが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムや放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
報知手段を備える報知装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、前記報知装置に放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信し、
前記報知装置は、前記放射線画像撮影装置からの前記検出信号を受信すると、前記報知手段を介して、前記放射線画像撮影装置により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、放射線技師は、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させたために放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち正常な検出)、或いは、放射線を照射していないにもかかわらず放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち誤検出)を的確に認識することが可能となる。
【0026】
そして、放射線技師が、放射線画像撮影装置が放射線の非照射時に放射線の照射開始を誤検出したと判断した場合に、そのような放射線画像撮影装置に対して放射線を照射しないようにすることで、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されることを的確に回避することが可能となる。
【0027】
また、そのため、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置に対して放射線を照射しても再撮影が必要になり、再度、放射線が照射されることにより、被写体である患者の身体への被曝線量が増大することを的確に防止することが可能となる。
【0028】
さらに、放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を誤検出した場合に、放射線画像撮影装置における各処理を停止させ、速やかに放射線の照射開始の検出処理に戻すように構成することで、誤検出により放射線画像撮影装置で行われる各処理が終了するまで待たずに、次の撮影動作に移ることが可能となる。そのため、放射線画像撮影の一連の処理を速やかに終了させることが可能となるとともに、被写体である患者にとっても次の撮影まで長い時間待つ必要がなくなるため、患者にかかる負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置のコネクターにケーブルのコネクターを接続した状態を表す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】(A)フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図であり、(B)基板の裏面側におけるフレキシブル回路基板の接続部の拡大断面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図13】TFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図14】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】検出方法1において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図17】読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図18】検出方法2において放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データの読み出し処理が繰り返し行われる際の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図19】放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングおよびオン時間ΔTを表すタイミングチャートである。
【図20】検出方法2において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図21】検出部が4つの領域に分割され、各領域に読み出しICがそれぞれ割り当てられた状態を表す図である。
【図22】短周期のリセット処理において各走査線にオン電圧を印加するタイミングを説明するタイミングチャートである。
【図23】携帯端末とコンソールと放射線画像撮影装置との間で行われる通信やデータの送信等のシーケンスの例を表すシーケンス図である。
【図24】図12の放射線画像撮影システムにおいて放射線技師が携帯端末を携帯する状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0032】
[放射線画像撮影装置]
以下、まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成等について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0033】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0034】
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部のコンソール58(後述する図11や図12参照)等の装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
【0035】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
【0036】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に、放射線を遮蔽する鉛等の遮蔽板(図2では図示省略。後述する図6(B)における遮蔽板42参照)を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0037】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0038】
また、本実施形態では、基板4は、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0039】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0040】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0041】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0042】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0043】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0044】
図4に示すように、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0045】
各入出力端子11には、図6(A)に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0046】
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6(A)では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0047】
図6(B)に、センサーパネルSPの基板4の裏面4b側におけるフレキシブル回路基板12の接続部の拡大断面図を示す。放射線画像撮影装置によっては、図6(B)に示すように、基板4と基台31との間に介在する鉛等の遮蔽板42が基板4等の端部まで延設されておらず、基板4の端部部分では、基板4と基台31との間が空隙とされていたり、接着剤43が充填されている構造とされている場合がある。
【0048】
このような構成では、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1や図2等参照)から放射線が入射した場合、放射線が、遮蔽板42により遮蔽されず、基板4や基台31等を透過して、フレキシブル回路基板12に組み込まれた読み出しIC16やゲートIC15c等のチップに照射される。
【0049】
本発明者らの研究では、特に、放射線画像撮影が繰り返されてゲートIC15cに対する放射線の照射が繰り返されると、経年的にゲートIC15cが劣化し、劣化したゲートIC15cに接続されている各走査線5にそれぞれ接続されている各放射線検出素子7から読み出される画像データD等にある程度のオフセット値が重畳される状態になることが分かっている。
【0050】
このように、各放射線検出素子7から読み出される画像データDにオフセット値が重畳されても、後述するように、放射線画像撮影装置1では、各放射線検出素子7ごとにオフセットデータOが読み出され、これらのオフセットデータOにも同じオフセット値が重畳される。
【0051】
そのため、後述するように、各放射線検出素子7ごとに画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出すれば、画像データD中とオフセットデータO中のオフセット値が相殺されるため、真の画像データD*中にはこのオフセット値が重畳されていない状態になる。そのため、画像データD等に基づいて放射線画像Iを生成する際には、ゲートIC15cの劣化によりデータにオフセット値が重畳されてもあまり問題にはならない。
【0052】
しかし、後述するように、本実施形態では、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、その際、放射線画像撮影前に、リークデータdleak(後述する検出方法1参照)等の読み出し処理を行うように構成される。そして、読み出したリークデータdleak等が閾値dleak_th等を越えた場合に、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成される。
【0053】
その際に、上記のように、読み出されるリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdに、ゲートIC15cの劣化によるオフセット値が重畳されてしまうと、読み出されたリークデータdleak等がゆらいだ場合に閾値dleak_thを越え易くなり、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないにもかかわらず放射線の照射開始を誤検出し易くなるといった問題が生じる。
【0054】
そこで、本実施形態では、図6(B)に示すように、本実施形態では緩衝材44を介してセンサーパネルSPの基台31の裏面に取り付けられる、電子部品32等が配設されたPCB基板33に鉛等の遮蔽板45を設けるようになっている。
【0055】
本実施形態では、PCB基板33は、リジッド基板33a上(この場合の「上」は図6(B)における下方を指す。)に回路等が設けられた内層33bが形成され、内層33b上にレジスト層33cが形成され、レジスト層33cに電子部品32や入出力端子33d、図示しない配線パターン等が配設されている。そして、本実施形態では、PCB基板33側の各入出力端子33dに対しても、上記の基板4上に形成された各入出力端子11(図6(A)参照)に接続する場合と同様にして、フレキシブル回路基板12が接続されている。
【0056】
そして、その際、遮蔽板45は、フレキシブル回路基板12上の少なくともゲートIC15cに放射線が到達しないように遮蔽することが可能なPCB基板33の位置に設けられるようになっている。本実施形態では、図6(B)に示すように、遮蔽板45は、PCB基板33のリジッド基板33aとレジスト層33cとの間に介在する内層33bと同一の層に設けられている。
【0057】
このように、PCB基板33に遮蔽板45を設けることにより、放射線が繰り返し照射されることによりゲートIC15cが経年劣化することを的確に防止することが可能となる。そのため、後述する検出方法1や検出方法2等を採用して放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するように構成する場合に、上記のようにしてゲートIC15cの経年劣化により放射線の照射開始を誤検出し易くなる事態が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0058】
また、このように、PCB基板33に遮蔽板45を設けることにより、例えば上記のようにセンサーパネルSPの基板4の端部まで鉛等の遮蔽板42が延設されておらず、フレキシブル回路基板12上のゲートIC15cに、照射された放射線が到達してしまうように構成されている場合でも、基板4や基台31等に、遮蔽板45が設けられたPCB基板33を取り付けるだけでゲートIC15cを放射線から的確に遮蔽することが可能となり、ゲートIC15cの遮蔽を簡単かつ的確に行うことが可能となる。
【0059】
なお、フレキシブル回路基板12上の読み出しIC16(図6(A)等参照)に対しても、放射線が到達しないように遮蔽するPCB基板33の位置に遮蔽板45を設けるように構成することが可能である。このように構成すれば、ゲートIC15cの場合と同様に、読み出しIC16の放射線による経年劣化も防止することが可能となる。
【0060】
また、図6(B)では、遮蔽板45を、PCB基板33のリジッド基板33aとレジスト層33cとの間に介在する内層33bと同一の層に設ける場合を示したが、この他にも、例えばリジッド基板33aやレジスト層33cと同一の層に設けたり、或いはリジッド基板33aの基台31側の面上や、レジスト層33cの電子機器32が設けられた側の面上、或いは、リジッド基板33a中やレジスト層33c中に埋め込むようにして設けるように構成することも可能である。
【0061】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0062】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧(すなわち放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧)を印加するようになっている。
【0063】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0064】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0065】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。
【0066】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0067】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0068】
そして、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0069】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0070】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0071】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後で、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0072】
そして、相関二重サンプリング回路19は、それらの電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0073】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0074】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0075】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0076】
そして、前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0077】
なお、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、装置自体で放射線の照射開始を検出するようになっているが、そのための制御構成等については、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成等を説明した後で説明する。
【0078】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
【0079】
撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば一方のブッキー装置51のみが設けられていてもよい。
【0080】
図11に示すように、撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0081】
撮影室R1には、撮影室R1内の各装置等や撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0082】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0083】
前室(操作室等ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、曝射スイッチ56が設けられている。そして、放射線技師等の操作者が曝射スイッチ56を操作することにより、放射線発生装置55が放射線源52から放射線を照射するようになっている。
【0084】
また、放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0085】
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、適宜の場所に設置される。
【0086】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段やスピーカー等の報知手段等を備えている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
【0087】
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、撮影室R1に行くことができないような場合には、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0088】
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55に代えて、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。
【0089】
この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成されており、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0090】
また、この場合、無線アンテナ53が設けられた中継器54が放射線発生装置55内に内蔵されており、上記と同様に、中継器54が放射線発生装置55とコンソール58との間の通信や、放射線画像撮影装置1とコンソール58との間の通信や画像データDの送信等を中継するようになっている。
【0091】
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室R1の臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0092】
本実施形態では、コンソール58は、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてくると、それに基づいてプレビュー画像を生成して表示部58a上に表示させるようになっている。そして、放射線技師はこのプレビュー画像を確認することで、被写体が正常な位置に撮影されているか否かや再撮影の要否等を判断するようになっている。
【0093】
また、本実施形態では、コンソール58は画像処理装置としても機能するようになっており、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、画像データD等に基づいて真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正処理や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0094】
[放射線画像撮影装置における放射線の照射開始の検出の制御構成について]
次に、上記のように構成された放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出処理の制御構成について説明する。
【0095】
本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1自体で、放射線発生装置55の放射線源52(図11や図12参照)から放射線が照射されたことを検出するようになっている。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出の仕方について説明する。
