説明

放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置

【課題】再撮影が必要となった場合に速やかに再撮影を行うことが可能な放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】放射線画像撮影システムは、放射線画像撮影装置1と、放射線発生装置と、コンソールとを備え、放射線画像撮影装置1の制御手段は、放射線画像撮影が終了すると、間引きデータDtをコンソールに送信し、コンソールは、間引きデータDtに基づいて表示部上にプレビュー画像p_preを表示し、入力手段を介して当該プレビュー画像p_preを否認する旨の操作がなされた場合には、放射線画像撮影装置1に対して一連の処理を停止することを指示する停止信号を送信し、放射線画像撮影装置1の制御手段は、コンソールから停止信号を受信すると、その時点で行っている一連の処理を停止して、各機能部の作動状態を放射線画像撮影前の作動状態に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に係り、特に、画像データを取得する放射線画像撮影装置および画像データに基づいて放射線画像を生成するコンソールを備える放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台等と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置やそれを用いた放射線画像撮影システムでは、例えば特許文献4に記載されているように、放射線画像撮影前に、各放射線検出素子7(例えば後述する図7等参照)内に残存する電荷を放出させる各放射線検出素子7のリセット処理が行われる。
【0005】
そして、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されると、各走査線5にオフ電圧が印加され、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)からなる各スイッチ手段8がオフ状態とされて、各放射線検出素子7内に放射線の照射により発生した電荷を蓄積される電荷蓄積状態に移行する。
【0006】
そして、各放射線検出素子7から画像データDを読み出した後、読み出した画像データDの中から所定の割合でデータを間引いた間引きデータDtをコンソール58(例えば後述する図11や図12参照)に送信し、コンソール58の表示部58a上にプレビュー画像(簡易画像)を表示する。なお、コンソール58は、特許文献4におけるコントロールPCに相当する。
【0007】
一方、放射線画像撮影装置では、間引きデータDtを送信すると、残りの画像データDを送信した後、再度、各放射線検出素子7のリセット処理を行い、その後、各放射線検出素子7ごとに読み出した画像データDに重畳されている暗電荷(暗電流ともいう。)に起因するオフセット分をオフセットデータOとして読み出すオフセットデータOの読み出し処理を行う。
【0008】
そして、オフセットデータOの読み出し処理で読み出された各オフセットデータOをコンソール58に送信する。そして、コンソール58では、画像データDやオフセットデータOに対して画像処理を行って、最終的な放射線画像を生成する。このように放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムが構成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2002−330429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、放射線画像撮影システムが上記のように構成されていると、例えば、コンソール58の表示部58a上に表示されたプレビュー画像に、何らかの原因で被写体が撮影されていなかったり、被写体が画像中の適切な位置に撮影されていない等する場合がある。
【0011】
このような場合、プレビュー画像を見た放射線技師が、再撮影が必要であると判断しても、上記のような放射線画像撮影システムでは、放射線画像撮影装置は、上記のように、残りの画像データDの送信や、再度の各放射線検出素子7のリセット処理、オフセットデータOの読み出し処理、オフセットデータOの送信等を続けて自動的に行ってしまう。
【0012】
そのため、放射線技師は、それらの一連の処理が終了するまで、再撮影を行うことができない場合があった。しかし、これでは、放射線画像撮影システムが放射線技師にとって使い勝手が悪いものとなる。
【0013】
また、放射線画像撮影装置が各機能部に電力を供給するバッテリーを内蔵する装置である場合には、送信しても意味がない画像データDを送信したり、必要のないオフセットデータOの読み出し処理やオフセットデータOの送信が行われるため、その分、バッテリーの電力が無駄に消費される。そのため、バッテリーにおける電力切れが早くなり、バッテリーに対する1回の充電あたりの撮影効率が悪化してしまうといった問題が生じる虞れがあった。
【0014】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、再撮影が必要となった場合に速やかに再撮影を行うことが可能な放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。また、再撮影が必要となった場合に不必要になった処理を行わず、バッテリーの消耗を防止することが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置と通信可能な通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と

前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記画像データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影が終了すると、読み出された前記画像データの中から所定の割合でデータを間引いた間引きデータを前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記間引きデータに基づいて表示部上にプレビュー画像を表示し、入力手段を介して当該プレビュー画像を否認する旨の操作がなされた場合には、前記放射線画像撮影装置に対して一連の処理を停止することを指示する停止信号を送信し、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記コンソールから前記停止信号を受信すると、その時点で行っている一連の処理を停止して、前記走査駆動手段を含む各機能部の作動状態を放射線画像撮影前の作動状態に戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、放射線技師によりプレビュー画像を否認する旨の操作が行われた場合には、停止信号がコンソールから放射線画像撮影装置に即座に送信される。そして、放射線画像撮影装置の制御手段は、停止信号を受信すると、その時点で行っている一連の処理を即座に停止して、走査駆動手段15を含む各機能部の作動状態を放射線画像撮影前の作動状態に戻す。
【0017】
このように、放射線技師がプレビュー画像を否認すると放射線画像撮影装置が速やかに放射線画像撮影前の作動状態に戻り、放射線の照射を許容できる状態になるため、プレビュー画像を否認した放射線技師は、速やかに放射線を照射させて再撮影を行うことが可能となる。そのため、放射線画像撮影システムが放射線技師にとって使い勝手が良いものとなる。
【0018】
また、放射線画像撮影装置がバッテリーを内蔵する装置である場合、不必要なオフセットデータOの読み出し処理を行ったり、送信しても意味がない画像データDやオフセットデータOを送信する等の不必要な処理を行うことがなくなるため、バッテリーの電力が無駄に消費されることを的確に防止することが可能となる。
【0019】
そのため、バッテリーの消耗が的確に防止され、バッテリーにおける電力切れを遅延させることが可能となる。そして、その分、バッテリーに対する1回の充電あたりの撮影効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】ケーブルを接続した状態の放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図13】1面分のリセット処理におけるタイミングチャートである。
