説明

放射線硬化性組成物

本発明は、化合物Aおよび化合物B、または(A)で規定されるポリチオール官能価をさらに含む化合物Bのいずれか〔ただし、(A)ポリチオール、(B)複数の環状エン基を有する化合物{該化合物(B)は、少なくとも1つの環状エン基に直接結合されたカルボニル基を含み、さらに少なくとも1つの水素供与性基を含み、該環状エン基の少なくとも1つと該水素供与性基の少なくとも1つとの間の距離は、少なくとも2本の骨格結合であり、化合物(B)は、(メタ)アクリレート基を含有しない}〕と、(C)0〜10重量%の(遊離ラジカル)光開始剤と、を含んでなる硬化性チオール−エン組成物に関する。本発明はさらに、光ファイバーコーティング、ステレオリソグラフィー樹脂、医療用コーティング、および接着剤としての、そのような組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性チオール−エン組成物に関する。本発明はさらに、該チオール−エン組成物を含む光ガラスファイバーコーティング組成物と、該コーティング組成物の使用と、一次コーティングと、生成物(特に機能プロトタイプ)と、に関する。本発明はさらに、コーティングまたは生成物を得る方法に関する。本発明はさらに、複数の環状エン基を有する化合物と、該化合物および該硬化性チオール−エン組成物を製造する方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
チオール−エンフォトポリマーは、オレフィン(「エン」、アルケンなど)とチオール(メルカプタン)との化学量論的反応に基づく反応性組成物であり、UV光もしくはVIS光または電子ビーム(EB)線を照射すると重合する。過酸化物や熱開始剤により重合を開始することもできる。チオール−エン重合は、遊離ラジカル連鎖移動過程により伝播される段階成長付加機構により進行する。
【0003】
チオール−エン組成物は、当技術分野で周知である。たとえば、(非特許文献1)には、チオール−エンフォトポリマー、チオール−エン反応の機構、チオール−エンフォトポリマーに関する重合研究、およびその光ファイバー用コーティングへの応用が記載されている。
【0004】
(特許文献1)には、光ファイバー一次コーティングとしてのノルボルネン官能性ポリエン系チオール−エン配合物の使用が開示されている。組成物は、ノルボルネン官能価またはチオール官能価のいずれかを有する化合物のうちの1つにおいてポリ(テトラメチレンオキシド)主鎖を使用することを特徴とする。組成物は、比較的低い粘度を有し、そして非常に低い照射フルエンスで実質的に完全に硬化するため、適用が容易である、と記されている。
【0005】
【特許文献1】国際公開第95/00869パンフレット(ロックタイト・コーポレーション(Loctite Corporation))
【非特許文献1】書籍「高分子科学技術における放射線硬化(Radiation Curing in Polymer Science and Technology)、第III巻、重合機構」、J・P・フォージエール(J.P.Fouassier)およびJ・F・ラベック(J.F.Rabek)編の第7章「チオール−エンフォトポリマー」、A・F・ジャコビーン(A.F.Jacobine)著
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、(特許文献1)に開示されている組成物は、所要の硬化速度を有していないと思われるか、その調製が複雑であると思われるか、粘度が低すぎるか、または強烈な臭気を有しているので、上記の化合物は、工業目的には適していない。本発明の目的は、機械的特性変化および/または反応基転化により定義される硬化速度が優れている硬化性チオール−エン組成物を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、比較的容易にかつ実用的に合成可能でありしかもチオール−エン組成物で使用したときに速い硬化速度を提供する複数の環状エン基を有する化合物を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、光ガラスファイバー工業に適したコーティングを提供することであり、より特定的には、十分に速い硬化速度を有すると同時に低いモジュラスを有する一次光ファイバーコーティング組成物およびそれを用いて得られる生成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、ステレオリソグラフィー、光媒体、ハードコートの分野、医療分野、および他の分野で使用される硬化性樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、上記の目的の1つ以上は、化合物Aおよび化合物B、または(A)で規定されるポリチオール官能価をさらに含む化合物Bのいずれか(ただし、
(A)ポリチオール、
(B)複数の環状エン基を有する化合物(該化合物(B)は、少なくとも1つの環状エン基に直接結合されたカルボニル基を含み、さらに少なくとも1つの水素供与性基を含み、該環状エン基の少なくとも1つと該水素供与性基の少なくとも1つとの間の距離は、少なくとも2本の骨格結合であり、化合物(B)は、(メタ)アクリレート基を含有しない))と、
(C)0〜10重量%の(遊離ラジカル)光開始剤と、
を含んでなる硬化性チオール−エン組成物により達成することができる。
【0011】
本明細書中では、「環状エン基に直接結合された」とは、カルボニル基のC原子が環状エン基に直接結合されることを意味する。該環状エン基の少なくとも1つと該水素供与性基の少なくとも1つとの間の骨格結合の数は、環状エンとカルボニル基のC原子との間の結合(結合1)から開始して決定される。
【0012】
組成物は、(メタ)アクリレート基を含有しない化合物(B)を含む。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート官能価またはメタクリレート官能価を意味する。本発明によれば、化合物(B)は、環状エン基だけを含有する。硬化時、段階成長重合が起こり、その結果、一般的には、連鎖成長重合様(メタ)アクリレート系よりも高い活性基転化率でゲル化を生じる。さらに、多くの場合、より低い収縮率の硬化物が得られる。
【0013】
驚くべきことに、エン化合物(B)は強い臭気を生成しないことが判明し、しかも化学重合およびモジュラス変化の両面からみてチオール化合物(A)との所要の高速架橋反応を示すことが判明した。
【0014】
化合物(B)がポリチオール官能価をも含む場合でさえも、同一の改善を達成することができる。
【0015】
本発明者らにより見いだされた改善は、多くの放射線硬化性組成物に応用可能であるが、光ファイバー技術、光学読取り可能なディスク用の接着剤およびコーティング、ハードコーティング、ならびにステレオリソグラフィー用の放射線硬化性樹脂に特に適している。なぜなら、これらの技術分野では、速い硬化速度および/または高い感光性および/または低い収縮率が必要とされるからである。改善はさらに、医療用コーティングにも応用可能である。
【0016】
いくつかの用途では、特に医療用コーティングでは、(A)と(B)の両方が存在する化合物を含む組成物が好ましいこともある。これにより、一般的には、組成物中の低分子(揮発性、移行性)成分の数が減少するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下の説明では、(A)および(B)が個別の化合物である実施形態を例示する。しかしながら、(A)と(B)の両方の官能価を含む化合物にも同一の教示があてはまる。
【0018】
成分AおよびBは、その重合の結果として架橋ポリマーが得られるように官能価を有していなければならない。したがって、各反応性成分(エンおよびチオール)の官能価は、平均で1よりも大きくなければならず、高分子量架橋ポリマーを生成させるために、官能価は、合計で4以上でなければならない。
【0019】
1よりも大きい平均官能価を成分AおよびBにもたせるべく、各成分は、少なくとも二官能性の分子を含むであろう。
【0020】
一般的には、各成分AおよびBの平均官能価は、約1.2以上である。好ましくは、各成分AおよびBの平均官能価は、約1.8以上であるが、AとBを合わせた官能価は、約4以上である。より好ましくは、AとBを合わせた官能価は、4.5以上である。一般的には、A+Bの官能価は、10以下、好ましくは7以下である。
【0021】
ポリエン成分(B)対ポリチオール成分(A)の比は、エン基対チオール基のモル比が約1.0:0.8〜約1.0:1.5となる範囲内で可変である。
【0022】
配合物中のチオール含有率(エン/チオール)が約1.0:0.8未満であると、所望の低エネルギー入力で硬化しうる組成物は得られない可能性がある。チオール含有率(エン/チオール)が約1.0:1.3の比を超えた場合、おそらく1.0:1.5程度で、場合によっては満足すべき結果が得られることもある。一般的には、エン基対チオール基の比は約1:1であることが好ましい。しかしながら、所与の比が上述されているにもかかわらず、重合速度、機械的特性、または他の特性を変化させるために、(メタ)アクリレートやビニルエーテルなどの追加の不飽和基を使用する場合、比を変更して使用しうる。
【0023】
本発明に係る環状エン官能性化合物を用いる好ましい硬化性組成物が、二官能性環状エン官能性化合物と二官能性チオール化合物の両方を含みうる場合、これらの成分の少なくとも一方の少なくとも一部分は、硬化時に架橋生成物を生成すべく1分子あたり3つ以上の官能基を含有していなければならないことが理解されるであろう。すなわち、架橋硬化生成物が望まれる場合、エン官能性化合物(B)1分子あたりの環状エン基の平均数とチオール官能性化合物(A)1分子あたりの共反応性チオール基の平均数との合計は、好ましくは4よりも大きくなければならない。
【0024】
本発明に係る硬化性チオール−エン組成物において、化合物(A)または(B)のいずれか一方は、好ましくは主鎖を含有し、該主鎖は、250〜10,000g/mol、好ましくは500〜6,000g/mol、より好ましくは750〜5,000g/mol、最も好ましくは1,000〜4,000g/molの範囲内の分子量を有する。
【0025】
主鎖という用語は、化合物中のオリゴマー部分またはポリマー部分を表すために使用され、この部分に分子の残りの部分が結合される。オリゴマーまたはポリマーは、以下でさらに説明および例示されるような反復単位を含有する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、化合物(A)は、少なくとも3つの官能性チオール基を含有し;化合物(B)は、2つの環状エン官能性基と1つの主鎖とを含有する。
【0027】
本発明の範囲内にある他の配合物では、2つの官能性チオール基と主鎖とを含有する化合物(A)と;少なくとも3つの環状エン官能性基を含有する化合物(B)と;が利用される。
【0028】
成分(A)
ポリチオール成分(A)として、1分子あたり2つ以上のチオール基を有する分子を含む任意の化合物を使用することができる。好ましくは、平均官能価は、約1.8以上、より特定的には約2以上である。配合物の貯蔵安定性を保持するために、環状エン官能性化合物(B)との適合性をもたせることが好ましい。ポリチオール成分は、当技術分野で公知であるいずれのポリチオール成分であってもよい。最も一般的なチオール化合物についての説明は、米国特許第3,661,744号明細書の第9欄、第1〜41行(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に見いだしうる。特定のポリチオール、たとえば、脂肪族モノマーポリチオール(エタンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール)、トリレン−2,4−ジチオールなど、およびいくつかのポリマーポリチオール、たとえば、チオール末端エチルシクロヘキシルジメルカプタンポリマーなど、ならびに商業ベースで簡便にかつ普通に合成される類似のポリチオールは、不快な臭気を有しているとはいえ使用可能ではあるが、最終生成物の多くは、実用的かつ商業的な観点からみて広く受け入れられるものではない。比較的低い臭気レベルであることが理由で好ましいポリチオール化合物の例としては、チオグリコール酸(HS−CHCOOH)、α−メルカプトプロピオン酸(HS−CH(CH)−COOH)、およびβ−メルカプトプロピオン酸(HS−CHCHCOOH)と、グリコール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオールなどのようなポリヒドロキシ化合物と、のエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましいポリチオールの特定例としては、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)(すべて市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましいポリマーポリチオールの特定例は、エステル化(esterfication)によりポリプロピレン−エーテルグリコール(たとえば、プルラコールP201(Pluracol P201)、ワイアンドット・ケミカル・コーポレーション(Wyandotte Chemical Corp.))とβ−メルカプトプロピオン酸とから調製されるポリプロピレンエーテルグリコールビス(β−メルカプトプロピオネート)である。ポリ−α−メルカプトアセテートエステルまたはポリ−β−メルカプトプロピオネートエステル、特に、トリメチロールプロパントリエステル(trimethylopropane triesters)またはペンタエリトリトールテトラエステルが好ましい。適切に利用しうる他のポリチオールとしては、1,2−ジメルカプトエタン(1,2−dimercapthoethane)、1,6−ジメルカプトヘキサンなどのようなアルキルチオール官能性化合物が挙げられる。チオール末端ポリスルフィド樹脂を利用することも可能である。
