説明

放射線硬化型発泡体

本発明は、1)水性組成物A)を発泡させ、2)工程1)から製造した発泡体を熱乾燥させ、3)該発泡体を化学線により硬化させることによって製造される放射線硬化発泡体の製造方法、放射線硬化型水性組成物A)、本発明の方法により製造した放射線硬化発泡体ならびに該放射線硬化発泡体の基材をコーティングするための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型発泡体を製造するための放射線硬化型水性組成物、放射線硬化発泡体の製造方法および繊維製品におけるこれら発泡体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタン分散体は、それらの優れた発泡性、良好な耐摩耗性ならびに耐引掻性、耐座屈性および耐加水分解性のために、布張り家具、労働安全および自動車内部装備品の分野における用途に使用される。転写法が導入されてから、例えば皮のような外観を有する物を製造することが可能となった(U. Meier-Westhues、Polyurethane、Vincentz Verlag、Hannover、2007、第199〜207頁)。
【0003】
擬皮を製造するための転写法において、トップコートは原則としてポリウレタン分散体(2C系)に基づきメラミン-またはポリイソシアネート-架橋ラッカーを含むため、初めにトップコートを剥離紙(シリコーンまたはポリプロピレンでコートした紙)に塗布し、熱乾燥させる。続いて、空気と泡立てたポリウレタン分散体である発泡体の層を140℃より高い温度で同様に熱乾燥させる。次いで、乾燥させた発泡体層に貼合せ用接着剤(接着剤コート)を供し、編織布(例えばElastan(登録商標))に転写させる。例えば通常の皮のシボのある外観を生じさせるために、それに応じて該剥離紙をシボにさせる。転写法において、上層および発泡体層は剥離紙上のシボ模様の周りに流れ込み、その後、相当するシボ模様と共にこの形状で硬化する。発泡体の高い復元力のために、発泡体を一旦硬化させると次に機械的にエンボス加工することはもはやできないため、シボのある外観を有する模様を写し取るこの方法が必須である。
【0004】
直接刷毛塗り法(U. Meier-Westhues、Polyurethane、Vincentz Verlag、Hannover、2007、第199〜207頁)において、空気と泡立てたポリウレタン分散体を編織布に直接塗布し、140℃より高い温度で熱乾燥させる。熱乾燥に続いてトップコートを行う。直接刷毛塗り法は接着剤コートを省くことができ、したがって、転写法と比較すると1つの処理工程を省くことができるが、発泡体の復元力が高いために続いてシボ外観のエンボス加工を施すことができないため、擬皮を製造するのにあまり適当ではない。さらに、発泡体の乾燥が編織布上で行われるため、熱に敏感な編織布(例えばElastan(登録商標)など)を使用することはできない。
【0005】
上記2つの方法は、特に例えば擬皮などの、編織布の場合の繊維分野用発泡体の製造に必要な要求の全てを満足するものではない。例えば擬皮を製造するための3段階の転写法は、多くの作業工程のために多大な労働力を要し、熱乾燥工程のために多大なエネルギーを要する。直接刷毛塗り法では、硬化に高い温度が必要であり、したがって、例えばElastan(登録商標)などの熱に敏感な編織布の製造には適さない。さらに、発泡体の機械的エンボス加工は、硬化発泡体が高い復元力を有するために直接刷毛塗り法において行うことができず、これは機械的エンボス加工の欠点である。両方の方法において、良好な耐化学薬品性を付与するために、発泡させた発泡体に対してメラミン架橋トップコートまたはポリイソシアネート架橋トップコートが使用される。2成分系は、さらに、ポットライフを有するという欠点を有するため、混合させたラッカーの加工は時間的に限られており、未使用のラッカーを再利用することはできない。その上、トップコートにおけるメラミンを介する架橋は、同様に160℃の温度で行われるため、これは熱に敏感な編織布に対しては同様に適さない。
【0006】
国際公開第2009100837号および独国特許出願公開第102006016638号には、160℃の温度で乾燥するポリウレタン分散体に基づく発泡体が開示されている。
【0007】
欧州特許出願公開第222680号には、発泡体へと発泡させた後で硬化させる、アクリレートモノマー中での放射線硬化型ウレタンアクリレートが開示されている。これらは非水系であり、発泡のために十分に薄い液体にするためには、多量の低分子量アクリレートモノマーが必要となる。アクリレートモノマーは、感作に刺激性であり、したがって、加工性が制限される。
【0008】
独国特許出願公開第3127945号には、ポリエポキシアクリレートをポリイソシアネート−水反応により発泡させ、その後、放射線により硬化させることが記載されている。その方法において使用された少量の水は、ポリイソシアネートとの化学反応に必要とされる。これらの系は非常に短いポットライフを有し、硬化は、電子線硬化に限られる。
【0009】
独国特許出願第2328850号には、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを、低分子量アクリレートモノマーの存在下でのポリイソシアネート−水反応により発泡させ、その後、放射線により硬化させることが開示されている。
【0010】
特開2008156544号には、ポリイソシアネート、ポリオールおよび不飽和イソシアネートに基づく放射線硬化型発泡体が開示されている。これらは、非常に短いポットライフを有する非水系である。
【0011】
特開1993044175号には、放射線硬化型ではなく、低分子量アクリレートモノマーの存在下で発泡し、その後、電子線で硬化するポリウレタンが記載されている。
【0012】
放射線硬化型水性ポリウレタンアクリレート分散体は、例えば欧州特許出願公開第753531号、欧州特許出願公開第870788号および欧州特許出願公開第942 022号のように既知である。これらは、ラッカー用の結合剤として、および、接着剤として用いられる。これらの放射線硬化型発泡体における使用は、これまで記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2009100837号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第102006016638号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第222680号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3127945号明細書
【特許文献5】独国特許出願第2328850号明細書
【特許文献6】特開2008156544号公報
【特許文献7】特開1993044175号公報
【特許文献8】欧州特許出願公開第870788号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第942 022号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】U. Meier-Westhues、Polyurethane、Vincentz Verlag、Hannover、2007、第199〜207頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、優れた発泡性、良好な耐摩耗性および耐引掻性、耐座屈性および耐加水分解性において、水性ポリウレタン分散体に匹敵する分散体を提供するという課題が存在した。この課題は、水性ポリウレタン分散体に基づく発泡させた発泡体を硬化するための方法を、速さおよびより低い温度に関して、改善することであった。さらに、発泡体製剤は、長時間、加工可能であるべきであり、すなわち可能な限りポットライフを有さず、硬化後にはすぐに化学薬品に対して耐性であるべきである。さらに、発泡体は、低い復元力を有し、そのため、機械的にエンボス加工が可能であり、エンボスは容易に固定できるべきである。一方で、固定または硬化後、発泡体は高い復元力を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、放射線硬化型水性ポリウレタン(メタ)アクリレート分散体は、容易に機械的に発泡させることができること、このようにして製造した発泡させた発泡体は、空気中で水を留去後に、化学線を完全に貫通硬化できることが明らかとなった。高エネルギー放射線は、層厚が増加するにつれてさらにより大きな程度で吸収されるため(Lambert-Beerの法則)、担体材料への発泡体の貫通硬化は層厚が厚いため予期されなかった。さらに、発泡体構造の表面積が大きいために、大気中の酸素によるフリーラジカル重合の阻害が増大することが生じることが予想されていた(R. Schwalm、UVコーティング、Elsevier、Amsterdam、2007、第179〜194頁)。本発明の放射線硬化発泡体は、硬化直後に、エタノールに対して高い耐性を有するという特徴により区別される。さらに、発泡体をエンボス加工後、化学線で硬化前に、エンボスを自然に固定させることができ、放射線硬化を用いて永続的に固定させることができる。低温でも迅速に硬化するため、熱に敏感な編織布も基材として適当である。さらに、発泡体製剤は、長時間加工可能であり、ポットライフを有さない。
