説明

放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置

【課題】絶縁性液体に放射線発生管を浸漬した放射線発生装置において、放射線量を低減することなく、高電圧に対する耐圧性を確保する。
【解決手段】放射線を透過する第一の窓を有し、内部に絶縁性液体が充填された外囲器と、外囲器内に収納され、第一の窓と対向する位置に放射線を透過する第二の窓を有する放射線発生管と、放射線遮蔽部材とを備える放射線発生装置において、外囲器内壁と放射線遮蔽部材との間に固体の絶縁部材を設けることで耐圧性を向上させる。絶縁部材には第一の窓と対向する位置に開口部を形成することで放射線量の低下を防ぐ。また、放射線遮蔽部材から絶縁部材の開口部を介して絶縁部材と交差することなく第一の窓又は外囲器の内壁に至る最短距離を、放射線遮蔽部材から絶縁部材と交差して第一の窓又は外囲器の内壁に至る最短距離よりも長くすることで絶縁部材の開口部における耐圧性低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器及び産業機器分野における非破壊X線撮影等に適用できる放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射線発生管は電子放出源から放出される電子を高電圧で加速し、タングステン等の金属で構成されるターゲットに照射してX線等の放射線を発生させる。このとき発生した放射線は全方位に向かって放射される。そこで、必要以外の放射線を遮蔽するため、ターゲットの電子入射側及び放射線放出側に放射線遮蔽部材を配置した透過型放射線発生管が提案されている(特許文献1参照)。このような透過型放射線発生管では、放射線発生管又は放射線発生管を収納する外囲器の周囲全体を、鉛等の遮蔽部材で覆う必要がないため、装置の小型軽量化を実現することが可能である。
【0003】
ところで、放射線撮影に好適な放射線を発生させるためには、電子放出源とターゲットとの間に40kV〜150kVという高電圧を印加して、高エネルギーの電子線を照射する必要がある。このため、電子放出源とターゲットとの間、及び放射線発生管と外囲器との間には数十kV以上の高電位差が生じることとなる。このような高電圧に対する耐圧性を確保する手段としては、放射線発生管と外囲器との間に絶縁油を充填する構成、更に外囲器内に絶縁部材を配置する構成が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265981号公報
【特許文献2】特開2007−80568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の透過型放射線発生管においては、電圧印加手段を中点接地方式とすることにより放射線発生装置を更に小型軽量化することが可能である。ここで、中点接地方式とは、ターゲットの電圧を+(Va−α)[V]、電子放出源の電圧を−α[V]、(但し、Va>α>0)に、それぞれ設定する方式である。αの値はVa>α>0の範囲内の任意の値であるが、一般的にはVa/2に近い値である。このような中点接地方式を採用した場合、グランドに対する電圧の絶対値が小さくなり、耐圧性を確保するために必要な沿面距離を短くすることができるため、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0006】
その一方で、ターゲットと電気的に接続された放射線遮蔽部材と、一般的にグランド電位に接地される外囲器との間に高電位差が生じる。この放射線遮蔽部材と外囲器との間の耐圧性を確保する方法として、本発明者らは透過型放射線発生管を絶縁性液体に浸漬し、更に外囲器内部に放射線遮蔽部材の放射線通過孔と対向して絶縁部材を配置する方法が有効であることを見出した。
【0007】
しかしながら、放射線遮蔽部材の放射線通過孔と対向して絶縁部材を配置すると、放射線を外囲器外部に取り出すための透過窓を絶縁部材が遮ってしまうため外囲器外部に取り出せる放射線量が低減する。取り出せる放射線量の低減を防ぐ方法としては、絶縁部材に放射線を通過させる開口部を設ける方法が考えられる。しかし、放射線遮蔽部材と外囲器との間に高電位差があるため、絶縁部材に開口部を設けると、開口部において耐圧性が低下し、長時間の駆動等において放電が生じる場合があった。
