説明

放射線発生装置および放射線撮影装置

【課題】透過基板の温度上昇を抑制して放射線発生の長時間駆動を可能とし、信頼性の高い透過型放射線管および放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線発生装置は、冷却媒体が充填された収納容器12内に透過型放射線管11が収納され、透過型放射線管は、開口部14aを有する外囲器14と、外囲器内に開口部14aに臨んで配設された電子放出源15と、放射線を透過する透過基板19と、透過基板19の電子放出源側面に設置され、電子放出源15から放出された電子の照射により放射線を発生するターゲット18と、ターゲットから放出された放射線を遮る遮蔽体20と、を備え、遮蔽体は外囲器14の外側に突設されると共に、外囲器14の開口部14aに連通する通路20aを有し、通路20aに設けられる透過基板19の少なくとも一部は、外囲器14の外壁面よりも外側に突出して配設され、冷却媒体は遮蔽体20の少なくとも一部に接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却媒体が充填された収納容器内に、電子放出源を用いた透過型放射線管を収納する放射線発生装置、および該放射線発生装置を備える放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射線管(放射線発生管)は電子放出源から放出される電子を高エネルギーに加速し、タングステン等の金属から構成されるターゲットに照射して、X線等の放射線を発生させている。このとき発生した放射線は全方位に向かって放出される。そこで、必要以外の放射線を遮蔽するために、放射線管を収納した容器、もしくは放射線管の周囲を鉛のような遮蔽体(放射線遮蔽部材)で覆い、不要な放射線を外部に漏洩しないようにしている。このため、このような放射線管および放射線管を収納した放射線発生装置においては、小型軽量化が困難となっていた。
【0003】
この課題を解決する手段として、透過型放射線管において、ターゲットの放射線放出側および電子入射側にそれぞれ遮蔽体を配置することにより、簡易な構造で不要な放射線を遮蔽し、かつ装置の小型軽量化を実現する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、一般に、このようなターゲット(陽極)固定型の透過型放射線管は、ターゲットの放熱性が比較的劣るため、高エネルギーの放射線を発生させることが困難であった。このターゲットの放熱に関し、特許文献1の透過型放射線管では、ターゲットと遮蔽体を接合した構造とすることにより、ターゲットで発生した熱が遮蔽体に伝わって放熱され、ターゲットの温度上昇が抑えられると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−265981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の透過型放射線管では、遮蔽体が真空容器内に配置されており、遮蔽体から真空容器外部への熱伝達領域が限られている。このため、ターゲットの放熱性が必ずしも十分ではなく、ターゲットの冷却能力と装置の小型軽量化の両立に課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構造で不要な放射線の遮蔽とターゲットの冷却を可能とし、かつ小型軽量化を可能とする放射線発生装置、およびそれを備える放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射線発生装置は、冷却媒体が充填された収納容器の内部に、透過型放射線管が収納され、
前記透過型放射線管は、
開口部を有する外囲器と、
前記外囲器の内部に前記開口部に臨んで配設された電子放出源と、
放射線を透過する透過基板と、
前記透過基板の電子放出源側の面に設置され、前記電子放出源から放出された電子の照射により放射線を発生するターゲットと、
前記ターゲットから放出された放射線を遮る遮蔽体と、
を備え、
前記遮蔽体は前記外囲器の外側に突設されると共に、前記外囲器の開口部に連通する通路を有し、該通路に設けられる前記透過基板の少なくとも一部は、前記外囲器の外壁面よりも外側に突出して配設され、
前記冷却媒体は前記遮蔽体の少なくとも一部に接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却媒体に対する放熱面積が広く、かつ最も温度の高い部分を放熱面とする構造が可能となる。これにより、ターゲットの熱は透過基板及び遮蔽体を通じて冷却媒体へと伝達され、透過基板の温度上昇を抑制して放射線発生の長時間駆動を可能とし、信頼性の高い透過型放射線管を用いた放射線発生装置を実現することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の透過型放射線管を用いた放射線発生装置の断面模式図、及び遮蔽体の外表面の温度分布図である。