【0017】
本発明は、放射線硬化発泡体の製造方法であって、該放射線硬化発泡体は、
1)水性組成物A)を発泡させ、
2)工程1)において製造した発泡体を熱乾燥させ、
3)該発泡体を化学線により硬化させる
ことによって製造され、ここで、工程2)および3)は、所望の任意の順番および繰り返しで用いることができることを特徴とする方法を提供する。
【0018】
本発明の放射線硬化発泡体は、任意に、トップコートを備える。
【0019】
本発明は、さらに、
A1)1種以上の放射線硬化型水性結合剤、
A2)1種以上の増粘剤、
A3)1種以上の気泡安定剤
を含む放射線硬化型水性組成物A)を提供する。
【0020】
成分A1)80〜99.8重量%、成分A2)0.1〜10重量%および成分A3)0.1〜10重量%が好ましく、上記の量は対応する無水の成分A1)〜A3)に基づき、ここの無水の成分を加えると合計して100重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
適当な放射線硬化型水性結合剤A1)は、例えば、不飽和の放射線硬化性基を含有する分散体、例えば不飽和の放射線硬化性基を含有し、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンポリアクリレートおよび/またはポリアクリレートに基づく分散体などである。これに関して、不飽和の放射線硬化性基は、上記ポリマーの1つに結合して存在してよく、および/または、放射線硬化性モノマーの形態(いわゆる反応性希釈剤)で、上記ポリマーと共に分散体中に存在してよい。
【0022】
成分A1)として用いることができるような放射線硬化型水性結合剤は、例えばBayhydrol(登録商標)UV(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、ドイツ)、Lux(登録商標)(Alberdingk & Boley GmbH、クレーフェルト、ドイツ)、Ucecoat(登録商標)(Cytec Industries Inc.、ドロゲンボス、ベルギー)、Laromer(登録商標)(BASF SE、ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)、Craymul(登録商標)(Cray Valley、パリラデファンス、フランス)および NeoRad(登録商標)(DSM Neoresins、ワールウェイク、オランダ)として市販されている。
【0023】
成分A1)として好ましく用いられる結合剤は、構成成分として以下を含むポリウレタン(メタ)アクリレート(i)に基づく放射線硬化型水性結合剤である:
A1.1)イソシアネートに反応性の少なくとも1個の基およびフリーラジカル重合を受けることができる少なくとも1個の不飽和基を有する1種以上の化合物、
A1.2)A1.1)と異なる1種以上の単量体化合物および/または高分子化合物、
A1.3)イソシアネートに反応性の少なくとも1個の基および親水化作用を有する少なくとも1個の基を有する1種以上の化合物、
A1.4)1種以上の有機ポリイソシアネート、および
A1.5)任意に、A1.1)〜A1.3)と異なる、少なくとも1個のアミン官能基を有する化合物。
【0024】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(i)に加えて、少なくとも1個の放射線硬化性不飽和基を含有する1種以上の反応性希釈剤(ii)が水性分散体中に存在してもよい。本発明に関して、「(メタ)アクリレート」は、対応するアクリレート官能基またはメタクリレート官能基またはこの2つの混合物に関する。
【0025】
構成成分(i)および(ii)の放射線硬化型二重結合の含量が0.3〜6.0、好ましくは0.4〜4.0、特に好ましくは0.5〜3.0mol/分散体の非水性成分のkgの場合、有利である。
【0026】
成分A1.1)は、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテル-エステル(メタ)アクリレート、およびアリルエーテル構造単位を有する不飽和ポリエステル、および15〜300mg KOH/物質のgの範囲のOH価を有するポリエポキシ(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレート基を含有するモノヒドロキシ官能性アルコールからなる群から選択される1種以上の化合物を含む。
【0027】
ポリエステル(メタ)アクリレートのうち、15〜300mg KOH/物質のg、好ましくは60〜200mg KOH/物質のgの範囲のOH価を有するヒドロキシル基を含有するポリエステル(メタ)アクリレートを、成分A1.1)として用いる。合計7群のモノマー成分をヒドロキシ官能性ポリエステル(メタ)アクリレートの製造における成分A1.1)として使用することができる。
【0028】
第1群(a)は、アルカンジオールまたはジオールあるいはこれらの混合物を含有する。該アルカンジオールは、62〜286のg/mol範囲の分子量を有する。該アルカンジオールは、エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールの群から選択することが好ましい。好ましいジオールは、200〜4,000、好ましくは300〜2,000、特に好ましくは450〜200g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、エーテル酸素を含有するジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブチレングリコールなどである。上記に述べたジオールとε-カプロラクトンまたは他のラクトンとの反応生成物も、同様にジオールとして用いることができる。
【0029】
第2群(b)は、92〜254g/molの範囲の分子量を有する3価以上のアルコールおよび/またはこれらのアルコールから出発したポリエーテルを含有する。特に好ましい3価以上のアルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびソルビトールである。特に好ましいポリエーテルは、トリメチロールプロパン1molとエチレンオキシド4molとの反応生成物である。
【0030】
第3群(c)は、モノアルコールを含有する。特に好ましいモノアルコールは、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノールおよびベンジルアルコールの群から選択される。
【0031】
第4群(d)は、104〜600g/molの範囲の分子量を有するジカルボン酸、および/または、それらの無水物を含有する。好ましいジカルボン酸およびそれらの無水物は、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、コハク酸無水物、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、第6群(f)に挙げられるような脂肪酸の水素化ダイマーの群から選択される。
【0032】
第5群(e)は、トリメリット酸またはトリメリット酸無水物を含有する。
【0033】
第6群(f)は、モノカルボン酸、例えば安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2-エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸など、ならびに天然および合成脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イコセン酸、リノール酸、リノレイン酸およびアラキドン酸などを含有する。
【0034】
第7群(g)は、アクリル酸、メタクリル酸および/または二量体アクリル酸を含有する。
【0035】
ヒドロキシル基を含有する適当なポリエステル(メタ)アクリレートA1.1)は、群(a)または(b)から選択される少なくとも1種の成分と、群(d)または(e)から選択される少なくとも1種の成分および群(g)から選択される少なくとも1種の成分の反応生成物を含有する。
【0036】
群(a)から選択される成分は、エタンジオール、1,2-プロパンジオールおよび1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコールの群から選択されるエーテル酸素含有ジオールからなる群から選択することが特に好ましい。群(b)から選択される成分は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはトリメチロールプロパン1molとエチレンオキシド4molとの反応生成物から選択することが好ましい。群(d)および(e)から選択される成分は、フタル酸無水物、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸無水物、グルタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、第6群(f)に挙げられるような脂肪酸の水素化ダイマーおよびトリメリット酸無水物の群から選択することが特に好ましい。群(g)から選択される好ましい成分はアクリル酸である。
【0037】