【0008】
特許文献2においては、放射線放出口を除く放射線発生管の周囲に絶縁部材を配置する方法が提案されている。しかし、特許文献2では、中点接地方式を採用しているものの反射型放射線発生管であるため、絶縁部材の開口部において放射線発生管と外囲器との間に高電位差は生じにくい構成であり、絶縁部材の開口部において耐圧性を確保するための手段は記載されていない。
【0009】
そこで、本発明は、絶縁性液体に放射線発生管を浸漬した放射線発生装置において、放射線量を低減することなく、高電圧に対する耐圧性を確保し、かつ小型軽量化を可能とする放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、放射線を透過する第一の窓を有する外囲器と、
前記外囲器内に収納され、前記第一の窓と対向する位置に放射線を透過する第二の窓を有する放射線発生管と、
前記第二の窓に連通する放射線通過孔を有する放射線遮蔽部材と、
前記外囲器と前記放射線発生管との間に充填された絶縁性液体と、
前記放射線遮蔽部材と前記外囲器の内壁との間に配置され、前記第一の窓と対向する位置に開口部を有する固体の絶縁部材と、
を備える放射線発生装置であって、
前記放射線遮蔽部材から前記絶縁部材の前記開口部を介して前記絶縁部材と交差することなく前記第一の窓又は前記外囲器の内壁に至る最短距離が、前記放射線遮蔽部材から前記絶縁部材と交差して前記第一の窓又は前記外囲器の内壁に至る最短距離よりも長いことを特徴とする放射線発生装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内部に絶縁性液体を充填した外囲器が有する第一の窓と、外囲器内に配置された放射線発生管が有する第二の窓と、を対向配置し、第二の窓に連通する放射線通過孔を有する放射線遮蔽部材と外囲器の内壁との間に絶縁部材を配置した構成をとる。絶縁部材は第一の窓と対向する位置に絶縁部材の開口部を有するため、放射線発生管から放出された放射線が、絶縁部材に吸収されて放射線量が低下するのを防ぐことができる。また、固体の絶縁部材を設けることで、絶縁部材の非開口部では耐圧性が向上する。更に、放射線遮蔽部材から絶縁部材の開口部を介して絶縁部材と交差することなく第一の窓又は外囲器の内壁に至る最短距離を、放射線遮蔽部材から絶縁部材と交差して第一の窓又は外囲器の内壁に至る最短距離よりも長くしている。このため、絶縁部材の開口部における耐圧性の低下を抑制することができる。これにより、放射線遮蔽部材と外囲器との距離を短くした場合でも、放射線発生管と外囲器との間の耐圧性を確保できるため、装置の小型軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態の放射線発生装置の模式図である。
【図2】第2の実施形態の放射線遮蔽部材・絶縁部材の周辺部の模式図である。
【図3】第3の実施形態の放射線遮蔽部材・絶縁部材の周辺部の模式図である。
【図4】本発明の放射線発生装置を用いた放射線撮影装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。尚、本明細書で特に図示又は記載されない部分に関しては当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
まず、図1を用いて本発明の第1の実施形態について説明する。図1(a)は本実施形態の放射線発生装置の断面模式図であり、図1(b)は図1(a)における放射線遮蔽部材16及び絶縁部材21の周辺部を拡大して表した断面模式図である。図1(c)は図1(a)における絶縁部材21と放射線を透過する第一の窓2を、放射線遮蔽部材16側から見たときの模式図である。
【0015】
本実施形態の放射線発生装置は、透過型放射線発生管10を備えており、この透過型放射線発生管10は外囲器1の内部に収納されている。
【0016】
透過型放射線発生管10は、真空容器17、電子放出源11、ターゲット14、放射線を透過する第二の窓15、及び放射線遮蔽部材16を備えている。
【0017】
