説明

放射線発生装置及び放射線撮影装置

【課題】簡易な構造で不要な放射線の遮蔽とターゲットの冷却を可能とすると共に、軽量化を図った放射線発生装置を提供する。
【解決手段】放射線を透過する第一の窓2を有する外囲器1と、外囲器1内に収納され、第一の窓2と対向する位置に放射線を透過する第二の窓15を有する放射線管10と、第二の窓15に連通する放射線通過孔21を有し、第二の窓15から第一の窓2側に突出した放射線遮蔽部材16とを備え、しかも、放射線遮蔽部材16よりも熱伝導率が高い熱伝導部材17が、放射線遮蔽部材16の前記突出した部分の外周側に接続されている放射線発生装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器及び産業機器分野における非破壊X線撮影等に適用できる放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射線管は電子放出源から放出される電子を高電圧で加速し、ターゲットに照射してX線等の放射線を発生させる。このとき発生した放射線は全方位に向かって放射される。特許文献1には、必要以外のX線を遮蔽するため、ターゲットの電子入射側及びX線放出側にX線遮蔽部材を配置した透過型X線発生装置が開示されている。
【0003】
放射線撮影に好適な放射線を発生させるためには、電子放出源とターゲットの間に高電圧を印加して高エネルギーの電子線をターゲットに照射する必要がある。しかし、一般に放射線の発生効率は極めて悪く、消費電力の99%程度はターゲットにおいて熱となる。発生したこの熱によりターゲットは高温になるため、ターゲットの熱損傷を防ぐ手段が必要となる。特許文献2には、X線透過窓の周囲に冷却機構を設けることでターゲット部分の放熱効率を向上させるX線発生管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265981号公報
【特許文献2】特開2004−235113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療分野における短時間パルス・大管電流での撮影や産業分野における電子線の焦点を絞った撮影においては、ターゲットの瞬間的な温度の上昇が発生する場合がある。このような場合には、従来の放射線遮蔽部材を介した放熱だけでは不十分となる。
【0006】
放熱特性を高めるために放射線遮蔽部材を厚くすると、放射線遮蔽部材には一般的に重金属が用いられるため、放射線発生装置全体の重量増を招く。また、放射線遮蔽部材とは別に冷却機構を設けることは、放射線発生装置全体の小型化を困難にする。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構造で不要な放射線の遮蔽とターゲットの冷却を可能とすると共に、軽量化を図った放射線発生装置及びそれを用いた放射線撮影装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の放射線発生装置は、放射線を透過する第一の窓を有する外囲器と、
前記外囲器の内部に収納され、前記第一の窓と対向する位置に放射線を透過する第二の窓を有する放射線管と、を備える放射線発生装置であって、
前記放射線管は、前記第二の窓に連通する放射線通過孔を有し、前記第二の窓から前記第一の窓側に突出した放射線遮蔽部材を備え、
前記放射線遮蔽部材よりも熱伝導率が高い熱伝導部材が、前記放射線遮蔽部材の突出した部分の外周側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不要な放射線の遮蔽性能を確保するとともに、ターゲットの熱を効果的に放熱することが可能となる。さらに、放射線遮蔽部材に比べて密度の小さい熱伝導部材を用いることにより、放射線発生装置全体として軽量化できる。これにより、大管電流・小焦点での放射線撮影が可能となり、高解像度の撮影画像を得ることができる。また、小型軽量化により、在宅医療検査・救急時の現場医療検査への適用が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の放射線発生装置の一実施の形態を示す断面模式図である。
【図2(a)】図1における窓部材の周辺部を拡大した断面模式図である。
【図2(b)】図1における窓部材の周辺部を拡大した断面模式図で、熱伝導部材の他の配置例を示す図である。
【図2(c)】図1における窓部材の周辺部を拡大した断面模式図で、熱伝導部材の他の配置例を示す図である。
