説明

放射線硬化型インクジェット用インク、記録物、及びインクジェット記録方法

【課題】耐擦性、密着性、及びアルコール耐性に優れた放射線硬化型インクジェット用インクを提供する。
【解決手段】放射線硬化型インクジェット用インクであって、該インクの総質量に対して5〜20質量%のN−ビニルカプロラクタムを含み、被記録媒体としてのパッケージ基材又は半導体基材に記録するために用いられ、かつ、該パッケージ基材又は該半導体基材に付着し、放射線が照射され、150〜200℃で加熱処理されるものである、放射線硬化型インクジェット用インクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型インクジェット用インク、記録物、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。
【0003】
近年、耐水性、耐溶剤性、及び耐擦性などの良好な画像を被記録媒体の表面に形成するため、インクジェット方式の記録方法において、放射線を照射すると硬化する放射線硬化型インクジェット用インクが使用されている。
【0004】
一方で、近年、半導体チップ(集積回路(IC)チップ)等をパッケージしてなる電子部品(ICパッケージ)が様々な機器に使用されており、そのような電子部品には文字、記号、ロゴマーク等を印刷するマーキングを施すのが通常である。そのため、電子部品に適したマーキングを施す印刷技術が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ICチップ等の電子部品に対しインクジェット方式で付着させたインクに紫外線を照射して、当該電子部品上にインクを定着させるというマーキング方法が開示されている。特許文献2には、ベアチップを多数個取りする基板の周縁部の捨て基板部に、インクジェット方式でロット番号等を印字するというマーキング方法が開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、二酸化チタンを含むインクが最大インク膜厚10〜30μmで硬化するように、照射される紫外線の積算光量及び照度を特定範囲にした、プリント配線板製造におけるインクジェット記録方法が開示されている。特許文献4には、インクジェットプリンターから、着色剤、光重合開始剤、及びエポキシ試薬を含有する紫外線硬化性インクをプリント回路基板上に噴射してマーキングを提供する工程と、当該マーキングを少なくとも2秒間後に紫外線に暴露する工程と、を含む、インクジェット印刷方法が開示されている。
【0007】
また、例えば、特許文献5には、ICパッケージ上にコーティングを行い、その上にマーキングを施したモールドICパッケージが開示されている。特許文献6には、複数のICチップを有するウエハーのうち、不良ICチップの箇所のみにマーキングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−274335号公報
【特許文献2】特開2000−332376号公報
【特許文献3】特開2006−21479号公報
【特許文献4】特表2007−527459号公報
【特許文献5】実用新案登録第2539839号明細書
【特許文献6】特開2003−273172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜6に開示された技術はいずれも、耐擦性、密着性、及びアルコール耐性のうち少なくともいずれかに劣る。そのため、従来のマーキング方法は、精密な電子部品に適用し難いという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、耐擦性、密着性、及びアルコール耐性に優れた放射線硬化型インクジェット用インク、並びにこれを用いた記録物及びインクジェット記録方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。従来のマーキング方法により電子部品にマーキングを施した場合、電子部品に記録されたインクの硬化物は、耐擦性、密着性、及びアルコール耐性のうち少なくともいずれかに劣るため、実用に耐え得ない。
【0012】
このような状況の下で、硬化するインク中にN−ビニルカプロラクタムを含有させるとともにその含有量を所定のものとし、かつ、上記の硬化物をさらに所定条件で加熱したところ、耐擦性、密着性、及びアルコール耐性が極めて優れたものとなり、実用に十分耐えられる電子部品へのマーキング方法が得られることを本発明者らは知見した。
【0013】
このようにして、所定量のN−ビニルカプロラクタムを含み、硬化された後に所定条件で加熱処理されてなる放射線硬化型インクジェット用インク(以下、単に「インク」ともいう。)が、電子部品のパッケージ基材又は半導体基材に好適に記録(マーキング)することができ、かつ、硬化物の耐擦性及びアルコール耐性、並びに硬化物の上記基材に対する密着性のいずれにも優れることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
放射線硬化型インクジェット用インクであって、該インクの総質量に対して5〜20質量%のN−ビニルカプロラクタムを含み、被記録媒体としてのパッケージ基材又は半導体基材に記録するために用いられ、かつ、該パッケージ基材又は該半導体基材に付着し、放射線が照射され、150〜200℃で加熱処理されるものである、放射線硬化型インクジェット用インク。
[2]
該インクの総質量に対して5〜20質量%の多官能アクリレートをさらに含む、[1]又は[2]に記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
[3]
前記多官能アクリレートは、ペンタエリスリトール骨格を有する多官能アクリレートである、[2]に記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
[4]
前記加熱処理が、150〜200℃で10〜75分間加熱するものである、[1]〜[3]のいずれかに記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
[5]
照射される前記放射線は、発光ピーク波長が350〜405nmの範囲であり、積算照射量が100mJ/cm2以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
