説明

放射線画像検出装置

【課題】放射線画像検出装置の感度低下を抑えつつ、耐衝撃性を向上させる。
【解決手段】少なくとも全放射線撮影領域を含む底部を有する凹部が形成された基板(14)と、放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有し、前記基板の凹部に設けられる蛍光体(18A、18B)と、前記蛍光体が設けられた凹部とは反対側に設けられ、前記蛍光体から発せられた蛍光を光電変換する光電変換素子の群(26)と、前記蛍光体を支持する支持体(12A,12B)と、前記支持体と前記基板とを固定する固定部(13A)と、を備え、放射線入射側から、光電変換素子、基板、蛍光体、支持体の順に並んでいる放射線画像検出装置(1,2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線画像を検出してデジタル画像データを生成するFPD(Flat Panel Detector)を用いた放射線画像検出装置が実用化されており、従来のイメージングプレートに比べて即時に画像を確認できるといった理由から急速に普及が進んでいる。この放射線画像検出装置には種々の方式のものがあり、その一つとして、間接変換方式のものが知られている。
【0003】
間接変換方式の放射線画像検出装置は、放射線露光によって蛍光を発するCsIやGOS(GdS)などの蛍光物質によって形成されたシンチレータを有する放射線画像変換パネルと、光電変換素子の2次元配列を有するセンサパネルとを備えており、典型的には、シンチレータと光電変換素子の2次元配列とが密接するように設けられている。被写体を透過した放射線は、放射線画像変換パネルのシンチレータによって一旦光に変換され、シンチレータの蛍光はセンサパネルの光電変換素子群によって光電変換され、電気信号(デジタル画像データ)が生成される。
【0004】
間接変換方式の放射線画像検出装置において、放射線をセンサパネル側から入射させるようにした、いわゆる表面読取型(ISS:Irradiation Side Sampling)の放射線画像検出装置も提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0005】
特に、特許文献2の放射線画像検出装置では、光電変換素子が設けられたセンサパネルを含む基板の裏側から入射されることによって、一度このセンサパネルを通過した放射線が、シンチレータで蛍光に変換されるようになっている。そして、この放射線画像検出装置では、センサパネルの基板による放射線の吸収を抑えるべく、センサパネルの放射線撮影領域に対応する部分に、凹部を有している。
【0006】
しかし、特許文献2の放射線画像検出装置では、センサパネルを含む基板の厚みは減少しているものの、基板の凹部にシンチレータが設けられていないため、放射線画像検出装置全体として薄板化が達成されていない。
【0007】
一方、特許文献3の放射線画像検出装置では、基板の凹部にシンチレータが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−017683号公報
【特許文献2】特開平6−140613号公報
【特許文献3】特開2005−203708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2及び特許文献3では、いずれもCCD等の固体撮像素子を用いて放射線をデジタル画像データに変換する放射線画像検出装置を開示しているにすぎない。FPDを用いた放射線画像検出装置の一例としてのDR(Digital Radiography)カセッテは、一般にTFT層や駆動回路等の種々の電子部品などを搭載しているために、上記特許文献2や特許文献3に開示されるような放射線画像検出装置よりも格段に大きい。
【0010】
仮に、特許文献3に開示されるような基板の凹部に設ける思想を、カセッテ等の大型の放射線画像検出装置に応用しようとすると、耐衝撃性の問題が顕著に生じる。
【0011】
例えば、大型の放射線画像検出装置では、センサパネルの基板としてガラスの基板が用いられることがある。ガラスの基板では熱伝導が悪いため、ガラスの基板とシンチレータとの密着性が悪い。従って、このガラスの基板の凹部にシンチレータを直接蒸着させた場合、シンチレータの自重によりガラスの基板とシンチレータとの剥離が懸念される。更に、基板に凹部を設けて基板を薄くしているため、基板の変形も懸念される。
【0012】
なお、基板の凹部にシンチレータを直接蒸着させた場合、放射線画像検出装置の落下も問題にもなる。落下によって、放射線画像検出装置が受けた衝撃によって、シンチレータが基板から剥離してしまうからである。
【0013】
一方、基板の凹部の底面とシンチレータの間に接着部を設け、間接蒸着する方法もある。しかし、放射線やシンチレータから発せられた蛍光が基板のみならずこの接着部を通過せねばならない。せっかく基板を凹部にすることで、感度低下を防いでいるにもかからず、かえって感度低下の問題が生じてしまう。更に、間接蒸着の場合、放射線画像検出装置を落としてしまった場合に、シンチレータの位置が凹部内でずれる可能性がある。このようにシンチレータがずれることによって、シンチレータがセンサ基板と接触し、シンチレータが損傷する可能性がある。
【0014】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、放射線画像検出装置の基板による感度低下を抑えつつ、放射線画像検出装置の耐衝撃性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
少なくとも全放射線撮影領域を含む底部を有する凹部が形成された第1の基板と、放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有し、前記第1の基板の凹部に設けられる蛍光体と、前記蛍光体が設けられた凹部とは反対側に設けられ、前記蛍光体から発せられた蛍光を光電変換する光電変換素子の群と、前記蛍光体を支持する支持体と、前記支持体と前記第1の基板とを固定する固定部と、を備え、放射線入射側から、前記光電変換素子、前記第1の基板、前記蛍光体、前記支持体の順に並んでいる放射線画像検出装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蛍光体を基板の凹部に設けることによって、基板による感度低下を抑えつつ、支持体で下支えすることで、耐衝撃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の放射線画像検出装置の基板の構成を模式的に示す図である。
【図3】図1の放射線画像検出装置で用いられる蛍光体の構成を模式的に示す図である。
【図4】図3の蛍光体のIV‐IV断面を示す図である。
【図5】図3の蛍光体のV‐V断面を示す図である。