【図14】連携方式における照射開始信号の送信、リセット処理の終了および電荷蓄積状態への移行、インターロック解除信号の送信、および放射線の照射のタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】連携方式における各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】TFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図17】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図18】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図19】検出手法1において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図20】読み出されるリークデータを時系列的にプロットしたグラフである。
【図21】検出手法2において照射開始検出用の画像データの読み出し処理が繰り返し行われる際の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図22】照射開始検出用の画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングおよびオン時間ΔTを表すタイミングチャートである。
【図23】検出手法2において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図24】プレビュー画像が承認された場合の放射線画像撮影装置およびコンソールにおける一連の処理の流れを示す図である。
【図25】画像データの中から間引きデータを抽出する仕方の一例を説明する図である。
【図26】画像データの読み出し処理までの一連の処理シーケンスが繰り返されてオフセットデータの読み出し処理が行われることを説明するタイミングチャートである。
【図27】プレビュー画像が否認された場合の放射線画像撮影装置およびコンソールにおける一連の処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0023】
また、本発明は、以下の実施形態で説明する、センサーパネルSPがハウジング2内に収納されたいわゆる可搬型の放射線画像撮影装置のみならず、例えば支持台等と一体的に
形成された専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。
【0024】
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0025】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。
【0026】
また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0027】
図3に示すように、本実施形態では、コネクター39には、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続できるようになっている。そして、ケーブルCaと接続されることにより、例えば後述するコンソール58(図11や図12参照)との間で信号等を送受信したり、コンソール58に画像データD等を送信することができるようになっている。
【0028】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられている。このように、本実施形態では、コネクター39やアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号を送受信し、コンソール58に画像データD等を送信するための通信手段として機能するようになっている。
【0029】
図2に示すように、筐体2の内部には、基台31の上面側に図示しない鉛の薄板等を介して基板4が配置され、また、基台31の下面側には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、基台31や基板4等と筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材35が設けられている。
【0030】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0031】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0032】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0033】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0034】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0035】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0036】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0037】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0038】
そして、各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0039】
フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0040】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0041】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0042】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0043】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。
【0044】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0045】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位Vが印加されるようになっている。なお、基準電位Vは適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0046】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0047】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0048】
すると、各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、電荷が増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0049】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理や、後述する照射開始検出用の画像データdの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0050】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。相関二重サンプリング回路(CDS
)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。
【0051】
そして、各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。そして、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力する。
【0052】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0053】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only
Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0054】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0055】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24は、前述したコネクター39に接続されており、バッテリー24の充電の際にはコネクター39を介して図示しない充電装置から電力が供給されるようになっている。
【0056】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0057】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
【0058】
撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば、立位撮影用のブッキー装置51Aのみ、或いは、臥位撮影用のブッキー装置51Bのみが設けられていてもよい。
【0059】
本実施形態では、図3に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクター39と、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCとが接続された状態で、放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填することができるようになっている。なお、ブッキー装置51のカセッテ保持部51a内にコネクターCを設けておき、放射線画像撮影装置1が装填
されると自動的にコネクター39とコネクターCとが接続されるように構成することも可能であり、適宜に構成される。
【0060】
図11に示すように、撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0061】
撮影室R1には、撮影室R1内の各装置等や撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0062】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0063】
前室(操作室ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0064】
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0065】
また、本実施形態では、放射線発生装置55は、設定された撮影条件に応じて、放射線の照射開始から設定された時間が経過した時点で、放射線源52からの放射線の照射を終了させるようになっている。
【0066】
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、コンソール58の設置場所は適宜決められる。
【0067】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段を備えている。なお、表示部58をタッチパネル等で構成し、放射線技師が表示部58aにタッチすることで指示等を入力するように構成することも可能である。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
【0068】
本実施形態では、コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1から間引きデータDtが送信されてくると、それに基づいて表示部58a上にプレビュー画像p_preを表示するようになっている。
【0069】
また、コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1から画像データD等
が送信されてくると、画像データD等に基づいて放射線画像pを生成するようになっている。
【0070】
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、撮影室R1に行くことができないような場合、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0071】
放射線画像撮影装置1をこのようにして用いる場合、例えば図3に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクター39にケーブルCを接続して用いると、ケーブルCが放射線技師の作業の邪魔になる場合が多いため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1を単独の状態で用いる場合には、コネクター39にケーブルCを接続せずに使用される。
【0072】
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55や放射線源52Aを病室R3に持ち込むことができないため、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。
【0073】
この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成される。そして、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0074】
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室R1の臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0075】
また、図12に示した回診車71上に構築された放射線画像撮影システム50の場合、コンソール58では、後述する表示部58a上でのプレビュー画像p_preの表示処理までを行い、最終的な放射線画像pの生成等については、当該コンソール58で受信、保存した画像データD等を、生成処理機能を有する別のコンソールに転送して当該別のコンソールで行うように構成することも可能である。
【0076】
[放射線画像撮影装置における画像データDの読み出し処理までの処理について]
ここで、放射線画像撮影システム50において、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射され、各放射線検出素子7からそれぞれ画像データDが読み出されるまでの放射線画像撮影装置1や放射線発生装置50等における処理について説明する。
【0077】
[連携方式について]
図11に示したように、放射線画像撮影システム50が撮影室R1内等に構築されているような場合には、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが中継器54やコンソール58を介して信号のやり取りを行い、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55と連携をとりながら放射線画像撮影を行うことができる。以下、このような撮影方式を連携方式という。
【0078】
[連携方式の場合の処理について]
本実施形態では、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、放射線画像撮影装置1の
制御手段22は、放射線画像撮影前に、まず、各放射線検出素子7のリセット処理を行うようになっている。各放射線検出素子7のリセット処理では、図9に示した処理が走査線5の各ラインL1〜Lxについてそれぞれ行われる。
【0079】
具体的には、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、例えば図13に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(図7参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxに対してオン電圧を順次印加させ、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧を順次印加させてTFT8をオン状態として、各放射線検出素子7内に残存する電荷をそれぞれ信号線6に放出させる。
【0080】
制御手段22は、このようにして、走査線5の最初のラインL1から最終ラインLxまで順次オン電圧を印加して行う1面分のリセット処理Rmを繰り返すようになっている。
【0081】
そして、例えば図14に示すように、1面分のリセット処理Rmの最中に、放射線技師により放射線発生装置55で曝射スイッチ56(図11や図12参照)が操作されて、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射開始信号が送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始信号が送信されてきた時点で行っている1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を終了させる。
【0082】
そして、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて全TFT8をオフ状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0083】
制御手段22は、それと同時に、上記のように1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、放射線発生装置55に対してインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、中継器54を介して放射線画像撮影装置1からインターロック解除信号を受信すると、放射線源52から放射線を照射させる。