先行技術より通常知られる分散作用を有する基をこれらのポリエステル(メタ)アクリレート中に任意に組み込んでもよい。したがって、ポリエチレングリコールおよび/またはメトキシポリエチレングリコールを、アルコール成分の一部として使用してよい。アルコールを出発とするポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびそれらのブロックコポリマー、およびこれらのポリグリコールのモノメチルエーテルを、コンパウンドとして使用することができる。500〜1,500g/molの範囲の数平均分子量Mnを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルが特に適当である。
【0038】
エステル化した後で、未だなお遊離の非エステル化カルボキシル基のいくつか、特に(メタ)アクリル酸の非エステル化カルボキシル基のいくつかと、モノエポキシド、ジエポキシドまたはポリエポキシドとを反応させることができる。好ましいポリエポキシドは、モノマー性、オリゴマー性またはポリマー性ビスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールのグリシジルエーテル、または、それらのエトキシ化および/またはプロポキシ化誘導体である。この反応は、特に、それぞれの場合においてOH基がポリエポキシド-酸反応において形成されるため、ポリエステル(メタ)アクリレートのOH価を増加させるために用いることができる。得られた生成物の酸価は、0〜20mg KOH/g、好ましくは0〜10mg KOH/g、特に好ましくは0〜5mg KOH/(物質のg)である。この反応を、例えばトリフェニルホスフィン、チオジグリコール、アンモニウムおよび/またはハロゲン化ホスホニウムおよび/またはジルコニウムまたは錫の化合物、例えばエチルヘキサン酸錫(II)などの触媒で、触媒することが好ましい。
【0039】
ポリエステル(メタ)アクリレートの製造は、DE-A 4 040 290の第3頁25行〜第6頁24行、DE -A 3 316 592の第5頁14行〜第11頁30行およびP. K. T. Oldring(ed.)in Chemistry & Technology of UV & EB Formurations For Coatings、Inks & Paints、第2巻、1991、SITA Technology、Londonの第123〜135頁に記載されている。
【0040】
ヒドロキシル基を含有する、アクリル酸および/またはメタクリル酸とポリエーテル、例えばトリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール ネオペンチルグリコール、ブタンジオールおよびヘキサンジオールなどの任意の所望のヒドロキシ官能性出発分子および/またはアミン官能性出発分子への、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランのホモポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマーとの反応に由来するポリエーテル(メタ)アクリレートも、同様に、成分A1.1)として適当である。
【0041】
ヒドロキシル基を含有し、20〜300mgのKOH/g、好ましくは100〜280mgのKOH/g、特に好ましくは150〜250mgのKOH/gの範囲のOH価を有する、それ自体既知のポリエポキシ(メタ)アクリレート、または、ヒドロキシル基を含有し、20〜300mgのKOH/g、好ましくは40〜150mgのKOH/g、特に好ましくは50〜140mgのKOH/gの範囲のOH価を有するポリウレタン(メタ)アクリレートは、同様に、成分A1.1)として適当である。このような化合物も、同様に、P. K. T. Oldring(ed.)、Chemistry & Technology of UV & EB Formurations For Coatings、Inks & Paints、第2巻、1991、SITA Technology、Londonの第37〜56頁に記載されている。ヒドロキシル基を含有するポリエポキシ(メタ)アクリレートは、特に、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、モノマー性、オリゴマー性またはポリマー性ビスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールのポリエポキシド(グリシジル化合物)またはそれらのエトキシ化および/またはプロポキシ化誘導体との反応生成物に基づく。
【0042】
(メタ)アクリレート基を含有するモノヒドロキシ官能性アルコールも、同様に、成分A1.1)として適当である。このような(メタ)アクリレート基を含有するモノヒドロキシ官能性アルコールは、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン伸長変性物、例えばPemcure(登録商標)12A(Cognis、ドイツ)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、平均してモノヒドロキシ官能性である多価アルコールのジ-、トリ-またはペンタ(メタ)アクリレート、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、エトキシ化、プロポキシ化またはアルコキシ化トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールまたはそれらの工業用グレード混合物である。
【0043】
二重結合を含有する酸と、場合により二重結合を含有するモノマーポリエポキシド化合物との反応から得られるアルコールを、さらに、(メタ)アクリレート基を含有するモノヒドロキシ官能性アルコールとして用いることもできる。好ましい反応生成物は、グリシジル(メタ)アクリレートを有する(メタ)アクリル酸または第3級飽和モノカルボン酸のグリシジルエステルの群から選択される。第3級飽和モノカルボン酸は、例えば、2,2-ジメチル酪酸、エチルメチル酪酸、エチルメチルペンタン酸、エチルメチルヘキサン酸、エチルメチルヘプタン酸および/またはエチルメチルオクタン酸である。
【0044】
1.5〜2.5、好ましくは1.8〜2.2、特に好ましくは1.9〜2.1のOH官能価を有する成分A1.1)に挙げられるようなヒドロキシ官能性アクリレートは、特に好ましい。
【0045】
成分A1.1)に挙げられる化合物を、単独で、または混合物としても用いることができる。
【0046】
成分A1.2)は、それぞれの場合に32〜240g/molの分子量を有するモノマー性のモノオール、ジオールおよび/またはトリオール、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、ダイマー脂肪酸から誘導させたジオール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸(2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピルエステル)、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよび/またはヒマシ油を含む。ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンが好ましい。
【0047】
成分A1.2)は、さらに、オリゴマー性および/またはポリマー性ヒドロキシ官能性化合物を含む。これらのオリゴマー性および/またはポリマー性ヒドロキシ官能性化合物は、例えば、1.0〜3.0の官能価を有し、それぞれの場合において、300〜4,000、好ましくは500〜2,500g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルカーボネートポリオール、C2-、C3-および/またはC4-ポリエーテル、ポリエーテルエステルおよび/またはポリカーボネートポリエステルである。
【0048】
ヒドロキシ官能性ポリエステルアルコールは、モノ-、ジ-およびトリカルボン酸と、成分A1.2)として既に挙げたようなモノマー性ジオールおよびトリオールとに基づくヒドロキシ官能性ポリエステルアルコール、およびラクトンに基づくポリエステルアルコールである。カルボン酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒマシ油酸などの、脂肪酸、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の水素化二量体、およびそれらの工業グレード混合物である。ジカルボン酸およびトリカルボン酸のうち、類似の無水物を用いることもできる。
【0049】
ヒドロキシ官能性ポリエーテル-オールは、例えば環状エーテルを重合することにより、またはアルキレンオキシドと出発分子との反応により得ることができる。
【0050】
ヒドロキシ官能性ポリカーボネートはヒドロキシル末端化ポリカーボネートであり、該ポリカーボネートは、ジオール、ラクトン変性ジオールまたはビスフェノール(例えばビスフェノールA)と、ホスゲンまたはカルボン酸ジエステル(例えばカルボン酸ジフェニルまたはカルボン酸ジメチル)との反応により得ることができる。ヒドロキシ官能性ポリエーテルカーボネートポリオールは、DE-A 102008000478にポリウレタン分散体を構築するために記載されているようなものである。
【0051】