【図2(d)】図1における窓部材の周辺部を拡大した断面模式図で、熱伝導部材の他の配置例を示す図である。
【図2(e)】図1における窓部材の周辺部を拡大した断面模式図で、熱伝導部材の他の配置例を示す図である。
【図2(f)】図1における窓部材の周辺部を拡大した断面模式図で、熱伝導部材の他の配置例を示す図である。
【図3】フィン構造をなす熱伝導部材とした場合の窓部材の周辺部を拡大した断面模式図である。
【図4】本発明の放射線発生装置を用いた放射線撮影装置の一実施の形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。なお、以下に参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0012】
図1は本発明の放射線発生装置の一実施形態を示す断面模式図である。外囲器1の内部には、透過型の放射線管10、電圧制御部3(電圧制御手段)が収納されている。外囲器1内の余空間(外囲器1の内壁と放射線管10との間)には、絶縁性流体8が満たされている。
【0013】
電圧制御部3は、回路基板及び絶縁トランス等から構成され、端子4を介して、放射線管10の電子放出源5に放射線の発生を制御する信号を出力する。また、端子7を介してアノード部12の電位を規定する。
【0014】
外囲器1は、容器としての十分な強度を有していれば良く、金属やプラスチックス材料が用いられる。
【0015】
絶縁性流体8は、冷却媒体として配置された、電気絶縁性の液体又は気体である。液体では、電気絶縁油を用いるのが好ましい。電気絶縁油としては、鉱油、シリコーン油等が好適に用いられる。その他に使用可能な絶縁性流体8としては、フッ素系電気絶縁性液体が挙げられる。気体としては、大気を用いることができ、絶縁性液体よりも装置を軽くすることができる。
【0016】
外囲器1には、放射線を透過し外囲器外部に放射線を取り出すための第一の窓2が設けられている。放射線管10から放出された放射線はこの第一の窓2を通して外部に放出される。第一の窓2には、ガラス、アルミニウム、ベリリウム等が用いられる。
【0017】
放射線管10は、外枠である筒状の真空容器9と、その内部に配置された電子放出源5、ターゲット部6、窓部材13とを備えている。
【0018】
真空容器9は、放射線管10の内部を真空に保つためのもので、その胴部には、ガラスやセラミクスの絶縁性材料が用いられる。また、筒状の胴部の両端にそれぞれ設けられたカソード部11及びアノード部12は、導電性の合金(例えばコバール)からなる。真空容器9内の真空度は10-4〜10-8Pa程度であれば良い。真空容器9の内部には真空度を保つために、不図示のゲッターを配置しても良い。また、真空容器9は、アノード部12に円筒形の開口部を有しており、その開口部の壁面に、円筒形の窓部材13が接合されている。窓部材13には、ターゲット部6で発生した放射線(本実施形態では、X線)の一部を通過させる円筒形の放射線通過孔(以下、単に通過孔)21が形成されている。通過孔21の内壁に円筒形のターゲット部6が接合されることにより真空容器9が密閉される。
【0019】
電子放出源5は、真空容器9の内部に、ターゲット部6に対向して配置されている。電子放出源5にはタングステンフィラメントや、含浸型カソードのような熱陰極、又はカーボンナノチューブ等の冷陰極を用いることができる。電子放出源5には、引出し電極が配置され、引出し電極によって形成される電界によって放出された電子は、レンズ電極で収束され、ターゲット6に入射し放射線が発生する。このとき、電子放出源5と電気的に接続されたカソード部11と、ターゲット14と電気的に接続されたアノード部12との間には、放射線の使用用途によって異なるものの、概ね40kV〜120kV程度の加速電圧が印加される。
【0020】
図2は、図1における窓部材13の周辺部を拡大した断面模式図である。
【0021】
ターゲット部6は、ターゲット14と基板である第二の窓15とからなる。ターゲット14は、第二の窓15の電子放出源側の面に配置されている。ターゲット14を構成する材料は、融点が高く、放射線発生効率の高いものが好ましい。例えばタングステン、タンタル、モリブデン等を用いることができる。発生した放射線がターゲット14を透過する際に生じる吸収を軽減するため、ターゲット14の厚みは1μm〜20μm程度が適当である。
【0022】