【0084】
連携方式では、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で照射開始信号やインターロック解除信号等のやり取りを行いながら、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されるようになっている。
【0085】
また、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにインターロック解除信号を送信すると、所定時間の間、電荷蓄積状態を維持する。そして、所定時間が経過した後、図15に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出すようになっている。なお、図15中の斜線は、その期間に放射線が照射されたことを表す。
【0086】
なお、この場合、放射線源52からの放射線の照射を終了した時点で、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に終了信号を送信するように構成し、放射線画像撮影装置1は、終了信号を受信するとすぐに電荷蓄積状態から画像データDの読み出し処理に移行するように構成することも可能である。
【0087】
[非連携方式について]
また、図12に示したように、放射線画像撮影システム50が回診車71上に構築されている場合のように、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが信号のやり取りを行うことができないような場合もある。以下、このように、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で信号のやり取りを行わずに撮影を行う撮影方式を非連携方式という。
【0088】
なお、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、状況に応じて、連携方式と非連携方式のいずれの方式でも放射線画像撮影を行うことができるようになっているが、連携方式或いは非連携方式のいずれかの方式でしか放射線画像撮影を行うことができない放射線画像撮影装置についても、本発明を適用することが可能である。
【0089】
[非連携方式の場合の処理について]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、この非連携方式では、放射線画像撮影装置1自体で放射線が照射されたことを検出するようになっている。以下、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出する方法として、2つの検出手法を例に挙げて説明する。
【0090】
[検出手法1]
例えば、放射線画像撮影前すなわち放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。ここで、リークデータdleakとは、図16に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0091】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図10に示した画像データDの読み出し処理の場合とは異なり、図17に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、読み出し回路17に読み出し処理を行わせるようになっている。
【0092】
具体的には、図17に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信する。相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。
【0093】
そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0094】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されること等は、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。このようにして、リークデータdleakの読み出し処理が行われるようになっている。
【0095】
しかし、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなり、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になる。
【0096】
そのため、この検出手法1では、図18に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に行うように構成することが望ましい。なお、図18や後述する図19等のTやτについては後で説明する。
【0097】
上記のように放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に行うように構成した場合、前述した放射線源52(図11や図12参照)から放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されると、シンチレーター3で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。
【0098】
そして、このようにして電磁波が各TFT8に照射されると、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図8参照)がそれぞれ増加する。そのため、例えば図19に示すように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に行う場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0099】
なお、図19で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図20の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図19において、「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
【0100】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図20参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
【0101】
[検出手法2]
また、上記の検出手法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図21に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成することも可能である。
【0102】
この場合、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図22に示すように、画像データDの読み出し処理における処理(図10参照)と同様に行われる。なお、図22等におけるΔTについては後で説明する。
【0103】
上記のように放射線画像撮影前に画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図23に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された画像データd(図23では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された画像データd)が、前述した図20に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0104】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを監視するように構成し、読み出された画像データdが予め設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
【0105】
なお、上記の検出手法1や検出手法2において、リークデータdleakや画像データdの読み出し感度を向上させるために、リークデータdleakの各読み出し処理や画像データd
の各読み出し処理の周期τ(図18や図19、図23参照)や、パルス信号Sp1、Sp2の送信間隔T(図18や図19参照)、或いはTFT8にオン電圧を印加する時間ΔT(図22や図23参照)を長くするように構成することも可能である。
【0106】