【図6】図1の放射線画像検出装置の他の例の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を模式的に示す図である。また、図2は、図1の放射線画像検出装置の基板の構成を模式的に示す図である。
【0019】
放射線画像検出装置1は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子28が形成されたTFT層16と、2次元状に配列された光電変換素子26を有する平坦化層23と、凹部140を有する収容基板14と、収容基板14の凹部140に収容され、放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有するシンチレータ(蛍光体)18Aと、シンチレータ18Aを支持する支持基板12Aとを、備える。
【0020】
本例において、放射線は、TFT層16側から照射され、TFT層16及び光電変換素子26を透過する。これらを透過した放射線は、収容基板14の凹部140の薄い部分である薄板部141を透過した後、シンチレータ18Aに入射される。入射された放射線は、シンチレータ18Aによって、蛍光として発生する。そして、再び収容基板14の薄板部141を透過する。その後、光電変換素子26によって光電変換された後、収集された電荷がTFT層16に設けられたスイッチ素子28によって読み出される。このように、蛍光を多く発生させるシンチレータ18Aの放射線入射側に、光電変換素子26が、収容基板14の薄板部141を介してシンチレータ18Aの近くに設けられるため、感度が向上する。
【0021】
なお、本例では、TFT層16は、平坦化層23とは別の層として設けられているが、TFT層16に設けられたスイッチ素子28等を、光電変換素子26と同じ平坦化層23に設けてもよい。
【0022】
支持基板12Aは、シンチレータ18Aを直接蒸着させる蒸着基板であり、シンチレータ18Aは支持基板12Aによって放射線の入射方向とは反対側から支持している。また、支持基板12Aは、収容基板14の凹部140の開口を閉塞するように設けられており、シンチレータ18Aを外部からの水分による潮解を防ぎ、放射線画像検出装置1の封止性能を向上させている。更に、支持基板12Aは収容基板14の変形防止にも寄与している。
【0023】
支持基板12Aは、カーボン板、CFRP(carbon fiber reinforced plastic)、ガラス板、石英基板、サファイア基板、鉄、スズ、クロム、アルミニウムなどから選択される金属シート、等を用いることができるが、その上にシンチレータ18Aを形成することができる限りにおいて上記のものに限定されない。
【0024】
シンチレータ18Aは、上述のように支持基板12A上に直接蒸着により形成されている。シンチレータ18Aは、支持基板12Aとは反対側に設けられた柱状部34(図4参照)と、支持基板12A側に設けられた非柱状部36A(図4(a)参照)とで構成されている。柱状部34及び非柱状部36Aは、支持基板12A上で層状に重なって連続的に形成され、詳細は後述するが、例えば、気相堆積法により形成することができる。なお、柱状部34及び非柱状部36Aは同じ蛍光物質により形成されるが、Tl等の賦活剤の添加量は異なっていてもよい。
【0025】
シンチレータ18Aを形成する蛍光物質には、例えば、CsI:Tl、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、等を用いることができ、なかでも、発光スペクトルがa−Siフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)と適合する点で、CsI:Tlが好ましい。
【0026】
柱状部34は、上記の蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている。なお、近隣の複数の柱状結晶が結合して一つの柱状結晶を形成する場合もある。隣り合う柱状結晶の間には空隙が置かれ、各柱状結晶は互いに独立して存在する。
【0027】
非柱状部36Aは、蛍光物質の結晶が比較的小径の略球状に成長してなる球状結晶の群によって形成されている。球状結晶の群によって形成される非柱状部36Aにおいては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりするため、結晶間に明確な空隙は生じ難い。なお、非柱状部36Aには、上記の蛍光物質の非晶質体が含まれる場合もある。
【0028】
収容基板14は、薄板部141と厚板部142で形成される凹部140を有しており、シンチレータ18Aをすっぽり覆うようにして設けられている。薄板部141の厚みとしては、約0.2mm程度であり、厚板部142の厚みとしては、約0.7mm程度である。
【0029】
支持基板12Aと収容基板14の厚板部142の間には、第1の接着部13Aが設けられており、支持基板12Aと収容基板14が第1の接着部13Aによって固定されている。この第1の接着部13Aに用いられる接着剤としては、熱等で接着性が低下する解体型接着剤であることが好ましい。なお、本放射線画像検出装置1では、支持基板12Aと収容基板14を接着によって固定しているが、支持基板12Aと収容基板14が固定できるのであればこれに限られない。
【0030】
各光電変換素子26は、シンチレータ18Aが収容される凹部140とは反対側に設けられており、シンチレータ18Aの蛍光が収容基板14の薄板部141を透過した後、入射されることにより電荷を生成する光導電層(図示せず)と、この光導電層の表裏面に設けられた一対の電極とで構成されている。光導電層のシンチレータ18A側の面に電極が設けられている。この電極は、光導電層にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極であり、反対側の面に設けられた電極は、光導電層で生成された電荷を収集する電荷収集電極となる。
【0031】
なお、光電変換素子26は、収容基板14の表面との密着性を良くするための平坦化層23に形成されている。また、接着層(図示せず)を介して収容基板14と平坦化層23が貼り合わせられている。平坦化層23及び接着層は樹脂層を形成する。なお、樹脂層として、透明な液体又はゲルからなるマッチングオイルなども用いることができる。樹脂層の厚みは、感度、及び画像の鮮鋭度の観点から、50μm以下であることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましい。
【0032】
TFT層16は、光電変換素子26上に形成されており、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子28を有する(図2参照)。
【0033】
スイッチ素子28は、光電変換素子26の2次元配列に対応してTFT層16に2次元に配列されており、各光電変換素子26の電荷収集電極が、TFT層16の対応するスイッチ素子28に接続されている。各電荷収集電極に収集された電荷は、スイッチ素子28を介して読み出される。
【0034】