【図2】第2の実施形態の透過型放射線管を用いた放射線発生装置の断面模式図、及び遮蔽体の外表面の温度分布図である。
【図3】第3の実施形態の透過型放射線管を用いた放射線発生装置の断面模式図、及び遮蔽体の外表面の温度分布図である。
【図4】第4の実施形態の放射線撮影装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
【0012】
<第1の実施形態>
まず図1を参照して、本発明に係る放射線発生装置の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の透過型放射線管を用いた放射線発生装置の断面模式図及び遮蔽体の外表面の温度分布図である。図1の断面模式図は、電子束の中心線(電子束中心線22)方向をZ軸方向とするZ−Y断面を表している。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の放射線発生装置1は透過型放射線管11を備えており、この透過型放射線管11は収納容器12の内部に収納されている。この収納容器12の内部に透過型放射線管11を収納した余空間には、冷却媒体が充填されている。
【0014】
収納容器12は、金属板で箱体状に区画形成された金属容器である。収納容器12を構成する金属は導電性を有し、例えば鉄、ステンレス、鉛、真鍮、銅などを使用することができ、容器重量を保持しうる構造を有している。収納容器12の一部には、収納容器12の内部へ冷却媒体を注入する不図示の注入口が設けられている。透過型放射線管11の駆動時には冷却媒体の温度が上昇するので、冷却媒体が膨張した際の収納容器12の内圧上昇を避けるため、必要に応じて、収納容器12の一部に弾性部材を用いた不図示の圧力調整口を開設してもよい。
【0015】
冷却媒体は、電気絶縁性を有する液体ならばよく、熱による変質が少なく、冷却能力が高く、かつ低粘度のものが望ましく、例えば電気絶縁油、フッ素系不活性液体等が用いられる。
【0016】
透過型放射線管11は、円形の開口部14aを有する円柱状の外囲器14、電子放出源15、制御電極16、透過基板19、ターゲット18、および遮蔽体20を備えている。
【0017】
外囲器14は高電気絶縁性の材料で、高真空維持可能な耐熱性の高い材料で構成されている。ここでは高電気絶縁性の材料として、例えばアルミナや耐熱ガラス等を用いることができる。外囲器14の内部は、後述するように、所定の真空度に保持されている。
【0018】
外囲器14の内部には、外囲器14の開口部14aに臨んで電子放出源15が配設されている。本実施形態の電子放出源15は、例えばフィラメントを用いているが、他に含浸型カソードや電界放出型素子などの電子放出源を用いてもよい。外囲器14内には、一般的に電子放出源15を駆動できる1×10-4Pa以下の真空度を保つため、透過型放射線管11を駆動した際に放出されるガスを吸収する不図示のゲッタ、NEG、小型イオンポンプ等が搭載されている。
【0019】
電子放出源15の周囲には、制御電極16が配置されている。この制御電極16の電位により、電子放出源15から放出された熱電子は、ターゲット18に向けて加速された電子である電子束17となる。電子束17のオン,オフ制御は、制御電極16の電圧制御により行なう。制御電極16は、例えばステンレスや、モリブデン、鉄などの材料から形成されている。ターゲット18の電位は、電子放出源15に対して正電位となっているため、電子束17はターゲット18に引き寄せられて衝突し、放射線を発生する。本実施形態の放射線発生装置1は、ターゲット18に電子束17を照射して、放射線としてX線を発生させるX線発生装置として構成されている。
【0020】
尚、制御電極16の電子照射方向前方にレンズ電極を設けると、電子束の径をより収束させることができ好ましい。
【0021】
外囲器14の開口部14aには、外囲器14の外側へと遮蔽体20が突設されており、外囲器14と遮蔽体20との接合部が密閉構造となっている。遮蔽体20は円筒体状を呈しており、外囲器14の開口部14aに連通する通路20aを有している。この遮蔽体20は、例えばタングステンや、モリブデン、無酸素銅、鉛などのX線吸収能力の高い金属で構成されている。
【0022】
遮蔽体20の通路20aの途中には、放射線を透過する透過基板19が設けられている。ターゲット18は、透過基板19の電子放出源側の面に設置されている。透過基板19は、ターゲット18から発生する不要方向X線を吸収する機能と、ターゲット18の熱拡散板としての機能をもつ。透過基板19は、熱伝導率が高く、X線減衰量の低い材料で板状に形成され、例えばSiC、ダイヤモンド、薄膜無酸素銅等が適している。透過基板19は遮蔽体20の通路20aに銀ろう付け等で接合されている。なお、遮蔽体20の通路20aにおける透過基板19の配置については、後述する。
【0023】