1.8〜2.3、特に好ましくは1.9〜2.1の平均OH官能価を有する、ポリマー性ヒドロキシ官能性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルカーボネートポリオール、C2-、C3-および/またはC4-ポリエーテル、ポリエーテルエステルおよび/またはポリカーボネートポリエステルが成分A1.2)として好ましい。
【0052】
成分A1.3)は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートの群から選択されるポリイソシアネートまたはそのようなポリイソシアネートの混合物を含む。適当なポリイソシアネートは、例えば1,3-シクロヘキサン-ジイソシアネート、1-メチル-2,4-ジイソシアナト-シクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジイソシアナト-シクロヘキサン、テトラメチレン-ジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、α,α,α',α'-テトラメチル-m- または -p-キシリレン-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレン-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン-ジイソシアネートまたはIPDI)、4,4'-ジイソシアナト-diシクロヘキシルメタン、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタン-ジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、錫)(EP-A 928 799)、ビウレット基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基および/またはウレトジオン基を有するこれらの挙げられたポリイソシアネートの同族体またはオリゴマー、およびそれらの混合物である。
【0053】
少なくとも2個の遊離イソシアネート基、少なくとも1個のアロファネート基およびフリーラジカル重合を受けることができアロファネート基を介して結合する少なくとも1個のC=C二重結合を有する化合物、例えばWO-A 2006089935において成分a)として記載されているものも、同様に、成分A1.3)として適当である。
【0054】
1,6-ヘキサメチレン-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン-ジイソシアネートまたはIPDI)および4,4'-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン、1,6-ヘキサメチレン-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン-ジイソシアネートまたはIPDI)およびビウレット基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基および/またはウレトジオン基を有する4,4'-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタンおよびWO-A 2006089935に記載されるようなアロファネート(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物が成分A1.3)として好ましい。
【0055】
成分A1.4)は、イソシアネートに反応性の少なくとも1個の基および親水化作用を有する少なくとも1種の基を有する化合物を含む。
【0056】
親水化作用を有する基は、イオン性基A1.4.1)および/または潜在的イオン性基A.1.4.2)に由来し(例えば塩形成による)イオン性基A.1.4.1)アニオン性の性質であり得るA.1.4.1.1)、例えばスルホニウム基、ホスホニウム基、カルボキシレート基、スルホネート基、ホスホネート基のもの、またはカチオン性の性質であり得るA.1.4.1.2)、例えばアンモニウム基、潜在的イオン性基A.1.4.2)、すなわちイオン性基A.1.4.1)に、例えば塩形成により変換させることができる基、および/またはイソシアネート反応性基により高分子中に導入させることができる非イオン性基A.1.4.3)、例えばポリエーテル基を包含する。イソシアネート反応性基は、好ましくは、ヒドロキシル基およびアミノ基であることが適当である。
【0057】
潜在的イオン性基A.1.4.2)を含有する化合物としては、潜在的イオン性基A.1.4.2.1)を有する化合物、例えばモノヒドロキシカルボン酸およびジヒドロキシカルボン酸、モノアミノカルボン酸およびジアミノカルボン酸、モノヒドロキシスルホン酸およびジヒドロキシスルホン酸、モノアミノスルホン酸およびジアミノスルホン酸、モノヒドロキシホスホン酸およびジヒドロキシホスホン酸、モノアミノホスホン酸およびジアミノホスホン酸および/または潜在的カチオン性基A.1.4.2.2)を有する化合物、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチル-ジエタノールアミンおよびN,N-ジメチルエタノールアミンが挙げられる。
【0058】
潜在的イオン性基A.1.4.2.1)を含有する化合物は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N-(2-アミノエチル)-アラニン、2-(2-アミノ-エチルアミノ)-エタンスルホン酸、エチレンジアミン-プロピルスルホン酸またはエチレンジアミン-ブチルスルホン酸、1,2-または1,3-プロピレンジアミン-エチルスルホン酸、3-(シクロヘキシルアミノ)プロパン-1-スルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リジン、3,5-ジアミノ安息香酸、イソホロンジアミン(1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、IPDA)およびアクリル酸(EP-A 916 647、実施例1)の付加生成物、ブト-2-エン-1,4-ジオールポリエーテルスルホネートへの亜硫酸水素ナトリウム付加物、DE-A 2 446 440、第5〜9頁、式I〜IIIに記載されるような2-ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシ化付加物からなる群から選択されることが好ましい。
【0059】
特に好ましい潜在的イオン性基A.1.4.2)を含有する化合物は、カルボキシル基、スルホン酸基および/または第3級アミノ基を含有する化合物、例えば2-(2-アミノ-エチルアミノ)-エタンスルホン酸、3-(シクロヘキシルアミノ)プロパン-1-スルホン酸、イソホロンジアミンおよびアクリル酸の付加生成物(EP-A 916 647、実施例1)、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミンおよび/またはN,N-ジメチルエタノールアミンである。
【0060】
成分A.1.4)は、潜在的イオン性基を有する化合物としてヒドロキシピバリン酸および/またはジメチロールプロピオン酸を含むことがきわめて好ましい。
【0061】
適当な非イオン性の親水化作用を有する基A.1.4.3)は、例えば少なくとも1個のヒドロキシルまたはアミノ基および少なくとも1個のエチレンオキシド単位である1個以上のアルキレンオキシド単位を含有するポリアルキレンオキシドエーテルである。これらのポリアルキレンオキシドエーテルは、適当な出発分子をアルコキシ化することによるそれ自体既知の方法で達成することができる。
【0062】
適当な出発分子は、例えば、飽和モノアルコール(例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコールなど)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、不飽和アルコール(例えばアリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコールなど)、芳香族アルコール(例えばフェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノールなど)、芳香脂肪族アルコール(例えばベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール)、第2級モノアミン(例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス-(2-エチルヘキシル)-アミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンなど)、ならびに複素環第2級アミン(例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H-ピラゾールなど)である。1個のOH基においてのみアルコキシ化されたトリメチロールプロパンも、同様に適当である。好ましい出発分子は、飽和モノアルコールおよび1個のOH基においてのみアルコキシ化されたトリメチロールプロパンである。ジエチレングリコールモノブチルエーテルを出発分子として使用することが特に好ましい。