そして、図2に示すように、TFT層16には、一方向(行方向)に延設され各スイッチ素子28をオン/オフさせるための複数本のゲート線30と、ゲート線30と直交する方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子28を介して電荷を読み出すための複数の信号線(データ線)32が設けられている。そして、TFT層16が設けられている収容基板14の周縁部には、個々のゲート線30及び個々の信号線32が接続された接続端子38が配置されている。この接続端子38は、図2に示すように、接続回路39を介して回路基板(図示せず)に接続される。この回路基板は、外部回路としてのゲート線ドライバ、及び信号処理部を有する。
【0035】
各スイッチ素子28は、ゲート線ドライバからゲート線30を介して供給される信号により行単位で順にオン状態とされる。そして、オン状態とされたスイッチ素子28によって読み出された電荷は、電荷信号として信号線32を伝送されて信号処理部に入力される。これにより、電荷が行単位で順に読み出され、上記の信号処理部において電気信号に変換され、デジタル画像データが生成される。
【0036】
このように、放射線入射側から、TFT層16、光電変換素子26、収容基板14、シンチレータ18A及び支持基板12Aの順に並んでおり、収容基板14の厚板部142と支持基板12Aの間には、第1の接着部13Aが設けられている。
【0037】
ここで、シンチレータ18Aの側面と、凹部140の厚板部142のうちシンチレータ18Aに対向する側面142aの間には、シンチレータ18Aと収容基板14の間を埋める第2の接着部13Bが設けられている。また、シンチレータ18Aと凹部140の薄板部141が対向する部分は接着されておらず、シンチレータ18Aと凹部140の薄板部141が直接密接するようになっている。言い換えれば、シンチレータ18Aの側面のみを囲うように第2の接着部13Bが設けられている。
【0038】
第2の接着部13Bは、柔軟性を有することが好ましい。そして、この第2の接着部13Bに用いられる接着剤としては、熱や紫外線等で接着性が低下する解体型接着剤であることが好ましい。例えば、第2の接着部13Bに用いられる接着剤としては、シリコン系接着剤が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0039】
なお、第2の接着部13Bの代わりに放射線画像検出装置1に対する衝撃を吸収する(緩衝性を有する)緩衝材を設けてもよい。緩衝材を充填することによって、耐衝撃性を担保しつつ、シンチレータ18Aを取り外しやすくなるため、リワーク性を向上させることができる。
【0040】
図3は、図1の放射線画像検出装置で用いられる蛍光体の構成を模式的に示す図である。なお、図中の矢印は放射線が入射される方向を示している。
【0041】
図3(a)に示されるように、本放射線画像検出装置1に用いられるシンチレータ18Aは、支持基板12Aとは反対側のシンチレータ18Aの面、即ち柱状部34の各柱状結晶の先端を薄板部141の底面141aに対向させている。つまり、シンチレータ18Aの放射線入射側には、柱状結晶の群からなる柱状部34が配置される。
【0042】
柱状部34の各柱状結晶に発生した蛍光は、柱状結晶とその周囲の間隙(空気)との屈折率差に起因して柱状結晶内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、その柱状結晶が対向する収容基板14を通じて、光電変換素子26に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0043】
そして、柱状部34の各柱状結晶に発生した蛍光のうち、薄板部141の底面141aとは反対側、即ち支持基板12A側に向かう蛍光については、非柱状部36Aにおいて光電変換素子26側に向けて反射される。それにより、蛍光の利用効率が高まり、感度が向上する。また、非柱状部36Aが支持基板12Aに蒸着されているため、シンチレータ18Aが支持基板12Aに対してしっかりと固定され、耐衝撃性が向上している。
【0044】
また、非柱状部36Aは、小径の球状結晶若しくはその凝集体によって形成され、個々の空隙は比較的小さく、柱状部34に比べて緻密であって空隙率は小さい。支持基板12Aとの柱状部34との間に非柱状部36Aが介在することにより、支持基板12Aとシンチレータ18Aとの密着性が向上する。それにより、支持基板12AとTFT層16との線膨張差に起因する反りや衝撃などによって作用する応力に対する耐性が向上し、シンチレータ18Aが支持基板12Aから剥離することが防止される。
【0045】
なお、図3(b)に示されるように、本放射線画像検出装置1において、シンチレータ18Aの代わりにシンチレータ18Bを用いることもできる。シンチレータ18Bは、図3(a)に示すシンチレータ18Aの柱状部34の上に、更に非柱状部36Bを設けている。
【0046】
非柱状部36Bは、小径の球状結晶若しくはその凝集体によって形成されており、柱状部34に比べて緻密であって空隙率は小さい。特に、光反射の機能を極力抑えるため、空隙率はほぼ0であることが好ましい。このように、非柱状部36Bを設けることで、柱状部34が薄板部141の底面141aとの接触により損傷してしまう可能性を低くすることができ、本放射線画像検出装置1の耐衝撃性が向上している。
【0047】
なお、非柱状部36Bの代わりに光透過性のある緩衝層を設けてもよい。この緩衝層としては、厚みが20μm程度の透明な薄膜シリコンゴムが挙げられる。このような緩衝層を設けることで、本放射線画像検出装置1の耐衝撃性を担保しつつ、より画像ボケを抑えることができる。
【0048】
図4は、図3の蛍光体のIV‐IV断面を示す図である。
【0049】
図4に明らかなように、柱状部34においては、柱状結晶が結晶の成長方向に対しほぼ均一な断面径を示し、かつ、柱状結晶の周囲に間隙を有し、柱状結晶が互いに独立して存在することがわかる。柱状結晶の結晶径は、光ガイド効果、機械的強度、そして画素欠陥防止の観点から、2μm以上8μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、各柱状結晶の機械的強度が不足し、衝撃等により損傷する懸念があり、結晶径が大きすぎると、光電変換素子26毎の柱状結晶の数が少なくなり、結晶にクラックが生じた際にその素子が欠陥となる確率が高くなる懸念がある。
【0050】
ここで、結晶径は、柱状結晶の成長方向上面から観察した結晶の最大径を示す。具体的な測定方法としては、柱状結晶の膜厚方向に対して垂直な面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径(結晶径)を測定する。1回の撮影でシンチレータを表面から見た時に柱状結晶が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、柱状結晶の柱径の最大値を測定して平均した値を採用している。柱径(μm)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とした。