【0029】
脂肪族および脂環式のジチオールの好適な例としては、1,2−エタンジチオール、ブタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリトリトール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、ヘキサンジチオール、ジチオジグリコール、ペンタンジチオール、デカンジチオール、2−メチル−1,4−ブタンジチオール、ビス−メルカプトエチルフェニルメタン、1,9−ノナンジチオール(1,9−ジメルカプトノナン)、グリコールジメルカプトアセテート、3−メルカプト−β,4−ジメチル−シクロヘキサンエタンチオール、シクロヘキサンジメタンジチオール、および3,7−ジチア−1,9−ノナンジチオールが挙げられる。
【0030】
芳香族ジチオールの好適な例としては、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、2,4,6−トリメチル−1,3−ベンゼンジメタンチオール、ズレン−α1,α2−ジチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、4−メチル−1,2−ベンゼンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、4,4’−チオビスベンゼンジチオール(4,4’−thiobisbezenedithiol)、ビス(4−メルカプトフェニル)−2,2’−プロパン(ビスフェノールジチオール)(メング・Y・Z(Meng Y.Z.)、ヘイ・A・S(Hay.A.S.)著、応用高分子科学誌(J.of App.Polym.Sci.)、第74巻、3069−307頁、1999年に記載の方法に準拠して製造した)、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジチオール、およびp−キシレン−α,α−ジチオール)が挙げられる。
【0031】
オリゴマージチオールの好適な例としては、シュスタック(Shustack)の米国特許第5744514号明細書に記載されているようにヒドロキシエチルメルカプタン、ヒドロキシプロピルメルカプタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトエタンのエンドキャッピング部分から誘導される二官能性メルカプト官能性ウレタンオリゴマーが挙げられる。
【0032】
好適なトリチオール官能性化合物の例としては、トリメチロールエタントリス−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−メルカプトプロピオネート(TMPTSH)、トリメチロールエタントリス−メルカプトアセテート、およびトリメチロールプロパントリス−メルカプトアセテート、グリセロールトリ(11−メルカプトウンデケート)、トリメチロールプロパントリ(11−メルカプトウンデケート)が挙げられる。好ましいトリチオールは、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)TMPTSHである。
【0033】
好適な四官能性チオールの例としては、ペンタエリトリトールテトラメルカプトプロピオネート、ペンタエリトリトールテトラメルカプトアセテート、およびペンタエリトリトールテトラ(11−メルカプトウンデケート)(pentathritoltetra(11−mercaptoundecate))が挙げられる。
【0034】
4よりも大きい官能価を有する多官能性チオールの例としては、国際公開第88/02902号パンフレットの7頁に記載されているようなポリチオールが挙げられる。
【0035】
多官能性チオールは、チオアルキルカルボン酸(たとえば、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸)を、高官能性のアルコール、アミン、およびチオールと、反応させることにより得ることができる。さらに、多官能性チオールは、メルカプトアルキルトリアルコキシシランを、ポリマーであってもよいシラノールまたはシリカに基づくシラノールと、反応させることにより得ることができる。
【0036】
他の好ましい多官能性チオールは、チオールカルボン酸(HS−R−COOH)(式中、R=アルキル基またはアリール基)、たとえばチオウンデカン酸を用いて得られる。この際、COOH基を、多官能性である反応性エン、アルコール、チオール、またはアミンと、反応させる。
【0037】
成分(B)
化合物(B)として、2つ以上の環状エン基を有する分子を含む任意の化合物(該化合物は、少なくとも1つの環状エン基に直接結合されたカルボニル基を含み、さらに少なくとも1つの水素供与性基を含み、該環状エン基の少なくとも1つと該水素供与性基の少なくとも1つとの間の距離は、少なくとも2本の骨格結合であり、該化合物は、(メタ)アクリレート基を含有しない)を使用することができる。好ましくは、該環状エン基の少なくとも1つと該水素供与性基の少なくとも1つとの間の距離は、2〜12の骨格結合、より好ましくは4〜10の骨格結合である。好ましくは、平均官能価は、1.8以上、より特定的には約2以上である。
【0038】
好ましい一実施形態によれば、化合物(B)は、500〜10,000g/molの分子量を有し、かつ複数のエン官能性基と少なくとも1つの水素供与性基とを含有し、しかも化合物(B)は、エン基と水素供与性基との間に少なくとも2本の骨格結合を含有する。
【0039】
本明細書中で使用される「水素供与性基」という用語は、他の原子または基との可逆的な(分子間または分子内)物理的相互作用を形成しうる水素を意味する。そのような物理的相互作用の例は、水素架橋形成能または水素供与能である。水素結合供与性種は、ほとんどの例においてより低い濃度であるので、最も影響力の大きい種である。すなわち、系内には、多くのC=O水素受容性種が存在する。好ましくは、該水素供与性基は、ヒドロキシ(OH)、アミノ(NH、NH)、SH、カルボキシルよりなるリストから選択される(たとえば、COOH、COSH)。より好ましくは、該水素供与性基は、OHまたはNHである。より好ましくは、該基は、ウレタン(カルバメート(carabamate))基、インバーテッドウレタン(inverted urethanes)、ウレア基、アミド基、チオ−ウレタン、チオウレア、イソチオウレア、ヒドロキシエステル、ヒドロキシなどから誘導されるものである。最も好ましいのは、ウレタン基である。
【0040】
骨格結合は、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、またはケイ素よりなる群から選択される原子を含有しうる。好ましくは、骨格結合は、たとえば、エチル、プロピル、ブチルなどのような炭素結合である。最も好ましくは、エン基と水素供与性基との間の基は、エステル−エチル基である。
【0041】
環状エン基は、4〜20個の炭素原子を有するシクロアルケニルでありうる。そして単環式、多環式の構造を含み、好ましくは縮合多環式構造を含む。シクロアルケニルは、1つ以上の不飽和結合を含みうる。環状エン基は、エーテル官能価、エステル官能価、チオエーテル官能価、およびアミン官能価のようなヘテロ原子を含有しうる。多環式エンの例としては、国際公開第88/02902号パンフレットに記載されている化合物が挙げられる。
【0042】
好ましくは、エン官能性基は、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、および他の縮合環構造を含む群から選択されうる。二重結合は、好ましくは、カルボニルに対してγ位にある。
【0043】
環状エン基としては、以下の式
【化1】


(式中、Zは、CH、O、N、NR、S、SO、CHCH、C(CHである)
を有するジエンのディールス・アルダー反応から誘導される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他のより高い炭素含有率の環構造(たとえば、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン)および上記の5原子環のヘテロ原子類似体を使用することも可能である。
【0044】
ディールス・アルダー(Diels Alder)型付加から得られる環状エンが好ましい。使用しうる好適なジエンとしては、シクロペンタジエン、シクロオクタジエン、ヘキサジエン、フラン、チオフェン、ピランが挙げられる。
【0045】
上記ジエンを反応させて、(メタ)アクリレート、フマレート、マレエート、イタコネート、マレイミド、クロトン酸、および他の電子欠乏二重結合のような不飽和基に付加させることにより、環状エンを得ることができる。
【0046】
化合物(B)の環状エン基は、さまざまな方法で得ることが可能である。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態によれば、化合物(B)は、オリゴマー(B1)をシクロペンタジエニル化合物(B2)と反応させることにより得られる。ただし、(B1)は、(メタ)アクリレート基とウレタン基と主鎖とを含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0048】
他の好ましい実施形態には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートをシクロペンタジエニル化合物と前反応させることと、続いて、得られた生成物をポリオール主鎖およびポリイソシアネートと反応させて化合物(B)を生成させることと、が含まれる。この実施形態の利点は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとシクロペンタジエニル化合物との反応の低分子量生成物を化合物Bの合成前に簡単に精製しうるという点である。
【0049】
反応は、溶媒を用いることなくまたは溶媒の存在下で行いうる。一般的には、アクリレートオリゴマー(B1)が反応時に十分に低い粘度を有する場合、溶媒は必要ではない。好適な溶媒の例としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、THF、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、および水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応は、好ましくは窒素雰囲気下で行われる。
【0050】
シクロペンタジエン化合物(B2)は、130〜260℃、好ましくは150〜240℃の範囲内の温度でジシクロペンタジエン(DCPD)をクラッキングすることにより得ることができる。好ましくは、クラッキングされたばかりのシクロペンタジエンモノマー(B2)をオリゴマー(B1)と反応させる。反応温度は、20℃〜120℃、好ましくは、30〜100℃の範囲内でありうる。反応時間(reaction temperature)は、8〜20時間、好ましくは10〜16時間の範囲内でありうる。過剰のシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンは、真空圧下、典型的には30〜80℃の範囲内の温度で除去可能である。他の選択肢として、オリゴマーまたはポリマーの存在下、130℃〜260℃の温度で、ジシクロペンタジエンをin situクラッキングすることも可能である。
【0051】
(B1)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、
(i)ポリオールと、
(ii)ポリイソシアネートと、
(iii)少なくとも1つの(メタ)アクリレート末端を提供しうるヒドロキシ官能性エンドキャッピング化合物と、
