説明

放射線硬化型粘着剤組成物及び粘着シート

【課題】少ない突上により、良好に半導体チップ等をピックアップすることができるダイシング用粘着シート用の粘着剤組成物を提供することができる。また、これを用いた粘着シートを提供することができる。
【解決手段】少なくとも、官能基aを有するモノマーA、炭素数10以上17以下のアルキル基を有するメタクリレートモノマーからなるモノマーB及び官能基aと反応しうる官能基cと重合性炭素二重結合基との双方の基を有するモノマーCに由来する構造単位を有するベースポリマーを主たる原料として含有し、該ベースポリマーは、前記モノマーBが、主鎖を構成する全モノマーの50重量%以上の割合で、モノマーAとともに主鎖を構成し、かつ前記モノマーAにおける官能基aの一部が前記モノマーCにおける官能基cと反応して結合することにより、側鎖に重合性炭素二重結合基を有してなる放射線硬化型粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化型粘着剤組成物は、強粘着性を有する状態から、放射線を照射することにより硬化することから、粘着性を低減でき、簡便に剥離することができる。
従って、強粘着性と軽剥離性との相反する特性を必要とする用途において、好適に使用されている。例えば、このような放射線硬化型粘着剤組成物によって形成された粘着剤層を備える粘着シートを被着体の表面に貼着し、その表面を保護又は固定するとともに、その必要がなくなった際に、被着体に貼着された粘着シートに対して放射線を照射することで、粘着剤が硬化することにより粘着性を低減し、粘着シートを軽剥離で簡便に剥離することが可能となる。
特に、半導体ウェハ等のダイシング用粘着シートとしては、ダイシングの際には半導体ウェハが剥離しない程度の粘着力及び保持に利用されるダイシングリングから脱落しない程度の粘着力を必要とし、その一方、ダイシング後のピックアップの際には、容易に剥離でき、かつ、半導体ウェハを破損しない程度の低い粘着力で容易に剥離することが要求されている。
そのために、種々の粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
また、ダイシング用粘着シートは、半導体ウェハに対し糊残りを生じない等、低汚染性を有することも要求されており、これらの特性の両立を試みた再剥離シートが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0003】
通常、ダイシング後のピックアップは、各半導体チップ間の間隔を広げるエキスパンド工程が行われた後に実施される。エキスパンド工程は、ダイシング用粘着シートから半導体チップを容易に剥離できる状態にする工程である。また、この工程は、ダイシング用粘着シートをある程度張った状態にし、ピックアップする半導体チップ下部のダイシング用粘着シートを、点状又は線状に持ち上げる(通常、突上げと呼ばれる)ことにより行われる。そして、近年においては、半導体チップを、このように剥離容易な状態にした後、上部側から真空吸着してピックアップする方式が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−019607号公報
【特許文献2】特開2007−220694号公報
【特許文献3】特開2001−234136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなことから、半導体製品の軽薄化、高集積化に伴い、半導体ウェハが薄型化する中、ピックアップ工程での粘着シートの突上に起因する変形により、半導体ウェハが破損するというリスクが増大している。
従って、わずかな突上げによって、チップに損傷をもたらさない安全なピックアップを実現し得る手法が求められている。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、少ない突上げにより、良好に半導体チップ等をピックアップすることができるダイシング用粘着シートに使用される放射線硬化型粘着剤組成物及び粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は、
少なくとも、
官能基aを有するモノマーA、
炭素数10以上17以下のアルキル基を有するメタクリレートモノマーからなるモノマーB及び
官能基aと反応しうる官能基cと重合性炭素二重結合基との双方の基を有するモノマーCに由来する構造単位を有するベースポリマーを主たる原料として含有し、
該ベースポリマーは、
前記モノマーBが、主鎖を構成する全モノマーの50重量%以上の割合で、モノマーAとともに主鎖を構成し、かつ
前記モノマーAにおける官能基aの一部が前記モノマーCにおける官能基cと反応して結合することにより、側鎖に重合性炭素二重結合基を有してなることを特徴とする。
【0007】
このような放射線硬化型粘着剤組成物では、以下の1以上の要件をさらに備えることが好ましい。
モノマーAとモノマーBとに由来する構造単位を主鎖として有するポリマーが、260K以下のFoxの式から算出される計算ガラス転移温度を有する、
官能基aがヒドロキシル基であり、かつ官能基cがイソシアネート基である、
モノマーCが、メタクリル酸2−イソシアナトエチル又は/及びアクリル酸2−イソシアナトエチルである、
モノマーAが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び6−ヒドロキシヘキシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである、
モノマーBが、ドデシルメタクリレート及びトリデシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである、
モノマーBが、ドデシルメタクリレートを含む、