【0051】
図5は、図3の蛍光体のV‐V断面を示す図である。
【0052】
図5に明らかなように、非柱状部36Aにおいては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりして結晶間の明確な空隙は、柱状部34ほどは認めらない。非柱状部36Aを形成する結晶の径は、密着性及び光反射の観点から、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、空隙が0に近づき、光反射の機能が低下する懸念があり、結晶径が大きすぎると、平坦性が低下し、支持基板12Aとの密着性が低下する懸念がある。また、非柱状部36Aを形成する結晶の形状は、光反射の観点から、略球状であることが好ましい。
【0053】
ここで、結晶同士が結合している場合の結晶径の測定は、隣接する結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の境界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して柱径及び柱径に対応する結晶径を測定し、柱状部34における結晶径と同様にして平均値をとり、その値を採用した。
【0054】
柱状部34及び非柱状部36Aの厚みについて、柱状部34の厚みをt1とし、非柱状部36Aの厚みをt2としたとき、(t2/t1)が0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.1以下であることがより好ましい。(t2/t1)が上記範囲にあることで、蛍光効率、光拡散防止及び光反射が好適な範囲となり、感度及び画像の鮮鋭度が向上する。
【0055】
また、柱状部34の厚みt1は、放射線のエネルギーにもよるが、柱状部34における十分な放射線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。柱状部34の厚みが小さすぎると、放射線を十分に吸収することができず、感度が低下する虞があり、厚みが大きすぎると光拡散が生じ、柱状結晶の光ガイド効果によっても画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0056】
非柱状部36Aの厚みt2は、支持基板12Aとの密着性及び光反射の観点から、5μm以上125μm以下であることが好ましい。非柱状部36Aの厚みが小さすぎると、支持基板12Aとの十分な密着性が得られない虞があり、また厚みが大きすぎると、非柱状部36Aにおける蛍光の寄与、及び非柱状部36Aでの光反射による拡散が増大し、画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0057】
更に、本放射線画像検出装置1においては、非柱状部36Aの厚み分布が不均一としてもよい。柱状部34及び非柱状部36Aは、同じ蛍光物質の結晶によって連続して形成されることから、柱状部34と非柱状部36Aとの接合は、柱状部34と支持基板12A等の異種材料との接合に比較して強い。しかし、そこで、非柱状部36Aの厚み分布を不均一とすることにより、接合部分における応力耐性を補う。
【0058】
非柱状部36Aの各部の厚みは、支持基板12Aとの密着性及び光反射の観点から、上記の5μm以上125μm以下の範囲で分布していることが好ましい。なお、非柱状部36Aは、全体にわたって一様に不均一な厚み分布を有しているが、複数の領域に区分した場合に、各領域における不均一性(最大厚と最小厚との差、ないし厚み分布の偏差)が異なっていてもよい。
【0059】
次に、上述したシンチレータ18A及び18Bのうち、シンチレータ18Aの製造方法の一例について説明する。
【0060】
シンチレータ18Aは、気相堆積法によって支持基板12Aの表面に直接形成されることが好ましい。気相堆積法によれば、非柱状部36A及び柱状部34をこの順に連続して一体に形成することができる。以下では、蛍光物質としてCsI:Tlを用いた場合を例に説明する。
【0061】
気相堆積法は常法により行うことができる。真空度0.01〜10Paの環境下、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼに通電するなどの手段で加熱して気化させ、支持体11の温度を室温(20℃)〜300℃としてCsI:Tlを支持体上に堆積させればよい。
【0062】
気相堆積法により支持基板12A上にCsI:Tlの結晶相を形成する際、当初は直径の比較的小さな球状結晶若しくはその凝集体が形成される。そして、真空度及び支持体11の温度の少なくとも一方の条件を変更することで、非柱状部36Aを形成した後に連続して柱状部34を形成することができる。即ち、球状結晶を所定の厚みに堆積させた後、真空度を上げる、及び/又は支持基板12Aの温度を高くすることで、柱状結晶を成長させることができる。
【0063】
そして、非柱状部36Aを形成する工程において、真空度を変化させながら堆積させることで、非柱状部36Aに不均一な厚み分布を付与する。真空度を変化させると、CsI:Tlの融液状態が変化し、融液状態が安定するまでに時間を要するが、融液状態が不安定の間に堆積を継続することで、非柱状部36Aに不均一な厚み分布を付与することができる。
【0064】
以上によりシンチレータ18Aを効率よく、容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、シンチレータ18Aの製膜における真空度や支持体温度を制御することで、簡易に種々の仕様のシンチレータを設計通りに製造することができるという利点をも有する。
【0065】
以上、説明したように、本放射線画像検出装置1においては、凹部140にシンチレータ18Aを設けて、光電変換素子26とシンチレータ18Aの距離を縮めることで画像鮮鋭度を向上させている。蒸着に用いた支持基板12Aをそのままシンチレータ18A(18B)を下支えするようにし、この支持基板12Aと収容基板14の間を第1の接着部13Aで固定することで、放射線画像検出装置1の大型化に伴う耐衝撃性の問題を解消している。また、支持基板12Aにシンチレータ18Aが直接蒸着することで、シンチレータ18Aと凹部140の(薄板部141の)底面141a間の接着剤を省くことができ、画像鮮鋭度を向上させている。更に、シンチレータ18Aのみが損傷した場合でも、このシンチレータ18Aのみを交換するだけで、再度放射線画像検出装置として使用することができるため、リワーク性も向上させている。また、第1の接着部13Aを解体型接着剤で形成することで、シンチレータのみが損傷した場合でも、このシンチレータ18Aのみを交換するだけで再度放射線画像検出装置として使用することができるため、リワーク性を向上させている。また、シンチレータ18Aの側面と厚板部142の側面142aの間を第2の接着部13Bで固定(接着)することで、シンチレータ18Aが収容基板14の中で不必要にぐらつかないようにしつつ、耐衝撃性を向上させている。また、この第2の接着部13Bに用いられる接着剤は、解体型接着剤であることにより、シンチレータ18Aのみが損傷してしまっても、シンチレータ18Aのみを交換するだけで済み、リワーク性を向上させている。
