説明

放射線監視装置

【課題】テスト指示値からバックグラウバックグラウンド指示値への復帰時間を短縮する。
【解決手段】放射線を検出しその出力として信号パルスを出力する検出器11、テストパルスを出力するテストパルス発生部2、及びノーマルモードとテストモードとに切り替え制御される切換スイッチ121を介して当該切換スイッチがノーマルモードのときに上記検出
器から上記信号パルスを入力し上記切換スイッチがテストモードのときに上記テストパルス発生部からテストパルスを入力する測定部12を備え、上記ノーマルモードのときの上記測定部の動作により放射線を監視し上記テストモードのときの上記測定部の動作により動作テストを行う放射線監視装置であって、上記測定部は、上記テストモードから上記ノーマルモードに切り換わると所定期間の間は上記ノーマルモードのときより速い時定数で指示値を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子炉施設、使用済燃料再処理施設等の放出管理や放射線管理等に用いられる放射線監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉施設、使用済燃料再処理施設等で使用される放射線監視装置は、放射線を検出して信号パルスを出力する検出器と、該信号パルスを入力して放射線量を測定する測定部を備えた複数チャンネルの放射線モニタと、個々の放射線モニタにテスト信号を入力するテスト信号発生部と、テスト信号発生部及び放射線モニタを制御する制御部を備え、制御部は測定部の入力切換スイッチを操作してテスト信号発生部から測定部に模擬パルス信号を入力し、指示応答をチェックして個々の放射線モニタの健全性を確認している。
放射線監視装置を構成する各放射線モニタは、通常のバックグラウンドレベルより高い放射線量レベルに高警報が設定され、上記施設の管理エリアの線量率またはプロセス系統の放射能の異常に対して高警報を発信して運転員に報知すると共に、自動で必要な系統隔離を行うシステムになっている。
また、通常のバックグラウンドレベルより低い放射線量レベルに低警報が設定され、放射線モニタの故障により検出器信号喪失あるいは検出器信号の繰り返し周波数の低下に対して低警報を発信して運転員に報知するようにしている。
上記の指示応答の精度及び警報動作の健全性確認は、測定部にテスト信号を入力することにより実施されており、制御部は、テスト信号発生部を制御して試験項目及び試験内容に応じてテスト信号の繰り返し周波数をステップ状あるいはランプ状に変化させる。
なお、テスト期間中は、放射線監視装置から外部へ上記の高警報及び低警報が出力されないように、テスト開始前に警報をブロックし、テスト終了後はブロックを解除することができる。これらの操作は手動で行われ、警報をブロックしている期間はテスト中警報を出力する。また、入力切換スイッチでテストモードを選択すると自動的にテスト中警報が出力され、指示値には不信頼印が付くようになっている。
【0003】
一方、放射線モニタで測定された放射線量は統計的に変動するため、標準偏差が一定となるように計数率に基づき時定数を制御するようにして、測定レンジをカバーして所定の精度を維持している。
また、測定部は繰り返し周波数が0.01cps程度から106cps程度までの広いレンジをカバーして測定することが求められ、レンジ切り替えに伴う不連続性をなくすために、広いレンジをレンジ切り換えなしで高速動作可能なアップダウンカウンタを用いた計数率測定が行われている。この測定方法は加算入力と減算入力の差分の積算値を一定周期で読み取って計数率を演算するもので、特に高計数率まで精度よく測定できることが特徴である。加算入力は、検出器から測定部に入力された検出器信号についてノイズを弁別除去した信号パルスであり、減算入力は、積算値に基づき水晶発信器のクロックパルスからデジタル的に周波数合成された繰り返し周波数のフィードバックパルスである。
【0004】