モノマーCに由来する側鎖に導入された重合性炭素二重結合の数が、ベースポリマー全側鎖数に対し5%以上20%以下である。
【0008】
また、本発明の粘着シートは、上述した放射線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は、少ない突上により、良好に半導体チップ等をピックアップすることができるダイシング用粘着シート用の粘着剤組成物を提供することができる。また、これを用いた粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は、少なくとも、モノマーA〜モノマーCの3種のモノマーに由来する構造単位を含むベースポリマーを主たる原料とする。ここで、「主たる原料とする」とは、本発明の放射線硬化型粘着剤組成物を構成する原料において、最多重量で含有されていることを意味し、原料の全重量に対して50%以上で含有されていることが好ましい。
モノマーA:官能基aを有するモノマー。
モノマーB:炭素数10以上17以下のアルキル基を有するメタクリレートモノマー。
モノマーC:官能基aと反応しうる官能基cと重合性炭素二重結合基との双方の基を有するモノマー。
【0011】
このベースポリマーは、側鎖に重合性炭素二重結合を有するポリマーであるが、これは、モノマーBが、主鎖を構成する全モノマーの50重量%以上の割合で、モノマーAとともに主鎖を構成し、かつ、モノマーAにおける官能基aの一部がモノマーCにおける官能基cと反応して結合していることによって導かれる。
【0012】
つまり、このようなベースポリマーを合成する場合、まず、モノマーAとモノマーBとを共重合して中間重合物を得る。この際、モノマーA及びモノマーB以外の共重合性モノマー(ただし、モノマーCでないものが適している)を、ポリマーの物性の調整等のために添加してもよい。
中間重合物の内、モノマーBに由来する構造単位は、全モノマーの50重量%以上の割合であることが適している。言い換えると、モノマーAとモノマーBとを重合させる際、モノマーAが占める重量割合をWA(%)、モノマーBが占める重量割合をWB(%)としたとき、式〔1〕を満たすことが適している。なお、モノマーA及びモノマーBが、複数種のモノマーを含む場合は、重量割合WA及びWBは、それぞれ、モノマーA及びモノマーBの総量を意味する。
WB/(1−WA)≧50% 〔1〕
【0013】
次いで、中間重合物に、モノマーCを加え、官能基aと官能基cとを反応させることにより、重合性炭素二重結合基を、中間重合物の側鎖に付加させ、ベースポリマーを得る。この際、官能基aと官能基cとの組合せにより、反応を促進させるための触媒を添加してもよいし、必要であれば熱などのエネルギーを外部から加えてもよい。
【0014】
モノマーAは、官能基aを有し、モノマーBと共重合可能である限り、特にその種類は限定されない。
官能基aとしては、例えば、カルボキシル基、エポキシ基(特に、グリシジル基)、アジリジル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシル基、イソシアネート基等が好ましく、ヒドロキシル基であることがより好ましい。
官能基aがカルボシキル基である場合、モノマーAとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
官能基aがグリシジル基である場合、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等が挙げられる。
官能基aがヒドロキシル基である場合、モノマーAとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテル等のエーテル系化合物が挙げられる。なかでも、後述するメタクリレート系モノマーであるモノマーBとの共重合性及び材料入手の容易性等の観点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び6−ヒドロキシヘキシルメタクリレートが好ましい。
官能基aがイソシアネート基である場合、モノマーAとしては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、アクリロイルイソシアネート、アクリル酸2−イソシアナトエチル、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、モノマーAは、上述した官能基によって、水素結合に代表される分子間力が側鎖同士で働き、中間重合物の取り扱いが困難となる傾向があることから、中間重合物全体に対し15重量%以下であることが好ましい。
【0015】
本願明細書においては、用語「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの双方を含む意味である。
【0016】
モノマーBは、炭素数10以上17以下のアルキル基を有するメタクリレートモノマーである。
アルキル基の炭素数を10以上とすることにより、放射線照射後の粘着力を低く抑えることができる。これは、主鎖近傍のエステル結合が有する極性が、被着体に電気的に引き合う影響を受けにくくするためと推察される。
一方、アクリレートモノマーでは、側鎖の炭素数が8以上においては、炭素数の増加伴い、ガラス転移温度が上昇する。これは、側鎖による結晶性によるものと推察される。その結果、放射線照射前の粘着性が低下し、放射線照射前の保持性を損なうこととなる。
メタクリレートモノマーでは、側鎖の炭素数が10以上であってもガラス転移温度が低く、放射線照射前の保持性を損なうことはなく、側鎖の炭素数を増加させ、主鎖近傍のエステル結合の影響を抑制することが可能である。しかし、メタクリレートモノマーであっても、側鎖の炭素数が18以上では、ガラス転移温度が上昇し、放射線照射前の保持性を低下させることがある。