【0096】
なお、以下の検出方法は、本発明者らの研究により新たに見出された検出方法であり、例えば、下記の2つの検出方法のいずれかを採用することが可能である。
【0097】
[検出方法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。ここで、リークデータdleakとは、図13に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0098】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図14に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
【0099】
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0100】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
【0101】
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0102】
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図15に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。なお、図15や後述する図16等のTやτ、Tacについては後で説明する。
【0103】
このように放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。そして、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図15参照)がそれぞれ増加することが本発明者らの研究で分かった。
【0104】
そして、例えば図16に示すように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う場合、図17に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点(時刻t1参照)で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0105】
なお、図16および図17では、図16で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図17の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図16において「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
【0106】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば設定された所定の閾値dleak_th(図17参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
【0107】
[検出方法2]
また、上記の検出方法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図18に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。
【0108】
なお、前述したように、放射線の照射後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データd(或いは単に画像データd)という。
【0109】
また、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図19に示すように、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。なお、図19等におけるTやΔTについては後で説明する。
【0110】
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された画像データd(図20では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された画像データd)が、前述した図17に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0111】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを監視するように構成し、読み出された画像データdが設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、図20中のΔTやτ、Tacについては以下で説明する。
【0112】
[検出感度を向上させるための処理について]
また、上記の検出方法1において、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図15や図16等参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くすると、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる。そのため、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度が向上する。以下、このように、周期τが長くされた各放射線検出素子7のリセット処理を、長周期のリセット処理という場合がある。
【0113】
また、上記の検出方法2において、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図19や図20参照)、すなわち走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧を印加してからオフ電圧に切り替えるまでの時間ΔT(以下、オン時間ΔTという。)を長くすると、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データdの値が大きくなる。そのため、やはり放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度が向上する。
【0114】
なお、この場合も、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図20参照)や、制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔T(図19参照)が長くなる。
【0115】
このように、上記の検出方法1や検出方法2を採用する場合には、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度を向上させるために、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における上記の周期τや、制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔T、或いはオン時間ΔTを長くする等の処理が適宜行われる。
【0116】
なお、図21に示すように、例えば、検出部P(図4や図7等参照)が4つの領域Pa〜Pdに分割されるなど、検出部Pが複数の領域に分割されるように構成される場合がある。このような場合、検出部Pの各領域Pa〜Pdごとに、上記の検出方法1や検出方法2を用いて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0117】
そして、このように構成すれば、例えば、放射線が放射線画像撮影装置1に対して照射野が狭められて照射され、検出部Pの複数の領域Pa〜Pdのうち1つ或いはいくつかの領域のみに放射線が照射される状態になる場合があるが、そのような場合でも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0118】
なお、本実施形態における上記の検出方法1や検出方法2をさらに改良して、より的確に或いはより効率的に放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0119】
[他の検出方法について]
上記の検出方法1や検出方法2では、放射線画像撮影前に、リークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行い、読み出されたリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの値に基づいて放射線の照射開始を検出する場合について説明した。しかし、これ以外の検出方法によって放射線画像撮影装置に対する放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0120】
例えば、前述した特許文献4等に記載されているように、図示を省略するが、放射線画像撮影装置内にバイアス線9や結線10(図7等参照)中を流れる電流を検出する電流検出手段を設けておき、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、電流検出手段が検出する電流値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0121】
この場合、特許文献4にも記載されているように、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると、バイアス線9やその結線10中を流れる電流の電流値が、それ以前の電流値に比べて格段に増大する。そこで、例えば、バイアス線9や結線10中を流れる電流の電流値iに閾値ithを設定しておき、電流検出手段により検出される電流値iが閾値ithを越えた時点で、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能となる。
【0122】
また、放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線の線量や、照射された放射線が放射線画像撮影装置1のシンチレーター3で変換された電磁波の光量を検出するセンサー等を放射線画像撮影装置1に設けておき、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、センサー等の出力値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である
【0123】
そして、上記の各場合でも、放射線画像撮影装置に衝撃や圧力が加わると、電流検出手段が検出する電流値iやセンサー等の出力値等が大きくなる場合がある。そのため、放射線画像撮影装置に衝撃や圧力が加わることで、放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されていないのに放射線の照射が開始されたと誤検出される場合がある。
【0124】
そこで、上記のように構成された放射線画像撮影装置に対しても、本発明を適用することにより、以下で説明する本実施形態と同様に、放射線の照射開始を誤検出した場合に、速やかに放射線の照射開始の検出処理(すなわちバイアス線9等を流れる電流値iの検出処理やセンサー等による線量等の検出処理)を行う状態に戻すように構成することが可能となる。
【0125】
[放射線の照射開始検出後の各処理について]
次に、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして、放射線の照射が開始されたことを検出すると、図16(検出方法1の場合)や図20(検出方法2の場合)に示したように、放射線の照射開始を検出した時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にする。
【0126】
このように、各TFT8がオフ状態とされると、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されることにより各放射線検出素子7内で発生した電荷が、各放射線検出素子7内に蓄積される状態になる。放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線の照射開始を検出すると、このようにして、電荷蓄積状態に移行させるようになっている。
【0127】
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、画像データDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0128】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点の直前のリセット処理でオン電圧が印加された走査線5(図16の場合は走査線5のラインL4)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図16の場合は走査線5のラインL5)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0129】
また、検出方法2の場合も同様に、図20に示すように、制御手段22は、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過すると、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5(図20の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図20の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0130】
なお、本実施形態では、画像データDの読み出し処理の際に、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を印加する周期が、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合。図16等参照)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合。図20参照)における周期τと同じ周期になるように、各走査線5にオン電圧を順次印加するようになっている。
【0131】
このように構成すると、画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理で当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間Tac(図16や図20参照)が、各走査線5で同じ時間になる等のメリットがある。
【0132】
上記のようにして本画像としての画像データDの読み出し処理が行われると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、前述したように、アンテナ装置41等の通信手段を介してコンソール58にプレビュー画像用のデータを送信するようになっている。そして、コンソール58では、送信されてきたプレビュー画像用のデータに基づいてプレビュー画像を生成して表示部58a上に表示させるようになっている。
【0133】
なお、プレビュー画像用のデータの送信処理を、下記のオフセットデータOの読み出し処理が終了した後に行うように構成することも可能である。
【0134】
一方、図示を省略するが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、その後、オフセットデータOの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0135】
前述したように、各放射線検出素子7内では、各放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等により、いわゆる暗電荷(暗電流等ともいう。)が常時発生している。そして、上記の画像データDの読み出し処理の際に読み出される画像データDには、それ以前にTFT8がオフ状態とされている間(すなわち上記の時間Tacの間)に発生し蓄積された暗電荷に起因するオフセット分が重畳されている。
【0136】
そこで、この暗電荷に起因するオフセット分をオフセットデータOとして読み出すオフセットデータOの読み出し処理が、通常、画像データDの読み出し処理の前や後に行われるのである。本実施形態では、図16や図20に示した画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、オフセットデータOの読み出し処理では、放射線画像撮影装置1には放射線は照射されない。
【0137】
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、このようにしてオフセットデータOの読み出し処理を終了すると、プレビュー画像用のデータとして送信した画像データD以外の残りの各画像データDと各オフセットデータOとをコンソール58に送信するようになっている。
【0138】
そして、コンソール58では、放射線画像撮影装置1から画像データDとオフセットデータOが送信されてくると、放射線画像撮影装置1の各放射線検出素子7ごとに、画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出する。そして、前述したように、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正処理や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0139】
[本発明における放射線画像撮影の手順等について]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50における放射線画像撮影の手順および各処理等について、図23のシーケンス図に基づいて説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてもあわせて説明する。
【0140】
なお、以下においても、主に、前述した検出方法1、すなわち放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理および各放射線検出素子7のリセット処理を交互に行い、読み出したリークデータdleakやそれに基づいて算出された各値に基づいて放射線の照射開始を検出する場合について説明するが、上記の検出方法2等を採用する場合についても同様にあてはまる。
【0141】
また、以下では、後述する携帯端末70(後述する図24参照)が後述する指示信号送信手段として機能し、コンソール58が後述する報知装置として機能するように構成されている場合について説明するが、指示信号送信手段や報知装置の構成例等については後で説明する。
【0142】
[各放射線検出素子のリセット処理]
本実施形態では、例えば、コンソール58から放射線画像撮影装置1に対して放射線画像撮影を開始する旨の信号が送信されると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、まず、各放射線検出素子7内に残存している余分な電荷を各放射線検出素子7内から除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるようになっている。
【0143】
この場合のリセット処理は、前述した放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる周期τ(図15や図16等参照)が長い、いわゆる長周期のリセット処理でもよいが、本実施形態では、速やかに残存する電荷を除去するために、例えば図22に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5のラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加する周期τが短い、いわゆる通常の短周期のリセット処理を所定回数だけ繰り返して行うようになっている。
【0144】
なお、この場合の所定回数は、図22に示すように、4回以上である必要はなく、1回や2回等でもよく、適宜の回数が設定される。
【0145】
[少なくとも1回分の放射線の照射開始の検出動作を行わないことについて]
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記の短周期のリセット処理が終了した後、続いて、前述した放射線の照射開始の検出処理に移行するようになっている。
【0146】
しかし、本実施形態では、上記の短周期のリセット処理を終了して検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間(すなわちリークデータdleakの読み出し処理と交互に行う上記の長周期のリセット処理(図15や図16参照)を走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を1回ずつ印加して行う間)は、制御手段22は、放射線の照射開始の検出動作を行わないようになっている。
【0147】
このように構成する理由は、以下の通りである。すなわち、本発明者らの研究では、通常の短周期のリセット処理から検出処理に移行した直後のリークデータdleakの読み出し処理(或いは照射開始検出用の画像データdの読み出し処理。以下同じ。)で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる場合があることが分かっている。
【0148】
このような現象が生じる原因は必ずしも明確には分かっていないが、1つの原因として、上記の短周期のリセット処理を行うと、各放射線検出素子7から信号線6に電荷が放出される際に各TFT8中のトラップ準位に比較的多くの電荷がトラップされる。そして、リークデータdleakの読み出し処理の初期段階では、放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6にリークする電荷q(図13参照)と一緒に信号線6に流出する各TFT8中の電荷量が大きくなる。そのため、リークデータdleakの値が大きくなると考えられる。