第二の窓15は、ターゲット14を支持し、ターゲット14で発生する放射線の少なくとも一部を透過するものであり、窓部材13(図1参照)の放射線通過孔21内の第一の窓2と対向する位置に配置されている。第二の窓15を構成する材料は、ターゲット14を支持できる強度を有し、ターゲット14で発生した放射線の吸収が少なく、かつターゲット14で発生した熱をすばやく放熱できるよう熱伝導率の高いものが好ましい。例えばダイヤモンド、窒化シリコン、窒化アルミニウム等を用いることができる。第二の窓15についての上記要求事項を満たすため、第二の窓15の厚みは0.1mm〜10mm程度が適当である。
【0023】
図2(a)に示すように、窓部材13は、放射線遮蔽部材(以下、単に遮蔽部材)16と熱伝導部材17とからなる。遮蔽部材16は、第二の窓15に連通する通過孔21を有し、ターゲット14から放出された放射線のうち、不要な放射線を遮る。遮蔽部材16は、2つの遮蔽部材(第一の遮蔽部材19と第二の遮蔽部材20)からなる。第一の遮蔽部材19と第二の遮蔽部材20とは、同一の材料を用い、一体的に形成されて配置されていてもよいし、分離して配置されていてもよい。また、それぞれ異なる材料を用いて、接合により一体的に配置されて形成されてもよいし、分離して配置されていてもよい。遮蔽部材16に対して、第二の窓15が固定されて真空容器9の真空気密が維持されるが、係る固定手段としては銀ろう付け等が適用される。
【0024】
第一の遮蔽部材20は、第二の窓15から電子放出源5側(下記第二の遮蔽部材19と対向する側)に突出して配置され、第二の窓15に連通する電子線通過孔22を形成する。電子放出源5から放出された電子は、電子線通過孔22を通過してターゲット14に衝突する。ターゲット14で発生した放射線のうち、ターゲット14の電子放出源側に散乱した放射線は第一の放射線遮蔽部材20で遮蔽される。
【0025】
第二の遮蔽部材19は、第二の窓15から第一の窓2側に突出して配置され、第二の窓15に連通する通過孔21を有する。第二の窓15を透過した放射線は通過孔21を通過し、不要な放射線は第二の遮蔽部材19で遮蔽される。
【0026】
外囲器1の外部に放射線をより多く取り出す観点からすると、通過孔21の開口面積が、第二の窓15から第一の窓2側に向かって徐々に大きくなっているのが好ましい。これは、第二の窓15を透過した放射線が放射状の広がりを持っているからである。
【0027】
また、第一の遮蔽部材20の電子線通過孔22の中心と、第二の遮蔽部材19の通過孔21の中心及びターゲット14の中心が同一直線上にあるのが好ましい。これは、このように配置することにより、透過型のターゲット14に電子が照射されることによって発生した放射線を、より確実により多く取り出せるからである。
【0028】
遮蔽部材16を構成する材料は、放射線の吸収率が高く、かつ熱伝導率の高いものが好ましい。例えばタングステン、タンタル等の金属材料、又はこれらの合金等を用いることができる。不要放射線を十分に遮蔽するため、第一の遮蔽部材20と第二の遮蔽部材19の厚みは、設定する電子の加速電圧に依存するものの、0.5mm〜5mm程度が適当である。
【0029】
熱伝導部材17は、図2(a),(b)に示すように、第二の遮蔽部材19の外周側に、第二の遮蔽部材19を囲むように配置することができる。熱伝導部材17は、ろう付け、鋳こみ、ハンダ付け、溶接、レーザー溶接、ネジこみ、焼きバメ、テーパーはめ込み、接着剤、機械的なネジ止めにより、第二の遮蔽部材19に接合される。熱伝導部材17と第二の遮蔽部材19とは、それぞれの中心軸が等しい円筒形を有し、熱伝導部材17は、第二の遮蔽部材19よりも、径方向の厚さが大きい。
【0030】
熱伝導部材17を構成する材料は、遮蔽部材16よりも熱伝導率が高い材料であって、耐熱性が高いものが好ましく、金属材料、カーボン系材料、セラミック等から適用が可能である。金属材料としては、銀、銅、アルミニウム、コバルト、ニッケル、鉄等、又はこれらの合金・酸化物であっても良い。カーボン系材料としては、ダイヤモンド、グラファイト等が挙げられる。セラミックであれば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等が挙げられる。さらに、熱伝導部材17を構成する材料は、放射線遮蔽部材16に対して密度が小さい材料を用いることが望ましい。
【0031】
熱伝導部材17として遮蔽部材16よりも密度が小さい材料を用いることにより、窓部材13が遮蔽部材16だけから構成されている場合に比べて軽量化できる。
【0032】