[6]
被記録媒体としてのパッケージ基材又は半導体基材と、該パッケージ基材又は該半導体基材に記録された[1]〜[5]のいずれかに記載の放射線硬化型インクジェット用インクの硬化物と、を備える、記録物。
[7]
放射線硬化型インクジェット用インクをパッケージ基材又は半導体基材に吐出する吐出工程と、吐出された該インクに、放射線を照射して、該インクを硬化する硬化工程と、硬化されて得られる硬化物を150〜200℃で加熱する加熱工程と、を含む、インクジェット記録方法であって、前記放射線硬化型インクジェット用インクが該インクの総質量に対して5〜20質量%のN−ビニルカプロラクタムを含む、インクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本明細書において、「パッケージ基材」とは、半導体チップ等を封入する保護基材を意味する。「半導体基材」とは、半導体チップ等であって直接基材にもなるウエハーを含む意味である。以下では、パッケージ基材又は半導体基材を「パッケージ基材等」ともいう。また、「記録物」とは、パッケージ基材又は半導体基材上にインクが記録されて硬化物が形成されたものをいう。なお、本明細書における硬化物は、インクの硬化膜や塗膜を含む、硬化された物質を意味する。
【0017】
本明細書において、「硬化」とは、重合性化合物を含むインクに放射線を照射すると、重合性化合物が重合してインクが固化することをいう。「硬化性」とは、光に感応して硬化する性質をいう。「密着性」とは、塗膜が素地から剥離しにくい性質をいい、特に実施例では、直角の格子パターンが硬化物に切り込まれ、パッケージ基材等の素地まで貫通するときの当該性質をいう。「耐擦性」とは、硬化物を引っ掻いた時に、硬化物がパッケージ基材等から剥がれにくい性質をいう。「アルコール耐性」とは、イソプロピルアルコール溶液に記録物を浸漬させてから硬化物を引っ掻いた時に、硬化物がパッケージ基材等から剥がれにくい性質をいう。「吐出安定性」とは、ノズルの目詰まりがなく常に安定したインク滴をノズルから吐出させる性質をいう。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0019】
[放射線硬化型インクジェット用インク]
本発明の一実施形態に係る放射線硬化型インクジェット用インクは、当該インクの総質量(100質量%)に対して5〜20質量%のN−ビニルカプロラクタムを含む。また、上記インクは、放射線照射により硬化された後、150〜200℃で加熱処理が施されて、硬化物となるものである。さらに、上記インクは、被記録媒体としてのパッケージ基材又は半導体基材に記録するという用途に適するという特徴を有する。
【0020】
以下、本実施形態の放射線硬化型インクジェット用インクに含まれるか、又は所望により含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
【0021】
〔重合性化合物〕
本実施形態の放射線硬化型インクジェット用インクに含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。
【0022】
(N−ビニルカプロラクタム)
本実施形態における重合性化合物は、N−ビニルカプロラクタムを含有する。インクが重合性化合物としてN−ビニルカプロラクタムを含有することにより、硬化性、密着性、耐擦性、及びアルコール耐性を良好なものとすることができる。
【0023】
N−ビニルカプロラクタムの含有量は、インクの総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%であり、9〜15質量%であることが好ましい。N−ビニルカプロラクタムの含有量が上記範囲内であると、密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に優れたものとなる。
【0024】
(分子中にビニル基及び(メタ)アクリル基を共に有する化合物)
本実施形態における重合性化合物は、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「モノマーA」という。)を含有してもよい。
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
【0025】
上記モノマーAは、分子中にビニル基及び(メタ)アクリル基を共に有する化合物であり、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と換言することができる。
インクがモノマーAを含有することにより、インクの硬化性などをより良好なものとすることができる。
【0026】
上記の一般式(I)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方による酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0027】
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0028】
上記の有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0029】
上記の一般式(I)で表されるモノマーAの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0030】
上記したものの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0031】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性により優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルが好ましく、さらに、臭気が低く、皮膚への刺激を抑えることができ、かつ、反応性及び密着性に優れるため、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。
【0033】
モノマーAは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