この外囲器内に透過型放射線発生管10を収納した余空間には絶縁性液体8が充填されている。外囲器1の内部には、本実施形態のように不図示の回路基板及び絶縁トランス等から構成される電圧制御部3(電圧制御手段)を設けても良い。電圧制御部3を設けた場合、例えば透過型放射線発生管10に端子4、5、6、7を介して電圧制御部3から電圧信号が印加され放射線の発生を制御することができる。
【0018】
外囲器1は、容器としての十分な強度を有し、かつ放熱性に優れたものが望ましく、真鍮、鉄、ステンレス等の金属材料が好適に用いられる。
【0019】
絶縁性液体8は、電気絶縁性を有していれば良く、例えば絶縁媒体及び透過型放射線発生管10の冷却媒体としての役割を有する電気絶縁油を用いるのが好ましい。電気絶縁油としては、鉱油、シリコーン油等が好適に用いられる。その他に使用可能な絶縁性液体8としては、フッ素系電気絶縁性液体が挙げられる。
【0020】
外囲器1には、放射線を透過し外囲器外部に放射線を取り出すための第一の窓2が設けられている。透過型放射線発生管10から放出された放射線はこの第一の窓2を通して外部に放出される。第一の窓2には、ガラス、アルミニウム、ベリリウム、ポリカーボネート等が用いられる。
【0021】
外囲器1の内部には、放射線遮蔽部材16と外囲器1との間の耐圧性を確保するために、放射線遮蔽部材16と外囲器1の内壁との間に放射線遮蔽部材16の放射線通過孔24と対向して固体の絶縁部材21が配置されている。絶縁部材21を構成する材料は、電気絶縁性が高く、耐圧性が高いものが好ましく、ポリイミド、ポリカーボネート、ガラスエポキシ等を用いることができる。一般に、電気絶縁油のような絶縁性液体は高い電気絶縁性と耐圧性を有するが、絶縁性液体中に含まれている、あるいは経時劣化により生じる不純物、水分、気泡などにより、耐圧性が低下する場合がある。そのため固体の絶縁部材21を設けることにより、より確実に高耐圧性を維持することができる。放射線遮蔽部材16と外囲器1との間の耐圧性の確保の観点からすると、絶縁部材21の厚みは0.1mm〜10mm程度が適当である。絶縁部材21として絶縁性液体8よりも電気絶縁性が高い材料を用いても良い。また、絶縁部材21には、第一の窓2と対向する位置に開口部22が設けられている。これにより、透過型放射線発生管10から放出された放射線が、絶縁部材21に吸収されて放射線量が低下するのを防ぐことができる。
【0022】
透過型放射線発生管10には、本実施形態のように引出し電極12とレンズ電極13を設けても良い。これらを設けた場合、引出し電極12によって形成される電界によって電子放出源11から電子が放出され、放出された電子はレンズ電極13で収束され、ターゲット14に入射し放射線が発生する。
【0023】
真空容器17は、透過型放射線発生管10の内部を真空に保つためのもので、ガラスやセラミクス材料等が用いられる。真空容器17内の真空度は10-4〜10-8Pa程度であれば良い。また、真空容器17には不図示の排気管を設けても良い。排気管を設けた場合、例えば排気管を通じて真空容器17内を真空に排気した後、排気管の一部を封止することで真空容器17の内部を真空にすることができる。真空容器17の内部には真空度を保つために、不図示のゲッターを配置しても良い。また、真空容器17は、開口部を有しており、その開口部には放射線通過孔24を有する放射線遮蔽部材16が接合されている。この放射線遮蔽部材16の放射線通過孔24の内壁に第二の窓15が接合されることにより真空容器17が密閉される。
【0024】
電子放出源11は、真空容器17の内部に、ターゲット14に対向して配置されている。電子放出源11にはタングステンフィラメントや、含浸型カソードのような熱陰極、又はカーボンナノチューブ等の冷陰極を用いることができる。電子放出源11の近傍には引出し電極12が配置され、引出し電極12によって形成される電界によって放出された電子は、レンズ電極13で収束され、ターゲット14に入射し放射線が発生する。このとき、電子放出源11とターゲット14との間に印加される電圧Vaは、放射線の使用用途によって異なるものの、概ね40kV〜150kV程度である。
【0025】
ターゲット14は、第二の窓15の電子放出源側の面に配置されている。ターゲット14を構成する材料は、融点が高く、放射線発生効率の高いものが好ましい。例えばタングステン、タンタル、モリブデン等を用いることができる。
【0026】