アップダウンカウンタを用いた計数率測定は計数率が時定数で応答するため、テスト信号をデカード毎に入力して出力精度を確認する入出力試験及びテスト信号を入力して警報動作を確認する警報試験に時間がかかる。そのため、テスト信号をステップ状に変化させたものとランプ状に変化させてものを自動で最適に組み合わせて、特にステップ状の変化の大きさとステップの継続時間を最適化することにより、テスト信号入力に対する計数率の応答時間を短縮する工夫がなされている。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】特許第3749338号(図1〜3及びその説明)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の放射線測定装置は以上のように構成されており、テスト信号の入力の仕方を工夫することによりテスト時間を短縮しているが、施設稼動中はほとんどのチャンネルが連続測定の状態にあり、施設点検期間中でも連続運転を要求されるチャンネルがあり、欠測を更に短くするためにかつ点検コストを更に削減するために、更なるテスト時間の短縮と自動化が課題であった。
【0007】
この発明は、前述のような実情に鑑みてなされたもので、テスト指示値からバックグラウバックグラウンド指示値への復帰時間を短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る放射線監視装置は、放射線を検出しその出力として信号パルスを出力する検出器、テストパルスを出力するテストパルス発生部、及びノーマルモードとテストモードとに切り替え制御される切換スイッチを介して当該切換スイッチがノーマルモードのときに上記検出器から上記信号パルスを入力し上記切換スイッチがテストモードのときに上記テストパルス発生部からテストパルスを入力する測定部を備え、上記ノーマルモードのときの上記測定部の動作により放射線を監視し上記テストモードのときの上記測定部の動作により動作テストを行う放射線監視装置であって、上記測定部は、上記テストモードから上記ノーマルモードに切り換わると所定期間の間は上記ノーマルモードのときより速い時定数で指示値を出力するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、放射線を検出しその出力として信号パルスを出力する検出器、テストパルスを出力するテストパルス発生部、及びノーマルモードとテストモードとに切り替え制御される切換スイッチを介して当該切換スイッチがノーマルモードのときに上記検出器から上記信号パルスを入力し上記切換スイッチがテストモードのときに上記テストパルス発生部からテストパルスを入力する測定部を備え、上記ノーマルモードのときの上記測定部の動作により放射線を監視し上記テストモードのときの上記測定部の動作により動作テストを行う放射線監視装置であって、上記測定部は、上記テストモードから上記ノーマルモードに切り換わると所定期間の間は上記ノーマルモードのときより速い時定数で指示値を出力するので、テスト指示値からバックグラウバックグラウンド指示値への復帰時間を大幅に短縮でき、テストによる欠測時間を短縮できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下この発明の実施の形態1を図1〜図3により説明する。図1は放射線測定装置でもある放射線監視装置の一例を示すブロック図、図2はテストモードからノーマルモードへ切り戻した時の指示応答特性の一例を示す線図、図3は図1の放射線監視装置における測定部での演算の手順の一例を示すフロー図である。
【0011】
図1において、放射線監視装置は、放射線モニタ1とテストパルス発生部2と制御部3とから構成されている。
【0012】
上記放射線モニタ1は、通常監視時には測定対象の放射線を測定し、テスト時には上記テストパルス発生部2からテストパルスを入力し、上記制御部3は放射線モニタ1の入力及び時定数を切り換えさせ、上記テストパルス発生部2のテスト信号の繰り返し周波数をステップ状あるいはランプ状に変化させて警報試験、入出力試験等の動作テストを行う。
【0013】
上記放射線モニタ1は、検出器11と測定部12とから構成されている。
【0014】
上記検出器11は放射線を検出して信号パルスを出力し、上記測定部12は、上記検出器11が出力した信号パルスを入力して放射線量を測定する。上記制御部3は、テスト期間中の上記測定部12の出力を入力してテスト結果の判定を行い、上記測定部12と会話をしながら所定の手順でシーケンシャルにテストを進める。
【0015】