また、上記の検出手法1や検出手法2の場合も、図19や図23に示すように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして放射線の照射が開始されたことを検出すると、その時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させるようになっている。
【0107】
そして、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過し、放射線の照射が終了した後、制御手段22は、例えば検出手法1の場合には、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点の直前のリセット処理でオン電圧が印加された走査線5(図19の場合は走査線5のラインL4)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図19の場合は走査線5のラインL5)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、本画像としての画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0108】
なお、検出手法2の場合も同様であるが、画像データDの読み出し処理を、走査線5の最初のラインL1からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧順次印加させて行うように構成することも可能である。
【0109】
[放射線技師が介在して撮影を行う場合]
また、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが信号のやり取りを行うことができない、或いは信号のやり取りを行わない非連携方式の場合、上記のように放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するように構成される場合もあるが、放射線技師が介在して放射線画像撮影を行うように構成される場合もある。
【0110】
この場合、例えば、以下のようにして放射線画像撮影を行うように構成される。
【0111】
すなわち、例えば、放射線画像撮影装置1は、放射線画像撮影前に、図13に示した各放射線検出素子7のリセット処理すなわち1面分のリセット処理Rmを予め設定された所定の回数だけ行う。そして、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0112】
そして、このようにして放射線源52(図11や図12参照)からの放射線の照射を許容する状態になった時点で、例えばインジケーター40(図1参照)に所定の色を点灯させる等して作動させて、放射線技師に、放射線源52からの放射線の照射を許容する状態になったことを報知する。この場合、インジケーター40が、放射線源52からの放射線の照射を許容する状態になったことを表す報知手段として機能する。
【0113】
放射線技師は、報知手段であるインジケーター40に所定の色が点灯される等したことを確認すると、放射線発生装置55の曝射スイッチ56(図11や図12参照)を操作して、放射線源52から放射線を照射させる。
【0114】
この場合、放射線源52からの放射線の照射時間はごく短時間であるが、放射線画像撮影装置1自体では、どのタイミングで放射線が照射されるかは分からない。そのため、放
射線の照射が開始されてから終了するまでの間、電荷蓄積状態が継続されるようにするために、電荷蓄積状態を例えば10秒間等の比較的長い時間継続するように構成される。
【0115】
そして、図15に示した場合と同様に、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、所定時間の間、電荷蓄積状態を継続した後、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出すように構成される。なお、以下、このように放射線技師が介在して撮影を行う撮影方式を、単に技師介在方式という。
【0116】
本発明は、上記の連携方式の場合や、非連携方式において放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出する場合(上記の検出手法1、2参照)や技師介在方式の場合等のいずれの場合においても適用することができる。
【0117】
また、上記の連携方式や技師介在方式における放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理や、非連携方式の検出手法1におけるリークデータdleakの読み出し処理(および各放射線検出素子7のリセット処理)や検出手法2における照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を、放射線画像撮影装置1の電源投入直後から行うように構成してもよく、また、放射線技師等による放射線画像撮影装置1に対する開始操作や、コンソール58からの開始信号の送信等をトリガーとして開始するように構成することも可能である。
【0118】
[画像データDの読み出し処理後の各処理について]
[間引きデータの送信]
上記の連携方式および非連携方式(技師介在方式を含む。)のいずれの場合においても、上記のようにして本画像としての画像データDの読み出し処理を終了すると、本実施形態では、図24に示すように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、読み出した画像データDの中から所定の割合でデータを間引いた間引きデータDtをコンソール58に送信するようになっている。
【0119】
すなわち、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、例えば図25に示すように検出部P(図4や図7参照)のn行、m列目の放射線検出素子7(n,m)から読み出された画像データDをD(n,m)で表すとすると、読み出した画像データD(n,m)の中から、例えば図中に斜線を付して示すように予め所定本数(図25の場合は4本)の走査線5の各ラインL1〜Lxごとに1本の割合で指定された走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データD(n,m)を抽出して、間引きデータDtとする。
【0120】
そして、制御手段22は、このようにして抽出した間引きデータDtを、プレビュー画像用のデータとしてコンソール58に送信するようになっている。なお、間引きデータDtや、後述するように画像データD等をコンソール58に送信する際には、間引きデータDt等は圧縮されて送信される。
【0121】
[プレビュー画像の生成、表示]
また、コンソール58は、上記のように放射線画像撮影装置1から間引きデータDtが送信されてくると、間引きデータDtが圧縮されている場合には適宜伸長して元の間引きデータDtを復元した後、それに基づいてプレビュー画像p_preを生成し、生成したプレビュー画像p_preを表示部58a上に表示させるようになっている。
【0122】
なお、間引きデータDtには、下記のように、暗電荷に起因するオフセット分が重畳されている。そのため、プレビュー画像p_preの生成のために、間引きデータDtからオフ
セット分を減算することが必要となるが、図24に示すように、間引きデータDtがコンソール58に送信された時点では、上記のオフセット分に相当する当該撮影におけるオフセットデータOはコンソール58には送信されていない。
【0123】
そこで、間引きデータDtから減算する上記のオフセット分として、例えば特許文献4に記載されているように、前回の撮影で得られたオフセットデータOを用いるように構成することが可能である。また、例えば、プレビュー画像p_pre生成用のオフセット分を、予めコンソール58で各放射線検出素子7ごとに用意しておくように構成することも可能である。
【0124】
そして、プレビュー画像p_preの生成処理においては、コンソール58は、間引きデータDtから上記のオフセット分を減算した値を対数変換する等の簡易な処理を施した後、速やかに生成したプレビュー画像p_preを表示部58a上に表示するようになっている。
【0125】
[オフセットデータの読み出し処理]
そして、表示されたプレビュー画像p_preを見た放射線技師が、画像中に被写体が適切に撮影されており、再撮影は不要であると判断し、入力手段を介してコンソール58に対して当該プレビュー画像p_preを承認する操作を行った場合(或いはプレビュー画像p_preが表示されてから所定時間内に放射線技師によりプレビュー画像p_preを否認する操作が行われない場合。以下同じ。)には、放射線画像撮影装置1は、図24に示すように、続いてオフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。
【0126】