を反応させることにより調製可能である。
【0052】
好適なポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アルキドポリオール、ポリ炭化水素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxalkanoate)(ポリ乳酸など)、アクリルポリオール、ポリシロキサンポリオール、ハロゲン化ポリオール、ポリウレタンポリオールなどである。これらのポリオールは、単独でまたは2つ以上の組合せで使用しうる。好ましいのは、ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーであり、さらに好ましいのは、脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーである。「脂肪族」という用語は、使用される完全脂肪族ポリイソシアネートを意味する。これらのポリオール中の構造単位の重合方法には、特に制限はない。ランダム重合、ブロック重合、またはグラフト重合はいずれも、許容しうる。好適なポリオール、ポリイソシアネート、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの例は、国際公開第00/18696号パンフレット(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されている。
【0053】
ポリオールは、一般的には約1.8以上、好ましくは約2以上、かつ一般的には約10以下、好ましくは5以下の平均官能価を有する。
【0054】
これらのポリオールのヒドロキシル価から誘導される換算数平均分子量は、通常は約50〜約25,000、好ましくは約500〜約15,000、より好ましくは約1,000〜約8,000、最も好ましくは約1,500〜6,000である。
【0055】
ウレタン(メタ)アクリレートの調製に使用されるポリオール、ジまたはポリイソシアネート(国際公開第00/18696号パンフレットに開示されている)、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの比は、ポリオールに含まれる1当量のヒドロキシル基に対して、ポリイソシアネートに含まれる約1.1〜約3当量のイソシアネート基およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートに含まれる約0.1〜約1.5当量のヒドロキシル基が使用されるように、決定される。
【0056】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの代わりに、たとえば、ブチルヒドロキシエチルフマレート、エチルヒドロキシエチルマレエート、ブチルヒドロキシプロピルイタコネート、プロピルヒドロキシプロピルマレイミド、ヒドロキシエチルクロトネートを使用することができる。環状エン側鎖を形成するために、ビス−ヒドロキシエチルマレエートを使用することもできる。
【0057】
これらの三成分の反応時、銅ナフテネート、コバルトナフテネート、亜鉛ナフテネート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、トリエチルアミン、およびトリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンアミンのような触媒は、通常、反応物の全量の約0.01〜約1重量%の量で使用される。反応は、約10〜約90℃、好ましくは約30〜約80℃の温度で行われる。
【0058】
本発明に係る組成物で使用されるウレタン(メタ)アクリレート(B1)の数平均分子量は、好ましくは約300〜約20,000g/mol、より好ましくは約500〜約10,000g/molの範囲内である。低モジュラス(すなわち<10MPa)を有する組成物中で樹脂組成物を使用する場合、ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は、好ましくは約1000g/molよりも大きい。数平均分子量が約20,000g/molよりも大きい場合、組成物の粘度が高くなり、組成物の取扱いが困難になる。
【0059】
合成は、当技術分野で公知であり、数段階で進めることができる。たとえば、アウトサイドイン法による収束的合成では、最初にジイソシアネート(disocyanate)とヒドロキシアクリレートとの反応を行い、続いてポリオールを付加する。一方、インサイドアウト法により分岐的に行う場合には、ポリオールをジイソシアネートと反応させた後、ヒドロキシアルキルアクリレート(または電子欠乏二重結合を有する他のヒドロキシ官能性化合物)と反応させる。
【0060】
化合物(B)を調製する好ましい方法は、ヒドロキシ末端化合物(ポリオールまたはジオール)を、酸クロリド、イソシアネート、アズラクトン、またはクロロホルメートなどのようなヒドロキシ反応性環状エン官能性化合物と、反応させる方法である。結合の選択は、得られる特性に影響を及ぼす。
【0061】
本発明の他の好ましい実施形態では、化合物Bは、エポキシアクリレートモノマーまたはオリゴマーをシクロペンタジエンと反応させることにより得られる。好適なエポキシアクリレートモノマーまたはオリゴマーとしては、ビスフェノールAジグリシジルジアクリレート(モノマー)およびビスフェノールAジエポキシジアクリレートオリゴマーが挙げられる。したがって、この化合物Bは、環状エン基と、環状エン基に隣接したカルボニルと、水素供与性基としてヒドロキシ基と、を含む。
【0062】
さらに他の好ましい実施形態では、化合物Bは、アクリル化ポリエステルまたはフマレート系不飽和ポリエステルから誘導される化合物である。ハイミック樹脂およびDCPD樹脂は、高いモジュラスまたはグリーン強度を有する用途(ステレオリソグラフィーなど)に使用される樹脂に特に有用である。
【0063】
化合物(B−A)
ポリチオール官能価をさらに含む化合物(B)(すなわち化合物(B−A))は、いくつかの方法で調製可能である。当業者であれば、たとえば、シクロペンタジエンを、1つ以上のエチレン性不飽和基と1つ以上のチオール基とを含む化合物と、反応させることができる。他の好適な方法には、最初に、シクロペンタジエンをたとえばヒドロキシエチルアクリレートと反応させることと、その後、この付加生成物およびメルカプトアルキルアルコールを多官能性イソシアネート(好ましくは三官能性以上のイソシアネート化合物)と反応させることと、を含む。たとえば、三官能性ポリエチレングリコール(ポリマー・リソースズ(Polymer Resources)製のヒドロキシ末端3−アームPEG(P2223またはP2229)など)を3モルのTDIと反応させることができる。得られた3官能性イソシアネート化合物をメルカプトエタノール1.5モルおよびシクロペンタジエンとヒドロキシエチルアクリレートとの付加生成物1.5モルと反応させることができる。メルカプト官能価とノルボルネン官能価の両方を有する使用可能な希釈剤は、シクロペンタジエンと3−メルカプトプロピルアクリレートとの付加生成物である。
【0064】
成分(C)
電子ビーム(EB)硬化用に配合される組成物は、硬化開始剤を必要としない。UV−vis硬化用または熱硬化用に配合される組成物は、望ましくは、それぞれ光開始剤または熱開始剤を含むであろう。開始剤は、ラジカルであってもカチオンであってもよい。最も好適なのは、遊離ラジカル光開始剤である。遊離ラジカル光開始剤またはマレイミド光開始剤の例は、ディアス(Dias)ら(表面コーティング・国際版、JOCCA(Suface Coatings International,JOCCA)、2000年、第10巻、502−506頁)により記載されている。
【0065】
場合により、光開始剤を用いない系または約254nmを中心とする強い発光を有する特別のUV光源を用いるBowmanにより記載されたのと類似の系(ボウマン(Bowman)ら著、巨大分子(Macromolecules)、2002年、第35巻、5361−5365頁)を使用してもよいし、欧州特許第0618237号明細書に記載されているようなマレイミドを用いる系を使用してもよい。
【0066】
光開始剤(C)は、配合物の硬化を開始させるのに有効な量、典型的には組成物の全重量%を基準にして0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%の範囲内で利用される。2種以上の光開始剤の組合せを利用することも可能である。
【0067】
さらなる成分および特性
本発明に係るチオール−エン化合物(A+B+場合によりC)は、約5重量%以上、より好ましくは約10重量%以上、より好ましくは約20重量%以上、さらにより好ましくは約30重量%以上、最も好ましくは約40重量%以上の量で、組成物中に存在しうる。チオール−エン化合物[A+B+場合によりC]は、全組成物を構成してもよいが、約99重量%以下の量で存在することも可能であり、多くの場合、90重量%以下の量で存在するであろう。量は、決定的に重要であるわけではなく、約80重量%以下または約70重量%以下にすることもできる。
【0068】
チオール−エン化合物[A+B]のほかに、本発明の組成物は、チオール基と反応しうる1つ以上のエン基を有する他のオリゴマーまたは反応性希釈剤をも含有しうる。エン基を有するオリゴマーは、たとえば、ノルボルネン官能性アルコキシル化ビスフェノールA、ノルボルネン官能性ポリエステル、またはノルボルネン(norbonene)官能性ポリエーテルのようなノルボルネン(norbonene)官能性化合物である。これらのオリゴマーは、付加生成物をオリゴマー化合物(B)にするオリゴマー以外のアクリレート官能性オリゴマーにシクロペンタジエンを付加させることにより製造することができる。希釈剤として、好ましくは多官能性である低分子量のアクリレートおよびメタクリレート、フマレートおよびマレエート、ならびに他の類似物のディールス・アルダー付加物を使用することが可能である。好適な例は、ジエチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートなどのシクロペンタジエン付加生成物である。
【0069】
他のタイプのオリゴマー、たとえば、(メタ)アクリレート官能性、エポキシ官能性、ヒドロキシ官能性、または他の官能性のオリゴマー、好ましくは、先に(B1)として記載したようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーもまた存在させうる。市販のウレタンアクリレートとしては、CN934、CN961、CN962、CN964、CN965、CN980(サートマー(Sartomer)製)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好適な他のアクリレート官能性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、たとえば、CN104、CN115、CN117、CN120、CN124、CN151、およびポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。エポキシ官能性化合物もまた、当技術分野で周知である。
【0070】
任意の他のオリゴマーは、0.01重量%〜50重量%の範囲内の量で本発明に係る組成物中に存在しうる。粘度、色、硬度、反射率などの特定の性質を達成するために、化合物Aおよび/またはBに対して反応性または非反応性でありうるオリゴマーおよび粒子を使用することができる。
【0071】
反応性希釈剤もまた存在させうる。アクリレートオリゴマーの場合、周知のアクリレート官能性希釈剤を使用することができる。
【0072】