【0149】
このような現象が生じる場合に、通常の短周期のリセット処理から検出処理に移行した直後から検出動作を行うように構成すると、検出処理に移行した直後に読み出される大きな値のリークデータdleakが閾値dleak_thを越えてしまい、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと誤検出してしまう可能性がある。
【0150】
しかし、その一方で、リークデータdleakの読み出し処理や長周期τの各放射線検出素子7のリセット処理(図15や図16参照)を繰り返すうちに、各TFT8内にトラップされた電荷の量が減るため、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返すうちに、読み出されるリークデータdleakの値は平常の比較的小さな値に収束する。
【0151】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、短周期のリセット処理から放射線の照射開始の検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間は、放射線の照射開始の検出動作(すなわちリークデータdleakの読み出し動作)を行わないようになっている。
【0152】
具体的には、放射線の照射開始の検出処理の仕方として上記の検出方法1が採用されている場合には、この間、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、リークデータdleakの読み出し動作を行わずに、各放射線検出素子7の長周期のリセット処理のみを行わせるように構成される。
【0153】
また、放射線の照射開始の検出処理の仕方として上記の検出方法2が採用されている場合には、この間、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始検出用の画像データdの読み出し動作を行わせる代わりに、同じ周期τで各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるように構成される。
【0154】
なお、本実施形態では、短周期のリセット処理から放射線の照射開始の検出処理に移行した後、2回目の検出処理以降の検出処理で読み出されるリークデータdleak(或いは照射開始検出用の画像データd。以下同じ。)は平常通りの比較的小さな値になる。そのため、検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間だけ検出動作を行わないように構成されるが、リークデータdleakが通常の小さな値に収束するまでの期間が長引く場合等には、検出動作を行わない回数を増やしてもよい。
【0155】
また、短周期のリセット処理から検出処理に移行した直後にリークデータdleakを読み出しても、読み出されるリークデータdleakが上記のように大きな値にならず、最初から平常の比較的小さな値のリークデータdleakが読み出される場合には、検出処理に移行した直後から放射線の照射開始の検出動作(すなわちリークデータdleakの読み出し動作やそれと閾値との比較処理等)を行うように構成することも可能である。
【0156】
本実施形態の放射線画像撮影装置1では、上記のように、短周期のリセット処理を行っている間(図22参照)や、検出動作を1回分行わない間は、放射線の照射開始を検出することができない。そこで、図23に示すように、例えば、その間、コンソール58の表示部58a上に、放射線画像撮影装置1が各放射線検出素子7の短周期や長周期のリセット処理等を行う等してイニシャライズ中である旨を、色や文字等で表示するように構成することが可能である。
【0157】
そして、放射線画像撮影装置1で、短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が終了した時点で、コンソール58に対して、リークデータdleakの読み出し処理を開始する等して放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号を送信するように構成することが可能である。この場合、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から信号が送信されてきた時点で、上記の表示を停止して消したり音声を発声させる等して、放射線画像撮影装置1が上記の状態になったことを放射線技師に知らせるように構成される。
【0158】
[検出処理を開始することを指示する処理について]
一方、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、所定回数の短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が終了しても、すぐにはリークデータdleakの読み出し処理を開始せずに長周期のリセット処理のみを続行するようになっている。すなわち、すぐには放射線の照射開始の検出処理を開始しないようになっている。
【0159】
これは、放射線画像撮影装置1が所定回数の短周期のリセット処理を行っている間や検出動作を1回分行わない間に、例えば、放射線技師により、放射線画像撮影装置1がベッドBと患者Hの身体との間に差し込まれたり(図12等参照)、患者の身体に直接あてがわれた状態にポジショニングされている場合がある。
【0160】
そして、所定回数の短周期のリセット処理を行っている間や検出動作を1回分行わない間にポジショニングが完了せず、放射線画像撮影装置1が検出動作を1回分行わない期間が終了した時点で、まだ、放射線画像撮影装置1のポジショニングが行われている場合がある。
【0161】
このような場合に、放射線画像撮影装置1で、上記の放射線の照射開始の検出処理を開始してしまうと、ポジショニング等の際に放射線画像撮影装置1に患者の身体がぶつかったり、放射線画像撮影装置1が患者の身体から強い圧力を受ける等して、前述したように、読み出されるリークデータdleak(或いは照射開始検出用の画像データd。以下同じ。)の値が大きくなり、放射線の照射開始を誤検出してしまう可能性が高くなる。
【0162】
そこで、本実施形態では、このような誤検出を防止するために、放射線画像撮影装置1は、上記のように所定回数の短周期のリセット処理が終了しても、すぐには放射線の照射開始の検出処理に移行せず、放射線画像撮影装置1のポジショニングが完了する等して放射線技師が検出処理を開始することを指示する指示信号を送信するまで、リークデータdleakの読み出し動作を伴わない長周期のリセット処理のみを繰り返し行うようになっている。
【0163】
そして、本実施形態では、図24に示すように、放射線技師Eが携帯端末70を携帯するようになっており、放射線画像撮影装置1のポジショニング等を終えた放射線技師Eが、この携帯端末70を操作することにより、上記の指示信号を、放射線画像撮影装置1に直接、或いはコンソール58を介して放射線画像撮影装置1に送信するようになっている。従って、本実施形態では、携帯端末70が指示信号送信手段として機能する。
【0164】
なお、この指示信号を、例えば、放射線画像撮影装置1のポジショニング等を終えた放射線技師Eが、コンソール58を操作することにより送信するように構成することも可能である。この場合は、コンソール58が、放射線画像撮影装置1に対して上記の指示信号を送信することが可能な指示信号送信手段として機能することになる。
【0165】
さらに、放射線画像撮影装置1のポジショニング等を終えた放射線技師Eが、放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38(図1参照)等を操作することにより、放射線画像撮影装置1に対して直接指示信号を入力するように構成することも可能である。この場合は、切替スイッチ38等が指示信号送信手段として機能する。
【0166】
放射線画像撮影装置1は、上記のように、指示信号送信手段から指示信号を受信すると、図23に示すように、その時点で、長周期のリセット処理のみを行っていた状態から、リークデータdleakの読み出し動作と各放射線検出素子7の長周期のリセット処理とを交互に繰り返す放射線の照射開始の検出処理に移行し、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出する前述した検出処理を開始するようになっている。
【0167】
すなわち、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、所定回数の短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が経過した後、指示信号送信手段から上記の指示信号を受信する前には、上記のように、各放射線検出素子7の長周期のリセット処理のみを行う状態を継続する。
【0168】
また、放射線画像撮影装置1は、指示信号送信手段から上記の指示信号を受信すると、その時点で、リークデータdleakの読み出し動作と各放射線検出素子7の長周期のリセット処理とを交互に繰り返す放射線の照射開始の検出処理(図15等参照)に移行するようになっている。
【0169】
なお、検出方法2(図18や図20等参照)が採用されている場合には、この時点で、上記の各放射線検出素子7のリセット処理を行う状態から、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行う状態に移行する。このように、放射線の照射開始の検出処理は、検出方法2等の場合も含め、先に説明した仕方によって行われる。
【0170】
このように構成すれば、指示信号が送信される前に、放射線画像撮影装置1のポジショニング等で放射線画像撮影装置1に患者の身体がぶつかったり放射線画像撮影装置1が患者の身体から強い圧力を受ける等しても、放射線画像撮影装置1は放射線の照射開始の検出処理を行っていないため、放射線の照射開始が誤検出されることが的確に防止される。
【0171】
また、指示信号が送信されるまでの間、リークデータdleak等の、比較的大きな電力を消費する読み出し動作を行わないため、その分、電力の消費を抑制することが可能となるといったメリットもある。
【0172】
なお、この場合、例えば、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始の検出処理を開始した時点(すなわち指示信号を受信した時点)でコンソール58に放射線の照射開始の検出処理を開始した旨を表す信号を送信し、コンソール58の表示部58a上に、その旨を表示するように構成することも可能である。
【0173】
また、上記のように放射線画像撮影装置1が所定回数の短周期のリセット処理を行っている間や検出動作を1回分行わない間に、携帯端末70等から指示信号が送信されてくる場合もあり得る。そのような場合には、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記の短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が終了した時点で、すぐに放射線の照射開始の検出処理に移行するように構成される。
【0174】
[放射線の照射開始を検出した場合の処理について]
放射線画像撮影装置1は、上記のように、指示信号送信手段から指示信号を受信すると、その時点で、放射線の照射開始の検出処理を開始する。
【0175】
そして、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、読み出したリークデータdleakが閾値dleak_thを越える等して放射線の照射が開始されたことを検出すると、アンテナ装置41等の通信手段を介して、放射線画像撮影システム50の報知装置に対して、放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信するようになっている。
【0176】
本実施形態では、放射線画像撮影システム50は、音声や表示により放射線技師に報知する報知手段を備えており、報知装置は、放射線画像撮影装置1から上記の検出信号を受信すると、報知手段から音声を発声したり表示を行う等して、放射線技師に対して、放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知するようになっている。
【0177】
本実施形態では、前述したように、コンソール58がこの報知装置として機能するように構成されており、コンソール58の表示部58aやスピーカーが報知手段として機能するようになっている。そして、報知装置としてのコンソール58は、放射線画像撮影装置1から上記の検出信号を受信すると、スピーカーからブザー音を発声させたり、或いは、表示部58a上に放射線画像撮影装置1が照射開始を検出した旨を表示する等して、放射線技師に報知するようになっている。
【0178】
なお、例えば図24に示した携帯端末70に、表示部71や図示しないスピーカー等を設けておき、この携帯端末70を報知装置として機能させるように構成することも可能である。その場合、表示部71やスピーカーが報知手段として機能することになる。
【0179】
また、コンソール58や携帯端末70を報知装置として機能させるように構成する代わりに、放射線画像撮影装置1自体で、放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知するように構成することも可能である。この場合、例えば、放射線画像撮影装置1内に設けられたスピーカーを発声させたり、インジケーター40(図1参照)を所定の明滅の仕方や色等で点灯させる等して、放射線の照射が開始されたことを検出したことを、音声や表示により報知するように構成される。すなわち、この場合、インジケーター40やスピーカーが報知手段として機能する。
【0180】
このように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出した際に、報知装置に検出信号を送信し、報知装置で、放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことを報知するように構成すると、以下のような有益な作用効果が得られる。
【0181】
すなわち、前述したように、放射線技師は、放射線発生装置55の曝射スイッチ56(図11や図12参照)を操作することで、放射線源52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させるが、放射線技師が曝射スイッチ56を操作して放射線源52から放射線を照射させると同時或いはその直後に報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことが報知された場合には、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を正常に検出したと判断することができる。
【0182】
一方、放射線技師が曝射スイッチ56を操作していないにもかかわらず、報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことが報知された場合には、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したと判断することができる。
【0183】
このように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出した際に、報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことを報知するように構成することで、放射線技師は、放射線画像撮影装置1による放射線の照射開始の検出が、正常な検出であるか誤検出であるかを的確に判断することが可能となる。
【0184】
そして、放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が誤検出された場合には、放射線画像撮影装置1ではその後の電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理等が自動的に行われるが、放射線技師は、誤検出後、放射線画像撮影装置1で現在どのような処理が行われているか分からないため、そのような状態の放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しない。
【0185】
このように、放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が誤検出された場合には、放射線技師が、誤検出を生じた放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射することを的確に回避することが可能となる。また、それとともに、このような状態の放射線画像撮影装置1に対して放射線を無駄に照射してしまうことが防止されるため、被写体である患者の身体への被曝線量が増大してしまうことを的確に防止することが可能となる。
【0186】
なお、上記の曝射スイッチ56(図11や図12参照)は、一般的に2段ストローク構造をとり、最初のストローク分だけ放射線技師が押圧操作すると、音声で告知する機能が付与されていることがある。そのため、上記のように放射線の照射が開始されたことを検出した放射線画像撮影装置1から検出信号が送信されて、コンソール58や放射線技師が保持する携帯端末70(図24参照)のスピーカーから発声させて報知するように構成する場合には、曝射スイッチ56の操作のために前室R2にいる放射線技師は、曝射スイッチ56の操作に伴う音声に引き続いて、報知手段からの音を聞くことになる。
【0187】
そのため、このような場合には、両者を混同することがないように、放射線画像撮影装置1からの検出信号に基づくコンソール58や携帯端末70等の報知手段からの発声の持続時間を、曝射スイッチ56からの音声の持続時間よりも長くするように(例えば数倍の時間になるように)設定しておくことが好ましい。
【0188】
また、前述したように、放射線画像撮影装置1から放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号を送信し、コンソール58でこの信号に応じて音声を発声させるように構成する場合には、上記の2種類の音声を含めて計3種類の音声が混在する状態になる。そのため、これらの各種の音声を、放射線技師が弁別して認識することができるように制御する(すなわち音声の持続時間を変えたり言語で内容を伝えたりするようにして制御する)ことが好ましい。
【0189】
さらに、曝射スイッチ56(図11や図12参照)の操作に伴い音声告知機能が付与されていない場合には、放射線画像撮影装置1からの放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号の送信に伴うコンソール58での音声告知と、放射線の照射が開始されたことを検出した放射線画像撮影装置1からの検出信号の送信に伴うコンソール58や携帯端末70での発声報知の、2種類の音声による告知や報知が行われることになる。
【0190】
このような場合、放射線技師の撮影フローを加味すると、上記の検出処理への移行可能を表す音声告知は、携帯端末70や放射線画像撮影装置1自体で行い、放射線の照射開始検出による報知は、コンソール58や携帯端末70で行うことが好ましい。このように構成すれば、撮影室R1と前室R2との間の移動等を加味した場合、放射線技師が確実に音声による告知や報知を認識することが可能となる。
【0191】
一方、前述したように、放射線技師が曝射スイッチ56を操作していないにもかかわらず、報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことが報知された場合には、曝射スイッチ56は未操作状態であるので、曝射スイッチ56の操作音との混同は生じない。
【0192】
しかし、放射線技師自身が撮影室R1内にいる可能性もあり、この場合にはコンソール58からの音声による告知が聞こえない。そのため、放射線の照射が開始されたことを検出(この場合は誤検出)した放射線画像撮影装置1からの検出信号の送信に伴って音声による報知をする際には、コンソール58(或いは前室R2)と放射線画像撮影装置1(或いは撮影室R1)の両方で報知するように構成することが好ましい。
【0193】
ところで、前述したように、本発明では、基本的には、放射線画像撮影装置1は、放射線発生装置55(図11や図12参照)との間で信号等のやり取りを行わず、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行うように構成されている。
【0194】
しかし、上記のように放射線発生装置55との間で連携をとらずに撮影を行う撮影方式(以下、非連携方式という。)だけでなく、前述した従来のように放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが互いに信号や情報等のやり取りを行いながら放射線画像撮影を行う連携方式でも撮影を行うように構成することも可能である。
【0195】
そして、その際、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、すなわち、例えば放射線技師がコンソール58を操作して撮影方式として連携方式を選択した場合には、上記の2種類の音声による告知や報知、すなわち放射線画像撮影装置1からの放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号の送信に伴うコンソール58での音声告知や、放射線の照射が開始されたことを検出した放射線画像撮影装置1からの検出信号の送信に伴うコンソール58や携帯端末70での発声報知は行わないように制御されることが好ましい。