ターゲット14で発生した熱は、直接又は第二の窓15を介して、直接熱伝導部材17に伝わるか、又は遮蔽部材16を介して熱伝導部材17に伝わる。さらに熱伝導部材17に接触する絶縁性流体に伝わって速やかに放熱されることで、ターゲット14の温度上昇が抑制される。熱伝導部材17の熱伝導率は、遮蔽部材16の熱伝導率よりも大きいため、窓部材13が遮蔽部材16だけから構成されている場合に比べて、放熱の速さが増す。
【0033】
さらに、図3に示すように、熱伝導部材17をフィン構造とすることもできる。熱伝導部材17がフィン構造を有していると、熱伝導部材17の絶縁性流体に接触する面積が大きくなるため、より効果的に放熱できる。
【0034】
熱伝導部材17は、第二の遮蔽部材19の外周又は内周全体を囲むのではなく、外周又は内周に部分的に配置されていてもよい。
【0035】
また、放熱性をより高めるため、遮蔽部材16と熱伝導部材17とは、ターゲット部材6が、真空容器9の端面の位置よりも、第一の窓2側に突出するように配置されることが好ましい。
【0036】
加速電圧の印加方式としては、陽極接地方式と中点接地方式のいずれの方式も採用することができる。陽極接地方式とは、ターゲット14と電子放出源5との間に印加する電圧をVa[V]としたとき、陽極であるターゲット14の電位をグランド(0[V])に設定し、電子放出源5のグランドに対するに対する電位を−Va[V]に設定する方式である。一方、中点接地方式とは、ターゲット14のグランドに対する電位を+(Va−α)[V]、電子放出源5のグランドに対する電位を−α[V]、(但し、Va>α>0)に、それぞれ設定する方式である。αの値はVa>α>0の範囲内の任意の値であるが、一般的にはVa/2に近い値である。中点接地方式を採用することで、グランドに対する電位の絶対値を小さくすることができ、沿面距離を短くすることができる。沿面距離とは、ここでは電圧制御部3と外囲器1との距離、及び放射線管10と外囲器1との距離である。沿面距離を短くすることができると、外囲器1のサイズを小さくすることができ、その分絶縁性流体8の重量も小さくすることができるため、放射線発生装置をより小型軽量化することが可能となる。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
図2(a)に示すように、第一の遮蔽部材19と第二の遮蔽部材20とが一体的に形成された遮蔽部材16としてタングステンを、熱伝導部材17として銅をそれぞれ選択した。遮蔽部材16の第二の窓15から第一の窓2側に突出した部分の外周側に、熱伝導部材17をろう付けにて固定した。絶縁性流体8としては、鉱油からなる絶縁油を使用した。また、電圧制御手段は中点接地方式を採用した。電子放出源5はタングステンフィラメントを用い、不図示の加熱手段によって加熱し、電子を放出させた。係る放出された電子を引出し電極・レンズ電極に印加した電圧によって生じる電位分布による電子線軌道制御と、電子放出源5とターゲット14間に印加される電圧Vaによって高エネルギーに加速することでターゲットに衝突させ、放射線を発生させた。ターゲット14は薄膜状のタングステンを使用した。引出し電極に50[V]、レンズ電極に1000[V]、中点接地方式においてVaを100[kV]とするためにターゲット14の電圧を+50[kV]、電子放出源5の電圧を−50[kV]に設定した。
【0038】
本実施例では、放射線発生装置の取り扱いを良好に行うことができた。また、上記条件で放射線の放射を行い、発生した放射線の線量を測定したところ、安定した放射線量が得られることを確認した。その際、不要な放射線漏洩も無く、ターゲットの損傷も生じなかった。
【0039】
[実施例2]
図2(b)に示すように、本実施例においては、第一の遮蔽部材19と第二の遮蔽部材20とが分離して配置され、熱伝導部材17は、その一部が第二の窓15に直接接触するように、第一の遮蔽部材19の外周側に配置されている。この点以外は、実施例1と同様の構成である。第二の窓15で発生した熱の一部が、第一の遮蔽部材19を介さずに直接熱伝導部材17に伝導されるので、放熱速度をより高めることができた。また、本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0040】
[実施例3]
図2(c)に示すように、本実施例においては、熱伝導部材17が、遮蔽部材16の突出部の外周側の一部に接続されているとともに、真空容器9の開口部の壁面と遮蔽部材16との間にも設けられている。この点以外は、実施例1と同様の構成である。本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0041】