このオフセットデータOの読み出し処理は、前述したように、画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分を、各放射線検出素子7ごとにオフセットデータOとして読み出す処理である。そして、オフセットデータOの読み出し処理は、例えば上記の連携方式の場合には、図26に示すように、画像データDの読み出し処理後に、図15に示した画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して行われることが好ましい。
【0127】
すなわち、放射線画像撮影前のリセット処理から、電荷蓄積状態への移行を経て、画像データDの読み出し処理が行われるまでの処理シーケンス(すなわちゲートドライバー15bから各走査線5へのオン電圧の印加や各読み出し回路17での読み出し動作等)と同じ処理シーケンスで、オフセットデータOの読み出し処理を行うことが望ましい。
【0128】
なお、この場合、オフセットデータOは、上記のように暗電荷に起因するデータのみを読み出す処理であるため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態で行われる。
【0129】
また、上記の非連携方式において上記の検出手法1や検出手法2を採用する場合も同様に、オフセットデータOの読み出し処理を、図19や図23に示した画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して行われることが好ましい。さらに、上記の非連携方式における技師介在方式においても同様に、画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して行われることが好ましい。
【0130】
画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分や、オフセットデータOは、電荷蓄積状態への移行前にTFT8がオフ状態とされてから画像データDやオフセットデータOの読み出し処理でTFT8にオン電圧が印加されるまでの時間(以下、実効蓄積時間という。)が同じ時間であれば、同じ値が読み出される。
【0131】
また、実効蓄積時間が変わると、オフセット分やオフセットデータOは実効蓄積時間に依存して変動する。そして、本発明者らの研究では、その際、オフセット分やオフセットデータOの大きさと実効蓄積時間との関係が必ずしも線形の関係にはならないことが分かっている。
【0132】
しかし、上記のように、オフセットデータOの読み出し処理を、画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して行うように構成すると、走査線5の各ラインL1〜Lxごとに、画像データDの読み出し処理における実効蓄積時間と、オフセットデータOの読み出し処理における実効蓄積時間が同じになる。
【0133】
そのため、画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分と、オフセットデータOとが同じ値になる。そのため、後の画像処理で、画像データDからオフセットデータOを減算するように構成すれば、画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分とオフセットデータOとが的確に相殺され、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因する真の画像データDを算出することが可能となる。そのため、上記のように構成することが好ましい。
【0134】
なお、非連携方式で上記の検出手法1を採用する場合、画像データDの読み出し処理後、オフセットデータOの読み出し処理前に、リークデータdleakの読み出し処理を行わずに各放射線検出素子7のリセット処理のみを行うように構成することも可能である。
【0135】
また、非連携方式で上記の検出手法2を採用する場合、画像データDの読み出し処理後、オフセットデータOの読み出し処理前に、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理の代わりに各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
【0136】
オフセットデータOの読み出し処理では、上記のように放射線は照射されず、放射線の照射開始を検出する必要がないためである。
【0137】
一方、上記のように構成する場合でも、各放射線検出素子7のリセット処理のみを行う場合(検出手法1の場合)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理に代えて各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合(検出手法2の場合)には、オフセットデータOの読み出し処理前に、画像データDの読み出し処理前の周期τ(図19や図23参照)と同じ周期τで走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧がそれぞれ印加されるように構成されることが望ましい。
【0138】
このように構成すれば、走査線5の各ラインL1〜Lxごとに、画像データDの読み出し処理の際の実効蓄積時間と、オフセットデータOの読み出し処理の際の実効蓄積時間とが同じ時間になるためである。
【0139】
[残りの画像データ等の送信および放射線画像の生成]
本実施形態では、上記のオフセットデータOの読み出し処理が終了すると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、図24に示すように、上記の間引きデータDt以外の残りの画像データDとオフセットデータOをコンソール58に送信する。
【0140】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から残りの画像データDとオフセットデータOが送信されてくると、上記のように、各放射線検出素子7ごとに画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データDを算出する。そして、算出した真の画像データDに対してゲイン補正やオフセット補正、欠陥画素補正、撮影部位に応じた諧調処理等の画像処理を行って、最終的な放射線画像pを生成するようになっている。
【0141】
コンソール58は、放射線画像pを生成すると、それを記憶手段59に保存するようになっている。また、生成された放射線画像pは、必要に応じて表示部58aに表示されたり、システム内或いはシステム外の画像表示装置や他のシステムに転送される等の処理が適宜行われる。
【0142】
[プレビュー画像が否認された場合の処理]
ところで、以上の各処理は、上記のように、コンソール58の表示部58a上に表示されたプレビュー画像p_preを見た放射線技師が、再撮影は不要であると判断し、入力手段を介してコンソール58に対して当該プレビュー画像p_preを承認する旨の操作を行った場合に行われる。
【0143】
このように、本実施形態では、プレビュー画像p_preを見た放射線技師が再撮影は不要であると判断した場合(すなわち当該プレビュー画像p_preを承認する旨の操作を行う等した場合)には、図24に示したように、放射線画像撮影装置1では、上記のオフセットデータOの読み出し処理や残りの画像データD等の送信等が、また、コンソール58では画像データD等に基づく放射線画像pの生成処理が、それぞれ自動的に行われるようになっている。
【0144】
一方、プレビュー画像p_preに、何らかの原因で被写体が撮影されていなかったり被写体が画像中の適切な位置に撮影されていないような場合には、放射線技師は、再撮影が必要であると判断する。
【0145】
しかし、このような場合でも、上記のように、間引きデータDtの送信後、自動的にオフセットデータOの読み出し処理や残りの画像データD等の送信等が行われるように構成すると、放射線技師が、それらの一連の処理(具体的には図24の右端に示した残りの画像データD等の送信処理)が終了するまで再撮影を行うことができず、不便に感じられること等の問題が生じ得ることは前述した通りである。
【0146】
すなわち、例えば、前述した技師介在方式で撮影を行う場合、前述したように、放射線画像撮影装置1自体ではどのようなタイミングで放射線が照射されるか分からないため、電荷蓄積状態が、例えば10秒間等の比較的長い時間継続するように構成される。そして、上記のように、オフセットデータOの読み出し処理を、画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して行うように構成すると、オフセットデータOの読み出し処理における電荷蓄積状態も例えば10秒間等の比較的長い時間継続される。
【0147】