上記測定部12は、入力切換スイッチ121とパルス増幅器122と波高弁別器123とアップダウンカウンタ124と周波数合成回路125と積算制御回路126と演算器127と出力端子128とメモリー129とから構成されている。
【0016】
上記入力切換スイッチ121は、上記検出器11からの信号パルスと上記テストパルス発生部2からのテストパルスとを入力し、また上記制御部3からの制御命令により切換動作をして、上記検出器11からの信号パルスと上記テストパルス発生部2からのテストパルスとを切り換えて出力する。
【0017】
上記パルス増幅器122は、上記入力切換スイッチ121で切り換えられて出力された信号パルスを増幅する。
【0018】
上記波高弁別器123は、上記パルス増幅器122で増幅された信号パルスの電圧レベルが所定のレベル以上であることを弁別し、あるいは許容範囲内にあることを弁別してデジタルパルスを出力する。
【0019】
上記アップダウンカウンタ124は、上記波高弁別器123から出力されたデジタルパルスを加算入力1241に入力し、上記周波数合成回路125から出力されたデジタルパルスを減算入力1242に入力し、その結果の積算値Mを出力する。
【0020】
上記積算制御回路126は、上記アップダウンカウンタ124の上記加算入力1241及び上記減算入力1242を標準偏差σに基づき重み付けして計数するように上記アップダウンカウンタ124を制御する。
【0021】
上記周波数合成回路125は上記アップダウンカウンタ124から出力された積算値Mを入力して繰り返し周波数FB(M)に変換して上記アップダウンカウンタ124の上記減算入力1242に入力する。
【0022】
上記演算器127は上記アップダウンカウンタ124から出力された積算値Mをそれぞれ入力し、その積算値Mに基づき計数率nを求め、その計数率nに基づき工学値変換及び警報判定を行って放射線測定値及び警報をそれぞれ上記出力端子128から出力する。
【0023】
上記メモリー129は上記演算器127の演算に必要な演算手順及び設定値を記憶すると共に演算結果を格納する。
【0024】
放射線による計数率は統計的に変動するため、所定の精度で測定するには、次式のように標準偏差σが一定となるように計数率nに基づき時定数τを制御して測定している。
σ=1/(2nτ)1/2・・・(1)
τ=1/(2nσ2)・・・(2)
【0025】
上記アップダウンカウンタ124の上記加算入力1241は、ノイズを除去した信号パルスに対応した上記波高弁別器123出力のデジタルパルスであり、上記減算入力1242は、上記積算値Mに基づき水晶発信器(図示せず)のクロックパルスから周波数合成された上記周波数合成回路125出力のデジタルパルスである。平衡状態において上記アップダウンカウンタ124の上記加算入力1241の繰り返し周波数FINは、上記演算器127で求めた計数率n及び減算入力の繰り返し周波数FB(M)に等しくなり、上記標準偏差σと上記積算値Mに基づき次式のように演算される。FB(M)及びnは、次式のようにFINに平衡するように時定数(τ)の一次遅れで追従して応答する。
FIN=FB(M)=n=eγM=2γM/ln2・・・(3)
γ=2σ2=1/(nτ)=2−λln2・・・(4)
λ=11−α・・・(5)
【0026】
上記(4)式においてλを例えば11、9、7、5とすると、上記(1)式で示すように上記標準偏差σはそれぞれ1.3%、2.6%、5.2%、10.4%となる。上記(4)式でλが11の時を基準にすると、λが9、7、5の時、γはそれぞれ22倍、24倍、26倍となり、上記(1)式のように上記標準偏差σはそれぞれ21倍、22倍、23倍となり、上記(2)式のように時定数はそれぞれ2−2倍、2−4倍、2−6倍となる。
【0027】
上記(3)式に示すようにnが一定の状態でγを2α倍にすると、Mは2−α倍で平衡する。nが一定の状態において、γを変えてもMが変化しないようにするには、γを2α倍にしたら上記アップダウンカウンタ124は1パルスの重み付けを2α倍にして計数すればよい。すなわち、上記アップダウンカウンタ124の上記加算入力1241に上記波高弁別器123から出力されたデジタルパルスが1個入力されると、Mは2αだけ加算計数されるようにする。一方、上記アップダウンカウンタ124の上記減算入力1242に上記周波数合成回路125から出力されるデジタルパルスが1個入力されると、Mは2αだけ減算計数されるようにする。結果として上記積算値Mは、加算計数と減算計数の差の積算値Nに2αを掛け算した値になる。ここでαは0または正の整数で、上記(5)式のようにλが11、9、7、5の時、αとしてそれぞれ0、2、4、6が与えられる。例えば、λが11の時は1パルスの入力に対して1個として加算または減算され、MとNは等しくなる。λが9の時は1パルスの入力に対して4個として加算または減算される。