[実施例4]
図2(d)に示すように、本実施例においては、熱伝導部材17が、遮蔽部材16の外周側全体に設けられている。この点以外は、実施例1と同様の構成である。本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0042】
[実施例5]
図2(e)に示すように、本実施例においては、熱伝導部材17は、第二の窓15に直接接触するように、第一の遮蔽部材19の外周側全体に配置されている。この点以外は、実施例2と同様の構成である。本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0043】
[実施例6]
図2(f)に示すように、本実施例においては、熱伝導部材17の外周側であって、熱伝導部材17がターゲット14と接している位置に対向する位置を含む部分にも遮蔽部材16が配置されている。この点以外は、実施例5と同様の構成である。ターゲット14で発生した放射線のうち、熱伝導部材17を通過して外部に散乱される放射線を遮蔽することができるため、放射線遮蔽性能をより高めることができた。また、本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0044】
[実施例7]
本実施例においては、遮蔽部材16としてモリブデンを、熱伝導部材17としてアルミニウムをそれぞれ選択し、ターゲット14として薄膜状のモリブデンを使用した点以外は、実施例1と同様である。但し、電圧制御手段は陽極接地方式を採用した点が実施例1と異なる。引き出し電極に50[V]、レンズ電極に3000[V]、陽極接地方式においてVaを50[kV]とするためにターゲット14の電圧を+50[kV]、電子放出源5の電圧を0[kV]に設定した。本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0045】
[実施例8]
本実施例においては、遮蔽部材16としてタングステンを選択し、熱伝導部材17としてSiC又はグラファイトシートを選択した点以外は、実施例1と同様である。本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0046】
[実施例9]
本実施例においては、遮蔽部材16としてタングステンとモリブデンの合金(成分比:タングステン90%、モリブデン10%)を選択し、熱伝導部材17として銅とアルミニウムの合金(成分比:銅90%、アルミニウム10%)を選択した点以外は、実施例1と同様である。本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0047】
[実施例10]
本実施例においては、遮蔽部材16としてタングステンを選択し、熱伝導部材17として図3に示すフィン形状の銅を選択した点以外は、実施例1と同様である。本実施例においても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0048】
[実施例11]
次に、図4を用いて本発明の放射線発生装置を用いた放射線撮影装置について説明する。本実施例の放射線撮影装置は、放射線発生装置30、放射線検出器31、信号処理部32、装置制御部33及び表示部34を備えている。放射線発生装置30としては、例えば実施例1〜10の放射線発生装置が好適に用いられる。放射線検出器31は信号処理部32を介して装置制御部33に接続され、装置制御部33は表示部34及び電圧制御部3に接続されている。放射線発生装置30における処理は装置制御部33によって統括制御される。装置制御部33は、放射線発生装置30と放射線検出器31とを連携制御する。放射線発生装置30から放出された放射線は、被検体35を介して放射線検出器31で検出され、被検体35の放射線透過画像が撮影される。撮影された放射線透過画像は表示部34に表示される。装置制御部33は、放射線発生装置30の駆動を制御し、電圧制御部3を介して放射線管10に印加される電圧信号を制御する。本実施例の放射線撮影装置は、軽量で取扱い性能に優れ、良好な撮影を行うことができた。
【符号の説明】
【0049】
1:外囲器、2:第一の窓、10:放射線管、21:放射線通過孔、15:第二の窓、16:放射線遮蔽部材、17:熱伝導部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を透過する第一の窓を有する外囲器と、
前記外囲器の内部に収納され、前記第一の窓と対向する位置に放射線を透過する第二の窓を有する放射線管と、を備える放射線発生装置であって、