そのため、上記のように、間引きデータDtの送信後、自動的にオフセットデータOの読み出し処理等の一連の処理を行うように構成すると、放射線技師がプレビュー画像p_preを否認しても、その後、少なくとも10秒程度は再撮影を行えないことになり、放射線画像撮影システムが放射線技師にとって使い勝手が悪いものとなる等の問題が生じ得る。
【0148】
そこで、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50は、このような問題が生じることを防止するために、以下のように構成されている。なお、以下では、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてもあわせて説明する。
【0149】
本実施形態では、コンソール58は、表示部58a上に表示されたプレビュー画像p_preを見た放射線技師がマウス等の入力手段を介して当該プレビュー画像p_preを否認する旨の操作(具体的には表示部58a上に表示された図示しない「NG」ボタンをクリック
する等の操作)を行った場合には、図27に示すように、放射線画像撮影装置1に対して一連の処理を停止することを指示する停止信号を送信するようになっている。
【0150】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コンソール58から上記の停止信号を受信すると、その時点で行っている一連の処理を停止するようになっている。
【0151】
すなわち、制御手段22は、その時点で行っている各放射線検出素子7のリセット処理等や、電荷蓄積状態における各走査線5へのオフ電圧の印加処理を行っている場合にはそれらの処理を停止する。また、オフセットデータOの読み出し処理を行っている場合には読み出し処理を停止し、或いは、既に残りの画像データD等の送信処理を行っている場合には送信処理を停止する。
【0152】
なお、コンソール58は、停止信号を送信した時点で、既に放射線画像撮影装置1から残りの画像データD等の送信を受けている場合には、それまでに受信した当該撮影に関する上記の残りの画像データD等を、記憶手段59から削除するようになっている。
【0153】
また、停止信号を送信した時点で、既に放射線画像撮影装置1から全ての放射線検出素子7のオフセットデータOを受信している場合には、当該オフセットデータOは、前述したように放射線が照射されない各放射線検出素子7内で発生する暗電荷のみに起因するデータであるため、図27に示したようにその後に送信されてくるプレビュー画像用の間引きデータDtから減算するためのオフセット分として使うことができる。
【0154】
そこで、停止信号を送信した時点で、既に放射線画像撮影装置1から全ての放射線検出素子7のオフセットデータOを受信している場合には、コンソール58で当該オフセットデータOを保存しておき、その後に送信されてくる間引きデータDtに基づくプレビュー画像p_preの生成処理に用いるように構成することも可能である。
【0155】
一方、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コンソール58から停止信号を受信してその時点で行っている一連の処理を停止すると、走査駆動手段15を含む各機能部の作動状態を、放射線画像撮影前の作動状態に戻すようになっている。
【0156】
すなわち、上記の連携方式や技師介在方式の場合には、制御手段22は、停止信号を受信すると一連の処理を停止して、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理を行わせる状態(図13や図15等参照)に戻す。
【0157】
また、上記の非連携方式において検出手法1を採用する場合には、制御手段22は、停止信号を受信すると一連の処理を停止して、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に行わせる状態(図18や図19等参照)に戻す。
【0158】
さらに、上記の非連携方式において検出手法2を採用する場合には、制御手段22は、停止信号を受信すると一連の処理を停止して、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行わせる状態(図21や図23等参照)に戻すようになっている。
【0159】
このように構成すると、最初の撮影後にコンソール58の表示部58a上に表示されたプレビュー画像p_preを見た放射線技師が、再撮影が必要であると判断し、入力手段を介してコンソール58に対して当該プレビュー画像p_preを否認する操作を行った場合、コンソール58から放射線画像撮影装置1に対して停止信号が即座に送信される。そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、その時点で行っている一連の処理を即座に停止
して、走査駆動手段15を含む各機能部の作動状態を、放射線画像撮影前の作動状態に戻す。
【0160】
そして、図27に示したように、放射線画像撮影装置1は、放射線技師がプレビュー画像p_preを否認すると速やかに放射線画像撮影前の作動状態に戻り、放射線源52(図11や図12参照)からの放射線の照射を許容できる状態になる。
【0161】
そのため、プレビュー画像p_preを否認した放射線技師は、上記のように放射線画像撮影装置1がオフセットデータOの読み出し処理や残りの画像データD等の送信処理等の一連の処理を終了するまで待つ必要がなく、図27に示したように、速やかに曝射スイッチ56(図11や図12参照)を操作して放射線画像撮影装置1に放射線を照射させて、再撮影を行うことが可能となる。
【0162】
また、本実施形態のように、放射線画像撮影装置1がバッテリー24(図7等参照)を内蔵する装置である場合、不必要なオフセットデータOの読み出し処理を行ったり、送信しても意味がない画像データDやオフセットデータOを送信する等の不必要な処理を行うことがなくなるため、バッテリー24の電力が無駄に消費されることを的確に防止することが可能となる。
【0163】
なお、放射線技師によりプレビュー画像p_preが否認されると、先の放射線画像撮影(すなわち再撮影前の放射線画像撮影)で読み出された画像データD等は不要になる。そのため、上記の停止信号が送信されてきた場合、放射線画像撮影装置1で、先の撮影で読み出され記憶手段23(図7等参照)中に保存されている画像データD等を、記憶手段23中から削除するように構成することも可能である。
【0164】
また、画像データD等を記憶手段23中から削除するために電力が消費されることを防止するために、例えば不要になった画像データD等を記憶手段23中に保存したままとし、再撮影で読み出された画像データD等を当該不要となった画像データD等に上書きするようにして保存するように構成することも可能である。
【0165】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1によれば、放射線技師によりコンソール58の表示部58a上に表示されたプレビュー画像p_preを否認する旨の操作が行われた場合には、停止信号がコンソール58から放射線画像撮影装置1に即座に送信される。そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、停止信号を受信すると、その時点で行っている一連の処理を即座に停止して、走査駆動手段15を含む各機能部の作動状態を放射線画像撮影前の作動状態に戻す(図27参照)。
【0166】
このように、放射線画像撮影装置1は、放射線技師がプレビュー画像p_preを否認すると速やかに放射線画像撮影前の作動状態に戻り、放射線の照射を許容できる状態になるため、プレビュー画像p_preを否認した放射線技師は、放射線画像撮影装置1がオフセットデータOの読み出し処理等の一連の処理を終了するまで待たずに、速やかに放射線を照射させて再撮影を行うことが可能となる。
【0167】
そのため、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50が、放射線技師にとって使い勝手が良いものとなる。なお、これは、本実施形態のような可搬型の放射線画像撮影装置1のみならず、例えば図示を省略する支持台等と一体的に形成された専用機型の放射線画像撮影装置1等に対しても言えることである。
【0168】
また、本実施形態のように、放射線画像撮影装置1がバッテリー24を内蔵する装置である場合、不必要なオフセットデータOの読み出し処理を行ったり、送信しても意味がな
い画像データDやオフセットデータOを送信する等の不必要な処理を行うことがなくなるため、バッテリー24の電力が無駄に消費されることを的確に防止することが可能となる。
【0169】
そのため、バッテリー24の消耗が的確に防止され、バッテリー24における電力切れを遅延させることが可能となる。そして、その分、バッテリー24に対する1回の充電あたりの撮影効率を向上させることが可能となる。