【0028】
したがって、上記(3)式においてγを2α倍に変えることは、計数の重み付けを2α倍に変えることと同等であり、計数率nは、2α倍に重みづけされた結果の上記積算値Mと基準のλ=11(α=0)に対応するγに基づき(3)式により求められる。このように、上記積算制御回路126が上記アップダウンカウンタ124の計数の重み付けを制御することにより上記標準偏差σを容易に変更することができる。また、上記標準偏差σを変更しても上記積算値Mは変化しないので、測定中に指示の中心値を変化させることなく応答特性を変えることができる。なお、上式(3)は上記周波数合成回路125の出力パルスを回路上の都合あるいは上記演算器127の演算処理の都合に合わせて、近似式で表現、特殊な例として折れ線近似で表現してもよい。
【0029】
上記測定部12は、上記制御部3からの入力切換命令により上記切換スイッチ121を信号パルスからテストパルスに切り換える。上記テストパルス発生部2は、上記制御部3のリクエストに応じた繰り返し周波数のテストパルスを上記測定部12に出力する。
【0030】
テストモードが終了してテストモードからノーマルモードに切り換えると、上記入力切換スイッチ121はテストパルス入力から信号パルス入力に切り換わると共に、上記演算器127の上記標準偏差σが通常時定数τsに対応する標準偏差σsから上記通常時定数τsより速い時定数τfに対応する標準偏差σfに切り換わり、所定期間が終了したら上記通常時定数τsに対応する上記標準偏差σsに復帰する。
【0031】
上記通常時定数τsより速い時定数τfの期間Tについては、ノーマルモードからテストモードに切り換える直前のノーマルモード指示値n1と、テストモードからノーマルモードに切り換える直前のテストモード指示n2と、τs標準偏差σfに基づき次式で求められる。ただし、上記所定期間終了とは、例えば、復帰過程にある指示値が上記ノーマルモード指示値n1の統計的変動の範囲以内に到達した時とし、該統計的変動の範囲以内を例えば3σsとする。
2/n1>(1+3σs)の時:T=1/{2n1f)2}ln[{1/(3σs)+1}・(1−n1/n2)]・・・(6)
2/n1>(1−3σs)の時:T=1/{2n1f)2}ln[{1/(3σs)−1}・(n1/n2−1)]・・・(7)
(1−3σs)≦n2/n1≦(1+3σs)の時:T=演算周期・・・(8)
【0032】
図2は、本実施の形態1に係わるテストモードからノーマルモードへ切り戻した時の指示応答特性を示すもので、上記入力切換スイッチ121が動作してテストパルス入力が信号パルス入力に切り換えられると、テストモードの最終指示aから実線の過渡変化bfを経てバックグラウンド指示cに復帰する。点線のbsは従来の過渡変化を示したもので、bsはノーマルモードの上記時定数τsで指示が変化するのに対して、bfは上記速い時定数τfで変化するため上記バックグラウンド指示cに復帰するまでの時間が短縮される。
【0033】
復帰に要する時間Tは(6)式または(7)式あるいは(8)式で求められ、例えば、テストモードにおいて最終指示値n2が1000cpmでバックグラウンド指示値n1が50cpm、上記標準偏差が2.6%に対し、上記速い時定数τfの時の上記標準偏差が10.5%とすると、従来は約37分でバックグラウンド指示に復帰していたのが、上記速い時定数τfにすると約2分で復帰するようになり、バックグラウンド指示復帰に要する時間が大幅に短縮できる。(8)式のT=演算周期は、次の演算周期でノーマルモードに復帰することを示す。なお、(6)式または(7)式において復帰に要する時間Tは速い時定数のp倍、例えば2〜4倍とし、次式のように簡便な形で運用してもよい。
T=p×1/{2n1f)2}・・・(9)
【0034】
