説明

放射線硬化型樹脂組成物及びハードコートフィルム

【課題】 表面硬度が高く、反りの少ない放射線硬化型樹脂組成物およびハードコートフィルムを得る。
【解決手段】 (A)数平均分子量が7、000〜20、000であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が100〜300である重合性オリゴマー、(B)数平均分子量が1、000未満であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が50〜200である重合性モノマーを配合する。(A)重合性オリゴマーと(B)重合性モノマー中の重合性オリゴマー(A)の割合は50wt%〜90wt%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線硬化型樹脂組成物及びハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といったことから、種々の産業で使用されており、液晶ディスプレイやタッチパネル用としても広く用いられている。最近ではプラスチックフィルムの傷つき防止として、多官能アクリレートモノマーを主成分とした放射線硬化型樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗工したハードコートフィルムが用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−77200号公報
【特許文献2】特開2007−224084号公報
【特許文献3】特開平9−302269号公報
【特許文献4】特開2001−106745号公報
【特許文献5】特開2002−293853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多官能アクリレートモノマーの官能基数が大きい程、表面硬度は良好であるが硬化時の樹脂収縮に起因する反りが大きくなるという問題があった。これを解消するために多官能アクリレートモノマーの一部を硬化収縮の少ない単官能もしくは2官能アクリレートモノマーに置き換えることにより反りを低減することができるが、表面硬度の著しい低下が問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題は
(A)数平均分子量が7、000〜20、000であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が100〜300である重合性オリゴマー、
(B)数平均分子量が1、000未満であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が50〜200である重合性モノマー、
とを含有する放射線硬化型樹脂組成物を用いることにより解決することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記(A)と(B)を含む放射線硬化型樹脂組成物を用いることで、表面硬度が高く、反りの少ない放射線硬化型樹脂組成物およびハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いる(A)数平均分子量が7、000〜20、000であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が100〜300である重合性オリゴマーは、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物由来のウレタン結合を有してなるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0008】
前記脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物由来のウレタン結合を有してなるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応しうる活性水素(例えば、カルボキシル基、水酸基、あるいはアミノ基の水素)を有する化合物とを反応させた化合物を(メタ)アクリル変性することによって得られる。また、ポリオール化合物に前記イソシアネート化合物を反応させ、得られた生成物に更に水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させることによっても得られる。
【0009】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせて使用することもできる。
【0010】
脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等、およびこれらのビュレット化物、ヌレート化物、アダクト化物等の重合物を挙げることができる。これらは、これらは単独でも複数組み合わせて使用することもできる。特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネートおよびこれらのヌレート化物が挙げられる。なお芳香族イソシアネート化合物は、ハードコートフィルムの信頼性試験、特に耐光性試験においてハードコート層の黄変が多く好ましくはない。
【0011】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、カルボン酸含有ポリオール等の脂肪族多価アルコール、各種ビスフェノールのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド反応物、ビスフェノールフルオレンのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド反応物等の芳香族多価アルコール等が挙げられる。
更には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール等も使用される。
【0012】
その他の(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート等の種々のポリマーの (メタ)アクリレート変性化合物などが挙げられる。
【0013】
本発明で用いる(B)数平均分子量が1、000未満であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が50〜200である重合性モノマーは、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物由来のウレタン結合を有してなるウレタン(メタ)アクリレート化合物、脂肪族炭化水素系(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0014】
(A)重合性オリゴマーと(B)重合性モノマー中の重合性オリゴマー(A)の割合は(A)と(B)の総重量中(A)が50wt%〜90wt%となるように配合する。(A)が下限に満たないと反りが大きくなりやすく、上限を超えると鉛筆硬度が低くなりやすくなる。
【0015】
脂肪族及び/脂環族イソシアネート化合物由来のウレタン結合を有してなるウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、段落0008に記載の化合物が挙げられる。
【0016】
脂肪族炭化水素系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いる放射線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、放射線重合開始剤を添加しても良い。放射線重合開始剤は、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンや、その他、公知の高分子放射線重合開始剤が使用できる。
【0018】
本発明で用いる放射線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ化合物、二酸化チタン等の無機充填剤の他、シラン系やチタネート系などのカップリング剤、殺菌剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、帯電防止剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、レベリング調整剤、消泡剤、着色顔料、防錆顔料等の配合材料を添加してもよい。また、耐光性向上を目的に酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加しても良い。
【0019】
本発明の放射線硬化型樹脂組成物が塗布されるプラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ナイロン、アクリル樹脂等、いずれも公知のものを用いることができる。
【0020】
フィルムへの塗布方法、塗布厚みについては特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができ乾燥後塗膜の厚みを20μm以下となるように塗布する。20μmを越えると基材との密着性が悪化するなどの問題がある。より好ましくは、2〜10μmである。
【0021】
電子線を照射する場合は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線、紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、100〜800mJ/cmのエネルギーを有する紫外線を照射する。また、必要に応じて窒素雰囲気下にて硬化させてもよい。
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例1】
【0022】
表1に示す配合の放射線硬化型樹脂組成物を得た。
各組成物を厚み100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名:ルミラー 東レ株式会社製)に塗布厚みが10μmとなるようにバーコート法で塗布し、温風循環式乾燥機にて80℃で1分間乾燥させた後、300mJ/cmの紫外線にて硬化し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例2】
【0023】
表1に示す配合の放射線硬化型樹脂組成物を得、実施例1と同様に実施した。
【実施例3】
【0024】
表1に示す配合の放射線硬化型樹脂組成物を得、実施例1と同様に実施した。
【0025】
比較例1〜8
表1に示す配合の樹脂組成物を得た。
各組成物を実施例と同様に塗布し、紫外線を照射した。
【0026】
【表1】

【0027】
試験方法は以下の通りとした。
(1)鉛筆硬度; JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づいて行った。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いた。
(2)反り;
10cm角のサンプルを作成し、四隅の反りを測定し、その平均値を求めた。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)数平均分子量が7、000〜20、000であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が100〜300である重合性オリゴマー、
(B)数平均分子量が1、000未満であり、かつ重合性不飽和基1mol当たりの分子量(二重結合等量)が50〜200である重合性モノマー、
とを含有することを特徴とする放射線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)と前記(B)総重量中の(A)の割合が50wt%〜90wt%であることを特徴とする請求項1記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
厚さ100ミクロンのPETフィルムに硬化させた時の鉛筆硬度が、JIS K 5600−5−4に基づく測定結果で、3H以上であり、かつ10cm角の四隅の平均反りが30mm未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の放射線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載の放射線硬化型樹脂組成物をプラスチックフィルム上で硬化させてなることを特徴とするハードコートフィルム。

【公開番号】特開2011−74199(P2011−74199A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226754(P2009−226754)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】