【0196】
[放射線の照射開始を誤検出した場合の処理について]
以下、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出した場合の処理について説明する。
【0197】
図23の中段に示すように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出した場合でも、放射線画像撮影装置1ではそれが正常な検出であるか誤検出であるかを判断できないため、上記と同様に、本実施形態の報知装置であるコンソール58に対して、放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信する。
【0198】
そして、報知装置であるコンソール58が、音声や表示により、放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知すると、上記のように、例えば曝射スイッチ56を操作していない放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したと判断する。
【0199】
この場合、放射線の照射開始を誤検出した放射線画像撮影装置1で、そのまま電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理、およびその後のオフセットデータOの読み出し処理等の各処理を行わせても、読み出された画像データD等は使い物にならないうえ、その分、電力が無駄に消費される。また、被写体である患者は、それらの処理が終了するまで長い時間待たなければならず、患者にかかる負担も増大する。
【0200】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1が放射線の照射が開始されたことを誤検出した場合には、放射線技師は、放射線画像撮影装置1における処理を強制的に停止させるようになっている。
【0201】
具体的には、例えばコンソール58や携帯端末70をキャンセル信号送信手段として機能させ(或いは放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38等をキャンセル信号送信手段として機能させてもよい。)、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したと判断した放射線技師は、キャンセル信号送信手段を操作して、放射線画像撮影装置1に対して、行っている処理を停止することを指示するキャンセル信号を送信する。
【0202】
そして、放射線画像撮影装置1は、キャンセル信号を受信すると、その時点で行っている処理を停止する。そして、各放射線検出素子7内に暗電荷等の電荷が蓄積されてしまっている可能性があるため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、前述した短周期のリセット処理(図23の最上段参照)を行う状態に戻るようになっている。
【0203】
なお、この場合、例えば、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、キャンセル信号を受信した段階で、画像データDやオフセットデータOを読み出したか否かが分かっている。そして、今回の誤検出により読み出されたこれらのデータは不要なデータである。
【0204】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子のリセット処理を行う状態に戻るとともに、それまでの処理で得られた画像データDやオフセットデータOが記憶手段23(図7等参照)に保存されている場合には、それらのデータを破棄するようになっている。
【0205】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1がキャンセル信号を受信した場合、上記のように、短周期のリセット処理(図23の最上段参照)を行う状態に戻るため、放射線画像撮影装置1に放射線の照射開始の検出処理を行わせるためには、携帯端末70等の指示信号送信手段から、再度、指示信号を送信することが必要となる。
【0206】
一方、放射線技師が、放射線発生装置55の曝射スイッチ56を操作して、放射線源52から放射線画像撮影装置1に放射線を照射すると同時或いはその直後に、報知装置であるコンソール58が、放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知した場合には、上記のように、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を正常に検出したと判断する。
【0207】
そして、この場合は、放射線技師は、放射線画像撮影装置1に画像データDの読み出し処理等の各処理を自動的に行わせるようにするために、図23の下段に示すように、コンソール58等や放射線画像撮影装置1に対して何らの操作も行わずに放置する。すなわち、放射線画像撮影装置1に対してキャンセル信号を送信するような処理等を行わない。
【0208】
放射線画像撮影装置1は、図16や図20等に示したように、放射線の照射開始を検出すると、電荷蓄積状態に移行した後、画像データDの読み出し処理を行う。そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コンソール58にプレビュー画像用のデータを送信し、コンソール58は、送信されてきたプレビュー画像用のデータに基づいてプレビュー画像を生成して表示部58a上に表示させる。
【0209】
なお、放射線技師がコンソール58の表示部58a上に表示されたプレビュー画像を確認して再撮影の要否等を判断することは、前述した通りである。また、再撮影を行うと判断された場合には、放射線画像撮影装置1は、その後の処理を停止し、短周期のリセット処理を行う状態に戻される。
【0210】
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、プレビュー画像用のデータを送信すると、続いて、オフセットデータOの読み出し処理を行わせる。そして、プレビュー画像用のデータとして送信した画像データD以外の残りの各画像データDと各オフセットデータOとをコンソール58に送信する。
【0211】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、画像データD等に基づいて真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正処理や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成する。本実施形態では、以上のようにして、放射線画像撮影が行われる。
【0212】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを自ら報知したり、或いは、コンソール58等の報知装置に検出信号を送信して放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知させる。
【0213】
そのため、放射線技師は、自らが曝射スイッチ56を操作したために放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち正常な検出)、放射線を照射していないにもかかわらず放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち誤検出)を的確に認識することが可能となる。
【0214】
そして、放射線技師が、放射線画像撮影装置1が放射線の非照射時に放射線の照射開始を誤検出したと判断した場合に、そのような放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しないようにすることで、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されることを的確に回避することが可能となる。
【0215】
また、そのため、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しても再撮影が必要になり、再度、放射線が照射されることにより、被写体である患者の身体への被曝線量が増大することを的確に防止することが可能となる。
【0216】
一方、本実施形態のように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したことを認識した放射線技師が、放射線画像撮影装置1における各処理を停止させ、速やかに短周期のリセット処理を行う状態に戻すように構成することで、誤検出により放射線画像撮影装置1で行われる各処理が終了するまで待たずに、次の撮影動作に移ることが可能となる。
【0217】
そのため、放射線画像撮影の一連の処理を速やかに終了させることが可能となり、放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1が放射線技師にとって使い勝手がよいものとなる。また、それとともに、被写体である患者にとっても次の撮影まで長い時間待つ必要がなくなるため、患者にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0218】
なお、本発明は、前述したように、放射線画像撮影装置1が上記の検出方法1や検出方法2、或いはさらに改良された検出方法に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成されている場合だけでなく、例えば、放射線画像撮影装置1内に、バイアス線9や結線10(図7等参照)中を流れる電流iを検出する電流検出手段や、照射された放射線の線量等を検出するセンサー等を設けておき、それらの出力値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成されている放射線画像撮影装置についても適用することが可能である。
【0219】
そして、このように、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出するように構成するとともに、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を検出したことを自ら報知したり、或いは、報知装置に検出信号を送信して放射線画像撮影装置により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知させるように構成することで、上記の本実施形態の場合と全く同様の有益な効果を得ることが可能となる。
【0220】
一方、上記の本実施形態のように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出して、放射線画像撮影装置1から検出信号が送信されてきた時点で、例えば、コンソール58から放射線発生装置55に信号を送信し、曝射スイッチ56をそれ以上操作できないように、或いは、その後、曝射スイッチ56が操作されても放射線源52から放射線を照射させないようにするように構成することも可能である。
【0221】
この場合、例えば、放射線発生装置55は、コンソール58から上記の信号を受信した後、所定の期間の間だけ曝射スイッチ56を操作できないようにしたり、所定の期間内に曝射スイッチ56が操作されても放射線源52から放射線を照射させないように構成される。
【0222】
このように構成しても、放射線技師が放射線画像撮影装置1に放射線を照射させて、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を正常に検出した場合には、その後、所定期間、曝射スイッチ56が操作できなくなる等しても、放射線画像撮影装置1は画像データDの読み出し処理等を行っておりそもそも放射線を照射できる状態ではないため、別段、不都合はない。
【0223】
一方、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出した場合、仮に放射線技師がそれに気付かずに放射線画像撮影装置1に放射線を照射させようとしても、少なくとも所定期間の間は、曝射スイッチ56が操作できなくなる等して、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない。
【0224】
そのため、被写体である患者に無駄に放射線が照射されて患者の被曝線量が増大することを的確に防止することが可能となるとともに、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したことに気付いて、放射線画像撮影装置1が自動的に行っている画像データDの読み出し処理等の各処理を停止させる等の適切な処理を行わせることが可能となる。
【0225】
また、上記の実施形態では、放射線画像撮影装置1が衝撃等を受けるケースとして、放射線画像撮影装置1をベッドBと患者Hの身体との間に差し込んだり、患者の身体に直接あてがったりする、図12に示した放射線画像撮影システム50の場合を念頭において説明した。
【0226】
しかし、例えば図11に示した放射線画像撮影システム50においても、上記の検出方法1や検出方法2等を用いて装置自体で放射線の照射開始を検出するように構成された放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填するような場合に、放射線画像撮影装置1が比較的強い衝撃を受ける場合があり、それに基づいて放射線画像撮影装置1で誤検出が生じる場合があり得る。
【0227】
従って、このような場合にも、上記の本発明を適用することで、仮に放射線画像撮影装置1が放射線の非照射時に放射線の照射開始を誤検出した場合には、放射線技師がそれに気付き、そのような放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しないようにすることが可能となる。
【0228】
そのため、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されることを的確に回避することが可能となる等の、上記の実施形態と全く同様の有益な効果を得ることが可能となる。
【0229】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0230】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
38 切替スイッチ(指示信号送信手段、キャンセル信号送信手段)
39 コネクター(通信手段)
40 インジケーター(報知手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
52 放射線源
55 放射線発生装置
58 コンソール(報知装置、指示信号送信手段、キャンセル信号送信手段)
58a 表示部(報知手段)
70 携帯端末(報知装置、指示信号送信手段、キャンセル信号送信手段)
71 表示部(報知手段)
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
dleak リークデータ
dleak_th 閾値
dth 閾値
q 電荷
r 小領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線の照射開始を検出可能な放射線画像撮影装置およびそれを備える放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図5等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。
【0005】
そして、放射線画像撮影が行われる際には、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(後述する図5参照)から各走査線5にオフ電圧が印加され、各TFT8がオフ状態とされて、電荷蓄積状態に移行する。そして、この状態で、放射線源から放射線画像撮影装置に被写体を介して放射線が照射される。すると、放射線の照射により放射線画像撮影装置の各放射線検出素子7内で電荷が発生して各放射線検出素子7内にそれぞれ蓄積される。
【0006】
そして、放射線の照射後、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧が順次印加されて、各放射線検出素子7から電荷が読み出され、読み出し回路17で電荷が電荷電圧変換されて画像データDとして読み出される。放射線画像撮影装置では、このようにして各放射線検出素子7から画像データDが読み出される。
【0007】
このような放射線画像撮影を実現する方法としては、従来から、放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、放射線画像撮影装置との間で信号等のやり取りを行いながら両者が連携して撮影を行うように構成される場合が多かった。
【0008】
この場合、放射線技師が、放射線発生装置の曝射スイッチを操作すると、放射線発生装置から放射線画像撮影装置に照射開始信号が送信され、放射線画像撮影装置は、それまで行っていた例えば各放射線検出素子7のリセット処理を停止して、上記のように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから各走査線5にオフ電圧を印加して、各TFT8をオフ状態とする。
【0009】
そして、放射線画像撮影装置から放射線発生装置にインターロック解除信号が送信されると、放射線画像撮影装置の放射線源から放射線画像撮影装置に放射線が照射される。すると、上記のように、放射線の照射により放射線画像撮影装置の各放射線検出素子7内で電荷が発生し、その後、各放射線検出素子7からこれらの電荷が画像データDとして読み出される。
【0010】
しかし、放射線画像撮影装置と放射線発生装置の製造元が同じであれば、上記のようにして放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行いながら撮影を行うようにシステムを構築することが可能であるが、両者の製造元が異なっているような場合には、両者の間で信号等のやり取りを必ずしも的確に行うことができない場合がある。
【0011】
そのため、このような場合には、放射線画像撮影装置が、放射線発生装置からの信号等によらず、自ら放射線の照射が開始されたことを検出することが必要となる。そして、例えば特許文献4に記載された検出方法や、後述する本発明者らによって新たに見出された検出方法によって、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2009−219538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記のような検出方法では、通常、放射線が照射されると放射線画像撮影装置内で読み出されるデータや電流値等の値が大きくなることを利用して放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されるが、その一方で、本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置に何らかの衝撃や圧力が加わると、上記のデータや電流値等の値が大きくなることが分かってきた。
【0014】
そのため、上記のように、放射線画像撮影装置における放射線の照射開始の検出処理時に、放射線画像撮影装置に衝撃や圧力が加わると、放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されていないにもかかわらず、放射線の照射が開始されたと判断されて誤検出が生じる場合がある。
【0015】
また、放射線画像撮影装置では、放射線の照射開始を検出すると、上記のように、電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理、およびその後のオフセットデータOの読み出し処理や画像データD等の送信処理等が自動的に行われるように構成されている場合が少なくない。
【0016】
そのような場合に、上記のような誤検出が生じると、放射線画像撮影装置では、自動的に電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理等が行われるが、放射線画像撮影装置がそのような処理を行っていることを知らない放射線技師が放射線画像撮影装置に放射線を照射させると、読み出される画像データDは、被写体が撮影されていないか、或いは異常な画像が撮影されているものにしかならない。
【0017】
そのため、このような場合、通常、再撮影が必要になり、被写体である患者の身体に再度放射線を照射することが必要になる。そのため、被写体である患者の身体への被曝線量が増大してしまうといった問題が生じる虞れがあった。
【0018】
そして、それを回避するためには、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させようとしている放射線画像技師が、放射線画像撮影装置が誤検出したことを認識することができるように構成されることが望まれる。このように構成すれば、放射線技師は、誤検出を認識して、このまま放射線を照射しても正常な画像データDを得ることができない状態にある放射線画像撮影装置に対して放射線を照射することを回避することになる。
【0019】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線の非照射時に放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を誤検出した場合に、放射線技師がそのような放射線画像撮影装置に対して放射線を照射することを的確に回避することが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【0020】