第二の窓15は、ターゲット14を支持し、ターゲット14で発生する放射線の少なくとも一部を透過するものであり、放射線遮蔽部材16の放射線通過孔24内に配置されている。第二の窓15を構成する材料は、ターゲット14を支持できる強度を有し、ターゲット14で発生した放射線の吸収が少なく、かつターゲット14で発生した熱をすばやく放熱できるよう熱伝導率の高いものが好ましい。例えばダイヤモンド、窒化シリコン、窒化アルミニウム等を用いることができる。
【0027】
放射線遮蔽部材16は、第二の窓15に連通する放射線通過孔24を有し、ターゲット14から放出された放射線のうち、不要な放射線を遮るものであり、真空容器17の開口部に接合され、放射線通過孔24の内壁に第二の窓15が接合されている。ターゲット14は放射線通過孔24の内壁に接合されていなくても良い。図1では、電子放出源11から放出された電子は、放射線通過孔24を通過してターゲット14に照射され、ターゲット14で放射線が発生する。放射線遮蔽部材16は、ターゲット14から電子放出源11側に突出しているため、このときターゲット14の電子放出源側に散乱した不要な放射線は、放射線遮蔽部材16で遮蔽される。また、放射線遮蔽部材16が第二の窓15から第一の窓2側に突出しているため、第二の窓15を透過した放射線は放射線通過孔24を通過し、不要な放射線は放射線遮蔽部材16で遮蔽される。
【0028】
放射線遮蔽部材16を構成する材料は、放射線の吸収率が高く、かつ熱伝導率の高いものが好ましい。例えばタングステン、タンタル等の金属材料を用いることができる。不要な放射線を遮蔽するため、放射線遮蔽部材16の厚みは3mm以上が適当である。
【0029】
ここで放射線遮蔽部材16から絶縁部材21と交差して第一の窓2又は外囲器1の内壁に至る最短距離をd1、放射線遮蔽部材16から絶縁部材21の開口部22を介して絶縁部材21と交差することなく第一の窓2又は外囲器1の内壁に至る最短距離をd2とする。本実施形態では、前記最短距離d2が前記最短距離d1よりも長くなるように、放射線遮蔽部材16の形状を図1に示す形状に設定した。放射線遮蔽部材16と外囲器1の内壁との間に、固体の絶縁部材21を配置しているため、絶縁部材21の非開口部23では絶縁部材21を用いない場合よりも耐圧性が向上する。一方、絶縁部材21の開口部22では絶縁部材21の非開口部23と比べると耐圧性が低いが、前記最短距離d2を前記最短距離d1よりも長くしているため、絶縁部材21の開口部22における耐圧性の低下を抑制することができる。これにより、放射線遮蔽部材16と外囲器1との距離を短くした場合でも、透過型放射線発生管10と外囲器1との間の耐圧性を確保できるため、装置の小型軽量化を実現できる。
【0030】
放射線遮蔽部材16の形状は図1に示す形状に限定されるものではなく、前記最短距離d2を前記最短距離d1よりも大きくすることで耐圧性を確保でき、かつ不要な放射線を遮蔽できる形状であれば良い。放射線遮蔽部材16の第一の窓側の面は第二の窓19の第一の窓側の面と面一になっていても良い。前記最短距離d2は、放射線発生装置の駆動条件や構成部材等にも依存するが、概ね前記最短距離d1の1.2倍以上であるのが望ましい。
【0031】
外囲器1の外部に放射線をより多く取り出す観点からすると、放射線遮蔽部材16の形状は、図1に示すように、放射線通過孔24の開口面積が、第二の窓15側から第一の窓2側に向かって徐々に大きくなっているのが良い。これは、第二の窓15を透過した放射線が放射状の拡がりを持つからである。
【0032】
以上、本実施形態によれば、放射線量を低減することなく、高電圧に対する耐圧性を確保でき、かつ小型軽量化が可能な放射線発生装置を提供することができる。
【0033】
尚、図1では、絶縁部材21の開口部22が第一の窓2に連通しているが、絶縁部材21の開口部22は第一の窓2に連通していなくても良く、絶縁部材21が第一の窓2及び外囲器1の内壁から離れていても良い。この場合でも、(前記最短距離d1)<(前記最短距離d2)の条件を満たせば本発明の効果が得られる。また、絶縁部材21の開口部22が第一の窓2と外囲器1の境界よりも外側に形成されていても良い。
【0034】
〔第2の実施形態〕
本発明において、放射線遮蔽部材16の形状は、図1に示す形状に限定されるものではなく、別の形状であっても良い。