【0063】
アルコキシ化反応に適当なアルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、1-ブテンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、アルコキシ化反応において、それらを所望のあらゆる順番で、または混合物でも用いることができる。
【0064】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、純粋なポリエチレンオキシドポリエーテルでも、あるいは、混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルでもいずれでもよく、そのアルキレンオキシド単位は、少なくとも30mol%の範囲、好ましくは少なくとも40mol%の範囲でエチレンオキシド単位を含む。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位および60mol%以下のプロピレンオキシド単位を含有する、単官能基の混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。トリメチロールプロパンにおいて開始され、2のOH官能価を有するポリアルキレンオキシド、例えばTegomer(登録商標)D 3403(Evonik Industries AG、エッセン、ドイツ)および Ymer(登録商標)N 120(Perstorp AB、スウェーデン)も同様に好ましい。
【0065】
成分A.1.4.2.1)について上記に述べた酸は、中和剤、例えばトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、N-エチルモルホリン、LiOH、NaOHおよび/またはKOHとの反応により、対応する塩へと変換される。これに関して、中和度は50〜125%であることが好ましい。中和度は次のように定義される:酸官能性ポリマーの場合、塩基と酸の商として、塩基官能性ポリマーの場合、酸と塩基の商として定義される。中和が100%より大きい場合、酸官能性ポリマーの場合にはポリマー中に存在する酸性基よりも多くの塩基が添加され、塩基官能性ポリマーの場合にはポリマー中に存在する塩基性基よりも多くの酸が添加される。
【0066】
成分A.1.4.2.2)について上記に述べた塩基は、中和剤、例えば無機酸(例えば塩酸、リン酸および/または硫酸など)、および/または有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸および/またはp-トルエンスルホン酸など)との反応により対応する塩へと変換される。これに関して、中和度は50〜125%であることが好ましい。
【0067】
成分A.1.4)について挙げた化合物を混合物で用いることもできる。
【0068】
モノアミンおよびジアミン、および/または、一価または二価アミノアルコールを成分A.1.5)として使用し、本発明のポリウレタンアクリレート(i)の分子量を増加させる。好ましいジアミンは、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの延長は任意に水性媒体中で行われるため、イソシアネート基に対して水よりも反応性のものである。ジアミンを、エチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、ピペラジン、4,4'-ジフェニルメタンジアミン、アミノ-官能性ポリエチレンオキシド、アミノ官能性ポリプロピレンオキシド(Jeffamin(登録商標)Dシリーズ[Huntsman Corp. Europe、ザベンテム、ベルギー]の名称で知られる)およびヒドラジンの群から選択することが特に好ましい。エチレンジアミンがきわめて好ましい。
【0069】
好ましいモノアミンは、ブチルアミン、エチルアミンおよびJeffamin(登録商標)(Huntsman Corp. Europe、ザベンテム、ベルギー)Mシリーズのアミン、アミノ官能性ポリエチレンオキシド、アミノ官能性ポリプロピレンオキシドおよび/またはアミノアルコールの群から選択される。
【0070】
成分(ii)は、フリーラジカル重合を受けることができる少なくとも1個の基(好ましくはアクリレート基およびメタクリレート基)を含有し、好ましくはイソシアネート基またはヒドロキシル基に対して反応性の基を含有しない化合物であると理解される反応性希釈剤を含む。
【0071】
化合物(ii)は、2〜6個の(メタ)アクリレート基を含有することが好ましく、4〜6個を含有する化合物が特に好ましい。
【0072】
特に好ましい化合物(ii)は、常圧下で200℃より高い沸点を有する。
【0073】
反応性希釈剤は、通常、P. K. T. Oldring(editor)、Chemistry & Technology of UV & EB Formurations For Coatings、Inks & Paints、第2巻、第III章:Reactive Diluents for UV & EB Formurations、Wiley and SITA Technology、London(1997)に記載されている。
【0074】
反応性希釈剤は、例えばアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-エチルヘキサノール、ジヒドロジシクロペンタジエノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、3,3,5-トリメチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールおよび(メタ)アクリル酸で完全にエステル化されたソルビトール、および上記アルコールのエトキシ化および/またはプロポキシ化誘導体、ならびに上記化合物の(メタ)アクリル化中に得られる工業グレード混合物である。
【0075】
本発明の水性組成物の製造に好ましいポリウレタン(メタ)アクリレートに基づく水性分散体について、先行技術から既知のあらゆる方法、例えば乳化せん断力、アセトン、プレポリマー混合、溶融乳化、ケチミンおよび固体自然分散法(solid spontaneous dispersing process)またはそれらの派生法を用いることができる。これらの方法は、当業者に既知であり、例えばMethoden der Organischen Chemie、Houben-Weyl、第4版、第E20巻パート2、第1659頁、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1987に記載されている。溶融乳化およびアセトン法が好ましい。アセトン法は特に好ましい。
【0076】
放射線硬化型水性結合剤に加えて、成分(A1)は不飽和の放射線硬化性基を含有しないポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルエーテル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、塩素化ゴム、ポリカーボネート、ポリビニルエステル、塩化ポリビニル、ポリアクリレートおよび/またはポリウレタンに基づく分散体を含んでもよい。したがって、架橋密度の程度を減少させることができ、物理的乾燥に影響を与えることができ、例えば促進させることができ、または弾性化あるいは接着の調節を行うこともできる。
【0077】
放射線硬化型水性結合剤に加えて、成分A1)は、任意にブロック形態で存在する例えばアルコキシシラン基、ヒドロキシル基および/またはイソシアネート基などの官能基を含有するポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリシロキサン、ポリカーボネートおよび/またはポリアクリレートに基づくこれらの分散体を含むこともできる。したがって、2つの異なるメカニズムで硬化させることができる二重硬化系を製造することができる。
【0078】
いわゆる架橋剤も同様に成分A1)二重硬化系に添加することができる。非ブロック化および/またはブロック化ポリイソシアネート、ポリアジリジン、ポリカルボジイミドおよびメラミン樹脂が好ましくは可能である。非ブロック化および/またはブロック化された親水性化ポリイソシアネートが特に好ましい。水性放射線硬化型結合剤A1)の固形分に基づいて、好ましくは20重量%、特に好ましくは10重量%の固形架橋剤が添加される。
【0079】
メラミンまたは尿素基材上におけるアミノ架橋剤樹脂、および/または、ウレタン構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ビウレット構造および/またはアロファネート構造を有する、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネートおよび/またはトルイリデン-ジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートに基づく、任意に親水性化基を含有する、ブロック化ポリイソシアネート基を有するまたは有さないポリイソシアネートも、成分A1)に添加することができる。カルボジイミドまたはポリアジリジンも、さらなる二重硬化系として考えられる。
【0080】
成分A1)の放射線硬化型不飽和基の含量が分散体の非水性成分に基づいて0.3〜6.0、好ましくは0.4〜4.0、特に好ましくは0.5〜3.0mol/kgである場合、有利である。