そして、放射線画像撮影装置が誤検出したことを認識した放射線技師が、放射線画像撮影装置における各処理を停止させ、放射線の照射開始の検出処理に戻すように構成すれば、放射線画像撮影装置が電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理、オフセットデータOの読み出し処理等の各処理を終了するまで待たずに、次の撮影動作に移ることが可能となれば、放射線画像撮影の一連の処理を速やかに終了させることが可能となる。
【0021】
そのため、放射線画像撮影システムや放射線画像撮影装置が放射線技師にとって使い勝手がよいものとなるとともに、被写体である患者にとっても次の撮影まで長い時間待つ必要がなくなるため、患者にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0022】
そこで、本発明は、放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を誤検出した場合に、速やかに放射線の照射開始の検出処理を行う状態に戻すことが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムや放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
報知手段を備える報知装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、前記報知装置に放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信し、
前記報知装置は、前記放射線画像撮影装置からの前記検出信号を受信すると、前記報知手段を介して、前記放射線画像撮影装置により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、放射線技師は、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させたために放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち正常な検出)、或いは、放射線を照射していないにもかかわらず放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち誤検出)を的確に認識することが可能となる。
【0026】
そして、放射線技師が、放射線画像撮影装置が放射線の非照射時に放射線の照射開始を誤検出したと判断した場合に、そのような放射線画像撮影装置に対して放射線を照射しないようにすることで、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されることを的確に回避することが可能となる。
【0027】
また、そのため、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置に対して放射線を照射しても再撮影が必要になり、再度、放射線が照射されることにより、被写体である患者の身体への被曝線量が増大することを的確に防止することが可能となる。
【0028】
さらに、放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を誤検出した場合に、放射線画像撮影装置における各処理を停止させ、速やかに放射線の照射開始の検出処理に戻すように構成することで、誤検出により放射線画像撮影装置で行われる各処理が終了するまで待たずに、次の撮影動作に移ることが可能となる。そのため、放射線画像撮影の一連の処理を速やかに終了させることが可能となるとともに、被写体である患者にとっても次の撮影まで長い時間待つ必要がなくなるため、患者にかかる負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置のコネクターにケーブルのコネクターを接続した状態を表す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】(A)フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図であり、(B)基板の裏面側におけるフレキシブル回路基板の接続部の拡大断面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図13】TFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図14】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】検出方法1において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図17】読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図18】検出方法2において放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データの読み出し処理が繰り返し行われる際の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図19】放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングおよびオン時間ΔTを表すタイミングチャートである。
【図20】検出方法2において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図21】検出部が4つの領域に分割され、各領域に読み出しICがそれぞれ割り当てられた状態を表す図である。
【図22】短周期のリセット処理において各走査線にオン電圧を印加するタイミングを説明するタイミングチャートである。
【図23】携帯端末とコンソールと放射線画像撮影装置との間で行われる通信やデータの送信等のシーケンスの例を表すシーケンス図である。
【図24】図12の放射線画像撮影システムにおいて放射線技師が携帯端末を携帯する状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0032】
[放射線画像撮影装置]
以下、まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成等について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0033】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0034】
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部のコンソール58(後述する図11や図12参照)等の装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
【0035】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
【0036】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に、放射線を遮蔽する鉛等の遮蔽板(図2では図示省略。後述する図6(B)における遮蔽板42参照)を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0037】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0038】
また、本実施形態では、基板4は、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0039】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0040】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0041】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0042】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0043】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0044】
図4に示すように、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0045】
各入出力端子11には、図6(A)に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0046】
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6(A)では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0047】
図6(B)に、センサーパネルSPの基板4の裏面4b側におけるフレキシブル回路基板12の接続部の拡大断面図を示す。放射線画像撮影装置によっては、図6(B)に示すように、基板4と基台31との間に介在する鉛等の遮蔽板42が基板4等の端部まで延設されておらず、基板4の端部部分では、基板4と基台31との間が空隙とされていたり、接着剤43が充填されている構造とされている場合がある。
【0048】
このような構成では、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R(図1や図2等参照)から放射線が入射した場合、放射線が、遮蔽板42により遮蔽されず、基板4や基台31等を透過して、フレキシブル回路基板12に組み込まれた読み出しIC16やゲートIC15c等のチップに照射される。
【0049】
本発明者らの研究では、特に、放射線画像撮影が繰り返されてゲートIC15cに対する放射線の照射が繰り返されると、経年的にゲートIC15cが劣化し、劣化したゲートIC15cに接続されている各走査線5にそれぞれ接続されている各放射線検出素子7から読み出される画像データD等にある程度のオフセット値が重畳される状態になることが分かっている。
【0050】
このように、各放射線検出素子7から読み出される画像データDにオフセット値が重畳されても、後述するように、放射線画像撮影装置1では、各放射線検出素子7ごとにオフセットデータOが読み出され、これらのオフセットデータOにも同じオフセット値が重畳される。
【0051】
そのため、後述するように、各放射線検出素子7ごとに画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出すれば、画像データD中とオフセットデータO中のオフセット値が相殺されるため、真の画像データD*中にはこのオフセット値が重畳されていない状態になる。そのため、画像データD等に基づいて放射線画像Iを生成する際には、ゲートIC15cの劣化によりデータにオフセット値が重畳されてもあまり問題にはならない。
【0052】
しかし、後述するように、本実施形態では、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、その際、放射線画像撮影前に、リークデータdleak(後述する検出方法1参照)等の読み出し処理を行うように構成される。そして、読み出したリークデータdleak等が閾値dleak_th等を越えた場合に、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成される。
【0053】
その際に、上記のように、読み出されるリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdに、ゲートIC15cの劣化によるオフセット値が重畳されてしまうと、読み出されたリークデータdleak等がゆらいだ場合に閾値dleak_thを越え易くなり、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないにもかかわらず放射線の照射開始を誤検出し易くなるといった問題が生じる。
【0054】
そこで、本実施形態では、図6(B)に示すように、本実施形態では緩衝材44を介してセンサーパネルSPの基台31の裏面に取り付けられる、電子部品32等が配設されたPCB基板33に鉛等の遮蔽板45を設けるようになっている。
【0055】
本実施形態では、PCB基板33は、リジッド基板33a上(この場合の「上」は図6(B)における下方を指す。)に回路等が設けられた内層33bが形成され、内層33b上にレジスト層33cが形成され、レジスト層33cに電子部品32や入出力端子33d、図示しない配線パターン等が配設されている。そして、本実施形態では、PCB基板33側の各入出力端子33dに対しても、上記の基板4上に形成された各入出力端子11(図6(A)参照)に接続する場合と同様にして、フレキシブル回路基板12が接続されている。
【0056】
そして、その際、遮蔽板45は、フレキシブル回路基板12上の少なくともゲートIC15cに放射線が到達しないように遮蔽することが可能なPCB基板33の位置に設けられるようになっている。本実施形態では、図6(B)に示すように、遮蔽板45は、PCB基板33のリジッド基板33aとレジスト層33cとの間に介在する内層33bと同一の層に設けられている。
【0057】
このように、PCB基板33に遮蔽板45を設けることにより、放射線が繰り返し照射されることによりゲートIC15cが経年劣化することを的確に防止することが可能となる。そのため、後述する検出方法1や検出方法2等を採用して放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するように構成する場合に、上記のようにしてゲートIC15cの経年劣化により放射線の照射開始を誤検出し易くなる事態が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0058】
また、このように、PCB基板33に遮蔽板45を設けることにより、例えば上記のようにセンサーパネルSPの基板4の端部まで鉛等の遮蔽板42が延設されておらず、フレキシブル回路基板12上のゲートIC15cに、照射された放射線が到達してしまうように構成されている場合でも、基板4や基台31等に、遮蔽板45が設けられたPCB基板33を取り付けるだけでゲートIC15cを放射線から的確に遮蔽することが可能となり、ゲートIC15cの遮蔽を簡単かつ的確に行うことが可能となる。
【0059】
なお、フレキシブル回路基板12上の読み出しIC16(図6(A)等参照)に対しても、放射線が到達しないように遮蔽するPCB基板33の位置に遮蔽板45を設けるように構成することが可能である。このように構成すれば、ゲートIC15cの場合と同様に、読み出しIC16の放射線による経年劣化も防止することが可能となる。
【0060】
また、図6(B)では、遮蔽板45を、PCB基板33のリジッド基板33aとレジスト層33cとの間に介在する内層33bと同一の層に設ける場合を示したが、この他にも、例えばリジッド基板33aやレジスト層33cと同一の層に設けたり、或いはリジッド基板33aの基台31側の面上や、レジスト層33cの電子機器32が設けられた側の面上、或いは、リジッド基板33a中やレジスト層33c中に埋め込むようにして設けるように構成することも可能である。
【0061】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0062】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧(すなわち放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧)を印加するようになっている。
【0063】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0064】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0065】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。
【0066】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0067】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0068】
そして、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0069】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0070】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0071】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後で、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0072】
そして、相関二重サンプリング回路19は、それらの電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0073】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0074】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0075】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0076】
そして、前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0077】
なお、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、装置自体で放射線の照射開始を検出するようになっているが、そのための制御構成等については、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成等を説明した後で説明する。
【0078】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
【0079】
撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば一方のブッキー装置51のみが設けられていてもよい。
【0080】
図11に示すように、撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0081】
撮影室R1には、撮影室R1内の各装置等や撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0082】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0083】
前室(操作室等ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、曝射スイッチ56が設けられている。そして、放射線技師等の操作者が曝射スイッチ56を操作することにより、放射線発生装置55が放射線源52から放射線を照射するようになっている。
【0084】
また、放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0085】
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、適宜の場所に設置される。
【0086】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段やスピーカー等の報知手段等を備えている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
【0087】
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、撮影室R1に行くことができないような場合には、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0088】
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55に代えて、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。
【0089】
この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成されており、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0090】
また、この場合、無線アンテナ53が設けられた中継器54が放射線発生装置55内に内蔵されており、上記と同様に、中継器54が放射線発生装置55とコンソール58との間の通信や、放射線画像撮影装置1とコンソール58との間の通信や画像データDの送信等を中継するようになっている。
【0091】
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室R1の臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0092】
本実施形態では、コンソール58は、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてくると、それに基づいてプレビュー画像を生成して表示部58a上に表示させるようになっている。そして、放射線技師はこのプレビュー画像を確認することで、被写体が正常な位置に撮影されているか否かや再撮影の要否等を判断するようになっている。
【0093】