【0017】
このようなアルキル基としては、例えば、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、1−メチルノニル、1−エチルデシル、1,2−ジメチルオクチル、1,2−ジエチルヘキシル等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
従って、モノマーBとしては、例えば、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。なかでも、メタクリル酸ドデシル又はメタクリル酸トリデシルが好ましく、メタクリル酸ドデシルがより好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなモノマーを選択することにより、後述する計算ガラス転移温度を260K以下に制御しやすくなり、ひいては放射線照射前の粘着力を増大させることができる。
【0018】
本発明の粘着剤組成物では、アルキル基の炭素数が10以上17以下と、比較的長いメタクリレートモノマーに由来するポリマーを使用することから、放射線照射後の粘着力を低減させることができる。その結果、より少ない突上げにより、良好に半導体チップ等をピックアップすることができる。
なお、炭素数10以上17以下のアルキル基を有するアクリレートモノマーを使用することによっても放射線照射後の粘着力を低減させることができるが、側鎖の炭素数の大きいアクリレートモノマーから生成されるポリマーは側鎖のアルキル基による結晶性が顕著になる。その結果、ガラス転移温度が高くなり、放射線照射前の常温での粘着性が低くなる。
従って、放射線照射前の粘着性を確保し、放射線硬化型粘着剤組成物として好適なものとするために、炭素数10以上17以下のアルキル基を有するメタクリレートモノマーを使用することが特に好ましい。
【0019】
モノマーCは、官能基aと反応しうる官能基cと、重合性炭素二重結合との双方を含む化合物であれば、いかなるものでも使用することができる。官能基aと反応しうる官能基としては、上述した官能基aと同様のものが挙げられる。
官能基aと官能基cとの組合せとしては、カルボキシル基とエポキシ基(特に、グリシジル基)、カルボキシル基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好ましい。この組合せを選択することにより、官能基cと重合性炭素二重結合基との双方を有するモノマーCを、モノマーAにおける官能基aと反応させるために、高温エネルギーを使用する必要がなくなり、高温エネルギー負荷に起因する共重合物の変性などを抑制することができる。
なお、これらの官能基の組み合わせでは、いずれが官能基aであっても、官能基cであってもよい。中間重合物の官能基aがヒドロキシル基、モノマーCの官能基cがイソシアネート基であることが好ましい。
【0020】
従って、官能基cがイソシアネート基である場合、モノマーCとしては、モノマーAにおけるものと同様のものが挙げられ、なかでも、メタクリル酸2−イソシアナトエチル又は/及びアクリル酸2−イソシアナトエチルが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
モノマーAとモノマーBとに由来する構造単位を主鎖として有するポリマー、つまり、モノマーAにおける官能基aの一部がモノマーCにおける官能基cと反応して結合したものでなく、モノマーA及びモノマーBのみ(ただし、上述したように、モノマーA及びモノマーB以外の共重合性モノマーが用いられてもよい)に由来する構造単位を有するポリマー、言い換えると、上述した中間重合物は、260K以下のFoxの式から算出される計算ガラス転移温度を有することが好ましい。この計算ガラス転移温度は、モノマーA及びモノマーB(任意にそれ以外の共重合モノマー)の種類及び量等を選択することにより調整することができる。
【0022】
計算ガラス転移温度(計算Tg)は、Foxの式〔2〕から算出することができる。
1/計算Tg=W1/Tg(1)+W2/Tg(2)+・・・+Wn/Tn 〔2〕
ここで、W1、W2、・・・Wnは共重合体を構成する成分(1)、成分(2)、・・・成分(n)のポリマーに対する各重量分率を意味し、Tg(1)、Tg(2)、・・・Tg(n)は、成分(1)、成分(2)、・・・成分(n)のホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度)を表す。
なお、ホモポリマーのガラス転移温度は、各種文献、カタログなどから公知であり、例えば、J. Brandup, E. H. Immergut,E. A. Grulke: Polymer Handbook:JOHNWILEY & SONS, INCに記載されている。各種文献に数値が無いモノマーについては、一般的な熱分析、例えば示差熱分析や動的粘弾性測定法等により測定した値を採用することができる。
【0023】
計算ガラス転移温度をこの範囲に設定することで、放射線照射前の粘着性を高くすることができ、本発明の放射線硬化型粘着剤組成物を粘着剤層として備える粘着シートをダイシング用シートとして使用した際に、半導体ウェハの剥離を防止することができる。また、半導体ウェハのダイシングフレームへの密着性を増大させることができ、意図しないフレームからの剥離を防止することができる。
【0024】
モノマーCに由来する側鎖に導入された重合性炭素二重結合の数は、ベースポリマー全側鎖数に対し5%以上20%以下であることが適しており、7%以上18%以下が好ましく、7%以上15%以下がさらに好ましい。
