説明

放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置

【課題】絶縁性液体を充填した外囲器内に放射線発生管を備える構成において、装置の小型化、外囲器と放射線発生管との間の耐圧の向上、放射線の減衰量の低減を実現した放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線を透過する第一の窓27を有する外囲器12と、外囲器12内に収納され、第一の窓27と対向する位置に放射線を透過する第二の窓19を有する放射線発生管14と、外囲器12と放射線発生管14との間に充填された絶縁性液体13と、を備える放射線発生装置であって、第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間に、固体の絶縁部材28が配置されていることを特徴とする放射線発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線発生装置及び放射線撮影装置に関し、特に絶縁性液体を充填した外囲器内に放射線発生管を備える放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子源から放出された電子をターゲットに照射することにより放射線を発生させる放射線発生装置として、密閉された内部に電子源とターゲットを配置した放射線発生管を、外囲器内に収納した放射線発生装置が知られている。放射線発生管内に配置される電子源としては、従来からフィラメント等の熱電子源が用いられている。熱電子源には、ブラウン管用の電子源として用いられる含浸型熱陰極電子放出素子等のように小型のものもある。熱電子源を用いた放射線発生管では、高温に加熱した熱電子源から放出された熱電子の電子束の一部を、ウエネルト電極、引出し電極、加速電極及びレンズ電極を通して高エネルギーに加速する。それと同時に電子束を所望の形状に成形した後、成形された電子束をタングステン等の金属で構成されたターゲットに照射して放射線を発生させる。
【0003】
ところで、放射線撮影に好適な放射線を発生させるためには、放射線発生管内の陰極である電子源とターゲットとの間に40kV〜150kVという高電圧を印加し、電子束を高エネルギーに加速してターゲットに照射する必要がある。このため、電子源とターゲットとの間、及び放射線発生管と外囲器との間には数十kV以上の高電位差が生じることとなる。よって、長時間安定して放射線を発生させるためには、放射線発生装置がこのような高電圧において耐電圧性(耐圧性)を有することが求められる。
【0004】
特許文献1には、特に回転陽極X線管と外囲器との間で放電が発生するのを防ぐ目的で、回転陽極X線管と外囲器の内壁との間に冷却絶縁油を充填し耐圧性を確保する技術が開示されている。具体的には外囲器を回転陽極X線管の軸方向に3分割し、外囲器中央部で回転陽極X線管を支持し、陽極側と陰極側をそれぞれカップ状支持部材で支持する構成をとっている。回転陽極X線管とカップ状支持部材との間によどみなく冷却絶縁油を流動させることで回転陽極X線管の表面に付着するスラッジを防止し、回転陽極X線管と外囲器との間の放電を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−066399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、回転陽極X線管と外囲器との間の距離によっては冷却絶縁油を流動させるための流出入口や回転陽極X線管のX線放出口を通して回転陽極X線管と外囲器との間で放電が発生しX線管が破損するおそれがあった。そして、放電によりX線管が破損すると、長時間安定してX線を発生させることができないという問題があった。
【0007】
この問題の対策として、回転陽極X線管と外囲器の内壁との間の冷却絶縁油層を十分厚くする方法が考えられる。しかし、冷却絶縁油等の絶縁性液体の耐電圧性能は、他の絶縁部材のそれに比べて電極形状、電極表面性状、温度、不純物、対流等の影響を受けやすい。このため、駆動中200℃以上の高温になる回転陽極X線管と、外囲器の内壁との間の冷却絶縁油層の厚さの設定は放電を防ぐために十分に安全率を加える必要がある。その結果、外囲器が大きくなり、X線発生装置が大型化・高重量化していた。また、冷却絶縁油層を厚くすると冷却絶縁油層を通過する際のX線の減衰量が大きくなる。よって、X線撮影に必要なX線量を放出するためには、その減衰量を補うためにより高電圧、高電流、長時間駆動する必要があり、電力効率の低いX線発生装置となっていた。特に可般型X線発生装置等で電力効率の低さが問題となっていた。