また、本実施形態では、コンソール58は画像処理装置としても機能するようになっており、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、画像データD等に基づいて真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正処理や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0094】
[放射線画像撮影装置における放射線の照射開始の検出の制御構成について]
次に、上記のように構成された放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出処理の制御構成について説明する。
【0095】
本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1自体で、放射線発生装置55の放射線源52(図11や図12参照)から放射線が照射されたことを検出するようになっている。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出の仕方について説明する。
【0096】
なお、以下の検出方法は、本発明者らの研究により新たに見出された検出方法であり、例えば、下記の2つの検出方法のいずれかを採用することが可能である。
【0097】
[検出方法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。ここで、リークデータdleakとは、図13に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0098】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図14に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
【0099】
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0100】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
【0101】
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0102】
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図15に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。なお、図15や後述する図16等のTやτ、Tacについては後で説明する。
【0103】
このように放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。そして、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図15参照)がそれぞれ増加することが本発明者らの研究で分かった。
【0104】
そして、例えば図16に示すように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う場合、図17に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点(時刻t1参照)で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0105】
なお、図16および図17では、図16で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図17の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図16において「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
【0106】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば設定された所定の閾値dleak_th(図17参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
【0107】
[検出方法2]
また、上記の検出方法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図18に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。
【0108】
なお、前述したように、放射線の照射後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データd(或いは単に画像データd)という。
【0109】
また、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図19に示すように、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。なお、図19等におけるTやΔTについては後で説明する。
【0110】
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された画像データd(図20では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された画像データd)が、前述した図17に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0111】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを監視するように構成し、読み出された画像データdが設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、図20中のΔTやτ、Tacについては以下で説明する。
【0112】
[検出感度を向上させるための処理について]
また、上記の検出方法1において、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図15や図16等参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くすると、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる。そのため、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度が向上する。以下、このように、周期τが長くされた各放射線検出素子7のリセット処理を、長周期のリセット処理という場合がある。
【0113】
また、上記の検出方法2において、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図19や図20参照)、すなわち走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧を印加してからオフ電圧に切り替えるまでの時間ΔT(以下、オン時間ΔTという。)を長くすると、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データdの値が大きくなる。そのため、やはり放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度が向上する。
【0114】
なお、この場合も、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図20参照)や、制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔T(図19参照)が長くなる。
【0115】
このように、上記の検出方法1や検出方法2を採用する場合には、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度を向上させるために、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における上記の周期τや、制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔T、或いはオン時間ΔTを長くする等の処理が適宜行われる。
【0116】
なお、図21に示すように、例えば、検出部P(図4や図7等参照)が4つの領域Pa〜Pdに分割されるなど、検出部Pが複数の領域に分割されるように構成される場合がある。このような場合、検出部Pの各領域Pa〜Pdごとに、上記の検出方法1や検出方法2を用いて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0117】
そして、このように構成すれば、例えば、放射線が放射線画像撮影装置1に対して照射野が狭められて照射され、検出部Pの複数の領域Pa〜Pdのうち1つ或いはいくつかの領域のみに放射線が照射される状態になる場合があるが、そのような場合でも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0118】
なお、本実施形態における上記の検出方法1や検出方法2をさらに改良して、より的確に或いはより効率的に放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0119】
[他の検出方法について]
上記の検出方法1や検出方法2では、放射線画像撮影前に、リークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行い、読み出されたリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの値に基づいて放射線の照射開始を検出する場合について説明した。しかし、これ以外の検出方法によって放射線画像撮影装置に対する放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0120】
例えば、前述した特許文献4等に記載されているように、図示を省略するが、放射線画像撮影装置内にバイアス線9や結線10(図7等参照)中を流れる電流を検出する電流検出手段を設けておき、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、電流検出手段が検出する電流値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0121】
この場合、特許文献4にも記載されているように、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると、バイアス線9やその結線10中を流れる電流の電流値が、それ以前の電流値に比べて格段に増大する。そこで、例えば、バイアス線9や結線10中を流れる電流の電流値iに閾値ithを設定しておき、電流検出手段により検出される電流値iが閾値ithを越えた時点で、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能となる。
【0122】
また、放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線の線量や、照射された放射線が放射線画像撮影装置1のシンチレーター3で変換された電磁波の光量を検出するセンサー等を放射線画像撮影装置1に設けておき、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、センサー等の出力値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である
【0123】
そして、上記の各場合でも、放射線画像撮影装置に衝撃や圧力が加わると、電流検出手段が検出する電流値iやセンサー等の出力値等が大きくなる場合がある。そのため、放射線画像撮影装置に衝撃や圧力が加わることで、放射線画像撮影装置に対して放射線が照射されていないのに放射線の照射が開始されたと誤検出される場合がある。
【0124】
そこで、上記のように構成された放射線画像撮影装置に対しても、本発明を適用することにより、以下で説明する本実施形態と同様に、放射線の照射開始を誤検出した場合に、速やかに放射線の照射開始の検出処理(すなわちバイアス線9等を流れる電流値iの検出処理やセンサー等による線量等の検出処理)を行う状態に戻すように構成することが可能となる。
【0125】
[放射線の照射開始検出後の各処理について]
次に、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして、放射線の照射が開始されたことを検出すると、図16(検出方法1の場合)や図20(検出方法2の場合)に示したように、放射線の照射開始を検出した時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にする。
【0126】
このように、各TFT8がオフ状態とされると、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されることにより各放射線検出素子7内で発生した電荷が、各放射線検出素子7内に蓄積される状態になる。放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線の照射開始を検出すると、このようにして、電荷蓄積状態に移行させるようになっている。
【0127】
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、画像データDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0128】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点の直前のリセット処理でオン電圧が印加された走査線5(図16の場合は走査線5のラインL4)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図16の場合は走査線5のラインL5)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0129】
また、検出方法2の場合も同様に、図20に示すように、制御手段22は、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過すると、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5(図20の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図20の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0130】
なお、本実施形態では、画像データDの読み出し処理の際に、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を印加する周期が、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合。図16等参照)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合。図20参照)における周期τと同じ周期になるように、各走査線5にオン電圧を順次印加するようになっている。
【0131】
このように構成すると、画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理で当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間Tac(図16や図20参照)が、各走査線5で同じ時間になる等のメリットがある。
【0132】
上記のようにして本画像としての画像データDの読み出し処理が行われると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、前述したように、アンテナ装置41等の通信手段を介してコンソール58にプレビュー画像用のデータを送信するようになっている。そして、コンソール58では、送信されてきたプレビュー画像用のデータに基づいてプレビュー画像を生成して表示部58a上に表示させるようになっている。
【0133】
なお、プレビュー画像用のデータの送信処理を、下記のオフセットデータOの読み出し処理が終了した後に行うように構成することも可能である。
【0134】
一方、図示を省略するが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、その後、オフセットデータOの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0135】
前述したように、各放射線検出素子7内では、各放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等により、いわゆる暗電荷(暗電流等ともいう。)が常時発生している。そして、上記の画像データDの読み出し処理の際に読み出される画像データDには、それ以前にTFT8がオフ状態とされている間(すなわち上記の時間Tacの間)に発生し蓄積された暗電荷に起因するオフセット分が重畳されている。
【0136】
そこで、この暗電荷に起因するオフセット分をオフセットデータOとして読み出すオフセットデータOの読み出し処理が、通常、画像データDの読み出し処理の前や後に行われるのである。本実施形態では、図16や図20に示した画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、オフセットデータOの読み出し処理では、放射線画像撮影装置1には放射線は照射されない。
【0137】
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、このようにしてオフセットデータOの読み出し処理を終了すると、プレビュー画像用のデータとして送信した画像データD以外の残りの各画像データDと各オフセットデータOとをコンソール58に送信するようになっている。
【0138】
そして、コンソール58では、放射線画像撮影装置1から画像データDとオフセットデータOが送信されてくると、放射線画像撮影装置1の各放射線検出素子7ごとに、画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出する。そして、前述したように、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正処理や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0139】
[本発明における放射線画像撮影の手順等について]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50における放射線画像撮影の手順および各処理等について、図23のシーケンス図に基づいて説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてもあわせて説明する。
【0140】
なお、以下においても、主に、前述した検出方法1、すなわち放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理および各放射線検出素子7のリセット処理を交互に行い、読み出したリークデータdleakやそれに基づいて算出された各値に基づいて放射線の照射開始を検出する場合について説明するが、上記の検出方法2等を採用する場合についても同様にあてはまる。
【0141】
また、以下では、後述する携帯端末70(後述する図24参照)が後述する指示信号送信手段として機能し、コンソール58が後述する報知装置として機能するように構成されている場合について説明するが、指示信号送信手段や報知装置の構成例等については後で説明する。
【0142】
[各放射線検出素子のリセット処理]
本実施形態では、例えば、コンソール58から放射線画像撮影装置1に対して放射線画像撮影を開始する旨の信号が送信されると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、まず、各放射線検出素子7内に残存している余分な電荷を各放射線検出素子7内から除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるようになっている。
【0143】
この場合のリセット処理は、前述した放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる周期τ(図15や図16等参照)が長い、いわゆる長周期のリセット処理でもよいが、本実施形態では、速やかに残存する電荷を除去するために、例えば図22に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5のラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加する周期τが短い、いわゆる通常の短周期のリセット処理を所定回数だけ繰り返して行うようになっている。
【0144】
なお、この場合の所定回数は、図22に示すように、4回以上である必要はなく、1回や2回等でもよく、適宜の回数が設定される。
【0145】
[少なくとも1回分の放射線の照射開始の検出動作を行わないことについて]
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記の短周期のリセット処理が終了した後、続いて、前述した放射線の照射開始の検出処理に移行するようになっている。
【0146】
しかし、本実施形態では、上記の短周期のリセット処理を終了して検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間(すなわちリークデータdleakの読み出し処理と交互に行う上記の長周期のリセット処理(図15や図16参照)を走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を1回ずつ印加して行う間)は、制御手段22は、放射線の照射開始の検出動作を行わないようになっている。