モノマーAの含有量は、インクの総質量(100質量%)に対し、20〜50質量%であることが好ましい。モノマーAの含有量が上記範囲内であると、インクの密着性、耐擦性、及びアルコール耐性をより良好なものとすることができる。
【0035】
上記一般式(I)で表されるモノマーAの製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
【0036】
(上記以外の重合性化合物)
上記以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という。)としては、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニルカプロラクタム以外のN−ビニル化合物を含んでいてもよい。そのようなN−ビニル化合物として、例えば、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0038】
その他の重合性化合物のうち、(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましく、2官能以上である多官能の(メタ)アクリレートがより好ましく、多官能のアクリレートがさらに好ましい。特に、本実施形態のインクが、重合性化合物として、上記所定量のN−ビニルカプロラクタムに加えて多官能アクリレートをも含むことで、密着性、耐擦性、及びアルコール耐性をより良好なものとすることができる。
【0039】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
上記(メタ)アクリレートのうち、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、並びに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、及びトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等のトリペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、及びテトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等のテトラペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート及びペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート等のペンタペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、並びにこれらのエチレンオキサイド(EO)付加物及びプロピレンオキサイド(PO)付加物のうち少なくともいずれか等、3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、その他の重合性化合物は、上記のとおり、多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの中でも、上記のペンタエリスリトール骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトール骨格を有する多官能アクリレートがより好ましい。ペンタエリスリトール骨格を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートのうち少なくともいずれかがさらに好ましい。上記の場合、密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に一層優れることに加えて、インクの粘度が低下し、かつ、インクにおける架橋密度が増大する。
【0042】
なお、単官能(メタ)アクリレートの中では、粘度及び臭気を低減させるため、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方が好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートがさらに好ましい。
【0043】
上記その他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記その他の重合性化合物は、インクの総質量(100質量%)に対し、5〜50質量%含まれるとよい。中でも多官能アクリレートは、密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に一層優れるため、インクの総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%含まれることが好ましく、8〜15質量%含まれることがより好ましい。
【0045】
〔重合禁止剤〕
本実施形態のインクは、重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤として、以下に限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール化合物、p−ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5−ジーブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、及び2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン等のキノン化合物、フェニル−β−ナフチルアミン、p−ベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、及びジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、及びピクリン酸などのニトロ化合物、キノンジオキシム及びシクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物、フェノチアジン等の硫黄化合物が挙げられる。