配合物はまた、好ましくは安定化剤を含む。好ましい安定化剤は、欧州特許428,342号明細書(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されており、非酸性ニトロソ化合物、特に、N−ニトロソヒドロキシルアリールアミンおよびその誘導体である。他の選択肢として、アルケニル置換フェノール系化合物と、遊離ラジカル捕捉剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、およびヒドロキシルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上の化合物と、を含む安定化剤系により、配合物を安定化させることも可能である。好適なアルケニル置換フェノール系化合物の例としては、2−プロペニルフェノール、4−アセトキシスチレン、2−アリルフェノール、イソオイゲノール、2−エトキシ−5−プロペニルフェノール、2−アリル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−プロペニル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−アリル−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−プロペニル−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、および2,2’−ジアリル−ビスフェノールAが挙げられ、好適には、組成物の重量を基準にして500ppm〜5000ppmのレベルである。好ましくは、アルケニルフェノール系化合物を、N−ニトロアリールヒドロキシルアミン塩、p−メトキシフェノール(MEHQ)のようなラジカル捕捉剤、およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)のようなヒンダードフェノール系酸化防止剤と、併用する。他の選択肢として、ホスフィン化合物またはホスファイト化合物で配合物を安定化させることも可能である。好適なホスフィン化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、およびクペロンが挙げられる。好適なホスファイト化合物の例としては、トリフェニルホスファイトが挙げられる。他の選択肢として、カテコール(cathetol)、ピロガロール、およびプロピルガレートにより、形成物を安定化させることも可能である。
【0073】
組成物は、メルカプトアルコキシシランおよびアクリル化アルコキシシランのディールス・アルダー付加物のような接着促進剤、さらにはより一般的な有機官能性オルガノシラン接着促進剤を含有しうる。硬化組成物の機械的特性は、広範囲にわたり変化させうる。25℃におけるモジュラス(E’)は、低い値すなわち、0.5〜2MPaまたはそれ以上から4GPaまででありうる。本発明に係る組成物は、速い硬化速度と低いモジュラスとを兼ね備えているかまたは高いモジュラス(100〜2000MPa)でより良好な材料特性(破断点応力および破断点歪みのような極限引張特性の改良など)を呈するなどの利点を有する。硬化生成物を好ましくは50〜150℃の温度で後焼成することにより、硬化生成物の特性をさらに改善することが可能である。
【0074】
本発明に係る組成物は、着色されていてもいなくてもよい光ファイバー用コーティングとして使用しうる。組成物は、光ファイバーの一次もしくは二次コーティングとして、インク組成物として、またはマトリックス材料として使用しうる。好ましくは、組成物は、一次コーティングとして使用される。
【0075】
一般に、ガラス光ファイバーは、溶融ガラスを紡糸した直後に保護コーティングを施して提供される。一般的には、2層のコーティング、すなわち、ガラス表面上に直接存在する比較的軟質の可撓性樹脂の一次コーティングと、一次コーティング上のより硬質の樹脂の二次コーティングと、が施される。しかしながら、一次および二次コーティングの代わりに単一コーティングを使用することも可能である。個別のファイバーは、一般的には、ケーブルのようなより大きい構造体として組み合わされる。ケーブルは、個別のファイバーまたはファイバーリボン構造体を含みうる。光ファイバーリボンは、一般的には2、4、6、8、または12本の光ファイバーから作製され、一般的には平面状に配置され、そしていわゆるマトリックス材料で接合一体化される。バンドリング材料または封入マトリックス材料を用いて、いくつかのリボンを束ねることができる。さらに、個別のファイバーは、多くの場合、個別のファイバーを識別することができるように、着色層またはインク層を設けて提供される。特定の場合には、さらなるコーティング層を設けてより肉厚にすることによってファイバーの取扱いをより容易にすべく、約250μmの厚さを有する個別にコーティングされたファイバーが提供される。そのようなコーティングは、アップジャケットコーティングと称される。これらの用途で現在使用されている材料はすべて、好ましくは、放射線硬化性組成物である。
【0076】
一次コーティングは、ファイバーが屈曲されたり、ケーブル化されたり、またはスプールに巻き取られたりするときに生じる応力を低減させることにより、ファイバーへの衝撃を緩和し保護するための緩衝材として機能する。それを用いなければ、そのような応力によりファイバーのマイクロベンディングを生じてそれを通る光が減衰し、非効率的な信号伝送が行われることになる。約2MPa以上の平衡モジュラスを有する一次コーティング材料で光ファイバーをコーティングした場合、緩衝効果が減少するので、光ファイバーの伝送損失が増大する可能性がある。したがって、一次コーティング材料としては、低弾性モジュラス(たとえば1.5MPa以下の平衡モジュラス)を有する材料が望ましい。このほか、光ファイバー用のコーティング材料(保護または識別を目的とする)として使用される硬化性樹脂に今日要求される最も重要な特性の1つは、現在使用されている増大されつつある光ファイバー延伸速度で適用しうる程度に十分に速い硬化速度を有すると同時にさらに、化学的および機械的な特性を犠牲にすることなく十分に硬化されることである。
【0077】
本発明に係る組成物を一次コーティングとして使用すれば、低モジュラスにおける優れた材料特性と比較的高い硬化速度とが兼備されるようになる。
【0078】
組成物はさらに、ステレオリソグラフィーまたはフォトファブリケーションに使用することも可能である。
【0079】
近年、光硬化性樹脂組成物に選択的照射を行う
の反復により積層一体化された硬化樹脂層から作製される三次元物体のフォトファブリケーションが提案されている(たとえば、米国特許第4,575,330号明細書を参照されたい)。
【0080】
そのようなフォトファブリケーションの典型的な例は、以下のとおりである。槽内の光硬化性樹脂組成物(液体材料)の表面にCADデータに基づいて紫外レーザーなどから光を選択的に照射し、指定のパターンを有する硬化樹脂層を形成する。次に、この硬化樹脂層上に樹脂組成物の非硬化層を提供し、液体表面に選択的に照射して硬化樹脂層上に積層一体化された新しい硬化樹脂層を形成する。同一のまたは異なる照射パターンを用いて、この工程を特定の回数反復し、積層一体化された硬化樹脂層よりなる三次元物体を得る。好ましくは、物体の表面に付着する過剰の樹脂を除去するために、物体を洗浄剤で洗浄し、好ましくは、物体の機械的特性をさらに改善するために、たとえばUVまたは熱により、物体を後硬化させる。このフォトファブリケーションは、複雑な形状を有する三次元物体を短時間で容易に形成することができるので、かなりの注目を集めている。
【0081】
ステレオリソグラフィー(またはフォトファブリケーション)用途では、収縮率を最小限に抑えること、より重要な点として、組み立て部品の歪みを引き起こす応力を最小限に抑えることが重要である。本発明に係る組成物は、優れた特性を有する。すなわち、非常に低い収縮率と良好な材料特性とを兼備する。
【0082】
100〜2000MPaのモジュラスならびに比較的高い破断点歪みおよび破断点応力を有する硬化組成物を得ることができるので、これらの生成物は、機能プロトタイプとして特に好適である。本発明に係る組成物はまた、迅速製造目的に使用することも可能である。
【0083】
好ましくは、チオール−エン組成物の基本的機械的特性のさらなる改善または変更を行うために、本発明に係るチオール−エン組成物を高いTgのモノマー、オリゴマー、および充填剤と併用する。そのようにして得られるステレオリソグラフィー組成物もまた、十分に低い収縮率を示す。
【0084】
さらに、本発明に係るチオール−エン組成物は、良好な接着性を生じるので、光媒体用途(たとえば、CDコーティング、DVD接着剤)で好適に使用されうる。
【0085】
さらに、本発明に係るチオール−エン組成物は、3Dインク印刷用途で好適に使用されうる。
【0086】
さらに、本発明に係るチオール−エン組成物は、粉末コーティング(UV硬化性または熱硬化性)で好適に使用されうる。
【0087】
最後に、本発明に係るチオール−エン組成物は、有毒なアクリレートを回避したことにより低毒性であるという利点を有するので、医療用コーティングに使用することができる。そのようなチオール−エン生成物はまた、生体組織との改善された適合性を示す。医療用コーティングでは、チオール官能価と化合物(B)官能価の両方を有する化合物を使用することが好ましい。
【0088】
以下の実施例および試験法により、本発明についてさらに明確に説明する。
【実施例】
【0089】
実施例および比較実験
使用した略号のリスト:
PPG2000は、バイエル(Bayer)により供給された約2000の分子量を有するポリプロピレングリコールである。
【0090】
PPG4200は、バイエル(Bayer)により供給された約4200の分子量を有するポリプロピレングリコールである。
【0091】
PTG−L2000は、結晶化度を減少させるために5〜15%の3−メチル置換PTMGを有する2000MWのポリ(テトラメチレングリコール)であり、日本の保土谷化学工業株式会社から入手したものである。
【0092】
IPDIは、イソホロンジイソシアネートである。
HEAは、2−ヒドロキシエチルアクリレートである。
HPAは、3−ヒドロキシプロピルアクリレート(アルドリッチ(Aldrich))である。
HBAは、4−ヒドロキシブチルアクリレート(アルドリッチ(Aldrich))である。
NBは、ノルボルネンである。
EBDNは、エトキシル化ビスフェノールAジノルボルネンである。
PCDNは、ポリカーボネートウレタンジノルボルネンである。
TCDDMDNは、トリシクロ[5.2.1.0]デカンジメタノールジノルボルネンである。
【0093】
TMPTNは、トリメチロールプロパントリノルボルネンプロピオネートである。
イルガキュア184(Irgacure 184)は、ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ガイギー(Ciba Geigy)により供給された光開始剤)である。
TMPTSHは、アルドリッチ(Aldrich)またはエバンス・ケメティックス(Evans Chemetics)により供給されたトリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−プロピオネート)(理論分子量399)である。
TTLSHは、ペンタエリトリトールを11−メルカプト−ウンデカン酸でエステル化することにより製造されたペンタエリトリトールテトラ(11−メルカプトウンデカネート)(理論分子量937.5)である。これらは、より高分子量の多官能性チオールであり、チオールの臭気の除去が重要である用途(たとえばステレオリソグラフィー)に有用である。
【0094】
PETMPは、オットー・ボック(Otto Bock)により供給されたペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート)である。
【0095】
ENPAは、サートマー(Sartomer)により供給された、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート(SR504)である。
【0096】
DEGEHAは、アルドリッチ(Aldrich)により供給されたジ(エチレングリコール)−2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0097】
シクロペンタジエンの合成:ジシクロペンタジエン(DCPD)のクラッキング
大型(約30cm)ビグロウ(Vigreux)カラム、滴下漏斗、およびパラフィン中に浸漬される温度計を備えた250mL三口丸底フラスコに100gのパラフィンを入れた。温度計を有する蒸留ヘッドを取り付け、蒸留のために二重表面凝縮器を配置した。パラフィンを200〜240℃(塩浴)に加熱し、ジシクロペンタジエン(DCPD)を滴下漏斗から少しずつ添加した。湿分から保護された冷却受器中にシクロペンタジエンをb.p.40〜42℃で捕集した。二量体が完全に分解されるように、ジシクロペンタジエンを徐々に添加した;添加が速すぎる場合、蒸留ヘッドの上端の温度が42℃よりも高くなる。ジエンは室温で容易に二量化するので、すばやく使用するかまたは冷蔵庫の製氷室に一晩保存した。
【0098】
ヒドロキシルエチルノルボルネン(HEA−CP)の合成
窒素雰囲気下、三口丸底フラスコ中で、120g(0.99mol)の2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を攪拌した。クラッキングされたばかりの78.6g(1.19mol、1.2当量)のシクロペンタジエンをHEAに滴下した。シクロペンタジエンの添加中、反応温度を50℃未満に保持した。次に、反応混合物を85℃まで徐々に加熱し、この温度に1.5時間保持した。IR分光(1634cm−1および810cm−1のアクリレートピークの消失)およびH NMR測定(アクリレートプロトンに帰属される5.77〜6.39ppmのピークの消失)により、反応をモニターした。過剰のシクロペンタジエンおよびDCPDを真空により除去し、純度97.5%(GCによる)の粗生成物(HEA−CP)を得た。81〜82℃、0.4〜0.5mbarで蒸留することにより、この生成物を純度98.55%までさらに精製した。蒸留生成物の収量は、90%である。FT−IRおよびH NMRの測定データを以下に与えた。