ベースポリマーにおいて、側鎖に導入される重合性炭素二重結合の数は、モノマーCの添加割合によって制御することができる。この重合性炭素二重結合を5%以上とすることにより、放射線照射によって適当な硬化性を付与することができる。また、20%以下とすることにより、重合性炭素二重結合基の粘着剤組成物中での存在量を適切な範囲として、意図しない硬化を防止することができ、放射線照射前の粘着性の喪失、急激な粘着力の低下等を防止することができる。従って、本発明の放射線硬化型粘着剤組成物を粘着剤層として備える粘着シートをダイシング用シートとして使用した際に、半導体ウェハの意図しない剥離を防止することができるとともに、放射線照射後におけるピックアップ性を向上させることができる。
【0025】
本発明においては、上記から、ヒドロキシル基含有メタクリレートモノマーである2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレートより選ばれる1種又は複数種のモノマーを共重合モノマーとして有することが好ましい。そして、この共重合モノマー以外の共重合モノマーの内、ドデシルメタクリレート又は/及びトリデシルメタクリレートが占める割合が50wt%以上であるメタクリレート含有共重合物とすることが好ましい。さらに、メタクリル酸2−イソシアナトエチル又は/及びアクリル酸2−イソシアナトエチルを、ヒドロキシル基含有メタクリレートモノマーのヒドロキシル基の少なくとも一部に反応させて得られるなるポリマーを、主たる原料とする放射線光型粘着剤組成物が好ましい。
【0026】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物におけるベースポリマーは、モノマーA及びモノマーB以外に、主鎖を構成する構造単位として、共重合可能なモノマー(以下、「共重合可能モノマー」と記載することがある)に由来する構造単位を含んでいてもよい。つまり、上述した中間重合物を合成する際に、モノマーC以外の共重合可能なモノマーを用いてもよい。例えば、このようなモノマーは、凝集力、耐熱性、ガラス転移温度、放射線照射前の粘着性等の改質に寄与する。
共重合可能モノマーとしては、飽和炭化水素の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。飽和炭化水素の炭素数は、例えば、1〜30程度が挙げられ、1〜18程度が好ましく、4〜18程度がより好ましい。
飽和炭化水素としては、アルキル基、シクロアルキル基又はこれらが組み合わせられた基が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、オクタデシル等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0027】
共重合可能モノマーとしては、さらに、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;
スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
アクリルアミド、アクリロニトリル等であってもよい。
なかでも、メタクリレート系モノマーであるモノマーBとの共重合性の観点から、メタクリレート系モノマーであることが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共重合可能なモノマーの使用量は、主鎖を構成する全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。ここで、全モノマー成分とは、主鎖を構成するモノマー成分を意味する。
なお、共重合可能なモノマーに由来する構造単位は、後述するように側鎖に含まれていてもよい。
【0028】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物におけるベースポリマーは、架橋させることを目的に、共重合用モノマー成分としての多官能性モノマー等を必要に応じて用いることができる。この多官能モノマーに由来する構造単位は、主鎖及び側鎖のいずれ又は双方に導入されていてもよい。
このような多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、主鎖を構成する全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。ここで、全モノマー成分とは、主鎖を構成するモノマー成分を意味する。
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物におけるベースポリマーは、上述したように、まず、少なくともモノマーA及びモノマーBの2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。次いで、モノマーCを、得られたポリマーに対して付加重合させることが好ましい。これによって、効果的にモノマーCをベースポリマーの側鎖に導入することができる。
【0029】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物を粘着剤層として備える粘着シートをダイシング用シートとして使用する場合、粘着剤層は、半導体ウェハ等に対する汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいことが好ましい。従って、ベースポリマーの重量平均分子量は、30万程度以上が好ましく、50万〜300万程度がより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算値を意味する。
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物には、ベースポリマーの重量平均分子量を高めるため、外部架橋剤を用いてもよい。外部架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー等のいわゆる架橋剤が挙げられる。これらの外部架橋剤は、ベースポリマーに添加することにより、架橋させることができる。