【0066】
なお、本放射線画像検出装置1において、支持基板12Aは蒸着基板でなくてもよい。この場合、シンチレータ18Aを形成する蛍光物質として、GOS(GdS:Tb)等を使用することができる。
【0067】
図6は、図1の放射線画像検出装置の他の例の構成を模式的に示す図である。なお、図1と同一の符号をしているものついては、既に説明済みであるため、その記載を省略する。
【0068】
本放射線画像検出装置2では、上述と異なり、シンチレータ18Aを、収容基板14に直接蒸着させている。この際、補強板12Bがシンチレータ18Aを放射線入射側とは反対側から(下から)支持している。これにより、シンチレータ18Aは、収容基板14と補強板12Bによって挟持されている。
【0069】
この補強板12Bは、放射線画像検出装置2全体の軽量化の観点から、必要最低限であることが好ましい。例えば、図4(b)に示すように、十字状に補強板12Bを設けることができる。十字状に補強板12Bを設けると、収容基板14の変形防止を防ぐこともできる。
【0070】
なお、必要最低限に補強板12Bを設けた場合には、外部からの水分の浸入が懸念されるため、シンチレータ18Bの側面をパリレンなどの保護膜15で覆っておくとよい。
【0071】
もっとも、外部から水分の浸入を極力避けたい場合には、放射線画像検出装置1と同様に、収容基板14の凹部140の開口を閉塞する補強板12Bとしてもよい。なお、この全面に設けられた補強板12Bを、アルミニウム板等で形成することによって、補強板12Bに光反射機能を持たせることも可能である。
【0072】
また、放射線画像検出装置2に用いるシンチレータとしては、シンチレータ18Bのような構成をとることが好ましい。これは、シンチレータ18Bを収容基板14に対して直接蒸着するためである。この場合、非柱状部36Aが放射線入射側となる。同様に、図3(a)においても、密着性確保の観点から、非柱状部36Aが放射線入射側となる。
【0073】
なお、上述の各放射線画像検出装置は、放射線画像を高感度、高精細に検出しうるため、低放射線照射量で鮮鋭な画像を検出することを要求される、マンモグラフィなどの医療診断用のX線撮影装置をはじめ、様々な装置に組み込んで使用することができる。例えば、工業用のX線撮影装置として非破壊検査に用いたり、或いは、電磁波以外の粒子線(α線、β線、γ線)の検出装置として用いたりすることができ、その応用範囲は広い。
【0074】
以下、放射線画像検出装置1及び放射線顔図検出装置2を構成する各要素に用いることのできる材料について説明する。
【0075】
[光電変換素子]
上述した光電変換素子26の光導電層としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が用いられることが多いが、例えば特開2009−32854号公報に記載された有機光電変換(OPC;Organic photoelectric conversion)材料も用いることができる。このOPC材料により形成された膜(以下、OPC膜という)を光導電層20として使用できる。OPC膜は、有機光電変換材料を含み、蛍光体層から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含むOPC膜であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、蛍光体層による発光以外の電磁波がOPC膜に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線がOPC膜で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0076】
OPC膜を構成する有機光電変換材料は、蛍光体層で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、蛍光体層の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長と蛍光体層の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければ蛍光体層から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、蛍光体層の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0077】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、アリーリデン系有機化合物、キナクリドン系有機化合物、及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、蛍光体層の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、OPC膜で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0078】
バイアス電極及び電荷収集電極の間に設けられる有機層の少なくとも一部をOPC膜によって構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ね若しくは混合により形成することができる。
【0079】
上記有機層は、有機p型化合物又は有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これらに限らず、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いることができる。
【0080】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これらに限らず、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いることができる。
【0081】
p型有機色素又はn型有機色素としては、公知のものを用いることができるが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)等が挙げられる。
【0082】
1対の電極間に、p型半導体層とn型半導体層とを有し、該p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、該p型半導体及びn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有する光電変換膜(感光層)を好適に用いることができる。このように、光電変換膜において、バルクへテロ接合構造層を含ませることにより有機層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換効率を向上させることができる。なお、上記バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