図3は、本実施の形態1に係わる演算の手順を示すフロー図である。ノーマルモードにおいて、上記演算器127は、上記標準偏差σsで動作する上記アップダウンカウンタ124の今回演算周期の積算値M(今回)及び上記制御部3の制御命令を読み込み(ステップST1)、該積算値Mに基づいて計数率n(今回)を求め、所定の演算を実行して出力し(ステップST2)、上記制御部3からのテスト開始命令の有無を確認し(ステップST3)、該命令がない場合(Noの場合)は次の演算周期でステップST1に戻る。上記演算器127は、上記制御部3からのテスト開始命令があった場合(ステップST3でYesの場合)、上記入力切換スイッチ121の入力を信号パルスからテストパルスに切り換え(ステップST4)、テスト中警報を出力し(ステップST5)、次の演算周期でステップST6以降のテストモードに移る。
【0035】
上記テストモードにおいて、上記演算器127は、上記標準偏差σsで動作する上記アップダウンカウンタ124の今回演算周期の積算値M(今回)及び上記制御部3の制御命令を読み込み(ステップST6)、該積算値Mに基づいて計数率n(今回)を求め、所定の演算を実行して出力し(ステップST7)、制御部3からのテスト終了命令の有無を確認し(ステップST8)、該命令がない場合(Noの場合)は次の演算周期でステップST6に戻る。上記演算器127は、上記制御部3からのテスト終了命令があった場合(ステップST8でYesの場合)、上記入力切換スイッチ121の入力をテストパルスから信号パルスに切り戻し(ステップST9)、上記標準偏差σをσsからσfに切り換え(ステップST10)、次の演算周期でテストモードからノーマルモードへの移行期間に移る。
【0036】
上記移行期間において、上記演算器127は、上記標準偏差σfで動作する上記アップダウンカウンタ124の今回演算周期の積算値M(今回)を読み込み(ステップST11)、該積算値Mに基づいて計数率n(今回)を求め、所定の演算を実行して出力し(ステップST12)、指示nが(1−3σs)≦n/n1≦(1+3σs)まで復帰したかどうかを確認し(ステップST13)、復帰した場合(Yesの場合)は上記標準偏差σをσfからσsに切り戻し(ステップST14)、テスト中警報をリセットし(ステップST15)、次の演算周期でステップST1に戻る。指示nが(1−3σs)≦n/n1≦(1+3σs)まで復帰していない場合(ステップST13でNoの場合)は、(6)式の時間Tが経過したかどうかを確認し(ステップST16)、時間Tが経過した場合(Yesの場合)は次の演算周期でステップST14に進み、時間Tが経過してない場合(Noの場合)は次の周期でステップST11に戻る。なお、上記測定部12は、予め設定することにより、テスト中警報を出力している期間について、放射線監視装置外部に高警報及び低警報が出力されないように自動でブロックすることができる。
【0037】
以上のように、上記制御部3は、上記測定部12の入力信号を切り換えて、ノーマルモード時は信号パルスを、テストモード時はテストパルスを入力し、テストモードが終了してノーマルモードに切り戻したら、上記測定部12は通常時定数より速い時定数の標準偏差で計数率を演算し、指示が所定のバックグラウンド範囲内に復帰したら、あるいは、所定の時間が経過したら、通常時定数の標準偏差に復帰するようにしたので、テスト指示値からバックグラウンド指示値への復帰時間を大幅に短縮でき、テストによる欠測時間を短縮できる効果を奏する。
【0038】
また、上記制御部3は、テストモードに切り換える直前のノーマルモード指示値と、テストモードからノーマルモードに切り換える直前のテストモード指示値と、速い時定数に対応した標準偏差に基づき、速い時定数に対応した標準偏差の期間を決定するようにしたので、最短でバックグラウンド指示値に復帰させることができる。
【0039】
また、上記測定部12は、テストモードの期間中及びテストモードからノーマルモード切り換え後の速い時定数に対応した標準偏差の期間中について、テスト中であることを報知するテスト中警報を自動で発信するようにし、テスト中警報が発信している期間は、放射線監視装置の外部に高警報あるいは低警報が出力されないように自動で警報ブロックをかけるように設定することにより、テストにより放射線監視装置外へ誤警報が出力されるのを確実に阻止することができる。
【0040】
また、(6)式の時間Tが経過したかどうかを確認する手順を設けたので、テスト中にバックグラウンドが変動しても通常時定数に自動的に戻ることができ、信頼性の高い装置を提供できる。