【0008】
上述の問題は特許文献1に記載のような反射型の放射線発生装置に限った問題ではなく、透過型の放射線発生装置においても同様の問題があった。よって、反射型・透過型のいずれにおいても、放射線発生管と外囲器との間の距離をできるだけ短くして装置を小型化し、放射線発生管と外囲器との間で放電しにくいように耐圧も確保し、かつ放射線の減衰量も低減することが求められる。
【0009】
そこで、本発明は、絶縁性液体を充填した外囲器内に放射線発生管を備える構成において、装置の小型化、外囲器と放射線発生管との間の耐圧の向上、放射線の減衰量の低減を実現した放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、放射線を透過する第一の窓を有する外囲器と、
前記外囲器内に収納され、前記第一の窓と対向する位置に放射線を透過する第二の窓を有する放射線発生管と、
前記外囲器と前記放射線発生管との間に充填された絶縁性液体と、
を備える放射線発生装置であって、
前記第一の窓及びその周縁部と前記第二の窓及びその周縁部との間に、固体の絶縁部材が配置されていることを特徴とする放射線発生装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内部に絶縁性液体を充填した外囲器が有する第一の窓と、外囲器内に配置された放射線発生管が有する第二の窓と、を対向配置し、第一の窓及びその周縁部と第二の窓及びその周縁部との間に固体の絶縁部材を配置した構成をとる。固体の絶縁部材を設けることで、第一の窓及びその周縁部と第二の窓及びその周縁部との間の耐圧が、絶縁部材を用いない場合よりも向上する。よって、第一の窓及びその周縁部と第二の窓及びその周縁部との距離を短くして装置を小型化しても耐圧を確保できる。また、第一の窓及びその周縁部と第二の窓及びその周縁部との距離を短くすることができるため、放射線の減衰量を低減させることができる。これにより、長時間安定して放射線を発生可能な信頼性の高い放射線発生装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態の放射線発生装置の断面模式図である。
【図2】第2の実施形態の放射線発生装置の断面模式図である。
【図3】第3の実施形態の放射線発生装置の断面模式図である。
【図4】第4の実施形態の放射線発生装置の断面模式図である。
【図5】本発明の放射線発生装置を用いた放射線撮影装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の放射線発生装置及び放射線撮影装置を具体的な実施形態で説明する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
図1(a)は本実施形態の放射線発生装置11を図1(b)のB−B’を含む平面で切断したときの断面模式図、図1(b)は本実施形態の放射線発生装置11を図1(a)のA−A’を含む平面で切断したときの断面模式図である。
【0015】
本実施形態の放射線発生装置(透過型放射線源)11は、外囲器12、絶縁性液体13、放射線発生管14、電子源15、第1制御電極16、第2制御電極17、透過型ターゲット18、ターゲット基板19、遮蔽部材20を有している。更に本実施形態の放射線発生装置11は、カソード支持部材22、保持部材25、電源回路26、第一の窓27、絶縁部材28を有している。
【0016】
外囲器12は、放射線発生管14等の部材を収納するための容器である。外囲器12内には絶縁性液体13が充填されている。絶縁性液体13が充填された外囲器内には、外囲器12の内壁に固定された保持部材25によって胴部を保持された筒形の放射線発生管14が収納されており、絶縁性液体13は放射線発生管14の周囲を循環可能になっている。外囲器12の材料としては鉄、ステンレス、鉛、真鍮、銅等の金属が使用可能である。外囲器12内への絶縁性液体13の注入は、外囲器12の一部に絶縁性液体13の注入口(不図示)を設けることにより、その注入口から行うことができる。また、駆動中の放射線発生装置11で絶縁性液体13の温度が上昇し膨張したときに外囲器12内の圧力が上昇するのを避けるため、必要に応じて外囲器12の一部に弾性部材を用いた圧力調整口(不図示)を設置する。
【0017】
絶縁性液体13は、電気絶縁性が高く、冷却能力の高いものが良い。また、ターゲット18が発熱により高温になりその熱が絶縁性液体13に伝わるため、熱による変質の少ないものが好ましい。例えば電気絶縁油、フッ素系の絶縁性液体等が使用可能である。