FT−IR(ニート、cm−1):3447(ヒドロキシル)、1731(エステルカルボニル)、714(ノルボルネンの二重結合)。
H NMR(CDCl3、ppm):1.34〜1.53、1.93(エキソ)、2.27(エンド)、2.90〜3.22(二重結合以外のノルボルネン環に帰属されるプロトン)、2.65(ヒドロキシル)、3.66〜4.21(ノルボルネン環およびヒドロキシルに帰属されないプロトン)、5.91〜6.19(ノルボルネン二重結合のプロトン)。
【0099】
実施例1 PTGL2000ウレタンジノルボルネンオリゴマーの合成
アクリレートオリゴマーPTGL2000ウレタンジアクリレート(PTGL2000ジオール、IPDI、およびHEAから調製した)21.4g(0.008mol)を15mlのトルエンに溶解させ、効率的凝縮器、定圧添加漏斗、および温度計を備えた250ml三口丸底フラスコ中、窒素雰囲気下、40℃で攪拌した。1.56gのクラッキングされたばかりのシクロペンタジエンモノマー(0.024mol、3当量)を添加漏斗により滴下した。次に、反応温度を80℃まで上昇させ、約16時間(一晩)攪拌した。最後に、過剰のシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンを真空圧下(0.5〜2mbar、70℃未満)で除去し、定量的収率の淡黄色樹脂を得た。以下に与えられた分光ピークを用いてFT−IRおよびH NMR測定により、反応を追跡した。
FT−IR(ニート、cm−1):1722(ウレタンカルボニル);3061.1、712(ノルボルネンの二重結合)。
H NMR(CDCl、ppm):5.93、6.12、6.18(ノルボルネン二重結合のエンドおよびエキソの水素)。
【0100】
そのようにして得られた化合物は、次の化学構造:
【化2】


(式中、主鎖は、PTGL2000であり、Xは、IPDIから誘導され、そしてnは、1に等しい)
により表すことができる。化合物は、2809の理論数平均分子量Mnを有する。化合物は、PTGL2000−(IPDI−HEA−NB)によりさらに参照される。
【0101】
実施例2 PPG2000ウレタンジノルボルネンオリゴマーの合成
アクリレートオリゴマーPPG2000ウレタンジアクリレート(米国特許第5837750号明細書に記載されているようにPPG2000ジオール、IPDI、およびHEAから製造した)21.4g(0.008mol)を10mlのトルエンに溶解させ、効率的凝縮器、定圧添加漏斗、および温度計を備えた250ml三口丸底フラスコ中、窒素雰囲気下、40℃で攪拌した。クラッキングされたばかりのシクロペンタジエンモノマー1.56g(0.024mol、3当量)を添加漏斗により滴下し、次に、反応温度を80℃まで上昇させ、約16時間(一晩)攪拌した。最後に、過剰のシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンを真空下(0.5〜2mbar、70℃未満)で除去し、わずかに黄色の樹脂を定量的に生成させた。FT−IRおよびH NMR測定による反応混合物の解析から、転化の終了を明らかにした。
FT−IR(ニート、cm−1):1722(ウレタンカルボニル)、3061.1、712(ノルボルネンの二重結合)。
H NMR(CDCl、ppm):1.15(−CHCH)、3.4(−CHO)、3.57(−CHCH)、5.95、6.12、6.17(ノルボルネン二重結合のエンドおよびエキソの水素)。
【0102】
そのようにして得られた化合物は、次の化学構造:
【化3】


(式中、主鎖は、PPG2000であり、Xは、IPDIから誘導され、そしてnは、1に等しい)
により表すことができる。化合物は、2809の理論数平均分子量Mnを有し、PPG2000−(IPDI−HEA−NB)によりさらに参照される。
【0103】
実施例3 PPG4200ウレタンジノルボルネンオリゴマーの合成
PPG2000ジオールの代わりにPPG4200ジオールを使用した以外は実施例2のときと同様に、実施例3のオリゴマーを調製する。そのようにして得られた化合物は、実施例2で与えられたのと同一の化学構造で表すことができるが、主鎖は、PPG4200であり、Xは、IPDIから誘導され、そしてnは、1に等しい。化合物は、5009の理論数平均分子量Mnを有し、PPG4200−(IPDI−HEA−NB)によりさらに参照される。
【0104】
実施例4 PPG2000ウレタンジノルボルネンオリゴマーの合成
HEAの代わりにHPAを使用した以外は実施例2のときと同様に、実施例4のオリゴマーを調製する。そのようにして得られた化合物は、実施例2で与えられたのと同一の化学構造で表すことができるが、主鎖は、PPG2000であり、Xは、IPDIから誘導され、そしてnは、2に等しい。化合物は、2823の理論数平均分子量Mnを有し、PPG2000−(IPDI−HPA−NB)によりさらに参照される。
【0105】
実施例5 PPG2000ウレタンジノルボルネンオリゴマーの合成
HEAの代わりにHBAを使用した以外は実施例2のときと同様に、実施例5のオリゴマーを調製する。そのようにして得られた化合物は、実施例2で与えられたのと同一の化学構造で表すことができるが、主鎖は、PPG2000であり、Xは、IPDIから誘導され、そしてnは、3に等しい。化合物は、2837の理論数平均分子量Mnを有し、PPG2000−(IPDI−HBA−NB)によりさらに参照される。
【0106】
実施例6 ポリカーボネートウレタンジノルボルネンオリゴマーの合成
攪拌機、Nガスシール、凝縮器、添加漏斗、水浴、および加熱マントルを備えた反応槽に、38.98gのイソホロンジイソシアネートおよび0.16gのジブチルスズジラウレートを入れた。次に、温度を31℃未満に保持するように攪拌しながら、31.78gのHEA−CP付加物を混合物に滴下した。添加が終了した後、得られた混合物を40℃でさらに2時間攪拌して反応させた。次に、75.6gのポリカーボネートポリオール(ヘキサンジオールとトリエチレングリコールとのランダムコポリマー、数平均分子量は908であり、保土谷化学工業株式会社から供給されたものである)を反応混合物に添加し、得られた混合物の攪拌を87〜90℃の温度で2時間継続させた。残留イソシアネートの量が0.1重量%未満のときに、その反応は終了したと推定した。
FT−IR(ニート、cm−1):1720(ウレタンカルボニル);
3062、713(ノルボルネンの二重結合)。
H NMR(CDCl、ppm):5.92、6.17、6.20(ノルボルネン二重結合のエンドおよびエキソの水素)。化合物は、PCDNによりさらに参照される。
【0107】
実施例7 DCPDを直接添加することによるPTGL2000ウレタンジノルボルネンオリゴマーの合成
アクリレートオリゴマーPTGL2000ウレタンジアクリレート(PTGL2000ジオール、IPDI、およびHEAから製造した)50g(0.037mol)、0.005gのDBH、および2.6gのジシクロペンタジエン(0.0197mol)を一口フラスコに添加し、次に、190℃に前加熱された油浴中にフラスコを配置した。2つの凝縮器(下側の凝縮器は水により冷却し、上側の凝縮器は空気で冷却し、窒素ブロッカーを用いた)を反応フラスコの上に設置した。反応を1.5時間行い、次に、過剰のジシクロペンタジエンを真空圧下(10mbar、170℃)で除去し、定量的収率の黄色樹脂を得た。以下に与えられた分光ピークを用いてFT−IRおよびH NMR測定により、反応を追跡した。
FT−IR(ニート、cm−1):1722(ウレタンカルボニル);3061.1、712(ノルボルネンの二重結合)。
H NMR(CDCl、ppm):5.93、6.12、6.18(ノルボルネン二重結合のエンドおよびエキソの水素)。
【0108】
実施例8 トリシクロ[5.2.1.0]デカンジメタノールジノルボルネン(TCDDMDN)の合成
三口丸底フラスコ中、窒素雰囲気下、室温で、40g(0.13モル)トリシクロ[5.2.1.0]デカンジメタノールジアクリレートを攪拌した。20.8g(0.315モル、1.2当量)のクラッキングされたばかりのCPを滴下した。CPの添加中、反応温度を40℃未満に保持した。次に、反応混合物を80℃まで徐々に加熱し、この温度に3時間保持した。IR分光(1634cm−1および810cm−1のアクリレートピークの消失)およびH NMR測定(アクリレートプロトンに帰属される5.77〜6.39ppmのピークの消失)により、反応をモニターした。過剰のCPおよびDCPDを真空により除去し、定量的収率の黄色樹脂を得た。FT−IRおよびH NMRの測定データを以下に与えた。
FT−IR(ニート、cm−1):1740(カルボニル);3061.1、712(ノルボルネンの二重結合)。
H NMR(CDCl、ppm):5.93、6.12、6.18(ノルボルネン二重結合のエンドおよびエキソの水素)。
【0109】
実施例9 実施例1のオリゴマーを含有するチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンのコーティング組成物を調製した:
[PTGL2000(IPDI−HEA−NB)] 20g(90.45重量%)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−プロピオネート) 1.89g(8.55重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.221g(1.00重量%)
エン対チオールのモル比は、1:1である。
【0110】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定(1.5mW/cmの低UV強度で行った)およびRT−IR測定で試験した。組成物は、迅速なモジュラス増加を示した(図1参照)。他の結果を表3に示す。
【0111】
実施例10 実施例2のオリゴマーを含有するチオール−エン組成物
実施例9のときと同様に材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティング組成物を調製した。ただし、化合物Bとして[PPG2000(IPDI−HEA−NB)]を使用した。
【0112】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。組成物は、RT−DMAにより測定したとき、非常に迅速なモジュラス増加を示した(図2および3参照)。他の結果を表2に示す。
【0113】
実施例11 実施例3のオリゴマーを含有するチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンのコーティング組成物を調製した:
[PPG4200(IPDI−HEA−NB)]; 20g(94.02重量%)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−プロピオネート) 1.06g(4.98重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.213g(1.00重量%)
【0114】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。結果を表1に示す。
【0115】
実施例12 実施例4のオリゴマーを含有するチオール−エン組成物
実施例9のときと同様に材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティング組成物を調製した。ただし、オリゴマーとして[PPG2000(IPDI−HPA−NB)]を使用した。
【0116】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。結果を表2に示す。
【0117】
実施例13 実施例5のオリゴマーを含有するチオール−エン組成物
実施例6のときと同様に材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティング組成物を調製した。ただし、オリゴマーとして[PPG2000(IPDI−HBA−NB)]を使用した。
【0118】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。結果を表2に示す。
【0119】
実施例14 実施例3のオリゴマーを含有するチオール−エン組成物
テトラチオールを用いることによるチオールの官能価の影響
実施例8のときと同様に材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティング組成物を調製した。ただし、チオール化合物として1.87gのペンタエリトリトールテトラ(11−メルカプトウンデカネート)を使用した。