【0041】
上述のように、本実施の形態1は、放射線を検出しその出力として信号パルスを出力する検出器、テストパルスを出力するテストパルス発生部、及びノーマルモードとテストモードとに切り替え制御される切換スイッチを介して当該切換スイッチがノーマルモードのときに上記検出器から上記信号パルスを入力し上記切換スイッチがテストモードのときに上記テストパルス発生部からテストパルスを入力する測定部を備え、上記ノーマルモードのときの上記測定部の動作により放射線を監視し上記テストモードのときの上記測定部の動作により動作テストを行う放射線監視装置であって、上記測定部は、上記テストモードから上記ノーマルモードに切り換わると所定期間の間は上記ノーマルモードのときより速い時定数で指示値を出力する放射線監視装置であり、また、放射線を検出して信号パルスを出力する検出器、上記信号パルスを入力して放射線量を測定する測定部を備えた放射線モニタ、上記放射線モニタにテストパルスを入力するテストパルス発生部、及び上記テストパルス発生部及び上記放射線モニタを制御する制御部を備え、上記測定部はその入力端に切換スイッチを有し、上記制御部は上記切換スイッチをノーマルモードとテストモードとに切り替え制御し、上記ノーマルモードのときは上記信号パルスを上記テストモードのときは上記テストパルスを夫々上記測定部に入力し、上記テストモードが終了して上記ノーマルモードに切り換わると、所定期間の間は上記測定部は上記ノーマルモードのときより速い時定数で指示値を応答させて出力し、上記所定期間が終了すると上記ノーマルモード時の通常時定数に復帰して指示値を応答させて出力することを特徴とする放射線監視装置であり、また、かかる放射線監視装置において、上記制御部は、上記ノーマルモードから上記テストモードに切り換える直前の上記ノーマルモード時の指示値と、上記テストモードから上記ノーマルモードに切り換える直前の上記テストモード時の指示値と、上記の速い時定数とに基づいて上記速い時定数の期間を決定するものであり、更にまた、かかる放射線監視装置において、上記測定部は、上記テストモードの期間中及び上記テストモードからノーマルモードへの切り換え後の速い時定数の期間中は、テスト中であることを報知するテスト中警報を発信し、上記テスト中警報を発信している期間は、放射線監視装置の外部に高警報あるいは低警報を出力しないように自動で警報ブロックをかけるものであり、テスト指示値からバックグラウバックグラウンド指示値への復帰時間を大幅に短縮でき、テストによる欠測時間を短縮できる。
【0042】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2を、低警報テスト時のテストパルスの繰り返し周波数入力と計数率指示応答との関係の一例を線図で示す図4に基づいて説明する。
【0043】
図4に示すように、バックグラウンド指示cより低いレベルに設定された低警報設定点dの低警報の動作を確認するテストにおいて、上記制御部3からの低警報テストの命令により、上記テスト信号発生部2はステップ状の繰り返し周波数e1のテストパルスを出力し、上記測定部12は該テストパルスを入力すると共に上記標準偏差σをσsからσfに切り換えてノーマルモードより速い時定数で指示値gfを応答させ、低警報設定値に到達する過程の所定の設定値hを通過したら、上記テスト信号発生部2はランプ状の繰り返し周波数e2のテストパルスを出力し、上記測定部12は該テストパルスを入力すると共に上記標準偏差σをσfからσsに切り戻してノーマルモードの時定数で指示値gsを応答させ、指示値が低警報設定値に到達して警報を発信したらその時の指示値gs及びテストパルスの繰り返し周波数FINをホールドさせる。
【0044】
例えば、低警報テストで、バックグラウンド指示c=50cpmから1cpmにステップ状に入力を変化させると、ノーマルモードの標準偏差σs=2.6%場合だと低警報発信に約1時間かかったのを、標準偏差σ1=10.5%に切り換えることにより約4分に短縮できる。なお、上記は低警報の場合の例で説明したが、高警報についても高警報設定点が比較的低い場合には同様に試験時間を短縮できる。
【0045】