【0081】
放射線硬化させた遊離の成分A1)のフィルムが、30〜1,000%、好ましくは150〜700%の破断点伸びを有する場合、有利である。これに関して、成分A1)は、放射線硬化型水性結合剤に加えて、上記のような、さらなる結合剤および/または放射線硬化型ではない二重硬化系を任意に含む。
【0082】
放射線硬化させた遊離の成分A1)のフィルムが、2〜40N/mmの引裂強度を有することが有利である。これに関して、放射線硬化型水性結合剤に加えて、成分A1)は、上記のような、さらなる結合剤および/または放射線硬化型ではない二重硬化系を任意に含む。
【0083】
適当な気泡安定剤A2)は、市販されている安定剤であり、例えば水溶性脂肪酸アミド、スルホスクシンアミド、炭化水素スルホネート、炭化水素サルフェートまたは脂肪酸塩であり、ここで、親油性基は12〜24個の炭素原子を含有することが好ましい。
【0084】
好ましい気泡安定剤A2)は、炭化水素基において12〜22個の炭素原子を有するアルカンスルホネートまたはアルカンサルフェート、炭化水素基において14〜24個の炭素原子を有するアルキルベンゾスルホネートまたはアルキルベンゾサルフェート、または12〜24個の炭素原子を有する脂肪酸アミドまたは脂肪酸塩である。
【0085】
上記の脂肪酸アミドは、モノ-(エタノール)-アミンまたはジ-(エタノール)-アミンの脂肪酸アミドであることが好ましい。脂肪酸塩は、例えばアルカリ金属塩、アミン塩または非置換のアンモニウム塩であり得る。
【0086】
このような脂肪酸誘導体は、通常、脂肪酸、例えばラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、ベヘン酸またはアラキジン酸、ココナツ脂肪酸、獣脂脂肪酸、大豆脂肪酸およびそれらの水素添加生成物に基づく。
【0087】
特に好ましい気泡安定剤A2)は、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホスクシンアミドおよびステアリン酸アンモニウムおよびそれらの混合物である。
【0088】
本発明に関して増粘剤A3)は、本発明の発泡体の製造および加工を促進するように、得られたA1)〜A3)の混合物の粘性を調整できるようにする化合物である。適当な増粘剤は、市販されている増粘剤であり、例えば、天然有機増粘剤、例えばデキストリンまたはデンプン、有機変性天然物質、例えばセルロースエーテルまたはヒドロキシエチルセルロース、有機完全合成増粘剤、例えばポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸化合物またはポリウレタン(会合増粘剤)および無機増粘剤、例えばベントナイトまたはシリカである。有機完全合成増粘剤を用いることが好ましい。
【0089】
ラッカー技術において知られる結合剤、補助物質および添加剤、例えば顔料、染料または艶消し剤を添加することができ、または、放射線硬化型水性結合剤A1)と組み合わせることができる。これらは、流動剤、湿潤剤、スリップ剤、顔料、金属エフェクト顔料を含む、フィラー、ナノ粒子、光安定剤粒子、抗黄色化添加剤および表面張力を下げるための添加剤である。
【0090】
成分A2)およびA3)および任意にさらなる添加剤および/または記載した二重硬化系の、放射線硬化型水性結合剤A1)への導入は、せん断力を用いて行われ、所望の任意の順で行うことができる。
【0091】
酸化防止剤および/または光安定剤を、放射線硬化型水性結合剤A1)に導入することもできる。最後に、フィラー、可塑剤、顔料、シリカゾル、アルミニウムまたは粘土の分散体、流動剤またはチキソトロピー剤が存在することもできる。所望の特性パターンおよび本発明の発泡体の用途に応じて、最終生成物は、このようなフィラーを、乾燥物の合計に基づいて70重量%以下で含有することができる。
【0092】
水性組成物A)を発泡させることによる発泡体の製造は、気体を導入することにより、および/または、適当なせん断エネルギー(例えば機械撹拌)の作用下で、または市販されている発泡剤により行うことができる。好ましくは、空気または不活性ガス、例えば窒素、二酸化炭素、希ガス、例えばアルゴン、ネオン、ヘリウムを気体として使用する。発泡体の製造に不活性ガスを使用することは、フリーラジカル重合中の酸素による阻害を抑えることができるため、有利であり得る。
【0093】
工程1)において発泡体の製造を、気体を導入して行うことが好ましく、せん断エネルギーの作用を伴い同時に空気の導入を行うことが特に好ましい。
【0094】
発泡させた組成物は、たいていの種々の表面にまたは型内に、例えば注入、ナイフ-コーティング、ローリング、ブラッシング、スプレーまたは噴霧などの、たいていの種々の方法および手段で適用することができる。押し出し成形法により成形することも可能である。
【0095】
発泡させた材料は、乾燥前に好ましくは200〜1,000g/l、特に好ましくは300〜600g/lのフォーム密度を有するが、本発明により得られた発泡体の密度は、乾燥後、好ましくは50〜600g/lであり、特に好ましくは100〜500g/lである。フォーム密度は、所定量のA)を、所定量の体積の気体を導入し、および/または、せん断エネルギーの作用下で発泡させることにより達成される。泡立てを、例えば台所用ハンドミキサーを用いて、または、工業用ミキサー(例えばHansa工業用ミキサー、モンドミキサー、OakesミキサーおよびStork発泡装置)を用いて、行うことができる。
【0096】
発泡体2)の熱乾燥は、通常25℃〜150℃、好ましくは30℃〜120℃、特に好ましくは40℃〜90℃の温度で行う。乾燥を従来の乾燥機または循環空気オーブン中で行うことができる。マイクロ波(HF)乾燥機または赤外線乾燥機で乾燥を行うことも可能である。発泡体を備えた基材で、加熱した表面上(例えばローラー上)に導くことにより乾燥することも可能である。
【0097】
それらを例えば剥離紙に層として塗布する場合、本発明の発泡体は、乾燥工程2)の後で、通常1mm〜100mm、好ましくは1mm〜50mm、特に好ましくは1mm〜30mmの厚さを有する。
【0098】
本発明の発泡体を、ほとんどの種々の基材に複数の層で適用することもでき、または、型内に複数の層注入することができ、例えば特に高い発泡体厚みを生成させることも可能である。
【0099】
発泡させた本発明の組成物は、さらに、例えば予備塗布(例えばコーティング)することにより、他の担体材料、例えば繊維シート様構造、紙、鉱物基材、木材、金属、プラスチック等と組み合わせて用いることもできる。
【0100】
本発明に関して、繊維シート様構造は、例えば、織物、編物、結合不織布および非結合不織布を意味するとして理解される。繊維シート様構造は、合成繊維、天然繊維および/またはそれらの混合物から作ることができる。他の所望の繊維の繊維製品が、原則として、本発明の方法に適当である。
【0101】
電磁放射のエネルギーが、適当な光開始剤を任意に添加すると共に、(メタ)アクリレート二重結合のフリーラジカル重合に影響を及ぼすのに十分である電磁放射は、工程1)および2)で生じた発泡体の放射線化学により誘導される重合(工程3)に適当である。
【0102】
放射線化学により誘導される重合は、例えばUV線、電子線、x線またはガンマ線などの400nm未満の波長を有する放射線を用いて行うことが好ましい。UV放射は特に好ましく、UV放射での硬化は、光開始剤の存在下で開始される。原則として、単分子タイプ(I)および二分子タイプ(II)の2種類の光開始剤は区別される。タイプ(I)系の適当なものは、芳香族ケトン化合物、例えば第3級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(Michler's ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは上記のタイプの混合物である。タイプ(II)の開始剤、例えばベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノンおよびα-ヒドロキシアルキルフェノンは、さらに適当である。水性放射線硬化型結合剤に容易に導入することができる光開始剤が好ましい。このような製品は、例えば、Irgacure(登録商標)500(ベンゾフェノンおよび(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトンの混合物、Ciba、Lampertheim、ドイツ)、Irgacure(登録商標)819 DW(フェニル-ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、Ciba、Lampertheim、ドイツ)、Esacure(登録商標)KIP EM(オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)-フェニル]-プロパン]、Lamberti、Aldizzate、イタリア)である。これらの化合物の混合物を用いることもできる。
【0103】
極性溶媒、例えばアセトンおよびイソプロパノールを、光開始剤の導入に用いることもできる。
【0104】