【0018】
放射線発生管14は、筒形の形状をしており、筒形の両端がそれぞれ塞がれ内部が密閉された真空容器である。筒形の胴部内には電子源15が配置され、電子源15に対向する筒形の一端には、ターゲット18が備えられている。電子源15から放出された電子はターゲット18に照射され、ターゲット18で放射線が発生し、発生した放射線はターゲット基板19、第一の窓27を通って外囲器12の外部に放出される。本実施形態の放射線発生管14は円筒形の一端を、ターゲット18、ターゲット基板19及び遮蔽部材20からなるアノード21で塞ぎ、円筒形の他端を、電子源15等を支持するカソード支持部材22で塞いだ構成としているが、この構成に限定されない。放射線発生管14の形状は角筒形等でも良い。また、内部の真空度を、一般的に電子源15が駆動できる1×10-4Pa以下に保つため、放射線発生管14内には、駆動中の放射線発生管14で放出されるガスを吸収するバリウムゲッタ、NEG、小型イオンポンプ(不図示)等を配置しても良い。放射線発生管14の材料としては電気絶縁性が高く、高真空維持が可能であり、かつ耐熱性の高いものが好ましい。例えばアルミナ、ガラス等が使用可能である。電子源15としてはフィラメント、含浸型カソード、電界放出型素子等が使用可能である。
【0019】
ターゲット18は、電子源15に対向してターゲット基板19の電子源側の面に配置されている。ターゲット18の材料としてはタングステン、モリブデン、銅等の金属が使用可能である。
【0020】
ターゲット基板19は、ターゲット18を支持する部材であり、かつターゲット18で発生した放射線を透過させ放射線発生管14の外部に放出する窓である。また、ターゲット基板19は、ターゲット18から発生し不要な方向に放射される放射線を吸収する機能と、ターゲット基板19の熱拡散板の機能を持つ、筒形の遮蔽部材20に銀ろう付け等で接合されている。遮蔽部材20の形状は円筒形でも良いし、角筒形等でも良い。電子源15から放出された電子は遮蔽部材20の電子源15に近い開口部を通ってターゲット18に照射され、ターゲット18で放射線が発生し全方向に放射線が放射される。ターゲット基板19を透過した放射線は遮蔽部材20の電子源15から遠い開口部を通った後、第一の窓27から外囲器12の外部に放出される。図1では遮蔽部材20の電子源15から遠い開口部が、ターゲット基板19よりも外方に位置している。この構成にするとターゲット18から外方に向かって放射された放射線のうち、不要な放射線を遮蔽部材20の内壁で遮蔽できる点でより好ましい。本実施形態ではターゲット基板19が筒形の遮蔽部材20に接合された構成をとるため、放射線発生時にターゲット18で発生した熱はターゲット基板19、遮蔽部材20に伝わり、その後絶縁性液体13、放射線発生管14に伝わる。尚、ターゲット基板19は必ずしも設けなくても良い。ターゲット基板19を設けない場合には、ターゲット18を筒形の遮蔽部材20に銀ろう付け等で接合し、ターゲット18が、放射線を放射線発生管14の外部に放出する窓となる。この場合、ターゲット18で発生した熱は絶縁性液体13、遮蔽部材20に伝わり、その後放射線発生管14に伝わる。ターゲット基板19の材料としては熱伝導率が高く、放射線吸収能力の低いものが良い。例えばSiC、ダイヤモンド、カーボン、薄膜無酸素銅、ベリリウム等が使用可能である。以下、ターゲット基板19を「第二の窓19」ということとする。遮蔽部材20の材料としては放射線吸収能力の高いものが良い。例えばタングステン、モリブデン、無酸素銅、鉛、タンタル等の金属が使用可能である。
【0021】
第二の窓19から放出された放射線24は絶縁性液体13の中を通過し、外囲器12の放射線放出部分に設けられた、第一の窓27から、外囲器12の外部に放出される。第一の窓27は第二の窓19と対向しており、固体の絶縁部材28が第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間に配置されている。このため、放射線24は絶縁部材28を通過し、第一の窓27から外囲器12の外部に放出される。第一の窓27の材料としてはアクリルやポリカーボネイト、アルミ等の比較的放射線減衰量の少ない材料が良い。これは、外囲器12から、より強い放射線24を放出できるようにするためである。絶縁部材28の材料としては電気絶縁性が高い材料が良い。例えばポリイミド、セラミックス、エポキシ樹脂又はガラス等が良い。第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間の耐圧性の確保の観点からすると、絶縁部材28は厚さ0.5mm〜6mmの板状であるのが好ましい。本実施形態では絶縁部材28として厚さ3mmのエポキシ板を配置した。絶縁部材28の材料として絶縁性液体13よりも電気絶縁性が高い材料を用いても良い。また、絶縁部材28の材料として絶縁性液体13と同じ又はそれよりも高い放射線透過率を有する材料を用いても良い。