以上のように、警報テストにおいてステップ状の繰り返し周波数でテスト信号を入力する時の応答を、標準偏差を切り換えてノーマルモードより速い時定数で指示値を応答させるようにしたので、警報テストの動作試験時間を大幅に短縮できる。
【0046】
また、指示値が警報設定値に到達して警報を発信したら、上記テスト信号発生部2のテスト信号の繰り返し周波数FINをホールドし、上記アップダウンカウンタ124の積算値Mがオーバーランしないようにしたので、バックグラウンド指示値への復帰時間を短縮できる効果を奏する。
【0047】
上述のように、本実施の形態2は、放射線を検出して信号パルスを出力する検出器、上記信号パルスを入力して放射線量を測定する測定部を備えた放射線モニタ、該放射線モニタにテストパルスを入力するテストパルス発生部、及び上記テスト信号発生部及び上記放射線モニタを制御する制御部を備え、上記測定部は入力端に切換スイッチを有し、上記制御部は上記切換スイッチをノーマルモードとテストモードとに切り替え制御し、上記ノーマルモード時は信号パルスを、上記テストモード時はテストパルスを上記測定部に入力して警報の動作を確認するテストを行い、上記警報の動作を確認するテストにおいて、ステップ状の繰り返し周波数のテストパルスを入力したら、上記測定部はノーマルモードより速い時定数で指示値を応答させて出力し、低警報設定値に到達する過程の所定の指示値を超えるとランプ状の繰り返し周波数のテストパルスを入力すると共に、上記ノーマルモードと同じ時定数で指示値を応答させ、指示値が低警報設定値に到達して警報が発信したら指示値をホールドさせる放射線監視装置であり、また、かかる放射線監視装置において、上記テストパルス発生部は、上記測定部において指示値が警報設定値に到達して警報を発信すると、その時のテスト信号の繰り返し周波数FINをホールドするものである。
【0048】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3を、放射線測定装置でもある放射線監視装置の他の例をブロック図で示す図5に基づいて説明する。
【0049】
上述の実施の形態1及び実施の形態2では、放射線モニタ1が1チャンネルの場合について例示したが、本実施の形態3は、図5に示すように、放射線モニタ1を複数チャンネル備え、即ち複数の放射線モニタ1a、1b、・・・を備え、上記制御部3は同時に複数チャンネルのテスト、即ち複数の放射線モニタ1a、1b、・・・のテストを行うようにしたので、換言すれば、上記測定部を複数チャンネル備え、複数チャンネルのテストを共通の制御部により行うようにしたので、放射線監視装置のテスト時間を大幅に短縮できる効果を奏する。
【0050】
なお、各図中、同一符合は同一または相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、放射線測定装置でもある放射線監視装置の一例を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す図で、テストモードからノーマルモードへ切り戻した時の指示応答特性の一例を示す線図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す図で、図1の放射線監視装置における測定部での演算の手順の一例を示すフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態2を示す図で、低警報テスト時のテストパルスの繰り返し周波数入力と計数率指示応答との関係の一例を示す線図である。
【図5】この発明の実施の形態3を示す図で、放射線測定装置でもある放射線監視装置の他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1,1a,1b 放射線モニタ、
11 検出器、
12 測定部、
121 切換スイッチ、
122 パルス増幅器、
123 波高弁別器、
124 アップダウンカウンタ、
1241 加算入力、
1242 減算入力、
125 周波数合成回路、
126 積算制御回路、
127 演算器、
128 出力端子、
129 メモリー、
2 テスト信号発生部、