【0046】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインクは、光重合開始剤を含むことが好ましい。上述の重合性化合物として光重合性の化合物を用いることにより、光重合開始剤の添加を省略することが可能である。しかしながら、光重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ、好適である。
【0047】
上記の光重合開始剤は、放射線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて画像を形成するために用いられる。ここで、前記放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線(UV)、可視光線及び赤外線が挙げられる。中でも、安全性に優れ、且つ光源にかかるコストを抑えることができるため、紫外線が好ましい。光重合開始剤としては、光のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0048】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物がより好ましい。
【0050】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0051】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Speedcure TPO、Speedcure DETX(以上、Lambson社製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0052】
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
光重合開始剤は、放射線硬化速度を十分に発揮させ、且つ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、インクの総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%含まれることが好ましい。
【0054】
〔色材〕
本実施形態のインクは、色材を含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0055】
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インクの耐光性を良好なものとすることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0056】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0057】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0058】
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとして、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
【0059】
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
【0060】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
【0061】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
【0062】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バット ブルー 4、60が挙げられる。
【0063】
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
【0064】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜250nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インクにおける吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0066】
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0067】
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
色材の含有量は、優れた隠蔽性及び色再現性が得られるため、インクの総質量(100質量%)に対して、1〜25質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0069】
〔分散剤〕
本実施形態のインクが顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、アベシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYK社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
【0070】
〔スリップ剤〕
本実施形態のインクは、優れた耐擦性が得られるため、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、BYK社製)を挙げることができる。
【0071】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインクは、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、放射線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0072】
[被記録媒体]
本実施形態の放射線硬化型インクジェット用インクは、後述するインクジェット記録方法を利用して、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、パッケージ基材又は半導体基材を用いる。なぜなら、パッケージ基材等にマーキングする際に用いられるインクには、優れた密着性、耐擦性、及びアルコール耐性が求められるからである。
【0073】