外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、また、粘着剤としての使用用途によって適宜調整することができる。一般的には、ベースポリマー100重量部に対して0.01〜10重量部配合することが好ましい。
【0030】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物には、ベースポリマー以外に、放射線照射前後の粘着性を調整する観点から、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマー成分等を添加してもよい。放射線硬化性のモノマー又はオリゴマー成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;エステルアクリレートオリゴマー;2−プロペニル−3−ブテニルシアヌレート;イソシアヌレート、イソシアヌレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この放射線硬化性のモノマー又はオリゴマー成分の配合量は特に制限されるものではないが、ピックアップ時、つまり放射線照射後の被加工物に対する引き剥がし粘着力を低下させることを考慮すると、粘着剤組成物中に1〜50重量%を配合するのが好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。なお、放射線硬化性のモノマー成分又はオリゴマー成分の粘度は、粘着剤の用途等によって適宜調整することが好ましい。
【0031】
粘着剤層には、光重合開始剤として、紫外線を照射することにより励起、活性化してラジカルを生成し、例えば、上述した放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーをラジカル重合により硬化させる作用を有するものを添加することが好ましい。これによって、後述する粘着シートの貼着時には、モノマー又はオリゴマー成分により粘着剤に塑性流動性が付与されるため、貼着が容易になるとともに、粘着シートの剥離時に、放射線を照射して粘着剤層を硬化させ、粘着力を有効に低減させることができる。
【0032】
光重合開始剤としては、例えば、
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のべンゾインアルキルエーテル類;
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン類の芳香族ケトン類;
ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;
ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部程度である。
【0033】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物におけるベースポリマーは、必要に応じて、粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、重合開始剤等の従来公知の各種の添加剤を含有させてもよい。
なお、本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は、放射線を照射してその架橋度を増大させることにより、粘着力を容易に低下させることができる。放射線としては、例えば、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線等の種々のものが挙げられ、なかでも、取り扱いの容易性などの観点から、紫外線、電子線等が好ましく、特に紫外線がより好ましい。このために、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ブラックライトなどを用いることができる。硬化させるための放射線の照射量は、特に限定されるものではなく、例えば、50mJ/cm程度以上が挙げられる。
【0034】
本発明の粘着シートは、上述した放射線硬化型粘着剤組成物を粘着剤層備える。通常、粘着剤層は、基材層の一方に配置されて形成される。また、粘着剤層の基材層と反対側には、セパレーターが積層されていてもよい。ただし、これらの層は必ずしも1層のみならず、例えば、基材層の両面に粘着剤層を備えた態様、基材層と粘着剤層との間に中間層、プライマー層などがある態様、基材層の背面に帯電防止層、背面軽剥離化処理層、摩擦低減層、易接着処理層がある態様などであってもよい。
粘着シートは、シート状、ロール状等、用途に応じて適宜な形状とすることができる。例えば、ウェハダイシング用途の場合、あらかじめ所定の形状に切断加工されたものが好適に用いられる。
【0035】
基材層は、粘着シートの強度母体となるものである。
基材層の材料は特に限定されないが、プラスチックフィルムが特に好適に用いられる。プラスチックフィルムの構成材料として、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂及びこれらの架橋体等のポリマーが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。構成材料は、必要に応じて官能基、機能性モノマー及び改質性モノマー等をグラフトして用いてもよい。
基材層は、単層又は2種以上の積層層であってもよい。
基材層は、例えば、帯電防止能を付与するため、その表面に金属、合金又はこれらの酸化物等からなる導電層を備えていてもよい。この場合の導電層は、例えば、金属等を蒸着等したものを用いることができ、その厚みは、3〜50nm程度が挙げられる。