【0083】
光電変換膜の厚みは、蛍光体層からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
上述したOPC膜に関するその他の構成は、例えば、特開2009−32854号公報の記載が参考となる。
【0084】
[スイッチ素子]
スイッチ素子28の活性層としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が使われることが多いが、例えば特開2009−212389号公報に記載されたように、有機材料を使用することができる。有機TFTはいかなるタイプの構造でもよいが、最も好ましいのは電界効果型トランジスタ(FET)構造である。このFET構造は、絶縁性基板上面の一部にゲート電極を設け、更に該電極を覆い、かつ電極以外の部分で基板と接するように絶縁体層を設けている。更に絶縁体層の上面に半導体活性層を設け、その上面の一部に透明ソース電極と透明ドレイン電極とを隔離して配置している。なお、この構成はトップコンタクト型素子と呼ばれるが、ソース電極とドレイン電極とが半導体活性層の下部にあるボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。また、キャリアが有機半導体膜の膜厚方向に流れる縦型トランジスタ構造であってもよい。
【0085】
(活性層)
ここでいう有機半導体材料とは、半導体の特性を示す有機材料のことであり、無機材料からなる半導体と同様に、正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体材料(あるいは単にp型材料、正孔輸送材料とも言う。)と、電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体材料(あるいは単にn型材料、電子輸送材料とも言う。)がある。有機半導体材料は一般にp型材料の方が良好な特性を示すものが多く、また、一般に大気下でのトランジスタ動作安定性もp型トランジスタの方が優れているため、ここでは、p型有機半導体材料について説明する。
【0086】
有機薄膜トランジスタの特性の一つに、有機半導体層中のキャリアの動きやすさを示すキャリア移動度(単に移動度とも言う)μがある。用途によっても異なるが、一般に移動度は高い方がよく、1.0×10-7cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-6cm2/Vs以上であることがより好ましく、1.0×10-5cm2/Vs以上であることが更に好ましい。移動度は電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0087】
前記p型有機半導体材料は、低分子材料でも高分子材料でも良いが、好ましくは低分子材料である。低分子材料は、昇華精製や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの様々な精製法が適用できるため高純度化が容易であること、分子構造が定まっているため秩序の高い結晶構造を取りやすいこと、などの理由から高い特性を示すものが多い。低分子材料の分子量は、好ましくは100以上5000以下、より好ましくは150以上3000以下、更に好ましくは200以上2000以下である。
【0088】
このようなp型有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物又はナフタロシアニン化合物を例示することができ、具体例を以下に示す。なお、Mは金属原子、Buはブチル基、Prはプロピル基、Etはエチル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0089】
【化1】

【0090】
(活性層以外のスイッチ素子の構成要素)
ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極を構成する材料としては、必要な導電性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明導電性酸化物、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)などの透明導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。これらの電極材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
【0091】
絶縁層に用いられる材料としては、必要な絶縁効果を有するものであれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの無機材料、ポリエステル(PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ノボラック樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、などの有機材料が挙げられる。これらの絶縁膜材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
上述した有機TFTに関するその他の構成は、例えば、特開2009−212389号公報の記載が参考となる。
【0092】
また、スイッチ素子28の活性層には、例えば特開2010−186860号公報に記載された非晶質酸化物も使用することができる。ここで、特開2010−186860号に記載された電界効果型トランジスタが有する非晶質酸化物含有の活性層について示す。この活性層は、電子又はホールの移動する電界効果型トランジスタのチャネル層として機能する。
【0093】
活性層は、非晶質酸化物半導体を含んだ構成とされている。この非晶質酸化物半導体は、低温で成膜可能であるために、可撓性のある基板上に好適に形成される。活性層に用いられる非晶質酸化物半導体としては、好ましくはIn、Sn、Zn、又はCdよりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む非晶質酸化物であり、より好ましくは、In、Sn、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物、更に好ましくは、In、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物である。
【0094】