なお、上記で定義したように、パッケージ基材は、半導体チップ等を封入する保護基材を意味し、半導体基材は、半導体チップ等であって直接基材にもなるウエハーも含む意味である。そして、上記の半導体チップ等を封入して製造されたものが電子部品(ICパッケージ)となる。この電子部品を一以上集積して構成されたものが電子機器となる。
【0074】
パッケージ基材の規格としては、例えば、PGA(Pin Grid Array)、DIP(Dual Inline Package)、SIP(Single Inline Package)、ZIP(Zigzag Inline Package)、DO(Diode Outline)パッケージ、及びTO(Transistor Outline)パッケージ等の挿入形パッケージ、並びにP−BGA(Plastic Ball grid array)、T−BGA(Tape Ball grid array)、F−BGA(Fine Pitch Ball grid array)、SOJ(Small Outline J−leaded)、TSOP(Thin Small Outline Package)、SON(Small Outline Non−lead)、QFP(Quad Flat Package)、CFP(Ceramic Flat Package)、SOT(Small Outline Transistor)、PLCC(Plastic leaded chip carrier)、LGA(Land grid array)、LLCC(Lead less chip carrier)、TCP(Tape carrier package)、LLP(Leadless Leadframe Package)、及びDFN(Dual Flatpack Non−lead)等の表面実装形パッケージが挙げられる。
【0075】
パッケージ基材の市販品として、例えば、東芝セミコンダクター社(Toshiba Semi-Conductor Co., Ltd.)製の汎用ロジックICパッケージ(SOP14−P−300−1.27A)、ルネサスエレクトロニクス社(Renesas Electronics Corporation)製の表面実装型パッケージ(UPA2350B1G)、シャープ社(Sharp Corporation)製の面実装型パッケージ(P−LFBGA048−0606)、及びローム社(ROHM Co., Ltd.)製のシリアルEEPROM(BR24L01A)が挙げられる。
【0076】
パッケージ基材の材質としては、電子部品本体へのインクの浸透を防ぐため、非吸収性材質が挙げられる。この非吸収性材質の具体例としては、以下に限定されないが、金、銀、銅、アルミニウム、鉄−ニッケル系合金、ステンレス、及び真鋳などの金属、並びに半導体(例えばシリコン)、炭化物、窒化物(例えば窒化珪素)、及びホウ化物などの無機物質、並びにシリコン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、及びポリメチルメタアクリレート(PMMA)等の有機物質が挙げられる。
【0077】
中でも、硬化物の基材への密着性により優れるため、パッケージ基材としては、シリコン又はエポキシ樹脂がより好ましい。このように、シリコン又はエポキシ樹脂からなるパッケージ基材等を電子部品の封止材として用いることで、パッケージ基材の外面に、上記実施形態のインクを好適に記録(マーキング)することができる。
【0078】
一方、半導体基材(ウエハー)の市販品として、例えば、信越化学工業社(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.)製の300mmシリコンウエハー、SUMCO社製のSOIウエハー、及びコバレントマテリアル社(Covalent Materials Corporation)製のポリッシュトウエハーが挙げられる。
【0079】
半導体基材の材質としては、例えばシリコン、ゲルマニウム、及びセレンが挙げられる。中でも、インクとの密着性に優れ、かつ、半導体材料として極めて安定しているため、シリコンが好ましい。
【0080】
なお、上記電子機器として、例えば、USBメモリ、メモリーカード、SDメモリーカード、メモリースティック、スマートメディア、xDピクチャーカード、及びコンパクトフラッシュ(登録商標)等のフラッシュメモリーカードが挙げられる。
【0081】
ここで、パッケージ基材等へのマーキング方法を説明する。
【0082】
まず、半導体基材としてウエハー上にマーキングする場合、ダイシング(dicing)前のウエハー上にマーキングしてもよいし、あるいはウエハー上に回路を形成した後、チップ状にダイシングした半導体チップ上にマーキングしてもよい。後者の場合、IC(集積回路)が形成されたシリコンウエハーは、回路形成工程中、ウエハー表面に酸化ケイ素膜を形成するのが一般的である。酸化ケイ素膜を形成する方法として、例えば、厚さの制御に優れた方法の一つである高周波スパッタリング法が挙げられる。この方法を利用して、ターゲット材料である二酸化ケイ素をシリコンウエハー上にスパッタリングすることができる。
【0083】
次に、パッケージ基材へマーキングする場合、半導体チップを封入後のパッケージ基材上にマーキングしてもよく、半導体チップの封入前のパッケージ基材上にマーキングしてもよい。
【0084】
電子部品は、半導体チップのパッドとリードフレームとをボンディングし、チップ全体を封止剤と共にパッケージ基材に封入することにより作製する。当該封止剤として、以下に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びシリコン樹脂が挙げられる。このようにして作製された電子部品上(外面)にマーキングを行うことができる。
なお、当該インクを非吸収性の被記録媒体に適用した場合、放射線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となり得る。
【0085】
このように、本実施形態によれば、密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に優れた放射線硬化型インクジェット用インクを提供することができる。さらにいうと、本実施形態によれば、前処理を施したパッケージ基材等との密着性に優れ、かつ、耐擦性、及び(例えばイソプロピルアルコール(IPA)による)フラックスの洗浄に対する耐性に優れた、放射線硬化型インクジェット用インクを提供することができる。