【0120】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定で試験した。結果を表1に示す。
【0121】
実施例15 テトラチオールを有する実施例2のオリゴマーを含有するチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
[PPG2000(IPDI−HEA−NB)] 10.9g(91.1重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 0.95g(7.9重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.12g(1.0重量%)
【0122】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定で試験した。結果を表2に示す。
【0123】
実施例16 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
[PTGL2000(IPDI−HEA−NB)] 1.06g(14.7重量%)
EBDN 4.0g(55.4重量%)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート) 2.01g(27.9重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.14g(2.0重量%)
【0124】
EBDNは、エトキシル化ビスフェノール−A−ジノルボルネンであり、PCT/US87/02618の実施例4に記載されているように合成することができる。フィルムをUV光で硬化させ、80℃で2時間、後焼成した。
【0125】
DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0126】
実施例17 高モジュラスのチオール−エン組成物
実施例16に示されるようにチオール−ノルボルネンコーティングを調製した。ただし、2gのTMPTSHの代わりに、1.85g(26.2重量%)のペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート)を使用した。フィルムをUV光で硬化させ、80℃で2時間、後焼成した。
【0127】
DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0128】
実施例18 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
[PTGL2000(IPDI−HEA−NB)] 1.59g(15.9重量%)
EBDN 4.47g(44.7重量%)
TMPTN 0.883g(8.83重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 2.76g(27.58重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.2g(2.0重量%)
トリフェニルホスファイト 0.1g(1.0重量%)
【0129】
TMPTNは、トリメチロールプロパントリノルボルネンプロピオネートであり、ジャコビーン・A・F(Jacobine A.F.)、グレイザー・D・M(Glaser D M.)ら著、応用高分子科学誌(J.of App.Polym.Sci.)、第45巻、471−485頁(1992年)の方法に準拠して製造することができる。フィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0130】
実施例19 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
[PTGL2000(IPDI−HEA−NB)] 1.75g(17.49重量%)
EBDN 3.28g(32.77重量%)
TMPTN 1.94g(19.42重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 2.79g(27.9重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.2g(2.0重量%)
トリフェニルホスファイト 0.1g(1.0重量%)
【0131】
フィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0132】
実施例20 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
[PTGL2000(IPDI−HEA−NB)] 1.835g(18.35重量%)
EBDN 1.72g(17.19重量%)
TMPTN 3.06g(30.56重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 3.18g(31.82重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.2g(2.0重量%)
プロピルガレート 0.05g(0.5重量%)
【0133】
フィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0134】
実施例21 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
PCDN 0.96g(9.6重量%)
EBDN 5.975g(59.75重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 2.765g(27.645重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.2g(2.0重量%)
トリフェニルホスファイト 0.1g(1.0重量%)
【0135】
PCDNは、ポリカーボネートウレタンジノルボルネンである。フィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0136】
実施例22 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
PCDN 1.02g(10.24重量%)
EBDN 4.78g(47.81重量%)
TMPTN 0.945g(9.45重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 2.95g(29.5重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.2g(2.0重量%)
トリフェニルホスファイト 0.1g(1.0重量%)
【0137】
フィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0138】
実施例23 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
PCDN 1.16g(10.98重量%)
EBDN 3.426g(34.16重量%)
TMPTN 2.02g(20.24重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 3.161g(31.61重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.2g(2.0重量%)
トリフェニルホスファイト 0.1g(1.0重量%)
【0139】
フィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0140】
実施例24 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
PCDN 1.11g(11.12重量%)
TCDDMDN 5.44g(54.44重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 3.21g(32.1重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.195g(1.95重量%)
プロピルガレート 0.039g(0.39重量%)
【0141】
TCDDMDNは、トリシクロ[5.2.1.0]デカンジメタノールジノルボルネンであり、PCT/US87/02618の実施例4に記載のものと同一の方法で合成することができる。フィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0142】
実施例25 高モジュラスのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
PCDN 1.11g(11.12重量%)
TCDDMDN 5.44g(54.44重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 3.21g(32.1重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.195g(1.95重量%)
プロピルガレート 0.039g(0.39重量%)
【0143】
フィルムをUV光で硬化させ、100℃で6時間、後焼成した。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0144】
実施例26 高モジュラス3層フィルムのチオール−エン組成物
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンコーティングを調製した:
PCDN 1.11g(11.12重量%)
TCDDMDN 5.44g(54.44重量%)
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト−プロピオネート) 3.21g(32.1重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.195g(1.95重量%)
プロピルガレート 0.039g(0.39重量%)
【0145】
それぞれ200マイクロメートルの3層で構成されたフィルムをUV光で硬化させた。DMAおよび引張試験から得られた結果を表4に示す。
【0146】
実施例27 高モジュラス3層フィルムのチオール−エン組成物
以下の配合物を調製した:
[PTGL2000(IPDI−HEA−NB)] 47.62g(15.27重量%)
EBDN 179.17g(57.43重量%)
ペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート) 82.89g(26.57重量%)
2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール(イオノール(ionol)TM) 1.56g(0.50重量%)
2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(イルガキュア−369(Irgacure−369)) 0.72g(0.23重量%)
【0147】
この配合物では、最初に、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールおよびイルガキュア−369(Irgacure−369)を約50℃でペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)に溶解させた。次に、溶液を冷却させた後で[PTGL2000(IPDI−HEA−NB)]およびEBDNを添加した。
【0148】
混合物の一部分に照射を行って、検量線照射パラメーターを確定した。レーザーパワーは、351.1nmで動作するArレーザーの121mWであった。X方向の走査線間の距離は、約50μmであった。また、提供された照射は、ストリップの各正方形内で、15.5、23、34.4、45.7、57、および66.5mJ/cmであった。上述したように計算したところ、検量線パラメーターは5.33mJ/cmEcおよび0.136mmDpであることがわかった。ステレオリソグラフィー法でドクターブレードを用いて厚さ150μmの層(13層まで)をコーティングし、各層に画像様照射または約250μmまたは34.3mJ/cmを施すことにより、多層物体を作製した。
【0149】
比較実験A オリゴマーPTGL2000−(IPDI−HEA)を含有するアクリレート組成物
以下の材料を混合することにより、アクリレートコーティング組成物を調製した:
[PTGL2000(IPDI−HEA)] 10g(49.5重量%)
ジ(エチレングリコール)−2−エチルヘキシルアクリレート(DEGEHA) 10g(49.5重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.202g(1.00重量%)