3 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出しその出力として信号パルスを出力する検出器、テストパルスを出力するテストパルス発生部、及びノーマルモードとテストモードとに切り替え制御される切換スイッチを介して当該切換スイッチがノーマルモードのときに上記検出器から上記信号パルスを入力し上記切換スイッチがテストモードのときに上記テストパルス発生部からテストパルスを入力する測定部を備え、上記ノーマルモードのときの上記測定部の動作により放射線を監視し上記テストモードのときの上記測定部の動作により動作テストを行う放射線監視装置であって、上記測定部は、上記テストモードから上記ノーマルモードに切り換わると所定期間の間は上記ノーマルモードのときより速い時定数で指示値を出力する放射線監視装置。
【請求項2】
放射線を検出して信号パルスを出力する検出器、上記信号パルスを入力して放射線量を測定する測定部を備えた放射線モニタ、上記放射線モニタにテストパルスを入力するテストパルス発生部、及び上記テストパルス発生部及び上記放射線モニタを制御する制御部を備え、上記測定部はその入力端に切換スイッチを有し、上記制御部は上記切換スイッチをノーマルモードとテストモードとに切り替え制御し、上記ノーマルモードのときは上記信号パルスを上記テストモードのときは上記テストパルスを夫々上記測定部に入力し、上記テストモードが終了して上記ノーマルモードに切り換わると、所定期間の間は上記測定部は上記ノーマルモードのときより速い時定数で指示値を応答させて出力し、上記所定期間が終了すると上記ノーマルモード時の通常時定数に復帰して指示値を応答させて出力することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の放射線監視装置において、上記制御部は、上記ノーマルモードから上記テストモードに切り換える直前の上記ノーマルモード時の指示値と、上記テストモードから上記ノーマルモードに切り換える直前の上記テストモード時の指示値と、上記の速い時定数とに基づいて上記速い時定数の期間を決定することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の放射線監視装置において、上記測定部は、上記テストモードの期間中及び上記テストモードからノーマルモードへの切り換え後の速い時定数の期間中は、テスト中であることを報知するテスト中警報を発信し、上記テスト中警報を発信している期間は、放射線監視装置の外部に高警報あるいは低警報を出力しないように自動で警報ブロックをかけることを特徴とする放射線監視装置。
【請求項5】
放射線を検出して信号パルスを出力する検出器、上記信号パルスを入力して放射線量を測定する測定部を備えた放射線モニタ、該放射線モニタにテストパルスを入力するテストパルス発生部、及び上記テスト信号発生部及び上記放射線モニタを制御する制御部を備え、上記測定部は入力端に切換スイッチを有し、上記制御部は上記切換スイッチをノーマルモードとテストモードとに切り替え制御し、上記ノーマルモード時は信号パルスを、上記テストモード時はテストパルスを上記測定部に入力して警報の動作を確認するテストを行い、上記警報の動作を確認するテストにおいて、ステップ状の繰り返し周波数のテストパルスを入力したら、上記測定部はノーマルモードより速い時定数で指示値を応答させて出力し、低警報設定値に到達する過程の所定の指示値を超えるとランプ状の繰り返し周波数のテストパルスを入力すると共に、上記ノーマルモードと同じ時定数で指示値を応答させ、指示値が低警報設定値に到達して警報が発信したら指示値をホールドさせることを特徴とする放射線監視装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線監視装置において、上記テストパルス発生部は、上記測定部において指示値が警報設定値に到達して警報を発信すると、その時のテスト信号の繰り返し
周波数FINをホールドすることを特徴とする放射線監視装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一に記載の放射線監視装置において、上記測定部を複数チャンネル備え、複数チャンネルのテストを共通の制御部により行うことを特徴とする放射線監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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