【0022】
保持部材25は、放射線発生管14の胴部を保持するためのものである。図1(a)(b)では放射線発生管14が胴部の二箇所で保持部材25によって保持されているが、放射線発生管14は少なくとも胴部の一箇所以上で保持部材25によって保持されていれば良い。保持部材25の材料としては例えば鉄、ステンレス、真鍮、銅等の導電性を有する部材や、エンジニアリングプラスチック、セラミック等の絶縁性を有する部材が使用可能である。
【0023】
第1制御電極16は、電子源15で発生した電子を引き出すためのものであり、第2制御電極17は、ターゲット18における電子の焦点径を制御するためのものである。本実施形態のように第1制御電極16と第2制御電極17を設けた場合、第1制御電極16によって形成される電界により電子源15から放出された電子束23は、第2制御電極17の電位制御により集束される。ターゲット18の電位は電子源15に対して正電位となっているため、第2制御電極17を通過した電子束23は、ターゲット18に引き寄せられてターゲット18に衝突し、放射線24を発生する。電子束23のON/OFF制御は、第1制御電極16の電圧で制御する。第1制御電極16の材料としてはステンレス、モリブデン、鉄等が使用可能である。
【0024】
電源回路26は、放射線発生管14に接続され(配線不図示)、電子源15、第1制御電極16、第2制御電極17及びターゲット18に電気を供給するためのものであり、本実施形態では外囲器12内に配置しているが、外囲器12の外に配置しても良い。
【0025】
人体等の放射線撮影を行う場合、ターゲット18は電子源15の電位に対して電位が+30kV〜150kV程度高くなっている。この電位差はターゲット18から発生する放射線が人体を透過し、有効に撮影に寄与するために必要な加速電位差である。人体の放射線撮影を行う際には通常X線が使用されるが、本発明はX線以外の放射線にも適用可能である。
【0026】
本実施形態の放射線発生装置11は、ターゲット18と電子源15との電位差Vを20kV〜160kVとし、ターゲット18に+V/2、電子源15に−V/2の電位を与え、保持部材25で接地した、中点接地型の電源方式を採用している。これは、絶縁性液体13の絶縁破壊距離から考えて、一般的に外囲器12が小型化できるからである。また、本実施形態は中点接地型でなくても良いが、中点接地型にするとグランドに対するターゲット18の電圧及び電子源15の電圧の絶対値を小さくすることができるため、陽極接地型等と比べて電源回路26を小規模にできる点でより好ましい。中点で接地しなくても、例えば放射線発生管14の両端から離れた位置に保持部材25を配置し、その位置で接地した場合でも陽極接地型等と比べると電源回路26を小規模にできる。
【0027】
上記構成の放射線発生装置11を電位差Vで駆動すると、ターゲット18、第二の窓19及び遮蔽部材20の電位は+V/2となる。これに対向する第一の窓27、外囲器12は接地電位であるため、この間に+V/2の電位差が生じる。これは10kV〜80kVという大変高い電位差である。装置の小型化の観点からすると、第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との距離をできるだけ短くするのが良いが、この距離を短くすると放電し易くなる。また、+V/2の電位差で生じる電界は、ターゲット18、第二の窓19及び遮蔽部材20の形状により、電界集中する可能性があるため、ターゲット18の近傍は放電し易い部位となる。更に、放射線発生管14ではターゲット18を備える一端での発熱が大きい。即ちターゲット18で発生した熱が第二の窓19、遮蔽部材20へと伝わるためアノード21での発熱が大きい。例えば放射線発生装置11を150W程度の出力で駆動した場合、遮蔽部材20表面の最高温度は200℃以上になると推定される。よって、絶縁性液体13のような、温度の影響で耐圧性が低下する絶縁物では、ターゲット18の近傍は一層放電し易い部位となる。
【0028】