前記放射線管は、前記第二の窓に連通する放射線通過孔を有し、前記第二の窓から前記第一の窓側に突出した放射線遮蔽部材を備え、
前記放射線遮蔽部材よりも熱伝導率が高い熱伝導部材が、前記放射線遮蔽部材の突出した部分の外周側に設けられていることを特徴とする放射線発生装置。
【請求項2】
前記放射線遮蔽部材は、前記放射線管の外枠である真空容器の開口部に配置され、
前記熱伝導部材は、前記開口部の壁面と前記放射線遮蔽部材との間にも設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項3】
前記放射線管は、前記放射線遮蔽部材と対向する側に突出して配置され、前記第二の窓に連通する電子線通過孔を形成する第一の放射線遮蔽部材を有し、
前記熱伝導部材は、前記第一の放射線遮蔽部材の外周側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、前記放射線遮蔽部材と前記第一の放射線遮蔽部材との外周側全体に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の放射線発生装置。
【請求項5】
前記外囲器と前記放射線管との間に絶縁性流体が満たされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項6】
前記熱伝導部材は、前記放射線遮蔽部材よりも密度が小さいことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項7】
前記熱伝導部材と前記放射線遮蔽部材の突出した部分とは、それぞれの中心軸が等しい円筒形を有し、前記熱伝導部材は、前記放射線遮蔽部材よりも、径方向の厚さが大きいことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項8】
前記絶縁性流体は電気絶縁油であることを特徴とする請求項5に記載の放射線発生装置。
【請求項9】
前記放射線遮蔽部材が、銀ろう付けにより前記第二の窓に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項10】
前記放射線管は、
前記真空容器の内部に配置された電子放出源と、
前記電子放出源から放出された電子の照射により放射線を放出するターゲットと、
前記ターゲットが前記電子放出源に対向する側の面に形成された基板とを有し、
前記第二の窓は、前記基板により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項11】
前記放射線遮蔽部材は、前記熱伝導部材の外周側であって、前記熱伝導部材が前記ターゲットと接している位置に対向する位置を含む部分にも配置されている請求項10に記載の放射線発生装置。
【請求項12】
前記放射線遮蔽部材と前記熱伝導部材とは、異なる金属又は合金からなることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項13】
前記熱伝導部材がセラミックであることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項14】
前記熱伝導部材がフィン構造を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項15】
前記熱伝導部材がカーボン系材料であることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項16】
前記ターゲットの材料と前記放射線遮蔽部材の材料とがともにタングステンであり、前記熱伝導部材の材料が銅であることを特徴とする請求項10に記載の放射線発生装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の放射線発生装置と、
前記放射線発生装置から放出され被検体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線発生装置と前記放射線検出器とを連携制御する制御部と、
を備えることを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【図3】
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【図4】
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