【0150】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。組成物は、緩速なモジュラス増加を示した(図1参照)。他の結果を表3に示す。
【0151】
比較実験B オリゴマーPPG2000−(IPDI−HEA)を含有するアクリレート組成物
以下の材料を混合することにより、アクリレートコーティング組成物を調製した:
[PPG2000(IPDI−HEA)] 10g(49.5重量%)
エトキシル化ノニルフェノールアクリレート(ENPA) 10g(49.5重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.202g(1重量%)
【0152】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。組成物は、比較的緩速なモジュラス増加を示した(図2参照)。他の結果を表2に示す。
【0153】
比較実験C オリゴマーPPG4200−(IPDI−HEA)を含有するアクリレート組成物
以下の材料を混合することにより、アクリレートコーティング組成物を調製した:
[PPG4200(IPDI−HEA)] 10g(49.5重量%)
エトキシル化ノニルフェノールアクリレート(ENPA) 10g(49.5重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.202g(1.00重量%)
【0154】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。組成物は、比較実験Bの組成物よりもさらに緩速なモジュラス増加を示した(図2および3参照)。他の結果を表1に示す。
【0155】
比較実験D オリゴマーPPG2000−(AA−NB)を含有するチオール−エン組成物
ポリプロピレングリコールジノルボルネンエステル(PPG2000(AA−NB)2)の合成
効率的凝縮器、定圧添加漏斗、および温度計を備えた250mL三口丸底フラスコ中、窒素雰囲気下、室温で、ポリプロピレングリコール2000ジアクリレート30g(0.0142モル)を攪拌した。クラッキングされたばかりのシクロペンタジエンモノマー2.82g(0.0427モル、3当量)を滴下した。次に、反応混合物を80℃まで徐々に昇温し、80℃で16時間攪拌した。最後に、過剰のシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンを真空系(0.5〜2mbar、70℃未満)により除去し、定量的収率の淡黄色樹脂を得た。FT−IR測定およびH NMR測定により反応を追跡し、転化が終了したことを明らかにした。
【0156】
FT−IR(ニート):3061.1、711.3cm−1(ノルボルネンの二重結合)
H NMR(CDCl、ppm):1.15(−CHCH)、3.4(−CHO)、3.57(−CHCH)、5.95、6.12、6.17(ノルボルネン二重結合のエンドおよびエキソの水素)
【0157】
そのようにして得られた化合物は、次の化学構造:
【化4】


(式中、主鎖は、PPG2000である)
により表すことができる。
【0158】
化合物は、2240の理論数平均分子量Mnを有し、PPG2000−(AA−NB)によりさらに参照される。化合物は、国際公開第95/00869号パンフレット(ロックタイト・コーポレーション(Loctite Corporation))の実施例7の化合物と類似しているが、ただし、650の分子量を有するヒドロキシ末端ポリテトラメチレンオキシドの代わりに2000の分子量を有するポリプロピレングリコールをポリオールとして使用した。
【0159】
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンのコーティング組成物を調製した:
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンのコーティング組成物を調製した:
[PPG、2000(AA−NB)] 10g(88.47重量%)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−プロピオネート) 1.19g(10.53重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.113g(1.00重量%)
エン対チオールのモル比は、1:1である。
【0160】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。組成物は、比較実験Cの組成物よりもさらに緩速なモジュラス増加を示した(図3参照)。他の結果を表2に示す。
【0161】
比較実験E オリゴマーPPG2000−(IPDI−CH−NB)を含有するチオール−エン組成物
PPG2000−ジ−(ノルボルナ−2−エン−5−メチル)ウレタンの合成
上部攪拌機、乾燥空気入口、熱電対、および滴下漏斗を備えた水冷/加熱式の1L二重壁反応器に、0.5gのイルガノックス1035(Irganox 1035)、83gのIPDI、および0.3gのDBTDL(ジブチルスズジラウレート)を仕込んだ。混合物を10℃まで冷却させ、攪拌しながらかつ液体上に乾燥空気を流しながら、46.4グラムの5−ノルボルネン−2−メタノールを滴下漏斗から25分間で添加し、高粘稠白色混合物を得た。1時間後、温度を20℃まで上昇させ、370gのデスモフェン2061BD(Desmophen 2061 BD)(2000の分子量を有するポリプロピレングリコール;OH価は56.6である)を添加し、その後、反応温度を80℃まで上昇させた。規則的にサンプルを採取してNCO含有率を測定し、NCO含有率が0.05重量%未満になるまで反応を進行させた。約15時間後、この状態に達してから、反応混合物を反応器から流出させた。
【0162】
そのようにして得られた化合物は、次の化学構造:
【化5】


(式中、主鎖は、PPG2000であり、Xは、IPDIから誘導され、そしてnは、1に等しい)
により表すことができる。化合物は、2693の理論数平均分子量Mnを有し、PPG2000−(IPDI−CH−NB)によりさらに参照される。
【0163】
以下の材料を混合することにより、チオール−ノルボルネンのコーティング組成物を調製した:
[PPG2000(IPDI−NB)] 20g(90.12重量%)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−プロピオネート) 1.97g(8.88重量%)
イルガキュア184(Irgacure 184) 0.222g(1.00重量%)
【0164】
組成物を硬化させ、RT−DMA測定およびRT−IR測定で試験した。組成物は、比較実験Dの組成物よりもさらに緩速なモジュラス増加を示した(図3参照)。他の結果を表2に示す。
【0165】
比較実験F(ロックタイト(Loctite)化合物1の再生成)
効率的凝縮器および温度計を備えた250mL丸底フラスコ中、窒素雰囲気下で、ヒドロキシル末端PPGポリ(プロピレングリコール2000)25g(0.02495mol OH)を0.05gのジブチルスズジラウレートと共に攪拌した。ノルボルナ−2−エン−5−イソシアネート4.432g(トルエン中76%溶液、1.03当量、ジャコビーン(Jacobine)の論文(応用高分子科学誌(J.of App.Polym.Sci.)、第45巻、471−485頁(1992年))に従って製造した)をシリンジにより滴下した。添加中、反応温度を30℃未満に制御した。添加後、反応温度を70℃まで徐々に上昇させ、4時間攪拌した。次に、トルエンおよび過剰のノルボルナ−2−エン−5−イソシアネートを真空下(0.5〜2mbar、70℃未満)で除去し、わずかに黄色の樹脂を定量的に得た。FT−IRおよびH NMRによる反応混合物の解析から、転化の終了を明らかにした。しかしながら、樹脂は、強い臭気を有し、コーティング組成物でも臭気が残っていたので、実使用には適していない。
FT−IR(ニート、cm−1):1717(ウレタンカルボニル)、3061.1、722(ノルボルネンの二重結合)。
H NMR(CDCl、ppm):1.09(−CHC)、3.34(−CO)、3.51(−CCH)、5.95,6.01,6.09,6.3(ノルボルネン二重結合のエンドおよびエキソの水素)
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

【0171】
図から明らかなように、実施例および比較実験から以下の観測結果および結論を引き出すことができる。
【0172】
図の詳細な説明
図1は、実施例6vs比較実験AのRT−DMA曲線を示している(表3も参照されたい)。図は、実施例6の組成物がアクリレート系よりも著しく迅速であることを示している。表3から明らかなように、実施例6の組成物の重合速度は、比較実験Aよりも30%速い。
【0173】
図2は、実施例7vs比較実験BおよびCのRT−DMA曲線を示している。比較実験Bおよび実施例7は、同一の主鎖(PPG2000)を使用している。アクリレート系は、同等のモジュラス増加速度を有するが、二倍のモジュラスまで硬化される。(しかしながら、Rは著しく低い。表2参照)。硬化速度に関してアクリレート系とチオール−エン系とを適切に比較するには、同一のモジュラスを与える組成物を調べればよい。したがって、実施例7と比較実験Cとを比較すれば、RT−DMAで本発明に係るチオール−エン系がはるかに迅速であることがわかる。実験Bは、実施例12と比較することができる。実施例12は、RT−DMAで比較実験Bよりも実質的に迅速である。
【0174】
図3もまた、実施例7および比較実験Cを示している。それはさらに、アクリレート系よりも一段と緩速であると思われる比較実験Dを示している。比較実験Eは、それよりもさらに緩速である。これらの実験は、本発明に係る特定の組成物が予想外に速い硬化速度を有することを示している。
【0175】
試験法の説明
リアルタイムDMA(「RT−DMA」)による網状構造形成速度の決定
一次計器は、200g・cmおよび2000g・cmの二領域のトルクトランスデューサーを備えたレオメトリック・サイエンティフィックRDA−2レオメーター(Rheometric Scientific RDA−2 rheometer)である。従来のスチールパラレルプレートシステムを、9.5mmの直径を有する2つの石英ディスクを備えたカスタムメイドプレートホルダーで置き換えて、UV光を上からサンプルに照射できるようにした。
【0176】
【表6】

【0177】
上側プレートホルダーの内部にミラーを装着して、外部UV光源により放出されたUV光をサンプルの方向に反射させるようにする。(ここで報告した実験では、経路を使用しなかった。)
【0178】
UV光は、独国に本拠を置くドクター・ヘンレ・カンパニー(Dr. Hoenle Company)により製造されたブルーポイント−2UV光源(Bluepoint−2 UV source)から得た。UVランプは、バルブ内に水銀だけでなくハロゲン化鉄をも含有するF−タイプバルブであり、光ファイバー工業で使用されるタイプのUVランプに非常によく類似するようにスペクトル出力を変化させてある。可撓性液体充填光導波路を用いて、ランプからの光をプレートホルダーに伝送した。
【0179】
ソラテル(Solatell)により製造されたソラスコープ1放射計(Solascope 1 radiometer)を用いて、上側石英プレートの下でUV光の強度(放射照度)を測定した(サンプルを入れる前)。約28mW/cmの放射照度が検出された。[PTGL系では、約1.5mW/cmの放射照度を使用した]。
【0180】
初期設定工程の後、サンプルをレオメーターに充填し、0.1mmのギャップになるまで上側石英プレートを下側石英プレートの方向に下降させた。サンプルサイズが正確に直径9.5mmおよび厚さ0.1mmになるように、過剰の液体をサンプルから取り除いた。次に、オーブン扉を閉めて、窒素ガスのパージング流動を開始した。窒素によるパージングは、少なくとも5分間継続させた。窒素パージングの目的は、空気雰囲気中で生じるおそれのあるサンプル縁またはその近傍における酸素による硬化阻害を防止すること、および長時間を要する可能性のあるサンプルからの溶存酸素の除去を行わないで済むようにすることである。
【0181】
硬化試験では、いわゆる任意波形モードで計測器を動作させた。時間掃引測定を行った(周波数、振幅、および温度を一定に保持して、材料特性の変化を追跡することにより)。次の設定/固定パラメーター:角周波数52.36rad/sおよび歪み振幅10%を用いて、64秒間の継続時間で、正弦波をプログラムした。トルクおよび歪みの信号のデータサンプリングを16秒間の継続時間の4つの間隔に設定し、それぞれ400データ点をサンプリングするようにした。この結果として、1サイクルあたり応力および歪みの両方に対して3データ点が得られる。このほか、プレート直径およびサンプル厚さを入力する。測定温度は、23℃に設定した。