従って、本実施形態では、図1のように、固体の絶縁部材28を、第一の窓27及びその周縁の外囲器12の内壁に接するように配置した。また、第二の窓19及びその周縁部とは間隔を置いて配置した。固体の絶縁部材28を用いるため、第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間の耐圧が、絶縁部材28を用いない場合よりも向上する。一般に、電気絶縁油のような絶縁性液体は高い電気絶縁性と耐圧性を有するが、絶縁性液体中に含まれている、あるいは経時劣化により生じる不純物、水分、気泡などにより、耐圧性が低下する場合がある。そのため固体の絶縁部材28を設けることにより、より確実に高耐圧性を維持することができる。よって、第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との距離を短くして装置を小型化しても耐圧を確保できる。また、第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との距離を短くすることができるため、放射線の減衰量を低減させることができる。
【0029】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため、装置の小型化、外囲器12と放射線発生管14との間の耐圧の向上、放射線の減衰量の低減を実現できる。これにより、長時間安定して放射線を発生可能な信頼性の高い放射線発生装置を実現できる。
【0030】
尚、図1では、絶縁部材28を、第二の窓19及びその周縁部に対向する、第一の窓27及びその周縁の外囲器12の内壁全体を覆って配置している。放射線発生管14と外囲器12との間で発生する放電をより確実に抑制する観点からすると、このように配置するのが良いが、このような配置に限定されない。絶縁部材28がアノード21における第一の窓27に最も近い端面に対向する領域に配置されていれば本発明の効果が得られる。図1のように遮蔽部材20の端面の一部が第二の窓19よりも第一の窓27側に突出している場合には、絶縁部材28が遮蔽部材20の突出部分の端面に対向する領域に配置されていれば本発明の効果が得られる。これは、アノード21の形状が図1の形状の場合、遮蔽部材20の突出部分の端面が第一の窓27及びその周縁部に最も近いため、この間で特に放電が発生し易いからである。
【0031】
また、アノード21の形状は図1の形状に限定されるわけではない。図1のように遮蔽部材20の端面の一部が第二の窓19よりも第一の窓27側に突出していなくても良い。例えば遮蔽部材20の端面と第二の窓19の第一の窓27側の面が面一になっている場合でも本発明を適用することができる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
図2は本実施形態の放射線発生装置11を図1(a)と同じ平面で切断したときの断面模式図である。本実施形態の放射線発生装置11を図2のA−A’を含む平面で切断したときの断面模式図は図1(b)と同じである。
【0033】
本実施形態の放射線発生装置(透過型放射線源)11は、図2のように、絶縁部材28を、第一の窓27及びその周縁部からも、第二の窓19及びその周縁部からも間隔を置いて配置している点が第1の実施形態と異なる。この点を除いては、第1の実施形態と同じであるため、絶縁部材28以外の各部材の説明、及び放射線発生装置11の構成についての説明は省略する。
【0034】
本実施形態においても、固体の絶縁部材28が第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間に配置されているため、放射線24は絶縁部材28を通過し、第一の窓27から外囲器12の外部に放出される。
【0035】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、絶縁部材28を第1の実施形態よりも第二の窓19側に近づけて配置することで、第1の実施形態に比べて、絶縁部材28よりも第一の窓27側の絶縁性液体13が温度等の影響を受けにくくなる。このため、第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間の距離を第1の実施形態と同じとした場合、第1の実施形態よりも耐圧を向上できる。更に、絶縁部材28よりも第一の窓27側の絶縁性液体13の層の厚さを、温度変動を受けてもいいように薄くすることができるため、第1の実施形態よりも装置の小型軽量化を実現できる。
【0036】
尚、図2では、絶縁部材28により外囲器12内を第一の窓27側と第二の窓19側に完全に仕切っているが、このような配置に限定されない。アノード21における第一の窓27に最も近い端面と、第一の窓27及びその周縁部との間で特に放電が発生し易いため、絶縁部材28はアノード21における第一の窓27に最も近い端面に対向する領域に配置されていれば良い。