X線を発生させる場合、ターゲット18としては、例えばタングステン、モリブデン、銅、金等が用いられる。ターゲット18は金属薄膜で形成され、透過基板19の電子放出源側の面に形成されている。人体のX線撮影を行う場合、ターゲット18は、電子放出源15の電位に対して、電位が+30KV〜150KV程度高くなっている。この電位差は、ターゲット18から発生するX線が人体を透過し、有効に撮影に寄与するために必要な加速電位差である。
【0024】
タングステンを使用する場合は、例えば3μmから15μm程度の膜厚で形成される。膜厚3μmの場合は、ターゲット18の電子が電子放出源15の電位に対して+30KVの電圧を印加することにより、所望のX線発生量を得ることができる。また膜厚15μmの場合は、ターゲット18の電位が電子放出源15の電位に対して+150KV程度の電圧を印加することにより、所望のX線発生量を得ることができる。
【0025】
遮蔽体20の通路20aにおいて、透過基板19は、外囲器14の外壁面よりも外側に突出して配設されている。遮蔽体20の通路20aは、透過基板19の配設されている部位までは円柱状の孔であるが、透過基板19の電子放出源と反対側において順次内径が拡径するように形成されている。本実施形態では、遮蔽体20の通路20aに設けられた透過基板19およびターゲット18の全体が、外囲器14の外壁面よりも外側に突出して配設されている。
【0026】
遮蔽体20の通路20aの途中に透過基板19が接合されているので、透過基板19よりも外囲器14側の真空は保持されている。また収納容器12の内部へ充填された冷却媒体は、透過基板よりも外側の遮蔽体20の通路20aへ浸入し、透過基板19に接触している。
【0027】
すなわち本実施形態では、冷却媒体が透過基板19、遮蔽体20の外面の大部分および透過基板よりも外側の通路20a内面に接している。透過基板19は遮蔽体20の通路20aに接合されているので、ターゲット18に電子束17が衝突してX線を発生した際、ターゲット18の発熱は透過基板19および遮蔽体20を通じて冷却媒体に熱伝達される。
【0028】
このように熱伝達されるためには、透過基板19の少なくとも一部が、外囲器14の外壁面よりも外側に突出して配設されていればよい。また、透過基板19のターゲット設置面はターゲット18に接して高温となるので、このターゲット設置面が外囲器14の外壁面よりも外側に突出していることがより好ましい。さらに冷却媒体は、遮蔽体20の少なくとも一部に接していればよい。
【0029】
次に、図1上部の温度分布図を参照して、本実施形態の放射線発生装置1を駆動させた場合の作用について説明する。本実施形態の放射線発生装置1の透過型放射線管11を駆動すると、遮蔽体20の外表面には温度分布が生じる。図1中の温度分布図に示すように、Z軸方向において、透過基板19の位置を中心とし、ほぼ対称である凸状(山状)の温度分布が生じる。一例として、透過型放射線管11を150W程度の出力で駆動した場合、遮蔽体20の外表面の最高温度は200℃以上になると推定される。
【0030】
本実施形態のように、透過基板19が外囲器14の外壁面よりも外側へ突出して配置されている場合と、透過基板19が外囲器14の外壁面の内側に配置されている場合とを比較してみる。透過基板19の電子放出源側の面にターゲット18が設置されているので、透過基板19よりも電子放出源側が高温となる。したがって、本実施形態によれば、透過基板19よりも電子放出源側の高温部位が遮蔽体20を介して冷却媒体に接するので、透過基板19が外囲器14の内側に配置されている場合に比して、冷却媒体に放熱する面積が広くなる。
【0031】
具体的には、図1の遮蔽体20において、透過基板19の外面から遮蔽体20先端までの長さをa(mm)とし、透過基板19の外面から外囲器14の外壁までの長さをb(mm)とする。透過基板19が外囲器14の外壁面の内側に配置されている場合に比較して、遮蔽体20の冷却媒体に接触する面積の増加量に相当する遮蔽体20の冷却媒体への放熱量の増加が得られる。したがって、遮蔽体20の冷却能力は(a+b)/a倍程度増加し、ターゲット18および透過基板19の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の放射線発生装置1によれば、冷却媒体に対する放熱面積が広く、かつ最も温度の高い部分を放熱面とする構造が可能となり、放熱能力の高い構造が実現できる。
【0033】
よって、透過型放射線管11の駆動時におけるターゲット18および透過基板19の単位時間当たりの温度上昇が小さくなくなるので、駆動時にターゲット18および透過基板19が耐熱温度に到達するまでの時間が長くなる。これにより、X線発生を長時間駆動することが可能で、信頼性の高い透過型放射線管11を用いた放射線発生装置1を実現することができる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に図2を参照して、本発明に係る放射線発生装置の第2の実施形態について説明する。図2は、本実施形態の透過型放射線管を用いた放射線発生装置の断面模式図及び遮蔽体の外表面の温度分布図である。なお、第1の実施形態の放射線発生装置1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明する。