【0182】
測定実験を開始したとき、レオメーターに正弦波形がダウンロードされた後でデータ収集が自動で開始された。測定開始時、コントローラーボックスを作動させて、1.575秒の固定遅延の後、ブルーポイント−2(Bluepoint−2)のシャッターを開けて動作させる。シャッターを作動させた後、UV照射を60秒間継続させた。
【0183】
実験の終了時、応力および歪みのデータは、レオメトリック・サイエンティフィック(Rheometric Scientific)製のRSIオーケストレイター(RSI Orchestrator)(バージョン6.5.8)ソフトウェアパッケージの離散的フーリエ変換ユーティリティを介して動的剪断モジュラスおよび位相角に変換される。この目的のために、我々は、ユーティリティの大きさおよび位相モードを選択し、1周期あたり3データ点に設定した。その結果として、我々は、硬化時間の関数として動的剪断モジュラスGおよび位相角δの曲線を得る。時間データから固定遅延(1.575秒)を引くことにより、コントローラーボックスにより導入された遅延に対して時間軸を補正させた。計測器の位相遅延(選択された測定周波数では18.3度)および歪みパーセント歪みから実際の歪みへの変換に対して、モジュラスおよび位相角を補正する。動的測定であるDMTA測定では、次の関係式G=(G’+G”1/2に従って、次のモジュラス:貯蔵剪断モジュラスG’、損失剪断モジュラスG”、および動的剪断モジュラスGを測定する。さらに、位相角δは、次のように剪断モジュラスに関連付けられる:tanδ=G”/G’。
【0184】
典型的には、UV照射の開始後、貯蔵剪断モジュラスG’は、迅速な単調増加を示し、完全硬化が得られると水平になる。同時に、位相角は、典型的な液体値(約90度)から典型的な弾性値(約0度)まで低下する。最終的解析のために、データをマイクロソフト・エクセル(Microsoft Excel)にエクスポートした。
【0185】
データから、我々は、材料の最終網状構造モジュラスに対する値として硬化サイクルの終了時(60秒のUV照射後)における貯蔵剪断モジュラスG’の値(動的剪断モジュラスと位相角の余弦との積)を選択する。[これは、さらに「最終貯蔵剪断モジュラス」(G’)と呼ばれる]。通常、完全硬化は、64秒間の硬化サイクル内に得られる。
【0186】
網状構造形成速度の尺度として、我々は、貯蔵剪断モジュラスが最終モジュラスに対して特定の比率になるまで増大した時間を求める。
【0187】
本出願では、我々は、網状構造形成速度の指標として、貯蔵剪断モジュラスが64秒硬化後の値の10%になるまで増大するのに要した時間を使用する。
【0188】
RT FTIR測定
高速走査FTIRによる化学転化のリアルタイム定量
UV硬化性のアクリレートコーティングおよびチオールエンコーティングのリアルタイム化学転化を高速走査FTIRにより定量した。ブルッカーIFS55(Bruker IFS 55)に水平方向透過反射型セルおよびMCT検出器を取り付けた。サンプルに焦点を合わせたセルにUV光源(Dバルブを有するブルーポイント2(Bluepoint 2)システム)を石英光導波路で結合した。光強度は、41.0±1.0mW/cmであった。UV光源系に電子シャッターを取り付けた。(装置の概略構成については、A・A・ディアス(A.A.Dias)、H・ハートウィッグ(H.Hartwig)、J・F・G・A・ジャンセン(J.F.G.A.Jansen)著、液体系および放射線硬化性粉末系の両方のリアルタイムFT−IR(Real time FT−IR for both liquid and radiation curable powder systems)、表面コーティング・国際版2000(Surface Coating International 2000)、2000年8月、第83巻(第8号)、384頁を参照されたい)。
【0189】
金被覆アルミナプレート(7×7mm)上の反応性組成物の厚さ20ミクロンの層を、窒素雰囲気下、室温で硬化させた。FTIRセルにサンプルを配置し、スペクトルを記録し、官能基特異的IRバンドの吸光度を調べることにより、実際のフィルム厚さを調整した。吸光度が0.2〜0.6になるまで、フィルムの厚さを調整した。
【0190】
非硬化液体サンプルの赤外スペクトルを得た。次に、UVを照射することにより、サンプルを硬化させた。硬化時、取得速度を減少させて、25スペクトル/sの最大速度で、完全FTIRスペクトルを記録した。最後に、シャッターでUV光を遮断した後、硬化樹脂の赤外スペクトルを記録した。
【0191】
それぞれの記録されたFTIRスペクトルで、アクリレート(1635cm−1)、ノルボルネン(3060cm−1)、およびチオール(2555cm−1)の官能基特異的IRバンドの正味ピーク高さを計算した。ピーク近傍の吸光度極小に接するようにベースラインを引くベースライン法を用いて、正味ピーク面積を決定することができる。ピークとベースラインとの間の吸光度差が正味ピーク高さである。実験は、二重反復方式で行った。
【0192】
ディアス(Dias)ら(先の文献を参照されたい)により記載されたように最大重合速度を求めて%/sとして報告した。
【0193】
二次反応で重合するチオール−エン系を比較するために、ゲル化に関する古典的フローリー・ストックマイヤー(Flory−Stockmayer)理論に従って臨界エン転化率におけるゲル化点を使用した(B・S・チョウ(B−S Chiou)およびS・A・カウ(S.A.Khau)著、巨大分子(Marcomolecules)、1997年、第30巻、7322−7328頁に既に記載されている)。プロット1/(1−×)(式中、Xは転化率(比率)である)は、ラインの傾きが変化するゲル化点まで時間と共に直線的に増大した。変曲点を比較するために、極限転化率を94%に設定した。
【0194】
DMA測定および引張測定は、国際公開第02/42237号パンフレットに記載されているように行った。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】リアルタイム動的機械的分析(RT−DMA)に基づいて、いくつかの組成物(composions)(実施例および比較実験)の硬化を時間の関数として示している。
【図2】リアルタイム動的機械的分析(RT−DMA)に基づいて、いくつかの組成物(composions)(実施例および比較実験)の硬化を時間の関数として示している。
【図3】リアルタイム動的機械的分析(RT−DMA)に基づいて、いくつかの組成物(composions)(実施例および比較実験)の硬化を時間の関数として示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物Aおよび化合物B、または(A)で規定されるポリチオール官能価をさらに含む化合物Bのいずれか[ただし、
(A)ポリチオール、
(B)複数の環状エン基を有する化合物(該化合物(B)は、少なくとも1つの環状エン基に直接結合されたカルボニル基を含み、さらに少なくとも1つの水素供与性基を含み、該環状エン基の少なくとも1つと該水素供与性基の少なくとも1つとの間の距離は、少なくとも2本の骨格結合であり、化合物(B)は、(メタ)アクリレート基を含有しない)]と、
(C)0〜10重量%の光開始剤と、
を含んでなる硬化性チオール−エン組成物。
【請求項2】
両化合物(A)および(B)の官能価が平均で1.2超であり、かつ(A)+(B)の官能価が約4以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(A)または(B)のいずれかが主鎖を含有する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリチオール(A)がチオール−カルボン酸化合物のエステルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの水素供与性基が、ヒドロキシ、アミノ、チオール、およびカルボキシルよりなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記水素供与性基が、ウレタン、インバーテッドウレタン(inverted urethane)、ウレア、アミド、チオ−ウレタン、チオウレア、イソチオウレア、ヒドロキシエステル、およびヒドロキシよりなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記環状エン基が縮合環構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
化合物(A)または化合物(B)が4つ以上のウレタン結合と主鎖とを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
主鎖を含む前記成分が250〜6000g/molの分子量を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
化合物(B)が、
a.ポリオールから誘導される主鎖と、
b.ポリイソシアネートから誘導されるウレタン基と、
c.ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから誘導される末端環状エン基と、
を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
化合物AおよびBが別個の化合物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
AおよびBが1つの化合物中で組み合わされる、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、化合物Bと異なる1つ以上の環状エン基を有する希釈剤またはオリゴマーをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む光ガラスファイバーコーティング組成物。
【請求項15】
一次用、二次用、インク用、マトリックス用、バンドリング用、またはアップジェッティング用のコーティング材料としての、請求項14に記載の光ガラスファイバーコーティング組成物の使用。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む、光ガラスファイバーにコーティングするための一次コーティングであって、硬化後に0.3〜3MPaの(E)平衡モジュラスを有する、一次コーティング。
【請求項17】
フォトファブリケーションにおける請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を含む硬化性樹脂組成物の使用。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を硬化させることにより得られる生成物。
【請求項19】
前記生成物が機能プロトタイプである、請求項18に記載の生成物。
【請求項20】
前記生成物がコーティングである、請求項18に記載の生成物。
【請求項21】
コーティングまたは生成物を得る方法であって、EB、UV、またはUV−vis放射線を用いて請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を硬化させる工程を含む、方法。
【請求項22】
複数の環状エン基を有する化合物であって、該化合物が、少なくとも1つの環状エン基に直接結合されたカルボニル基を含み、さらに少なくとも1つの水素供与性基を含み、該環状エン基の少なくとも1つと該水素供与性基の少なくとも1つとの間の距離が少なくとも2本の骨格結合に等しく、該化合物が(メタ)アクリレート基を含有しない、化合物。
【請求項23】
前記化合物が、
d.ポリオールから誘導される主鎖と、
e.ポリイソシアネートから誘導されるウレタン基と、
f.ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから誘導される末端環状エン基と、
を含む、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物がチオール基をさらに含む、請求項22または請求項23に記載の化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−505198(P2007−505198A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532124(P2006−532124)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000343
【国際公開番号】WO2004/101649
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】