基材層は、放射線硬化型樹脂組成物に放射線を照射させるために、放射線の少なくとも一部透過するものであることが好ましい。ここでの一部透過とは、50%程度以上、60%程度以上、70%程度以上又は80%程度以上を意味する。
【0036】
基材層の厚さは、特に制限されないが、一般的には10〜300μm、好ましくは30〜200μm程度である。
【0037】
基材層は、従来公知の製膜方法を利用して製造することができる。例えば、カレンダー製膜、キャスティング製膜、インフレーション押出し、Tダイ押出し等が挙げられる。
基材層が多層構造の場合、上述した材料等を用いて、共押出し法、ドライラミネート法等の慣用のフィルム積層法により製造できる。また、基材層は、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施してもよい。
基材層の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、マット処理、コロナ放電処理、プライマー処理、下塗剤によるコーティング処理、架橋処理等の化学的又は物理的処理が施されていてもよい。
【0038】
粘着剤層は、上述した放射線硬化型粘着剤組成物により形成することができる。
粘着剤層の厚みは、1〜50μm程度の範囲内であることが好ましい。粘着シートに貼り付けられた被着体は、その処理(例えば、ダイシング)の際に振動することがある。このとき、その振動幅が大きいと、被着体(例えば、切断チップ)に欠け(チッピング)等が発生する場合がある。しかし、粘着剤層の厚みを50μm以下にすることにより、被着体をダイシング等する際に発生する振動の振動幅が大きくなり過ぎるのを抑制することができる。その結果、切断チップに欠けが発生する、いわゆるチッピングの低減が図れる。その一方、粘着剤層の厚みを1μm以上にすることにより、ダイシング等の際に被着体が容易に剥離しないように、被着体を確実に保持することができる。
粘着剤層の厚みは、3〜20μm程度の範囲内にすることがより好ましい。この範囲内にすることにより、チッピングの低減を一層図ることができ、かつダイシングの際の被加工物の固定をも一層確実にし、ダイシング不良の発生を防止することができる。
【0039】
粘着剤層を形成する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、基材層表面に粘着剤層の構成材料を直接塗布する方法、離型剤が塗布されたシート上に粘着剤の構成材料を塗布・乾燥して粘着剤層を形成した後、基材層上に転写する方法等が挙げられる。
【0040】
セパレーターは、粘着剤層の保護、ラベル加工及び粘着剤層の表面を平滑にする機能を有し、適宜必要に応じて設けられる。
セパレーターの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。セパレーターの表面には粘着剤層からの剥離性を高めるために、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていてもよい。また、必要に応じて、粘着剤層が環境紫外線によって反応するのを防止するために、紫外線防止処理が施されていてもよい。セパレーター13の厚みは、通常10〜200μmであり、25〜100μm程度が好ましい。
【0041】
本発明の粘着シートは、半導体ウェハ、半導体パッケージ、ガラス、セラミックス等種々の被着体に貼着して用いることができる。
一般に、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−砒素等を材料とする半導体ウェハは、大径の状態で製造された後、所定の厚さになるように裏面研削(バックグラインド)され、必要に応じて裏面処理(エッチング、ポリッシング等)等がなされる。次に、ダイシングフレームと呼ばれるリング状冶具に固定されたダイシング用粘着シートが、半導体ウェハの裏面に貼付され、素子小片に切断分離(ダイシング)される。続いて、洗浄工程、エキスパンド工程、ピックアップ工程、マウント工程の各工程が施される。
本発明の粘着シートは、このような半導体装置の製造工程において好適に使用することができる。例えば、半導体ウェハバックグラインド用表面保護シート又は固定シート、半導体ウェハダイシング用表面保護シート又は固定シート、半導体回路の保護用シート等として利用することができる。
【0042】
具体的には、本発明の粘着シートを、まず、半導体部品等の半導体ウェハに貼り合わせる(マウント工程)。マウント工程は、半導体ウェハと粘着シートとを、粘着剤層側が貼り合せ面となるように重ね合わせ、圧着ロール等の押圧手段により、押圧しながら行う。また、加圧可能な容器(例えば、オートクレーブ等)中で、半導体ウェハと粘着シートとを重ね、容器内を加圧することにより貼り付けることもできる。この際、押圧手段により押圧しながら貼り付けてもよい。また、真空チャンバー内で貼り付けてもよい。貼り付けの際の貼り付け温度等は限定されないが、例えば、20〜80℃であることが好ましい。
【0043】
次いで、半導体ウェハをダイシングする(ダイシング工程)。ダイシング工程は、半導体ウェハを個片化して半導体チップを製造するために行う。ダイシングは、例えば、半導体ウェハの回路面側から、ブレードを高速回転させ、半導体ウェハを所定のサイズに切断して行われる。また、粘着シートまで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用してもよい。切断手法としては、高速回転するブレード、紫外、赤外、可視領域のレーザー等を用いる手法、表面にダイアモンドカッターなどで切り欠きを施し外力により分割する手法、被切断体の厚み方向の内部に欠陥層を形成し外力で分割する手法など従来公知のものが利用できる。この際、半導体ウェハは、粘着シートにより接着固定されているため、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハの破損も抑制できる。