【0147】
このように構成する理由は、以下の通りである。すなわち、本発明者らの研究では、通常の短周期のリセット処理から検出処理に移行した直後のリークデータdleakの読み出し処理(或いは照射開始検出用の画像データdの読み出し処理。以下同じ。)で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる場合があることが分かっている。
【0148】
このような現象が生じる原因は必ずしも明確には分かっていないが、1つの原因として、上記の短周期のリセット処理を行うと、各放射線検出素子7から信号線6に電荷が放出される際に各TFT8中のトラップ準位に比較的多くの電荷がトラップされる。そして、リークデータdleakの読み出し処理の初期段階では、放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6にリークする電荷q(図13参照)と一緒に信号線6に流出する各TFT8中の電荷量が大きくなる。そのため、リークデータdleakの値が大きくなると考えられる。
【0149】
このような現象が生じる場合に、通常の短周期のリセット処理から検出処理に移行した直後から検出動作を行うように構成すると、検出処理に移行した直後に読み出される大きな値のリークデータdleakが閾値dleak_thを越えてしまい、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと誤検出してしまう可能性がある。
【0150】
しかし、その一方で、リークデータdleakの読み出し処理や長周期τの各放射線検出素子7のリセット処理(図15や図16参照)を繰り返すうちに、各TFT8内にトラップされた電荷の量が減るため、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返すうちに、読み出されるリークデータdleakの値は平常の比較的小さな値に収束する。
【0151】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、短周期のリセット処理から放射線の照射開始の検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間は、放射線の照射開始の検出動作(すなわちリークデータdleakの読み出し動作)を行わないようになっている。
【0152】
具体的には、放射線の照射開始の検出処理の仕方として上記の検出方法1が採用されている場合には、この間、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、リークデータdleakの読み出し動作を行わずに、各放射線検出素子7の長周期のリセット処理のみを行わせるように構成される。
【0153】
また、放射線の照射開始の検出処理の仕方として上記の検出方法2が採用されている場合には、この間、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始検出用の画像データdの読み出し動作を行わせる代わりに、同じ周期τで各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるように構成される。
【0154】
なお、本実施形態では、短周期のリセット処理から放射線の照射開始の検出処理に移行した後、2回目の検出処理以降の検出処理で読み出されるリークデータdleak(或いは照射開始検出用の画像データd。以下同じ。)は平常通りの比較的小さな値になる。そのため、検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間だけ検出動作を行わないように構成されるが、リークデータdleakが通常の小さな値に収束するまでの期間が長引く場合等には、検出動作を行わない回数を増やしてもよい。
【0155】
また、短周期のリセット処理から検出処理に移行した直後にリークデータdleakを読み出しても、読み出されるリークデータdleakが上記のように大きな値にならず、最初から平常の比較的小さな値のリークデータdleakが読み出される場合には、検出処理に移行した直後から放射線の照射開始の検出動作(すなわちリークデータdleakの読み出し動作やそれと閾値との比較処理等)を行うように構成することも可能である。
【0156】
本実施形態の放射線画像撮影装置1では、上記のように、短周期のリセット処理を行っている間(図22参照)や、検出動作を1回分行わない間は、放射線の照射開始を検出することができない。そこで、図23に示すように、例えば、その間、コンソール58の表示部58a上に、放射線画像撮影装置1が各放射線検出素子7の短周期や長周期のリセット処理等を行う等してイニシャライズ中である旨を、色や文字等で表示するように構成することが可能である。
【0157】
そして、放射線画像撮影装置1で、短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が終了した時点で、コンソール58に対して、リークデータdleakの読み出し処理を開始する等して放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号を送信するように構成することが可能である。この場合、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から信号が送信されてきた時点で、上記の表示を停止して消したり音声を発声させる等して、放射線画像撮影装置1が上記の状態になったことを放射線技師に知らせるように構成される。
【0158】
[検出処理を開始することを指示する処理について]
一方、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、所定回数の短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が終了しても、すぐにはリークデータdleakの読み出し処理を開始せずに長周期のリセット処理のみを続行するようになっている。すなわち、すぐには放射線の照射開始の検出処理を開始しないようになっている。
【0159】
これは、放射線画像撮影装置1が所定回数の短周期のリセット処理を行っている間や検出動作を1回分行わない間に、例えば、放射線技師により、放射線画像撮影装置1がベッドBと患者Hの身体との間に差し込まれたり(図12等参照)、患者の身体に直接あてがわれた状態にポジショニングされている場合がある。
【0160】
そして、所定回数の短周期のリセット処理を行っている間や検出動作を1回分行わない間にポジショニングが完了せず、放射線画像撮影装置1が検出動作を1回分行わない期間が終了した時点で、まだ、放射線画像撮影装置1のポジショニングが行われている場合がある。
【0161】
このような場合に、放射線画像撮影装置1で、上記の放射線の照射開始の検出処理を開始してしまうと、ポジショニング等の際に放射線画像撮影装置1に患者の身体がぶつかったり、放射線画像撮影装置1が患者の身体から強い圧力を受ける等して、前述したように、読み出されるリークデータdleak(或いは照射開始検出用の画像データd。以下同じ。)の値が大きくなり、放射線の照射開始を誤検出してしまう可能性が高くなる。
【0162】
そこで、本実施形態では、このような誤検出を防止するために、放射線画像撮影装置1は、上記のように所定回数の短周期のリセット処理が終了しても、すぐには放射線の照射開始の検出処理に移行せず、放射線画像撮影装置1のポジショニングが完了する等して放射線技師が検出処理を開始することを指示する指示信号を送信するまで、リークデータdleakの読み出し動作を伴わない長周期のリセット処理のみを繰り返し行うようになっている。
【0163】
そして、本実施形態では、図24に示すように、放射線技師Eが携帯端末70を携帯するようになっており、放射線画像撮影装置1のポジショニング等を終えた放射線技師Eが、この携帯端末70を操作することにより、上記の指示信号を、放射線画像撮影装置1に直接、或いはコンソール58を介して放射線画像撮影装置1に送信するようになっている。従って、本実施形態では、携帯端末70が指示信号送信手段として機能する。
【0164】
なお、この指示信号を、例えば、放射線画像撮影装置1のポジショニング等を終えた放射線技師Eが、コンソール58を操作することにより送信するように構成することも可能である。この場合は、コンソール58が、放射線画像撮影装置1に対して上記の指示信号を送信することが可能な指示信号送信手段として機能することになる。
【0165】
さらに、放射線画像撮影装置1のポジショニング等を終えた放射線技師Eが、放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38(図1参照)等を操作することにより、放射線画像撮影装置1に対して直接指示信号を入力するように構成することも可能である。この場合は、切替スイッチ38等が指示信号送信手段として機能する。
【0166】
放射線画像撮影装置1は、上記のように、指示信号送信手段から指示信号を受信すると、図23に示すように、その時点で、長周期のリセット処理のみを行っていた状態から、リークデータdleakの読み出し動作と各放射線検出素子7の長周期のリセット処理とを交互に繰り返す放射線の照射開始の検出処理に移行し、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出する前述した検出処理を開始するようになっている。
【0167】
すなわち、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、所定回数の短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が経過した後、指示信号送信手段から上記の指示信号を受信する前には、上記のように、各放射線検出素子7の長周期のリセット処理のみを行う状態を継続する。
【0168】
また、放射線画像撮影装置1は、指示信号送信手段から上記の指示信号を受信すると、その時点で、リークデータdleakの読み出し動作と各放射線検出素子7の長周期のリセット処理とを交互に繰り返す放射線の照射開始の検出処理(図15等参照)に移行するようになっている。
【0169】
なお、検出方法2(図18や図20等参照)が採用されている場合には、この時点で、上記の各放射線検出素子7のリセット処理を行う状態から、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行う状態に移行する。このように、放射線の照射開始の検出処理は、検出方法2等の場合も含め、先に説明した仕方によって行われる。
【0170】
このように構成すれば、指示信号が送信される前に、放射線画像撮影装置1のポジショニング等で放射線画像撮影装置1に患者の身体がぶつかったり放射線画像撮影装置1が患者の身体から強い圧力を受ける等しても、放射線画像撮影装置1は放射線の照射開始の検出処理を行っていないため、放射線の照射開始が誤検出されることが的確に防止される。
【0171】
また、指示信号が送信されるまでの間、リークデータdleak等の、比較的大きな電力を消費する読み出し動作を行わないため、その分、電力の消費を抑制することが可能となるといったメリットもある。
【0172】
なお、この場合、例えば、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始の検出処理を開始した時点(すなわち指示信号を受信した時点)でコンソール58に放射線の照射開始の検出処理を開始した旨を表す信号を送信し、コンソール58の表示部58a上に、その旨を表示するように構成することも可能である。
【0173】
また、上記のように放射線画像撮影装置1が所定回数の短周期のリセット処理を行っている間や検出動作を1回分行わない間に、携帯端末70等から指示信号が送信されてくる場合もあり得る。そのような場合には、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記の短周期のリセット処理を行っている期間や検出動作を1回分行わない期間が終了した時点で、すぐに放射線の照射開始の検出処理に移行するように構成される。
【0174】
[放射線の照射開始を検出した場合の処理について]
放射線画像撮影装置1は、上記のように、指示信号送信手段から指示信号を受信すると、その時点で、放射線の照射開始の検出処理を開始する。
【0175】
そして、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、読み出したリークデータdleakが閾値dleak_thを越える等して放射線の照射が開始されたことを検出すると、アンテナ装置41等の通信手段を介して、放射線画像撮影システム50の報知装置に対して、放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信するようになっている。
【0176】
本実施形態では、放射線画像撮影システム50は、音声や表示により放射線技師に報知する報知手段を備えており、報知装置は、放射線画像撮影装置1から上記の検出信号を受信すると、報知手段から音声を発声したり表示を行う等して、放射線技師に対して、放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知するようになっている。
【0177】
本実施形態では、前述したように、コンソール58がこの報知装置として機能するように構成されており、コンソール58の表示部58aやスピーカーが報知手段として機能するようになっている。そして、報知装置としてのコンソール58は、放射線画像撮影装置1から上記の検出信号を受信すると、スピーカーからブザー音を発声させたり、或いは、表示部58a上に放射線画像撮影装置1が照射開始を検出した旨を表示する等して、放射線技師に報知するようになっている。
【0178】
なお、例えば図24に示した携帯端末70に、表示部71や図示しないスピーカー等を設けておき、この携帯端末70を報知装置として機能させるように構成することも可能である。その場合、表示部71やスピーカーが報知手段として機能することになる。
【0179】
また、コンソール58や携帯端末70を報知装置として機能させるように構成する代わりに、放射線画像撮影装置1自体で、放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知するように構成することも可能である。この場合、例えば、放射線画像撮影装置1内に設けられたスピーカーを発声させたり、インジケーター40(図1参照)を所定の明滅の仕方や色等で点灯させる等して、放射線の照射が開始されたことを検出したことを、音声や表示により報知するように構成される。すなわち、この場合、インジケーター40やスピーカーが報知手段として機能する。
【0180】
このように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出した際に、報知装置に検出信号を送信し、報知装置で、放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことを報知するように構成すると、以下のような有益な作用効果が得られる。
【0181】
すなわち、前述したように、放射線技師は、放射線発生装置55の曝射スイッチ56(図11や図12参照)を操作することで、放射線源52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させるが、放射線技師が曝射スイッチ56を操作して放射線源52から放射線を照射させると同時或いはその直後に報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことが報知された場合には、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を正常に検出したと判断することができる。
【0182】
一方、放射線技師が曝射スイッチ56を操作していないにもかかわらず、報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことが報知された場合には、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したと判断することができる。
【0183】
このように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出した際に、報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことを報知するように構成することで、放射線技師は、放射線画像撮影装置1による放射線の照射開始の検出が、正常な検出であるか誤検出であるかを的確に判断することが可能となる。
【0184】
そして、放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が誤検出された場合には、放射線画像撮影装置1ではその後の電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理等が自動的に行われるが、放射線技師は、誤検出後、放射線画像撮影装置1で現在どのような処理が行われているか分からないため、そのような状態の放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しない。
【0185】
このように、放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が誤検出された場合には、放射線技師が、誤検出を生じた放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射することを的確に回避することが可能となる。また、それとともに、このような状態の放射線画像撮影装置1に対して放射線を無駄に照射してしまうことが防止されるため、被写体である患者の身体への被曝線量が増大してしまうことを的確に防止することが可能となる。
【0186】
なお、上記の曝射スイッチ56(図11や図12参照)は、一般的に2段ストローク構造をとり、最初のストローク分だけ放射線技師が押圧操作すると、音声で告知する機能が付与されていることがある。そのため、上記のように放射線の照射が開始されたことを検出した放射線画像撮影装置1から検出信号が送信されて、コンソール58や放射線技師が保持する携帯端末70(図24参照)のスピーカーから発声させて報知するように構成する場合には、曝射スイッチ56の操作のために前室R2にいる放射線技師は、曝射スイッチ56の操作に伴う音声に引き続いて、報知手段からの音を聞くことになる。
【0187】
そのため、このような場合には、両者を混同することがないように、放射線画像撮影装置1からの検出信号に基づくコンソール58や携帯端末70等の報知手段からの発声の持続時間を、曝射スイッチ56からの音声の持続時間よりも長くするように(例えば数倍の時間になるように)設定しておくことが好ましい。
【0188】
また、前述したように、放射線画像撮影装置1から放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号を送信し、コンソール58でこの信号に応じて音声を発声させるように構成する場合には、上記の2種類の音声を含めて計3種類の音声が混在する状態になる。そのため、これらの各種の音声を、放射線技師が弁別して認識することができるように制御する(すなわち音声の持続時間を変えたり言語で内容を伝えたりするようにして制御する)ことが好ましい。
【0189】
さらに、曝射スイッチ56(図11や図12参照)の操作に伴い音声告知機能が付与されていない場合には、放射線画像撮影装置1からの放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号の送信に伴うコンソール58での音声告知と、放射線の照射が開始されたことを検出した放射線画像撮影装置1からの検出信号の送信に伴うコンソール58や携帯端末70での発声報知の、2種類の音声による告知や報知が行われることになる。
【0190】
このような場合、放射線技師の撮影フローを加味すると、上記の検出処理への移行可能を表す音声告知は、携帯端末70や放射線画像撮影装置1自体で行い、放射線の照射開始検出による報知は、コンソール58や携帯端末70で行うことが好ましい。このように構成すれば、撮影室R1と前室R2との間の移動等を加味した場合、放射線技師が確実に音声による告知や報知を認識することが可能となる。
【0191】
一方、前述したように、放射線技師が曝射スイッチ56を操作していないにもかかわらず、報知装置で放射線画像撮影装置1により放射線の照射開始が検出されたことが報知された場合には、曝射スイッチ56は未操作状態であるので、曝射スイッチ56の操作音との混同は生じない。
【0192】
しかし、放射線技師自身が撮影室R1内にいる可能性もあり、この場合にはコンソール58からの音声による告知が聞こえない。そのため、放射線の照射が開始されたことを検出(この場合は誤検出)した放射線画像撮影装置1からの検出信号の送信に伴って音声による報知をする際には、コンソール58(或いは前室R2)と放射線画像撮影装置1(或いは撮影室R1)の両方で報知するように構成することが好ましい。
【0193】
ところで、前述したように、本発明では、基本的には、放射線画像撮影装置1は、放射線発生装置55(図11や図12参照)との間で信号等のやり取りを行わず、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行うように構成されている。
【0194】