【0035】
次に、図2を用いて、本発明において採用可能な放射線遮蔽部材16の形状の別の一例を説明する。図2は本実施形態の放射線発生装置における放射線遮蔽部材16及び絶縁部材21の周辺部を拡大して表した断面模式図である。本実施形態において、放射線遮蔽部材16以外は第1の実施形態と同様とすることができる。
【0036】
本実施形態では、放射線遮蔽部材16の放射線通過孔24の開口面積が、放射線通過孔24の途中から第一の窓2側に向かって徐々に大きくなっていることを特徴とする。また、前記最短距離d2が前記最短距離d1よりも長くなるように、放射線遮蔽部材16の形状を図2に示す形状に設定した。
【0037】
以上、本実施形態によれば、上記構成をとるため第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0038】
尚、絶縁部材21の開口部22は第一の窓2に連通していなくても良く、(前記最短距離d1)<(前記最短距離d2)の条件を満たせば絶縁部材21が第一の窓2及び外囲器1の内壁から離れていても良い。また、絶縁部材21の開口部22が第一の窓2と外囲器1の境界よりも外側に形成されていても良い。
【0039】
〔第3の実施形態〕
本発明において、絶縁部材21の形状は、図1に示す形状に限定されるものではない。
【0040】
次に、図3を用いて、本発明において採用可能な絶縁部材21の形状の別の一例を説明する。図3(a)は本実施形態の放射線発生装置における放射線遮蔽部材16及び絶縁部材21の周辺部を拡大して表した断面模式図であり、図3(b)は図3(a)における絶縁部材21と第一の窓2を、放射線遮蔽部材16側から見たときの模式図である。本実施形態において、絶縁部材21以外は第1の実施形態と同様とすることができる。
【0041】
本実施形態では、絶縁部材21の開口部22が、第一の窓2と外囲器1の境界よりも内側に形成され、第一の窓2と外囲器1の境界が絶縁部材21で覆われていることを特徴とする。即ち放射線遮蔽部材16側から見たときに、絶縁部材21の開口部22が第一の窓2と外囲器1の境界よりも内側に位置している。また、前記最短距離d2が前記最短距離d1よりも長くなるように、絶縁部材21の形状を図3に示す形状に設定した。第一の窓2と外囲器1の境界においては、境界の角部等に電界が集中しやすく、第一の窓2が絶縁体の場合には、第一の窓2と外囲器1と絶縁性液体8との境界が電界の特異点となり、放電の危険性が高くなる場合がある。本実施形態においては、電界集中部となりやすい第一の窓2と外囲器1の境界を絶縁部材21で覆う構成とすることで、透過型放射線発生管10と外囲器1との間の耐圧性を更に向上させることができる。
【0042】
以上、本実施形態によれば、上記構成をとるため第1・第2の実施形態と同様の効果が得られると共に、透過型放射線発生管10と外囲器1との間の耐圧性を更に向上させる効果も得られる。
【0043】
尚、絶縁部材21の開口部22は第一の窓2に連通していなくても良く、(前記最短距離d1)<(前記最短距離d2)の条件を満たせば絶縁部材21が第一の窓2及び外囲器1の内壁から離れていても良い。第一の窓2と外囲器1の境界を絶縁部材21で覆って境界に電界が集中することによる放電の発生を抑制する観点からすると、絶縁部材21を第一の窓2及び外囲器1の内壁から離し過ぎると境界が覆われなくなるので離し過ぎない方が良い。
【0044】
〔第4の実施形態〕
次に、図4を用いて本発明の放射線発生装置を用いた放射線撮影装置について説明する。図4は本実施形態の放射線撮影装置の構成図である。本実施形態の放射線撮影装置は、放射線発生装置30、放射線検出器31、信号処理部32、装置制御部33及び表示部34を備えている。放射線発生装置30としては、例えば第1〜第3の実施形態の放射線発生装置が好適に用いられる。放射線検出器31は信号処理部32を介して装置制御部33に接続され、装置制御部33は表示部34及び電圧制御部3に接続されている。
【0045】
放射線発生装置30における処理は装置制御部33によって統括制御される。例えば、装置制御部33は放射線発生装置30と放射線検出器31による放射線撮影を制御する。放射線発生装置30から放出された放射線は、被検体35を介して放射線検出器31で検出され、被検体35の放射線透過画像が撮影される。撮影された放射線透過画像は表示部34に表示される。また例えば、装置制御部33は放射線発生装置30の駆動を制御し、電圧制御部3を介して透過型放射線発生管10に印加される電圧信号を制御する。