【0044】
その後、半導体チップをピックアップする(ピックアップ工程)。ピックアップ工程は、粘着シートに接着固定された半導体チップを剥離するために行う。ピックアップ方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップを粘着シート側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップをピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
ピックアップの前に、粘着剤層に放射線照射処理を施す。これにより粘着性を低下させ、ピックアップの容易化を図る。放射線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。
【0045】
以下、本発明の放射線硬化型粘着剤組成物及び粘着シートを、実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、以下において「部」は、重量部を意味するものとする。
まず、放射線硬化型粘着剤組成物を調製した。
【0046】
(中間重合物溶液の調製)
表2−1及び表3−1に示すように、所定のモノマーに、重合開始剤と溶媒とを投入した。
熱重合開始剤は、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(キシダ化学社製)をモノマー総量に対し0.2重量%となるように、溶媒は、トルエンをモノマー総量に対して50重量%となるように投入した。
この混合物は、1L丸底セパラブルフラスコ、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入した。
投入した混合物を攪拌しながら、常温で窒素置換を1時間実施した。その後、窒素流入下、攪拌しながら、ウオーターバスにて実験装置内溶液温度が60℃±2℃となるように制御しつつ、12時間保持し、中間重合物溶液を得た。
なお、重合途中に、重合中の温度制御のために、トルエンを滴下した。また、側鎖の極性基等による水素結合による急激な粘度上昇を防止するために、酢酸エチルを滴下した。
なお、得られた中間重合物の計算Tg(K)を表1及び表3に示したホモポリマーのTgの文献値よりFoxの式を用いて算出した。
【0047】
(ベースポリマーの調製)
得られた中間重合物溶液を室温まで冷却し、表1及び表3に示す量のメタクリル酸2−イソシアナトエチル(カレンズMOI:昭和電工社製)及びジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)を添加し、空気雰囲気下で50℃に24時間攪拌及び保持して、ベースポリマー溶液を得た。
なお、側鎖に対する二重結合数を、併せて表1及び表3に示す。
【0048】
(粘着剤溶液の調製)
ベースポリマー溶液、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)をベースポリマー固形分100重量部当りに3重量部、ポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL;日本ポリウレタン社製)をベースポリマー固形分100重量部当りに3重量部を混合し、均一に攪拌し、粘着剤溶液を得た。
【0049】
(粘着シートの作製)
得られた粘着剤溶液をシリコーン系離型処理されたPETフィルムの離型処理面にアプリケーターにて塗布し、120℃の乾燥機にて5分間乾燥し、厚さ10μmの粘着剤層を得た。
次いで、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をTダイ押し出しで製膜し、片面をコロナ処理した厚さ100μmのフィルムを基材層として準備した。この基材層のコロナ処理面に粘着剤層をハンドローラーにて貼り合せ、50℃で72時間密着化処理を行い、粘着シートを得た。
【0050】
得られた粘着シートについて、ピックアップ評価を行った。その結果を表2及び表4に示す。
(ピックアップ評価)
以下に示す条件にて、バックグラインドされたシリコンミラーウエハのバックグラインド面に、得られた粘着テープを8インチ用ダイシングリング(2−8−1;ディスコ社製)とともに貼り付け、バックグラインドテープを剥離し、ダイシング用ワークを準備した。ダイシング用ワークを常温、暗所にて7日放置した。
その後、以下に示す条件にてダイシングを実施した。このとき、ダイシングリングから粘着テープが剥離・脱離したものは、この時点で不良とした。良好にダイシングできたものに関して、紫外線を以下に示す条件にて粘着テープ面から照射し、ピックアップ評価用ワークとした。紫外線照射から3時間後に、以下に示す条件にてピックアップ評価を実施した。なお、ニードルハイトは150μmにて実施し、ピックアップ不能の場合10μmずつニードルハイトを増やし、50チップ連続でピックアップできたときのニードルハイトをピックアップ性の評価値とした。本評価値は、値が小さいほど粘着テープのピックアップ性が良好であることを示しており、ニードルハイトが250μm以下のときをピックアップ良好、250μmより大きい場合をピックアップ不良とした。
【0051】
(バックグラインド条件)
装置 DFG−8560(ディスコ社製)
研削砥石 1軸 #600、2軸 #2000
研削厚み 1軸にて250μmまで、2軸にて200μmまで研削
バックグラインドテープ BT−150E−KL(日東電工社製)
【0052】
(ダイシング条件)
装置 DFD−651(ディスコ社製)
ダイシングブレード ZBC−ZH 205O−27HECC(ディスコ社製)
ダイシング速度 80mm/sec
ブレード回転数 40,000rpm
切削水流量 1L/min
カッティングモード A