【0086】
なお、本実施形態のインクは、硬化後所定の温度条件で加熱処理が施されることも相俟って、上記のような優れた効果を発揮する。この加熱処理については、後述のインクジェット記録方法の項で詳細に説明する。
【0087】
[記録物]
本発明の一実施形態は、記録物に係る。当該記録物は、上記実施形態の放射線硬化型インクジェット用インクが、被記録媒体としてのパッケージ基材等に記録されたものであり、パッケージ基材等と、そのパッケージ基材等に記録された上記インクの硬化物と、を備える。上記記録物は、パッケージ基材等とその上に付着し硬化したインク(硬化物)との密着性に優れ、当該硬化したインクが耐擦性及びアルコール耐性に優れるという特徴を有する。
【0088】
このように、本実施形態によれば、密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に優れた放射線硬化型インクジェット用インクを用いた記録物を提供することができる。
【0089】
[インクジェット記録方法]
本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。当該インクジェット記録方法は、上記実施形態の放射線硬化型インクジェット用インクをパッケージ基材等(被記録媒体)上に吐出し付着させる吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインクに活性放射線を照射して、当該インクを硬化する硬化工程と、硬化されて得られる硬化物を所定条件で加熱する加熱工程と、を含むものである。このようにして、パッケージ基材等上で放射線照射及び加熱処理が施されたインクから、硬化物が形成される。以下、上記の各工程を詳細に説明する。
【0090】
〔吐出工程〕
上記吐出工程においては、従来公知のインクジェット記録装置を用いることができる。インクの吐出の際は、インクの粘度を、30mPa・s以下とするのが好ましく、5〜20mPa・sとするのがより好ましい。インクの粘度が、インクの温度を室温として、あるいは、インクを加熱しない状態として上記のものであれば、インクの温度を室温として、あるいはインクを加熱せずに吐出させればよい。一方、インクを所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
【0091】
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、パッケージ基材等上に吐出されたインクが、放射線(光)の照射によって硬化する。
具体的には、放射線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始する。また、インクに含まれる光重合開始剤が放射線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進される。このとき、インクにおいて光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0092】
放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、放射線硬化型インクジェット用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザーダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、放射線硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
【0093】
本工程において照射される放射線は、インクを十分硬化させるとともに、次の加熱工程を行うことで所望の効果を発揮させるため、以下の条件を満たすことが好ましい。まず、放射線の発光ピーク波長は、350〜405nmの範囲であることが好ましく、365〜395nmの範囲であることがより好ましい。また、積算照射量(照射エネルギー)は、100mJ/cm2以上であることが好ましく、600mJ/cm2以下であることが好ましく、200〜500mJ/cm2であることがより好ましい。
なお、放射線の照射強度は、500mW/cm2以下であることが好ましく、200〜400mW/cm2であることがより好ましい。
【0094】
上記の場合、上記実施形態のインクの組成に起因して低エネルギー且つ高速での硬化が可能となる。積算照射量は、照射時間に照射強度を乗じて算出される。上記実施形態のインクの組成によって照射時間を短縮することができ、印刷速度が増大する。他方、上記実施形態のインクの組成によって照射強度を減少させることもでき、装置の小型化やコストの低下が実現する。その際の放射線照射には、UV−LEDを用いることが好ましい。このようなインクは、上記波長範囲の放射線照射により分解する光重合開始剤、及び上記波長範囲の放射線照射により重合を開始する重合性化合物を含むことにより得られる。なお、発光ピーク波長は、上記の波長範囲内に1つあってもよいし複数あってもよい。複数ある場合であっても上記発光ピーク波長を有する放射線の全体の照射エネルギーを上記の積算照射量とする。
【0095】
〔加熱工程〕
次に、加熱工程においては、上記硬化工程を通じてインクが硬化されて得られる硬化物に、加熱処理を施す。この加熱処理を通じて、硬化したインク中に重合していない又は重合が不十分な重合性化合物が残存している場合にこの重合性化合物が重合することで重合度がさらに増大すること、及び、硬化したインク中の高分子が加熱により網目構造を形成して硬くなること、のうち少なくともいずれかが起こると推測される。その結果、硬化物の耐擦性及びアルコール耐性、並びに硬化物の上記基材に対する密着性のいずれにも優れることとなる。ただし、要因は上記のものに限定されない。
【0096】
上記加熱処理における加熱温度は、150〜200℃であり、160〜190℃であることが好ましい。加熱温度が上記範囲であると、耐擦性、密着性、及びアルコール耐性のいずれも優れたものとすることができる。これに加えて、上記加熱処理における加熱時間は、5〜75分間が好ましく、10〜75分間がより好ましく、20〜70分間がさらに好ましい。加熱時間が上記範囲であると、上記と同様の特性に加え、パッケージ基材等への熱の影響を最小限に抑えることができる。