【0035】
図2に示すように、本実施形態の放射線発生装置2では、遮蔽体20の通路20aに対して、透過基板19が垂直ではなく傾斜して配設されている点が第1の実施形態と異なる。具体的には、電子束17の中心線である電子束中心線22と、透過基板19のターゲット設置面(透過基板19の内面の延長線である基板面方向23)との角度である基板面傾き角24は、90度未満、好ましくは90度未満8度以上の範囲である。傾斜角度が8度未満になると透過基板19の長さが長くなるため、透過型放射線管21としては実用的でない。ターゲット基板19が傾斜して接合されている場合、接合面が楕円リング状となり接合面積が増加するため、ターゲット基板19から遮蔽板20への伝熱量が増加する。
【0036】
次に、図2上部の温度分布図を参照して、本実施形態の放射線発生装置2を駆動させた場合の作用について説明する。本実施形態の放射線発生装置2の透過型放射線管21を駆動すると、遮蔽体20の外表面には、Z軸方向において、透過基板19の位置を中心とした凸状(山状)の温度分布が生じる。遮蔽体20の通路20aに透過基板19が傾斜して接合されているので、透過基板19の位置を中心とした、凸状の温度分布の頂点部が遮蔽体20の円周方向で楕円状に分布している。
【0037】
図2を例にすると、遮蔽体20の外表面の温度分布は上の面と下の面では最高温度部がZ軸方向で位置が異なっている。電子束中心線22と透過基板19のターゲット設置面の交点から遮蔽体先端までの距離をC(mm)、電子束中心線22と透過基板19のターゲット設置面の交点から外囲器14の外壁までの距離をD(mm)とする。遮蔽体20の全周での温度分布を考慮すると、透過基板19が外囲器14の内側に配置されている場合に比較して、遮蔽体20の冷却媒体に接触する面積の増加量にほぼ相当する冷却媒体への放熱量の増加の効果がある。したがって、遮蔽体20の冷却能力がおよそ(C+D)/C程度増加し、これよりX線発生時のターゲット18および透過基板19の温度上昇をより抑制することが可能となる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の放射線発生装置2によれば、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。特に本実施形態の放射線発生装置2によれば、透過基板19が傾斜しているので冷却媒体に接する面積も増加し、透過基板19が冷却媒体に放熱する熱量がより増える。よって、ターゲット18および透過基板19の温度上昇をより一層抑制することが可能となる。
【0039】
<第3の実施形態>
次に図3を参照して、本発明に係る放射線発生装置の第3の実施形態について説明する。図3は、本実施形態の透過型放射線管を用いた放射線発生装置の断面模式図及び遮蔽体の外表面の温度分布図である。なお、第1の実施形態の放射線発生装置1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明する。
【0040】
図3に示すように、本実施形態の放射線発生装置3では、遮蔽体20の内部に冷却媒体を導く冷却媒体導入部32が形成されている点が第1の実施形態と異なる。この冷却媒体導入部32は、遮蔽体20の温度が高い部位に冷却媒体を接触させるために、透過基板19よりも電子放出源側に配置されていることが好ましい。具体的には、遮蔽体20の外周面における外表面温度が最も高くなる部位であって、透過基板19と同一平面上付近に、溝状の冷却媒体導入部32を全周に亘って形成する。冷却媒体導入部32の底部と透過基板19との間隔は、2mm以上の厚さに設定することが好ましい。これはターゲット18で発生し、全方向に放射されるX線を、遮蔽体20で遮蔽し、放射線発生装置3の操作員を被爆させないために適当な下限厚さである。この間隔が2mm未満である場合は、収納容器12の外部にX線遮蔽機能をもつ構造が必要になる場合がある。
【0041】
次に、図3上部の温度分布図を参照して、本実施形態の放射線発生装置3を駆動させた場合の作用について説明する。本実施形態の放射線発生装置3の透過型放射線管31を駆動すると、遮蔽体20の外表面には、Z軸方向において、透過基板19の位置を中心とし、ほぼ左右対称である凸状(山状)の温度分布が生じる。一例として透過型放射線管31を150W程度の出力で駆動した場合、遮蔽体20の外表面の最高温度は200℃以上になると推定される。上述した様に、透過基板19が外囲器14の外壁よりも外側へ突出して配設されている場合は、透過基板19が外囲器14の内側に配設されている場合に比較して、透過基板19よりも電子放出源側の高温部位が冷却媒体に接し、放熱する面積を広くすることができる。これよりX線発生時のターゲット18および透過基板19の温度上昇をより抑制することが可能となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の放射線発生装置3によれば、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。特に本実施形態の放射線発生装置3によれば、遮蔽体20の外面に溝状の冷却媒体導入部32を形成することにより、冷却媒体が冷却媒体導入部32へ浸入し、冷却媒体と遮蔽体20との接触面積が増加する。これよりターゲット18および透過基板19の温度上昇をより抑制することが可能となる。