【0046】
以上、本実施形態によれば、本発明の放射線発生装置を用いることにより、上述の本発明の効果を奏すると共に、放射線撮影に好適でかつ長期信頼性に優れた放射線撮影装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:外囲器、2:第一の窓、3:電圧制御部(電圧制御手段)、4〜7:端子、8:絶縁性液体、10:透過型放射線発生管、11:電子放出源、12:引出し電極、13:レンズ電極、14:ターゲット、15:第二の窓、16:放射線遮蔽部材、17:真空容器、21:絶縁部材、22:絶縁部材の開口部、23:絶縁部材の非開口部、24:放射線通過孔、30:放射線発生装置、31:放射線検出器、32:信号処理部、33:装置制御部、34:表示部、35:被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を透過する第一の窓を有する外囲器と、
前記外囲器内に収納され、前記第一の窓と対向する位置に放射線を透過する第二の窓を有する放射線発生管と、
前記第二の窓に連通する放射線通過孔を有する放射線遮蔽部材と、
前記外囲器と前記放射線発生管との間に充填された絶縁性液体と、
前記放射線遮蔽部材と前記外囲器の内壁との間に配置され、前記第一の窓と対向する位置に開口部を有する固体の絶縁部材と、
を備える放射線発生装置であって、
前記放射線遮蔽部材から前記絶縁部材の前記開口部を介して前記絶縁部材と交差することなく前記第一の窓又は前記外囲器の内壁に至る最短距離が、前記放射線遮蔽部材から前記絶縁部材と交差して前記第一の窓又は前記外囲器の内壁に至る最短距離よりも長いことを特徴とする放射線発生装置。
【請求項2】
前記絶縁部材の前記開口部が前記第一の窓に連通していることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項3】
前記絶縁部材の前記開口部が、前記第一の窓と前記外囲器の境界よりも内側に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線発生装置。
【請求項4】
前記放射線遮蔽部材の前記放射線通過孔の開口面積が、前記第二の窓から前記第一の窓側に向かって徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項5】
前記絶縁性液体は電気絶縁油であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項6】
前記放射線遮蔽部材は前記放射線発生管から前記第一の窓側に突出していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項7】
前記絶縁部材は前記絶縁性液体よりも電気絶縁性が高いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項8】
前記放射線発生管はその内部に、電子放出源と前記第二の窓の前記電子放出源側の面に配置され前記電子放出源から放出される電子の照射により放射線を発生させるターゲットとを備えており、
前記放射線発生装置は前記ターゲットの電圧を+(Va−α)[V]、前記電子放出源の電圧を−α[V]、(但し、Va>α>0)に、それぞれ設定する電圧制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の放射線発生装置と、前記放射線発生装置から放出され被検体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、を備えることを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−20788(P2013−20788A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152757(P2011−152757)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】