【0170】
特に、放射線画像撮影システム50が例えば図12に示したように回診車71上に構築されていて、近くにバッテリー24を充電できるクレードル等の設備がないような場合には、バッテリー24に対する1回の充電あたりの撮影効率を向上させることが重要な課題となるが、本発明を採用すれば上記のようにバッテリー24に対する1回の充電あたりの撮影効率を向上させることが可能となるため、このような場合には特に有効な作用効果を奏することが可能となる。
【0171】
なお、上記の実施形態では、非連携方式において放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出する手法として、上記の検出手法1、2のように、走査駆動手段15や読み出し回路17等の放射線画像撮影装置1に既設の各機能部を用いて検出する手法について説明した。
【0172】
しかし、例えば、放射線画像撮影装置1内に放射線の照射開始を検出するためのセンサーや検出手段を新たに設ける等して、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である(例えば米国特許第7211803号明細書や特開2009−219538号公報等参照)。そして、放射線画像撮影装置1がこのように構成されている場合にも、本発明を適用することができる。
【0173】
また、本発明が上記の実施形態に限定されず、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0174】
1 放射線画像撮影装置
5、L1〜Lx 走査線
6 信号線
7 放射線画像撮影装置
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
24 バッテリー
39 コネクター(通信手段)
40 インジケーター(報知手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
52 放射線源
55 放射線発生装置
58 コンソール
58a 表示部
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
dleak リークデータ
dleak_th 閾値
Dt 間引きデータ
dth 閾値
O オフセットデータ
p 放射線画像
p_pre プレビュー画像
q 電荷
r 小領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置と通信可能な通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記画像データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影が終了すると、読み出された前記画像データの中から所定の割合でデータを間引いた間引きデータを前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記間引きデータに基づいて表示部上にプレビュー画像を表示し、入力手段を介して当該プレビュー画像を否認する旨の操作がなされた場合には、前記放射線画像撮影装置に対して一連の処理を停止することを指示する停止信号を送信し、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記コンソールから前記停止信号を受信すると、その時点で行っている一連の処理を停止して、前記走査駆動手段を含む各機能部の作動状態を放射線画像撮影前の作動状態に戻すことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
前記間引きデータの前記コンソールへの送信後、前記各放射線検出素子ごとの前記画像データに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分をオフセットデータとして読み出すオフセットデータの読み出し処理を行い、前記オフセットデータの読み出し処理後に、残りの前記画像データおよび前記オフセットデータを前記コンソールに送信するように構成されており、
前記コンソールから前記停止信号を受信すると、その時点で前記オフセットデータの読み出し処理を行っている場合には当該オフセットデータの読み出し処理を停止し、または、前記残りの画像データおよび前記オフセットデータの送信処理を行っている場合には当該送信処理を停止して、前記走査駆動手段を含む各機能部の作動状態を放射線画像撮影前の作動状態に戻すことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
放射線画像撮影前に、少なくとも前記走査駆動手段を制御して前記各放射線検出素子に残存する電荷を前記信号線にそれぞれ放出させる前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせ、
前記コンソールから前記停止信号を受信すると、放射線画像撮影前の前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせる状態に戻すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記放射線画像撮影装置は、前記放射線源からの放射線の照射を許容する状態になったことを表す報知手段を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、放射線画像撮影前に、所定回数の前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせると、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して放射線の照射により発生した電荷を前記各放射線検出素子内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させるとともに、前記報知手段を作動させて前記放射線源からの放射線の照射を許容する状態になったことを報知することを特徴とする請求項3に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記各放射線検出素子に残存する電荷を前記信号線にそれぞれ放出させる前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせ、
前記コンソールから前記停止信号を受信すると、放射線画像撮影前の前記リークデータの読み出し処理と前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせる状態に戻すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の前記画像データの読み出し処理を行わせ、
前記コンソールから前記停止信号を受信すると、放射線画像撮影前の前記照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせる状態に戻すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、読み出した前記リークデータまたは前記画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出すると、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して放射線の照射により発生した電荷を前記各放射線検出素子内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行した後、前記各放射線検出素子からの本画像としての前記画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記放射線画像撮影装置は、各機能部に電力を供給するバッテリーを内蔵していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置と通信可能な通信手段と、
を備え、
前記制御手段は、
放射線画像撮影が終了すると、読み出された前記画像データの中から所定の割合でデータを間引いた間引きデータをコンソールに送信し、
前記コンソールから停止信号を受信すると、その時点で行っている一連の処理を停止して、前記走査駆動手段および前記読み出し回路を含む各機能部の作動状態を放射線画像撮影前の作動状態に戻すことを特徴とする放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−440(P2013−440A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136056(P2011−136056)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】