【0043】
<第4の実施形態>
次に図4を参照して、上記放射線発生装置を用いた第4の実施形態の放射線撮影装置について説明する。図4は、本実施形態の放射線撮影装置を示す模式図である。ここでは図1の放射線発生装置1を用いているが、図2および図3の放射線発生装置2、3を用いても同様のX線撮影装置が得られる。したがって図4においては、第1の実施形態の放射線発生装置1の符号のみを付している。
【0044】
図4に示すように、本実施形態の放射線撮影装置4は、透過型放射線管11のX線放射方向に、不図示の被検体を介して放射線検出手段(X線検出器)41が配置された構成となっている。
【0045】
X線検出器41は、信号処理手段(X線検出信号処理部)42を介してX線撮影装置制御部43に接続されている。X線撮影装置制御部43の出力信号は、電子放出源駆動部44、電子放出源ヒーター制御部45、および制御電極電圧制御部46を介して、それぞれ透過型放射線管11の電子放出源側の各端子に接続されている。さらにX線撮影装置制御部43の出力信号は、ターゲット電圧制御部47を介して、透過型放射線管11のターゲット18の端子に接続されている。
【0046】
放射線発生装置1の透過型放射線管11でX線を発生すると、大気中に放射されたX線は、被検体を透過した放射線が放射線検出手段41に検出され、放射線検出手段41による検出結果から信号処理手段42が放射線透過画像(X線透過画像)を作成する。
【0047】
本実施形態の放射線撮影装置4によれば、X線発生の長時間駆動が可能であり、信頼性の高い透過型放射線管11を備えた放射線発生装置1を用いているので、X線発生の長時間駆動が可能で、信頼性の高いX線撮影装置を実現することができる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 放射線発生装置、11 透過型放射線管、12 収納容器、14 外囲器、15 電子放出源、18 ターゲット、19 透過基板、20 遮蔽体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体が充填された収納容器の内部に、透過型放射線管が収納され、
前記透過型放射線管は、
開口部を有する外囲器と、
前記外囲器の内部に前記開口部に臨んで配設された電子放出源と、
放射線を透過する透過基板と、
前記透過基板の電子放出源側の面に設置され、前記電子放出源から放出された電子の照射により放射線を発生するターゲットと、
前記ターゲットから放出された放射線を遮る遮蔽体と、
を備え、
前記遮蔽体は前記外囲器の外側に突設されると共に、前記外囲器の開口部に連通する通路を有し、該通路に設けられる前記透過基板の少なくとも一部は、前記外囲器の外壁面よりも外側に突出して配設され、
前記冷却媒体は前記遮蔽体の少なくとも一部に接していることを特徴とする放射線発生装置。
【請求項2】
前記透過基板のターゲット設置面が、前記外囲器の外壁面よりも外側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項3】
前記透過基板は、前記通路に対して傾斜して設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線発生装置
【請求項4】
前記遮蔽体は、内部に前記冷却媒体を導く冷却媒体導入部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項5】
前記冷却媒体導入部を、前記透過基板よりも電子放出源側に有することを特徴とする請求項4に記載の放射線発生装置。
【請求項6】
前記冷却媒体は、電気絶縁性を有する液体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項7】
前記電気絶縁性を有する液体は、電気絶縁油またはフッ素系不活性液体であることを特徴とする請求項6に記載の放射線発生装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の放射線発生装置と、
前記透過型放射線管から発生し、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段による検出結果から放射線透過画像を作成する信号処理手段と、
を少なくとも有することを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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