カット方法 シングルカット
インデックスサイズ 10mm×10mm
切り込み量 テープに30μm
【0053】
(ピックアップ条件)
装置 FED−1870(芝浦社製)
ピックアップスピード インデックス4
ピックアップタイム 100msec
突き上げ量 150μmより
エキスパンド量 3mm
ニードル配置 7×7mm
ニードルR 250μm
コレットサイズ 9×9mm
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表1及び表3において、
Tg(K)*はホモポリマーのガラス転移点温度(Tg)の文献値を示す。
BM:ブチルメタクリレート:アクリエステルB(三菱レイヨン社製)
2−EHM:2−エチルヘキシルメタクリレート:ライトエステルEH(共栄社化学工業社製)
DM:ドデシルメタクリレート:エキセパールL−MA(花王社製)
TDM:トリデシルメタクリレート(東京化成工業社製)
ODM:オクタデシルメタクリレート(東京化成工業社製)
2−HEM:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:アクリエステルHO(三菱レイヨン社製)
2−IEM:2−イソシアナトエチルメタクリレート:カレンズMOI(昭和電工社製)
BA:ブチルアクリレート:(東亜合成社製)
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート:アクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成社製)
DA:ドデシルアクリレート(東京化成工業社製)
2−HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート:アクリックスHEA(東亜合成社製)
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物及びそれを用いた粘着シートは、例えば、半導体ウェハのみならず、半導体パッケージ、セラミックス、ガラス等の種々の被着体に対して
貼着して利用することができるとともに、これらの被着体、特に半導体ウェハの加工工程等で用いられるウェハ仮固定用、ウェハ保護用、ウェハダイシング用等の種々の用途の再剥離可能な粘着シート等として広い適用対象に対して有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
官能基aを有するモノマーA、
炭素数10以上17以下のアルキル基を有するメタクリレートモノマーからなるモノマーB及び
官能基aと反応しうる官能基cと重合性炭素二重結合基との双方の基を有するモノマーCに由来する構造単位を有するベースポリマーを主たる原料として含有し、
該ベースポリマーは、
前記モノマーBが、主鎖を構成する全モノマーの50重量%以上の割合で、モノマーAとともに主鎖を構成し、かつ
前記モノマーAにおける官能基aの一部が前記モノマーCにおける官能基cと反応して結合することにより、側鎖に重合性炭素二重結合基を有してなることを特徴とする放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項2】
モノマーAとモノマーBとに由来する構造単位を主鎖として有するポリマーが、260K以下のFoxの式から算出される計算ガラス転移温度を有する請求項1に記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項3】
官能基aがヒドロキシル基であり、かつ官能基cがイソシアネート基である請求項1又は2に記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項4】
モノマーCが、メタクリル酸2−イソシアナトエチル又は/及びアクリル酸2−イソシアナトエチルである請求項1〜3のいずれか1つに記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項5】
モノマーAが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び6−ヒドロキシヘキシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである請求項1〜4のいずれか1つに記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項6】
モノマーBが、ドデシルメタクリレート及びトリデシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである請求項1〜5のいずれか1つに記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項7】
モノマーBが、ドデシルメタクリレートを含む請求項6に記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項8】
モノマーCに由来する側鎖に導入された重合性炭素二重結合の数が、ベースポリマー全側鎖数に対し5%以上20%以下である請求項1〜7のいずれか1つに記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか記載の放射線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えることを特徴とする粘着シート。

【公開番号】特開2012−136678(P2012−136678A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291717(P2010−291717)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】