しかし、上記のように放射線発生装置55との間で連携をとらずに撮影を行う撮影方式(以下、非連携方式という。)だけでなく、前述した従来のように放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが互いに信号や情報等のやり取りを行いながら放射線画像撮影を行う連携方式でも撮影を行うように構成することも可能である。
【0195】
そして、その際、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、すなわち、例えば放射線技師がコンソール58を操作して撮影方式として連携方式を選択した場合には、上記の2種類の音声による告知や報知、すなわち放射線画像撮影装置1からの放射線の照射開始の検出処理に移行できる状態である旨を表す信号の送信に伴うコンソール58での音声告知や、放射線の照射が開始されたことを検出した放射線画像撮影装置1からの検出信号の送信に伴うコンソール58や携帯端末70での発声報知は行わないように制御されることが好ましい。
【0196】
[放射線の照射開始を誤検出した場合の処理について]
以下、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出した場合の処理について説明する。
【0197】
図23の中段に示すように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出した場合でも、放射線画像撮影装置1ではそれが正常な検出であるか誤検出であるかを判断できないため、上記と同様に、本実施形態の報知装置であるコンソール58に対して、放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信する。
【0198】
そして、報知装置であるコンソール58が、音声や表示により、放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知すると、上記のように、例えば曝射スイッチ56を操作していない放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したと判断する。
【0199】
この場合、放射線の照射開始を誤検出した放射線画像撮影装置1で、そのまま電荷蓄積状態への移行や画像データDの読み出し処理、およびその後のオフセットデータOの読み出し処理等の各処理を行わせても、読み出された画像データD等は使い物にならないうえ、その分、電力が無駄に消費される。また、被写体である患者は、それらの処理が終了するまで長い時間待たなければならず、患者にかかる負担も増大する。
【0200】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1が放射線の照射が開始されたことを誤検出した場合には、放射線技師は、放射線画像撮影装置1における処理を強制的に停止させるようになっている。
【0201】
具体的には、例えばコンソール58や携帯端末70をキャンセル信号送信手段として機能させ(或いは放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38等をキャンセル信号送信手段として機能させてもよい。)、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したと判断した放射線技師は、キャンセル信号送信手段を操作して、放射線画像撮影装置1に対して、行っている処理を停止することを指示するキャンセル信号を送信する。
【0202】
そして、放射線画像撮影装置1は、キャンセル信号を受信すると、その時点で行っている処理を停止する。そして、各放射線検出素子7内に暗電荷等の電荷が蓄積されてしまっている可能性があるため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、前述した短周期のリセット処理(図23の最上段参照)を行う状態に戻るようになっている。
【0203】
なお、この場合、例えば、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、キャンセル信号を受信した段階で、画像データDやオフセットデータOを読み出したか否かが分かっている。そして、今回の誤検出により読み出されたこれらのデータは不要なデータである。
【0204】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子のリセット処理を行う状態に戻るとともに、それまでの処理で得られた画像データDやオフセットデータOが記憶手段23(図7等参照)に保存されている場合には、それらのデータを破棄するようになっている。
【0205】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1がキャンセル信号を受信した場合、上記のように、短周期のリセット処理(図23の最上段参照)を行う状態に戻るため、放射線画像撮影装置1に放射線の照射開始の検出処理を行わせるためには、携帯端末70等の指示信号送信手段から、再度、指示信号を送信することが必要となる。
【0206】
一方、放射線技師が、放射線発生装置55の曝射スイッチ56を操作して、放射線源52から放射線画像撮影装置1に放射線を照射すると同時或いはその直後に、報知装置であるコンソール58が、放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知した場合には、上記のように、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を正常に検出したと判断する。
【0207】
そして、この場合は、放射線技師は、放射線画像撮影装置1に画像データDの読み出し処理等の各処理を自動的に行わせるようにするために、図23の下段に示すように、コンソール58等や放射線画像撮影装置1に対して何らの操作も行わずに放置する。すなわち、放射線画像撮影装置1に対してキャンセル信号を送信するような処理等を行わない。
【0208】
放射線画像撮影装置1は、図16や図20等に示したように、放射線の照射開始を検出すると、電荷蓄積状態に移行した後、画像データDの読み出し処理を行う。そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コンソール58にプレビュー画像用のデータを送信し、コンソール58は、送信されてきたプレビュー画像用のデータに基づいてプレビュー画像を生成して表示部58a上に表示させる。
【0209】
なお、放射線技師がコンソール58の表示部58a上に表示されたプレビュー画像を確認して再撮影の要否等を判断することは、前述した通りである。また、再撮影を行うと判断された場合には、放射線画像撮影装置1は、その後の処理を停止し、短周期のリセット処理を行う状態に戻される。
【0210】
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、プレビュー画像用のデータを送信すると、続いて、オフセットデータOの読み出し処理を行わせる。そして、プレビュー画像用のデータとして送信した画像データD以外の残りの各画像データDと各オフセットデータOとをコンソール58に送信する。
【0211】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、画像データD等に基づいて真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正処理や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成する。本実施形態では、以上のようにして、放射線画像撮影が行われる。
【0212】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを自ら報知したり、或いは、コンソール58等の報知装置に検出信号を送信して放射線画像撮影装置1により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知させる。
【0213】
そのため、放射線技師は、自らが曝射スイッチ56を操作したために放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち正常な検出)、放射線を照射していないにもかかわらず放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出したのか(すなわち誤検出)を的確に認識することが可能となる。
【0214】
そして、放射線技師が、放射線画像撮影装置1が放射線の非照射時に放射線の照射開始を誤検出したと判断した場合に、そのような放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しないようにすることで、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されることを的確に回避することが可能となる。
【0215】
また、そのため、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しても再撮影が必要になり、再度、放射線が照射されることにより、被写体である患者の身体への被曝線量が増大することを的確に防止することが可能となる。
【0216】
一方、本実施形態のように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したことを認識した放射線技師が、放射線画像撮影装置1における各処理を停止させ、速やかに短周期のリセット処理を行う状態に戻すように構成することで、誤検出により放射線画像撮影装置1で行われる各処理が終了するまで待たずに、次の撮影動作に移ることが可能となる。
【0217】
そのため、放射線画像撮影の一連の処理を速やかに終了させることが可能となり、放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1が放射線技師にとって使い勝手がよいものとなる。また、それとともに、被写体である患者にとっても次の撮影まで長い時間待つ必要がなくなるため、患者にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0218】
なお、本発明は、前述したように、放射線画像撮影装置1が上記の検出方法1や検出方法2、或いはさらに改良された検出方法に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成されている場合だけでなく、例えば、放射線画像撮影装置1内に、バイアス線9や結線10(図7等参照)中を流れる電流iを検出する電流検出手段や、照射された放射線の線量等を検出するセンサー等を設けておき、それらの出力値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成されている放射線画像撮影装置についても適用することが可能である。
【0219】
そして、このように、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出するように構成するとともに、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線画像撮影装置が放射線の照射開始を検出したことを自ら報知したり、或いは、報知装置に検出信号を送信して放射線画像撮影装置により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知させるように構成することで、上記の本実施形態の場合と全く同様の有益な効果を得ることが可能となる。
【0220】
一方、上記の本実施形態のように、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出して、放射線画像撮影装置1から検出信号が送信されてきた時点で、例えば、コンソール58から放射線発生装置55に信号を送信し、曝射スイッチ56をそれ以上操作できないように、或いは、その後、曝射スイッチ56が操作されても放射線源52から放射線を照射させないようにするように構成することも可能である。
【0221】
この場合、例えば、放射線発生装置55は、コンソール58から上記の信号を受信した後、所定の期間の間だけ曝射スイッチ56を操作できないようにしたり、所定の期間内に曝射スイッチ56が操作されても放射線源52から放射線を照射させないように構成される。
【0222】
このように構成しても、放射線技師が放射線画像撮影装置1に放射線を照射させて、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を正常に検出した場合には、その後、所定期間、曝射スイッチ56が操作できなくなる等しても、放射線画像撮影装置1は画像データDの読み出し処理等を行っておりそもそも放射線を照射できる状態ではないため、別段、不都合はない。
【0223】
一方、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出した場合、仮に放射線技師がそれに気付かずに放射線画像撮影装置1に放射線を照射させようとしても、少なくとも所定期間の間は、曝射スイッチ56が操作できなくなる等して、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない。
【0224】
そのため、被写体である患者に無駄に放射線が照射されて患者の被曝線量が増大することを的確に防止することが可能となるとともに、放射線技師は、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を誤検出したことに気付いて、放射線画像撮影装置1が自動的に行っている画像データDの読み出し処理等の各処理を停止させる等の適切な処理を行わせることが可能となる。
【0225】
また、上記の実施形態では、放射線画像撮影装置1が衝撃等を受けるケースとして、放射線画像撮影装置1をベッドBと患者Hの身体との間に差し込んだり、患者の身体に直接あてがったりする、図12に示した放射線画像撮影システム50の場合を念頭において説明した。
【0226】
しかし、例えば図11に示した放射線画像撮影システム50においても、上記の検出方法1や検出方法2等を用いて装置自体で放射線の照射開始を検出するように構成された放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填するような場合に、放射線画像撮影装置1が比較的強い衝撃を受ける場合があり、それに基づいて放射線画像撮影装置1で誤検出が生じる場合があり得る。
【0227】
従って、このような場合にも、上記の本発明を適用することで、仮に放射線画像撮影装置1が放射線の非照射時に放射線の照射開始を誤検出した場合には、放射線技師がそれに気付き、そのような放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射しないようにすることが可能となる。
【0228】
そのため、誤検出に基づいて各処理を行っている放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されることを的確に回避することが可能となる等の、上記の実施形態と全く同様の有益な効果を得ることが可能となる。
【0229】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0230】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
38 切替スイッチ(指示信号送信手段、キャンセル信号送信手段)
39 コネクター(通信手段)
40 インジケーター(報知手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
52 放射線源
55 放射線発生装置
58 コンソール(報知装置、指示信号送信手段、キャンセル信号送信手段)
58a 表示部(報知手段)
70 携帯端末(報知装置、指示信号送信手段、キャンセル信号送信手段)
71 表示部(報知手段)
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
dleak リークデータ
dleak_th 閾値
dth 閾値
q 電荷
r 小領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
報知手段を備える報知装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、前記報知装置に放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信し、
前記報知装置は、前記放射線画像撮影装置からの前記検出信号を受信すると、前記報知手段を介して、前記放射線画像撮影装置により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記リークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記各放射線検出素子に残存する電荷を前記信号線に放出させる前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせることを特徴とする請求項3に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記各放射線検出素子から照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記放射線画像撮影装置に対して、放射線の照射が開始されたことを検出する検出処理を開始することを指示する指示信号を送信可能な指示信号送信手段を備え、
前記放射線画像撮影装置は、前記指示信号を受信する前は、前記各放射線検出素子のリセット処理を行い、前記指示信号を受信すると、前記検出処理に移行することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記放射線画像撮影装置に対して、行っている処理を停止することを指示するキャンセル信号を送信可能なキャンセル信号送信手段を備え、
前記放射線画像撮影装置は、前記キャンセル信号を受信すると、その時点で行っている処理を停止して、前記各放射線検出素子のリセット処理を行う状態に戻ることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記放射線画像撮影装置は、前記各放射線検出素子のリセット処理を行う状態に戻るとともに、それまでの処理で得られたデータがある場合には当該データを破棄することを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置に前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線発生装置と、
報知手段を備える報知装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、前記報知装置に放射線の照射開始を検出したことを表す検出信号を送信し、
前記報知装置は、前記放射線画像撮影装置からの前記検出信号を受信すると、前記報知手段を介して、前記放射線画像撮影装置により放射線の照射が開始されたことを検出したことを報知することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記リークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記各放射線検出素子に残存する電荷を前記信号線に放出させる前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせることを特徴とする請求項3に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記各放射線検出素子から照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記放射線画像撮影装置に対して、放射線の照射が開始されたことを検出する検出処理を開始することを指示する指示信号を送信可能な指示信号送信手段を備え、
前記放射線画像撮影装置は、前記指示信号を受信する前は、前記各放射線検出素子のリセット処理を行い、前記指示信号を受信すると、前記検出処理に移行することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記放射線画像撮影装置に対して、行っている処理を停止することを指示するキャンセル信号を送信可能なキャンセル信号送信手段を備え、
前記放射線画像撮影装置は、前記キャンセル信号を受信すると、その時点で行っている処理を停止して、前記各放射線検出素子のリセット処理を行う状態に戻ることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記放射線画像撮影装置は、前記各放射線検出素子のリセット処理を行う状態に戻るとともに、それまでの処理で得られたデータがある場合には当該データを破棄することを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記各読み出し回路とを駆動させて前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記放射線源から放射線の照射が開始されたことを検出するように構成されており、
かつ、放射線の照射が開始されたことを検出すると、放射線の照射開始を検出したことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−106919(P2013−106919A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257223(P2011−257223)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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