【0037】
〔第3の実施形態〕
図3は本実施形態の放射線発生装置11を図1(a)と同じ平面で切断したときの断面模式図である。本実施形態の放射線発生装置11を図3のA−A’を含む平面で切断したときの断面模式図は図1(b)と同じである。
【0038】
本実施形態の放射線発生装置(透過型放射線源)11は、図3のように、絶縁部材28を、遮蔽部材20の突出部分の端面に接し、かつ第二の窓19を塞いで配置し、第一の窓27及びその周縁部とは間隔を置いている点が第1・第2の実施形態と異なる。この点を除いては、第1・第2の実施形態と同じであるため、絶縁部材28以外の各部材の説明、及び放射線発生装置11の構成についての説明は省略する。
【0039】
本実施形態においても、固体の絶縁部材28が第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間に配置されているため、放射線24は絶縁部材28を通過し、第一の窓27から外囲器12の外部に放出される。
【0040】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、絶縁部材28を第2の実施形態よりも第二の窓19側に近づけて配置することで、第2の実施形態に比べて、絶縁部材28よりも第一の窓27側の絶縁性液体13が温度等の影響を受けにくくなる。このため、第一の窓27及びその周縁部と第二の窓19及びその周縁部との間の距離を第2の実施形態と同じとした場合、第2の実施形態よりも耐圧を向上できる。更に、絶縁部材28よりも第一の窓27側の絶縁性液体13の層の厚さを、温度変動を受けてもいいように第2の実施形態で設定した厚さよりも薄くすることができるため、第2の実施形態よりも装置の小型軽量化を実現できる。
【0041】
〔第4の実施形態〕
図4は本実施形態の放射線発生装置51の断面模式図である。
【0042】
本実施形態の放射線発生装置(反射型放射線源)51は、図4のように、反射型の放射線発生管14を用いている点が第1〜第3の実施形態と異なる。この点を除いては、第1の実施形態と同じであるため、反射型ターゲット52、第二の窓53、放射線発生管14以外の各部材の説明は省略する。
【0043】
本実施形態の放射線発生装置51は、外囲器12、絶縁性液体13、放射線発生管14、電子源15、電源回路26、第一の窓27、絶縁部材28、反射型ターゲット52、第二の窓53を有している。
【0044】
反射型ターゲット52は、第二の窓53と間隔を置いて、第二の窓53と対向して配置されている。放射線発生管14は、電子源15から放出された電子束23を反射型ターゲット52に衝突させ、放射線24を発生させる真空容器である。放射線24は、放射線発生管14の一部である、第二の窓53を通った後、第一の窓27から外囲器12の外部に放出される。
【0045】
本実施形態においても、固体の絶縁部材28が第一の窓27及びその周縁部と第二の窓53及びその周縁部との間に配置されているため、放射線24は絶縁部材28を通過し、第一の窓27から外囲器12の外部に放出される。
【0046】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
尚、図4では、絶縁部材28を、第二の窓53及びその周縁部に対向する、第一の窓27及びその周縁の外囲器12の内壁全体を覆って配置しているが、このような配置に限定されない。絶縁部材28は放射線発生管14における第一の窓27に最も近い端面に対向する領域に配置されていれば良い。
【0048】
また、絶縁部材28は、第一の窓27及びその周縁部からも、第二の窓53及びその周縁部からも間隔を置いて配置しても良いし、第二の窓53及びその周縁部に接し、第一の窓27及びその周縁部とは間隔を置いて配置しても良い。
【0049】
〔第5の実施形態〕
図5を用いて本発明の放射線発生装置を用いた放射線撮影装置について説明する。図5は本実施形態の放射線撮影装置の構成図である。この放射線撮影装置は放射線発生装置11、放射線検出器61、放射線検出信号処理部62、放射線撮影装置制御部63、電子源駆動部64、電子源ヒーター制御部65、制御電極電圧制御部66及びターゲット電圧制御部67を備えている。放射線発生装置11としては例えば第1〜第4の実施形態の放射線発生装置が好適に用いられる。
【0050】
放射線検出器61は、放射線検出信号処理部62を介して放射線撮影装置制御部63に接続されている。放射線撮影装置制御部63の出力信号は、電子源駆動部64、電子源ヒーター制御部65、制御電極電圧制御部66、ターゲット電圧制御部67を介して放射線発生装置11の各端子に接続されている。