【0097】
このように、本実施形態によれば、耐擦性、密着性、及びアルコール耐性のいずれにも優れる放射線硬化型インクジェット用インクを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
[使用原料]
下記の実施例及び比較例において使用した原料は、以下の通りである。
〔重合性化合物〕
・N−ビニルカプロラクタム(BASF社製、表1では「NVC」と略記した。)
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名)
・PET3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名)
・PETA−K(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ダイセル・サイテック社製商品名)
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、表1では「PEA」と略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、固形分100%、表1では「819」と略記した。)
・DAROCURE TPO(BASF社製商品名、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、固形分100%、表1では「TPO」と略記した。)
〔スリップ剤〕
・シリコーン系表面調整剤 BYK−UV3500(ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、BYK社製商品名、表1では「UV3500」と略記した。)
〔重合禁止剤〕
・p−メトキシフェノール(関東化学社(KANTO CHEMICAL CO., INC)製、表1では「MEHQ」と略記した。)
〔顔料〕
・R−630(酸化チタン、石原産業社(ISHIHARA SANGYO KAISHA, LTD.)製商品名、表1では「酸化Ti」と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、表1ではSol36000と略記した。)
【0100】
〔基材〕
・基材1(パッケージ基材):エポキシ樹脂面1(シャープ社製、面実装型パッケージ、型番「P−LFBGA048−0606」)
・基材2(パッケージ基材):エポキシ樹脂面2(ローム社製、シリアルEEPROM、型番「BR24L01A」)
・基材3(半導体基材):シリコン面1(信越化学工業社製、300mmシリコンウエハー)
・基材4(半導体基材):シリコン面2(SUMCO社製、SOIウエハー)
なお、上記の基材3及び基材4は、回路形成して半導体チップにダイシングしたものを使用した。回路形成の際、ウエハー表面の酸化ケイ素層の厚さを50nmとした。
【0101】
[実施例1〜17、比較例1〜4]
〔放射線硬化型インクジェット用インクの調製〕
下記表1及び表2に記載の成分を、表1及び表2に記載の組成(単位:質量%)となるように添加し、これを常温で1時間混合撹拌して完全に溶解させた。これを、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過して、各放射線硬化型インクジェット用インクを得た。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
〔インク塗膜の調製〕
(系1)
上記の基材1〜4のそれぞれに、低圧水銀ランプを照射することにより前処理を行った。表1及び表2に示したインク及び基材の組み合わせに従い、インクジェットプリンター(PX−7550S〔商品名〕、セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製)を用いて、前処理を施した各基材上に、印刷物(画像)の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像を印刷した。なお、このベタパターン画像とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
その後、放射線を照射せずに、上記の各基材を190℃で20分間加熱し、記録物を得た。
【0105】
(系2)
上記の基材1〜4のそれぞれに、低圧水銀下ランプを照射することにより前処理を行った。表1及び表2に示したインク及び基材の組み合わせに従い、インクジェットプリンター(PX−7550S〔商品名〕、セイコーエプソン社製)を用いて、前処理を施した各基材上に、印刷物(画像)の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像を印刷するとともに、以下の条件で放射線を照射させることでインクを硬化させて、記録物を得た。放射線の照射条件は、波長395nm、照射強度400mW/cm2、最大積算照射量2,400mJ/cm2であった。
【0106】
(系3)
上記の基材1〜4のそれぞれを、低圧水銀下にて前処理を行った。表1及び表2に示したインク及び基材の組み合わせに従い、インクジェットプリンター(PX−7550S〔商品名〕、セイコーエプソン社製)を用いて、前処理を施した各基材上に、印刷物の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像を印刷するとともに、以下の条件で放射線を照射させることでインクを硬化させた。放射線の照射条件は、波長395nm、照射強度400mW/cm2、最大積算照射量450mJ/cm2であった。
その後、上記の各基材を130℃で60分間加熱し、記録物を得た。
【0107】
(系4)
加熱条件を160℃で70分間とした点以外は、上記系3と同様にして記録物を得た。
【0108】
(系5)
加熱条件を190℃で10分間とした点以外
は、上記系3と同様にして記録物を得た。
【0109】
(系6)
加熱条件を160℃で10分間とした点以外は、上記系3と同様にして記録物を得た。
【0110】
(系7)
加熱条件を190℃で70分間とした点以外は、上記系3と同様にして記録物を得た。