活性層に用いられる非晶質酸化物としては、具体的には、In、ZnO,SnO、CdO,Indium−Zinc−Oxide(IZO)、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Gallium−Zinc−Oxide(GZO)、Indium−Gallium−Oxide(IGO)、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)が挙げられる。
【0095】
活性層の成膜方法としては、酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが好ましい。気相成膜法の中でも、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD法)が適している。更に、量産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。例えば、RFマグネトロンスパッタリング蒸着法により、真空度及び酸素流量を制御して成膜される。
【0096】
成膜された活性層は、周知のX線回折法によりアモルファス膜であることが確認される。活性層の組成比は、RBS(ラザフォード後方散乱)分析法により求められる。
【0097】
また、この活性層の電気伝導度は、好ましくは10−4Scm−1以上10Scm−1未満であり、より好ましくは10−1Scm−1以上10Scm−1未満である。この活性層の電気伝導度の調整方法としては、公知の酸素欠陥による調整方法や、組成比による調整方法、不純物による調整方法、酸化物半導体材料による調整方法が挙げられる。
上述した非晶質酸化物に関するその他の構成は、例えば、特開2010−186860号公報の記載が参考となる。
【0098】
[収容基板]
収容基板14としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。また、これらのプラスチックフィルムに、有機あるいは無機のフィラーを含有させてもよい。また、フレキシブルでかつ低熱膨張、高強度といった、既存のガラスやプラスチックでは得られない特性を有するアラミド、バイオナノファイバーなどを用いて形成されたフレキシブル基板も好適に使用しうる。
【0099】
(アラミド)
アラミド材料は、ガラス転移温度315℃という高い耐熱性、ヤング率が10GPaという高い剛性、熱膨張率が−3〜5ppm/℃という高い寸法安定性を有する。このため、アラミド製のフィルムを用いると、一般的な樹脂フィルムを用いる場合と比べて、半導体層の高品質の成膜が容易に行える。また、アラミド材料の高耐熱性により、電極材料を高温硬化させて低抵抗化できる。更に、ハンダのリフロー工程を含むICの自動実装にも対応できる。また更に、ITO(indium tin oxide)やガス・バリア膜、ガラス基板と熱膨張係数が近いために、製造後の反りが少ない。そして、割れにくい。ここで、ハロゲンを含まないハロゲンフリー(JPCA−ES01−2003の規定に適合)なアラミド材料を用いることが環境負荷低減の点で好ましい。アラミドフィルムは、ガラス基板やPET基板と積層されてもよいし、デバイスの筐体に貼り付けられてもよい。
【0100】
アラミドの分子間の凝集力(水素結合力)の高さによる溶媒への低溶解性を分子設計によって解決することにより、無色透明で薄いフィルムへの成形が容易とされたアラミド材料についても、好適に用いることができる。モノマーユニットの秩序性、及び芳香環上の置換基種・位置を制御する分子設計により、アラミド材料の高剛性や寸法安定性に繋がる直線性の高い棒状の分子構造を維持しつつ、溶解性が良い成形の容易さが得られる。この分子設計により、ハロゲンフリーをも実現できる。
【0101】
また、フィルムの面内方向の特性が最適化されたアラミド材料についても、好適に用いることができる。成型中に逐次変化するアラミドフィルムの強度に応じて、溶液キャスト、縦延伸、横延伸の工程ごとに張力条件を制御することにより、直線性の高い棒状分子構造であって物性に異方性が生じやすいアラミドフィルムの面内方向の特性をバランスできる。
【0102】
具体的に、溶液キャスト工程では、溶媒の乾燥速度の制御による面内厚み方向の物性の等方化、溶媒を含んだ状態のフィルムの強度とキャスト・ドラムからの剥離強度の最適化、を図る。縦延伸工程では、延伸中に逐次変化するフィルムの強度、溶媒の残留量に応じた延伸条件を精密に制御する。横延伸工程では、加熱によって変化するフィルム強度の変化に応じた横延伸の条件の制御、フィルムの残留応力を緩和するための横延伸の条件の制御を図る。このようなアラミド材料の使用により、成型後のアラミドフィルムがカールしてしまう問題を解決できる。
【0103】
上記の成形容易さに対する工夫、及びフィルム面内方向の特性のバランスに対する工夫のいずれにおいても、アラミドならではの直線性の高い棒状の分子構造が維持されているので、熱膨張係数を低く維持できる。製膜時の延伸条件の変更などにより、熱膨張係数を更に低減することも可能である。
【0104】
(バイオナノファイバー)
ナノファイバーは、光の波長に対して十分に小さなコンポーネントは光散乱を生じないことから、透明でフレキシブルな樹脂材料の補強として用いることができる。そして、ナノファイバーの中でも、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと、可視光波長に対して約1/10のサイズでかつ、高強度、高弾性、低熱膨である特徴を有しており、このバクテリアセルロースと透明樹脂との複合材料(バイオナノファイバーということがある)を好適に用いることができる。
【0105】
バクテリアセルロースシートにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を約60〜70%と高い比率で含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示す透明バイオナノファイバーが得られる。このバイオナノファイバーにより、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(約3〜7ppm)、鋼鉄並の強度(約460MPa)、及び高弾性(約30GPa)が得られる。
上述したバイオナノファイバーに関する構成は、例えば、特開2008−34556号公報の記載が参考となる。
【0106】
[平坦化層及び接着層]
シンチレータ18A(18B)と光電変換素子26とを光学的に結合させる樹脂層としての平坦化層23及び接着層は、シンチレータ18Aの蛍光を減衰させることなく光電変換素子26に到達させ得るものであれば特に制限はない。平坦化層23としては、ポリイミドやパリレンなどの樹脂を用いることができ、製膜性が良好なポリイミドを用いることが好ましい。接着層としては、例えば、熱可塑性樹脂、UV硬化接着剤、加熱硬化型接着剤、室温硬化型接着剤、両面接着シート、等が挙げられるが、画像の鮮鋭度を低下させないという観点から、素子サイズに対して十分に薄い接着層を形成し得る低粘度エポキシ樹脂製の接着剤を用いることが好ましい。
【0107】