工程3)における放射線硬化は、30〜70℃の温度で行うことが有利であり、これは、(メタ)アクリレート基の変換度合いが、より高い温度では増大する傾向があるためである。これは、より良好な耐性特性をもたらし得る。それにも関わらず、特定の発泡体-基材の組合せに対して簡単な予備実験において当業者により硬化条件を最適化するために、放射線硬化中における考えられる基材の熱への敏感性を考慮せねばならない。
【0105】
これに関して、フリーラジカル重合を開始する放射線放出体を適切な位置に固定し、適当な従来装置を用いて、発泡体を、放出体を通り移動させることができ、または、発泡体が硬化の間適切な位置に固定されるように、放射線放出体を従来装置で移動させることができる。例えばチャンバー内で、コートされた基材をチャンバー内に導入し、次いで、照射を所定時間の間、電源を入れて照射し、照射後、基材を再びチャンバーから取り出すことにより、照射を行うこともできる。
【0106】
適切な場合、酸素によるフリーラジカル架橋の阻害を防ぐために、硬化を不活性ガス雰囲気下、すなわち酸素を排除して行う。
【0107】
本発明の発泡体は、放射線硬化前に低い復元力を有するため、放射線硬化の前に非常に容易にエンボス加工することができ、エンボスは、放射線硬化により数秒間で固定することができる。さらに、放射線硬化発泡体は、水およびアルコール性溶液に対する良好な耐性を有することによっても区別される。
【0108】
本発明の発泡体は、放射線硬化後に、例えば研磨、ベロアリング、粗化および/または転がし塗りにより表面に処理することができる。
【0109】
本発明の放射線硬化発泡体は、発泡体により良好な耐化学性を付与するために、または、機械的特性、触覚的特性または視覚的特性を改良するために、任意に、トップコートを備える。このトップコートは、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルエーテル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、塩素化ゴム、ポリカーボネート、ポリビニルエステル、塩化ポリビニル、ポリアクリレートおよび/またはポリウレタンに基づく水性分散体に基づく。例えばメラミンまたは尿素基材上におけるアミノ架橋剤樹脂、および/または、ウレタン構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ビウレット構造および/またはアロファネート構造を有する、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネートおよび/またはトルイリデン-ジイソシアネートから選択される、任意に親水性化基を含有する、ブロック化ポリイソシアネート基を有するまたは有さないポリイソシアネートなどの、架橋剤をこれらの結合剤に添加することができる。カルボジイミドまたはポリアジリジンもさらなる二重硬化系として考えられる。トップコートは放射線硬化型水性結合剤に基づくことが好ましく、メラミン架橋型トップコートまたはポリイソシアネート架橋型トップコートと比較して、より低温で、数秒で架橋する。適当な放射線硬化型水性結合剤は、例えば不飽和の放射線硬化性基を含有する分散体であり、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンポリアクリレートおよび/またはポリアクリレートに基づく不飽和放射線硬化性基を含有する分散体である。これに関して、不飽和の放射線硬化性基は、上記のポリマーの1つに結合して存在するか、および/または、放射線硬化性モノマー、いわゆる反応性希釈剤の形態で、上記ポリマーと共に分散体中に存在することができる。
【0110】
本発明は、本発明の発泡体でコートされた基材も提供する。きわめて優れた使用特性に基づいて、本発明の組成物および本発明の組成物から製造した発泡体は、特に、コーティングまたは上着、擬皮品目、靴、家具被覆、自動車内部装備品およびスポーツ用品などの製造に適当である。
【実施例】
【0111】
NCO含量は、それぞれの場合に、DIN 53185にしたがい滴定法で観察した。
ポリウレタン分散体の固形分は、DIN 53216にしたがい全ての非揮発成分を留去後に重量測定法で測定した。
平均粒径は、レーザー相関分光で測定した。
フロー時間は、DIN 53211にしたがい4mmのDINカップを用いて測定した。
RTは23℃に相当する。
【0112】
1)放射線硬化型水性ポリウレタンアクリレート分散体、成分A1の製造
成分A1.1)ポリエポキシアクリレート AgiSyn(登録商標)1010(AGI Corp.、台北、台湾)76.7部、成分A1.2)ポリカーボネートジオール Desmophen(登録商標)C 1200 HN(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、ドイツ、609.1部、成分A1.2)ネオペンチルグリコール5.2部、成分A1.3)ジメチロールプロピオン酸45.2部、成分A.4)4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン182.1部、成分A1.4)1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン188.2部、およびジブチル錫ジラウレート0.2部をアセトン350部中に溶解させ、溶液を2.1重量%のNCO含量になるまで60℃で撹拌しながら反応させた。続いて、エチルジイソプロピルアミン36.0部を添加し、撹拌して中和した。続いて透明の溶液を、撹拌しながら水1,600部に入れた。その後、成分A1.5)エチレンジアミン10.6部および水100部の混合物を、撹拌しながら分散体に添加した。わずかな真空下で、分散体からアセトンを留去した。固形分39重量%、フロー時間19秒、平均粒径5nmおよびpH8.4を有する放射線硬化型水性ポリウレタンアクリレート分散体1)が得られた。
【0113】
2)放射線硬化型水性ポリウレタンアクリレート分散体、成分A1の製造
成分A1.1)2-ヒドロキシエチルアクリレート116.0部、成分A1.4)1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン222.2部、およびジブチル錫ジラウレート0.003部を、アセトン84.5部に溶解させ、溶液を60℃で撹拌しながらNCO含量が8.9重量%になるまで反応させた。成分A1.2)ポリカーボネートジオール Desmophen(登録商標)C 2200(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、ドイツ)560部、成分A1.2)ネオペンチルグリコール5.2部、成分A1.3)単官能性ポリエーテル LB 25(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、ドイツ)22.0部、成分A1.3)ジメチロールプロピオン酸19.6部、成分A1.4)4.4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン170.3部、ジブチル錫ジラウレート0.5部およびアセトン730部を、このようにして得られた溶液に添加し、混合物を60℃で撹拌しながら、NCO含量が1.5重量%になるまで反応させた。その後、39mlの水に溶解させたトリエチルアミン14.2部および成分A1.5)エチレンジアミン13.0部を撹拌しながら添加して中和した。透明な溶液中に撹拌しながら水1,350部を入れた。その後、わずかな真空下で、分散体からアセトンを留去した。形分39重量%、フロー時間13秒、平均粒径146nmおよびpH8.6を有する放射線硬化型水性ポリウレタン分散体2)が得られた。
【0114】
3)成分A1放射線硬化型水性ポリウレタンアクリレート分散体の製造
成分A1)ポリエポキシアクリレート AgiSyn(登録商標)1010(AGI Corp.、台北、台湾)46.7部、成分A1.2)フタル酸無水物およびヘキサンジオールに基づき56のOH価を有するポリエステルジオール625.0部、成分A1.2)ヘキサンジオール5.9 部、成分A1.3)ジメチロールプロピオン酸40.2部、成分A1.4)ヘキサメチレン-ジイソシアネート75.6部、成分A1.4)イソシアネート含有アロファネートアクリレート Laromer(登録商標)LR 9000(BASF SE、ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)153.2部、およびジブチル錫ジラウレート0.4部をアセトン700部に溶解させ、溶液を60℃で撹拌しながらNCO含量が0.7重量%になるまで反応させた。その後、39mlの水に溶解させたトリエチルアミン27.3部および成分A1.5)エチレンジアミン6.9部を撹拌しながら添加して中和した。透明な溶液中に撹拌しながら水1,700部を入れた。その後、わずかな真空下で、分散体からアセトンを留去した。固形分38重量%、フロー時間180秒、平均粒径157nmおよびpH8.07を有する放射線硬化型水性ポリウレタン分散体3)が得られた。
【0115】
4)成分A1、放射線硬化型水性ポリウレタンアクリレート分散体、
アニオン性親水性化させた、ポリエステルアクリレートに基づく、Bayhydrol(登録商標)UV XP 2736(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、ドイツ)を放射線硬化型水性ポリウレタン分散体4)として供した。
【0116】
5)放射線硬化型でない水性ポリウレタン分散体(比較)