【0111】
(系8)
加熱条件を160℃で80分間とした点以外は、上記系3と同様にして記録物を得た。
【0112】
(系9)
加熱条件を190℃で4分間とした点以外は、上記系3と同様にして記録物を得た。
【0113】
(系10)
加熱条件を230℃で20分間とした点以外は、上記系3と同様にして記録物を得た。
【0114】
[評価項目]
以上の系1〜系6で得られた記録物、即ちパッケージ基材又は半導体基材上にインクが記録されて塗膜が形成されたものについて、下記の評価(密着性、耐擦性、及びアルコール耐性)を室温下で行った。
【0115】
〔密着性〕
JIS K−5600−5−6(ISO2409)(塗料一般試験法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、上記の基材1〜4とベタ印刷により形成された画像との密着性の評価を行った。ここで、上記クロスカット法について説明する。
切込み工具として単一刃切り込み工具(一般に市販されているカッター)と、単一刃切り込み工具を用いて等間隔に切り込むためのガイドと、を用意した。
まず、塗膜に対して垂直になるように切込み工具の刃を当てて、記録物に6本の切り込みを入れた。この6本の切込みを入れた後、90°方向を変え、既に入れた切り込みと直行するよう、さらに6本の切り込みを入れた。
次に、約75mmの長さになるよう透明付着テープ(幅25±1mm)を取り出し、塗膜に形成された格子状にカットした部分にテープを貼り、塗膜が透けて見えるように十分指でテープを擦った。次に、付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5〜1.0秒で確実に引き離した。
評価基準は以下のとおりである。◎及び○が実用上許容できる評価基準である。評価結果を表3及び表4に示す。
◎:どの格子の目にも剥がれがない。
○:格子の一部(50%未満)に剥がれが認められる。
△:格子の50%以上に剥がれが認められる。
×:全面に剥がれが認められる。
【0116】
〔耐擦性〕
荷重変動型摩擦磨耗試験システム(トライボギアTYPE−HHS2000〔商品名〕、新東科学社製)を用いて塗膜の剥がれ度合いを確認した。条件は、荷重を300gfに設定し、Φ0.2mmのサファイア針でベタ印刷により形成された画像を引掻き、塗膜の剥がれた程度を確認した。
評価基準は以下のとおりである。◎及び○が実用上許容できる評価基準である。評価結果を表3及び表4に示す。
◎:塗膜にキズ、剥離がない。
○:塗膜の一部に傷があるが、剥離は見られない。
△:塗膜の一部に傷がつき、塗膜が剥離する。
×:塗膜の全面に傷がつき、塗膜が剥離する。
【0117】
〔アルコール耐性〕
得られた記録物を、イソプロピルアルコール溶液に15分間浸漬させた。その後、溶液から取り出し、上記耐擦性評価と同様の条件で、塗膜の剥がれた程度を確認した。
評価基準は以下のとおりである。◎及び○が実用上許容できる評価基準である。評価結果を表3及び表4に示す。
◎:塗膜にキズ、剥離がない。
○:塗膜の一部に傷があるが、剥離は見られない。
△:塗膜の一部に傷がつき、塗膜が剥離する。
×:塗膜の全面に傷がつき、塗膜が剥離する。
【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
上記表3及び表4より、5〜20質量%のN−ビニルカプロラクタムを含み、パッケージ基材又は半導体基材上に付着され、放射線が照射された後、150〜200℃で加熱処理された放射線硬化型インクジェット用インクは、耐擦性、密着性、及びアルコール耐性のいずれにも優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化型インクジェット用インクであって、
該インクの総質量に対して5〜20質量%のN−ビニルカプロラクタムを含み、
被記録媒体としてのパッケージ基材又は半導体基材に記録するために用いられ、かつ、
該パッケージ基材又は該半導体基材に付着し、放射線が照射され、150〜200℃で加熱処理されるものである、放射線硬化型インクジェット用インク。
【請求項2】
該インクの総質量に対して5〜20質量%の多官能アクリレートをさらに含む、請求項1に記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
【請求項3】
前記多官能アクリレートは、ペンタエリスリトール骨格を有する多官能アクリレートである、請求項2に記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
【請求項4】
前記加熱処理が、150〜200℃で10〜75分間加熱するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
【請求項5】
照射される前記放射線は、発光ピーク波長が350〜405nmの範囲であり、積算照射量が100mJ/cm2以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線硬化型インクジェット用インク。
【請求項6】
被記録媒体としてのパッケージ基材又は半導体基材と、該パッケージ基材又は該半導体基材に記録された請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線硬化型インクジェット用インクの硬化物と、を備える、記録物。
【請求項7】
放射線硬化型インクジェット用インクをパッケージ基材又は半導体基材に吐出する吐出工程と、
吐出された該インクに、放射線を照射して、該インクを硬化する硬化工程と、
硬化されて得られる硬化物を150〜200℃で加熱する加熱工程と、
を含む、インクジェット記録方法であって、
前記放射線硬化型インクジェット用インクが該インクの総質量に対して5〜20質量%のN−ビニルカプロラクタムを含む、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−149206(P2012−149206A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10813(P2011−10813)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】