【0051】
放射線発生装置11で放射線を発生させると、大気中に放出された放射線は、被検体(不図示)を透過して放射線検出器61に検出され、被検体の放射線透過画像が得られる。得られた放射線透過画像は表示部(不図示)に表示させることができる。
【0052】
以上より、本実施形態によれば、第1〜第4の実施形態の効果を奏する放射線発生装置を用いるため装置の小型化、外囲器と放射線発生管との間の耐圧の向上、放射線の減衰量の低減を実現した放射線撮影装置を実現できる。
【符号の説明】
【0053】
11:放射線発生装置(透過型放射線源)、12:外囲器、13:絶縁性液体、14:放射線発生管、15:電子源、16:第1制御電極、17:第2制御電極、18:透過型ターゲット、19:ターゲット基板(第二の窓)、20:遮蔽部材、21:アノード、22:カソード支持部材、23:電子束、24:放射線、25:保持部材、26:電源回路、27:第一の窓、28:絶縁部材、51:放射線発生装置(反射型放射線源)、52:反射型ターゲット、53:第二の窓、61:放射線検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を透過する第一の窓を有する外囲器と、
前記外囲器内に収納され、前記第一の窓と対向する位置に放射線を透過する第二の窓を有する放射線発生管と、
前記外囲器と前記放射線発生管との間に充填された絶縁性液体と、
を備える放射線発生装置であって、
前記第一の窓及びその周縁部と前記第二の窓及びその周縁部との間に、固体の絶縁部材が配置されていることを特徴とする放射線発生装置。
【請求項2】
前記放射線発生管はその内部に、電子源と前記電子源から放出される電子の照射により放射線を発生させる透過型ターゲットとを備えており、
前記透過型ターゲットは、前記第二の窓の前記電子源側の面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項3】
前記放射線発生管はその内部に、電子源と前記電子源から放出される電子の照射により放射線を発生させる反射型ターゲットとを備えており、
前記反射型ターゲットは、前記第二の窓と間隔を置いて、前記第二の窓と対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項4】
前記絶縁部材は前記第一の窓及びその周縁部に接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項5】
前記絶縁部材は前記第一の窓及びその周縁部にも、前記第二の窓及びその周縁部にも接していないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項6】
前記絶縁部材は前記第二の窓の周縁部に接し、かつ前記第二の窓を塞いでいることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項7】
前記絶縁部材は厚さ0.5mm〜6mmの板状であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項8】
前記絶縁部材の材料が、ポリイミド、セラミックス、エポキシ樹脂又はガラスであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項9】
前記絶縁性液体は電気絶縁油であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項10】
前記絶縁部材は前記絶縁性液体よりも電気絶縁性が高いことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項11】
前記絶縁部材は前記絶縁性液体と同じ又はそれよりも高い放射線透過率を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の放射線発生装置と、前記放射線発生装置から放出され被検体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、を有することを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−20791(P2013−20791A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152791(P2011−152791)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】