以上、説明したように、本明細書には、下記の技術的思想が開示されている。
(1)少なくとも全放射線撮影領域を含む底部を有する凹部が形成された基板と、放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有し、前記基板の凹部に設けられる蛍光体と、前記蛍光体が設けられた凹部とは反対側に設けられ、前記蛍光体から発せられた蛍光を光電変換する光電変換素子の群と、前記蛍光体を支持する支持体と、前記支持体と前記基板とを固定する固定部と、を備え、放射線入射側から、前記光電変換素子、前記基板、前記蛍光体、前記支持体の順に並んでいる放射線画像検出装置。
(2)(1)に記載の放射線画像検出装置において、前記蛍光体の側面と前記基板の凹部の側面との間に充填された緩衝性を有する充填材を更に備える放射線画像検出装置。
(3)(1)又は(2)に記載の放射線画像検出装置において、前記蛍光体は、前記基板の凹部の底面に直接密接している放射線画像検出装置。
(4)(1)から(3)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置において、前記固定部は、解体型接着剤によって形成されている放射線画像検出装置。
(5)(2)から(4)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置において、前記充填材は、解体型接着剤である放射線画像検出装置。
(6)(1)から(5)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置において、前記蛍光体は、蛍光物質の結晶を蒸着基板に蒸着して形成されており、前記支持体は、蒸着基板である放射線画像検出装置。
(7)(1)から(5)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置において、前記蛍光体は、蛍光物質の結晶を前記基板に蒸着して形成されており、前記支持体は、基板との間で前記蛍光体を挟持する補強板である放射線画像検出装置。
(8)(1)から(7)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置において、前記蛍光体は、蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成された柱状部を有する放射線画像検出装置。
(9)(8)に記載の放射線画像検出装置において、前記蛍光体は、前記柱状部と前記支持体との間に介在する第1の非柱状部を更に有する放射線画像検出装置。
(10)(8)又は(9)に記載の放射線画像検出装置において、前記蛍光体は、前記柱状部と前記基板との間に介在する第2の非柱状部を更に有する放射線画像検出装置。
(11)(1)から(10)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置において、前記基板の凹部の開口が前記支持体によって閉塞されている放射線画像検出装置。
【符号の説明】
【0108】
1,2 放射線画像検出装置
12A 支持基板
13A 第1の接着部
13B 第2の接着部
14 収容基板
16 TFT層
18A,18B シンチレータ
23 平坦化層
26 光電変換素子
140 凹部
141 薄板部
142 厚板部
141a 薄板部の底面
142a 厚板部の側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも全放射線撮影領域を含む底部を有する凹部が形成された基板と、
放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有し、前記基板の凹部に設けられる蛍光体と、
前記蛍光体が設けられた凹部とは反対側に設けられ、前記蛍光体から発せられた蛍光を光電変換する光電変換素子の群と、
前記蛍光体を支持する支持体と、
前記支持体と前記基板とを固定する固定部と、
を備え、
放射線入射側から、前記光電変換素子、前記基板、前記蛍光体、前記支持体の順に並んでいる放射線画像検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線画像検出装置において、
前記蛍光体の側面と前記基板の凹部の側面との間に充填された緩衝性を有する充填材をさらに備える放射線画像検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の放射線画像検出装置において、
前記蛍光体は、前記基板の凹部の底面に直接密接している放射線画像検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置において、
前記固定部は、解体型接着剤によって形成されている放射線画像検出装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置において、
前記充填材は、解体型接着剤である放射線画像検出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置において、
前記蛍光体は、蛍光物質の結晶を蒸着基板に蒸着して形成されており、
前記支持体は、蒸着基板である放射線画像検出装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置において、
前記蛍光体は、蛍光物質の結晶を前記基板に蒸着して形成されており、前記支持体は、基板との間で前記蛍光体を挟持する補強板である放射線画像検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置において、
前記蛍光体は、蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成された柱状部を有する放射線画像検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の放射線画像検出装置において、
前記蛍光体は、前記柱状部と前記支持体との間に介在する第1の非柱状部を更に有する放射線画像検出装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の放射線画像検出装置において、
前記蛍光体は、前記柱状部と前記基板との間に介在する第2の非柱状部を更に有する放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置において、
前記基板の凹部の開口が前記支持体によって閉塞されている放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159395(P2012−159395A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19326(P2011−19326)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】