アニオン性親水性化させた、Impranil(登録商標)DLC-F(Bayer MaterialScience AG、レーフェルクーゼン、ドイツ)を放射線硬化型でない水性ポリウレタン分散体5)として供した。
【0117】
【表1】

【0118】
放射線硬化型水性ポリウレタンアクリレート分散体1)〜4)から、層厚300μmを有する遊離のフィルムを製造した。このために、フィルムを50℃で10分間乾燥後、500mJ/cmで放射線硬化を施した。遊離のフィルムに引張試験を施した。
・引張試験機 Zwicki 2,5KN(Zwick)
・試験基準:DIN EN ISO 527-1-3
・試験気候:標準気候23℃、50%相対湿度
・再調整圧縮空気クランプを備えるクランプ装置
・クランプ長:40mm
・初期応力:0.02N/mm
・試験速度:200mm/mm
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
本発明の発泡体の製造
湿潤剤、光開始剤および気泡安定剤を、表3にしたがい、せん断力を用いてUV分散体中に導入した。次いで、台所用ハンドミキサーを用いて泡立てながら空気で発泡を行った。全ての発泡体は500g/lの最終フォーム密度を有した。最後に、増粘剤を撹拌添加した。このようにして製造した発泡体は均質な気泡分布を有した。
【0122】
発泡体を1,000μmの厚みで、ボックスナイフを用いて剥離紙へ塗布し、室温で60分で乾燥後、80℃で8分間、乾燥機中(循環空気なし)で乾燥させた。その後、発泡体に750mJ/cmで放射線硬化を施した。
【0123】
【表4】

【0124】
熱硬化型発泡体の製造(比較)
湿潤剤および気泡安定剤を、表4にしたがい、せん断力を用いて放射線硬化型でない水性ポリウレタン分散体5)中に導入した。次いで、台所用ハンドミキサーを用いて泡立てながら空気で発泡を行った。全ての発泡体は500g/lの最終フォーム密度を有した。最後に、増粘剤を撹拌添加した。このようにして製造した発泡体は均質な気泡分布を有した。
【0125】
発泡体を1,000μmの厚みで、ボックスナイフを用いて剥離紙へ塗布し、室温で60分で乾燥後、120℃で8分間、乾燥機中(循環空気なし)で乾燥させた。120℃未満の温度では、発泡体がより低い温度では十分な力学的安定性を有さず、圧力下で固まるため、不可能であった。
【0126】
【表5】

【0127】
表2は、ポリウレタンアクリレート分散体1)〜4)が、非常に柔軟性のある放射線硬化フィルムを与えたことを示す。このような柔軟性は、例えば繊維分野において必要とされるような、最終的に柔軟性の放射線硬化発泡体を得るために必要である。
【0128】
本発明の発泡体1)〜4)は低い復元力を有し(表5)、すなわち、80℃で乾燥後、放射線硬化前にそれらは非常にエンボス加工しやすかった。放射線硬化後、復元力は顕著に増大した。放射線硬化発泡体において、跡が実際につけられたが、負荷をかけた後、それらは、再び出発形態をとった。このことは、放射線硬化前に本発明により製造した発泡体にエンボス加工を施すことができ、これを放射線硬化によって固定することができることを示す。
【0129】
比較例5)は、熱乾燥後にすでに非常に高い復元力を有し、すなわち機械的エンボス加工はもはや不可能である。
【0130】
水またはエタノール/水、50%濃度に対する敏感性は、放射線硬化により決定的に減少した。発泡体2)は、エタノール/水50%濃度に対して完全に無反応性であることがさらにわかり、アルコール家庭用洗浄組成物にも耐えることができるだろう。実施例は、本発明の発泡体において、放射線硬化を用いる架橋がうまく進んだことを示す。同時に、これは顕著な結果である、発泡体の表面積が非常に大きいために、フリーラジカル重合の酸素による著しい阻害が生じること、1,000μmの層厚のために、発泡体の深部での架橋が著しく減少することが予想されたが、しかしながら、この場合には見られなかった。120℃で乾燥させた実験例5)の発泡体と比較して、本発明の発泡体は放射線硬化後に比較的良好な耐性を達成したが、それらはたった80℃で乾燥された。したがって、本発明の発泡体は、感熱性編織布、例えばElastan(登録商標)に対して、直接刷毛塗り法において適用することが適当である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化発泡体の製造方法であって、該放射線硬化発泡体は、
1)第1工程において、水性組成物A)を発泡させ、
続いて、
2)工程1)において製造した発泡体を熱乾燥させ、
3)該発泡体を化学線により硬化させるか、
または、
1)第1工程において、水性組成物A)を発泡させ、
続いて、
2)工程1)において製造した発泡体を化学線により硬化させ、
3)該発泡体を熱乾燥させる
ことによって製造され、ここで、工程2)および3)は所望の回数繰り返すことができることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
水性組成物A)は、
A1)1種以上の放射線硬化型水性結合剤、
A2)1種以上の増粘剤、
A3)1種以上の気泡安定剤
の成分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項3】
成分A1)は、ポリウレタン(メタ)アクリレート(i)を含むことを特徴とする、請求項2に記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項4】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(i)は、
A1.1)イソシアネートに反応性の少なくとも1個の基およびフリーラジカル重合を受けることができる少なくとも1個の不飽和基を有する1種以上の化合物、
A1.2)A1.1)と異なる、1種以上のモノマーおよび/またはポリマー化合物、
A1.3)イソシアネートに反応性の少なくとも1個の基および親水化作用を有する少なくとも1個の基を有する1種以上の化合物、および
A1.4)1種以上の有機ポリイソシアネート
を含有する、請求項3に記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項5】
A1.1)〜A1.3)と異なる、少なくとも1個のアミン官能基を有する成分A1.5)が存在することを特徴とする、請求項4に記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項6】
成分A1)は、ポリウレタン(メタ)アクリレート(i)および成分(ii)フリーラジカル重合を受けることができる少なくとも1個の基を有する反応性希釈剤を含むことを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項7】
成分A1)の放射線硬化型不飽和基の含量は、成分A1)の非水溶性成分の重量部の合計に基づいて0.3〜6.0mol/kgであることを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項8】
気体の導入を用いて、および/または、せん断エネルギーの作用により発泡を行うことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項9】
発泡材料は、乾燥前に200〜1,000g/lのフォーム密度を有し、乾燥後に50〜600g/lのフォーム密度を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項10】
熱乾燥(工程2または3)を25〜150℃で行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の放射線硬化発泡体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法で製造した放射線硬化発泡体。
【請求項12】
A1)1種以上の放射線硬化型水性結合剤、
A2)1種以上の増粘剤、
A3)1種以上の気泡安定剤
の成分を含む、放射線硬化型水性組成物A)。
【請求項13】
A1.1)イソシアネートに反応性の少なくとも1個の基およびフリーラジカル重合を受けることができる少なくとも1個の不飽和基を有する1種以上の化合物、
A1.2)A1.1)と異なる、1種以上のモノマーおよび/またはポリマー化合物、
A1.3)イソシアネートに反応性の少なくとも1個の基および親水化作用を有する少なくとも1個の基を有する1種以上の化合物、および
A1.4)1種以上の有機ポリイソシアネート
を含む少なくとも1種のポリウレタン(メタ)アクリレート(i)を成分A1)として含むことを特徴とする、請求項12に記載の放射線硬化型水性組成物A)。
【請求項14】
請求項11に記載の放射線硬化発泡体の基材をコーティングするための使用。
【請求項15】
請求項11に記載の放射線硬化発泡体でコートされた基材。

【公表番号】特表2013−521390(P2013−521390A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556458(P2012−556458)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053288
【国際公開番号】WO2011/110487
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】